JP2000014385A - フィブロネクチン遺伝子の発現を抑制するタンパク質をコードするdna - Google Patents

フィブロネクチン遺伝子の発現を抑制するタンパク質をコードするdna

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JP2000014385A
JP2000014385A JP10190001A JP19000198A JP2000014385A JP 2000014385 A JP2000014385 A JP 2000014385A JP 10190001 A JP10190001 A JP 10190001A JP 19000198 A JP19000198 A JP 19000198A JP 2000014385 A JP2000014385 A JP 2000014385A
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Takeshi Nakamura
岳史 中村
Kouichiro Oda
鈎一郎 小田
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 フィブロネクチン遺伝子の発現を抑制するタ
ンパク質、およびそのタンパク質をコードするDNAの
提供、並びに該タンパク質を認識する抗体の提供。 【解決手段】 フィブロネクチン遺伝子の発現を抑制す
るタンパク質をコードするDNAであって特定の塩基配
列を有するDNA;該DNAがコードするタンパク質;
該タンパク質を認識する抗体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フィブロネクチン
遺伝子の発現を抑制するタンパク質をコードするDN
A、該DNAによりコードされるタンパク質、並びに該
タンパク質を認識する抗体に関する。さらに詳細には、
本発明は、フィブロネクチン遺伝子の転写制御配列に含
まれるGリッチ配列に結合することによりフィブロネク
チン遺伝子の発現を抑制するタンパク質コードするDN
A、該DNAによりコードされるタンパク質、並びに該
タンパク質を認識する抗体に関する。
【0002】
【従来技術】フィブロネクチン(FN)は、細胞外マト
リックスの大型糖タンパク質であり、二量体としてイン
テグリンスーパーファミリーの一員である細胞表面受容
体α5β1に結合する(Buck他、1987, Annu.Rev.Cell
Biol.3:179-205;Hynes他、1982, J.Cell Biol.95:369-3
77; Rouslahti 、1988, Annu.Rev.Biochem.57:375-413
)。フィブロネクチンは複数のロッド状のドメインか
ら構成され、各ドメインはコラーゲンやヘパリン等の細
胞外マトリックスの成分またはその受容体に結合する
(Hynes 、1985, Annu.Rev.Cell Biol. 1:67-90 )。受
容体の細胞質ドメインは、付着タンパク質への結合を通
じて間接的にストレス繊維として知られるアクチンフィ
ラメントの束に結合する(Horowitz他、1986, Nature.
320:531-533)。フィブロネクチンがその受容体に結合
することにより、細胞骨格は細胞外マトリックスに接続
して(Burridge他、1988, Annu.Rev.CellBiol. 4:487-5
26; Hynes、1987, Cell.48:549-554; Jockush他、1995,
Annu.Rev.Cell.Dev. Biol.11:379-416; Ruoslahti 、1
988. Annu.Rev.Biochem. 57:375-413)、細胞の形態、
接着および移動を支配する。フィブロネクチンはまた、
細胞外マトリックスと細胞骨格との組織化を通じて細胞
の増殖と分化の調節にも関与している(Dufour他、198
8, TIG 4:198-207; Hynes他、1982, J.Cell Biol.95:36
9-377)。
【0003】フィブロネクチンの発現量は細胞の増殖力
と密接に関係しており、細胞が増殖を停止する傾向にあ
るときにフィブロネクチンの発現量は増加する。したが
って、老化した細胞はフィブロネクチンを多量に発現し
ている(Hara他、1993. Anal.Biochem.214:58-64; Kuma
zaki他、1991, Exp.Cell Res.195:13-19; Murano他、19
91, Mol.Cell.Biol. 11:3905-3914 )。これとは対照的
に、フィブロネクチンの発現は形質転換によって著しく
抑制される(Fagen 他、1981, J.Biol.Chem.256:520-52
5; Jichemsen他、1986, J.Virol.59:684-691; Nakamura
他、1992, J.Virol.66:6436-6450)。例えば、アデノウ
イルスE1AおよびE1B遺伝子で形質転換したラット
3Y1誘導細胞株XhoCは、フィブロネクチンをごく
わずかしか発現しない(Nakamura他、1992, J.Virol.6
6:6436-6450 )。また、大多数の腫瘍細胞でもほとんど
フィブロネクチンが発現しないために、細胞骨格と細胞
外マトリックスの組織が崩壊して腫瘍転移を促進してし
まう。
【0004】FNプロモーターには、G残基のみからな
るG10ストレッチ(転写開始点の上流−239塩基か
ら−230塩基)と、G10ストレッチにC残基が挿入
された2つのGCボックス(転写開始点の上流−105
塩基から−95塩基のGCuと、−54塩基から−44
塩基のGCd)が存在する。正の転写調節因子であるS
p1はこれらのGリッチ配列に結合することが知られて
いる。また、XhoC細胞から取得されたアデノウイル
スE1A誘導性の負の転写調節因子G10BPも、Gリ
ッチ配列に結合する(Suzuki他、1995, Mol.Cell.Biol.
15:5423-5433)。豊富なSp1を含有するHeLa細
胞抽出物中におけるFNプロモーター−CAT(クロラ
ムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ)融合遺伝
子の転写活性は、精製G10BPを添加することによっ
て阻害されることが確認されている。
【0005】フィブロネクチンの発現を有効に制御する
ことができる調節因子が提供されれば、フィブロネクチ
ンの発現と細胞増殖、癌、細胞老化などとの関係をより
明確化することができるものと考えられる。その結果、
さまざまな疾患の治療方法や治療薬、検査方法や検査薬
の開発がなされ得るものと期待される。また、このよう
な調節因子は、フィブロネクチン発現抑制のみならずよ
り広範囲な遺伝子の発現抑制に関与している可能性もあ
り、応用範囲の拡大も期待される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このような従来技術の
水準を考慮して、本発明は、フィブロネクチンの転写を
効果的に抑制することができる調節因子をコードする遺
伝子を単離し、該遺伝子を含む組み換えベクターおよび
その組み換えベクターを含む形質転換体を提供すること
によって、調節因子を容易に調製できるようにすること
を解決すべき課題とした。また本発明は、その調節因子
のアミノ酸配列を解明することによって、構造的特徴を
明らかにすることも解決すべき課題とした。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明者らは、FNプロモーターのG10ストレッ
チに結合し、かつフィブロネクチン遺伝子の発現を抑制
するタンパク質をコードするDNAのクローニングを種
々試行錯誤して試みた。その結果、cDNAライブラリ
ーを使用したワン・ハイブリッドスクリーニング法を用
いれば、目的DNAをクローニングすることができるこ
とを見出した。ここでいうワン・ハイブリッド・スクリ
ーニング法とは、目的とする転写因子と結合する配列
(X)をレポーター遺伝子の上流に組み込み、スクリー
ニングの対象となる遺伝子産物(Y)をある転写因子の
転写活性化部位に融合させた形で発現させ、結合配列
(X)と遺伝子産物(Y)の相互作用をレポーター遺伝
子の発現量を指標にして検出する方法である(Daniel
他、1992、Nucleic Acids Research. 20:1425; James
他、1991, Nucleic Acids Research. 19:5791; Siewek
e, 他、1996, Cell. 85:49-60)。
【0008】本発明者らは、HIS3遺伝子とlacZ
遺伝子の最小プロモーターにG10ストレッチを融合さ
せた遺伝子を含む試験株を、cDNAによりコードされ
たポリペプチドとGal4の転写活性化ドメインからな
る融合タンパク質の合成を指令するpGAD−XhoC
細胞cDNAライブラリーで形質転換することにより、
Gリッチ配列結合性調節因子GBP−1を見出して、本
発明を完成するに至った。
【0009】本発明の第1の側面によれば、配列表の配
列番号1に記載の塩基配列またはその一部を有するDN
Aであって、フィブロネクチン遺伝子の発現を抑制する
タンパク質をコードするDNAが提供される。また、こ
れらのDNAにハイブリダイズするDNAであって、フ
ィブロネクチン遺伝子の発現を抑制するタンパク質をコ
ードするDNAも提供される。本発明の一つの態様にお
いては、本発明のDNAはラット由来の遺伝子である。
本発明によれば、本発明の上記DNAを含む組み換えベ
クター、好ましくは発現用組み換えベクター、並びに、
上記組み換えベクターを含む形質転換体も提供される。
また本発明によれば、配列表の配列番号1に記載の塩基
配列のうちの連続する12以上の塩基配列を有するオリ
ゴヌクレオチド、並びに、配列表の配列番号1に記載の
塩基配列に相補的な塩基配列のうちの連続する12以上
の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドも提供される。
【0010】本発明の第2の側面によれば、本発明のD
NAが導入された形質転換体により産生されるタンパク
質であって、配列表の配列番号3から5に記載の塩基配
列に結合し、かつフィブロネクチン遺伝子の発現を抑制
することを特徴とするタンパク質、並びに、配列表の配
列番号2に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列にお
いて1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加
されたアミノ酸配列を有するタンパク質が提供される。
本発明の第3の側面によれば、本発明の上記タンパク質
を認識する抗体が提供される。抗体はモノクローナル抗
体でもポリクローナル抗体でもよい。
【0011】
【発明の実施の形態】以下において、本発明を実施する
ための方法および実施形態について説明する。本発明の
第1の側面により提供されるDNAは、フィブロネクチ
ン遺伝子の発現を抑制するタンパク質をコードする。本
発明のDNAには、配列表の配列番号1に記載の塩基配
列またはその一部を有するものが含まれる。配列番号1
に記載の塩基配列の一部を有する場合は、フィブロネク
チン遺伝子の発現を抑制するタンパク質をコードする限
り、その配列の長さと選択部分は制限されない。
【0012】また、本発明には、これらのDNAにハイ
ブリダイズするDNAも含まれる。その配列の長さと塩
基配列も、フィブロネクチン遺伝子の発現を抑制するタ
ンパク質をコードする限り制限されない。ハイブリダイ
ゼーションの条件は特に制限されないが、プローブDN
A配列と検出されるDNA配列との間の相同性が比較的
高くなるような条件を選択するのが一般的である。ハイ
ブリダイゼーションの条件は、ハイブリダイゼーション
溶液中のホルムアミド濃度および/または塩濃度、ハイ
ブリダイゼーション温度またはハイブリダイゼーション
時間などによって調節することができる。また、ハイブ
リダイゼーション後の洗浄条件(洗浄液の塩濃度等)に
よって調節することもできる。これらの条件は、プロー
ブの長さおよび/または塩基組成、並びに検出すべき塩
基配列とプローブの塩基配列との相同性の設定に応じ
て、当業者ならば適宜選択することができる。
【0013】ハイブリダイゼーションは、好ましくは配
列番号2に記載のアミノ酸をコードする塩基配列と70
%以上、さらに好ましくは80%以上、さらに好ましく
は90%、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは
98%以上の相同性を有する塩基配列を検出できる程度
の条件で行う。好ましいハイブリダイゼーションの条件
例として、ハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミ
ド濃度50%、SSC濃度5×SSC〜6×SSC、ハ
イブリダイゼーション温度37〜42℃を例示すること
ができる。
【0014】本発明のDNAがコードするフィブロネク
チン遺伝子の発現を抑制するタンパク質の一例として
は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するものが挙
げられる。組み換え遺伝子技術を使用してタンパク質を
宿主中において産生することを意図する場合、目的タン
パク質をコードする天然の遺伝子で使用されているコド
ンが使用する宿主中で使用頻度が低い場合にはタンパク
質の発現量が低くなる可能性がある。このような場合
は、コードされているアミノ酸配列を変化させることな
く、そのコドンを宿主での使用の頻度が高いコドンに変
化させることによって目的タンパク質の発現量を増大さ
せることが好ましい。
【0015】従って、本発明のDNAは、コードされる
タンパク質がフィブロネクチン遺伝子の発現を抑制する
限り、配列番号2に記載のアミノ酸配列またはそれに対
して1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加
されているアミノ酸配列をコードするDNAの全てを包
含する。配列番号1に記載の塩基配列はその好ましい一
態様を示すものである。
【0016】本発明によれば、本発明のDNAを含む組
み換えベクターが提供される。組み換えベクターの種類
は特に限定されず、その後の操作の目的に応じて適当な
ベクターを選択できる。一般的にはプラスミドベクタ
ー、ファージベクターなどが使用でき、これらは多くの
業者から市販されている。また、本発明のDNAがコー
ドする組み換えタンパク質を産生させたい場合には、発
現ベクターが使用される。
【0017】本発明によれば、上記組み換えベクターを
宿主に形質転換することによって作製される形質転換体
が提供される。宿主としては任意の好適な生物体を選択
でき、例えば微生物であり、真核微生物(動物細胞、植
物細胞、酵母など)でも原核微生物(大腸菌など)でも
よい。形質転換の方法は当業者に公知の方法を使用する
ことができ、具体的には、リン酸カルシウム法、エレク
トロポレーション、マイクロインジェクション、リポフ
ェクション法などを適宜使用できる。
【0018】本発明によれば、配列表の配列番号1に記
載の塩基配列のうちの連続する12以上の塩基配列を有
するオリゴヌクレオチド、並びに、配列表の配列番号1
に記載の塩基配列に相補的な塩基配列のうちの連続する
12以上の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドも提供
される。本発明のオリゴヌクレオチドは、例えば適当な
標識で標識化することによってプローブとして利用する
ことができる。標識の種類は特に制限されるものではな
く、放射性同位元素(例えば32Pや125I )、蛍光物質
(例えばフルオレセイン)、酵素基質などを使用目的に
応じて選択して用いることができる。こうして調製した
プローブは、例えば検体から取得した染色体やゲノムD
NAなどとハイブリダイズさせることによって疾患の診
断に利用することができる。ハイブリダイゼーションの
程度を測定するためには、サザンハイブリダイゼーショ
ン、FISH法、PCRなどを利用することができる。
また、配列表の配列番号1に記載の塩基配列に相補的な
塩基配列のうちの連続する12以上の塩基配列を有する
オリゴヌクレオチドは、配列表の配列番号1に記載の塩
基配列からなるDNAに添加されることによって、該D
NAから蛋白質が生合成されるのを抑制する働きを行う
こともある。
【0019】本発明の第2の側面により提供されるタン
パク質は、フィブロネクチン遺伝子の発現を抑制する作
用を有している。本発明のタンパク質は、FNプロモー
ターの下流GCボックス(GCd)に比較的強く結合す
る。また、G10ストレッチおよび上流CGボックス
(GCu)にも結合する。本発明のタンパク質のフィブ
ロネクチン発現抑制作用は、これらのGリッチ配列に結
合することによって発現するものと考えられる。特に下
流GCボックス(GCd)はフィブロネクチン転写効率
に大きな影響を与えることから、本発明のタンパク質は
効果的に転写を抑制することができる。このため、FN
プロモーターの正の調節因子であるSp1との共存下に
おいても、本発明のタンパク質はフィブロネクチンの発
現を十分に抑制し得る。
【0020】配列番号2に記載のアミノ酸配列は、本明
細書の実施例でクローニングされた遺伝子の塩基配列に
基づいて誘導されたアミノ酸配列であり、本発明のタン
パク質の好ましい態様を示したものである。一般に、天
然に存在するタンパク質の中には、それをコードする遺
伝子の多形性や変異のために、あるいはタンパク質生成
後の修飾反応などによって、アミノ酸配列中に1若しく
は数個のアミノ酸残基の欠失、付加、置換などの変異が
生じる場合があるが、それにも関わらずそのような変異
が生じないタンパク質と実質的に同等の生理学的活性を
有するものがある。あるいはまた、タンパク質組み換え
工学の技術を使用して人工的にタンパク質に変異を施す
ことも可能であり、この場合にも該タンパク質の生理学
的活性に実質的に変化を生じさせることなく変異させる
ことが可能である。これらの変異を有するタンパク質も
フィブロネクチン遺伝子の発現を抑制するという機能を
有する限り、本発明のタンパク質の範囲に含まれる。
【0021】また、本発明のタンパク質は、天然のタン
パク質でも組み換えタンパク質でも、あるいは化学合成
タンパク質でもよく、その起源は特に限定されない。天
然のタンパク質を得たい場合には、目的タンパク質を発
現している組織または培養細胞の培養物を出発原料とし
て、塩析、アフィニティ−クロマトグラフィー、イオン
交換クロマトグラフィーまたはゲル濾過などのタンパク
質の精製のための公知の方法を適宜組み合わせて精製す
ることが可能である。例えば、アフィニティ−クロマト
グラフィーを利用する場合には、本発明のタンパク質に
対する抗体を結合させた担体を用いることにより目的タ
ンパク質を精製することができる。
【0022】また、組み換えタンパク質を得たい場合に
は、上記のように目的タンパク質をコードする本発明の
遺伝子を好適な発現ベクター中にクローニングして得ら
れた組み換え発現ベクターを宿主(大腸菌、酵母など)
に形質転換し、形質転換体を好適な条件下で培養するこ
とにより目的とするタンパク質を産生させることができ
る。目的タンパク質の単離のためには、目的タンパク質
を培養上清中に分泌させることが一般には好ましく、こ
れは、組み換えベクター/宿主の組み合わせや培養条件
などを適宜選択することによって行うことができる。ま
た、所望のアミノ酸配列を有するタンパク質を化学合成
的に製造することも当業者ならば適宜行うことができ
る。
【0023】本発明の第3の側面により提供される抗体
は、本発明のタンパク質を認識する抗体である。本発明
の抗体は、ポリクローナル抗体であってもモノクローナ
ル抗体であってもよい。本発明の抗体は、通常用いられ
る方法によって製造することができる。例えば、本発明
のタンパク質をウシ血清アルブミンなどの適当な担体と
ともに動物体内(例えばラット、マウス、ウサギ、ヤ
ギ、ヒツジなど)に注射し、一定期間経過後に血清を精
製することによって本発明の抗体を得ることができる。
本発明の抗体を利用すれば、本発明のタンパク質の検出
を行うことができる。本発明の抗体を利用したタンパク
質の認識は、例えばELISA、ウエスタンブロッティ
ング、ラジオイムノアッセイ、免疫沈降、蛍光抗体法な
どによって行うことができる。これらの方法を利用すれ
ば、本発明の抗体をフィブロネクチンの発現制御の研究
や疾患治療に役立てることができるものと期待される。
【0024】
【実施例】以下に具体例を記載して、本発明をさらに詳
細に説明する。以下の例に記載される材料、割合、手順
等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更するこ
とができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具
体例に制限されるものではない。
【0025】以下の具体例で使用した3Y1細胞は、Fi
scher ラット胚繊維芽細胞のクローン化株である(Kimu
ra他、1975, Int. J. Cancer 15:694-706)。またXh
oC細胞は、アデノウイルス2型E1AおよびE1B遺
伝子による3Y1細胞の形質転換によって樹立した(Na
kamura他、1992, J.Biol.66:6436-6450 )。またg12
細胞は、アデノウイルス2型E1A12ScDNA(Zerle
r他、1986, Mol.Cell.Biol. 6:887-899)がマウス乳癌
ウイルス長末端反復配列(Lee 他、1981, Nature 294:2
28-232)の下流に存在するPM12SGを3Y1細胞株
にトランスフェクションすることによって樹立した。さ
らにYG1細胞は、3Y1細胞中にpCMV−GBP−
1およびpSV2neo(Southern他、1982, J.Mol.Ap
pl.Genet., 1:327-341)を導入することによって樹立し
たものであり、GBP−1を発現する。これらの細胞株
は10%ウシ胎児血清(FCS)を補充したダルベッコ
改変イーグル最小必須培地中で37℃で培養した。
【0026】例1:GBP−1の調製と構造解析 (1)pGAD−XhoCcDNAライブラリーの構築 本発明者は、FNプロモーターのGリッチ配列と結合
し、かつフィブロネクチン遺伝子の発現を抑制するタン
パク質をコードするDNAのクローニングを種々試行錯
誤して試みた結果、以下に述べるcDNAライブラリー
を使用したワン・ハイブリッドスクリーニングによる方
法を用いることによって目的DNAのクローニングに成
功した。Okayama 他の方法(Okayama 他、1987, Method
s in ENZYMOLOGY 154:3-28)に従ってXhoC細胞から
全細胞RNAを調製し、XhoI部位を有するオリゴd
Tプライマーを使用してポリA+RNAを逆転写した。
合成したcDNAの両末端を平滑末端化した後にEco
RIリンカーにライゲートした。EcoRIおよびXh
oIで切断した後、cDNA(100ng)をEcoR
I/SalIで切断した酵母発現プラスミドpGAD4
24(Clontech)(100ng)に16℃で48時間ラ
イゲートした。ライゲートしたcDNAをフェノール/
クロロホルムで抽出し、マイクロン10(MILLIPORE )
で超遠心し、Bio−Rad遺伝子パルサーを使用して
大腸菌DH10Bにエレクトロホレーションすることに
よって、pGAD−XhoCcDNAライブラリーを作
製した(図1)。このライブラリーは、Gal4の転写
活性化ドメイン(AD)とcDNAでコードされたポリ
ペプチドからなる融合タンパク質の発現を、ADH1プ
ロモーターから指令し、酵母中でプラスミドとして自律
的に複製する。このライブラリーは、約0.9kbの平
均cDNAサイズを有する3.1×105 個の一次組み
換え体を含んでいた。
【0027】(2)ワン・ハイブリッド・スクリーニン
グ 5’末端にEcoRI認識配列を有する24bpのオリ
ゴヌクレオチドACCAAAGGGGGGGGGGAA
GTTCTC(配列番号3)を同じ方向に3個連結した
コピーを、HIS3プロモーターの上流に位置するpH
ISiのEcoRI−SmaI部位に挿入することによ
って、リポータープラスミドpHISi−G10を構築
した。同様にして、該オリゴヌクレオチドを同じ方向に
3個連結したコピーを、CYC1プロモーターの上流に
位置するpLacZのEcoRI−SmaI部位に挿入
することによって、リポータープラスミドpLacZ−
G10を構築した(図1)。該オリゴヌクレオチドは、
フィブロネクチン遺伝子の転写開始点の上流−245塩
基から−222塩基に位置するFNプロモーター配列で
あり、下線で示すG10ストレッチを含んでいる。Sacc
haromyces cerevisiae株YM4271(His−、Ur
a−、Leu−)をこれらの2つのプラスミドで形質転
換し、SD培地(His−)上に置いた。HIS3遺伝
子の残存発現のためにゆっくりと生育するが、60mM
の3−アミノトリアゾール(3−AT)の存在下では生
育できなかったクローンを選択した。これらのクローン
をさらに以下に記載する手順でβ−ガラクトシダーゼの
残存発現について試験し、スクリーニングに適した形で
2つのリポータープラスミドが組み込まれているクロー
ンYMHL−G10を最終的に樹立した。
【0028】YMHL−G10株をpGAD−XhoC
cDNAライブラリー(約2×106 のLeu+コロニ
ーを産生するもの)で形質転換し、30mMの3−AT
を含有するSD培地(ロイシンとヒスチジンを欠く)中
で生育したHis+ Leu+形質転換体のβ−ガラク
トシダーゼ活性を測定した。生育したコロニー(His
+ コロニー;116コロニー)を、トリプトファンと
ロイシンを含有する培地上に置いたナイロンフィルター
上にストリークし、フィルターを30mMの3−ATを
含有する寒天SD培地(His−)上にて30℃で2日
間インキュベートした。次いで、フィルターを液体窒素
に浸し、コロニーを3回凍結融解した。フィルターを、
0.01%のX−galを含有するZ緩衝液(60mM
のNa2HPO4 ・7H2 O、60mMのNaH2 PO4
・7H2 O、10mMのKCl、1mMのMgSO4
7H2O、50mMのβ−メルカプトエタノール、pH
7.0)中に浸しておいたワットマン3MMフィルター
上に30℃で1〜2時間重ねた。青色を呈してβ−ガラ
クトシダーゼを発現しているクローン3個を単離した。
【0029】単離した各クローンからライブラリープラ
スミドを以下の手順で回収した。先ず、陽性クローンを
5mlのSD−LEU培地に植菌し、24時間培養し
た。培養液1.5mlをマイクロ遠心チューブに取っ
て、10,000rpmで10秒間遠心して菌体を回収
した。上清を捨て、菌体を0.1mlのTELT溶液に
懸濁した。0.1mlのフェノール:クロロホルム
(1:1)と酸洗浄ガラスビーズを約0.2g加え、2
分間激しくボルテックスにかけた。12,000rpm
で1分間遠心して中間層を取らないように上層を別のチ
ューブに取り、0.2mlのエタノールを加えてエタノ
ール沈殿してDNAを回収した。70%エタノールで洗
浄した後、十分乾燥して30μlのTE緩衝液に溶解し
た。得られたDNA溶液を大腸菌HB101株にエレク
トロポレーション法で導入した。この大腸菌をM9培地
で培養し、得られた形質転換体からプラスミドを回収し
た。
【0030】回収したプラスミドを、試験株の再形質転
換のために使用した。コロニー(His+ 、β−ga
l+ )の単離をさらに2回繰り返し、2個のクローン
を最終的に選択した。このプラスミドをキアウェル8プ
ラス(QIAwell 8 plus(登録商標、キア
ゲン社))キットを用いて、取扱説明書に従って調製
し、プラスミドのインサートの塩基配列をパーキンエル
マー社製DNAシークエンサー373Aを用い、Taq
サイクルシークエンシング法(Biotechniques, 7,494-4
99 )により決定した。6.6kbのcDNAインサー
トを含有する一つのクローンはヒトエラスチン遺伝子と
相同性を有し、1.7kbのインサートを含有する他方
のクローンは、後述するように塩基性領域−ロイシンジ
ッパーモチーフを伴う配列を有していた。
【0031】(3)λZapIIcDNAライブラリー
のスクリーニング GBP−1をコードするcDNAクローンを、G10ス
トレッチを含有する32P標識オリゴヌクレオチドをプロ
ーブとして使用して、λZapIIXhoC細胞cDN
AλZapIIからの約5×105個の組み換えファー
ジをスクリーニングすることによって単離した。先ずc
DNAライブラリーを、クローニングベクターとしてλ
ZapIIを使用してXhoC細胞から構築した。mR
NA(5μg)をλZapIIクローニングキット(ST
RATAGENE)を使用して逆転写し、5’末端にEcoRI
部位を有し、3’末端にXhoI部位を有するcDNA
を100ngのλZapIIアームに挿入した。組み換
えDNAをGigapackII Packaging Extract(STRATAGEN
E)を使用してパッケージングし、λZapII−Xh
oCcDNAライブラリーを作製した。
【0032】cDNAライブラリーを、137mmのデ
ィッシュ当たりの組み換え体が約5×104 個になるよ
うにLBアガープレート上にプレートし、プラークが確
認できるまで42℃で3〜4時間インキュベートした。
20mMのイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノ
シド(IPTG)で浸したニトロセルロースフィルター
をプレート上に重ね、タンパク質の発現を37℃で一晩
誘導した。フィルターを結合緩衝液(20mMのHEP
ES(N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2
−エタンスルホン酸)、pH7.9、40mMのKC
l、10mMのMgCl2 、1mMのDTT、0.1m
MのZnSO4)中で洗浄し、6Mの塩酸グアニジンを
含む50mlの結合緩衝液中でフィルターを4℃で15
分間インキュベートすることによってタンパク質を変性
させた。タンパク質を、1:2の割合で連続希釈して調
製した6〜0.1875Mの塩酸グアニジンをぞれぞれ
含む結合緩衝液中にて4℃で5分間戻させた。フィルタ
ーを、滅菌5%スキムミルクを加えた結合緩衝液中にて
4℃で30分間ブロッキングし、10μg/mlのポリ
(dI−dC)ポリ(dI−dC)と、G10ストレッ
チを含む1×106cpm/mlの32P標識27bpオ
リゴヌクレオチドとを含有する結合緩衝液中でインキュ
ベートした。フィルターを結合緩衝液中で洗浄し、−8
0℃で増強スクリーンを使用してオートラジオグラフィ
ーをとった。
【0033】一つの陽性クローンは1.6kbのcDN
Aインサートを含んでおり、その配列はpGAD−Xh
oCcDNAライブラリーからクローニングされた1.
7kbのcDNAの配列と同一であった。このcDNA
によってコードされるGリッチ配列結合タンパク質をG
BP−1と命名した。
【0034】(4)GBP−1の構造解析 λZapIIクローンのGBP−1cDNAインサート
の配列を図2に示すとおりに決定した(配列番号2)。
オープンリーディングフレームからの推定アミノ酸配列
は385個のアミノ酸からなる。黒ボックスで示される
塩基性領域がコード領域の中央およびC末端寄りに位置
している。中央の塩基性領域中では、24残基のうち9
個のアミノ酸がアルギニンおよびリジンである。プロリ
ンに隣接する4個の塩基性アミノ酸のストレッチ(ボッ
クス中に下線で示す)は核局在化シグナルである可能性
がある。4個の疎水性アミノ酸が7アミノ酸ごとに存在
するロイシンジッパー領域が中央の塩基性領域の下流に
位置している。C末端寄りの塩基性領域は26残基から
構成され、11種類の塩基性アミノ酸を含む。オープン
ボックスで示したGBP−1のC末端部分は通常とは異
なり酸性であり、49残基のうち17個のアミノ酸はグ
ルタミン酸とアスパラギン酸である。この推定アミノ酸
配列をタンパク質データバンク(GenBank )で検索した
結果、コドン1から235のGBP−1のN末端側半分
がレジニフェラトキシン(resiniferatoxin )結合タン
パク質(Ninkina 他、1994, Mol.Bran Res.22:39-48 )
のアミノ酸配列と同一であることが判明した。
【0035】GBP−1cDNAインサートをプラスミ
ドpBluescript SK- に挿入し、該プラスミドを大腸菌X
LI−blueに導入して形質転換体を作製した。この
形質転換体をRat−GBP−1と名付け、平成10年
6月19日に工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託
した。該形質転換体の受託番号は、FERM P−16
856である。
【0036】例2:GBP−1発現ベクターの構築 pCMV−GBP−1の構築のために、Bluescript SK
(-)GBP−1を、XL−1ブルー細胞を組み換え体お
よびヘルパーファージで製造業者(STRATAGENE)の指示
に従って同時感染させた後に、λZapII組み換え体
から切り出した。DNAをApaIおよびBamHIで
切断し、GBP−1cDNAを含有する1.5kbのフ
ラグメントをpCMVのApaI−BamHI部位に挿
入してpCMV−GBP−1を作製した。
【0037】pGEX−GBP−1をポリメラーゼ連鎖
反応(PCR)産物を使用して構築した。GBP−1c
DNAをpCMV−GBP−1DNAを鋳型として使用
し、BamHI認識配列に融合した位置1〜18の上流
センスプライマーと、EcoRI認識配列に融合した位
置1144〜1163の下流アンチセンスプライマーを
使用して合成した。PCR産物をBamHIとEcoR
Iで切断し、pGEX−2TKのBamHI−EcoR
I部位に挿入してpGEX−GBP−1を作製した。G
BP−1cDNAのN末端部分およびC末端部分の2つ
のPCR産物を結合することによってpGEX−GBP
−1△b−Zipを構築した。GBP−1cDNAのN
末端部分を、BamHI認識配列に融合した位置1〜1
8の上流センスプライマーと、SmaI認識配列に融合
した位置497〜517の下流アンチセンスプライマー
を使用して合成し、pGEX−2TKのBamHI−S
maI部位に挿入してpGEX−GBP−1Nを作製し
た。GBP−1cDNAのC末端部分を、SmaI認識
配列に融合した位置738〜756の上流センスプライ
マーと、EcoRI認識配列に融合した位置1144〜
1163の下流アンチセンスプライマーを使用して合成
し、pGEX−GBP−1NのSmaI−EcoRI部
位に挿入してpGEX−GBP−1△b−Zipを作製
した。
【0038】例3:FNプロモーター活性に対するGB
P−1の作用 FNプロモーター活性化の要因とGBP−1の影響につ
いて検討した。3Y1細胞のコンフルエント前の培養物
を3群に分けてトランスフェクションした。1群は、−
1908塩基までのFNプロモーターを含むpF190
0CATのみでトランスフェクションした。別の1群
は、該pF1900CATと、Sp1をコードする発現
ベクターpRSV−Sp1とを同時トランスフェクショ
ンした。最後の1群は、該pF1900CATと、GB
P−1をコードする発現ベクターpCMV−GBP−1
とを同時トランスフェクションした。各トランスフェク
ションは、ChenとOkayamaにより改良されたリン酸カル
シウム共沈殿法(Chen他、1987, Mol.Cell.Biol.7:2745
-2752 )にしたがって行った。トランスフェクションし
たDNAの全量は径9cmの皿当たり20μgに調整し
た。各群を2つに分けて、一方を10%FCSを含む培
地中で、他方を0.5%FCSを含む培地中で37℃で
培養した。pF1900CATのみでトランスフェクシ
ョンした群について、皿あたりの細胞数と、酸不溶性画
分中への〔3H〕チミジン取り込み速度を24時間間隔
で測定した。
【0039】また、全ての群について、24時間間隔で
細胞抽出物を調製し、pF1900CATのFNプロモ
ーター活性(CAT活性)を以下の手順で測定した。す
なわち、コンフルエント前の単層の3Y1およびYG細
胞を、Gリッチ配列中の塩基を置換したFNプロモータ
ー/ルシフェラーゼ構築物(20μg)でトランスフェ
クションし(Gorman他、1982, Mol.Cell.Biol.2:1044-1
051 )、0.5%FCSを含む低血清培地中に48時間
維持した。次いで、培地を10%のFCSを含有する新
たな培地に交換することによって、細胞の生育を刺激し
た。細胞抽出物から取得した120μgのタンパク質と
100μlのルシフェラーゼ基質(Nippongene)を用い
て、細胞のルシフェラーゼ活性をLB9501ルミノメ
ーター(Berthold)で測定した。結果は、pF1900
CATのみでトランスフェクションした群の最低値を1
とした相対値で示した。
【0040】結果を図3にまとめて示す。図3Aに示す
通り、細胞数は、10%FCSで培養した場合には約4
倍に増加し、0.5%FCSで培養した場合には約2.
5倍に増加した。〔3H〕チミジンの取り込み速度は時
間経過とともに少しずつ減少し、120時間後には極わ
ずかしか取り込まれなくなった。速度の減少は0.5%
FCSの培地の場合の方が、10%FCSの培地の場合
よりも早かった。pF1900CATのみをトランスフ
ェクションした場合のFNプロモーター活性は直線的に
増大し、細胞を0.5%FCSで培養したときの方が、
10%FCSで培養したときよりも活性は約2倍高かっ
た(図3B)。これらの結果は、FNプロモーターの活
性化が細胞密度よりも細胞増殖の低下に依存しているこ
とを示している。pRSV−Sp1を同時トランスフェ
クションした群は、細胞増殖の低下の程度に依存して、
両培地の細胞ともFNプロモーター活性が刺激された。
逆に、pCMV−GBP−1を同時トランスフェクショ
ンした群は、両培地の細胞ともFNプロモーター活性が
抑制された。細胞を10%FCSで培養した場合には活
性の抑制がより大きかった。これらの結果は、FNプロ
モーター活性はSp1によって刺激され、GBP−1に
よって抑制されることを示唆している。
【0041】例4:FNプロモーター中のGリッチ配列
とGBP−1作用の関係 細胞周期進行中のFNプロモーター活性に対するGBP
−1の抑制作用、およびこの作用の発現とプロモーター
中の3種のGリッチ配列の関係を検討した。3Y1およ
びYG1細胞のコンフルエント前の培養物を4群に分
け、(1)各10μgのpFGGGlucおよびpRS
V−Sp1、(2)各10μgのpFGGGlucおよ
びpRSV0、(3)各10μgのpFggglucお
よびpRSV0、または(4)各10μgのpFggG
lucおよびpRSV0でそれぞれをトランスフェクシ
ョンした。ここで、YG1細胞は、上記のようにpCM
V−GBP−1を3Y1細胞に導入することによって樹
立した細胞であり、GBP−1を発現する。luc構築
物は、−414塩基までのFNプロモーター配列を含ん
でいる。また、pFGGGluc、pFgggluc、
pFggGlucの「G」または「g」は、順にG10
ストレッチ、上流GCボックス(GCu)、下流GCボ
ックス(GCd)の塩基置換の有無を示す。すなわち、
「G」は野生型配列を示し、「g」は塩基置換した配列
を示す。なお、G10ストレッチ、GCu、Gcdの塩
基配列をそれぞれ配列表の配列番号3、4、5に示す。
トランスフェクションした細胞を0.5%FCSを含む
低血清培地中に48時間維持し、細胞を休止状態にし
た。次いで、培地を10%FCSを含有する新しい培地
に交換することによって細胞を増殖刺激した。細胞を4
時間間隔で採取し、細胞抽出物からの120μgのタン
パク質を使用して例3に記載される方法でルシフェラー
ゼ活性を分析した。未刺激YG1細胞からの0時間抽出
物によって発現した活性を1とした。
【0042】酸可溶性画分への〔3H〕チミジンの取り
込みは、G1期とS期の境界である刺激後13〜14時
間で増加し始めた。3Y1細胞をpFGGGlucでト
ランスフェクションした場合、プロモーター活性はG1
からSへの細胞周期の進行に伴って減少し、24時間で
最小のレベルに達した(図4A)。pRSV−Sp1で
同時にトランスフェクションしても減少にほとんど影響
しなかったが、活性は有意に増加した。YG1細胞で
は、pFGGGlucのプロモーター活性は、pRSV
−Sp1による同時トランスフェクションにも係わら
ず、休止状態(時間0)でさえ非常に低く、外来的に発
現したGBP−1がプロモーター活性をほぼ完全に抑制
したことが示された。3Y1およびYG1細胞を、全G
リッチ配列中に塩基置換を有するpFggglucでト
ランスフェクションした場合、プロモーター活性は細胞
周期の進行全体を通じて両細胞とも低かった(図4
B)。3Y1細胞とYG1細胞の間で有意な相違は見ら
れなかったので、GBP−1は塩基置換したGリッチ配
列のいずれにも結合できないことが示唆された。Sp1
モチーフGGGCGCを損なうことなく置換したにもか
かわらず、この置換によって休止状態の3Y1細胞で発
現したプロモーター活性は減少した。
【0043】しかし、3Y1細胞をpFggGlucで
トランスフェクションすると(図4C)、休止状態で高
いプロモーター活性が発現し、プロモーター活性は、p
FGGGlucを使用した場合に観察されたのと同様に
(図4A)、G1からS期への進行に伴って減少した。
YG1細胞で発現した活性は細胞周期の進行全体を通じ
て非常に低かった。一方、GCd中に塩基置換を有する
pFgGgCATのプロモーター活性は、pFgggC
ATにより発現されたものと同様に、3Y1細胞および
YG1細胞の両方で低レベルの活性を発現した(データ
は示さず)。これらの結果は、下流GCボックス(GC
d)が、FNプロモーター活性並びにGBP−1による
活性の抑制のために最も重要な部位であることを示して
いる。
【0044】例5:Sp1とGBP−1の競合 細胞周期がG1期からS期へ進行する間のFNプロモー
ターの活性の変化と、GBP−1とSp1の発現レベル
の関係を調べた。3Y1細胞とYG細胞を、0.5%F
CSを含む低血清培地中に48時間維持することによっ
て細胞を休止状態にした。次いで、培地を10%FCS
を含有する新しい培地に交換することによって細胞を増
殖刺激した。4時間間隔で細胞をSDS含有緩衝液中に
溶解することによって全細胞抽出物を調製し、得られた
抽出物の一部を電気泳動し、GBP−1およびSp1の
量をウエスタンブロッティングによって分析した。この
際、全細胞抽出物の調製とウエスタンブロッティングは
以下に記載する手順で行った。
【0045】全細胞抽出物は、Manley他(Manley他、19
80, Proc. Natl. Aacd. Sci. USA,77:3855-3859 )の
方法にならって調製した。すなわち、細胞を、0.5m
MのMgCl2 を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PB
S)中で洗浄し、4倍容量の高張緩衝液(10mMのト
リス塩酸、pH7.9(4℃)、1mMのEDTA、5
mMのジチオトレイトール(DTT)、0.5mMのフ
ェニルメチルスルホニルフルオライド(PMSF))中
に懸濁した。20分後に、細胞をホモジナイズし、4倍
容量のスクロース/グリセロール溶液(50mMのトリ
ス塩酸、pH7.9(4℃)、10mMのMgCl2
25%(wt/vol)のスクロース、50%(vol
/vol)のグリセロール、2mMのDTT、0.5m
MのPMSF)を添加した。穏やかに攪拌した後、1倍
容量の飽和(NH42 SO4を滴下し、ホモジネートを
日立RP65Tローター中で4℃で3時間53,000
rpmで遠心した。上清に固体(NH42 SO4を最終
濃度0.33g/mlの濃度で添加し、上清を日立RP
65Tローター中で30分間遠心した。沈殿を最小容量
のHM緩衝液(20mMのHEPES(N−2−ヒドロ
キシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン
酸)、pH7.9、100mMのKCl、12.5mM
のMgCl2、0.1mMのEDTA、17%(vol
/vol)グリセロール、2mMのDTT、0.5mM
のPMSF)中に溶解した。試料を1リットルのHM緩
衝液の2回の交換に対して少なくとも10時間透析し、
日立RP100ATローター中にて37,000rpm
で1時間遠心した。上清を乾燥冷却エタノール中で急速
に凍結し、−80℃で保存した。タンパク質濃度を染料
結合アッセイ(Bio-Rad Laboratories)で測定した。
【0046】また、ウエスタンブロッティングは、以下
の手順で行った。すなわち、抗−GBP−1抗体の調製
のために、大腸菌中で産生した全長のGST−GBP−
1をグルタチオン−セファロースカラムを使用して精製
し、これを使用してウサギを免疫した。得られたウサギ
の抗血清を、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ
(GST)を予め添加したグルタチオン−セファロース
カラムに通し、流出画分を回収した。この画分を、GS
T−GBP−1をCNBrセファロース4B(Pharmaci
a LKB Biotechnology )に結合させたカラムに添加し、
抗血清を1MのKClを含有する50%のエチレングリ
コールで溶出した。
【0047】10μg(GBP−1アッセイ用)または
8μg(Sp1アッセイ用)の細胞抽出物を、Laemmli
泳動緩衝液(25mMのトリス・グリシン、pH8.
3、0.1%のSDS)を使用して15%および8%の
SDS−ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動した。タ
ンパク質を電気泳動的にニトロセルロース膜(BA8
5、Schleicher & Schuell)に移し、免疫ブロッティン
グ希釈溶液(5%のスキムミルク、5%のFCS、1%
のTween20、PBS中)中で室温で1時間インキ
ュベートして、抗体の非特異的結合を最小化した。抗G
BP−1ウサギポリクローナル抗体および抗Sp1ウサ
ギポリクローナル抗体(PEP2, Santa Cruz Biotechnolo
gy)を各々1:10000および1:15000に希釈
した一次抗体とともに、フィルターを室温で1時間イン
キュベートした。1%のTween20を含有するPB
S中で15分間3回洗浄し、HRP結合抗ウサギIgG
ヤギ抗体を1:10000に希釈した二次抗体とともに
フィルターを室温で1時間インキュベートした。その
後、1%Tween20を含有するPBS中で15分間
3回洗浄した。膜を製造業者(Amersham)の指示に従っ
てECL−検出システムで処理してX線フィルムに露出
することによって、免疫複合体を増強化学発光(EC
L)によって検出した。
【0048】結果を図5にまとめて示した。図5から明
らかなように、GBP−1は、休止状態(0時間)およ
び初期G1期(4時間)の3Y1細胞から調製した抽出
物中には検出されなかったが、G中期では検出された
(図5A)。そのレベルは、G1後期(12時間)で最
大に達し、高レベルがS中期まで維持された後、急激に
減少した。YG1細胞では(図5B)、外来的に導入し
たGBP−1cDNAが常に発現しており、有意量のG
BP−1が休止およびG1初期の細胞で検出された。外
来的GBP−1の発現は3Y1細胞で観察されたように
G1中期後に増加し始めた。内因的に発現したGBP−
1のレベルは、外来的に発現したものより高かった。対
照的に、Sp1は3Y1およびYG1細胞の両方で発現
し(図5C、D)、細胞周期の進行全体を通じて有意な
変化は認められなかった。これらの結果から、GBP−
1の発現の誘導とFNプロモーター活性の減少との間に
良好な相関関係が存在することが示され、GBP−1の
機能発現によってSp1の機能が妨げられることが示さ
れた。
【0049】例6:アデノウイルスE1AによるGBP
−1の誘導 アデノウイルスE1AによるGBP−1の誘導を検討し
た。デキサメタゾン(dex)に応答してE1A12S
発現する3Y1誘導細胞株g12を使用した(Ishii
他、1993, Exp.Cell.Res.208:407-414)。g12細胞の
コンフルエント前の培養物を、0.5%のFCSを含む
低血清培地中で48時間維持することによって休止状態
にした。その後、10−6Mのdexを添加して細胞周
期の進行を誘導した。dex添加前、dex添加後7、
9、12、16、20および24時間経過後に全細胞抽
出物を調製し、E1AおよびGBP−1の量の変動をウ
エスタンブロッティングによって確認した。ウエスタン
ブロッティングは、一次抗体として抗−E1A(13s
−5、Santa Cruz Biotechnology)抗体を1:1000
0で希釈したもの、または抗GBP−1ウサギポリクロ
ーナル抗体を1:15000に希釈したものを使用し、
二次抗体としてHRP結合抗ウサギIgGヤギ抗体を
1:10000で希釈したものを使用して、例5に記載
される方法で行った。タンパク質10μgのアリコート
を15%SDS−ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動
した結果を図6に示す。
【0050】この条件下で、酸可溶性画分への〔3H〕
チミジンの取り込みは約8時間後に増加し始めた。E1
Aの発現は7時間以内に十分に誘導され、そのレベルは
細胞周期の進行全体を通じて維持された(図6A)。G
BP−1は休止状態(0時間)では発現しなかったが、
E1Aの発現に付随して7時間以内に最大に誘導された
(図6B)。そのレベルは細胞周期の進行に伴って少し
ずつ減少した。これらの結果はGBP−1遺伝子がE1
Aの標的であることを示している。
【0051】例7:FNプロモーター中の3種のGリッ
チ配列によるGBP−1の複合体形成 FNプロモーター中の3種のGリッチ配列とGBP−1
とで形成したDNA−タンパク質複合体を分析するため
に、Gリッチ配列や塩基置換Gリッチ配列を含む24b
pのオリゴヌクレオチドを使用して電気泳動移動度シフ
トアッセイ(EMSA)を下記の通りに行った。3Y1
細胞とYG細胞を、0.5%FCSを含む低血清培地中
に48時間維持することによって細胞を休止状態にし
た。また、これらの細胞の培地を10%FCSを含有す
る新しい培地に交換することによって細胞を増殖刺激
し、24時間経過した後の細胞を血清刺激した細胞とし
た。休止状態の3Y1細胞、血清刺激した3Y1細胞、
休止状態のYG1細胞、血清刺激したYG1細胞、およ
びXhoC細胞から、それぞれ全細胞抽出物を調製し
た。
【0052】各全細胞抽出物、20mMのHEPES緩
衝液(pH7.9)、100mMのKCl、12.5m
MのMgCl2 、1mMのEDTA、20%(vol/
vol)グリセロール、2mMのジチオトレイトール、
0.5mMのPMSF、1μgのポリ(dI−dC)ポ
リ(dI−dC)、および0.5fmol(約5×10
3 cpm)の32P標識G10オリゴヌクレオチド(図
8)を混合することによって、全量10μlの反応混合
物(Matsuno 他、1989, J.Biol.Chem.264:18707-1871
3)を調製し、0℃に30分間維持することによってD
NA−タンパク質複合体を形成した。また、図8に記載
されるG10ストレッチ(G10)、上流GCボックス
(GCu)、下流GCボックス(GCd)、およびこれ
らのGリッチ配列の一部の塩基を置換した配列(G10
m、GCum、GCdm)のいずれかの配列を有する32
P標識24bpオリゴヌクレオチドを、血清刺激したY
G1全細胞抽出物から得たタンパク質(5μg)ととも
にインキュベートした。
【0053】形成された各複合体を、TGE緩衝液(2
5mMのトリス塩酸(pH8.0)、192mMのグリ
シン、2mMのEDTA)中にて5%ポリアクリルアミ
ド上で電気泳動することによって分析した(250V、
4℃、2.5時間)。ゲルを乾燥し、−80℃で増強ス
クリーンによってオートラジオグラフィーをとった。得
られた結果を図7に示す。図7Aに示す通り、G10オ
リゴヌクレオチドはXhoC抽出物と3種の複合体I、
IIおよびIIIを形成した(レーン6)。休止状態の
3Y1抽出物とは複合体を形成しなかったが、血清刺激
した3Y1抽出物とは複合体IおよびIIを形成した
(レーン3)。休止状態のYG1抽出物とは複合体Iお
よびIIを形成したが(レーン4)、これらの複合体の
量は血清刺激したYG1抽出物の方がかなり大きかった
(レーン5)。また、血清刺激したYG1抽出物とは複
合体IIIを形成した。形成されたこれらの複合体の量
は、ウエスタンブロッティングによって定量したGBP
−1の量(図5)と相関していた。
【0054】図7Bに示すように、複合体I、IIおよ
びIIIが、GCdオリゴヌクレオチドを使用した場合
に多量に形成したが(レーン2)、GCuオリゴヌクレ
オチドを使用した場合は僅かしか形成されなかった(レ
ーン1)。G10m、GCumおよびGCdmオリゴヌ
クレオチドを使用した場合には、複合体の形成は認めら
れなかった。オリゴヌクレオチドおよびGBP−1を使
用したこれらの複合体形成パターンは、λZapII組
み換え体により発現したGBP−1−β−gal融合タ
ンパク質を使用した場合の複合体形成パターンと同一で
あった。
【0055】例8:GBP−1のホモダイマー化 ロイシンジッパーモチーフの存在により、GBP−1が
ホモ−および/またはヘテロ−ダイマーを形成すること
が示唆された。そこで、ホモダイマーの形成およびダイ
マー化における塩基性ジッパーモチーフの関与を調べる
ために、172〜244のコドンを欠くGBP−1△b
−ZipcDNAをpGEX−2TKベクターにクロー
ニングした(Kaelin他、1992, Cell.70:351-364 )。こ
のベクターのGST配列とcDNAクローニング部位の
間には、cAMP依存性タンパク質キナーゼ(Aキナー
ゼ)の触媒サブユニットによる認識のためのアミノ酸配
列RRASVに対応するヌクレオチド配列(Blanar他、
1992, Science 256:1014-1018; Rashidbaigi 他、198
5, J.Biol.Chem.260:8514-8519 )が存在している。大
腸菌で産生したGST−GBP−1△b−Zipを精製
し、得られたタンパク質5μgを15%SDS−ポリア
クリルアミドゲル上で電気泳動し(150V、3時
間)、ニトロセルロースフィルターに移した。フィルタ
ーを6Mの塩酸グアニジンを含有する50mlのHBB
緩衝液中で4℃で5分間インキュベートすることによっ
てタンパク質を変性させた。次いで、タンパク質を、6
Mから0.1875Mの塩酸グアニジンの1:2の連続
希釈を各々含むHBB緩衝液中で4℃で5分間連続的に
再生させた。フィルターを5%の滅菌スキムミルク(Di
fco)で4℃で30分間ブロッキングし、1%のスキム
ミルクを補充したBB緩衝液(20mMのHEPES−
KOH(pH7.5)、50mMのKCl、5mMのM
gCl2 、1mMのDTT、0.1%のNonident P40)
中で2.5×105 cpmの32P標識GST融合タンパ
ク質と4℃で10分間反応させ、増強スクリーンを使用
して−80℃でオートラジオグラフィーをとった。GS
T−GBP−1△b−Zipの代わりに、GST単独お
よびGST−GBP−1についても同じ処理を行い、オ
ートラジオグラフィーをとった。結果を図9Aに示す。
【0056】なお、ここで使用した32P標識GST融合
タンパク質の以下の方法で調製した。すなわち、大腸菌
中で産生したGST融合タンパク質を、既知の方法(Sm
ith他、1988, Gene.67:31-40 )によりグルタチオン−
セファロース上で精製した。融合タンパク質を、HMK
緩衝液(20mMのトリス塩酸(pH7.5)、100
mMのNaCl、12mMのMgCl2 )、10μgの
GST融合タンパク質、185kBqの[γ−32P]A
TP、1mMのDTT、50UのcAMP依存性タンパ
ク質キナーゼの触媒サブユニット(Sigma )を含む60
μlの反応混合物中にて室温で30分間リン酸化した。
40μlの停止緩衝液(10mMのリン酸ナトリウム
(pH8.0)、10mMのピロリン酸ナトリウム、1
0mMのEDTA、1mg/mlのウシ血清アルブミン
(BSA))を添加することによって反応を停止し、混
合物をSephadex-G50カラム上に添加した。カラムを4℃
で5分間遠心することによって32P標識GST融合タン
パク質を溶出させた。大腸菌中のGST融合タンパク質
の発現およびグルタチオン−セファロース上での精製は
文献記載の方法(Kaelin他、1992, Cell.70:351-364 )
にしたがって行った。
【0057】図9Aに示される通り、プローブはGST
−GBP−1に結合したが、GST−GBP−1△b−
ZipおよびGST単独には結合しなかった。この結果
は、GBP−1はその塩基性ジッパー領域を通じてホモ
ダイマーを形成していることを示している。
【0058】さらに、GBP−1が、XhoC細胞中で
以前に同定されたG10BP(Suzuki他、Mol.Cell.Bio
l. 15:5423-5433 )とヘテロダイマーおよびダイマーを
形成するか否かを検討した。休止状態の3Y1、血清刺
激した3Y1、休止状態のYG1、血清刺激したYG
1、XhoCの各細胞から調製した抽出物のタンパク質
(10μg)を電気泳動し、GBP−1に結合するタン
パク質の種類を32P標識GST−GBP−1を使用して
far−ウエスタンブロッティングによって分析した。
その結果を図9Bに示す。図9Bに示されるように、G
BP−1を休止状態の3Y1抽出物以外の抽出物ではバ
ンドが1つだけ検出された。トロンビンでGST−GB
P−1を切断して調製したGBP−1(10μg)につ
いても同じ位置にバンドが検出された。これらの結果
は、GBP−1が、採用した条件下ではホモダイマーを
形成するがヘテロダイマーを形成しないことを示してい
る。
【0059】
【発明の効果】本発明のDNAは、フィブロネクチン遺
伝子の転写制御領域に存在するGリッチ配列に結合する
ことによりフィブロネクチン遺伝子の発現を効果的に制
御するタンパク質をコードする。従って、本発明のDN
A、そのDNAによりコードされるタンパク質およびそ
の抗体は、細胞増殖、癌、細胞老化に関わるフィブロネ
クチンの発現制御の研究に有効に用いられる。また、組
み換えベクターおよび形質転換体を用いれば、本発明の
タンパク質を容易に調製することができる。
【0060】
【配列表】 配列番号1 配列の長さ:1155 配列の型:核酸 鎖の数:2本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:DNA 配列 ATG GCG CTT GAA GCT GGC GAC ATG GAA GAG GGA CAG CTT TCC GAC 45 TCG GAT TCC GAC ATG ACG GTC GTC CCC AGC GAT AGG CCT CTG CAA 90 ATG GCG AAA GTA CTA GGT GGG GGC GGT GCT GCA TGC GCA CCA GTG 135 TCA AAC TAT CGG ACT GTT AAA CAT GTG GAC TCC AGT GAG GAG AGT 180 CTG GAT TCC GAT GAC GAT TGC TCT CTT TGG AAA CGT AAG CGG CAG 225 AAA TGT CAC AGT CCT CCT CCC AAG CCA GAG CCT TTC CCA TTT GGA 270 CAG AGC GGT CAG AAA CAA GCT CTC AAC GGT GGG AAG AAG GTG AAC 315 AAC ATC TGG GGT GCT GTG CTA CAG GAA CAG AAC CAA GAT GCT GTG 360 GCC ACT GAG CTC GGC ATC TTG GGA ATG GAA GGC ACC ATC GAC AGA 405 AGC AGG CAG TCT GAG ACC TAT AAT TAT TTG CTT GCT AAG AAA CTT 450 GCT AAG AAG GAA TCT CAA GAG TAT ACA AAA GAA TTA GAC AAA GAT 495 CTG GAT GAG TAT ATG CAT GGC GAC AAA AAA CCT GGG TCA AAG GAA 540 GAG GAG AAT GGG CAA GGT CAT CTC AAA CGG AAA CGG CCT GTC CGA 585 GAC AGA CTG GGT AAC AGA GTA GAA ATG AAC TAC AAA GGC CGC TAC 530 GAC ATC ACA GAG GAG GAT TCT CCC GAG AAA GTG GCT GAT GAG ATT 575 GCC TTC AGG TTA CAG GAA CCG AAG AAG GAC CTG ATA GCC CGA GTA 720 GTG ACG ATA CTT GGG AAC AAA AAG GCC ATT GAA CTT CTG ATG GAG 765 ACG GCT GAG GTT GAG CAA AAT GGT GGC CTT TTC ATA ATG AAT GGA 810 AGC CGA AGG AGA ACG CCG GGT GGG GTT TTC CTC AAT CTC CTG AAG 855 AAC ACG CCC AGC ATC AGC GAA GAG CAG ATC AAG GAT ATT TTC TAC 900 ATT GAA AAT CAA AAA GAA TAT GAA AAT AAA AAA GCT GCT AGA AAA 945 AGA AGA ACA CAA CTA TTG GGG AAG AAA ATG AAA GAA GCT ATT AAA 990 AGT CTA AAT TTC CAG GAA GAT GAT GAC ACA TCT CGA GAA ACG TTT 1035 GCA AGT GAC ACT AAT GAG GCC CTG GCC TCT CTT GAC GAA GCC CAG 1080 GAA GGA CCC GGT GAA ACC AAG CTG GAT GCT GAG GAG GCC ATC GAG 1125 GTG GAC CAC CCT CAG GAT TTG GAC ATC TTT 1155
【0061】 配列番号2 配列の長さ:385 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:タンパク質 配列 Met Ala Leu Glu Ala Gly Asp Met Glu Glu Gly Gln Leu Ser Asp 1 5 10 15 Ser Asp Ser Asp Met Thr Val Val Pro Ser Asp Arg Pro Leu Gln 20 25 30 Met Ala Lys Val Leu Gly Gly Gly Gly Ala Ala Cys Ala Pro Val 35 40 45 Ser Asn Tyr Arg Thr Val Lys His Val Asp Ser Ser Glu Glu Ser 50 55 60 Leu Asp Ser Asp Asp Asp Cys Ser Leu Trp Lys Arg Lys Arg Gln 65 70 75 Lys Cys His Ser Pro Pro Pro Lys Pro Glu Pro Phe Pro Phe Gly 80 85 90 Gln Ser Gly Gln Lys Gln Ala Leu Asn Gly Gly Lys Lys Val Asn 95 100 105 Asn Ile Trp Gly Ala Val Leu Gln Glu Gln Asn Gln Asp Ala Val 110 115 120 Ala Thr Glu Leu Gly Ile Leu Gly Met Glu Gly Thr Ile Asp Arg 125 130 135 Ser Arg Gln Ser Glu Thr Tyr Asn Tyr Leu Leu Ala Lys Lys Leu 140 145 150 Ala Lys Lys Glu Ser Gln Glu Tyr Thr Lys Glu Leu Asp Lys Asp 155 160 165 Leu Asp Glu Tyr Met His Gly Asp Lys Lys Pro Gly Ser Lys Glu 170 175 180 Glu Glu Asn Gly Gln Gly His Leu Lys Arg Lys Arg Pro Val Arg 185 190 195 Asp Arg Leu Gly Asn Arg Val Glu Met Asn Tyr Lys Gly Arg Tyr 200 205 210 Asp Ile Thr Glu Glu Asp Ser Pro Glu Lys Val Ala Asp Glu Ile 215 220 225 Ala Phe Arg Leu Gln Glu Pro Lys Lys Asp Leu Ile Ala Arg Val 230 235 240 Val Thr Ile Leu Gly Asn Lys Lys Ala Ile Glu Leu Leu Met Glu 245 250 255 Thr Ala Glu Val Glu Gln Asn Gly Gly Leu Phe Ile Met Asn Gly 260 265 270 Ser Arg Arg Arg Thr Pro Gly Gly Val Phe Leu Asn Leu Leu Lys 275 280 285 Asn Thr Pro Ser Ile Ser Glu Glu Gln Ile Lys Asp Ile Phe Tyr 290 295 300 Ile Glu Asn Gln Lys Glu Tyr Glu Asn Lys Lys Ala Ala Arg Lys 305 310 315 Arg Arg Thr Gln Leu Leu Gly Lys Lys Met Lys Glu Ala Ile Lys 320 325 330 Ser Leu Asn Phe Gln Glu Asp Asp Asp Thr Ser Arg Glu Thr Phe 335 340 345 Ala Ser Asp Thr Asn Glu Ala Leu Ala Ser Leu Asp Glu Ala Gln 350 355 360 Glu Gly Pro Gly Glu Thr Lys Leu Asp Ala Glu Glu Ala Ile Glu 365 370 375 Val Asp His Pro Gln Asp Leu Asp Ile Phe 380 385
【0062】 配列番号:3 配列の長さ:24 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 ACCAAAGGGG GGGGGGAAGT TCTC 24
【0063】 配列番号:4 配列の長さ:24 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 GCAGGAGGGG CGGGGGGAGT CGGA 2
【0064】 配列番号:5 配列の長さ:24 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列 CTCGTGGGGG GGCGGGAAGG GACT
24
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は酵母ワン・ハイブリッド・スクリーニ
ング法によるGBP−1cDNAのクローニングを示
す。
【図2】 GBP−1の構造の特徴を示す。
【図3】 FNプロモーター活性と細胞数および細胞増
殖との関係、並びにFNプロモーター活性に対するSp
1およびGBP−1の作用を示す。
【図4】 FNプロモーター活性に対するGBP−1の
作用をGリッチ配列との関係で検討した結果を示す。
【図5】 G1期からS期へ進行中の3Y1およびYG
細胞におけるGBP−1量の変化を示す。
【図6】 アデノウイルスE1AによるGBP−1の誘
導を示す。
【図7】 FNプロモーター中のGリッチ配列とGBP
−1とのDNA−タンパク質複合体の形成を示す。
【図8】 FNプロモーター中のGリッチ配列を示す。
【図9】 種々の細胞におけるGBP−1のホモダイマ
ー化を示す。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成10年7月6日(1998.7.6)
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図5
【補正方法】変更
【補正内容】
【図5】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図6
【補正方法】変更
【補正内容】
【図6】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図7
【補正方法】変更
【補正内容】
【図7】
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図9
【補正方法】変更
【補正内容】
【図9】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12P 21/02 C12Q 1/68 A C12Q 1/68 C12N 5/00 B Fターム(参考) 4B024 AA01 AA11 AA12 AA20 BA01 BA08 BA12 BA43 BA61 CA01 CA04 CA06 CA07 DA06 EA04 FA02 GA27 HA12 4B063 QQ08 QQ79 QR32 QR40 QR55 QS16 QX07 4B064 AG01 AG26 CA02 CA06 CA10 CC24 DA01 DA05 DA13 DA14 4B065 AA26X AA72X AA91Y AA95Y AB01 BA02 CA24 CA25 CA28 CA31 CA44 CA46 4H045 AA10 AA11 BA10 CA40 DA50 DA75 DA76 DA86 EA28 FA72 FA73 FA74

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 配列表の配列番号1に記載の塩基配列ま
    たはその一部を有するDNAであって、フィブロネクチ
    ン遺伝子の発現を抑制するタンパク質をコードするDN
    A。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のDNAにハイブリダイ
    ズするDNAであって、フィブロネクチン遺伝子の発現
    を抑制するタンパク質をコードするDNA。
  3. 【請求項3】 配列表の配列番号1に記載の塩基配列の
    うちの連続する12以上の塩基配列、または、配列表の
    配列番号1に記載の塩基配列に相補的な塩基配列のうち
    の連続する12以上の塩基配列を有するオリゴヌクレオ
    チド。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載のDNAが導入された形
    質転換体により産生されるタンパク質であって、配列表
    の配列番号3から5に記載の塩基配列に結合し、かつフ
    ィブロネクチン遺伝子の発現を抑制することを特徴とす
    るタンパク質。
  5. 【請求項5】 配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配
    列、または、該アミノ酸配列において1若しくは数個の
    アミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列を
    有するタンパク質であって、配列表の配列番号3から5
    に記載の塩基配列に結合し、かつフィブロネクチン遺伝
    子の発現を抑制することを特徴とするタンパク質。
  6. 【請求項6】 請求項4または5に記載のタンパク質を
    認識する抗体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006510890A (ja) * 2002-12-20 2006-03-30 ゲーエスエフ・フォルシュングスツェントゥルム・フューア・ウムヴェルト・ウント・ゲズントハイト・ゲーエムベーハー グアニル酸結合タンパク質−1(gbp−1)の検出のためのelisa方法

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JP2006510890A (ja) * 2002-12-20 2006-03-30 ゲーエスエフ・フォルシュングスツェントゥルム・フューア・ウムヴェルト・ウント・ゲズントハイト・ゲーエムベーハー グアニル酸結合タンパク質−1(gbp−1)の検出のためのelisa方法

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