JP2000009768A - 周波数解析装置 - Google Patents

周波数解析装置

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JP2000009768A
JP2000009768A JP10172619A JP17261998A JP2000009768A JP 2000009768 A JP2000009768 A JP 2000009768A JP 10172619 A JP10172619 A JP 10172619A JP 17261998 A JP17261998 A JP 17261998A JP 2000009768 A JP2000009768 A JP 2000009768A
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signal
frequency
circuit
input signal
function system
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JP10172619A
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Toshihiro Sasai
俊博 笹井
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NEUCORE TECHNOL Inc
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    • G01MEASURING; TESTING
    • G01RMEASURING ELECTRIC VARIABLES; MEASURING MAGNETIC VARIABLES
    • G01R23/00Arrangements for measuring frequencies; Arrangements for analysing frequency spectra
    • G01R23/16Spectrum analysis; Fourier analysis
    • G01R23/165Spectrum analysis; Fourier analysis using filters

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 超小型の半導体集積回路装置に実装でき、ま
た高速で周波数スペクトラムを得る。 【解決手段】 解析周波数を有する直交関数系信号の振
幅に応じて周波数が変化する所定のパルス信号が制御回
路12A,12Bで生成され、これによりスイッチドキ
ャパシタ回路11が制御されて、入力信号と直交関数系
信号との乗算結果を示す電荷が乗算回路1A,1Bから
出力される。この電荷が積分回路4Aにより積分され、
その積分値が入力信号に含まれる解析周波数の信号成分
7A,7Bとして出力される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、周波数解析装置に
関し、特に各種直交関数系信号を用いて入力信号の周波
数解析を行う周波数解析装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、各種直交関数系信号を用いて、
時間的に連続変化する入力信号の周波数成分を分析する
場合、スペクトラムアナライザと呼ばれる周波数解析装
置(あるいは周波数スペクトル測定装置)が用いられ
る。この種の周波数解析装置で用いられる基本的な計測
処理方法としては2種類ある。その一つは、連続波のフ
ーリエ(Fourier)変換公式に基づき、入力信号
に対する演算処理を全てアナログ的に処理する方法であ
る。
【0003】時間的に連続変化する入力信号f(t)に
対するフーリエ変換の公式は、数1〜数3で表される
(例えば、森口繁一他著、数学公式集II 岩波全書;岩
波書店など参照)。ここで、an ,bn はフーリエ係数
であり、それぞれ余弦波成分および正弦波成分を表して
おり、これらan ,bn から数4により、入力信号f
(t)に含まれる所定の解析周波数成分の大きさ、すな
わちパワースペクトラムP(n)が得られる。
【0004】
【数1】
【0005】
【数2】
【0006】
【数3】
【0007】
【数4】
【0008】したがって、数1〜数3から、時間的に連
続変化する入力信号f(t)に対して、着目する解析周
波数を有する正弦波信号および余弦波信号をそれぞれ乗
算し、その結果を入力信号f(t)の1周期分(0〜2
π)にわたって積分処理すれば、入力信号f(t)に含
まれる解析周波数の余弦波成分および正弦波成分が得ら
れる。
【0009】図16はアナログ処理を基本にした従来の
周波数解析装置の構成例を示すブロック図であり、正弦
波発生器93、アナログ乗算器91、アナログ積分器9
4から構成されている。この場合、正弦波発生器93に
より生成された正弦波出力92と、外部から入力された
時間的に連続変化する入力信号f(t)96とが、アナ
ログ乗算器91で乗算され、その出力がアナログ積分器
94で数周期分だけ積分されて所望の周波数成分が検出
される。
【0010】もう一つは、入力信号をデジタル化した
後、それ以降の処理を離散フーリエ変換公式を用いて数
値計算により求める方法である。これは、A−D変換器
により入力信号を標本化(サンプリングおよびデジタル
化)し、それ以降の処理をDSP(デジタル信号演算
器)などを用いて離散フーリエ変換処理により数値計算
で求めるものであり、入力信号から異なる解析周波数ご
とにスペクトラムを算出できる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来の周波数解析装置では、アナログ処理を基本に
した周波数解析装置によれば、正弦波発生器93および
アナログ積分器94の回路規模が大きくなり、超小型の
半導体集積回路装置として構成できないという問題点が
あった。例えば、アナログの正弦波を発生させるために
は、その周波数によって比較的容量の大きなコンデンサ
やインダクタンスが必要となる。
【0012】また、アナログ積分器94は、演算増幅器
(オペアンプ)とコンデンサにより実現されるが、これ
を半導体集積回路で実現するためには多数の素子が必要
とされ、チップ面積が大きくなるとともに、大容量のコ
ンデンサを半導体集積回路で実現する場合は、さらにチ
ップ面積が大きくなる。また、同時に複数の周波数につ
いてスペクトラムを測定するには、前述したアナログ周
波数解析装置を、所望の周波数の数だけ用意する必要が
あり、このような場合は、さらに回路規模が大きくなる
という問題点があった。
【0013】この場合、前述した従来の周波数解析装置
(図16参照)で、アナログ乗算器とアナログ積分器を
1つずつ使用し、正弦波発生器93の周波数出力92を
掃引して入力信号96から複数の周波数スペクトラムを
計測する方法も考えられる。しかし、この場合は周波数
掃引に時間がかかるため、同時に複数の周波数成分を計
測できず、繰返し波形からなる入力信号の周波数成分し
か計測できない。
【0014】また、デジタル処理を基本にした周波数解
析装置によれば、アナログ処理による周波数解析装置と
同等に周波数解析を高速で実行するためには、高速のA
−D変換器やDSP、例えば高速アクセス可能なメモリ
や積和演算回路が必要となるため、回路規模が巨大化
し、さらには消費電力が増加するという問題点があっ
た。
【0015】さらに、数値計算を高速化するために、F
FT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)と
呼ばれるアルゴリズムが工夫され広く用いられている
が、それでも入力信号の標本化数をN個とすると、2N
logN回の複素数の積和演算が必要となる。したがっ
て、デジタル計算回路を用いて高速でスペクトラムを計
算する場合でも時間がかかり、計測終了後に直ちにスペ
クトラムを得られないという問題点があった。
【0016】本発明はこのような課題を解決するための
ものであり、周波数解析の速度を低下させることなく、
回路規模を削減でき、超小型の半導体集積回路装置に実
装できる周波数解析装置を提供することを目的としてい
る。
【0017】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成す
るために、請求項1の発明は、入力信号のうち解析対象
となる所定の解析周波数の信号成分を検出する周波数解
析装置において、解析周波数を有する直交関数系信号の
振幅に応じて周波数が変化する所定のパルス信号を用い
て、入力信号を離散的に充電するスイッチドキャパシタ
回路を制御することにより、入力信号と直交関数系信号
との乗算結果を示す電荷を出力する乗算回路と、この乗
算回路から出力された電荷を積分し、その積分値を入力
信号に含まれる解析周波数の信号成分として出力する積
分回路とを備えるものである。したがって、 解析周波
数を有する直交関数系信号の振幅に応じて周波数が変化
する所定のパルス信号により、スイッチドキャパシタ回
路が制御され、入力信号と直交関数系信号との乗算結果
を示す電荷が乗算回路から出力されて積分回路により積
分され、その積分値が入力信号に含まれる解析周波数の
信号成分として出力される。
【0018】また請求項2の発明は、請求項1記載の周
波数解析装置において、乗算回路として、入力信号を離
散的に充電することにより充電回数に応じた分だけ電荷
を出力するスイッチドキャパシタ回路と、このスイッチ
ドキャパシタ回路に、解析周波数を有する直交関数系信
号の多値で示された振幅に応じてスイッチドキャパシタ
回路における単位時間当たりの充電回数を制御し、かつ
直交関数系信号の振幅極性に応じてスイッチドキャパシ
タ回路での充電極性を制御するパルス信号を出力する制
御回路とを有するものである。したがって、乗算回路で
は、制御回路からのパルス信号により、解析周波数を有
する直交関数系信号の多値で示された振幅に応じてスイ
ッチドキャパシタ回路における単位時間当たりの充電回
数が制御されるとともに、直交関数系信号の振幅極性に
応じてスイッチドキャパシタ回路での充電極性が制御さ
れ、入力信号と直交関数系信号との乗算結果を示す電荷
が出力される。
【0019】また請求項3の発明は、請求項2記載の周
波数解析装置において、制御回路として、直交関数系信
号の周期を複数に分割して設けられた各区間を示す区間
信号に基づき、各区間における直交関数系信号の多値で
示された振幅に応じた周波数のクロック信号を選択する
ことにより、スイッチドキャパシタ回路へ出力するパル
ス信号を生成する論理回路を有するものである。したが
って、制御回路では、論理回路により、各区間における
直交関数系信号の多値で示された振幅に応じた周波数の
クロック信号が選択されることにより、スイッチドキャ
パシタ回路へ出力するパルス信号が生成される。
【0020】また請求項4の発明は、請求項1記載の周
波数解析装置において、積分回路として、奇数個分だけ
直列接続されたCMOSインバータ回路からなる増幅器
と、この増幅器の入出力端子間にそれぞれ並列接続され
た抵抗素子および容量素子とを有するものである。また
請求項5の発明は、請求項4記載の周波数解析装置にお
いて、積分回路として、奇数個分だけ直列接続された多
数のCMOSインバータ回路からなる高利得の増幅器
と、この増幅器の入出力端子間にそれぞれ並列接続され
た抵抗素子および比較的容量の小さい容量素子とを有す
るものである。
【0021】また請求項6の発明は、請求項1記載の周
波数解析装置において、乗算回路および積分回路からな
り、直交関数系信号のうち所定の位相を有する第1の信
号波用いて、入力信号と乗算して積分することにより、
入力信号に含まれる第1の信号波成分を出力する第1の
組と、乗算回路および積分回路からなり、第1の信号波
と直交する位相を有する第2の信号波用いて、入力信号
と乗算して積分することにより、入力信号に含まれる第
2の信号波成分を出力する第2の組とを備えるものであ
る。また請求項7の発明は、請求項6記載の周波数解析
装置において、第1および第2の信号成分の2乗和を算
出することにより、入力信号に含まれる解析周波数のパ
ワースペクトルを出力する演算回路を備えるものであ
る。
【0022】また請求項8の発明は、請求項6記載の周
波数解析装置において、第1および第2の信号成分の2
乗比を算出することにより、入力信号に含まれる解析周
波数のパワースペクトルが有する位相角を出力する演算
回路を備えるものである。また請求項9の発明は、請求
項1記載の周波数解析装置において、直交関数系信号と
して、三角関数系の余弦波信号または正弦波信号の振幅
を多値で近似した近似余弦波信号または近似正弦波信号
を用いるようにしたものである。
【0023】
【発明の実施の形態】次に、本発明について図面を参照
して説明する。図1は本発明の一実施の形態である周波
数解析装置のブロック図であり、同図において、時間的
に連続変化する入力信号f(t)6から解析対象となる
所定周波数すなわち解析周波数fx の余弦波成分FA
(w)7Aを出力するアナログ乗算回路1Aおよびアナ
ログ積分回路4A(第1の組)と、入力信号f(t)か
ら解析周波数fx の正弦波成分FB(w)7Bを出力す
るアナログ乗算回路1Bおよびアナログ積分回路4B
(第2の組)とが、入力信号f(t)に対して並列的に
設けられている。
【0024】また出力段には、余弦波成分FA(w)と
正弦波成分FB(w)を入力として、前述した数4に基
づき、解析周波数fx のパワースペクトルF(w)8を
出力する2乗加算回路5が設けられている。アナログ乗
算回路1A,1Bには、制御回路12A,12Bの出力
に基づいて所定のタイミングで離散的に入力信号f
(t)から電荷を取り込んで出力するスイッチドキャパ
シタ回路11が設けられている。
【0025】アナログ積分回路4A,4Bには、その入
出力端子間にコンデンサ(容量素子)C4と抵抗(抵抗
素子)R4とが並列接続された反転増幅器41が設けら
れており、スイッチドキャパシタ回路11から出力され
た電荷がコンデンサC4に蓄積されて積分され、解析周
波数fx の余弦波成分FA(w)または正弦波成分FB
(w)として出力される。
【0026】スイッチドキャパシタ回路11では、所定
期間内での取り込み回数を制御することにより、所定期
間内に得られる電荷の量を制御でき、その電荷の量は取
り込み回数に比例する。本発明では、単位時間当たりの
取り込み回数を、解析周波数fx の余弦波信号あるいは
正弦波信号の振幅で周波数が変化するパルス信号に基づ
いて制御することにより、入力信号f(t)に余弦波信
号あるいは正弦波信号を乗算した結果を得ている。
【0027】さらに本発明では、余弦波信号および正弦
波信号の1周期を複数の区間に分割し、各区間ごとにそ
の振幅を多値に置換した階段状に変化する近似余弦波信
号および近似正弦波信号に基づき、パルス信号を生成し
ている。実際には、基準クロック回路3から出力される
解析周波数fx の整数倍の基準クロックに基づき、タイ
ミング発生回路2で各区間を示すタイミング信号と取り
込み回数を規定する複数のクロック信号を生成する。
【0028】そして、制御回路12A,12Bにおい
て、これらタイミング信号とクロック信号を入力とし
て、近似余弦波信号および近似正弦波信号に基づく論理
回路により、各区間の振幅に応じたクロック信号が選択
され、スイッチドキャパシタ回路11に出力される。こ
れにより、従来のように、正弦波信号を発生させる比較
的回路規模の大きい正弦波発生回路が不要となり、周波
数解析装置の小型化が可能となる。
【0029】このように、本発明は、解析周波数の余弦
波信号(または正弦波信号)の振幅を多値で近似し、そ
の多値の振幅に応じた単位時間当たりの取り込み回数
で、スイッチドキャパシタ回路により入力信号から離散
的に電荷を取り込むことにより、入力信号と余弦波信号
の乗算結果を近似出力するようにしたので、比較的規模
の小さい回路構成で高速に連続して周波数解析をおこな
うことができる。なお、以上の説明では、余弦波成分お
よび正弦波成分の両方を出力する周波数解析装置につい
て説明したが、必要に応じて余弦波成分または正弦波成
分のいずれか一方を出力する構成としてもよい。
【0030】また、図2に示すように、複数の解析周波
数ごとに前述した周波数解析装置を並列的に接続するこ
とにより、複数の周波数を同時に解析できる。したがっ
て、従来のように、入力信号の繰り返し周期ごとに解析
対象周波数を順次切り替えて解析する必要がなくなり、
周期性を持たない入力信号であっても、複数の周波数に
ついて精度よく解析できる。
【0031】以下、図面を参照して、各回路部について
詳細に説明する。図3はスイッチドキャパシタ回路およ
びアナログ積分回路の構成例を示す回路図である。スイ
ッチドキャパシタ回路11において、コンデンサC11
は、Charge信号で制御されるスイッチ(CMOS
FET)Q11,Q12を介して入力信号f(t)の電
圧Vinと基準電圧Vref との差分だけ電荷を取り込む容
量素子である。
【0032】コンデンサC11に取り込まれた電荷は、
Add信号(パルス信号)で制御されるスイッチ(CM
OSFET)Q13,Q15、またはSub信号(パル
ス信号)で制御されるスイッチ(CMOSFET)Q1
4,Q16を介してアナログ積分回路4に出力される。
また、アナログ積分回路4では、スイッチ(CMOSF
ET)Q41〜Q46により3段直列接続されたCMO
Sインバータが構成され、反転増幅器41として用いら
れている。
【0033】この反転増幅器41の入出力端子間には、
スイッチドキャパシタ回路11のコンデンサC11に取
り込まれた電荷を蓄積するためのコンデンサ(容量素
子)C4と、このコンデンサC4に蓄積された電荷を所
定の時定数で放電する抵抗(抵抗素子)R4とが並列接
続されており、スイッチドキャパシタ回路11の出力が
積分されVout として出力される。
【0034】前述したフーリエ変換公式(数1〜数3参
照)では、入力信号f(t)に対してその繰り返し周期
(2π)により積分計算を行っており、実際の工学的応
用でも繰返し周期(例えば、2π)の信号が周波数解析
装置に連続して入力されることが多い。しかし、物理現
象で扱う入力信号の繰返し周期は必ずしも明確ではな
く、また、信号がゼロから始まりゼロで終わるような有
限の信号として観測される例は少ない。
【0035】このような入力信号f(t)に対して、数
1で示される積分を連続して何周期も繰り返した場合、
その出力結果は、全く減衰のない振動子(例えば、振り
子)に外力を連続して加えたときの振幅と同様に無限に
大きくなっていく。このため、このような入力信号につ
いては、アナログ処理またはデジタル処理にかかわら
ず、想定した繰り返し周期を含む十分な長さの区間だ
け、連続変化する入力信号から切り出して周波数解析処
理を行う。
【0036】本発明では、入力信号f(t)に対して時
間的に自然減衰するフィルタ特性を乗算することによ
り、デジタル方式による周波数解析処理において入力信
号の一部を切り出すことにより周波数帯域を制限する処
理、いわゆるウィンドウ処理と呼ばれる方法と同じ効果
を得ている。すなわち、図3に示すように、アナログ積
分回路4のコンデンサC4に対して並列に抵抗R4を接
続し、この抵抗R4により振動子に減衰力を与え、その
振幅を抑制している。これにより、リアルタイムで入力
信号の連続的な周波数分析が可能となる。
【0037】図14はスイッチドキャパシタ回路による
加算動作を示す説明図である。この場合、図14(a)
に示すように、まずコンデンサC11が入力信号側に接
続され、数5で示される電荷Qが取り込まれる。なお、
基準電圧Vref は、電源電圧Vccと接地電位GNDとの
中間電圧であり、反転増幅器42から供給される。
【0038】
【数5】
【0039】次に、図14(b)に示すように、コンデ
ンサC11が増幅器41側に接続される。ここで、コン
デンサC11からの出力電圧Vvgが、Vref と差がある
場合、Vout がVccまたはGNDに振り切れるが、抵抗
R4により負帰還が発生する。
【0040】したがって、VvgがVref と等しくなるよ
うにVout が変化し、結果としてコンデンサC11に取
り込まれた電荷Qが、すべてコンデンサC4に移動する
ことになる。これにより、出力電圧Vout すなわち積分
出力は、数6で示されるΔVout 分だけ変化する。
【0041】
【数6】
【0042】また、図15はスイッチドキャパシタ回路
による減算動作を示す説明図であり、図14の場合とほ
ぼ同様である。ここでは、図15(a)に示すように、
コンデンサC11に電荷Qが充電された後、図15
(b)に示すように、コンデンサC11が増幅器41側
に逆極性で接続される。したがって、コンデンサC11
に取り込まれた電荷QだけコンデンサC4から移動する
ことになり、出力電圧Vout は数7で示される分だけ変
化する。
【0043】
【数7】
【0044】実際には、このような加算動作および減算
動作は、図3に示す各スイッチQ11〜Q16を切替制
御することにより行われる。特に、加算動作時にはパル
ス信号のうちAdd信号がアクティブとなり、減算動作
時にはパルス信号のうちSub信号がアクティブとな
る。
【0045】このように、アナログ乗算回路1をスイッ
チドキャパシタ回路11で構成したので、MOSFET
で実現することができ、極めて規模の小さい回路で構成
できる。なお、アナログ積分回路4の反転増幅器41
は、一般的な演算増幅器(オペアンプ)で構成してもよ
いが、CMOSFETからなるCMOSインバータで構
成することにより、小さい回路規模で実現できる。
【0046】また、CMOSFETを奇数個分だけ直列
に多段接続することにより、高利得の反転増幅器を実現
でき、コンデンサC4の容量を低減できる。したがっ
て、コンデンサC4を半導体基板上に形成した場合で
も、その占有面積を削減でき、周波数解析装置すべてを
半導体チップ化できる。
【0047】なお、コンデンサC11,C4の容量は、
CMOSFETのオン抵抗や上限解析周波数などから経
験的に決定される。また、コンデンサC11とコンデン
サC4との比は、所望の分解能に依存するが、抵抗R4
による減衰量も考慮する必要がある。発明者らのシミュ
レーションによれば、C11として0.1pF〜数pf
のコンデンサを用い、C4として1pF〜数10pFの
コンデンサを用いることにより、良好な解析結果が得ら
れた。
【0048】次に、図4を参照して、制御回路について
説明する。図4は制御回路の構成例を示すブロック図、
図5は制御回路の動作を示す説明図であり、以下、入力
信号f(t)に近似余弦波信号を乗算するアナログ乗算
回路1Aの制御回路12Aを例として説明する。図5に
おいて、(a)は余弦波信号の近似例を示す説明図、
(b)は制御回路の動作を示すタイミングチャートであ
る。
【0049】図5(a)に示すように、本発明では、余
弦波信号の1周期を複数の区間、ここではn0〜n7の
8つの区間に等分割し、それぞれの区間における余弦波
信号(図中破線参照)の振幅を、所定の多値からなる階
段状の近似余弦波信号(図中太線参照)に置換してい
る。例えば、区間n1における振幅は正側最大振幅1の
1/2すなわち0.5に近似されており、区間n4にお
ける振幅は負側最大振幅−1に近似されている。
【0050】一方、これら多値で示される各振幅に応じ
たクロック信号f64,f32を生成しておく。この場
合、各クロック信号の周波数すなわち単位時間あたりの
パルス数は、近似余弦波信号振幅に比例して設定されて
おり、クロック信号f64は解析周波数fx の64倍の
周波数を有し、クロック信号f32はfx の32倍の周
波数を有している。
【0051】したがって、クロック信号f64によれば
入力信号f(t)は1周期当たり64回分取り込まれる
ことになり、クロック信号f32によれば、1周期当た
り32回分取り込まれる。これにより、取り込まれる電
荷の総和は、f32を用いた場合、f64を用いた場合
の1/2となる。
【0052】このようにして、これらクロック信号を近
似余弦波信号の振幅に応じて選択することにより、結果
として入力信号f(t)に近似余弦波信号が乗算された
出力が得られる。したがって、アナログの余弦波発生器
を必要とせず、デジタル回路のみで乗算結果が得られる
ものとなり、極めて小さい回路規模で周波数解析装置を
構成できる。
【0053】本発明では、図4に示すように、解析周波
数fx の整数倍、ここでは64倍の基準クロック信号C
LKを基準クロック回路3で発生させ、これに基づいて
タイミング発生回路2のクロック信号出力回路(カウン
タ)21で、クロック信号f64,f32を生成してい
る。また、区間信号出力回路22で、図5(b)に示す
区間信号T0〜T7を生成している。
【0054】なお、基準クロック信号CLKは、前述し
た図3に示すスイッチQ11,Q12をオンすることに
よりコンデンサC11に電荷を取り込むCharge信
号としても利用される。したがって、コンデンサC11
の電荷を後段に出力させるパルス信号すなわちAdd信
号やSub信号として用いられるクロック信号f64
は、Charge信号と同一周波数ではあるが逆位相と
なっている。
【0055】制御回路12Aでは、複数の論理ゲートを
組み合わせて論理回路を構成することにより、区間信号
T0〜T7に基づいて、それぞれの区間での振幅に応じ
たクロック信号f64またはf32を選択し、その振幅
極性に応じて加算動作を指示するAdd信号あるいは減
算動作を指示するSub信号として出力する。なお、ス
イッチQ21〜Q24(CMOSFET)により、CM
OSインバータ回路が構成されている。
【0056】したがって、例えば、図5(a)に示すよ
うに、区間n1では振幅が「0.5」であることから、
図5(b)に示すように、f32がAdd信号として出
力される。また、区間n4では振幅が「−1」であるこ
とからf64がSub信号として出力される。
【0057】一方、図6は制御回路の他の動作を示す説
明図であり、ここでは入力信号f(t)に近似正弦波信
号を乗算するアナログ乗算回路1Bの制御回路12Bの
動作が示されている。この場合、制御回路12Bにおけ
る論理回路、すなわち論理ゲートの組み合わせが異なる
が、前述の図5とほぼ同様の動作を行う。
【0058】なお、図7に示すように、スイッチドキャ
パシタ回路を並列的に設けて、近似余弦波信号または近
似正弦波信号による誤差を補償するようにしてもよい。
図7はアナログ乗算回路の他の構成例を示すブロック図
であり、前述したスイッチドキャパシタ回路11の入出
力端子間に、同様のスイッチドキャパシタ回路11’が
並列的に設けられており、これら両回路の出力が合成さ
れてアナログ積分回路4に出力される。
【0059】この場合、スイッチドキャパシタ回路1
1’のコンデンサC11’として、C11より小さい容
量、例えば1/2の容量のコンデンサが用いられる。図
8は補償された近似余弦波信号を示す説明図、図9は誤
差補償用スイッチドキャパシタ回路の動作を示すタイミ
ングチャートである。図8に示すように、正規の余弦波
信号と図5で示した近似余弦波信号と比較すると、区間
n0,n3,n4,n7で誤差が顕著となる。
【0060】ここで、例えば区間n0の前半区間でスイ
ッチドキャパシタ回路11’を減算動作させ、区間n0
の後半区間でスイッチドキャパシタ回路11’を加算動
作させる。これにより、それぞれコンデンサC11’に
取り込まれる電荷分だけ、近似余弦波信号(図8中太
線)が補間される(図8中太破線)。
【0061】この場合、図5(b)に示されているよう
に、区間n0ではスイッチドキャパシタ回路11に対し
て、制御回路12Aからf32のAdd信号が出力され
ている。したがって、これを区間n0の前半部分で1/
2だけ低く補間する場合は、誤差補償用スイッチドキャ
パシタ回路11’において、C11の1/2の容量のC
11’を用いることにより、同じf32をSub信号と
してスイッチドキャパシタ回路11’に出力するだけで
よい。
【0062】なお、f32の1/2周波数のf16を利
用してもよく、これによりC11と同一容量のコンデン
サC11’を用いることができる。さらに、図8,9で
は近似余弦波信号を例に説明したが、同様にして近似正
弦波信号に適用することも可能である。
【0063】また、以上の説明において、正規の余弦波
信号および正弦波信号の振幅を、多値として1,0.
5,−0.5,−1のいずれかに近似する場合について
説明したが、近似する多値の数を増やすとともに、それ
らに応じたクロック信号を生成することにより、近似に
より生じる誤差を低減するようにしてもよい。以上説明
した動作により、数1の余弦波係数an すなわち数2
と、数1の正弦波係数bn すなわち数3が得られたこと
になる。
【0064】なお、図11に示す入力信号f(t)のよ
うに、多くの場合そのベクトルの位相は不明であり、周
波数解析装置内部の近似余弦波信号または近似正弦波信
号のベクトルと一致しない。両ベクトルの位相が一致し
た場合、余弦波成分FA(w)や正弦波成分FB(w)
は最大となり、両者の位相がずれてくるに従い、その出
力は減少する。
【0065】図10は、入力信号と近似余弦波信号また
は近似正弦波信号の位相関係を示す説明図であり、横軸
は実数(R)、縦軸は虚数(I)を示している。図10
(a)に示すように、両者の位相角が0゜の場合、余弦
波成分FA(w)や正弦波成分FB(w)は最大とな
り、図10(b)の位相角45゜さらには図10(c)
の位相角90゜と、位相角が大きくなるにつれて出力成
分は小さくなる。
【0066】したがって、数4に示すように、余弦波成
分FA(w)や正弦波成分FB(w)をそれぞれ2乗し
て加算後に平方根をとることにより、両者の位相角に影
響されない出力、すなわち入力信号に含まれる解析周波
数fx のパワースペクトラムF(w)が得られる。
【0067】なお、2乗加算回路5として、アナログ信
号に対する2乗回路および平方根算出回路は公知のもの
を使用すればよい。また、一般に、パワースペクトラム
の値として、平方根をとっていない値を利用する場合が
あり、このような場合は、数2と数3の値をそれぞれ2
乗して加算した直後の値を出力するようにしてもよい。
【0068】また、通常、パワースペクトルだけを利用
することが多いが、必要に応じてアナログ処理する回路
を用いた2入力位相検波回路や、A−D変換処理後のデ
ジタルデータを信号演算処理するDSPを用いて、数8
を計算することにより、入力信号に含まれる解析周波数
のパワースペクトルが有する位相角を求めることができ
る。これにより、パワースペクトルの大きさとその位相
角により、周波数解析結果を出力することも可能であ
る。
【0069】
【数8】
【0070】図12は本発明による周波数解析結果(正
弦波成分および余弦波成分)を示す説明図である。これ
は、前述した各回路の動作を具体的にソフトウェアによ
りデバイスモデルを組み立ててシミュレーションを行っ
た結果の出力波形を示している。シミュレーションで
は、解析周波数fx と同一の単一周波数finを有する信
号を入力信号とし、その10周期分を積分した結果であ
り、横軸は時間、縦軸は各成分出力(積分出力)の大き
さを示している。
【0071】ここでは、余弦波成分7Aだけが徐々に増
加し、正弦波成分7Bがほぼゼロを示している。これ
は、解析周波数fx では、入力信号f(t)に対し、周
波数解析装置の近似正弦波信号との位相角がほぼ90゜
であり、近似余弦波信号との位相角がほぼ0゜であるこ
とを示している。
【0072】また、図13は本発明による周波数解析結
果(パワースペクトラム)を示す説明図であり、解析周
波数fx を入力信号周波数finの前後で変化させた場合
を示している。横軸は入力信号周波数finと解析周波数
x との比、縦軸はパワースペクトラム8の大きさを示
している。これによれば、finにピークを有する信号が
入力されていることが、顕著に示されている。
【0073】この場合、複数の周波数に対する解析は、
図2で示したように、それぞれ固有の解析周波数fx
有する周波数解析装置を並列的に複数設けて動作させれ
ば、各解析周波数fx で同時に複数のスペクトラムが得
られる。なお、入力信号f(t)が周期性を有する繰り
返し信号であり、かつ周波数解析に要する時間にあまり
制限がない場合は、既存のスペクトラムアナライザのよ
うに、1つの周波数解析装置の解析周波数fx を変えて
計測しても良い。
【0074】以上の説明では、直交関数系信号として正
弦波信号および余弦波信号を用いたフーリエ変換による
周波数解析処理について説明したが、これに限定される
ものではなく、他の直交関数系信号を用いて、入力信号
との積和処理を行うことにより、フーリエ変換以外の周
波数解析にも利用可能である。
【0075】一般に、工学分野や数学分野において、任
意の関数グループに属する2つの関数f1 ,f2 が数9
に示す条件を満足する場合、その関数グループを直交関
数系(正規直交関数系、直交間数列、正規直交間数列、
直交系、基底関数など)と呼ぶ。なお、δはデルタ関数
であり、幅がゼロで高さが無限大のパルスを示してい
る。通常、各種直交関数系を使用する場合、δ=1に正
規化して用いるが、その場合の直交関数系を正規直交関
数系と呼ぶ。
【0076】
【数9】
【0077】
【数10】
【0078】数10に示すように、この条件を満足する
関数グループとして最も一般的なものが三角関数系であ
る。本発明に適用可能な直交関数系として、この三角関
数系の他に、Walsh関数系、Haar関数系、Sl
ant関数系、DCT(Discrete Cosine Transform:離
散余弦変換)関数系などがあげられる。
【0079】前述したフーリエ周波数解析は、直交関数
系の一つである三角関数系で示される余弦成分および正
弦成分が、入力信号の中にどれだけ含まれているかを観
測するものである。任意の入力信号を直交関数系で展開
する手法は広く知られており、フーリエ変換以外に多く
の直交関数系がその特徴に応じて用いられる。
【0080】既に述べたように、フーリエ変換は、正弦
波および余弦波を用いているため、比較的滑らかに変化
する波形の入力信号を解析した場合、その入力信号の周
波数スペクトラムが集中する傾向が見られる。したがっ
て、比較的滑らかに変化する波形の入力信号を解析する
場合は、正弦波および余弦波を直交関数系として用いる
ことにより、入力信号の特徴を明瞭に把握できる。
【0081】一方、デジタル信号のような矩形波の入力
信号を、正弦波および余弦波を用いて周波数解析した場
合、その矩形波に正弦波および余弦波の高周波成分が多
く含まれているため、得られるスペクトルが拡散する傾
向が見られる。したがって、矩形波の入力信号を解析す
る場合、正弦波および余弦波はあまり適していない。
【0082】図21は直交関数系の違いによる解析スペ
クトルを示す説明図であり、(a)矩形波の入力信号、
(b)は三角関数系(正弦波および余弦波)を用いた場
合の周波数スペクトラム、(c)はWalsh関数系を
用いた場合の周波数スペクトラムを示している。矩形波
には正弦波および余弦波の高調波成分が非常に多く含ま
れているため、三角関数系を用いた解析結果は、図21
(b)のように拡がりを持ったスペクトルを示し、多く
の高調波成分を含む信号として観測される。
【0083】したがって、矩形波が歪みを有している場
合でも、歪みのない矩形波の周波数スペクトラム自体が
拡がりを有していることから、その歪みによるスペクト
ル変化を明確に検出できない。一方、矩形波の直交関数
系であるWalsh関数を用いて、矩形波の入力信号を
解析した場合、図21(c)に示すように、幅の狭い単
一の周波数スペクトラムが得られる。
【0084】これにより、矩形波が歪みを有している場
合は、歪みによる高調波成分が周波数スペクトラムに現
れてスペクトルが拡がりを持つため、その歪みによるス
ペクトル変化を明確に検出できる。したがって、矩形波
の入力信号を解析する場合は、三角関数系よりも矩形波
の直交関数系を用いたほうがよいことがわかる。
【0085】三角関数系以外の直交関数系を利用した周
波数解析の応用例として、心電図、筋電図あるいは脳波
など、生体から観測される各種信号波の解析があげられ
る。図22は典型的な心電信号波形例を示す説明図であ
り、図22(a)に示すように、正常人の場合、スパイ
ク状の波が連続して観測される。ここで、異常がある場
合には、図22(b)に示す波形Rの繰り返し間隔が変
動したり、波形P、Q、S、Tなどに歪みが生じたり、
さらには不定期に異常なスパイク状の信号が入ることが
ある。
【0086】このような信号波の解析においても、三角
関数系に比較して、図17に示したWalsh関数系
や、図18に示したHaar関数系などの矩形波の直交
関数系を用いて周波数解析したほうが、異常部分による
高調波をスペクトルで明確に確認でき、異常を発見しや
すい。本発明の周波数解析装置は、高速動作可能であ
り、さらに複数の周波数解析装置を単一のチップに集積
できるため、非常に小型で低消費電力の心電モニタ装置
や筋電モニタ装置など、常に人体につけて異常を監視す
るような用途に最適である。
【0087】このような直交関数系を用いた周波数解析
の応用分野としては、各種生体信号の他、地震波や人工
地震波、あるいは通信分野におけるデジタル信号などの
解析が挙げられる。また、本発明による周波数解析装置
の他の応用分野として、音声声紋解析や音声認識への応
用がある。
【0088】音声認識方法にはいろいろな処理方法があ
るが、有効な方式の一つとして直交変換による音声認識
方法がある。これは、音声を適当な短い区間に区切り、
それを直交変換して時間軸を横軸とし、時間に対して各
周波数成分の大きさがどのように変化していくかを計測
し、得られたパターンと参照用音声パターンとを比較す
ることにより認識する方法である。
【0089】図23は音声認識に用いた場合の周波数解
析例を示す説明図である。この場合、横軸は音声を短く
区切った区間を一つの区切りとした経過時間を示してお
り、縦軸は個々の区間における周波数成分と強度を示し
ている。時間の経過とともに各区間における音声の周波
数成分とその強度は変化していき、その変化の形はそれ
ぞれ特有のパターンを示す。
【0090】このような応用では、前述した図2に示す
ように、複数の周波数分析回路を並列的に接続し、一定
時間ごとに区切った波形について高速な直交変換処理を
行うことにより、図23のようなパターンを得ることが
できる。特に、この種の応用では、各音声の特徴をでき
るだけ明確に分離できるような直交変換のほうが有利で
あり、三角関数系を用いたフーリエ変換よりも、むしろ
Walsh関数系やHaar関数系の他、図19に示す
Slant関数系や、図20に示すDCT関数系などの
直交関数系が用いられることが多い。
【0091】さらに、本発明による周波数解析装置の他
の応用分野として、フィルタ処理や画像圧縮、画像の特
徴抽出などへの応用がある。図24は画像圧縮の処理方
法を示す説明図である。図24(a)に示すように、こ
こでは原画像データを4x4マトリクスと仮定するが、
大きな画像では小ブロックに分ければよい。また、原画
像データは輝度値を示す標本化されたアナログ信号(こ
こでは離散アナログ信号と呼ぶ)である。
【0092】なお、デジタル画像圧縮ではDCTやSl
ant変換が良い結果を示すことが広く知られており、
JPEG圧縮処理でもDCTが使用されている。このた
め、ここで用いる直交関数系は三角関数系ではなく、D
CT関数系あるいはSlant関数系を用いた方がよい
結果が得られるが、もちろん三角関数系を使用すること
も可能である。
【0093】まず、図24(b)に示すように構成され
た本発明による周波数解析装置を用いて、原画像データ
を横(行)方向に1行づつスキャンし、4つの周波数成
分(f1 〜f4 )を得る。この処理を、横4行分だけ繰
り返し行うことにより、図24(c)に示すように、出
力結果として原画像と同じ16個の周波数成分が得られ
る。
【0094】次に、この結果を、図24(d)に示すよ
うに、原画像と同じ4×4マトリクスに配置した後、図
24(e)に示すように、前回と同一の周波数解析装置
を用いて、原画像データを縦(列)方向に1行づつスキ
ャンし、4つの周波数成分(f1 〜f4 )を得る。この
処理を、縦4列分だけ繰り返し行うことにより、図24
(f)に示すように、出力結果として原画像と同じ16
個の周波数成分が得られる。
【0095】この結果、縦、横全て直交変換処理した画
像データが得られる。なお、回路を2倍にして、原画像
を次々と入力することも可能であり、本発明の周波数解
析装置を用いれば、その回路構成を非常に小型化でき
る。このようにして得られた周波数スペクトルから、D
C(直流成分)を含む2×2の部分(図中破線部分)を
取り出して保存する。これにより、原画像データは1/
4の大きさに圧縮されたことになる。
【0096】なお、再生は、図25に示す再生回路によ
り可能である。同図において、各スイッチドキャパシタ
回路は、圧縮処理で用いたもの、すなわち図1に示す回
路と同じものを使用する。各スイッチドキャパシタ回路
の出力は、電流電圧変換回路で電圧に変換された後、全
ての値が加算器で加算されることにより逆変換の結果が
得られ、画像データが復元される。したがって、画像デ
ータを全てアナログで処理でき、高速で低電力消費の画
像圧縮再生回路を構築できる。
【0097】このように、異なる直交関数系を用いて入
力信号を周波数解析したい場合は、前述した本発明の、
近似余弦波からスイッチドキャパシタ回路を制御するた
めのパルス信号を生成する部分、すなわち図4に示した
制御回路12Aの論理回路を変更して、Walsh関数
系やHaar関数など、他の直交関数系に基づくパルス
信号を生成すればよい。これにより、三角関数系以外の
直交関数系を用いた周波数解析が可能となり、入力信号
にその直交関数系の各周波数成分がどれだけ含まれるか
を検出でき、その意味するところは三角関数系における
余弦波成分および正弦波成分と同じである。
【0098】また、パワースペクトルの計算も、前述の
三角関数系と同様に、各周波数成分の振幅値を2乗すれ
ば得ることができる。例えば、Walsh関数系であれ
ば、sal(1,t)とcal(1,t)は三角関数系
でいうsin(2πt)、cos(2πt)に相当する
周波数成分であり、両方の信号成分の2乗和を計算すれ
ばよい。
【0099】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、解析周
波数を有する直交関数系信号の振幅に応じて周波数が変
化する所定のパルス信号を用いて、入力信号を離散的に
充電するスイッチドキャパシタ回路を制御することによ
り、入力信号と直交関数系信号との乗算結果を示す電荷
を出力する乗算回路を設け、この乗算回路から出力され
た電荷を積分し、その積分値を入力信号に含まれる解析
周波数の信号成分として出力するようにしたものであ
る。
【0100】したがって、アナログ処理と同等な乗算結
果をデジタル回路のみで得られるものとなり、従来のよ
うに、アナログ処理を基本とした周波数解析装置におけ
る正弦波発生器、あるいはデジタル処理を基本とした周
波数解析装置におけるA−D変換器やDSPなど、比較
的規模の大きい回路部が不要となり、周波数解析の速度
を低下させることなく、極めて小さい回路規模で周波数
解析装置を構成でき、超小型の半導体集積回路装置に実
装できる。これにより、1つの半導体集積回路上に複数
の周波数解析装置を配設することができ、入力信号から
複数の周波数のスペクトラムを同時に計測可能となり、
高速な周波数解析装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態による周波数解析装置
のブロック図である。
【図2】 本発明の他の実施の形態による周波数解析装
置のブロック図である。
【図3】 スイッチドキャパシタ回路およびアナログ積
分回路の構成例を示す回路図である。
【図4】 制御回路の構成例を示すブロック図である。
【図5】 制御回路の動作を示す説明図である。
【図6】 制御回路の他の動作を示す説明図である。
【図7】 アナログ乗算回路の他の構成例を示すブロッ
ク図である。
【図8】 補償された近似余弦波信号を示す説明図であ
る。
【図9】 誤差補償用スイッチドキャパシタ回路の動作
を示すタイミングチャートである。
【図10】 入力信号と近似余弦波信号または近似正弦
波信号の位相関係を示す説明図である。
【図11】 入力信号波形例を示す説明図である。
【図12】 本発明による周波数解析結果(正弦波成分
および余弦波成分)を示す説明図である。
【図13】 本発明による周波数解析結果(パワースペ
クトラム)を示す説明図である。
【図14】 スイッチドキャパシタ回路による加算動作
を示す説明図である。
【図15】 スイッチドキャパシタ回路による減算動作
を示す説明図である。
【図16】 従来の周波数解析装置の構成例を示すブロ
ック図である。
【図17】 Walsh関数系を示す説明図である。
【図18】 Haar関数系を示す説明図である。
【図19】 Slant関数系を示す説明図である。
【図20】 DCT関数系を示す説明図である。
【図21】 直交関数系の違いによる解析スペクトルを
示す説明図である。
【図22】 典型的な心電信号波形例を示す説明図であ
る。
【図23】 音声認識に用いた場合の周波数解析例を示
す説明図である。
【図24】 画像圧縮の処理方法を示す説明図である。
【図25】 再生回路を示すブロック図である。
【符号の説明】 1A,1B…アナログ乗算回路、11…スイッチドキャ
パシタ回路、12A,12B…制御回路、2…タイミン
グ発生回路、3…基準クロック回路、4A,4B…アナ
ログ積分回路、41,42…反転増幅器、C4…コンデ
ンサ、R4…抵抗、52…乗加算回路、6…入力信号、
7A…正弦成分、7B…余弦成分、8…パワースペクト
ル。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 入力信号のうち解析対象となる所定の解
    析周波数の信号成分を検出する周波数解析装置におい
    て、 解析周波数を有する直交関数系信号の振幅に応じて周波
    数が変化する所定のパルス信号を用いて、入力信号を離
    散的に充電するスイッチドキャパシタ回路を制御するこ
    とにより、入力信号と直交関数系信号との乗算結果を示
    す電荷を出力する乗算回路と、 この乗算回路から出力された電荷を積分し、その積分値
    を入力信号に含まれる解析周波数の信号成分として出力
    する積分回路とを備えることを特徴とする周波数解析装
    置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の周波数解析装置におい
    て、 乗算回路は、 入力信号を離散的に充電することにより充電回数に応じ
    た分だけ電荷を出力するスイッチドキャパシタ回路と、 このスイッチドキャパシタ回路に、解析周波数を有する
    直交関数系信号の多値で示された振幅に応じてスイッチ
    ドキャパシタ回路における単位時間当たりの充電回数を
    制御し、かつ直交関数系信号の振幅極性に応じてスイッ
    チドキャパシタ回路での充電極性を制御するパルス信号
    を出力する制御回路とを有することを特徴とする周波数
    解析装置。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の周波数解析装置におい
    て、 制御回路は、 直交関数系信号の周期を複数に分割して設けられた各区
    間を示す区間信号に基づき、各区間における直交関数系
    信号の多値で示された振幅に応じた周波数のクロック信
    号を選択することにより、スイッチドキャパシタ回路へ
    出力するパルス信号を生成する論理回路を有することを
    特徴とする周波数解析装置。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の周波数解析装置におい
    て、 積分回路は、 奇数個分だけ直列接続されたCMOSインバータ回路か
    らなる増幅器と、 この増幅器の入出力端子間にそれぞれ並列接続された抵
    抗素子および容量素子とを有することを特徴とする周波
    数解析装置。
  5. 【請求項5】 請求項4記載の周波数解析装置におい
    て、 積分回路は、 奇数個分だけ直列接続された多数のCMOSインバータ
    回路からなる高利得の増幅器と、 この増幅器の入出力端子間にそれぞれ並列接続された抵
    抗素子および比較的容量の小さい容量素子とを有するこ
    とを特徴とする周波数解析装置。
  6. 【請求項6】 請求項1記載の周波数解析装置におい
    て、 乗算回路および積分回路からなり、直交関数系信号のう
    ち所定の位相を有する第1の信号波用いて、入力信号と
    乗算して積分することにより、入力信号に含まれる第1
    の信号波成分を出力する第1の組と、 乗算回路および積分回路からなり、第1の信号波と直交
    する位相を有する第2の信号波用いて、入力信号と乗算
    して積分することにより、入力信号に含まれる第2の信
    号波成分を出力する第2の組とを備えることを特徴とす
    る周波数解析装置。
  7. 【請求項7】 請求項6記載の周波数解析装置におい
    て、 第1および第2の信号成分の2乗和を算出することによ
    り、入力信号に含まれる解析周波数のパワースペクトル
    を出力する演算回路を備えることを特徴とする周波数解
    析装置。
  8. 【請求項8】 請求項6記載の周波数解析装置におい
    て、 第1および第2の信号成分の2乗比を算出することによ
    り、入力信号に含まれる解析周波数のパワースペクトル
    が有する位相角を出力する演算回路を備えることを特徴
    とする周波数解析装置。
  9. 【請求項9】 請求項1記載の周波数解析装置におい
    て、 直交関数系信号として、三角関数系の余弦波信号または
    正弦波信号の振幅を多値で近似した近似余弦波信号また
    は近似正弦波信号を用いることを特徴とする周波数解析
    装置。
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