JP2000038604A - 焼結体の造形的な製造方法 - Google Patents

焼結体の造形的な製造方法

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JP2000038604A
JP2000038604A JP11122662A JP12266299A JP2000038604A JP 2000038604 A JP2000038604 A JP 2000038604A JP 11122662 A JP11122662 A JP 11122662A JP 12266299 A JP12266299 A JP 12266299A JP 2000038604 A JP2000038604 A JP 2000038604A
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enzyme
decomposing
resin
organic binder
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Shizue Ito
静枝 伊藤
Hisato Hiraishi
久人 平石
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Citizen Watch Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 粉末成形法や粉末射出成形法では、脱バイン
ダ処理において変形が起こりやすい、あるいは、脱バイ
ンダ処理にともなう環境負荷の増大や、安全性の低下と
言う問題がある。 【解決手段】 有機バインダ成分として生分解性樹脂を
含有するコンパウンドを用いて成形体を形成し、生分解
性樹脂を分解する作用を発現する分解酵素を添加した水
中に成形体を浸漬して脱バインダ処理を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は有機物のバインダ
と無機物の微粉末との混合物であるコンパウンドをプレ
ス成形や射出成形によって成形体とし、これに脱バイン
ダ処理と焼結処理とを施して前記成形体の三次元的な形
状の帰結としての所定形状の焼結体を得るという製造方
法にかかわる。
【0002】
【従来の技術】無機物の微粉末を焼結して目的とする形
状の製品を作製する方法として粉末成形法や粉末射出成
形法がある。このうち、三次元の複雑な形状の製品を効
率よくかつ高い寸法精度で形成する場合には粉末射出成
形法が特に有効である。
【0003】これらの方法の第1段階では、アルミニウ
ムやシリコンなどの酸化物や窒化物あるいは鉄、ステン
レス、チタン、タングステンなどの単金属や合金の微粉
末と高分子樹脂を主体とする有機物のバインダとを混合
してコンパウンドを作製する。
【0004】第2段階では、プレス機を用いてコンパウ
ンドを金型中で加圧成形するか、あるいは射出成形機を
用いてコンパウンドを加熱し金型中に加圧注入して成形
体を形成する。
【0005】第3段階では、大気中あるいは特定の管理
された雰囲気下で加熱などの方法で成形体から大半のバ
インダを除去する脱バインダ処理を施す。この処理を行
った後の成形体を脱脂体と称する。なお、脱バインダ処
理は複数の段階的な処理としてこれを行う場合がある。
【0006】第4段階では、大気中あるいは別の特定の
管理された雰囲気下で脱脂体に高温の焼結処理を行い目
的の形状の焼結体を得る。なお、第3段階の一部あるい
は全部と第4段階とを同一の炉で連続的に行う場合もあ
る。
【0007】脱バインダ処理としては多くの方法が知ら
れている。例えば、大気中で加熱する方法が特開昭58
−126901号公報において開示されており、また、
減圧雰囲気下で加熱する方法が米国特許第512232
6号において開示されている。
【0008】さらにまた、有機溶剤によりバインダを抽
出する方法が特開昭57−26105号公報において開
示されており、ポリオキシメチレンをバインダとして用
い、酸あるいは三弗化硼素を含有した雰囲気下でバイン
ダを分解し、除去する方法が特開平3−170624号
公報において開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】粉末成形法や粉末射出
成形法で焼結体を形成する方法での大きな問題として、
焼結体がしばしば変形を起こし、当初予定していた形状
にならないことがある。その最大の原因は、脱バインダ
処理の際の加熱でバインダが流動性を帯びて変形するこ
とにある。従って、前記の大気中や減圧雰囲気下での加
熱による脱バインダ処理では原理的にこのような変形が
起こりやすいと言う問題がある。
【0010】一方、前記の有機溶剤による抽出あるいは
酸や三弗化硼素を含有した雰囲気下でバインダを分解除
去する脱脂方法によれば、加熱することでのバインダ流
動性上昇による変形問題は低減される。しかしながら、
大量の有機溶剤を使用したり、酸や三弗化硼素などの危
険を伴う物質を使用するという環境や安全上の別の新た
な問題が発生する。
【0011】〔発明の目的〕本発明の目的は粉末成形法
や粉末射出成形法での脱バインダ処理にかかわる前記の
様々な問題を解決し、環境負荷が少なく、安全性が高
く、しかも変形のない高精度の製品が得られるような焼
結体の造形的な製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の焼結体の造形的な製造方法では下記記載の
構成を採用する。
【0013】すなわち、無機微粉末と有機バインダ成分
である生分解性樹脂とを混合してコンパウンドを作製す
る工程、このコンパウンドを成形して成形体を形成する
工程、前記生分解性樹脂を分解する作用を発現する分解
酵素を含む水中に前記成形体を保持し脱脂体を得る工
程、この脱脂体を加熱して焼結体を得る工程、とよりな
ることを特徴とする。
【0014】また、上記構成に加えて、有機バインダ成
分として少なくとも二種類の生分解性樹脂を使用し、脱
脂体を得る工程が、第一の生分解性樹脂を分解する作用
を発現する第一の分解酵素を含む水中に成形体を保持し
て第一の生分解性樹脂を分解除去した後、第二の生分解
性樹脂を分解する作用を発現する第二の分解酵素を含む
水中に成形体を保持して第二の生分解性樹脂を分解除去
することを特徴とする。
【0015】また、有機バインダとして用いる第一の生
分解性樹脂と第二の生分解性樹脂において、分解の最適
温度および最適水素イオン濃度がほぼ同じ場合には、脱
脂体を得る工程が、第一の生分解性樹脂を分解する作用
を発現する第一の分解酵素と第二の生分解性樹脂を分解
する作用を発現する第二の分解酵素をともに含む水中に
成形体を保持して、第一の生分解性樹脂と第二の生分解
性樹脂を同時に分解除去することを特徴とする。
【0016】さらに、非生分解性樹脂が有機バインダ成
分として含まれることを特徴とする。また、生分解性樹
脂がエステル樹脂であることを特徴とする。また、低分
子系の有機物が有機バインダ成分として含まれることを
特徴とする。
【0017】さらにまた、脱脂体を得る工程で使用する
分解酵素を含む水を酵素活性が最大値を示す温度または
酵素濃度に設定することを特徴とする。また、分解酵素
を含む水を緩衝液を用いて酵素活性が最大値を示す水素
イオン濃度に設定することを特徴とする。さらにまた、
分解酵素を含む水が滅菌されていることを特徴とする。
【0018】〔作用〕本発明によれば、脱脂体を得る工
程で分解酵素が生分解性樹脂をモノマー、ダイマーなど
の水溶性成分へと分解し、これらの水溶性成分を水中に
溶出して除去するため、加熱により有機バインダが流動
性を帯びて脱脂体が変形しまうことがない。さらに、脱
バインダ処理に用いる水や分解酵素、あるいは分解生成
物は環境負荷が低く安全性が高い。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施するための最
良の形態における焼結体の造形的な製造方法について詳
しく説明する。なお、以下の説明では精密な三次元形状
の造形という点で優位性のある粉末射出成形法に焦点を
絞って説明するが、粉末成形法でも同様の議論ができる
ことは明らかである。
【0020】本発明においては無機微粉末としてアルミ
ニウムやシリコンなどの酸化物や窒化物の微粉末、ある
いは鉄、ステンレス、チタン、タングステンなどの単金
属や合金の微粉末を用いる。粉末の大きさは0.1〜1
00μmであり、一般に数μmから数十μm程度の比較
的細かい粉末が好ましい大きさである。
【0021】本発明に用いる有機バインダは、少なくと
も一種類の生分解性を有する樹脂を成分とするものであ
り、このような生分解性樹脂としては脂肪族ポリエステ
ルであるポリカプロラクトン、ポリ乳酸、グリコールと
脂肪族ジカルボン酸の共重合体、ポリヒドロキシアルカ
ノエートなどがある。また、芳香脂肪族ポリエステルや
脂肪族ポリエステルアミドなども同様に用いることがで
きる。さらに、粉末射出成形を考えたときには生分解性
樹脂であると共に熱可塑性樹脂でもあることが極めて好
ましい。前記の脂肪族ポリエステル、芳香脂肪族ポリエ
ステル、脂肪族ポリエステルアミドではいずれもこの両
方の性質を有するものが得られる。
【0022】本発明において、比較的単純形状の部品を
製造する際には、有機バインダ成分として一種類の生分
解性樹脂を使用すればよいが、複雑形状部品を製造する
際には、上記の数種類の生分解性樹脂を任意に組み合わ
せて使用することが好ましい。複数の生分解性樹脂を使
用することにより、有機バインダ成分の選択肢が広が
り、成形性、保形性に優れたコンパウンドを作製するこ
とができる。複雑形状部品を製造する場合、流動性を付
与する成分のみでは、成形体の強度不足により成形体の
取り扱い時にキズや割れが発生する。一方、成形体に強
度を付与する成分のみでは、コンパウンドの流動性を確
保できず成形不良が発生する。本発明において、成形体
強度の確保のためには、グリコールと脂肪族ジカルボン
酸の共重合体、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリ乳
酸などを用いることが好ましい。具体的には、ポリエチ
レンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエ
チレンアジペート、ポリブチレンアジペートおよびこれ
らの共重合体、ポリヒドロキシプロピオン酸、ポリヒド
ロキシブタン酸、ポリヒドロキシペンタン酸およびこれ
らの共重合体などを用いることができる。また、コンパ
ウンドの流動性確保のためには、ポリカプロラクトンな
どを用いることが好ましい。
【0023】また、有機バインダには、ポリエチレン、
ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン−酢酸ビニル
共重合体、アタクチックポリプロピレン、ポリブチルメ
タクリレートなどの生分解性を有さない樹脂を添加成分
として加えることが好ましい。この添加成分は、後に述
べる脱バインダ処理で生分解性樹脂を除去して得られる
脱脂体に残存する。この残存した非生分解性樹脂により
脱脂体の機械的強度が保持され、脱脂体の変形や崩壊が
防止できる。
【0024】さらにまた、パラフィンワックス、カルナ
バワックス、ステアリン酸、ジブチルフタレートなどの
低分子系の有機物を添加物として加えても良い。これら
には、無機微粉末と有機バインダを混合して得られるコ
ンパウンドの流動性を良くし、射出成形性を向上させる
効果がある。
【0025】ここで、本発明における有機バインダ中に
含まれる非生分解性樹脂の占める割合は全有機バインダ
の20重量%以下とするのが好ましい。20重量%を超
えると非生分解性樹脂を加熱分解によって除去する際に
自重変形が生じ、寸法精度低下の原因となる。
【0026】次に、以上の無機微粉末と有機バインダと
を加圧ニーダー等を用いて混練してコンパウンドを作製
する。混練後は必要に応じてペレタイザー等を利用して
造粒する。
【0027】続いて射出成形機を用い、必要に応じて加
熱し流動化したコンパウンドを金型中に射出し所望の形
状の成形体を得る。
【0028】次の工程は脱バインダ処理であり、成形体
中に含まれる有機バインダの全部あるいはその一部分を
除去する処理である。こうして得られるのが脱脂体であ
り、必然的に脱脂体は有機バインダの一部分が残存した
ものをも含んだ呼称となる。すなわち、焼結がある程度
進行するまでの間の形状保持のために、無機微粉末の結
合材として有機バインダの残存が必要だからである。従
って、厳密には脱バインダ処理と焼結処理との区分は困
難であり、ここでは明確に有機バインダを除去すること
を目的とした独立した処理だけを脱バインダ処理と呼ぶ
こととする。
【0029】さて、成形体への以下の脱バインダ処理は
本発明における重要な工程である。ここでは有機バイン
ダに含まれる生分解性樹脂を分解する作用を有する少な
くとも一種類の分解酵素が添加された水中に成形体を浸
漬する。浸漬時間を十分にとれば生分解性樹脂は分解酵
素によりほぼ完全に水溶性成分に分解され、水中に溶出
する。この結果、成形体中に含まれる有機バインダの内
の生分解性樹脂が除去され脱脂体が得られることにな
る。
【0030】ここで用いる分解酵素は、土壌中、海水
中、湖水中などから単離された種々の菌体から得られ
る。まず菌体を培養液中で増殖させた後、所望の炭素源
を含む培養液中で分解酵素を分泌させる。分解酵素は、
この培養液の上澄みを遠心分離し、液体クロマトグラフ
ィー等により精製して得られる。あるいは、あらかじめ
精製された市販の分解酵素を用いることも可能である。
こうして単離精製した分解酵素を水に添加して前記の脱
バインダ処理を実施する。また分解酵素の単離精製を省
略し、培養液の上澄みを水に添加して用いる簡便法も実
施可能である。さらに、より簡便には菌体を水に直接添
加して用いることも可能である。ただし、生分解性樹脂
の分解を正確に制御するためには単離精製した分解酵素
の活性を測定し、計量して用いるのが最も好ましいこと
は言うまでもない。
【0031】この脱バインダ処理を安定して効率よく実
施するために、水温、水素イオン濃度および酵素濃度を
一定に保つことが好ましい。酵素活性が最大となるよう
な最適条件は用いる分解酵素の種類とその活性にもよる
が、一般的には水温30〜40℃およびpH7〜8程
度、酵素濃度は数μg/mLから数mg/mLである。
このため温調機により水温を制御すると共に緩衝液で水
素イオン濃度を一定に保ち、最適酵素濃度となるように
分解酵素の溶液を調製する。さらに、分解酵素の活性を
維持するために脱バインダ処理に用いる水は、オートク
レーブ等を用いて加熱、加圧滅菌して用いる。また、脱
バインダ処理は、緩衝液を穏やかに撹拌するか、容器を
緩やかに揺動しながら行うのが好ましい。
【0032】生分解性樹脂はその種類によって、それを
分解する作用を発現する酵素の種類、および脱バインダ
処理時の最適温度、水素イオン濃度、酵素濃度が異な
る。したがって、有機バインダとして複数の生分解性樹
脂を用いた場合には、それぞれの樹脂に対して適した分
解条件で脱脂を行わなければならない。
【0033】ここで、有機バインダとして用いる第一の
生分解性樹脂と第二の生分解性樹脂において、分解の最
適温度あるいは分解最適水素イオン濃度がそれぞれ異な
る場合には、まず、第一の生分解性樹脂を分解する作用
を発現する酵素1を含み、最適温度、最適水素イオン濃
度に設定した水中に成形体を保持して、第一の生分解性
樹脂を分解除去した後、さらに第二の生分解性樹脂を分
解する作用を発現する酵素2を含み、最適温度、最適水
素イオン濃度に設定した水中に成形体を保持して第二の
生分解性樹脂を分解除去する。ここで、第一の生分解性
樹脂と第二の生分解性樹脂は任意に選択することができ
るが、流動性付与成分を分解除去した後、保形性成分を
分解除去することが好ましい。
【0034】一方、有機バインダとして用いる第一の生
分解性樹脂と第二の生分解性樹脂において、分解の最適
温度および最適水素イオン濃度がほぼ同じ場合には、第
一の生分解性樹脂を分解する作用を発現する酵素1と第
二の生分解性樹脂を分解する作用を発現する酵素2を共
に含み、最適温度、最適水素イオン濃度に設定した水中
に成形体を保持して、第一の生分解性樹脂および第二の
生分解性樹脂を同時に分解除去する。本手法では、同時
に複数の生分解性樹脂を分解除去できるため脱脂効率も
向上する。また、3種類以上の生分解性樹脂を用いた場
合も上に示した手法が適用できることは明らかである。
【0035】以上のような脱バインダ処理を行って脱脂
体が得られる。脱脂体は無機微粉末と成形体に残存した
少量の有機バインダによって形状が保持される。この場
合の残存有機バインダ量は、有機バインダを生分解性樹
脂のみで構成した場合には脱バインダ処理の条件(温
度、時間、酵素濃度など)を制御し、形状保持に必要な
量を残すようにする。しかしながら、こうした制御はか
なり微妙な管理が必要で工業的には困難性が大きい。
【0036】この為、脱バインダ処理では分解しない非
生分解性樹脂を添加し、この添加樹脂を残存させて脱脂
体の形状保持機能を持たせることがより好ましい。
【0037】生分解性樹脂を分解酵素で分解し、成形体
から水中に抽出除去して得られた脱脂体は水洗して乾燥
する。無機微粉末として鉄やチタンなどの酸化されやす
い材料を用いる場合には、乾燥を窒素やアルゴンなどの
不活性雰囲気中で行ない極力酸化を防止することが好ま
しい。
【0038】最後に、乾燥した脱脂体を加熱して焼結体
とする処理を行う。この場合、まず脱脂体に残存した有
機バインダを昇華あるいは加熱と酸化による分解などで
除去してから、さらに昇温し無機微粉末の焼結を行う。
従って、残存有機バインダを除去する前半の工程は脱バ
インダ処理の一部とも言える。
【0039】この焼結処理についての温度や雰囲気の条
件は主に無機微粉末の性質に応じて適宜選択する。ちな
みに雰囲気の条件としては、圧力では大気圧、減圧ある
いは加圧、また、雰囲気ガスとしては不活性ガス、酸化
性ガスあるいは還元性ガスなどである。
【0040】以上の一連の工程を経て所望の形状の焼結
体が得られる。この際、脱バインダ処理では有機バイン
ダを、その熱変形温度より低温で、酵素により分解し除
去するので有機バインダの流動性に起因する変形を防止
できる。しかも脱バインダ処理の処理液は水であり、さ
らに有機バインダからの水溶性分解生成物および一般に
存在する分解酵素はともに人体や自然環境には実質的に
無害であり、この脱バインダ処理は環境負荷が低く安全
性が高いという大きな利点を有している。
【0041】
【実施例】以下、実施例をあげて本発明をさらに詳細に
説明する。
【0042】(実施例1)平均粒径12μmのSUS3
16Lガスアトマイズステンレス粉末に対して、有機バ
インダとしてポリブチレンサクシネート−ポリブチレン
アジペート共重合体を添加し、加圧ニーダーにて混練
し、射出成形用のコンパウンドを作製した。なお、ステ
ンレス粉末と有機バインダとの混合比は、ステンレス粉
末100重量部に対して有機バインダ9.5重量部とし
た。
【0043】このようにして得られたコンパウンドを射
出成形機を用いて金型中に射出し、厚さ1mm、外径1
0mmのコイン状の成形体を得た。
【0044】次に、成形体を500メッシュのステンレ
ス金網で作成したバスケットに注意して並べ、5μg/
mLの濃度のPseudomonas fluores
cens由来のリパーゼを含む燐酸二水素カリウム緩衝
液を満たした容器中に僅かに揺動させながら5日間浸漬
した。この時、水温は37℃、水素イオン濃度はpH
7.4とした。ここで、本実験で使用したリパーゼの酵
素分解反応における最適温度は30ないし40℃、最適
水素イオン濃度はpH7.0ないし8.0、最適酵素濃
度は3ないし10μg/mLである。この後、バスケッ
トを容器から取り出し、純水中に浸漬して洗浄し、窒素
雰囲気中100℃で1時間の乾燥を行った。
【0045】続いて、アルミナ製の平板上に乾燥した成
形体を注意して並べ、この平板をバッチ式の炉に入れて
加熱した。この加熱は残存したポリブチレンサクシネー
ト−ポリブチレンアジペート共重合体の脱バインダ処理
と、これに続くステンレス粉の焼結処理とを連続して行
うものである。この時の条件は以下の通りとした。
【0046】まず窒素2L/minの雰囲気下で室温から1
0℃/minの昇温速度で500℃まで昇温し、この温度で
1時間保持して脱バインダ処理を行った。
【0047】これに引き続き、水素を1L/minの流量で
流しながら500℃から10℃/minの昇温速度で135
0℃まで昇温し、この温度で2時間保持して焼結を行っ
た。
【0048】最後に、10℃/minでほぼ室温になるまで
降温した後、焼結体を炉から取り出した。この結果、欠
陥のない焼結体が得られた。
【0049】(実施例2)平均粒径12μmのSUS3
16Lガスアトマイズステンレス粉末に対して、有機バ
インダとしてポリカプロラクトン80重量%とエチレン
酢酸ビニル−ポリブチルメタクリレート−ポリスチレン
共重合体20重量%とからなる樹脂混合物を添加し、加
圧ニーダーにて混練し、射出成形用のコンパウンドを作
製した。なお、ステンレス粉末と有機バインダとの混合
比は、ステンレス粉末100重量部に対して有機バイン
ダ9.5重量部とした。
【0050】このようにして得られたコンパウンドを射
出成形機を用いて金型中に射出し、実施例1と同様の形
状の成形体を得た。
【0051】次に、成形体を500メッシュのステンレ
ス金網で作成したバスケットに注意して並べ、5μg/
mLの濃度のPseudomonas fragi由来
のリパーゼを含む燐酸二水素カリウム緩衝液を満たした
容器中に僅かに揺動させながら7日間浸漬した。この
時、水温は37℃、水素イオン濃度はpH7.4とし
た。ここで、本実験で使用したリパーゼの酵素分解反応
における最適温度は30ないし40℃、最適水素イオン
濃度はpH7.0ないし8.0、最適酵素濃度は3ない
し10μg/mLである。この後、バスケットを容器か
ら取り出し、純水中に浸漬して洗浄し、窒素雰囲気中1
00℃で1時間の乾燥を行った。
【0052】続いて、アルミナ製の平板上に乾燥した成
形体を注意して並べ、この平板をバッチ式の炉に入れて
加熱した。この加熱は残存した非生分解性樹脂であるエ
チレン酢酸ビニル−ポリブチルメタクリレート−ポリス
チレン共重合体の脱バインダ処理と、これに続くステン
レス粉の焼結処理とを連続して行うものである。この処
理は、実施例1と同様の条件で行った。この結果、欠陥
のない焼結体が得られた。
【0053】(実施例3)平均粒径12μmのSUS3
16Lガスアトマイズステンレス粉末に対して、有機バ
インダとしてポリカプロラクトン50重量%、ポリエチ
レンアジペート30重量%、エチレン酢酸ビニル−ポリ
ブチルメタクリレート−ポリスチレン共重合体20重量
%とからなる樹脂混合物を添加し、加圧ニーダーにて混
練し、射出成形用のコンパウンドを作製した。なお、ス
テンレス粉末と有機バインダとの混合比は、ステンレス
粉末100重量部に対して有機バインダ9.5重量部と
した。
【0054】このようにして得られたコンパウンドを射
出成形機を用いて金型中に射出し、厚さ250μm、外
径3400μm、ピッチ350μmの歯車形状の成形体
を得た。ここで、本実施例において、収縮率を考慮した
焼結体の外径寸法の狙い値は、2700±30μmであ
る。
【0055】次に、成形体を500メッシュのステンレ
ス金網で作成したバスケットに注意して並べ、ポリカプ
ロラクトン分解酵素として5μg/mLの濃度のPse
udomonas fragi由来のリパーゼを含む燐
酸二水素カリウム緩衝液を満たした容器中に僅かに揺動
しながら48時間浸漬した。このとき水温は37℃、水
素イオン濃度はpH7.4とした。ここで使用したリパ
ーゼの酵素分解反応における最適温度は30ないし40
℃、最適水素イオン濃度はpH7.0ないし8.0、最
適酵素濃度は3ないし10μg/mLである。この後、
バスケットを容器から取り出し、純水中に浸漬して洗浄
した。次にポリエチレンアジペート分解酵素として4μ
g/mLの濃度のComamonas acidovo
rans由来のポリエチレンアジペート分解酵素を含む
燐酸二水素カリウム緩衝液を満たした容器中に、成形体
をならべたバスケットを僅かに揺動させながら48時間
浸漬した。この時、水温は37℃、水素イオン濃度はp
H9.0とした。ここで使用したポリエチレンアジペー
ト分解酵素の酵素分解反応における最適温度は30ない
し40℃、最適水素イオン濃度はpH8.5ないし9.
5、最適酵素濃度は3ないし10μg/mLである。こ
の後、バスケットを容器から取り出し、純水中に浸漬し
て洗浄し、窒素雰囲気中100℃で1時間の乾燥を行っ
た。
【0056】続いて、実施例1と同様の条件で残存バイ
ンダの除去および焼結を行い、図1および図2に示した
形状の焼結体を得た。この結果、外観不良はなく、全て
寸法公差を満足した焼結体が得られた。
【0057】(実施例4)平均粒径12μmのSUS3
16Lガスアトマイズステンレス粉末に対して、有機バ
インダとしてポリヒドロキシブタン酸30重量%、ポリ
カプロラクトン55重量%、ポリエチレン10重量%、
カルナバワックス5重量%とからなる樹脂混合物を添加
し、加圧ニーダーにて混練し、射出成形用のコンパウン
ドを作製した。なお、ステンレス粉末と有機バインダと
の混合比は、ステンレス粉末100重量部に対して有機
バインダ9.5重量部とした。
【0058】このようにして得られたコンパウンドを射
出成形機を用いて金型中に射出し、実施例3と同様の形
状の成形体を得た。
【0059】次に、成形体を500メッシュのステンレ
ス金網で作成したバスケットに注意して並べ、まず、ポ
リカプロラクトン分解酵素として5μg/mLの濃度の
Pseudomonas fragi由来のリパーゼと
ポリヒドロキシブタン酸分解酵素として5μg/mLの
濃度のAlcaligenes faecalis由来
のポリヒドロキシブタン酸分解酵素を含む燐酸二水素カ
リウム緩衝液を満たした容器中に僅かに揺動させながら
72時間浸漬した。この時、水温は37℃、水素イオン
濃度はpH7.4とした。ここで、本実施例で使用した
リパーゼおよびポリヒドロキシブタン酸分解酵素の酵素
分解反応における最適温度は共に30ないし40℃、最
適水素イオン濃度は共にpH7.0ないし8.0、最適
酵素濃度は3ないし10μg/mLである。この後、バ
スケットを容器から取り出し、純水中に浸漬して洗浄
し、窒素雰囲気中100℃で1時間の乾燥を行った。
【0060】続いて、実施例1と同様の条件で、残存バ
インダの除去および焼結を行った。この結果、外観不良
はなく、全て寸法公差を満足した焼結体が得られた。
【0061】(実施例5)実施例4で得られたコンパウ
ンドを射出成形機を用いて金型中に射出し、完成時の直
径が35mmの裏蓋一体型時計ケース2を得た。時計ケ
ース2の断面図を図3に示す。得られた成形体を実施例
4とほぼ同様の条件で脱脂、焼結して焼結体を得た。な
お、実施例4に比べて製品サイズが大きいことから、ポ
リエステル分解酵素を含む緩衝液への浸漬時間を10日
間とすると共に、焼結処理での1350℃の保持時間を
3時間とした。
【0062】この結果、実用的な意味での変形の全くな
いステンレス焼結体の時計ケース2が得られた。
【0063】実施例1では、有機バインダ成分として、
一種類の生分解性樹脂のみからなる樹脂を使用して焼結
体を製造した。実施例2では、有機バインダ成分とし
て、一種類の生分解性樹脂と、非生分解性樹脂を含む樹
脂を使用して焼結体を製造した。実施例3、実施例4お
よび実施例5では、有機バインダ成分として、二種類の
生分解性樹脂と、非生分解性樹脂を含む樹脂を使用して
焼結体を製造した。なお、実施例4および実施例5で
は、有機バインダ成分として含まれるそれぞれの生分解
性樹脂において、分解の最適温度および最適水素イオン
濃度がほぼ同じなので、それぞれの分解酵素をともに含
んだ水中に成形体を保持して、それぞれの生分解性樹脂
を同時に分解除去した。これらいずれの実施例において
も、得られた焼結体は、外観不良がなく、実用的な意味
で変形がまったくなく、欠陥がないものであった。
【0064】
【発明の効果】本発明の製造方法によれば、変形がなく
寸法精度に優れた焼結体の製品を粉末成形法や粉末射出
成形法という造形的な手法で作製することができる。し
かも本発明の製造方法は、環境負荷が低くかつ安全性が
高い優れた工程である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における成形体を焼結して得ら
れる焼結体の平面図である。
【図2】本発明の実施例における成形体を焼結して得ら
れる焼結体の側面図である。
【図3】本発明の他の実施例における成形体を焼結して
得られる焼結体の断面図である。
【符号の説明】
1 歯車 2 時計ケース D 外径

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 無機微粉末と有機バインダ成分として少
    なくとも一種類の生分解性樹脂を有する樹脂とを混合し
    てコンパウンドを作製する工程、このコンパウンドを成
    形して成形体を形成する工程、前記生分解性樹脂を分解
    する作用を発現する分解酵素を含む水中に前記成形体を
    保持し、脱脂体を得る工程、この脱脂体を加熱して焼結
    体を得る工程、とを有することを特徴とする焼結体の造
    形的な製造方法。
  2. 【請求項2】 有機バインダ成分として少なくとも第一
    の生分解性樹脂および第二の生分解性樹脂を用い、前記
    脱脂体を得る工程が、第一の生分解性樹脂を分解する作
    用を発現する第一の分解酵素を含む水中に成形体を保持
    して第一の生分解性樹脂を分解除去した後、第二の生分
    解性樹脂を分解する作用を発現する第二の分解酵素を含
    む水中に成形体を保持して第二の生分解性樹脂を分解除
    去することを特徴とする請求項1記載の焼結体の造形的
    な製造方法。
  3. 【請求項3】 有機バインダ成分として少なくとも第一
    の生分解性樹脂および第二の生分解性樹脂を用い、前記
    脱脂体を得る工程が、第一の生分解性樹脂を分解する作
    用を発現する第一の分解酵素と第二の生分解性樹脂を分
    解する作用を発現する第二の分解酵素をともに含む水中
    に成形体を保持して、第一の生分解性樹脂と第二の生分
    解性樹脂を同時に分解除去することを特徴とする請求項
    1記載の焼結体の造形的な製造方法。
  4. 【請求項4】 非生分解性樹脂が有機バインダ成分とし
    て含まれることを特徴とする請求項1、請求項2または
    請求項3に記載の焼結体の造形的な製造方法。
  5. 【請求項5】 生分解性樹脂がエステル樹脂であること
    を特徴とする請求項1、請求項2、請求項3または請求
    項4に記載の焼結体の造形的な製造方法。
  6. 【請求項6】 低分子系の有機物が有機バインダ成分と
    して含まれることを特徴とする請求項1、請求項2、請
    求項3、請求項4または請求項5に記載の焼結体の造形
    的な製造方法。
  7. 【請求項7】 分解酵素を含む水を酵素活性が最大値を
    示す温度に設定することを特徴とする請求項1、請求項
    2、請求項3、請求項4、請求項5または請求項6に記
    載の焼結体の造形的な製造方法。
  8. 【請求項8】 分解酵素を含む水を緩衝液を用いて酵素
    活性が最大値を示す水素イオン濃度に設定することを特
    徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請
    求項5、請求項6または請求項7に記載の焼結体の造形
    的な製造方法。
  9. 【請求項9】 分解酵素を含む水を酵素活性が最大値を
    示す酵素濃度に設定することを特徴とする請求項1、請
    求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請
    求項7または請求項8に記載の焼結体の造形的な製造方
    法。
  10. 【請求項10】 分解酵素を含む水が滅菌されているこ
    とを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項
    4、請求項5、請求項6、請求項7、請求項8または請
    求項9に記載の焼結体の造形的な製造方法。
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