WO2024142777A1 - 2ストロークエンジン - Google Patents

2ストロークエンジン

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WO2024142777A1
WO2024142777A1 PCT/JP2023/043303 JP2023043303W WO2024142777A1 WO 2024142777 A1 WO2024142777 A1 WO 2024142777A1 JP 2023043303 W JP2023043303 W JP 2023043303W WO 2024142777 A1 WO2024142777 A1 WO 2024142777A1
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stroke engine
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Inventor
将仁 齋藤
篤志 久野
Original Assignee
カワサキモータース株式会社
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Abstract

本開示の2ストロークエンジン(E)は、燃焼室(12)の頂壁(12a)に設けられた吸気ポート(16)と、燃焼室(12)の周壁(12b)のうちシリンダ軸線方向(AX1)に関してクランクシャフト(2)側に設けられた排気ポート(18)と、クランクシャフト(2)に連動する動弁機構(25)により駆動されて吸気ポート(16)を開閉する吸気バルブ(24)と、頂壁(12a)に形成されて吸気バルブ(24)の開放初期時に吸気バルブ(24)の開口の一部を覆うオフセット壁(42)とを備えている。

Description

2ストロークエンジン 関連出願
 この出願は、2022年12月26日出願の特願2022-209007の優先権を主張するものであり、その全体を参照により本願の一部をなすものとして引用する。
 本出願は、2ストロークエンジンに関するものである。
 2ストロークエンジンでは、燃焼ガスを掃気するための新気を、排気バルブと反対側に位置するシリンダヘッド内壁面周辺部に導くものがある(例えば、特許文献1)。
特開平04-116223号公報
 要求出力、排気量、利用回転数などの各種の状況によっては、さらなる掃気効果の向上が要求される場合がある。
 本出願の開示は、掃気効果を高めることができる2ストロークエンジンを提供する。
 本開示の一形態に係る2ストロークエンジンは、燃焼室の頂壁に設けられた吸気ポートと、前記燃焼室の周壁のうちシリンダ軸線方向に関してクランクシャフト側に設けられた排気ポートと、クランクシャフトに連動する動弁機構により駆動されて前記吸気ポートを開閉する吸気バルブと、前記頂壁に形成されて、前記吸気バルブの開放初期時に前記吸気バルブの開口の一部を覆うオフセット壁とを備えている。
 本開示の別の形態に係る2ストロークエンジンは、燃焼室の頂壁に設けられた吸気ポートと、前記頂壁に設けられた複数のインジェクタと、前記燃焼室の周壁のうちシリンダ軸線方向に関してクランクシャフト側に設けられた排気ポートと、クランクシャフトに連動する動弁機構により駆動されて前記吸気ポートを開閉する吸気バルブとを備えている。
 本開示の一形態に係る2ストロークエンジンによれば、吸気バルブの開放初期時には、オフセット壁によって、燃焼室への隙間が部分的に塞がれる。これにより、オフセット壁と反対側から燃焼室に吸気が集中的に導入される。その結果、吸気ポートから燃焼室の周壁に向かい、周壁をシリンダ軸線方向に流れる吸気の流れを形成することができる。燃焼後のガスは、吸気の流れによって押し出されて、燃焼室の周壁におけるクランクシャフト側に設けられた排気ポートから排出される。このように集中的に導入された強い吸気の流れによって、燃焼後のガスをクランクシャフト側に押し出すことで、燃焼後のガスの掃気効果を高めることができる。
 請求の範囲および/または明細書および/または図面に開示された少なくとも2つの構成のどのような組合せも、本開示に含まれる。特に、請求の範囲の各請求項の2つ以上のどのような組合せも、本開示に含まれる。
 本開示は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施形態の説明からより明瞭に理解されるであろう。しかしながら、実施形態および図面は単なる図示および説明のためのものであり、本開示の範囲を定めるために利用されるべきでない。本開示の範囲は添付のクレーム(請求の範囲)によって定まる。添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は、同一部分を示す。
本開示の第1実施形態に係る2ストロークエンジンを示す断面図である。 同エンジンの吸気の流れを簡略して示す斜視図である。 同エンジンの燃料の噴射状態を簡略して示す斜視図である。 図1のIV-IV線に沿った断面図である。
 以下、本開示の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本開示の第1実施形態に係るエンジンを示す断面図である。本開示のエンジンEは、クランクシャフト2が1回転すると、これに連結されたピストン4が2ストローク、つまり1往復動し、この間に吸入、圧縮、爆発、排気までの1サイクルが完了する2ストロークエンジンである。本実施形態のエンジンEは、単気筒エンジンであるが、本開示のエンジンEは、2気筒以上であってもよい。本開示のエンジンEの燃料は、水素ガス、炭化水素が含まれる気化燃料であってもよい。そのほか、燃料は、炭化水素が含まれる液体燃料、例えば、ガソリン燃料、ディーゼル燃料、アルコール燃料などであってもよい。
 以下の説明において、エンジンEは、上死点が上側に位置して、シリンダ軸線AX1が鉛直に沿うように配置された状態で説明する。この場合、「上方」とは、シリンダ軸線AX1に沿って反クランク軸心側、すなわち、ピストン上死点側をいい、「下方」とは、シリンダ軸線AX1に沿ってクランク軸心2a側、すなわち、ピストン下死点側をいう。言い換えると、上方とは、シリンダ軸線AX1に沿って、下死点から上死点に向かう方向である。また下方とは、シリンダ軸線AX1に沿って、上死点から下死点に向かう方向である。また、「上流側」は吸気の流れ方向の「上流側」をいい、「下流側」とは、吸気の流れ方向の「下流側」をいう。
 エンジンEは、前記ピストン4が接続されるクランクシャフト2を支持するクランクケースと、クランクケースから上方に突出したシリンダ8と、シリンダ8の上端に取り付けられたシリンダヘッド10とを有している。シリンダ8は、その内部に円柱状の内部空間が形成されている。ピストン4は、円筒形状に形成され、シリンダ8の内部空間に収容されている。ピストン4は、クランクシャフト2が回転することによって、シリンダ軸線AX1に沿って往復動する。
 シリンダヘッド10とシリンダ8とピストン4により、燃焼室12が形成されている。言い換えると、燃焼室12は、燃料が燃焼する燃焼空間を規定する。燃焼空間は、シリンダ軸線AX1と同軸の円柱状に形成される。詳細には、シリンダヘッド10が燃焼室12の頂壁12aを構成し、シリンダ8が燃焼室12の周壁12bを構成し、ピストン4の上面が燃焼室12の底壁12cを構成する。ここで、「燃焼室12の頂壁12a」とは、後述の吸気ポートおよびインジェクタが形成される側の壁をいう。本実施形態では頂壁12aは、燃焼室12の上方の壁、すなわち、ピストン上死点側の壁をいう。
 燃焼室12の頂壁12aに、点火プラグ15が取り付けられている。本実施形態では、点火プラグ15は、シリンダ軸線AX1上と同軸に配置されている。シリンダヘッド10は、シリンダ軸線AX1を挟んで一方側(図1の左側)に吸気ポート16を有している。言い換えると、シリンダ軸線AX1に直交する直交方向D1に対して、シリンダ軸線AX1から直交方向一方側(図1の左側)に吸気ポート16が配置されている。吸気ポート16は、シリンダヘッド10の内部に形成された通路である。
 吸気ポート16における吸気流れ方向の上流端16aがシリンダヘッド10の外側、すなわち燃焼室12外に開口する。吸気ポート16における吸気流れ方向の下流端16bが燃焼室12内に開口している。
 また、シリンダヘッド10の周壁12bに、排気ポート18が形成されている。排気ポート18は、シリンダ8の内部に形成された通路である。排気ポート18は、燃焼室12の周壁12bのうちシリンダ軸線方向AX1に関してクランクシャフト側(図1の下側)に設けられている。また、排気ポート18は、シリンダ軸線AX1を挟んで吸気ポート16と反対側、すなわち、直交方向D1の他方側(図1の右側)に配置されている。
 排気ポート18は、ピストン4が下死点に達したときにピストン4に隣接した位置に配置される。排気ポート18は、ピストン4が下死点から上死点に向けて移動した際に、ピストン4で塞がれる位置に配置される。
 本実施形態のエンジンEは、燃料のインジェクタ22が、その噴射口22aが燃焼室12に開口し、燃焼室12に直接燃料が噴射される直噴エンジンである。インジェクタ22の配置、噴射口22aの向き等の詳細は後述する。
 吸気ポート16から燃焼室12内に空気Aが供給される。この空気Aとインジェクタ22から噴霧された燃料Fが燃焼室12で混合されて混合気が生成される。この混合気は、ピストン4の上昇によって圧縮され、点火プラグ15で点火されて燃焼する。燃焼ガスGは、排気ポート18を介して燃焼室12から排気される。
 本開示のエンジンEは、燃焼室12に供給される吸気(空気)Aを加圧する過給機20を備えている。過給機20は、本実施形態では、クランクシャフト2によって回転駆動される機械式のスーパーチャージャーである。ただし、過給機20は、これに限定されず、例えば、排気の流れを利用して回転駆動されるターボチャージャーであってもよい。
 吸気ポート16は、吸気バルブ24で開閉される。具体的には、吸気ポート16の下流端16bが、吸気バルブ24の往復動によって開閉される。図1では、開弁状態の吸気バルブ24は実線で示され、閉弁状態の吸気バルブ24は二点鎖線で示されている。
 本実施形態では、排気ポート18に排気バルブは設けられていない。排気ポート18は、の上流端18aが、ピストン4の往復動によって開閉される。詳細には、ピストン4が上方に移動することで排気ポート18が閉塞され、ピストン4が下方に移動することで排気ポート18が開放される。
 吸気バルブ24は、吸気ポート16を開閉する弁体24aと、弁体24aと動弁機構25を繋ぐ弁棒24bを有している。吸気バルブ24の弁棒24bの軸心AX2はシリンダ軸線AX1に対して吸気側に傾斜している。
 吸気バルブ24の弁体24aは、下底面が燃焼室12に向いた低い円錐台形状である。吸気ポート16は、吸気バルブ24の弁体24aが着座するバルブシート28を有している。吸気バルブ24が上方に移動して弁体24aの外周面がバルブシート28に着座することで吸気ポート16が閉塞され、吸気バルブ24が下方に移動して弁体24aがバルブシート28から離れることで吸気ポート16が開放される。
 吸気バルブ24は、クランクシャフト2に連動する動弁機構25により駆動される。動弁機構25は、クランクシャフト2が一回転する間に、吸気バルブ24を一往復させる。本実施形態の動弁機構25は、クランクシャフト2に連動して回転するカムシャフト26と、カムシャフト26の回転運動をバルブの開閉に伝達するロッカーアム27とを有している。
 本開示のエンジンEは、吸気バルブ24が燃料室12の頂壁12aに配置されている頭上弁式のエンジンである。詳細には、本開示のエンジンEは、カムシャフト26がシリンダヘッド側にあるオーバーヘッドカムシャフト(OHC)式である。クランクシャフト2の回転は、例えば、チェーン、ベルト、ギヤによりカムシャフト26に伝達される。ただし、本開示のエンジンEは、これに限定されず、カムシャフト26がシリンダ側にあるオーバーヘッドバルブ(OHV)式であってもよい。
 図2に示すように、本実施形態のエンジンEは、吸気バルブ24が2つ配置されている。ただし、本開示のエンジンEは、これに限定されず、例えば、吸気バルブ24が1つでもよく、3つ以上であってもよい。なお、図2では、インジェクタ22が省略されている。
 図1に示すように、インジェクタ22は、燃焼室12の頂壁12aにおけるシリンダ軸線AX1を挟んで吸気ポート16の反対側(図1の右側)に配置されている。言い換えると、インジェクタ22は、シリンダ軸線AX1から直交方向D1の他方側(図1の右側)に配置されている。
 インジェクタ22は、点火プラグ15を挟んで、吸気ポート16と反対側に設けられ、排気ポート18と反対側の周壁12bに向けて燃料Fが噴射される。インジェクタ22の噴射軸線AX3は、シリンダ軸線AX1に沿う向きと、吸気ポート16側の周面に向かう方向の向きを合成した方向に延びる。本実施形態では、インジェクタ22は、シリンダヘッド10に設けられているが、シリンダブロック8に配置されてもよい。
 インジェクタ22の噴射軸線AX3は、インジェクタ22の噴射口22aから、シリンダ軸線AX1のクランクシャフト2側(図1の下側)に向かって、直交方向Dの一方側である吸気ポートバルブ24側(図1の左側)に傾斜して延びている。詳細には、インジェクタ22の噴射軸線AX3は、排気ポート18を塞いだ状態のピストン4の上面12cに向かって延びている。
 図3に示すように、本開示のエンジンEは、複数のインジェクタ22を有している。本実施形態では、インジェクタ22は2つ設けられている。ただし、インジェクタ22の数は、これに限定されず、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
 本実施形態では、2つのインジェクタ22は、噴射軸線AX3が下流に向かって近づくように配置されている。詳細には、2つのインジェクタ22の噴射軸線AX3は、下流側で交差している。ただし、複数のインジェクタ22の噴射軸線AX3は平行であってもよく、下流に向かって離れていてもよい。
 複数のインジェクタ22は、そのすべてが水素、ガソリン等の燃料Fを噴射するものであってもよい。また、燃料Fが水素の場合、複数のインジェクタ22は、水素燃料Fを噴射するインジェクタと、水を噴射するインジェクタを有していてもよい。
 図1に示すように、吸気バルブ24は、インジェクタ22の噴射口22aよりも上方、すなわち上流側にオフセットしている。具体的には、吸気ポート側のバルブシート28がインジェクタ22の噴射口22aよりも上方に位置している。つまり、頂壁12aにおける吸気ポート16と、インジェクタ22の噴射口22aが設けられる部分との間に段差32が形成されている。
 段差32は、実線で示す開いた状態の吸気バルブ24の弁体24aと、吸気バルブ24の軸心AX2と直交する方向に対向する部分である。言い換えると、吸気ポート側のバルブシート28は、頂壁12aにおけるシリンダ軸線AX1上の部分、本実施形態では点火プラグ15の取付部分に比べて、上方に離れた位置に配置されている。これによって、吸気ポート側のバルブシート28の下面と、頂壁12aのシリンダ軸線AX1上の部分とで、上下方向に段差32が形成される。
 吸気バルブ24が全開状態、すなわち図1の最も下方に移動した状態で、頂壁12aにおけるシリンダ軸線AX1上の部分は、吸気バルブ24の弁体24aよりも上方に位置する。言い換えると、全開状態の吸気バルブ24の弁体24aと頂壁12aにおけるシリンダ軸線AX1上の部分とは、上下方向に間隔をあけて配置される。つまり、全開状態では、吸気ポート16の全周から吸気が燃焼空間に流れ込む。また、頂壁12aにおける全開状態の吸気バルブ24の弁体24aとの上下方向の隙間は、インジェクタ側(図1の右側)よりも吸気側(図1の左側)の方が大きく形成される。
 図4に示すように、段差32は、吸気ポート16、すなわち吸気バルブ24の弁体24aに対してほぼ同心円状に、吸気ポート16に沿って形成されている。同心円状に形成されるのは、吸気ポート16におけるインジェクタ22に隣接する領域およびシリンダ8の周壁12bに近接する領域である。段差32は、頂壁12aのうちで、吸気ポート16に対してインジェクタ22と反対側の領域、すなわち吸気側の領域R1を除く部分に形成されている。つまり、吸気側の領域R1には、段差32は形成されていない。
 このように吸気側の領域R1に段差32が形成されていないので、図1に実線で示す吸気バルブ24が開いた状態で、頂壁12aと吸気バルブ24の弁体24aとの間の隙間からシリンダ軸線AX1に沿った縦の吸気流れAvが作り出される。
 詳細には、吸気バルブ24が開く際、吸気側の領域R1(図4)のほうが、インジェクタ側の領域R2(図4)よりも、弁体24aと頂壁12aとの間の上下方向隙間が大きく形成される。つまり、吸気の通過流量として、吸気側の領域R1の方が大きい。また、燃焼空間における吸気側の周壁12bに沿って吸気を導きやすい。さらに、縦の吸気流れAvは、弁体24aの傾斜に案内されて、周壁12bに向かって流れた後、周壁12bに衝突して周壁12bに沿って下方に流れる。
 図1に示すように、燃焼室12の頂壁12aに、オフセット壁42が形成されている。オフセット壁42は、吸気バルブ24の開放初期時に吸気バルブ24の開口の一部を覆う。詳細には、オフセット壁42は、吸気ポート16の径方向周囲に位置し吸気ポート16に沿って、吸気ポート16の同心円状に形成され、吸気ポート16が開いた状態の吸気バルブ24の弁体24aに対向する部分である。本実施形態では、前記段差32がオフセット壁42を構成している。
 オフセット壁42は、吸気バルブ24が開き始めの段階において、吸気ポート16からインジェクタ22の噴射口22aに吸気が流れるのを防ぐ。つまり、吸気ポート16から燃焼室12に流入する吸気の一部は、図1に実線矢印Arで示すように、オフセット壁42に案内されて、燃焼室12に導かれる。
 つぎに、本実施形態のエンジンEの吸気の流れを説明する。図1のエンジンEが始動すると、クランクシャフト2が回転する。クランクシャフト2の回転に連動して、ピストン4が上下動するとともに、吸気バルブ24が開閉する。具体的には、上死点付近で点火プラグ15により点火され爆発が起こり(爆発行程)、ピストン4が上死点から下方に移動する過程で排気ポート18が開いた後で吸気バルブ24が開く(掃気行程)。掃気が完了したタイミングで吸気が導入される(吸入行程)。再び上死点に達するまでに吸気バルブ24および排気ポート18が閉じてピストン4が上昇して圧縮され、燃料が噴射される(圧縮行程)。つまり、排気ポート18をピストン4が塞いだ後に、インジェクタ22で燃料Fを噴射される。以降、爆発行程、掃気行程、吸入行程および圧縮行程が繰り返される。
 本開示のエンジンEでは、吸気ポート16と排気ポート18の両方が開いている状態が存在する。具体的には、エンジンEの掃気行程の終了間際に、すなわち、図1のピストン4が排気ポート18を閉塞する前に吸気バルブ24が開き始める。これにより、吸気と排気を同時に行い、吸気した新気によりシリンダ内の既燃ガスを掃気できるから、吸気の充填効率の改善や、燃焼ガスの掃気効果の向上が期待できる。また、本開示のエンジンEは過給機20を有しており、吸気ポート16の吸気は加圧されているので、吸気ポート16と排気ポート18の両方が開いている状態でも、吸気ポート16から排気ポート18への掃気が実現できる。
 掃気行程において吸気バルブ24が開くと、頂壁12aと吸気バルブ24の弁体24aとの間の隙間からシリンダ軸線AX1に沿った縦の強い吸気流れAvが作り出される。つぎに、吸気ポート16からの吸気の一部が、オフセット壁42に沿って流れる(弱い吸気流れAs)。
 このように、シリンダ軸線AX1に沿う下方の強い吸気流れAvと、シリンダ軸線AX1付近の弱い旋回流Asが作り出される。それぞれ異なる部位の内周面に沿って流れる吸気を作り出すことで広範囲にわたって、未燃ガスを排気ポート18に押し出すことができる。
 一方、縦の強い吸気流れAvは、図2に示すように、シリンダ8の内壁面に沿って下方に流れた後、ピストン4の上面12cに当たって、ピストン4の上面12cに沿って排気ポート18に向かって流れる。このとき、弱い吸気流れAsの吸気は、強い吸気流れAvにより排気ポート18に向けて押し出される。
 圧縮行程において、図3に示すように、強い吸気流れAvが崩壊することで、燃焼室12内の吸気の乱れAt強さが大きくなる。燃焼室12内の吸気の乱れAt強さが大きくなった時点で、インジェクタ22から燃料Fが噴射される。これにより、吸気(空気A)と燃料Fとの混合が促進する。
 さらに、2つのインジェクタ22が設けられ、2つのインジェクタ22からの燃料Fの噴流を衝突させることで、燃料Fの噴流が分散し、吸気(空気A)と燃料Fが混合しやすくなる。
 上記構成によれば、吸気バルブ24の開放初期時には、オフセット壁42によって、燃焼室12への隙間が部分的に塞がれる。これにより、オフセット壁42と反対側から燃焼室12に吸気が集中的に導入される。その結果、吸気ポート16から燃焼室12の周壁12bに向かい、周壁12bをシリンダ軸線方向AX1に流れる強い吸気流れAvを形成することができる。燃焼後のガスは、吸気流れAvによって押し出されて、燃焼室12の周壁12bにおける下側に設けられた排気ポート18から排出される。このように集中的に導入された強い吸気流れAvによって、燃焼後のガスを排気ポート18に押し出すことで、燃焼後のガスの掃気効果を高めることができる。
 本実施形態において、燃料Fを噴射するインジェクタ22を備え、インジェクタ22の噴射軸線AX3が、インジェクタ22の噴射口22aから、吸気バルブ24を挟んでオフセット壁42と反対側の周壁12baに向く方向に延びていてもよい。この構成によれば、強い吸気Aの流れが崩壊した後の乱れAt強さが大きな吸気に燃料Fを衝突させやすく、燃料Fの拡散を促進することができる。
 この場合、排気ポート18を塞いだ状態のピストン4の上面12cに向かって、インジェクタ22の噴射軸線AX3が延びていてもよい。この構成によれば、インジェクタ22から噴射された燃料Fが、排気ポート18を塞いだ状態のピストン4の上面12cで、大きく乱れた吸気Atと衝突し易く、燃料Fの拡散をさらに促進できる。
 本実施形態において、排気ポート18が、シリンダ軸線AX1を挟んで、吸気バルブ24との反対側の周壁12bに配置されていてもよい。この構成によれば、強い吸気の流れAがピストン4の上面12cに沿って流れた先の排気ポート18に向かいやすい。これによって掃気効果をさらに高めやすい。
 本実施形態において、インジェクタ22が複数設けられていてもよい。この構成によれば、排気バルブを省略しているので、燃焼室22の頂壁12aに複数のインジェクタ22を配置しやすい。
 この場合、複数のインジェクタ22の噴射軸線AX3が下流に向かって近づいてもよい。また、複数のインジェクタ22の噴射軸線AX3が下流側で交差していてもよい。この構成によれば、複数のインジェクタ22からの噴出物を気筒内で衝突させることで、噴流が分散して空気と燃料Fの混合が促進する。
 さらに、複数のインジェクタ22は水素燃料を噴射するものであってもよい。水素エンジンでは、高温になりやすい排気バルブに水素が接触することで、点火プラグで着火される前に自然発火するプレイグニッションが起こる恐れがある。上記構成によれば、排気バルブが省略されているので、プレイグニッションを防ぐことができる。
 また、複数のインジェクタ22は、水素燃料を噴射するインジェクタと、水を噴射するインジェクタを有していてもよい。この構成によれば、水を噴射することで、燃焼室12内の温度上昇が抑制されるので、プレイグニッションを防ぐことができる。
 本実施形態では、吸気ポート16は、2つであったが、これに限定されず、1つでもよく、3つ以上でもよい。また、排気ポート18も同様に、本実施形態のように1つに限定されず、複数設けられてもよい。排気ポート18は、吸気ポート16に対して、シリンダAX1軸線を挟んで反対側に配置されることが好ましい。
 噴射軸線AX3が交差する複数のインジェクタ22の並びは、適宜選択可能である。例えば、吸気ポート16が2つ並ぶ場合、その並びに平行にインジェクタ22が並んでもよく、あるいは、吸気ポート16の並びに非平行、例えば垂直方向に並んでもよい。また、シリンダ軸線AX1に垂直な面において、吸気ポート16と排気ポート18とを結ぶ方向にインジェクタ22が並んでもよい。2つのインジェクタ22は、噴射タイミングが異なっていてもよい。
 本開示は、以上の形態に限定されるものでなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本開示の範囲内に含まれる。
2 クランクシャフト
4 ピストン
12 燃焼室
12a 頂壁
12b 周壁
16 吸気ポート
18 排気ポート
22 インジェクタ
22a インジェクタの噴射口
24 吸気バルブ
25 動弁機構
42 オフセット壁
AX1 シリンダ軸線
AX3 インジェクタの噴射軸線
E エンジン

Claims (10)

  1.  燃焼室の頂壁に設けられた吸気ポートと、
     前記燃焼室の周壁のうち、シリンダ軸線方向に関してクランクシャフト側に設けられた排気ポートと、
     クランクシャフトに連動する動弁機構により駆動されて前記吸気ポートを開閉する吸気バルブと、
     前記頂壁に形成されて、前記吸気バルブの開放初期時に前記吸気バルブの開口の一部を覆うオフセット壁と、
     を備えた2ストロークエンジン。
  2.  請求項1に記載の2ストロークエンジンにおいて、燃料を噴射するインジェクタを備え、前記インジェクタの噴射軸線が、インジェクタの噴射口から、吸気バルブを挟んで前記オフセット壁と反対側の周壁に向く方向に延びる2ストロークエンジン。
  3.  請求項1に記載の2ストロークエンジンにおいて、燃料を噴射するインジェクタを備え、前記排気ポートを塞いだ状態のピストンの上面に向かって、前記インジェクタの噴射軸線が延びている2ストロークエンジン。
  4.  請求項1または2に記載の2ストロークエンジンにおいて、前記排気ポートが、前記シリンダ軸線を挟んで、前記吸気バルブとの反対側の周壁に配置されている2ストロークエンジン。
  5.  請求項1または2に記載の2ストロークエンジンにおいて、インジェクタが複数設けられている2ストロークエンジン。
  6.  請求項5に記載の2ストロークエンジンにおいて、複数の前記インジェクタの噴射軸線が下流に向かって近づく2ストロークエンジン。
  7.  請求項6に記載の2ストロークエンジンにおいて、複数の前記インジェクタの噴射軸線が下流側で交差する2ストロークエンジン。
  8.  請求項5に記載の2ストロークエンジンにおいて、複数の前記インジェクタは水素燃料を噴射する2ストロークエンジン。
  9.  請求項5に記載の2ストロークエンジンにおいて、複数の前記インジェクタは、水素燃料を噴射するインジェクタと、水を噴射するインジェクタを有する2ストロークエンジン。
  10.  燃焼室の頂壁に設けられた吸気ポートと、
     前記頂壁に設けられた複数のインジェクタと、
     前記燃焼室の周壁のうち、シリンダ軸線方向に関してクランクシャフト側に設けられた排気ポートと、
     クランクシャフトに連動する動弁機構により駆動されて前記吸気ポートを開閉する吸気バルブと、
     を備えた2ストロークエンジン。
PCT/JP2023/043303 2022-12-26 2023-12-04 2ストロークエンジン WO2024142777A1 (ja)

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