JP2000038934A - エンジン調速機構 - Google Patents

エンジン調速機構

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JP2000038934A
JP2000038934A JP10206187A JP20618798A JP2000038934A JP 2000038934 A JP2000038934 A JP 2000038934A JP 10206187 A JP10206187 A JP 10206187A JP 20618798 A JP20618798 A JP 20618798A JP 2000038934 A JP2000038934 A JP 2000038934A
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input shaft
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亨 井上
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 エンジンEからの動力を変速装置を介して走
行輪へ伝える構成において、低回転から高回転までの広
い範囲でトルク変動に対して調速することができなかっ
た。 【解決手段】 エンジンの動力を変速装置を介して走行
輪へ伝達する動力伝達経路途中の伝動軸において、該伝
動軸をエンジン側軸64と走行輪側軸65に分割して、
該両軸を同一軸心上に配置し、このエンジン側軸と走行
輪側軸の連結部分の各軸上に対向して、固定体64aと
摺動体58を設け、該固定体と摺動体との当接部分に鋼
球56と該鋼球56を係合するカム溝58aを設け、該
摺動体を固定体側に付勢するとともに、摺動体にエンジ
ンの推力調整手段を連動連係した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、走行駆動伝達経路
の伝動軸上に配置されるエンジンの調速機構の構成に関
する。
【0002】
【従来の技術】従来の運搬車や農作業車等の走行車両に
おいて、エンジンの動力をミッションケース内に伝達し
て、主変速装置や副変速装置等によって変速して、走行
輪を駆動するようにしており、一方、エンジンにはアク
セルレバーの回動に比例して開閉されるスロットルバル
ブや、出力軸の回転数及び負荷に応じて燃料噴射量を調
整する調速機が配置され、該調速機は例えばカムシャフ
トに取り付けたフライウェイトの遠心力を利用して調速
作用を行っていたのである。また、負荷をコントローラ
により演算して、該コントローラより燃料噴射量を制御
する電気式ガバナ機構も公知となっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の調速機
はエンジンの出力軸の回転数の低下を負荷と判断して、
その回転数に応じて燃料噴射量を調整するようにしてい
たので、走行輪側からの負荷トルクは検出していないの
である。よって、走行速度が落ちてからでないと、スロ
ットルバルブが開かれず、反応が遅れてしまうのであ
る。つまり、例えば、坂道にさしかかったときに、負荷
が増加して回転数が減少して、調速機によってスロット
ルバルブを開くように作動させてエンジンの回転数が上
がるようにしていたので、タイムラグが生じていた。ま
た、エンジンの回転数の低いときの走行時と、エンジン
の回転数が高い時の走行時で、負荷が変動した場合、遠
心力を利用した調速機では、回転数が高い場合は調速で
きるが、回転数が低いと調速できずエンストしてしまう
ことがあった。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の解決しようとす
る課題は以上の如くであり、次に該課題を解決するため
の手段を説明する。すなわち、エンジンの動力を変速装
置を介して走行輪へ伝達する動力伝達経路途中の伝動軸
において、該伝動軸をエンジン側軸と走行輪側軸に分割
して、該両軸を同一軸心上に配置し、このエンジン側軸
と走行輪側軸の連結部分の各軸上に対向して、固定体と
摺動体を設け、該固定体と摺動体との当接部分にカム体
と該カム体を係合するカム溝を設け、該摺動体を固定体
側に付勢するとともに、摺動体にエンジンの推力調整手
段を連動連係したものである。
【0005】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を説明
する。図1は本発明の調速機構を装備したミッションケ
ースの後面断面図、図2は同じく側面断面図、図3は副
変速装置部分の拡大後面断面図、図4は本発明の調速機
構の拡大後面断面図、図5は同じく側面断面図、図6は
本発明の調速機構のエンジン側入力軸と走行輪側入力軸
との連動状態を示す後面図一部断面図、図7は軸間にト
ルク差が生じた場合を示す後面図一部断面図である。
【0006】まず、本発明の調速機構を装備したミッシ
ョンケース1の内部構成について図1、図2を用いて説
明する。前記ミッションケース1は、図1の紙面に向か
って左側のケース部1Lと右側のケース部1Rとより左
右に二つ割に形成され、重ね合わせた内部にトランスミ
ッション等が収納されている。前記ミッションケース1
の上下途中部に左右方向に沿う入力軸10が軸支されて
いる。該入力軸10の一側(本実施例では左側)をケー
ス1Lの左側面より外方に突出させ、該入力軸10上に
従動プーリー11を嵌合している。該従動プーリー11
は主変速装置を構成するベルト式無段変速装置の従動側
に配置した割プーリーであり、エンジンからの動力がこ
のベルト式無段変速装置で変速された後の回転が入力軸
10よりミッションケース1内に伝達される。このベル
ト式無段変速装置はエンジン61の回転数の上昇に伴っ
て、自動的に増速側へ無断にシフトするように構成され
ている。
【0007】前記入力軸10はエンジン側入力軸64と
走行輪側入力軸65からなり、同一軸線上に配置され
て、エンジン側入力軸64の右端に走行輪側入力軸65
の左端が回転自在に嵌合支持され、両エンジン側入力軸
64と走行輪側入力軸65の間に後述する本発明の調速
機構55が配置されている。前記ミッションケース1内
には、入力軸10、変速出力軸14、アイドル軸20、
シフター軸30、後輪駆動軸26・26が左右平行に横
架され、走行輪側入力軸65上に右側より高速ギヤ1
1、低速ギヤ12、後進ギヤ13が固設されている。前
記変速出力軸14上に右側より高速従動ギヤ16、低速
従動ギヤ17、後進従動ギヤ18が回動自在に支持さ
れ、高速従動ギヤ16と高速ギヤ11とが常時噛合さ
れ、低速従動ギヤ17と低速ギヤ12とが常時噛合され
ている。
【0008】また、前記高速従動ギヤ16と低速従動ギ
ヤ17の間に前進変速用のスライダー19がスプライン
ハブを介して変速出力軸14上に相対回転不能でかつ軸
方向摺動自在に配置されている。図3に示す位置をスラ
イダー19の中立位置とし、この中立位置より紙面右方
向へスライダー19を摺動操作すると、スライダー19
右側面に形成した凸部19aが高速従動ギヤ16左側面
に形成した凹部16aと係合され、高速回転が変速出力
軸14に伝達される。スライダー19を中立位置より紙
面左方向へ摺動操作すると、スライダー19左側面に形
成した凸部19bが低速従動ギヤ17右側面に形成した
凹部17aと係合され、低速回転が変速出力軸14に伝
達される。
【0009】また、前記アイドル軸20上に回動自在に
アイドルギヤ021を遊嵌し、該アイドルギヤ021は
前記後進ギヤ13と前記変速出力軸14上に遊嵌した後
進従動ギヤ18とに噛合させる。前記アイドルギヤ02
1は左右幅が広く形成され、前記後進従動ギヤ18と後
進ギヤ13とを左右に位置をずらして配置でき、後進従
動ギヤ18と後進ギヤ13との外周端部を側面視でラッ
プさせて、コンパクトな配置構成としている。
【0010】また、前記後進従動ギヤ18の側面にも凹
部形成され、該後進従動ギヤ18の左側方に後進用スラ
イダー23がスプラインハブを介して変速出力軸14上
に相対回転不能でかつ軸方向摺動自在に配置され、該後
進用スライダー23の側面には凸部が形成されて、図示
の中立位置より紙面右側に摺動させて前記凹部と凸部を
係合することによって、後進ギヤ13からアイドル軸2
0上のギヤ21及び後進従動ギヤ18を介し、変速出力
軸14を逆転駆動できるようにしている。
【0011】そして、前記スライダー19・23はシフ
ター31・32の先端にそれぞれ係合され、該シフター
31・32はシフター軸30上に摺動自在に外嵌され、
該シフター31・32は突起38・39、変速アーム3
4、変速軸35を介して副変速レバーと連結されてい
る。このようにして副変速装置が構成されている。
【0012】更に、後進用スライダー23の左隣りの前
記変速出力軸14上にギヤ24が固設され、該ギヤ24
に差動装置25のリングギヤ28が噛合され、該差動装
置25を介して変速出力軸14の動力が左右の後輪駆動
軸26・26に伝達される。前記リングギヤ28は差動
装置25を構成するデフケース80外周面に固設され、
リングギヤ28と逆側のデフケース80のボス部上に左
右に摺動自在にデフロックスライダー82が遊嵌されて
いる。該デフロックスライダー82にロックピン81が
固設され、該ロックピン81がデフケース80一側面に
左右方向に摺動自在に挿入され、後輪駆動軸26端部上
のデフギア83に形成した凹部に、前記ロックピン81
端部が挿入自在に支持されている。
【0013】前記デフロックスライダー82の外周に凹
部が形成され、図2に示すデフシフトフォーク84のフ
ォーク爪が係合され、デフシフトフォーク84を介して
デフロックスライダー82が図1の紙面左方に摺動操作
され、ロックピン81端部がデフギア83側部の凹部内
に挿入され、デフケース80がデフギア83を介して後
輪駆動軸26に対して回動不能となり差動装置25がロ
ックされ、左右の後輪駆動軸26・26が差動されるこ
となく同一回転数で駆動される。
【0014】また、前記後輪駆動軸26・26の途中部
には、ディスクブレーキ装置を構成する摩擦板27・2
7・27がスプライン嵌合されている。該摩擦板27外
周側とミッションケース1側面との間には押動板72が
配置されている。該押動板72はミッションケース1下
部に軸支した支軸71の途中部に連動されており、ブレ
ーキ操作に連動してブレーキ操作アーム70が引っ張ら
れ、支軸71が回転すると、支軸71途中部に係合した
押動板72が回転され、カム73を乗り越えようと押動
板72が摩擦板27側に移動して、押動板72とミッシ
ョンケース1内に形成した壁面との間に摩擦板27が押
圧され、後輪駆動軸26が制動される。
【0015】また、前記変速出力軸14の右端はミッシ
ョンケース1より突出してベベルギア46を固設し、該
ベベルギア46を前輪出力ケース45内に収納したベベ
ルギア49・48・51や伝動軸47等を介して前輪出
力軸50に動力を伝える構成としている。
【0016】次に、本発明の調速機構55の構成につい
て図1、図4、図5より説明する。前記入力軸10を構
成するエンジン側入力軸64の右端部の軸心位置には凹
部64cが設けられ、走行輪側入力軸65左端部が回動
自在に挿入され、走行輪側入力軸65がエンジン側入力
軸64と同一軸芯上に相対回動自在に支持されている。
【0017】また、前記エンジン側入力軸64の右端部
には、ディスク状に構成した固定体64aが形成され、
該固定体64aの左側面には、複数の半球状の凹部64
b・64b・・・・が同一円周上に均等に形成される。
【0018】一方、前記走行輪側入力軸65の左側途中
部に、止め板57が固設され、該止め板57の左側にデ
ィスク状に構成した摺動回転体58が走行輪側入力軸6
5上に軸芯方向に摺動自在で、かつ相対回転不能にスプ
ライン嵌合されている。前記摺動回転体58と止め板5
7との間位置に、弾性付勢部材としての皿バネ59・5
9が介装され、摺動回転体58を紙面左側、即ち、固定
体64の方向に摺動するように付勢している。
【0019】前記摺動回転体58の左側面に、前記固定
体64aの凹部64b・64b・・・・と位置を合わせ
てカム溝58a・58a・・・・が形成されている。該
カム溝58aは、図5、図6に示すように、走行輪側入
力軸65の軸芯を中心した円弧状の溝であり、該カム溝
58a・58a・・・・の逆転回転方向側を凹部64b
と等しい半球状とし、正転回転方向側を徐々に細くし
た、略三角形状の溝としている。さらに、凹部64bの
溝深さも正転回転方向側に向かうに従って浅くした傾斜
状としている。
【0020】そして、前記カム溝58a・58a・・・
・と前記凹部64b・64b・・・・の間にカム体とし
ての鋼球56・56・・・が位置され、前記皿バネ59
・59の付勢力によって摺動回転体58が左側に付勢さ
れ、カム溝58aの深部と凹部64b内に鋼球56が完
全に埋没し、摺動回転体58が固定体64aに接近す
る。前記鋼球56はカム溝58aと凹部64bとの間に
挟持されることで係合状態となり、エンジン側入力軸6
4の動力が、鋼球56・56・・・を介して、摺動回転
体58、走行輪側入力軸65に伝達される。尚、前記鋼
球56は、カム溝58aと凹部64bとの間に挟持され
ているが、鋼球56を固定体64aに固設して凸部とす
ることもできる。
【0021】また、前記摺動回転体58の外端部には、
レリーズベアリング60の内輪が固設され、摺動回転体
58と一体的に軸方向に移動できるようにしている。更
に、前記レリーズベアリング60外輪の左側面には、図
5に示す側面視で二股状のコントロールアーム61の遊
端部が係合されている。該コントロールアーム61のボ
ス部がミッションケース1に回動自在に枢支した縦軸6
2に固設されている。該縦軸62の上部はミッションケ
ース1外部に突設され、上端部にアーム63が固設され
ている。該アーム63端部には、ワイヤーやリンク等よ
りなる連動手段の一端が連結され、該連動手段の他端は
エンジンの推力調整手段、つまり、スロットルレバーに
連結されている。
【0022】このような構成において、走行車両を平地
等を走行している場合には、走行輪から大きな負荷がか
かっておらず、従って、エンジン側入力軸64と走行輪
側入力軸65との間にトルクの差が生じず、図6に示す
ように、鋼球56がカム溝58aの深部と凹部64b内
に完全に埋没し、コントロールアーム61は回動されて
いない。
【0023】また、機体が登り坂や圃場等のぬかるんだ
悪路にさしかかり、走行輪に負荷がかかると、その負荷
が副変速装置を介して走行輪側入力軸65に伝達され、
エンジンの動力が伝えられるエンジン側入力軸64との
間にトルクの差が生じる。この差はエンジン側入力軸6
4より走行輪側入力軸65の回転が遅れて、図7に示す
ように、鋼球56がカム溝58a内の傾斜面に沿って浅
部方向に移動し、摺動回転体58及びレリーズベアリン
グ60が紙面右側(矢印A方向)に移動され、コントロ
ールアーム61が縦軸62まわりに回動される。該コン
トロールアーム61の回動に連動してアーム63が回動
され、連動手段を介してエンジンのスロットルレバーが
その負荷トルクに応じてエンジンの回転数を増加するよ
うに変更される。
【0024】よって、走行輪に負荷がかかると、その負
荷トルクに応じて調速機構55が変化して、その変化が
燃料噴射量調整手段を変更して、負荷トルクに応じてエ
ンジンが調速され、下り坂等では減速する度合いが小さ
く、作業時においては速度変化が小さく、また、低回転
で走行しているときにはエンストが生じることがないの
である。
【0025】但し、前記調速機構55は機械的な連動手
段を介してエンジンの推力調整手段を変更する構成とし
ているが、摺動回転体58の移動量をセンサーで検知
し、該センサーをコントローラと接続し、該コントロー
ラにはスロットルバルブを変更するアクチュエーターと
接続して、電気的に負荷トルクに応じて推力を調整する
構成とすることもできる。また、本実施例では調速機構
55を入力軸10上に配置しているが、エンジンから差
動装置までの間の動力伝達経路途中の軸であればどこで
も良く、変速出力軸14上に配置することも可能であ
る。
【0026】
【発明の効果】本発明は以上の如く構成したので、次の
ような効果を奏するのである。すなわち、エンジンの動
力を変速装置を介して走行輪へ伝達する動力伝達経路途
中の伝動軸において、該伝動軸をエンジン側軸と走行輪
側軸に分割して、該両軸を同一軸心上に配置し、このエ
ンジン側軸と走行輪側軸の連結部分の各軸上に対向し
て、固定体と摺動体を設け、該固定体と摺動体との当接
部分にカム体と該カム体を係合するカム溝を設け、該摺
動体を固定体側に付勢するとともに、摺動体にエンジン
の推力調整手段を連動連係したので、走行輪からの負荷
が大きくなり、エンジン側の軸と走行輪側の軸との間に
トルク差が生じると、摺動体が摺動して、その負荷トル
クの大きさに応じてエンジンの推力調整手段が変更され
て、エンジン回転が増加され、下り坂等では減速する度
合いが小さくオーバーランが阻止されるようになり、ま
た、作業時においては速度変化が小さく、精度良く作業
ができるようになる。また、低回転で走行しているとき
にはエンストが生じることが殆どなくなり、低回転から
高回転までの広い範囲でトルク変動に対して調速するこ
とができるようになったのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の調速機構を装備したミッションケース
の後面断面図である。
【図2】同じく側面断面図である。
【図3】副変速装置部分の拡大後面断面図である。
【図4】本発明の調速機構の拡大後面断面図である。
【図5】同じく側面断面図である。
【図6】本発明の調速機構のエンジン側入力軸と走行輪
側入力軸との連動状態を示す後面図一部断面図である。
【図7】軸間にトルク差が生じた場合を示す後面図一部
断面図である。
【符号の説明】
1 ミッションケース 64 エンジン側入力軸 65 走行輪側入力軸 56 鋼球(凸部) 58 摺動回転体 58a カム溝
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成10年10月19日(1998.10.
19)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 エンジン調速機構
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、走行駆動伝達経路
の伝動軸上に配置されるエンジンの調速機構の構成に関
する。
【0002】
【従来の技術】従来の運搬車や農作業車等の走行車両に
おいて、エンジンの動力をミッションケース内に伝達し
て、主変速装置や副変速装置等によって変速して、走行
輪を駆動するようにしており、一方、エンジンにはアク
セルレバーの回動に比例して開閉されるスロットルバル
ブや、出力軸の回転数及び負荷に応じて燃料噴射量を調
整する調速機が配置され、該調速機は例えばカムシャフ
トに取り付けたフライウェイトの遠心力を利用して調速
作用を行っていたのである。また、負荷をコントローラ
により演算して、該コントローラより燃料噴射量を制御
する電気式ガバナ機構も公知となっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の調速機
はエンジンの出力軸の回転数の低下を負荷と判断して、
その回転数に応じて燃料噴射量を調整するようにしてい
たので、走行輪側からの負荷トルクは検出していないの
である。よって、走行速度が落ちてからでないと、スロ
ットルバルブが開かれず、反応が遅れてしまうのであ
る。つまり、例えば、坂道にさしかかったときに、負荷
が増加して回転数が減少して、調速機によってスロット
ルバルブを開くように作動させてエンジンの回転数が上
がるようにしていたので、タイムラグが生じていた。ま
た、エンジンの回転数の低いときの走行時と、エンジン
の回転数が高い時の走行時で、負荷が変動した場合、遠
心力を利用した調速機では、回転数が高い場合は調速で
きるが、回転数が低いと調速できずエンストしてしまう
ことがあった。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の解決しようとす
る課題は以上の如くであり、次に該課題を解決するため
の手段を説明する。すなわち、エンジンの動力を変速装
置を介して走行輪へ伝達する動力伝達経路途中の伝動軸
において、該伝動軸をエンジン側軸と走行輪側軸に分
割して、該両軸を同一軸心上に配置し、このエンジン側
軸と走行輪側軸との間に負荷によるトルク差が生じると
コントロールアームを回動させるように構成すると共
に、該コントロールアームにエンジンの推力調整手段を
連動連係し、該コントロールアームの回動量に比例して
エンジンの回転数を増加させるようにしたものである。
【0005】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を説明
する。図1は本発明の調速機構を装備したミッションケ
ースの後面断面図、図2は同じく側面断面図、図3は副
変速装置部分の拡大後面断面図、図4は本発明の調速機
構の拡大後面断面図、図5は同じく側面断面図、図6は
本発明の調速機構のエンジン側入力軸と走行輪側入力軸
との連動状態を示す後面図一部断面図、図7は軸間にト
ルク差が生じた場合を示す後面図一部断面図である。
【0006】まず、本発明の調速機構を装備したミッシ
ョンケース1の内部構成について図1、図2を用いて説
明する。前記ミッションケース1は、図1の紙面に向か
って左側のケース部1Lと右側のケース部1Rとより左
右に二つ割に形成され、重ね合わせた内部にトランスミ
ッション等が収納されている。前記ミッションケース1
の上下途中部に左右方向に沿う入力軸10が軸支されて
いる。該入力軸10の一側(本実施例では左側)をケー
ス1Lの左側面より外方に突出させ、該入力軸10上に
従動プーリー11を嵌合している。該従動プーリー11
は主変速装置を構成するベルト式無段変速装置の従動側
に配置した割プーリーであり、エンジンからの動力がこ
のベルト式無段変速装置で変速された後の回転が入力軸
10よりミッションケース1内に伝達される。このベル
ト式無段変速装置はエンジン61の回転数の上昇に伴っ
て、自動的に増速側へ無断にシフトするように構成され
ている。
【0007】前記入力軸10はエンジン側入力軸64と
走行輪側入力軸65からなり、同一軸線上に配置され
て、エンジン側入力軸64の右端に走行輪側入力軸65
の左端が回転自在に嵌合支持され、両エンジン側入力軸
64と走行輪側入力軸65の間に後述する本発明の調速
機構55が配置されている。前記ミッションケース1内
には、入力軸10、変速出力軸14、アイドル軸20、
シフター軸30、後輪駆動軸26・26が左右平行に横
架され、走行輪側入力軸65上に右側より高速ギヤ1
1、低速ギヤ12、後進ギヤ13が固設されている。前
記変速出力軸14上に右側より高速従動ギヤ16、低速
従動ギヤ17、後進従動ギヤ18が回動自在に支持さ
れ、高速従動ギヤ16と高速ギヤ11とが常時噛合さ
れ、低速従動ギヤ17と低速ギヤ12とが常時噛合され
ている。
【0008】また、前記高速従動ギヤ16と低速従動ギ
ヤ17の間に前進変速用のスライダー19がスプライン
ハブを介して変速出力軸14上に相対回転不能でかつ軸
方向摺動自在に配置されている。図3に示す位置をスラ
イダー19の中立位置とし、この中立位置より紙面右方
向へスライダー19を摺動操作すると、スライダー19
右側面に形成した凸部19aが高速従動ギヤ16左側面
に形成した凹部16aと係合され、高速回転が変速出力
軸14に伝達される。スライダー19を中立位置より紙
面左方向へ摺動操作すると、スライダー19左側面に形
成した凸部19bが低速従動ギヤ17右側面に形成した
凹部17aと係合され、低速回転が変速出力軸14に伝
達される。
【0009】また、前記アイドル軸20上に回動自在に
アイドルギヤ021を遊嵌し、該アイドルギヤ021は
前記後進ギヤ13と前記変速出力軸14上に遊嵌した後
進従動ギヤ18とに噛合させる。前記アイドルギヤ02
1は左右幅が広く形成され、前記後進従動ギヤ18と後
進ギヤ13とを左右に位置をずらして配置でき、後進従
動ギヤ18と後進ギヤ13との外周端部を側面視でラッ
プさせて、コンパクトな配置構成としている。
【0010】また、前記後進従動ギヤ18の側面にも凹
部形成され、該後進従動ギヤ18の左側方に後進用スラ
イダー23がスプラインハブを介して変速出力軸14上
に相対回転不能でかつ軸方向摺動自在に配置され、該後
進用スライダー23の側面には凸部が形成されて、図示
の中立位置より紙面右側に摺動させて前記凹部と凸部を
係合することによって、後進ギヤ13からアイドル軸2
0上のギヤ21及び後進従動ギヤ18を介し、変速出力
軸14を逆転駆動できるようにしている。
【0011】そして、前記スライダー19・23はシフ
ター31・32の先端にそれぞれ係合され、該シフター
31・32はシフター軸30上に摺動自在に外嵌され、
該シフター31・32は突起38・39、変速アーム3
4、変速軸35を介して副変速レバーと連結されてい
る。このようにして副変速装置が構成されている。
【0012】更に、後進用スライダー23の左隣りの前
記変速出力軸14上にギヤ24が固設され、該ギヤ24
に差動装置25のリングギヤ28が噛合され、該差動装
置25を介して変速出力軸14の動力が左右の後輪駆動
軸26・26に伝達される。前記リングギヤ28は差動
装置25を構成するデフケース80外周面に固設され、
リングギヤ28と逆側のデフケース80のボス部上に左
右に摺動自在にデフロックスライダー82が遊嵌されて
いる。該デフロックスライダー82にロックピン81が
固設され、該ロックピン81がデフケース80一側面に
左右方向に摺動自在に挿入され、後輪駆動軸26端部上
のデフギア83に形成した凹部に、前記ロックピン81
端部が挿入自在に支持されている。
【0013】前記デフロックスライダー82の外周に凹
部が形成され、図2に示すデフシフトフォーク84のフ
ォーク爪が係合され、デフシフトフォーク84を介して
デフロックスライダー82が図1の紙面左方に摺動操作
され、ロックピン81端部がデフギア83側部の凹部内
に挿入され、デフケース80がデフギア83を介して後
輪駆動軸26に対して回動不能となり差動装置25がロ
ックされ、左右の後輪駆動軸26・26が差動されるこ
となく同一回転数で駆動される。
【0014】また、前記後輪駆動軸26・26の途中部
には、ディスクブレーキ装置を構成する摩擦板27・2
7・27がスプライン嵌合されている。該摩擦板27外
周側とミッションケース1側面との間には押動板72が
配置されている。該押動板72はミッションケース1下
部に軸支した支軸71の途中部に連動されており、ブレ
ーキ操作に連動してブレーキ操作アーム70が引っ張ら
れ、支軸71が回転すると、支軸71途中部に係合した
押動板72が回転され、カム73を乗り越えようと押動
板72が摩擦板27側に移動して、押動板72とミッシ
ョンケース1内に形成した壁面との間に摩擦板27が押
圧され、後輪駆動軸26が制動される。
【0015】また、前記変速出力軸14の右端はミッシ
ョンケース1より突出してベベルギア46を固設し、該
ベベルギア46を前輪出力ケース45内に収納したベベ
ルギア49・48・51や伝動軸47等を介して前輪出
力軸50に動力を伝える構成としている。
【0016】次に、本発明の調速機構55の構成につい
て図1、図4、図5より説明する。前記入力軸10を構
成するエンジン側入力軸64の右端部の軸心位置には凹
部64cが設けられ、走行輪側入力軸65左端部が回動
自在に挿入され、走行輪側入力軸65がエンジン側入力
軸64と同一軸芯上に相対回動自在に支持されている。
【0017】また、前記エンジン側入力軸64の右端部
には、ディスク状に構成した固定体64aが形成され、
該固定体64aの左側面には、複数の半球状の凹部64
b・64b・・・・が同一円周上に均等に形成される。
【0018】一方、前記走行輪側入力軸65の左側途中
部に、止め板57が固設され、該止め板57の左側にデ
ィスク状に構成した摺動回転体58が走行輪側入力軸6
5上に軸芯方向に摺動自在で、かつ相対回転不能にスプ
ライン嵌合されている。前記摺動回転体58と止め板5
7との間位置に、弾性付勢部材としての皿バネ59・5
9が介装され、摺動回転体58を紙面左側、即ち、固定
体64の方向に摺動するように付勢している。
【0019】前記摺動回転体58の左側面に、前記固定
体64aの凹部64b・64b・・・・と位置を合わせ
てカム溝58a・58a・・・・が形成されている。該
カム溝58aは、図5、図6に示すように、走行輪側入
力軸65の軸芯を中心した円弧状の溝であり、該カム溝
58a・58a・・・・の逆転回転方向側を凹部64b
と等しい半球状とし、正転回転方向側を徐々に細くし
た、略三角形状の溝としている。さらに、凹部64bの
溝深さも正転回転方向側に向かうに従って浅くした傾斜
状としている。
【0020】そして、前記カム溝58a・58a・・・
・と前記凹部64b・64b・・・・の間にカム体とし
ての鋼球56・56・・・が位置され、前記皿バネ59
・59の付勢力によって摺動回転体58が左側に付勢さ
れ、カム溝58aの深部と凹部64b内に鋼球56が完
全に埋没し、摺動回転体58が固定体64aに接近す
る。前記鋼球56はカム溝58aと凹部64bとの間に
挟持されることで係合状態となり、エンジン側入力軸6
4の動力が、鋼球56・56・・・を介して、摺動回転
体58、走行輪側入力軸65に伝達される。尚、前記鋼
球56は、カム溝58aと凹部64bとの間に挟持され
ているが、鋼球56を固定体64aに固設して凸部とす
ることもできる。
【0021】また、前記摺動回転体58の外端部には、
レリーズベアリング60の内輪が固設され、摺動回転体
58と一体的に軸方向に移動できるようにしている。更
に、前記レリーズベアリング60外輪の左側面には、図
5に示す側面視で二股状のコントロールアーム61の遊
端部が係合されている。該コントロールアーム61のボ
ス部がミッションケース1に回動自在に枢支した縦軸6
2に固設されている。該縦軸62の上部はミッションケ
ース1外部に突設され、上端部にアーム63が固設され
ている。該アーム63端部には、ワイヤーやリンク等よ
りなる連動手段の一端が連結され、該連動手段の他端は
エンジンの推力調整手段、つまり、スロットルレバーに
連結されている。
【0022】このような構成において、走行車両を平地
等を走行している場合には、走行輪から大きな負荷がか
かっておらず、従って、エンジン側入力軸64と走行輪
側入力軸65との間にトルクの差が生じず、図6に示す
ように、鋼球56がカム溝58aの深部と凹部64b内
に完全に埋没し、コントロールアーム61は回動されて
いない。
【0023】また、機体が登り坂や圃場等のぬかるんだ
悪路にさしかかり、走行輪に負荷がかかると、その負荷
が副変速装置を介して走行輪側入力軸65に伝達され、
エンジンの動力が伝えられるエンジン側入力軸64との
間にトルクの差が生じる。この差はエンジン側入力軸6
4より走行輪側入力軸65の回転が遅れて、図7に示す
ように、鋼球56がカム溝58a内の傾斜面に沿って浅
部方向に移動し、摺動回転体58及びレリーズベアリン
グ60が紙面右側(矢印A方向)に移動され、コントロ
ールアーム61が縦軸62まわりに回動される。該コン
トロールアーム61の回動に連動してアーム63が回動
され、連動手段を介してエンジンのスロットルレバーが
その負荷トルクに応じてエンジンの回転数を増加するよ
うに変更される。
【0024】よって、走行輪に負荷がかかると、その負
荷トルクに応じて調速機構55が変化して、その変化が
燃料噴射量調整手段を変更して、負荷トルクに応じてエ
ンジンが調速され、下り坂等では減速する度合いが小さ
く、作業時においては速度変化が小さく、また、低回転
で走行しているときにはエンストが生じることがないの
である。
【0025】このようにエンジンの調速機構は、エンジ
ンの動力を変速装置を介して走行輪へ伝達する動力伝達
経路途中の伝動軸において、該伝動軸をエンジン側軸と
走行輪側軸に分割して、該両軸を同一軸心上に配置し、
このエンジン側軸と走行輪側軸の連結部分の各軸上に対
向して、固定体と摺動体を設け、該固定体と摺動体との
当接部分にカム体と該カム体を係合するカム溝を設け、
該摺動体を固定体側に付勢するとともに、摺動体にエン
ジンの推力調整手段を連動連係したものである。よっ
て、走行輪からの負荷が大きくなり、エンジン側の軸と
走行輪側の軸との間にトルク差が生じると、摺動体が摺
動して、その負荷トルクの大きさに応じてエンジンの推
力調整手段が変更されて、エンジン回転が増加され、下
り坂等では減速する度合いが小さくオーバーランが阻止
されるようになり、また、作業時においては速度変化が
小さく、精度良く作業ができるようになる。また、低回
転で走行しているときにはエンストが生じることが殆ど
なくなり、低回転から高回転までの広い範囲でトルク変
動に対して調速することができるようになったのであ
る。但し、前記調速機構55は機械的な連動手段を介し
てエンジンの推力調整手段を変更する構成としている
が、摺動回転体58の移動量をセンサーで検知し、該セ
ンサーをコントローラと接続し、該コントローラにはス
ロットルバルブを変更するアクチュエーターと接続し
て、電気的に負荷トルクに応じて推力を調整する構成と
することもできる。また、本実施例では調速機構55を
入力軸10上に配置しているが、エンジンから差動装置
までの間の動力伝達経路途中の軸であればどこでも良
く、変速出力軸14上に配置することも可能である。
【0026】
【発明の効果】本発明は以上の如く構成したので、次の
ような効果を奏するのである。すなわち、エンジンの動
力を変速装置を介して走行輪へ伝達する動力伝達経路途
中の伝動軸において、該伝動軸をエンジン側軸と走行輪
側軸に分割して、該両軸を同一軸心上に配置し、この
エンジン側軸と走行輪側軸との間に負荷によるトルク差
が生じるとコントロールアームを回動させるように構成
すると共に、該コントロールアームにエンジンの推力調
整手段を連動連係し、該コントロールアームの回動量に
比例してエンジンの回転数を増加させるようにしたの
で、走行輪からの負荷が大きくなり、エンジン側の軸と
走行輪側の軸との間に負荷によるトルク差が生じると、
コントロールアームが回動して、その負荷トルクの大き
さに応じてエンジンの推力調整手段が変更されて、該コ
ントロールアームの回動量に比例してエンジン回転が増
加され、下り坂等では減速する度合いが小さくオーバー
ランが阻止されるようになり、また、作業時においては
速度変化が小さく、精度良く作業ができるようになる。
また、低回転で走行しているときにはエンストが生じる
ことが殆どなくなり、低回転から高回転までの広い範囲
でトルク変動に対して調速することができるようになっ
たのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の調速機構を装備したミッションケース
の後面断面図である。
【図2】同じく側面断面図である。
【図3】副変速装置部分の拡大後面断面図である。
【図4】本発明の調速機構の拡大後面断面図である。
【図5】同じく側面断面図である。
【図6】本発明の調速機構のエンジン側入力軸と走行輪
側入力軸との連動状態を示す後面図一部断面図である。
【図7】軸間にトルク差が生じた場合を示す後面図一部
断面図である。
【符号の説明】 1 ミッションケース 64 エンジン側入力軸 65 走行輪側入力軸 56 鋼球(凸部) 58 摺動回転体 58a カム溝
【手続補正書】
【提出日】平成11年7月22日(1999.7.2
2)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 エンジン調速機構
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、走行駆動伝達経路
の伝動軸上に配置されるエンジンの調速機構の構成に関
する。
【0002】
【従来の技術】従来の運搬車や農作業車等の走行車両に
おいて、エンジンの動力をミッションケース内に伝達し
て、主変速装置や副変速装置等によって変速して、走行
輪を駆動するようにしており、一方、エンジンにはアク
セルレバーの回動に比例して開閉されるスロットルバル
ブや、出力軸の回転数及び負荷に応じて燃料噴射量を調
整する調速機が配置され、該調速機は例えばカムシャフ
トに取り付けたフライウェイトの遠心力を利用して調速
作用を行っていたのである。また、負荷をコントローラ
により演算して、該コントローラより燃料噴射量を制御
する電気式ガバナ機構も公知となっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の調速機
はエンジンの出力軸の回転数の低下を負荷と判断して、
その回転数に応じて燃料噴射量を調整するようにしてい
たので、走行輪側からの負荷トルクは検出していないの
である。よって、走行速度が落ちてからでないと、スロ
ットルバルブが開かれず、反応が遅れてしまうのであ
る。つまり、例えば、坂道にさしかかったときに、負荷
が増加して回転数が減少して、調速機によってスロット
ルバルブを開くように作動させてエンジンの回転数が上
がるようにしていたので、タイムラグが生じていた。ま
た、エンジンの回転数の低いときの走行時と、エンジン
の回転数が高い時の走行時で、負荷が変動した場合、遠
心力を利用した調速機では、回転数が高い場合は調速で
きるが、回転数が低いと調速できずエンストしてしまう
ことがあった。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の解決しようとす
る課題は以上の如くであり、次に該課題を解決するため
の手段を説明する。すなわち、エンジンの動力を変速装
置を介して走行輪へ伝達する動力伝達経路途中の伝動軸
において、該伝動軸をエンジン側軸と走行輪側軸とに分
割して、該両軸を同一軸心上に配置するとともに、エン
ジン側軸から走行輪側軸へ伝達するトルクの大きさに応
じて移動する移動体を設け、該移動体をエンジンの推力
調整手段に連動連係したものである。
【0005】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を説明
する。図1は本発明の調速機構を装備したミッションケ
ースの後面断面図、図2は同じく側面断面図、図3は副
変速装置部分の拡大後面断面図、図4は本発明の調速機
構の拡大後面断面図、図5は同じく側面断面図、図6は
本発明の調速機構のエンジン側入力軸と走行輪側入力軸
との連動状態を示す後面図一部断面図、図7は軸間にト
ルク差が生じた場合を示す後面図一部断面図である。
【0006】まず、本発明の調速機構を装備したミッシ
ョンケース1の内部構成について図1、図2を用いて説
明する。前記ミッションケース1は、図1の紙面に向か
って左側のケース部1Lと右側のケース部1Rとより左
右に二つ割に形成され、重ね合わせた内部にトランスミ
ッション等が収納されている。前記ミッションケース1
の上下途中部に左右方向に沿う入力軸10が軸支されて
いる。該入力軸10の一側(本実施例では左側)をケー
ス1Lの左側面より外方に突出させ、該入力軸10上に
従動プーリー11を嵌合している。該従動プーリー11
は主変速装置を構成するベルト式無段変速装置の従動側
に配置した割プーリーであり、エンジンからの動力がこ
のベルト式無段変速装置で変速された後の回転が入力軸
10よりミッションケース1内に伝達される。このベル
ト式無段変速装置はエンジン61の回転数の上昇に伴っ
て、自動的に増速側へ無断にシフトするように構成され
ている。
【0007】前記入力軸10はエンジン側入力軸64と
走行輪側入力軸65からなり、同一軸線上に配置され
て、エンジン側入力軸64の右端に走行輪側入力軸65
の左端が回転自在に嵌合支持され、両エンジン側入力軸
64と走行輪側入力軸65の間に後述する本発明の調速
機構55が配置されている。前記ミッションケース1内
には、入力軸10、変速出力軸14、アイドル軸20、
シフター軸30、後輪駆動軸26・26が左右平行に横
架され、走行輪側入力軸65上に右側より高速ギヤ1
1、低速ギヤ12、後進ギヤ13が固設されている。前
記変速出力軸14上に右側より高速従動ギヤ16、低速
従動ギヤ17、後進従動ギヤ18が回動自在に支持さ
れ、高速従動ギヤ16と高速ギヤ11とが常時噛合さ
れ、低速従動ギヤ17と低速ギヤ12とが常時噛合され
ている。
【0008】また、前記高速従動ギヤ16と低速従動ギ
ヤ17の間に前進変速用のスライダー19がスプライン
ハブを介して変速出力軸14上に相対回転不能でかつ軸
方向摺動自在に配置されている。図3に示す位置をスラ
イダー19の中立位置とし、この中立位置より紙面右方
向へスライダー19を摺動操作すると、スライダー19
右側面に形成した凸部19aが高速従動ギヤ16左側面
に形成した凹部16aと係合され、高速回転が変速出力
軸14に伝達される。スライダー19を中立位置より紙
面左方向へ摺動操作すると、スライダー19左側面に形
成した凸部19bが低速従動ギヤ17右側面に形成した
凹部17aと係合され、低速回転が変速出力軸14に伝
達される。
【0009】また、前記アイドル軸20上に回動自在に
アイドルギヤ021を遊嵌し、該アイドルギヤ021は
前記後進ギヤ13と前記変速出力軸14上に遊嵌した後
進従動ギヤ18とに噛合させる。前記アイドルギヤ02
1は左右幅が広く形成され、前記後進従動ギヤ18と後
進ギヤ13とを左右に位置をずらして配置でき、後進従
動ギヤ18と後進ギヤ13との外周端部を側面視でラッ
プさせて、コンパクトな配置構成としている。
【0010】また、前記後進従動ギヤ18の側面にも凹
部形成され、該後進従動ギヤ18の左側方に後進用スラ
イダー23がスプラインハブを介して変速出力軸14上
に相対回転不能でかつ軸方向摺動自在に配置され、該後
進用スライダー23の側面には凸部が形成されて、図示
の中立位置より紙面右側に摺動させて前記凹部と凸部を
係合することによって、後進ギヤ13からアイドル軸2
0上のギヤ21及び後進従動ギヤ18を介し、変速出力
軸14を逆転駆動できるようにしている。
【0011】そして、前記スライダー19・23はシフ
ター31・32の先端にそれぞれ係合され、該シフター
31・32はシフター軸30上に摺動自在に外嵌され、
該シフター31・32は突起38・39、変速アーム3
4、変速軸35を介して副変速レバーと連結されてい
る。このようにして副変速装置が構成されている。
【0012】更に、後進用スライダー23の左隣りの前
記変速出力軸14上にギヤ24が固設され、該ギヤ24
に差動装置25のリングギヤ28が噛合され、該差動装
置25を介して変速出力軸14の動力が左右の後輪駆動
軸26・26に伝達される。前記リングギヤ28は差動
装置25を構成するデフケース80外周面に固設され、
リングギヤ28と逆側のデフケース80のボス部上に左
右に摺動自在にデフロックスライダー82が遊嵌されて
いる。該デフロックスライダー82にロックピン81が
固設され、該ロックピン81がデフケース80一側面に
左右方向に摺動自在に挿入され、後輪駆動軸26端部上
のデフギア83に形成した凹部に、前記ロックピン81
端部が挿入自在に支持されている。
【0013】前記デフロックスライダー82の外周に凹
部が形成され、図2に示すデフシフトフォーク84のフ
ォーク爪が係合され、デフシフトフォーク84を介して
デフロックスライダー82が図1の紙面左方に摺動操作
され、ロックピン81端部がデフギア83側部の凹部内
に挿入され、デフケース80がデフギア83を介して後
輪駆動軸26に対して回動不能となり差動装置25がロ
ックされ、左右の後輪駆動軸26・26が差動されるこ
となく同一回転数で駆動される。
【0014】また、前記後輪駆動軸26・26の途中部
には、ディスクブレーキ装置を構成する摩擦板27・2
7・27がスプライン嵌合されている。該摩擦板27外
周側とミッションケース1側面との間には押動板72が
配置されている。該押動板72はミッションケース1下
部に軸支した支軸71の途中部に連動されており、ブレ
ーキ操作に連動してブレーキ操作アーム70が引っ張ら
れ、支軸71が回転すると、支軸71途中部に係合した
押動板72が回転され、カム73を乗り越えようと押動
板72が摩擦板27側に移動して、押動板72とミッシ
ョンケース1内に形成した壁面との間に摩擦板27が押
圧され、後輪駆動軸26が制動される。
【0015】また、前記変速出力軸14の右端はミッシ
ョンケース1より突出してベベルギア46を固設し、該
ベベルギア46を前輪出力ケース45内に収納したベベ
ルギア49・48・51や伝動軸47等を介して前輪出
力軸50に動力を伝える構成としている。
【0016】次に、本発明の調速機構55の構成につい
て図1、図4、図5より説明する。前記入力軸10を構
成するエンジン側入力軸64の右端部の軸心位置には凹
部64cが設けられ、走行輪側入力軸65左端部が回動
自在に挿入され、走行輪側入力軸65がエンジン側入力
軸64と同一軸芯上に相対回動自在に支持されている。
【0017】また、前記エンジン側入力軸64の右端部
には、ディスク状に構成した固定体64aが形成され、
該固定体64aの左側面には、複数の半球状の凹部64
b・64b・・・・が同一円周上に均等に形成される。
【0018】一方、前記走行輪側入力軸65の左側途中
部に、止め板57が固設され、該止め板57の左側にデ
ィスク状に構成した摺動回転体58が走行輪側入力軸6
5上に軸芯方向に摺動自在で、かつ相対回転不能にスプ
ライン嵌合されている。前記摺動回転体58と止め板5
7との間位置に、弾性付勢部材としての皿バネ59・5
9が介装され、摺動回転体58を紙面左側、即ち、固定
体64の方向に摺動するように付勢している。
【0019】前記摺動回転体58の左側面に、前記固定
体64aの凹部64b・64b・・・・と位置を合わせ
てカム溝58a・58a・・・・が形成されている。該
カム溝58aは、図5、図6に示すように、走行輪側入
力軸65の軸芯を中心した円弧状の溝であり、該カム溝
58a・58a・・・・の逆転回転方向側を凹部64b
と等しい半球状とし、正転回転方向側を徐々に細くし
た、略三角形状の溝としている。さらに、凹部64bの
溝深さも正転回転方向側に向かうに従って浅くした傾斜
状としている。
【0020】そして、前記カム溝58a・58a・・・
・と前記凹部64b・64b・・・・の間にカム体とし
ての鋼球56・56・・・が位置され、前記皿バネ59
・59の付勢力によって摺動回転体58が左側に付勢さ
れ、カム溝58aの深部と凹部64b内に鋼球56が完
全に埋没し、摺動回転体58が固定体64aに接近す
る。前記鋼球56はカム溝58aと凹部64bとの間に
挟持されることで係合状態となり、エンジン側入力軸6
4の動力が、鋼球56・56・・・を介して、摺動回転
体58、走行輪側入力軸65に伝達される。尚、前記鋼
球56は、カム溝58aと凹部64bとの間に挟持され
ているが、鋼球56を固定体64aに固設して凸部とす
ることもできる。
【0021】また、前記摺動回転体58の外端部には、
レリーズベアリング60の内輪が固設され、摺動回転体
58と一体的に軸方向に移動できるようにしている。更
に、前記レリーズベアリング60外輪の左側面には、図
5に示す側面視で二股状のコントロールアーム61の遊
端部が係合されている。該コントロールアーム61のボ
ス部がミッションケース1に回動自在に枢支した縦軸6
2に固設されている。該縦軸62の上部はミッションケ
ース1外部に突設され、上端部にアーム63が固設され
ている。該アーム63端部には、ワイヤーやリンク等よ
りなる連動手段の一端が連結され、該連動手段の他端は
エンジンの推力調整手段、つまり、スロットルレバーに
連結されている。
【0022】このような構成において、走行車両を平地
等を走行している場合には、走行輪から大きな負荷がか
かっておらず、従って、エンジン側入力軸64と走行輪
側入力軸65との間にトルクの差が生じず、図6に示す
ように、鋼球56がカム溝58aの深部と凹部64b内
に完全に埋没し、コントロールアーム61は回動されて
いない。
【0023】また、機体が登り坂や圃場等のぬかるんだ
悪路にさしかかり、走行輪に負荷がかかると、その負荷
が副変速装置を介して走行輪側入力軸65に伝達され、
エンジンの動力が伝えられるエンジン側入力軸64との
間にトルクの差が生じる。この差はエンジン側入力軸6
4より走行輪側入力軸65の回転が遅れて、図7に示す
ように、鋼球56がカム溝58a内の傾斜面に沿って浅
部方向に移動し、摺動回転体58及びレリーズベアリン
グ60が紙面右側(矢印A方向)に移動され、コントロ
ールアーム61が縦軸62まわりに回動される。該コン
トロールアーム61の回動に連動してアーム63が回動
され、連動手段を介してエンジンのスロットルレバーが
その負荷トルクに応じてエンジンの回転数を増加するよ
うに変更される。
【0024】よって、走行輪に負荷がかかると、その負
荷トルクに応じて調速機構55が変化して、その変化が
燃料噴射量調整手段を変更して、負荷トルクに応じてエ
ンジンが調速され、下り坂等では減速する度合いが小さ
く、作業時においては速度変化が小さく、また、低回転
で走行しているときにはエンストが生じることがないの
である。
【0025】このようにエンジンの調速機構は、エンジ
ンの動力を変速装置を介して走行輪へ伝達する動力伝達
経路途中の伝動軸において、該伝動軸をエンジン側軸と
走行輪側軸とに分割して、該両軸を同一軸心上に配置
るとともに、エンジン側軸から走行輪側軸へ伝達するト
ルクの大きさに応じて移動する移動体を設け、該移動体
エンジンの推力調整手段に連動連係したものである。
よって、走行輪にかかる負荷が大きくなるにつれて、エ
ンジン側軸から走行輪側軸へ伝達されるトルクが大きく
なると、該トルクに応じて該移動体が移動し、その移動
に応じてエンジンの推力調整手段が変更されて、エン
ジン回転が増加され、下り坂等では減速する度合いが小
さくオーバーランが阻止されるようになり、また、作業
時においては速度変化が小さく、精度良く作業ができる
ようになる。また、低回転で走行しているときにはエン
ストが生じることが殆どなくなり、低回転から高回転ま
での広い範囲で負荷変動に対して調速することができる
ようになったのである。但し、前記調速機構55は機械
的な連動手段を介してエンジンの推力調整手段を変更す
る構成としているが、摺動回転体58の移動量をセンサ
ーで検知し、該センサーをコントローラと接続し、該コ
ントローラにはスロットルバルブを変更するアクチュエ
ーターと接続して、電気的に負荷に応じて推力を調整す
る構成とすることもできる。また、本実施例では調速機
構55を入力軸10上に配置しているが、エンジンから
差動装置までの間の動力伝達経路途中の軸であればどこ
でも良く、変速出力軸14上に配置することも可能であ
る。
【0026】
【発明の効果】本発明は以上の如く構成したので、次の
ような効果を奏するのである。すなわち、エンジンの動
力を変速装置を介して走行輪へ伝達する動力伝達経路途
中の伝動軸において、該伝動軸をエンジン側軸と走行輪
側軸とに分割して、該両軸を同一軸心上に配置するとと
もに、エンジン側軸から走行輪側軸へ伝達するトルクの
大きさに応じて移動する移動体を設け、該移動体をエン
ジンの推力調整手段に連動連係したので、走行輪にかか
る負荷に応じてエンジンの回転数を増加させることがで
、下り坂等では減速する度合いが小さくオーバーラン
が阻止されるようになり、また、作業時においては速度
変化が小さく、精度良く作業ができるようになる。ま
た、低回転で走行しているときにはエンストが生じるこ
とが殆どなくなり、低回転から高回転までの広い範囲で
負荷変動に対して調速することができるようになったの
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の調速機構を装備したミッションケース
の後面断面図である。
【図2】同じく側面断面図である。
【図3】副変速装置部分の拡大後面断面図である。
【図4】本発明の調速機構の拡大後面断面図である。
【図5】同じく側面断面図である。
【図6】本発明の調速機構のエンジン側入力軸と走行輪
側入力軸との連動状態を示す後面図一部断面図である。
【図7】軸間にトルク差が生じた場合を示す後面図一部
断面図である。
【符号の説明】 1 ミッションケース 64 エンジン側入力軸 65 走行輪側入力軸 56 鋼球(凸部) 58 摺動回転体 58a カム溝

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エンジンの動力を変速装置を介して走行
    輪へ伝達する動力伝達経路途中の伝動軸において、該伝
    動軸をエンジン側軸と走行輪側軸に分割して、該両軸を
    同一軸心上に配置し、このエンジン側軸と走行輪側軸の
    連結部分の各軸上に対向して、固定体と摺動体を設け、
    該固定体と摺動体との当接部分にカム体と該カム体を係
    合するカム溝を設け、該摺動体を固定体側に付勢すると
    ともに、摺動体にエンジンの推力調整手段を連動連係し
    たことを特徴とするエンジン調速機構。
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