WO2024095927A1 - 感光性樹脂組成物、並びにこれを用いた硬化レリーフパターンの製造方法及びポリイミド膜の製造方法 - Google Patents

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Abstract

本開示によれば、高い銅密着性が得られ、高温保存試験後の銅層と樹脂層との界面における銅ボイドの発生を抑制し、かつ、b-HAST試験における銅マイグレーションが少ない感光性樹脂組成物が提供される。。本開示の感光性樹脂組成物は、以下の成分:(A)ポリイミド前駆体又は/及びポリイミド樹脂と、(B)テトラゾール化合物と、(C)光重合開始剤と、(D)溶剤とを含む。(B)テトラゾール化合物は、pKaが1.3~4.1であるか、一般式(1)又は(2)で表されるか、あるいは、極性表面積(tPSA)が81~200である。

Description

感光性樹脂組成物、並びにこれを用いた硬化レリーフパターンの製造方法及びポリイミド膜の製造方法
 本開示は、感光性樹脂組成物、並びにこれを用いた硬化レリーフパターンの製造方法、及びポリイミド膜の製造方法等に関する。本国際出願は、2022年10月31日に出願した日本国特許出願第2022-174360号に基づく優先権を主張するものであり、当該日本国特許出願の全内容を本国際出願に援用する。
 従来、電子部品の絶縁材料、及び半導体装置のパッシベーション膜、表面保護膜、層間絶縁膜等には、優れた耐熱性、電気特性及び機械特性を併せ持つポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、フェノール樹脂等が用いられている。これらの樹脂の中でも、感光性樹脂組成物の形態で提供されるものは、該組成物の塗布、露光、現像、及びキュアによる熱イミド化処理によって、耐熱性のレリーフパターン皮膜を容易に形成することができる。このような感光性樹脂組成物は、従来の非感光型材料に比べて、大幅な工程短縮を可能にするという特徴を有している。
 他方、近年は、集積度及び演算機能の向上、並びにチップサイズの矮小化の観点から、半導体装置のプリント配線基板への実装方法(パッケージング構造)も変化している。従来の金属ピンと鉛-スズ共晶ハンダによる実装方法から、より高密度実装が可能なBGA(ボールグリッドアレイ)、CSP(チップサイズパッケージング)等のように、ポリイミド被膜がハンダバンプに直接接触する構造が用いられるようになってきている。さらには、FO(ファンアウト)のように、半導体チップの表面に、その半導体チップの面積より大きな面積をもつ再配線層を複数層有する構造も提案されている(特許文献1参照)。
 半導体装置の配線には銅がよく用いられるが、大きな面積を持つパッケージング構造では、異種材料の熱膨張係数の違いにより発生する応力によって、銅と層間絶縁材料の剥離に伴う電気特性の低下が特に問題になる。そのため、層間絶縁膜として用いられる材料には、銅との高い密着性が求められる。
 さらに、近年では自動車用途または携帯電話用途において半導体装置の応用が目覚ましく、この分野での半導体装置は高い信頼性を要求されており、高温環境下における信頼性試験が行われている。
米国特許第10658199号明細書 特開2012-194520号公報
 しかしながら、従来、上記信頼性試験の中でも高温保存試験において、試験後、再配線された銅層と樹脂層との界面でマイグレーションによるボイド(以下、本開示において「銅ボイド」ともいう。)が発生することがあった。銅層と樹脂層との界面で銅ボイドが発生すると、両者の密着性が低下してしまう。また、樹脂層へ銅がマイグレーション(以下、本開示において「銅マイグレーション」ともいう。)すると、特に微細配線化された半導体装置では配線間が短絡する原因となり、絶縁膜としての性能を十分発揮できないため、高温高湿下での信頼性試験(b-HAST:Biased Hughly Accelerated Stress Test)にて銅マイグレーションが少なく、長時間短絡しないポリイミド膜が望まれる。
 本開示は、高い銅密着性が得られ、高温保存(high temperature storage)試験後、銅層と樹脂層との界面における銅ボイドの発生を抑制し、かつ、b-HAST試験における銅マイグレーションが少ない感光性樹脂組成物を提供することを目的の一つとする。b-HAST試験における銅マイグレーションの抑制は、長時間短絡しにくいポリイミド膜の形成につながる。また、本開示の感光性樹脂組成物を用いた硬化レリーフパターンの形成方法、及びポリイミド膜の製造方法を提供することも目的の一つである。
 本発明者らは、感光性樹脂組成物中に、特定のテトラゾール化合物を添加することによって、上記課題を解決することを見出した。本開示の実施形態の例を以下の項目[1]~[18]に列記する。
[1]
 以下の成分:
(A)ポリイミド前駆体及び/又はポリイミド樹脂と、
(B)テトラゾール化合物と、
(C)光重合開始剤と、
(D)溶剤と
を含む、感光性樹脂組成物であって、
 上記(B)テトラゾール化合物のpKaが1.3~4.1である、感光性樹脂組成物。
[2]
 以下の成分:
(A)ポリイミド前駆体及び/又はポリイミド樹脂と、
(B)テトラゾール化合物と、
(C)光重合開始剤と、
(D)溶剤と
を含む、感光性樹脂組成物であって、
 上記(B)テトラゾール化合物が、下記一般式(1):
{式(1)中、Rは、水素原子、又は炭素数1~10のアルキル基及び炭素数6~10のアリール基からなる群から選択される1価の有機基である。上記アルキル基及び上記アリール基の水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシシリル基、及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも一つの置換基により置換されていても、置換されていなくてもよい。}
又は下記一般式(2):
{式(2)中、Rは、水素原子、又は炭素数1~10のアルキル基及び炭素数6~10のアリール基からなる群から選択される1価の有機基である。Rは炭素数1~10のアルキレン基である。上記アルキル基、上記アリール基及び上記アルキレン基の水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシシリル基、及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも一つの置換基により置換されていても、置換されていなくてもよい。}
で表される化合物を含む、感光性樹脂組成物。
[3]
 以下の成分:
(A)ポリイミド前駆体及び/又はポリイミド樹脂と、
(B)テトラゾール化合物と、
(C)光重合開始剤と、
(D)溶剤と
を含む、感光性樹脂組成物であって、
 上記(B)テトラゾール化合物の極性表面積(tPSA)が81~200である、感光性樹脂組成物。
[4]
 上記(A)成分100質量部に対する上記(B)成分の含有量が0.01~10質量部である、項目1~3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
[5]
 上記(B)テトラゾール化合物が、下記一般式(3)で表される化合物を含む、項目1~4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
{式(3)中、Rは、水素原子、又は炭素数1~10のアルキル基及び炭素数6~10のアリール基からなる群から選択される1価の有機基である。上記アルキル基及び上記アリール基の水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシシリル基、及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも一つの置換基により置換されていても、置換されていなくてもよい。}
[6]
 上記(B)テトラゾール化合物が、下記式で表される化合物を含む、項目1~5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
[7]
 (E)ラジカル重合性化合物を更に含む、項目1~6のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
[8]
 上記(A)成分100質量部に対する上記(E)成分の含有量が20~80質量部である、項目7に記載の感光性樹脂組成物。
[9]
 上記感光性樹脂組成物が上記ポリイミド前駆体を含み、上記ポリイミド前駆体が、下記一般式(4):
{式(4)中、Xは四価の有機基であり、Yは二価の有機基であり、nは2~150の整数であり、そしてR11及びR12はそれぞれ独立に、水素原子、又は一価の有機基である。}
 で表される、かつ/又は
 上記感光性樹脂組成物が上記ポリイミド樹脂を含み、上記ポリイミド樹脂が、下記一般式(4’):
{式(4’)中、Xは四価の有機基であり、Yは二価の有機基であり、nは1~150の整数である。}
で表される構造単位を有する、項目1~8のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
[10]
 上記一般式(4)において、R11及びR12の少なくとも一方が、下記一般式(5):
{式(5)中、L、L及びLは、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1~3の一価の有機基であり、そしてmは、2~10の整数である。}
で表される構造単位を有する、項目9に記載の感光性樹脂組成物。
[11]
 上記一般式(4’)のXが、下記一般式(6)~(14)で表される構造から選択される少なくとも一つであり、又は、上記一般式(4’)のYが、下記一般式(15)~(23)で表される構造から選択される少なくとも一つである、項目9又は10に記載の感光性樹脂組成物。
[12]
 (F)熱架橋剤を更に含む、項目1~11のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
[13]
 (K)接着助剤を更に含む、項目1~12のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
[14]
 上記感光性樹脂組成物は、表面保護膜、層間絶縁膜、再配線用絶縁膜、フリップチップ装置用保護膜、又はバンプ構造を有する半導体装置の保護膜を形成するための感光性樹脂組成物である、項目1~13のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
[15]
 以下の工程:
 (1)項目1~14のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布して、感光性樹脂層を上記基板上に形成する工程と、
 (2)上記感光性樹脂層を露光する工程と、
 (3)上記露光後の感光性樹脂層を現像して、レリーフパターンを形成する工程と、
 (4)上記レリーフパターンを加熱処理して、硬化レリーフパターンを形成する工程と
を含む、硬化レリーフパターンの製造方法。
[16]
 上記工程(4)の加熱処理は、350℃以下の加熱処理である、項目15に記載の硬化レリーフパターンの製造方法。
[17]
 項目1~14のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物を含む、硬化膜。
[18]
 項目1~14のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を硬化することを含む、ポリイミド膜の製造方法。
 本開示によれば、高い銅密着性が得られ、高温保存試験後、銅層と樹脂層との界面における銅ボイドの発生を抑制し、かつ、b-HAST試験における銅マイグレーションが少ない感光性樹脂組成物を提供することができる。また、該感光性樹脂組成物を用いた硬化レリーフパターンの製造方法、及びポリイミド膜の製造方法を提供することができる。
 以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。本開示は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。なお、本開示を通じ、一般式において同一符号で表されている構造は、分子中に複数存在する場合に、互いに同一であるか、又は異なっていてもよい。また、本開示の各数値範囲における上限値および下限値は、任意に組み合わせて任意の数値範囲を構成することができる。
<感光性樹脂組成物>
 本開示の感光性樹脂組成物は、(A)ポリイミド前駆体および/又はポリイミド樹脂と、(B)テトラゾール化合物と、(C)光重合開始剤と、(D)溶剤とを含む。
(A)ポリイミド前駆体
 (A)ポリイミド前駆体は、感光性樹脂組成物に含まれる樹脂成分であり、加熱環化処理を施すことによってポリイミドに変換される。(A)ポリイミド前駆体は、感光性樹脂組成物に使用することのできる樹脂であればその構造は制限されないが、アルカリ可溶性でないことが好ましい。ポリイミド前駆体がアルカリ可溶性でないことで、高い耐薬品性を得ることができる。
 ポリイミド前駆体は、下記一般式(4):
{式(4)中、Xは四価の有機基であり、Yは二価の有機基であり、nは2~150の整数であり、そしてR11及びR12はそれぞれ独立に、水素原子、又は一価の有機基である。}で表される構造を有するポリアミドが好ましい。
 一般式(4)において、R11及びR12の少なくとも一方は、下記一般式(5):
{式(5)中、L、L及びLは、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1~3の一価の有機基であり、そしてmは、2~10の整数である。}で表される構造単位を有することが好ましい。
 一般式(4)におけるR11及びR12が水素原子である割合は、R11及びR12全体のモル数を基準として10%以下であることがより好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることが更に好ましい。また、一般式(4)におけるR11及びR12が上記一般式(5)で表される一価の有機基である割合は、R11及びR12全体のモル数を基準として70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。水素原子の割合、及び一般式(5)の有機基の割合が上記範囲にあることは、感光特性と保存安定性の観点から好ましい。
 一般式(4)におけるnは、2~150の整数であれば限定されないが、感光性樹脂組成物の感光特性及び機械特性の観点から、3~100の整数が好ましく、5~70の整数がより好ましい。
 一般式(4)中、Xで表される四価の有機基は、耐熱性と感光特性とを両立するという観点で、好ましくは炭素数6~40の有機基であり、より好ましくは、-COOR11基及び-COOR12基と-CONH-基とが互いにオルト位置にある芳香族基、又は脂環式脂肪族基である。Xで表される四価の有機基として、具体的には、芳香族環を含有する炭素原子数6~40の有機基、例えば、下記一般式(24):
{式中、R6は水素原子、フッ素原子、C1~C10の一価の炭化水素基、及びC1~C10の一価の含フッ素炭化水素基から成る群から選ばれる少なくとも1つであり、lは0~2から選ばれる整数であり、mは0~3から選ばれる整数であり、そしてnは0~4から選ばれる整数である。}で表される構造を有する基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、Xの構造は1種でも2種以上の組み合わせでもよい。上記式(24)で表される構造を有するX基は、耐熱性と感光特性とを両立するという観点で特に好ましい。
 X基としては、上記式(24)で表される構造のなかでも特に、下式:
{式中、R6は、フッ素原子、炭素数1~10の一価の炭化水素基、及び炭素数1~10の一価の含フッ素炭化水素基から成る群から選ばれる少なくとも1つであり、そしてmは0~3から選ばれる整数である。}で表される四価の有機基は、低温加熱時のイミド化率、脱ガス性、銅密着性、耐薬品性などの観点から好ましい。
 上記一般式(4)中、Yで表される二価の有機基は、耐熱性と感光特性とを両立するという観点で、好ましくは炭素数6~40の芳香族基であり、例えば、下記式(25):
{式中、R6は水素原子、フッ素原子、C1~C10の一価の炭化水素基、及びC1~C10の一価の含フッ素炭化水素基から成る群から選ばれる少なくとも1つであり、そしてnは0~4から選ばれる整数である。}で表される構造が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、Y1の構造は1種でも2種以上の組み合わせでもよい。上記式(25)で表される構造を有するY1基は、耐熱性及び感光特性を両立するという観点で特に好ましい。
 Y基としては、上記式(25)で表される構造のなかでも特に、下式:
{式中、R6は、フッ素原子、炭素数1~10の一価の炭化水素基、及び炭素数1~10の一価の含フッ素炭化水素基から成る群から選ばれる少なくとも1つであり、そしてnは0~4から選ばれる整数である。}で表される二価の基は、低温加熱時のイミド化率、脱ガス性、銅密着性、耐薬品性などの観点から好ましい。
 上記一般式(5)におけるL、L及びLの炭素数1~3の一価の有機基としては、例えば、炭素数1~3の炭化水素基、好ましくはアルキル基である。Lは、水素原子又はメチル基であることが好ましく、L及びLは、感光特性の観点から水素原子であることが好ましい。また、m1は、感光特性の観点から2以上10以下の整数であり、好ましくは2以上4以下の整数である。
 一実施形態において、(A)ポリイミド前駆体は、下記一般式(26):
{式中、R11、R12、及びnは、上記に定義したものである。}
で表される構造単位を有するポリイミド前駆体であることが好ましい。
 一般式(26)において、R11及びR12の少なくとも一方は、上記一般式(5)で表される一価の有機基であることがより好ましい。(A)ポリイミド前駆体が、一般式(6)で表されるポリイミド前駆体を含むことで、特に耐薬品性が高くなる。
 一実施形態において、(A)ポリイミド前駆体は、下記一般式(27):
{式中、R11、R12、及びnは、上記に定義したものである。}
で表される構造単位を有するポリイミド前駆体であることが熱物性の観点から好ましい。
 一般式(27)において、R11及びR12の少なくとも一方は、上記一般式(5)で表される一価の有機基であることがより好ましい。
 (A)ポリイミド前駆体は、一般式(26)で表される構造単位と、一般式(27)で表される構造単位の両方を含むことにより、特に解像性が高くなる傾向がある。例えば、(A)ポリイミド前駆体は、一般式(26)で表される構造単位と、一般式(27)で表される構造単位との共重合体を含んでもよく、又は一般式(26)で表されるポリイミド前駆体と、一般式(27)で表されるポリイミド前駆体との混合物であってもよい。
 (A)ポリイミド前駆体は、下記一般式(28):
{式中、R11、R12、及びnは、上記に定義したものである。}
で表される構造単位を有するポリイミド前駆体であることが好ましい。
 (A)ポリイミド前駆体は、下記一般式(29):
{式中、R11、R12、及びnは、上記に定義したものである。}
で表される構造単位を有するポリイミド前駆体であることが好ましい。(A)ポリイミド前駆体が、一般式(29)で表されるポリイミド前駆体を含むことで、特に耐薬品性が高くなる。
 (A)ポリイミド前駆体は、溶剤を含む感光性樹脂組成物の全質量を基準として、好ましくは、10質量%~70質量%、より好ましくは20質量%~65質量%含まれる。
(A)ポリイミド前駆体の調製方法
 (A)ポリイミド前駆体は、まず前述の四価の有機基Xを含むテトラカルボン酸二無水物と、光重合性の不飽和二重結合を有するアルコール類、及び任意に不飽和二重結合を有さないアルコール類とを反応させて、部分的にエステル化したテトラカルボン酸(以下、アシッド/エステル体ともいう)を調製する。その後、部分的にエステル化したテトラカルボン酸と、前述の二価の有機基Y1を含むジアミン類とをアミド重縮合させることにより得られる。
(アシッド/エステル体の調製)
 (A)ポリイミド前駆体を調製するために好適に用いられる、四価の有機基Xを含むテトラカルボン酸二無水物としては、上記一般式(24)に示されるテトラカルボン酸二無水物をはじめ、例えば、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ベンゾフェノン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ジフェニルスルホン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルメタン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-無水フタル酸)プロパン、2,2-ビス(3,4-無水フタル酸)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等を挙げることができる。が、これらに限定されるものではない。これらの中でも、テトラカルボン酸二無水物として、好ましくは、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、及びビフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物(BPDA)を挙げることができる。これらは単独で用いることができるのは勿論のこと2種以上を混合して用いてもよい。
 (A)ポリイミド前駆体を調製するために好適に用いられる、光重合性の不飽和二重結合を有するアルコール類としては、例えば、2-アクリロイルオキシエチルアルコール、1-アクリロイルオキシ-3-プロピルアルコール、2-アクリルアミドエチルアルコール、メチロールビニルケトン、2-ヒドロキシエチルビニルケトン、2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-t-ブトキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルオキシプロピルアクリレート、2-メタクリロイルオキシエチルアルコール、1-メタクリロイルオキシ-3-プロピルアルコール、2-メタクリルアミドエチルアルコール、メチロールビニルケトン、2-ヒドロキシエチルビニルケトン、2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-t-ブトキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルオキシプロピルメタクリレート等を挙げることができる。
 上記光重合性の不飽和二重結合を有するアルコール類に、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、ネオペンチルアルコール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、3-オクタノール、1-ノナノール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、ベンジルアルコールなどの不飽和二重結合を有さないアルコール類を一部混合して用いることもできる。
 また、ポリイミド前駆体として、上記不飽和二重結合を有さないアルコール類のみで調製された非感光性ポリイミド前駆体を、感光性ポリイミド前駆体と混合して用いてもよい。解像性の観点から、非感光性ポリイミド前駆体は、感光性ポリイミド前駆体100質量部を基準として、200質量部以下であることが好ましい。上記の好適なテトラカルボン酸二無水物と上記のアルコール類とを、ピリジン等の塩基性触媒の存在下、後述するような溶剤中、温度20~50℃で4~24時間に亘って撹拌溶解、混合することにより、酸無水物のエステル化反応が進行し、所望のアシッド/エステル体を得ることができる。
(ポリイミド前駆体の調製)
 上記アシッド/エステル体(典型的には後述する溶剤中の溶液)に、氷冷下、適当な脱水縮合剤、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-エトキシカルボニル-2-エトキシ-1,2-ジヒドロキノリン、1,1-カルボニルジオキシ-ジ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、N,N’-ジスクシンイミジルカーボネート等を投入混合してアシッド/エステル体をポリ酸無水物とした後、これに、二価の有機基Yを含むジアミン類を別途溶媒に溶解又は分散させたものを滴下投入し、アミド重縮合させることにより、目的のポリイミド前駆体を得ることができる。代替的には、上記アシッド/エステル体を、塩化チオニル等を用いてアシッド部分を酸クロライド化した後に、ピリジン等の塩基存在下に、ジアミン化合物と反応させることにより、目的のポリイミド前駆体を得ることができる。
 二価の有機基Yを含むジアミン類としては、上記一般式(21)に示される構造を有するジアミンをはじめ、例えば、p-フェニレンジアミン(1,4―フェニレンジアミン(pPD))、m-フェニレンジアミン、4,4’-オキシジアニリン(ODA)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノビフェニル、3,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-Q)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)、1,4-ビス(3-アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、オルト-トリジンスルホン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(BAFL)、及びこれらのベンゼン環上の水素原子の一部が、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ハロゲン等で置換されたもの、例えば3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノビフェニル、及びその混合物等が挙げられるが、これに限定されるものではない。ジアミンとしては、好ましくは、4,4’-オキシジアニリン(ODA)、2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジアミン(m-TB)、及び1,4―フェニレンジアミン(pPD)を挙げることができる。これらのジアミンは単独で用いることができ、又は2種以上を混合して用いてもよい。
 アミド重縮合反応終了後、当該反応液中に共存している脱水縮合剤の吸水副生物を必要に応じて濾別した後、水、脂肪族低級アルコール、又はその混合液等の貧溶媒を、得られた重合体成分に投入し、重合体成分を析出させ、さらに、再溶解、再沈析出操作等を繰り返すことにより、重合体を精製し、真空乾燥を行い、目的のポリイミド前駆体を単離する。精製度を向上させるために、陰イオン及び/又は陽イオン交換樹脂を適当な有機溶剤で膨潤させて充填したカラムに、この重合体の溶液を通し、イオン性不純物を除去してもよい。
 上記(A)ポリイミド前駆体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算重量平均分子量で測定した場合に、8,000~150,000であることが好ましく、9,000~50,000であることがより好ましい。重量平均分子量が8,000以上である場合、機械物性が良好であり、150,000以下である場合現像液への分散性が良好で、レリーフパターンの解像性能が良好である。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの展開溶媒としては、テトラヒドロフラン、及びN-メチル-2-ピロリドンが推奨される。また重量平均分子量は標準単分散ポリスチレンを用いて作成した検量線から求める。標準単分散ポリスチレンとしては、昭和電工社製 有機溶媒系標準試料 STANDARD SM-105から選ぶことが推奨される。
(A)ポリイミド樹脂
 本開示の感光性樹脂組成物は、(A)ポリイミド前駆体と共に、又はこれに変えて、(A)ポリイミド樹脂を含んでもよい。
 (A)ポリイミド樹脂は、樹脂由来の脱離成分が発生しないため、感光性樹脂組成物の硬化収縮を抑制できる。そのため、ポリイミド前駆体に比べて、高いキュア残膜率を有し、かつ、改善されたキュア後平坦性を有する感光性樹脂組成物を得ることができる。
 (A)ポリイミド樹脂は、側鎖に重合性基を有してもよいが、硬化膜の伸度及び保管安定性の観点から側鎖に重合性基を有さないほうが好ましい。ポリイミド樹脂は、ポリアミック酸又はポリアミック酸エステル構造を実質的に含まないことが好ましい。本開示において「実質的に含まない」とは、例えばポリイミド樹脂のイミド化率が90%以上、好ましくは95%以上であることを意味する。
 ポリイミド樹脂のイミド化率は公知の方法で測定できるが、本開示では以下の方法で算出する。まず、ポリイミド樹脂の赤外吸収スペクトルを測定し、イミド構造の吸収ピーク(1780cm-1付近、1377cm-1付近)の存在を確認する。次に、そのポリイミド樹脂を350℃で1時間、熱処理し、熱処理後の赤外吸収スペクトルを測定し、1377cm-1付近のピーク強度を熱処理前のピーク強度と比較することによって、ポリイミド樹脂のイミド化率を算出する。
 (A)ポリイミド樹脂は、溶媒への溶解性及びコート時平坦性の観点から一般式(4’)で表される構造を含んでいることが好ましい。また、これは溶剤現像タイプの感光性樹脂組成物に適する構造である。
{式(4’)中、Xは四価の有機基であり、Yは二価の有機基であり、nは1~150の整数である。}
 Xは四価の有機基であり、既知のテトラカルボン酸二無水物に由来する構造であれば特に限定はしないが、硬化膜の高い銅密着性、高温保存試験後の銅ボイドの抑制、及びb-HAST試験における銅マイグレーション抑制、伸度、耐薬品性に優れ、且つ後述の溶媒への溶解性の観点から、下記式(6)~(14)で示される構造を少なくとも1つ以上有することが好ましい。
 また、Xは本開示の感光性樹脂組成物から得られる硬化膜の高温保存試験後の銅ボイドの抑制、b-HAST試験における銅マイグレーション抑制、伸度及び耐薬品性の観点から式(6)~(13)で示される構造を少なくとも1つ以上有することが好ましい。さらに、Xは本開示の感光性樹脂組成物から得られる硬化膜の耐熱性の観点から、式(6)~(8)及び(10)~(13)で示される構造を少なくとも1つ以上有することがさらに好ましい。加えて、Xは本開示の感光性樹脂組成物の塗膜均一性及び硬化膜の伸度が特に優れることから、式(6)及び(11)~(13)で示される構造を少なくとも1つ以上有することが特に好ましい。
 式(4’)中のYは、二価の有機基であり、既知のジアミンに由来する構造であれば特に限定はしないが、硬化膜の高い銅密着性、高温保存試験後の銅ボイドの抑制、及びb-HAST試験における銅マイグレーション抑制、伸度、耐薬品性に優れ、且つ溶媒への溶解性の観点から、下記式(15)~(23)で示される構造を少なくとも1つ以上有することが好ましい。
 また、Yは本開示の感光性樹脂組成物から得られる硬化膜の高温保存試験後の銅ボイドの抑制、b-HAST試験における銅マイグレーション抑制、伸度及び耐薬品性の観点から、式(15)~(21)で示される構造を少なくとも1つ以上有することが好ましい。さらに、Yは本開示の感光性樹脂組成物から得られる硬化膜の機械特性の観点から、式(15)~(20)で示される構造を少なくとも1つ以上有することがさらに好ましい。加えて、Yは本開示のネガ型感光性樹脂組成物の塗膜均一性及び硬化膜の伸度が特に優れることから、式(17)~(20)で示される構造を少なくとも1つ以上有することが特に好ましい。式(17)~(20)で示される構造が溶媒への溶解性に優れるのは、これらの構造がペンダントフェニル構造を有することに由来する。
 式(4’)中のnは、2~150の整数、好ましくは3~100の整数、より好ましくは5~70の整数である。nは、後述の(A)ポリイミド樹脂の重量平均分子量を満たす整数であることが好ましい。
 後述の溶媒への溶解性の観点から、(A)ポリイミド樹脂の末端、好ましくは(A)ポリイミド樹脂の主鎖末端は、酸無水物基、カルボキシル基、アミノ基、及び下記一般式(30)~(32)からなる群から選択される少なくとも一つの構造を有することが好ましい。
{式(30)中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、及び炭素数1~3の1価の有機基から選択され、Rはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~20の有機基であり、kは1~2の整数である。Rは、水素原子、及び炭素数1~4の有機基であり、*は(A)ポリイミド樹脂の末端との結合部位を示す。}
{式(31)中、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、及び炭素数1~3の1価の有機基である。また、*は(A)ポリイミド樹脂の末端との結合部位を示す。}
{式(32)中、R、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3の1価の有機基であり、jは2~10の整数である。また、*は(A)ポリイミド樹脂の末端との結合部位を示す。}
 酸無水物基は、原料のテトラカルボン酸無水物に由来し、カルボキシル基は前述の酸無水物基が開環したものであり、アミノ基は原料のジアミンに由来するものであることが好ましい。(A)ポリイミド樹脂の末端が一般式(30)で表される構造である場合のより詳細な具体例としては、下記式(33)~(36)で表される構造が挙げられる。
{式中の*は(A)ポリイミド樹脂の末端との結合部位を示す。}
 一般式(31)で示される構造の、より詳細な具体例としては、下記式(37)、(38)で表される構造が挙げられる。
{式中の*は(A)ポリイミド樹脂の末端との結合部位を示す。}
 一般式(32)で示される構造の、より詳細な具体例としては、下記式(39)~(42)で表される構造が挙げられる。
{式中の*は(A)ポリイミド樹脂の末端との結合部位を示す。}
 硬化膜の高い銅密着性、高温保存試験後の銅ボイドの抑制、b-HAST試験における銅マイグレーション抑制、伸度、耐薬品性及び溶媒への溶解性の観点から、一般式(4’)のXが一般式(6)~(14)で表されるいずれかの構造であり、かつ、Yが一般式(15)~(23)で表されるいずれかの構造であることが好ましい。
 (A)ポリイミド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、溶媒に溶解する範囲であれば特に限定しない。硬化膜の膜物性や銅密着性の観点から、(A)ポリイミド樹脂の重量平均分子量は5,000以上100,000以下が好ましい。機械特性の観点から、(A)ポリイミド樹脂の重量平均分子量の下限値は6,000以上がより好ましく、8,000以上がさらに好ましい。また、(A)ポリイミド樹脂の重量平均分子量の上限値は、溶媒への溶解性及びコート時平坦性の観点から50,000以下がより好ましく、30,000以下が特に好ましい。
 (A)ポリイミド樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、1.0以上2.0以下であることが好ましい。製造効率の観点から、(A)ポリイミド樹脂の分子量分布の下限値は1.15以上がより好ましく、1.25以上がさらに好ましい。(A)ポリイミド樹脂の分子量分布の上限値は、解像性の観点から、上限値は1.8以下がより好ましく、1.6以下がさらに好ましい。
 (A)ポリイミド樹脂は、溶剤を含む感光性樹脂組成物の全質量を基準として、好ましくは10質量%~70質量%、より好ましくは20質量%~65質量%含まれる。
(A)ポリイミド樹脂の調整方法
 (A)ポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させて得られるポリアミド酸を、脱水閉環してイミド化することで得られる。
 ポリアミド酸を脱水閉環させる方法は、限定されないが、例えば、ポリアミド酸を高温で加熱して脱水閉環する加熱イミド化法や、脱水還元剤である無水酢酸と3級アミンを添加して脱水閉環する化学イミド化法などが挙げられる。
 加熱イミド化法での温度は、特に限定しないが、閉環反応を促進する観点から、その下限値は150℃以上が好ましく、160℃以上が更に好ましい。一方、副反応を抑制する観点で、その上限値は200℃以下が好ましく、180℃がより好ましい。
 テトラカルボン酸二無水物としては特に限定しないが、具体例としてはピロメリット酸無水物(PMDA)、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、3,4’-オキシジフタル酸無水物、4,4’-ビフタル酸二無水物(BPDA)、3,4’-ビフタル酸二無水物、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物(BPADA)、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物(BPAF)、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物(CpODA)、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物(BCD)、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸無水物(CBDA)及び4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)などが挙げられる。これらの中でも、テトラカルボン酸二無水物としては、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物(BCD)、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、及び4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)等が好ましい。
 ジアミンとしては特に限定しないが、具体例としては、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(DADPE)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-Q)、2-フェノキシベンゼン-1,4-ジアミン(PND)、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(BAFL)、6-(4-アミノフェノキシ)ビフェニル-3-アミン(PDPE)、3,3’-ジフェニル-4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル(APBP-DP)、2,2-ビス[3-フェニル-4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(DAOPPA)、2,2’-ジメチルベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)及び2-(メタクリロイルオキシ)エチル-3,5-ジアミノベンゾエート(MAEDAB)などが挙げられる。これらの中でも、ジアミンとしては、6-(4-アミノフェノキシ)ビフェニル-3-アミン(PDPE)、及び9,9’-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(BAFL)等が好ましい。
 (A)ポリイミド樹脂の末端が、酸無水物基、カルボキシル基、及びアミノ基である場合、(A)ポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させて得られるポリアミド酸を、脱水閉環してイミド化させて得られるポリイミド樹脂である。(A)ポリイミド樹脂の末端の酸無水物基、カルボキシル基、及びアミノ基と所定の化合物とを反応させて、末端を、上記一般式(30)~(32)で表される構造としてもよい。
 末端が一般式(30)で表される構造である(A)ポリイミド樹脂は、例えば、ポリイミド末端のアミノ基をイソシアネート系化合物と反応させることで得られる。イソシアネート系化合物の具体例としては、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(2-イソシアナトエチルメタクリレート:MOI)、2-アクリロイルオキシエチルイソシアナート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、及び2-(2-メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアナートなどが挙げられる。イソシアネート系化合物を反応させる方法は特に限定しないが、脱水閉環したポリイミド溶液にイソシアネート系化合物を加えて室温下で撹拌することで、脱水閉環したポリイミドのアミノ基と反応させることができる。
 末端が一般式(31)で表される構造である(A)ポリイミド樹脂は、例えば、ポリイミド末端のアミノ基をクロライド系化合物と反応させることで得られる。クロライド系化合物としては、アクリロイルクロライド、及びメタクロイルクロライドなどが挙げられる。クロライド系化合物を反応させる方法としては特に限定しないが、脱水閉環したポリイミド溶液を氷冷し、クロライド系化合物を滴下によって加えることで脱水閉環したポリイミドのアミノ基と反応させることができる。
 末端が一般式(32)で表される構造である(A)ポリイミド樹脂は、例えば、ポリイミド末端の酸無水物基及びカルボキシル基をアルコール系化合物と反応させることで得られる。アルコール系化合物としては、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(2-ヒドロキシエチルメタクリレート:HEMA)、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸4-ヒドロキシエチル、及びアクリル酸4-ヒドロキシエチルなどが挙げられる。アルコール系化合物を反応させる方法としては特に限定しないが、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)などの縮合剤や、p-トルエンスルホン酸などのエステル化触媒を用いて、脱水閉環したポリイミドの酸無水物基及びカルボキシル基とアルコール系化合物とを反応させることができる。
 (A)ポリイミド樹脂の製造において、反応を均一系で効率的に行うために反応溶媒を用いてもよい。反応溶媒としては、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン、及び末端に重合性官能基を有する化合物を均一に溶解又は懸濁できるものであれば特に限定はしない。反応溶媒としては、例えば、γ-ブチロラクトン(GBL)、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルアセトアセトアミド、1,3-ジメチル―2-イミダゾリジノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、及びN,N-ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。
 (A)ポリイミド樹脂の製造において、加熱イミド化法を用いる場合には、イミド化反応促進のために共沸溶媒を用いてもよい。共沸溶媒としては、水と共沸する溶媒であれば特に限定しないが、トルエン、酢酸エチル、N-ジクロヘキシルピロリドン、オルトジクロロベンゼン、キシレン、及びベンゼンなどが挙げられる。
 (A)ポリイミド樹脂は、特許文献2(特開2012-194520号公報)などに記載の方法で精製を行ってもよい。例えば、精製法としては、(A)ポリイミド樹脂溶液を水に滴下して再沈殿により未反応物を除去する方法、濾別して反応溶媒に不溶の縮合剤などを除去する方法、イオン交換樹脂によって触媒を除去する方法などが挙げられる。これら精製を行った後、(A)ポリイミド樹脂は既知の方法で乾燥を行い、粉末状態として単離してもよい。
(B)テトラゾール化合物
 (B)テトラゾール化合物は、pKaが1.3~4.1であるか、後述する式(1)若しくは(2)で表されるか、又は極性表面積(tPSA)が81以上200以下であり、これらの一つ又は複数の特徴の組み合わせを有する。このような(B)テトラゾール化合物を含むことによって、銅密着性と銅マイグレーション抑制効果が得られる。なお、銅ボイドは銅マイグレーションが進行した結果生じているものと推測されるため、銅マイグレーションを抑制することは銅ボイドの抑制にも効果を発揮する。
 一態様において、(B)テトラゾール化合物は、酸解離定数(pKa)が1.3以上4.1以下である。銅との密着性と銅マイグレーションの観点から、pKaは2.0以上3.6以下であることが好ましい。このような(B)テトラゾール化合物を使用することで上記の効果が発揮される理由は定かではなく、理論に限定されないが、発明者らは次の通り考えている。すなわち、テトラゾール化合物は、基材の銅へ配位して効果を発揮すると考えるが、その際、テトラゾール化合物のpKaが4.1以下であると樹脂との相互作用が強まり、銅密着性が向上すると推測される。一方で、テトラゾール化合物のpKaが1.3以上であると相互作用が強すぎず、銅マイグレーションを抑制することができると思われる。よって、テトラゾール化合物が適度な酸性度をもつことで、銅との密着性と銅マイグレーションとを両立することができると推測される。pKaに関しては、Advanced Chemistry Software V11.02(1994-2018 ACD/Labs)による計算値を使用した。
 酸解離定数(pKa)が1.3以上4.1以下である(B)テトラゾール化合物としては、例えば1H-テトラゾール-5-カルボン酸、1H-テトラゾール-5-酢酸、1H-テトラゾール-5-カルボン酸エチル、1H-テトラゾール-5-酢酸メチル、1H-テトラゾール-5-プロピオン酸、2-[4-(1H-1,2,3,4-テトラゾール-5-イル)フェニル]酢酸、2-(2H-テトラゾール-5-イル)ブタン二酸、2,2―ビス(2-2H-テトラゾール-5―イル)エチル)プロパン二酸、及び4-(1H-テトラゾール-5-イル)安息香酸が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、銅密着性及び銅マイグレーションの観点で、1H-テトラゾール-5-カルボン酸、1H-テトラゾール-5-酢酸、4-(1H-テトラゾール-5-イル)安息香酸であることが好ましく、更に好ましくは1H-テトラゾール-5-酢酸である。なお、これらの化合物を樹脂組成物に添加する際は、水和物の形態であってもよい。
 一態様において、(B)テトラゾール化合物は、下記式(1)又は(2)で表される。
{式(1)中、Rは、水素原子、又は炭素数1~10のアルキル基及び炭素数6~10のアリール基からなる群から選択される1価の有機基である。アルキル基及びアリール基の水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシシリル基、及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも一つの置換基により置換されていても、置換されていなくてもよい。}
{式(2)中、Rは、水素原子、又は炭素数1~10のアルキル基及び炭素数6~10のアリール基からなる群から選択される1価の有機基であり、Rは炭素数1~10のアルキレン基である。アルキル基、アリール基及びアルキレン基の水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシシリル基、及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも一つの置換基により置換されていても、置換されていなくてもよい。}
 (B)テトラゾール化合物が、上記式(1)又は(2)で表される化合物を含むことで、優れた銅密着性と銅マイグレーション抑制効果、銅ボイド抑制効果を得ることができる。その理由は定かではなく、理論に拘束されないが、テトラゾール中の窒素原子に付随する非共有電子対が銅へ作用して銅界面に偏在し、そしてカルボン酸およびエステルの構成原子が、ポリイミド前駆体と水素結合を形成できるので、樹脂が銅と相互作用して銅密着力を向上することができると考えられる。また、テトラゾール化合物が銅界面に偏在することで、銅界面での酸化反応を強く抑制し、それにより銅マイグレーション及び銅ボイドが抑制できたと考えられる。また、一般式(2)においてRが炭素数1~10であれば、一般式(1)の化合物に比べて分子の沸点が高く基材にコートする際のプリベーク時に揮発しにくく膜中に残存でき、更に膜中でも動きやすく界面に偏在しやすいことから、より銅密着性や銅ボイド抑制に効果的であると推測している。
 更に、特に銅密着性の観点から、(B)テトラゾール化合物は、下記一般式(3)で表される化合物を含むことが好ましい。
{式中、Rは、水素原子、又は炭素数1~10のアルキル基及び炭素数6~10のアリール基からなる群から選択される1価の有機基である。アルキル基及びアリール基の水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシシリル基、及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも一つの置換基により置換されていても、置換されていなくてもよい。}
 一般式(1)~(3)におけるR、R及びRの炭素数1~10のアルキル基は、分岐鎖又は直鎖状であってよい。好ましくは、炭素数1~5のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基及びプロピル基が挙げられる。一般式(1)~(3)におけるR、R及びRの炭素数6~10のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基及びナフチル基等が挙げられる。一般式(3)におけるRの炭素数1~10のアルキレン基は、分岐鎖又は直鎖状であってよい。好ましくは、炭素数1~5のアルキレン基、例えば、メチレン基、エチレン基及びプロピレン基が挙げられる。これら有機基の水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシシリル基、及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも一つの置換基により置換されていても、置換されていなくてもよい。ただし、有機基の炭素数は、アルコキシシリル基が存在する場合、アルコキシシリル基の炭素数を含まない。ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、フッ素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。アルコキシシリル基としては、例えばトリアルコキシシリル基、ジアルコキシシリル基、モノアルコキシシリル基が挙げられ、具体的には例えばトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシシリル基、メトキシシリル基等が挙げられる。一般式(3)において、Rが水素原子である化合物が、銅密着性及び銅ボイド、銅マイグレーションの観点でより好ましい。
 一般式(1)~(2)で表される(B)テトラゾール化合物としては、具体的には、例えば、1H-テトラゾール-5-カルボン酸、α,α-ジフルオロ-2H-テトラゾール-5-酢酸、α-ヒドロキシ-2H-テトラゾール-5-酢酸、α-アミノ-2H-テトラゾール-5-酢酸、1H-テトラゾール-5-カルボン酸メチル、1H-テトラゾール-5-カルボン酸エチル、1H-テトラゾール-5-酢酸、1H-テトラゾール-5-酢酸メチル、1H-テトラゾール-5-酢酸エチル、及び1H-テトラゾール-5-酢酸プロピルが挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、銅密着性及び銅マイグレーションの観点で、1H-テトラゾール-5-カルボン酸、1H-テトラゾール-5-カルボン酸エチル、1H-テトラゾール-5-酢酸、1H-テトラゾール-5-酢酸エチルであることが好ましく、更に好ましくは1H-テトラゾール-5-酢酸である。なお、これらの化合物を樹脂組成物に添加する際は、水和物の形態であってもよい。
 一態様において、(B)テトラゾール化合物は、トポロジカル極性表面積(tPSA)が81~200である。トポロジカル極性表面積(topological PSA;tPSA)とは、分子の表面のうち極性を帯びている部分の面積で、主に医薬品化学において薬物の細胞膜透過性の評価に使用される指標である。tPSAが81以上200以下であるテトラゾール化合物を感光性樹脂組成物に含むことで、銅密着性及び銅マイグレーション抑制効果が得られる。その理由は定かではなく、理論に限定されないが、テトラゾール化合物が81以上200以下の適度な極性をもつことで、pKaの項でも述べたように、銅へ配位した際の樹脂との相互作用が適度であり、銅密着性と銅マイグレーション抑制を両立できると考えられる。また、tPSAが200以下であると分子量が小さくなるため、感光性樹脂組成物中でのテトラゾール化合物の分散性が良好になり、銅密着性及び銅マイグレーション抑制効果が発揮されると考えられる。
 tPSAは、「RDKit」というソフトウェアを用いて計算した。「RDKit」とは、ケモインフォマティクス分野で用いられるオープンソースのPythonのライブラリである。「RDKit」の詳細については、例えば、「G. Landrum, RDKit: Open-Source Cheminformatics (http://www.rdkit.org.)」に記載されている。本開示におけるtPSAの計算では、下記のプログラムを用いた。
 Python 3.8.8
 RDkit 2023.03.3
 tPSAが81以上200以下である(B)テトラゾール化合物としては、例えば、1H-テトラゾール-5-カルボン酸、1H-テトラゾール-5-酢酸、1H-テトラゾール-5-プロピオン酸、2-[4-(1H-1,2,3,4-テトラゾール-5-イル)フェニル]酢酸、2-(2H―テトラゾール-5-イル)ブタン二酸、2,2-ビス(2-2H-テトラゾール-5-イル)エチル)プロパン二酸、4-(1H-テトラゾール-5-イル)安息香酸、及び1H-テトラゾール-5-ブタノン酸が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、銅密着性及び銅マイグレーションの観点で、1H-テトラゾール-5-カルボン酸、1H-テトラゾール-5-酢酸、4-(1H-テトラゾール-5-イル)安息香酸であることが好ましく、更に好ましくは1H-テトラゾール-5-酢酸である。なお、これらの化合物を樹脂組成物に添加する際は、水和物の形態であってもよい。
 (B)テトラゾール化合物の配合量は、(A)ポリイミド前駆体又はポリイミド樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上20質量部以下、より好ましくは0.01質量部以上10質量部以下であり、より好ましくは0.01質量部以上5質量部以下である。上記配合量は、銅密着性及び銅マイグレーション抑制の観点で十分な効果を発揮するために0.01質量部以上であることが好ましく、銅密着性、銅マイグレーション抑制及び組成物への溶解性の観点で10質量部以下が好ましく、更には5質量部以下がより好ましい。10質量部以下とすることで、理由は定かではなく、理論に限定されないが、銅層と樹脂層の間に脆弱な層が発生しにくいため銅密着性が良好となり、かつ、樹脂層中のイオン成分が必要以上に増加せず、銅マイグレーションも良好となると推測される。
(C)光重合開始剤
 (C)光重合開始剤について説明する。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤であることが好ましく、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン等のベンゾフェノン誘導体、2,2’-ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン誘導体、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル-β-メトキシエチルアセタール等のベンジル誘導体、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾイン誘導体、1-フェニル-1,2-ブタンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム、1,3-ジフェニルプロパントリオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-3-エトキシプロパントリオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム等のオキシム類、N-フェニルグリシン等のN-アリールグリシン類、ベンゾイルパークロライド等の過酸化物類、芳香族ビイミダゾール類、チタノセン類、α-(n-オクタンスルフォニルオキシイミノ)-4-メトキシベンジルシアニド等の光酸発生剤類等が好ましく挙げられるが、これらに限定されるものではない。上記の光重合開始剤の中では、特に光感度の点で、オキシム類がより好ましい。
 (C)光重合開始剤の配合量は、(A)ポリイミド前駆体又はポリイミド樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上20質量部であり、より好ましくは1質量部以上8質量部以下であり、さらに好ましくは1質量部以上5質量部以下である。上記配合量は、光感度又はパターニング性の観点で0.1質量部以上であり、感光性樹脂組成物の硬化後の感光性樹脂層の物性の観点から20質量部以下であることが好ましい。
(D)溶剤
 (D)溶剤について説明する。溶剤としては、アミド類、スルホキシド類、ウレア類、ケトン類、エステル類、ラクトン類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類、アルコール類等が挙げられ、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチル、乳酸エチル、乳酸メチル、乳酸ブチル、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコール、フェニルグリコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、モルフォリン、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、1,4-ジクロロブタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、アニソール、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等を使用することができる。中でも、樹脂の溶解性、樹脂組成物の安定性、及び基板への接着性の観点から、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ベンジルアルコール、フェニルグリコール、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド及びテトラヒドロフルフリルアルコールが好ましい。
 このような溶剤の中で、とりわけ、ポリイミド前駆体を完全に溶解するものが好ましく、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、γ-ブチロラクトン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド等が挙げられる。特に、感光性樹脂組成物を基板上に塗布したときの面内均一性の観点から、γ-ブチロラクトン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドであることが好ましい。
 溶剤は1種であってもよいし、2種以上の溶剤を混ぜて使ってもよいが、樹脂組成物の安定性を適切に調整する観点から、2種以上であることが好ましい。溶剤を2種以上含む場合においては、溶剤の50重量%以上は、面内均一性の観点から、γ-ブチロラクトン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドのいずれか一方であることが好ましく、γ-ブチロラクトンであることがさらに好ましい。
 感光性樹脂組成物において、溶剤の使用量は、(A)ポリイミド前駆体又はポリイミド樹脂100質量部に対して、好ましくは100~1000質量部であり、より好ましくは120~700質量部であり、さらに好ましくは125~500質量部の範囲である。
(E)ラジカル重合性化合物
 感光性樹脂組成物は(E)ラジカル重合性化合物を更に含有してもよい。(E)ラジカル重合性化合物を使用すると、感光性樹脂組成物の架橋が進み、硬化膜の透湿性が低下することで銅マイグレーション抑制効果が得られる。感光性樹脂組成物は、(A)ポリイミド前駆体又はポリイミド樹脂100質量部に対し、ラジカル重合性化合物を5質量部以上150質量部以下含むことが好ましい。良好な耐薬品性を得るためには、感光性樹脂組成物は、ラジカル重合性化合物を5質量部以上含むことが好ましく、10質量部以上含むことがより好ましく、20質量部以上含むことがさらに好ましい。ラジカル重合性化合物を多く含み過ぎると、銅密着性が低下することがある。しかしながら、本開示の感光性樹脂組成物は、上記特定のテトラゾール化合物を含有することにより、ラジカル重合性化合物を比較的多く含有しても高い銅密着性が得られることが分かった。上記下限値と任意に組み合わせることのできる上限値は、パターニング特性の観点から150質量部以下であることが好ましく、100質量部以下であることがより好ましく、80質量部以下であることがさらに好ましい。
 ラジカル重合性化合物とは、光重合開始剤および熱重合開始剤によりラジカル重合反応する化合物であれば特に制限を受けないが、(メタ)アクリル化合物であることが好ましく、例えば下記一般式(43):
{式(43)中、X11は、有機基であり、L11、L12及びL13は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1~3の一価の有機基である。n11は、1~10の整数である。}で表される。
 ラジカル重合性化合物は、特に以下に限定するものではないが、ジエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレートなどの、エチレングリコール又はポリエチレングリコールのモノ又はジアクリレート及びメタクリレート;プロピレングリコール又はポリプロピレングリコールのモノ又はジアクリレート及びメタクリレート、グリセロールのモノ、ジ又はトリアクリレート及びメタクリレート、シクロヘキサンジアクリレート及びジメタクリレート、1,4-ブタンジオールのジアクリレート及びジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールのジアクリレート及びジメタクリレート、ネオペンチルグリコールのジアクリレート及びジメタクリレート、ビスフェノールAのモノ又はジアクリレート及びメタクリレート、ベンゼントリメタクリレート、イソボルニルアクリレート及びメタクリレート、アクリルアミド及びその誘導体、メタクリルアミド及びその誘導体、トリメチロールプロパントリアクリレート及びメタクリレート、グリセロールのジ又はトリアクリレート及びメタクリレート、ペンタエリスリトールのジ、トリ、又はテトラアクリレート及びメタクリレート、並びにこれら化合物のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物等の化合物を挙げることができる。より具体的には、下記式(44)及び(45):

で表される化合物が挙げられるが、上記に限定されるものではない。
 本開示では、ラジカル重合性化合物のラジカル重合性基の数が一つの場合、単官能と呼び、二つ以上の場合、ラジカル重合性基の数xに従い、x官能基と呼ぶが、二官能以上をまとめて多官能と呼ぶ場合もある。ラジカル重合性化合物は、単官能であってもよく、二官能以上であってもよい。耐薬品性の観点から、ラジカル重合性化合物は、三官能以上であることが好ましく、四官能以上であることがさらに好ましく、六官能以上であることがより好ましい。一方で、破断伸度の観点より、十官能以下であることが好ましい。
 ラジカル重合性化合物の分子量は、100以上であることが好ましく、200以上であることがさらに好ましく、300以上であることがより好ましい。上限値としては1000以下であることが好ましく、800以下であることがさらに好ましい。上記範囲とすることで、耐薬品性とパターニング特性が向上する。
 ラジカル重合性化合物の少なくとも1種は、水酸基またはウレア基の少なくとも1つの基を有するラジカル重合性化合物であることが好ましい。
 分子中に水酸基を有するラジカル重合性化合物としては、下記一般式(46):
{式(46)中、X11は、有機基であり、L11、L12及びL13は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1~3の一価の有機基である。n11は、1~10の整数であり、n12は、1~10の整数である。}で表される構造が挙げられる。上記式(46)中、L11は水素原子、またはメチル基であり、L12、L13は水素原子であることがラジカル反応性の観点より好ましい。より具体的には、下記式(47):
で表される化合物が挙げられるが、上記に限定されるものではない。分子構造中に水酸基を有することで、耐薬品性が特に良好となる。分子構造中の水酸基の数は、1つ以上が好ましく、2つ以上がさらに好ましい。上限値としては、10つ以下が好ましく、6つ以下がより好ましく、3つ以下がさらに好ましい。上記範囲とすることで、耐薬品性と基板への接着性が良好になる。
 分子中にウレア基を有するラジカル重合性化合物は、下記一般式(48):
{式(48)中、X20、X21、X22、X23はそれぞれ独立に水素原子、下記一般式(49)で表される基を有する1価の有機基、ヘテロ原子を含んでも良い炭素数1~20の1価の有機基であり、X20、X21、X22、X23の少なくとも一つが下記一般式(49)で表される基を有する1価の有機基である。}
{式(49)中、L11、L12及びL13は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1~3の一価の有機基である。}で表わすことができる。上記式(49)中、L11は水素原子、またはメチル基であり、L12、L13は水素原子であることがラジカル反応性の観点より好ましい。
 ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、リン原子、及び硫黄原子等を挙げることができる。
 式(48)中X20、X21、X22、X23が、ヘテロ原子を含んでも良い、炭素数1~20の1価の有機基である場合、現像性の観点から酸素原子を含むことがより好ましい。炭素数は1~20であれば限定されないが、耐熱性の観点から炭素数1~10が好ましく、3~10がより好ましい。式(48)中のX20、X21、X22、X23は互いに結合して環状構造を有してもよいが、耐薬品性の観点から、環状構造を有さない方が好ましい。X20、X21、X22、X23が互いに結合して環状構造を有することで、ウレア基の結合角の自由度が失われ、強固な水素結合の形成が困難になる。他の分子と水素結合を形成する観点から、X20、X21、X22、X23の少なくとも一つは水素原子であることが好ましい。一方で、溶解性の観点から、X20、X21、X22、X23の水素原子は、2つ以下であることが好ましい。具体的には、下記式:
で表わされる化合物が例示される。
 ラジカル重合性化合物は、分子中に水酸基を少なくとも1つ以上と、ウレア基を少なくとも1つ以上を有することが好ましい。分子中に水酸基を少なくとも1つ以上と、ウレア基を少なくとも1つ以上を有するラジカル重合性化合物は、例えば、下記一般式(50):
{式(50)中、X30、X31、X32、X33はそれぞれ独立に水素原子、下記一般式(51)で表される基を有する1価の有機基、ヘテロ原子を含んでも良い炭素数1~20の1価の有機基であり、X30、X31、X32、X33の少なくとも一つが下記一般式(51)で表される基を有する1価の有機基であり、少なくとも一つが水酸基である。}
{式(51)中、L11、L12及びL13は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1~3の一価の有機基である。}で表わすことができる。上記式(51)中、L11は水素原子、またはメチル基であり、L12、L13は水素原子であることがラジカル反応性の観点より好ましい。
 式(50)中、X30、X31、X32、X33が、ヘテロ原子を含んでも良い、炭素数1~20の1価の有機基である場合、現像性の観点から酸素原子を含むことがより好ましい。炭素数は1~20であれば限定されないが、耐熱性の観点から炭素数1~10が好ましく、3~10がより好ましい。式(51)中のX30、X31、X32、X33は互いに結合して環状構造を有してもよいが、耐薬品性の観点から、環状構造を有さない方が好ましい。X30、X31、X32、X33が互いに結合して環状構造を有することで、ウレア基の結合角の自由度が失われ、強固な水素結合の形成が困難になる。他の分子と水素結合を形成する観点から、X30、X31、X32、X33の少なくとも一つは水素原子であることが好ましい。一方で、溶解性の観点から、X30、X31、X32、X33の水素原子は、2つ以下であることが好ましい。具体的には、下記式:
で表わされる化合物が例示される。
 ラジカル重合性化合物のうち、ウレア基を有するラジカル重合性化合物の製造方法は、特に限定されないが、例えばラジカル重合性基を有するイソシアネート化合物とアミン含有化合物とを反応させることによって得ることができる。上記アミン含有化合物が、イソシアネートと反応しうる水酸基等の官能基を含む場合、上記イソシアネート化合物の一部が、水酸基等の官能基と反応した化合物を含んでいてもよい。
 ラジカル重合性化合物は、1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いることが好ましい。2種以上を混合して用いることで、耐薬品性と面内均一性が良好になる。面内均一性が良好になる理由は憶測の域を出ないが、1種のラジカル重合性化合物のみを大量に添加した場合、ワニス中のポリイミド前駆体成分とミクロ相分離を起こしていることが考えられる。上記理由より、ラジカル重合性化合物を単独で用いる場合は、ポリイミド前駆体100質量部に対して60質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがさらに好ましい。
 ラジカル重合性化合物を2種以上混合して用いる場合、架橋密度を制御する観点から、6種以下であることが好ましく、4種以下であることがさらに好ましい。
 複数のラジカル重合性化合物を混合して用いる場合、複数のラジカル重合性化合物のうち、少なくとも一つのラジカル重合性化合物の官能基数が異なることが好ましい。3つ以上のラジカル重合性化合物を用いる場合は、そのうちの少なくとも一つの官能基数が異なっていればよいが、すべてのラジカル重合性化合物の官能基数が異なることが好ましい。複数のラジカル重合性化合物を用いる場合、破断伸度の観点から、単官能ラジカル重合性化合物を少なくとも一つ含むことが好ましい。
 ラジカル重合性化合物を2種以上混合して用いる場合、窒素原子含有ラジカル重合性化合物と、窒素原子非含有ラジカル重合性化合物を少なくとも1つずつ含有することが好ましい。上記窒素原子含有ラジカル重合性化合物は、ウレア基含有ラジカル重合性化合物であることが好ましい。窒素原子含有ラジカル重合性化合物は、強い水素結合を作ることが可能であるため、耐薬品性に優れるが、複数の窒素原子含有ラジカル重合性化合物を添加すると、複雑な水素結合ネットワークを形成することにより、溶解性が不十分になる。
 感光性樹脂組成物は、上記(A)~(E)成分以外の成分をさらに含有していてもよい。(A)~(E)成分以外の成分としては、限定されないが、(F)熱架橋剤、(G)複素環化合物、(H)熱塩基発生剤、(I)ヒンダードフェノール化合物、(J)有機チタン化合物、(K)接着助剤、(L)増感剤、(M)重合禁止剤等が挙げられる。
(F)熱架橋剤
 ポリイミド膜の銅密着性や銅マイグレーションを抑制させるために、感光性樹脂組成物は、熱架橋剤を任意に含むことができる。
 熱架橋剤とは、熱により付加反応又は縮合重合反応を起こす化合物を意味する。これらの反応は(A)ポリイミド樹脂と(F)熱架橋剤、(F)熱架橋剤同士、及び(F)熱架橋剤と後述されるその他の成分の組み合わせで起き、その反応温度としては、150℃以上が好ましい。
 熱架橋剤の例としては、アルコキシメチル化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビスマレイミド化合物、アリル化合物、及びブロックイソシアネート化合物等が挙げられる。硬化収縮抑制の観点から(F)熱架橋剤は窒素原子を含むことが好ましい。
 アルコキシメチル化合物の例としては、下記式の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
 また、市販品のアルコキシメチル化合物としては、アルキル化尿素樹脂(製品名 MX290 ニカラック社製)や、1,3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル(製品名 MX270 ニカラック社製)等が挙げられる。
 エポキシ化合物の例としては、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、ビスフェノールA型基を含むエポキシ化合物、及び水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル等が挙げられる。たとえば、エポライト4000(製品名、共栄社化学(株)製)が好適に使用できる。
 オキセタン化合物としては、1,4-ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、ビス[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル、4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メチル]ビフェニル、4,4′-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ビフェニル、エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)ジフェノエート、トリメチロールプロパントリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ポリ[[3-[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]プロピル]シラセスキオキサン]誘導体、オキセタニルシリケート、フェノールノボラック型オキセタン、及び1,3-ビス[(3-エチルオキセタンー3-イル)メトキシ]ベンゼン等が挙げられる。たとえば、OXT121(製品名、東亞合成製)、OXT221(製品名、東亞合成製)等が好適に使用できる。
 ビスマレイミド化合物としては、1,2-ビス(マレイミド)エタン、1,3-ビス(マレイミド)プロパン、1,4-ビス(マレイミド)ブタン、1,5-ビス(マレイミド)ペンタン、1,6-ビス(マレイミド)ヘキサン、2,2,4-トリメチル-1,6-ビス(マレイミド)ヘキサン、N,N’-1,3-フェニレンビス(マレイミド)、4-メチル-N,N’-1,3-フェニレンビス(マレイミド)、N,N’-1,4-フェニレンビス(マレイミド)、3-メチル-N,N’-1,4-フェニレンビス(マレイミド)、4,4’-ビス(マレイミド)ジフェニルメタン、3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチル-4,4’-ビス(マレイミド)ジフェニルメタン、及び2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等が挙げられる。
 アリル化合物としては、アリルアルコール、アリルアニソール、安息香酸アリルエステル、桂皮酸アリルエステル、N-アリロキシフタルイミド、アリルフェノール、アリルフェニルスルフォン、アリルウレア、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、イソシアヌル酸ジアリル、トリアリルアミン、イソシアヌル酸トリアリル、シアヌル酸トリアリル、トリアリルアミン、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸トリアリル、トリメリト酸トリアリル、トリアリルホスフェート、トリアリルホスファイト、及びクエン酸トリアリルなどが挙げられる。
 ブロックイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート系ブロックイソシアネート(例えば、旭化成(株)製、以下商品名:デュラネートSBN-70D、SBB-70P、SBF-70E、TPA-B80E、17B-60P、MF-B60B、E402-B80B、MF-K60B、及びWM44-L70G、三井化学(株)製、商品名:タケネートB-882N、Baxenden社製、以下商品名:7960、7961、7982、7991、及び7992など);トリレンジイソシアネート系ブロックイソシアネート(例えば、三井化学(株)製、商品名:タケネートB-830など);4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネ-ト系ブロックイソシアネート(例えば、三井化学(株)製、商品名:タケネートB-815N、大榮産業(株)製、商品名:ブロネートPMD-OA01、及びPMD-MA01など)、1,3―ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン系ブロックイソシアネート(例えば、三井化学(株)製、商品名:タケネートB-846N、東ソー(株)製、以下商品名:コロネートBI-301、2507、及び2554など);並びに、イソホロンジイソシアネート系ブロックイソシアネート(例えば、Baxenden社製、以下商品名:7950、7951、及び7990など)が挙げられる。
 これらの中で、保存安定性の観点から、ブロックイソシアネート化合物やビスマレイミド化合物が好ましい。(F)熱架橋剤は単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
 本開示の感光性樹脂組成物中の(F)熱架橋剤の含有量は、(A)ポリイミド前駆体又はポリイミド樹脂100質量部に対して、0.2質量部~40質量部であることが好ましい。熱架橋剤の下限値は、耐薬品性の観点から、1質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることが更に好ましい。熱架橋剤の上限値は、本開示の感光性樹脂組成物の保存安定性の観点から30質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることが更に好ましい。
(G)複素環化合物
 本開示の感光性樹脂組成物は、(B)テトラゾール化合物の他にも銅密着性や、現像性、銅マイグレーション抑制能の向上等のために複素環化合物を含有していてもよい。複素環化合物としては、例えばイミダゾール誘導体、トリアゾール誘導体、(B)以外のテトラゾール誘導体及びプリン誘導体等が挙げられる。
 プリン誘導体の具体例としては、プリン、アデニン、グアニン、ヒポキサンチン、キサンチン、テオブロミン、カフェイン、尿酸、イソグアニン、2,6-ジアミノプリン、9-メチルアデニン、2-ヒドロキシアデニン、2-メチルアデニン、1-メチルアデニン、N-メチルアデニン、N,N-ジメチルアデニン、2-フルオロアデニン、9-(2-ヒドロキシエチル)アデニン、グアニンオキシム、N-(2-ヒドロキシエチル)アデニン、8-アミノアデニン、6-アミノ‐8-フェニル‐9H-プリン、1-エチルアデニン、6-エチルアミノプリン、1-ベンジルアデニン、N-メチルグアニン、7-(2-ヒドロキシエチル)グアニン、N-(3-クロロフェニル)グアニン、N-(3-エチルフェニル)グアニン、2-アザアデニン、5-アザアデニン、8-アザアデニン、8-アザグアニン、8-アザプリン、8-アザキサンチン、8-アザヒポキサンチン等及びその誘導体が挙げられる。これらの複素環化合物は、1種で用いても2種以上の混合物で用いても構わない。
 感光性樹脂組成物が複素環化合物を含有する場合の配合量は、(A)ポリイミド前駆体又はポリイミド樹脂100質量部に対し、0.1~10質量部であることが好ましく、銅密着性の観点から0.5~5質量部がより好ましい。上記配合量が0.1質量部以上である場合、感光性樹脂組成物を銅上に形成した場合に、銅の変色が抑制され、一方、10質量部以下である場合、銅密着性に優れる。
(H)熱塩基発生剤
 感光性樹脂組成物は、塩基発生剤を含有していてもよい。塩基発生剤とは、加熱することで塩基を発生する化合物をいう。熱塩基発生剤を含有することで、感光性樹脂組成物のイミド化をさらに促進することができる。
 熱塩基発生剤としては、その種類を特に定めるものではないが、tert-ブトキシカルボニル基によって保護されたアミン化合物、又は国際公開第2017/038598号に開示された熱塩基発生剤等が挙げられる。しかしながら、これらに限定されず、その他にも公知の熱塩基発生剤を用いることができる。
 tert-ブトキシカルボニル基によって保護されたアミン化合物としては、例えば、エタノールアミン、3-アミノ-1-プロパノール、1-アミノ-2-プロパノール、2-アミノ-1-プロパノール、4-アミノ-1-ブタノール、2-アミノ-1-ブタノール、1-アミノ-2-ブタノール、3-アミノ-2,2-ジメチル-1-プロパノール、4-アミノ-2-メチル-1-ブタノール、バリノール、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、チラミン、ノルエフェドリン、2-アミノ-1-フェニル-1,3-プロパンジオール、2-アミノシクロヘキサノール、4-アミノシクロヘキサノール、4-アミノシクロヘキサンエタノール、4-(2-アミノエチル)シクロヘキサノール、N-メチルエタノールアミン、3-(メチルアミノ)-1-プロパノール、3-(イソプロピルアミノ)プロパノール、N-シクロヘキシルエタノールアミン、α-[2-(メチルアミノ)エチル]ベンジルアルコール、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、3-ピロリジノール、2-ピロリジンメタノール、4-ヒドロキシピペリジン、3-ヒドロキシピペリジン、4-ヒドロキシ-4-フェニルピペリジン、4-(3-ヒドロキシフェニル)ピペリジン、4-ピペリジンメタノール、3-ピペリジンメタノール、2-ピペリジンメタノール、4-ピペリジンエタノール、2-ピペリジンエタノール、2-(4-ピペリジル)-2-プロパノール、1,4-ブタノールビス(3-アミノプロピル)エーテル、1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン、2,2’-オキシビス(エチルアミン)、1,14-ジアミノ-3,6,9,12-テトラオキサテトラデカン、1-アザ-15-クラウン5-エーテル、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、1,11-ジアミノ-3,6,9-トリオキサウンデカン、並びに、アミノ酸及びその誘導体のアミノ基をtert-ブトキシカルボニル基によって保護した化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
 熱塩基発生剤の配合量は、(A)ポリイミド前駆体又はポリイミド樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは1質量部以上20質量部以下である。上記配合量は、イミド化促進効果の観点で0.1質量部以上であり、感光性樹脂組成物の硬化後の感光性樹脂層の物性の観点から20質量部以下であることが好ましい。
(I)ヒンダードフェノール化合物
 銅表面上の変色を抑制するために、感光性樹脂組成物は、ヒンダードフェノール化合物を任意に含んでもよい。ヒンダードフェノール化合物としては、限定されるものではないが、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,5-ジ-t-ブチル-ハイドロキノン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネ-ト、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4、4’-メチレンビス(2、6-ジ-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオ-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレイト、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が挙げられる。
 また、ヒンダードフェノール化合物としては、例えば、1,3,5-トリス(3-ヒドロキシ-2,6-ジメチル-4-イソプロピルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-s-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス[4-(1-エチルプロピル)-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス[4-トリエチルメチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(3-ヒドロキシ-2,6-ジメチル-4-フェニルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,5,6-トリメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-5-エチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-6-エチル-3-ヒドロキシ-2-メチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-6-エチル-3-ヒドロキシ-2,5-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-5,6-ジエチル-3-ヒドロキシ-2-メチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2-メチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,5-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-5‐エチル-3-ヒドロキシ-2-メチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
 これらの中でも、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン等が特に好ましい。
 ヒンダードフェノール化合物の配合量は、(A)ポリイミド前駆体又はポリイミド樹脂100質量部に対し、0.1~20質量部であることが好ましく、光感度特性の観点から0.5~10質量部であることがより好ましい。上記配合量が0.1質量部以上である場合、例えば銅又は銅合金の上に感光性樹脂組成物を形成した場合に、銅又は銅合金の変色・腐食が防止され、一方、20質量部以下である場合には光感度に優れる。
(J)有機チタン化合物
 感光性樹脂組成物は、有機チタン化合物を含有してもよい。有機チタン化合物を含有することにより、低温で硬化した場合であっても耐薬品性に優れる感光性樹脂層を形成できる。
 使用可能な有機チタン化合物としては、チタン原子に有機化学物質が共有結合又はイオン結合を介して結合しているものが挙げられる。
 有機チタン化合物の具体的例を以下のI)~VII)に示す:
 I)チタンキレート化合物:中でも、感光性樹脂組成物の保存安定性及び良好なパターンが得られることから、アルコキシ基を2個以上有するチタンキレートがより好ましい。具体的な例は、チタニウムビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキサイド、チタニウムジ(n-ブトキサイド)ビス(2,4-ペンタンジオネート、チタニウムジイソプロポキサイドビス(2,4-ペンタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)等である。
 II)テトラアルコキシチタン化合物:例えば、チタニウムテトラ(n-ブトキサイド)、チタニウムテトラエトキサイド、チタニウムテトラ(2-エチルヘキソキサイド)、チタニウムテトライソブトキサイド、チタニウムテトライソプロポキサイド、チタニウムテトラメトキサイド、チタニウムテトラメトキシプロポキサイド、チタニウムテトラメチルフェノキサイド、チタニウムテトラ(n-ノニロキサイド)、チタニウムテトラ(n-プロポキサイド)、チタニウムテトラステアリロキサイド、チタニウムテトラキス[ビス{2,2-(アリロキシメチル)ブトキサイド}]等である。
 III)チタノセン化合物:例えば、ペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリメトキサイド、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス(2,6-ジフルオロフェニル)チタニウム、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム等である。
 IV)モノアルコキシチタン化合物:例えば、チタニウムトリス(ジオクチルホスフェート)イソプロポキサイド、チタニウムトリス(ドデシルベンゼンスルホネート)イソプロポキサイド等である。
 V)チタニウムオキサイド化合物:例えば、チタニウムオキサイドビス(ペンタンジオネート)、チタニウムオキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、フタロシアニンチタニウムオキサイド等である。
 VI)チタニウムテトラアセチルアセトネート化合物:例えば、チタニウムテトラアセチルアセトネート等である。
 VII)チタネートカップリング剤:例えば、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート等である。
 中でも、有機チタン化合物は、上記I)チタンキレート化合物、II)テトラアルコキシチタン化合物、及びIII)チタノセン化合物から成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが、より良好な耐薬品性を奏するという観点から好ましい。特に、チタニウムジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムテトラ(n-ブトキサイド)、及びビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウムが好ましい。
 有機チタン化合物を配合する場合の配合量は、(A)ポリイミド前駆体又はポリイミド100質量部に対し、0.05~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1~2質量部である。上記配合量が0.05質量部以上である場合、良好な耐熱性及び耐薬品性が発現し、一方10質量部以下である場合、保存安定性に優れる。
(K)接着助剤
 感光性樹脂組成物を用いて形成される膜と基材との接着性向上のために、感光性樹脂組成物は、接着助剤を任意に含んでもよい。接着助剤としては、例えば、γ-アミノプロピルジメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ジメトキシメチル-3-ピペリジノプロピルシラン、ジエトキシ-3-グリシドキシプロピルメチルシラン、N-(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)スクシンイミド、N-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]フタルアミド酸、ベンゾフェノン-3,3’-ビス(N-[3-トリエトキシシリル]プロピルアミド)-4,4’-ジカルボン酸、ベンゼン-1,4-ビス(N-[3-トリエトキシシリル]プロピルアミド)-2,5-ジカルボン酸、3-(トリエトキシシリル)プロピルスクシニックアンハイドライド、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-(トリアルコキシシリル)プロピルスクシン酸無水物等のシランカップリング剤、及びアルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系接着助剤等が挙げられる。
 これらの接着助剤のうちでは、接着力の点からシランカップリング剤を用いることがより好ましい。感光性樹脂組成物が接着助剤を含有する場合、接着助剤の配合量は、(A)ポリイミド前駆体100質量部に対し、0.5~25質量部の範囲が好ましい。
 シランカップリング剤としては、限定されるものではないが、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製:商品名 KBM803、チッソ株式会社製:商品名 サイラエースS810)、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製:商品名 KBM573)、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン(アズマックス株式会社製:商品名 SIM6475.0)、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業株式会社製:商品名 LS1375、アズマックス株式会社製:商品名 SIM6474.0)、メルカプトメチルトリメトキシシラン(アズマックス株式会社製:商品名 SIM6473.5C)、メルカプトメチルメチルジメトキシシラン(アズマックス株式会社製:商品名 SIM6473.0)、3-メルカプトプロピルジエトキシメトキシシラン、3-メルカプトプロピルエトキシジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、3-メルカプトプロピルジエトキシプロポキシシラン、3-メルカプトプロピルエトキシジプロポキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシプロポキシシラン、3-メルカプトプロピルメトキシジプロポキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルジエトキシメトキシシラン、2-メルカプトエチルエトキシジメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリプロポキシシラン、2-メルカプトエチルトリプロポキシシラン、2-メルカプトエチルエトキシジプロポキシシラン、2-メルカプトエチルジメトキシプロポキシシラン、2-メルカプトエチルメトキシジプロポキシシラン、4-メルカプトブチルトリメトキシシラン、4-メルカプトブチルトリエトキシシラン、4-メルカプトブチルトリプロポキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、(3-トリエトキシシリルプロピル)―t―ブチルカルバメート、4,4-カルボニルビス(2-(((3-トリエトキシシリル)プロピル)アミノ)カルボニル)安息香酸、2-(3-トリエトキシシリルプロピルカルバモイル)安息香酸等が挙げられる。
 また、シランカップリング剤としては、限定されるものではないが、例えば、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)ウレア(信越化学工業株式会社製:商品名 LS3610、アズマックス株式会社製:商品名 SIU9055.0)、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)ウレア(アズマックス株式会社製:商品名 SIU9058.0)、N-(3-ジエトキシメトキシシリルプロピル)ウレア、N-(3-エトキシジメトキシシリルプロピル)ウレア、N-(3-トリプロポキシシリルプロピル)ウレア、N-(3-ジエトキシプロポキシシリルプロピル)ウレア、N-(3-エトキシジプロポキシシリルプロピル)ウレア、N-(3-ジメトキシプロポキシシリルプロピル)ウレア、N-(3-メトキシジプロポキシシリルプロピル)ウレア、N-(3-トリメトキシシリルエチル)ウレア、N-(3-エトキシジメトキシシリルエチル)ウレア、N-(3-トリプロポキシシリルエチル)ウレア、N-(3-トリプロポキシシリルエチル)ウレア、N-(3-エトキシジプロポキシシリルエチル)ウレア、N-(3-ジメトキシプロポキシシリルエチル)ウレア、N-(3-メトキシジプロポキシシリルエチル)ウレア、N-(3-トリメトキシシリルブチル)ウレア、N-(3-トリエトキシシリルブチル)ウレア、N-(3-トリプロポキシシリルブチル)ウレア、3-(m-アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン(アズマックス株式会社製:商品名 SLA0598.0)、m-アミノフェニルトリメトキシシラン(アズマックス株式会社製:商品名 SLA0599.0)、p-アミノフェニルトリメトキシシラン(アズマックス株式会社製:商品名 SLA0599.1)アミノフェニルトリメトキシシラン(アズマックス株式会社製:商品名 SLA0599.2)等が挙げられる。
 また、シランカップリング剤としては、例えば、2-(トリメトキシシリルエチル)ピリジン(アズマックス株式会社製:商品名 SIT8396.0)、2-(トリエトキシシリルエチル)ピリジン、2-(ジメトキシシリルメチルエチル)ピリジン、2-(ジエトキシシリルメチルエチル)ピリジン、(3-トリエトキシシリルプロピル)-t-ブチルカルバメート、(3-グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトラ-i-プロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトラ-i-ブトキシシラン、テトラ-t-ブトキシシラン、テトラキス(メトキシエトキシシラン)、テトラキス(メトキシ-n-プロポキシシラン)、テトラキス(エトキシエトキシシラン)、テトラキス(メトキシエトキシエトキシシラン)、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エチレン、ビス(トリエトキシシリル)オクタン、ビス(トリエトキシシリル)オクタジエン、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィド、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、ジ-t-ブトキシジアセトキシシラン、ジ-i-ブトキシアルミノキシトリエトキシシラン、フェニルシラントリオール、メチルフェニルシランジオール、エチルフェニルシランジオール、n-プロピルフェニルシランジオール、イソプロピルフェニルシランジオール、n-ブチルシフェニルシランジオール、イソブチルフェニルシランジオール、tert-ブチルフェニルシランジオール、ジフェニルシランジオール、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジメトキシジ-p-トリルシラン、エチルメチルフェニルシラノール、n-プロピルメチルフェニルシラノール、イソプロピルメチルフェニルシラノール、n-ブチルメチルフェニルシラノール、イソブチルメチルフェニルシラノール、tert-ブチルメチルフェニルシラノール、エチルn-プロピルフェニルシラノール、エチルイソプロピルフェニルシラノール、n-ブチルエチルフェニルシラノール、イソブチルエチルフェニルシラノール、tert-ブチルエチルフェニルシラノール、メチルジフェニルシラノール、エチルジフェニルシラノール、n-プロピルジフェニルシラノール、イソプロピルジフェニルシラノール、n-ブチルジフェニルシラノール、イソブチルジフェニルシラノール、tert-ブチルジフェニルシラノール、トリフェニルシラノール等が挙げられるが、これらに限定されない。
 上記で列挙されたシランカップリング剤は、単独でも複数組み合わせて用いてもよい。上記で列挙したシランカップリング剤の中でも、保存安定性の観点から、フェニルシラントリオール、トリメトキシフェニルシラン、トリメトキシ(p-トリル)シラン、ジフェニルシランジオール、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジメトキシジ-p-トリルシラン、トリフェニルシラノール、及び下記式:
で表される構造を有するシランカップリング剤が好ましい。
 シランカップリング剤を使用する場合の配合量としては、(A)ポリイミド前駆体又はポリイミド樹脂100質量部に対して、0.01~20質量部が好ましい。
(L)増感剤
 感光性樹脂組成物は、光感度を向上させるために、増感剤を任意に含んでもよい。該増感剤としては、例えば、ミヒラーズケトン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,5-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)シクロペンタン、2,6-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p-ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p-ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2-(p-ジメチルアミノフェニルビフェニレン)-ベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノフェニルビニレン)ベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3-ビス(4’-ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3’-カルボニル-ビス(7-ジエチルアミノクマリン)、3-アセチル-7-ジメチルアミノクマリン、3-エトキシカルボニル-7-ジメチルアミノクマリン、3-ベンジロキシカルボニル-7-ジメチルアミノクマリン、3-メトキシカルボニル-7-ジエチルアミノクマリン、3-エトキシカルボニル-7-ジエチルアミノクマリン、N-フェニル-N’-エチルエタノールアミン、N-フェニルジエタノールアミン、N-p-トリルジエタノールアミン、N-フェニルエタノールアミン、4-モルホリノベンゾフェノン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、2-メルカプトベンズイミダゾール、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ナフト(1,2-d)チアゾール、2-(p-ジメチルアミノベンゾイル)スチレン、2,2’-(フェニルイミノ)ジエタノール等が挙げられる。これらは単独で又は例えば2~5種類の組合せで用いることができる。
 感光性樹脂組成物が増感剤を含有する場合の配合量は、(A)ポリイミド前駆体又はポリイミド樹脂100質量部に対し、0.1~25質量部であることが好ましい。
(M)重合禁止剤
 感光性樹脂組成物は、特に溶剤を含む溶液の状態での保存時の感光性樹脂組成物の粘度及び光感度の安定性を向上させるために、重合禁止剤を任意に含んでもよい。重合禁止剤としては、ヒドロキノン、N-ニトロソジフェニルアミン、p-tert-ブチルカテコール、フェノチアジン、N-フェニルナフチルアミン、エチレンジアミン四酢酸、1,2-シクロヘキサンジアミン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、2,6-ジ-tert-ブチル-p-メチルフェノール、5-ニトロソ-8-ヒドロキシキノリン、1-ニトロソ-2-ナフトール、2-ニトロソ-1-ナフトール、2-ニトロソ-5-(N-エチル-N-スルホプロピルアミノ)フェノール、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、N-ニトロソ-N(1-ナフチル)ヒドロキシルアミンアンモニウム塩等が用いられる。
<硬化レリーフパターンの製造方法及び半導体装置>
 本開示の硬化レリーフパターンの製造方法は、以下の工程:(1)上述した本開示の感光性樹脂組成物を基板上に塗布して、感光性樹脂層を上記基板上に形成する工程と、(2)上記樹脂層を露光する工程と、(3)露光後の上記樹脂層を現像してレリーフパターンを形成する工程と、(4)上記レリーフパターンを加熱処理して、硬化レリーフパターンを形成する工程とを含む。
(1)樹脂層形成工程
 本工程では、感光性樹脂組成物を基材上に塗布し、必要に応じてその後乾燥させて感光性樹脂層を形成する。塗布方法としては、従来から感光性樹脂組成物の塗布に用いられていた方法、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷機等で塗布する方法、スプレーコーターで噴霧塗布する方法等を用いることができる。
(2)露光工程
 本工程では、上記で形成した樹脂層を、コンタクトアライナー、ミラープロジェクション、ステッパー等の露光装置を用いて、パターンを有するフォトマスク又はレチクルを介して又は直接に、紫外線光源等により露光する。
(3)レリーフパターン形成工程
 本工程では、露光後の感光性樹脂層のうち未露光部を現像除去する。露光(照射)後の感光性樹脂層を現像する現像方法としては、従来知られているフォトレジストの現像方法、例えば、回転スプレー法、パドル法、超音波処理を伴う浸漬法等の中から任意の方法を選択して使用することができる。また、現像の後、レリーフパターンの形状を調整する等の目的で、必要に応じて、任意の温度及び時間の組合せによる現像後ベークを施してもよい。
 現像に使用される現像液としては、例えば、感光性樹脂組成物に対する良溶媒、又は該良溶媒と貧溶媒との組合せが好ましい。良溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン等が好ましい。貧溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、乳酸エチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び水等が好ましい。良溶媒と貧溶媒とを混合して用いる場合には、感光性樹脂組成物中のポリマーの溶解性によって良溶媒に対する貧溶媒の割合を調整することが好ましい。また、各溶媒を2種以上、例えば数種類組合せて用いることもできる。
(4)硬化レリーフパターン形成工程
 本工程では、上記現像により得られたレリーフパターンを加熱処理して感光成分を希散させるとともに、(A)ポリイミド前駆体をイミド化させることによって、ポリイミドから成る硬化レリーフパターン(硬化膜)に変換する。加熱処理の方法としては、例えば、ホットプレートによるもの、オーブンを用いるもの、温度プログラムを設定できる昇温式オーブンを用いるもの等種々の方法を選ぶことができる。加熱処理は、例えば、160℃~350℃で30分~5時間の条件で行うことができる。加熱処理の温度は、銅密着性をより向上させるには、好ましくは350℃以下、より好ましくは230℃以下、更に好ましくは200℃以下、より更に好ましくは180℃以下である。また、銅マイグレーションをより抑制するには、温度は、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上である。加熱硬化時の雰囲気気体としては空気を用いてもよく、窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いることもできる。
<ポリイミド膜>
 本開示のポリイミド膜(硬化膜)は、本開示の感光性樹脂組成物を硬化することにより製造することができ、本開示は、本開示の感光性樹脂組成物の硬化物から形成される硬化膜も提供する。例えば、本開示の(A)ポリイミド樹脂を含有する感光性樹脂組成物は、前述の硬化レリーフパターンの製造方法に基づいてポリイミド膜を製造できる。また、例えば、本開示の(A)ポリイミド前駆体を含有する感光性樹脂組成物をイミド化して、イミド化率80~100%のポリイミド硬化物を形成することにより、ポリイミド膜を製造してもよい。この場合も、前述の硬化レリーフパターンの製造方法に基づいてポリイミド膜を製造できる。上記ポリイミド前駆体組成物から形成される硬化レリーフパターンに含まれるポリイミドの構造は、下記一般式で表される。
 一般式(4)及び(4’)中の好ましいX、Yは、同じ理由により、上記一般式で表される構造のポリイミドにおいても好ましい。上記一般式において、繰り返し単位数mは、特に限定は無いが、2~150の整数であってもよい。
<半導体装置>
 半導体装置は、上述した硬化レリーフパターンの製造方法により得られる硬化レリーフパターンを有することが好ましい。半導体装置は、半導体素子である基材と、上述した硬化レリーフパターン製造方法により該基材上に形成されたポリイミドの硬化レリーフパターンとを有することが好ましい。半導体装置は、基材として半導体素子を用い、本開示の硬化レリーフパターンの製造方法を工程の一部として製造することができる。より詳細に、半導体装置は、本開示の硬化レリーフパターンの製造方法で形成される硬化レリーフパターンを、表面保護膜、層間絶縁膜、再配線用絶縁膜、フリップチップ装置用保護膜、又はバンプ構造を有する半導体装置の保護膜等として形成することを含む、半導体装置の製造方法により製造することができる。
<表示体装置>
 表示体装置は、表示体素子と該表示体素子の上部に設けられた硬化膜とを備える表示体装置であって、該硬化膜は上述の硬化レリーフパターンであることが好ましい。ここで、当該硬化レリーフパターンは、当該表示体素子に直接接して積層されていてもよく、別の層を間に挟んで積層されていてもよい。例えば、該硬化膜として、TFT液晶表示素子及びカラーフィルター素子の表面保護膜、絶縁膜、及び平坦化膜、MVA型液晶表示装置用の突起、並びに有機EL素子陰極用の隔壁を挙げることができる。
 本開示の感光性樹脂組成物は、絶縁部材形成用、又は層間絶縁膜形成用の感光性樹脂組成物であることが好ましい。また、感光性樹脂組成物は、表面保護膜、層間絶縁膜、再配線用絶縁膜、フリップチップ装置用保護膜、又はバンプ構造を有する半導体装置の保護膜を形成するために用いることができる。本開示の感光性樹脂組成物は、上記のような半導体装置への適用の他、多層回路の層間絶縁膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、及び液晶配向膜等の用途にも有用である。
 以下、本開示の実施例を具体的に説明するが、実施形態はこれらに限定されるものではない。実施例、比較例、及び製造例においては、ポリイミド前駆体又は感光性樹脂組成物の物性を以下の方法に従って測定及び評価した。
<測定及び評価方法>
(1)重量平均分子量
 各樹脂の重量平均分子量(Mw)をゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(標準ポリスチレン換算)を用いて以下の条件下で測定した。
 ポンプ:JASCO PU-980
 検出器:JASCO RI-930
 カラムオーブン:JASCO CO-965 40℃
 カラム:昭和電工(株)製Shodex KD-806M 直列に2本、又は
     昭和電工(株)製Shodex 805M/806M直列
 標準単分散ポリスチレン:昭和電工(株)製Shodex STANDARD SM-105
 移動相:0.1mol/L LiBr/N-メチル-2-ピロリドン(NMP)
 流速:1mL/min.
(2)銅ボイド評価用硬化レリーフパターンの作製
 6インチシリコンウエハ(フジミ電子工業株式会社製、厚み625±25μm)上に、スパッタ装置(L-440S-FHL型、キヤノンアネルバ社製)を用いて200nm厚のチタン(Ti)、400nm厚の銅(Cu)をこの順にスパッタした。続いて、このウエハ上に、後述の方法により調製した感光性樹脂組成物をコーターデベロッパー(D-Spin60A型、SOKUDO社製)を用いて回転塗布し、110℃で180秒間ホットプレートにてプリベークを行い、約10μm厚の塗膜を形成した。この塗膜に、テストパターン付マスクを用いて、プリズマGHI(ウルトラテック社製)によりi線で650mJ/cm2のエネルギーを照射した。次いで、この塗膜を、現像液としてシクロペンタノンを用いて、未露光部が完全に溶解消失するまでの時間に1.4を乗じた時間に亘って、コーターデベロッパー(D-Spin60A型、SOKUDO社製)でスプレー現像し、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートで10秒間回転スプレーリンスすることにより、Cu上のレリーフパターンを得た。
 Cu上に該レリーフパターンを形成したウエハを、昇温プログラム式キュア炉(VF-2000型、光洋リンドバーグ社製)を用いて、窒素雰囲気下、230℃で2時間加熱処理することにより、Cu上に約6~9μm厚の樹脂から成る硬化レリーフパターンを得た。
(3)Cu上の硬化レリーフパターンの高温保存(high temperature storage)試験と、その後のボイド面積評価
 Cu上に該硬化レリーフパターンを形成したウエハを、昇温プログラム式キュア炉(VF-2000型、光洋リンドバーグ社製)を用いて、空気中、150℃で168時間加熱した。続いて、プラズマ表面処理装置(EXAM型、神港精機社製)を用いて、Cu上の樹脂層を全てプラズマエッチングにより除去し、樹脂が元々あった部分を次に述べる条件で観察し、銅ボイド評価を行った。プラズマエッチング条件は下記の通りである。
 出力:133W
 ガス種・流量:O:40mL/分 + CF4:1mL/分
 ガス圧:50Pa
 モード:ハードモード
 エッチング時間:4200秒
 樹脂層を全て除去したCu表面を、FE-SEM(S-4800型、日立ハイテクノロジーズ社製)によって下記の条件で観察し、画像解析ソフト(A像くん、旭化成社製)を用いて、Cu層の表面に占めるボイドの面積を算出した。
<観察条件>
・加速電圧:20kV
・SE検出器:混合、BSE-L(L.A. 5)
・プローブ電流:High
・Working Distance:8mm
・Tilt:0°
・観察倍率:1000倍
 比較例1に記載の感光性樹脂組成物を評価した際のボイドの総面積を100%とした際に、ボイドの総面積比率が50%未満のものを「A」、50%以上70%未満のものを「B」、70%以上100%未満のものを「C」、100%以上のものを「D」と判定した。評価B以上であれば、半導体向けの硬化レリーフパターンとして好適に用いることが出来る。
(4)銅密着性評価
 6インチシリコンウェハー(フジミ電子工業株式会社製、厚み625±25μm)上に、スパッタ装置(L-440S-FHL型、キヤノンアネルバ社製)を用いて200nm厚のチタン(Ti)、400nm厚の銅(Cu)をこの順にスパッタした。続いて、このウェハー上に、硬化後の膜厚が約9μmとなるように感光性樹脂組成物を回転塗布乾燥した後、平行光マスクアライナー(PLA-501FA型、キヤノン社製)により800mJ/cmを全面に露光した。昇温プログラム式キュア炉(VF-2000型、光洋リンドバーグ社製)を用いて、窒素雰囲気下にて、表1~4に記載の通りの温度で2時間加熱して硬化レリーフパターン(熱硬化したポリイミドの塗膜)を得た。加熱処理後の膜にJIS K 5600-5-6規格のクロスカット法に準じて、銅基板/硬化樹脂塗膜間の接着特性を以下の基準に基づき、評価した。評価B以上であれば、半導体向けの硬化レリーフパターンとして好適に用いることが出来る。
 A:基板に接着している硬化樹脂塗膜の格子数が100
 B:基板に接着している硬化樹脂塗膜の格子数が80以上~100未満
 C:基板に接着している硬化樹脂塗膜の格子数が40以上~80未満
 D:基板に接着している硬化樹脂塗膜の格子数が40未満
(5)b-Hast試験
 シリコンウエハ上に、ライン/スペース=10μm/10μm、高さ5μmのくしば型のCu配線を形成したTEGウエハを用意した。そのTEGウエハを、1%酢酸水溶液に1分間浸漬した後、イオン交換水で流水洗浄しエアーガンで乾燥した。そして、低圧プラズマ(神港精機社製、EXAM)により40mL/分、133W、50Paにて20秒間酸素プラズマを行った。その後、膜厚が10μmとなるように感光性樹脂組成物をコーターデベロッパー(D-Spin60A型、SOKUDO社製)を用いて回転塗布し、110℃で180秒間ホットプレートにてプリベークを行い、TEGウエハ上に塗膜を形成した。そして、平行光マスクアライナー(PLA-501FA型、キヤノン社製)により800mJ/cm2を露光した。この時、b-HAST試験時の導通を取るためCu電極部分は光が照射されないようマスクした状態で露光し、次の現像で未露光部は除去した。露光後、30分以上経過した後、コーターデベロッパー(D-Spin60A型、SOKUDO社製)にて、23℃で現像液としてシクロペンタノンを用いて、未露光部が完全に溶解消失するまでの時間の1.4倍の時間にて回転スプレー現像を施し、引き続きプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで10秒間回転スプレーリンスした。その後、昇温プログラム式キュア炉(VF-2000型、光洋リンドバーグ社製)を用いて、窒素雰囲気下、表2~4に記載の温度で2時間加熱して硬化レリーフパターンを得た。
 エスペック株式会社製)と高度加速寿命試験装置HASTチャンバー(EHS-222M、エスペック株式会社製)を用いて、130℃、85%RH環境下で50Vの印加電圧にてb-HAST試験を実施した。30分間隔で銅配線間の絶縁抵抗値を測定し、1×104Ω以下になったら絶縁破壊とした。試験開始から絶縁破壊までの時間を算出し、以下の基準に基づき評価した。評価D以上であれば、半導体向けの硬化レリーフパターンとして好適に用いることが出来る。
 A:絶縁破壊まで250時間以上
 B:絶縁破壊まで200時間以上~250時間未満
 C:絶縁破壊まで150時間以上~200時間未満
 D:絶縁破壊まで100時間以上~150時間未満
 E:絶縁破壊まで100時間未満
<製造例>
製造例1:(A)ポリイミド前駆体A1の合成
 4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)124.0g、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)29.4gを2L容量のセパラブルフラスコに入れ、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)131.2gとγ-ブチロラクトン(以下GBL)400mLを入れて室温下で攪拌し、攪拌しながらピリジン81.5gを加えて反応混合物を得た。反応による発熱の終了後に反応混合物を室温まで放冷し、16時間放置した。
 次に、氷冷下において、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)206.3gをγ-ブチロラクトン200mLに溶解した溶液を攪拌しながら20分掛けて反応混合物に加え、続いて4,4’-オキシジアニリン(ODA)93.0gをγ-ブチロラクトン350mLに懸濁したものを攪拌しながら30分掛けて加えた。更に室温で4時間攪拌した後、エチルアルコール30mLを加えて1時間攪拌し、次に、γ-ブチロラクトン400mLを加えた。反応混合物に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応液を得た。
 得られた反応液を3Lのエチルアルコールに加えて粗ポリマーから成る沈殿物を生成した。生成した粗ポリマーを濾別し、テトラヒドロフラン1.5Lに溶解して粗ポリマー溶液を得た。得られた粗ポリマー溶液を28Lの水に滴下してポリマーを沈殿させ、得られた沈殿物を濾別した後、真空乾燥して粉末状のポリマー(ポリイミド前駆体A1)を得た。ポリイミド前駆体A1の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は24,000であった。
製造例2:(A)ポリイミド前駆体A2の合成
 4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)124.0g及び3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)29.4gに代えて、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)147.1gを用いた以外は、前述の製造例1に記載の方法と同様にして反応を行い、ポリマー(ポリイミド前駆体A2)を得た。ポリイミド前駆体A2の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は24,000であった。
製造例3:(A)ポリイミド前駆体A3の合成
 4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)124.0g及び3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)29.4gに代えて、4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)155.1gを用いた以外は、前述の製造例1に記載の方法と同様にして反応を行い、ポリマー(ポリイミド前駆体A3)を得た。ポリイミド前駆体A3の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は21,000であった。
製造例4:(A)ポリイミド前駆体A4の合成
 4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)124.0及び3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)29.4gに代えて、4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)155.1gを用い、4,4’-オキシジアニリン(ODA)93.0gに代えて、2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジアミン(m-TB)98.6gを用いた以外は、前述の製造例1に記載の方法と同様にして反応を行い、ポリマー(A4)を得た。ポリマー(A4)の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は21,000であった。
製造例5:(A)ポリイミド前駆体A5の合成
4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)124.0及び3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)29.4gに代えて、4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)155.1gを用い、4,4’-オキシジアニリン(ODA)93.0gに代えて、1,4―フェニレンジアミン(pPD)49.2gを用いた以外は、前述の製造例1に記載の方法と同様にして反応を行い、ポリマー(ポリイミド前駆体A5)を得た。ポリイミド前駆体A5の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は21,000であった。
製造例6:(A)ポリイミド前駆体A6の合成
 製造例4の4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)155.1gに代えて、4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)62gおよびピロメリット酸二無水物(PMDA)88.3gを用いた以外は、前述の製造例1に記載の方法と同様にして反応を行い、ポリマー(ポリイミド前駆体A6)を得た。ポリイミド前駆体A6の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は28,000であった。
製造例7:(A)ポリイミド樹脂A7の合成
 ディーンスターク抽出装置を取り付け、窒素置換した三口フラスコにN-メチル-2-ピロリドン(以下NMP)200gと6-(4-アミノフェノキシ)ビフェニル-3-アミン(PDPE)33.1g(0.012mol)を加え溶解させ、これに対してビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物(BCD)24.8g(0.1mol)及びトルエン50.0gを加えて180℃に加熱した。ディーンスターク抽出装置に理論量の水と添加したトルエンが抽出されたことを確認した後、加熱を止め室温まで冷却した。得られた反応液を2000gのイオン交換水に滴下してポリマーを沈殿させ、濾別した後、40℃で真空乾燥して粉末状のポリマー(ポリイミド樹脂A7)を得た。ポリイミド樹脂A7の重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、Mw=14,300であった。
製造例8:(A)ポリイミド樹脂A8の合成
 製造例7のNMPをGBLに変更し、PDPEの添加量を23.0g(0.083mol)に変更、BCDを4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)44.4g(0.1mol)に変更した以外は製造例7と同様にして、ポリイミド樹脂A8を得た。ポリイミド樹脂A8の重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、Mw=14,000であった。
製造例9:(A)ポリイミド樹脂A9の合成
 製造例7のNMPをGBLに変更し、PDPEを9,9’-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(BAFL)30.1g(0.088mol)に変更し、BCDを1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸無水物(CBDA)19.6g(0.1mol)に変更した以外は製造例7と同様にして、ポリイミド樹脂A9を得た。ポリイミド樹脂A9の重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、Mw=29,000であった。
製造例10:(A)ポリイミド樹脂A10の合成(MOI変性BCD-PDPE)
 ディーンスターク抽出装置を取り付け、窒素置換した三口フラスコにGBL200gとPDPE33.1g(0.12mol)を加え溶解させ、これに対してBCD24.8g(0.1mol)及びトルエン50.0gを加えて180℃に加熱した。ディーンスターク抽出装置に理論量の水と添加したトルエンが抽出されたことを確認した後、加熱を止め室温まで冷却した。
 次に、室温において、2-イソシアナトエチルメタクリレート(以下MOI)6.2gを加えて、室温で12時間反応させた。得られた反応液を2000gのイオン交換水に滴下してポリマーを沈殿させ、濾別した後、40℃で真空乾燥して粉末状のポリマー(ポリイミド樹脂A10)を得た。ポリイミド樹脂A10の重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、Mw=15,200であった。
<実施例1>
 ポリイミド前駆体A1を用いて以下の方法で感光性樹脂組成物を調製し、調製した組成物の評価を行った。(A)ポリイミド前駆体A1:製造例1に記載のポリイミド前駆体100g、(B)テトラゾール化合物B1:1H-テトラゾール-5-カルボン酸(Advanced ChemBlocks社製)3g、(C)光重合開始剤C1:TR-PBG-3057(TRONLY社製)3g、(E)ラジカル重合性化合物E1:NKエステル A-9300(新中村化学工業社製)10gを、(D)溶剤D1:γ-ブチロラクトン(以下ではGBLと表記、三菱ケミカル社製)80gと、溶剤D2:ジメチルスルホキシド(以下ではDMSOと表記、東レ・ファインケミカル社製)20gとの混合溶媒に溶解した。得られた溶液の粘度を、必要量のGBL:DMSO=80:20(質量比)の溶液を加えることによって約40ポイズに調整し、感光性樹脂組成物とした。該組成物を、前述の方法に従って評価した。結果を表1に示す。
<実施例2~51、比較例1~13>
 溶剤以外は表1~4に示すとおりの配合比で調整し、それ以外は、実施例1と同様に溶剤に溶解し粘度を調整することで感光性樹脂組成物を調製した。そして、銅密着性と銅ボイド評価又はb-HAST試験とを行い、銅密着性と銅マイグレーション性能を評価した。その結果を表1~4に示す。表1~4に記載されている化合物はそれぞれ以下のとおりである。
(A)ポリイミド前駆体もしくはその比較となるポリマー
A1:製造例1に記載のポリイミド前駆体
A2:製造例2に記載のポリイミド前駆体
A3:製造例3に記載のポリイミド前駆体
A4:製造例4に記載のポリイミド前駆体
A5:製造例5に記載のポリイミド前駆体
A6:製造例6に記載のポリイミド前駆体
A7:製造例7に記載のポリイミド樹脂
A8:製造例8に記載のポリイミド樹脂
A9:製造例9に記載のポリイミド樹脂
A10:製造例10に記載のポリイミド樹脂
A1’:ZCR-1797H(ビフェニル骨格を有するエポキシアクリレートの酸変性物、日本化薬社製)
(B)テトラゾール化合物
B1:1H-テトラゾール-5-カルボン酸(Advanced ChemBlocks社製)
B2:1H-テトラゾール-5-カルボン酸エチル(東京化成工業社製)
B3:1H-テトラゾール-5-酢酸(東京化成工業社製)
B4:1H-テトラゾール-5-酢酸エチル(東京化成工業社製)
B5:2-(2H―テトラゾール-5―イル)ブタン二酸 (Enamine Building Blocks社製)
B6:2,2-ビス(2-2H-テトラゾール-5―イル)エチル)プロパン二酸 (Chemieliva pharmaceutical社製)
B7:4-(1H-テトラゾール-5-イル)安息香酸(東京化成工業社製)
B8:1H-テトラゾール-5-プロピオン酸(Enamine Building Blocks社製)
B1’:5-アミノ-1H-テトラゾール(東京化成工業社製)
B2’:5-フェニルテトラゾール(東京化成工業社製)
B3’:1-メチルテトラゾール(東京化成工業社製)
(C)光重合開始剤
C1:TR-PBG3057(常州強力電子新材料社製)
C2:1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-ベンゾイル)オキシム (製品名 KZ-941、常州強力電子新材料社製)
C3:エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム) (製品名Irgacure OXE02、BASF社製)
(D)溶剤
D1:GBL(三菱ケミカル社製)
D2:DMSO(東レ・ファインケミカル社製)
(E)ラジカル重合開始剤
E1:トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート (製品名 NKエステル A-9300 新中村化学工業社製)
E2:テトラエチレングリコールジメタクリレート(商品名:NKエステル 4G、新中村化学工業社製) 
E3:メトキシノナエチレングリコールモノメタクリレート(製品名 PME-400 日油株式会社製)
E4:ペンタエリスリトールテトラアクリレート (製品名 A-TMMT 新中村化学工業社製)
E5:ジペンタエリスリトールポリアクリレート(製品名 A-DPH 新中村化学工業社製)
(F)熱架橋剤
F1:アルキル化尿素樹脂(製品名 ニカラック MX-290 株式会社三和ケミカル社製)
F2:1,3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル(製品名 ニカラック MX-270 株式会社三和ケミカル社製)
(G)複素環化合物
G1:ベンゾトリアゾール(東京化成工業社製)
G2:5-カルボキシベンゾトリアゾール(東京化成工業社製)
G3:8-アザアデニン(東京化成工業社製)
(J)有機チタン化合物
J1:ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセテート)(製品名 オルガチックス TC-750 マツモトファインケミカル社製)
(K)接着助剤
K1:N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(製品名 KBM573 信越化学工業社製)
K2:(3-トリエトキシシリルプロピル)-t-ブチルカルバメート(Gelest社製)
K3:2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(東京化成工業社製)
K4:4,4-カルボニルビス(2-(((3-トリエトキシシリル)プロピル)アミノ)カルボニル)安息香酸(自社製)
K5:2-(3-トリエトキシシリルプロピルカルバモイル)安息香酸(自社製)
(L)増感剤
L1:2,2’-(フェニルイミノ)ジエタノール(関東化学社製)
 表1のとおり、実施例3、8及び11~14の感光性樹脂組成物では、銅密着性はAとなり、銅ボイド抑制もAとなった。実施例4及び9の感光性樹脂組成物では、銅ボイド抑制はAであるものの、銅密着性はBであった。実施例1~2、5~7及び10の感光性樹脂組成物は、いずれも銅密着性及び銅ボイド抑制がBであった。一方、比較例1~2では、銅密着性及び銅ボイドのいずれもCとなり、比較例3~6では、銅ボイド抑制及び銅密着性がDとなった。
 表2~4の結果を見ると、本開示の要件を満たさない比較例7~13は、銅密着性と銅マイグレーション性能(b-HAST試験結果)の両方を良好にすることが出来ない。一方で、実施例15~51は密着性と銅マイグレーション性能の両方とも優れた性能を示している。比較例7~11及び比較例13と実施例16との比較、及び、比較例12と実施例47との比較から、本開示における(B)テトラゾール化合物を使用することで、銅密着性及び銅マイグレーション性能が向上することが分かる。比較例7~10は、テトラゾール化合物を含んでいるものの、一般式(1)又は(2)の構造を有するものではなく、また、pKa及びtPSAも本開示の好ましい範囲を満たさないため十分な効果が得られていない。比較例11~13は、pKa又は/及びtPSAにおいて本開示の好ましい範囲を満たす複素環化合物を含むが、該複素環化合物はテトラゾール化合物ではないため十分な効果を得られていない。
 続いて実施例を見ると、実施例16~20は(B)テトラゾール化合物の含有量が異なる組成だが、含有量が0.01~10質量部の範囲である実施例16、18、19がより銅密着性と銅マイグレーション性能が優れている。また、実施例16と実施例23、または実施例18と実施例24~28を比較すると、キュア温度を上げることで銅マイグレーション性は改善するが、しかしながら、銅密着性は230℃以下、更には200℃以下の方が良好であることが分かる。実施例31と実施例30を比較すると、(E)ラジカル重合性化合物を含有することで、銅マイグレーションが改善することが分かる。また、実施例34と実施例33を比較すると、(F)熱架橋剤を含有することで銅マイグレーションが改善することが分かる。実施例38と実施例16を比較すると、(G)接着助剤を含有することで銅密着が改善することが分かる。更に、実施例33と実施例32を比較すると、(E)ラジカル重合性化合物の含有量が20~80質量部の範囲にある実施例32の方が、銅マイグレーションが良好であることが分かる。
 本開示による感光性樹脂組成物を用いることで、銅密着性と銅ボイド抑制に優れ、かつb-HAST試験における銅マイグレーションが少ない硬化レリーフパターンを得ることができる。本開示の感光性樹脂組成物は、例えば半導体装置、多層配線基板等の電気・電子材料の製造に有用な感光性材料の分野で好適に利用できる。より具体的には、例えば、電子部品の絶縁材料、並びに半導体装置におけるパッシベーション膜、バッファーコート膜及び層間絶縁膜等のレリーフパターンの形成等に用いることができる。

Claims (18)

  1.  以下の成分:
    (A)ポリイミド前駆体及び/又はポリイミド樹脂と、
    (B)テトラゾール化合物と、
    (C)光重合開始剤と、
    (D)溶剤と
    を含む、感光性樹脂組成物であって、
     前記(B)テトラゾール化合物のpKaが1.3~4.1である、感光性樹脂組成物。
  2.  以下の成分:
    (A)ポリイミド前駆体及び/又はポリイミド樹脂と、
    (B)テトラゾール化合物と、
    (C)光重合開始剤と、
    (D)溶剤と
    を含む、感光性樹脂組成物であって、
     前記(B)テトラゾール化合物が、下記一般式(1):
    {式(1)中、Rは、水素原子、又は炭素数1~10のアルキル基及び炭素数6~10のアリール基からなる群から選択される1価の有機基である。前記アルキル基及び前記アリール基の水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシシリル基、及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも一つの置換基により置換されていても、置換されていなくてもよい。}
    又は下記一般式(2):
    {式(2)中、Rは、水素原子、又は炭素数1~10のアルキル基及び炭素数6~10のアリール基からなる群から選択される1価の有機基である。Rは炭素数1~10のアルキレン基である。前記アルキル基、前記アリール基及び前記アルキレン基の水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシシリル基、及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも一つの置換基により置換されていても、置換されていなくてもよい。}
    で表される化合物を含む、感光性樹脂組成物。
  3.  以下の成分:
    (A)ポリイミド前駆体及び/又はポリイミド樹脂と、
    (B)テトラゾール化合物と、
    (C)光重合開始剤と、
    (D)溶剤と
    を含む、感光性樹脂組成物であって、
     前記(B)テトラゾール化合物の極性表面積(tPSA)が81~200である、感光性樹脂組成物。
  4.  前記(A)成分100質量部に対する前記(B)成分の含有量が0.01~10質量部である、請求項1~3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
  5.  前記(B)テトラゾール化合物が、下記一般式(3)で表される化合物を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
    {式(3)中、Rは、水素原子、又は炭素数1~10のアルキル基及び炭素数6~10のアリール基からなる群から選択される1価の有機基である。前記アルキル基及び前記アリール基の水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシシリル基、及びアミノ基からなる群から選択される少なくとも一つの置換基により置換されていても、置換されていなくてもよい。}
  6.  前記(B)テトラゾール化合物が、下記式で表される化合物を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
  7.  (E)ラジカル重合性化合物を更に含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
  8.  前記(A)成分100質量部に対する前記(E)成分の含有量が20~80質量部である、請求項7に記載の感光性樹脂組成物。
  9.  前記感光性樹脂組成物が前記ポリイミド前駆体を含み、前記ポリイミド前駆体が、下記一般式(4):
    {式(4)中、Xは四価の有機基であり、Yは二価の有機基であり、nは2~150の整数であり、そしてR11及びR12はそれぞれ独立に、水素原子、又は一価の有機基である。}
     で表される、かつ/又は
     前記感光性樹脂組成物が前記ポリイミド樹脂を含み、前記ポリイミド樹脂が、下記一般式(4’):
    {式(4’)中、Xは四価の有機基であり、Yは二価の有機基であり、nは1~150の整数である。}
    で表される構造単位を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
  10.  上記一般式(4)において、R11及びR12の少なくとも一方が、下記一般式(5):
    {式(5)中、L、L及びLは、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数1~3の一価の有機基であり、そしてmは、2~10の整数である。}
    で表される構造単位を有する、請求項9に記載の感光性樹脂組成物。
  11.  前記一般式(4’)のXが、下記一般式(6)~(14)で表される構造から選択される少なくとも一つであり、又は、前記一般式(4’)のYが、下記一般式(15)~(23)で表される構造から選択される少なくとも一つである、請求項9に記載の感光性樹脂組成物。
  12.  (F)熱架橋剤を更に含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
  13.  (K)接着助剤を更に含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
  14.  前記感光性樹脂組成物は、表面保護膜、層間絶縁膜、再配線用絶縁膜、フリップチップ装置用保護膜、又はバンプ構造を有する半導体装置の保護膜を形成するための感光性樹脂組成物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
  15.  以下の工程:
     (1)請求項1~3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布して、感光性樹脂層を前記基板上に形成する工程と、
     (2)前記感光性樹脂層を露光する工程と、
     (3)前記露光後の感光性樹脂層を現像して、レリーフパターンを形成する工程と、
     (4)前記レリーフパターンを加熱処理して、硬化レリーフパターンを形成する工程と
    を含む、硬化レリーフパターンの製造方法。
  16.  前記工程(4)の加熱処理は、350℃以下の加熱処理である、請求項15に記載の硬化レリーフパターンの製造方法。
  17.  請求項1~3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物を含む、硬化膜。
  18.  請求項1~3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を硬化することを含む、ポリイミド膜の製造方法。
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