JP2000026109A - 水性溶液中の過酸化水素の安定化剤及び安定化方法 - Google Patents

水性溶液中の過酸化水素の安定化剤及び安定化方法

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JP2000026109A JP10196117A JP19611798A JP2000026109A JP 2000026109 A JP2000026109 A JP 2000026109A JP 10196117 A JP10196117 A JP 10196117A JP 19611798 A JP19611798 A JP 19611798A JP 2000026109 A JP2000026109 A JP 2000026109A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 漂白などで使用する中性及びアルカリ性の溶
液で、過酸化水素の分解を適正に制御でき、かつ、環境
に対する影響の少ない天然物系の物質を用いた過酸化水
素の安定化方法を提供する。 【解決手段】 水不溶性フィチン酸塩を有効成分として
含有する、過酸化水素の安定化剤;並びに、過酸化水素
を含有する中性又はアルカリ性水性溶液に、水不溶性フ
ィチン酸塩、あるいは、(i)フィチン酸及び/又は水
溶性フィチン酸塩と、(ii)アルカリ土類金属を含むアル
カリ及び/又はその塩類を添加することを特徴とする過
酸化水素の安定化方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、過酸化水素溶液の
安定化技術、特に、従来から使用されている石油化学系
の安定化剤に代替し得る天然物系の安定化剤を用いた過
酸化水素溶液の安定化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】繊維材料あるいは紙パルプの漂白に過酸
化水素が広く使用されており、一般的に、過酸化水素の
漂白力を向上させるために、溶液をアルカリ性にして漂
白が行われている。ところが、中性からアルカリ性溶液
中の過酸化水素は、溶液中に存在する鉄、銅、マンガン
等の重金属イオンによって、2H2 2 →2H2 O+O
2 で示されるような分解が起こる。H2 2 →H+ +O
OH- で示されるような漂白に関与するとされるパーヒ
ドロキシルイオン(OOH- )の生成が重金属の存在で
減少して、漂白効果が上がらないといわれている。この
ような場合、通常、漂白溶液に安定化剤を添加して過酸
化水素の分子状酸素への分解を抑制する方法が取られて
いる。
【0003】過酸化水素の安定化剤としては、古くから
ケイ酸ナトリウムが用いられている。ケイ酸ナトリウム
は、過酸化水素の安定化効果に優れており、繊維やパル
プの白度向上をもたらすことが知られている。しかしな
がら、この安定化方法では、被処理物にケイ酸スケール
が付着して繊維の風合を害するという欠点や、装置にケ
イ酸スケールが付着する等の欠点が指摘されている(特
公平4−34595号公報)。
【0004】また、ケイ酸ナトリウム以外にも、EDT
A、DTPA等の石油化学系有機キレート剤、縮合リン
酸塩等の合成系無機キレート剤がこの目的のために用い
られている。しかし、ケイ酸ナトリウム以外の安定化剤
は、ある程度の安定化効果を示し、工業的にも成果を上
げているものの、一部の重金属、特に鉄あるいは銅に関
しては、安定化剤としての効果は十分とはいえない(紙
パルプ技術協会誌、第49巻第4号、657−664
頁)。更に、EDTA、DTPA等の石油化学系有機キ
レート剤は、価格的にも高いだけでなく、生分解性がな
く、環境に対する影響も懸念されている。
【0005】更に、また、石油化学系有機キレート剤の
重金属封鎖作用は、カルシウムイオンが存在すると、大
きく減退する(パルプ処理および漂白(増補改訂版)、
254頁、紙パルプ技術協会編)。従って、パルプ漂白
などの場合、カルシウム−次亜塩素酸塩漂白を行った後
で、有機キレート剤を用いた過酸化水素漂白を行うため
には、パルプに酸洗浄を施して、カルシウムイオンを除
去しなければならない。
【0006】一方、フィチンは、狭義にはミオ−イノシ
トールのヘキサリン酸エステル(狭義のフィチン酸)の
マグネシウム、カリウム、カルシウムなどの複塩の総称
であり、植物界に広く存在する有機リン酸化合物であ
る。フィチンは多くの植物体、特に、種子や穀類に多く
含まれている。植物に含まれるフィチンは、酸で抽出し
た後、水酸化カルシウムなどのアルカリで中和沈殿して
分離回収されており、この回収されたフィチン酸塩は、
一般的に複塩となっており、これもフィチンと称されて
いる。通常、フィチンは、上述のように、アルカリ土類
金属塩を含む複塩であるため、水に対して不溶性であ
る。
【0007】また、フィチンを脱塩精製して製造される
のがフィチン酸である。フィチン酸は、水溶性であり、
通常、50%程度の水溶液として市販されている。ま
た、フィチン酸塩には、水溶性のものと、水不溶性のも
のがある。フィチン酸のアルカリ金属塩は、広いpH範
囲で水溶性であるが、フィチン酸のアルカリ土類金属塩
は酸性溶液では溶解するが、中性及びアルカリ性におい
ては、水不溶性となる。
【0008】フィチン酸及びその塩の用途は広く、従来
より、高等動物にとってビタミンの一種であるイノシト
ールの原料として利用されている。また、医薬品として
は、フィチン酸カルシウムがカルシウムの補強剤とし
て、米糠そのものやフィチン酸ナトリウムがカルシウム
結石の予防剤として用いられている。更に、フィチン酸
は強い金属キレート作用を有しており、EDTAより強
力な金属捕捉作用を始めとして、防錆作用、抗酸化作
用、缶詰のストラパイト生成防止作用など興味ある性質
があり、広く利用されている。また、Dunlop、M
eekerらが、フィチン酸及び水溶性のフィチン酸塩
が酸性条件下における過酸化水素の分解防止剤、貯蔵安
定剤として優秀であることを認めている(米国特許第3
053633号)。しかし、フィチン酸は、一般的に漂
白が行われる中性からアルカリ性条件下での過酸化水素
安定化効果は不十分である。従って、漂白用過酸化水素
溶液の重金属のキレート剤として、工業的には、フィチ
ン酸は使用されていない。
【0009】また、フィチン酸は、前述のEDTAなど
のような有機キレート剤と同様に、中性又はアルカリ性
条件下において、アルカリ土類金属イオン、特に、カル
シウムイオンが系中に存在すると、それに対する結合力
が強くなり、重金属封鎖作用は大きく減退するものと考
えられてきた。従って、アルカリ土類金属イオンを含む
系でのフィチン酸が過酸化水素を安定化する効果は全く
知られていないし、フィチン酸のアルカリ土類金属塩や
フィチンの過酸化水素溶液の安定化効果についても未だ
報告されていない。また、常識的に、実際に漂白が行わ
れる中性〜アルカリ性領域においては、フィチン酸のア
ルカリ土類金属塩やフィチンは水に対し不溶性である。
このような水に溶解していないフィチン類は、到底、キ
レート剤としての効果は望めないものと考えられてい
た。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、前述し
た現状に鑑み、フィチン酸のキレート作用を活用して、
中性及びアルカリ性においても、過酸化水素の分解を適
正に制御でき、安価であり、かつ、環境に対する影響の
少ない天然物系の過酸化水素の安定化剤を開発すべく、
種々検討を重ねてきた。その結果、過酸化水素溶液に水
不溶性フィチン酸塩を存在させると、所望の安定化性能
が発揮されることを見出した。つまり、本発明では、フ
ィチン酸のアルカリ土類金属塩が中性からアルカリ性溶
液中の過酸化水素に対する安定化効果が高いことを見出
した。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、以下の発明を
包含する。 (1)水不溶性フィチン酸塩を有効成分として含有す
る、過酸化水素の安定化剤。 (2)過酸化水素を含有する中性又はアルカリ性水性溶
液に水不溶性フィチン酸塩を添加することを特徴とする
過酸化水素の安定化方法。
【0012】(3)過酸化水素を含有する中性又はアル
カリ性水性溶液に、(i)フィチン酸及び/又は水溶性
フィチン酸塩と、(ii)アルカリ土類金属を含むアルカリ
及び/又はその塩類を添加することを特徴とする過酸化
水素の安定化方法。 (4)前記(2)又は(3)に記載の方法により安定化
された過酸化水素溶液を用いることを特徴とする過酸化
水素による漂白方法。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明において、使用されるフィ
チン酸及びフィチン酸塩は、必ずしも純粋なものである
必要はなく、過酸化水素の分解を促進するものでなけれ
ば、澱粉、蛋白質、アルカリ金属塩などの不純物を含ん
でいてもよい。また、フィチン酸は、狭義にはミオ−イ
ノシトールのヘキサリン酸エステルをいうが、本発明に
用いるフィチン酸は、ヘキサリン酸エステルに限定され
るものではなく、ミオ−イノシトールのペンタ、テト
ラ、トリ、ジ、モノリン酸エステルの各エステル及びそ
れらの混合物を包含する。
【0014】本発明で用いる水不溶性フィチン酸塩と
は、50℃の水100gに対する溶解度がフィチン酸と
して2g以下のものをいい、好ましくはアルカリ土類金
属塩、例えば、フィチン酸カルシウム、フィチン酸マグ
ネシウム、フィチン酸バリウム、フィチン酸ストロンチ
ウムなどが挙げられる。また、単独塩でなく、複塩、即
ちフィチンであってもよく、また、アルカリ金属塩など
他の金属塩を含む複塩であってもよい。本発明におい
て、使用される水不溶性フィチン酸塩の量は極めて広範
囲に変化し得るが、一般に過酸化水素に対し、0.01
〜200重量%、好ましくは0.1〜100重量%であ
る。しかしながら、これ以外の重量比率でも、溶液の使
途や含有する重金属イオン量によっては使用可能であ
る。
【0015】本発明において使用される水不溶性フィチ
ン酸塩の製造方法は、フィチン酸及び/又はフィチン酸
の塩類含有液にアルカリ及び/又は塩を添加、沈殿させ
て水不溶性フィチン酸塩を得るものであればいかなる方
法でもよい。例えば、pH=7.5以上でフィチンの沈
殿を形成させる方法(特公昭34−1984号公報)、
除去困難な蛋白質を限外濾過法により除去する方法(特
許第2074099号)、アルカリを添加した後、加温
して高純度のフィチンの沈殿を形成させる方法(特開平
10−59986号公報)などが挙げられる。但し、本
発明による過酸化水素の安定化効果を発揮させるために
は、当然のことながら、得られたフィチンは、カルシウ
ム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属を含んでいな
ければならない。
【0016】また、フィチン酸及び/又はフィチン酸の
塩類含有液とは、フィチン酸やフィチン酸の塩類、又は
両者を含む液体であればいかなるものでもよい。フィチ
ンを含む植物の種子などやその加工品の酸抽出液、好ま
しくは、コーン浸漬液及び/又は米糠抽出液を用いる。
フィチン酸及び/又はフィチン酸の塩類含有液に添加す
るアルカリは、水溶液が塩基性を示す物質であればいか
なるものでもよい。例えば、アルカリ土類金属やアルカ
リ金属の水酸化物、酸化物、アンモニア、アミン類など
が挙げられる。もちろん、これらアルカリの水溶液を添
加してもよい。
【0017】フィチン酸及び/又はフィチン酸の塩類含
有液に添加する塩は、酸とアルカリとの中和反応で生成
する化合物である。例えば、アルカリ土類金属、アルカ
リ金属やアンモニウムなどの塩化物、硫酸塩、硝酸塩、
次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、亜硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩
などが挙げられる。特に、塩酸塩や炭酸塩が望ましい。
もちろん、これら塩類の水溶液を添加してもよい。
【0018】本発明において、使用されるフィチンは、
必ずしも純粋なものである必要はなく、前述のように、
コーン浸漬液や米糠抽出液に、アルカリ及び/又は塩を
添加し、沈殿させて得られたタンパク、澱粉、乳酸など
の不純物を含むフィチンも使用することができる。植物
由来のフィチンは、それ自身がアルカリ土類金属を含む
ため、必ずしも別途に、アルカリ土類金属を含むアルカ
リ及び/又は塩を添加する必要はない。フィチンはいか
なる条件で分離されたものでも過酸化水素の安定化効果
を発揮できる点で極めて好都合である。もちろん、フィ
チン酸及び/又はフィチン酸の塩類含有液に、アルカリ
土類金属を含むアルカリ及び/又は塩を更に添加しても
よい。
【0019】また、本発明の安定化剤は、未溶解のまま
用いることができるのが特徴である。即ち、フィチン等
の水不溶性フィチン酸塩は、一旦、酸性条件下にして水
に溶解させて用いる必要は全くなく、懸濁液の状態で用
いることができる。従って、本発明の安定化剤において
は、安定化剤を未溶解のまま用いることができるので、
溶解工程を省くことができ、好都合である。しかも、本
発明者らは、水不溶性フィチン酸塩は、溶解させずにそ
のまま用いた場合の方が、安定化効果は高くなるという
驚くべき事実も見出している。
【0020】本発明の対象となる過酸化水素溶液は、好
ましくは水性溶液、例えば水溶液であり、必要に応じ
て、メタノール、エタノール、アセトンなどの水混和性
有機溶媒を含有していてもよい。本発明の過酸化水素安
定化剤は過酸化水素溶液中で形成させることもできる。
即ち、過酸化水素溶液に、(i)フィチン酸及び/又は
水溶性フィチン酸塩と、(ii)アルカリ土類金属を含むア
ルカリ及び/又はその塩類を同時に又は別々に添加して
も水不溶性のフィチン酸塩が生じて、過酸化水素の安定
化効果を発揮する。
【0021】本発明において、水溶性フィチン酸塩と
は、中性の水溶液中において、溶解するものを指し、例
えば、フィチン酸ナトリウム、フィチン酸カリウム、フ
ィチン酸アンモニウムなどが挙げられるが、これらに限
定されるものではない。本発明において使用されるフィ
チン酸及び/又は水溶性フィチン酸塩の量は極めて広範
囲に変化し得るが、一般に過酸化水素に対し、0.01
〜200重量%、好ましくは0.1〜100重量%であ
る。しかしながら、これ以外の重量比率でも、溶液の使
途によっては使用可能である。
【0022】本発明において使用されるアルカリ土類金
属を含むアルカリ及び/又はその塩類としては、アルカ
リ土類金属を含むものならいかなるものでもよいが、例
えば、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸マ
グネシウム、安息香酸マグネシウム、塩化マグネシウ
ム、クエン酸マグネシウム、ギ酸マグネシウム、乳酸マ
グネシウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、次亜
塩素酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、硫酸カルシ
ウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウム及びこれらの
混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではな
い。また、添加するアルカリ土類金属を含むアルカリ及
び/又はその塩類の量は、一般的に、アルカリ土類金属
イオンとして、添加するフィチン酸及び/又は水溶性フ
ィチン酸塩に対して0.1〜200重量%、好ましくは
1〜100重量%になるようにするのが好ましい。しか
し、過酸化水素溶液の使用条件によっては、これ以外の
添加量でも使用可能である。
【0023】米国特許第3053633号において安定
化剤として用いられているフィチン酸及び水溶性フィチ
ン酸塩は、酸性条件下において過酸化水素を安定化する
作用を示すが、中性及びアルカリ性条件下では、この作
用は不十分である。これに対して、本発明によれば、酸
性条件下に限らず、中性及びアルカリ性条件下において
も、十分な過酸化水素安定化作用が認められ、具体的に
は、水不溶性のフィチン酸塩が形成されるpH4からp
H12までの広い範囲で十分な過酸化水素安定化作用が
認められる。驚くべきことに、これは、従来の有機系キ
レート剤を使用した場合に見られるような、アルカリ土
類金属イオンによる重金属キレート作用の阻害とは全く
逆の現象を示すものであった。即ち、本発明の効果はキ
レート作用とは異なる未知の別の作用が、過酸化水素の
安定化に寄与しているものと推察される。また、フィチ
ンのような水不溶性のものがキレート剤としての効果を
示すことは、通常は考え難いものである。
【0024】本発明により安定化された中性及びアルカ
リ性の過酸化水素溶液は、種々の目的に利用でき、特
に、紙パルプ、繊維材料の漂白に有効に使用される。例
えば、本発明による安定化方法は、機械パルプ、化学パ
ルプ、セミケミカルパルプ、機械−化学パルプ、熱機械
パルプ又は古紙パルプのような種々の紙パルプの漂白に
有利に適用される。かかる特別な用途において、その安
定化された漂白溶液は、過酸化水素、溶媒(好ましくは
水)及び本発明の安定化剤を一種類以上を含み、水酸化
ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ、好ましく
は水酸化ナトリウムにより通常pH7〜12に調整す
る。更に、時々紙パルプの漂白に使用される他の種々の
添加剤、例えば湿潤剤を溶液に添加することもできる。
また、EDTAやケイ酸ナトリウムなどの他の安定化剤
との併用も可能である。
【0025】パルプの漂白条件については、一般的なパ
ルプの漂白条件が適用できる。漂白温度は極めて広範囲
に変わり得るが、通常20〜120℃である。また、漂
白は大気圧又はより高圧で行うことができる。漂白時間
もかなり広範囲に変わり得るが、通常1分〜8時間であ
り、場合によってはより長時間であってもよい。本発明
に従って安定化された水性過酸化水素溶液の使用量は、
通常パルプ濃度が0.1〜60重量%、好ましくは1〜
50重量%となるような量である。通常、乾燥パルプの
重量に対して過酸化水素は0.1〜50重量%、本発明
の安定化剤は0.02〜30重量%、アルカリは0.1
〜50重量%、種々の添加剤は0〜10重量%の範囲で
存在する。特に適当な溶液は乾燥パルプの重量に対して
過酸化水素0.5〜10重量%、水酸化ナトリウム0.
5〜10重量%及び本発明の安定化剤0.05〜5重量
%を含むものである。しかしながら、これ以外の重量比
率でも、溶液の使途によっては使用可能である。漂白浴
の再循環を行う場合には、これらの成分をより高濃度で
使用できる。
【0026】紙パルプの漂白は、リファイナー、タワ
ー、漂白用エンジンのような任意の装置内で実施でき
る。溶液を乾燥前のパルプシート上に噴霧することもで
きる。また、本発明の安定化方法は、紡織繊維一般の漂
白に適用できる。即ち、動物性繊維(ウール、絹)や植
物性繊維(木綿、亜麻)のような天然繊維のみならず、
無機繊維、再生人造繊維、半合成繊維、合成繊維のよう
な人工繊維にも適用できる。かかる特別な用途におい
て、その安定化された漂白溶液は、過酸化水素、溶媒
(好ましくは水)及び本発明の安定化剤を一種類以上を
含み、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカ
リ、好ましくは水酸化ナトリウムにより通常pH7〜1
2に調整する。更に、繊維材料の漂白に使用される他の
種々の添加剤、例えば湿潤剤、蛍光青味剤、帯電防止
剤、軟化剤、糊抜剤などを溶液に添加することもでき
る。また、EDTAやケイ酸ナトリウムなどの他の安定
化剤との併用も可能である。
【0027】繊維材料の漂白条件については、一般的な
繊維材料の漂白条件が適用できる。漂白温度は極めて広
範囲に変わり得るが、最も普通には20〜120℃であ
る。漂白は大気圧又はより高圧で行うことができる。漂
白時間もかなり広範囲に変わり得るが、通常1分〜8時
間であり、場合によってはより長時間であってもよい。
本発明に従って安定化された水性過酸化水素溶液の使用
量は、通常、漂白すべき繊維材料の重量の1〜50倍、
好ましくは2〜30倍である。通常、該溶液は乾燥繊維
材料の重量に対して過酸化水素0.1〜50重量%、本
発明の安定化剤は0.02〜50重量%、アルカリ0.
1〜50重量%、及び繊維材料の漂白用組成物で慣用さ
れている種々の添加剤0〜10重量%を含有する。特に
適当な溶液は繊維材料の乾燥重量に対して過酸化水素
0.5〜10重量%、水酸化ナトリウム0.5〜10重
量%及び本発明の安定化剤0.05〜10重量%、湿潤
剤0〜5重量%、蛍光青味剤0〜3重量%、帯電防止剤
0〜3重量%及びその他種々の添加剤0〜5重量%を含
むものである。漂白浴の再循環を行う場合には、これら
の成分をより高濃度で使用できる。繊維材料の漂白は、
任意の装置、例えば、パッド−スチーマー、J−ボック
ス、U−ボックス及び加圧下で作動する連続スチーマー
のような連続装置、パッドロールのような半連続装置、
あるいはウインチベック及びオートクレーブのような不
連続装置中で行うことができる。
【0028】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
るが、本発明は下記実施例により、その技術的範囲が限
定されるものではない。 (実施例1〜16)H2 2 1g/L、Fe3+5mg/
L、Cu2+1mg/L、Mn2+2mg/L、所定量のC
2+、Mg2+イオン及び安定化剤として各フィチン類6
00mg/Lを含む水溶液を希水酸化ナトリウム水溶液
あるいは希硫酸水溶液でpH8に調整し、温度60℃に
て、3時間後のH2 2 の残存率を、KI滴定から求
め、表1に示す結果を得た。なお、重金属イオン源とし
ては、FeCl3 ・6H2 O、CuCl2 ・2H2 O、
MnCl2 ・4H2 Oを使用し、アルカリ土類金属イオ
ン源としては、CaCl2 ・2H2 O、MgCl2 を使
用した。
【0029】
【表1】
【0030】注) フィチン酸Na:Aldrich Chemical Co.,Inc. 製 フィチン酸Ca:和光純薬工業(株)製 フィチン酸Mg:和光純薬工業(株)製
【0031】フィチン1:1.0重量%のフィチン酸
(有機リン量よりイノシトール6リン酸として算出)を
含む液温25℃のコーンスチープリカー(pH3.7)
600gに水酸化カルシウム水溶液(10重量%濃度)
を加えてpH4.4とし、90℃まで120分で加熱
し、フィチンの沈殿を含む懸濁液を得た。その後、90
℃で25分保持してから80℃まで冷却して、アドバン
テック東洋(株)製NO.131濾紙で吸引濾過(真空
度60mmHg)後、水で十分置換洗浄し、フィチン
8.5gを得た(これをフィチン1とする)。得られた
フィチンの水分含量は18重量%、固形分中の蛋白質含
量(有機窒素量より算出)は4.1重量%であった。ま
た、イノシトール6リン酸として算出されたフィチン酸
含量は、対固形分60重量%であった。なお、フィチン
中の金属含有量は、対固形分Mg2.6重量%、Ca1
9.5重量%、K1.1重量%、Na0.1重量%であ
った。
【0032】フィチン2:1.0重量%のフィチン酸
(有機リン量よりイノシトール6リン酸として算出)を
含む液温25℃のコーンスティープリカー(pH3.
7)600gに水酸化マグネシウム水溶液(10重量%
濃度)を加えてpH5.3とし、95℃まで60分で加
熱し、フィチンの沈殿を含む懸濁液を得た。その後、9
5℃で15分保持してから85℃まで冷却して、アドバ
ンテック東洋(株)製NO.131濾紙で吸引濾過(真
空度60mmHg)後、水で十分置換洗浄し、フィチン
7.5gを得た(これをフィチン2とする)。得られた
フィチンの水分含量は16重量%、固形分中の蛋白質含
量(有機窒素量より算出)は3.4重量%であった。ま
た、イノシトール6リン酸として算出されたフィチン酸
含量は、対固形分67重量%であった。なお、フィチン
中の金属含有量は、対固形分Mg11.3重量%、Ca
1.3重量%、K2.0重量%、Na0.1重量%であ
った。
【0033】フィチン3:10.4重量%のフィチン酸
(有機リン量よりイノシトール6リン酸として算出)を
含む脱脂米糠1000gに3.0%塩酸水溶液12Lを
加え、30℃にて1時間撹拌抽出し、濾過して抽出液を
得た。抽出残渣は更に水10Lを3回にわけてよく洗浄
し、これも含わせて抽出液とする(pH0.7)。液温
25℃のこの抽出液をよく撹拌しながら、この中に水酸
化カルシウムと水酸化マグネシウムの混合水溶液(混合
比5:2、10重量%濃度)を加えてpH3.5とし
た。そして、この液をよく撹拌しながら、水酸化ナトリ
ウム水溶液(5重量%濃度)を徐々に添加してpH7.
2にするとフィチンの沈殿が得られる。この沈殿をアド
バンテック東洋(株)製NO.131濾紙で吸引濾過
(真空度60mmHg)後、水で十分置換洗浄し、フィ
チン450gを得た(これをフィチン3とする)。得ら
れたフィチンの水分含量は75重量%、固形分中の蛋白
質含量(有機窒素量より算出)は3.0重量%であっ
た。また、イノシトール6リン酸として算出されたフィ
チン酸含量は、対固形分53重量%であった。なお、フ
ィチン中の金属含有量は、対固形分Mg4.5重量%、
Ca16.2重量%、K0.7重量%、Na0.8重量
%であった。
【0034】(比較例1〜12)安定化剤として、フィ
チン酸塩、フィチンの代わりに、フィチン酸単独(アル
カリ土類金属イオン無添加)、ケイ酸ナトリウム(ケイ
ソー3号、旭電化工業(株)製)、EDTA((株)同
仁化学研究所製)を使用した場合及び安定化剤を使用し
ない場合について、実施例1〜16と同様にして実験を
行い、表2に示す結果を得た。なお、ケイソー3号のみ
有姿にて、6000mg/L添加した。
【0035】
【表2】
【0036】表1及び表2から明らかなように、過酸化
水素の安定化剤として、フィチン酸又は水溶性フィチン
酸塩とアルカリ土類金属塩とを併用添加することによ
り、高い安定化効果が得られる。また、フィチン等のフ
ィチン酸アルカリ土類金属塩を安定化剤として使用する
ことにより、アルカリ土類金属イオンの添加の有無に関
わらず過酸化水素の安定化の効果は高くなる。それに対
し、従来用いられてきたフィチン酸や水溶性フィチン酸
塩単独では、その効果は十分ではない。また、EDTA
やケイ酸ナトリウムの場合は、その安定化効果は、アル
カリ土類金属の含有量に左右されてしまい、強く、安定
した過酸化水素の安定化効果は得られない。
【0037】(実施例17〜24)安定化剤として、水
不溶性のフィチン酸Ca及びフィチン1を粉体のまま用
い、過酸化水素溶液をpH8.5あるいはpH10に調
整した他は、すべて実施例1〜16と同様にして実験を
行い、表3に示す結果を得た。
【0038】
【表3】
【0039】(比較例13〜20)安定化剤のフィチン
酸Ca及びフィチン1をpH2の希硫酸水溶液に一旦溶
解させた後、実施例17〜24と同様にして実験を行
い、表4に示す結果を得た。
【0040】
【表4】
【0041】表3及び表4から明らかなように、過酸化
水素の安定化剤としてフィチン類を使用する場合、フィ
チン類を粉体のまま添加し、未溶解の状態で使用した方
が、高い安定化効果が得られる。それに対し、一旦、酸
で溶解させて用いた場合は、その安定化効果は低くな
る。
【0042】
【発明の効果】本発明によれば、従来用いられているケ
イ酸ナトリウムや石油化学系の有機キレート剤であるE
DTAと同等以上の安定化効果が得られる。また、フィ
チン酸や水溶性フィチン酸塩を単独で用いた場合より
も、中性及びアルカリ性における過酸化水素の安定化効
果が格段に高くなる。本発明で用いるフィチン類は、石
油化学系の有機合成キレート剤とは異なり、天然物であ
るため、安全性が高く、環境汚染が少なく、また、安価
であるなど優れた特性を有する。更に、安定化剤として
フィチンを用いると、EDTAやケイ酸ナトリウムの場
合と異なり、アルカリ土類金属イオンの添加量に関わら
ず、強く安定した過酸化水素の安定化が実現できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 阪本 禮一郎 千葉県市原市八幡海岸通9番地 王子コー ンスターチ株式会社開発研究所内 Fターム(参考) 4L055 AD10 AD20 BB20

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水不溶性フィチン酸塩を有効成分として
    含有する、過酸化水素の安定化剤。
  2. 【請求項2】 過酸化水素を含有する中性又はアルカリ
    性水性溶液に水不溶性フィチン酸塩を添加することを特
    徴とする過酸化水素の安定化方法。
  3. 【請求項3】 過酸化水素を含有する中性又はアルカリ
    性水性溶液に、(i)フィチン酸及び/又は水溶性フィ
    チン酸塩と、(ii)アルカリ土類金属を含むアルカリ及び
    /又はその塩類を添加することを特徴とする過酸化水素
    の安定化方法。
  4. 【請求項4】 請求項2又は3に記載の方法により安定
    化された過酸化水素溶液を用いることを特徴とする過酸
    化水素による漂白方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003206221A (ja) * 2002-01-11 2003-07-22 Nonogawa Shoji Kk 毛髪脱色剤
CN103966832A (zh) * 2014-05-05 2014-08-06 芜湖富春染织有限公司 一种复合光催化漂白体系的制备方法、一种纺织品漂白工艺
CN106245399A (zh) * 2015-06-08 2016-12-21 陈根长 氢键法生产湿法植物改性原纤维的工艺方法
WO2023033174A1 (ja) * 2021-09-06 2023-03-09 大塚製薬株式会社 水溶性フィチン

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CN106245399A (zh) * 2015-06-08 2016-12-21 陈根长 氢键法生产湿法植物改性原纤维的工艺方法
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