JP2000016974A - フラーレン脂質コンポジットマテリアル - Google Patents

フラーレン脂質コンポジットマテリアル

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JP2000016974A JP10185390A JP18539098A JP2000016974A JP 2000016974 A JP2000016974 A JP 2000016974A JP 10185390 A JP10185390 A JP 10185390A JP 18539098 A JP18539098 A JP 18539098A JP 2000016974 A JP2000016974 A JP 2000016974A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 水中においてもフラーレン類の多価アニオ
ン、ラジカルアニオン状態を極めて安定に保持すること
を可能にするフラーレン脂質コンポジットマテリアルを
提供すること。 【解決手段】 フラーレン類と、アニオン性ポリマー
(例えば、ポリ(スチレンスルホネート)、ポリ(L−
グリタメート)、アルギン酸ナトリウム、ヘパリン酸ナ
トリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩)
と、アルキルアンモニウムとを、あるいはフラーレン類
と、アルキルアンモニウムまたはアルキルホスホニウム
とを混合し、成膜してフラーレン脂質コンポジットマテ
リアルとする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フラーレン脂質コ
ンポジットマテリアルに関し、さらに詳しくは、フラー
レン類と合成脂質との複合構造をあらかじめ形成するこ
とによって、水中において極めて安定にフラーレン類の
多価アニオン、ラジカルアニオン状態を保持することを
可能にするフラーレン脂質コンポジットマテリアルに関
する。
【0002】
【従来の技術】1990年にC60フラーレンの大量合成
法が報告されて以来、フラーレン類については多様な機
能を発現する新しいカーボンナノクラスターとして基礎
物性と実用的見地にたった応用研究が急速に発展してい
る。また近年フラーレンの化学修飾として、フラーレン
骨格のエキソヘドラル部に官能基や他の化学結合を組み
込むハイブリッドフラーレン分子の研究が盛んになされ
ている。これらのフラーレン類(C60,C70,C82,C
86など)とその誘電体における特徴の一つは、他の化学
物質群には例を見ないレドックス特性にある。例えば、
1,2−ジクロロベンゼン中、テトラ−n−ブチルアン
モニウムヘキサフルオロフォスフェートを支持電解質、
フェロセン/フェロセニウム対を参照電極にした条件
で、第一酸化電位(oxE1)、第一還元電位(redE1)
はそれぞれ、C60で+1.21V、−1.12V、C70
で+1.19V、−1.09V、C82で+0.72V、
−0.69V、C86で+0.73V、−0.58Vであ
る。また、理論計算によれば、C60のエキソヘドラル部
に他の化学構造を結合させることによって、第一還元電
位(redE1)に相当する第1LUMOは−1.09Vか
ら−1.28Vまで大きく変化し、第二還元電位(redE
2)に相当する第2LUMOも並行して−1.49Vか
ら−1.68Vまで変化する(総説として例えば、鈴木
敏泰、DENKIKAGAKU、第64巻、第2ページ
(1996年))。1,2−ジクロロベンゼン中におけ
る、C60とC60誘導体のサイクリックボルタグラム(C
V)測定ならびに微分パルスボルタグラム(DPV)測
定から、第一、第二、第三、第四還元状態までは可逆的
に観測され、第一、第二酸化状態は非可逆的にしか観測
されない。このように、C60,C70,C82,C86などの
フラーレン類およびエキソヘドラル誘導体の多価アニオ
ン、ラジカルアニオン状態は、非水性有機溶媒中でのみ
しか安定に存在することができないため、実用的見地に
立てば、非常に限定された利用方法となる。もし、この
ようなフラーレン類およびエキソヘドラル誘導体の持つ
優れた酸化還元能力を、水溶液中においても発現させる
ことができれば、(電気化学的)触媒酸化還元、生理活
性、光導電性、磁性など、材料としての機能や特性を飛
躍的に向上させることが可能となるため、水中でもフラ
ーレン類の多価アニオン、ラジカルアニオン状態を極め
て安定に保持できるフラーレン脂質コンポシットマテリ
アルの開発が望まれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、フラ
ーレン類と疎水性合成脂質とのコンプレックスをあらか
じめ形成することによって、水中においてもフラーレン
類の多価アニオン、ラジカルアニオン状態を極めて安定
に保持することを可能にするフラーレン脂質コンポジッ
トマテリアルを提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明に係
るフラーレン脂質コンポジットマテリアルは、フラーレ
ン類と、下記一般式(I)
【0005】
【化15】
【0006】(式中、R ,R2 ,R3 ,R4 はそれ
ぞれ独立にアルキル基であり、それらのいずれか2つが
炭素数8以上を有するアルキル基であり、重合度nは1
0〜10,000の範囲である)で表されるポリ(スチ
レンスルホネート)テトラアルキルアンモニウム塩とか
らなることを特徴とする。
【0007】請求項2記載の発明に係るフラーレン脂質
コンポジットマテリアルは、下記一般式(II)
【0008】
【化16】
【0009】(式中、フラーレン類はC60,C70
82,C86のいずれかを示し、ポリ(スチレンスルホネ
ート)テトラアルキルアンモニウム塩の重合度nが10
〜10000までの範囲にあり、R1 ,R2 ,R3 ,R
4 はそれぞれ独立にアルキル基であり、それらのいずれ
か2つが炭素数8以上を有するアルキル基であり、組成
xは0.01〜0.99の範囲である)で表されること
を特徴とする。
【0010】請求項3記載の発明に係るフラーレン脂質
コンポジットマテリアルは、フラーレン類と、ポリ(L
−グルタメート)と、下記一般式(III )
【0011】
【化17】
【0012】(式中、R1 ,R2 ,R3 ,R4 はそれぞ
れ独立にアルキル基であり、それらのいずれか2つが炭
素数8以上を有するアルキル基である)で表されるテト
ラアルキルアンモニウムとからなり、ポリ(L−グルタ
メート)の重合度nが10〜10000までの範囲にあ
ることを特徴とする。
【0013】請求項4記載の発明に係るフラーレン脂質
コンポジットマテリアルは、下記一般式(IV)
【0014】
【化18】
【0015】(式中、フラーレン類はC60,C70
82,C86のいずれかを示し、ポリ(L−グルタメー
ト)の重合度nが10〜10000までの範囲にあり、
1 ,R2 ,R3 ,R4 はそれぞれ独立にアルキル基で
あり、それらのいずれか2つが炭素数8以上を有するア
ルキル基であり、組成x、y、zはそれぞれ0.01〜
0.99の範囲である。ただし、x+y+z=1であ
る。)で表されることを特徴とする。
【0016】請求項5記載の発明に係るフラーレン脂質
コンポジットマテリアルは、フラーレン類と、アルギン
酸ナトリウムと、下記一般式(V )
【0017】
【化19】
【0018】(式中、R1 ,R2 ,R3 ,R4 はアルキ
ル基であり、それらのいずれか二つが炭素数8以上であ
る)で表されるテトラアルキルアンモニウム塩とからな
り、アルギン酸の重合度nは10〜10000の範囲で
あることを特徴とする。
【0019】請求項6記載の発明に係るフラーレン脂質
コンポジットマテリアルは、下記一般式(VI)
【0020】
【化20】
【0021】(式中、フラーレン類はC60,C70
82,C86のいずれかを示し、アルギン酸ナトリウムの
重合度nが10〜10000までの範囲にあり、R1
2 ,R3,R4 はそれぞれ独立にアルキル基であり、
それらのいずれか2つが炭素数8以上を有するアルキル
基であり、組成x、y、zはそれぞれ0.01〜0.9
9の範囲である。ただし、x+y+z=1である。)で
表されることを特徴とする。
【0022】請求項7記載の発明に係るフラーレン脂質
コンポジットマテリアルは、フラーレン類と、ヘパリン
酸ナトリウムと、下記一般式(VII )
【0023】
【化21】
【0024】(式中、R1 ,R2 ,R3 ,R4 はアルキ
ル基であり、それらのいずれか二つが炭素数8以上であ
る)で表されるテトラアルキルアンモニウム塩とからな
り、ヘパリン酸の重合度nは10〜10000の範囲で
あることを特徴とする。
【0025】請求項8記載の発明に係るフラーレン脂質
コンポジットマテリアルは、下記一般式(VIII)
【0026】
【化22】
【0027】(式中、フラーレン類はC60,C70
82,C86のいずれかを示し、ヘパリン酸ナトリウムの
重合度nが10〜10000までの範囲にあり、R1
2 ,R3,R4 はそれぞれ独立にアルキル基であり、
それらのいずれか2つが炭素数8以上を有するアルキル
基であり、組成x、y、zはそれぞれ0.01〜0.9
9の範囲である。ただし、x+y+z=1である。)で
表されることを特徴とする。
【0028】請求項9記載の発明に係るフラーレン脂質
コンポジットマテリアルは、フラーレン類と、カルボキ
シメチルセルロースナトリウムと、下記一般式(IX):
【0029】
【化23】
【0030】(式中、R1 ,R2 ,R3 ,R4 はアルキ
ル基であり、それらのいずれか二つが炭素数8以上を有
するアルキル基である)で表されるテトラアルキルアン
モニウム塩であり、カルボキシメチルセルロースナトリ
ウムの重合度nが10〜10000までの範囲にあるこ
とを特徴とする。
【0031】請求項10記載の発明に係るフラーレン脂
質コンポジットマテリアルは、下記一般式(X)
【0032】
【化24】
【0033】(式中、フラーレン類はC60,C70
82,C86のいずれかを示し、カルボキシメチルセルロ
ースナトリウムの重合度nが10〜10000までの範
囲にあり、R1 ,R2 ,R3 ,R4 はそれぞれ独立にア
ルキル基であり、それらのいずれか2つが炭素数8以上
を有するアルキル基であり、組成xはそれぞれ0.01
〜0.99の範囲である。ただし、x+y+z=1であ
る。)で表されることを特徴とする。
【0034】請求項11記載の発明に係るフラーレン脂
質コンポジットマテリアルは、フラーレン類と、下記一
般式(XI)
【0035】
【化25】
【0036】(式中、R11,R12,R13,R14はアルキ
ル基であり、それらのいずれか三つが炭素数6以上を有
するアルキル基である)で表されるアルキルアンモニウ
ム塩とからなることを特徴する。
【0037】請求項12記載の発明に係るフラーレン脂
質コンポジットマテリアルは、下記一般式(XII )
【0038】
【化26】
【0039】(式中、R11,R12,R13,R14はアルキ
ル基であり、それらのいずれか三つが炭素数6以上を有
するアルキル基であり、組成xは0.01〜0.99の
範囲である)で表されることを特徴とする。
【0040】請求項13記載の発明に係るフラーレン脂
質コンポジットマテリアルは、フラーレン類と、下記一
般式(XIII)
【0041】
【化27】
【0042】(式中、R11,R12,R13,R14はアルキ
ル基であり、それらのいずれか三つが炭素数6以上を有
するアルキル基である)で表されるアルキルホスホニウ
ム塩とからなることを特徴する。
【0043】請求項14記載の発明に係るフラーレン脂
質コンポジットマテリアルは、下記一般式(XVI )
【0044】
【化28】
【0045】(式中、R11,R12,R13,R14はアルキ
ル基であり、それらのいずれか三つが炭素数6以上を有
するアルキル基であり、組成xは0.01〜0.99の
範囲である)で表されることを特徴とする。
【0046】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。
【0047】本発明のフラーレン脂質コンポジットマテ
リアルはフラーレン類と、アニオン性ポリマー、すなわ
ち疎水性合成脂質と、四級アルキルアンモニウム塩とか
らなるコンポジットマテリアル(複合材料)である。あ
るいは、本発明のフラーレン脂質コンポジットマテリア
ルは、フラーレン類と四級アルキルアンモニウム塩また
はホスホニウム塩とからなる複合材料である。
【0048】本発明で使用し得るフラーレン類として
は、C60,C70,C82,C86などのフラーレン
が挙げられる。本発明で使用したフラーレン類はバッキ
ーUSA社から高純度品を試薬として入手できる。
【0049】本発明で使用する合成脂質(アニオン性ポ
リマー)としては、ポリ(スチレンスルホネート)(P
SS−と略称する)、ポリ(L−グルタメート)、アル
ギン酸ナトリウム、ヘパリンナトリウム、カルボキシメ
チルセルロースナトリウムなどが挙げられる。これらの
アニオン性ポリマーの重合度nは10〜10000が好
ましい。
【0050】アルキルアンモニウムとしては、フラーレ
ン脂質コンポジットマテリアルがアニオン性ポリマーを
含むときは、一般式(III )
【0051】
【化29】
【0052】(式中、、R1 ,R2 ,R3 ,R4 は上記
と同じ意味を持つ)で表されるもの(例えば、ジドデシ
ルジメチルアンモニウム(2C12+ と略称する)、ジ
メチルジテトラデシルアンモニウム(2C14+ と略称
する)、ジヘキサデシルジメチルアンモニウム(2C16
+ と略称する)、ジメチルジオクタデシルアンモニウ
ム(2C18+ と略称する)、ジエイコシルジメチルア
ンモニウム(2C20+と略称する)、ジドコシルジメ
チルアンモニウム(2C22+ と略称する)、など)を
使用することができる。フラーレン脂質コンポジットマ
テリアルがアニオン性ポリマーを含まないときは、一般
式(XI)
【0053】
【化30】
【0054】(式中、R11,R12,R13,R14は上記と
同じ意味を持つ)で表されるもの(例えば、メチルトリ
(n−オクチル)アンモニウム(3C8+ と略称す
る)、トリ(n−デシル)メチルアンモニウム(3C10
+ と略称する)、トリ(n−ドデシル)メチルアンモ
ニウム(3C12+ と略称する)、メチルトリ(n−テ
トラデシル)アンモニウム(3C14+ と略称する)、
メチルトリ(n−オクタデシル)アンモニウム(3C18
+ と略称する)、など)を使用することができる。こ
れらのアルキルアンモニウムは公知の方法に従って製造
することができるか、あるいは市販されている。
【0055】一方、アルキルホスホニウムとしては、一
般式(XIII)
【0056】
【化31】
【0057】(式中、R11,R12,R13,R14は上記と
同じ意味を持つ)で表されるもの(例えば、メチルトリ
(n−オクチル)ホスホニウム(3C8+ と略称す
る)、トリ(n−デシル)メチルホスホニウム(3C10
+ と略称する)、トリ(n−ドデシル)メチルホスホ
ニウム(3C12+ と略称する)、メチルトリ(n−テ
トラデシル)ホスホニウム(3C14+ と略称する)、
メチルトリ(n−オクタデシル)ホスホニウム(3C18
+と略称する)、など)を使用することができる。こ
れらのアルキルホスホニウムは公知の方法に従って製造
することができるか、あるいは市販されている。
【0058】また、ポリイオンコンプレックスであるポ
リ(スチレンスルホネート)−アルキルアンモニウム塩
(アルキルアンモニウム−PSS- 塩)やポリ(スチレ
ンスルホネート)−アルキルホスホニウム塩(アルキル
ホスホニウム−PSS- 塩)は、N.ナカシマら、ジャ
ーナル オブ フィジカル ケミストリー、第B101
巻、第215頁(1997年)の方法に従って合成され
る。一例を挙げれば、ジ−n−テトラデシルジメチルア
ンモニウム−ポリ(スチレンスルホネート)(2N14
+ PSS- と略称する)は次式に従って合成される。
【0059】
【化32】
【0060】2C14+ PSS- の元素分析値を以下に
示す。実測値:炭素69.87%、水素11.20%、
窒素2.12%、硫黄4.82%、計算値(C3871
1031 ・1.75H2 O):炭素69.83%、水素
11.49%、窒素2.14%、硫黄4.91%であ
る。
【0061】本発明のフラーレン脂質コンポジットマテ
リアルはキャストにより成膜することができる。すなわ
ち、フラーレン/合成脂質有機溶媒溶液、例えばベンゼ
ン溶液をキャストし、風乾し、例えば55℃程度の温度
で約30分間アニーリングすることによりフィルムを得
ることができる。
【0062】
【実施例】本発明で使用するフラーレン脂質コンポジッ
トマテリアルの評価はすべてベーサルプレーングラファ
イト(BPG)電極上のキャスト膜として行った。BP
G電極は、まず1500番のエメリー紙で研磨後、粘着
テープでピールオフ処理し、その上にフラーレン脂質コ
ンポジットマテリアルのベンゼン溶液を10μlキャス
トし、室温で10分間風乾した。CV測定はフラーレン
脂質コンポジットマテリアル/BPGを作用極、Ag/
AgCl(飽和KCl)を参照極、Ptを対極として用
いた。測定溶液は0.5Mテトラエチルアンモニウムク
ロリド(Et4+ Cl- )水溶液をAr脱気し溶存酸
素を除去した。測定温度は25℃である。
【0063】本発明のフラーレン脂質コンポジットマテ
リアルの具体例のレドックス特性を下記実施例により、
さらに具体的に説明するが、本発明はフラーレンの化学
構造、アルキル鎖構造、重合度、フラーレン/PSS比
などについてこれら実施例になんら限定されない。
【0064】(実施例1)フラーレン脂質コンポジット
マテリアルとして、0.8mMC60/15.2mM2C
14+ PSS- (組成比は1/19、PSS- の重合度
n=1000)を用いた事例を示す。図1はC60/2C
14+ PSS- /BPG電極のCV特性(CVスキャン
速度100mV/秒、測定溶液のpHは5.3)であ
る。−300mV付近にC60/C60 -・、−900mV付
近にC60 -・/C60 2-の電極反応に基づく2対の酸化還元
波が観測された。このCVを25回以上繰り返すことに
よって、CV特性が安定化した。同様の測定をpH1
0.0のアルカリ条件下でも行ったが、結果は同一であ
った。図2に第一酸化還元波対のピーク電流値とCVス
キャン速度の平方根をプロットした。両者はきれいな直
線関係にあった。図3に第一酸化還元ピーク電位とCV
スキャン速度の対数値をプロットした。CVスキャン速
度が0.5V/秒以下の時拡散過程のみがピーク電流に
寄与し、0.5V/秒を越えるときはさらに電子移動過
程もピーク電流に寄与していることが示された。ここで
注目すべき点は、CVスキャン速度が0.5V/秒以下
のとき、第一酸化還元ピーク電位間のセパレーションは
60mVという理想的な拡散律速の極限値(56mV)
にほぼ等しいことである。なお、CVのピーク面積から
算出した電気化学的に活性なC60の量は、キャストした
全C60の約5%であった。
【0065】水溶液との接触下、フラーレン脂質コンポ
ジットマテリアル中におけるC60 -・の安定性を調べるた
め、C60/2C14+ PSS- /BPG電極を一定時間
−600mVに電位を保持し、C60 -・種を発生させた
後、再度CV測定を行った。図4に、電位補遺時時間ゼ
ロと90分の時のCVデータを比較した。両者にはほと
んど違いが見られず、C60 -・状態がフラーレン脂質コン
ポジットマテリアル中においていかに安定であるかが証
明された。このようなことは従来水中のフラーレン単独
膜では達成できなかった。一方、C60 2-状態は−115
0mVに電位を保持し安定度を調べたところ数分間も安
定であった。このようにフラーレン脂質コンポジットマ
テリアル中においては、C60のアニオンラジカル、ジア
ニオン状態が極めて安定であることが実証された。
【0066】(実施例2)実施例1で2C14+ の代わ
りに2C12+ 、2C16+ 、2C18+ 、2C20
+ 、2C22+ を使用したところ、実施例1と同様の結
果が得られた。
【0067】(実施例3)実施例でPSS- の代わり
に、ポリグルタメート(重合度n=1000)、アルギ
ン酸ナトリウム(重合度n=1000)、ヘパリン酸ナ
トリウム(重合度n=1000)、カルボキシメチルセ
ルロースナトリウム塩(重合度n=1000)を使用し
たところ、実施例1と同様の結果が得られた。
【0068】(実施例4)フラーレン脂質コンポジット
マテリアルとして、0.8mMC70/15.2mM2C
14+ PSS- (組成比は1/19,PSS- の重合度
n=1000)を用いた特性を示す。図5にC70/2C
14+ PSS- /BPG電極のCV特性(CVスキャン
速度100mV/秒、測定溶液のpHは5.3)であ
る。−300mV付近にC70/C70 -・、−900mV付
近にC70 -・/C70 2-の電極反応に基づく2対の酸化還元
波が観測された。このCVを25回以上繰り返すことに
よって、CV特性が安定化した。図6に第一酸化還元波
対のピーク電流値とCVスキャン速度の平方根をプロッ
トした。CVスキャン速度が0.005V/秒以下の
時、両者はきれいな直線関係にあり拡散過程のみがピー
ク電流に寄与していることが示された。またCVスキャ
ン速度が0.005/秒以下のとき、第一酸化還元ピー
ク電位間のセパレーションが60mVという理想的な拡
散律速の値にほぼ等しい。なお、CVのピーク面積から
算出した電気化学的に活性なC70の量は、キャストした
全C60の約5%であった。
【0069】水溶液との接触下、フラーレン脂質コンポ
ジットマテリアル中におけるC70 -・、C70 2-状態の安定
性はC60 -・、C70 2-種の状況とほとんど同一であり、C
70 -・状態は90分以上、C70 2-状態は数分安定であっ
た。
【0070】(実施例5)実施例4で2C14+ の代わ
りに2C12+ 、2C16+ 、2C18+ 、2C20
+ 、2C22+ を使用したところ、実施例4と同様の結
果が得られた。
【0071】(実施例6)実施例4でPSS- の代わり
に、ポリグルタメート(重合度n=1000)、アルギ
ン酸ナトリウム(重合度n=1000)、ヘパリン酸ナ
トリウム(重合度n=1000)、カルボキシメチルセ
ルロースナトリウム塩(重合度n=1000)を使用し
たところ、実施例4と同様の結果が得られた。
【0072】(実施例7)フラーレン脂質コンポジット
マテリアルとして、0.8mMC60/1.52mMトリ
(n−ドデシル)メチルアンモニウム塩(3C12+
略)(組成比は1/19)を用いた事例を示す。図7は
60/3C12+ /BPG電極のCV特性(CVスキャ
ン速度100mV/秒、測定溶液のpHは5.3)であ
る。−150mV付近にC60/C60 -・、−700mV付
近にC60 -・/C60 2-、−1250mV付近にC60 3-・
電極反応に基づく3対の酸化還元波が観測された。この
CVを25回以上繰り返すことによって、CV特性が安
定化した。同様の測定をpH10.0のアルカリ条件下
でも行ったが結果は同一であった。CVスキャン速度が
0.5V/秒以下のとき、第一酸化還元ピーク電位間の
セパレーションは60mVという理想的な拡散律速の極
限値(56mV)にほぼ等しく、CVのピーク面積から
算出した電気化学的に活性なC60の量は、キャストした
全C60の約5%であった。
【0073】水溶液との接触下、フラーレン脂質コンポ
ジットマテリアル中におけるC60 -・の安定性を調べるた
め、C60/3C12+ /BPG電極を一定時間−500
mVに電位を保持し、C60 -・種を発生させた後、電位保
持時間ゼロと30分の時のCVデータを比較したが両者
にはほとんど違いが見られず、C60 -・状態がフラーレン
脂質コンポジットマテリアル中において非常に安定であ
ることが示された。
【0074】(実施例8)実施例7で3C12+ の代わ
りに、3C8+ 、3C10+ 、3C10+ 、3C14
+ 、3C18+ を使用したところ、実施例7と同様の結
果が得られた。
【0075】(実施例9)フラーレン脂質コンポジット
マテリアルとして、C60/トリ(n−ドデシル)メチル
ホスホニウム塩(3C12+ と略称する)(組成比は1
/19)を用いた事例を示す。図8はC60/3C12+
/BPG電極のCV特性(CVスキャン速度100V/
秒、測定溶液のpHは5.3)である。−150mV付
近にC60/C60 -・、−700mV付近にC60 -・
60 2-、−1150mV付近にC60 2-/C60 3-・ の電極
反応に基づく3対の酸化還元波が観測された。このCV
を5回以上繰り返すことによって、CV特性が安定化し
た。このC60/3C12+ 系フラーレン脂質コンポジッ
トマテリアルの場合には、C60 -・、C60 2-のみならず、
60 3-・ の第三還元状態までが非常に安定に存在できる
ことを示している。
【0076】(実施例10)実施例9で3C12+ の代
わりに、3C8+ 、3C10+ 、3C14+ 、3C18
+ を使用したところ、実施例9と同様の結果が得られ
た。
【0077】
【発明の効果】本発明で示したように、フラーレン類と
疎水性合成脂質との複合構造をあらかじめ形成すること
によって、フラーレン類の多価アニオン、ラジカルアニ
オン状態を水中においても極めて安定に保持することが
可能になった。このような特性を利用し、フラーレン類
が本来有している強力な電子・正孔授受反応に関与した
電気化学的な触媒酸化還元、生理活性、光導電性、導電
性などの様々な機能性の付与ならびにその特性の飛躍的
な向上が期待できる。さらに、フラーレン自身は分子性
結晶であるが、PSS- のようなアニオン性ポリマー自
身がバインダー高分子として薄膜、厚膜、繊維などとし
て優れた加工性を有しているため、大面積でフレキシブ
ルなあるいはファイバーとして優れたフラーレン類含有
の機能性素材として利用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたC60/2C14+ PSS-
/BPG電極のCV特性(CVスキャン速度100mV
/秒、測定溶液のpHは5.3)を表す図である。
【図2】実施例1で得られたC60/2C14+ PSS-
/BPG電極の第一酸化還元波対のピーク電流値とCV
スキャン速度の平方根をプロットした図である。
【図3】実施例1で得られたC60/2C14+ PSS-
/BPG電極の第一酸化還元ピーク電位とCVスキャン
速度の対数値をプロットした図である。
【図4】実施例1で得られたC60/2C14+ PSS-
/BPGの電極の電位保持時間ゼロと90分の時のCV
データを比較した図である。
【図5】実施例4で得られたC70/2C14+ PSS-
/BPG電極のCV特性(CVスキャン速度100mV
/秒、測定溶液のpHは5.3)を表す図である。
【図6】実施例4で得られたC70/2C14+ PSS-
/BPGの第一の酸化還元波対のピーク電流値とCVス
キャン速度の平方根をプロットした図である。
【図7】実施例7で得られたC60/3C12+ /BPG
電極のCV特性(CVスキャン速度100mV/秒、測
定溶液のpHは5.3)を表す図である。
【図8】実施例9で得られたC60/3C12+ /BPG
電極のCV特性(CVスキャン速度100mV/秒、測
定溶液のpHは5.3)を表す図である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08L 5/00 C08L 5/00 25/18 25/18 77/00 77/00

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フラーレン類と、下記一般式(I) 【化1】 (式中、R1 ,R2 ,R3 ,R4 はそれぞれ独立にアル
    キル基であり、それらのいずれか2つが炭素数8以上を
    有するアルキル基であり、重合度nは10〜10,00
    0の範囲である)で表されるポリ(スチレンスルホネー
    ト)テトラアルキルアンモニウム塩とからなることを特
    徴とするフラーレン脂質コンポジットマテリアル。
  2. 【請求項2】 下記一般式(II) 【化2】 (式中、フラーレン類はC60,C70,C82,C86のいず
    れかを示し、ポリ(スチレンスルホネート)テトラアル
    キルアンモニウム塩の重合度nが10〜10000まで
    の範囲にあり、R1 ,R2 ,R3 ,R4 はそれぞれ独立
    にアルキル基であり、それらのいずれか2つが炭素数8
    以上を有するアルキル基であり、組成xは0.01〜
    0.99の範囲である)で表されることを特徴とするフ
    ラーレン脂質コンポジットマテリアル。
  3. 【請求項3】 フラーレン類と、ポリ(L−グルタメー
    ト)と、下記一般式(III ) 【化3】 (式中、R1 ,R2 ,R3 ,R4 はそれぞれ独立にアル
    キル基であり、それらのいずれか2つが炭素数8以上を
    有するアルキル基である)で表されるテトラアルキルア
    ンモニウムとからなり、ポリ(L−グルタメート)の重
    合度nが10〜10000までの範囲にあることを特徴
    とするフラーレン脂質コンポジットマテリアル。
  4. 【請求項4】 下記一般式(IV) 【化4】 (式中、フラーレン類はC60,C70,C82,C86のいず
    れかを示し、ポリ(L−グルタメート)の重合度nが1
    0〜10000までの範囲にあり、R1 ,R2 ,R3
    4 はそれぞれ独立にアルキル基であり、それらのいず
    れか2つが炭素数8以上を有するアルキル基であり、組
    成x、y、zはそれぞれ0.01〜0.99の範囲であ
    る。ただし、x+y+z=1である。)で表されること
    を特徴とするフラーレン脂質コンポジットマテリアル。
  5. 【請求項5】 フラーレン類と、アルギン酸ナトリウム
    と、下記一般式(V 【化5】 (式中、R1 ,R2 ,R3 ,R4 はアルキル基であり、
    それらのいずれか二つが炭素数8以上である)で表され
    るテトラアルキルアンモニウム塩とからなり、アルギン
    酸の重合度nは10〜10000の範囲であることを特
    徴とするフラーレン脂質コンポジットマテリアル。
  6. 【請求項6】 下記一般式(VI) 【化6】 (式中、フラーレン類はC60,C70,C82,C86のいず
    れかを示し、アルギン酸ナトリウムの重合度nが10〜
    10000までの範囲にあり、R1 ,R2 ,R3,R4
    はそれぞれ独立にアルキル基であり、それらのいずれか
    2つが炭素数8以上を有するアルキル基であり、組成
    x、y、zはそれぞれ0.01〜0.99の範囲であ
    る。ただし、x+y+z=1である。)で表されること
    を特徴とするフラーレン脂質コンポジットマテリアル。
  7. 【請求項7】 フラーレン類と、ヘパリン酸ナトリウム
    と、下記一般式(VII ) 【化7】 (式中、R1 ,R2 ,R3 ,R4 はアルキル基であり、
    それらのいずれか二つが炭素数8以上である)で表され
    るテトラアルキルアンモニウム塩とからなり、ヘパリン
    酸の重合度nは10〜10000の範囲であることを特
    徴とするフラーレン脂質コンポジットマテリアル。
  8. 【請求項8】 下記一般式(VIII) 【化8】 (式中、フラーレン類はC60,C70,C82,C86のいず
    れかを示し、ヘパリン酸ナトリウムの重合度nが10〜
    10000までの範囲にあり、R1 ,R2 ,R3,R4
    はそれぞれ独立にアルキル基であり、それらのいずれか
    2つが炭素数8以上を有するアルキル基であり、組成
    x、y、zはそれぞれ0.01〜0.99の範囲であ
    る。ただし、x+y+z=1である。)で表されること
    を特徴とするフラーレン脂質コンポジットマテリアル。
  9. 【請求項9】 フラーレン類と、カルボキシメチルセル
    ロースナトリウムと、下記一般式(IX): 【化9】 (式中、R1 ,R2 ,R3 ,R4 はアルキル基であり、
    それらのいずれか二つが炭素数8以上を有するアルキル
    基である)で表されるテトラアルキルアンモニウム塩で
    あり、カルボキシメチルセルロースナトリウムの重合度
    nが10〜10000までの範囲にあることを特徴とす
    るフラーレン脂質コンポジットマテリアル。
  10. 【請求項10】 下記一般式(X) 【化10】 (式中、フラーレン類はC60,C70,C82,C86のいず
    れかを示し、カルボキシメチルセルロースナトリウムの
    重合度nが10〜10000までの範囲にあり、R1
    2 ,R3 ,R4 はそれぞれ独立にアルキル基であり、
    それらのいずれか2つが炭素数8以上を有するアルキル
    基であり、組成xはそれぞれ0.01〜0.99の範囲
    である。ただし、x+y+z=1である。)で表される
    ことを特徴とするフラーレン脂質コンポジットマテリア
    ル。
  11. 【請求項11】 フラーレン類と、下記一般式(XI) 【化11】 (式中、R11,R12,R13,R14はアルキル基であり、
    それらのいずれか三つが炭素数6以上を有するアルキル
    基である)で表されるアルキルアンモニウム塩とからな
    ることを特徴するフラーレン脂質コンポジットマテリア
    ル。
  12. 【請求項12】 下記一般式(XII ) 【化12】 (式中、R11,R12,R13,R14はアルキル基であり、
    それらのいずれか三つが炭素数6以上を有するアルキル
    基であり、組成xは0.01〜0.99の範囲である)
    で表されることを特徴とするフラーレン脂質コンポジッ
    トマテリアル。
  13. 【請求項13】 フラーレン類と、下記一般式(XIII) 【化13】 (式中、R11,R12,R13,R14はアルキル基であり、
    それらのいずれか三つが炭素数6以上を有するアルキル
    基である)で表されるアルキルホスホニウム塩とからな
    ることを特徴するフラーレン脂質コンポジットマテリア
    ル。
  14. 【請求項14】 下記一般式(XVI ) 【化14】 (式中、R11,R12,R13,R14はアルキル基であり、
    それらのいずれか三つが炭素数6以上を有するアルキル
    基であり、組成xは0.01〜0.99の範囲である)
    で表されることを特徴とするフラーレン脂質コンポジッ
    トマテリアル。
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