WO2024089879A1 - 引張ばね - Google Patents

Abstract

引張ばねの初張力を大きくしても形状を安定させることが可能な引張ばねを提供する。軸方向に複数の巻部３ａを有するコイル状である外コイル部３と、軸方向に複数の巻部５ａを有し外コイル部３よりも小径のコイル状であり外コイル部３内に配置された内コイル部５とを備え、外コイル部３及び内コイル部５の一方の隣接する巻部３ａ、５ａ間に外コイル部３及び内コイル部５の他方の対応する巻部５ａ、３ａが嵌合することにより、少なくとも外コイル部３及び内コイル部５の一方の隣接する巻部３ａ、５ａ間が外コイル部３及び内コイル部５の他方の線径よりも小さい範囲で自由状態から拡げられて初張力を生じさせ、且つ初張力による外コイル部３の巻部３ａと内コイル部５の巻部５ａとの径方向の変位を抑制する。

Description

引張ばね

　本発明は、照明機器のアームやロボットアームのバランサー等に供される引張ばねに関する。

　この種の引張ばねとしては、例えば特許文献１のように、ロボットアームのバランサーに適用され、アームの重量等による負荷とは反対方向に引張力を作用させて、駆動源の負荷を軽減させるものがある。

　このようなバランサー等に適用される引張ばねには、例えばゼロ長ばねのように大きな初張力（無荷重時でも常時コイル素線同士を互いに密着させようとする力）を要求されることがある。

　しかし、一般的な引張ばねでは、初張力を大きくすると、コイル状の巻部が径方向に変位してしまい、形状が安定しないおそれがあった。

特開２０１７－１３１６８号公報

　解決しようとする問題点は、初張力を大きくすると形状が安定しないおそれがあった点である。

　本発明は、軸方向に複数の巻部を有するコイル状である外コイル部と、前記軸方向に複数の巻部を有する前記外コイル部よりも小径のコイル状であり前記外コイル部内に配置された内コイル部とを備え、前記外コイル部及び前記内コイル部の一方の隣接する巻部間に前記外コイル部及び前記内コイル部の他方の対応する巻部が嵌合することにより、少なくとも前記外コイル部及び前記内コイル部の一方の隣接する巻部間が前記外コイル部及び前記内コイル部の他方の線径よりも小さい範囲で自由状態から拡げられて初張力を生じさせ、且つ該初張力による前記外コイル部の巻部と前記内コイル部の巻部との前記径方向の変位を抑制する引張ばねを提供する。

　本発明によれば、引張ばねの初張力を大きくしても形状を安定させることができる。

図１は、本発明の実施例１に係る引張ばねを示す断面図である。 図２は、図１の引張ばねの巻部断面を示す概略断面図である。 図３（Ａ）は、図２の引張ばねの外コイル部の巻部断面を示す概略断面図であり、図３（Ｂ）は同内コイル部の巻部断面を示す概略断面図である。 図４は、本発明の実施例２に係る引張ばねの巻部断面を示す概略断面図である。 図５は、図４の引張ばねを９０度回転させた状態を示す概略断面図である。 図６は、本発明の実施例３に係る引張ばねの巻部断面を示す概略断面図である。

　引張ばねの初張力を大きくしても形状を安定させることを可能にするという目的を、内外コイル部からなる引張ばねによって実現した。

　すなわち、引張ばね（１）は、外コイル部（３）と内コイル部（５）とを備える。外コイル部（３）は、軸方向に複数の巻部（３ａ）を有するコイル状である。内コイル部（５）は、軸方向に複数の巻部（５ａ）を有する外コイル部（３）よりも小径のコイル状であり、外コイル部（３）内に配置されている。外コイル部（３）及び内コイル部（５）の一方の隣接する巻部（３ａ、５ａ）間に、外コイル部（３）及び内コイル部（５）の他方の対応する巻部（５ａ、３ａ）が嵌合する。

　これにより、少なくとも外コイル部（３）及び内コイル部（５）の一方の隣接する巻部（３ａ、５ａ）間が、外コイル部（３）及び内コイル部（５）の他方の線径よりも小さい範囲で自由状態から拡げられて、初張力を生じさせる。且つ、初張力による外コイル部（３）の巻部（３ａ）と内コイル部（５）の巻部（５ａ）との径方向の変位を抑制する。

　外コイル部（３）及び内コイル部（５）の一方の隣接する巻部（３ａ、５ａ）と外コイル部（３）及び内コイル部（５）の他方の対応する巻部（５ａ、３ａ）は、嵌合により相互に接触し、巻部（３ａ、５ａ）の接触位置は、初張力による外コイル部（３）の巻部（３ａ）と内コイル部（５）の巻部（５ａ）を径方向へ変位させる力に応じ、外コイル部（３）の巻部（３ａ）及び内コイル部（５）の巻部（５ａ）の線径と、外コイル部（３）及び内コイル部（５）のコイル状の径とによって設定してもよい。

　外コイル部（３）及び内コイル部（５）の少なくとも一方は、軸方向の両端部にフック（３ｃ、５ｃ、７）が設けられた構成としてもよい。

　フック（３ｃ、５ｃ）は、外コイル部（３）及び内コイル部（５）の双方の軸方向の両端部にそれぞれ一体に設けられた構成としてもよい。

　或いは、フック（７）は、外コイル部（３）の軸方向の両端部に取り付けられ、それぞれ外コイル部（３）の端部開口（３ｄ）に位置するベース部（９）と、このベース部（９）に取り付けられたフック部（１１）とを備えた構成としてもよい。

　図１は、本発明の実施例１に係る引張ばねを示す断面図、図２は、同一部の巻部断面を示す概略断面図、図３（Ａ）は、図２の引張ばねの外コイル部の巻部断面を示す概略断面図であり、図３（Ｂ）は同内コイル部の巻部断面を示す概略断面図である。

　本実施例の引張ばね１は、例えば、照明機器のアームやロボットアームのバランサー等の初張力（無荷重時でも常時コイル素線同士を互いに密着させようとする力）が必要な機器に用いられるものである。

　この引張ばね１は、外コイル部３と、内コイル部５とで構成されている。

　外コイル部３及び内コイル部５は、それぞれコイルばねからなり、軸方向に複数の巻部３ａ、５ａを有するコイル状となっている。本実施例において、外コイル部３は、自由状態で隣接する巻部３ａ間に軸方向の隙間３ｂを有し、内コイル部５は、自由状態で隣接する巻部５ａ間が軸方向で密着した密着ばねからなる。

　なお、軸方向とは、引張ばね１の軸線に沿った方向をいい、径方向とは、引張ばね１のコイル状の径に沿った方向をいう（以下、同じ。）。ただし、軸方向及び径方向は、厳格に解する必要はなく、軸方向は、引張ばね１の軸線に対して僅かに傾斜した方向も含み、径方向は、コイル状の径に対して僅かに傾斜した方向も含む。

　外コイル部３の巻部３ａの隙間３ｂの軸方向寸法（ピッチ）は、一定となっている。ただし、ピッチは、変動させてもよい。密着ばねである内コイル部５は、引張ばね１に要求される特性に応じ、自由状態で初張力を有してもよい。本実施例の内コイル部５は、自由状態で初張力を有しないものとする。

　外コイル部３及び内コイル部５の材質は、何れも金属や樹脂等の適宜のものとすることが可能である。また、外コイル部３及び内コイル部５の素線（巻部３ａ、５ａ）の断面形状は、同一線径の円形となっている。

　ただし、この断面形状は、円形に限られるものではなく、半円や楕円等とすることも可能である。また、外コイル部３及び内コイル部５の断面形状、線径、材質等は相互に異なってもよい。

　内コイル部５は、外コイル部３よりも小径のコイル状であり、外コイル部３内に配置されている。ここでの小径とは、内コイル部５のコイル状の径が外コイル部３のコイル状の径よりも小さいことを意味する。

　内コイル部５及び外コイル部３のコイル状の径は、外径、内径、中心径の何れかであればよい。本実施例において、内コイル部５及び外コイル部３のコイル状の径は、軸方向の一端から他端に至るまで一定となっているが、軸方向で変動させてもよい。

　かかる外コイル部３及び内コイル部５は、それぞれ隣接する巻部３ａ、５ａ間に相手方の対応する巻部５ａ、３ａが嵌合している。すなわち、外コイル部３の隣接する巻部３ａ間には、内コイル部５の対応する巻部５ａが内側から嵌合し、内コイル部５の隣接する巻部５ａ間には、外コイル部３の対応する巻部３ａが外側から嵌合している。

　かかる嵌合により、外コイル部３の巻部３ａは、内コイル部５の隣接する巻部５ａに接触し、コイル状の径の差に応じて隣接する巻部５ａ間を軸方向に押し広げている。これによって、内コイル部５の隣接する巻部５ａ間に外コイル部３の線径よりも小さい隙間５ｂを区画すると共に、引張ばね１に内コイル部５の弾性による初張力を生じさせている。

　すなわち、引張ばね１は、内コイル部５の巻部５ａ間が外コイル部３の線径よりも小さい範囲で自由状態から拡げられ、初張力を生じさせる構成となっている。なお、巻部５ａ間の拡げ量は、外コイル部３及び内コイル部５のコイル状の径の差と、外コイル部３及び内コイル部５の線径の差で設定できる。本実施例では、外コイル部３及び内コイル部５の線径が同一であるため、外コイル部３及び内コイル部５のコイル状の径の差で巻部５ａ間の拡げ量が設定される。

　初張力は、この拡げ量と、外コイル部の自由状態のピッチ、内コイル部５及び外コイル部３の材質の何れか一つ、複数、或いは全部によって設定することができる。初張力を生じさせるには、内コイル部５及び外コイル部３の少なくとも一方の隙間３ｂ、５ｂが自由状態から拡げられればよい。この限りにおいて、内コイル部５は、密着ばねでなくてもよく、自由状態で巻部５ａ間に隙間を有するものであってもよい。

　また、外コイル部３を、密着ばね或いは隙間３ｂを小さくして巻部３ａ間が自由状態から拡げられる構成としてもよい。この場合、内コイル部５は、巻部５ａ間が自由状態から拡げられる構成だけでなく、ピッチ等の設定により自由状態から拡がらない構成とすることも可能である。

　外コイル部３及び内コイル部５の隣接する巻部３ａ、５ａと相手方の対応する巻部５ａ、３ａとの接触は、巻部３ａ及び５ａが径方向で部分的に重なる範囲において行われる。この接触により、外コイル部３の巻部３ａ及び内コイル部５の巻部５ａは、初張力による径方向の変位を相互に抑制するようになっている。

　従って、引張ばね１は、初張力を大きくしても、それによる外コイル部３及び内コイル部５の巻部３ａ及び５ａの径方向への変位が抑制され、形状が安定する。なお、径方向の変位とは、外コイル部３及び内コイル部５の巻部３ａ及び５ａのコイル状の中心が、外コイル部３及び内コイル部５の軸線から公差等の許容幅を越えて変位することをいう。

　外コイル部３及び内コイル部５の隣接する巻部３ａ、５ａと相手方の対応する巻部５ａ、３ａとの接触位置は、巻部３ａの断面中心と巻部５ａの断面中心とを結ぶ仮想線Ｓ上にある。

　かかる接触位置は、初張力による外コイル部３の巻部３ａと内コイル部５の巻部５ａを径方向へ変位させる力（以下、「変位力」と称する）に応じ、外コイル部３の巻部３ａ及び内コイル部５の巻部５ａの線径と、外コイル部３及び内コイル部５のコイル状の径とによって設定される。この接触位置の設定により、巻部３ａ及び５ａの径方向への変位を確実に抑制でき、引張ばね１の形状を安定させることができる。

　このため、形状の安定化に影響する巻部３ａ及び５ａの接触位置の調整と隣接する巻部５ａ間の拡げ量に基づく初張力の調整とを容易に行うことができる。なお、接触位置は、上記のように変位力に応じて設定するが、その際に仮想線Ｓ間の角度θを６０°に近づけるようにする。角度θが６０°程度の場合に、引張ばね１の形状を安定させやすい傾向があるためである。

　図４は、本発明の実施例２に係る引張ばねの巻部断面を示す概略断面図である。図５は、図４の引張ばねを９０度回転させた状態を示す概略断面図である。なお、図４及び図５では、フックを除いた巻部が断面となっている。また、実施例２では、実施例１と基本構成が共通するため、実施例１と対応する構成に同符号を付して重複した説明を省略する。

　実施例２は、外コイル部３及び内コイル部５の双方の軸方向の両端部に、それぞれ一体のフック３ｃ、５ｃを設けたものである。なお、フックは、外コイル部３及び内コイル部５の少なくとも一方に設ければよく、フック３ｃ、５ｃの一方を省略することも可能である。その他は実施例１と同一である。

　フック３ｃ、５ｃは、外コイル部３及び内コイル部５の両端部を曲げて形成されている。これにより、フック３ｃ、５ｃは、端部に位置する巻部３ａ、５ａに、切れ目なく連続する一体部品として形成されている。なお、フック３ｃ、５ｃは、端部の巻部３ａ、５ａに溶接等によって取り付けてもよい。フック３ｃ、５ｃの形状は、本実施例において丸フックであるが、用途等に応じた適宜のものとすればよい。

　かかる構成の引張ばね１は、外コイル部３及び内コイル部５のフック３ｃ、５ｃにより、他部材への取付けが可能である。また、外コイル部３及び内コイル部５の双方にフック３ｃ、５ｃを設けたことにより、外コイル部３及び内コイル部５の双方が引張られることになる。このため、引張ばね１は、引張り時においても、バランスがよく、形状が安定する。その他、実施例２でも、実施例１と同様の作用効果を奏することができる。

　図６は、本発明の実施例３に係る引張ばねの巻部を示す概略断面図である。なお、実施例３では、実施例１と基本構成が共通するため、実施例１と対応する構成に同符号を付して重複した説明を省略する。

　実施例３は、外コイル部３の軸方向の両端部に、それぞれ別体のフック７が取り付けられたものである。その他は実施例１と同一である。

　フック７は、それぞれ外コイル部３の端部開口３ｄに位置するベース部９と、このベース部９に取り付けられたフック部１１とを備える。

　ベース部９は、板状に形成され、外コイル部３の端部に突き当てられている。これにより、ベース部９は、外コイル部３の端部開口３ｄに位置し、その端部開口３ｄを閉止する。なお、ベース部９は、端部開口３ｄを閉止せずに、端部開口３ｄの一部を開放する帯状や棒状等であってもよい。このベース部９の外周には、側壁部９ａが設けられている。

　この側壁部９ａが外コイル部３の端部外周に係合した状態で、ベース部９は外コイル部３に固定されている。なお、ベース部９は、外コイル部３に加えて内コイル部５に固定することも可能である。固定方法は、溶接、接着、締結等の適宜のものを採用すればよい。締結の場合は、ピンやねじ等の他、側壁部９ａの外側に雌ネジ部を設けて内コイル部５の内周に螺合し、或いは側壁部９ａの内側に雌ネジ部を設けて外コイル部３の外周に螺合してもよい。

　フック部１１は、引張ばね１のコイル状の中心部で、ベース部９に結合されている。フック部１１の形状は、本実施例において円環状であるが、用途等に応じた適宜のものとすればよい。

　かかる構成の引張ばね１は、外コイル部３にのみフック７を取り付けても、端部開口３ｄがフック７によって閉止されているので、内コイル部５の軸方向への抜け等を抑制できる。結果として、引張ばね１は、引張り時において、形状が安定する。その他、実施例３でも、実施例２と同様の作用効果を奏することができる。

１　引張ばね
３　外コイル部
３ａ　巻部
３ｂ　隙間
３ｃ、５ｃ、７　フック
５　内コイル部
５ａ　巻部
５ｂ　隙間

Claims (5)

1. 　軸方向に複数の巻部を有するコイル状である外コイル部と、
   　前記軸方向に複数の巻部を有し前記外コイル部よりも小径のコイル状であり前記外コイル部内に配置された内コイル部とを備え、
   　前記外コイル部及び前記内コイル部の一方の隣接する巻部間に前記外コイル部及び前記内コイル部の他方の対応する巻部が嵌合することにより、少なくとも前記外コイル部及び前記内コイル部の一方の隣接する巻部間が前記外コイル部及び前記内コイル部の他方の線径よりも小さい範囲で自由状態から拡げられて初張力を生じさせ、且つ該初張力による前記外コイル部の巻部と前記内コイル部の巻部との径方向の変位を抑制する、
   　引張ばね。
2. 　請求項１の引張ばねであって、
   　前記外コイル部及び前記内コイル部の一方の隣接する巻部と前記外コイル部及び前記内コイル部の他方の対応する巻部は、前記嵌合により相互に接触し、前記外コイル部の巻部と前記内コイル部の巻部の接触位置は、前記初張力による前記外コイル部の巻部と前記内コイル部の巻部を前記径方向へ変位させる力に応じ、前記外コイル部の巻部及び前記内コイル部の巻部の線径と、前記外コイル部及び前記内コイル部のコイル状の径とによって設定された、
   　引張ばね。
3. 　請求項１又は２の引張ばねであって、
   　前記外コイル部及び前記内コイル部の少なくとも一方は、前記軸方向の両端部にフックが設けられた、
   　引張ばね。
4. 　請求項３の引張ばねであって、
   　前記フックは、前記外コイル部及び前記内コイル部の双方の前記軸方向の両端部にそれぞれ一体に設けられた、
   　引張ばね。
5. 　請求項３の引張ばねであって、
   　前記フックは、前記外コイル部の前記軸方向の両端部に取り付けられ、それぞれ前記外コイル部の端部開口に位置するベース部と、該ベース部に取り付けられたフック部とを備える、
   　引張ばね。
   
    

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