WO2023223838A1

WO2023223838A1 - 上地化粧料

Info

Publication number: WO2023223838A1
Application number: PCT/JP2023/017126
Authority: WO
Inventors: ターシャ小畑; 香代子直井; 収希増田
Original assignee: 株式会社資生堂
Priority date: 2022-05-18
Filing date: 2023-05-02
Publication date: 2023-11-23

Abstract

本発明は、紫外線吸収剤などの極性油を安定に配合でき、なおかつ外観が透明または半透明の微細エマルション（ナノエマルション）であって、好ましくはミスト状に噴霧して適用することができる上地化粧料を提供する。本発明は、（ａ）極性油；（ｂ）低級アルコール；及び、（ｃ）オキシエチレン付加モル数が２０～３０のポリオキシエチレン水添ヒマシ油を含む界面活性剤、を含有する水中油型ナノエマルションからなることを特徴とする上地化粧料を提供する。本発明の上地化粧料は、透明又は半透明でミスト噴霧に適している。

Description

上地化粧料

　本発明は、上地化粧料に関する。より詳細には、極性油を含む微細な油滴を有する水中油型乳化物（ナノエマルション）からなり、化粧を施した肌の上に、好ましくはミスト状で適用される上地化粧料に関する。

　化粧を施した肌の上に適用され、化粧くずれを抑制する上地化粧料が知られている。従来の上地化粧料は、被膜形成剤を配合し、当該被膜形成剤による被膜で下地となる化粧料を保護することによって化粧くずれを防止／抑制するものが一般的である。例えば、特許文献１に記載された仕上げ用化粧料は、水性媒体中に、所定量の微細セルロース繊維と皮膜形成能を持つ高分子とを含有し、ファンデーション等のメーキャップ化粧料の上にミスト状に噴霧することにより化粧くずれや二次付着を防止できる。

　近年、前記の仕上げ用化粧料と同様に使用できる上地化粧料（「フィックスミスト」とも呼ばれる）に、化粧くずれ防止機能等のみならず、スキンケアや紫外線防御といった機能を付与することが求められるようになっている。しかしながら、スキンケアや紫外線防御の機能を持つ化粧品成分は高極性油であることが多く、それらを水性媒体に安定に配合することは困難であった。

　特許文献２には、特定のトリアジン骨格を有する紫外線吸収剤、平均ポリオキシエチレン付加モル数が２０～５０モルであるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、エタノール及び水を、各々所定量配合した透明水系化粧料が記載されている。この透明水系化粧料は、トリアジン骨格を有する紫外線吸収剤の、粒径が２０～１００ｎｍの安定な水中油型微細エマルション（ナノエマルション）であるが、油分（紫外線吸収剤）に対して多量（約７倍）の界面活性剤（ＰＯＥ硬化ヒマシ油）が配合されている。

　特許文献３は、特許文献２におけるエタノールをポリオールに置換することにより、難溶性紫外線吸収剤を安定に配合した水中油型微細エマルション（平均粒子径１５０ｎｍ以下）を開示している。特許文献３においては、紫外線吸収剤と界面活性剤とが略同量でも安定性が維持されているが、微細エマルションの外観は透明とはならない。

特許第６９４０９８０号公報特許第４２２６９５１号公報特開２０１３－４７２０６号公報

　本発明は、前記技術の現状に鑑みてなされたものであり、紫外線吸収剤などの極性油を安定に配合でき、なおかつ外観が透明または半透明の微細エマルション（ナノエマルション）であって、好ましくはミスト状に噴霧して適用することができる上地化粧料を提供することを課題とする。

　本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、界面活性剤として特定のポリオキシエチレン水添ヒマシ油を選択し、それを用いてエタノールを含む水性媒体に極性油を微細乳化したナノエマルションとすることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。

　すなわち、本発明は、
（ａ）極性油；
（ｂ）低級アルコール；及び、
（ｃ）オキシエチレン付加モル数が２０～３０のポリオキシエチレン水添ヒマシ油を含む界面活性剤、
を含有する水中油型ナノエマルションからなることを特徴とする上地化粧料を提供する。

　本発明の上地化粧料は、紫外線吸収剤などの極性油を安定に保持することが可能であり、なおかつ外観が透明または半透明で、ミスト状に噴霧して適用するのに適している。従って、本発明の上地化粧料は、従来の仕上げ用化粧料と同様に化粧くずれを防止できるのみならず、紫外線に対する防御効果などのスキンケア機能を併せ持った化粧料となる。

　本発明の上地化粧料（以下、単に「化粧料」ともいう）は、（ａ）極性油、（ｂ）低級アルコール、及び（ｃ）オキシエチレン付加モル数が２０～３０のポリオキシエチレン水添ヒマシ油を含む界面活性剤を含有するナノエマルションからなることを特徴とする。
　なお、以下において、ポリオキシエチレンを「ＰＯＥ」、ポリオキシプロピレンを「ＰＯＰ」、ポリエチレングリコールを「ＰＥＧ」、エチレンオキシドを「ＥＯ」、プロピレンオキシドを「ＰＯ」と略記する場合がある。

（ａ）極性油
　本発明の化粧料における（ａ）極性油（以下、単に「（ａ）成分」とする場合がある）は、常温（２５℃）で液状の高極性油である。（ａ）極性油は、ＩＯＢ値が０．１以上、特にＩＯＢ値が０．１より大きく０．６以下の油分から選択するのが好ましい。

　ＩＯＢ値とは、Ｉｎｏｒｇａｎｉｃ／ＯｒｇａｎｉｃＢａｌａｎｃｅ（無機性／有機性比）の略であって、無機性値の有機性値に対する比率を表す値であり、有機化合物の極性の度合いを示す指標となるものである。ＩＯＢ値は、具体的には、ＩＯＢ値＝無機性値／有機性値として表される。「無機性値」、「有機性値」のそれぞれについては、例えば、分子中の炭素原子１個について「有機性値」が２０、水酸基１個について「無機性値」が１００といったように、各種原子又は官能基に応じた「無機性値」、「有機性値」が設定されており、有機化合物中の全ての原子及び官能基の「無機性値」、「有機性値」を積算することによって、当該有機化合物のＩＯＢ値を算出することができる（例えば、甲田善生著、「有機概念図－基礎と応用－」ｐ１１～１７、三共出版、１９８４年発行参照）。

　（ａ）極性油の具体例としては、特に限定されないが、オレイン酸、イソステアリン酸等の脂肪酸；安息香酸アルキル（Ｃ１２－１５）、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、エチルヘキサン酸セチル、ジステアリン酸グリコール、ジイソステアリン酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリ２－エチルヘキサン酸グリセリル（トリエチルヘキサノイン）、トリオクタン酸トリメチロールプロパン、アジピン酸ジイソブチル、Ｎ－ラウロイル－Ｌ－グルタミン酸－２－オクチルドデシルエステル、アジピン酸２－ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル等のエステル油；オリーブ油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油等の植物油；デシルテトラデカノール、オクチルドデカノール、オレイルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。

　（ａ）極性油の更なる具体例として、常温で液状の有機紫外線吸収剤、例えば、オクチルメトキシシンナメート（パラメトキシケイ皮酸２－エチルヘキシル）、サリチル酸エチルヘキシル、ホモサレート、オクトクリレン等を挙げることができる。
　また、常温で固体であるが、前記極性油（常温で液状の有機紫外線吸収剤を含む）に溶解する有機紫外線吸収剤（油溶性紫外線吸収剤）、例えば、ｔ－ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルトリアゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、オキシベンゾン－３、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール等を、前記極性油に溶解した状態で配合することが可能である。本発明では、極性油に溶解した油溶性紫外線吸収剤も（ａ）極性油に含めるものとし、常温で液状の有機紫外線吸収剤と油溶性紫外線吸収剤を併せて「（ａ１）紫外線吸収剤」と称する。

　本発明の化粧料においては、有効な紫外線防御能を付与するために、（ａ）極性油が（ａ１）紫外線吸収剤を含むのが好ましい。本発明の化粧料は、（ａ）極性油の一部または全部が（ａ１）紫外線吸収剤である態様を包含する。なお、（ａ）極性油の全部が（ａ１）紫外線吸収剤である場合、（ａ）極性油は、常温で液状の有機紫外線吸収剤の少なくとも１種を含有する。

　本発明の化粧料はナノエマルションの形態であるため、（ａ）極性油を比較的多く配合しても安定である。よって、本発明の化粧料における（ａ）極性油の配合量の下限値は、例えば、化粧料全量に対して、１質量％以上、３質量％以上、５質量％以上、又は７質量％以上とすることができる。（ａ）極性油の配合量の上限値は、例えば、化粧料全量に対して、４０質量％以下、３５質量％以下、又は３０質量％以下等とすることができる。（ａ）極性油の配合量範囲としては、例えば、１～４０質量％、３～３５質量％、５～３０質量％、あるいは７～３０質量％等とすることができる。
　なお、紫外線防御効果という観点から、（ａ）極性油全量の５０質量％以上、６０質量％以上、７０質量％以上、又は８０質量％以上を（ａ１）紫外線吸収剤が占めるように処方するのが好ましい。

（ｂ）低級アルコール
　本発明の化粧料は、前記（ａ）極性油を含む油分を水性媒体中に微細乳化させたナノエマルションであり、当該水性媒体は、水及び（ｂ）低級アルコールを含有する。
　（ｂ）低級アルコール（以下、単に「（ｂ）成分」とする場合がある）は、典型的には、１～４個の炭素原子を有する一価アルコールである。具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等を挙げることができ、中でもエタノールが好ましく用いられる。

　本発明の化粧料における（ｂ）低級アルコールの配合量は、化粧料全量に対して、例えば、１～２０質量％とすることができ、５～１５質量％とするのが好ましく、７～１２質量％とするのがより好ましい。（ｂ）低級アルコールの配合量が１質量％未満であると安定なナノエマルションを形成できない場合がある。

（ｃ）界面活性剤
　本発明の化粧料は、前記（ａ）極性油を含む油分を、前記（ｂ）低級アルコールを含む水性媒体に、（ｃ）界面活性剤を用いて微細乳化したナノエマルションを含む。本発明で用いられる（ｃ）界面活性剤（以下、単に「（ｃ）成分」とする場合がある）は、オキシエチレン付加モル数が２０～３０のポリオキシエチレン水添ヒマシ油を含む。なお、「水添ヒマシ油」は「硬化ヒマシ油」ともいう。

　ポリオキシエチレン水添ヒマシ油（以下、「ＰＯＥ水添ヒマシ油」とする）は、非イオン性界面活性剤の中でも、肌に対する安全性が高いことから、化粧料に汎用されている。本発明では、ＰＯＥ水添ヒマシ油の中でも、オキシエチレン付加モル数が２０～３０であるＰＯＥ水添ヒマシ油を用いる。本明細書において、「オキシエチレン付加モル数が２０～３０のＰＯＥ水添ヒマシ油」とは、オキシエチレン付加モル数が２０のＰＯＥ（２０）水添ヒマシ油（ＰＥＧ－２０水添ヒマシ油）及びオキシエチレン付加モル数が３０のＰＯＥ（３０）水添ヒマシ油（ＰＥＧ－３０水添ヒマシ油）のいずれか一方あるいは両方の混合物から構成されるＰＯＥ水添ヒマシ油を意味するものとする。両者の混合物におけるオキシエチレン付加モル数は、配合比（質量比）に基づく加重平均値と解する。例えば、ＰＯＥ（２０）水添ヒマシ油とＰＯＥ（３０）水添ヒマシ油との２：３（質量比）混合物のオキシエチレン付加モル数は、（２０×２＋３０×３）／（２＋３）＝２６となる。

　ここで、非イオン性界面活性剤の特性を表す指標の一つとして「ＨＬＢ（Ｈｉｄｒｏｐｈｉｌｉｃ　Ｌｉｐｏｐｈｉｌｉｃ　Ｂａｌａｎｃｅ）値」が知られている。ＰＯＥ（２０）水添ヒマシ油のＨＬＢ値は「１０」、ＰＯＥ（３０）水添ヒマシ油（ＰＥＧ－３０水添ヒマシ油）のＨＬＢ値は「１１」であることから、両者の混合物からなる「オキシエチレン付加モル数が２０～３０のＰＯＥ水添ヒマシ油」のＨＬＢ値（加重平均値）は１０～１１の範囲内となる。例えば、前記の例と同様に、ＰＯＥ（２０）水添ヒマシ油とＰＯＥ（３０）水添ヒマシ油との２：３（質量比）混合物のＨＬＢ値は、（１０×２＋１１×３）／（２＋３）＝１０．６となる。

　本発明の化粧料における、「オキシエチレン付加モル数が２０～３０のＰＯＥ水添ヒマシ油」の配合量は、化粧料全量に対して、１～１５質量％とするのが好ましく、２～１２質量％とするのがより好ましく、３質量％以上かつ１０質量％未満とするのが更に好ましい。

　本発明は、（ｃ）界面活性剤として、「オキシエチレン付加モル数が２０～３０のＰＯＥ水添ヒマシ油」以外の非イオン性界面活性剤あるいはイオン性界面活性剤を配合することを排除するものではない。ただし、その配合量は、本発明の効果を阻害しない範囲に限られる。本発明の化粧料は、（ｃ）界面活性剤が「オキシエチレン付加モル数が２０～３０のＰＯＥ水添ヒマシ油」のみからなる態様、例えば、ポリソルベート８０、モノイソステアリン酸ソルビタン又はジイソステアリン酸ソルビタンを含むソルビタン脂肪酸エステルを含まない態様を包含する。

　本発明の化粧料は、（ａ）極性油、（ｂ）低級アルコール、及び（ｃ）界面活性剤を含むナノエマルションからなる。
　本発明における「ナノエマルション」とは、水中油型の微細エマルションであって、その乳化粒子径が２００ｎｍ未満、好ましくは１００ｎｍ未満であるものを意味する。このように小さな乳化粒子径のナノエマルションの形態とすることにより、優れた乳化安定性と、透明ないし半透明の外観とを実現することができる。なお、本明細書における「乳化粒子径」は動的光散乱法による測定値、詳細には、２５℃においてＺｅｔａ　ｓｉｚｅｒ　ｎａｎｏ（Ｍａｌｖｅｒｎ社製）を用いて測定された値である。

　本発明においては、（ｂ）低級アルコールの配合量に対する（ｃ）界面活性剤の配合量の比率（質量比）［（ｃ）／（ｂ）］を１．５未満とするのが好ましく、より好ましくは１．２以下、より好ましくは１．０以下とする。

　本発明においては、ナノエマルションを良好に作成する観点から、（ａ）極性油の配合量に対する（ｃ）界面活性剤の配合量の比率（質量比）［（ｃ）／（ａ）］を４以下とするのが好ましく、より好ましくは３以下、更に好ましくは２以下である。この比率［（ｃ）／（ａ）］の範囲は、０．３～３にするのが好ましく、０．４～２にするのが特に好ましい。

　本発明の化粧料にあっては、化粧持ち及び使用性を向上させるために、（ｄ）粉末及び／又は（ｅ）被膜形成剤を配合するのが好ましい。（ｄ）粉末及び／又は（ｅ）被膜形成剤を配合することで、紫外線防御能を更に向上させる効果（以下「ブースター効果」ともいう）が得られるという予想外の利点もある。

（ｄ）粉末
　本発明の化粧料に配合される（ｄ）粉末（以下、「（ｄ）成分」とする場合がある）は、化粧料に配合され得る粉末成分であれば特に限定されない。（ｄ）粉末の形状は特に限られず、例えば、体質顔料、有機又は無機粉末、及び粘土鉱物等が例示される。

　体質顔料の具体例としては、タルク、カオリン、マイカ、合成マイカ、セリサイト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、タルク／シリカ／酸化チタン複合体が挙げられる。
　有機又は無機粉末の具体例としては、ナイロン、ポリアクリロニトリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、セルロース、デンプン、シリコーン系樹脂等の有機粉末、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、酸化チタン、無水ケイ酸（シリカ）等の無機粉末が挙げられる。
　粘土鉱物の具体例としては、モンモリロナイト，ベントナイト，サポナイトおよびヘクトライト等の天然または合成のラポナイトおよびスメクタイト等が挙げられる。

　本発明の化粧料における（ｄ）粉末の配合量は、化粧料全量に対して、０．５～５質量％が好ましく、０．６～４質量％がより好ましく、０．７～３質量％が更に好ましい。配合量が０．５質量％未満であると、粉末配合による効果が得られない場合がある。

（ｅ）被膜形成剤
　本発明の化粧料に配合される（ｅ）被膜形成剤（以下、「（ｅ）成分」ともいう）は、溶媒が蒸発することにより被膜を形成する物質であり、化粧料等に使用可能なものであれば特に限定されない。（ｅ）被膜形成剤は、水溶性のもの及び油溶性のものを含む。

　水溶性被膜形成剤の具体例としては、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン（ＰＶＰ）、加水分解コーンスターチ、ポリエチレングリコール（高分子量）等が挙げられる。

　油溶性被膜形成剤の具体例としては、ビニルピロリドン（ＶＰ）／ジメチルアミノエチルメタクリル酸コポリマー、ＶＰ／エイコセンコポリマー、ＶＰ／メタクリル酸エチル／メタクリル酸コポリマー、ＶＰ／ヘキサデセンコポリマー、ＶＰ／酢酸ビニル（ＶＡ）コポリマー、ＶＰ／ＶＡ／イタコン酸コポリマー、スチレン／ＶＰコポリマー等のビニルピロリドン系被膜形成剤；アクリル酸エチル／アクリル酸アミド／アクリル酸コポリマー、アクリル酸エチル／アクリル酸ブチルコポリマー、アクリル酸エチル／メタクリル酸エチルコポリマー、アクリル酸エチル／メタクリル酸コポリマー、アクリル酸エチル／メタクリル酸メチルコポリマー、アクリル酸オクチル／酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸オクチル／スチレンコポリマー、アクリル酸ブチル／酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸ブチル／ヒドロキシメタクリル酸エチルコポリマー、アクリル酸ブチル／メタクリル酸メチルコポリマー、アクリル酸メトキシエチル／アクリル酸ヒドロキシエチル／アクリル酸ブチルコポリマー、アクリル酸ラウリル／酢酸ビニルコポリマー、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリスチレンアクリル酸樹脂、（アクリレーツ／アクリル酸エチルヘキシル）コポリマー、（アクリレーツ／オクチルアクリルアミド）コポリマー、（アクリル酸アルキル／ジアセトンアクリルアミド）コポリマー等のアクリル酸系被膜形成剤；ポリ酢酸ビニル等の酢酸ビニル系被膜形成剤；ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル／アクリル酸ブチル／アクリル酸オクチル酸、ジエチル硫酸ビニルピロリドン／Ｎ，Ｎ’－ジメチルアミノメタクリル酸コポリマー等のメタクリル酸系被膜形成剤；ビニルメチルエーテル／マレイン酸エチルコポリマー、ビニルメチルエーテル／マレイン酸ブチルコポリマー等のビニルメチルエーテル系被膜形成剤；スチレン／メチルスチレン／インデンコポリマー等のスチレン系被膜形成剤；シクロヘキサン系アルキッド樹脂等のアルキッド樹脂系被膜形成剤等が挙げられる。特に、エタノール等の低級アルコールに可溶な被膜形成剤を用いるのが好ましい。

　本発明の化粧料における（ｅ）被膜形成剤の配合量は、化粧料全量に対して、０．５～５質量％が好ましく、０．６～４質量％がより好ましく、０．７～３質量％が更に好ましい。配合量が０．５質量％未満であると、被膜形成剤配合による効果が得られない場合がある。

　本発明の化粧料は、前記の成分（ａ）～（ｅ）に加えて、化粧料に通常配合し得る他の任意成分を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
例えば、油分（ただし、（ａ）極性油以外）、保湿剤、増粘剤、各種薬効成分、防腐剤、酸化防止剤等が挙げられる。

　保湿剤としては、多価アルコール、例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、１，３－ブチレングリコール、１，４－ブチレングリコール、１，２－ペンタンジオール（ペンチレングリコール）、１，５－ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、１，２－ヘキサンジオール、１，６－ヘキサンジオール、１，２－シクロヘキサンジオール、ヘプタンジオール、１，８－オクタンジオール、１，９－ノナンジオール、１，１０－デカンジオール、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール（低分子量）、ポリプロピレングリコール、チオジグリコール等を挙げることができる。

　本発明の化粧料は、例えば、口径が０．１～１．０φのノズルを備える容器に収容した形態で提供し、ミスト状に噴霧して使用するのが好ましい。従って、ミスト噴霧可能な粘度、例えば、１０００ｍＰａ・ｓ以下の粘度に調製するのが好ましい。

　本発明の化粧料は、上記の構成とすることにより、ミスト状に噴霧できる化粧料としては比較的多くの紫外線吸収剤を配合することが可能であり、なおかつ透明又は半透明な外観を呈する。化粧くずれを防止又は抑制すると同時にスキンケア効果を発揮するミスト噴霧式の上地化粧料として特に適している。

　以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される系に対する質量％で示す。

　下記の表１～表３に掲げた処方でナノエマルション組成物（化粧料）を調製した。各例の組成物について、化粧持ち、ＵＶ防御能上昇率（ブースター効果）、外観の透明性、及び使用性を、以下の方法で評価した。

＜化粧持ち＞
　上記の各組成物をディスペンサー型の噴霧容器に収容した。人工皮革上にリキッドファンデーションを一定量塗布し、３０分間乾燥させて下地化粧料とした。下地化粧料に、人工皮革から１５ｃｍ離れた距離から、噴霧容器を用いて前記各組成物を３回噴霧して塗布した。その後、当該塗布面に、イオン交換水を１５ｃｍ離れた距離から別の噴霧容器を用いて３回噴霧し、次いで、オレイン酸を塗布して（０．５ｍｇ／ｃｍ^２）３０分間乾燥させた。その後、別の人工皮革を取り付けたタッピング試験機を用いて１０回のタッピング試験を行った。タッピングによる別の人工皮革への色移り（下地化粧料の移り）を目視により観察し、以下の基準により評価した。得られた結果を表に示す。
　Ａ：別の人工皮革への色移りが確認されなかった。
　Ｂ：別の人工皮革への色移りがわずかに確認された。
　Ｃ：別の人工皮革への色移りが明らかに確認された。

＜ＵＶ防御能及びその上昇率（ブースター効果）＞
　測定プレート（Ｓプレート）（５×５ｃｍのＶ溝ＰＭＭＡ（ポリメチルメタクリレート）板、ＳＰＦＭＡＳＴＥＲ－ＰＡ０１）に各例の組成物（化粧料）を２ｍｇ／ｃｍ^２の量で滴下し、６０秒間指で塗布し、１５分間乾燥した後に、形成された塗膜の吸光度を株式会社日立製作所製Ｕ－３５００型自記録分光光度計にて測定した。無塗布のプレートをコントロールとし、吸光度（Ａｂｓ）を以下の式で算出し、２９０～３２０ｎｍ（ＵＶＢ領域）および３２０～４００ｎｍ（ＵＶＡ領域）における測定値を積算し、ＵＶＢ領域とＵＶＡ領域の積算値の合計を、当該サンプルの吸光度積算値とした。
　Ａｂｓ＝－ｌｏｇ（Ｔ／Ｔｏ）
　Ｔ：サンプルの透過率、Ｔｏ：無塗布の透過率

　求めた各サンプルの吸光度積算値を用い、（ｄ）粉末及び（ｅ）被膜形成剤を配合しない化粧料（実施例９）の吸光度積算値をコントロール（対照）として、ＵＶ防御能を更に向上させる効果（ブースター効果）を示すＵＶ防御能上昇率を以下の式により算出した。
［ＵＶ防御能上昇率（％）］
＝｛([各例の吸光度積算値]／[コントロールの吸光度積算値])×１００｝－１００

＜外観の透明性＞
　各例の組成物（化粧料）を調製した直後の外観の透明性を室温にて目視で観察した。
　Ａ：透明
　Ｂ：若干の曇りはあるが透明
　Ｃ：曇りはあるが半透明
　Ｄ：白濁

＜使用性＞
　各例の組成物（化粧料）を口径０．２５～０．４φのノズルを備えた容器に収容し、メーキャップを施した専門パネルの肌にミスト噴霧し、塗布後のべたつきを官能評価した。
　Ａ：べたつきが全くない
　Ｂ：僅かなべたつきがあるが実用上問題ない
　Ｃ：若干のべたつきはあるが実用上問題ない
　Ｄ：べたつきがあり実用に適しない

　表１～３に示すように、（ａ）極性油（（ａ１）紫外線吸収剤を含む）を、（ｂ）低級アルコールを含む水性媒体中に、（ｃ）オキシエチレン付加モル数が２０～３０のポリオキシエチレン水添ヒマシ油を含む界面活性剤を用いて微細乳化した水中油型ナノエマルションからなる本発明の上地化粧料は、透明又は半透明であり、口径の小さなノズルからミスト噴霧でき、使用性および化粧持ちに優れ、なおかつＵＶ防御能を更に向上させる効果を有していた。一方、オキシエチレン付加モル数が２０～３０のポリオキシエチレン水添ヒマシ油を含まない界面活性剤を使用した比較例１は、白濁した外観で、べたついた使用感となり、ミスト噴霧に適していなかった。

Claims

（ａ）極性油；
（ｂ）低級アルコール；及び、
（ｃ）オキシエチレン付加モル数が２０～３０のポリオキシエチレン水添ヒマシ油を含む界面活性剤、
を含有する水中油型ナノエマルションからなることを特徴とする上地化粧料。
ミスト状に噴霧して使用される、請求項１に記載の上地化粧料。
前記ミストが、口径が０．１～１．０φのノズルから噴霧される、請求項２に記載の上地化粧料。
（ａ）極性油が、（ａ１）紫外線吸収剤を含む、請求項１に記載の上地化粧料。
（ｂ）低級アルコールがエタノールである、請求項１に記載の上地化粧料。
（ｄ）粉末を更に含む、請求項１に記載の上地化粧料。
（ｅ）被膜形成剤を更に含む、請求項１に記載の上地化粧料。
（ｅ）被膜形成剤が、水又は低級アルコールに溶解性である、請求項７に記載の上地化粧料。