WO2024142149A1 - 風味原料付香構成部材及び喫煙物品 - Google Patents

風味原料付香構成部材及び喫煙物品

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徹 石井
晃次郎 篤永
泰宏 中川
直哉 鶴岡
晴菜 平川
健一 工藤
克典 村越
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日本たばこ産業株式会社
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本発明は、冷感が強く、蔵置耐性に優れ、苦みの少ない風味原料付香構成部材を提供することを目的とする。 喫煙物品の構成部材、及び 固定相が95%ジメチルポリシロキサン/5%フェニル-メチルポリシロキサンであるカラムを用いて、質量分析計付きガスクロマトグラフィー(GC/MS)にて分析して得られるクロマトグラムにおいて、保持指標(RI)が1300以上である冷感剤(A)を含む風味原料 を含み、前記風味原料が前記喫煙物品の構成部材に付香されている、風味原料付香構成部材。

Description

風味原料付香構成部材及び喫煙物品
 本発明は、風味原料付香構成部材及び喫煙物品に関する。
 燃焼型喫煙物品、加熱型喫煙物品(非燃焼加熱型喫煙物品)、無煙喫煙物品、電子たばこにおいて、冷感を得るために、たばこ充填物などの喫煙物品の構成部材に対してメンソール等の冷感成分(風味原料の一種)を添加することが行われる。これにより、風味原料によって付香された構成部材(風味原料付香構成部材)が形成される。
 また、各喫煙物品においては下記の冷感強度、蔵置耐性、又は苦味の各特性が求められることがある。
<冷感強度>
 冷感成分について、より冷感強度が強ければ、所定の冷感強度を実現する為に要する冷感成分の配合量が少なくなり、風味原料中の冷感成分以外の成分の配合の自由度が増す。また、冷感成分の冷感強度がより強ければ、風味原料の付香量を減らすことができる。これらのように製造上に有利な点があるため、より強い冷感強度を持つ冷感成分が求められている。
<蔵置耐性>
 喫煙物品は長期間にわたって蔵置された後に使用されることがある。そのため、風味原料付香構成部材には、蔵置後に冷感強度を維持する(冷感強度に関して蔵置耐性に優れる)ことが求められる。
 しかしながら、メンソールに代表される冷感成分は、揮発性が高いものが多い。通常、市販の喫煙物品は、ポリプロピレンに代表されるフィルムパックで覆われている閉鎖系で蔵置されているが、そのパック内でメンソールなどの冷感成分は揮発し、本来添加した部位とは異なる部位に収着してしまう。その為、フィルムパック開封後の喫煙時に本来添加した部位とは異なる冷感強度の商品となってしまう問題点がある。
 また、フィルムパックを開封した後は開放系での蔵置となり、添加した冷感成分が大気中へ揮発してしまう。この場合、喫煙時には本来添加した量よりも実際に冷感成分として機能する量が少なく、冷感強度が弱い商品になってしまう問題点もある。
<苦味>
 必要とされる冷感強度を実現する為に冷感成分を増量すると、冷感の付与と共に苦みも付与する事が知られている。したがって、苦味を増加させることなく、冷感強度を強める冷感成分が求められている。
 かかる事情に鑑み、本発明は、冷感強度が強く、蔵置耐性に優れ、苦みの少ない風味原料付香構成部材を提供することを課題とする。
 本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究した結果、特定の保持指標(RI)を示す冷感剤を冷感成分として使用することにより、上記課題を解決できることを知見し、本発明を完成するに至った。本発明の具体的態様は以下のとおりである。
[1]
 喫煙物品の構成部材、及び
 固定相が95%ジメチルポリシロキサン/5%フェニル-メチルポリシロキサンであるカラムを用いて、質量分析計付きガスクロマトグラフィー(GC/MS)にて分析して得られるクロマトグラムにおいて、保持指標(RI)が1300以上である冷感剤(A)を含む風味原料
を含み、前記風味原料が前記喫煙物品の構成部材に付香されている、風味原料付香構成部材。
[2] 前記冷感剤(A)の保持指標(RI)が2000以上である、[1]に記載の風味原料付香構成部材。
[3] 前記冷感剤(A)の保持指標(RI)が2400以上2600以下である、[1]又は[2]に記載の風味原料付香構成部材。
[4] 前記冷感剤(A)が、下記一般式(1):
{式(1)中、*印は不斉炭素原子であり、Xは水素原子又は置換基を表し、Yは置換基を有していてもよい炭素数6~20のアリール基である}
で表されるメチルメントール誘導体又はその塩を含む、[1]~[3]のいずれか1項に記載の風味原料付香構成部材。
[5] 前記風味原料付香構成部材に対する前記冷感剤(A)の含有量が、1ppm以上である[1]~[4]のいずれか1項に記載の風味原料付香構成部材。
[6] 前記風味原料が、香料、冷感成分、又はこれらの組み合わせを含む、[1]~[5]のいずれか1項に記載の風味原料付香構成部材。
[7] 前記冷感成分が、冷感剤、冷感香料成分、又はこれらの組み合わせを含む[6]に記載の風味原料付香構成部材。
[8] 前記冷感剤が、前記冷感剤(A)と前記冷感剤(A)以外の冷感剤とを含む、[7]に記載の風味原料付香構成部材。
[9] 前記冷感香料成分が、メンソール、メントン、ペパーミントオイル、又はこれらの混合物を含む、[7]又は[8]に記載の風味原料付香構成部材。
[10] 前記風味原料付香構成部材に対する前記冷感香料成分の含有量が、0.0001~99重量%である、[7]~[9]の何れか1項に記載の風味原料付香構成部材。
[11] 前記香料が、天然香料、合成香料、又はこれらの混合物を含む、[6]~[10]の何れか1項に記載の風味原料付香構成部材。
[12] 前記風味原料が担持剤を更に含む、[1]~[11]の何れか1項に記載の風味原料付香構成部材。
[13] 前記担持剤が、糖質、セルロース誘導体、非パルプ繊維、脂質、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、又はこれらの混合物を含む、[12]に記載の風味原料付香構成部材。
[14] 前記風味原料が乳化剤を更に含む、[1]~[13]の何れか1項に記載の風味原料付香構成部材。
[15] 前記風味原料が、液状、半固体状、又は固体状である、[1]~[14]の何れか1項に記載の風味原料付香構成部材。
[16] 前記風味原料付香構成部材がエアロゾル源を更に含む、[1]~[15]の何れか1項に記載の風味原料付香構成部材。
[17] 前記エアロゾル源が、多価アルコール、トリエチルシトレート、トリアセチン、又はこれらの混合物を含む、[16]に記載の風味原料付香構成部材。
[18] 前記喫煙物品の構成部材がニコチン源を含む、[1]~[17]の何れか1項に記載の風味原料付香構成部材。
[19] 前記風味原料付香構成部材が吸着剤を更に含む、[1]~[18]の何れか1項に記載の風味原料付香構成部材。
[20] 前記喫煙物品の構成部材が、たばこ充填物、フィルター、管、巻紙、チップペーパー、プラグ、パウチ、又はリキッドである、[1]~[19]の何れか1項に記載の風味原料付香構成部材。
[21] 前記喫煙物品の構成部材が不織布である[1]~[20]の何れか1項に記載の風味原料付香構成部材。
[22] [1]~[21]の何れか1項に記載の風味原料付香構成部材を含む、喫煙物品。
[23] 加熱型喫煙物品である、[22]に記載の喫煙物品。
[24] 燃焼型喫煙物品である、[22]に記載の喫煙物品。
[25] 無煙喫煙物品である、[22]に記載の喫煙物品。
[26] 電子たばこである、[22]に記載の喫煙物品。
 本発明の風味原料付香構成部材は、冷感が強く、蔵置耐性に優れ、苦みが少ない。
図1は、非燃焼加熱型喫煙物品の一例を示す断面模式図である。 図2は、非燃焼加熱型喫煙システムの一例を示す断面模式図である。 図3は、非燃焼加熱型喫煙物品の外観の一例を示す斜視図である。 図4は、非燃焼加熱型喫煙物品の一例を示す分解図である。 図5は、喫煙物品30の内部の一例を示す概略図である。 図6は、メンソール又は各冷感剤のGC/MSによるクロマトグラムである。 図7は、メチルメントール誘導体を2500ppm添加した蔵置前たばこスティックサンプルのGC/MSによるトータルイオンクロマトグラムである。 図8は、メチルメントール誘導体を5000ppm添加した蔵置前たばこスティックサンプルのGC/MSによるトータルイオンクロマトグラムである。 図9は、メチルメントール誘導体を10000ppm添加した蔵置前たばこスティックサンプルのGC/MSによるトータルイオンクロマトグラムである。 図10は、メチルメントール誘導体を2500ppm添加した蔵置後たばこスティックサンプルのGC/MSによるトータルイオンクロマトグラムである。 図11は、メチルメントール誘導体を5000ppm添加した蔵置後たばこスティックサンプルのGC/MSによるトータルイオンクロマトグラムである。 図12は、メチルメントール誘導体を10000ppm添加した蔵置後たばこスティックサンプルのGC/MSによるトータルイオンクロマトグラムである。
 本明細書において、単位「ppm」と記載した場合には、「重量ppm」のことを示す。さらに、数値範囲を示す「X~Y」とは、その前後に記載された数値X及びYをそれぞれ下限値及び上限値として含む意味で使用される。
 以下、本発明の風味原料付香構成部材及び喫煙物品について、説明する。
 1.風味原料付香構成部材
 本発明の風味原料付香構成部材は、
 喫煙物品の構成部材、及び
 固定相が95%ジメチルポリシロキサン/5%フェニル-メチルポリシロキサンであるカラムを用いて、質量分析計付きガスクロマトグラフィー(GC/MS)にて分析して得られるクロマトグラムにおいて、保持指標(RI)が1300以上である冷感剤(A)を含む風味原料
を含み、前記風味原料が前記喫煙物品の構成部材に付香されている。
 1-1.風味原料
 風味原料は、喫煙物品の構成部材に付香されている。本明細書において、「付香」とは特定の成分を添加することを意味する。風味原料による喫煙物品の構成部材への付香は、特に限定されないが、風味原料を使用して、塗布、混合、挿入、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせの処理を施すことにより実施できる。風味原料による喫煙物品の構成部材への付香は、喫煙物品の構成部材又は当該構成部材の前駆体(原料)のいずれに対して行ってもよい。
 <冷感剤(A)>
 固定相が95%ジメチルポリシロキサン/5%フェニル-メチルポリシロキサンであるカラムを用いて、質量分析計付きガスクロマトグラフィー(GC/MS)にて分析して得られるクロマトグラムにおいて、冷感剤(A)の保持指標(RI)は、1300以上であり、2000以上が好ましく、2400以上2600以下がより好ましく、2300以上2600以下が最も好ましい。RIが上記の数値範囲内であることにより、蔵置耐性に優れ、かつ喫煙時に化合物を効率的に揮発、吸引することができる。
 <リテンションインデックス(RI)>
 本明細書で「リテンションインデックス(保持指標)(RI)」とは、ガスクロマトグラフィーによる分析において、直鎖炭化水素(n-アルカン)の炭素数を基準とし、n-アルカンと分析対象の化合物の保持比を相対的に表した指標を指す。RIは、所定の固定相を有するカラムを用いた場合、カラムの長さ、キャリアガス流量などが変化しても同一の化合物であれば理論上同じ値となる。RIは、具体的には以下の式で算出される。
 本明細書において、RIは、n-ヘキサン(C、RI:600)からn-ペンタトリコンタン(C35、RI:3500)の範囲のn-アルカン混合物を用いて算出された値を用いるが、RIを算出する際に用いられるn-アルカン混合物はこれに限定されない。
 本明細書において、ガスクロマトグラフィーで用いるカラムは、例えば無極性または低極性の固定相、好ましくは無極性の固定相を有する。これらのカラムを用いたガスクロマトグラフィーでは、RIの数字が低いほど化合物は揮発しやすく、逆に、RIの数字が高いほど化合物は揮発しにくいと考えられる。
 低極性の固定相を有するカラムとしては、例えば95%ジメチルポリシロキサン/5%フェニル-メチルポリシロキサンの固定相を有するカラムを用いることができる。
 95%ジメチルポリシロキサン/5%フェニル-メチルポリシロキサンの固定相を有するカラムとしては、例えばHP-5MS(アジレント・テクノロジー製)を用いることができるが、これに限定されない。
 無極性の固定相を有するカラムとしては、例えば100%ジメチルポリシロキサンの固定相を有するカラムを用いることができる。
 100%ジメチルポリシロキサンの固定相を有するカラムとしては、例えばDB-1(アジレント・テクノロジー製)を用いることができるが、これに限定されない。
 質量分析計付きガスクロマトグラフィー(GC/MS)の測定に使用する装置及び条件は、特に限定されないが、後述の[実施例]に記載の装置及び条件を使用することができる。
 <メチルメントール誘導体又はその塩>
 冷感剤(A)は、特に限定されないが、下記一般式(1):
{式(1)中、*印は不斉炭素原子であり、Xは水素原子又は置換基を表し、Yは置換基を有していてもよい炭素数6~20のアリール基である}
で表されるメチルメントール誘導体又はその塩、を含む又はからなることができる。
 具体的には、冷感剤(A)に含まれる一般式(1)で表されるメチルメントール誘導体は、シクロヘキサン環構造を有し、1位と2位に不斉炭素を有していることから、次の式(1-a)~式(1-d)に示される4種のジアステレオマーが存在する。
 一般式(1)で表されるメチルメントール誘導体は、好ましくはトランス体である。
 一般式(1)で表されるメチルメントール誘導体の塩としては、特に限定されず、具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩などが挙げられる。
 一般式(1)において、Xは水素原子又は置換基を表す。
 置換基としては、例えば、水酸基、アセトキシ基、オキソ基、炭素数1~10のアルキル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基等が挙げられる。炭素数1~10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基及びデシル基等が挙げられる。
 中でも、冷感の持続性、冷感強度、苦味の少なさ、製造容易性の観点から、Xは、水素原子、水酸基、アセトキシ基、オキソ基又はメチル基であることが好ましい。
 一般式(1)において、Yは置換基を有していてもよい炭素数6~20のアリール基である。
 炭素数6~20のアリール基としては、例えば、炭素数6~20の芳香族単環式基、芳香族多環式基又は芳香族縮合環式基が挙げられる。具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基等が挙げられる。
 炭素数6~20のアリール基が有していてもよい置換基としては、例えば、水酸基;ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、1-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基及び1-ヒドロキシブチル基などの炭素数1~4のヒドロキシアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシル基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、メチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、tert-ブトキシ基及びフェノキシ基などの炭素数1~6のアルコキシ基;メルカプト基;チオメトキシ基、チオエトキシ基、n-チオプロポキシ基、チオイソプロポキシ基、n-チオブトキシ基、チオイソブトキシ基、sec-チオブトキシ基、メチレンジチオ基及びtert-チオブトキシ基などの炭素数1~4のチオアルコキシ基;メチル基、エチル基、n-プルピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基などの炭素数1~6のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びシクロヘプチル基などの炭素数5~8のシクロアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子などのハロゲン原子;フェニル基;ベンジル基、フェニルエチル基及びナフチルメチル基などの炭素数7~12のアラルキル基;カルボキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等の炭素数2~8のアルコキシカルボニル基;ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基及びベンゾイル基などの炭素数1~7のアシル基;カルボキサミド基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基及びジブチルアミノ基などの炭素数2~8のジアルキルアミノ基;ニトリル基;シアノメチル基、シアノエチル基、シアノプロピル基及びシアノブチル基などのシアノアルキル(該アルキル基の炭素数1~4)基;オキシラニル基、アジリジニル基、2-オキソピロピジル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、モルホリノ基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基及びテトラヒドロチエニル基などの脂肪族複素環基;テトラジニル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリジニル基、ピラジニル基、ピラダジニル基、イミダゾイル基、オキサゾイル基、チアゾイル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサノイル基、フタラジニル基、キナゾリニル基、ナフチルジニル基、シンノリニル基、ベンゾイミダゾリン基、ベンゾオキサゾリル基及びベンゾチアゾリル基などの芳香族複素環基等を例示することができる。
 本発明において、冷感の持続性、冷感強度、苦味の少なさ、製造容易性の観点から、Yは、置換基を有していてもよいフェニル基であることが好ましい。
 上記式(1)中、Xが水素原子、水酸基、アセトキシ基、オキソ基又はメチル基であり、Yが置換基を有していてもよいフェニル基であることが好ましい。
 また、上記式(1)が、下記構造式(2)で表されることが好ましい。
[式(2)中、*印は不斉炭素原子である。]
 式(1)で表される本発明のメチルメントール誘導体の好ましい具体例として、以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
 以下の化合物中、Meはメチル基を、Etはエチル基を、Acはアセチル基を表す。
 式(1)で表される本発明のメチルメントール誘導体は、特に限定されないが、N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミドを含む又はからなることができる。N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミドとしては、COOLACT(登録商標) 370(高砂香料工業株式会社製)を使用することができる。
 上記式(1)で表される本発明のメチルメントール誘導体は、例えば、国際公開第2018/131575号に開示されているような従来公知の方法に基づいて、合成することができる。
 本発明の一般式(1)で表されるメチルメントール誘導体は、冷感強度が強く、持続性のある喉奥への冷感を有し、そのまま単独で冷感剤又は感覚付与剤として利用することができる。また、多くの冷感成分は冷感と共に苦味を付与する事が知られているが、本発明の一般式(1)で表されるメチルメントール誘導体を使用することにより、喫煙時に苦味の少ない冷感体験が得られる。
 風味原料付香構成部材に対する上記冷感剤(A)の含有量は、特に限定されないが、1ppm以上、100ppm以上、200ppm以上、または300ppm以上とすることができる。もしくは、風味原料付香構成部材に対する上記冷感剤(A)の含有量は、500000ppm以下、50000ppm以下、または5000ppm以下とすることができる。上記冷感剤(A)の含有量の数値範囲は任意に組み合わせることができる。冷感剤(A)の含有量が上記の数値範囲内であることにより、苦味の少ない、喉奥への冷感を感じる効果が得られる。
 <冷感成分>
 風味原料は、冷感成分を含むことができる。
 上記冷感成分は、冷感剤、冷感香料成分、又はこれらの混合物を含む又はからなることができる。
 本明細書において、冷感剤とは、爽やかな感覚(清涼感)や冷たい感覚(冷涼感)を与えることのみを機能として有する化合物を意味し、上記冷感剤(A)(例えば、メチルメントール誘導体又はその塩)は冷感剤に含まれる。
 また、本明細書において、冷感香料成分とは、爽やかな感覚(清涼感)や冷たい感覚(冷涼感)とその他様々な感覚を得られることを機能として有する、上記冷感剤以外の化合物を意味する。
 冷感剤は、上記冷感剤(A)と上記冷感剤(A)以外の冷感剤とを含む又はからなることができる。
 上記冷感剤(A)以外の冷感剤は、特に限定されないが、イソプレゴール、シネオール、ハッカオイル、ユ-カリプタスオイル、2-l-メントキシエタノール(COOLACT(登録商標)5、高砂香料工業株式会社製)、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール(COOLACT(登録商標)10、高砂香料工業株式会社製)、l-メンチル-3-ヒドロキシブチレート(COOLACT(登録商標)20、高砂香料工業株式会社製)、p-メンタン-3,8-ジオール(COOLACT(登録商標)38D、高砂香料工業株式会社製)、N-(4-(シアノメチル)フェニル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサンカルボキサミド(COOLACT(登録商標)400、高砂香料工業株式会社製)、N-(3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサンカルボキサミド、N-エチル-p-メンタン-3-カルボアミド(Symcool(登録商標)WS-3、シムライズ社製)、エチル-2-(p-メンタン-3-カルボキサミド)アセテート(Symcool(登録商標)WS-5、シムライズ社製)、N-(4-メトキシフェニル)-p-メンタンカルボキサミド(Symcool(登録商標)WS-12、シムライズ社製)、2-イソプロピル-N,2,3-トリメチルブチラミド(Symcool(登録商標)WS-23、シムライズ社製)、3-l-メントキシ-2-メチルプロパン-1,2-ジオール、2-l-メントキシエタン-1-オール、3-l-メントキシプロパン-1-オール、4-l-メントキシブタン-1-オール、メンチルラクテート(FEMA3748)、メントングリセリンアセタール(Frescolat MGA、FEMA3807、FEMA3808)、2-(2-l-メンチルオキシエチル) エタノール、グリオキシル酸メンチル、2-ピロリドン-5-カルボン酸メンチル、コハク酸メンチル(FEMA3810)、N-(2-(ピリジン-2-イル)-エチル)-3-p-メンタンカルボキサミド(FEMA4549)、N-(エトキシカルボニルメチル)-p-メンタン-3-カルボキサミド、N-(4-シアノメチルフェニル)-p-メンタンカルボキサミド、およびN-(4-アミノカルボニルフェニル)-p-メンタン、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせを含む又はからなることができる。
 風味原料付香構成部材全体に対する上記冷感剤(A)以外の冷感剤の含有量は、特に限定されないが、1ppm以上、100ppm以上、200ppm以上、または300ppm以上とすることができる。もしくは、風味原料付香構成部材全体に対する上記冷感剤(A)以外の冷感剤の含有量は、500000ppm以下、50000ppm以下、または5000ppm以下とすることができる。また、上記冷感剤(A)以外の冷感剤の含有量の数値範囲は、任意に組み合わせることができる。冷感剤(A)以外の冷感剤の含有量が上記の数値範囲内であることにより、苦味がない冷感が得られる。
 上記冷感香料成分は、特に限定されないが、メンソール、メントン、ペパーミントオイル、又はこれらのうちの2種以上の混合物を含む又はからなることができる。これらのうちでもメンソールが好ましい。メンソールを使用することにより、爽やかな感覚(清涼感)や冷たい感覚(冷涼感)を想起させる特徴的な香気が強く得られる。
 風味原料付香構成部材全体に対する上記冷感香料成分の含有量は、特に限定されないが、1ppm以上、10ppm以上、または100ppm以上とすることができる。もしくは、風味原料付香構成部材全体に対する上記冷感香料成分の含有量は、990000ppm以下、500000ppm以下、または40000ppm以下とすることができる。風味原料付香構成部材全体に対する上記冷感香料成分の含有量は、0.0001~99重量%とすることもできる。上記冷感香料成分の含有量の数値範囲は任意に組み合わせることができる。
 <香料>
 上記風味原料は、香料を含むことができる。
 本明細書において、香料とは、爽やかな感覚(清涼感)や冷たい感覚(冷涼感)を有さず、その他様々な感覚を得られることを機能として有する化合物を意味する。
 上記香料は、特に限定されないが、天然香料、合成香料、又はこれらの混合物を含む又はからなることができる。上記天然香料は、特に限定されないが、レモン油、ライム油、オレンジ油、ジンジャー油、ディル油又はこれらのうちの2種以上の混合物を含む又はからなることができる。上記合成香料は、特に限定されないが、イソアミルアセテイト、エチルブチレイト、リナリルアセテイト、リナロール、エチルアセテイト、又はこれらのうちの2種以上の混合物を含む又はからなることができる。
 風味原料付香構成部材全体に対する上記香料の含有量は、特に限定されないが、1ppm以上、10ppm以上、または100ppm以上とすることができる。もしくは、風味原料付香構成部材全体に対する上記香料の含有量は、990000ppm以下、50000ppm以下、または40000ppm以下とすることができる。上記香料の含有量の数値範囲は任意に組み合わせることができる。
 <担持剤>
 風味原料は、担持剤をさらに含むことができる。
 上記担持剤は、特に限定されないが、WO2020/235007、WO2018/100688、WO2012/118034A1、WO2012/118033A1などに記載される香料含有シート、糖質、セルロース誘導体、非パルプ繊維、脂質、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール又はこれらのうちの2種以上の混合物を含む又はからなることができる。上記担持剤は、風味原料中に分散した香料や冷感成分を固定して被覆する性質を有するため、蔵置期間中の香料や冷感成分の揮散散逸を抑制し蔵置耐性を向上できる。また、上記担持剤は、衝撃やこすれなどの物理的なダメージによって香料や冷感成分が風味原料から脱離することから保護できる。
 <糖質>
 上記糖質は、特に限定されないが、多糖類、糖類、糖アルコール、又はこれらのうちの2種以上の混合物を含む又はからなることができる。
 上記多糖類は、特に限定されないが、デキストリン、オリゴ糖、澱粉、カラギーナン、ローカストビーンガム、グアーガム、寒天、ジェランガム、タマリンドガム、キサンタンガム、タラガム、コンニャクグルコマンナン、カシアガム、およびサイリウムシードガムからなる群より選択される1種の成分の単成分系;上述の群より選択される2種以上の成分を組み合わせた複合系を含む又はからなることができる。
 上記糖類は、特に限定されないが、砂糖、トレハロース、麦芽糖、乳糖、ブドウ糖、及び果糖からなる群より選択される1種の成分の単成分系;上述の群より選択される2種以上の成分を組み合わせた複合系を含む又はからなることができる。
 上記糖アルコールは、特に限定されないが、還元麦芽糖水飴、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、及びマルチトールからなる群より選択される1種の成分の単成分系;上述の群より選択される2種以上の成分を組み合わせた複合系を含む又はからなることができる。
 <セルロース誘導体>
 上記セルロース誘導体は、特に限定されないが、好ましくは、有機溶媒に可溶なセルロース誘導体である。ここでセルロース誘導体とは、セルロースのOH基に置換基を導入することにより得られる誘導体を指し、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートなどが挙げられる。また、セルロース誘導体は、その特徴的な官能基がもたらす複合的な効果により、結合剤、フィルム化剤、ゲル化剤として、一般的に広く使用されている。ここで、「有機溶媒に可溶な・・・」という表現における有機溶媒は、例えばエタノールである。
 セルロース誘導体は、好ましくは、両親媒性のセルロース誘導体、より好ましくはヒドロキシプロピルセルロースである。ヒドロキシプロピルセルロースの置換度は、例えば0.1~4.5、好ましくは2.0~4.5である。本明細書において、ヒドロキシプロピルセルロースの置換度は、1グルコースあたりのヒドロキシプロピル基の数を表す。ヒドロキシプロピルセルロースは、例えば、日本曹達株式会社からセルニーの商品名で市販されるものを使用することができる。
 セルロース誘導体として、ヒドロキシプロピルセルロースを使用した場合の利点を以下に説明する。ヒドロキシプロピルセルロースは、セルロースの誘導体であり、セルロースのOH基をヒドロキシプロピル基で置換することにより得られる物質である。ヒドロキシプロピルセルロースは、結合剤、フィルム化剤、ゲル化剤として広く使用されている。セルロースは、分子間でOH基同士が水素結合し結晶化するため、疎水性物質である。一方、ヒドロキシプロピルセルロースは、ヒドロキシプロピル基を有するため、分子間で水素結合が形成されにくくなり、親水性及び疎水性の両方を備えた物質(すなわち、両親媒性物質)となる。
 また、ヒドロキシプロピルセルロースは、グリセリンを含む系において、ヒドロキシプロピルセルロースのヒドロキシプロピル基とグリセリンのOH基との相互作用(水素結合)により、網目構造の複合体を形成することが報告されている。グリセリン以外の香料を用いた場合も、ヒドロキシプロピルセルロースは、香料との相互作用(水素結合や疎水相互作用など)により、網目構造の複合体を形成することができると考えられる。また、ヒドロキシプロピルセルロースは、両親媒性を有するため、乳化剤など使用しなくとも、親水性香料及び疎水性香料を網目構造内へ取り込めると考えられる。この網目構造の複合体により、香料は、たばこ製品の蔵置時に揮発することなく安定して保持され、たばこ製品の使用時(とりわけ、喫煙物品の加熱時)に安定してリリースされると考えられる。
 さらに、ヒドロキシプロピルセルロースは、有機溶媒、特にエタノールに可溶である。そのため、ヒドロキシプロピルセルロースと香料と溶媒とを含む液体組成物をエタノール溶液とした場合、かかるエタノール溶液は、水溶液の場合よりも粘度を低くすることができ、製造工程での輸送、塗工などで、水溶液よりも有利な点がある。また、エタノール溶液を乾燥し、香料組成物(ヒドロキシプロピルセルロースのフィルムなど)を形成した場合、水溶液の場合よりも、溶媒の気化が早いため、製造時間の短縮や乾燥時のエネルギーコストを下げられるなどの利点もある。
 <非パルプ繊維>
 非パルプ繊維とはパルプ繊維以外の繊維である。パルプ繊維とは、木材等の植物から取り出されたセルロース繊維の集合体であり、通常は紙の原料として用いられる。パルプ繊維としては、古紙パルプ、化学パルプ、機械パルプ等が挙げられる。本願において非パルプ繊維は好ましくは植物由来である。植物由来の繊維は生分解性を有するので環境負荷が小さい。
 従来のたばこシートなどの構成部材は、木材パルプなどのパルプ繊維、すなわち植物繊維束を基材とする(例えば、米国特許第5322076号明細書)。一般に木材パルプは、繊維径20μmの複数の単繊維の繊維束として構成され、木材パルプの繊維径は100~200μm程度であり、繊維長は1000~2000μm程度である。木材パルプを用いて、実用的な引張強度を有するたばこシートを製造する場合、当該シートは100~300μmと肉厚になってしまい熱伝導性が低下する。しかし、本願では非パルプ繊維を用いるので、機械的強度に優れた薄いシートを形成でき、優れた熱伝導性を達成できる。この観点から、非パルプ繊維の平均繊維径は、好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。当該平均繊維径の下限は限定されないが、2nm以上、10nm以上、100nm以上、1μm以上、または5μm以上である。
 非パルプ繊維の平均繊維径は、当該繊維の画像を取得して、複数の繊維について幅(短軸)を測定して、この値を平均して求めることができる。繊維形状が柱状(断面が矩形)である場合は、主面の幅と側面の幅のうち主面の幅(長い方)を当該繊維の幅とする。測定本数は好ましくは100本以上である。
 非パルプ繊維は好ましくは単繊維化セルロースである。単繊維化セルロースとはパルプ繊維に解繊等の処理を施して得られる細い繊維である。単繊維化セルロースには酸化などの化学変性が施されていてもよい。単繊維化セルロースの平均繊維径は前述のとおりである。単繊維化セルロースの平均繊維長は限定されないが、その上限は好ましくは2000μm以下、より好ましくは1500μm以下である。その下限は好ましくは100μm以上、より好ましくは500μm以上である。
 また、非パルプ繊維は好ましくは食物繊維である。食物繊維とはヒトの消化酵素で消化されない食物成分であり、本願においては水に溶けない不溶性食物繊維であることがより好ましい。食物繊維は多孔質すなわちスポンジ状であってもよい。多孔質繊維は喫煙物品用シートの表面積を増大させ、当該シートの熱伝導性を向上させることができる。入手容易性等の観点から、前記繊維は好ましくはシトラスファイバーである。シトラスファイバーとは柑橘類のアルベドを主原料とする繊維である。シトラスファイバーの平均繊維径は前述のとおりである。また、食物繊維はアスペクト比の小さい短繊維または柱状粒子であってもよい。
 一態様において、単繊維化セルロースと食物繊維とは併用される。両者を併用することによって、たばこシートの強度、易水分散性および煙感量が向上する。食物繊維1重量部に対する単繊維化セルロースの重量の上限は、好ましくは1.5重量部以下、より好ましくは1.2以下であり、その下限は好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上である。
 <脂質>
 上記脂質は、特に限定されないが、固形ワックス、セラミド、脂肪酸等の誘導脂肪、リン脂質等の複合脂肪又はこれらのうちの2種以上の混合物を含む又はからなることができる。
 上記担持剤を含む風味原料は担持風味原料とすることができる。この場合、担持剤を含む風味原料(担持風味原料)全体に対する上記担持剤の含有量は、特に限定されないが、1ppm以上、1000ppm以上、または10000ppm以上とすることができる。もしくは、担持風味原料全体に対する上記担持剤の含有量は、500000ppm以下、400000ppm以下、または300000ppm以下とすることができる。上記担持剤の含有量の数値範囲は任意に組み合わせることができる。担持剤の含有量が上記の数値範囲内であることにより、風味原料の担持と放出とのバランスの良い効果的な担持風味原料が得られる。
 <乳化剤>
 上記風味原料は、乳化剤を更に含むことができる。
 上記乳化剤の種類は、特段制限されず、例えば、ソルビタンモノラウレート、たとえばSPAN(登録商標)20、(米国、デラウェア州、ウィルミントンのUniqema社から入手可能)、ポリ(エチレンオキシド)ソルビタンモノラウレート、たとえばTWEEN(登録商標)20(米国、デラウェア州、ウィルミントンのUniqema社から入手可能)、グリセリンモノステアレートやデカグリセリンモノラウレート、デカグリセリンペンタステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル、スクロースモノステアレート、スクロースモノパルミテート等のシュガーエステル、プロピレングリコールモノステアレート等のプロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン又はこれらのうちの2種以上の組合せを用いることができる。
 乳化剤を含む風味原料全体に対する上記乳化剤の含有量は、特に限定されないが、1ppm以上、100ppm以上、または1000ppm以上とすることができる。もしくは、乳化剤を含む風味原料全体に対する上記乳化剤の含有量は、500000ppm以下、400000ppm以下、または300000ppm以下とすることができる。上記乳化剤の含有量の数値範囲は任意に組み合わせることができる。上記乳化剤の含有量が上記の数値範囲内であることにより、風味原料内の水溶性成分と油溶性成分を効率的に乳化、分散できる。
 風味原料の状態は、特に限定されないが、液状、半固体状、又は固体状とすることができる。風味原料が固体状の場合、粉末状、シームレスカプセル状などのカプセル状、又はシート状とすることができる。
 <エアロゾル源>
 風味原料付香構成部材は、エアロゾル源をさらに含むことができる。
 上記エアロゾル源は、特に限定されないが、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコール、トリエチルシトレート、トリアセチンなど、又はこれらのうちの2種以上の混合物を含む又はからなることができる。これらのうちでもグリセリンが好ましい。グリセリンを使用することにより、効果的に可視煙量を増加することができる。
 風味原料付香構成部材全体に対する上記エアロゾル源の含有量は、特に限定されないが、1ppm以上、10000ppm以上、50000ppm以上、または200000ppm以上とすることができる。もしくは、風味原料付香構成部材全体に対する上記エアロゾル源の含有量は、990000ppm以下、500000ppm以下、または200000ppm以下とすることができる。上記エアロゾル源の含有量の数値範囲は任意に組み合わせることができる。エアロゾル発生基材の含有量が上記の数値範囲内であることにより、効果的に可視煙量を増加することができる。
 <吸着剤>
 上記風味原料付香構成部材は、吸着剤を更に含むことができる。
 上記吸着剤は、特に限定されないが、活性炭、ゼオライト、シリカ等又はこれらのうちの2種以上の組み合わせを含む又はからなることができる。これらのうちでも活性炭が好ましい。活性炭を使用することにより、香喫味阻害物質の低減という効果が得られる。
 風味原料付香構成部材全体に対する上記吸着剤の含有量は、香喫味阻害物質の量により任意に設定され、特に限定されないが、喫煙物品あたり1mg以上とすることができる。もしくは、風味原料付香構成部材全体に対する上記吸着剤の含有量は、300mg以下または100mg以下とすることができる。上記吸着剤の含有量の数値範囲は任意に組み合わせることができる。
 1-2.喫煙物品の構成部材
 喫煙物品の構成部材は、特に限定されないが、たばこ充填物、フィルター、管、巻紙、チップペーパー、プラグ、パウチ、リキッド、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせを含む又はからなることができる。これらのうちでもたばこ充填物が好ましい。たばこ充填物を使用することにより、効率的に加熱され当該冷感剤が揮散することで、効果的な冷感が得られる。
 <たばこ充填物>
 たばこ充填物は、加工済たばこ葉が被充填物に所定の態様で充填されたものを指す。「被充填物」とは、加工済たばこ葉が充填される対象であり、たばこ製品の一部である。被充填物としては、巻紙を筒状にしたものや、空気の流入口と流出口とを備える収容体などを挙げることができるが、これらに限定されない。
 加工済たばこ葉が、被充填物に充填される態様としては、加工済たばこ葉が内側となるように巻紙で巻装されることで充填される態様(以下、「たばこロッド」ともいう。)や、加工済たばこ葉が空気の流入口と流出口とを備える収容体の流路に充填される態様(以下、「たばこカートリッジ」ともいう。)等を挙げることができるが、これらに限定されることはない。
 本明細書において、「たばこ葉」とは、収穫されたたばこの葉が、熟成を経る前のものの総称である。なお、熟成の一態様にはキュアリングが含まれる。
 これに対して、熟成を経たたばこ葉であって、たばこ製品で利用される種々の形態(たばこ刻や、たばこシート、たばこ顆粒等)に加工される前のものを「熟成済たばこ葉」と称する。さらに、熟成済たばこ葉を、たばこ製品で利用される種々の形態に加工したものを「加工済たばこ葉」と称する。
 熟成済たばこ葉は、たばこ製品で利用される種々の形態に加工され、加工済たばこ葉となる。たばこ製品で利用される形態としては、例えば、熟成済たばこ葉を所定の大きさに刻んだ「たばこ刻」を挙げることができる。また、熟成済たばこ葉を所定の粒径となるように粉砕したもの(以下、「たばこ細粉」ともいう。)を含む組成物を、特定の形に成形して得られる「たばこシート」や「たばこ顆粒」を挙げることもできる。なお、前記「たばこ細粉」も加工済たばこ葉の一形態である。
 加工済たばこ葉は、上述した「たばこ刻」、「たばこシート」、「たばこ顆粒」及び「たばこ細粉」に限定されず、熟成済たばこ葉を加工した様々な形態を含むことができる。
 加工済たばこ葉が被充填物に充填される態様は、加工済たばこ葉の形態が、上述のたばこ刻、たばこシート及びたばこ顆粒のいずれかによっても異なる。
 たばこ充填物として、被充填物に充填されたたばこ刻から構成されるたばこ充填物(以下、「第一のたばこ充填物」ともいう)、被充填物に充填されたたばこシートから構成されるたばこ充填物(以下、「第二のたばこ充填物」ともいう)、被充填物に充填されたたばこ顆粒から構成されるたばこ充填物(以下、「第三のたばこ充填物」ともいう)などが挙げられる。
 <フィルター>
 フィルターは、一般的なフィルターとしての機能を有していれば特に制限されず、例えば、合成繊維からなるトウ(単に「トウ」とも称する)やセンターホールフィルターの様な管状フィルター、紙等の材料を円柱状に加工したものを用いることができる。フィルターの一般的な機能とは、例えば、エアロゾル等を吸引する際に混ざる空気量の調整や、喫味の軽減、ニコチンやタールの軽減等が挙げられるが、フィルターは、これらの機能を全て備えていることは要しない。また、紙巻きたばこ製品と比較して、生成される香味成分が少なく、また、たばこ充填物の充填率が低くなる傾向のある電気加熱式たばこ製品においては、濾過機能を抑えつつたばこ充填物の落下を防止する、ということも重要な機能の一つである。
 なお、フィルターは、当技術分野における公知の製造方法により製造したものでも、市販品を用いてもよい。
 フィルターの形態は、特段制限されず、単一のフィルターセグメントを含むプレーンフィルタや、デュアルフィルタ又はトリプルフィルタ等の複数のフィルターセグメントを含むマルチセグメントフィルタ等とすることができる。
 フィルターの形状は、特段制限されず、公知の形状を採用することができ、通常は円柱状の形状とすることができ、以下の態様とすることができる。
 また、フィルターは、周方向の断面が中空(空洞)となるキャビティやリセス等のセクションを設けていてもよい。
 フィルターの通気は、公知の方法によって行えばよく、例えば、予め穿孔された包装材または空気透過性包装材を利用する、または、包装材料およびチップ・オーバーラップ(存在する場合)をレーザー穿孔することを利用することによって行えばよい。通気用フルチップ・オーバーラップは、同様に、本来的に空気透過性であってよく、または通気孔を設けてもよい。包装材およびチップ・オーバーラップの両方が存在する通気性製品において、オーバーラップの通気部は、好ましくは、包装材料(例えば、プラグラップ)の通気部の位置と合わせる。フィルター包装材を貫通する通気孔、チップ・オーバーラップを貫通する通気孔、またはこの両方を同時に貫通する通気孔は、フィルターの製造中に、レーザー穿孔によって形成してもよい。
 <管>
 管(冷却セグメント)は筒状部材で構成される態様を挙げることができる。筒状部材は例えば厚紙を円筒状に加工した紙管であってもよい。
 冷却セグメントは、その内部構造が大きい全表面積を有することが望ましい。従って、好ましい実施形態において、冷却セグメントは、チャネルを形成するためにしわ付けされて、次に、ひだ付け、ギャザー付け、及び折り畳まれた薄い材料のシートによって形成されてもよい。要素の与えられた体積内の折り畳み又はひだが多いと、冷却セグメントの合計表面積が大きくなる。
 筒状部材には、穿孔が設けられている。
 穿孔の存在により、吸引時に外気が冷却セグメント内に導入される。これにより、たばこ含有セグメントが加熱されることで生成したエアロゾル気化成分が外気と接触し、その温度が低下するため液化し、エアロゾルが形成される。
 穿孔の径(差し渡し長さ)は特に限定されないが、例えば0.5mm以上、1.5mm以下であってもよい。
 穿孔の数は特に限定されず、1つでも2つ以上でもよい。例えば穿孔は冷却セグメントの周上に複数設けられていてもよい。
 一部の実施形態において、生成したエアロゾルは、それが冷却セグメントを通って使用者に吸引される際に、温度が10℃以上低下することがある。一部の実施形態において、生成したエアロゾルは、それが冷却セグメントを通って使用者に吸引される際に、別の一態様では温度が15℃以上、さらに別の一態様では20℃以上低下することがある。
 冷却セグメントは、金属箔、ポリマーシート、及び実質的に孔なしの紙又は厚紙を含む群から選択されたシート材料から構成されてもよい。一実施形態において、冷却セグメントは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、酢酸セルロース、及びアルミニウム箔から構成される群から選択されたシート材料を含むことができる。
 冷却セグメントの構成材料は、生物分解性材料、例えば、孔なし紙、又はポリ乳酸のような生物分解性ポリマー、又はでんぷん系の共重合体などから作製されていてもよい。
 冷却セグメント内を通る空気流は、隣接するセグメント間で実質的に偏位しないことが好ましい。換言すれば、冷却セグメント内を通る空気流は、実質的な半径方向の偏位がなく、縦方向のセグメントに沿った流れであることが好ましい。一部の実施形態において、冷却セグメントは、縦方向延在チャネルを除いて、多孔率が低く又は実質的に孔を持たない材料から形成される。縦方向延在チャネルを定めるか又は形成するのに使用する材料、例えば、しわ付き又はギャザー付きシートは、多孔率が低く又は実質的に孔を持たない。
 上述したように、冷却セグメントは、しわ付けされた、ひだ付けされた、ギャザー加工された、又は折り畳まれた適切な構成材料のシートを含んでもよい。そのような要素の断面プロフィールは、ランダムに向いたチャネルを示す場合がある。冷却セグメントは、他の手段によって形成することができる。例えば、冷却セグメントは、縦方向延在チューブの束から形成することができる。冷却セグメントは、適切な材料の押出し、成形、積層化、射出、又は細断によって形成することができる。
 冷却セグメントは、例えば、ひだ付け、ギャザー付け、又は折り畳まれたシート材料を巻紙で巻装して形成することができる。一部の実施形態において、冷却セグメントは、ロッド形状にギャザー付けされ、かつラッパー、例えば、濾紙の巻紙によって結び付けられたしわ付き材料のシートを含むことができる。
 <巻紙>
 巻紙の構成は、特段制限されず、一般的な態様とすることができ、例えば、パルプが主成分のものを挙げることができる。パルプとしては、針葉樹パルプや広葉樹パルプなどの木材パルプで抄造される以外にも、亜麻パルプ、大麻パルプ、サイザル麻パルプ、エスパルトなど一般的にたばこ物品用の巻紙に使用される非木材パルプを混抄して製造して得たものでもよい。これらのパルプは、単独の種類で用いてもよく、複数の種類を任意の割合で組み合わせて用いてもよい。
 また、巻紙は一枚で構成されていてもよいが、複数枚以上で構成されていてもよい。
 巻紙は、たばこ刻み等のたばこ原料を巻装する態様で使用されてもよい。
 パルプの態様としては、クラフト蒸解法、酸性・中性・アルカリ亜硫酸塩蒸解法、ソーダ塩蒸解法等による化学パルプ、グランドパルプ、ケミグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ等を使用できる。
 なお、巻紙は、後述する製造方法により製造したものでも、市販品を用いてもよい。
 巻紙の製造方法は、特段制限されず、公知の方法、例えば、叩解したパルプを抄紙機で抄くことにより地合いを整え均一化して巻紙を製造することができる。
 抄紙機の種類は特段制限されず、例えば、長網抄紙機、円網抄紙機、円短複合抄紙機等を用いることができる。
 また、必要に応じて、湿潤紙力増強剤を添加して巻紙に耐水性を付与したり、サイズ剤を添加して巻紙の印刷具合の調整を行ったりすることができる。さらに、硫酸バンド、各種のアニオン性、カチオン性、ノニオン性或いは、両性の歩留まり向上剤、濾水性向上剤、及び紙力増強剤等の抄紙用内添助剤、並びに、染料、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、及びスライムコントロール剤等の製紙用添加剤を添加することができる。
 また、上記で製造された巻紙に対し、カレンダローラを用いてプレス圧力を加えるカレンダ加工を行ってもよい。当該カレンダ加工の方法や条件は、特に限定されるものではなく、例えば、国際公開第2008/072523号公報に記載の方法や条件により行うことができる。カレンダ加工により、巻紙が叩解されるため、巻紙の叩解度を大きくし、通気度を小さくすることができる。
 <チップペーパー>
 チップペーパーは、たばこロッド、冷却セグメント、フィルターセグメントのうち2つ以上を接続するために用いる紙をいう。一方、上述の巻紙は、たばこロッド、冷却セグメント、またはフィルターセグメントを構成する個々の部材を巻装するための紙をいう。例えば、フィルターセグメントがセンターホールフィルターとアセテートフィルターを備える場合、センターホールフィルターを巻装する紙、アセテートフィルターを巻装する紙はそれぞれ巻紙である。通常、フィルターは吸い口側に配置されるため、それを巻装するチップペーパーは必然的に、口に接触する部位となる。
 チップペーパーの構成は、特段制限されず、一般的な態様とすることができ、例えば、上述の巻紙の構成と同様のものを採用できる。
 <プラグ>
 プラグは、例えば、非燃焼加熱型喫煙物品の輸送中等において、たばこロッドからエアロゾル形成基材が放出されることを防ぐために使用される。この場合、たばこロッドの先端に前方プラグ(キャップ部材)として設けられる。
 プラグはシートを含むことができる。プラグは、ラッパーを備え当該ラッパー内に前記シートが充填されていてもよいし、ラッパーを用いずにシート同士を接着させるなどして成形することもできる。製造しやすいという観点からは前者の態様が好ましい。
 プラグの軸方向の長さは、好ましくは6~20mm、より好ましくは6~10mmである。その外周(円周)は、15~30mmであることができる。この範囲の軸方向長さを有することで、プラグの大量生産が可能となる。また、軸方向長さが下限値未満であると、香味源充填物から揮発した成分がトラップされず外部に漏れるためデバイスが汚れるという不良が生じうる。軸方向長さが長すぎるとプラグそのものの通気抵抗が大きくなることで非燃焼加熱型喫煙物品全体の通気抵抗が大きくなってしまい、使用時に吸い込みにくくなるといったことが生じる。
 プラグを、たばこロッドの上流端に加えて、たばこロッドの下流端にさらに配置することもできる。プラグの軸方向とは、たばこロッドとして組み込まれた際に、たばこロッドの長手方向(軸方向)と平行な方向をいう。プラグをたばこロッドの下流端にさらに配置することで、輸送時に香味源充填物がマウスピースセグメント方向にこぼれることを防止できる。また、内部加熱タイプの場合にロッド内部にヒーターを挿入した際に香味源充填物がマウスピースセグメント方向にこぼれることを防止できる。
 <リキッド>
 リキッドは、電子たばこにおいて使用する液体組成物を意味する。電子たばこでは、リキッドを蒸発させてエアロゾルを発生させる。リキッドは、プロピレングリコール(PG)、グリセリン(GL)、ニコチン、および香料を含むことができる。
 <パウチ>
 パウチは、充填物を包装することができ、水に溶解せず、かつ、液体(水や唾液等)および充填物中の水溶性成分を透過できれば、限定されず公知のものを用いることができ、例えば、不織布パウチを用いることができる。パウチの材料としては、例えば、セルロース系の不織布等が挙げられ、市販の不織布を用いてもよい。このような材料からなるシートを袋形状に成形し、その中に充填物を充填し、ヒートシール等の手段によりシールすることによりパウチ製品を作製することができる。
 上記のシートの坪量は、特段制限されず、通常12gsm以上、54gsm以下であり、24gsm以上、30gsm以下であることが好ましい。上記のシートの厚さは、特段制限されず、通常100μm以上、300μm以下であり、175μm以上、215μm以下であることが好ましい。
 パウチの内面および外面の少なくとも一方に部分的に撥水材料が塗布されていてもよい。撥水材料としては撥水性フッ素系樹脂が好適である。具体的には、この種の撥水性フッ素系樹脂としては、旭硝子社製のアサヒガード(登録商標)が挙げられる。撥水性フッ素系樹脂は、例えば、菓子類、乳製品、惣菜、ファストフードやペットフードなどの油脂類を含んだ食品や製品のための包材に塗布されている。それ故、この種の撥水性フッ素系樹脂は、口腔内に置かれるパウチに塗布されても安全である。この撥水材料としてはフッ素系樹脂に限ることなく、例えば、パラフィン樹脂、シリコン系樹脂またはエポキシ系樹脂等の撥水作用を有する材料であってもよい。
 (喫煙物品の構成部材の形態)
 喫煙物品の構成部材の形態は、特に限定されないが、不織布とすることができる。
 <ニコチン源>
 喫煙物品の構成部材は、特に限定されないが、ニコチン源を含む又はからなることができる。
 上記ニコチン源は、特に限定されないが、たばこ原料由来、もしくは非たばこ原料由来のニコチン若しくはその塩、又はこれらの混合物を含む又はからなることができる。これらのうちでもたばこ原料由来のニコチンもしくはその塩が好ましい。たばこ原料由来のニコチンもしくはその塩を使用することにより、たばこ特有の風味とニコチンとを同時に接種することができ、より満足感の高い喫煙感覚が得られる。
 喫煙物品の構成部材全体に対する上記ニコチン源の含有量は、特に限定されない。
 ニコチン源に使用するたばこ由来原料としては、上述のたばこ葉、熟成済たばこ葉、加工済たばこ葉、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせを使用することができる。
 ニコチン源に使用する非たばこ由来原料としては、コーヒー、お茶などがあげられる。また、それらの使用部位としては植物の根(鱗根(鱗茎)、塊根(イモ類)、球根などを含む)、茎、塊茎、皮(茎皮、樹皮などを含む)、葉、花(花弁、雌蕊、雄蕊などを含む)、若しくは種実、又は樹木の幹や枝等を挙げることができる。
 <風味原料付香構成物品の製造方法>
 本発明のいくつかの実施形態において、風味原料付香構成物品は、たばこ由来原料をシート、たばこ刻などの形態に成形した、たばこ充填物、フィルター、チップペーパー、管、巻紙、プラグ、パウチ、又はリキッドに対して、上述のメチルメントール誘導体又はその塩を含む風味原料を付香する事で得られる。
 2.喫煙物品
 本発明の喫煙物品は、上記1.の風味原料付香構成部材を含む。
 喫煙物品に含まれる風味原料付香構成部材の個数は、特に限定されないが、1つ又は2つ以上とすることができる。
 喫煙物品は、上記風味原料付香構成部材以外に、風味原料が付香されていない構成部材を含んでも良く、又は含まなくても良い。風味原料が付香されていない構成部材は、上述のたばこ充填物、フィルター、管、巻紙、チップペーパー、プラグ、パウチ、又はリキッドとすることができる。
 本実施形態の喫煙物品においては、風味原料付香構成部材に含まれる冷感剤(A)が、蔵置前及び蔵置後のいずれにおいても、本来添加した部位にとどまることができる。そのため、本実施形態の喫煙物品は、蔵置前及び蔵置後のいずれにおいても、本来意図したとおり、優れた冷感強度を示すことができる。
 喫煙物品は、加熱型喫煙物品、燃焼型喫煙物品、無煙喫煙物品、又は電子たばことすることができる。
 喫煙物品としては、ユーザが吸引により香味を味わう香味吸引物品や、ユーザが鼻腔や口腔に直接製品を含んで香味を味わう無煙たばこ(無煙喫煙物品)が挙げられる。香味吸引物品は、従来のシガレットを代表とする燃焼型喫煙物品、電子たばこ、及び非燃焼型加熱喫煙物品に大別できる。
 無煙喫煙物品としては、例えば、スヌース、ニコチンパウチなどの口腔内に含む物品や、かぎたばこなどが挙げられる。
 スヌースの製造については公知の方法を用いることができる。この場合は、上述の風味原料付香構成物品を例えば不織布のような原料を用いた包装材に公知の方法を用いて充填することで得られる。例えば風味原料付香構成部材の量を調整して充填し、ヒートシールなどの手段によりシールしてスヌースを得る。
 包装材としては特段の限定なく用いることができるが、セルロース系の不織布などが好ましく用いられる。
 燃焼型喫煙物品としては、例えば、シガレット、パイプ、キセル、葉巻、またはシガリロなどが挙げられる。
 電子たばことしては、例えば、オープンタンクタイプ、クローズドタンクタイプ、又はシガレットライクタイプが挙げられる。
 非燃焼加熱型喫煙物品(加熱型喫煙物品)は、当該物品と別体型の加熱装置により加熱されてもよいし、当該物品と一体型の加熱装置により加熱されてもよい。前者の喫煙物品(別体型)において、非燃焼加熱型喫煙物品と加熱装置とをまとめて、「非燃焼加熱型喫煙システム」とも称する。以下に非燃焼加熱型喫煙システムの一例を、図1および図2を参照して説明する。
 図1は、非燃焼加熱型喫煙物品20の断面図である。図1に示すとおり、非燃焼加熱型喫煙物品20(以下、単に「喫煙物品20」と称する)は、円柱形状を有する。喫煙物品20の円周の長さは、16mm~27mmであることが好ましく、20mm~26mmであることがより好ましく、21mm~25mmであることがさらに好ましい。喫煙物品20の全長(水平方向の長さ)は特に限定されないが、40mm~90mmであることが好ましく、50mm~75mmであることがより好ましく、50mm~60mmであることがさらに好ましい。
 喫煙物品20は、喫煙用セグメント20Aと、吸口を構成するフィルター部20Cと、これらを連結する連結部20Bとから構成される。
 喫煙用セグメント20Aは、円柱状であり、その全長(軸方向の長さ)は、例えば、5~100mmであることが好ましく、10~50mmであることがより好ましく、10~25mmであることがさらに好ましい。喫煙用セグメント20Aの断面の形状は特に限定されないが、例えば円形、楕円形、多角形等とすることができる。
 喫煙用セグメント20Aは、喫煙用組成物シートまたはこれに由来する材料21と、その周囲に巻かれたラッパー22とを有する。喫煙用組成物シートまたはこれに由来する材料21には、香料を含ませてもよい。
 フィルター部20Cは、円柱形をなしている。フィルター部20Cは、酢酸セルロースアセテート繊維が充填されて構成されたロッド状の第1セグメント25と、同じく酢酸セルロースアセテート繊維が充填されて構成されたロッド状の第2セグメント26とを有する。第1セグメント25は、喫煙用セグメント20A側に位置している。第1セグメント25は、中空部を有していてもよい。第2セグメント26は、吸口側に位置している。第2セグメント26は、中実である。第1セグメント25は、第1充填層(酢酸セルロースアセテート繊維)25aと、第1充填層25aの周囲に巻かれたインナープラグラッパー25bとにより構成される。第2セグメント26は、第2充填層(酢酸セルロースアセテート繊維)26aと、第2充填層26aの周囲に巻かれたインナープラグラッパー26bとにより構成される。第1セグメント25および第2セグメント26は、アウタープラグラッパー27によって連結されている。アウタープラグラッパー27は、酢酸ビニルエマルジョン系接着剤等によって第1セグメント25および第2セグメント26に接着されている。
 フィルター部20Cの長さを例えば10~30mm、連結部20Bの長さを例えば10~30mm、第1セグメント25の長さを例えば5~15mm、第2セグメント26の長さを例えば5~15mmとすることができる。これら個々のセグメントの長さは、一例であり、製造適性、要求品質、喫煙用セグメント20Aの長さ等に応じて、適宜変更できる。
 例えば、第1セグメント25(センターホールセグメント)は、1つまたは複数の中空部を有する第1充填層25aと、第1充填層25aを覆うインナープラグラッパー25bとで構成される。第1セグメント25は、第2セグメント26の強度を高める機能を有する。第1セグメント25の第1充填層25aは、例えば酢酸セルロース繊維が高密度で充填されている。この酢酸セルロース繊維には、トリアセチンを含む可塑剤が酢酸セルロースの質量に対して、例えば6~20質量%添加されて硬化されている。第1セグメント25の中空部は、例えば内径φ1.0~φ5.0mmである。
 第1セグメント25の第1充填層25aは、例えば、比較的に高い繊維充填密度で構成されてもよく、あるいは後述する第2セグメント26の第2充填層26aの繊維充填密度と同等であってもよい。このため、吸引時には、空気やエアロゾルが中空部のみを流れることになり、第1充填層25aには空気やエアロゾルがほとんど流れない。例えば、第2セグメント26において、エアロゾル成分の濾過による減少を少なくしたい場合には、例えば第2セグメント26の長さを短くして、その分だけ第1セグメント25を長くすることもできる。
 短縮した第2セグメント26を第1セグメント25で置き換えることは、エアロゾル成分のデリバリー量を増大させるために有効である。第1セグメント25の第1充填層25aが繊維充填層であることから、使用時の外側からの触り心地は、使用者に違和感を生じさせることがない。
 第2セグメント26は、第2充填層26aと、第2充填層26aを覆うインナープラグラッパー26bとで構成される。第2セグメント26(フィルターセグメント)は、酢酸セルロース繊維が一般的な密度で充填されており、一般的なエアロゾル成分の濾過性能を有する。
 第1セグメント25と第2セグメント26との間で、喫煙用セグメント20Aから放出されるエアロゾル(主流煙)をろ過するろ過性能を異ならせてもよい。第1セグメント25および第2セグメント26の少なくとも一方に、香料を含ませてもよい。フィルター部20Cの構造は任意であり、上記のような複数のセグメントを有する構造であってもよいし、単一のセグメントによって構成されていてもよい。またフィルター部20Cは、1つのセグメントで構成されてもよい。この場合、フィルター部20Cは、第1セグメントまたは第2セグメントのいずれで構成されていてもよい。
 連結部20Bは、円筒形をなしている。連結部20Bは、例えば厚紙等によって円筒形に形成された紙管23を有する。連結部20Bには、エアロゾルを冷却するための冷却部材が充填されていてもよい。冷却部材としては、ポリ乳酸等のポリマーのシートが挙げられ、当該シートを折り畳んで充填することができる。さらに、喫煙用セグメント20Aと連結部20Bの間には、喫煙用セグメント20Aの位置が変動することを抑制する支持部が設けられていてもよい。支持部は、第1セグメント25のようなセンタホールフィルター等の公知の材料で構成できる。
 ラッパー28は、喫煙用セグメント20A、連結部20B、およびフィルター部20Cの外側に円筒形に巻かれて、これらを一体的に連結している。ラッパー28の一方の面(内面)には、通気孔部24の付近を除く全面または略全面に酢酸ビニルエマルジョン系接着剤が塗布されている。複数の通気孔部24は、ラッパー28によって、喫煙用セグメント20A、連結部20B、およびフィルター部20Cが一体にされた後に、外側からレーザ加工を施して形成される。
 通気孔部24は、連結部20Bを厚み方向に貫通するように2以上の貫通孔を有する。2以上の貫通孔は、喫煙物品20の中心軸の延長線上から見て、放射状に配置するように形成される。本実施形態では、通気孔部24は、連結部20Bに設けられているが、フィルター部20Cに設けられていてもよい。また、本実施形態では、通気孔部24の2以上の貫通孔は、1つの円環上に一定間隔を空けて1列に並んで設けられるが、2つの円環上に一定の間隔を空けて2列に並んで設けられていてもよいし、1列または2列の通気孔部24が不連続または不規則に並んで設けられていてもよい。ユーザが吸口を咥えて吸引する際に、通気孔部24を介して主流煙中に外気が取り込まれる。ただし、通気孔部24は設けられていなくてもよい。
 非燃焼加熱型喫煙システムの一例を図2に示す。図中、非燃焼加熱型喫煙システムは、非燃焼加熱型喫煙物品20と、喫煙用セグメント20Aを外側から加熱する加熱デバイス10とを備える。
 加熱デバイス10は、ボディ11と、ヒーター12と、金属管13と、電池ユニット14と、制御ユニット15とを備える。ボディ11は筒状の凹部16を有し、これに挿入される喫煙用セグメント20Aと対応する位置に、ヒーター12と金属管13が配置されている。ヒーター12は電気抵抗によるヒーターであることができ、温度制御を行う制御ユニット15からの指示により電池ユニット14より電力が供給され、ヒーター12の加熱が行われる。ヒーター12から発せられた熱は、熱伝導度の高い金属管13を通じて喫煙用セグメント20Aへ伝えられる。当該図には、加熱デバイス10は喫煙用セグメント20Aを外側から加熱する態様を示したが、内側から加熱するものであってもよい。加熱デバイス10による加熱温度は特に限定されないが、400℃以下であることが好ましく、150~400℃であることがより好ましく、200~350℃であることがさらに好ましい。加熱温度とは加熱デバイス10のヒーターの温度を示す。
 以下に、非燃焼加熱型喫煙物品の別の例を図3~5を参照して説明する。
 図3は、非燃焼加熱型喫煙物品の外観の一例を示す斜視図である。図4は、非燃焼加熱型喫煙物品の一例を示す分解図である。非燃焼加熱型喫煙物品30(以下、単に喫煙物品30という)は、電子シガレットやネブライザー等であり、使用者の吸引に応じてエアロゾルを生成し、使用者に提供する。なお、使用者が行う1回の連続した吸引を「パフ」と呼ぶものとする。また、喫煙物品30は、生成したエアロゾルに対し、香味等の成分を添加して使用者の口腔内に放出する。
 図3及び図4に示すように、喫煙物品30は、本体30Aと、エアロゾル源保持部30Bと、添加成分保持部30Cとを備える。本体30Aは、電力を供給すると共に装置全体の動作を制御する。エアロゾル源保持部30Bは、霧化させてエアロゾルを生成するためのエアロゾル源を保持する。添加成分保持部30Cは、たばこ充填材38を保持する。たばこ充填材38は、本発明の「香料担持構成部材(風味原料付香構成部材)」、例えば、「香料担持たばこ刻」、「香料担持シートたばこ」、「香料担持たばこ顆粒」、「香料担持顆粒基材」または「香料担持金属箔」を含んでいてもよい。使用者は、添加成分保持部30C側の端部である吸口を咥え、香味等が添加されたエアロゾルを吸引することができる。
 喫煙物品30は、本体30A、エアロゾル源保持部30B及び添加成分保持部30Cを、使用者等が組み立てることによって形成される。本体30A、エアロゾル源保持部30B及び添加成分保持部30Cは、それぞれ径が所定の大きさである円柱状、円錐台状等であり、本体30A、エアロゾル源保持部30B、添加成分保持部30Cの順に結合させることができる。本体30Aとエアロゾル源保持部30Bとは、例えば、それぞれの端部に設けられた雄ねじ部分と雌ねじ部分とが螺合することにより結合される。また、エアロゾル源保持部30Bと添加成分保持部30Cとは、例えば、エアロゾル源保持部30Bの一端に設けられた筒状の部分に、側面にテーパが付けられた添加成分保持部30Cを嵌め込むことにより結合される。また、エアロゾル源保持部30B及び添加成分保持部30Cは、使い捨ての交換部品であってもよい。
 図5は、喫煙物品30の内部の一例を示す概略図である。本体30Aは、電源31と、制御部32と、吸引センサ33とを備える。制御部32は、電源31及び吸引センサ33とそれぞれ電気的に接続されている。電源31は、二次電池等であり、喫煙物品30が備える電気回路に電力を供給する。制御部32は、マイクロコントローラ(MCU:Micro-Control Unit)等のプロセッサであり、喫煙物品30が備える電気回路の動作を制御する。また、吸引センサ33は、気圧センサや流量センサ等である。使用者が喫煙物品30の吸口から吸引すると、吸引センサ33は、喫煙物品30の内部に生じる負圧や気体の流量に応じた値を出力する。すなわち、制御部32は、吸引センサ33の出力値に基づいて吸引を検知することができる。
 喫煙物品30のエアロゾル源保持部30Bは、貯留部34と、供給部35と、負荷36と、残量センサ37とを備える。貯留部34は、加熱により霧化する液体状のエアロゾル源を貯留する容器である。なお、エアロゾル源は、例えばグリセリンやプロピレングリコールなどのポリオール系の材料である。なお、エアロゾル源は、さらにニコチン液、水、香料等を含む混合液であってもよい。貯留部34には、このようなエアロゾル源が予め貯留されているものとする。なお、エアロゾル源は貯留部34を必要としない固体であってもよい。
供給部35は、例えばガラス繊維のような繊維材料を撚って形成されるウィックを含む。供給部35は、貯留部34と接続される。また、供給部35は負荷36と接続されるか、又は供給部35の少なくとも一部が負荷36の近傍に配置される。エアロゾル源は毛細管現象によりウィックに浸透し、負荷36による加熱によってエアロゾル源を霧化できる部分まで移動する。換言すれば、供給部35は、貯留部34からエアロゾル源を吸い上げ、負荷36又はその近傍へ運ぶ。なお、ガラス繊維に代えて多孔質状のセラミックをウィックに用いてもよい。
 負荷36は、例えばコイル状のヒータであり、電流が流れることで発熱する。また、例えば負荷36は正温度係数(PTC:Positive Temperature Coefficient)特性を有し、その抵抗値が発熱温度にほぼ正比例する。なお、負荷36は必ずしも正温度係数特性を有している必要はなく、その抵抗値と発熱温度に相関があるものであればよい。一例として、負荷36は負温度係数(NTC:Negative Temperature Coefficient)特性を有していてもよい。なお、負荷36はウィックの外部に巻かれていてもよいし、逆に負荷36の周囲をウィックが覆うような構成であってもよい。負荷36への給電は、制御部32によって制御される。供給部35によって貯留部34から負荷36へエアロゾル源が供給されると、負荷36の熱によりエアロゾル源が蒸発し、エアロゾルが生成される。また、制御部32は、吸引センサ33の出力値に基づいて使用者による吸引動作が検知された場合に、負荷36への給電を行い、エアロゾルを生成させる。また、貯留部34に貯留されたエアロゾル源の残量が十分である場合、負荷36へも十分な量のエアロゾル源が供給され、負荷36における発熱はエアロゾル源に輸送されるため、換言すれば負荷36における発熱はエアロゾル源の昇温及び気化に用いられるため、負荷36の温度は予め設計された所定の温度を超えることはほぼない。一方、貯留部34に貯留されたエアロゾル源が枯渇すると、負荷36へのエアロゾル源の時間当たりの供給量が低下する。その結果、負荷36における発熱はエアロゾル源に輸送されないため、換言すれば負荷36における発熱はエアロゾル源の昇温及び気化に用いられないため、負荷36が過熱し、これに伴い負荷36の抵抗値も上昇する。
 残量センサ37は、負荷36の温度に基づいて貯留部34に貯留されたエアロゾル源の残量を推定するためのセンシングデータを出力する。例えば、残量センサ37は、負荷36と直列に接続された電流測定用の抵抗器(シャント抵抗)と、抵抗器と並列に接続され、抵抗器の電圧値を測定する測定装置とを含む。なお、抵抗器は、その抵抗値が温度によってほぼ変化しない予め定められた一定の値である。よって、既知の抵抗値と測定された電圧値に基づいて、抵抗器に流れる電流値が求められる。
 喫煙物品30の添加成分保持部30Cは、内部にたばこ充填材38を保持する。上述のとおり、たばこ充填材38は、本発明の「香料担持構成部材(風味原料付香構成部材)」、例えば、「香料担持たばこ刻」、「香料担持シートたばこ」、「香料担持たばこ顆粒」、「香料担持顆粒基材」または「香料担持金属箔」を含んでいてもよい。たばこ充填材38は、本発明の「香料担持構成部材」に加えて、通常のたばこ充填材を含んでいてもよい。通常のたばこ充填材は、たばこ刻および/またはシートたばこを所定幅に刻んだもの(シートたばこの裁断物)で構成することができる。また、添加成分保持部30Cは、吸口側及びエアロゾル源保持部30Bと結合される部分に通気孔を備え、使用者が吸口から吸引すると添加成分保持部30Cの内部に負圧が生じ、エアロゾル源保持部30Bにおいて発生したエアロゾルが吸引されると共に、添加成分保持部30Cの内部においてニコチンや香味等の成分がエアロゾルに添加され、使用者の口腔内に放出される。
 本発明を以下の例により実験的に説明するが、以下の説明は、本発明の範囲が以下の例に限定して解釈されることを意図するものではない。
<GC/MSを用いたRI(リテンションインデックス)の測定>
 メンソール(L-menthol、高砂香料工業株式会社製)および冷感剤(上述のCOOLACT(登録商標)370、COOLACT(登録商標)5、COOLACT(登録商標)10、COOLACT(登録商標)20、Symcool(登録商標)WS-5、又はSymcool(登録商標)WS-23)それぞれにエタノールを加えて希釈し、各希釈溶液中にメンソール又は各冷感剤が1000ppmとなるように調整して各希釈溶液を得た。
 次に、上記で得られた希釈溶液のGC/MS(質量分析計付きガスクロマトグラフィー)分析を実施した。
 GC/MSの分析条件は以下の通りである。
・GC/MS
 装置:アジレント・テクノロジー製 7890B/5977B GC/MSD
・GC条件
 カラム:HP-5MS (アジレント・テクノロジー製)
     内径0.25mm×長さ30m、膜厚0.25μm
 注入量:1μl
 注入モード:スプリット(10:1)
 注入口温度:270℃
 セプタムパージ流量:5ml/分
 キャリアガス:ヘリウム(He)
 カラム流量:1ml/分(定流量モード)
 オーブン温度:40℃(3分)-4℃/分-280℃(20分)
 トランスファーライン温度:280℃
・MS条件
 溶媒待ち時間:4分
 イオン化法:電子衝撃イオン化法(EI法)、70eV
 イオン源温度:230℃
 四重極温度:150℃
 測定モード:スキャン
 MSスキャン範囲:m/z26~450
 スレッショルド:50
 サンプリングレート:2
 上記GC/MS分析により得られたクロマトグラムの保持指標(RI)は、以下の方法により算出した。
 メンソール又は各冷感剤のRIは、リニア法によりn-ヘキサン(C6、RI:600)からn-ペンタトリコンタン(C35、RI:3500)の範囲のn-アルカン混合物に基づいて算出した。なお、保持指標(RI)を算出する際に用いられるn-アルカン混合物はこれに限定されない。
 得られたメンソール又は各冷感剤のRIは以下の通りである。
  メンソール:1173
  COOLACT(登録商標)370:2477
  COOLACT(登録商標)5:1414
  COOLACT(登録商標)10:1674
  COOLACT(登録商標)20:1611
  Symcool(登録商標)WS-5:1942
  Symcool(登録商標)WS-23:1287
 また、図6に得られたクロマトグラムを示す。
 本試験に使用したカラム:HP-5MS(95%ジメチルポリシロキサン/5%フェニル-メチルポリシロキサン)は低極性カラムであり、RIの数字が低いほど化合物は揮発しやすく、逆に、RIの数字が高いほど化合物は揮発しにくいと考えられる。図6の結果より、今回測定したメンソールおよび各冷感剤の中でCOOLACT370(登録商標)が最も揮発しにくいことが示唆される。
<官能評価>
 (非燃焼加熱型喫煙物品(実施例1、比較例1及び2)の調製)
 公知の抄造法に基づき、たばこ葉から製造したたばこスティック(たばこ充填物に対するグリセリンの含有量:7.5重量%)を準備した。
 また、エタノール80gに対して、メチルメントール誘導体(N-(2-ヒドロキシ-2-フェニルエチル)-2-イソプロピル-5,5-ジメチルシクロヘキサン-1-カルボキサミド、COOLACT(登録商標)370、高砂香料工業株式会社製)20g、冷感香料成分としてメンソール(高砂香料株式会社社製)80g、又はメチルメントール誘導体若しくはその塩以外の冷感剤として2-イソプロピル-N,2,3-トリメチルブチラミド(Symcool(登録商標)WS-23、シムライズ社製)20gをそれぞれ加え混合することにより、メチルメントール誘導体の溶液、メンソールの溶液、およびメチルメントール誘導体以外の冷感剤の溶液をそれぞれ得た。
 そして、準備した上記各たばこスティック中のたばこ充填物の全体に行き渡るように、上記のメチルメントール誘導体の溶液、メンソールの溶液、又はメチルメントール誘導体以外の冷感剤の溶液それぞれを、シリンジを用いて添加することにより、風味原料付香たばこ充填物(たばこ充填物と風味原料との合計)に対するメチルメントール誘導体の含有量が2000ppmである実施例1の冷感成分含有たばこスティック、風味原料付香たばこ充填物に対するメンソールの含有量が5000ppmである比較例1の冷感成分含有たばこスティック、及び風味原料付香たばこ充填物に対するメチルメントール誘導体以外の冷感剤の含有量が2000ppmである比較例2の冷感成分含有たばこスティックをそれぞれ得た。
 (非燃焼加熱型喫煙物品(実施例2)の調製)
 メチルメントール誘導体(上述のCOOLACT(登録商標) 370)0.5g、ヒドロキシプロピルセルロース(セルニーSSL、日本曹達株式会社製)1.5g、プロピレングリコール8.0gを混合し、担持剤(ヒドロキシプロピルセルロース)を含む風味原料を得た。得られた風味原料10.8mgを、たばこ充填物(たばこ葉を含む)260mgに対して注入することにより、風味原料付香たばこ充填物(たばこ充填物と風味原料との合計)に対するメチルメントール誘導体の含有量が2000ppmである実施例2の加熱型喫煙物品を調製した。得られた実施例2の冷感成分含有加熱型喫煙物品における各成分の含有量は、たばこ葉96.0質量%、メチルメントール誘導体0.2質量%、ヒドロキシプロピルセルロース0.6質量%、プロピレングリコール3.2質量%となる。
 (燃焼型喫煙物品(実施例3、比較例3及び4)の調製)
 たばこ葉から製造した燃焼型喫煙物品を準備した。
 また、上述の非燃焼加熱型喫煙物品(実施例1、比較例1及び2)の調製と同様のメンソールまたは各冷感剤を使用して、同様の手順により、メチルメントール誘導体の溶液、メンソールの溶液、およびメチルメントール誘導体以外の冷感剤の溶液をそれぞれ得た。
 そして、準備した上記各燃焼型喫煙物品中のたばこ充填物の全体に行き渡るように、上記のメチルメントール誘導体の溶液、メンソールの溶液、又はメチルメントール誘導体以外の冷感剤の溶液を、シリンジを用いて添加することにより、風味原料付香たばこ充填物(たばこ充填物と風味原料との合計)に対するメチルメントール誘導体の含有量が2000ppmである実施例3の冷感成分含有燃焼型喫煙物品、風味原料付香たばこ充填物に対するメンソールの含有量が5000ppmである比較例3の冷感成分含有燃焼型喫煙物品、及び風味原料付香たばこ充填物に対するメチルメントール誘導体以外の冷感剤の含有量が2000ppmである比較例4の冷感成分含有燃焼型喫煙物品をそれぞれ得た。
 本発明者らが事前に予備検討したところ、上記のメチルメントール誘導体またはメチルメントール誘導体以外の冷感剤に比べて、メンソールは冷感強度が弱く、同程度の含有量では冷感強度を比較しにくいことがわかった。本官能評価では冷感強度を評価するため、冷感成分であるメチルメントール誘導体またはメチルメントール誘導体以外の冷感剤の含有量が2000ppmである上記実施例1~3又は比較例2若しくは4に対して、上記比較例1又は3では、冷感成分であるメンソールの含有量を5000ppmとすることで、冷感強度を比較しやすいように極力調整している。
 (蔵置前の喫煙物品の調製)
 上記のように調製した実施例1及び2並びに比較例1及び2の各非燃焼加熱型喫煙物品(製造後、25℃の条件下で5日以内のもの)(以下「蔵置前の非燃焼加熱型喫煙物品」という)を、図2に示す非燃焼外部加熱型喫煙システムに設置した。また、上記のように調製した実施例3並びに比較例3及び4の各燃焼型喫煙物品(製造後、25℃の条件下で5日以内のもの)(以下「蔵置前の燃焼型喫煙物品」という)を準備した。このように準備した各喫煙物品を用いて以下の各官能評価を行った。
 (1)冷感強度
 上記のようにして準備した実施例1及び2並びに比較例1及び2の蔵置前の各非燃焼加熱型喫煙物品、並びに実施例3並びに比較例3及び4の蔵置前の各燃焼型喫煙物品について、十分に訓練された5名のパネラーにより喫煙物品の冷感の評価を行った。本明細書において、「冷感」とは、爽やかな感覚(清涼感)や冷たい感覚(冷涼感)を意味する。
 各喫煙試験用巻の冷感の評価は、各パネラーが下記表1の6段階の基準により評価した。下記表1の基準においては、メンソール含有喫煙物品(非燃焼加熱型喫煙物品では比較例1、燃焼型喫煙物品では比較例3)と比較して同等であるものを3としている。評価者には、実施例1及び2並びに比較例2の評価時には比較例1が表1中の3となるよう、および実施例3及び比較例4の評価時には比較例3が表1中の3となるよう、事前に認識をすり合わせた。評価結果は5名のパネラーの平均値を算出することにより行い、平均値が小数第2位の値を有する場合は小数第2位を四捨五入することにより点数を算出した。評価結果を表2に示す。
 上述したように、今回の評価では、冷感強度を比較しやすいように、メンソール(比較例1および比較例3)の含有量が5000ppmである一方、メチルメントール誘導体(実施例1~3)またはメチルメントール誘導体以外の冷感剤(比較例2および4)の含有量は2000ppmに調整している。
 表2の結果より、非燃焼加熱型喫煙物品に関して、たばこスティックの形態(実施例1並びに比較例1及び2)においては、メチルメントール誘導体含有喫煙物品(実施例1)の冷感強度は、メンソール含有喫煙物品(比較例1)の冷感強度と同等であった。また、燃焼型喫煙物品(実施例3並びに比較例3及び4)においては、メチルメントール誘導体含有喫煙物品(実施例3)の冷感強度は、メンソール含有喫煙物品(比較例3)の冷感強度より高かった。
 そのため、メンソールの含有量をメチルメントール誘導体と同等の2000ppmに減量した場合は、冷感強度が不足すると考えられる。このことから、メチルメントール誘導体含有喫煙物品は、メンソール含有喫煙物品に比べて冷感強度が高いことが分かった。
 また、燃焼型喫煙物品および非燃焼加熱型喫煙物品によらず、メチルメントール誘導体含有喫煙物品(実施例1又は実施例3)は、メチルメントール誘導体以外の冷感剤含有喫煙物品(比較例2又は比較例4)に比べて同等以上の冷感強度であることがわかった。
 さらに、担持剤であるヒドロキシプロピルセルロースを添加したメチルメントール誘導体含有喫煙物品(実施例2)は、ヒドロキシプロピルセルロースを添加していないメチルメントール誘導体含有喫煙物品(実施例1)とほぼ同等の冷感強度であった。このことから、上記の官能評価結果で確認されたメチルメントール誘導体含有喫煙物品の特徴はヒドロキシプロピルセルロースの添加有無によらず発現することが確認できた。上記担持剤は、風味原料中に分散した香料や冷感成分を固定して被覆する性質を有する。そのため、上記担持剤の添加により、香料や冷感成分の揮散散逸を抑制し蔵置耐性を向上することに加えて、香料や冷感成分を物理的ダメージから保護する効果も期待できる。
(2)苦味
 上記のようにして準備した実施例1及び2並びに比較例1及び2の蔵置前の各非燃焼加熱型喫煙物品、並びに実施例3並びに比較例3及び4の蔵置前の各燃焼型喫煙物品について、十分に訓練された5名のパネラーにより喫煙物品の苦味の評価を行った。必要とされる冷感強度を実現する為に冷感成分を増量すると、冷感の付与と共に苦みも付与する事が知られている。したがって、冷感成分の苦味は弱い方が好ましい。
 各喫煙試験用巻の冷感の評価は、各パネラーが下記表3の4段階の基準により評価した。下記表3の基準においては、メンソール含有喫煙物品(非燃焼加熱型喫煙物品では比較例1、燃焼型喫煙物品では比較例3)と比較して同等であるものを2としている。評価者には、実施例1及び2並びに比較例2の評価時には比較例1が表3中の2となるよう、および実施例3及び比較例4の評価時には比較例3が表3中の2となるよう、各喫煙物品に応じて事前に認識をすり合わせた。評価結果は5名のパネラーの平均値を算出することにより行い、平均値が小数第2位の値を有する場合は小数第2位を四捨五入することにより点数を算出した。評価結果を表4に示す。
 表4の結果より、燃焼型喫煙物品および非燃焼加熱型喫煙物品によらず、メチルメントール誘導体含有喫煙物品(実施例1又は実施例3)およびメチルメントール誘導体以外の冷感剤含有喫煙物品(比較例2又は比較例4)は、メンソール含有喫煙物品(比較例1又は比較例3)に比べて苦味が弱く好ましいことがわかった。
 また、担持剤であるヒドロキシプロピルセルロースを添加したメチルメントール誘導体含有喫煙物品(実施例2)は、ヒドロキシプロピルセルロースを添加していない実施例1と同等の結果が得られた。このことから、上記の官能評価結果で確認されたメチルメントール誘導体の苦味が弱く好ましいという特徴はヒドロキシプロピルセルロースの添加有無によらず発現することが確認できた。上述のように、上記担持剤は、香料や冷感成分の揮散散逸を抑制し蔵置耐性を向上することに加えて、香料や冷感成分を物理的ダメージから保護する効果も期待できる。
(3)冷感(部位効果)
 上記のようにして準備した実施例1及び2並びに比較例1及び2の蔵置前の各非燃焼加熱型喫煙物品、並びに実施例3並びに比較例3及び4の蔵置前の各燃焼型喫煙物品について、十分に訓練された5名のパネラーにより喫煙物品の冷感の部位効果の評価を行った。部位への効果(部位効果)は、5人のパネラーが各実施例および比較例を評価した際、口腔内のどの部位に冷感を感じるかを、上あご、舌、頬、及び喉から複数を選択することで実施した。集計した結果を表5に示す。例えば、表5における「5」の表記は、5人のパネラーが特定の部位に冷感を感じたことを意味する。
 表5に示すように、燃焼型喫煙物品および非燃焼加熱型喫煙物品によらず、メチルメントール誘導体含有喫煙物品(実施例1又は実施例3)およびメチルメントール誘導体以外の冷感剤含有喫煙物品(比較例2又は比較例4)は、メンソール含有喫煙物品(比較例1又は比較例3)と比較して、舌に冷感を感じる評価者が少なかった。
 上述の舌への苦味に関する評価結果は、冷感を感じる部位の違いと関連がある可能性が示唆された。すなわち、舌に冷感を感じにくいと苦味も弱くなる可能性が考えられる。
 また、上記の複数選択の部位効果の評価と併せて、口腔内のどの部位に最も冷感を感じるかを、上あご、舌、頬、及び喉から1つのみ選択することで実施した。集計した結果を表6に示す。
 表6に示すように、燃焼型喫煙物品および非燃焼加熱型喫煙物品によらず、メチルメントール誘導体含有喫煙物品(実施例1又は実施例3)は、メンソール含有喫煙物品(比較例1又は比較例3)やメチルメントール誘導体以外の冷感剤含有喫煙物品(比較例2又は比較例4)と比較して、喉に最も冷感を感じる評価者が多かった。喉に冷感を感じる特性が高い冷感剤を使用することで、喫煙者は従来にない冷感を楽しむことができる。
 また、担持剤であるヒドロキシプロピルセルロースを添加したメチルメントール誘導体含有喫煙物品(実施例2)は、ヒドロキシプロピルセルロースを添加していない実施例1と同様に、喉に最も冷感を感じる評価者が多かった。このことから、上記の官能評価結果で確認されたメチルメントール誘導体の喉に冷感を感じるという特徴はヒドロキシプロピルセルロースの添加有無によらず発現することが確認できた。上述のように、上記担持剤は、香料や冷感成分の揮散散逸を抑制し蔵置耐性を向上することに加えて、香料や冷感成分を物理的ダメージから保護する効果も期待できる。
 (4)蔵置耐性
 上記のように調製した実施例1及び2並びに比較例1及び2の蔵置前の各非燃焼加熱型喫煙物品を、30℃の条件下で5日間、大気開放条件にて蔵置した。そして、蔵置後の各非燃焼加熱型喫煙物品を、図2に示す非燃焼外部加熱型喫煙システムに設置した。
 また、上記のように調製した蔵置前の実施例3並びに比較例3及び4の各燃焼型喫煙物品を、30℃の条件下で5日間、大気開放条件にて蔵置した。
 通常の製品はメンソール等の揮散性を抑えるために、ポリプロピレンフィルム等で密閉に近い条件で保存されている。一方、上記の30℃の条件下において大気開放条件で蔵置することは、それに比べてより過酷な保管条件であると言える。
 このようにして準備した蔵置後の各喫煙物品について、上記「(1)冷感強度」に記載の手順及び評価基準に基づいて、喫煙物品の冷感の評価を行った。評価結果を表7に示す。表7において「蔵置後」と示した列が、蔵置後の各喫煙物品の評価結果である。一方、表7においては「蔵置前」と示した列に、上記表2の蔵置前の各喫煙物品の評価結果も併せて示す。
 表7に示すように、燃焼型喫煙物品および非燃焼加熱型喫煙物品によらず、メンソール含有喫煙物品(比較例1および比較例3)およびメチルメントール誘導体以外の冷感剤含有喫煙物品(比較例2および比較例4)は、蔵置前の冷感強度に比べて、蔵置後の冷感強度が下がった。一方、メチルメントール誘導体含有喫煙物品(実施例1および実施例3)は、蔵置前の冷感強度に比べて、蔵置後の冷感強度は同等以上となった。
 また、担持剤であるヒドロキシプロピルセルロースを添加したメチルメントール誘導体含有喫煙物品(実施例2)は、ヒドロキシプロピルセルロースを添加していない実施例1と同様に、蔵置前の冷感強度に比べて、蔵置後の冷感強度が同等以上となった。このことから、上記の官能評価結果で確認されたメチルメントール誘導体含有喫煙物品の蔵置前の冷感強度に比べて蔵置後の冷感強度が同等以上になるという特徴はヒドロキシプロピルセルロースの添加有無によらず発現することが確認できた。上述のように、上記担持剤は、香料や冷感成分の揮散散逸を抑制し蔵置耐性を向上することに加えて、香料や冷感成分を物理的ダメージから保護する効果も期待できる。
 理論に縛られるものではないが、蔵置前に比べて蔵置後にメチルメントール誘導体含有喫煙物品のみ冷感強度が同等以上になった理由は、以下のように推察できる。蔵置中にたばこに含まれる水分やたばこ由来の揮発成分が揮発して減少し、一方で、メチルメントール誘導体は揮発せず残存したと推察される。そのため、全体的にメチルメントール誘導体の冷感をより感じやすくなったと推察される。
<GC測定における蔵置耐性の評価>
(1)開放系でのたばこ充填物中のメンソールおよび各冷感剤の測定
 メンソールおよび各冷感剤(上述のCOOLACT(登録商標)370、Symcool(登録商標)WS-23)それぞれにエタノールを加えて溶解させ、各溶液を調製した。たばこ重量に対するメンソール又は各冷感剤の含有量が5000ppmとなるように、上記のようにして得られた各溶液を、マイクロシリンジ(伊藤製作所製、イトーマイクロシリンジ、MS-50)を用いて燃焼型喫煙物品のたばこ充填物部に添加し、添加した直後のサンプルを「蔵置前シガレットサンプル」とした。また、たばこ重量に対するメンソール又は各冷感剤の含有量が5000ppmとなるように、上記のようにして得られた各溶液を、上記マイクロシリンジを用いて非燃焼加熱型喫煙物品(たばこ充填物部及びフィルター部を含むたばこスティック)のたばこ充填物部に添加し、添加した直後のサンプルを「蔵置前たばこスティックサンプル」とした。そして、メンソール又は各冷感剤を注入したシガレットおよびたばこスティックをトレー(アズワン製、ディスポトレー DT-1)に乗せ、30℃に設定したインキュベーター(SIBATA製、SCI-13 COMPACT INCUBATOR)内で5日間蔵置し、それぞれ「蔵置後シガレットサンプル」および「蔵置後たばこスティックサンプル」とした。
 また、内部標準物質としてキノリン1.0gを精秤し、メタノールで1Lにメスアップしたものを抽出溶媒とした。
 そして、上記のようにして得られた蔵置前シガレットサンプル、蔵置前たばこスティックサンプル、蔵置後シガレットサンプル、および蔵置後たばこスティックサンプルそれぞれについて、下記の処理を実施した。
 ・各サンプルについて、たばこ充填物部を取り出し、スクリュー管に入れ、上記のように調製した抽出溶媒を10mL加えた。その後、各スクリュー管を200rpmで20分間振とうし、一晩静置後、再度200rpmで20分間振とうすることにより、たばこ充填物部についての各抽出液サンプルを得た。得られた各抽出液サンプルに関して、蔵置前シガレットサンプル、蔵置前たばこスティックサンプル、蔵置後シガレットサンプル、および蔵置後たばこスティックサンプルに対応させて、それぞれ「蔵置前シガレット抽出液サンプル」、「蔵置前たばこスティック抽出液サンプル」、「蔵置後シガレット抽出液サンプル」、および「蔵置後たばこスティック抽出液サンプル」とした。
 上記のようにして得られた各抽出液サンプルをシリンジ(テルモ株式会社製、SS-02SZ、25mL)で採取し、フィルター(Agilent Technologies製、Prem Syringe Filter、RC:0.45μm)で濾過し、濾過後に得られた液体を各分析用抽出液サンプル(それぞれ「蔵置前シガレット分析用抽出液サンプル」、「蔵置前たばこスティック分析用抽出液サンプル」、「蔵置後シガレット分析用抽出液サンプル」、および「蔵置後たばこスティック分析用抽出液サンプル」)とした。
 以下に示す各冷感剤のターゲットイオン及びクオリファイアイオンを選定した。また内部標準物質として使用するキノリンについてもターゲットイオン及びクオリファイアイオンを選定した。
・メンソール(ターゲットイオン: m/z=95.1、クオリファイアイオン: m/z=71.0, 81.1)
・Symcool(登録商標)WS-23 (ターゲットイオン: m/z=114.0、クオリファイアイオン: m/z=57.0, 102.0)
・COOLACT(登録商標)370 (ターゲットイオン: m/z=211.2、クオリファイアイオン: m/z=97.0, 168.1)
・キノリン (ターゲットイオン: m/z=129.1、クオリファイアイオン: m/z=76.0, 102.0)
 そして、上記のように得た各分析用抽出液サンプルについて、以下の条件でGC/MS分析を行った。
(測定装置・条件)
装置:Agilent Technologies製
カラム:HP-5MS(Agilent Technologies製)、内径0.25mm×長さ30m、膜厚0.25μm
注入量:1μl
注入モード:スプリット(10:1)
注入口温度:270℃
セプタムパージ流量:5mL/分
キャリアガス:ヘリウム(He)
カラム流量:1 ml/分(定流量モード)
オーブン:40℃(3分)―10℃/分―280℃(10分)
 MS条件
溶媒待ち時間:4分
イオン化法:電子衝撃イオン化法(EI法)、70eV
イオン源温度:230℃
四重極温度:150℃
測定モード:SIM
トランスファーライン温度:280 ℃
 各分析用抽出液サンプルに関して得られたクロマトグラムから、メンソール又は各冷感剤のエリア面積及び内部標準物質のエリア面積を用いて、メンソール又は各冷感剤における内部標準物質比(内標比)を以下の計算式で算出した。
 内標比=メンソール又は冷感剤のエリア面積/内部標準物質のエリア面積
 上記で得られた内標比を用いて、以下の計算式に基づいて、メンソール又は各冷感剤をシガレット又はたばこスティックに添加した際の残存率を有効数字3桁で算出した。シガレット(燃焼型喫煙物品)に関する結果を表8に、たばこスティック(非燃焼加熱型喫煙物品)に関する結果を表9にそれぞれ示す。
 残存率=(蔵置後の分析用抽出液サンプルのメンソール又は各冷感剤の内標比)/(蔵置前の分析用抽出液サンプルのメンソール又は各冷感剤の内標比) ×100
 表8及び9の結果より、燃焼型喫煙物品および非燃焼加熱型喫煙物品によらず、メンソール及びメチルメントール誘導体以外の冷感剤(Symcool(登録商標)WS-23)は、蔵置前より蔵置後にたばこ中に含まれる量が減少していることがわかった。一方、メチルメントール誘導体(COOLACT(登録商標)370)は、蔵置前後でたばこ中に含まれる量がほぼ変わらないことがわかった。
 このことから、燃焼型喫煙物品および非燃焼加熱型喫煙物品によらず、メンソール含有喫煙物品およびメチルメントール誘導体以外の冷感剤含有喫煙物品に比べて、メチルメントール誘導体含有喫煙物品は蔵置耐性に優れることが示唆された。
(2)閉鎖系でのたばこ充填物およびフィルター中のメンソールおよび各冷感剤の測定
 メチルメントール誘導体(上述のCOOLACT(登録商標)370)にメタノールを加えて溶解させ、溶液を調製した。たばこ重量に対するメチルメントール誘導体の含有量が2500ppm、5000ppm、又は10000ppmとなるように、上記のようにして得られた溶液を、上述のマイクロシリンジを用いて非加熱型喫煙物品(たばこ充填物部及びフィルター部を含むたばこスティック)のたばこ充填物部に添加し、添加した直後のサンプルを「蔵置前たばこスティックサンプル」とした。また、上記メチルメントール誘導体を注入したたばこスティックをラミージップ(生産日本社製、AL-5)に入れ、30℃に設定したインキュベーター(SIBATA製、SCI-13 COMPACT INCUBATOR)内で5日間蔵置し、「蔵置後たばこスティックサンプル」とした。
 そして、上記のようにして得られた蔵置前たばこスティックサンプル又は蔵置後たばこスティックサンプルについて、下記の処理を実施した。
 ・各サンプルについて、たばこ充填物部とフィルター部とを取り出し、それぞれを別のスクリュー管に入れ、メタノールを10mL加えた。その後、各スクリュー管を200rpmで20分間振とうし、一晩静置後、再度200rpmで20分間振とうすることにより、たばこ充填物部及びフィルター部それぞれについての各抽出液サンプルを得た。得られた各抽出液サンプルに関して、蔵置前たばこスティックサンプルおよび蔵置後たばこスティックサンプルに対応させて、それぞれ「蔵置前たばこスティック抽出液サンプル」および「蔵置後たばこスティック抽出液サンプル」とした。
 上記のようにして得られた各抽出液サンプルをシリンジ(テルモ株式会社製、SS-02SZ、25mL)で採取し、フィルター(Agilent Technologies製、Prem Syringe Filter、RC:0.45μm)で濾過し、濾過後に得られた液体を各分析用抽出液サンプル(それぞれ「蔵置前たばこスティック分析用抽出液サンプル」および「蔵置後たばこスティック分析用抽出液サンプル」)とした。
 そして、上記のようにして得た各分析用抽出液サンプルについて、以下の条件でGC/MS分析を行った。
(測定装置・条件)
ガスクロマトグラフィー(GC/MS)
装置:Agilent Technologies製
カラム:HP-5MS(Agilent Technologies製)、内径0.25mm×長さ30m、膜厚0.25μm
注入量:1μl
注入モード:スプリット(10:1)
注入口温度:270℃
セプタムパージ流量:5mL/分
キャリアガス:ヘリウム(He)
カラム流量:1ml/分(定流量モード)
オーブン:40℃(3分)―4℃/分―280℃(20分)
 MS条件
溶媒待ち時間:4分
イオン化法:電子衝撃イオン化法(EI法)、70eV
イオン源温度:230℃
四重極温度:150℃
測定モード:Scan
MSスキャン範囲:m/z26~450
スレッショルド:50
サンプリングレート:2トランスファーライン温度:280 ℃
 図7~9は、メチルメントール誘導体(COOLACT(登録商標)370)を、たばこスティックに対して、それぞれ2500ppm、5000ppm、10000ppm添加した蔵置前たばこスティックサンプルのGC/MSによるトータルイオンクロマトグラムである。図7~9において、上部がたばこ充填物部の抽出液、下部がフィルター部の抽出液のトータルイオンクロマトグラムである。図7におけるRT(保持時間):53.05付近、図8及び9におけるRT:53.07付近が上記メチルメントール誘導体のピークである。
 図7~9において、たばこ充填物部の抽出液からは上記メチルメントール誘導体に由来するピークが検出されたが、フィルター部の抽出液からは上記メチルメントール誘導体に由来するピークは検出されなかった。このことから、添加直後(蔵置前)において上記メチルメントール誘導体はたばこ充填物部からフィルター部へと移行していないことがわかった。
 図10~12は、メチルメントール誘導体(COOLACT(登録商標)370)を、たばこスティックに対して、それぞれ2500ppm、5000ppm、10000ppm添加した蔵置後たばこスティックサンプルのGC/MSによるトータルイオンクロマトグラムである。図10~12において、上部がたばこ充填物部の抽出液、下部がフィルター部の抽出液のトータルイオンクロマトグラムである。図10におけるRT:53.00付近、図11におけるRT:53.03付近、図12におけるRT:53.06付近が上記メチルメントール誘導体のピークである。
 図10~12において、たばこ充填物部の抽出液からは上記メチルメントール誘導体に由来するピークが検出されたが、フィルター部の抽出液からは上記メチルメントール誘導体に由来するピークは検出されなかった。このことから、蔵置前と同様に、蔵置後においても上記メチルメントール誘導体はたばこ充填物部からフィルター部へと移行していないことがわかった。
 以上より、メチルメントール誘導体は本来添加した部位にとどまり、メチルメントール誘導体含有喫煙物品は蔵置後も蔵置前と同様の冷感強度を期待できることが示唆された。
 以上より、本発明の保持指標(RI)が1300以上である冷感剤(A)を含む風味原料付香構成部材は、メンソールに比べて冷感強度に優れることが分かった。また、当該風味原料付香構成部材は、メンソールに比べて苦味が少ない特徴を有することがわかった。
 また、上記風味原料付香構成部材は、メンソールや上記冷感剤(A)以外の冷感剤を含む風味原料付香構成部材に比べて、蔵置耐性に優れることがわかった。
 10 加熱デバイス
 11 ボディ
 12 ヒーター
 13 金属管
 14 電池ユニット
 15 制御ユニット
 16 凹部
 17 通気穴
 
 20 非燃焼加熱型喫煙物品
 20A 喫煙用セグメント
 20B 連結部
 20C フィルター部
 
 21 喫煙用組成物シートまたはこれに由来する材料
 22 ラッパー
 23 紙管
 24 通気孔部
 25 第1セグメント
 25a 第1充填層
 25b インナープラグラッパー
 26 第2セグメント
 26a 第2充填層
 26b インナープラグラッパー
 27 アウタープラグラッパー
 28 ラッパー
 
 30 非燃焼加熱型喫煙物品
 30A 本体
 30B エアロゾル源保持部
 30C 添加成分保持部
 31 電源
 32 制御部
 33 吸引センサ
 34 貯留部
 35 供給部
 36 負荷
 37 残量センサ
 38 たばこ充填材

Claims (26)

  1.  喫煙物品の構成部材、及び
     固定相が95%ジメチルポリシロキサン/5%フェニル-メチルポリシロキサンであるカラムを用いて、質量分析計付きガスクロマトグラフィー(GC/MS)にて分析して得られるクロマトグラムにおいて、保持指標(RI)が1300以上である冷感剤(A)を含む風味原料
    を含み、前記風味原料が前記喫煙物品の構成部材に付香されている、風味原料付香構成部材。
  2.  前記冷感剤(A)の保持指標(RI)が2000以上である、請求項1に記載の風味原料付香構成部材。
  3.  前記冷感剤(A)の保持指標(RI)が2400以上2600以下である、請求項1又は2に記載の風味原料付香構成部材。
  4.  前記冷感剤(A)が、下記一般式(1):
    {式(1)中、*印は不斉炭素原子であり、Xは水素原子又は置換基を表し、Yは置換基を有していてもよい炭素数6~20のアリール基である}
    で表されるメチルメントール誘導体又はその塩を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の風味原料付香構成部材。
  5.  前記風味原料付香構成部材に対する前記冷感剤(A)の含有量が、1ppm以上である請求項1~4のいずれか1項に記載の風味原料付香構成部材。
  6.  前記風味原料が、香料、冷感成分、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の風味原料付香構成部材。
  7.  前記冷感成分が、冷感剤、冷感香料成分、又はこれらの組み合わせを含む請求項6に記載の風味原料付香構成部材。
  8.  前記冷感剤が、前記冷感剤(A)と前記冷感剤(A)以外の冷感剤とを含む、請求項7に記載の風味原料付香構成部材。
  9.  前記冷感香料成分が、メンソール、メントン、ペパーミントオイル、又はこれらの混合物を含む、請求項7又は8に記載の風味原料付香構成部材。
  10.  前記風味原料付香構成部材に対する前記冷感香料成分の含有量が、0.0001~99重量%である、請求項7~9の何れか1項に記載の風味原料付香構成部材。
  11.  前記香料が、天然香料、合成香料、又はこれらの混合物を含む、請求項6~10の何れか1項に記載の風味原料付香構成部材。
  12.  前記風味原料が担持剤を更に含む、請求項1~11の何れか1項に記載の風味原料付香構成部材。
  13.  前記担持剤が、糖質、セルロース誘導体、非パルプ繊維、脂質、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、又はこれらの混合物を含む、請求項12に記載の風味原料付香構成部材。
  14.  前記風味原料が乳化剤を更に含む、請求項1~13の何れか1項に記載の風味原料付香構成部材。
  15.  前記風味原料が、液状、半固体状、又は固体状である、請求項1~14の何れか1項に記載の風味原料付香構成部材。
  16.  前記風味原料付香構成部材がエアロゾル源を更に含む、請求項1~15の何れか1項に記載の風味原料付香構成部材。
  17.  前記エアロゾル源が、多価アルコール、トリエチルシトレート、トリアセチン、又はこれらの混合物を含む、請求項16に記載の風味原料付香構成部材。
  18.  前記喫煙物品の構成部材がニコチン源を含む、請求項1~17の何れか1項に記載の風味原料付香構成部材。
  19.  前記風味原料付香構成部材が吸着剤を更に含む、請求項1~18の何れか1項に記載の風味原料付香構成部材。
  20.  前記喫煙物品の構成部材が、たばこ充填物、フィルター、管、巻紙、チップペーパー、プラグ、パウチ、又はリキッドである、請求項1~19の何れか1項に記載の風味原料付香構成部材。
  21.  前記喫煙物品の構成部材が不織布である請求項1~20の何れか1項に記載の風味原料付香構成部材。
  22.  請求項1~21の何れか1項に記載の風味原料付香構成部材を含む、喫煙物品。
  23.  加熱型喫煙物品である、請求項22に記載の喫煙物品。
  24.  燃焼型喫煙物品である、請求項22に記載の喫煙物品。
  25.  無煙喫煙物品である、請求項22に記載の喫煙物品。
  26.  電子たばこである、請求項22に記載の喫煙物品。
     
PCT/JP2022/047880 2022-12-26 風味原料付香構成部材及び喫煙物品 WO2024142149A1 (ja)

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