JP2018045229A - 光源装置、およびそれを用いた情報取得装置 - Google Patents

光源装置、およびそれを用いた情報取得装置 Download PDF

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Abstract

【課題】信号パルス光の光強度を中心波長によらず一定とすることができる光源装置を提供する。【解決手段】光源装置は、第1のパルス光を射出する光源部101と、第1のパルス光の入射により、第1のパルス光とは異なる波長の第2のパルス光を発生させる非線形光学媒質1173を含む光共振器170を有する。また、第2のパルス光を分岐するとともに出力する光分岐部1175と、第2のパルス光を光共振器に導くとともに、第1のパルス光を光共振器に導く光合波部を備える。第1のパルス光の中心波長が可変であり、第1のパルス光のパルスレートと、第2のパルス光の中心波長における光共振器170の自由スペクトル間隔の整数倍とが一致し、非線形光学媒質によって生じる非線形利得の中心波長が、第2のパルス光の中心波長と略一致する。【選択図】図1

Description

本発明は、中心波長が可変なパルス光源などの光源装置、およびそれを用いた情報取得装置に関する。
パルス光を被検体に照射し、被検体で反射や散乱される光、被検体を透過する光、或いは被検体から発せられる蛍光を検出することで、被検体の構成物質に関する様々な情報を得ることができる。近年、分子振動数に対応した周波数差を有する2つのパルス光を被検体に照射し、被検体で生じる誘導ラマン散乱やコヒーレントアンチストークスラマン散乱に基づく光を検出し、被検体の物質同定を行う研究が行われている。誘導ラマン散乱の英語表現は、Stimulated Raman Scattering(以下SRSと略す)である。また、コヒーレントアンチストークスラマン散乱の英語表現は、Coherent Anti−stokes Raman Scattering(以下CARSと略す)である。
中心波長が互いに異なる2つのパルス光を発生するレーザ光源としては、非線形ファイバーで生じる四光波混合(光パラメトリック効果の一種)を利用した光パラメトリック共振器が知られている。光パラメトリック共振器の英語表現は、Fiber Optical Parametric Oscillator(以下FOPOと略す)である。FOPOでは、光ファイバーに入射した励起パルス光のエネルギーを受けて励起パルス光とは波長の異なるパルス光を発生させ、共振器内でこのパルス光を発振させる。
具体的には、FOPO内に設けられた非線形ファイバーに励起パルス光を入射させると、励起パルス光よりも短波長のパルス光(信号パルス光)と、長波長のパルス光(アイドラーパルス光)とが同時に発生する。信号パルス光とアイドラーパルス光のいずれかのパルス光の一部をフィードバックし、ポンプパルス光と同期して再度共振器内に導入することで、信号パルス光またはアイドラーパルス光を発振させる。そして、信号パルス光、またはアイドラーパルス光、またはその両方を出力として取り出す。
非特許文献1には、FOPOにおいて励起パルス光の中心波長を固定とし、光共振器内に光路長調整部を設けて共振周波数を変化させることで、信号パルス光の中心波長を変化させるという方法が開示されている。
Optics Express Vol.22, No.18, pp.21921−21928, 8 September 2014
非特許文献1では、励起パルス光の中心波長は固定であるため、光パラメトリック利得の中心波長も固定である。したがって、発振する信号パルス光の波長可変範囲は、光パラメトリック利得の存在する範囲内に限定されるために狭く、かつ光強度も波長可変範囲において一定ではない。励起パルス光の中心波長を変化させることで光パラメトリック利得の中心波長が変化するため、信号パルス光の波長可変範囲を広帯域化することができる。しかし、光パラメトリック利得の中心波長と、発振する信号パルス光の中心波長とが一致しない場合には、信号パルス光の中心波長を変化させる際に、この変化する中心波長により信号パルス光の光強度が異なってしまうことがある。
上記課題に鑑み、本発明の一側面による光源装置は、第1のパルス光を射出する光源部と、前記第1のパルス光の入射により、前記第1のパルス光とは異なる波長の第2のパルス光を発生させる非線形光学媒質を含む光共振器と、前記第2のパルス光を分岐するとともに出力する光分岐部と、前記第2のパルス光を前記光共振器に導くとともに、前記第1のパルス光を前記光共振器に導く光合波部と、前記第1のパルス光の中心波長を調整する中心波長調整部と、前記第1のパルス光のパルスレートと、前記第2のパルス光の中心波長における前記光共振器の自由スペクトル間隔の整数倍と、が等しくなるように調整するパルスレート調整部と、を有し、前記非線形光学媒質によって生じる非線形利得の中心波長を、前記第2のパルス光の中心波長と略一致させることを特徴とする。
本発明の一側面によれば、信号パルス光の中心波長を変化させる際に、信号パルス光の光強度を中心波長によらず一定とすることができる。
本発明の実施形態1および2にかかる光源装置を説明する模式図。 入力ポンプ光に対するパラメトリック利得の中心波長の関係を示す図。 FOPOの波長に対する共振周波数の関係を示す図。 シード光源繰返し周波数の光遅延器依存を示す図。 (a)は回折格子とガルバノミラーを用いた波長可変フィルタの構成図、(b)は出力波長とガルバノミラーの角度の関係を示す図。 (a)はFOPO出力波長に対する繰返し周波数とポンプ光波長の関係を示す図、(b)はFOPO出力波長に対する光遅延器遅延量とガルバノミラー角度の関係を示す図。 FOPO出力波長に対する繰返し周波数とポンプ光波長の関係の実測値を示す図。 本発明の実施形態3にかかる光源装置を説明する模式図。 励起パルス光の中心波長を変化させた時の光パラメトリック利得を示す図。 励起パルス光の中心波長に対する光パラメトリック利得の中心波長を示す図。 励起パルス光のパルスレートの変化に対するレーザ発振可能な信号パルス光の中心波長の関係を示す図。 (a)は信号パルス光の光強度が中心波長により異なってしまうことを示す図、(b)は本発明で信号パルス光の光強度が中心波長によらず一定となることを示す図。 β>0かつβ>0の非線形光学媒質中における光の伝搬定数の位相不整合Δβと光パラメトリック利得Gを表すグラフ。 β>0かつβ<0の非線形光学媒質中における光の伝搬定数の位相不整合Δβと光パラメトリック利得Gを表すグラフ。 β<0かつβ>0の非線形光学媒質中における光の伝搬定数の位相不整合Δβと光パラメトリック利得Gを表すグラフ。 β<0かつβ<0の非線形光学媒質中における光の伝搬定数の位相不整合Δβと光パラメトリック利得Gを表すグラフ。 シード光源から出力されたパルス光のスペクトル測定結果を示すグラフ。 広帯域化した結果のスペクトル測定結果を示すグラフ。 中心波長を1020〜1060nmまで10nm刻みで変化させたときの、ポートから出力されたパルス光のスペクトル測定結果を示すグラフ。 990nmより短波長側を取り出す短波長透過フィルタを用いたときのパルス光のスペクトル測定結果(波長可変範囲は780〜980nm)を示すグラフ。 図20のときの各波長に対する出力パワーをプロットしたものを示すグラフ。 図20のときの各波長に対するスペクトル幅をプロットしたものを示すグラフ。
本発明の一側面に係る光源装置は、中心波長が可変な励起パルス光を発する光源部と、信号パルス光を発生させる非線形光学媒質を有しており、この非線形光学媒質が信号パルス光を発振させる光共振器内に配置されている。非線形光学媒質には光ファイバーを好適に用いることができる。前記光源で発せられた励起パルス光を非線形光学媒質に入射させると、非線形光学媒質の非線形利得である光パラメトリック利得によって、励起パルス光とは異なる波長を有する信号パルス光が発生する。励起パルス光の中心波長のわずかな変化によって、光パラメトリック利得の中心波長は大きく変化するため、光パラメトリック利得によって生じる信号パルス光の中心波長は大きく変化する。この現象を利用して、前記光源装置は、射出する2つのパルス光の波長差を広帯域で変化させることが可能である。ここでは、2つのパルス光は、前記非線形光学媒質から出てくる2つのパルス光となるが、例えば、励起パルス光から分岐したパルス光と、前記非線形光学媒質から出てくるパルス光から選択した他のパルス光と、を同様に用いることもできる。
また、前記非線形光学媒質で発生した信号パルス光をレーザ発振させるためには、励起パルス光のパルスレートと、信号パルス光の中心波長における前記光共振器の自由スペクトル間隔の整数倍とを等しくする必要がある。すなわち、非線形光学媒質で発生した信号パルス光が光共振器を周回する際、励起パルス光が非線形光学媒質に照射されるタイミングと、信号パルス光が光共振器を周回して再び非線形光学媒質に入射するタイミングと、を一致させる必要がある。これにより、信号パルス光がレーザ発振し、信号パルス光の光強度を高めることができる。
しかしながら、光パラメトリック利得の中心波長と、レーザ発振させる信号パルス光の中心波長とが一致しない場合には、信号パルス光の中心波長を変化させる際に、信号パルス光の光強度が中心波長により異なってしまうという課題が生じる。そこで、本発明によれば、信号パルス光の中心波長を変化させる際に、中心波長調整部により光パラメトリック利得の中心波長と信号パルス光の中心波長とを略一致させることで、信号パルス光の光強度をその中心波長によらず一定とすることが可能となる。
本発明の実施形態について詳細な説明をする前に、励起パルス光から信号パルス光を発生させる光パラメトリック利得の根源である、四光波混合の発生原理について説明する。
四光波混合とは、互いに周波数(波長)の異なる2つの光(励起パルス光)を非線形光学媒質である光ファイバーなどの内に入射した際に、励起パルス光のどの波長とも一致しない波長に新たな光が発生する現象である。この時、光ファイバーに入射した光のエネルギーの一部が、四光波混合により新たに発生した光のエネルギーへと変換される。例えば、周波数がそれぞれωとωである2つの光を非線形光学媒質に入射させ、周波数がそれぞれωとωである2つの光が新たに発生したとすると、それぞれの周波数はω+ω=ω+ωの関係を満たす。
入射させる光(励起パルス光)の周波数が1つの場合、即ちω=ω=ωである場合は、縮退四光波混合と呼ばれ、周波数がそれぞれω+Δω、ω−Δωである2つの光が、周波数ωに対して対称に発生する。一般的に高周波数側を信号パルス光、低周波数側をアイドラーパルス光と呼ぶ。以下、信号パルス光の周波数をωS1(=ω+Δω)、アイドラーパルス光の周波数をωS2(=ω−Δω)と表す。
縮退四光波混合は、互いに周波数の異なる2つの光を入射させる場合に比べて波長の制御や構成が簡単であるため、SRSやCARSを用いた情報取得装置の光源に広く利用されている。以下は縮退四光波混合について説明する。
縮退四光波混合を効率良く発生させるためには、非線形光学媒質中へ入射させる励起パルス光の伝搬定数をβ、信号パルス光の伝搬定数をβS1、アイドラーパルス光の伝搬定数をβS2として、下記の数式(1)で表される位相整合条件を満たす必要がある。Δβは非線形光学媒質中における各々の光の伝搬定数の位相不整合、γは非線形光学媒質の非線形係数、Pは励起パルス光のピーク強度である。また、nは非線形光学媒質の非線形屈折率、Aeffは非線形光学媒質である光ファイバーのコアの有効断面積、cは真空中での光の速さである。非線形光学媒質中における各々の光の伝搬定数の位相不整合Δβは、周波数差Δωを用いて下記の数式(2)で表すことができる。ただし、βは非線形光学媒質の励起パルス光の周波数における群速度分散、βは群速度分散βの2次導関数である。なお、群速度分散βは、励起パルス光の伝搬定数βの2次導関数である。このときの光パラメトリック利得Gは、下記の数式(3)で表される。Lは非線形光学媒質の長さである。
ここで、βとβのそれぞれを正あるいは負とする4通りについて、数式(2)、数式(3)それぞれをグラフにしたものを図13〜図16に示す。
図13はβ>0かつβ>0の場合を示す。図13(a)が数式(2)をグラフ化したもので、縦軸をΔβ、横軸をΔωとしている。図13(b)が数式(3)をグラフ化したもので、縦軸をG、横軸をΔωとしている。図14〜図16の(a)、(b)のグラフも同様である。数式(1)で表されるΔβの位相整合条件において、非線形光学媒質の非線形係数γ、励起パルス光のピーク強度Pは共に正の値であり、Δβは負の値をとることになる。
ところが、図13(a)から分かるように、β>0かつβ>0の場合は、数式(1)を満たす領域がない。つまり、数式(3)で表される光パラメトリック利得Gを得ることができず、このような非線形光学媒質では、励起パルス光を入射しても信号パルス光もアイドラーパルス光も生成されない。
図14はβ>0かつβ<0の場合を示している。図14(a)グラフには、数式(1)で表されるΔβの位相整合条件が成立する範囲をハッチングで示している。グラフから、数式(1)で表される位相整合条件を満たすΔωの範囲が、励起パルス光の周波数から離れた箇所に比較的狭い領域で存在することが分かる。従って、図14(b)に示されるように、ある特定周波数の励起パルス光を非線形光学媒質に入射すると、比較的狭い周波数帯域に光パラメトリック利得Gが存在することになり、周波数帯域の狭い信号パルス光とアイドラーパルス光が生成される。
図15はβ<0かつβ>0の場合、図16はβ<0かつβ<0の場合をそれぞれ示している。図15(a)、図16(a)に示すように、励起パルス光をβ<0の領域(異常分散領域)で動作させたときには、数式(1)で表される位相整合条件を満たすΔωの範囲が比較的広くなることが分かる。すなわち、図15(b)、図16(b)に示すように、ある特定周波数のパルス光を非線形光学媒質に入射させると、比較的広い周波数帯域に光パラメトリック利得Gが存在することになる。こうして、広い周波数帯域にわたって信号パルス光とアイドラーパルス光が生成される。
以上の事から、縮退四光波混合を利用してスペクトル線幅の狭いパルス光を生成するためには、β>0かつβ<0を満たす非線形光学媒質を用いる。この様な非線形光学媒質は、光ファイバーのコアとクラッドとの屈折率差が適切な値になるように、コア材料およびクラッド材料を選択したり、光ファイバーの形状を設計したりすることにより実現することができる。
縮退四光波混合により発生する光パラメトリック利得Gの励起パルス光に対する周波数シフト量Δω(波長シフト量Δλ)、光パラメトリック利得Gの周波数幅δω(スペクトル半値幅δλ)は、それぞれ以下の数式で表わすことができる。
ωは非線形光学媒質の零分散周波数、λは励起パルス光の中心波長、λは非線形光学媒質の零分散波長、βは零分散波長における群速度分散βの1次導関数である。数式(5)より、励起パルス光の中心波長λをわずかに変化させることで、信号パルス光(またはアイドラーパルス光)の波長を数式(5)の係数分だけ大きく変化させることができる。また、数式(7)より、非線形係数γが小さく、βの大きな非線形光学媒質を用いれば、スペクトル線幅δλの狭い信号パルス光(またはアイドラーパルス光)を生成することが可能であることが分かる。信号パルス光およびアイドラーパルス光のいずれか一方またはその両方の光を利用することができる。
ここで、信号パルス光の光強度を中心波長によらず一定とする原理について説明する。図9に、励起パルス光の中心波長λを変化させた時の光パラメトリック利得の変化の様子を示す。図9は数式(3)において縦軸をGとしてプロットしたグラフである。Pc=1kW、L=0.5mとし、γ、λ、β、β、βは非線形光学媒質として一般的なフォトニック結晶ファイバーの値(LMA−PM5、NKT photonics社製)を用いた。また、図10に励起パルス光の中心波長に対する、光パラメトリック利得の中心波長の変化をプロットしたものを示す。励起パルス光の中心波長に応じて光パラメトリック利得の中心波長は図10のように非線形に変化する。
一方、非線形光学媒質を含んだ光共振器において、信号パルス光をレーザ発振させるためには、励起パルス光が非線形光学媒質に照射されるタイミングと、信号パルス光が光共振器を周回して再び非線形光学媒質に入射するタイミングとを一致させる必要がある。すなわち、次の数式(8)で表すように、励起パルス光のパルスレートを、信号パルス光の中心波長における光共振器の自由スペクトル間隔の整数倍と等しくする必要がある。
=N×c/(n(λ)L) 数式(8)
は励起パルス光のパルスレート、n(λ)は非線形光学媒質を含む光共振器全体の屈折率、Lは非線形光学媒質を含む光共振器の共振器長、cは光速、Nは自然数である。
以上より、信号パルス光の中心波長を変化させる際には、励起パルス光のパルスレート(または光共振器の共振器長)を変化させ、数式(8)を常に満たしておく必要がある。
図11に、励起パルス光のパルスレートの変化に対する、レーザ発振可能な信号パルス光の中心波長をプロットしたものを示す。図11は数式(8)において縦軸をλ、横軸をfとしてプロットしたグラフであり、L=50m、N=10とし、n(λ)は一般的な光ファイバーの値(PM980−XP、Nufern社製)を用いた。一般的に光共振器においては、屈折率nに波長依存性があるため光共振器全体の波長分散が0ではなく、光共振器内を伝搬する光は波長に応じて共振する周波数が異なる。したがって、励起パルス光のパルスレートに応じて発振可能な信号パルス光の中心波長は図11のように非線形に変化する。
ここで、図10と図11を比較すると、図10では励起パルス光の中心波長に応じて光パラメトリック利得の中心波長が非線形に変化し、図11では励起パルス光のパルスレートに応じて発振可能な信号パルス光の中心波長が非線形に変化する。図12(a)に示すように、光パラメトリック利得の中心波長と、数式(8)を満たす信号パルス光の中心波長とが一致しない場合には、信号パルス光の中心波長を変化させる際に、信号パルス光の光強度が中心波長により異なってしまうということが生じる。
そこで、本発明では、図12(b)に示すように、信号パルス光の中心波長を変化させる際に、光パラメトリック利得の中心波長と、数式(8)を満たす信号パルス光の中心波長とが常に略一致するようにしておく。これにより、信号パルス光の中心波長が変化しても、非線形光学媒質から常に一定の光パラメトリック利得を受けるため、信号パルス光の光強度を一定とすることが可能となる。
以下、本発明にかかる光源装置および情報取得装置の実施形態を、図面を用いて説明するが、本発明は実施形態の構成等に何ら限定されるものではない。各図面において、同じ符号を付した部材は、同じ部材もしくは対応する部材を意味している。
(実施形態1)
図1に本実施形態の構成を示す。シード光源101は、モードロッカーである可飽和吸収ミラー1012、利得を与えるYbドープファイバー1013、チャープファイバーブラッググレーティング(CFBG)1014を含むリニア型のモードロックファイバーレーザである。CFBG1014は、分散補償とアウトプットカプラを兼ねる。Ybドープファイバー1013は、波長分割多重カプラ1015を用いて、980nm半導体レーザ1016の出力光を導光することで、励起される。また、シード光源内には、共振器長を調整するためのパルスレート調整部である光遅延器1011が挿入されている。シード光源から出力されたパルス光のスペクトル測定結果を図17に示す。中心波長は1032nm、スペクトル半値全幅は9nmであった。
シード光源から出力されたパルス光は、アイソレータ102を伝搬後、光ファイバーアンプ103を伝搬して増幅される。光ファイバーアンプ103は、波長分割多重カプラ1031、Ybドープファイバー1032、励起用光源である980nm半導体レーザ1033とアイソレータ1034を含む。なお、光ファイバーアンプ103はこのような構成に限らず、半導体光増幅器を用いても良い。増幅されたパルス光は、フォトニック結晶ファイバー104(LMA−PM5、NKT photonics社製)を伝搬して、スペクトルが広帯域化する。広帯域化した結果、1015nm〜1070nmをカバーするスペクトルを有するパルス光となる。このときのスペクトル測定結果を図18に示す。広帯域化したパルス光は1:1ファイバーカプラ105によって、半分に分けられる。
半分に分けられたパルス光の一方は、射出端119から出力される。半分に分けられたもう一方のパルス光を、第一の偏波ビームコンバイナ106のポート1に入力する。ポート1に入力されたパルス光はポート3の光ファイバーのSlow軸を伝搬する。その後、ファイバー端107からコリメートされて出力され、波長選択フィルタ部108に伝搬する。波長選択フィルタ部108内では、ガルバノミラー1081へ照射され、反射し、回折格子1082に照射されて反射される。回折格子1082はわずかに下向きに回折パルス光を反射しており、回折パルス光はD型エッジミラー1083とミラー1084によって光軸を調整されてファイバー端111に結合される。波長選択フィルタ部108通過後のパルス光のスペクトル線幅は0.5nmであった。このスペクトル線幅は1nm以下であることが好ましい。ガルバノミラー1081の角度を変化させることで、ファイバー端111に結合されるパルス光の波長を変えることができる。波長選択フィルタ部108は空間光学系となっており、偏光を調整するために半波長板1085、1086をファイバー端107、111にそれぞれ配置した。半波長板を用いず、ファイバー端107、111の端面の角度を回転させて偏光を制御しても良い。また、波長選択フィルタ部108は、電気的に制御されるファブリーぺロータイプのファイバー型のフィルタ等に置き換えても良い。
ファイバー端111では、偏波保持ファイバーのSlow軸に沿って結合する。結合されたパルス光は、150mの長尺ファイバー112を伝搬した後、アイソレータ109を伝搬し、Ybドープファイバー113により増幅される。長尺ファイバー112によって、パルス光はチャープを与えられ、時間的に広げられる。後述のFOPOの内部で余計な非線形効果が起こらないよう、ピークパワーを下げるために時間幅を広げている。しかし、パルス幅は1μs以下にするのが好ましい。また、Ybドープファイバー113によってパルス光の強度を高める。
その後、第二の偏波ビームコンバイナ114のポート3へと伝搬する。Slow軸を伝搬しているため、第二の偏波ビームコンバイナ114のポート1へと伝搬する。そして、WDMカプラ115を伝搬し、第一の偏波ビームコンバイナ106のポート2へと結合する。ここで、ビームコンバイナ114のポート2へ導波させて、そのままFOPO用WDMカプラ1171へ出すことも原理的には可能であるが、各デバイスを1回しか通過しないので、パワーが弱くなり、好適とは言い難い。WDMカプラ115には、980nm半導体レーザ116から出力された励起光が入力されており、Ybドープファイバー113を励起する。第一の偏波ビームコンバイナ106のポート2へ結合されたパルス光は、ポート3のFast軸を伝搬する。そして、上述のように、ファイバー端107、波長選択フィルタ部108、ファイバー端111、長尺ファイバー112、アイソレータ109、Ybドープファイバー113、第二の偏波ビームコンバイナ114と順に伝搬する。ここで、パルス光は、第二の偏波ビームコンバイナのポート3にはFast軸に沿って結合されるため、ポート2へ導波する。ポート2から出力されたパルス光のスペクトル測定結果を図19に示す。波長選択フィルタ部108内のガルバノミラー1081の角度を変化させることで、中心波長を1020〜1060nmまで10nm刻みで変化させた。第一と第二の偏波ビームコンバイナは偏波ビームスプリッタを用いても良い。
中心波長が調整されたパルス光は、FOPO用WDMカプラ1171を介してFOPO117に導波する。その後、ポンプコンバイナ1172を伝搬し、ダブルクラッドYbドープファイバー1173を伝搬する。ダブルクラッドYbドープファイバー1173を伝搬することで、ポンプ光は強度が増幅される。なお、ダブルクラッドYbドープファイバーは、980nm励起光源1177からの出力光によって励起される。増幅されたポンプ光は、パラメトリック利得ファイバー1174(NKT photonics、LMA−PM5)へ導波し、パラメトリック利得を生成する。パラメトリック利得によって生成されたシグナル光とアイドラー光は出力カプラ1175により一部が分岐され、ファイバー端110から取り出される。取り出された光を波長フィルタ118に透過させて、目的とする波長帯の光を取り出す。本実施形態では、780〜980nmの波長を取り出すために、990nmより短波長側を取り出す短波長透過フィルタを用いた。このときのパルス光のスペクトル測定結果を図20に示す。波長可変範囲は780〜980nmであった。また、このスペクトル測定結果より、各波長に対する出力パワーをプロットしたものを図21に、各波長に対するスペクトル幅をプロットしたものを図22にそれぞれ示す。出力パワーは波長可変範囲全域で200mW、スペクトル幅は波長可変範囲全域で1nmであった。中心波長が調整されたパルス光を第1のパルス光とし、波長フィルタに透過させて取り出すシグナル光を第2のパルス光として、前記波長フィルタを変えることでこれらのいずれとも異なる波長の第3のパルス光としてアイドラー光を利用することもできる。
ここで、シグナル光はポンプ光よりも短波長側に生成される光、アイドラー光はポンプ光よりも長波長側に生成される光である。取り出されなかったシグナル光あるいはアイドラー光は、50mの正常分散ファイバー1176を伝搬し、偏波コントローラ1178によって偏光が制御される。その後、光遅延器1179によってFOPO共振器長を制御され、FOPO用WDMカプラ1171に結合される。そして、繰返し入力されるパルス光と重ね合わされることで、パラメトリック利得ファイバー1174内でパラメトリック利得によってエネルギーを得て、共振する。本実施形態では、正常分散ファイバー1176は非偏波保持ファイバーであったため、偏波コントローラ1178を挿入して偏光を調整した。しかし、偏波保持ファイバーである正常分散ファイバーを用いることで、偏波コントローラ1178を取り除くことが可能である。
また、本実施形態では、上記ポンプ光の繰返し周波数を制御してFOPOを共振する光とタイミングを合わせている。そこで、FOPO117の共振器長を、FOPO内のファイバーの長さを微調することで、光遅延器1179を用いずFOPOの共振器長を固定して発振させることが可能であり、光遅延器1179を取り外しても良い。共振器の中では偏波を一定にしなければならないので、偏波保持ファイバーを用いるか、偏波コントローラを用いることが必須であるが、どちらでも構わない。また、ここでは、この共振器長の調整機構を有するが、本質的には、上述したポンプ光とFOPO117を共振する光とのタイミングを調整する手段が必要となる。これは、シード光の繰り返し周波数を調整する機構(例えば、光遅延器1011)、またはFOPOの光共振器の調整機構で実現している。
FOPO117は、波長分散が0ではないため、FOPO内を伝搬する光は、波長に応じて共振する周波数が異なる。そのため、FOPOの共振器長と、入力するポンプ光の繰返し周波数によって、出力される波長が異なる。また、入力するポンプ光の中心波長に応じて、パラメトリック利得の中心波長が変化する。本実施形態では、入力するポンプ光の中心波長と繰返し周波数を調整し、パラメトリック利得の中心波長と、FOPOを共振する波長を合わせることで、高出力化する。パラメトリック利得の中心波長は上記数式(3)より求められる。入力するポンプ光波長に対して、算出されるパラメトリック利得の中心波長を図2に示す。
本実施形態では、780〜980nmの波長を出力する。そこで、入力するポンプ光の中心波長を1026〜1069nmとなるように制御した。また、本実施形態では950nm近辺での光がダブルクラッドYbドープファイバー1173による吸収のために損失が大きくなるため、アイドラー光である1510〜1170nmをFOPO内で共振させた。1510〜1170nmの波長の光はYbドープファイバー1173での吸収がほとんど起こらない。
図3に、アイドラー光の波長に対してFOPO117内で用いたファイバーの種類と長さから計算される繰返し周波数を示す。ここで、計算された周波数は、シード光の繰返し周波数と合わせるために10倍としている。これがアイドラー光の共振条件であり、シードの繰り返し周波数の整数倍であることが必須である。本実施形態の場合、FOPO117で用いられるファイバーの長さの都合から、例えば10倍としている。
次に、シード光において、光遅延器1011の空間長を変えたときの繰返し周波数の変化を計算した。図4に示す。また、回折格子の格子周期の逆数が1200本/mmである回折格子1082を用いた際に、結合される中心波長とガルバノミラー1081の角度を計算した結果を図5(b)に示す。図5(a)に示すように、ガルバノミラー503に広帯域なスペクトルを有する入射光501を入射すると、回折格子504に照射され、波長選択光502が戻ってくる。入射光501がガルバノミラー503に入射される角度505をθ、入射光の光路と平行な直線に対する回折格子の角度506をθg、回折格子に照射する角度507をθgi、回折格子からの反射角をφとする。角度の関係は下記の数式(9)、(10)で表わされる。
また、回折格子の関係から下記の数式(11)が得られる。ここで、mは回折次数、λは波長、Nは回折格子の格子周期の逆数である。これらの数式を用いて、下記の数式(12)を得る。
これらの結果を統合すると、図6(a)に示すように、FOPO117から出力される波長に対するポンプ光の繰返し周波数と中心波長とが求められる。そして、図6(b)に示すように、FOPO117から出力される波長に対しての光遅延器1011の空間長とガルバノミラー1081の角度が求められる。本実施形態では、制御手段である計算機(personal computer; PC)120が、図6が示す関係に応じて電気信号を生成し、光遅延器1011とガルバノミラー1081を制御する。また、計算機120が生成する電気信号が、図6に示す関係に応じて時間的に変動して、光遅延器1011とガルバノミラー1081を自動的に制御することで、高速かつ高出力な波長可変光源を得られた。なお、計算機120はPCに限らず、プログラミングされた制御機やファンクションジェネレータなどでも良い。
本実施形態の制御の一例について説明する。所望の信号光(波長Λ)を出力するために、ポンプ光(中心波長λ)の光をFOPOの共振器に入力する。その際、ポンプ光(中心波長λ)の繰り返し周波数fは、FOPOの共振波長が、ポンプ光の中心波長λで決まるFOPOのピーク波長と略一致するようの値に設定する。λとfの設定は、上記の結果に基づいて最適な組み合わせを算出してもよいし、予め対応関係をテーブルとしてもつ記憶部(不図示)を用いて設定してもよい。本実施形態において、ガルバノミラー1081の角度を変えることでλを変えることができ、光遅延器1011による光路長の調整によってfを変えることができる。
信号光の波長をΛより大きいΛに変えるためには、ガルバノミラー1081の角度を大きくすることで、ポンプ光の波長をλより大きいλに変える。ポンプ光の波長が大きくなった結果、ポンプ光が入力されるFOPOのピーク波長が変わる。そこで、変化したFOPOのピーク波長と、FOPOの共振波長が略一致するように、光遅延器1011の制御を行う。具体的には、FOPOの共振波長の値を決めるポンプ光の繰り返し周波数をfより小さいfへと変えることで、FOPOのピーク波長と、FOPOの共振波長を略一致させる。ポンプ光の繰り返し周波数を小さくするために、光遅延器1011の光路長を小さくする。ガルバノミラー1081の角度と、光遅延器1011の光路長は、記憶部(不図示)に記憶された対応関係に基づいて、制御手段120が各々を制御する。ガルバノミラー1081と光遅延器1011の制御は、1つの制御手段120で行っても良いし、個々の制御手段によって行っても良い。
また、出力させる信号光の波長に応じて、ガルバノミラー1081の角度と、光遅延器1011の光路長を算出手段(不図示)で算出し、算出結果に基づいて制御手段120が制御を行っても良い。例えば、まず、FOPOに入射させる励起パルス光(ポンプ光を含む光)の中心波長から、FOPOの利得の中心波長を数式(5)より算出する。次に算出したFOPOの利得の中心波長から、FOPO全体の屈折率を算出する。算出した屈折率より、励起パルス光のパルスレートを数式(8)より算出する。励起パルス光のパルスレート(繰り返し周波数)を算出した値に設定する。
ガルバノミラー1081の角度を変える手段は特に限定されないが、モータの回転によって角度を変える手段を用いることができる。また、光遅延器1011によって光路長を変える手段は特に限定されないが、並進方向にミラーを移動させるリニアモータ等の手段を用いることができる。光路長の変化量が小さい場合や光路長を高速に変える場合は、ピエゾ素子を用いることができる。
(実施形態2)
実施形態2は、実施形態1で説明した構成である。本実施形態では、FOPO117から出力される波長に対するポンプ光の繰返し周波数と中心波長の関係を実測し、その実測値に基づいてFOPO117から出力されるパルス光の波長を制御する。
図7に、FOPOから出力される波長に対するポンプ光の繰返し周波数と中心波長との関係を表わす実測値を示す。図7で得られた関係を満たすように、繰返し周波数を制御するための光遅延器と、中心波長を制御するためのガルバノミラーは、計算機から出力される電気信号によって制御される。また、計算機が生成する電気信号が、図7に示す関係に応じて時間的に変動して、光遅延器とガルバノミラーを自動的に制御することで、高速かつ高出力な波長可変光源を実現した。なお、計算機に限らず、プログラミングされた制御機やファンクションジェネレータなどを用いても良い。ここでは、計算で求められた値を用いて制御するのではなく、実測で求められた値を用いて制御している。
(実施形態3)
図8は本実施形態に係る情報取得装置を示す模式図である。本実施形態では、実施形態1で説明した光源装置を用いてSRSイメージングを行う顕微鏡(SRS顕微鏡)を装置例に挙げて説明する。
SRSイメージングとは、物質に入射するポンプ光とストークス光との相互作用によってストークス光が増幅される誘導ラマン散乱という現象を利用し、分子振動イメージングを取得する手法である。具体的には、互いに波長が異なる2つのパルス光のうち一方のパルス光すなわちストークス光を強度変調した状態で、2つのパルス光を同期させて被検体に照射する。2波長間の差周波が被検体を構成する分子の分子振動数と一致した時に誘導ラマン散乱が生じ、強度変調されているストークス光が増幅される。このとき、ストークス光の強度変調に応じて、強度変調されていない方のパルス光すなわちポンプ光も強度変調され、被検体から射出されるポンプ光の誘導ラマン散乱による強度変調分を検出することにより、被検体の分子振動イメージングが可能となる。また、パルス光の中心波長を変化させ、2つのパルス光の間の差周波を変化させることで、様々な分子の分子振動数に一致させることができ、被検体を構成する分子群に特有の信号を得ることができる。
光源301で発せられる励起パルス光(第1のパルス光)を光分岐部である光分岐器302で2つに分岐させ、うち一方の光を光変調器308にて変調させてSRS顕微鏡用のストークス光として用いる。光源301は、図1のFOPO117以外の部分で、図8の符号303から符号307の部分が図1のFOPO117に部分に相当する。そして、他方の光を光分岐器303を介して非線形光学媒質304へ入射して、第1のパルス光とは異なる中心波長を有する第2のパルス光(信号パルス光)を生成する。非線形光学媒質304には、フォトニック結晶ファイバーやテーパーファイバーなどの、非線形係数の高い光ファイバーを好適に用いることができる。発生した第2のパルス光は、光分岐器305を介して第1の光導波路306、第2の光導波路307に入射させ、再び非線形光学媒質304へ入射させることにより、第2のパルス光が共振器内で周回することにより発振し、スペクトル線幅が狭窄化する。発振した第2のパルス光を、バンドパスフィルタ309を介して取り出す。バンドパスフィルタ309から取り出された第2のパルス光は、SRS顕微鏡用のポンプ光として用いる。
ストークス光とポンプ光とを光合波部である光合波器310にて合波して被検体に照射する。互いに異なる中心波長を有する複数のパルス光を合波する光合波器310としては、光カップラ、回折格子、プリズムなどを用いることができる。合波されたストークス光とポンプ光は、ビームエキスパンダ311、Xスキャンミラー312、Yスキャンミラー313、対物レンズ314を経由して、ステージ316の上に設置した被検体315に集光される。
被検体315において、対物レンズ314の集光点中央の微小領域では、分子の分子振動に基づく誘導ラマン散乱が生じ、それによりポンプ光、ストークス光の強度変化が生じる。集光点中央の微小領域から外れると誘導ラマン散乱が生じないので、ポンプ光、ストークス光の強度変化は生じない。なお、被検体315に照射される光のスポットのサイズは、対物レンズ314のNAが大きいほど小さくなり、それに伴い、誘導ラマン散乱が生じる微小領域のサイズも小さくなる。
集光点中央の微小領域で発生した誘導ラマン散乱により強度変調されたポンプ光は、集光レンズ317、バンドパスフィルタ318を通過後、受光素子319へ入射してSRS信号として検出され、情報取得部320により画像信号などとして取得される。
一般的に分子のラマン散乱断面積σは小さいため、誘導ラマン散乱によるポンプ光の強度変化も微弱になる。このため、ポンプ光の強度変化からSRS信号を検出する際、SRS信号がノイズ成分などに埋もれる場合がある。本実施形態では、同期検出器321と制御手段322とを備える情報取得部320を用い、受光素子319にて受光され電気信号に変換されたポンプ光の強度変調を光変調器の変調周波数に同期させて検出し、被検体315の分子振動イメージングなどを得ている。同期検出した信号を増幅すれば、SRS信号を高感度に検出することが可能となる。
同期検出器321としては、ロックインアンプやFFTアナライザなどを用いることができるが、FFTアナライザはロックインアンプに比べ高速にSRS信号を検出することが可能である。図8では、同期検出器321と制御手段322を別体で構成を示しているが、これらが一体となった情報取得部320を用いても良い。同期検出器321と制御手段322とが一体となった例としては、制御手段322として用いられるCPUを備えるコンピュータが、同期検出機能を有するアプリケーションを内蔵する例が挙げられる。
Xスキャンミラー312を駆動すると、集光点が被検体315内部をX方向へスキャンし、Yスキャンミラー313を駆動すると、集光点が被検体315内部をX方向と垂直なY方向へスキャンすることができる。従って、Xスキャンミラー312、Yスキャンミラー313によって集光点を被検体315上で走査すれば、二次元画像を取得することができる。さらに、一回の二次元スキャン終了後、ステージ316を動かして集光点を光軸方向に所定距離だけ移動させ、同様の2次元スキャンを繰り返すことで、被検体315の三次元画像を得ることが可能となる。
また、一回の二次元スキャンまたは三次元スキャン終了後、光源301の中心波長を変化させることで、ポンプ光とストークス光の2波長間の差周波を変化させ、被検体315中に含まれる様々な分子の分子振動数に一致させることができる。これにより、二次元または三次元の分子振動画像ないし情報を得ることが可能となる。この際、光源の中心波長を図6あるいは図7の関係に基づいて、計算機やプログラミングされた制御機から出力された自動制御用の電気信号を用いて制御することで、高速な波長可変が可能となる。また、あるいは、ある点において高速に波長可変して様々な分子振動数に応じたデータを取得後、次の点に移動して再度様々な分子振動数に応じたデータを取得する、ということを繰返して、二次元または三次元の分子振動画像を得ても良い。
本実施形態にかかるSRS顕微鏡に用いる光源装置から射出されるパルス光のパルス幅は1ns以下であることが好ましく、100ps以下であることがさらに好ましい。これは、パルス光のパルス幅が狭いほどパルス光のピーク強度が大きく、被検体315で生じる非線形効果の有無を精度よく検出することができるからである。また、光源301から射出されるパルス光のパルスレートは1MHz以上、1GHz以下であることが好ましい。これは、SRS顕微鏡として現実的に求められる測定速度の制約から1MHz以上が好ましく、被検体315に生じる熱的破壊の制約から1GHz以下が好ましいからである。
また、SRS顕微鏡は、生体組織の観察に好適に用いられることから、光源装置から出射される各パルス光は、生体による反射や吸収、散乱が小さく、透過し易い波長が好ましい。従って、光源装置から出射される各パルス光の中心波長は、300nm以上、1500nm以下であることが好ましく、700nm以上、1300nm以下であることが特に好ましい。例えば、光源301にはモード同期Yb(イッテルビウム)ドープファイバーレーザを含むものが好適である。
以上のように、本実施形態に係るSRS顕微鏡は、信号パルス光のスペクトル線幅を中心波長によらず一定とすることができる。したがって、被検体から得られるラマンスペクトルの分解能を一定とすることができる。また、従来のSRS顕微鏡装置に比べ、光源装置を小型化、低コスト化することができたため、SRS顕微鏡装置全体の小型化、低コスト化を実現することができる。従来のSRS顕微鏡装置は、固体レーザを用いているが、上記実施形態では全ての光源はファイバーレーザで構成されており、この光源を用いることでSRS顕微鏡装置の小型化、低コスト化を実現できる。また、本発明の他の側面による前記情報取得装置は、被検体から得られるラマン分光等、各種分光スペクトルの信号強度を一定とすることができる。
本実施形態では、2つのパルス光を被検体に照射し、被検体にて反射される光、被検体を透過する光、被検体において発せられる光の少なくとも1つを検出し、被検体の情報を取得する情報取得装置として、SRS顕微鏡を例にとって説明した。しかし、これに限定されるものではなく、CARS顕微鏡、蛍光顕微鏡、内視鏡などの各種分光情報を得る情報取得装置にも、本実施形態と同様に実施形態1、2のいずれかの光源装置を用いることができる。
101:シード光源(光源部)、108:波長選択フィルタ部(中心波長調整部)、117:FOPO(光共振器)、1011:光遅延器(パルスレート調整部)、1171:光合波部、1173:ダブルクラッドYbドープファイバー(非線形光学媒質)、1175:光分岐部

Claims (14)

  1. 第1のパルス光を射出する光源部と、
    前記第1のパルス光の入射により、前記第1のパルス光とは異なる波長の第2のパルス光を発生させる非線形光学媒質を含む光共振器と、
    前記第2のパルス光を分岐するとともに出力する光分岐部と、
    前記第2のパルス光を前記光共振器に導くとともに、前記第1のパルス光を前記光共振器に導く光合波部と、
    前記第1のパルス光の中心波長を調整する中心波長調整部と、
    前記第1のパルス光のパルスレートと、前記第2のパルス光の中心波長における前記光共振器の自由スペクトル間隔の整数倍と、が一致するように調整するパルスレート調整部と、を有し、
    前記非線形光学媒質によって生じる非線形利得の中心波長を、前記第2のパルス光の中心波長と略一致させることを特徴とする光源装置。
  2. 前記パルスレート調整部は、前記光共振器の共振器長を調整する手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
  3. 前記パルスレート調整部は、前記第1のパルス光のパルスレートを調整する手段を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の光源装置。
  4. 前記光源部は、非線形光学媒質を含む光共振器を有し、前記第1のパルス光のパルスレートを調整する手段は、前記光源部の光共振器の共振器長を調整する光遅延器を含むことを特徴とする請求項3に記載の光源装置。
  5. 前記第2のパルス光を発生させる非線形光学媒質を含む光共振器は、前記第1のパルス光と前記第2のパルス光のいずれとも異なる波長の第3のパルス光を更に発生させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光源装置。
  6. 前記第2のパルス光を発生させる非線形光学媒質は、フォトニック結晶ファイバーを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光源装置。
  7. 前記中心波長調整部は、回折格子を含む波長選択フィルタ部であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光源装置。
  8. 前記第1のパルス光のスペクトル線幅は1nm以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光源装置。
  9. 前記第1のパルス光のパルス幅は1μs以下であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の光源装置。
  10. 前記中心波長調整部と前記パルスレート調整部を電気信号により制御する制御手段を有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光源装置。
  11. 請求項1乃至10のいずれか1項に記載の光源装置と、
    中心波長が互いに異なる2つのパルス光が前記光源装置から射出され、前記2つのパルス光が被検体に照射される際に、前記被検体にて反射される光、前記被検体を透過する光、及び、前記被検体において発せられる光のうちの少なくとも1つを受光する受光素子と、
    を有することを特徴とする情報取得装置。
  12. 前記2つのパルス光のうちの一方は、前記第2のパルス光であり、前記2つのパルス光のうちの他方は、変調された前記第1のパルス光であることを特徴とする請求項11に記載の情報取得装置。
  13. 前記2つのパルス光のパルスレートは、いずれも1MHz以上、1GHz以下であることを特徴とする請求項11または12に記載の情報取得装置。
  14. 前記受光素子によって受光した光を電気信号として取得する情報取得部を更に備え、
    前記情報取得部は、前記受光素子によって受光される光の変調に同期して信号を取得する同期検出器を含むことを特徴とする請求項11乃至13のいずれか1項に記載の情報取得装置。
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