WO2023210180A1 - ヘッドホン並びにキャリングケース - Google Patents

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祐史 小山
朋希 京泉
俊彦 中島
智優 横山
和弘 西田
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    • H04ELECTRIC COMMUNICATION TECHNIQUE
    • H04RLOUDSPEAKERS, MICROPHONES, GRAMOPHONE PICK-UPS OR LIKE ACOUSTIC ELECTROMECHANICAL TRANSDUCERS; DEAF-AID SETS; PUBLIC ADDRESS SYSTEMS
    • H04R1/00Details of transducers, loudspeakers or microphones
    • H04R1/10Earpieces; Attachments therefor ; Earphones; Monophonic headphones

Abstract

ノイズキャンセリング機能などが改善されたヘッドホンを提供する。 ヘッドホンは、ヘッドバンドと、ハウジングと、ハウジングに取り付けられたイヤーパッドと、ハウジングを支持するハンガーと、ハンガーをヘッドバンドの端部に接続するスライダーを具備し、前記ハンガーの可動範囲の外側となる前記ハウジングの場所に配置されたマイクをさらに備える。前記ハウジングは、前記ハンガーの可動範囲を覆う筐体を含む。前記ハンガーと前記マイクは、前記ハウジング内に形成された同じ空間で、前記ハンガーの外周側に配置される。

Description

ヘッドホン並びにキャリングケース
 本明細書で開示する技術(以下、「本開示」とする)は、ヘッドホン並びにヘッドホン用のキャリングケースに関する。
 ヘッドホンは、再生装置や受信機から出力された電気信号を、耳(鼓膜)に近接した発音体(スピーカーなど)を用いて音波(可聴音)に変換する装置を組み合わせた音響機器として広く知られている。最近では、小型且つ高性能な再生装置の普及に伴って、ヘッドホンの利用も増えてきている。
 ヘッドホンは、屋外や外出先、移動中の電車内などで利用される場合が多く、ノイズ耐性が強く望まれている。このため、外部環境のノイズをキャンセルして、聴取者に対して良好な楽曲再生環境を提供するノイズキャンセリング機能を備えた高性能及び高品位なヘッドホン(例えば、特許文献1を参照のこと)が開発され、既に利用に供されている。
 また、ヘッドホンの持ち運びを容易にするとともに、ヘッドホンを収納し且つ収納時に外力による破損を防止しながら保管するために、ヘッドホン用のキャリングケースも開発され(例えば、特許文献2を参照のこと)、ヘッドホンと同梱で又は別売で供給されることが多い。
 また、ヘッドホンの耳に当たるパッド部分はクッション性に優れたポリウレタンなどの素材からなるが、発汗や体温の影響で加水分解して経年劣化するという問題がある。このため、イヤーパッドを交換可能な構造にするとともに(例えば、特許文献3を参照のこと)、劣化の際の交換用のパッドが市販されることもある。また、遮音性を考慮して通気性のないイヤーパッドを備えたヘッドホンが提案されている(例えば、特許文献4を参照のこと)。
特開2008-116782号公報 特開2013-38671号公報 特開2010-187151号公報 特開2021-164085号公報 特開2010-62733号公報 特開2006-344813号公報
 本開示の目的は、ノイズキャンセリング機能などが改善されたヘッドホン並びにヘッドホン用のキャリングケースを提供することにある。
 本開示は、上記課題を参酌してなされたものであり、その第1の側面は、
 ヘッドバンドと、ハウジングと、ハウジングに取り付けられたイヤーパッドと、ハウジングを支持するハンガーと、ハンガーをヘッドバンドの端部に接続するスライダーを具備し、
 前記ハンガーの可動範囲の外側となる前記ハウジングの場所に配置されたマイクをさらに備える、ヘッドホンである。
 前記ハウジングは、前記ハンガーの可動範囲を覆う筐体を含み、前記ハンガーの前記ヘッドバンドとの接合部が稼働するためのスリットを有する。また、前記ハンガーと前記マイクは、前記ハウジング内に形成された同じ空間に配置される。例えば、前記マイクは前記ハンガーの外周側に配置される。
 また、前記スライダーは、シームレスの短円弧中空パイプ形状を有し、前記ハウジング内の回路に接続されるケーブルを前記中空パイプで内包する。具体的には、前記スライダーは、シームレスの短円弧中空パイプ形状を有する樹脂と、前記樹脂の前記ハンガーとの接合部にインサートされた金属ナット部品からなるシャフトツイストスライダーからなり、前記金属ナット部品と前記ハンガーに挿通されたシャフトツイストの先端との締結構造により、前記スライダーは、前記ハンガーを前記スライダーのセンターライン回りに回転可能に支持する。
 また、前記イヤーパッドは、リング状のウレタンフォームを表皮で内包して構成され、前記表皮は、3次元微細孔構造を有する湿式発泡層の底面又は表面のうち少なくとも一方に薄いウレタン皮膜を一体化したものを基布に貼り合わせて構成される。あるいは、前記イヤーパッドは、リング状のウレタンフォームを表皮で内包して構成され、前記表皮は、連続気泡又は通気性を有する湿式基布の底面又は表面のいずれか一方に非通気の透湿防水膜を貼り合わせたものの表面に3次元微細孔構造を有する湿式発泡層を貼り合わせて構成される。
 また、前記イヤーパッドは、リング状の内周側に設けられた指掛け形状部を備えた固定爪を備える。前記固定爪は、前記ハウジング側の爪固定部との爪嵌合構造を持つ。前記イヤーパッドは内周の複数箇所に配置された固定爪を備える。前記複数箇所に配置された固定爪は、指掛け形状部を含む固定爪と指掛け形状部を含まない固定爪を含む。指掛け形状部を含む固定爪は、装着者の顔前方の、前記イヤーパッドの曲率半径Rが小さい範囲に隣り合わせで配置される。
 また、前記ハウジング内の空間を分離する壁には、線材を挿通させるための孔を含む配線部が備えられ、前記線材を前記孔の壁面に押し付けるようにしてブッシングを前記孔に差し込むことによって、前記ハウジング内の空間の音響密閉が実現する。前記ブッシングは全周にわたって形成されたリブを有し、前記ブッシングが前記孔に差し込まれた際に前記リブは前記孔の壁面と干渉する。
 また、本開示の第2の側面は、主に本開示の第1の側面に係るヘッドホン用のキャリングケースであって、
 天面蓋部と、
 底面トレー部と、
 前記天面蓋部及び前記底面トレー部に縫製されたリング状で、上下方向の押圧力により折り畳まれる折り目を有する側面部と、
を具備するキャリングケースである。
 本開示によれば、ノイズキャンセリング機能などが改善されたヘッドホン並びにヘッドホン用のキャリングケースを提供することができる。
 なお、本明細書に記載された効果は、あくまでも例示であり、本開示によりもたらされる効果はこれに限定されるものではない。また、本開示が、上記の効果以外に、さらに付加的な効果を奏する場合もある。
 本開示のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
図1は、ヘッドホン100の外観を示した図である。 図2は、ヘッドホン100の外観(スライド機能を使用した状態)を示した図である。 図3は、ノイズキャンセリングシステムの機能的構成を示した図である。 図4は、本開示の一実施形態に係るヘッドホン100の4面図を示した図である。 図5は、ハウジング101の斜視図を示した図である。 図6は、図4中の線分A-Aで切断したハウジング101の断面図を示した図である。 図7は、ハウジング101の側面図及び断面図(ハンガー103のあおり角度が最小のとき)を示した図である。 図8は、ハウジング101の側面図及び断面図(ハンガー103のあおり角度が最大のとき)を示した図である。 図9は、ハンガー103がY字型で2つの可動軸を持つ場合のマイクの配置例を示した図である。 図10は、ハンガー103の可動軸が1つの場合のマイクの配置例を示した図である。 図11は、ハンガー103の可動軸が1つの場合のマイクの配置例を示した図である。 図12は、複数パターンのマイクの配置例をまとめて示した図である。 図13は、ハウジング101の1階部分と2階部分に分かれて4個のマイクが配置された配置例を示した図である。 図14は、本開示に係るヘッドホン100において、スライダー104とハンガー103との接合部分を拡大して示した図である。 図15は、スライダー104とハンガー103との接合部分の断面を示した図である。 図16は、シャフトツイストスライダー1503がインサートされたスライダー104の下端付近を示した図である。 図17は、スライダー104の斜視図を示した図である。 図18は、スライダー104の側面図を示した図である。 図19は、スライダー104の断面図を示した図である。 図20は、スライダー104とハンガー103との接合部分を拡大して示した図である。 図21は、スライダー104とハンガー103との接合部分付近を空気が回り込む様子を示した図である。 図22は、イヤーパッド107の平面図を示した図である。 図23は、イヤーパッド107を線B-Bで切断した断面図を示した図である。 図24(A)は通常の湿式合皮の断面構造を示した図であり、図24(B)は通常の乾式合皮の断面構造を示した図である。 図25は、ウレタンフォームを内包する表皮に用いられる合成皮革の一例の断面構造を示した図である。 図26は、図25に示した合成皮革の変形例を示した図である。 図27は、図25に示した合成皮革の他の変形例を示した図である。 図28は、ウレタンフォームを内包する表皮に用いられる合成皮革の他の例の断面構造を示した図である。 図29は、図28に示した合成皮革の変形例を示した図である。 図30は、ウレタンフォームを内包する表皮に用いられる合成皮革のさらに他の例の断面構造を示した図である。 図31は、図30に示した合成皮革の変形例を示した図である。 図32は、ウレタンフォームを内包する表皮に用いられる合成皮革のさらに他の例の断面構造を示した図である。 図33は、図32に示した合成皮革の変形例を示した図である。 図34は、イヤーパッド107及びハウジング101の断面図を示した図である。 図35は、図34に示した断面図のうち、イヤーパッド107側の固定爪及びハウジング101側の爪固定部をさらに拡大して示した図である。 図36は、イヤーパッド107及びハウジング101に6箇所の爪嵌合構造を配置した例を示した図である。 図37は、Rが小さい範囲に隣り合わせで配置された2箇所の固定爪の配置場所を斜視して示した図である。 図38は、図37に示した2箇所の固定爪のうち一方に指を入れて固定爪を取り外そうとしている様子を示した図である。 図39は、イヤーパッド107の楕円形状の内部に耳(耳介)が挿入されている様子を示した図である。 図40は、固定爪の指掛け形状部の変形例を示した図である。 図41は、固定爪の指掛け形状部の他の変形例を示した図である。 図42は、複数の爪固定部を配置する他の例を示した図である。 図43は、線材の周囲にクッション材が巻かれた様子を示した図である。 図44は、ブッシング4400の外観構成例を示した図である。 図45は、ブッシング4400が孔を成す部品4500に差し込まれた様子(断面図)を示した図である。 図46は、ブッシング4400が孔を成す部品4500に差し込まれた様子(断面図)を示した図である。 図47は、ブッシング4400の取り付けがヘッドホン100の周波数特性に与える影響を示した図である。 図48は、ハウジング101の筐体内における配線部(又は、ブッシングの適用場所)の配置場所の変形例を示した図である。 図49は、ハウジング101の筐体内における配線部(又は、ブッシングの適用場所)の配置場所の他の変形例を示した図である。 図50は、キャリングケース5000の外観を上方、下方、及び前後左右の各側面から眺めた6面図を示した図である。 図51は、キャリングケース5000を開いた状態を上方及び1つの側面から眺めた2面図を示した図である。 図52は、キャリングケース5000を主な構成部品毎に分解した分解図を示した図である。 図53は、上側マチ部5021と下側マチ部5022の展開図を示した図である。 図54は、キャリングケース5000の側面部を折り畳む様子を示した図である。 図55は、キャリングケース5000の側面部で折り目が形成される箇所を示した図である。 図56は、キャリングケース5000の側面部で折り目が形成される箇所を示した図である。 図57は、ハンガー103の上端付近を拡大して示した図である。 図58は、シャフトツイストスライダー1503がインサートされたスライダー104の下端付近を示した図である。 図59は、ヘッドホンの基本構造を示した図である。 図60は、ハンガーをツイストさせたときにスライダーとハンガーの間に段差が生じる様子を示した図である。
 以下、図面を参照しながら本開示について、以下の順に従って説明する。
A.ヘッドホンの基本構造
B.ノイズキャンセリング機能
C.ノイズキャンセリング用マイクの最適配置
D.スライダーの構造
E.イヤーパッド構造
 E-1.透湿合皮イヤーパッド構造
 E-2.交換爪式イヤーパッド
F.配線部密閉構造
G.キャリングケース
A.ヘッドホンの基本構造
 まず、図59を参照しながら、ヘッドホンの基本構造について説明する。但し、図59は、参考のためにヘッドホンの基本的な構成要素を説明するために便宜的に取り上げたに過ぎず、本開示はこれに限定されるものではない。
 図示のヘッドホン5900は、いわゆるオーバーヘッド型であり、左右一対のハウジング101と、左右一対のハウジング101を装着者(図示しない)の頭部に挟着させるヘッドバンド102と、左右一対のハウジング101とヘッドバンド102の左右の各端部を連結する左右一対のハンガー103を備えている。左右一対のハンガー103は、それぞれスライダー104を介してヘッドバンド102の左右の各端部に固定されている。
 左右一対のハウジング101には、それぞれスピーカー106とイヤーパッド107が配設されている。スピーカー106は、振動板(後述)などの発音体からなる。ハウジング101のうちスピーカー106からの音響が出力する面を、便宜的に「音響面」とも呼ぶことにする。音響面は、基本的には、装着状態で装着者の耳と対向する側面である。イヤーパッド107は音響面に取り付けられ、遮音性が確保されたNC(ノイズキャンセリング)領域を形成する。また、ハウジング101の筐体内には、スピーカー106の駆動回路を含む電気部品を実装した印刷配線基板が内蔵されている。
 ヘッドバンド102は、円弧状に湾曲形成されて弾力性が与えられており、その弾性力を利用して頭部に挟着して、左右一対のハウジング101を装着者の左右の耳に押圧させて、ヘッドホン5900を装着者の頭部に保持する。なお、ヘッドバンド102は、円弧の曲率を緩やかに湾曲した形状とすることにより耳への押圧感を和らげてもよい。
 スライダー104の下端はハンガー103の上端と結合している。スライダー104とハンガー103の結合方法は特に限定されない(本開示におけるスライダー104とハンガーの結合方法については後述に譲る)。また、スライダー104の上端は、中空のヘッドバンド102の端部からヘッドバンド102内に挿入されており、参照番号112で示すヘッドバンド102の延長方向に伸縮可能に取り付けられている。したがって、スライダー104をヘッドバンド102の延長方向112にスライドさせることによって、個人差のある装着者の頭のサイズに適合させてハウジング101(スピーカー106のある音響面)がちょうど耳の位置となるように、スライダー104の長さを調整することができる。
 また、ハンガー103は、スライダー104を介して、ヘッドバンド102の延長方向112のセンターライン111を回転軸として回転可能に取り付けられている。要するに、スライダー104は、延長方向112にハンガー103の位置をスライドさせるスライド機能とともに、センターライン111回りにハンガー103を回転させるツイスト機能を備えている。したがって、ヘッドホン5900を装着者の頭部に装着した状態では、ハンガー103がヘッドバンド102のセンターライン111回りに回転して、ハウジング101の音響面がちょうど装着者の側頭部の形(又は、耳の傾斜)に倣うような回転角度になる。
 ハンガー103は、Y字型に形成されている。ハンガー103の上端はスライダー104を介してヘッドバンド102の下端に取り付けられている。また、ハンガー103の二股に分かれた下端には、ハウジング101が取り付けられている。ここで、ハウジング101は、ハンガー103の二股に分かれた下端を結ぶ破線113を回転軸として回転可能となるように、ハンガー103に支持されている。したがって、ヘッドホン5900を装着者の頭部に装着した状態では、ハウジングが回転軸113回りに回転して、ハウジング101の音響面がちょうど装着者毎に異なる側頭部の形(又は、耳の傾斜)に倣うようなあおり角度になる。
 図1には、本開示を適用した最良の実施形態に係るヘッドホン100の外観を示している。ヘッドホン100は、図59に参考のために例示したヘッドホン5900と同様に、それぞれスピーカー106を保持する左右一対のハウジング101と、左右一対のハウジング101を装着者(図示しない)の頭部に挟着させるヘッドバンド102と、左右一対のハウジング101とヘッドバンド102の左右の各端部を連結する左右一対のハンガー103を備えている。左右一対のハンガー103は、それぞれ長手方向に伸縮するスライダー104を介して、ヘッドバンド102の左右の各端部に固定されている。
 図1に示すヘッドホン100においても、ヘッドバンド102が弾性力を利用して頭部に挟持してヘッドホン100を装着者の頭部に装着する機能を持ち、スライダー104はハンガー103の位置をスライドさせるスライド機能及びスライダー104のセンターライン回りにハンガー103を回動させるツイスト機能を持ち、さらにハンガー103がハウジング101のあおり角度を調整する機能を持つ点は同じである。参考のため、図2には、手前側のスライダー104のスライド機能により、ハンガー103をヘッドバンド102の端部から延長させている様子を示している(但し、もう片方のハウジング101及びハンガー103の図示を省略している)。
 ヘッドホン100は、スライダー104が円筒形状である点や、ハンガー103(少なくともY字の二股部分及びハウジング101を支持する回転軸部)がハウジング101の筐体内に配置されている点など、図59に示したヘッドホン5900とは数多の相違点があるが、本開示の特徴となる主要な相違点については後述に譲る。
B.ノイズキャンセリング機能
 外部の音に邪魔されずに音楽を楽しむために、ノイズキャンセリング機能を備えた高性能及び高品位なヘッドホンが開発され、既に利用に供されている。ノイズキャンセリングは、一般に、パッシブノイズキャンセリングとアクティブノイズキャンセリングの組み合わせで実現される。パッシブノイズキャンセリングは、イヤーパッドなどでノイズキャンセリング(NC)領域の遮音性を保つことで実現する。一方、アクティブノイズキャンセリングは、外音と逆位相の音を発生させて外音を打ち消すようにして、外音の低域乃至中域をキャンセルする技術である。
 アクティブノイズキャンセリングには、NC領域の外部に設置したマイク(以下、「フィードフォワード(FF)マイク」とも言う)で収音した信号の逆位相の信号を用いてNC領域内の外音を打ち消す「フィードフォワード方式」と、NC領域内に設置したマイク(以下、「フィードバック(FB)マイク」とも言う)で収音した信号の逆位相の信号を用いてNC領域内の外音を打ち消す「フィードバック方式」がある。
 図3には、フィードフォワード方式とフィードバック方式とを組み合わせたノイズキャンセリングシステムの機能的構成を模式的に示している。NC領域301は、ノイズキャンセリングを実施する対象領域であり、ヘッドホンを装着した装着者の耳とヘッドホンの筐体(ハウジング)の間の空間に相当し、外耳道入口がイヤーパッドなどで遮音されている。図示のノイズキャンセリングシステムは、フィードフォワード(FF)マイク302と、FFキャンセル信号生成部303と、再生部304と、合成部305と、フィードバック(FB)マイク306と、FBキャンセル信号部307を備えている。
 FFマイク302は、NC領域301の外部に設置され、NC領域301の外部で発生する外音の収音を試みる。そして、FFキャンセル信号生成部303は、FFマイク302で収音した信号を解析し、解析した外音を打ち消すような逆位相のFFキャンセル信号を生成する。再生部304は、NC領域301内に設置されたスピーカーなどの音響素子からなり、FFキャンセル信号をNC領域301内でオーディオ出力する。なお、ヘッドホンが音楽再生中の場合には、FFキャンセル信号は合成部305において音楽信号と合成され、再生部304は、音楽信号とFFキャンセル信号を合成した後のオーディオ信号を出力することになる。これによって、NC領域301に漏れ込んでくる外音と、再生部304から再生されるFFキャンセル信号が打ち消し合い、NC領域301内では外音が聞こえ難くなる。ヘッドホンが音楽再生中の場合には、NC領域301内では、外音が打ち消されて、音楽を聴き易くなる。
 また、FBマイク306は、NC領域301の内部に設置されている。FFキャンセル信号だけでNC領域301に漏れ込んでくる外音を完全にキャンセルすることは難しく、消し残しが生じることがある。FBマイク306は、その消し残された残存音を収音する。そして、FBキャンセル信号生成部307は、FBマイク306で収音した信号を解析し、解析した残存音を打ち消すような逆位相のFBキャンセル信号を生成する。FBキャンセル信号は、合成部305においてFFキャンセル信号と合成される。ヘッドホンが音楽再生中の場合には、FBキャンセル信号は、合成部305において、FFキャンセル信号とともに音楽信号とも合成される。再生部304は、FBキャンセル信号及びFFキャンセル信号を合成したオーディオ信号を出力する。これによって、FFキャンセル信号で消し残した外音と、FBキャンセル信号とが打ち消し合って、NC領域301内では外音がさらに聴こえ難くなる。したがって、ヘッドホンが音楽再生中の場合には、NC領域101内では、外音がFFキャンセル信号で打ち消されるとともに消し残した外音がFBキャンセル信号で打ち消されて、音楽をさらに聴き易くなる。すなわち、FF方式にFB方式を組み合わせることによって、ノイズキャンセリングの精度をさらに高めることができる。
 以下、本明細書で単に「ノイズキャンセリング」というときには、基本的にはフィードフォワード方式のアクティブノイズキャンセリングを指すものとする。したがって、後述する実施形態におけるノイズキャンセリング用のマイクは、イヤーパッドで仕切られたNC領域内ではなく、ハウジングなどのNC領域外に配置される。
C.ノイズキャンセリング用マイクの最適配置
 上記A項でも説明したように、装着者毎に異なる側頭部の形状に応じてヘッドホンを正しく装着できるように、ハウジングのあおり角度を調整するハンガーがハウジングに組み込まれることが多い。
 一方、ノイズキャンセリング機能を始めヘッドホン外部の音響情報に基づいてさまざまな信号処理を実現するために、ノイズキャンセリング用の複数のマイクを搭載したヘッドホンが利用に供されている。複数のマイクで収音された音声信号を信号処理して良好な音の「質」や「指向性」を得るには、装着者の口元に近いマイク配置や、大きなマイク間距離の確保、風雑音対策などが重要である。
 図59に示したヘッドホン5900のように、ハウジング101の筐体外の最外周部にハンガー103が取り付けられる構造の場合、ハンガー103のあおり角度の変化に対して影響なく収音できるようにするには、マイクの配置はハンガー103の内周側となるハウジングの筐体内に限定されてしまい、大きなマイク間配置を確保することが困難となる。例えば、マイクの開口部前方付近にハンガー103が存在すると、装着者毎に異なる装着状態におけるハンガー103のあおり角度の変化によってマイクが収音できる音情報に影響を及ぼし、また、装着者の歩行時などに空気がハンガー103及びハウジング101の筐体に回り込むことで生じる乱流が風雑音となってマイクで収音してしまうという問題もある。
 また、マイクの配置がハンガー103の内周側に限定されると、ハンガー103の動き(あおり角度の変化など)によって音響回路に寄与する空間内にマイクを配置せざるを得ないことが多くなる。この場合、ヘッドホン101自身(又はスピーカー106)から発生する音がノイズとなるだけでなく、マイク周囲の複雑な密閉構造が必要になってしまい、ハウジングの設計及び製作が難しくなる。
 要するに、ハウジング101の筐体外でハンガー103が動作すると、マイク穴前の空間への影響が大きくなる。例えばハンガー103のあおり角度が小さくなり、マイク穴前に接近すると、空気がハンガー103及びハウジング101の筐体に回り込むことで乱流が生じる易くなり、マイクへの風雑音となる。
 そこで、本開示では、まず、マイクを、ハウジング101の筐体のうちハンガー103の可動範囲よりも外周側に配置するようにした。また、本開示では、ハンガー103を、ハウジング101の筐体内に配置するようにした。Y字型のハンガー103の少なくとも二股部分及びハウジング101を支持する回転軸部はハウジング101の筐体内に配置されているので、図1では、ハンガー103のうち二股部分及びハウジング101を支持する回転軸部の部分は、ハウジング101の中に隠れて見えていない。そして、ハンガー103の根元側のスライダー104との接合部分のみが、ハウジング101の筐体外に出現している。後述するように、マイクをハンガーの可動範囲よりも外周側に配置し、さらにハンガー103がハウジング101の筐体内に組み込まれることによって、ハンガー101のあおり角度が変化しても、ハウジング101の筐体に設置したマイク穴付近に接近することはなくなり、マイクの取得音に差分が生じない。また、ハウジング101の筐体周囲の空気がハンガー103を回り込むことで発生するような風雑音の問題は解消される。
 図4には、本開示の一実施形態に係るヘッドホン100(図1を参照のこと)の、ハウジング101を4方向から眺めた4面図を示している。また、図5には、ハウジング101の斜視図を示し、図6には、図4中の線分A-Aで切断したハウジング101の断面図を示している。図4及び図5から分かるように、ハウジング101はドーム型の立体的な構造物であり、ほぼ楕円形(又は、四隅の角を丸めた四角形)の輪郭を有する。なお、図4~図6では左耳用のハウジング101を示しているが、右耳用のハウジング101はこれとほぼ左右対称的な形状及び構造を持つものとする。
 図5の斜視図を参照すると、ハウジング101の筐体は、側面筐体501と、天面筐体502に分割され、さらに側面筐体501の底面部分にイヤーパッド107が取り付けられている。また、図6の断面図を参照すると、側面筐体501は、ほぼ中央に発音体としての振動板601を、音響出力側が前方(図6中の下方)を向くように支持している。そして、振動板601を境界として、振動板601の前面側(すなわち、装着者の耳側)に前面音響空間611が形成されるとともに、振動板601の背面側(すなわち、外側)に第1の背面空間612が形成されている。さらに、側面筐体501の内壁面で仕切られた前面音響空間611の外側に外周空間613が形成されている。ハンガー103は、側面筐体501の中央の突起部分に回動可能に軸支されている。外周空間613は、ハンガー103の可動範囲となるとともに、複数のマイクの配置場所となる(図6に示す断面図では、1つのマイク604のみが見えている)。また、天面筐体502内には、第1の背面空間612よりさらに背面側の第2の背面空間614が形成されている。第2の背面空間614には、振動板601の駆動回路を含む電子部品が実装された印刷配線基板602が配置されている。また、リング状のイヤーパッド107の内側は、ノイズキャンセリングの対象となるNC領域615である。要するに、ハウジング101は、側面筐体501、天面筐体502、イヤーパッド107、さらには振動板601を備え、振動板601に対してイヤーパッド107から遠い側に音響空間分離部品を有する構成である。
 なお、ハウジング101の筐体内は、密閉が不要な非音響空間である1階部分と、第2の背面空間614である2階部分を含む。2階部分は、振動板601の特性をコントロールするために空間自体の構造的な密閉が必要であり、場合によっては通気量調整用の音響ダクト(図示しない)が存在する音響空間となる。ハウジング101は複数の音響空間を含むと言うこともできる。
 再び図4を参照すると、ハンガー103のうち、ハウジング101の筐体内に収容されているY字型の二股部分は破線で描かれている。ハンガー103の二股部分の各先端部分で内側に突設する回転軸部は、側面筐体501のほぼ中央の突出部分に回転可能に支持される可動軸となっている。そして、ハンガー103は、可動軸を中心に、天面筐体502内の外周空間613で可動する。ハンガー103の可動軸回りの回転角度がハウジング101のあおり角度となる。天面筐体502には、ハンガー103の根元部(ヘッドバンド102との接合部)が可動するためのスリットが設けられている。ハンガー103が可動軸回りに回動すると、ハンガー103の根元部は天面筐体502のスリットに沿って上下に移動することができる。ハンガー103は、あおり角度が0度~15度の範囲で可動する。図7には、ハンガー103のあおり角度が最小(0度)のときのハウジング101の側面図及び断面図を示している。また、図8には、ハンガー103のあおり角度が最大(15度)のときのハウジング101の側面図及び断面図を示している。図7及び図8から、ハウジング101の天面筐体502がハンガー103の可動範囲をカバーしていることを理解できよう。
 続いて、図4~図8に示したようなハンガー103を筐体内に取り込んだ構造からなるハウジング101に対するマイクの配置について説明する。
 上述したように、複数のマイクで収音された音声信号を信号処理して良好な音の「質」や「指向性」を得るには、装着者の口元に近いマイク配置や、大きなマイク間距離の確保、風雑音対策などが重要である。図9には、これら3つの条件を満たしたマイクの配置例を示している。図9では、ハウジング101の筐体の1階部分である側面筐体501に4個のマイク901~904を配置した様子を示している。具体的には、側面筐体501と天面筐体502で仕切られる、振動板601を境界にイヤーパッド107から遠い側となる外周空間613に、各マイク901~904が配置される。また、各マイク901~904を配置した場所付近の側面筐体501の壁面(又は、側面筐体501と天面筐体501の接合部分)には、マイク収音用のスリット状のマイク穴(図示しない)が穿設されているものとする。ハンガー103の外周側に1個のマイク901が配置され、その他の3個のマイク902~904は他の構造物や音響特性を考慮して配置される。本開示ではハンガー103がハウジング101の筐体内に組み込まれることによって、ハンガー103のあおり角度が変化してもマイク901用のマイク穴付近に接近することはなくなり、風雑音の問題は解消されている。なお、複数のマイク901~904を、1階部分である側面筐体501及び2階部分の天面筐体502のいずれに配置してもよいが、大きなマイク間距離を確保するという観点からは、1階部分である側面筐体501に配置した方がより好ましいと言うこともできる。
 図9には、ハンガー103がY字型で2つの可動軸を持つ場合の4個のマイク901~904の配置例を示した。図10及び図11には、ハンガー103の可動軸が1つの場合の4個のマイク1001~1004、及び1101~1104の配置例をそれぞれ示している。いずれの場合も、ハンガー103の外周側に1個のマイク1001又は1101が配置され、その他の3個のマイク1002~1004、又は1101~1104は他の構造物や音響特性を考慮して配置される。
 図12には、複数パターンのマイクの配置例をまとめて示している。但し、同図では、同じ組のマイクの配置場所を同じ値の丸囲み数字で表している。すなわち、図12では、番号1~4の4パターンのマイクの配置例を示している。上述したように、ハウジング101の筐体は側面筐体501と天面筐体502からなり、側面筐体501で構成される1階部分は密閉が不要な非音響空間である一方、天面筐体502で構成される2階部分は、振動板の特性をコントロールするために空間自体の構造的な密閉が必要な音響空間である。図12に示したいずれのパターンにおいても、ハンガー103の外周側に1個のマイクが配置され、その他のマイクは他の構造物や音響特性を考慮して、側面筐体501及び天面筐体502のいずれかに配置される。図12には、ハウジング101の上面のうち天面筐体502の部分をグレーで描いている。上面の他の部分は側面筐体501である。
 さらに図13には、ハウジング101の1階部分と2階部分に分かれて4個のマイク1301~1304が配置された配置例を示している。この例でも、ハンガー103の外周側に1個のマイク1301が配置され、その他のマイク1302~1304は他の構造物や音響特性を考慮して配置される。図13でも、ハウジング101の上面のうち天面筐体502の部分をグレーで描いている。上面の他の部分は側面筐体501である。
 このC項で説明したマイクの配置方法に関し、主な特徴とその効果についてまとめておく。
(1)ハンガー103を介してハウジング101を支持する構造のヘッドホン100において、ハウジング101のハンガー103の外周側となる場所にマイクを配置できると、ヘッドホン100の装着者の口元に近い位置に配置したマイクとより大きなマイク間距離を確保し易くなる。
(2)ハンガー103の可動部分をハウジング101の筐体内に配置する。ヘッドホン100の装着者の頭部側面の形状などによりハンガー103のあおり角度が変化しても、マイク穴前の空間には影響しないので、マイクの取得音に差分が生じない。また、ハウジング101の筐体周囲の空気がハンガー103を回り込むことで発生するような風雑音の問題は解消される。
(3)ハウジング101は、振動板601を境界として、イヤーパッド107(又は人体)から遠い側に、ハンガー103及びマイクが存在する空間(外周空間613)とは別の1以上の空間(第1の背面空間612、及び第2の背面空間614)が存在する構造を有する。したがって、非音響空間である外周空間613にマイクを配置することで、振動板601から発生する音の影響を抑えてマイクが外部の音を収音することができる。また、マイクの構造的な密閉が不要になるので、ハウリング耐性が向上し、言い換えればノイズキャンセリング性能が向上する。
D.スライダーの構造
 上記A項でも説明したように、スライダー104は、下端でハンガー103と結合し、ヘッドバンド102の延長方向にスライドすることで長さを調整するスライド機能と、ヘッドバンド102のセンターライン回りにハンガー103を回転させてハウジング101が装着者の側頭部の形(又は、耳の傾斜)に倣うように調整するツイスト機能を備えている。ところが、従来のヘッドホンの構造では、スライダーのスライド機能及びツイスト機能のいずれを使用する場合も問題があった。
 まず、スライダー104のスライド機能の問題について説明する。スライダーをヘッドバンド102から大きく引き出したときに、左右のハウジング101間を電気接続するケーブル(以下、「ワタリケーブル」とも呼ぶ)が外観上見えないようにすることや、ヘッドバンド102及びスライダー104をより軽量な構造にすることが、商品性及び品位を高めるために重要である。ところが、従来は、外観を重視してワタリケーブルを2以上の部品で挟んで見えないようにするか、又は軽量化を重視してワタリケーブルが露出することを許容していた。
 続いて、スライダー104のツイスト機能の問題について説明する。図59に示したヘッドホン5900のようにヘッドバンド102及びスライダー104が断面平型形状の場合、装着者の側頭部の形状に応じてハンガー103をツイスト回転させた際に、図60に示すように、スライダー104とハンガー103の間に段差が生じてしまう。装着者毎の側頭部の形状の違いによって、ハンガー103の回転角度が異なり、段差形状が異なる。このため、装着者の歩行時などに空気がハンガー103及びハウジング(図60には図示しない)の筐体に回り込むことで生じる乱流に差が生じる。上記C項で説明したように、ハウジングのハンガー104の外周側となる場所にマイクを配置する場合、スライダー104とハンガー103間の段差により、マイクが収音する環境が変化してしまうため、マイク特性さらにはノイズキャンセリング性能に対する影響が懸念される。
 また、ハンガー103のツイスト回転によって図60に示すようにスライダー104とハンガー103間に段差が生じると、美観が損なわれるという問題もある。
 そこで、本開示では、ハンガー103のツイスト回転時に、スライダー104とハンガー103間に段差が生じないようにするために、スライダー104の少なくともハンガー103との接合部分を円筒形状に構成した。また、スライダー104を中空円筒構造とし、ハンガー103のうちツイスト軸部分のみを中空円筒にインサートし、ハウジング101からのワタリケーブルを中空円筒内に挿通させて内包する構造とすることで、スライダー104がヘッドバンド102の延長方向にスライドした際にワタリケーブルが露出しないようにした。
 図14には、本開示に係るヘッドホン100において、スライダー104とハンガー103との接合部分を拡大して示している。スライダー104は、シームレスの短円弧中空パイプ形状を有し、鞘側となる中空円筒のヘッドバンド102(図14及び図15には図示しない)に挿通されている。スライダー104は、スライダー104自身のセンターラインとほぼ一致する延長方向にスライドすることによって、ハウジング101の位置を調整することができる。また、スライダー104は、ハウジング101(図14及び図15には図示しない)を支持するハンガー103を、スライダー104自身のセンターライン回りに回動(ツイスト)可能に連結している。
 図15には、本開示に係るヘッドホン100において、スライダー104とハンガー103との接合部分の断面を示している。ハンガー103は、裏面側のリッドハンガー1501を取り外し可能であり、リッドハンガー1501を取り外してワタリケーブル1502をハンガー103内に引き回すことができる。ワタリケーブル1502は、一端はハウジング101内の印刷配線基板(前述)に接続されているが、他端はハンガー103を経由して中空円筒のスライダー104内に挿通されている。したがって、ワタリケーブル1502は短円弧中空パイプ形状スライダー104によって内包されているので、スライダー104がヘッドバンド102の延長方向にスライドした位置にかかわらずワタリケーブル1502が露出することはない。図14及び図15から分かるように、ハンガー103とスライダー104は、同一直径の円筒形状の構造からなり、同軸上に回動(ツイスト回転)可能に連結して構成される。
 図15を参照しながら、スライダー104とハンガー103との接合部分の内部構成と、ツイスト機能すなわちハンガー103がスライダー104のセンターライン回りに回動する動作について説明する。
 スライダー104は、上述したように短円弧中空パイプ形状に成形された樹脂で構成される。スライダー104の下端付近のハンガー103との接合部分にシャフトツイストスライダー1503をインサートして、スライダー104とハンガー103は一体化している。シャフトツイストスライダー1503は、ハンガー103側のシャフトツイスト1504と締結するための金属ナット部品であり、内周側に形成された雌ネジ構造を有している。
 一方、ハンガー103側のシャフトツイスト1504の先端は雄ネジが形成されている。リッドハンガー1501を取り外すと、ハンガー103内にアクセス可能な状態になる。リッドハンガー1501を取り外した状態で、シャフトツイスト1504を下方から挿入して、スライダー104にインサートされたシャフトツイストスライダー1503の下端面と同軸となるように位置合わせした後、シャフトツイスト1504の先端の雄ネジをシャフトツイストスライダー1503の下端の雌ネジにネジ回しして、シャフトツイスト1504とシャフトツイストスライダー1503を締結構造とする。また、シャフトツイスト1504の中間付近にはOリング1505が取り付けられている。シャフトツイスト1504とシャフトツイストスライダー1503をネジにより締結すると、ハンガー103はスライダー104から抜けない結合状態となる。この締結状態では、ハンガー103は、Oリング1505によって発生する摩擦力のみでスライダー104のセンターライン回りに回動可能となるので、ツイスト機能を実現している。
 図16には、シャフトツイストスライダー1503がインサートされたスライダー104の下端付近を、拡大し且つ天地を逆にして示している。図16を参照すると、金属ナット部品からなるシャフトツイストスライダー1503の外周には、細かく規則的な凹凸形状からなるローレット部1601が形成されている。また、ローレット部1601の上端縁には、ハンガー103との回転規制用の凸部1602が形成されている。一方、図57には、ハンガー103の上端付近を拡大して示している。ハンガー103側のスライダー104との接合部分には、シャフトツイストスライダー1503の凸部1602が通過することが許容される回転角度の範囲に凹部5701が形成されている。スライダー104とハンガー103が接合した状態では、シャフトツイストスライダー1503の凸部1602がハンガー103の先端の凹部5701に収容され、凹部5701が形成された角度の範囲で、ハンガー103はスライダー104のセンターライン回りに回動すなわちツイストすることができる。
 また、図16を参照すると、シャフトツイストスライダー1503の外周のローレット部1601の2箇所には、一条のスリット1603が形成されている。図16では、スライダー104を半透明に描いて分かり難いので、図58にはスライダー104を濃い色で塗り潰して描いている。スライダー104は、中空円筒内壁の端部の2箇所に突起5801が形設されている。したがって、シャフトツイストスライダー1503側のローレット部のスリット1603とスライダー104の内周の突起5801が嵌合することにより両者は固定され、センターライン回りにトルクが発生しても一体となって回転する。
 上述したように、スライダー104は短円弧中空ハイプ形状の樹脂で構成され、端部に金属ナット部品からなるシャフトツイストスライダー1503がインサートされている。スライダー104の作成方法について、適宜図面を参照しながら説明しておく。
 図17にはスライダー104の単品の斜視図を示している。また、図18には、スライダー104の側面図を示している。また、図19には、センターラインに沿って切断したスライダー104の断面図を示している。金型を図19中の矢印の方向に円弧上に動かして、図17~図19に示すような円弧形状の中空成形品からなるスライダー104を1部品で作成することができる。スライダー104に円弧スライド構造を用いて1部品で構成することによって、細い外径で軽量でありながら、ハウジング101を支持するに十分な高い剛性を得ることができる。アンダーカット(「通常の型の動きでは抜けない形状」)を金型で射出成型する1つの技術として、当業界では金型スライドが知られている。
 さらに、成形されたスライダー104の端部に対して、金属ナット部品であるシャフトツイストスライダー1503を熱圧入してインサートすることで、図16に示したような構造を完成することができる。熱圧入において熱を発生させる方法として、インパルス(電流による加熱)という手法がある。なお、熱圧入の代替締結手段として、接着、成形時インサート、超音波圧入などを挙げることができる。
 図20には、スライダー104とハンガー103との接合部分を、ハウジング101を含めて拡大して示している。ハンガー103とスライダー104は、同一直径の円筒形状の構造からなる。図20中、矢印2002で示すように、ハンガー103とスライダー104は、同軸上に回動すなわちツイスト可能に連結して構成される。また、上記C項で説明したように、ハンガー103の外周側に1個のマイクが配置されており(例えば図13を参照のこと)、このため、ハンガー103の根元付近にはスリット状のマイク穴2001が穿設されている。
 図21には、装着者の歩行時などにスライダー104とハンガー103との接合部分付近を空気が回り込む様子を示している。同図中、空気の流れを矢印2101及び2102で示している。但し、矢印2101は図中でハンガー103の手前側を通過する空気の流れであり、矢印2102は図中でハンガー103より奥側を通過する空気の流れである。ハンガー103とスライダー104が同一直径及び同軸の円筒形状の構造からなるので、ツイスト機能によりハンガー103がヘッドバンド102のセンターライン回りに回転しても、スライダー104とハンガー103の間に段差(図60を参照のこと)が生じることはなく、ハンガー103のツイスト角度によって段差形状が変化するということもなくなる。したがって、ハンガー103がツイストしても、ハンガー103の根元付近に配置したマイク穴2001を介してマイクが収音する環境はほとんど変化しないので、マイク特性さらにはノイズキャンセリング性能に対する影響がない。
 このD項で説明したスライダーの構造に関し、主な特徴とその効果についてまとめておく。
(1)同一直径の円筒形状の構造からなるハンガー103とスライダー104を同軸上に回動可能に連結してツイスト機能を構成するので、ハンガー103のツイスト角度が変化しても段差が生じない。
(2)スライダー103に円弧スライド構造を用いて、シャフトツイストスライダー1503を含めた1部品で構成することによって、細い外径で軽量でありながら、スライド機能及びツイスト機能を実現しつつハウジング101を支持するに十分な高い剛性を得ることができる。
(3)ハンガー103のツイスト時にハンガー103とスライダー104の接合部分に段差が生じない構造を採用することにより、ハンガー103の根元付近にマイクを配置することができる。ヘッドホン101の装着者毎の側頭部の形状の相違によりハンガー103のツイスト角が変化しても、マイク特性に影響を与えることがない。
E.イヤーパッド構造
E-1.透湿合皮イヤーパッド構造
 ヘッドホン用のイヤーパッド107には、長時間の快適性のために、蒸れないことが求められる。蒸れに対処する方法として、素材に透湿性又は通気性を持たせる手法が知られている。一方、上記B項でも言及したように、イヤーパッドにはNC領域の遮音性を保つパッシブノイズキャンセリングの役割がある。例えば100Hz以下の低音域再生やノイズキャンセリング機能を有するヘッドホンには、通気性により密閉性が低下するイヤーパッドを適用することができない。
 合成皮革表面に吸放湿性を有する粒子を配合した合成皮革なども知られているが、吸湿の効果は限定的で、加水分解など経時的に性能が劣化するという問題もある。また、透湿性を有するフィルムが一般的に存在するが、強度や外観の問題からヘッドホンの外装部品には相応しくない。
 そこで、このE-1項では、本開示に係る、遮音性(又は防音性)と透湿性を両立したイヤーパッドの構造について説明する。
 図22には、図1に示したヘッドホン100に適用されるイヤーパッド107の平面図を示している。また、図23には、図22に示すイヤーパッド107を線B-Bで切断した断面図を示している。周知なように、イヤーパッド107は、ハウジング101の底面に固定して用いられる。本開示では、イヤーパッド107は交換可能にハウジング101に取り付けられるが、詳細については次のE-2項で説明する。
 図22から分かるように、イヤーパット107は、リング状の構造からなり、ほぼ楕円形(又は、四隅の角を丸めた四角形)の輪郭を有する。イヤーパッド107の外側の輪郭は、ハウジング101の底面とほぼ同じである。また、図23から分かるように、イヤーパッド107は、ポリウレタンフォームなどの弾性を有する素材からなるクッション材2301を、合成皮革などの皮膜2302で包み込んで構成される。
 皮膜に用いられる合成皮革は通常(従来までは)、乾式工程によって作成されるポリウレタン皮膜が最表面に形成される。このポリウレタン皮膜は、厚さ30~50μm程度の無孔質のフィルムであり、通気性がなく、透湿性に乏しい。参考のため、図24(A)には通常の湿式合皮の断面構造を示し、図24(B)には通常の乾式合皮の断面構造を示している。通常の湿式合皮は、図24(A)に示すように、基布2401の表面にポリウレタンからなる有孔性(又は通気性を有する)の湿式層2402が貼り合わされ、さらに湿式層2402の上に乾式層2403が形成されて構成される。一方、通常の乾式合皮は図24(B)に示すように、基布2411の最表面に乾式層2412が直接形成されている。図24(A)に示す湿式合皮及び図24(B)に示す乾式合皮はいずれも、通気がなく、透湿性に乏しい。
 図25には、本開示に係る、ウレタンフォームを内包する表皮に用いられる合成皮革の一例の断面構造を示している。図示の合成皮革は、最下層の基布2501の上に3次元微細孔構造からなる有孔性(又は通気性を有する)のポリウレタンからなる湿式発泡層2503を貼り合わせて構成されるが、湿式発泡層2503の底面側には、厚さ5μm程度の薄いウレタン皮膜2502が一体化されている。例えば、コーティング技術を用いて湿式発泡層2503の底面側に薄いウレタン皮膜2502を形成することができる。ウレタン皮膜2502は、連続気泡ではないため非通気であるが、水分の透湿性と表皮の微細な凹凸(表面蒸散性)又は透湿性を有する。
 図26及び図27には、図25に示した、本開示に係る、基布の上に湿式発泡層を貼り合わせて構成される合成皮革の変形例をそれぞれ示している。図26及び27のいずれに示す例でも、基布2501と湿式発泡層2503を貼り合わせた構造である点では図25と共通であるが、図26に示す例では湿式発泡層2503の表面側に薄いウレタン皮膜2601が形成され、図27に示す例では湿式発泡層2503の底面及び表面の両方にそれぞれ薄いウレタン皮膜2701及び2702が形成されている点で図25に示した合成皮革とは相違する。
 要するに、図25~図27に示した合成皮革は、湿式発泡層の底面又は表面のうち少なくとも一方に薄いウレタン皮膜を一体化した構造からなる。ウレタン皮膜は、連続気泡ではないため非通気であるが、水分の透湿性と表皮の微細な凹凸(表面蒸散性)又は透湿性を有する。また、図25~図27に示した合成皮革はいずれも、湿式発泡層の表面に、非通気の乾式層を持たない。図25~図27に示した合成皮革は、遮音性と透湿性を両立していると言うことができる。
 図28には、本開示に係る、ウレタンフォームを内包する表皮に用いられる合成皮革の他の例の断面構造を示している。図示の合成皮革は、最下層の連続気泡(通気性)を有する湿式基布2801の表面に有孔性(又は通気性を有する)のポリウレタンからなる湿式発泡層2803を貼り合わせて構成されるが、基布2801と湿式発泡層2803の間に非通気の透湿防水皮膜2802が配置されている。また、図29には、図28に示した、基布と湿式発泡層からなるとともにさらに非通気の透湿皮膜を組み合わせた合成皮膜の変形例を示している。図29に示す例では、湿式基布2902の底面側に非通気の透湿防水皮膜2901は貼り付けるとともに、湿式基布2902の表面側に湿式発泡層2903を貼り合わせて構成される。図28及び図29に示した合成皮革は、遮音性と透湿性を両立していると言うことができる。
 図30には、本開示に係る、ウレタンフォームを内包する表皮に用いられる合成皮革のさらに他の例の断面構造を示している。図示の合成皮革は、最下層の基布3001の表面に有孔性(又は通気性を有する)のポリウレタンからなる湿式発泡層3002を貼り合わせて構成されるが、湿式発泡層3002の表面にさらに乾式層3003が貼り付けられている。また、図31には、図30に示した、湿式発泡層と基布からなるとともにさらに乾式層を組み合わせた合成皮膜の変形例を示している。図31に示す例では、湿式発泡層3103の表面及び基布3102の底面の両方に乾式層3101及び3104がそれぞれ貼り付けられている。図30及び図31に示した合成皮革は、遮音性を向上することができる。
 図32には、本開示に係る、ウレタンフォームを内包する表皮に用いられる合成皮革のさらに他の例の断面構造を示している。図示の合成皮革は、最下層の基布3201の上に有孔性(又は通気性を有する)のポリウレタンからなる湿式発泡層3203を貼り合わせて構成されるが、湿式発泡層3203の表面及び底面の両方に乾式層3202及び3204がそれぞれ貼り付けられている。また、図33には、図32に示した、湿式発泡層と基布からなるとともに表面に乾式層を貼り付けた合成皮膜の変形例を示している。図33に示す例では、湿式発泡層3303と通気性を有する湿式基布3301の一方又は両方が含侵物3304を含んでいる。図33に示す例では、湿式基布3301の表面に乾式層3302が貼り付けられた後に、含侵物3304を含む湿式発泡層3303と貼り合されている。ここで言う含侵物3304は、樹脂や油脂などである。図32及び図33に示した合成皮革は、遮音性を向上することができる。
 このE-1項で説明した透湿合皮イヤーパッド構造に関し、主な特徴とその効果についてまとめておく。
(1)ヘッドホン用のイヤーパッドにおいて、ポリウレタンフォームなどからなるクッション材を包み込む合成皮革において、非通気であるが透湿性を持つ5~20μm程度の薄いポリウレタン皮膜を利用することによって、イヤーパッドの遮音性と透湿性を両立することができる。
E-2.交換爪式イヤーパッド
 イヤーパッドは、ハウジングの音響面に取り付けられて、クッション性により良好な装着感を与えるとともに、遮音性によりNC領域を形成する役割を持つ。上記E-1項で説明したように、イヤーパッドはポリウレタンフォームなどのクッション材を合成皮革で包み込んだ構造からなるが、発汗や体温の影響のために表面の合成皮革が経年劣化するという問題があり、イヤーパッドが交換可能であることが望ましい。
 イヤーパッドをハウジングに固定する方法として、マグネット式、バヨネット式(例えば、特許文献5を参照のこと)、爪固定式などを挙げることができる。このうち爪固定式のイヤーパッドは軽量化を図ることができるが、ハウジングの筐体表面から爪を撓ませる操作が難しいため、例えばエンドユーザがイヤーパッドを取り外して交換するのが困難である。
 そこで、本開示では、交換可能なイヤーパッド107をハウジング101の筐体に固定する方法として爪固定式を採用するとともに、エンドユーザでも取り外し作業が容易となる固定爪の構造及び爪固定式によるイヤーパッド107の固定方法について提案する。
 本実施形態では、リング状のイヤーパッド107の底面の内周側の6箇所に固定爪が配設され、各固定爪をハウジング101側の対応する爪固定部に差し込んで係止されることで、イヤーパッド107をハウジング101の音響面に取り付けることを想定している。また、各固定爪をそれぞれ爪固定部との係合状態を解除することで、ハウジング101からイヤーパッド107を取り外して交換することができる。なお、イヤーパッド107による音響密閉(又は、NC領域におけるパッシブノイズキャンセリング機能)を確保するためには、複数箇所の固定爪及び爪固定部でイヤーパッド107をハウジング101の音響面に固定することが望ましい。本実施形態では6箇所で固定しているが、音響密閉などの要件を満たせば5箇所以下又は7箇所以上で固定してもよい。
 図34には、イヤーパッド107側の固定爪が係止されている状態のハウジング101側の爪固定部付近を含むように切断した、イヤーパッド107及びハウジング101の断面図を示している。また、図35には、図34に示した断面図のうち、イヤーパッド107側の固定爪及びハウジング101側の爪固定部をさらに拡大して示している。イヤーパッド107側の固定爪がハウジング101側の爪固定部と係合する爪嵌合構造を持つ。以下、図34及び図35を参照しながら、爪嵌合構造と、爪嵌合構造の嵌合状態を解除する方法について説明する。
 図35に示すように、固定爪は、断面がT字形状を有し、T字の頭部の片方の先端にはT字の足の方向(又は、T字の下方向、図35中では左方向)に小さく突設した突起3501が形設されている。一方、ハウジング101側には、突起3501と対向する部位にリブ3511からなる爪固定部が配設されている。そして、固定爪側の突起3501がハウジング101側のリブ3511に係止される爪嵌合構造によって、イヤーパッド107がハウジング101に固定される。
 また、固定爪のT字形状の脚部は可撓性があり、ヒンジ3502の役割を持つ。ヒンジ3502が撓むと先端の突起3501がハウジング101側のリブ3511から離脱することによって、嵌合状態を解除して、固定爪を爪固定部から取り外すことができる。図35に示す固定爪は、T字の頭の突起3501とは反対側の先端は反り返ったフック状の指掛け形状部3503を有する。但し、突起3501がある方がリングの外周側、指掛け形状部3503が内周側を向くように、固定爪がイヤーパッド107に取り付けられているものとする。そして、図35に示すように指掛け形状部3503に指先を掛けて図35中の矢印3500の方向に押圧すると、ヒンジ3502が撓み、「てこの原理」を利用して反対側の突起3501が持ち上がってリブ3511から離脱するので、容易に嵌合状態を解除して、固定爪を爪固定部から容易に取り外すことができる。指掛け形状部3503は、上側を向き、且つ、リング状のイヤーパッド107の内周から露出するように、ヒンジ3502によって支持されている。
 上述したように音響密閉を確保するために、イヤーパッド107は、複数箇所(本実施例では6箇所)に固定爪及び爪固定部からなるハウジング101(の音響面)との爪嵌合構造を有する。各爪嵌合構造は、図34及び図35に示した通りである。図36には、イヤーパッド107及びハウジング101に6箇所の爪嵌合構造を配置した例を示している。同図では、爪固定部3601~3606を配置した6箇所を2個の実線の四角及び4個の破線の四角で示している。図示のように、イヤーパッド107及びハウジング101のほぼ楕円形状の輪郭に沿うように、6箇所の爪嵌合構造が分散して配置されている。ほぼ楕円形状の輪郭に沿って複数の爪嵌合構造を均等に配置することで、イヤーパッド107をハウジング101の音響面に強固に取り付けて、イヤーパッド107による音響密閉(又は、NC領域におけるパッシブノイズキャンセリング機能)を確保することができる。
 爪固定部3601~3606で使用する固定爪は、図35に示したように指掛け形状部3503を有するタイプと、指掛け形状部を持たないタイプ(図示を省略)の2種類がある。図36に示した6箇所の爪固定部3601~3606を配置場所のうち、実線の四角で示した2箇所の爪固定部3601及び3602には指掛け形状部を有する固定爪が適用され、破線の四角で示した4箇所の爪固定部3603~3606には指掛け形状部を持たない固定爪が適用される。実線の四角で示した2箇所の爪固定部3601及び3602には指掛け形状部3503を有する固定爪は、イヤーパッド107の輪郭から内周側に少し露出している。固定爪の指掛け形状部3503は内周側を向いているので(前述)、このような配置によりユーザの指先は指掛け形状部3503にアクセスし易くなっている。
 図36から分かるように、指掛け形状部3503を有する固定爪が適用される2箇所は、楕円形状のイヤーパッド107の曲率半径Rが小さい範囲に隣り合わせで配置されている。図37には、Rが小さい範囲に隣り合わせで配置された2箇所の爪固定部3601及び3602の配置場所を斜視して示している。また、図38には、これら2箇所の爪固定部3601及び3602のうち一方に指を入れて固定爪を取り外そうとしている様子を示している。イヤーパッド107のRが小さい範囲に指掛け形状部を有する爪を配置することで、図38に示すようにRが小さい範囲に指を挿入して、図37中の矢印で示す方向に指でイヤーパッド107に力を加えるだけで、イヤーパッド107全体を歪ませることが可能になり、指掛け形状部を持たない残りの4箇所の爪固定部3603~3606において固定爪の取り外し操作性が向上する。
 指掛け形状部3503を有するタイプの固定爪と、指掛け形状部を持たないタイプの固定爪を比較すると、指掛け形状部を有するタイプの固定爪は、フック状の指掛け形状部の分だけサイズが大きくなる。このため、図39に示すように、リング状のイヤーパッド107の輪郭よりも内側に露見する。一方、ヘッドホン100を装着時に、装着者の耳はイヤーパッド107の内部に挿入される。図39には、イヤーパッド107の楕円形状の内部に耳(耳介)が挿入されている様子を併せて示している。図39に示すように、耳が当たらない顔前方に指掛け形状部を有する固定爪を配置することで、装着感に悪い影響を与えることを防止している、という点を理解されたい。指掛け形状部を有するタイプの固定爪は、指掛け形状部3501が楕円形状のイヤーパッド107の輪郭の内側から露出しているので、指掛け形状部3501は視認可能な位置に配置されている、と言うこともできる。
 図40及び図41には、固定爪の指掛け形状部の変形例をそれぞれ示している。ハウジング101側との嵌合状態を解除して固定爪を取り外すために指先で押圧する方向は、指掛け形状部の形状に応じて異なる。図40及び図41には、固定爪を取り外すために指先で押圧する方向を、それぞれ矢印で示している。図40に示す変形例では、指掛け形状部4001を図40中の矢印4000の方向(爪の奥の方向)に指先で押して、図35に示した例と同様に「てこの原理」を利用して反対側の先端の突起4002を持ち上げてハウジング101側のリブ4011から離脱させるように構成されている。また、図41に示す変形例では、指掛け形状部4101を図41中の矢印4100の方向(爪の手前の方向)に指先で押して、爪全体を撓ませて反対側の先端の突起4102を持ち上げてハウジング101側のリブ4111から離脱させるように構成されている。
 図42には、イヤーパッド107をハウジング101側の音響面に固定するための複数の爪固定部を配置する他の例を示している。図36には6箇所の爪固定部3601~3606が配置される例を示したが、図42に示す例では、1箇所少ない5箇所に爪固定部4201~4205が配置されている。但し、実線の四角で示した1箇所の爪固定部4201には指掛け形状部を有する固定爪が適用され、破線の四角で示した4箇所の爪固定部4202~4205には指掛け形状部を持たない固定爪が適用される。図36に示した例と同様に、楕円形状のイヤーパッド107のRが小さい範囲にのみ、指掛け形状部を有する固定爪が適用されているが、1箇所のみとしている。イヤーパッド107による音響密閉(又は、NC領域におけるパッシブノイズキャンセリング機能)の要求が低い場合には、指掛け形状部を有する固定爪が適用される箇所を削減することが許容される。
 このE-2項で説明した交換爪式イヤーパッド構造に関し、主な特徴とその効果についてまとめておく。
(1)爪固定式のイヤーパッドにおいて、固定爪のイヤーパッドの内周側を向く位置に指掛け形状部を形成する。指掛け形状部に指先を掛けて押圧することによって、固定爪とハウジング側との係合関係を解除して、イヤーパッドを容易に取り外すことが可能になる。
(2)イヤーパッドの楕円形状の輪郭に沿って、複数の爪固定部を分散して配置することにより、イヤーパッドをハウジング側の音響面により強固に固定できるようになり、音響密閉(又は、イヤーパッドによるパッシブノイズキャンセリング機能)を確保することができる。
(3)複数の爪固定部のうち、指掛け形状部を有する固定爪を曲率半径Rが小さい範囲に配置することで、イヤーパッドを取り外す際に、イヤーパッド全体を歪ませることが可能になり、指掛け形状部を持たない残りの固定爪の取り外し操作が容易になる。
(4)耳が当たらない顔前方に指掛け形状部を有する固定爪を配置することで、装着感に悪い影響を与えることを防止することができる。
F.配線部密閉構造
 本開示を適用したヘッドホン100のハウジング101は、図6に示したように、筐体内は複数の空間に分かれている。図6を詳細に参照すると、側面筐体501が振動板601を支持しており、振動板601を境界として、振動板601の前面側に前面音響空間611が形成されるとともに、振動板601の背面側に第1の背面空間612が形成されている。さらに、天面筐体502内には、第1の背面空間612よりさらに背面側の第2の背面空間614が形成され、振動板601の駆動回路を含む電子部品が実装された印刷配線基板602は第2の背面空間614内に配置されている。このため、前面音響空間611と第2の背面空間614とを分離する壁には、振動板601と印刷配線基板602間を電気接続するケーブルを挿通させるための孔からなる配線部603が設けられている。要するに、複数の空間に仕切られた筐体内で、2以上の空間に分散して複数の電気部品が配置される場合、空間を分離する壁にはケーブルを挿通させるための通し孔を有する配線部が必要となる。
 振動板601と印刷配線基板602間を電気接続する配線は、例えばFFC(Flexible Flat Cable)やFPC(Flexible Printed Circuit)などの平坦な断面形状を有するケーブルからなる。そして、この種のケーブルを挿通させる配線部603は、各空間の音響性能を担保するために、音響密閉であること、言い換えれば通気量が微小且つ一定であることが強く求められる。
 例えば、孔を成す部品にケーブルを通す際に、孔とケーブルの間にクッション材を挟み込んで密閉性を確保する方法が知られている。図43左には周囲にクッション材を巻いた線材を通した孔を上方から眺めた様子を示している。また、図43右には、クッション材が巻かれた線材の側面を眺めた様子を示している。図43中、クッション材の部分を斜線で塗り潰して示している。しかしながら、このような方法では、クッション材を巻く作業によりばらつきが大きく、通気量が安定しない。また、クッション材を貼り合わせた部分で空隙が生じ易く(図43左を参照のこと)、貼りズレにより空隙が発生することがある(図43右を参照のこと)。
 また、通し孔を密閉するための防水用部材がインサート成形によって一体成型されたフレキシブル配線基板が提案されているが(特許文献6を参照のこと)、通し孔付近の構造が肥大化してしまう。
 その他、通し孔と線材の間の空隙をボンド塗布などによって塞ぐ方法も挙げられるが、構造の肥大化やボンド付着による周辺部品の汚染の問題がある。
 そこで、本開示では、FFCやFPCなどの線材を通し孔の壁面に押し付ける、差し込み型のブッシング(又は、継合部品)を用いて、配線部における通し孔と線材の間の空隙を塞ぐようにした。したがって、本開示によれば、ブッシングという最小限の部品及び最小限の構造体積で、配線部における安定した音響空間を実現するとともに、配線部又は密閉部の小型化を実現することができる。
 図44には、本開示に係るブッシング4400の外観構成例を示している。図示のブッシング4400は、大きな輪郭を有する平型の台座部4401と、台座部4401の上面から差し込み方向に突出した直方体の突起部4402を有する。図44には、底面が約5mm×約8mm、厚さが約5mmという寸法が記入されているが、これはブッシング4400が適用される配線部603の通し孔の寸法に依存して変わる設計値である。一方、突起部4402の断面形状は、ブッシング4400が適用される通し孔の形状とほぼ同じである。突起部4402の四方の側面のほぼ中央には、全周にわたって一条の密閉用リブ4403が形成されている。また、突起部4402の上端面の縁部の少なくとも1箇所に脱落防止用のフック4404が形成されている(図44では、2箇所でフック4404が見えている)。また、平型の台座部4401は、突起部4402の反対側(又は、差し込む方向と反対側)に、部品を把持し易くするための凹形状(図44では見えていない)を有している。
 ブッシング4400は、例えばシリコン又はエラストマーなど弾性を有する素材で作成される。ブッシング4400の硬度は例えばSHUR80度である。より好ましくは、ブッシング4400の表面は、組み込み時(配線部603の通し孔に差し込む際)のスタック防止のために、潤滑性コーティングが施されている。
 図45には、図44に示したブッシング4400が孔を成す部品4500に差し込まれた様子を、挿入方向に沿った断面図で示している。孔を成す部品4500は、具体的には、第1の背面空間612と第2の背面空間614を仕切る壁面に穿設された配線部603である。FFCやFPCなどからなる線材4501があらかじめ挿通されている孔を成す部品4500に、ブッシング4400が、図45中の矢印で示すように下から上に向かって挿入される。
 ブッシング4400は孔よりも大きな台座部4401を持つので、図45から分かるように台座部4401が孔に到達する深さまで、挿入される。また、ブッシング4400は上端面の縁部の2箇所以上にフック4404を有するので、一旦孔を成す部品4500内に完全に差し込まれると、フック4404が孔の奥側の端部に引っ掛かるので、ブッシング4400の脱落を防止することができる。そして、ブッシング4400が孔を成す部品4500に差し込まれた状態では、線材4501はブッシング4400の側面によって孔の壁面に押し付けられる。
 また、ブッシング4400を孔に差し込んだ際に、突起部4402の側面に全周にわたって形成された密閉用リブ4403が孔の壁面と干渉し、変形しつつ孔の壁面に押し付けられることで密閉性が確保される。図45の断面図で確認すると、密閉用リブ4403は、先端が鋭角で且つ孔の壁面に沿うような断面形状を有している。密閉用リブ4403は、例えば高さ約0.5mmで、孔との干渉量を0.2mm程度である。したがって、密閉用リブ4403は、ブッシング4400本体とともにブッシング4400はシリコン又はエラストマーなど弾性を有する素材で作成されているので、0.2mm程度の干渉量であれば、ブッシング4400を孔に差し込める程度の変形を許容する。
 図46には、図44に示したブッシング4400が孔を成す部品4500に差し込まれた様子を、挿入方向(又は、線材4501の長さ方向)と直交する断面図で示している。ブッシング4400はシリコンやエラストマーなどの弾性を有する素材からなり、孔に差し込まれて変形して、孔と線材4501の間の空隙を塞ぐ。図46に示すように、線材4501の両端には空隙が発生するが、この空隙の通気量は微小で且つブッシング4400の組み込みに依らず一定である。したがって、本開示に従って、ブッシング4400を用いて配線部603の通し孔を塞ぐ方法によれば、遮音性能が安定した音響設計が可能となる。
 図47には、配線部603に正常にブッシング4400を取り付けた状態(正常状態)と、敢えてブッシング4400を部分的に0.5mm程度浮かせて取り付けた状態(部分浮きあり)とで、ヘッドホン100の周波数特性を比較して示している。同図から、ブッシング4400の組み込み状態を変化させても、周波数特性がほとんど変化しないこと、すなわち本開示に係るブッシング4400を用いた配線部の密閉方法によれば安定した遮音性能を得られることが分かる。
 なお、図6に示した構成例では、第1の背面空間612と第2の背面空間614を仕切る壁面の一箇所にのみ配線部603が設けられ、ブッシング4400の唯一の差し込み場所となる構成である。但し、配線部の設置場所は図6に例示した一箇所に限定されず、また、ハウジング101の筐体内の複数箇所に線材を挿通させる配線部すなわちブッシングの適用場所を配設するように構成することもできる。また、図45では、ブッシング4400を下から上向きに挿入する例を示したが、ブッシングの挿入方向は一方向には限定されない。
 図48及び図49には、ハウジング101の筐体内における配線部(又は、ブッシングの適用場所)の配置場所の変形例を示している。但し、図48にはブッシングの挿入方向を下から上の向きとする場合の変形例を示し、図49にはブッシングの挿入方向を上から下の向きとする場合の変形例を示している。また、図48及び図49には、複数の配線部の候補場所をそれぞれ示しているが、実際にこれらのうち何箇所を用いるかは設計事項である。また、複数のブッシングの挿入方向は統一されている必要はなく、下から上の向きと上から下の向きが混在していてもよい。
 このF項で説明した配線部密閉構造に関し、主な特徴とその効果についてまとめておく。
(1)空間の間の配線部にブッシングを差し込んで、線材を通し孔の壁面に押し付けながら通し孔を塞ぐことで、最小限の部品及び最小限の構造体で、音響密閉を実現することができる。ブッシングの組み込みに依らず、線材とブッシング間に生じる微小な空隙は一定となるので、遮音性能が安定した音響設計が可能となる。
(2)ブッシングを差し込んで線材を挿通させた配線部の空隙を密閉するという構成によれば、ブッシングの挿入及び取り外し作業が容易であり、製造性及びリワーク性が高い。
(3)空間の間の配線部にブッシングを差し込んで、線材を通し孔の壁面に押し付けながら通し孔を塞ぐという構成によれば、線材への応力負荷や熱及び化学的な影響を与えなくて済む。
G.キャリングケース
 ヘッドホンの持ち運びを容易にするとともに、ヘッドホンを収納し且つ収納時に外力による破損を防止しながら保管するために、ヘッドホン用のキャリングケースが利用されることが多い。
 ハードタイプのキャリングケースは、ヘッドホンを外部からの力や衝撃からヘッドホンを守るために、キャリングケース自身に高い剛性が求められる。このため、ヘッドホンの収納の有無にかかわらず、キャリングケースの大きさや厚みが変わらない。ヘッドホンを未収納の状態のキャリングケースをバッグなどに入れるときや引き出しに片付けるときには、キャリングケースが無駄に嵩張ってしまう。
 そこで、本開示では、ヘッドホンの収納時においては外部からの力や衝撃からヘッドホンを守るための高い剛性を保ちつつ、ヘッドホンの未収納時においては容積を縮減してバッグに入れるときや引き出しに片付けるときに嵩張らないようにすることができる、ヘッドホン用のキャリングケースについて提案する。
 なお、このG項で説明するキャリングケースは、基本的には本実施形態(又は、図1に示した)ヘッドホン100を収納することを想定しているが、もちろん、他のオーバーヘッド型ヘッドホンを収納するキャリングケースにも本開示を適用することができる。
 図50及び図51には、本開示を適用したキャリリングケース5000の一例を示している。但し、図50には、キャリングケース5000の外観を上方、下方、及び前後左右の各側面から眺めた6面図を示している。また、図51には、開閉式のキャリングケース5000を開いた状態を上方及び1つの側面から眺めた2面図を示している。また、図52には、キャリングケース5000を主な構成部品毎に分解した分解図を示している。
 図52を参照しながら、キャリングケース5000の主要な構成部品について説明する。キャリングケース5000は、上から順に、天面蓋部5010と、側面部5020と、内部トレー部5030と、底面トレー部5040で構成される。また、底面トレー部5040の先端側にはストラップ5050が連結されている。
 天面蓋部5010は、板状のポリカーボネートのからなる天面蓋表面部5011と、薄板状のポリカーボネートに起毛ファブリックを貼り合わせた天面蓋裏面部5012からなる。天面蓋表面部5011及び天面蓋裏面部5012をそれぞれ所定の輪郭形状にカッティングした後に貼り合わせ、、熱圧着で溝加工を施してからエッジ折りをして、図52に示すように中央付近で山折りに折れ曲がった形状の天面蓋部5010が出来上がる。天面蓋部5010は、例えば上から手で押し潰されるような外力が加わっても変形しない程度の高い剛性を有し、内部に収納されたヘッドホン100を守ることができる。
 内部トレー部5030は、主に起毛ファブリックにPET(Polyethyleneterephthalate)樹脂材料を貼り合わせた素材からなり、圧着成形により、ヘッドホン収納ポケット5031及びアクセサリ収納ポケット5032が形成されている。ヘッドホン収納ポケット5031は、ヘッドホン100の輪郭とほぼ同じ形の凹みからなり、スイーベルした(スライダー104のツイスト機能により、左右のハウジング101がヘッドバンド102とほぼ同じ平面に収まるように回転させた)ヘッドホン100を保持する。また、アクセサリ収納ポケット5032は、ヘッドホン100のヘッドバンド102の内側に相当する場所に形成された、アクセサリ部品収納用の凹みである。また、内部トレー部5032は、アクセサリポケット蓋5033をさらに備えていてもよい。
 底面トレー部5040は、主にPET樹脂材料からなり、所定の輪郭形状にカッティングした後、内部トレー部5030を収容できる器型に成形して完成となる。また、底面トレー部5040の先端側にはストラップ5050が取り付けられる。底面トレー部5040は、天面蓋部5010と同様に、例えば上から手で押し潰されるような外力が加わっても変形しない程度の高い剛性を有し、内部に収納されたヘッドホン100を守ることができる。
 側面部5020は、図52では、比較的簡単な1つのリング形状で描かれているが、ファスナー(図52には図示しない)を介して上下に2分割される、上側マチ部5021と下側マチ部5022で構成される。図53には、上側マチ部5021と下側マチ部5022の展開図を示している。上側マチ部5021と下側マチ部5022はそれぞれ、軟弱な表布及び裏布と、表布に貼り合わせた硬質の芯材で構成される。図53中に示した展開図では、上側マチ部5021と下側マチ部5022の各表布に芯材を貼り合わせた様子を示している。
 上側マチ部5021と下側マチ部5022の各々について、表布と芯材をそれぞれの所定の輪郭形状にカッティングした後、表布と芯材を貼り合わせてリンク状に縫製し、さらにファスナー生地を縫製する。また、裏布も所定の輪郭形状にカッティングした後にリング状に縫製し、さらにファスナー生地を縫製して、側面部5020が完成する。
 側面部5020は、芯材を含む硬質領域(図53中、各マチ部のうちグレーで塗り潰した領域)と芯材がない軟弱領域(図53中、各マチ部のうち白い領域)とで剛性が異なる。上側マチ部5021及び下側マチ部5022のうち、高い剛性の芯材が貼り合された領域は屈曲し難い。したがって、上側マチ部5021及び下側マチ部5022は、芯材を含む硬質領域は形状を保ちながら、芯材がない軟弱領域がヒンジすなわち折り目となって変形して、側面部5020を折り畳むことができる。
 キャリングケース5000の構成部品毎の製作工程について説明してきたが、各構成部品を組み立てる製作工程についても説明しておく。まず、側面部5020と底面トレー部5040を縫製し、さらに底面トレー部5040にストラップ5050を取り付ける。次いで、天面蓋裏面部5012と側面部5020を縫製し、天面蓋裏面部5012と天面蓋表面部5011を貼り合わせ、最後に内部トレー部5030を取り付けて、キャリングケース5000が完成する。
 続いて、未収納時のキャリングケース5000の容積を縮減して嵩張らないようにする動作について説明する。
 上述したように、側面部5020は、高い剛性の芯材を含む硬質領域と芯材がないヒンジ領域が存在し、上側マチ部5021及び下側マチ部5022は、芯材を含む硬質領域は形状を保ちながら、芯材がないヒンジ領域が折り目となって変形することができる。また、上側マチ部5021と下側マチ部5022を接合するリング状のファスナー領域も芯材を含まないヒンジ領域であり、側面部5020が変形する際には周方向に延びる谷折りの折り目となる。そして、側面部5020は、芯材を含まないヒンジ領域の一部が谷折りとなるように折れ曲がるとともに、芯材を含まないヒンジ領域の残りの少なくとも一部が山折りとなるように折れ曲がることによって、折り畳むことができる。例えば、ヘッドホン100を未収納のときに側面部5020を折り畳んだ結果として、キャリングケース5000の容積を縮減して、嵩張らないようにすることができる。
 図54上には側面部5020を折り畳む前(又は、ヘッドホン100を収納時)のキャリングケース5000の状態を示している。また、図54下には、ヘッドホン100を未収納時において、天面蓋部5010が上方から人の手で押されて、側面部5020が折り畳まれた様子を示している。同図に示すように、上側マチ部5021と下側マチ部5022を接合するリング状のファスナー領域が谷折りとなるように折れ曲がることによって、側面部5020が下向きに折り畳まれる。これによって、キャリングケース5000の厚みが小さくなることにより全体の容積が縮減して、嵩張らないようにすることができる。
 折り畳み構造は、谷折り及び山折りとなる折り目を周方向に配置して構成される。ヘッドホン100において側面部5020を折り畳む際、図54に示すようにファスナーがあるヒンジ領域が谷折りとなる一方、芯材を含まないヒンジ領域の残りの少なくとも一部が山折りとなるように折れ曲がる。側面部5020のうち山折りとなる折り目が形成される箇所を、図55及び図56を使って示しておく。
 このG項で説明した配線部密閉構造に関し、主な特徴とその効果についてまとめておく。
(1)本開示を適用したキャリングケースは、天面蓋部及び底面トレー部がともに高い剛性を有するとともに側面部も硬質の芯材を含みハードタイプであり、ヘッドホン収納時にはヘッドホンを外部からの力や衝撃からヘッドホンを守ることができる。一方、側面部は、上側と下側を接合するファスナー部分や芯材を含まない部分がヒンジ領域となり、一部のヒンジ領域が谷折りに折れ曲がるとともに他の一部のヒンジ領域が山折りに折れ曲がることにより、側面部は厚さ方向に折り畳まれて薄くなる。したがって、未使用時のヘッドホンを折り畳んで嵩張らないようにコンパクトにして、バッグや引き出しの中に片付け易くなる。
 以上、特定の実施形態を参照しながら、本開示について詳細に説明してきた。しかしながら、本開示の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。
 本明細書では、主にノイズキャンセリング用のマイクを備えたオーバーヘッド型ヘッドホンに本開示を適用した実施形態を中心に説明してきたが、本開示の要旨はこれに限定されるものではない。例えば、ノイズキャンセリング用のマイクを装備しないヘッドホンに対しても、上記D項で説明したスライダーの構造、上記E項で説明したイヤーパッド構造、上記F項で説明した配線部密閉構造、及び上記G項で説明したキャリングケースを適用することができる。
 要するに、例示という形態により本開示について説明してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本開示の要旨を判断するためには、特許請求の範囲を参酌すべきである。
 なお、本開示は、以下のような構成をとることも可能である。
(1)ヘッドバンドと、ハウジングと、ハウジングに取り付けられたイヤーパッドと、ハウジングを支持するハンガーと、ハンガーをヘッドバンドの端部に接続するスライダーを具備し、
 前記ハンガーの可動範囲の外側となる前記ハウジングの場所に配置されたマイクをさらに備える、
ヘッドホン。
(1-1)前記マイクは、ノイズキャンセリングのために外部音を収音するために使用される、
上記(1)に記載のヘッドホン。
(1-2)前記ハウジングの筐体は、前記マイク用の穴を有する、
上記(1)に記載のヘッドホン。
(2)前記ハウジングは、前記ハンガーの可動範囲を覆う筐体を含む、
上記(1)に記載のヘッドホン。
(2-1)前記ハウジングの筐体は、前記ハンガーの前記ヘッドバンドとの接合部が稼働するためのスリットを有する、
上記(2)に記載のヘッドホン。
(3)前記ハンガーと前記マイクは、前記ハウジング内に形成された同じ空間に配置される、
上記(1)又は(2)のいずれか1つに記載のヘッドホン。
(3-1)前記マイクは前記ハンガーの外周側に配置される、
上記(3)に記載のヘッドホン。
(4)前記ハウジングは、振動板を含み、前記振動板を境界として前記イヤーパッドが遠い側に、前記ハンガー及び前記マイクが配置される空間とは別の1以上の空間を有する、
上記(1)乃至(3)のいずれか1つに記載のヘッドホン。
(5)前記ハウジング内で、前記ハンガーと前記マイクとは別の空間に他の1以上のマイクが配置される、
上記(1)乃至(4)のいずれか1つに記載のヘッドホン。
(6)前記スライダーは、シームレスの短円弧中空パイプ形状を有し、前記ハウジング内の回路に接続されるケーブルを前記中空パイプで内包する、
上記(1)乃至(4)のいずれか1つに記載のヘッドホン。
(7)前記スライダーは、シームレスの短円弧中空パイプ形状を有する樹脂と、前記樹脂の前記ハンガーとの接合部にインサートされた金属ナット部品からなるシャフトツイストスライダーからなる、
上記(6)に記載のヘッドホン。
(7-1)前記金属ナット部品は、熱圧入、接着、成形時インサート、超音波圧入のいずれかの手段により前記樹脂にインサートされる、
上記(7)に記載のヘッドホン。
(8)前記スライダーは、前記金属ナット部品と前記ハンガーに挿通されたシャフトツイストの先端との締結構造により、前記スライダーは、前記ハンガーを前記スライダーのセンターライン回りに回転可能に支持する、
上記(7)に記載のヘッドホン。
(9)前記金属ナット部品は、前記ハンガーのツイスト角度を規制する凸部を有する、
上記(7)又は(8)のいずれか1つに記載のヘッドホン。
(10)前記金属ナット部品は、短円弧中空パイプ形状の前記樹脂と嵌合するスリットを有する、
上記(7)乃至(9)のいずれか1つに記載のヘッドホン。
(11)前記スライダーは、前記ハンガーと同一直径の円筒形状からなり、前記ハンガーと同軸上に回動可能に連結される、
上記(7)乃至(10)のいずれか1つに記載のヘッドホン。
(12)前記イヤーパッドは、リング状のウレタンフォームを表皮で内包して構成され、
 前記表皮は、3次元微細孔構造を有する湿式発泡層の底面又は表面のうち少なくとも一方に薄いウレタン皮膜を一体化したものを基布に貼り合わせて構成される、
上記(1)乃至(11)のいずれか1つに記載のヘッドホン。
(13)前記イヤーパッドは、リング状のウレタンフォームを表皮で内包して構成され、
 前記表皮は、連続気泡又は通気性を有する湿式基布の底面又は表面のいずれか一方に非通気の透湿防水膜を貼り合わせたものの表面に3次元微細孔構造を有する湿式発泡層を貼り合わせて構成される、
上記(1)乃至(11)のいずれか1つに記載のヘッドホン。
(14)前記イヤーパッドは、リング状のウレタンフォームを表皮で内包して構成され、
 前記表皮は、湿式基布の底面又は表面のいずれか一方にのみ乾式層を貼り付けたものの表面に3次元微細孔構造を有する湿式発泡層を貼り合わせて構成される、
上記(1)乃至(11)のいずれか1つに記載のヘッドホン。
(15)前記イヤーパッドは、リング状のウレタンフォームを表皮で内包して構成され、
 前記表皮は、湿式発泡層の表面及び裏面の両方に乾式層を貼り付けたものを基布の表面に貼り合わせて構成され、又は、貼りいずれか一方が含侵物を含む湿式発泡層と通気性を有する湿式基布を貼り合わせて構成される、
上記(1)乃至(11)のいずれか1つに記載のヘッドホン。
(16)前記イヤーパッドは、リング状の内周側に設けられた指掛け形状部を備えた固定爪を備える、
上記(1)乃至(15)のいずれか1つに記載のヘッドホン。
(17)前記固定爪は、前記ハウジング側の爪固定部との爪嵌合構造を持つ、
上記(16)に記載のヘッドホン。
(18)前記固定爪は前記指掛け形状部を支持するヒンジを含み、前記指掛け形状部が操作されたことによって前記ヒンジが変形して、前記固定爪が前記ハウジング側から解除される、
上記(16)又は(17)のいずれか1つに記載のヘッドホン。
(19)前記イヤーパッドは内周の複数箇所に配置された固定爪を備える、
上記(16)乃至(18)のいずれか1つに記載のヘッドホン。
(20)前記複数箇所に配置された固定爪は、指掛け形状部を含む固定爪と指掛け形状部を含まない固定爪を含む、
上記(19)に記載のヘッドホン。
(21)指掛け形状部を含む固定爪は、前記イヤーパッドの曲率半径Rが小さい範囲に隣り合わせで配置される、
上記(20)に記載のヘッドホン。
(22)指掛け形状部を含む固定爪は、顔前方に配置される、
上記(20)又は(21)のいずれか1つに記載のヘッドホン。
(23)指掛け形状部は視認可能な位置に配置される、
上記(16)乃至(22)のいずれか1つに記載のヘッドホン。
(24)前記ハウジング内の空間を分離する壁に線材を挿通させるための孔と、
 前記線材を前記孔の壁面に押し付けるようにして前記孔に差し込まれるブッシングと、
をさらに備える、上記(1)乃至(23)のいずれか1つに記載のヘッドホン。
(24-1)前記ブッシングは、シリコン、エラストマー、又はその他の弾性を有する素材からなる、
上記(24)に記載のヘッドホン。
(24-2)前記ブッシングの表面は潤滑性コーティングが施されている、
上記(24)に記載のヘッドホン。
(24-3)前記ブッシングの硬度はSHUR80度である、
上記(24)に記載のヘッドホン。
(25)前記ブッシングは全周にわたって形成されたリブを有し、前記ブッシングが前記孔に差し込まれた際に前記リブは前記孔の壁面と干渉する、
上記(24)に記載のヘッドホン。
(26)前記リブは、先端が鋭角で且つ前記孔の壁面に沿う形状を有する、
上記(25)に記載のヘッドホン。
(27)前記ブッシングは、前記孔に差し込まれたときに前記孔の奥側の端部に引っ掛かるフックを有する、
上記(24)乃至(26)のいずれか1つに記載のヘッドホン。
(28)前記ブッシングは、差し込み方向と反対側に凸形状を持つ平型の台座部を含む、
上記(24)乃至(27)のいずれか1つに記載のヘッドホン。
(29)天面蓋部と、
 底面トレー部と、
 前記天面蓋部及び前記底面トレー部に縫製されたリング状で、上下方向の押圧力により折り畳まれる折り目を有する側面部と、
を具備する請求項1に記載のヘッドホン用のキャリングケース。
(30)前記側面部は、谷折りの折り目及び山折りの折り目が周方向に配置され、上下方向の押圧力により前記折り目で折り畳まれて厚みが小さくなる、
上記(29)に記載のキャリングケース。
(31)前記側面部は、布に芯材を貼り合わせ硬質部と布地のみからなる軟弱部を含み、前記軟弱部の少なくとも一部が折り目となって折り畳まれる、
上記(29)又は(30)のいずれか1つに記載のキャリングケース。
(32)前記側面部は、ファスナーと、ファスナーを介して接続される上側マチ部と下側マチ部を含み、少なくとも前記ファスナーが折り目となって折り畳まれる、
上記(29)乃至(31)のいずれか1つに記載のキャリングケース。
(33)前記天面蓋部は、中央付近で山折りに折れ曲がった形状を有する、
上記(29)乃至(32)のいずれか1つに記載のキャリングケース。
(34)さらにストラップを備える、
上記(29)乃至(33)のいずれか1つに記載のキャリングケース。
(35)前記底面トレー部に収容された、請求項1に記載のヘッドホンの輪郭に沿った凹みからなるヘッドホン収納ポケットを有する内部トレー部をさらに備える、
上記(29)乃至(34)のいずれか1つに記載のキャリングケース。
 100/5900…ヘッドホン、101…ハウジング
 102…ヘッドバンド、103…ハンガー、104…スライダー
 106…スピーカー、107…イヤーパッド
 302…FFマイク、303…FFキャンセル信号生成部
 304…再生部、305…合成部、306…FBマイク
 307…FBキャンセル信号生成部
 501…側面筐体、502…天面筐体
 601…振動板、602…印刷配線基板、603…配線部
 604…マイク、611…前面音響空間、612…第1の背面空間
 613…外周空間、614…第2の背面空間、615…NC領域
 901~904…マイク、1001~1004…マイク
 1101~1104…マイク、1301~1304…マイク
 1501…リッドハンガー、1502…ワタリケーブル
 1503…シャフトツイストスライダー(金属ナット部品)
 1504…シャフトツイスト、1505…Oリング
 1601…ローレット部、1602…凸部、5701…凹部
 1603…スリット、5801…突起
 2001…マイク穴
 2301…クッション材、2302…皮膜
 2501…基布、2502…ウレタン皮膜、2503…湿式発泡層
 2601…ウレタン皮膜、2701、2702…ウレタン皮膜
 2801…湿式基布、2802…透湿防止皮膜、2803…湿式発泡層
 2901…透湿防止皮膜、2902…湿式基布、2903…湿式発泡層
 3001…基布、3002…湿式発泡層、3003…乾式層
 3101…乾式層、3102…基布、3103…湿式発泡層
 3104…乾式層
 3201…基布、3202…乾式層、3203…湿式発泡層
 3204…乾式層
 3301…湿式基布、3302…乾式層、3303…湿式発泡層
 3304…含有物
 3501…突起、3502…ヒンジ、3503…指掛け形状部
 3511…リブ
 3601~3606…爪固定部
 4001…指掛け形状部、4002…突起、4011…リブ
 4101…指掛け形状部、4102…突起、4111…リブ
 4201~4205…爪固定部
 4400…ブッシング、4401…台座部、4402…突起部
 4403…密閉用リブ、4404…フック
 4500…孔を成す部品
 5000…キャリングケース、5010…天面蓋部
 5011…天面蓋表面部、5012…天面蓋裏面部
 5020…側面部、5021…上側マチ部、5022…下側マチ部
 5030…内部トレー部、5031…ヘッドホン収納ポケット
 5032…アクセサリ収納ポケット、5033…アクセサリポケット蓋
 5040…底面トレー部、5050…ストラップ

Claims (29)

  1.  ヘッドバンドと、ハウジングと、ハウジングに取り付けられたイヤーパッドと、ハウジングを支持するハンガーと、ハンガーをヘッドバンドの端部に接続するスライダーを具備し、
     前記ハンガーの可動範囲の外側となる前記ハウジングの場所に配置されたマイクをさらに備える、
    ヘッドホン。
  2.  前記ハウジングは、前記ハンガーの可動範囲を覆う筐体を含む、
    請求項1に記載のヘッドホン。
  3.  前記ハンガーと前記マイクは、前記ハウジング内に形成された同じ空間に配置される、
    請求項1に記載のヘッドホン。
  4.  前記ハウジングは、振動板を含み、前記振動板を境界として前記イヤーパッドが遠い側に、前記ハンガー及び前記マイクが配置される空間とは別の1以上の空間を有する、
    請求項1に記載のヘッドホン。
  5.  前記ハウジング内で、前記ハンガーと前記マイクとは別の空間に他の1以上のマイクが配置される、
    請求項1に記載のヘッドホン。
  6.  前記スライダーは、シームレスの短円弧中空パイプ形状を有し、前記ハウジング内の回路に接続されるケーブルを前記中空パイプで内包する、
    請求項1に記載のヘッドホン。
  7.  前記スライダーは、シームレスの短円弧中空パイプ形状を有する樹脂と、前記樹脂の前記ハンガーとの接合部にインサートされた金属ナット部品からなるシャフトツイストスライダーからなる、
    請求項6に記載のヘッドホン。
  8.  前記スライダーは、前記金属ナット部品と前記ハンガーに挿通されたシャフトツイストの先端との締結構造により、前記スライダーは、前記ハンガーを前記スライダーのセンターライン回りに回転可能に支持する、
    請求項7に記載のヘッドホン。
  9.  前記金属ナット部品は、前記ハンガーのツイスト角度を規制する凸部を有する、
    請求項7に記載のヘッドホン。
  10.  前記金属ナット部品は、短円弧中空パイプ形状の前記樹脂と嵌合するスリットを有する、
    請求項7に記載のヘッドホン。
  11.  前記スライダーは、前記ハンガーと同一直径の円筒形状からなり、前記ハンガーと同軸上に回動可能に連結される、
    請求項7に記載のヘッドホン。
  12.  前記イヤーパッドは、リング状のウレタンフォームを表皮で内包して構成され、
     前記表皮は、3次元微細孔構造を有する湿式発泡層の底面又は表面のうち少なくとも一方に薄いウレタン皮膜を一体化したものを基布に貼り合わせて構成される、
    請求項1に記載のヘッドホン。
  13.  前記イヤーパッドは、リング状のウレタンフォームを表皮で内包して構成され、
     前記表皮は、連続気泡又は通気性を有する湿式基布の底面又は表面のいずれか一方に非通気の透湿防水膜を貼り合わせたものの表面に3次元微細孔構造を有する湿式発泡層を貼り合わせて構成される、
    請求項1に記載のヘッドホン。
  14.  前記イヤーパッドは、リング状のウレタンフォームを表皮で内包して構成され、
     前記表皮は、湿式基布の底面又は表面のいずれか一方にのみ乾式層を貼り付けたものの表面に3次元微細孔構造を有する湿式発泡層を貼り合わせて構成される、
    請求項1に記載のヘッドホン。
  15.  前記イヤーパッドは、リング状のウレタンフォームを表皮で内包して構成され、
     前記表皮は、湿式発泡層の表面及び裏面の両方に乾式層を貼り付けたものを基布の表面に貼り合わせて構成され、又は、貼りいずれか一方が含侵物を含む湿式発泡層と通気性を有する湿式基布を貼り合わせて構成される、
    請求項1に記載のヘッドホン。
  16.  前記イヤーパッドは、リング状の内周側に設けられた指掛け形状部を備えた固定爪を備える、
    請求項1に記載のヘッドホン。
  17.  前記固定爪は、前記ハウジング側の爪固定部との爪嵌合構造を持つ、
    請求項16に記載のヘッドホン。
  18.  前記固定爪は前記指掛け形状部を支持するヒンジを含み、前記指掛け形状部が操作されたことによって前記ヒンジが変形して、前記固定爪が前記ハウジング側から解除される、
    請求項16に記載のヘッドホン。
  19.  前記イヤーパッドは内周の複数箇所に配置された固定爪を備える、
    請求項16に記載のヘッドホン。
  20.  前記複数箇所に配置された固定爪は、指掛け形状部を含む固定爪と指掛け形状部を含まない固定爪を含む、
    請求項19に記載のヘッドホン。
  21.  指掛け形状部を含む固定爪は、前記イヤーパッドの曲率半径Rが小さい範囲に隣り合わせで配置される、
    請求項20に記載のヘッドホン。
  22.  指掛け形状部を含む固定爪は、顔前方に配置される、
    請求項20に記載のヘッドホン。
  23.  指掛け形状部は視認可能な位置に配置される、
    請求項16に記載のヘッドホン。
  24.  前記ハウジング内の空間を分離する壁に線材を挿通させるための孔と、
     前記線材を前記孔の壁面に押し付けるようにして前記孔に差し込まれるブッシングと、
    をさらに備える、請求項1に記載のヘッドホン。
  25.  前記ブッシングは全周にわたって形成されたリブを有し、前記ブッシングが前記孔に差し込まれた際に前記リブは前記孔の壁面と干渉する、
    請求項24に記載のヘッドホン。
  26.  前記リブは、先端が鋭角で且つ前記孔の壁面に沿う形状を有する、
    請求項25に記載のヘッドホン。
  27.  前記ブッシングは、前記孔に差し込まれたときに前記孔の奥側の端部に引っ掛かるフックを有する、
    請求項24乃に記載のヘッドホン。
  28.  前記ブッシングは、差し込み方向と反対側に凸形状を持つ平型の台座部を含む、
    請求項24に記載のヘッドホン。
  29.  天面蓋部と、
     底面トレー部と、
     前記天面蓋部及び前記底面トレー部に縫製されたリング状で、上下方向の押圧力により折り畳まれる折り目を有する側面部と、
    を具備する請求項1に記載のヘッドホン用のキャリングケース。
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