以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本発明の第1の態様〜第3の態様に係る半導体光増幅器、全般に関する説明
2.実施例1(本発明の第1の態様に係る半導体光増幅器)
3.実施例2(実施例1の変形)
4.実施例3(本発明の第2の態様及び第3の態様に係る半導体光増幅器)
5.実施例4(実施例3の変形)
6.実施例5(実施例2におけるモード同期半導体レーザ素子の変形)
7.実施例6(実施例2におけるモード同期半導体レーザ素子の別の変形)
8.実施例7(実施例2におけるモード同期半導体レーザ素子の別の変形)
9.実施例8(実施例2におけるモード同期半導体レーザ素子の別の変形)
10.実施例9(実施例2におけるモード同期半導体レーザ素子の別の変形)、その他
[本発明の第1の態様〜第3の態様に係る半導体光増幅器、全般に関する説明]
本発明の第1の態様に係る半導体光増幅器において、Woutは5μm以上である形態とすることができる。尚、Woutの上限値として、限定するものではないが、例えば、4×102μmを例示することができる。また、このような形態を含む本発明の第1の態様に係る半導体光増幅器において、Winは1.4μm乃至2.0μmである形態とすることができる。尚、これらの好ましい形態は、本発明の第2の態様〜第3の態様に係る半導体光増幅器に対しても適用することが可能である。
また、本発明の第2の態様に係る半導体光増幅器において、(第2電極の幅)/(リッジストライプ構造の幅)の値は、0.2乃至0.9、好ましくは0.6乃至0.9であることが望ましい。ここで、第2電極の幅及びリッジストライプ構造の幅とは、半導体光増幅器の軸線に直交する或る仮想平面で半導体光増幅器を切断したときに得られる、第2電極の幅及びリッジストライプ構造の幅を意味する。
更には、本発明の第3の態様に係る半導体光増幅器においては、
0.2≦Wout/Wmax≦0.9
好ましくは0.5≦Wout/Wmax≦0.9
を満足することが望ましい。
上記の各種の好ましい形態を含む本発明の第2の態様〜第3の態様に係る半導体光増幅器にあっては、本発明の第1の態様に係る半導体光増幅器と同様に、半導体光増幅器の軸線に沿って光出射端面から積層構造体の内側の領域には、キャリア非注入領域が設けられている形態とすることもできる。尚、本発明の第1の態様〜第3の態様に係る半導体光増幅器にあっては、更に、半導体光増幅器の軸線に沿って光入射端面から積層構造体の内側の領域にも、キャリア非注入領域が設けられている形態とすることもできる。
更には、上記の各種の好ましい形態を含む本発明の第1の態様〜第3の態様に係る半導体光増幅器にあっては、キャリア非注入領域には第2電極が設けられていない構成とすることができるし、あるいは又、第2電極は、分離溝で分離された第1部分及び第2部分から構成され、キャリア非注入領域には第2電極の第2部分が設けられている構成とすることができる。ここで、後者の場合、第2電極の第2部分には、ビルトイン電圧以下の電圧を印加することが望ましい。具体的には、(1.2398/λ)以下の電圧を印加することが望ましい。尚、λは、半導体光増幅器への入射レーザ光の波長(単位:μm)であり、「1.2398」は定数である。例えば、0.4μm波長のレーザ光を入射した場合は、3.0995ボルト以下の電圧を印加することが望ましい。尚、第2電極の第2部分に印加する電圧の下限値として、限定するものではないが、−20ボルトを例示することができる。第2電極の第1部分に電圧を印加することで、半導体光増幅器の本来の機能である光増幅を行い、第2電極の第2部分に電圧を印加することで、光強度のモニターや、位置調整等のための計測を行うことができる。この点に関しては後に詳しく説明する。また、近視野像を制御することが可能となる。
また、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明の第1の態様〜第3の態様に係る半導体光増幅器において、半導体光増幅器の軸線とリッジストライプ構造の軸線とは、所定の角度で交わっている構成とすることができる。ここで、所定の角度θとして、0.1度≦θ≦10度を例示することができる。リッジストライプ構造の軸線とは、光出射端面におけるリッジストライプ構造の両端の二等分点と、光入射端面におけるリッジストライプ構造の両端の二等分点とを結ぶ直線である。
更には、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明の第1の態様〜第3の態様に係る半導体光増幅器において、光入射端面及び光出射端面には、酸化チタン層、酸化タンタル層、酸化ジルコニア層、酸化シリコン層及び酸化アルミニウム層から成る群から選択された少なくとも2種類の層の積層構造から成る低反射コート層が形成されている構成とすることができる。
更には、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明の第1の態様〜第3の態様に係る半導体光増幅器において、半導体光増幅器から出力されるレーザ光の光強度密度は、限定するものではないが、光出射端面を構成する第3化合物半導体層1cm2当たり60キロワット以上、好ましくは600キロワット以上である構成とすることができる。
更には、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明の第1の態様〜第3の態様に係る半導体光増幅器において、(光出射端面におけるリッジストライプ構造の幅)/(半導体光増幅器から出力されるレーザ光の幅)の値は、1.1乃至10、好ましくは1.1乃至5である構成とすることができる。
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明の第1の態様〜第3の態様に係る半導体光増幅器(以下、これらを総称して、単に『本発明の半導体光増幅器』と呼ぶ場合がある)において、半導体光増幅器は、透過型半導体光増幅器から構成されている形態とすることができるが、これに限定するものではなく、例えば、モノリシック型半導体光増幅器から構成されている形態とすることもできる。
本発明の半導体光増幅器においては、光出射端面におけるリッジストライプ構造の幅をWout、光入射端面におけるリッジストライプ構造の幅をWinとしたとき、Wout>Winを満足するが、このときのリッジストライプ構造の各端部は、1本の線分から構成されていてもよいし(本発明の第1の態様、第2の態様に係る半導体光増幅器)、2本以上の線分から構成されていてもよい(本発明の第1の態様〜第3の態様に係る半導体光増幅器)。前者の場合、リッジストライプ構造の幅は、例えば、光入射端面から光出射端面に向かって、単調に、テーパー状に緩やかに広げられる。一方、後者の場合であって、本発明の第1の態様、第2の態様に係る半導体光増幅器にあっては、リッジストライプ構造の幅は、例えば、光入射端面から光出射端面に向かって、先ず同じ幅であり、次いで、単調に、テーパー状に緩やかに広げられる。また、後者の場合であって、本発明の第2の態様に係る半導体光増幅器にあっては、リッジストライプ構造の幅は、例えば、光入射端面から光出射端面に向かって、先ず広げられ、最大幅を超えた後、狭められる。
本発明の第1の態様に係る半導体光増幅器、あるいは、本発明の第2の態様〜第3の態様に係る半導体光増幅器の好ましい形態において、半導体光増幅器の軸線に沿って光出射端面から積層構造体の内側の領域にはキャリア非注入領域が設けられているが、半導体光増幅器の軸線に沿ったキャリア非注入領域の長さ(キャリア非注入領域の幅)LNCとして、0.1μm乃至100μmを例示することができる。
あるいは又、本発明の第1の態様に係る半導体光増幅器、あるいは、本発明の第2の態様〜第3の態様に係る半導体光増幅器の好ましい形態において、第2電極は分離溝で分離された第1部分及び第2部分から構成され、キャリア非注入領域には第2電極の第2部分が設けられているが、ここで、第1部分の長さをLAmp-1、第2部分の長さをLAmp-2としたとき、0.001≦LAmp-2/LAmp-1≦0.01、好ましくは、0.0025≦LAmp-2/LAmp-1≦0.01を満足することが望ましい。半導体光増幅器における第2電極の第1部分と第2部分との間の電気抵抗値は、1×102Ω以上、好ましくは1×103Ω以上、より好ましくは1×104Ω以上であることが望ましい。あるいは又、第2電極の第1部分と第2部分との間の電気抵抗値は、第2電極と第1電極との間の電気抵抗値の1×10倍以上、好ましくは1×102倍以上、より好ましくは1×103倍以上であることが望ましい。あるいは又、第2電極を第1部分と第2部分とに分離する分離溝の幅は、1μm以上、半導体光増幅器の長さの50%以下、好ましくは10μm以上、半導体光増幅器の長さの10%以下とすることが望ましい。あるいは又、分離溝の幅として、3μm乃至20μmを例示することができるし、第2電極の第2部分の長さLAmp-2として、3μm乃至100μmを例示することができる。
本発明の半導体光増幅器において、レーザ光源はモード同期半導体レーザ素子から成り、モード同期半導体レーザ素子が出射するパルスレーザ光が半導体光増幅器に入射する形態とすることができ、この場合、レーザ光源は、モード同期動作に基づきパルスレーザ光を出射する構成とすることができる。但し、レーザ光源はこのような形態に限定するものではなく、連続発振型の周知のレーザ光源、利得スイッチング方式、損失スイッチング方式(Qスイッチング方式)等を含む種々の方式・形式の周知のパルス発振型のレーザ光源、チタンサファイヤレーザといったレーザ光源を用いることもできる。尚、本発明における半導体光増幅器は、光信号を電気信号に変換せず、直接光の状態で増幅するものであり、共振器効果を極力排除したレーザ構造を有し、半導体光増幅器の光利得で入射光を増幅する。即ち、本発明における半導体光増幅器は、本発明におけるレーザ光源を構成する半導体レーザ素子と実質的に同じ構成、構造を有する形態とすることができるし、異なる構成、構造を有する形態とすることもできる。
本発明の半導体光増幅器において、レーザ光源を、上述したとおりモード同期半導体レーザ素子から構成する場合、モード同期半導体レーザ素子(以下、『本発明におけるモード同期半導体レーザ素子』と呼ぶ)は、
(a)第1導電型を有し、GaN系化合物半導体から成る第1化合物半導体層、GaN系化合物半導体から成る発光領域を有する第3化合物半導体層、並びに、第1導電型と異なる第2導電型を有し、GaN系化合物半導体から成る第2化合物半導体層が、順次、積層されて成る積層構造体、
(b)第2化合物半導体層上に形成された第2電極、並びに、
(c)第1化合物半導体層に電気的に接続された第1電極、
を備え、
積層構造体は、極性を有する化合物半導体基板上に形成されており、
第3化合物半導体層は、井戸層及び障壁層を備えた量子井戸構造を有する構成とすることができる。そして、限定するものではないが、
井戸層の厚さは、1nm以上、10nm以下、好ましくは、1nm以上、8nm以下であり、
障壁層の不純物ドーピング濃度は、2×1018cm-3以上、1×1020cm-3以下、好ましくは、1×1019cm-3以上、1×1020cm-3以下とすることが好ましい。
そして、本発明におけるモード同期半導体レーザ素子の駆動にあっては、第2電極から積層構造体を介して第1電極に電流を流すことで、発光領域において光パルスを発生させる構成とすることができる。また、本発明におけるモード同期半導体レーザ素子にあっては、第2電極から積層構造体を介して第1電極に電流が流されることで、発光領域において光パルスが発生する構成とすることができる。
半導体レーザ素子をモード同期動作させるためには、半導体レーザ素子に発光領域及び可飽和吸収領域を設ける必要がある。ここで、発光領域及び可飽和吸収領域の配置状態から、半導体レーザ素子は、一般に、発光領域と可飽和吸収領域とを垂直方向に配置したSAL(Saturable Absorber Layer)型やWI(Weakly Index guide)型と、共振器方向に発光領域と可飽和吸収領域とを並置したバイ・セクション(Bi Section)型を含む多電極型に分類することができる。モード同期法にあっては、立方晶系(主に、GaAs系)の半導体レーザ素子では、時間幅0.6ピコ秒の光パルスが発生できることが確認されている(非特許文献1を参照)。また、六方晶系(主にGaN系)の半導体レーザ素子では、2001年に、S.Geeらが初めてモード同期法を用いた光パルスの発生を報告している(非特許文献2を参照)。しかしながら、非特許文献2によれば、光パルスの時間幅は30ピコ秒とまだ長いものである。また、極性を有する基板を用いて多電極型の半導体レーザ素子を作製した場合、具体的には、例えば、GaN基板の{0001}面(C面)上に多電極型のGaN系半導体レーザ素子を設けた場合、ピエゾ分極又は自発分極に起因した内部電界によるQCSE効果(量子閉じ込めシュタルク効果)によって、電気的に可飽和吸収が制御し難くなる場合がある。即ち、場合によっては、モード同期動作を得るために第1電極に流す直流電流の値及び可飽和吸収領域に印加する逆バイアス電圧の値を高くする必要が生じたり、メインパルスに付随したサブパルス成分が発生したり、外部信号と光パルスとの間での同期が取り難くなることが判った。
本発明におけるモード同期半導体レーザ素子にあっては、好ましくは、第3化合物半導体層を構成する井戸層の厚さが1nm以上、10nm以下と規定され、更には、第3化合物半導体層を構成する障壁層の不純物ドーピング濃度が2×1018cm-3以上、1×1020cm-3以下と規定されている。即ち、井戸層の厚さを薄くし、しかも、第3化合物半導体層のキャリアの増加を図っている。そして、その結果、ピエゾ分極の影響を低減させることができ、時間幅が短く、サブパルス成分の少ない単峰化された光パルスを発生させ得るレーザ光源を得ることができる。また、低い逆バイアス電圧でモード同期駆動を達成することが可能となるし、外部信号(電気信号及び光信号)と同期が取れた光パルス列を発生させることが可能となる。それ故、例えば、体積型光ディスクシステムにおける光パルスを発生させる発振器として適用することができる。
ここで、本発明におけるモード同期半導体レーザ素子にあっては、
第3化合物半導体層は、可飽和吸収領域を更に備えており、
第2電極は、発光領域を経由して第1電極に電流を流すことで順バイアス状態とするための第1部分、及び、可飽和吸収領域に電界を加えるための第2部分に、分離溝によって分離されており、
第2電極の第1部分から発光領域を経由して第1電極に電流を流すことで順バイアス状態とし、且つ、第1電極と第2電極の第2部分との間に電圧を印加することで可飽和吸収領域に電界を加える形態とすることができる。
第1電極と第2部分との間には、逆バイアス電圧を印加する構成(即ち、第1電極を正極、第2部分を負極とする構成)とすることが望ましい。尚、第2電極の第2部分には、第2電極の第1部分に印加するパルス電流あるいはパルス電圧と同期したパルス電流あるいはパルス電圧を印加してもよいし、直流バイアスを印加してもよい。
また、これらの好ましい形態、構成を含む本発明におけるモード同期半導体レーザ素子において、第2電極の第1部分と第2部分との間の電気抵抗値は、1×102Ω以上、好ましくは1×103Ω以上、より好ましくは1×104Ω以上であることが望ましい。あるいは又、第2電極の第1部分と第2部分との間の電気抵抗値は、第2電極と第1電極との間の電気抵抗値の1×10倍以上、好ましくは1×102倍以上、より好ましくは1×103倍以上であることが望ましい。
ここで、第2電極の第1部分と第2部分との間の電気抵抗値を、1×102Ω以上とし、あるいは又、第2電極と第1電極との間の電気抵抗値の10倍以上とする形態を採用することで、第2電極の第1部分から第2部分への漏れ電流の流れを確実に抑制することができる。即ち、発光領域(キャリア注入領域、利得領域)に注入する電流を大きくできると同時に、可飽和吸収領域(キャリア非注入領域)へ印加する逆バイアス電圧Vsaを高くすることができる。しかも、第2電極の第1部分と第2部分との間のこのような高い電気抵抗値を、第2電極を第1部分と第2部分とに分離溝によって分離するだけで達成することができる。即ち、モード同期による光パルス生成を一層容易に実現することができる。
更には、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明におけるモード同期半導体レーザ素子において、第2電極を第1部分と第2部分とに分離する分離溝の幅は、1μm以上、共振器長の50%以下、好ましくは10μm以上、共振器長の10%以下とすることが望ましい。共振器長として、0.3mmを例示することができるが、これに限定するものではない。尚、以下の説明において、共振器方向をZ方向とし、積層構造体の厚さ方向をY方向とする。あるいは又、可飽和吸収領域の長さは発光領域の長さよりも短い構成とすることができる。あるいは又、第2電極の長さ(第1部分と第2部分の総計の長さ)は第3化合物半導体層の長さよりも短い構成とすることができる。ここで、第2電極の第1部分と第2部分の配置状態として、
(1)2つの第2電極の第1部分と1つの第2電極の第2部分とが設けられ、第2部分の端部が、一方の分離溝を挟んで、一方の第1部分と対向し、第2部分の他端が、他方の分離溝を挟んで、他方の第1部分と対向している状態(即ち、第2電極は、第2部分を第1部分で挟んだ構造)
(2)1つの第2電極の第1部分と1つの第2電極の第2部分とが設けられ、第2電極の第1部分と、第2電極の第2部分とが、分離溝を挟んで配置されている状態
(3)1つの第2電極の第1部分と2つの第2電極の第2部分とが設けられ、第1部分の一端が、一方の分離溝を挟んで、一方の第2部分と対向し、第1部分の他端が、他方の分離溝を挟んで、他方の第2部分と対向している状態
を挙げることができるが、中でも、(1)、(2)の構造とすることが望ましい。また、広くは、
(4)N個の第2電極の第1部分と(N−1)個の第2電極の第2部分とが設けられ、第2電極の第1部分が第2電極の第2部分を挟んで配置されている状態
(5)N個の第2電極の第2部分と(N−1)個の第2電極の第1部分とが設けられ、第2電極の第2部分が第2電極の第1部分を挟んで配置されている状態
を挙げることができる。尚、(4)及び(5)の状態は、云い換えれば、
(4’)N個の発光領域[キャリア注入領域、利得領域]と(N−1)個の可飽和吸収領域[キャリア非注入領域]とが設けられ、発光領域が可飽和吸収領域を挟んで配置されている状態
(5’)N個の可飽和吸収領域[キャリア非注入領域]と(N−1)個の発光領域[キャリア注入領域、利得領域]とが設けられ、可飽和吸収領域が発光領域を挟んで配置されている状態
である。
更には、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明におけるモード同期半導体レーザ素子の駆動方法にあっては、第2電極から発光領域を経由して第1電極に電流を流し、且つ、第2電極から発光領域を経由して第1電極に外部電気信号を重畳させる形態とすることができる。そして、これによって、光パルスと外部電気信号との間の同期を取ることができる。あるいは又、積層構造体の一端面から光信号を入射させる形態とすることができる。そして、これによっても、光パルスと光信号との間の同期を取ることができる。
更には、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の半導体光増幅器、あるいは、本発明におけるモード同期半導体レーザ素子にあっては、障壁層にドーピングされた不純物はシリコン(Si)である構成することができるが、これに限定するものではなく、その他、酸素(O)とすることもできる。
更には、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明におけるモード同期半導体レーザ素子は、リッジストライプ型の分離閉じ込めヘテロ構造(SCH構造、Separate Confinement Heterostructure)を有する半導体レーザ素子である形態とすることができる。あるいは又、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明のモード同期半導体レーザ素子は、斜めリッジストライプ型の分離閉じ込めヘテロ構造を有する半導体レーザ素子である形態とすることができる。ここで、リッジストライプ構造の高さは、0.1μm以上、10μm以下、好ましくは0.2μm以上、1μm以下とすることが望ましいが、これに限定するものではない。また、リッジストライプ構造の幅として2μm以下を例示することができ、リッジストライプ構造の幅の下限値として、例えば、0.8μmを挙げることができるが、これに限定するものではない。尚、リッジストライプ構造の高さに関する規定は、本発明の半導体光増幅器にも適用することができる。
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明におけるモード同期半導体レーザ素子は、例えば、以下の方法で製造することができる。即ち、
(A)基体上に、第1導電型を有し、GaN系化合物半導体から成る第1化合物半導体層、GaN系化合物半導体から成る発光領域及び可飽和吸収領域を構成する第3化合物半導体層、並びに、第1導電型と異なる第2導電型を有し、GaN系化合物半導体から成る第2化合物半導体層が、順次、積層されて成る積層構造体を形成した後、
(B)第2化合物半導体層上に帯状の第2電極を形成し、次いで、
(C)第2電極をエッチング用マスクとして、少なくとも第2化合物半導体層の一部分をエッチングして、リッジストライプ構造を形成した後、
(D)分離溝を第2電極に形成するためのレジスト層を形成し、次いで、レジスト層をウエットエッチング用マスクとして、第2電極に分離溝をウエットエッチング法にて形成し、以て、第2電極を第1部分と第2部分とに分離溝によって分離する、
各工程を具備した製造方法に基づき製造することができる。
そして、このような製造方法を採用することで、即ち、帯状の第2電極をエッチング用マスクとして、少なくとも第2化合物半導体層の一部分をエッチングして、リッジストライプ構造を形成するので、即ち、パターニングされた第2電極をエッチング用マスクとして用いてセルフアライン方式にてリッジストライプ構造を形成するので、第2電極とリッジストライプ構造との間に合わせずれが生じることがない。また、第2電極に分離溝をウエットエッチング法にて形成する。このように、ドライエッチング法と異なり、ウエットエッチング法を採用することで、第2化合物半導体層に光学的、電気的特性の劣化が生じることを抑制することができる。それ故、発光特性に劣化が生じることを、確実に防止することができる。
尚、工程(C)にあっては、第2化合物半導体層を厚さ方向に一部分、エッチングしてもよいし、第2化合物半導体層を厚さ方向に全部、エッチングしてもよいし、第2化合物半導体層及び第3化合物半導体層を厚さ方向にエッチングしてもよいし、第2化合物半導体層及び第3化合物半導体層、更には、第1化合物半導体層を厚さ方向に一部分、エッチングしてもよい。
更には、前記工程(D)において、第2電極に分離溝を形成する際の、第2電極のエッチングレートをER0、積層構造体のエッチングレートをER1としたとき、ER0/ER1≧1×10、好ましくは、ER0/ER1≧1×102を満足することが望ましい。ER0/ER1がこのような関係を満足することで、積層構造体をエッチングすること無く(あるいは、エッチングされても僅かである)、第2電極を確実にエッチングすることができる。
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の半導体光増幅器も、その形態に依存するものの、実質的に、上述した本発明におけるモード同期半導体レーザ素子の製造方法と同様の製造方法で製造することができるが、これに限定するものではない。
本発明におけるモード同期半導体レーザ素子において、第2電極は、パラジウム(Pd)単層、ニッケル(Ni)単層、白金(Pt)単層、パラジウム層が第2化合物半導体層に接するパラジウム層/白金層の積層構造、又は、パラジウム層が第2化合物半導体層に接するパラジウム層/ニッケル層の積層構造から成る形態とすることができる。尚、下層金属層をパラジウムから構成し、上層金属層をニッケルから構成する場合、上層金属層の厚さを、0.1μm以上、好ましくは0.2μm以上とすることが望ましい。あるいは又、第2電極を、パラジウム(Pd)単層から成る構成とすることが好ましく、この場合、厚さを、20nm以上、好ましくは50nm以上とすることが望ましい。あるいは又、第2電極を、パラジウム(Pd)単層、ニッケル(Ni)単層、白金(Pt)単層、又は、下層金属層が第2化合物半導体層に接する下層金属層と上層金属層の積層構造(但し、下層金属層は、パラジウム、ニッケル及び白金から成る群から選択された1種類の金属から構成され、上層金属層は、前記工程(D)において第2電極に分離溝を形成する際のエッチングレートが、下層金属層のエッチングレートと同じ、あるいは同程度、あるいは、下層金属層のエッチングレートよりも高い金属から構成されている)から成る構成とすることが好ましい。また、前記工程(D)において第2電極に分離溝を形成する際のエッチング液を、王水、硝酸、硫酸、塩酸、又は、これらの酸の内の少なくとも2種類の混合液(具体的には、硝酸と硫酸の混合液、硫酸と塩酸の混合液)とすることが望ましい。第2電極の幅は、0.5μm以上、50μm以下、好ましくは1μm以上、5μm以下であることが望ましい。本発明の半導体光増幅器においても、その形態に依存するものの、実質的に、上述した本発明におけるモード同期半導体レーザ素子における第2電極の構成を適用することができる。
以上に説明した好ましい構成、形態を含む本発明の半導体光増幅器、あるいは、本発明におけるモード同期半導体レーザ素子において、積層構造体は、具体的には、AlGaInN系化合物半導体から成る構成とすることができる。ここで、AlGaInN系化合物半導体として、より具体的には、GaN、AlGaN、GaInN、AlGaInNを挙げることができる。更には、これらの化合物半導体に、所望に応じて、ホウ素(B)原子やタリウム(Tl)原子、ヒ素(As)原子、リン(P)原子、アンチモン(Sb)原子が含まれていてもよい。また、光増幅領域あるいは発光領域(利得領域)及び可飽和吸収領域を構成する第3化合物半導体層(この第3化合物半導体層を『活性層』と呼ぶ場合がある)は、量子井戸構造を有する。具体的には、単一量子井戸構造[QW構造]を有していてもよいし、多重量子井戸構造[MQW構造]を有していてもよい。量子井戸構造を有する第3化合物半導体層は、井戸層及び障壁層が、少なくとも1層、積層された構造を有するが、(井戸層を構成する化合物半導体,障壁層を構成する化合物半導体)の組合せとして、(InyGa(1-y)N,GaN)、(InyGa(1-y)N,InzGa(1-z)N)[但し、y>z]、(InyGa(1-y)N,AlGaN)を例示することができる。
更には、上記の好ましい構成、形態を含む本発明におけるモード同期半導体レーザ素子において、第2化合物半導体層は、p型GaN層及びp型AlGaN層が交互に積層された超格子構造を有し;超格子構造の厚さは0.7μm以下である構造とすることができる。このような超格子構造の構造を採用することで、クラッド層として必要な屈折率を維持しながら、半導体レーザ素子の直列抵抗成分を下げることができ、半導体レーザ素子の低動作電圧化につながる。尚、超格子構造の厚さの下限値として、限定するものではないが、例えば、0.3μmを挙げることができるし、超格子構造を構成するp型GaN層の厚さとして1nm乃至5nmを例示することができるし、超格子構造を構成するp型AlGaN層の厚さとして1nm乃至5nmを例示することができるし、p型GaN層及びp型AlGaN層の層数合計として、60層乃至300層を例示することができる。また、第3化合物半導体層から第2電極までの距離は1μm以下、好ましくは、0.6μm以下である構成とすることができる。このように第3化合物半導体層から第2電極までの距離を規定することで、抵抗の高いp型の第2化合物半導体層の厚さを薄くし、半導体レーザ素子の動作電圧の低減化を達成することができる。尚、第3化合物半導体層から第2電極までの距離の下限値として、限定するものではないが、例えば、0.3μmを挙げることができる。また、第2化合物半導体層には、Mgが、1×1019cm-3以上、ドーピングされており;第3化合物半導体層からの波長405nmの光に対する第2化合物半導体層の吸収係数は、少なくとも50cm-1である構成とすることができる。このMgの原子濃度は、2×1019cm-3の値で最大の正孔濃度を示すという材料物性に由来しており、最大の正孔濃度、即ち、この第2化合物半導体層の比抵抗が最小になるように設計された結果である。第2化合物半導体層の吸収係数は、半導体レーザ素子の抵抗を出来るだけ下げるという観点で規定されているものであり、その結果、第3化合物半導体層の光の吸収係数が、50cm-1となるのが一般的である。しかし、この吸収係数を上げるために、Mgドープ量を故意に2×1019cm-3以上の濃度に設定することも可能である。この場合には、実用的な正孔濃度が得られる上での上限のMgドープ量は、例えば8×1019cm-3である。また、第2化合物半導体層は、第3化合物半導体層側から、ノンドープ化合物半導体層、及び、p型化合物半導体層を有しており;第3化合物半導体層からp型化合物半導体層までの距離は、1.2×10-7m以下である構成とすることができる。このように第3化合物半導体層からp型化合物半導体層までの距離を規定することで、内部量子効率が低下しない範囲で、内部損失を抑制することができ、これにより、レーザ発振が開始される閾値電流Ithを低減させることができる。尚、第3化合物半導体層からp型化合物半導体層までの距離の下限値として、限定するものではないが、例えば、5×10-8mを挙げることができる。また、リッジ部の両側面には、SiO2/Si積層構造から成る積層絶縁膜が形成されており;リッジ部の有効屈折率と積層絶縁膜の有効屈折率との差は、5×10-3乃至1×10-2である構成とすることができる。このような積層絶縁膜を用いることで、100mWを超える高出力動作であっても、単一基本横モードを維持することができる。また、第2化合物半導体層は、第3化合物半導体層側から、例えば、ノンドープGaInN層(p側光ガイド層)、ノンドープAlGaN層(p側クラッド層)、MgドープAlGaN層(電子障壁層)、GaN層(Mgドープ)/AlGaN層の超格子構造(超格子クラッド層)、及び、MgドープGaN層(p側コンタクト層)が積層されて成る構造とすることができる。第3化合物半導体層における井戸層を構成する化合物半導体のバンドギャップは、2.4eV以上であることが望ましい。また、第3化合物半導体層から出射されるレーザ光の波長は、360nm乃至500nm、好ましくは400nm乃至410nmであることが望ましい。ここで、以上に説明した各種の構成を、適宜、組み合わせることができることは云うまでもない。本発明の半導体光増幅器においても、その形態に依存するものの、実質的に、上述した本発明におけるモード同期半導体レーザ素子における以上に説明した構成を適用することができる。
上述したとおり、第2化合物半導体層において、第3化合物半導体層と電子障壁層との間には、ノンドープ化合物半導体層(例えば、ノンドープGaInN層、あるいは、ノンドープAlGaN層)を形成してもよい。更には、第3化合物半導体層とノンドープ化合物半導体層との間に、光ガイド層としてのノンドープGaInN層を形成してもよい。第2化合物半導体層の最上層を、MgドープGaN層(p側コンタクト層)が占めている構造とすることもできる。
本発明の半導体光増幅器、あるいは、本発明におけるモード同期半導体レーザ素子を構成する各種のGaN系化合物半導体層を基板に順次形成するが、ここで、基板として、サファイア基板の他にも、GaAs基板、GaN基板、SiC基板、アルミナ基板、ZnS基板、ZnO基板、AlN基板、LiMgO基板、LiGaO2基板、MgAl2O4基板、InP基板、Si基板、これらの基板の表面(主面)に下地層やバッファ層が形成されたものを挙げることができる。主に、GaN系化合物半導体層を基板に形成する場合、GaN基板が欠陥密度の少なさから好まれるが、GaN基板は成長面によって、極性/無極性/半極性と特性が変わることが知られている。また、本発明の半導体光増幅器、あるいは、本発明におけるモード同期半導体レーザ素子を構成する各種のGaN系化合物半導体層の形成方法として、有機金属化学的気相成長法(MOCVD法,MOVPE法)や分子線エピタキシー法(MBE法)、ハロゲンが輸送あるいは反応に寄与するハイドライド気相成長法等を挙げることができる。
ここで、MOCVD法における有機ガリウム源ガスとして、トリメチルガリウム(TMG)ガスやトリエチルガリウム(TEG)ガスを挙げることができるし、窒素源ガスとして、アンモニアガスやヒドラジンガスを挙げることができる。また、n型の導電型を有するGaN系化合物半導体層の形成においては、例えば、n型不純物(n型ドーパント)としてケイ素(Si)を添加すればよいし、p型の導電型を有するGaN系化合物半導体層の形成においては、例えば、p型不純物(p型ドーパント)としてマグネシウム(Mg)を添加すればよい。また、GaN系化合物半導体層の構成原子としてアルミニウム(Al)あるいはインジウム(In)が含まれる場合、Al源としてトリメチルアルミニウム(TMA)ガスを用いればよいし、In源としてトリメチルインジウム(TMI)ガスを用いればよい。更には、Si源としてモノシランガス(SiH4ガス)を用いればよいし、Mg源としてシクロペンタジエニルマグネシウムガスやメチルシクロペンタジエニルマグネシウム、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)を用いればよい。尚、n型不純物(n型ドーパント)として、Si以外に、Ge、Se、Sn、C、Te、S、O、Pd、Poを挙げることができるし、p型不純物(p型ドーパント)として、Mg以外に、Zn、Cd、Be、Ca、Ba、C、Hg、Srを挙げることができる。
第1導電型をn型とするとき、n型の導電型を有する第1化合物半導体層に電気的に接続された第1電極は、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)、タングステン(W)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、錫(Sn)及びインジウム(In)から成る群から選択された少なくとも1種類の金属を含む、単層構成又は多層構成を有することが望ましく、例えば、Ti/Au、Ti/Al、Ti/Pt/Auを例示することができる。第1電極は第1化合物半導体層に電気的に接続されているが、第1電極が第1化合物半導体層上に形成された形態、第1電極が導電材料層や導電性の基板を介して第1化合物半導体層に接続された形態が包含される。第1電極や第2電極は、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法等のPVD法にて成膜することができる。
第1電極や第2電極上に、外部の電極あるいは回路と電気的に接続するために、パッド電極を設けてもよい。パッド電極は、Ti(チタン)、アルミニウム(Al)、Pt(白金)、Au(金)、Ni(ニッケル)から成る群から選択された少なくとも1種類の金属を含む、単層構成又は多層構成を有することが望ましい。あるいは又、パッド電極を、Ti/Pt/Auの多層構成、Ti/Auの多層構成に例示される多層構成とすることもできる。
本発明におけるモード同期半導体レーザ素子は、更に、外部反射鏡を備えている形態とすることができる。即ち、外部共振器型のモード同期半導体レーザ素子とすることができる。あるいは又、モノリシック型のモード同期半導体レーザ素子とすることもできる。尚、外部共振器型のモード同期半導体レーザ素子は、集光型であってもよいし、コリメート型であってもよい。外部共振器型のモード同期半導体レーザ素子にあっては、光パルスが出射される積層構造体の一端面の光反射率は0.5%以下であることが好ましい。尚、この光反射率の値は、従来の半導体レーザ素子において光パルスが出射される積層構造体の一端面の光反射率(通常、5%乃至10%)よりも格段に低い値である。外部共振器型のモード同期半導体レーザ素子にあっては、外部共振器長さ(Z’,単位:mm)の値は、
0<Z’<1500
好ましくは、
30≦Z’≦150
であることが望ましい。
本発明を、例えば、光ディスクシステム、通信分野、光情報分野、光電子集積回路、非線形光学現象を応用した分野、光スイッチ、レーザ計測分野や種々の分析分野、超高速分光分野、多光子励起分光分野、質量分析分野、多光子吸収を利用した顕微分光の分野、化学反応の量子制御、ナノ3次元加工分野、多光子吸収を応用した種々の加工分野、医療分野、バイオイメージング分野といった分野に適用することができる。
実施例1は、本発明の第1の態様に係る半導体光増幅器に関する。半導体光増幅器を含む実施例1の光出力装置の概念図を図1に示し、半導体光増幅器の軸線(光導波路の延びる方向であり、便宜上、『Z方向』と呼ぶ)を含む仮想垂直面(YZ平面)で半導体光増幅器を切断したときの半導体光増幅器の模式的な断面図を図2に示し、半導体光増幅器の軸線と直交する仮想垂直面(XY平面)で半導体光増幅器を切断したときの半導体光増幅器の模式的な断面図を図3に示す。尚、図2は、図3の矢印I−Iに沿った模式的な断面図であり、図3は、図2の矢印II−IIに沿った模式的な断面図である。また、半導体光増幅器の模式的な斜視図を図4に示し、リッジストライプ構造の模式的な平面図を図5に示す。
実施例1の光出力装置は、
(A)レーザ光源100、及び、
(B)レーザ光源100からのレーザ光を光増幅して出射する半導体光増幅器200、
を備えている。
半導体光増幅器200は、図1に示すように、透過型半導体光増幅器から構成されている。そして、半導体光増幅器200の光入射端面201、及び、光入射端面201に対向する光出射端面203には、低反射コート層(AR)202,204が形成されている。低反射コート層202,204は、1層の酸化チタン層と1層の酸化アルミニウム層とが積層された構造を有する。光入力端面201側から入射されたレーザ光は、半導体光増幅器200の内部で光増幅され、反対側の光出射端面203から出力される。レーザ光は基本的に一方向にのみ導波される。また、実施例1にあっては、レーザ光源100は周知の連続発振型のレーザ装置から成り、レーザ装置が出射するレーザ光が半導体光増幅器200に入射する。
図1に示す実施例1の光出力装置において、レーザ光源100から出射されたレーザ光は、光アイソレータ15、反射ミラー16を介して、反射ミラー20に入射する。反射ミラー20によって反射されたレーザ光は、半波長板(λ/2波長板)21、レンズ22を通過して、半導体光増幅器200に入射する。尚、光アイソレータ15は、半導体光増幅器200からの戻り光が、レーザ光源100に向かうことを防止するために配置されている。そして、半導体光増幅器200において光増幅され、レンズ30を介して系外に出射される。
半導体光増幅器200は、
(a)第1導電型(実施例1においては、具体的には、n型導電型)を有し、GaN系化合物半導体から成る第1化合物半導体層230、GaN系化合物半導体から成る光増幅領域(キャリア注入領域、利得領域)241を有する第3化合物半導体層(活性層)240、並びに、第1導電型と異なる第2導電型(実施例1においては、具体的には、p型導電型)を有し、GaN系化合物半導体から成る第2化合物半導体層250が、順次、積層されて成る積層構造体、
(b)第2化合物半導体層250上に形成された第2電極262、並びに、
(c)第1化合物半導体層230に電気的に接続された第1電極261、
を備えている。
実施例1の半導体光増幅器200において、積層構造体はリッジストライプ構造を有し、光出射端面203におけるリッジストライプ構造の幅をWout、光入射端面201におけるリッジストライプ構造の幅をWinとしたとき、Wout>Winを満足する。具体的には、
Wout=15μm
Win =1.4μm
である。そして、半導体光増幅器200の軸線AX1に沿って光出射端面203から積層構造体の内側の領域には、キャリア非注入領域205が設けられている。ここで、半導体光増幅器200の軸線AX1に沿ったキャリア非注入領域205の長さ(キャリア非注入領域205の幅)をLNCとしたとき、
LNC =5μm
である。キャリア非注入領域205には第2電極262が設けられていない。半導体光増幅器全体の長さは2.0mmである。尚、半導体光増幅器200の軸線に沿って光入射端面201から積層構造体の内側の領域にも、キャリア非注入領域が設けられている。
実施例1の半導体光増幅器200は、より具体的には、リッジストライプ型の分離閉じ込めヘテロ構造(SCH構造)を有する。そして、インデックスガイド型のAlGaInNから成るGaN系半導体レーザ構造と同様の構造を有する。リッジストライプ構造の幅は、光入射端面201から光出射端面203に向かって、単調に、テーパー状に緩やかに広がっている。また、半導体光増幅器200の軸線AX1とリッジストライプ構造の軸線AX2とは、所定の角度、具体的には、θ=5.0度で交わっている。尚、軸線AX1及び軸線AX2を図5には一点鎖線で示す。
積層構造体は、化合物半導体基板221の上に形成されている。具体的には、半導体光増幅器200は、n型GaN基板221の(0001)面上に設けられている。尚、n型GaN基板221の(0001)面は、『C面』とも呼ばれ、極性を有する結晶面である。第1化合物半導体層230、第3化合物半導体層240、及び、第2化合物半導体層250は、具体的には、AlGaInN系化合物半導体から成り、より具体的には、以下の表1に示す層構成を有する。ここで、表1において、下方に記載した化合物半導体層ほど、n型GaN基板221に近い層である。尚、第3化合物半導体層240における井戸層を構成する化合物半導体のバンドギャップは3.06eVである。第3化合物半導体層240は、井戸層及び障壁層を備えた量子井戸構造を有しており、障壁層の不純物(具体的には、シリコン,Si)のドーピング濃度は、2×1017cm-3以上、1×1020cm-3以下である。
[表1]
第2化合物半導体層250
p型GaNコンタクト層(Mgドープ)257
p型AlGaN(Mgドープ)クラッド層255
p型GaN(Mgドープ)層254
p型AlGaN電子障壁層(Mgドープ)253
第3化合物半導体層240
GaInN量子井戸活性層
(井戸層:Ga0.92In0.08N/障壁層:Ga0.98In0.02N)
第1化合物半導体層230
n型GaN層232
n型AlGaNクラッド層231
但し、
井戸層(2層):10nm[ノン・ドープ]
障壁層(3層):12nm[ドーピング濃度(Si):2×1018cm-3]
また、p型GaNコンタクト層257及びp型AlGaNクラッド層255の一部は、RIE法にて除去されており、リッジストライプ構造(リッジ部258)が形成されている。リッジ部258の両側にはSiO2/Siから成る積層絶縁膜259が形成されている。尚、SiO2層が下層であり、Si層が上層である。ここで、リッジ部258の有効屈折率と積層絶縁膜259の有効屈折率との差は、5×10-3乃至1×10-2、具体的には、7×10-3である。そして、リッジ部258の頂面に相当するp型GaNコンタクト層257からp型AlGaNクラッド層255の頂面の一部に亙り、第2電極(p側オーミック電極)262が形成されている。一方、n型GaN基板221の裏面には、Ti/Pt/Auから成る第1電極(n側オーミック電極)261が形成されている。実施例1にあっては、第2電極262を厚さ0.1μmのPd単層から構成した。
p型AlGaNクラッド層255の厚さは400nmであり、p型GaN層254の厚さは100nmであり、p型AlGaN電子障壁層253の厚さは20nmであり、p型GaNコンタクト層257の厚さは100nmである。更には、第2化合物半導体層250を構成するp型AlGaN電子障壁層253、p型GaN層254、p型AlGaNクラッド層255、p型GaNコンタクト層257には、Mgが、1×1019cm-3以上(具体的には、2×1019cm-3)、ドーピングされている。一方、n型AlGaNクラッド層231の厚さは2.5μmであり、n型GaN層232の厚さは200nmである。そして、n型AlGaNクラッド層231と第3化合物半導体層240とによって挟まれたn型化合物半導体層の厚さ(n型GaN層232の厚さ)をt1、p型AlGaNクラッド層255と第3化合物半導体層240とによって挟まれたp型化合物半導体層の厚さ(p型GaN層254及びp型AlGaN電子障壁層253の厚さの合計)をt2としたとき、
t1=200nm
t2=120nm
であり、
0.1≦t2/t1<1
を満足している。
実施例1にあっては、半導体光増幅器200に波長405nmの単一モード連続発振レーザ光(光出力:15ミリワット)を入射させた。そして、第2電極262から第1電極261に向かって600ミリアンペアの直流電流を流した。尚、この直流電流の値を、光入射端面201を構成する第3化合物半導体層240、1cm2当たりに換算すると、3.7×103アンペア/cm2である。このとき、半導体光増幅器200から出射されたレーザ光の近視野像を図6の(A)に示す。尚、比較例1として、キャリア非注入領域205を設けないことを除き、実施例1と同じ構成、構造を有する半導体光増幅器を作製した。そして、第2電極から第1電極に向かって600ミリアンペアの直流電流を流したときの、比較例1の半導体光増幅器から出射されたレーザ光の近視野像を図6の(B)に示す。図6の(B)からも明らかなように、比較例1の半導体光増幅器にあっては近視野像の幅がWout(15μm)に比べて狭く、1/e2幅で5μm(半値幅で3.1μm)であった。このような現象は、窒化物半導体系半導体光増幅器に特有の現象であることを本発明者らが初めて発見した。このような狭い近視野像は、増幅光出力の飽和や信頼性に悪影響を及ぼす。尚、比較例1の半導体光増幅器から出力されるレーザ光の光強度密度は、47ミリワットであった。一方、図6の(A)からも明らかなように、実施例1の半導体光増幅器200にあっては、モードフィールドが広がり、近視野像の幅が広く、1/e2幅で11.5μm(半値幅で5.8μm)であった。また、実施例1の半導体光増幅器200から出力されるレーザ光の光強度密度は、122ミリワットであり、増幅光出力も、比較例1の半導体光増幅器と比較して高い。このように、キャリア非注入領域205を設けることで、増幅光出力が顕著に増大することが確認できた。また、(光出射端面におけるリッジストライプ構造の幅)/(半導体光増幅器から出力されるレーザ光の幅)の値は1.3であった。ここで、半導体光増幅器から出力されるレーザ光の幅とは、近視野像における1/e2幅、即ち、ピーク強度に対して1/e2の強度になる近視野像の幅を意味する。
キャリア非注入領域205を設けることで出射レーザ光の近視野像の幅が広がる理由は、以下のとおりと推測している。即ち、XY平面での積層構造体内におけるキャリア分布は、入射レーザ光の光強度が低いときには、1つのピークを有する山型となる。ところが、入射レーザ光の光強度が高くなると、半導体光増幅器の積層構造体内におけるキャリアの注入、拡散が追いつかなくなり、2つのピークを有する山型(山/谷/山の光強度パターン)となる。ここで、化合物半導体層内でキャリア数が減少すると、化合物半導体層の相対的な屈折率が高くなることが知られている。それ故、半導体光増幅器の光出射端面から出射されるレーザ光が幅方向に広がり難くなり、近視野像の幅がWoutに比べて狭くなる。そして、レーザ光が半導体光増幅器から出射される領域の光出射端面を占める面積が小さいが故に、半導体光増幅器の高出力化が図り難い。
一方、実施例1の半導体光増幅器にあっては、光増幅には寄与しないキャリア非注入領域205が設けられているので、入射レーザ光の光強度が高くなっても、キャリア分布による相対的な屈折率が高くなるといった現象の発生を抑制することができ、半導体光増幅器の光出射端面から出射されるレーザ光が幅方向に広がり易い。そして、レーザ光が半導体光増幅器から出射される領域の光出射端面を占める面積が大きいが故に、半導体光増幅器の高出力化を図ることができる。
実施例2は、実施例1の変形である。半導体光増幅器を含む実施例2の光出力装置の概念図を図7に示し、半導体光増幅器の軸線(Z方向)を含む仮想垂直面(YZ平面)で半導体光増幅器を切断したときの半導体光増幅器の模式的な断面図を図8に示し、半導体光増幅器の軸線と直交する仮想垂直面(XY平面)で半導体光増幅器を切断したときの半導体光増幅器の模式的な断面図を図9に示す。尚、図8は、図9の矢印I−Iに沿った模式的な断面図であり、図9は、図8の矢印II−IIに沿った模式的な断面図である。更には、半導体光増幅器の模式的な斜視図を図11に示し、リッジストライプ構造の模式的な平面図を図12に示す。
また、レーザ光源を構成するモード同期半導体レーザ素子の共振器の延びる方向に沿った模式的な端面図(YZ平面にて切断したときの模式的な端面図)を図10に示す。尚、共振器の延びる方向と直角方向に沿った模式的な断面図(XY平面にて切断したときの模式的な断面図)は、参照番号が異なる点を除き、図9と同じである。即ち、図9における二百番台の参照番号を百番台の参照番号に読み替えればよい。図10は、図9の矢印I−Iに沿ったと同様の模式的な端面図である。また、実施例2のモード同期半導体レーザ素子から外部共振器を構成してモード同期駆動を行うシステムを、図19の(A)に模式的に示す。
実施例2において、第2電極262は、分離溝262Cで分離された第1部分262A及び第2部分262Bから構成され、キャリア非注入領域205には第2電極の第2部分262Bが設けられている。そして、第2電極の第2部分262Bには、ビルトイン電圧以下の電圧、具体的には、0ボルトが印加される。第2電極の第1部分262Aに電圧を印加することで、半導体光増幅器200の本来の機能である光増幅を行い、第2電極の第2部分262Bに電圧を印加することで、位置調整等のための計測を行うことができる。
実施例2にあっては、第1部分262Aの長さをLAmp-1、第2部分262Bの長さをLAmp-2としたとき、
LAmp-1=1.97mm
LAmp-2=0.01mm
であり、
0.001≦LAmp-2/LAmp-1≦0.01
を満足している。また、分離溝の幅は0.02mmである。
実施例2にあっては、第2電極の第2部分に第1部分よりも低い電圧を印加する。これによって、第2部分が含まれたキャリア非注入領域が存在するので、入射レーザ光の光強度が高くなっても、化合物半導体層の相対的な屈折率が高くなるといった現象の発生を抑制することができ、半導体光増幅器の光出射端面から出射されるレーザ光が幅方向に広がり易い。そして、レーザ光が半導体光増幅器から出射される領域の光出射端面を占める面積が大きいが故に、半導体光増幅器の高出力化を図ることができる。
実施例2の光出力装置は、
(A)レーザ光源100、
(B)レーザ光源100からのレーザ光を光増幅して出射する半導体光増幅器200、
(C)半導体光増幅器200に入射するレーザ光に対する半導体光増幅器の相対的な位置を調整する位置合わせ装置300、並びに、
(D)半導体光増幅器200の動作を制御する半導体光増幅器制御装置400、
を備えている。
半導体光増幅器制御装置400は、具体的には、周知の直流電源と電圧測定装置と電流測定装置の組合せから構成されている。そして、半導体光増幅器制御装置400における電圧モニターの分解能は、1ミリボルト以下、より具体的には0.1ミリボルト以下である。また、半導体光増幅器制御装置400における電流モニターの分解能は、100マイクロアンペア以下、より具体的には10マイクロアンペア以下である。
実施例2において、レーザ光源100はモード同期半導体レーザ素子から成り、モード同期半導体レーザ素子が出射するパルスレーザ光が半導体光増幅器200に入射する。ここで、レーザ光源100は、モード同期動作に基づきパルスレーザ光を出射する。モード同期半導体レーザ素子の詳細については、後述する。実施例2における半導体光増幅器200は、実施例2におけるレーザ光源100を構成するモード同期半導体レーザ素子110と第2電極の構成、構造を除き、実質的に同じ構成、構造を有する。
図7に示す実施例2の光出力装置において、レーザ光源100は、モード同期半導体レーザ素子110、レンズ11、光学フィルター12、外部鏡13、及び、レンズ14から構成されている。そして、レーザ光源100から出射されたレーザ光は、光アイソレータ15、反射ミラー16を介して、反射ミラー20に入射する。反射ミラー20によって反射されたレーザ光は、半波長板(λ/2波長板)21、レンズ22を通過して、半導体光増幅器200に入射する。そして、半導体光増幅器200において光増幅され、レンズ30を介して系外に出射される。反射ミラー20、半波長板21及びレンズ22は、位置合わせ装置300に載置されている。位置合わせ装置300は、具体的には、XYZステージから成る。尚、次に述べる半導体光増幅器200における積層構造体の厚さ方向をY方向、半導体光増幅器200の軸線方向をZ方向としたとき、反射ミラー20及びレンズ21は、位置合わせ装置300によって、X方向、Y方向及びZ方向に移動させられる。
レーザ光源100を構成し、発光波長405nm帯の実施例2のモード同期半導体レーザ素子110は、
(a)第1導電型(実施例2においては、具体的には、n型導電型)を有し、GaN系化合物半導体から成る第1化合物半導体層130、GaN系化合物半導体から成る発光領域(利得領域)141を有する第3化合物半導体層(活性層)140、並びに、第1導電型と異なる第2導電型(実施例2においては、具体的には、p型導電型)を有し、GaN系化合物半導体から成る第2化合物半導体層150が、順次、積層されて成る積層構造体、
(b)第2化合物半導体層150上に形成された帯状の第2電極162、並びに、
(c)第1化合物半導体層130に電気的に接続された第1電極161、
を備えている。
積層構造体は、極性を有する化合物半導体基板121,221の上に形成されている。第3化合物半導体層140,240は、井戸層及び障壁層を備えた量子井戸構造を有し、井戸層の厚さは、1nm以上、10nm以下であり、障壁層の不純物(具体的には、シリコン,Si)のドーピング濃度は、2×1018cm-3以上、1×1020cm-3以下である。
実施例2のモード同期半導体レーザ素子110及び半導体光増幅器200は、具体的には、リッジストライプ型の分離閉じ込めヘテロ構造(SCH構造)を有する。より具体的には、インデックスガイド型のAlGaInNから成るGaN系半導体レーザ構造を有し、直線状のリッジ部(リッジストライプ構造)を有する。そして、モード同期半導体レーザ素子110及び半導体光増幅器200は、n型GaN基板121,221の(0001)面上に設けられており、第3化合物半導体層140,240は量子井戸構造を有する。尚、n型GaN基板121,221の(0001)面は、『C面』とも呼ばれ、極性を有する結晶面である。第1化合物半導体層130,230、第3化合物半導体層140,240、及び、第2化合物半導体層150,250は、具体的には、AlGaInN系化合物半導体から成り、より具体的には、以下の表2に示す層構成を有する。ここで、表2において、下方に記載した化合物半導体層ほど、n型GaN基板121,221に近い層である。
[表2]
第2化合物半導体層150,250
p型GaNコンタクト層(Mgドープ)157,257
p型GaN(Mgドープ)/AlGaN超格子クラッド層156,256
p型AlGaN電子障壁層(Mgドープ)153,253
ノンドープAlGaNクラッド層152,252
ノンドープGaInN光ガイド層151,251
第3化合物半導体層140,240
GaInN量子井戸活性層
(井戸層:Ga0.92In0.08N/障壁層:Ga0.98In0.02N)
第1化合物半導体層130,230
n型GaN層132,232
n型AlGaNクラッド層131,231
但し、
井戸層(2層): 8nm[ノン・ドープ]
障壁層(3層):10nm[ドーピング濃度(Si):2×1018cm-3]
また、p型GaNコンタクト層157,257及びp型GaN/AlGaN超格子クラッド層156,256の一部は、RIE法にて除去されており、リッジストライプ構造(リッジ部158,258)が形成されている。リッジ部158,258の両側にはSiO2/Siから成る積層絶縁膜159,259が形成されている。尚、SiO2層が下層であり、Si層が上層である。ここで、リッジ部158,258の有効屈折率と積層絶縁膜159,259の有効屈折率との差は、5×10-3乃至1×10-2、具体的には、7×10-3である。そして、リッジ部158,258の頂面に相当するp型GaNコンタクト層157,257上には、第2電極(p側オーミック電極)162,262が形成されている。一方、n型GaN基板121,221の裏面には、Ti/Pt/Auから成る第1電極(n側オーミック電極)161,261が形成されている。具体的には、積層絶縁膜159,259をSiO2/Si積層構造とした。
また、実施例2のモード同期半導体レーザ素子110にあっては、第3化合物半導体層140及びその近傍から発生した光密度分布に、Mgドープした化合物半導体層である、p型AlGaN電子障壁層153、p型GaN/AlGaN超格子クラッド層156及びp型GaNコンタクト層157が出来るだけ重ならないようにすることで、内部量子効率が低下しない範囲で、内部損失を抑制している。そして、これにより、レーザ発振が開始される閾値電流Ithを低減させている。更には、第3化合物半導体層140からp型AlGaN電子障壁層153までの距離dの値を大きくすることで、内部損失αiは低下するが、dの値が或る値以上になると、井戸層へのホールの注入効率が低下する結果、第3化合物半導体層140における電子ホールの再結合確率が低下し、内部量子効率ηiが減少することが判った。それ故、第3化合物半導体層140からp型AlGaN電子障壁層153までの距離dを0.10μm、リッジ部(リッジストライプ構造)の高さを0.30μm、第2電極162と第3化合物半導体層140との間に位置する第2化合物半導体層150の厚さを0.50μm、第2電極162の下方に位置するp型GaN/AlGaN超格子クラッド層156の部分の厚さを0.40μmとした。ここで、『電子障壁層153と第3化合物半導体層140との間の距離(d)』とは、第3化合物半導体層140に面する電子障壁層153の部分(境界面)と、電子障壁層153に面する第3化合物半導体層140の部分(境界面)との間の距離を意味する。以上に説明したモード同期半導体レーザ素子110の構成、構造は、半導体光増幅器200においても同様である。
実施例2にあっては、第2電極162,262を厚さ0.1μmのPd単層から構成した。また、実施例2にあっては、モード同期半導体レーザ素子110を構成する第2電極162を第1部分162Aと第2部分162Bとに分離する分離溝162Cの幅は、1μm以上、共振器長の50%以下である。あるいは又、可飽和吸収領域142の長さは発光領域141の長さよりも短い。あるいは又、第2電極162の長さ(第1部分と第2部分の総計の長さ)は第3化合物半導体層140の長さよりも短い。具体的には、共振器長Z”を0.60mm、第2電極162の第1部分162Aの長さを0.52mm、第2部分162Bの長さを0.06mm、分離溝162Cの幅(共振器長方向の長さ)を0.02mmとした。
p型GaN層及びp型AlGaN層が交互に積層された超格子構造を有するp型GaN/AlGaN超格子クラッド層156,256の厚さは0.7μm以下、具体的には、0.4μmであり、超格子構造を構成するp型GaN層の厚さは2.5nmであり、超格子構造を構成するp型AlGaN層の厚さは2.5nmであり、p型GaN層及びp型AlGaN層の層数合計は160層である。また、第3化合物半導体層140,240から第2電極162,262までの距離は1μm以下、具体的には0.5μmである。更には、第2化合物半導体層150,250を構成するp型AlGaN電子障壁層153,253、p型GaN/AlGaN超格子クラッド層156,256、p型GaNコンタクト層157,257には、Mgが、1×1019cm-3以上(具体的には、2×1019cm-3)、ドーピングされている。また、第2化合物半導体層150,250は、第3化合物半導体層側から、ノンドープ化合物半導体層(ノンドープGaInN光ガイド層151,251及びノンドープAlGaNクラッド層152,252)、並びに、p型化合物半導体層を有しているが、第3化合物半導体層140からp型化合物半導体層(具体的には、p型AlGaN電子障壁層153,253)までの距離(d)は1.2×10-7m以下、具体的には100nmである。
そして、実施例2にあっては、半導体光増幅器200にレーザ光源100からレーザ光を入射させながら半導体光増幅器200の第2部分262Bに所定の値の電圧(ビルトイン電圧以下の電圧)を印加する。そして、半導体光増幅器200を流れる電流が最大となるように半導体光増幅器200に入射するレーザ光に対する半導体光増幅器200の相対的な位置を調整する。
具体的には、実施例2においては、半導体光増幅器200にレーザ光源100からレーザ光を入射させずに半導体光増幅器200に所定の値の電圧V0を印加したとき、半導体光増幅器200の第2部分262Bを流れる電流をI1、半導体光増幅器200にレーザ光源100からレーザ光を入射させながら半導体光増幅器200に所定の値の電圧V0を印加したとき、半導体光増幅器200の第2部分262Bを流れる電流をI2とすれば、ΔI=(I2−I1)の値が最大となるように半導体光増幅器200に入射するレーザ光に対する半導体光増幅器200の相対的な位置を調整する。
半導体光増幅器200にレーザ光源100からレーザ光を入射させながら半導体光増幅器200に所定の値の電圧を印加し、X方向にXYZステージを移動させたときの半導体光増幅器200を流れる電流ΔIの変化を模式的に図13に示す。X方向へのXYZステージの移動に伴い、半導体光増幅器200を流れる電流ΔIは、単調に増加し、最大値を超えると、単調に減少する。このときの半導体光増幅器200から出射されるレーザ光の光出力の変化も、電流の変化と全く同じ挙動を示す。それ故、半導体光増幅器200に流れる電流が最大となるように半導体光増幅器200に入射するレーザ光に対する半導体光増幅器200の相対的な位置を調整することで、半導体光増幅器200から出射されるレーザ光の光出力を最大とすることができる。
実施例2の半導体光増幅器200にあっては、半導体光増幅器200にレーザ光源100からレーザ光を入射させながら半導体光増幅器200に所定の値の電圧V0を印加し、X方向にXYZステージを移動させると、図13に示すように、半導体光増幅器200に印加される(加わる)電圧が増加する。これは、XYZステージを移動させると、半導体光増幅器200からの光出力が増加していくが、このような現象が生じると、光増幅領域(キャリア注入領域、利得領域)241におけるキャリア数が減少するので、係るキャリア数の減少を補償するために、半導体光増幅器200を流れる電流が増加する。実施例2における半導体光増幅器の位置合わせ方法及び光出力装置は、このような現象に基づいている。尚、位置合わせ装置(XYZステージ)300の移動は、作業者が行ってもよいし、電圧の測定結果に基づいて、半導体光増幅器制御装置400の指示により自動的に行うこともできる。
実施例2にあっては、半導体光増幅器200に入射するレーザ光に対する半導体光増幅器200の相対的な位置の調整のために、半導体光増幅器200に印加される電流を測定するので、外部のモニタリング装置に依存することなく、位置調整のための計測を行うことができる。それ故、高い精度で半導体光増幅器200に入射するレーザ光に対する半導体光増幅器200の相対的な位置の調整を行うことが可能である。
また、半導体光増幅器200の第2部分262Bを流れる電流I1,I2をモニターすることで、半導体光増幅器200、モード同期半導体レーザ素子110の動作の状態を監視することができる。
実施例2のモード同期半導体レーザ素子110において、第3化合物半導体層140は、可飽和吸収領域142を備えている。また、第2電極162は、発光領域141を経由して第1電極161に電流を流すことで順バイアス状態とするための第1部分162A、及び、可飽和吸収領域142に電界を加えるための第2部分162Bに、分離溝162Cによって分離されている。そして、第2電極162の第1部分162Aから発光領域141を経由して第1電極161に電流を流すことで順バイアス状態とし、且つ、第1電極161と第2電極162の第2部分162Bとの間に電圧を印加することで可飽和吸収領域142に電界を加える。そして、実施例2のモード同期半導体レーザ素子にあっては、第2電極162から積層構造体を介して第1電極161に電流を流すことで、発光領域141において光パルスを発生させる。
具体的には、実施例2のモード同期半導体レーザ素子110において、第2電極162は、上述したとおり、発光領域(利得領域)141を経由して第1電極161に直流電流(順バイアス電流Igain)を流すことで順バイアス状態とするための第1部分162A、及び、可飽和吸収領域142に電界を加えるための第2部分162B(可飽和吸収領域142に逆バイアス電圧Vsaを加えるための第2部分162B)とに、分離溝162Cによって分離されている。ここで、第2電極162の第1部分162Aと第2部分162Bとの間の電気抵抗値(『分離抵抗値』と呼ぶ場合がある)は、第2電極162と第1電極161との間の電気抵抗値の1×10倍以上、具体的には1.5×103倍である。また、第2電極162の第1部分162Aと第2部分162Bとの間の電気抵抗値(分離抵抗値)は、1×102Ω以上、具体的には、1.5×104Ωである。
また、実施例2のモード同期半導体レーザ素子110にあっては、第2化合物半導体層150上に、1×102Ω以上の分離抵抗値を有する2電極162を形成する必要がある。GaN系半導体レーザ素子の場合、従来のGaAs系半導体レーザ素子とは異なり、p型導電型を有する化合物半導体における移動度が小さいために、p型導電型を有する第2化合物半導体層150をイオン注入等によって高抵抗化することなく、その上に形成される第2電極162を分離溝162Cで分離することで、第2電極162の第1部分162Aと第2部分162Bとの間の電気抵抗値を第2電極162と第1電極161との間の電気抵抗値の10倍以上とし、あるいは又、第2電極162の第1部分162Aと第2部分162Bとの間の電気抵抗値を1×102Ω以上とすることが可能となる。
以下、図29の(A)、(B)、図30の(A)、(B)、図31を参照して、実施例2のモード同期半導体レーザ素子の製造方法を説明する。尚、図29の(A)、(B)、図30の(A)、(B)は、基板等をXY平面にて切断したときの模式的な一部断面図であり、図31は、基板等をYZ平面にて切断したときの模式的な一部端面図である。
尚、第2電極162に要求される特性は、以下のとおりである。即ち、
(1)第2化合物半導体層150をエッチングするときのエッチング用マスクとしての機能を有すること。
(2)第2化合物半導体層150の光学的、電気的特性に劣化を生じさせることなく、第2電極162はウエットエッチング可能であること。
(3)第2化合物半導体層150上に成膜したとき、10-2Ω・cm2以下のコンタクト比抵抗値を示すこと。
(4)積層構造とする場合、下層金属層を構成する材料は、仕事関数が大きく、第2化合物半導体層150に対して低いコンタクト比抵抗値を示し、しかも、ウエットエッチング可能であること。
(5)積層構造とする場合、上層金属層を構成する材料は、リッジストライプ構造を形成する際のエッチングに対して(例えば、RIE法において使用されるCl2ガス)に対して耐性があり、しかも、ウエットエッチング可能であること。
[工程−200]
先ず、基体上、具体的には、n型GaN基板121の(0001)面上に、周知のMOCVD法に基づき、第1導電型(n型導電型)を有し、GaN系化合物半導体から成る第1化合物半導体層130、GaN系化合物半導体から成る発光領域(利得領域)141及び可飽和吸収領域142を構成する第3化合物半導体層(活性層)140、並びに、第1導電型と異なる第2導電型(p型導電型)を有し、GaN系化合物半導体から成る第2化合物半導体層150が、順次、積層されて成る積層構造体を形成する(図29の(A)参照)。
[工程−210]
その後、第2化合物半導体層150上に帯状の第2電極162を形成する。具体的には、真空蒸着法に基づきPd層163を全面に成膜した後(図29の(B)参照)、Pd層163上に、フォトリソグラフィ技術に基づき帯状のエッチング用レジスト層を形成する。そして、王水を用いて、エッチング用レジスト層に覆われていないPd層163を除去した後、エッチング用レジスト層を除去する。こうして、図30の(A)に示す構造を得ることができる。尚、リフトオフ法に基づき、第2化合物半導体層150上に帯状の第2電極162を形成してもよい。
[工程−220]
次いで、第2電極162をエッチング用マスクとして、少なくとも第2化合物半導体層150の一部分をエッチングして(実施例2にあっては、第2化合物半導体層150の一部分をエッチングして)、リッジストライプ構造を形成する。具体的には、Cl2ガスを用いたRIE法に基づき、第2電極162をエッチング用マスクとして用いて、第2化合物半導体層150の一部分をエッチングする。こうして、図30の(B)に示す構造を得ることができる。このように、帯状にパターニングされた第2電極162をエッチング用マスクとして用いてセルフアライン方式にてリッジストライプ構造を形成するので、第2電極162とリッジストライプ構造との間に合わせずれが生じることがない。
[工程−230]
その後、分離溝を第2電極162に形成するためのレジスト層164を形成する(図31参照)。尚、参照番号165は、分離溝を形成するために、レジスト層164に設けられた開口部である。次いで、レジスト層164をウエットエッチング用マスクとして、第2電極162に分離溝162Cをウエットエッチング法にて形成し、以て、第2電極162を第1部分162Aと第2部分162Bとに分離溝162Cによって分離する。具体的には、王水をエッチング液として用い、王水に約10秒、全体を浸漬することで、第2電極162に分離溝162Cを形成する。そして、その後、レジスト層164を除去する。こうして、図10に示す構造を得ることができる。このように、ドライエッチング法と異なり、ウエットエッチング法を採用することで、第2化合物半導体層150の光学的、電気的特性に劣化が生じることがない。それ故、モード同期半導体レーザ素子の発光特性に劣化が生じることがない。尚、ドライエッチング法を採用した場合、第2化合物半導体層150の内部損失αiが増加し、閾値電圧が上昇したり、光出力の低下を招く虞がある。ここで、第2電極162のエッチングレートをER0、積層構造体のエッチングレートをER1としたとき、
ER0/ER1≒1×102
である。このように、第2電極162と第2化合物半導体層150との間に高いエッチング選択比が存在するが故に、積層構造体をエッチングすること無く(あるいは、エッチングされても僅かである)、第2電極162を確実にエッチングすることができる。
[工程−240]
その後、n側電極161の形成、基板の劈開等を行い、更に、パッケージ化を行うことで、モード同期半導体レーザ素子110を作製することができる。
一般に、半導体層の抵抗R(Ω)は、半導体層を構成する材料の比抵抗値ρ(Ω・m)、半導体層の長さX0(m)、半導体層の断面積S(m2)、キャリア密度n(cm-3)、電荷量e(C)、移動度μ(m2/V秒)を用いて以下のように表される。
R=(ρ・X0)/S
=X0/(n・e・μ・S)
p型GaN系半導体の移動度は、p型GaAs系半導体に比べて、2桁以上小さいため、電気抵抗値が高くなり易い。よって、幅1.5μm、高さ0.35μmといった断面積が小さいリッジストライプ構造を有する半導体レーザ素子の電気抵抗値は、上式から、大きな値となることが判る。
製作した実施例2のモード同期半導体レーザ素子110の第2電極162の第2部分162Aと第2部分162Bとの間の電気抵抗値を4端子法にて測定した結果を、図27に示す。分離溝162Cの幅が20μmのとき、第2電極162の第1部分162Aと第2部分162Bとの間の電気抵抗値は15kΩであった。
製作した実施例2のモード同期半導体レーザ素子110において、第2電極162の第1部分162Aから発光領域141を経由して第1電極161に直流電流を流して順バイアス状態とし、第1電極161と第2電極162の第2部分162Bとの間に逆バイアス電圧Vsaを印加することによって可飽和吸収領域142に電界を加えることで、モード同期駆動させた。
しかも、第2電極162の第1部分162Aと第2部分162Bとの間の電気抵抗値は、第2電極162と第1電極161との間の電気抵抗値の10倍以上であり、あるいは又、1×102Ω以上である。従って、第2電極162の第1部分162Aから第2部分162Bへの漏れ電流の流れを確実に抑制することができる結果、発光領域141を順バイアス状態とし、しかも、可飽和吸収領域142を確実に逆バイアス状態とすることができ、確実にモード同期動作を生じさせることができる。
尚、半導体光増幅器200も、第2電極の構成が異なる点を除き、モード同期半導体レーザ素子110と同じ製造方法で製造することができるので、詳細な説明は省略する。
実施例2におけるモード同期半導体レーザ素子のより一層の理解を深めるために、参考例2のモード同期半導体レーザ素子を作製した。参考例2のモード同期半導体レーザ素子においては、表2に示した層構成における第3化合物半導体層140の構成を以下の表3のとおりとした。
[表3]
実施例2 参考例2
井戸層 8nm 10.5nm
障壁層 12nm 14nm
井戸層の不純物ドーピング濃度 ノン・ドープ ノン・ドープ
障壁層の不純物ドーピング濃度 Si:2×1018cm-3 ノン・ドープ
実施例2においては井戸層の厚さが8nmであり、また、障壁層にはSiが2×1018cm-3、ドーピングされており、第3化合物半導体層内のQCSE効果が緩和されている。一方、参考例2においては井戸層の厚さが10.5nmであり、また、障壁層には不純物がドーピングされていない。
そして、実施例2及び参考例2のモード同期半導体レーザ素子から集光型の外部共振器を構成してモード同期駆動させた(図19の(A)参照)。尚、図19の(A)に示す集光型の外部共振器にあっては、可飽和吸収領域側に高反射コート層(HR)が形成されたモード同期半導体レーザ素子の端面と外部鏡13とで外部共振器が構成され、外部鏡13から光パルスを取り出す。発光領域(利得領域)側のモード同期半導体レーザ素子の端面(光出射端面)には低反射コート層(AR)が形成されている。光学フィルター12には、主にバンドパスフィルターが用いられ、レーザの発振波長の制御のために挿入される。外部共振器長さZ’によって光パルス列の繰り返し周波数fが決定され、次式で表される。ここで、cは光速であり、nは導波路の屈折率である。
f=c/(2n・Z’)
モード同期は、発光領域141に印加する直流電流と可飽和吸収領域142に印加する逆バイアス電圧Vsaとによって決定される。図25の(A)及び(B)に、実施例2及び参考例2の注入電流と光出力の関係(L−I特性)の逆バイアス電圧依存性測定結果を示す。尚、図25の(A)及び(B)において、符号「A」を付した測定結果は、逆バイアス電圧Vsa=0ボルトの結果であり、符号「B」を付した測定結果は、逆バイアス電圧Vsa=−3ボルトの結果であり、符号「C」を付した測定結果は、逆バイアス電圧Vsa=−6ボルトの結果であり、符号「D」を付した測定結果は、逆バイアス電圧Vsa=−9ボルトの結果である。図25の(A)にあっては、逆バイアス電圧Vsa=0ボルトの測定結果と、逆バイアス電圧Vsa=−3ボルトの測定結果とは、ほぼ、重なっている。
図25の(A)及び(B)を比較すると、参考例2にあっては、逆バイアス電圧Vsaを増加していくと、レーザ発振が開始する閾値電流Ithが次第に上昇し、更には、実施例2に比べて、低い逆バイアス電圧Vsaで変化が生じていることが判る。これは、実施例2の第3化合物半導体層140の方が、逆バイアス電圧Vsaにより可飽和吸収の効果が電気的に制御されていることを示唆している。
また、実施例2及び参考例2において発生した光パルスをストリークカメラで測定した結果を、図26の(A)及び(B)に示す。参考例2にて得られた図26の(B)では、メインパルスの前後にサブパルス成分が発生しているが、実施例2にて得られた図26の(A)では、サブパルス成分の発生は抑制されている。これらの結果は、全て、第3化合物半導体層140の構成によりQCSE効果が緩和されたことにより、可飽和吸収の効果が増強されたことに起因するものと考えられる。
図19の(A)に示した実施例2のモード同期半導体レーザ素子の駆動条件等を以下の表4に例示する。尚、Ithは閾値電流である。
[表4]
[モード同期駆動条件]
0<Igain/Ith ≦5
−20≦Vsa(ボルト)≦0
[高反射コート層(HR)]
85≦反射率RHR(%)<100
[低反射コート層(AR)]
0<反射率RAR(%)≦0.5
[光学フィルター]
85≦透過率TBPF(%) <100
0<半値幅τBPF(nm) ≦2.0
400<ピーク波長λBPF(nm)<450
[外部鏡]
0<反射率ROC(%)<100
[外部共振器長さZ’]
0<Z’(mm)<1500
より具体的には、実施例2にあっては、一例として、
Igain =120mA
Ith =45mA
逆バイアス電圧Vsa=−11(ボルト)
反射率RHR =95(%)
反射率RAR =0.3(%)
透過率TBPF =90(%)
半値幅τBPF =1nm
ピーク波長λBPF =410nm
反射率ROC =20%
外部共振器長さZ’=150mm
とした。
一方、参考例2にあっては、
Igain =95mA
Ith =50mA
逆バイアス電圧Vsa=−12.5(ボルト)
反射率ROC =50%
とした。それ以外の諸元は、実施例2と同じである。
尚、図14の(A)に概念図を示すように、半導体光増幅器200から出射されるレーザ光の光出力の一部を、ビームスプリッタ32を用いて取り出し、レンズ33を介してフォトダイオード34に入射させることで、半導体光増幅器200から出射されるレーザ光の光出力を測定してもよい。そして、光出力が所望の値から変化したとき、実施例2の半導体光増幅器の位置合わせ方法を再び実行する。即ち、半導体光増幅器200にレーザ光源100からのレーザ光を入射させながら半導体光増幅器200に所定の値の電圧V0を印加して、半導体光増幅器200を流れる電流が最大となるように半導体光増幅器200に入射するレーザ光に対する半導体光増幅器200の相対的な位置を再調整する。そして、半導体光増幅器200に入射するレーザ光に対する半導体光増幅器200の相対的な位置の再調整の結果が、再調整前の半導体光増幅器200に入射するレーザ光に対する半導体光増幅器の相対的な位置と同じである場合、半導体光増幅器200から出射されたレーザ光が通過する光路の調整を行う。係る調整は、例えば、反射ミラー31をXYZステージ35に載置すればよい。尚、XYZステージ35の移動は、作業者が行ってもよいし、電圧及びフォトダイオード34の測定結果に基づいて、半導体光増幅器制御装置400の指示により自動的に行うこともできる。尚、図14の(A)において、半導体光増幅器200より上流に位置する光出力装置の構成要素は、実施例2の光出力装置の構成要素と同じであるが故に、光出力装置のこれらの構成要素の図示を省略している。ここで、このような方法を採用することで、光出力のモニターに変化が生じたとき、係る変化が、半導体光増幅器200に入射するレーザ光に対する半導体光増幅器200の相対的な位置の変化(即ち、入射レーザ光と半導体光増幅器の光導波路との結合効率の変化)に起因したものであるのか否かの峻別を、容易に行うことができる。
実施例3は、本発明の第2の態様及び第3の態様に係る半導体光増幅器に関する。実施例3の本発明の第2の態様に係る半導体光増幅器の模式的な斜視図及びリッジストライプ構造の模式的な平面図を図15の(A)及び図16に示すが、第2電極262の幅はリッジストライプ構造の幅よりも狭い。ここで、(第2電極の幅)/(リッジストライプ構造の幅)の値は、0.2乃至0.9を満足している。あるいは又、実施例3の本発明の第3の態様に係る半導体光増幅器の模式的な斜視図及びリッジストライプ構造の模式的な平面図を図17の(A)及び図18に示すが、リッジストライプ構造の最大幅をWmaxとしたとき、Wmax>Woutを満足する。ここで、
0.2≦Wout/Wmax≦0.9
を満足する。尚、図18においては、第2電極262の図示を省略したが、第2電極262は、実施例1と同様に、リッジ部の頂面に相当するp型GaNコンタクト層からp型AlGaNクラッド層の頂面の一部に亙り形成されている。
以上の点を除き、また、キャリア非注入領域が設けられていない点を除き、実施例3の半導体光増幅器の構成、構造は、実施例1において説明した半導体光増幅器の構成、構造と同じとすることができるので、詳細な説明は省略する。
図6の(B)に示したように、近視野像の幅がWoutに比べて狭い場合、光フィールドが、光密度、キャリアの拡散長、デバイスの温度等、駆動条件や光出力の条件により、不安定になる虞がある。そこで、実施例3にあっては、上述した構成、構造を採用することで、モードの不安定性を緩和させている。
実施例4は、実施例3の変形である。図15の(A)及び図16に示した半導体光増幅器の変形例の模式的な斜視図を図15の(B)に示し、図17の(A)及び図18に示した半導体光増幅器の変形例の模式的な斜視図を図17の(B)に示すように、実施例4にあっては、実施例3と異なり、半導体光増幅器の軸線に沿って光出射端面から積層構造体の内側の領域には、キャリア非注入領域が設けられている。この点を除き、実施例4の半導体光増幅器の構成、構造は、実施例3において説明した半導体光増幅器の構成、構造と同じとすることができるので、詳細な説明は省略する。尚、実施例4にあっても、実施例2と同様に、第2電極を第1部分と第2部分とに分離溝によって分離してもよい。
実施例5は、実施例2におけるモード同期半導体レーザ素子の変形である。実施例5のモード同期半導体レーザ素子から外部共振器を構成する例を、図19の(B)、図20の(A)、(B)に示す。
図19の(B)に示すコリメート型の外部共振器にあっても、可飽和吸収領域側に高反射コート層(HR)が形成されたモード同期半導体レーザ素子の端面と外部鏡とで外部共振器を構成し、外部鏡から光パルスを取り出す。発光領域(利得領域)側のモード同期半導体レーザ素子の端面(光出射端面)には低反射コート層(AR)が形成されている。尚、図19の(B)に示した実施例5のモード同期半導体レーザ素子の駆動条件等は、上述した表4と同様とすることができる。
一方、図20の(A)及び(B)に示す外部共振器にあっては、可飽和吸収領域側(光出射端面)に反射コート層(R)が形成されたモード同期半導体レーザ素子の端面と外部鏡とで外部共振器を構成し、可飽和吸収領域142から光パルスを取り出す。発光領域(利得領域)側のモード同期半導体レーザ素子の端面には低反射コート層(AR)が形成されている。尚、図20の(A)に示す例は集光型であり、図20の(B)に示す例はコリメート型である。尚、図20の(A)及び(B)に示した実施例5のモード同期半導体レーザ素子の駆動条件等は、上述した表4と同様とすることができる。但し、反射コート層(R)に関しては、以下の表5のとおりとすればよい。
[表5]
[反射コート層(R)]
0<反射率RR(%)<100
尚、具体的には、
反射率RR=20%
とした。実施例5におけるモード同期半導体レーザ素子のその他の構成、構造は、実施例2において説明したモード同期半導体レーザ素子の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
実施例6も実施例2におけるモード同期半導体レーザ素子の変形であるが、実施例6にあっては、図20の(C)に示すように、モード同期半導体レーザ素子をモノリシック型とした。尚、実施例6のモード同期半導体レーザ素子の駆動条件等は、上述した表4と同様とすることができる。実施例6におけるモード同期半導体レーザ素子のその他の構成、構造は、実施例2において説明したモード同期半導体レーザ素子の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
実施例7も実施例2におけるモード同期半導体レーザ素子の変形であるが、実施例7のモード同期半導体レーザ素子は、斜め導波路を有する斜めリッジストライプ型の分離閉じ込めヘテロ構造の半導体レーザ素子である。実施例7のモード同期半導体レーザ素子におけるリッジ部158Aを上方から眺めた模式図を図21に示す。実施例7のモード同期半導体レーザ素子にあっては、直線状の2つのリッジ部が組み合わされた構造を有し、2つのリッジ部の交差する角度θ’の値は、例えば、
0<θ’≦10(度)
好ましくは、
0<θ’≦6(度)
とすることが望ましい。斜めリッジストライプ型を採用することで、低反射コートをされた端面の反射率を、より0%の理想値に近づけることができ、その結果、半導体レーザ内で周回してしまう光パルスの発生を防ぐことができ、メインの光パルスに付随するサブの光パルスの生成を抑制できるといった利点を得ることができる。尚、実施例7の斜めリッジストライプ型のモード同期半導体レーザ素子を、実施例2、実施例5〜実施例6に適用することができる。実施例7におけるモード同期半導体レーザ素子のその他の構成、構造は、実施例2において説明したモード同期半導体レーザ素子の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
実施例8も実施例2におけるモード同期半導体レーザ素子の変形であるが、実施例8にあっては、第2電極162から発光領域141を経由して第1電極161に電流を流し、且つ、第2電極162から発光領域141を経由して第1電極161に外部電気信号(RMSジッタΔsignal)を重畳させる。図22の(A)に、実施例8のモード同期半導体レーザ素子を用いてモード同期駆動を行うシステムを模式的に示す。外部電気信号は、周知の外部電気信号発生器から第2電極162へと送出される。これによって、光パルスと外部電気信号との間の同期を取ることができる。即ち、RMSタイミングジッタΔtMLLDを、下記まで抑えることが可能となる。
Δsignal≦ΔtMLLD
図22の(A)に示した実施例8のモード同期半導体レーザ素子の駆動条件等は、上述した表4と同様とすることができる。尚、外部電気信号の電圧最大値Vp-p(単位:ボルト)は、
0<Vp-p≦10
好ましくは、
0<Vp-p≦3
を満足することが望ましい。また、外部電気信号の周波数fsignalと光パルス列の繰り返し周波数fMLLDとは、
0.99≦fsignal/fMLLD≦1.01
を満足することが望ましい。
そして、より具体的には、実施例8にあっては、一例として、
Igain =120mA
Ith =45mA
逆バイアス電圧Vsa=−11(ボルト)
反射率RHR =95(%)
反射率RAR =0.3(%)
透過率TBPF =90(%)
半値幅τBPF =1nm
ピーク波長λBPF =410nm
反射率ROC =20%
外部共振器長さZ’=150mm
Vp-p =2.8ボルト
fsignal =1GHz
fMLLD =1GHz
Δsignal =1ピコ秒
ΔtMLLD =1.5ピコ秒
とした。
一方、参考例8にあっては、第2電極162から発光領域141を経由して第1電極161に外部電気信号を重畳させること無く、第2電極162から発光領域141を経由して第1電極161に電流を流した。そして、RFスペクトルを測定した。実施例8及び参考例8における測定結果を、図28の(A)及び(B)に示す。尚、参考例8にあっては、
反射率ROC=50%
とした。それ以外の諸元は、実施例8と同じである。
図28の(A)及び(B)から、参考例8と比べて実施例8の方がRFスペクトルの裾の成分の面積の低減がみられ、このことは、参考例8と比べて実施例8の方が位相ノイズ及びタイミングジッタが少ない駆動方法であることを示している。
実施例8におけるモード同期半導体レーザ素子のその他の構成、構造は、実施例2、実施例5〜実施例7において説明したモード同期半導体レーザ素子の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
実施例9も実施例2におけるモード同期半導体レーザ素子の変形であるが、実施例9にあっては、積層構造体の一端面から光信号を入射させる。図22の(B)に、実施例9のモード同期半導体レーザ素子を用いてモード同期駆動を行うシステムを模式的に示す。光信号(RMSジッタ:Δtopto)は、半導体レーザ素子から成る光信号発生器から出射され、レンズ、外部鏡、光学フィルター、レンズを介して積層構造体の一端面に入射する。これによって、光パルスと光信号との間の同期を取ることができる。即ち、RMSタイミングジッタΔtMLLDを、下記まで抑えることが可能となる。
Δopto≦ΔtMLLD
実施例9におけるモード同期半導体レーザ素子のその他の構成、構造は、実施例2、実施例5〜実施例7において説明したモード同期半導体レーザ素子の構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定するものではない。実施例において説明した半導体光増幅器、光出力装置、レーザ光源、半導体レーザ素子の構成、構造の構成は例示であり、適宜、変更することができる。また、実施例においては、種々の値を示したが、これらも例示であり、例えば、使用する半導体光増幅器、光出力装置、半導体レーザ素子の仕様が変われば、変わることは当然である。例えば、第2電極162を、厚さ20nmのパラジウム(Pd)から成る下層金属層と、厚さ200nmのニッケル(Ni)から成る上層金属層の積層構造としてもよい。尚、王水によるウエットエッチングにあっては、ニッケルのエッチングレートは、パラジウムのエッチングレートの約1.25倍である。
実施例においては、半導体光増幅器を透過型半導体光増幅器から構成したが、これに限定するものではなく、図14の(B)に概念図を示すように、モノリシック型半導体光増幅器から構成することもできる。モノリシック型半導体光増幅器は、半導体レーザ素子と半導体光増幅器とが一体になったものである。
実施例においては、モード同期半導体レーザ素子110を、n型GaN基板121の極性面であるC面,{0001}面上に設けたが、代替的に、{11−20}面であるA面、{1−100}面であるM面、{1−102}面といった無極性面上、あるいは又、{11−24}面や{11−22}面を含む{11−2n}面、{10−11}面、{10−12}面といった半極性面上に、モード同期半導体レーザ素子110を設けてもよく、これによって、モード同期半導体レーザ素子110の第3化合物半導体層にたとえピエゾ分極及び自発分極が生じた場合であっても、第3化合物半導体層の厚さ方向にピエゾ分極が生じることは無く、第3化合物半導体層の厚さ方向とは略直角の方向にピエゾ分極が生じるので、ピエゾ分極及び自発分極に起因した悪影響を排除することができる。尚、{11−2n}面とは、ほぼC面に対して40度を成す無極性面を意味する。また、無極性面上あるいは半極性面上にモード同期半導体レーザ素子110を設ける場合、井戸層の厚さの制限(1nm以上、10nm以下)及び障壁層の不純物ドーピング濃度の制限(2×1018cm-3以上、1×1020cm-3以下)を無くすことが可能である。
発光領域141や可飽和吸収領域142の数は1に限定されない。1つの第2電極の第1部分162Aと2つの第2電極の第2部分162B1,162B2とが設けられたモード同期半導体レーザ素子の模式的な端面図を図23に示す。このモード同期半導体レーザ素子にあっては、第1部分162Aの一端が、一方の分離溝162C1を挟んで、一方の第2部分162B1と対向し、第1部分162Aの他端が、他方の分離溝162C2を挟んで、他方の第2部分162B2と対向している。そして、1つの発光領域141が、2つの可飽和吸収領域1421,1422によって挟まれている。あるいは又、2つの第2電極の第1部分162A1,162A2と1つの第2電極の第2部分162Bとが設けられたモード同期半導体レーザ素子の模式的な端面図を図24に示す。このモード同期半導体レーザ素子にあっては、第2部分162Bの端部が、一方の分離溝162C1を挟んで、一方の第1部分162A1と対向し、第2部分162Bの他端が、他方の分離溝162C2を挟んで、他方の第1部分162A2と対向している。そして、1つの可飽和吸収領域142が、2つの発光領域1411,1412によって挟まれている。
また、実施例2の変形例として、半導体光増幅器にレーザ光源からレーザ光を入射させながら半導体光増幅器に所定の値の電流を流して、半導体光増幅器に印加される(加わる)電圧が最大となるように半導体光増幅器に入射するレーザ光に対する半導体光増幅器の相対的な位置を調整する形態とすることもでき、この場合、半導体光増幅器から出射されるレーザ光の光出力を測定し、光出力が所望の値から変化したとき、半導体光増幅器にレーザ光源からレーザ光を入射させながら半導体光増幅器に所定の値の電流を流して、半導体光増幅器に印加される(加わる)電圧が最大となるように半導体光増幅器に入射するレーザ光に対する半導体光増幅器の相対的な位置を再調整することができ、更には、半導体光増幅器に入射するレーザ光に対する半導体光増幅器の相対的な位置の再調整の結果が、再調整前の半導体光増幅器に入射するレーザ光に対する半導体光増幅器の相対的な位置と同じである場合、半導体光増幅器から出射されたレーザ光が通過する光路の調整を行うことができる。具体的には、半導体光増幅器にレーザ光源からレーザ光を入射させずに半導体光増幅器に所定の値の電流I0を流したとき、半導体光増幅器に印加される(加わる)電圧をV1、半導体光増幅器にレーザ光源からレーザ光を入射させながら半導体光増幅器に所定の値の電流I0を流したとき、半導体光増幅器に印加される(加わる)電圧をV2とすれば、ΔV=(V2−V1)の値が最大となるように半導体光増幅器に入射するレーザ光に対する半導体光増幅器の相対的な位置を調整する形態とすることができる。ここで、所定の値の電流として、0ミリアンペア<ΔI≦20ミリアンペアを例示することができる。
あるいは又、実施例2の変形例として、半導体光増幅器にレーザ光源からレーザ光を入射させながら半導体光増幅器に所定の値の電圧を印加して、半導体光増幅器を流れる電流が最大となるように半導体光増幅器に入射するレーザ光に対する半導体光増幅器の相対的な位置を調整する形態とすることもでき、この場合、半導体光増幅器から出射されるレーザ光の光出力を測定し、光出力が所望の値から変化したとき、半導体光増幅器にレーザ光源からレーザ光を入射させながら半導体光増幅器に所定の値の電圧を印加して、半導体光増幅器を流れる電流が最大となるように半導体光増幅器に入射するレーザ光に対する半導体光増幅器の相対的な位置を再調整することができ、更には、半導体光増幅器に入射するレーザ光に対する半導体光増幅器の相対的な位置の再調整の結果が、再調整前の半導体光増幅器に入射するレーザ光に対する半導体光増幅器の相対的な位置と同じである場合、半導体光増幅器から出射されたレーザ光が通過する光路の調整を行うことができる。具体的には、半導体光増幅器にレーザ光源からレーザ光を入射させずに半導体光増幅器に所定の値の電圧V0を印加したとき、半導体光増幅器を流れる電流をI1、半導体光増幅器にレーザ光源からレーザ光を入射させながら半導体光増幅器に所定の値の電圧V0を印加したとき、半導体光増幅器を流れる電流をI2とすれば、ΔI=(I2−I1)の値が最大となるように半導体光増幅器に入射するレーザ光に対する半導体光増幅器の相対的な位置を調整する形態とすることができる。ここで、所定の値の電圧として、0ボルト≦ΔV≦5ボルトを例示することができる。