WO2024024551A1 - シェディング構造を有する人工受容体 - Google Patents

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Abstract

本発明は、リガンド結合部位と、シェディング構造を有する細胞膜貫通ドメインと、免疫細胞内へのシグナル伝達ドメインとを含む、人工受容体、および該人工受容体をコードする核酸を提供する。

Description

シェディング構造を有する人工受容体
 本発明は、シェディング構造を有する人工受容体に関する。より詳細には、リガンド結合部位と、シェディング構造を有する膜貫通ドメインと、免疫細胞内へのシグナル伝達ドメインとを含む、人工受容体に関する。また、トロゴサイトーシスによる作用が調節された受容体または該受容体をコードする核酸の設計方法にも関する。
 強い刺激が連続して入力されると、感度が落ちるという現象が広く知られている。このような受容体の連続シグナルによる感度低下は、生物学的に意味があると考えられており、感度低下を防ぐと予想されるメカニズムの一つとしてシェディングが知られている。シェディングは、受容体の細胞外ドメインがメタロプロテアーゼで切断される仕組みである。調べられているだけでも、半数以上のチロシンキナーゼ受容体では、シェディングが起こる事が知られている(非特許文献1)。受容体がリガンドと反応し、細胞内ドメインのリン酸化が起こった後、シェディングにより一旦反応がリセットされ、シグナルが調整を受けているのではないかと考えられているが、シェディングがどういう仕組みでシグナル調節を行っているかについては未だに詳細は分かっていない。
 がん免疫療法に用いられる、T細胞が標的を認識するT細胞受容体(T cell receptor; TCR)も、チロシンキナーゼ受容体の一種である。TCRは、シグナルコントロールの一つとして、刺激が与えられるとTCR-CD3複合体の細胞表面発現量が低下する事が知られている。また、近年、免疫細胞療法にて画期的な治療効果が認められている人工キメラ受容体(Chimeric antigen receptor; CAR)は、抗体を、CD3細胞内ドメイン、CD28、4-1BB等のコレセプターと結合する事で、抗原を認識してT細胞にTCRシグナルを伝達するという構造であるが、CD3、共刺激分子はすべてチロシンキナーゼ型受容体である。
 CAR細胞療法を続けると、治療効果が減弱することが知られている。かかるCAR細胞療法の効果の減弱や、治療後の再発にも繋がるメカニズムの1つとして、トロゴサイトーシスが知られている(非特許文献2)。トロゴサイトーシスは、標的細胞と、CAR発現T細胞が反応すると、反応部位で細胞膜を齧る形で膜交換が起こり、標的抗原をT細胞が奪ってしまうというメカニズムである。このため、CAR細胞療法において、がん細胞の抗原発現の低下がおこり免疫逃避が起こり、再発の原因となる。またがん抗原を奪ったT細胞が奪ったがん抗原を自身の細胞膜上に発現してしまうため、他のCAR-T細胞の標的となることにより、免疫反応の抑制が起こる事も報告されている。トロゴサイトーシスは、免疫反応により惹起される膜交換現象として発見され、アメーバ細胞等の原生生物から保存された生理現象である事が知られている。しかし、膜交換のメカニズムの詳細は未だ分かっておらず、CAR-T細胞療法におけるトロゴサイトーシスを抑制し、問題を解決する手段についてはこれまで知られていなかった。
Merilahti JAM and Elenius K, Oncogene 38(2):151-163 (2019) Hamieh M, et al., Nature. 568(7750):112-116 (2019)
 したがって、本発明の課題は、がんなどの疾患に対する、再発がおきにくく、治療効果が持続し易い免疫療法を確立するために、細胞間のトロゴサイトーシスを抑制する方法を提供することである。
 本発明者らは、上記課題を解決するために、CARのシグナルコントロールに着目した。まず、CARの膜貫通ドメインを、シェディングを受ける構造(「シェディング構造」ともいう。)に変更し、CARの構造をより生理的なチロシンキナーゼ受容体に近づける事で、免疫細胞療法にどのような影響を及ぼすかについて、検証を進めた。シェディング構造を有するCARは、シェディングにより、がん細胞表面上に提示された抗原を認識する部位が欠失してしまい、がん細胞の認識能力が低下するとも考えられた。実際に、CAR発現細胞とがん細胞とを3時間との短期間で反応させた場合には、シェディング構造を有するCARは、該構造を有さないCARと比較して、反応性が軽度ではあるが低下することが示された。しかしながら、驚くべきことに、CAR発現細胞とがん細胞とを長期間反応させると、シェディング構造を有するCARは通常のCARと比べて反応性が増強され、また腫瘍移植マウスを使用したin vivoモデルにおいても抗腫瘍効果が増強されることが実証された。かかる知見に基づきさらに検証を進めたところ、シェディング構造を有するCARは、シェディングによりがん細胞における標的抗原のトロゴサイトーシスを防ぐ事が判明した。トロゴサイトーシスの抑制により長期的な反応性が保たれる事が、シェディング構造を有するCARにおいて抗腫瘍効果が高まる原因の一つであることを見出した。
 本発明者らはさらに、CARの細胞内ドメインにも着目し、かかるドメインのサイズを調節することで、さらにトロゴサイトーシスを制御できるのではないか、また、トロゴサイトーシスの調節には、シグナル伝達ドメインは必ずしも必要ではないのではないかとの仮説を立てた。かかる仮説に基づき研究を進めた結果、トロゴサイトーシスの発生には、シグナル伝達ドメインは必須ではないこと、細胞内ドメインのサイズ依存的にトロゴサイトーシス強度が変化すること、およびシグナル伝達ドメインは、サイズが同じ場合には、非シグナル伝達ドメインより強くトロゴサイトーシスを引き起こすことを実証した。また、シェディング構造の付加と細胞内シグナル伝達ドメインの個数や順序の変更を組み合わせる事で、トロゴサイトーシス強度をさらに制御できることも実証した。これらの知見からCARのトロゴサイトーシスレベルを調整する技術の確立に成功したといえる。本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
 すなわち、本発明は以下の通りのものである。
[1]
 リガンド結合部位と、シェディング構造を有する膜貫通ドメインと、免疫細胞内へのシグナル伝達ドメインとを含む、人工受容体。
[2]
 キメラ抗原受容体、改変T細胞受容体、改変Fc受容体および改変チロシンキナーゼ受容体からなる群から選択される、[1]に記載の人工受容体。
[3]
 前記免疫細胞が、T細胞、ナチュラルキラー細胞およびマクロファージからなる群から選択される、[1]または[2]に記載の人工受容体。
[4]
 前記T細胞が、細胞傷害性T細胞である、[3]に記載の人工受容体。
[5]
 前記シェディング構造が、notchタンパク質、アミロイド前駆体タンパク質およびCD28からなる群から選択されるタンパク質に由来する、[1]~[4]のいずれか1つに記載の人工受容体。
[6-1]
 前記免疫細胞内へのシグナル伝達ドメインが、CD3ζ鎖、CD28および4-1BBからなる群から選択される少なくとも1種に由来するシグナル伝達ドメインを含む、[1]~[5]のいずれか1つに記載の人工受容体。
[6-2]
 前記リガンド結合部位が、がん抗原結合部位である、[1]~[6-1]のいずれか1つに記載の人工受容体。
[7-1]
 シェディング構造を有する膜貫通ドメインが、
 (1)配列番号26で示されるアミノ酸配列、または
 (2)(1)のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列
を含む、[1]~[6-2]のいずれか1つに記載の人工受容体。
[7-2]
 29個以下のアミノ酸配列からなる細胞外ヒンジドメインを含む、[1]~[7-1]のいずれか1つに記載の人工受容体。
[8-1]
 膜貫通ドメインにγセクレターゼによる切断部位を有さない、[1]~[7-2]のいずれか1つに記載の人工受容体。
[8-2]
 細胞内ドメインにγセクレターゼによる切断部位を有さない、[1]~[8-1]のいずれか1つに記載の人工受容体。
[9-1]
 同じシグナル伝達ドメインを2つ以上有する、[1]~[8-2]のいずれか1つに記載の人工受容体。
[9-2]
 前記シグナル伝達ドメインがCD28のシグナル伝達ドメインである、[9-1]に記載の人工受容体。
[10-1]
 [1]~[9-2]のいずれか1つに記載の人工受容体をコードする核酸。
[10-2]
 [10-1]に記載の核酸を含むベクター。
[11-1]
 [1]~[9-2]のいずれか1つに記載の人工受容体、[10-1]に記載の核酸または[10-2]に記載のベクターを有する、免疫細胞。
[11-2]
 前記免疫細胞が、T細胞、ナチュラルキラー細胞およびマクロファージからなる群から選択される、[11-1]に記載の免疫細胞。
[12-1]
 [11-1]または[11-2]に記載の免疫細胞を含む、医薬。
[12-2]
 がんの治療または予防のための、[12-1]に記載の医薬。
[13]
 (1)リガンド結合部位と、膜貫通ドメインと、免疫細胞内へのシグナル伝達ドメインとを含む受容体を選択する工程、ならびに
 (2A)工程(1)で選択した膜貫通ドメインのシェディングに対する感受性を調節する工程、ならびに/または
 (2B)工程(1)で準備した受容体のシグナル伝達ドメインに1つ以上のアミノ酸残基を付加、挿入および/もしくは欠失させる、ならびに/もしくは1つ以上のアミノ酸残基で置換する工程
を含む、トロゴサイトーシスによる作用が調節された受容体または該受容体をコードする核酸の設計方法。
[14]
 (1)リガンド結合部位と、膜貫通ドメインと、免疫細胞内へのシグナル伝達ドメインとを含む受容体を準備する工程、ならびに
 (2A)工程(1)で準備した膜貫通ドメインのシェディングに対する感受性を調節する工程、ならびに/または
 (2B)工程(1)で準備した受容体のシグナル伝達ドメインに1つ以上のアミノ酸残基を付加、挿入および/もしくは欠失させる、ならびに/もしくは1つ以上のアミノ酸残基で置換する工程
を含む、トロゴサイトーシスによる作用が調節された受容体または該受容体をコードする核酸の製造方法。
[15-1]
 前記工程(1)で選択または準備する受容体がキメラ抗原受容体、T細胞受容体、Fc受容体およびチロシンキナーゼ受容体からなる群から選択される、[13]または[14]に記載の方法。
[15-2]
 前記免疫細胞が、T細胞、ナチュラルキラー細胞およびマクロファージからなる群から選択される、[13]~[15-1]のいずれか1つに記載の方法。
[16]
 哺乳動物に対して、[11-1]もしくは[11-2]に記載の免疫細胞または[12-1]もしくは[12-2]に記載の医薬の有効量を投与することを特徴とする、該哺乳動物におけるがんの治療または予防方法。
[17]
 がんの治療または予防における使用のための、[11-1]もしくは[11-2]に記載の免疫細胞または[12-1]もしくは[12-2]に記載の医薬。
[18]
 がんの治療または予防薬の製造のための、[11-1]もしくは[11-2]に記載の免疫細胞または[12-1]もしくは[12-2]に記載の医薬の使用。
 本発明を利用する事で、免疫細胞におけるトロゴサイトーシスを防ぎ、CARやTCRなどの受容体を、長期間に亘り反応性を維持させることができ、既存のT細胞療法の効果を大きく上昇させる事が可能となる。また、受容体の膜貫通ドメインや、細胞内ドメインを改変することで、トロゴサイトーシスの制御を行うことも可能になる。さらには、本発明による知見は、トロゴサイトーシスの生体内での役割や、チロシンキナーゼ受容体がシェディング(shedding)を受ける構造になっている理由についての、普遍的な生理現象のメカニズムの一端の解明にも有用であり得る。
シェディング構造を有するCAR(Cleavable-CAR)は、長期間、反応性を保ち易く、in vivoでもより効果的であった。a: Cleavable-CARコンストラクトと、control(Normal-CAR)コンストラクトの構造。シェディング構造(「Cleavable構造」ともいう。)としてはNotch1タンパクの膜貫通ドメイン(Transmembrane domein; TM)、controlとして、一般的なCD8 TMを有するCAR(Normal-CAR)を使用した。b: NFAT-Luc jurkat(Promega)に各種CARコンストラクトを導入し、NALM6細胞と4x105 cell 1:1にて共培養3時間(3h)後に、Luciferine添加し、発光強度を測定した。3h後では、28bbz(CD19に対する(CD19を認識する)ScFv(CD19 ScFv)と、CD28のシグナル伝達ドメイン、4-1BBのシグナル伝達ドメインおよびCD3ζ鎖のシグナル伝達ドメインを連結させて構築したCAR)、ならびに28z(CD19 ScFvと、CD28のシグナル伝達ドメインおよびCD3ζ鎖のシグナル伝達ドメインを連結させて構築したCAR)は同程度の反応性を示し、bbz(CD19 ScFvと、4-1BBのシグナル伝達ドメインおよびCD3ζ鎖のシグナル伝達ドメインを連結させて構築したCAR)は軽度の反応性の低下を認めた。c: bと同様の実験系で、4日間共培養を継続し、発光強度を測定した結果。長期の培養後では、細胞内ドメイン(Intracellular domain;ICD)によらずCleavable-CARの方が、Normal CARよりも反応性が高い事が確認された。d、e、f: 6-12週齢NSGマウスに、Day0でNALM6細胞を5x105静脈移植し、Day4及び10に各種CAR導入抹消血CD8細胞を2x105ずつ静脈投与した後の生存曲線。dは28bbzと28bbz-Cleavableの比較、eは28zと28z-Cleavableの比較、fはbbzとbbz-Cleavableの比較。bbzでは有意差は認められなかったが、28z、28bbzでは、Cleavable-CARにて明らかに有意な生存延長が認められた。 Cleavable-CARはトロゴサイトーシスを抑制する。ab: 各種CAR導入PBMCによるNALM6の細胞傷害性アッセイ。Effector/Target比をふって、CAR-T及びNALM6を共培養し、細胞傷害性アッセイキット(テクノスズタ)のプロトコルに沿って解析した。明らかな差が認められなかった。c: NALM6細胞と、CAR導入jurkata細胞を1:1で一晩共培養し、フローサイトメトリーでNALM6のCD19発現量を解析した。Cleavable-CARでは、Normal-CARと比較し、有意にCD19の減少(トロゴサイトーシス)が抑制されている事が実証された。d、e: 28bbzのNormal-CARまたはCleavable-CARを導入したjurkat細胞のCAR先端に、Hibit-tag(Promega)を付加し、NALM6と共培養した後、固定し、Mouse Anti-Hibit mAb(Promega)、AlexaFluor647 goat antimouse igG(Invitrogen)、CD19-FITC抗体で染色後、image-Stream(MKII)にてイメージング解析を行ったNALM6の写真(d)および模式図(e)。Normal-CARでは、CD19-FITCの減少、及びCARの細胞内への取り込みが認められたが、Cleavable-CARでは、CD19は減少せず、CARが細胞膜表面に存在する事が確認された。 細胞外ドメインの切断が、トロゴサイトーシスの抑制および長期シグナルの維持には重要である。a: Cleavable-CAR(28bbz)またはNormal-CARを発現するJurkat細胞と、NALM6細胞とを共培養した後のNALM6におけるCD19発現をFACS解析した結果。細胞外ドメインの切断を誘発するADAM阻害剤GI254023Xを各種濃度で添加すると、Normal-CARでは全く変化ないが、Cleavable-CARとの共培養では、濃度依存的にCD19発現が低下していくことが確認された。Cleavable-CARでも、ADAM阻害にて、トロゴサイトーシスが起こるようになる事が実証された。b: Cleavable-CAR(28bbz)を発現したJurkatと、NALM6との共培養培地に、ADAMまたは、γセクレターゼ阻害薬を添加した時の、トロゴサイトーシスレベル。いずれの阻害も、トロゴサイトーシスを起こり易くするが、ADAMの方が強い傾向にあった。c: NFAT jurkatに、Cleavable-CAR(28bbz)を発現した細胞と、NALM6を1:1で各種阻害剤添加下に4日間共培養後、ルシフェリンを添加し発光検出した結果。ADAM阻害剤では、シグナルの低下が認められたが、γセクレターゼ阻害薬では、低下が認められず、有意差ないもののシグナル増強の可能性もある。d: アミロイド前駆体蛋白(APP)のTMを使用したCleavable-CARでのトロゴサイトーシス。シェディング構造であれば、Notchに限らず、トロゴサイトーシスの抑制が起こることが実証された。e: APPの、細胞外ドメインのシェディングを増強する変異(Swe変異(APP695 K595N/M596LのAPP二重変異体))を導入した構造を使用すると、更にトロゴサイトーシスは抑制されることが示された。シェディングの程度がトロゴサイトーシスレベルをコントロールしていることが確認された。f: CD19発現細胞株、RajiおよびNormal またはCleavable 28bbz CARを共培養後、Raji細胞のCD19発現を解析した結果。Cleavable-CARでは、Raji細胞においても、トロゴサイトーシスの抑制が確認された。 トロゴサイトーシスレベルは、受容体の細胞内ドメインサイズで変化する可能性がある。トロゴサイトーシスの程度に重要な因子は何かを調べるため、まずCD3ζを有さないCAR(bb(CD19 ScFvと、4-1BBのシグナル伝達ドメインとを連結させて構築したCAR)または28bb(CD19 ScFvと、CD28のシグナル伝達ドメインおよび4-1BBのシグナル伝達ドメインとを連結させて構築したCAR)のみ)を発現させたjurkatとNALM6を共培養し、NALM6のCD19発現を解析した。驚く事にCD3ζなしでもトロゴサイトーシスを認めた。また、トロゴサイトーシスの強さは、28bb>28であった。シグナルの増加というより、細胞内ドメインの長さまたは重さがトロゴサイトーシスには重要なのではと考え、GFPをC末端に付加した、bbGFPおよび28bbGFPを作製し、同様に共培養したところ、bbおよび28bbよりも、有意にトロゴサイトーシスが増強することが確認された。 CD19ScFv-CD8TMの下、細胞内ドメインに、EGFPタンパクの一部を付加したCARを作製し、NALM6との共培養後のNALM6のCD19発現レベルの平均値を測定した。EGFPは、明らかにシグナル伝達機能を有さないため、シグナル伝達ドメインなしでも、トロゴサイトーシスが起きる事が示された。また、EGFPの一部、全長の約1/3(EGFP267)または全長の約2/3(EGFP510)を付加したものと比較すると、長さ依存的にトロゴサイトーシスは強くなり、細胞内ドメインのサイズ依存的にトロゴサイトーシスが起こり易くなる事が実証された。さらに、同じ長さのシグナルなしドメイン(EGFP267)とチロシンキナーゼドメイン(28bb)を比較すると、チロシンキナーゼドメインの方が、トロゴサイトーシスが強く起こる事が判明し、このことから、シグナル伝達ドメインは同じサイズでもより牽引力が強化される事が示唆された。 2828(CD28のシグナル伝達ドメインをタンデムにつなげたもの)のように、同じサイズのシグナルドメインを切断部位がある膜近傍に並べると、より強くトロゴサイトーシスを抑制する事が出来た。トロゴサイトーシスのより強い抑制は、シグナル伝達時の牽引力が上昇したためであると考えられる。このように、シェディング構造を持つCARにおいて、細胞内ドメインの配置や個数を変化させると、トロゴサイトーシスレベルをコントロール出来ることがわかった。 マウスnotch1由来のCleavable配列において、CD28細胞内シグナルドメインをタンデムに繋ぐことにより(Cleavable-28bbz)、CD28細胞内シグナルドメインが1つのもの(Cleavable-2828z)と比較して、有意なin vivoでの抗腫瘍活性の増強が認められた。 NALM6細胞と、CAR発現Jurkat細胞を共培養後のNALM6 CD19発現結果。19Cleavable2828z(CD19 ScFvを有するCleavable-2828z)、および19Cleavable mutation 2828z(19Cleavable2828zに対して欠失変異を導入する(配列番号28の329番目のアミノ酸残基~335番目のアミノ酸残基の領域を欠失させた)ことによりγセクレターゼの切断を受けなくしたもの)を比較すると、変異を導入したもの方がよりトロゴサイトーシスが抑制される結果となった。よって、トロゴサイトーシスの抑制効果は、細胞外ドメインの切断によるものであると考えられる。 同様のトロゴサイトーシス検出系にて、TM部位に、ヒト CD28のTM、及びその上部12アミノ酸(CD28の141番目のアミノ酸残基~152番目のアミノ酸残基)を使用したCARにおいても、シグナルドメインをタンデムに繋ぐとよりトロゴサイトーシスが抑制されることがわかった。よって、CD28もシェディングタンパク質であることが予想される。 Jurkat細胞は、T細胞受容体であるTRBV12を発現している。NFAT-Jurkat細胞と、TRBV12に対するScFv(aTRBV12 ScFv)を組み込んだ各種CAR-T細胞を共培養し、NFAT-juakat側のTCRシグナル強度を検出した。hCleavable-2828z CARを使用したCARは、シグナルが低下する傾向が確認された。受容体をCleavableな配列にすることで、免疫細胞等からの逃避につながる可能性があることが示唆される。UTは、CAR発現なしの細胞と共培養したコントロールを指す。 Her2に対するScFV(Her2 ScFV)でのCleavable-CARと、シグナルドメインのタンデム効果の測定結果。Her2 発現腫瘍株であるskOV3と、各種Her2-CARを一晩共培養後のskOV3側のHer2発現をFACS解析した。Her2-CARにおいても、hCleavableを用いた場合、シグナルドメイン数を増やすとトロゴサイトーシスが抑制されることが示された。グラフ左のskOV3は、CARを導入していない細胞と共培養した時のコントロールHer2発現レベルを示す。 Human Notch1タンパク長の検討結果。Notch1の構造を図上に示す。ヒトNotch1(NCBI Accession No: NP_060087.3)の1447位、1488位、1530位または1560位のアミノ酸残基を、シェディング構造を有する膜貫通ドメインの1番目のアミノ酸残基とするCAR(それぞれ、19hL31447 2828z、19hL31448 2828z、19hL31530 2828z、19hL31560 2828z)を作製し、NFAT-Jurkatに導入したものをコントロールまたはNALM6と共培養したものを比較し反応性を確認した。LNR全て含む1447位のものは、hCleavableのものと同様の強い反応性を示し、またLNRを削っていくと、反応性は下がるものの、コントロールと比較して有意な反応が認められた。よって、Notch1の使用配列の長さを変えることで、反応性をコントロールできると考えられる。コントロール(cont)は、共培養なしの発光強度を示す。
1.シェディング構造を有する膜貫通ドメインを含む人工受容体
 本発明は、シェディング構造を有する膜貫通ドメイン(「膜貫通領域」または「膜貫通部位」ともいう。)を含む人工受容体を提供する。より具体的には、リガンド結合部位と、シェディング構造を有する膜貫通ドメインと、免疫細胞内へのシグナル伝達ドメインとを含む、人工受容体(以下、「本発明の受容体」と称することがある。)を提供する。また、本発明の受容体には、典型的には、リガンド結合部位と膜貫通ドメインとを連結する細胞外ヒンジドメインが含まれる。本発明の受容体は、シェディング構造を有することにより、該構造を有さない受容体と比較して、該受容体が認識するリガンドを発現する細胞との間でのトロゴサイトーシスが抑制され得る。トロゴサイトーシスとは、主として免疫細胞において生じる、ある細胞が別の細胞上にあるタンパク質を膜ごとかじり取ってしまう現象である。
 本明細書において、「受容体」とは、リガンド結合部位と、膜貫通ドメインと、細胞内ドメインとを含む構造体を意味し、「人工受容体」とは、天然型受容体以外の受容体、換言すれば、外因的に導入しない限り哺乳動物の生体内には存在しない受容体、を意味する。具体的な受容体として、例えば、キメラ抗原受容体、T細胞受容体、Fc受容体、チロシンキナーゼ受容体などが挙げられるが、これらに限定されない。受容体には、生体内において、単量体で機能する(少なくともリガンド結合能を有する)もの(例:CAR等)や、二量体以上の多量体で機能するもの(例:TCR等)があり、本明細書における受容体は、多量体で機能する受容体の各構成要素であってもよいが、典型的には、生体内で機能を発揮する形態を意味する。例えばTCR受容体は、典型的には、α鎖β鎖からなる二量体またはγ鎖δ鎖からなる二量体、あるいはこれら二量体にさらにCD3が結合した複合体を意味する。
 受容体のリガンド結合部位は、細胞外ドメインの一部を構成し、リガンドへの結合能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、抗体の抗原結合部位、該抗原結合部位を構成する重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)をリンカーペプチドで連結した単鎖可変領域フラグメント(single-chain variable fragment; scFv)、T細胞受容体(TCR)の抗原結合部位、TCR以外のチロシンキナーゼ受容体のリガンド結合部位、Fc受容体の免疫グロブリンFc結合部位などが挙げられる。前記リガンド結合部位は、例えば、前記人工受容体または前記人工受容体を発現する細胞に結合能を示さないことが好ましい。すなわち、前記人工受容体は、内部に、前記リガンド結合部位のリガンドを含まないことが好ましい。前記人工受容体は、前記リガンド結合部位を1つ有してもよいし、複数有してもよい。
 リガンドは、典型的にはがん細胞の細胞表面抗原であるが、これに限定されない。リガンドとして、例えば、BCMA、B7-H3、B7-H6、CD7、CD10、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD30、CD33、CD34、CD38、CD41、CD44、CD56、CD70、CD74、CD97、CD123、CD133、CD138、CD171、CD248、CAIX、CEA、c-Met、CS1(CD319)、CSPG4、CLDN6、CLD18A2、CYP1B1、DNAM-1、GD2、GD3、GM2、GFRα4、GPC3、GPR20、GPRC5D、globoH、Gp100、GPR20、GPRC5D、EGFR、EGFRvariant、EpCAM、EGP2、EGP40、FAP、FITC、HER2、HER3、HPV E6、HPV E7、hTERT、IgG κ鎖、IL-11Ra、IL-13Ra2、KIT、Lewis A、Lewis Y、Legumain、LMP1、LMP2、Ly6k、LICAM、MAD-CT-1、MAD-CT-2、MAGE-A1、MUC1、MUC16、NA-17、NY-BR-1、NY-ESO-1、O-acetyl-GD2、h5T4、PANX3、PDGRFb、PLAC1、Polysialic acid、PSCA、PSMA、RAGE1、ROR1、sLe、SSEA-4、TARP、TAG-72、TEM7R、Tn antigen、TRAIL受容体、TRP2、TSHR、αフェトプロテイン、メソテリン、葉酸受容体α(FRα)、葉酸受容体β(FRβ)、FBP、UPK2、VEGF-R2、WT-1、TCR(例:TRBV12等)などが挙げられる。
 受容体の膜貫通ドメインは、細胞膜を貫通するタンパク質ドメインを意味する。本明細書において、膜貫通ドメインは、細胞膜を貫通している領域を指すが、細胞外ドメインの一部や細胞内ドメインの一部が含まれているものも、膜貫通ドメインと称することがある。膜貫通ドメインは、典型的には、αヘリックスのトポロジー構造をとるが、βバレル型や、その他の構造のドメインであってよい。また、「シェディング構造を有する膜貫通ドメイン」は、細胞内在性のシェダーゼ(sheddase)により切断される領域を、細胞外ドメイン領域(換言すれば、細胞外ドメインの膜近傍)または膜貫通ドメイン内に有する膜貫通ドメインを意味する。シェディング構造を有する膜貫通ドメインは、典型的には、細胞外ヒンジドメインの少なくとも一部と膜貫通ドメインを含む。シェダーゼは、シェディング構造を有する膜貫通タンパク質の一部分に対する切断能を有する膜結合タンパク質である。本発明の受容体が細胞外ヒンジドメイン(以下では、単に「ヒンジドメイン」とも称することがある。)を有する場合には、シェダーゼにより切断される領域は、ヒンジドメインに存在してもよく、膜貫通ドメインに存在してもよく、それ以外の部位に存在してもよい。また、細胞外ヒンジドメインは、リガンド結合部位と膜貫通ドメインとの間の領域を意味する。
 シェディング構造は、多くのチロシンキナーゼ受容体の膜貫通ドメインで認められる構造である。後述の実施例で示される通り、シェディング構造の種類に関わらず、生体内のシェダーゼにより切断されるものであれば、トロゴサイトーシスを抑制できることが示された。このことから、シェディングにより、受容体とそのリガンドの接着の程度が抑制され、それによりトロゴサイトーシスが抑制されたためであると推測される。よって、本発明に用いるシェディング構造は、生体内のシェダーゼにより切断されるものであれば、いかなる構造であってもよい。シェディング構造を有するタンパク質としては、例えば、notchタンパク質(具体的には、notch1タンパク質、notch2タンパク質、notch3タンパク質、notch4タンパク質)(マウスnotch1のシェディング構造を有する膜貫通ドメインのアミノ酸配列および該ドメインをコードする塩基配列を、それぞれ配列番号2および1で示す。また、ヒトnotch1のシェディング構造を有する膜貫通ドメインのアミノ酸配列および該ドメインをコードする塩基配列を、それぞれ配列番号28および27で示す。また、配列番号28で示されるアミノ酸配列について、一部を欠失させたものを配列番号33~36で示す。)、アミロイド前駆体タンパク質(シェディング構造を有する膜貫通ドメインのアミノ酸配列および該ドメインをコードする塩基配列を、それぞれ配列番号4および3で示す。)、CD28(シェディング構造を有する膜貫通ドメインのアミノ酸配列および該ドメインをコードする塩基配列を、それぞれ配列番号22および21で示す。)、ALCAM(activated leukocyte cell adhesion molecule)、CD44、VEGF受容体ファミリー(Vascular Endotherial Growth Factor Receptor VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3等)、EGF(Epidermal growth factor)、EGF受容体ファミリー(例:ErbB1、ErbB2、ErbB3、ErbB4等)などが挙げられる。これらのタンパク質に由来する膜貫通ドメインは、野生型のもの(例えば、配列番号2、4、22、28、33~36のいずれかで示される配列を含む膜貫通ドメインなど)であってもよく、野生型のアミノ酸配列に対して、類似性または同一性が高いアミノ酸配列を含み、シェダーゼにより切断される変異型の膜貫通ドメインであってもよい。本発明の受容体は、例えば、シェディング構造を有さない受容体の膜貫通ドメイン(例えば、CD8の膜貫通ドメイン(アミノ酸配列および該ドメインをコードする塩基配列を、それぞれ配列番号6および5で示す。)を、シェディング構造を有する膜貫通ドメインで置換することや、膜貫通ドメインの細胞外ドメイン側またはその近傍(例えば、ヒンジドメイン内)を、シェディング構造を有する膜貫通ドメインの対応する領域で置換することなどにより、設計および作製することができる。また、シェディング構造を有する受容体の膜貫通ドメインを、シェディングに対する感受性がより高い、異なるシェディング構造を有する膜貫通ドメインで置換すること、膜貫通ドメインに、シェディングに対する感受性がより高くなる変異(例:APPのSwe変異等)を導入することなどによっても、本発明の受容体を設計および作製することができる。APPのSwe変異体に由来する膜貫通ドメインのアミノ酸配列および該ドメインをコードする塩基配列を、それぞれ配列番号8および7で示す。
 前記シェディング構造に対する切断能を有するシェダーゼの大部分は、ADAM(a disintegrin and metalloproteinase)またはBACE(beta-site amyloid precursor protein cleaving enzyme)のファミリーに属する。ADAMファミリーに属するシェダーゼとしては、例えば、ADAM8、ADAM9、ADAM10、ADAM12、ADAM15、ADAM17、ADAM18、ADAM19、ADAM20、ADAM21、ADAM28、ADAM30、ADAM33、ADAMDEC1が、BACEファミリーに属するシェダーゼとしては、例えば、BACE1などが挙げられる。
 野生型のnotchタンパク質の膜貫通ドメインには、ADAMにより切断されるS2切断部位と、γセクレターゼにより切断されるS3切断部位およびS4切断部位を有する。γセクレターゼによりS3およびS4切断部位が切断されることにより、notchタンパク質の細胞内ドメインが細胞質内へと放出され、次いで核へと移行する。トロゴサイトーシスの抑制の観点からは、本発明の受容体では、細胞内ドメインの細胞質内への放出は必須とはいえないため、本発明の受容体は、細胞内ドメインの細胞質への放出機能を有するものであってもよく、放出機能を有さないものであってもよい。かかる細胞内ドメインの放出機能は、notchタンパク質の場合、膜貫通ドメインのS3切断部位に変異を導入してγセクレターゼによる切断を抑制することができ、さらにS4切断部位に変異を導入してもよい。よって、本発明の受容体は、膜貫通ドメインγセクレターゼによる切断部位を有さないものであってもよく、また、さらに細胞内ドメインにもγセクレターゼによる切断部位を有さないものであってもよい。一態様において、本発明の受容体の膜貫通ドメインからは、野生型のnotchタンパク質の膜貫通ドメインは除かれる。
 本明細書において、特定のアミノ酸配列に対して、類似性または同一性が高いアミノ酸配列とは、該特定のアミノ酸配列に対して、80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上の類似性または同一性のアミノ酸配列、あるいは配該特定のアミノ酸において、1若しくは数個(例:2、3、4、5、6、7、8、9、10個)のアミノ酸が置換、欠失、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列を意味する。
 受容体の細胞内ドメインは、膜貫通ドメインにより受容体が細胞膜に固定された場合に、細胞内に存在することになるドメインであり、反対に細胞外に露出することになるドメインを細胞外ドメインという。細胞内ドメインは、典型的にはシグナル伝達ドメインを含む。後述の実施例で示される通り、シグナル伝達ドメインを有さない受容体を用いた場合にも、トロゴサイトーシスは生じることが示されたため、細胞内ドメインは、シグナル伝達ドメインを含まなくてもよい。
 シグナル伝達ドメインは、免疫細胞内にシグナル伝達できるものであれば特に限定されず、例えば、MHCクラスI分子、TNF受容体、免疫グロブリン様タンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、活性化NK細胞受容体、Toll様受容体、B7-H3、BAFFR、BTLA、BY55CD160)、CD2、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、CD4、CD5、CD7、CD8α、CD8β、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CD18、CD19、CD19a、CD22、CD27、CD28、CD29、CD30、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、D66d、CD69、CD79a、CD79b、CD84、CD96(Tactile)、CD103、4-1BB(CD137)、CDS、CEACAM1、CRTAM、CNAM1(CD226)、DAP10、Fc受容体β鎖、Fc受容体γ鎖、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、ICOS(CD278)、IL2Rβ、IL2Rγ、IL7Rα、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB1、ITGB2、ITGB7、KIRDS2、Ly9(CD229)、LAT、LFA-1(CD11a/CD18)、LIGHT、LTBR、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、OX40、PAG/Cbp、PSGL1、SELPLG(CD162)、SEMA4D(CD100)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、SLAMF4(CD244、2B4)、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAMF7、SLAMF8(BLAME)、SLP-76、TNFR2、TRANCE/RANKL、VLA1およびVLA-6からなる群より選ばれる1種または2種以上のタンパク質に由来する細胞内領域を挙げることができる(これらの例示を、典型的シグナル伝達ドメインの例示と称することがある。)。あるいは、上記のシグナル伝達ドメインの天然のアミノ酸配列に対して、類似性または同一性が高いアミノ酸配列を含む変異型のシグナル伝達ドメインを用いることも可能である。本発明の一態様において、シグナル伝達ドメインには、CD3ζ鎖、CD28および4-1BBからなる群から選択される少なくとも1種のタンパク質のシグナル伝達ドメイン、好ましくは2種のタンパク質のシグナル伝達ドメイン(例:CD28およびCD3ζ鎖のシグナル伝達ドメイン)、より好ましくは全てのタンパク質のシグナル伝達ドメインが含まれる。CD3ζ鎖のシグナル伝達ドメインのアミノ酸配列および該ドメインをコードする塩基配列を、それぞれ配列番号10および9で、CD28のシグナル伝達ドメインのアミノ酸配列および該ドメインをコードする塩基配列を、それぞれ配列番号12および11で、4-1BBのシグナル伝達ドメインのアミノ酸配列および該ドメインをコードする塩基配列を、それぞれ配列番号14および13で示す。
 T細胞は、TCRを介する細胞内シグナルにより活性化され(一次活性化)、さらに、前記活性化は、共刺激分子を介する細胞内シグナルにより増強される(二次活性化)。このため、前記免疫細胞がT細胞の場合、前記シグナル伝達ドメインは、前記一次活性化を誘導するシグナル伝達ドメインと、前記二次活性化を誘導するシグナル伝達ドメインとを組合せて用いることが好ましい。前記一次活性化を誘導するシグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を含むシグナル伝達ドメインが挙げられ、具体例として、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD3ζ、Fc受容体β鎖、Fc受容体γ鎖、CD5、CD22、CD66d、CD79a、CD79bなどが挙げられ、好ましくは、CD3ζである。前記二次活性化を誘導するシグナル伝達ドメインとしては、例えば、典型的シグナル伝達ドメインの例示のうち、前記一次活性化を誘導するシグナル伝達ドメインとして列記したもの以外のシグナル伝達ドメインが挙げられる。一次活性化を誘導するシグナル伝達ドメインと、二次活性化を誘導するシグナル伝達ドメインとを組合せて用いる場合に、シグナル伝達ドメインは、1または複数の一次活性化を誘導するシグナル伝達ドメインと、1または複数の二次活性化を誘導するシグナル伝達ドメインとを含むが、好ましい態様において、1つの一次活性化を誘導するシグナル伝達ドメインと複数の二次活性化を誘導するシグナル伝達ドメインとを含む。一次活性化を誘導するシグナル伝達ドメインおよび二次活性化を誘導するシグナル伝達ドメインのいずれにおいても、変異型のシグナル伝達ドメインを用いることも可能である。
 また、後述の実施例で示されるとおり、同じ(同種の)シグナル伝達ドメインが2つ直列に(タンデムに)連結された細胞内ドメインを有するCARは、該シグナル伝達ドメインが1つのものよりも高い抗腫瘍活性を示した。よって、本発明の受容体は、同じシグナル伝達ドメイン(例えば、CD28のシグナル伝達ドメインまたは4-1BB)を2つ以上(例えば、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上)有していてもよい。本発明の受容体が2つ以上の細胞内ドメインを有する場合、各細胞内ドメイン同士は、直接連結されていてもよく、リンカーペプチドなどのリンカーを介して連結されていてもよい。
 本明細書において、「類似性」とは、当該技術分野において公知の数学的アルゴリズムを用いて2つのアミノ酸配列をアラインさせた場合の、最適なアラインメント(好ましくは、該アルゴリズムは最適なアラインメントのために配列の一方若しくは両方へのギャップの導入を考慮し得るものである)における、オーバーラップする全アミノ酸残基に対する同一アミノ酸および類似アミノ酸残基の割合(%)を意味する。「類似アミノ酸」とは物理化学的性質において類似したアミノ酸を意味し、例えば、芳香族アミノ酸(Phe、Trp、Tyr)、脂肪族アミノ酸(Ala、Leu、Ile、Val)、極性アミノ酸(Gln、Asn)、塩基性アミノ酸(Lys、Arg、His)、酸性アミノ酸(Glu、Asp)、水酸基を有するアミノ酸(Ser、Thr)、側鎖の小さいアミノ酸(Gly、Ala、Ser、Thr、Met)などの同じグループに分類されるアミノ酸が挙げられる。このような類似アミノ酸による置換はタンパク質の表現型に変化をもたらさない(即ち、保存的アミノ酸置換である)ことが予測される。保存的アミノ酸置換の具体例は当該技術分野で周知であり、種々の文献に記載されている(例えば、Bowieら,Science, 247: 1306-1310 (1990)を参照)。本明細書におけるアミノ酸配列の類似性または同一性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;マトリクス=BLOSUM62;フィルタリング=OFF)にて計算することができる。
 シグナル伝達ドメインは、細胞内、特に免疫細胞内、へのシグナル伝達機能を有するドメインである。本発明で用いる「免疫細胞」は、がん細胞等の標的細胞を、何らかの作用機序により障害し得る能力を有する細胞(いわゆる免疫エフェクター細胞)であれば特に制限はないが、例えば、獲得免疫のうち細胞性免疫を担うT細胞や、自然免疫を担うNK細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞、B細胞などが挙げられる。中でも、T細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージが好ましく、とりわけT細胞が好ましい。本明細書において、「T細胞」とは、CD3陽性細胞を意味し、例えば、CD8陽性細胞である細胞傷害性T細胞(CTL)、CD4陽性細胞であるヘルパーT細胞、制御性T細胞、エフェクターT細胞、大部分の細胞がCD8およびCD4のいずれも陰性のγδT細胞などが挙げられるが、好ましくは、細胞傷害性T細胞及びヘルパーT細胞である。
 本明細書において、改変T細胞受容体、改変Fc受容体および改変チロシンキナーゼ受容体などの「改変受容体」とは、天然型受容体または公知の人工受容体を構成する1つ以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/若しくは付加された受容体を意味する。改変が施される部位は特に限定されないが、典型的には、膜貫通ドメインまたはその近傍(例えば、ヒンジドメイン内)に改変が施される。
 本明細書において、「キメラ抗原受容体(CAR)」とは、T細胞シグナル伝達ドメインに連結された抗体の抗原結合ドメイン(例:scFv)を含む、人工的に構築されたハイブリッドタンパク質を意味する。CARの特徴として、モノクローナル抗体の抗原結合特性を利用して、非MHC拘束的様式で免疫細胞の特異性および反応性を、選択された標的に対して転換する能力が挙げられる。非MHC拘束的抗原認識は、CARを発現する免疫細胞に、抗原プロセシングと無関係に抗原を認識する能力を付与し、それにより、腫瘍エスケープの主要な機構を迂回する。さらに、CARは、T細胞中で発現されると、CARは、内在性TCR α鎖およびβ鎖と二量体化しないとの利点も有する。
 本発明のCARは、標的細胞の表面抗原(例:がん細胞の細胞表面抗原等)を特異的に認識し得る抗体の抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、およびシグナル伝達ドメインを含む。本発明のCARには、細胞外ヒンジドメインが含まれていてもよい。
 本発明の受容体またはCARが細胞外ヒンジドメインを有する場合、該細胞外ヒンジドメインは、例えば、1~300アミノ酸、5~100アミノ酸、10~70アミノ酸からなる。細胞外ヒンジドメインは、6~29アミノ酸からなってもよい。CARが有する細胞外ヒンジドメインとしては、例えば、CD3、CD8、CD28、KIR2DS2、またはIgG4、IgDもしくはその他の免疫グロブリンに由来するヒンジドメインを挙げることができる。また、膜貫通ドメインと同じタンパク質に由来するヒンジドメインであってもよい。あるいは、上記のヒンジドメインの天然のアミノ酸配列に対して、類似性または同一性が高いアミノ酸配列を含む変異型のヒンジドメインを用いることも可能である。本発明の一態様において、ヒンジドメインは、IgG4のヒンジドメインである。IgG4のヒンジドメインのアミノ酸配列および該ドメインをコードする塩基配列を、それぞれ配列番号18および17で示す。
 また、膜貫通ドメインにCD28のヒンジドメインの一部を連結させたCARにおいても、トロゴサイトーシスの抑制効果が認められ得る。よって、ヒンジドメインとしては、CD28のヒンジドメインおよびその一部も挙げられる。CD28のヒンジドメインのアミノ酸配列および該ドメインをコードする塩基配列を、それぞれ配列番号24および23で示す。CD28のヒンジドメインの一部としては、例えば、配列番号24のアミノ酸配列において、19番目~30番目のアミノ酸残基からなる部分(配列番号26)を含むヒンジドメイン、または配列番号26のアミノ酸配列に対して、類似性または同一性が高いアミノ酸配列を含む変異型のものが挙げられる。これらのCD28のヒンジドメインの一部およびその変異型は、典型的には、29個以下(例:25個、24個、23個、22個、21個、20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個、12個)のアミノ酸からなる。また、細胞外ヒンジドメインと、膜貫通ドメインとは、同じタンパク質由来(例えば、両方ともCD28由来)であることが好ましい。よって、本発明の一態様において、本発明の受容体は、配列番号24のアミノ酸配列および配列番号22のアミノ酸配列を含む配列、または該配列に対して類似性または同一性が高いアミノ酸配列を含む。また、さらに別の一態様において、本発明の受容体のヒンジドメインには、配列番号24のアミノ酸配列からなるヒンジドメイン、および/または該配列と80%以上同一のアミノ酸配列からなる領域は含まれない。
 本明細書において、「T細胞受容体(TCR)」とは、TCR鎖(α鎖、β鎖、γ鎖、δ鎖)のダイマーから構成され、抗原または該抗原-HLA(ヒト白血球型抗原)(MHC;主要組織適合遺伝子複合体)複合体を認識してT細胞へ刺激シグナルを伝達する受容体を意味する。TCRは、典型的には、α鎖とβ鎖、またはγ鎖とδ鎖の二量体から構成される。それぞれのTCR鎖は、可変領域と定常領域から構成され、可変領域には、3つの相補性決定領域(CDR1、CDR2、CDR3)が存在する。
 本発明で用いるTCR鎖の定常領域には、天然型TCR鎖の定常領域において、所定の改変が施されていることが好ましい。この改変としては、例えば、天然型のTCR鎖の定常領域の特定のアミノ酸残基をシステイン残基に置換することで、TCR鎖間のジスルフィド結合によるダイマー発現効率を亢進することなどが挙げられるが、これらに限定されない。
 Fc受容体は、抗体のFc領域に対する結合能を有する受容体である。Fc受容体として、例えば、IgAに対して特異的な受容体であるFcα受容体(例:FcαRI等)、IgGのFc部分の受容体であるFcγ受容体(例:CD64(FCGRI)、CD32(FCGRII)、CD16(FCGRIII)等)、IgEに結合するFcε受容体(例:FcεRI、FcεRII等)、母親のIgGに結合する受容体である新生児Fc受容体、Fc受容体様タンパク質、IgMおよびIgAに結合するFcα/μ受容体などが挙げられる。中でも、Fcγ受容体が好ましい。
 チロシンキナーゼ受容体は、受容体型チロシンキナーゼとも呼ばれ、チロシンキナーゼ活性を有し、多くのポリペプチド型成長因子、サイトカイン、ホルモンに対する高親和性の細胞表面受容体である。TCRもチロシンキナーゼ受容体であるが、本明細書においては、特に断りのない限り、チロシンキナーゼ受容体は、TCR以外のチロシンキナーゼ受容体を意味する。チロシンキナーゼ受容体のファミリーとしては、例えば、EGF受容体ファミリー(例:ErbB1、ErbB2、ErbB3、ErbB4等)、インスリン受容体ファミリー(例:IR-A、IR-B等)、PDGF受容体ファミリー(例:PDGFR-αα、PDGFR-αβ、PDGFR-ββ等)、VEGF受容体ファミリー(例:VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3等)、FGF受容体ファミリー(例:FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、FGFRL1、FGFR6等)、CCKファミリー、GF受容体ファミリー、HGF受容体ファミリー(例:MET等)、Eph受容体ファミリー(例:EPHA1、EPHA2、EPHA3、EPHA4、EPHA5、EPHA6、EPHA7、EPHA8、EPHA9、EPHA10、EPHB1、EPHB2、EPHB3、EPHB4、EPHB5、EPHB6等)、AXLファミリー、TIEファミリー、RYKファミリー、DDRファミリー、RETファミリー(例:RET51、RET43、RET9等)、ROSファミリー、LTKファミリー、RORファミリー、MuSKファミリー、LMRファミリー、上記以外のファミリーなどが挙げられる。チロンキナーゼ受容体は、これらのファミリーのいずれに属していてもよい。また、チロシンキナーゼ受容体として、CD3、共刺激分子(例:CD28、4-1BB、CD357、CD40、ICOS、OX40等)も挙げられる。
 本発明で用いる受容体の由来は、特に制限されないが、哺乳動物(例:ヒト、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ウマ、ブタ、ウシ、イヌ、ネコ、サル等)に由来するものが好ましく、なかでもヒトに由来するものがより好ましい。
 本発明の受容体は、後述する本発明の核酸またはベクターを使用して遺伝子工学的に作製することができる。例えば、受容体がCARなどの単量体の場合には、該受容体をコードする核酸を細胞に導入し、細胞内で受容体を発現させて、該受容体を単離することで作製することができる。また、受容体がTCRなどの二量体の場合には、例えば、本発明の受容体を構成する一方のポリペプチドをコードする核酸および他方のポリペプチドをコードする核酸の両方を細胞に導入して、各ポリペプチドを発現させてダイマーを形成させ、自体公知の方法により該ダイマーを単離することで作製することができる。受容体が三量体以上の多量体の場合にも、同様である。
2.本発明の受容体をコードする核酸および該核酸を含むベクター
 本発明は、前述の本発明の受容体をコードする核酸(以下「本発明の核酸」と称する場合がある)を提供する。受容体が二量体である場合には、本発明の核酸としては、本発明の受容体を構成する一方のポリペプチドをコードする核酸と、他方のポリペプチドをコードする核酸とは、別の分子に含まれていてもよく、両方のポリペプチドをコードする核酸が単一の分子に含まれていてもよい。受容体が三量体以上の多量体の場合にも、同様である。
 本発明の核酸はDNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよいが、好ましくはDNAである。また、該核酸は二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよい。核酸がRNAである場合は、RNAの配列については、塩基配列におけるTをUと読み替えることとする。また、本発明の核酸は、in vitroまたは細胞中で、ポリペプチドを発現できる限り、天然ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、またはこれらの混合物を含んでもよい。
 本発明の核酸は、自体公知の方法により作製することができ、例えば、受容体の公知のDNA配列情報に基づいて、当該配列の所望の部分をカバーするようにオリゴDNAプライマーを合成し、当該配列を有する細胞より調製した全RNAもしくはmRNA画分を鋳型として用い、RT-PCR法によって増幅することにより、クローニングすることができる。あるいは、化学的にDNA鎖を合成するか、もしくは合成した一部オーバーラップするオリゴDNA短鎖を、PCR法(オーバーラップPCR法)やGibson Assembly法を利用して接続することにより、その全長または一部をコードするDNAを構築することが可能である。また、適宜配列に変異を導入することもできる。
 本発明の核酸は、発現ベクターに組み込むことができる。したがって、本発明は、前述の本発明の核酸を含む発現ベクター(以下「本発明のベクター」と称する場合がある)を提供する。
 本発明のベクターに使用されるプロモーターとしては、例えば、ユビキチンプロモーター、EF1αプロモーター、CAGプロモーター、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、RSV(ラウス肉腫ウイルス)プロモーター、MoMuLV(モロニーマウス白血病ウイルス)LTR、HSV-TK(単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ)プロモーターなどが挙げられる。中でも、ユビキチンプロモーター、EF1αプロモーター、CAGプロモーター、MoMuLVLTR、CMVプロモーター、SRαプロモーターが好ましい。
 本発明のベクターは、上記プロモーターの他に、所望により、転写および翻訳調節配列、リボソーム結合部位、エンハンサー、複製起点、ポリA付加シグナル、選択マーカー遺伝子などを含んでいてもよい。選択マーカー遺伝子としては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子などが挙げられる。
 受容体が二量体の場合には、前述の本発明の受容体を構成する一方のポリペプチドをコードする核酸と、他方のポリペプチドをコードする核酸とを含む発現ベクターを標的細胞内に導入し、細胞内や細胞表面に両方のポリペプチドのヘテロダイマーを構成することができる。この場合において、本発明の受容体を構成する一方のポリペプチドをコードする核酸と、他方のポリペプチドをコードする核酸は、別々の発現ベクターに組み込んでもよいし、1つの発現ベクターに組み込んでもよい。1つの発現ベクターに組み込む場合には、これら2種類の核酸は、ポリシストロニック発現を可能にする配列を介して組み込むことが好ましい。ポリシストロニック発現を可能にする配列を用いることにより、1種類の発現ベクターに組み込まれている複数の遺伝子をより効率的に発現させることが可能になる。ポリシストロニック発現を可能にする配列としては、例えば、2A配列(例:口蹄疫ウイルス(FMDV)由来の2A配列(F2A)、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)由来の2A配列(E2A)、Porcineteschovirus(PTV-1)由来の2A配列(P2A)、Thosea asigna virus(TaV)由来の2A配列(T2A))(PLoS ONE, 3:e2532, 2008、Stem Cells 25, 1707, 2007等)、内部リボソームエントリー部位(IRES)(U.S. Patent No. 4,937,190)などが挙げられるが、均一な発現量の観点からは、2A配列が好ましい。また、2A配列のうち、P2A配列およびT2A配列が好ましい。受容体が三量体以上の多量体の場合にも、同様である。
 本発明に用いることができる発現ベクターとしては、ウイルスベクター、プラスミドベクターなどが挙げられる。ウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクター(レンチウイルスベクターやシュードタイプベクターを含む)、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、センダイウイルス、エピソーマルベクターなどが挙げられる。また、トランスポゾン発現システム(例:PiggyBacシステム)を用いてもよい。プラスミドベクターとしては、動物細胞発現プラスミド(例:pa1-11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neo)などが挙げられる。
3.本発明の受容体を有する免疫細胞および該細胞を含む医薬
 本発明は、本発明の核酸またはベクターを有する免疫細胞(以下、「本発明の免疫細胞」と称することがある。)、および本発明の免疫細胞を含む医薬(以下、「本発明の医薬」と称することがある。)を提供する。本発明の免疫細胞は、本発明の受容体を細胞表面上に発現していることが好ましい。本発明の免疫細胞は、1種類の本発明の受容体を発現していてもよいし、2種類以上(例えば、CARとTCRの組合せ等)の本発明の受容体を発現していてもよい。
 本発明の免疫細胞または医薬は、哺乳動物(例:ヒト、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ウマ、ブタ、ウシ、イヌ、ネコ、サル等)に対して投与することが可能である。よって、哺乳動物に対し、本発明の免疫細胞または医薬を投与することを特徴とする、該哺乳動物におけるがんの治療または予防方法も提供される。また、特に断らない限り、がんの治療または予防薬には、該疾患を治療でき、かつ予防できる医薬も包含される。がんの治療または予防方法についても、同様である。
 本明細書において、「治療薬」には、がんの根治治療を目的とする医薬だけでなく、例えば、がんの進行抑制を目的とする医薬、症状の軽減(例えば、生活、仕事の支障がない症状軽微(minimal manifestations MM)への改善)を目的する、または後遺症を軽減する医薬も含まれるものとする。例えば、がんは、長期間(通常年単位)にわたり進行する病気であることから、早期に治療を開始することで、症状の進行を予防することができる。また、本明細書において、「予防薬」には、がんを発症していない対象に対して、がんを発症するリスクを低減させることを目的とする医薬だけでなく、がんを発症した対象に対して、がんが再発するリスクを低減させることを目的とする医薬も包含されるものとする。がんの治療または予防方法についても同様である。
 本発明の核酸またはベクターを有する免疫細胞としては、上記「1.シェディング構造を有する膜貫通ドメインを含む人工受容体」で列挙した免疫細胞と同一の細胞が挙げられるが、好ましくはT細胞であり、より好ましくは細胞傷害性T細胞である。本発明の受容体を発現する免疫細胞は、生体より採取された免疫細胞(例えば、末梢血T細胞)に、あるいは該細胞の前駆細胞または多能性幹細胞から分化誘導して得られた免疫細胞に、本発明の核酸またはベクターを導入することにより得ることができる。あるいは、目的の免疫細胞の前駆細胞または多能性幹細胞に、本発明の核酸またはベクターを導入し、自体公知の分化誘導方法により、目的の免疫細胞へと分化させてもよい。
 免疫細胞は、例えば、ヒトまたは非ヒト哺乳動物の例えば末梢血、骨髄および臍帯血より採取することができる。本発明の受容体を発現する免疫細胞を、がんの治療または予防に用いる場合には、該免疫細胞は、治療対象本人、または治療対象のHLAタイプと一致したドナーから採取することが好ましい。
 前記免疫細胞の前駆細胞としては、例えば、造血幹細胞、リンパ系幹細胞、自己複製能を失った多能性前駆細胞(multipotent progenitor:MMP)、ミエローリンフォイド共通前駆細胞(MLP)、ミエロイド系前駆細胞(MP)、顆粒球単核前駆細胞(GMP)、マクロファージ-樹状細胞前駆細胞(MDP)、樹状細胞前駆細胞(DCP)、T前駆細胞(例:DN1細胞、DN2細胞、DN3細胞、DN4細胞、DP細胞等)などが挙げられる。
 前記多能性幹細胞としては、例えば、胚性幹細胞(embryonic stem cell:ES細胞)、人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell:iPS細胞)、胚性腫瘍細胞(EC細胞)、胚性生殖幹細胞(EG細胞)などが挙げられる。上記多能性幹細胞がES細胞またはヒト胚に由来する任意の細胞である場合、その細胞は胚を破壊して作製された細胞であっても、胚を破壊することなく作製された細胞であってもよいが、好ましくは、胚を破壊することなく作製された細胞である。
 本明細書において、「多能性幹細胞(pluripotent stem cell)」とは、胚性幹細胞(ES細胞)およびこれと同様の分化多能性、すなわち生体の様々な組織(内胚葉、中胚葉、外胚葉の全て)に分化する能力を潜在的に有する細胞を意味する。ES細胞と同様の分化多能性を有する細胞としては、「人工多能性幹細胞(iPS細胞またはiPSC)」が挙げられる。
 ES細胞は、ヒトやマウスなどの哺乳動物の初期胚(例えば、胚盤胞)の内部細胞塊から樹立された、多能性と自己複製による増殖能を有する幹細胞である。ES細胞は、マウスで1981年に発見され(M.J. Evans and M.H. Kaufman(1981), Nature 292:154-156)、その後、ヒト、サルなどの霊長類でもES細胞株が樹立された(J.A. Thomson et al.(1998), Science 282:1145-1147; J.A. Thomson et al.(1995), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92:7844-7848; J.A. Thomson et al.(1996), Biol. Reprod., 55:254-259; J.A. Thomson and V.S. Marshall(1998), Curr. Top. Dev. Biol., 38:133-165)。ES細胞は、対象動物の受精卵の胚盤胞から内部細胞塊を取出し、内部細胞塊を線維芽細胞のフィーダー上で培養することによって樹立することができる。あるいは、ES細胞は、胚盤胞期以前の卵割期の胚の単一割球のみを用いて樹立することもできるし(Chung Y. et al. (2008), Cell Stem Cell 2: 113-117)、発生停止した胚を用いて樹立することもできる(Zhang X. et al. (2006), Stem Cells 24: 2669-2676.)。
 本発明で用いるES細胞株としては、ヒトES細胞株であれば、例えば、ウィスコンシン大学、NIH、理研、京都大学、国立成育医療研究センターおよびCellartis社などが樹立した各種ヒトES細胞株が利用可能である。具体的には、例えば、ヒトES細胞株としては、ESI Bio社が分譲するCHB-1~CHB-12株、RUES1株、RUES2株、HUES1~HUES28株等、WiCell Researchが分譲するH1株、H9株等、理研が分譲するKhES-1株、KhES-2株、KhES-3株、KhES-4株、KhES-5株、SSES1株、SSES2株、SSES3株などが挙げられる。
 iPS細胞は、哺乳動物体細胞または未分化幹細胞に、特定の因子(核初期化因子)を導入して再プログラミングすることにより得られる細胞である。現在、iPS細胞にはさまざまなものがあり、山中らにより、ヒト線維芽細胞にOct3/4・Sox2・Klf4・c-Mycの4因子を導入することにより、樹立されたヒトiPSC(Takahashi K, Yamanaka S., et al. Cell, (2007) 131: 861-872.)、上記4因子導入後、Nanogの発現を指標として選別し、樹立したNanog-iPSC(Okita, K., Ichisaka, T., and Yamanaka, S. (2007). Nature 448, 313-317.)、c-Mycを含まない方法で作製されたiPSC(Nakagawa M, Yamanaka S., et al. Nature Biotechnology, (2008) 26, 101 - 106)、ウイルスフリー法で6因子を導入して樹立されたiPSC(Okita K et al. Nat. Methods 2011 May;8(5):409-12, Okita K et al. Stem Cells. 31(3):458-66.)等も用いることができる。また、Thomsonらにより作製されたOCT3/4・SOX2・NANOG・LIN28の4因子を導入して樹立された人工多能性幹細胞(Yu J., Thomson JA. et al., Science (2007) 318: 1917-1920.)、Daleyらにより作製された人工多能性幹細胞(Park IH, Daley GQ. et al., Nature (2007) 451: 141-146)、桜田らにより作製された人工多能性幹細胞(特開2008-307007号)等も用いることができる。
 このほか、公開されているすべての論文(例えば、Shi Y., Ding S., et al., Cell Stem Cell, (2008) Vol3, Issue 5,568-574;、Kim JB., Scholer HR., et al., Nature, (2008) 454, 646-650;Huangfu D., Melton, DA., et al., Nature Biotechnology, (2008) 26, No 7, 795-797)、あるいは特許(例えば、特開2008-307007号、特開2008-283972号、US2008-2336610、US2009-047263、WO2007-069666、WO2008-118220、WO2008-124133、WO2008-151058、WO2009-006930、WO2009-006997、WO2009-007852)に記載されている当該分野で公知の人工多能性幹細胞のいずれも用いることができる。
 人工多能性幹細胞株としては、NIH、理研、京都大学等が樹立した各種iPSC株が利用可能である。例えば、ヒトiPSC株であれば、理研のHiPS-RIKEN-1A株、HiPS-RIKEN-2A株、HiPS-RIKEN-12A株、Nips-B2株等、京都大学の253G1株、253G4株、1201C1株、1205D1株、1210B2株、1383D2株、1383D6株、201B7株、409B2株、454E2株、606A1株、610B1株、648A1株、1231A3株、FfI-01s04株等が挙げられ、1231A3株が好ましい。
 本明細書において、「造血前駆細胞」とは、血球系細胞に分化し得る多能性幹細胞(multipotent stem cell)を意味する。ヒトでは、主として骨髄に存在し、白血球(好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球、マクロファージ)、赤血球、血小板、肥満細胞、樹状細胞に分化する。また本発明において、「造血前駆細胞」とは、CD34陽性細胞を意味し、好ましくは、CD34/CD43両陽性(DP)細胞である。本発明に用いる造血前駆細胞の由来は制限されず、例えば、後述の方法により、多能性幹細胞を分化誘導することにより得られる造血前駆細胞であってもよく、また、生体組織から、公知の手法により単離した造血前駆細胞であってもよい。
 多能性幹細胞を、T細胞などの免疫細胞に分化させる方法として、例えば、(1)本発明の核酸またはベクターが導入された多能性幹細胞を、造血前駆細胞に分化させる工程、および(2)該造血前駆細胞を免疫細胞に分化させる工程を含む方法が挙げられる。前記工程(1)は、例えば、国際公開第2013/075222号、国際公開第2016/076415号およびLiu S.et al., Cytotherapy, 17 (2015);344-358などに記載されているように、造血前駆細胞への誘導培地中で多能性幹細胞を培養する方法が挙げられる。また、前記工程(2)は、例えば免疫細胞がT細胞の場合には、国際公開第2016/076415号などに記載されているような、(2-1)造血前駆細胞からCD4CD8両陽性T細胞を誘導する工程、および(2-2)CD4CD8両陽性T細胞からCD8陽性T細胞を誘導する工程を含む方法が挙げられる。
 造血前駆細胞への誘導培地は、特に限定されないが、動物細胞の培養に用いられる培地を基礎培地として調製することができる。基礎培地としては、例えば、Iscove's Modified Dulbecco's Medium(IMDM)培地、Medium 199培地、Eagle's Minimum Essential Medium (EMEM)培地、αMEM培地、Dulbecco's modified Eagle's Medium (DMEM)培地、Ham's F12培地、RPMI 1640培地、Fischer's培地、Neurobasal Medium(ライフテクノロジーズ)、これらの混合培地などが挙げられる。培地には、血清が含有されていてもよいし、あるいは無血清で使用してもよい。必要に応じて、基礎培地には、例えば、ビタミンC類(例:アスコルビン酸)、アルブミン、インスリン、トランスフェリン、セレン、脂肪酸、微量元素、2-メルカプトエタノール、チオールグリセロール、脂質、アミノ酸、L-グルタミン、非必須アミノ酸、ビタミン、増殖因子、低分子化合物、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類、サイトカインなどが含まれていてもよい。
 工程(2-1)で用いるCD4CD8両陽性T細胞への分化誘導培地としては、特に制限されないが、動物細胞の培養に用いられる培地を基礎培地として調製することができる。基礎培地には、上記工程(1)で用いたものと同様のものが挙げられる。培地には、血清が含有されていてもよいし、あるいは無血清で使用してもよい。必要に応じて、基礎培地には、例えば、ビタミンC類、アルブミン、インスリン、トランスフェリン、セレン、脂肪酸、微量元素、2-メルカプトエタノール、チオールグリセロール、脂質、アミノ酸、L-グルタミン、非必須アミノ酸、ビタミン、増殖因子、低分子化合物、抗生物質、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類、サイトカインなどが含まれていてもよい。
 工程(2-2)で用いる基礎培地および培地添加物としては、工程(1)に記載された基礎培地および培地添加物と同様のものが挙げられる。前記培地は、副腎皮質ホルモン剤を含んでいてもよい。副腎皮質ホルモン剤としては、例えば、糖質コルチコイドおよびその誘導体などが挙げられ、該糖質コルチコイドとしては、例えば、酢酸コルチゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸フルドロコルチゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、プロピオン酸ベクロメタゾンなどが挙げられる。なかでも、デキサメタゾンが好ましい。
 本発明の核酸またはベクターを細胞に導入する方法に特に限定はなく、公知の方法を用いることができる。核酸やプラスミドベクターを導入する場合には、例えば、リン酸カルシウム共沈殿法、PEG法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、リポフェクション法などにより行うことができる。例えば、細胞工学別冊8新細胞工学実験プロトコル,263-267 (1995)(秀潤社発行)、ヴィロロジー(Virology),52巻,456 (1973)、日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.), 第119巻 (第6号), 345-351 (2002)などに記載の方法を用いることができる。ウイルスベクターを用いる場合には、本発明の核酸を適当なパッケージング細胞(例、Plat-E細胞)や相補細胞株(例、293細胞)に導入して、培養上清中に産生されるウイルスベクターを回収し、各ウイルスベクターに応じた適切な方法により、該ベクターを細胞に感染させることで、細胞に導入することができる。例えば、ベクターとしてレトロウイルスベクターを用いる具体的手段が、国際公開第2007/69666号、Cell, 126, 663-676 (2006)およびCell, 131, 861-872 (2007)などに開示されている。また、ベクターとしてレンチウイルスを用いる具体的手段が、Zufferey R. et al., Nat Biotechnol, 15(9):871-895 (1997)などに開示されている。特に、レトロウイルスベクターを用いる場合には、組換えフィブロネクチンフラグメントであるCH-296(タカラバイオ社製)を用いることにより、各種細胞に対して、高効率な遺伝子導入が可能となる。あるいは、ゲノム編集(例えば、CRISPR/Casシステム、TALEN、ZFNなど)により、本発明の核酸またはベクターを細胞のゲノムに導入してもよい。
 本発明の核酸はまた、RNAの形態で直接細胞に導入し、細胞内で本発明の受容体を発現するために用いてもよい。RNAの導入方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、リポフェクション法や電気穿孔法などが好適に使用できる。
 本発明の受容体の発現は、例えば、本発明の受容体の一部(例:TCR鎖の定常領域等)を認識する抗体を用いて、免疫学的手法により検出または測定することができる。免疫学的手法としては、例えば、抗体アレイ、フローサイトメトリー解析、放射性同位元素免疫測定法(RIA法)、ELISA、ウェスタンブロッティング、免疫組織染色、酵素免疫測定法(EIA法)、蛍光免疫測定法(FIA)、イムノクロマトグラフィー法などが挙げられる。
 本発明はまた、本発明の核酸またはベクターを細胞に導入する工程を含む、細胞の製造方法を提供する。本発明の核酸またはベクターが導入される細胞、導入方法等は、前述の通りである。前記細胞は、本発明の受容体を発現していることが好ましい。本発明の受容体の発現は、前述の方法により検出または測定することができる。さらに別の態様において、上記製造方法により得られた免疫細胞も提供される。
 本発明の医薬の標的として、本発明の受容体が標的とするがん抗原を発現しているがん細胞をがん組織内に含むものであれば、いずれのがんも対象となり得る。かかるがんとしては、例えば、腺がん、扁平上皮がん、腺扁平上皮がん、未分化がん、大細胞がん、小細胞がん、皮膚がん(例、メラノーマ、メルケル細胞がん)、乳がん、前立腺がん、膀胱がん、膣がん、頸部がん、頭頚部がん、子宮がん、子宮頸がん、肝臓がん、腎臓がん、膵臓がん、脾臓がん、肺がん、非小細胞肺がん、気管がん、気管支がん、結腸がん、直腸がん、小腸がん、大腸がん、胃がん、食道がん、胆嚢がん、精巣がん、卵巣がん、卵管がん、上咽頭がんなどのがん;骨組織、軟骨組織、脂肪組織、筋組織、血管組織および造血組織のがん;軟骨肉腫、ユーイング肉腫、横紋筋肉腫、悪性血管内皮腫、悪性シュン腫、骨肉腫、軟部組織肉腫などの肉腫;肝芽腫、髄芽腫、腎芽腫、神経芽腫、膵芽腫、胸膜肺芽腫、網膜芽腫などの芽腫;胚細胞腫瘍;リンパ腫;白血病、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫などが挙げられる。
 本発明の医薬に含まれ得る免疫細胞以外の成分としては、例えば、薬学的に許容される添加剤、より具体的には、生理食塩水、緩衝生理食塩水、細胞培養培地、デキストロース、注射用水、グリセロール、エタノール、安定剤、可溶化剤、界面活性剤、緩衝剤、防腐剤、等張化剤、充填剤、潤滑剤などが挙げられる。
 本発明の免疫細胞または医薬の投与方法としては、例えば、腫瘍内、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、腹腔内などへの注射が挙げられる。
 本発明の医薬に含まれる本発明の免疫細胞の量は、免疫細胞の種類、用途、剤型および目的とする治療効果などに応じて、例えばがんの種類、位置、重症度、治療を受ける対象の年齢、体重および状態などを考慮しながら、適切に調節することができる。例えば、本発明の医薬は、1回の投与において、本発明の免疫細胞が通常1×104~1×1010個、好ましくは1×105~1×109個、より好ましくは5×106~5×108個投与されるよう、製剤化することができる。
 本発明の免疫細胞または医薬の投与間隔は特に限定されるものではなく、1回あたりに投与される本発明の免疫細胞の量などを考慮しながら適宜調整することができるが、例えば、1日4回、3回、2回もしくは1回、1日おき、2日おき、3日おき、4日おき、5日おき、週1回、7日おき、8日おき、9日おき、週2回、月1回または月2回、独立して投与することができる。
 本発明の免疫細胞または医薬は、公知のがんの治療薬と併用することができる。がんの治療薬としては、例えば、シクロホスファミド、ベンダムスチン、イオスファミド、ダカルバジンなどのアルキル化薬;ペントスタチン、フルダラビン、クラドリビン、メソトレキセート、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、エノシタビンなどの代謝拮抗薬;リツキシマブ、セツキシマブ、トラスツズマブなどの分子標的薬;イマチニブ、ゲフェチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、ダサチニブ、スニチニブ、トラメチニブなどのキナーゼ阻害剤;ボルテゾミブなどのプロテアソーム阻害剤;シクロスポリン、タクロリムスなどのカルシニューリン阻害薬;イダルビジン、ドキソルビシンマイトマイシンCなどの抗がん性抗生物質;イリノテカン、エトポシドなどの植物アルカロイド;シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチンなどのプラチナ製剤;タモキシフェン、ビカルダミドなどのホルモン療法薬;インターフェロン、ニボルマブ、ペンブロリズマブなどの免疫制御薬;などを挙げることができる。
4.トロゴサイトーシスによる作用が調節された受容体の設計方法または該受容体の製造方法
 後述の実施例で示される通り、受容体のシェディング構造の有無やシェティングの強度、細胞内ドメインのサイズ、および/またはシグナル伝達ドメインの有無により、受容体のトロゴサイトーシスによる作用が調節され得ることが示された。より具体的には、後述の実施例で示される通り、シェディング構造を有さない膜貫通ドメインにシェディング構造を導入することで、トロゴサイトーシスが抑制されること、よりシェディングが生じやすい変異をさらに導入することで、トロゴサイトーシスの抑制効果は増強されることが見出された。また、トロゴサイトーシスの発生には、受容体にシグナルドメインは必須ではないこと、細胞内ドメインのサイズ依存的にトロゴサイトーシスの強度が変化すること、およびシグナル伝達ドメインは、サイズが同じ場合には、非シグナル伝達ドメインより強くトロゴサイトーシスを引き起こすことが見出された。
 したがって、さらに別の態様において、本発明は、
 (1)リガンド結合部位と、膜貫通ドメインと、免疫細胞内へのシグナル伝達ドメインとを含む受容体を選択する工程、ならびに
 (2A)工程(1)で選択した膜貫通ドメインのシェディングに対する感受性を調節する工程、ならびに/または
 (2B)工程(1)で準備した受容体のシグナル伝達ドメインに1つ以上のアミノ酸残基を付加、挿入および/もしくは欠失させる、ならびに/もしくは1つ以上のアミノ酸残基で置換する工程
を含む、トロゴサイトーシスによる作用が調節された受容体または該受容体をコードする核酸の設計方法(以下、「本発明の設計方法」と称することがある。)が提供される。
 また、(I)リガンド結合部位と、膜貫通ドメインと、免疫細胞内へのシグナル伝達ドメインとを含む受容体を準備する工程、ならびに
 (IIA)工程(I)で準備した膜貫通ドメインのシェディングに対する感受性を調節する工程、ならびに/または
 (IIB)工程(I)で準備した受容体のシグナル伝達ドメインに1つ以上のアミノ酸残基を付加、挿入および/もしくは欠失させる、ならびに/もしくは1つ以上のアミノ酸残基で置換する工程
を含む、トロゴサイトーシスによる作用が調節された受容体または該受容体をコードする核酸の製造方法(以下、「本発明の製法」と称することがある。)も提供される。以下では、本発明の設計方法と本発明の製法の両方に適用する事項については、これらの方法の総称として「本発明の方法」との用語を用いることがある。
 本明細書において、「トロゴサイトーシスによる作用が調節された」とは、工程(1)または(I)で準備された受容体(以下、「対象受容体」と称することがある。)を免疫細胞に導入した場合と比較して、本発明の方法の工程(2A)、(2B)、(IIA)および/または(IIB)を実施した後の受容体(すなわち、設計または製造された受容体)(以下、「本発明実施後の受容体」と称することがある。)を免疫細胞に導入した場合において、トロゴサイトーシスの強度が変化(即ち、低減または増強)すること、あるいはトロゴサイトーシスの強度が変化すると予想されることを意味する。
 本発明の方法の工程(1)または(I)で準備する受容体は、特に限定されないが、例えば、公知のCAR、TCR、Fc受容体、チロシンキナーゼ受容体などが挙げられる。こられの受容体の具体例や構造等は、上記「1.シェディング構造を有する膜貫通ドメインを含む人工受容体」で記載した内容がすべて援用される。
 本発明の方法の工程(2A)または(IIA)は、対象受容体の膜貫通ドメインにシェディング構造を有さない場合には、該膜貫通ドメインを、シェディング構造を有する膜貫通ドメインで置換することや、膜貫通ドメインの細胞外ドメイン側またはその近傍(例えば、ヒンジドメイン内)を、シェディング構造を有する膜貫通ドメインの対応する領域で置換することなどにより行うことができる。あるいは、膜貫通ドメインにシェディング能を付与し得る構造、例えばCD28のヒンジドメイン、その一部またはこれらの変異型など、を付加することで、シェディングを起こさせることもできる。また、対象受容体の膜貫通ドメインがシェディングを有する場合には、シェディング構造を有さない膜貫通ドメインで置換すること、ヒンジドメインを欠失させるまたは他のヒンジドメインに置換させること、シェディングに対する感受性が異なるシェディング構造を有する膜貫通ドメインで置換すること、膜貫通ドメインに、シェディングに対する感受性が変化する変異(例:APPのSwe変異等)を導入することなどにより行うことができる。また、シュダーゼにより切断される配列の細胞外ドメイン側近傍の配列に、負の電荷を有するアミノ酸残基が半数程度存在する場合に、あるいは糖鎖修飾を有する場合に、シェディングが阻害され得ることが報告されている(Iwagishi R, et al., J Biol Chem. 295(35):12343-12352 (2020))。したがって、シュダーゼにより切断される配列の細胞外ドメイン側近傍の配列について、電荷や糖修飾の程度を調節することで、シェディングに対する感受性を調節することもできる。
 本発明の方法の工程(2B)または(IIB)は、対象受容体のシグナル伝達ドメインに、アミノ酸残基を付加、挿入および/または欠失させる場合には、かかる改変後もシグナル伝達機能を保持させるため、典型的には、改変前のシグナル伝達ドメインのアミノ酸配列に対して、類似性または同一性が高いアミノ酸配列を含むシグナル伝達ドメインとなるように、アミノ酸の付加等を行う。また、後述の実施例において、シェディング構造を有する膜貫通ドメインを有する受容体において、シグナル伝達ドメインの個数を増やすことで、トロゴサイトーシスがより抑制されることが示された。よって、本発明の方法の工程(2B)または(IIB)は、対象受容体の細胞内ドメインの順番や個数を変える工程であってもよい。細胞内ドメインの個数を変える場合には、同じ細胞内ドメインがタンデムとなるようにすることが好ましい。さらに、後述の実施例において、シグナル伝達ドメインに約240アミノ酸長の長さのEGFP(配列番号20)を付加しても、トロゴサイトーシスの増強が認められた。よって、対象受容体のシグナル伝達ドメインを非シグナル伝達ドメインに置換する場合、またはシグナル伝達ドメインにさらに非シグナル伝達ドメインを付加する場合には、置換または付加される非シグナル伝達ドメインの大きさの上限は特にないが、上限として、例えば、500アミノ酸長、400アミノ酸長、300アミノ酸長、250アミノ酸長、200アミノ酸長、150アミノ酸長、100アミノ酸長などが挙げられる。
 本発明の設計方法の工程(2A)および(2B)では、受容体を実際に作製することまでは要さず、頭の中でイメージすることで十分である。しかしながら、典型的には、該イメージされた受容体は、電子計算機上で機能するプログラム(例:グラフィックデザインツール、オフィスソフト等)上や紙面上で具体化される。したがって、トロゴサイトーシスの強度が変化すると予想される受容体を設計し、該受容体を表の形式でまとめる行為も、本発明の設計方法の実施に該当する。また、本発明の製法の工程(IIA)および(IIB)でも、受容体を実際に作製することまでは要さず、シェディング構造が改変された、および/またはシグナル伝達ドメインが改変された受容体が細胞内で発現されるように設計された、該受容体をコードする核酸を作製することで十分である。
 対象受容体に対して、本発明の方法の工程(2A)、(2B)、(IIA)および/または(IIB)を実施することで、理論上は、細胞に導入した場合に、対象受容体と比較してトロゴサイトーシスの作用が調節された受容体が設計または製造される。しかしながら、本発明実施後の受容体において、トロゴサイトーシスの作用が調節されていることを実際に確認してもよく、また本発明実施後の受容体におけるトロゴサイトーシスの強度を評価してもよい。トロゴサイトーシスの強度は、例えば、後述の実施例に記載されるように、次の方法により評価することができるが、これに限定されない。対象受容体または本発明実施後の受容体を発現する免疫細胞(1x105)と、標的細胞を1:1 48wellプレートにて一晩、37℃にて共培養行い、該受容体が標的とするリガンドに対する抗体を用いてフローサイトメーターにて、該リガンドの発現量を測定する。各細胞におけるリガンドの発現量を比較し、差異がある場合にはトロゴサイトーシスによる作用が調節されたと評価することができる。
 本発明の方法により設計または製造された受容体または該受容体をコードする核酸を、免疫細胞または該細胞との間でトロゴサイトーシスを引き起こす細胞(例えば、がん細胞)に導入することで、該トロゴサイトーシスを制御することも可能となる。例えば、本発明の方法により設計または製造された受容体をコードする核酸を、ゲノム編集などにより、細胞に内在する対象受容体をコードする核酸の内の少なくとも1つ(好ましくは全て)と置換すること、あるいは該細胞のゲノム中に挿入することで、内在する対象受容体を置換する又は競合的に機能することなどにより、トロゴサイトーシスを制御することも可能となる。
 以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
<材料および方法>
ベクター構築およびウイルスの作製
 臨床にて使用されているFCM63 CD19-specific scFv(配列番号15および16)を使用し、Normal-TMとしてCD8の膜貫通ドメイン(配列番号5および6)、Cleavable-TMとしてNotch1(配列番号1および2)またはAPPタンパクの膜貫通ドメイン(各タンパク質の細胞外ドメインの一部を含む)(配列番号3および4、ならびに配列番号7および8)を使用し、細胞内ドメインとしてCD28の細胞内ドメイン(配列番号11および12)、4-1BBの細胞内ドメイン(配列番号13および14)、CD3ζ鎖の細胞内ドメイン(配列番号9および10)またはこれらの細胞内ドメインを組み合わせて構成された細胞内ドメインを使用し、一般的な分子生物学手法にてCARベクターを構築した。FCM63 CD19-specific scFvとCD8の膜貫通ドメインとは、IgG4のヒンジドメイン(配列番号17および18)を介して連結させた。一方で、FCM63 CD19-specific scFvとCleavable-TMとは、IgG4のヒンジドメインを介さなかった。293T細胞、及びパッケージングベクター、エンベロープベクターを使用し、遺伝子導入用のウイルス液を産生した。その他のCARについても、同様に作製した。12アミノ酸残基からなるヒンジドメイン(配列番号25および26)を含むCD28の膜貫通ドメインの配列を配列番号21および22で、hCleavable(ヒトNothc1の細胞外ドメインの一部を含む膜貫通ドメイン)の配列を配列番号27および28で、aTRBV12 ScFvの配列を配列番号29および30で、Her2 ScFVの配列を配列番号31および32で示す。また、19hL31447 2828z、19hL31448 2828z、19hL31530 2828z、19hL31560 2828zのhCleavableを、それぞれ配列番号33~36で示す。
NFAT-jurkatによるCARシグナルの検出
 NFAT-Luc jurkat cell (Promega J1621)に各種CARコンストラクトをレンチウイルスにて導入し、CAR-NFAT-Luc Jurkat細胞を作製した。この細胞と、CD19ターゲットを発現する細胞株(NALM6, Raji)を5x104 cells 1:1にて共培養し、短期(3h)、長期(4days)の共培養後、各wellにルシフェリン(VivoGlo Promega)を推奨量で添加し、NFATシグナルの活性強度を、NivoTM(パーキンエルマージャパン)を用いて発光量で検出した。
T細胞刺激及び遺伝子導入
 健常人由来、末梢血は京都大学倫理委員会を通った実験計画を通じて手に入れた。末梢血T細胞(PBMC)はLeucosepTM(グライナー)を用いた遠心濃度勾配法にて分離した。分離したPBMCに、Dynabeads Human T-Activator CD3/CD28(VERITAS)を推奨量加え、CD15% FBS+a-MEM mediumにIL15,IL-7を添加した培地で培養し刺激した。刺激2日目、3日目にレトロウイルスを添加し、各種CAR遺伝子を導入した。Dynabeads は、刺激3日目に除去し、その後は培地を追加しCAR-PBMCを増殖させた。
マウス腫瘍モデル
 8-12週齢のNSGマウス(Jackson)を、動物倫理に基づいた京都大学動物実験委員会に承認された実験計画に基づいて使用した。5x105 NALM-6細胞をDay0にtail-veinへの静脈注射にて投与し、マウス腫瘍モデルとした。Day4および14に2x105のCAR-T細胞を静脈投与し、治療モデルとした。
フローサイトメトリーによるトロゴサイトーシスアッセイ
 1x105のCAR-T細胞またはCAR-jurkat細胞と、NALM-6細胞を1:1 48wellプレートにて一晩、37℃にて共培養行った。細胞を、FACSバッファーで回収し、各種抗体を添加後30minの染色を経て、FACSAria(BD)にて測定行った。データはFlowjoソフトを使用し解析した。メタロプロテアーゼ阻害薬実験では、GI254023X、DAPT (Sigma)を共培養中に各種濃度で添加し、実験を行った。
細胞傷害性アッセイ
 CAR-T細胞とターゲット細胞を各種Effector/Target 比にて混合し、N-SPC kit(テクノスズタ)を推奨通りに使用しNivo(パーキンエルマー)にて細胞傷害性を測定した。
イメージング解析
 NALM6細胞と、各種CAR(19-28bbzまたはCleavable-19-28bbz)の先端にHibit-tagタンパクを付与したCARを導入したjurkat細胞を一晩共培養した後、固定及び細胞膜透過処理をBiolegendの細胞内染色キットを使用して行い、Biolegend intracellular Flow Cytometry Staining Protocolに準じて細胞内染色を行った。Mouse Anti-Hibit mAb(Promega)、AlexaFluor647 goat antimouse igG(Invitrogen)、CD19-FITC抗体で染色後、image-Stream(MKII)にてイメージング解析を行った。
統計学的解析
 培養細胞を使用したin vitro実験においては、全ての群においてn=3で複数回施行し、再現性を確認した。データ解析にはExelを使用し、各群の平均値の比較にはT検定を用いた有意差検定を行い、*(p<0.05),**(p<0.01),***(p<0.001)で記載した。In vivo実験においては、各群5匹で行い、Prismを使用し生存率曲線を作製し、log-rank検定にて生存期間差の検定を行った。
実施例1:シェディングによるCARの効果への影響の検証
 シェディングを受ける構造にする(Cleavable-CAR)と、シェディングを受けないCD8膜貫通ドメインを有する通常のCAR(Normal-CAR)とを比較すると、CARの反応性が変化するのではないかという仮説のもとに、研究を開始した。膜貫通ドメインをシェディング構造として良く知られているNotchタンパク由来の膜貫通ドメインに変更したCARを作製し、CARとしての反応性が維持されるものを見いだした(図1-a)。様々な細胞内ドメインを持つCARにおいて、ターゲット細胞との短期での反応性を検出するため、NFAT-Jurkat細胞に各種CAR遺伝子を発現させ、NALM6細胞と3h共培養させ、ルシフェラーゼ発現を検出した。その結果、Cleavable-CARでは通常のCARと比較し、同程度から少し低下した反応性を示す事が見出された(図1-b)。シェディング構造があると、シグナルのON/OFFが起こる事が予想されるため、長期で見ると、シグナル強度が維持され易いのではと考え、4日間共培養し、反応性を検出した所、いずれの構造でもCleavable-CARの方が、シグナル強度が有意に強い事が示された(図1-c)。長期のシグナルが強くなるという事は、生体内での長期の治療効果が高くなる事が予想される。実際の治療効果を検証するため、NALM6細胞をNSGマウスに静脈投与した、血液癌モデルにCAR導入PBMCを静脈投与する実験系にてin-vivoの検証を行った。その結果、細胞内ドメインが28bbz、28zのものは、Cleavable-CARが明らかに有意に生存を延長する事がわかった。bbzでも、生存を延長する傾向にあった(図1-def)。また、28bbzのCARにて、皮下腫瘍のモデルでの検証にてもCleavable-CARは、通常のCARより高い効果を示し、生存期間を延長する事が示された(図1-g)。
実施例2:シェディングによるCARの高い効果発生メカニズムの検証
 Cleavable-CARがより高い効果を発揮できたメカニズムを調べるため、まずCARを発現するCD8+T細胞の細胞傷害性を検出した所、Normal-CARとCleavable-CARにおいて、明らかな差が認められなかった(図2-ab)。近年、CARによるトロゴサイトーシスの程度が、CAR反応性に差を生み出す事が報告されてきているため、NALM6細胞との共培養にてNALM6細胞の発現するCD19分子がどの程度トロゴサイトーシスにより奪われるかを各種CARにて検証した。その結果、いずれの細胞内ドメインを有するCARにおいても、Cleavable-CARにすると、ターゲット細胞におけるCD19の発現低下が有意に抑制されている事が判明した(図2-c)。Normal-CARとCleavable-CARとの間でトロゴサイトーシスレベルに差が最も大きかった28bbzのCARにおいて、CARの先端にTagタンパクを付与したものを作製し、ターゲットと反応後の、CARの細胞外ドメインを画像にて検出した。その結果、Normal-CARでは、免疫シナプス形成部位にて一部ターゲット細胞に取り込まれているが、Cleavable-CARでは、ターゲット細胞の周囲を覆うように付着した状態になっている様子が観察された(図2-d、e)。また、Normal-CARでは、ターゲット細胞と共培養すると、細胞を牽引し食いちぎる様子が観察されたが、Cleavable-CARでは、接触と離乖を繰り返し、ついばむ様に動く様子が観察された。以上のことから、受容体のシェディング構造の有無により、CAR-T細胞の動態が変化する事が示せたと言える。
実施例3:トロゴサイトーシス抑制のメカニズムの検証
 Cleavable-CARがどのようにトロゴサイトーシスを抑制するのかを検証するために、シェディングを誘発するメタロプロテアーゼに対する阻害実験を行った。まず、細胞外ドメインの切断を引き起こす、ADAM阻害薬の添加を行った所、Cleavable-CARにおいても濃度依存的にトロゴサイトーシスの抑制が解除される事が実証された(図3-a)。γセクレターゼ(γ-secretaze)阻害剤による細胞内ドメインの切断阻害においてもトロゴサイトーシスは起こり易くなったが、ADAM阻害剤と比較し、その程度は軽度であった。また、NFAT-jurkatでの長期刺激の実験においては、ADAM阻害剤を添加すると有意なシグナルの低下を認めたが、γセクレターゼ阻害では変化を認めなかった(図3-bc)。次に、他のシェディング構造でも同様のトロゴサイトーシス抑制が起こせるかを検証するために、アミロイド前駆体タンパク(APP)の膜貫通ドメインをシェディング構造として使用したCARを作製した所、こちらでもトロゴサイトーシスの抑制を観察する事が出来た。APPの家族性アルツハイマー病を起こす事で知られている、細胞外ドメインの切断が増加する変異(Swe変異)を導入したAPP-TMを使用するとよりトロゴサイトーシスが抑制される事が示され、メタロプロテアーゼによるCARの細胞外ドメインの切断の容易さがトロゴサイトーシスの抑制レベルを大きく規定している事が示された。
実施例4:トロゴサイトーシスと細胞内シグナルとの関連性の検証
 トロゴサイトーシスの強さは何のシグナルで規定されているかについて検証した。まず、Normal-CARにおけるトロゴサイトーシスに、CD3ζを介したTCRシグナルが必要かどうか検証するため、CD3ζなしのコンストラクトを用いてトロゴサイトーシスを検出した。その結果、トロゴサイトーシスのレベルは軽度になるが、CD3ζシグナルなしでもトロゴサイトーシスが起こる事が判明した。NFATシグナルの強度に有意な差は認められないものの、4-1BBシグナル伝達ドメインまたはCD28シグナル伝達ドメインのみより、シグナル伝達ドメインとして28bbを有するコンストラクトにより、トロゴサイトーシスがより強く起こる事が示された。この事から、シグナル強度というより、細胞内ドメインのサイズが重要なのではないかという仮説のもとに、シグナル伝達に明らかに関わらないであろうGFPをCARのN末端につけた構造で、トロゴサイトーシスレベルを検証した。その結果、GFP付加ドメインにて、よりトロゴサイトーシスが強く起こる事が分かった(図4-a)。次に、トロゴサイトーシスにチロシンキナーゼドメインは必要なのかを検証するために、膜貫通ドメイン下にEGFP(配列番号19および20)の一部を、アミノ酸長を変えて結合した受容体を作製した所、チロシンキナーゼドメインがなくても、トロゴサイトーシスは起こり、またその程度は細胞内ドメインの長さに依存するという事が示された(図5)。さらに、同じ長さのシグナルなしドメイン(EGFP267)とチロシンキナーゼドメイン(28bb)を比較すると、チロシンキナーゼドメインの方が、トロゴサイトーシスが強く起こる事が判明した(図5)。また、2828のように、同じサイズのシグナルドメインを切断部位がある膜近傍に並べると、より強くトロゴサイトーシスを抑制する事が出来ることが判明した(図6)。また、皮下腫瘍のモデルでこれらのCARについて検証したところ、シグナルドメインをタンデムで挿入したCARは、マウスの生存期間を延長する(高い抗腫瘍活性を発揮する)ことが示された(図7)。
実施例5:トロゴサイトーシスと細胞内ドメインの放出との関連性の検証
 野生型のnotchタンパク質の膜貫通ドメインには、γセクレターゼにより切断されるS3切断部位およびS4切断部位を有し、γセクレターゼによりS3およびS4切断部位が切断されることにより、notchタンパク質の細胞内ドメインが細胞質内へと放出される。そこで、該S3およびS4切断部位の一部の消失変異によりγセクレターゼ切断が失われたCleavable-CAR(19Cleavable mutation 2828z)を用いて、トロゴサイトーシスの抑制効果を検証した。NALM6細胞と、CAR発現Jurkat細胞を共培養し後、NALM6 CD19発現を測定したところ、19Cleavable mutation 2828zでは、野生型のnotchの膜貫通ドメインを有するCAR(19Cleavable 2828z)よりもNALM6細胞におけるCD19の発現低下が有意に抑制されている(即ち、トロゴサイトーシスがより抑制されている)事が判明した(図8)。よって、Cleavable-CARにおけるトロゴサイトーシスの抑制効果は、主にシェダーゼによる細胞外ドメインの切断によるものであり、γセクレターゼによる細胞内ドメインの放出は必ずしも必要ではないと考えられる。
実施例6:異なる膜貫通ドメインを用いたCARにおけるトロゴサイトーシスの検証
 実施例5と同様のトロゴサイトーシス検出系にて、膜貫通(TM)部位を、CD28のTMに変更した場合のトロゴサイトーシスの抑制効果を検証した。具体的には、ヒト CD28のTM、及びその細胞外ドメイン12アミノ酸をヒンジとして使用したCARにおいても、シグナルドメインをタンデムに繋いだ結果、トロゴサイトーシスがより抑制されることがわかった(図9)。このことより、CD28もシェディングタンパク質であり、その細胞外ドメインの切断部位はTMから12アミノ酸内に存在することが予想される。
実施例7:異なるリガンド結合部位を用いたCARにおけるトロゴサイトーシスの検証
 CD19 ScFvの代わりに、aTRBV12 ScFvまたはHer2 ScFVを有するCARを用いて検証を行った。NFAT-Jurkat細胞と、aTRBV12ScFvを組み込んだ各種CAR-T細胞を共培養し、NFAT-juakat側のTCRシグナル強度を検出した。hCleavable-2828z CARを使用したCARは、シグナルが低下する傾向が確認された(図10)。また、Her2 発現腫瘍株であるskOV3と、各種Her2-CARを一晩共培養後のskOV3側のHer2発現をFACS解析した。Her2-CARにおいても、hCleavableを有するCARにおいてトロゴサイトーシスが抑制されること、また4-1BBシグナルドメインにおいても、シェディング構造を含む膜貫通部位を使用時にシグナルドメイン数を増やすとよりトロゴサイトーシスがより抑制されることが示された(図11)。
実施例8:Notch1タンパク長による影響の検討
 ヒトNotch1のシェディング構造を有する膜貫通ドメインの長さを短くした場合の、CARの反応性への影響を検討した。細胞外ヒンジドメインの長さが異なるCAR(それぞれ、19hL31447 2828z、19hL31448 2828z、19hL31530 2828z、19hL31560 2828z)を作製し、NFAT-Jurkatに導入したものをコントロールまたはNALM6と共培養したものを比較し反応性を確認した。LNR全て含む1447位のものは、hCleavableのものと同様の強い反応性を示し、またLNRを削っていくと、反応性は下がるものの、コントロールと比較して有意な反応が認められた(図12)。よって、Notch1の使用配列の長さを変えることで、反応性をコントロールできると考えられる。
 本発明を利用する事で、免疫細胞におけるトロゴサイトーシスを防ぎ、医療臨床にて遺伝子治療製剤として使用されている、キムリア(ノバルティスファーマ)、イエスカルタ(ギリアドサイエンシズ)等のCAR製剤やTCRなどの受容体を、長期間に亘り反応性を維持させることができ、既存のT細胞療法の効果を大きく上昇させる事が可能である。また、原理的に明らかな有害性も考えられない事から、早期の臨床応用が可能である。さらに、受容体の膜貫通ドメインや、細胞内ドメインを改変することで、トロゴサイトーシスの制御を行うことも可能になる。本発明のトロゴサイトーシスの制御技術の研究を進めていく事で、将来的に、他家移植技術の向上、免疫細胞機能向上、また様々なCleavableタンパク質を介したシグナル伝達のコントロール技術の開発に繋がり得る。
 本出願は、日本で出願された特願2022-118674(出願日:2022年7月26日)を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。

Claims (15)

  1.  リガンド結合部位と、シェディング構造を有する膜貫通ドメインと、免疫細胞内へのシグナル伝達ドメインとを含む、人工受容体。
  2.  キメラ抗原受容体、改変T細胞受容体、改変Fc受容体および改変チロシンキナーゼ受容体からなる群から選択される、請求項1に記載の人工受容体。
  3.  前記免疫細胞が、T細胞、ナチュラルキラー細胞およびマクロファージからなる群から選択される、請求項1または2に記載の人工受容体。
  4.  前記T細胞が、細胞傷害性T細胞である、請求項3に記載の人工受容体。
  5.  前記シェディング構造が、notchタンパク質、アミロイド前駆体タンパク質およびCD28からなる群から選択されるタンパク質に由来する、請求項1~4のいずれか1項に記載の人工受容体。
  6.  前記免疫細胞内へのシグナル伝達ドメインが、CD3ζ鎖、CD28および4-1BBからなる群から選択される少なくとも1種に由来するシグナル伝達ドメインを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の人工受容体。
  7.  シェディング構造を有する膜貫通ドメインが、
     (1)配列番号26で示されるアミノ酸配列、または
     (2)(1)のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列
    を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の人工受容体。
  8.  膜貫通ドメインにγセクレターゼによる切断部位を有さない、請求項1~7のいずれか1項に記載の人工受容体。
  9.  同じシグナル伝達ドメインを2つ以上有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の人工受容体。
  10.  請求項1~9のいずれか1項に記載の人工受容体をコードする核酸。
  11.  請求項1~9のいずれか1項に記載の人工受容体または請求項10に記載の核酸を有する、免疫細胞。
  12.  請求項11に記載の免疫細胞を含む、医薬。
  13.  (1)リガンド結合部位と、膜貫通ドメインと、免疫細胞内へのシグナル伝達ドメインとを含む受容体を選択する工程、ならびに
     (2A)工程(1)で選択した膜貫通ドメインのシェディングに対する感受性を調節する工程、ならびに/または
     (2B)工程(1)で準備した受容体のシグナル伝達ドメインに1つ以上のアミノ酸残基を付加、挿入および/もしくは欠失させる、ならびに/もしくは1つ以上のアミノ酸残基で置換する工程
    を含む、トロゴサイトーシスによる作用が調節された受容体または該受容体をコードする核酸の設計方法。
  14.  (1)リガンド結合部位と、膜貫通ドメインと、免疫細胞内へのシグナル伝達ドメインとを含む受容体を準備する工程、ならびに
     (2A)工程(1)で準備した膜貫通ドメインのシェディングに対する感受性を調節する工程、ならびに/または
     (2B)工程(1)で準備した受容体のシグナル伝達ドメインに1つ以上のアミノ酸残基を付加、挿入および/もしくは欠失させる、ならびに/もしくは1つ以上のアミノ酸残基で置換する工程
    を含む、トロゴサイトーシスによる作用が調節された受容体または該受容体をコードする核酸の製造方法。
  15.  前記工程(1)で選択または準備する受容体がキメラ抗原受容体、T細胞受容体、Fc受容体およびチロシンキナーゼ受容体からなる群から選択される、請求項13または14に記載の方法。
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