JP2000030938A - 磁性素子およびその製造方法 - Google Patents

磁性素子およびその製造方法

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JP2000030938A
JP2000030938A JP10198547A JP19854798A JP2000030938A JP 2000030938 A JP2000030938 A JP 2000030938A JP 10198547 A JP10198547 A JP 10198547A JP 19854798 A JP19854798 A JP 19854798A JP 2000030938 A JP2000030938 A JP 2000030938A
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JP10198547A
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Akihiro Goto
章博 後藤
Masanori Abe
正規 安部
Shoji Koyama
昌二 小山
Yasushi Negishi
靖 根岸
Yasuhisa Baba
康壽 馬場
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Kanagawa Prefecture
Hirose Cherry Precision Co Ltd
Original Assignee
Kanagawa Prefecture
Hirose Cherry Precision Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 製造に際しては調整や工程が簡素であり且つ
品質が均一であり、また、使用に際しては機能や特性が
安定である大バルクハウゼンジャンプ現象を起こしうる
磁性素子を提供することである。 【解決手段】 磁性素子は、同一組成材料による成膜工
程において、途中で作製条件を変化させることにより保
磁力や異方性を制御して成膜される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気特性の異なる
少なくとも2つの磁性層を有した磁性素子に関するもの
であり、特に、大バルクハウゼンジャンプ現象を起こし
うる磁性素子およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、大バルクハウゼンジャンプ現象を
起こしうる磁性素子は、パルス発生装置や各種計測装置
および各種検知装置あるいは各種マーカー等広い範囲に
おいて利用されてきている。従来、大バルクハウゼンジ
ャンプ現象を起こしうる磁性素子については、ウィーガ
ンドワイヤをはじめとする各種のワイヤー状のものや、
アモルファス金属等からなる薄膜状のものなどが知られ
ている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ワイヤ
ー状のものにあっては、形状による制限が多く、設計や
使用において自由度が低いほか、母材である金属に熱処
理や機械加工等を施して製造するものであることから歩
留りが悪いという問題があった。
【0004】一方、薄膜状のものにあっては、磁性層の
各々を磁気特性の異なるものとするために、各磁性層の
形成にあたって別々の出発材料を使用するのが一般的で
あり、例えば、ハード層とソフト層とを形成するのに別
々の出発材料を使用しているのが一般的であった。特開
昭64−80121号公報には、この種の薄膜磁性素子
が開示されているが、この従来の薄膜磁性素子において
も、各磁性層を、組成およびその保磁力が異なる異種類
の材料にて形成している。従来の薄膜状の磁性素子で
は、これらのこともあって、膜組成に関する材料の選択
や設定および非晶質構造とするための成膜工程等におい
て微妙な調整や複雑な工程が多数必要となるという問題
があった。特に、結晶の構造を規定することとなる基板
温度の設定については、加熱や冷却に際して厳密な調整
管理が必要となる他、基板自体の変質による特性の不安
定化に対しても厳密な注意が必要となる等、工程が極め
て複雑になるという問題があった。
【0005】また、総じて従来の大バルクハウゼンジャ
ンプ現象を起こしうる磁性素子にあっては、使用時にお
いて外部からの曲げや引張り等何らかの力を加えておく
必要があることから、特性が不安定となり易く、この外
力を恒常的に且つ厳密に維持して使用する必要があり、
運用が相当に困難であるという問題があった。
【0006】このような種々の問題が未だ解決されてい
ないことから、大バルクハウゼンジャンプ現象を起こし
うる磁性素子を利用した機器類や装置類の実用化につい
ては、極めて困難を伴うものとなっていた。
【0007】したがって、製造に際しては調整や工程が
簡素であり且つ品質が均一であり、また、使用に際して
は機能や特性が安定であるような、大バルクハウゼンジ
ャンプ現象を起こしうる磁性素子の出現が強く要望され
ている。
【0008】本発明の目的は、前述したような従来技術
の問題点を解消し、前述したような要望に十分に応えう
るような磁性素子およびその製造方法を提供することで
ある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の一つの観点によ
れば、磁気特性の異なる少なくとも2つの磁性層を有し
た磁性素子において、前記磁性層は、同一組成材料にて
形成されていることを特徴とする。
【0010】本発明の別の観点によれば、磁気特性の異
なる少なくとも2つの磁性層を有し大バルクハウゼンジ
ャンプ現象を起こしうる磁性素子において、前記磁性層
の各々は、同一組成材料による成膜工程において、該成
膜工程の作製条件のうちの少なくとも1つを途中で変化
させることにより、互いに異なる保磁力および/または
異方性を有したものとされたことを特徴とする。
【0011】本発明のもう一つ別の観点によれば、磁気
特性の異なる少なくとも2つの磁性層を有し大バルクハ
ウゼンジャンプ現象を起こしうる磁性素子の製造方法に
おいて、前記磁性層の各々を同一組成材料による成膜工
程により形成し、該成膜工程において、成膜により形成
される前記磁性層の各々が、互いに異なる保磁力および
/または異方性を有するように、該成膜工程の途中にお
いて、該成膜工程の作製条件のうちの少なくとも1つを
途中で変化させることを特徴とする。
【0012】本発明の一つの実施の形態によれば、前記
成膜工程は、PVD法、CVD法、メッキ法のうちのい
ずれかである。
【0013】本発明の別の実施の形態によれば、前記成
膜工程は、鉄−ニッケル比において35:65〜65:
35のパーマロイをターゲット材としたスパッタリング
法であり、その作製条件のうちガス圧について0.35P
a以下および0.45Pa以上として変化させる。
【0014】本発明のさらに別の実施の形態によれば、
前記成膜工程は、鉄−ニッケル比において35:65〜
65:35のパーマロイをターゲット材としたスパッタ
リング法であり、その作製条件のうち基板入射角につい
て50°以下および60°以上として変化させる。
【0015】本発明のさらに別の実施の形態によれば、
前記成膜工程は、パーマロイを蒸発源材とした真空蒸着
方法であり、その作製条件のうち蒸発源材の温度につい
てニッケルの蒸発温度以上で且つ鉄の蒸発温度以下およ
び鉄の蒸発温度以上として変化させる。
【0016】本発明のさらに別の実施の形態によれば、
前記成膜工程は、パーマロイを蒸発源材とした真空蒸着
法であり、その作製条件のうち基板入射角について50
°付近および30°以下または60°以上として変換さ
せる。
【0017】本発明のさらに別の実施の形態によれば、
前記成膜工程は、NiSO4 +NiCl2 +FeSO4
をメッキ液としたメッキ法であり、その作製条件のうち
pHについて1.5以下および2.5以上として変化させ
る。
【0018】本発明のさらに別の実施の形態によれば、
前記成膜工程は、NiSO4 +NiCl2 +FeSO4
をメッキ液としたメッキ法であり、その作製条件のうち
液温について65°C以下および75°C以上として変
化させる。
【0019】
【発明の実施の形態】次に、添付図面に基づいて、本発
明の実施の形態について、本発明をより詳細に説明す
る。
【0020】なお、本発明の実施の形態を説明するに先
立ち、大バルクハウゼンジャンプ現象を起こしうる磁性
素子について概略説明しておく。大バルクハウゼンジャ
ンプ現象を起こしうる磁性素子については、例えば、鉄
−ニッケル系合金あるいは鉄−コバルト系合金等を基材
としたものや、アモルファスを基材としたものがある。
また、構造としてはハード層とソフト層とを有する複層
構造あるいは単層構造としたものが知られている。この
ような磁性素子に対し、互いに異なる極性の外部磁界を
交互に作用させると、急激な磁壁の移動により磁化の反
転を起こし、これにより近傍のピックアップコイルに急
激なパルス電圧を誘起する。この磁化の反転は、外部磁
界の作用速度に依存せず、外部磁界が一定の強さとなっ
た際に起こるものであり、このような磁壁の急激な移動
による反転現象を大バルクハウゼンジャンプ現象と称し
ている。磁壁の移動に関しては、保磁力や異方性が密接
に関わっている。
【0021】このような磁性素子を薄膜にて形成するた
めの成膜工程および各作製条件としては、次のようなも
のがある。 (1)PVD法 (a)スパッタリング法 可変作製条件としては、ガスの種類、ガス圧、基板温
度、成膜電力、基板とターゲットの位置と傾き(成膜入
射角)、成膜時の磁場等がある。 (b)真空蒸着法(イオンプレーティングを含む) 可変作製条件としては、ガス雰囲気の種類、ガス圧、基
板温度、真空度、蒸発源の温度(蒸気圧)、基板と蒸発
源との位置と傾き、成膜時の磁場等がある。 (2)メッキ法 可変作製条件としては、酸/アルカリ度(pH)、液
温、電流密度、液組成比、交流重畳、成膜時の磁場等が
ある。 (3)CVD法 可変作製条件としては、成膜温度、基板温度、ガス流
量、ガスの導入口の位置、プラズマ電力(プラズマCV
Dの場合)、成膜時の磁場等がある。
【0022】本発明は、このような各成膜工程における
種々の作製条件を成膜工程の途中において変更すること
により、保磁力や異方性を制御して成膜し、大バルクハ
ウゼンジャンプ現象を起こしうる磁性素子を得るもので
ある。
【0023】次に、本発明による磁性素子を製造するい
くつかの実施の形態について説明していく。図1は、本
発明による磁性素子の一つの具体的な構造を概略的に示
している。この磁性素子10は、基板1上に第1の磁性
層2、この第1の磁性層2の上に第2の磁性層3を形成
してなっている。これら第1の磁性層2と第2の磁性層
3とは、互いに磁気特性を異にしており、例えば、保磁
力および/または異方性を異にしている。参照符号20
は、この磁性素子10の使用に際して施される検知コイ
ルを示している。
【0024】先ず、本発明の第1の実施の形態として、
図1のような構造の磁性素子をスパッタリング法により
形成する場合について説明する。基板1は、ガラスと
し、第1の磁性層2および第2の磁性層3は、共に、鉄
−ニッケル比において45:55のパーマロイをターゲ
ット材料として、スパッタリング法により形成される。
この実施例において、鉄−ニッケル比を45:55とし
た理由は、図2のグラフに示されるように、一軸異方性
が高い点であり、大バルクハウゼンジャンプ現象を起こ
し易い点であるからである。しかし、本発明は、これに
限定されず、鉄−ニッケル比は、35:65〜65:3
5の範囲が、実用上選択可能な範囲であり、本発明は、
このような範囲も含むものである。
【0025】本発明によれば、第1の磁性層2および第
2の磁性層3について、同一組成材料で形成されるにも
かかわらず、互いに異なる所定の保磁力および異方性を
有するようにするために、第1の磁性層2については、
0.5Paのアルゴンガス圧にて形成し、次いで、第2の
磁性層3については、0.3Paのアルゴンガス圧にて形
成した。なお、その他の作製条件としては、成膜電力を
150W、基板入射角を45°、膜厚を3000Åとし
た。
【0026】この実施例で、0.5Paおよび0.3Paと
した理由は、図3および図4のグラフに示すように、変
化の分岐点(異方性)が約0.4Paであり、この点を挟
んで十分に差を持たせることができる2点を選択したと
いうことである。しかし、本発明は、これに限定され
ず、アルゴンガス圧は、0.35以下と0.45以上の範囲
が実用上選択可能な範囲であり、各種の機器装置に対し
て、それらの範囲内においてアルゴンガスを適宜選定す
ることができ、本発明は、このような範囲も含むもので
ある。
【0027】このように構成した磁性素子10に対して
交番磁界1.0Hzにて作用させた結果、磁性素子10を
取り巻くように配置した検知コイル20には、約1.0v
の急峻なパルス状電圧が発生した。
【0028】次に、本発明の第2の実施の形態として、
図1のような構造の磁性素子をスパッタリング法により
別の仕方で形成する場合について説明する。基板1は、
ガラスとし、第1の磁性層2および第2の磁性層3は、
共に、鉄−ニッケル比において45:55のパーマロイ
をターゲット材料として、スパッタリング法により形成
される。この実施例において、鉄−ニッケル比を45:
55とした理由は、図2のグラフに示されるように、一
軸異方性が高い点であり、大バルクハウゼンジャンプ現
象を起こし易い点であるからである。しかし、本発明
は、これに限定されず、鉄−ニッケル比は、35:65
〜65:35の範囲が、実用上選択可能な範囲であり、
本発明は、このような範囲も含むものである。
【0029】本発明によれば、第1の磁性層2および第
2の磁性層3について、同一組成材料で形成されるにも
かかわらず、互いに異なる所定の保磁力および異方性を
有するようにするために、第1の磁性層2については、
30°の基板入射角にて形成し、次いで、第2の磁性層
3については、65°の基板入射角にて形成した。な
お、その他の作製条件としては、ガスの種類をアルゴン
ガス、ガス圧を1.1Pa、成膜電力を150W、膜厚を
3000Åとした。
【0030】この実施例で、基板入射角を30°、65
°とした理由は、図5および図6のグラフに示すよう
に、保磁力および異方性の変化の分岐点が約55°であ
り、この点を挟んで十分に差を持たせることができる2
点を選択したということである。しかし、本発明は、こ
れに限定されず、基板入射角は、50°以下および60
°以上の範囲が実用上選択可能な範囲であり、各種の機
器装置に対して、それらの範囲内において基板入射角を
適宜選定することができ、本発明は、このような範囲も
含むものである。
【0031】次に、本発明の第3の実施の形態として、
図1のような構造の磁性素子を真空蒸着法により形成す
る場合について説明する。基板1は、ガラスとし、第1
の磁性層2および第2の磁性層3は、共に、パーマロイ
を蒸発源として真空蒸着法により形成される。
【0032】本発明によれば、第1の磁性層2および第
2の磁性層3について、同一の蒸発源を維持するにもか
かわらず、互いに異なる所定の保磁力および異方性を有
するようにするために、第1の磁性層2については、蒸
発源の温度を1470°Cとして形成し、次いで、第2
の磁性層3については、蒸発源の温度を1550°Cと
して形成した。なお、その他の作製条件としては、基板
温度を300°C、基板入射角を50°、膜厚を110
00Åとした。パーマロイにおいて鉄とニッケルの融点
が違うので、蒸発源の温度によって蒸発する比が変わ
る。したがって、蒸着した膜の組成(鉄とニッケルとの
比)が変わる。すると、図7および図2のグラフから分
かるように、磁気特性(保磁力、異方性)に自ずと違い
が出ることになる。
【0033】この実施例で、蒸発源の温度を1470°
Cおよび1550°Cとした理由は、1470°Cがニ
ッケルの融点(1455°C)以上で且つ鉄の融点(1
535°C)以下の点であり、1550°Cが鉄の融点
(1535°C)以上の点であるということである。し
かし、本発明は、これに限定されず、ニッケルの蒸発温
度以上で且つ鉄の蒸発温度以下の温度でニッケルリッチ
の成膜となり、鉄の蒸発温度以上の温度で第1層よりは
鉄リッチの成膜となるので、本発明は、ニッケルの蒸発
温度以上で且つ鉄の蒸発温度以下および鉄の蒸発温度以
上の温度という範囲を含むものである。なお、1気圧で
の融点と真空中での蒸発温度はやや違うので蒸発温度と
している。
【0034】次に、本発明の第4の実施の形態として、
図1のような構造の磁性素子を真空蒸着法により別の仕
方で形成する場合について説明する。基板1は、ガラス
とし、第1の磁性層2および第2の磁性層3は、共に、
パーマロイを蒸発源として真空蒸着法により形成され
る。
【0035】本発明によれば、第1の磁性層2および第
2の磁性層3について、同一組成材料で形成されるにも
かかわらず、互いに異なる所定の保磁力および異方性を
有するようにするために、第1の磁性層2については、
基板入射角を30°として形成し、次いで、第2の磁性
層3については、基板入射角を50°として形成した。
なお、その他の作製条件としては、蒸発源の温度を15
35°C、基板温度を300°C、膜厚を11000Å
とした。
【0036】この実施例で、基板入射角を30°および
50°とした理由は、図9および図10のグラフに示す
ように、保磁力および異方性の変化のピークが約50°
であり、このピーク点およびこの点から十分に差を持た
せることができる2点を選択したということである。し
かし、本発明は、これに限定されず、50°付近および
30°以下または60°以上の範囲が実用上選択可能な
範囲であり、各種の機器装置に対して、それらの範囲内
において基板入射角を適宜選定することができ、本発明
は、このような範囲も含むものである。
【0037】次に、本発明の第5の実施の形態として、
図1のような構造の磁性素子をメッキ法により形成する
場合について説明する。基板1上に、第1の磁性層2お
よび第2の磁性層3は、共に、NiSO4 +NiCl2
+FeSO4 のメッキ液組成を用いて、メッキ法により
形成される。
【0038】本発明によれば、第1の磁性層2および第
2の磁性層3について、同一組成のメッキ液を使用する
にもかかわらず、互いに異なる所定の保磁力および異方
性を有するようにするために、第1の磁性層2について
は、メッキ液のpHを3.5として形成し、次いで、第2
の磁性層3については、メッキ液のpHを1.0として形
成した。なお、その他の作製条件としては、液温を45
°C、電流密度を10mA/cm2 、膜厚を1μmとし
た。
【0039】この実施例で、pHを3.5、1.0とした理
由は、図10および図11のグラフに示すように、変化
の分岐点が約pH2.0であり、この点を挟んで十分に差
を持たせることができる2点を選択したということであ
る。しかし、本発明は、これに限定されず、1.5以下お
よび2.5以上の範囲が実用上選択可能な範囲であり、各
種の機器装置に対して、それらの範囲内においてpHを
適宜選定することができ、本発明は、このような範囲も
含むものである。
【0040】次に、本発明の第6の実施の形態として、
図1のような構造の磁性素子をメッキ法により別の仕方
で形成する場合について説明する。基板1上に、第1の
磁性層2および第2の磁性層3は、共に、NiSO4
NiCl2 +FeSO4 のメッキ液組成を用いて、メッ
キ法により形成される。
【0041】本発明によれば、第1の磁性層2および第
2の磁性層3について、同一組成のメッキ液を使用する
にもかかわらず、互いに異なる所定の保磁力および異方
性を有するようにするために、第1の磁性層2について
は、メッキ液の液温を50°Cとして形成し、次いで、
第2の磁性層3については、メッキ液の液温を80°C
として形成した。なお、その他の作製条件としては、p
Hを2.5、電流密度を10mA/cm2 、膜厚を1μmと
した。
【0042】この実施例で、液温を50°C、80°C
とした理由は、図12および図13のグラフに示すよう
に、変化の分岐点が約70°Cであり、この点を挟んで
十分に差を持たせることができる2点を選択したという
ことである。しかし、本発明は、これに限定されず、6
5°C以下および75°C以上の範囲が実用上選択可能
な範囲であり、各種の機器装置に対して、それらの範囲
内において液温を適宜選定することができ、本発明は、
このような範囲も含むものである。
【0043】なお、成膜工程をスパッタリング法、真空
蒸着法、メッキ法とした場合における本発明の実施の形
態について詳述してきたのであるが、本発明によれば、
成膜工程をCVD法とした場合でも同様の効果が得られ
ることを確認している。例えば、成膜工程をCVD法と
した場合において、その作製条件のうちプラズマ電力を
途中で変化させることにより、各磁性層の保磁力を異な
らせる制御が可能である。
【0044】また、前述した実施の形態にて説明した以
外の成膜方法および作製条件についても、その成膜工程
において種々の作製条件を途中で変化させた場合には、
一般的に保磁力や異方性に変化を生じる傾向があり、こ
れを利用して保磁力や異方性を制御して成膜し大バルク
ハウゼンジャンプ現象を起こしうる磁性素子を得ること
ができる。
【0045】
【発明の効果】本発明によれば、前述してきたとおり、
磁性素子の各磁性層の形成において原材料を変える必要
がなく、製造に際しては調整や工程が簡素であり且つ品
質が均一であり、また、使用に際しては機能や特性が安
定である大バルクハウゼンジャンプ現象を起こしうる磁
性素子を得ることができる。
【0046】すなわち、熱処理や機械加工等の金属加工
によらず、また、材料の選択や成膜における複雑な工程
も必要とせず、一般的な成膜技術と簡素な調整により均
一性の高い磁性素子を形成することができる。また、使
用時においても外部からの曲げや引張り等の力を加えて
おく必要がなく、安定性が高く、運用が容易な磁性素子
を形成することができる。
【0047】また、成膜組成材料を同一とし、成膜工程
の途中において作製条件を変更するだけの簡便な製造方
法であることから、製造装置の簡略化や製造時間の短縮
あるいは大量生産や大幅なコストダウンが可能となるな
ど、製造効率が格段に向上するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による磁性素子の一つの具体的な構造を
示す概略図である。
【図2】鉄−ニッケル合金の組成比と異方性との関係を
示す図である。
【図3】鉄−ニッケル合金をターゲット材としたスパッ
タリング法により形成された膜に関する実験データとし
てのガス圧と保磁力との関係を示す図である。
【図4】鉄−ニッケル合金をターゲット材としたスパッ
タリング法により形成された膜に関する実験データとし
てのガス圧と異方性との関係を示す図である。
【図5】鉄−ニッケル合金をターゲット材としたスパッ
タリング法により形成された膜に関する実験データとし
てのスパッタ入射角と保磁力との関係を示す図である。
【図6】鉄−ニッケル合金をターゲット材としたスパッ
タリング法により形成された膜に関する実験データとし
てのスパッタ入射角と異方性との関係を示す図である。
【図7】鉄−ニッケル合金の組成比と保磁力との関係を
示す図である。
【図8】鉄−ニッケル合金を蒸発源材とした真空蒸着法
により形成された膜に関する実験データとしての真空蒸
着入射角と保磁力との関係を示す図である。
【図9】鉄−ニッケル合金を蒸発源材とした真空蒸着法
により形成された膜に関する実験データとしての真空蒸
着入射角と異方性との関係を示す図である。
【図10】鉄−ニッケルメッキ液のpHとメッキ法にて
形成される膜の保磁力との関係を示す図である。
【図11】鉄−ニッケルメッキ液のpHとメッキ法にて
形成される膜の組成との関係を示す図である。
【図12】鉄−ニッケルメッキ液の浴温とメッキ法にて
形成される膜の保磁力との関係を示す図である。
【図13】鉄−ニッケルメッキ液の浴温とメッキ法にて
形成される膜の組成との関係を示す図である。
【符号の説明】
1 基板 2 第1の磁性層 3 第2の磁性層 10 磁性素子 20 検知コイル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 安部 正規 神奈川県横浜市港北区新横浜2丁目6番23 号 株式会社ヒロセチェリープレシジョン 内 (72)発明者 小山 昌二 神奈川県横浜市港北区新横浜2丁目6番23 号 株式会社ヒロセチェリープレシジョン 内 (72)発明者 根岸 靖 神奈川県横須賀市大津町5−1−711 (72)発明者 馬場 康壽 神奈川県横浜市保土ヶ谷区東川島町86−6 −123 Fターム(参考) 4K023 AB14 BA06 BA08 DA02 DA07 DA08 4K029 BA25 BB02 BC06 CA01 CA05 DC04 EA03 4K030 BA07 BA14 BB12 BB13 LA05 5E049 AA01 AA07 AA09 AC05 BA11 FC10 GC01 HC01 HC02 LC02 LC06

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 磁気特性の異なる少なくとも2つの磁性
    層を有した磁性素子において、前記磁性層は、同一組成
    材料にて形成されていることを特徴とする磁性素子。
  2. 【請求項2】 磁気特性の異なる少なくとも2つの磁性
    層を有し大バルクハウゼンジャンプ現象を起こしうる磁
    性素子であって、前記磁性層の各々は、同一組成材料に
    よる成膜工程において、該成膜工程の作製条件のうちの
    少なくとも1つを途中で変化させることにより、互いに
    異なる保磁力および/または異方性を有したものとされ
    たことを特徴とする磁性素子。
  3. 【請求項3】 前記成膜工程は、PVD法、CVD法、
    メッキ法のうちのいずれかである請求項2記載の磁性素
    子。
  4. 【請求項4】 前記成膜工程は、鉄−ニッケル比におい
    て35:65〜65:35のパーマロイをターゲット材
    としたスパッタリング法であり、その作製条件のうちガ
    ス圧について0.35Pa以下および0.45Pa以上とし
    て変化させた請求項2または3記載の磁性素子。
  5. 【請求項5】 前記成膜工程は、鉄−ニッケル比におい
    て35:65〜65:35のパーマロイをターゲット材
    としたスパッタリング法であり、その作製条件のうち基
    板入射角について50°以下および60°以上として変
    化させた請求項2または3記載の磁性素子。
  6. 【請求項6】 前記成膜工程は、パーマロイを蒸発源材
    とした真空蒸着方法であり、その作製条件のうち蒸発源
    材の温度についてニッケルの蒸発温度以上で且つ鉄の蒸
    発温度以下および鉄の蒸発温度以上として変化させた請
    求項2または3記載の磁性素子。
  7. 【請求項7】 前記成膜工程は、パーマロイを蒸発源材
    とした真空蒸着法であり、その作製条件のうち基板入射
    角について50°付近および30°以下または60°以
    上として変換させた請求項2または3記載の磁性素子。
  8. 【請求項8】 前記成膜工程は、NiSO4 +NiCl
    2 +FeSO4 をメッキ液としたメッキ法であり、その
    作製条件のうちpHについて1.5以下および2.5以上と
    して変化させた請求項2または3記載の磁性素子。
  9. 【請求項9】 前記成膜工程は、NiSO4 +NiCl
    2 +FeSO4 をメッキ液としたメッキ法であり、その
    作製条件のうち液温について65°C以下および75°
    C以上として変化させた請求項2または3記載の磁性素
    子。
  10. 【請求項10】 磁気特性の異なる少なくとも2つの磁
    性層を有し大バルクハウゼンジャンプ現象を起こしうる
    磁性素子の製造方法において、前記磁性層の各々を同一
    組成材料による成膜工程により形成し、該成膜工程にお
    いて、成膜により形成される前記磁性層の各々が、互い
    に異なる保磁力および/または異方性を有するように、
    該成膜工程の途中において、該成膜工程の作製条件のう
    ちの少なくとも1つを途中で変化させることを特徴とす
    る製造方法。
  11. 【請求項11】 前記成膜工程は、PVD法、CVD
    法、メッキ法のうちのいずれかである請求項10記載の
    製造方法。
  12. 【請求項12】 前記成膜工程は、鉄−ニッケル比にお
    いて35:65〜65:35のパーマロイをターゲット
    材としたスパッタリング法であり、その作製条件のうち
    ガス圧について0.35Pa以下および0.45Pa以上と
    して変化させる請求項10または11記載の製造方法。
  13. 【請求項13】 前記成膜工程は、鉄−ニッケル比にお
    いて35:65〜65:35のパーマロイをターゲット
    材としたスパッタリング法であり、その作製条件のうち
    基板入射角について50°以下および60°以上として
    変化させる請求項10または11記載の製造方法。
  14. 【請求項14】 前記成膜工程は、パーマロイを蒸発源
    材とした真空蒸着方法であり、その作製条件のうち蒸発
    源材の温度についてニッケルの蒸発温度以上で且つ鉄の
    蒸発温度以下および鉄の蒸発温度以上として変化させる
    請求項10または11記載の製造方法。
  15. 【請求項15】 前記成膜工程は、パーマロイを蒸発源
    材とした真空蒸着法であり、その作製条件のうち基板入
    射角について50°付近および30°以下または60°
    以上として変換させる請求項10または11記載の製造
    方法。
  16. 【請求項16】 前記成膜工程は、NiSO4 +NiC
    2 +FeSO4 をメッキ液としたメッキ法であり、そ
    の作製条件のうちpHについて1.5以下および2.5以上
    として変化させる請求項10または11記載の製造方
    法。
  17. 【請求項17】 前記成膜工程は、NiSO4 +NiC
    2 +FeSO4 をメッキ液としたメッキ法であり、そ
    の作製条件のうち液温について65°C以下および75
    °C以上として変化させる請求項10または11記載の
    製造方法。
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