WO2023195458A1

WO2023195458A1 - 被膜形成用組成物

Info

Publication number: WO2023195458A1
Application number: PCT/JP2023/013868
Authority: WO
Inventors: 亮太中嶋; 信之浅見; 志洋宮崎
Original assignee: 花王株式会社
Priority date: 2022-04-04
Filing date: 2023-04-03
Publication date: 2023-10-12
Also published as: JP2023153105A; TW202345771A

Abstract

本発明は、次の成分（Ａ）、（Ｂ）、（Ｃ）及び（Ｅ）：（Ａ）粉体、（Ｂ）カルボキシル基を２個以上有するヒドロキシカルボン酸及び芳香族カルボン酸から選ばれる１種又は２種以上、（Ｃ）アルコール及びケトンから選ばれる１種又は２種以上の揮発性物質、及び（Ｅ）繊維形成能を有するポリマーを含有する粉体分散液を静電スプレーにより皮膚上に繊維を含む堆積物からなる被膜を形成するための被膜形成用組成物に関する。

Description

被膜形成用組成物

　本発明は、静電スプレーにより被膜を形成するための組成物、及び当該組成物の利用に関する。

　粉体を液体中に分散せしめた粉体分散液は、化粧品、塗料、印刷インキなどの分野で広く使用されている。このうち、分散媒としてアルコール又はケトンが用いられた粉体分散液としては、（ａ）水、アルコール及びケトンから選ばれる１種又は２種以上の揮発性物質、（ｂ）被膜形成能を有するポリマー、及び（ｃ）粉体を含有する粉体分散液（噴霧用組成物）が報告されている（特許文献１）。

特開２０１８－１７７７９４号公報

発明の要約

　本発明は、静電スプレーにより被膜を形成するための組成物（被膜形成用組成物）、被膜の製造法、ファイバーシート及び粉体分散液に関する。
　具体的な本発明の態様は、次の［１］～［４］である。
［１］次の成分（Ａ）、（Ｂ）、（Ｃ）及び（Ｅ）：
（Ａ）粉体、
（Ｂ）カルボキシル基を２個以上有するヒドロキシカルボン酸及び芳香族カルボン酸から選ばれる１種又は２種以上、
（Ｃ）アルコール及びケトンから選ばれる１種又は２種以上の揮発性物質、及び
（Ｅ）繊維形成能を有するポリマー
を含有する粉体分散液を静電スプレーにより皮膚上に繊維を含む堆積物からなる被膜を形成するための被膜形成用組成物。
［２］次の成分（Ａ）、（Ｂ）、（Ｃ）及び（Ｅ）：
（Ａ）粉体、
（Ｂ）カルボキシル基を２個以上有するヒドロキシカルボン酸及び芳香族カルボン酸から選ばれる１種又は２種以上、
（Ｃ）アルコール及びケトンから選ばれる１種又は２種以上の揮発性物質、及び
（Ｅ）繊維形成能を有するポリマー
を含有する粉体分散液を用いて、被膜形成対象物の表面に繊維を含む堆積物からなる被膜を形成する、被膜の製造方法。
［３］次の成分（Ａ）、（Ｂ）及び（Ｅ２）を含有するファイバーシート。
（Ａ）粉体、
（Ｂ）カルボキシル基を２個以上有するヒドロキシカルボン酸及び芳香族カルボン酸から選ばれる１種又は２種以上、
（Ｅ２）繊維を構成するポリマー
［４］次の成分（Ａ）、（Ｂ）及び（Ｃ）を含有する粉体分散液。
（Ａ）粉体、
（Ｂ）カルボキシル基を２個以上有するヒドロキシカルボン酸及び芳香族カルボン酸から選ばれる１種又は２種以上、
（Ｃ）アルコール及びケトンから選ばれる１種又は２種以上の揮発性物質

本発明で好適に用いられる静電スプレー装置の構成を示す概略図である。静電スプレー装置を用いて静電スプレー法を行う様子を示す模式図である。

発明の詳細な説明

　特許文献１記載の粉体分散液（噴霧用組成物）は、前記揮発性物質中で粉体層が高粘度化・沈降が起きやすく、保管中の再分散性や安定性に課題がある。例えば、粉体分散液（噴霧用組成物）を用いて被膜を形成した際には、メイクアップとしての発色の低下や、静置保管後、使用するとそのたびに塗布色が色ブレする場合があるという課題が判明した。
　本発明は、静電スプレーにより噴霧して被膜を形成した際に、メイクアップとしての発色性が改善され静置保管後使用しても、塗布色が変化しない被膜形成用組成物を提供するものである。

　本発明者は、揮発性物質中に粉体を分散させる際に種々の成分を添加して、その再分散性、使用性について検討したところ、特定の構造を有するカルボン酸類を配合することにより、緩く結合した粉体の凝集物（軟粒子集合体）が形成される。この凝集物は沈降物を形成するが、攪拌等により破壊され、容易に再分散し、使用性に優れる粉体分散液が得られることを見出した。尚、この粉体の凝集体は静置すると、元の状態に戻るが、攪拌などにより破壊され、再分散する。さらに、この粉体分散液に繊維形成能を有するポリマーを配合して得られる被膜形成用組成物を静電スプレーすれば、メイクアップとしての発色性が改善され、繰り返し使用による塗布色が変化しない被膜が得られることを見出した。

　本発明の被膜形成用組成物は、静電スプレーにより、粉体を含む繊維の堆積物からなる被膜が形成され、得られる被膜は、メイクアップとしての発色性が改善し、静置保管後、使用しても塗布色が変化せず、安定性に優れている。また、本発明の粉体分散液は、分散液中の粉体が嵩高い粉体層を形成し、再分散性及び使用性が向上している。

　本発明は、前記のように、被膜形成用組成物、被膜の製造法、ファイバーシート及び粉体分散液であるが、まず、粉体分散液から説明する。
　本発明の一態様は、次の成分（Ａ）、（Ｂ）及び（Ｃ）を含有する粉体分散液である。
（Ａ）粉体、
（Ｂ）カルボキシル基を２個以上有するヒドロキシカルボン酸及び芳香族カルボン酸から選ばれる１種又は２種以上、
（Ｃ）アルコール及びケトンから選ばれる１種又は２種以上の揮発性物質

　本発明の粉体としては、化粧料に通常用いられる粉体であれば、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず用いることができる。また、有機粉体、無機粉体いずれも使用でき、親水性粉体、疎水性粉体のいずれも使用でき、親水化処理粉体、疎水化処理粉体を使用することもできる。
　ここでいう親水性粉体とは、例えば、水と粉体を混合した際に混合し、粉体が水中に沈降又は分散する性質を有すると一般的に言われている。また、疎水性粉体とは、水と粉体を混合した際にすばやく混合せず、粉体が水面に浮いている性質を有するものと一般的に言われている。

　無機粉体としては、具体的には、ベンガラ、水酸化鉄、チタン酸鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄、カーボンブラック、紺青、群青、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、酸化クロム、水酸化クロム、酸化コバルト、チタン酸コバルト等の有色顔料類；酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、スメクタイト、ゼオライト、セラミックスパウダー、第二リン酸カルシウム、アルミナ、シリカ、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、合成セリサイト等の白色又は体質顔料類；魚鱗箔、酸化チタン被覆雲母（雲母チタン）、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、酸化チタン被覆着色雲母、酸化チタン酸化鉄被覆雲母、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、有機顔料処理雲母チタン、低次酸化チタン被覆雲母、雲母、酸化チタン被覆合成雲母、酸化チタン被覆板状シリカ、中空板状酸化チタン、酸化鉄被覆雲母、板状酸化鉄（ＭＩＯ）、アルミニウムフレーク、ステンレスフレーク、酸化チタン被覆板状アルミナ、真珠殻、金箔、金蒸着樹脂フィルム、金属蒸着樹脂フィルム等のパール顔料（光輝性粉体）類が挙げられる。
　また、有機粉体としては、シリコーン樹脂、ポリメチルシルセスキオキサン、ナイロンパウダー、シルクパウダー、ウレタンパウダー、セルロースパウダー等の有機粉体類；赤色１０４号、赤色１０２号、赤色２２６号、赤色２０１号、赤色２０２号、黄色４号、黒色４０１号等の有機タール系顔料、有機色素及びそのレーキ化物類が挙げられ、これらを１種又は２種以上用いることができる。

　本発明で用いる粉体は、いずれも、そのまま使用することができ、これらの１種又は２種以上が疎水化処理されたものを用いることもできる。疎水化処理としては、通常の化粧料用粉体に施されている処理であれば制限されず、フッ素化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、アミノ酸系化合物、レシチン、アルキルシラン、油剤、有機チタネート等の表面処理剤を用い、乾式処理、湿式処理等を行えばよい。
　表面処理剤の具体例としては、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルアルコキシシラン、フッ素変性シリコーン等のフッ素系化合物；ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、環状シリコーン、片末端又は両末端トリアルコキシ基変性オルガノポリシロキサン、架橋型シリコーン、シリコーン樹脂、フッ素変性シリコーン樹脂、アクリル変性シリコーン等のシリコーン系化合物；ステアリン酸アルミニウム、ミリスチン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸；プロリン、ヒドロキシプロリン、アラニン、グリシン、サルコシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、リジン及びそれらの誘導体等のアミノ酸系化合物；レシチン、水添レシチン；メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン等のアルキルシラン；ポリイソブチレン、ワックス、油脂等の油剤；トリイソステアリン酸イソプロピルチタン等の有機チタネートなどが挙げられる。

　本発明で用いる粉体は、これらの１種又は２種以上が親水化処理されたものを用いることもできる。親水化処理としては、通常の化粧料用粉体に施されている処理であれば制限されない。例えば、アラビアゴム、トラガカント、アラビノガラクタン、ローカストビーンガム（キャロブガム）、グアーガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、寒天、クインスシード（マルメロ）、デンプン（コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ）、アルゲコロイド、トラントガム、ローカストビーンガム等の植物系高分子；キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子；コラーゲン、カゼイン、アルブミン、デオキシリボ核酸（ＤＮＡ）及びその塩等の動物系高分子；カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子；メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ニトロセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末のセルロース系高分子；アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子；ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子；ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールシラン等のポリオキシエチレン系高分子；など、さらに、シリカなど無機ケイ酸系化合物などが挙げられる。

　成分（Ａ）の粉体の平均粒子径は、特に限定されないが、本発明の粉体分散液を皮膚化粧料として使用する場合には、肌の皮丘・皮溝・毛穴に均一に密着し、自然な化粧感を与える点から平均粒子径０．００１μｍ以上２００μｍ以下が好ましく、０．０１μｍ以上５０μｍ以下がより好ましく、０．０２μｍ以上２０μｍ以下がさらに好ましく、０．０５μｍ以上１５μｍ以下がよりさらに好ましい。
　本発明において、粉体の平均粒子径は、電子顕微鏡観察、レーザー回折／散乱法による粒度分布測定機によって、測定される。具体的には、レーザー回折／散乱法の場合、エタノールを分散媒として、レーザー回折散乱式粒度分布測定器（例えば、セイシン企業社製、ＬＭＳ－３５０）で測定する。なお、粉体を疎水化処理した場合、成分（Ａ）の平均粒子径、含有量は、疎水化処理した剤を含めての平均粒子径、質量を意味する。

　本発明の粉体分散液中の成分（Ａ）の含有量は、当該成分（Ａ）がその機能を発揮し得る量であればよいが、再分散性及び使用性を良好に維持する観点から、１質量％以上が好ましく、３質量％以上がより好ましく、５質量％以上がさらに好ましい。また、再分散性及び使用性を良好に維持する観点から、６０質量％以下が好ましく、５５質量％以下がより好ましく、５０質量％以下がさらに好ましい。具体的には、１質量％以上６０質量％以下が好ましく、３質量％以上５５質量％以下がより好ましく、５質量％以上５０質量％以下がさらに好ましい。

　本発明に用いられる成分（Ｂ）は、カルボキシル基を２個以上有するヒドロキシカルボン酸及び芳香族カルボン酸から選ばれる１種又は２種以上である。これらの特定のカルボン酸類は、成分（Ｃ）中に分散した粉体を嵩高い粉体層（フロキュレーション）を形成させ、易分散性にすることができると考えられる。そのため、本発明の粉体分散液は、保管後であっても、容易に再分散でき、安定な分散液と同様に使用することができる。
　成分（Ｂ）としては、分子量５００以下の、カルボキシル基を２個以上有するヒドロキシカルボン酸及び芳香族カルボン酸から選ばれる１種又は２種以上であるのが好ましい。具体的には、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、トリメシン酸等が挙げられる。
　カルボキシル基を２～４個有する炭素数４～１２のヒドロキシカルボン酸、カルボキシル基を２～４個有する炭素数８～１４の芳香族カルボン酸がより好ましく、リンゴ酸、クエン酸、トリメシン酸がさらに好ましい。

　本発明の粉体分散液中の成分（Ｂ）の含有量は、粉体分散液中における成分（Ａ）の再分散性及び使用性を良好に維持する観点から、０．０１質量％以上が好ましく、０．０５質量％以上がより好ましく、０．１質量％以上がさらに好ましい。また、再分散性及び使用性を良好に維持する観点から、１０質量％以下が好ましく、７質量％以下がより好ましく、３質量％以下がさらに好ましい。具体的には、０．０１質量％以上１０質量％以下が好ましく、０．０５質量％以上７質量％以下がより好ましく、０．１質量％以上３質量％以下がさらに好ましい。

　本発明の粉体分散液においては、成分（Ｂ）に対する成分（Ａ）の質量割合（（Ａ）／（Ｂ））は、粉体分散液中における成分（Ａ）の再分散性及び使用性を良好に維持する観点から、５以上が好ましく、１０以上がより好ましく、１５以上がさらに好ましく、また、３００以下が好ましく、２５０以下がより好ましく、２００以下がさらに好ましい。具体的には、５以上３００以下が好ましく、１０以上２５０以下がより好ましく、１５以上２００以下がさらに好ましい。

　本発明の粉体分散液に用いられる成分（Ｃ）は、アルコール及びケトンから選ばれる１種又は２種以上の揮発性物質である。ここで、揮発性物質とは、常温常圧で容易に大気中に揮発する物質をいう。このうち、アルコールとしては例えば一価の鎖式脂肪族アルコール、一価の環式脂肪族アルコール、一価の芳香族アルコールが好適に用いられる。一価の鎖式脂肪族アルコールとしてはＣ₁－Ｃ₆アルコール、一価の環式アルコールとしてはＣ₄－Ｃ₆環式アルコール、一価の芳香族アルコールとしてはベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等がそれぞれ挙げられる。それらの具体例としては、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、フェニルエチルアルコール、ｎ－プロパノール、ｎ－ペンタノールなどが挙げられる。これらのアルコールは、これらから選ばれる１種又は２種以上を用いることができる。成分（Ｃ）の揮発性物質のうち、アルコールには、多価アルコールであるポリオールは含まれない。

　成分（Ｃ）の揮発性物質のうち、ケトンとしてはジＣ₁－Ｃ₄アルキルケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。これらのケトンは１種を単独で、又は２種以上を組み合わせて用いることができる。

　成分（Ｃ）の揮発性物質は、より好ましくはエタノール、イソプロピルアルコール及びブチルアルコールから選ばれる１種又は２種以上であり、さらに好ましくはエタノール及びブチルアルコールから選ばれる１種又は２種以上であり、よりさらに好ましくは少なくともエタノールを含有することである。

　本発明の粉体分散液における成分（Ｃ）の含有量は、粉体分散液中における成分（Ａ）の再分散性及び使用性を良好に維持する観点から、３５質量％以上であることが好ましく、４０質量％以上であることがより好ましく、４５質量％以上であることがさらに好ましい。また９５質量％以下であることが好ましく、９３質量％以下であることがより好ましく、９２質量％以下であることがさらに好ましく、８５質量％以下がよりさらに好ましい。具体的には、成分（Ｃ）の含有量は、３５質量％以上９５質量％以下であることが好ましく、４０質量％以上９３質量％以下であることがより好ましく、４５質量％以上９２質量％以下であることがさらに好ましい。
　粉体分散液における成分（Ｃ）の含有量は、後述する成分（Ｅ）を含む場合は、好ましくは８５質量％以下である。
　また、成分（Ｃ）の揮発性物質はエタノールを含有することが好ましく、このとき、エタノールは成分（Ｃ）の揮発性物質の全量に対して、５０質量％以上であることが好ましく、６５質量％以上であることがより好ましく、８０質量％以上であることがさらに好ましく、また１００質量％以下であることが好ましい。エタノールは成分（Ｃ）の揮発性物質の全量に対して、５０質量％以上１００質量％以下であることが好ましく、６５質量％以上１００質量％以下であることがより好ましく、８０質量％以上１００質量％以下であることがさらに好ましい。

　本発明の粉体分散液には、成分（Ａ）の分散性をより安定にするため、成分（Ｄ）少なくともＳＰ値が８．６以上のモノマーユニットであってポリグリセリル構造を含まないモノマーユニットを有するポリマーを配合するのがより好ましい。
　すなわち、本発明の一態様は、次の成分（Ａ）、（Ｂ）、（Ｃ）及び（Ｄ）を含有する粉体分散液である。
（Ａ）粉体、
（Ｂ）カルボキシル基を２個以上有するヒドロキシカルボン酸及び芳香族カルボン酸から選ばれる１種又は２種以上、
（Ｃ）アルコール及びケトンから選ばれる１種又は２種以上の揮発性物質、
（Ｄ）少なくともＳＰ値が８．６以上のモノマーユニットであってポリグリセリル構造を含まないモノマーユニットを有するポリマー

　ＳＰ値は、溶解パラメータ（Ｓｏｌｕｂｉｌｉｔｙ　Ｐａｒａｍｅｔｅｒ）である。成分（Ｄ）のポリマーは、ＳＰ値が８．６以上のモノマーユニットを有する（但し、ポリグリセリル構造を有するモノマーユニットを有さない）ことにより、成分（Ａ）の親水性粉体の成分（Ｃ）（揮発性物質）中における凝集、沈殿が抑制されるものと考えられる。
　また、成分（Ｄ）のポリマーは、粉体分散液中において、成分（Ａ）粉体と相互作用をすることによって粉体の凝集、沈殿を防止するものであり、粉体分散液を静電スプレーしたときに繊維形成能を有する、後述の（Ｅ）繊維形成能を有するポリマーではない。
　また、成分（Ｄ）のポリマーはエタノールに可溶、もしくは分散可能なものが好ましい。

　成分（Ｄ）のポリマーとしては、ホモポリマーでもコポリマーでもよいが、ＳＰ値が８．６以上のモノマーユニットを有するコポリマーであるのが好ましい。
　また、成分（Ｄ）のコポリマーとしては、少なくともＳＰ値が８．６以上のモノマーユニットを有するアクリル系コポリマー、メタクリル系コポリマー、シリコーン系コポリマー及びビニル系コポリマーから選ばれる１種又は２種以上のコポリマー（但し、ポリグリセリル構造を有するコポリマーを除く）であるのが好ましい。

　ＳＰ値が８．６以上のモノマーユニットとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、Ｎ－アシルアルキレンイミン構造、ベタイン構造、ポリエチレン構造及びポリプロピレン構造から選ばれる構造を持つモノマーユニットがより好ましい。
　従って、成分（Ｄ）としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、Ｎ－アシルアルキレンイミン構造、ベタイン構造、ポリエチレン構造及びポリプロピレン構造から選ばれる構造を持つモノマーユニットを有するアクリル系コポリマー、メタクリル系コポリマー、シリコーン系コポリマー及びビニル系コポリマーから選ばれる１種又は２種以上のコポリマーであるのがより好ましい。
　具体的には、（オクチルアクリルアミド／アクリル酸ヒドロキシプロピル／メタクリル酸ブチルアミノエチル）コポリマー、（アクリル酸アルキル・オクチルアクリルアミド）コポリマー、（アクリレーツ／ｔ－ブチルアクリルアミド）コポリマー、ＰＥＧ／ＰＰＧ－２０／２２ブチルエーテルジメチコン、（ＶＡ／クロトン酸／ネオデカン酸ビニル）コポリマー、（メタクリル酸エチルベタイン／アクリレーツ）コポリマー、ポリ（Ｎ－ホルミルエチレンイミン）オルガノシロキサン、ポリ（Ｎ－アセチルエチレンイミン）オルガノシロキサン、ポリ（Ｎ－プロピオニルエチレンイミン）オルガノシロキサンなどが挙げられ、（オクチルアクリルアミド／アクリル酸ヒドロキシプロピル／メタクリル酸ブチルアミノエチル）コポリマー、（アクリル酸アルキル・オクチルアクリルアミド）コポリマー、ポリ（Ｎ－プロピオニルエチレンイミン）オルガノシロキサンが好ましい。

　本発明の粉体分散液中の成分（Ｄ）の含有量は、粉体分散液中における成分（Ａ）の分散性及び分散安定性を良好に維持する観点から、０．１質量％以上が好ましく、０．２質量％以上がより好ましく、０．５質量％以上がさらに好ましい。また、分散性及び分散安定性を良好に維持する観点から、２０質量％以下が好ましく、１５質量％以下がより好ましく、１０質量％以下がさらに好ましい。具体的には、０．１質量％以上２０質量％以下が好ましく、０．２質量％以上１５質量％以下がより好ましく、０．５質量％以上１０質量％以下がさらに好ましい。

　本発明の粉体分散液においては、成分（Ｄ）に対する成分（Ａ）の質量割合（Ａ／Ｄ）は、粉体分散液中における成分（Ａ）の分散性及び分散安定性を良好に維持する観点から、５以上２００以下であるのが好ましい。当該質量割合（Ａ／Ｄ）は、前記分散性及び分散安定性を良好に維持する観点から、６以上がより好ましく、７以上がさらに好ましく、８以上がよりさらに好ましく、また、１００以下がより好ましく、５０以下がさらに好ましく、４０以下がよりさらに好ましい。具体的には、６以上１００以下がより好ましく、７以上５０以下がさらに好ましく、８以上４０以下がよりさらに好ましい。

　本発明の粉体分散液の一態様としては、前記成分（Ａ）、（Ｂ）及び（Ｃ）に加えて、成分（Ｅ）繊維形成能を有するポリマーを含有する粉体分散液が挙げられる。すなわちその一態様は、次の成分（Ａ）、（Ｂ）、（Ｃ）及び（Ｅ）を含有する粉体分散液である。
（Ａ）粉体、
（Ｂ）カルボキシル基を２個以上有するヒドロキシカルボン酸及び芳香族カルボン酸から選ばれる１種又は２種以上、
（Ｃ）アルコール及びケトンから選ばれる１種又は２種以上の揮発性物質、
（Ｅ）繊維形成能を有するポリマー
　この粉体分散液は、皮膚用粉体分散液、すなわち皮膚用化粧料として有用であり、更に静電スプレーにより皮膚上に成分（Ｅ）を主成分とする繊維の堆積物からなる被膜を形成するための被膜形成用組成物として特に有用である。なお、静電スプレー法としては、静電紡糸法が好ましい。また、静電スプレーに用いる組成物は、「噴霧用組成物」とも言い、「紡糸用組成物」と言うこともできる。「噴霧」は、霧状に吐出するものの他、電荷をかけて吐出された液が延びて繊維状に吐出されるものも含む。

　ここに用いられる成分（Ｅ）繊維形成能を有するポリマーは、成分（Ｃ）の揮発性物質に溶解することが可能な物質であり、かつ静電スプレーしたときに繊維を形成する能力を有するポリマーである。つまり、連続している繊維の構成成分となる成分であり、繊維の主成分となるポリマーである。ここで、溶解するとは２０℃において分散状態にあり、その分散状態が目視で均一な状態、好ましくは目視で透明又は半透明な状態であることをいう。成分（Ｅ）は成分（Ｄ）以外のポリマーであり、連続する繊維の主成分を構成する。

　繊維形成能を有するポリマーとしては、成分（Ｃ）の揮発性物質の性質に応じて適切なものが用いられる。具体的には、繊維形成能を有するポリマーは水溶性ポリマーと水不溶性ポリマーとに大別される。本明細書において「水溶性ポリマー」とは、１気圧、２３℃の環境下において、ポリマー１ｇを秤量したのちに、１０ｇのイオン交換水に浸漬し、２４時間経過後、浸漬したポリマーの０．５ｇ以上が水に溶解する性質を有するものをいう。一方、本明細書において「水不溶性ポリマー」とは、１気圧、２３℃の環境下において、ポリマー１ｇ秤量したのちに、１０ｇのイオン交換水に浸漬し、２４時間経過後、浸漬したポリマーの０．５ｇ以上が溶解しない性質を有するものをいう。

　水溶性である繊維形成能を有するポリマーとしては、例えばプルラン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ポリ－γ－グルタミン酸、変性コーンスターチ、β－グルカン、グルコオリゴ糖、ヘパリン、ケラト硫酸等のムコ多糖、セルロース、ペクチン、キシラン、リグニン、グルコマンナン、ガラクツロン酸、サイリウムシードガム、タマリンド種子ガム、アラビアガム、トラガントガム、大豆水溶性多糖、アルギン酸、カラギーナン、ラミナラン、寒天（アガロース）、フコイダン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の天然高分子、部分鹸化ポリビニルアルコール（架橋剤と併用しない場合）、ポリビニルピロリドン（ＰＶＰ）、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成高分子などが挙げられる。これらの水溶性ポリマーは単独で又は２種以上を組み合わせて用いることができる。これらの水溶性ポリマーのうち、静電スプレーにより粉体を含む繊維の堆積物からなる被膜の製造が容易である観点から、プルラン、並びに部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリエチレンオキサイド等の合成高分子を用いることが好ましい。水溶性ポリマーとしてポリエチレンオキサイドを用いる場合、その数平均分子量は、５万以上３００万以下であることが好ましく、１０万以上２５０万以下であることが一層好ましい。

　一方、水不溶性である繊維形成能を有するポリマーとしては、例えば繊維の堆積物からなる被膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することで前記被膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ツエイン（とうもろこし蛋白質の主要成分）、ポリ乳酸（ＰＬＡ）等のポリエステル、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリル酸樹脂等の成分（Ｄ）以外のポリアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂などが挙げられる。これらの水不溶性ポリマーは単独で又は２種以上を組み合わせて用いることができる。
　これらの水不溶性ポリマーのうち、部分鹸化ポリビニルアルコール、完全鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、成分（Ｄ）以外のポリアクリル樹脂、成分（Ｄ）以外のポリメタクリル樹脂、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート及びポリ乳酸から選ばれる１種又は２種以上が好ましく、ポリビニルブチラール樹脂、成分（Ｄ）以外のポリメタクリル樹脂及びポリウレタン樹脂から選ばれる１種又は２種以上を用いることがより好ましく、ポリビニルブチラール樹脂を含むことがさらに好ましく、ポリビニルブチラール樹脂を主成分とすることが殊更に好ましい。

　本発明の粉体分散液中の成分（Ｅ）の含有量は、前記再分散性及び使用性を良好にする観点、静電スプレーした際の粉体を含む繊維の堆積物からなる被膜の形成性の観点、及び形成された被膜の発色性の改善等の観点から、１質量％以上であることが好ましく、４質量％以上であることがより好ましく、５質量％以上であることがさらに好ましく、６質量％以上であることがよりさらに好ましい。また４５質量％以下であることが好ましく、３５質量％以下であることがより好ましく、３０質量％以下であることがさらに好ましく、２０質量％以下であることがよりさらに好ましい。具体的には、成分（Ｅ）の含有量は、１質量％以上４５質量％以下であることが好ましく、４質量％以上３５質量％以下であることがより好ましく、５質量％以上３０質量％以下であることがさらに好ましく、６質量％以上２０質量％以下であることがよりさらに好ましい。

　本発明の粉体分散液中の成分（Ｂ）に対する成分（Ｅ）の質量割合と成分（Ｅ）の含有量の比率（（Ｅ）／（Ｂ））は、前記再分散性及び使用性の観点、均一に粉体が担持された被膜を形成させる観点から、１以上１５０以下が好ましく、２以上１００以下がより好ましく、３以上８０以下がさらに好ましく、４以上６０以下がよりさらに好ましい。

　また、この粉体分散液には、成分（Ａ）の分散性をより安定にするため、成分（Ｄ）少なくともＳＰ値が８．６以上のモノマーユニットであってポリグリセリル構造を含まないモノマーユニットを有するポリマーを配合するのがより好ましい。

　この粉体分散液は、皮膚用粉体分散液、すなわち皮膚用化粧料として有用である。また、静電スプレーにより皮膚上に粉体を含む繊維の堆積物からなる被膜を形成するための被膜形成用組成物として特に有用である。
　すなわち、本発明の一態様は、次の成分（Ａ）、（Ｂ）、（Ｃ）及び（Ｅ）を含有する粉体分散液を静電スプレーにより皮膚上に繊維を含む堆積物からなる被膜を形成するための被膜形成用組成物である。
（Ａ）粉体、
（Ｂ）カルボキシル基を２個以上有するヒドロキシカルボン酸及び芳香族カルボン酸から選ばれる１種又は２種以上、
（Ｃ）アルコール及びケトンから選ばれる１種又は２種以上の揮発性物質、
（Ｅ）繊維形成能を有するポリマー
　また、この被膜形成用組成物には、成分（Ａ）の分散性をより安定にするため、成分（Ｄ）少なくともＳＰ値が８．６以上のモノマーユニットであってポリグリセリル構造を含まないモノマーユニットを有するポリマーを配合するのがより好ましい。

　本発明の粉体分散液を被膜形成用組成物として使用する場合には、成分（Ａ）の当該組成物中の含有量は、前記再分散性及び使用性を良好に維持する観点、及び粉体を静電スプレーにより形成される繊維を含む堆積物からなる被膜中に均一に担持させる観点、被膜の発色性、発色の安定性などの観点から、０．０１質量％以上が好ましく、０．１質量％以上がより好ましく、０．５質量％以上がさらに好ましい。また、前記再分散性及び使用性を良好に維持する観点、及び粉体を静電スプレーにより形成される繊維を含む堆積物からなる被膜中に均一に担持させる観点、被膜の発色性、発色の安定性などの観点から、２０質量％以下が好ましく、１０質量％以下がより好ましく、５質量％以下がさらに好ましい。具体的には、０．０１質量％以上２０質量％以下が好ましく、０．１質量％以上１０質量％以下がより好ましく、０．５質量％以上５質量％以下がさらに好ましい。

　本発明の粉体分散液を被膜形成用組成物として使用する場合には、成分（Ｂ）の含有量は、再分散性及び使用性を良好に維持する観点、及び粉体を静電スプレーにより形成される繊維を含む堆積物からなる被膜中に均一に担持させる観点、被膜の発色性、発色の安定性などの観点から、０．００１質量％以上が好ましく、０．００２質量％以上がより好ましく、０．００５質量％以上がさらに好ましい。また、再分散性及び使用性を良好に維持する観点から、１質量％以下が好ましく、０．５質量％以下がより好ましく、０．３質量％以下がさらに好ましい。具体的には、０．００１質量％以上１質量％以下が好ましく、０．００２質量％以上０．５質量％以下がより好ましく、０．００５質量％以上０．３質量％以下がさらに好ましい。

　本発明の粉体分散液を被膜形成用組成物として使用する場合には、成分（Ｃ）の当該組成物中の含有量は、前記再分散性及び使用性を良好に維持する観点、及び粉体を静電スプレーにより形成される繊維を含む堆積物からなる被膜中に均一に担持させる観点、被膜の発色性、発色の安定性などの観点から、４５質量％以上が好ましく、５０質量％以上がより好ましく、５５質量％以上がさらに好ましい。また、前記再分散性及び使用性を良好に維持する観点、及び粉体を静電スプレーにより形成される繊維を含む堆積物からなる被膜中に均一に担持させる観点、被膜の発色性、発色の安定性など観点から、９５質量％以下が好ましく、９２質量％以下がより好ましく、９０質量％以下がさらに好ましく、８５質量％以下がよりさらに好ましい。具体的には、４５質量％以上９５質量％以下が好ましく、５０質量％以上９２質量％以下がより好ましく、５５質量％以上９０質量％以下がさらに好ましい。

　本発明の粉体分散液を被膜形成用組成物として使用する場合には、成分（Ｄ）の当該組成物中の含有量は、前記再分散性及び使用性を良好に維持する観点、及び粉体を静電スプレーにより形成される繊維を含む堆積物からなる被膜中に均一に担持させる観点、被膜の発色性、発色の安定性などの観点から、０．０１質量％以上が好ましく、０．０２質量％以上がより好ましく、０．０４質量％以上がさらに好ましい。また、前記再分散性及び使用性を良好に維持する観点、及び粉体を静電スプレーにより形成される繊維を含む堆積物からなる被膜中に均一に担持させる観点、被膜の発色性、発色の安定性など観点から、３質量％以下が好ましく、２質量％以下がより好ましく、０．５質量％以下がさらに好ましい。具体的には、０．０１質量％以上３質量％以下が好ましく、０．０２量％以上２質量％以下がより好ましく、０．０４質量％以上０．５質量％以下がさらに好ましい。

　本発明の粉体分散液を被膜形成用組成物として使用する場合には、成分（Ｅ）の当該組成物中の含有量は、静電スプレーした際の粉体を含む繊維の堆積物からなる被膜の形成性の観点、及び形成された被膜の発色性の改善等の観点から、３質量％以上であることが好ましく、４質量％以上であることがより好ましく、５質量％以上であることがさらに好ましく、６質量％以上であることがよりさらに好ましい。また４５質量％以下であることが好ましく、３５質量％以下であることがより好ましく、３０質量％以下であることがさらに好ましく、２０質量％以下であることがよりさらに好ましい。具体的には、成分（Ｅ）の含有量は、３質量％以上４５質量％以下であることが好ましく、４質量％以上３５質量％以下であることがより好ましく、５質量％以上３０質量％以下であることがさらに好ましく、６質量％以上２０質量％以下であることがよりさらに好ましい。

　本発明の被膜形成用組成物中の成分（Ｄ）に対する成分（Ａ）の質量割合（（Ａ）／（Ｄ））は、前記分散性及び分散安定性を良好に維持する観点から、３以上がより好ましく、６以上がさらに好ましく、８以上がよりさらに好ましく、また、１００以下がより好ましく、６０以下がさらに好ましく、４０以下がよりさらに好ましい。具体的には、３以上１００以下がより好ましく、６以上６０以下がさらに好ましく、８以上４０以下がよりさらに好ましい。

　本発明の被膜形成用組成物中の成分（Ｄ）に対する成分（Ｂ）の質量割合（（Ｂ）／（Ｄ））は、静電スプレーにより形成された繊維を含む堆積物からなる被膜に粉体を均一に担持させ、皮膚上の皮膜の発色を改善し、繰り返し使用しても塗布色が変化せず、安定化させる観点から、０．０２以上８以下が好ましく、０．０４以上３以下がより好ましい。０．０７以上１．３以下がさらに好ましい。

　本発明の被膜形成用組成物中の成分（Ｃ）と成分（Ｅ）の含有量の比率（（Ｅ）／（Ｃ））は、静電スプレーにより形成された繊維を含む堆積物を安定に形成する観点から、０．０４以上０．６以下が好ましく、０．０５以上０．５以下がより好ましく、０．０６以上０．４以下がさらに好ましく、０．０８以上０．３以下がよりさらに好ましい。

　また、被膜形成用組成物中のエタノール（Ｃ）と成分（Ｅ）の含有量の比率（（Ｅ）／（Ｃ））は、静電スプレーにより形成された繊維を含む堆積物を安定に形成する観点から、０．０４以上０．６以下が好ましく、０．０５以上０．５以下がより好ましく、０．０６以上０．４以下がさらに好ましく、０．０８以上０．３以下がよりさらに好ましい。

　本発明の被膜形成用組成物中の成分（Ｄ）に対する成分（Ｅ）の質量割合（（Ｅ）／（Ｄ））は、静電スプレーにより形成された繊維を含む堆積物からなる被膜に粉体を均一に担持させ、皮膚上の皮膜の発色を改善し、繰り返し使用しても塗布色が変化せず、安定化させる観点から、２０以上５００以下が好ましく、３０以上２５０以下がより好ましく、４０以上２００以下がさらに好ましい。

　さらに、本発明の粉体分散液を皮膚用粉体分散液及び被膜形成用組成物として使用する場合には、当該粉体分散液中に油剤を含有させることができる。この油剤は化粧料に配合可能な油剤であり、皮膚上に成分（Ａ）と成分（Ｅ）を含有する均一な化粧被膜を形成させる目的で配合される。
　前記油剤としては、２０℃において液体の極性油を好ましく用いることができ、炭化水素油、エステル油、エーテル油、高級アルコール、シリコーン油が挙げられ、１種又は２種以上を組み合わせて用いることができる。

　前記炭化水素油としては、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、流動イソパラフィン、ｎ－オクタン、ｎ－ヘプタン、シクロヘキサン、軽質イソパラフィン等が挙げられ、使用感・密着性の観点から流動パラフィン、スクワランが好ましい。また、静電スプレーにより形成された被膜を皮膚に均一に密着させ、色むらを抑制させる観点から、３０℃において粘度が１０ｍＰａ・ｓ未満である、イソドデカン、イソヘキサデカン、水添ポリイソブテンが好ましい。
　ここでの粘度は、３０℃において、Ｂ型粘度計（ＴＶＢ－１０型・東機産業株式会社製）測定条件：ローターＮｏ．１、６０ｒｐｍ、１分間）により測定される。

　前記エステル油としては、直鎖又は分岐鎖の脂肪酸と、直鎖又は分岐鎖のアルコール又は多価アルコールからなるエステルが挙げられる。具体的には、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、１２－ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ２－エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸Ｎ－アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ２－ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ２－エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ２－エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、トリ２－エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル２－エチルヘキサノエート、２－エチルヘキシルパルミテート、ナフタレンジカルボン酸ジエチルヘキシル、安息香酸（炭素数１２～１５）アルキル、セテアリルイソノナノエート、トリ（カプリル酸・カプリン酸）グリセリン、（ジカプリル酸／カプリン酸）ブチレングリコール、トリラウリン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ２－ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリベヘン酸グリセリル、トリヤシ油脂肪酸グリセリル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、パルミチン酸２－ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、Ｎ－ラウロイル－Ｌ－グルタミン酸－２－オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ２－ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ２－エチルヘキシル、ミリスチン酸２－ヘキシルデシル、パルミチン酸２－ヘキシルデシル、アジピン酸２－ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸ジ２－エチルヘキシル、クエン酸トリエチル、パラメトキシケイ皮酸２－エチルヘキシル、ジピバリン酸トリプロピレングリコール、ラウロイルグルタミン酸ジ（フィトステリル／オクチルドデシル）、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチル、（ベヘン酸／ポリヒドロキシステアリン酸）ペンタエリスリチル等が挙げられ、エステル油の１種又は２種以上を含むオリーブ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、メドフォーム油、ヒマシ油、紅花油、ヒマワリ油、アボカド油、キャノーラ油、キョウニン油、米胚芽油、米糠油等も用いることができる。

　これらの中では、静電スプレーにより形成された繊維を含む堆積物からなる被膜を皮膚に密着させる観点及び皮膚に塗布した際の感覚に優れる点から、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、セテアリルイソノナノエート、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジ２－エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、安息香酸（炭素数１２～１５）アルキル、トリ（カプリル酸・カプリン酸）グリセリン、ラウロイルグルタミン酸ジ（フィトステリル／オクチルドデシル）、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチル、（ベヘン酸／ポリヒドロキシステアリン酸）ペンタエリスリチルから選ばれる少なくとも１種又は２種以上が好ましく、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、安息香酸（炭素数１２～１５）アルキル、トリ（カプリル酸・カプリン酸）グリセリン、ラウロイルグルタミン酸ジ（フィトステリル／オクチルドデシル）、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチル、（ベヘン酸／ポリヒドロキシステアリン酸）ペンタエリスリチルから選ばれる少なくとも１種又は２種以上がより好ましく、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、トリ（カプリル酸・カプリン酸）グリセリン、ラウロイルグルタミン酸ジ（フィトステリル／オクチルドデシル）から選ばれる少なくとも１種又は２種以上が更に好ましい。

　前記エーテル油としては、セチル－１，３－ジメチルブチルエーテル、ジカプリルエーテル、ジラウリルエーテル、ジイソステアリルエーテル等が挙げられる。

　前記高級アルコールとしては、炭素数１２～２０の液状の高級アルコールが挙げられ、分岐又は不飽和の高級アルコールが好ましく、具体的にはイソステアリルアルコール、オレイルアルコール、オクチルドデカノール等が挙げられる。

　前記シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン等が挙げられ、静電スプレーにより形成された繊維を含む堆積物からなる被膜を皮膚に密着させる観点から、少なくともジメチルポリシロキサンを含むことが好ましい。
　２５℃におけるシリコーン油の動粘度は、静電スプレーにより形成された繊維を含む堆積物からなる被膜を皮膚に密着させる観点から、１ｍｍ²／ｓ以上が好ましく、１．５ｍｍ²／ｓ以上がより好ましく、２ｍｍ²／ｓ以上が更に好ましく、３０ｍｍ²／ｓ以下が好ましく、２０ｍｍ²／ｓ以下がより好ましく、１０ｍｍ²／ｓ以下がさらに好ましい。

　前記油剤の含有量は、静電スプレーにより形成された繊維を含む堆積物からなる被膜を皮膚に均一に密着させ、皮膜の発色を改善させる観点から、被膜形成用組成物中に０．０１質量％以上が好ましく、０．１質量％以上がより好ましく、１質量％以上がさらに好ましく、３質量％以上がよりさらに好ましく、３０質量％以下が好ましく、２５質量％以下がより好ましく、１８質量％以下がさらに好ましく、１５質量％以下がよりさらに好ましい。
　また、被膜形成用組成物中の前記油剤と成分（Ｅ）との含有質量比（油剤／（Ｅ））は、静電スプレーにより形成された繊維を含む堆積物からなる被膜を皮膚に均一に密着させ、皮膜の発色を改善させる観点から、０．０２以上が好ましく、０．０５以上がより好ましく、０．２以上がさらに好ましく、０．５以上がよりさらに好ましく、８以下が好ましく、６以下がより好ましく、３以下がさらに好ましい。１．５以下がよりさらに好ましい。

　本発明の粉体分散液、更に皮膚用粉体分散液、特に被膜形成用組成物中にポリオールを含有することができる。ポリオールとは、２個以上のヒドロキシ基を有する脂肪族化合物をいう。ポリオールとしては、２０℃で液体であるポリオールが好ましい。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、１，３－プロパンジオール、１，３－ブタンジオール等のアルキレングリコール；ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、分子量１０００以下のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール；グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン等のグリセリン類等が挙げられる。これらのうち、静電スプレーにより形成された繊維を含む堆積物からなる被膜を皮膚に均一に密着させ、皮膜の発色を改善させる観点から、エチレングリコール、プロピレングリコール、１，３－ブタンジオール、ジプロピレングリコール、分子量１０００以下のポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリンが好ましく、分子量１０００以下のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、１，３－ブタンジオール、グリセリンがより好ましく、分子量１０００以下のポリエチレングリコールさらに好ましい。被膜形成用組成物中のポリオールの含有量は、０．０１質量％以上が好ましく、０．１質量％以上がより好ましく、１質量％以上が好ましく、１２質量％以下が好ましく、８質量％以下がより好ましく、５質量％以下が好ましい。
　また、被膜形成用組成物中の前記ポリオールと成分（Ｅ）との含有質量比（ポリオール／（Ｅ））は、静電スプレーにより形成された繊維を含む堆積物からなる被膜を皮膚に均一に密着させ、皮膜の発色を改善させる観点から、０．０２以上が好ましく、０．０５以上がより好ましく、０．２以上がさらに好ましく、３以下が好ましく、２以下がより好ましく、１以下がさらに好ましい。

　本発明の粉体分散液中には、上述した成分に加えて、さらに他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては、例えば前記油剤の他、成分（Ｅ）の繊維形成能を有するポリマーの可塑剤、界面活性剤、香料、忌避剤、酸化防止剤、安定剤、防腐剤、各種ビタミン等が挙げられる。

　成分（Ａ）、（Ｂ）、（Ｃ）及び（Ｅ）を含有する粉体分散液を被膜形成対象物に静電スプレーすれば、その表面上に、繊維を含む堆積物からなる被膜を形成することができる。
　すなわち、本発明の一態様は、次の成分（Ａ）、（Ｂ）、（Ｃ）及び（Ｅ）：
（Ａ）粉体、
（Ｂ）カルボキシル基を２個以上有するヒドロキシカルボン酸及び芳香族カルボン酸から選ばれる１種又は２種以上、
（Ｃ）アルコール及びケトンから選ばれる１種又は２種以上の揮発性物質、及び
（Ｅ）繊維形成能を有するポリマー
を含有する粉体分散液を用いて、被膜形成対象物の表面に繊維を含む堆積物からなる被膜を形成する、被膜の製造方法である。
　また、この製造法に用いる粉体分散液には、（Ｄ）少なくともＳＰ値が８．６以上のモノマーユニットであってポリグリセリル構造を含まないモノマーユニットを有するポリマーを配合するのが好ましい。
　ここで、被膜形成対象物としては、基板及び皮膚が含まれる。従って、この一態様には、前記粉体分散液を、皮膚に直接静電スプレーすることを特徴とする、皮膚表面上に繊維を含む堆積物からなる化粧被膜の製造法が含まれる。

　静電スプレー法を行う場合、被膜形成用組成物として、その粘度が、２５℃において、好ましくは１ｍＰａ・ｓ以上、更に好ましくは１０ｍＰａ・ｓ以上、一層好ましくは５０ｍＰａ・ｓ以上であるものを用いる。また粘度が、２５℃において、好ましくは５０００ｍＰａ・ｓ以下、更に好ましくは２０００ｍＰａ・ｓ以下、一層好ましくは１５００ｍＰａ・ｓ以下であるものを用いる。被膜形成用組成物の粘度は、２５℃において、好ましくは１ｍＰａ・ｓ以上５０００ｍＰａ・ｓ以下であり、更に好ましくは１０ｍＰａ・ｓ以上１５００ｍＰａ・ｓ以下であり、一層好ましくは５０ｍＰａ・ｓ以上１２００ｍＰａ・ｓ以下である。この範囲の粘度を有する被膜形成用組成物を用いることで、静電スプレー法によって粉体を含む多孔性被膜、特に粉体を含む繊維の堆積物からなる多孔性被膜を首尾よく形成することができる。粉体を含む多孔性被膜の形成は、粉体を含む被膜の皮丘、皮溝、毛穴への均一な付着性、発色性の改善、発色の安定性、被膜の密着性等の観点から有利なものである。被膜形成用組成物の粘度は、Ｅ型粘度計を用いて２５℃で測定される。Ｅ型粘度計としては例えば、例えば東京計器株式会社製のＥ型粘度計を用いることができる。その場合のローターとしては、ローターＮｏ．４３を用いることができる。

　被膜形成用組成物は静電スプレー法によって、被膜形成対象物、例えばヒトの皮膚における粉体による化粧をしようとする部位に直接噴霧される。また、被膜形成用組成物は静電スプレー法によって、被膜形成対象物、例えば樹脂の基材表面などに噴霧又は吐出される。静電スプレー法は、静電スプレー装置を用い、皮膚に被膜形成用組成物を静電スプレーする工程を含む。静電スプレー装置は、基本的に、前記組成物を収容する容器と、前記組成物を吐出するノズルと、前記容器中に収容されている前記組成物を前記ノズルに供給する供給装置と、前記ノズルに電圧を印加する電源とを有する。

　図１には、本発明で好適に用いられる静電スプレー装置の構成を表す概略図が示されている。同図に示す静電スプレー装置１０は、低電圧電源１１を備えている。低電圧電源１１は、数Ｖから十数Ｖの電圧を発生させ得るものである。静電スプレー装置１０の可搬性を高める目的で、低電圧電源１１は１個又は２個以上の電池からなることが好ましい。電池は乾電池、充電池、蓄電池等種々の電池を用いることができる。また、低電圧電源１１として電池を用いることで、必要に応じ取り替えを容易に行えるという利点もある。電池に代えて、ＡＣアダプタ等を低電圧電源１１として用いることもできる。

　静電スプレー装置１０は、高電圧電源１２も備えている。高電圧電源１２は、低電圧電源１１と接続されており、低電圧電源１１で発生した電圧を高電圧に昇圧する電気回路（図示せず）を備えている。昇圧電気回路は一般にトランス、キャパシタ及び半導体素子等から構成されている。

　静電スプレー装置１０は、補助的電気回路１３を更に備えている。補助的電気回路１３は、上述した低電圧電源１１と高電圧電源１２との間に介在し、低電圧電源１１の電圧を調整して高電圧電源１２を安定的に動作させる機能を有する。更に補助的電気回路１３は、後述するマイクロギヤポンプ１４に備えられているモータの回転数を制御する機能を有する。モータの回転数を制御することで、後述する被膜形成用組成物の容器１５からマイクロギヤポンプ１４への噴霧用組成物の供給量が制御される。補助的電気回路１３と低電圧電源１１との間にはスイッチＳＷが取り付けられており、スイッチＳＷの入り切りによって、静電スプレー装置１０を運転／停止できるようになっている。なお、噴霧用組成物の供給及び供給量の制御は、ポンプであればよく、マイクロギヤポンプ１４以外に、ピストンポンプを用いることもできる。

　静電スプレー装置１０は、ノズル１６を更に備えている。ノズル１６は、金属を初めとする各種の導電体や、プラスチック、ゴム、セラミックなどの非導電体からなり、その先端から被膜形成用組成物の吐出が可能な形状をしている。ノズル１６内には被膜形成用組成物が流通する微小空間が、該ノズル１６の長手方向に沿って形成されている。この微小空間の横断面の大きさは、直径で表して１００μｍ以上１０００μｍ以下であることが好ましい。
　ノズル１６は、管路１７を介してマイクロギヤポンプ１４と連通している。管路１７は導電体でもよく、あるいは非導電体でもよい。また、ノズル１６は、高電圧電源１２と電気的に接続されている。これによって、ノズル１６に高電圧を印加することが可能になっている。この場合、ノズル１６に人体が直接触れた場合に過大な電流が流れることを防止するために、ノズル１６と高電圧電源１２とは、電流制限抵抗１９を介して電気的に接続されている。

　管路１７を介してノズル１６と連通しているマイクロギヤポンプ１４は、容器１５中に収容されている被膜形成用組成物をノズル１６に供給する供給装置として機能する。マイクロギヤポンプ１４は、低電圧電源１１から電源の供給を受けて動作する。また、マイクロギヤポンプ１４は、補助的電気回路１３による制御を受けて所定量の被膜形成用組成物をノズル１６に供給するように構成されている。

　マイクロギヤポンプ１４には、フレキシブル管路１８を介して容器１５が接続されている。容器１５中には被膜形成用組成物が収容されている。容器１５は、カートリッジ式の交換可能な形態をしていることが好ましい。

　以上の構成を有する静電スプレー装置１０は、例えば図２に示すように使用することができる。図２には、片手で把持できる寸法を有するハンディタイプの静電スプレー装置１０が示されている。同図に示す静電スプレー装置１０は、図１に示す構成図の部材のすべてが円筒形の筐体２０内に収容されている。筐体２０の長手方向の一端１０ａには、ノズル（図示せず）が配置されている。ノズルは、その組成物の吹き出し方向を、筐体２０の縦方向と一致させて、肌側に向かい凸状になるように該筐体２０に配置されている。ノズル先端が筐体２０の縦方向においてに肌に向かい凸状になるように配置されていることによって、筐体に被膜形成用組成物が付着しにくくなり、安定的に被膜を形成することができる。

　静電スプレー装置１０を動作させるときには、使用者、すなわち静電スプレーによって皮膚上の粉体により化粧をしようとする部位上に被膜を形成する者が該装置１０を手で把持し、ノズル（図示せず）が配置されている該装置１０の一端１０ａを、静電スプレーを行う適用部位に向ける。図２では、使用者の前腕部内側に静電スプレー装置１０の一端１０ａを向けている状態が示されている。この状態下に、装置１０のスイッチをオンにして静電スプレー法を行う。装置１０に電源が入ることで、ノズルと皮膚との間には電界が生じる。図２に示す実施形態では、ノズルに正の高電圧が印加され、皮膚が負極となる。ノズルと皮膚との間に電界が生じると、ノズル先端部の被膜形成用組成物は、静電誘導によって分極して先端部分がコーン状になり、コーン先端から帯電した被膜形成用組成物の液滴が電界に沿って、皮膚に向かって空中に吐出される。空間に吐出され且つ帯電した被膜形成用組成物から溶媒である成分（Ｃ）が蒸発していくと、被膜形成用組成物表面の電荷密度が過剰となり、クーロン反発力によって微細化を繰り返しながら空間に広がり、皮膚に到達する。この場合、被膜形成用組成物の粘度を適切に調整することで、噴霧された該組成物を液滴の状態で適用部位に到達させることができる。あるいは、空間に吐出されている間に、溶媒である揮発性物質を液滴から揮発させ、溶質である被膜形成能を有するポリマーを固化させつつ、電位差によって伸長変形させながら繊維を形成し、その繊維を適用部位に堆積させることもできる。例えば、被膜形成用組成物の粘度を高めると、該組成物を繊維の形態で適用部位に堆積させやすい。これによって、粉体を含む繊維の堆積物からなる多孔性被膜が適用部位の表面に形成される。粉体を含む繊維の堆積物からなる多孔性被膜は、ノズルと皮膚との間の距離や、ノズルに印加する電圧を調整することでも形成することが可能である。

　静電スプレー装置における、ノズルに電圧を印加するとは、ノズル内部に電極を配置する、又はノズルの一部に電極を配置する手段が挙げられる。ノズルへの印加電圧は、粉体を含む繊維を形成する観点から、好ましくは５ｋＶ以上３０ｋＶ以下であり、より好ましくは７ｋＶ以上２０ｋＶ以下であり、さらに好ましくは８ｋＶ以上１６ｋＶ以下である。ノズルから噴霧（吐出）される被膜形成用組成物の流速は、粉体を含む繊維の形成性の観点から、好ましくは０．４ｍＬ／ｈ以上３０ｍＬ／ｈ以下であり、より好ましくは０．８ｍＬ／ｈ以上２０ｍＬ／ｈ以下であり、さらに好ましくは１．２ｍＬ／ｈ以上１５ｍＬ／ｈ以下である。また、ノズルへの印加電圧Ｐ（ｋＶ）とノズルから吐出する被膜形成用組成物の流速Ｆ（ｍＬ／ｈ）との比（Ｆ／Ｐ）は、繊維の良好な形成性の観点から、好ましくは０．０６以上１．２以下であり、より好ましくは０．１～１であり、さらに好ましくは０．２～０．８である。

　静電スプレー法を行っている間は、ノズルと皮膚との間に高い電位差が生じている。しかし、インピーダンスが非常に大きいので、人体を流れる電流は極めて微小である。例えば通常の生活下において生じる静電気によって人体に流れる電流よりも、静電スプレー法を行っている間に人体に流れる電流の方が数桁小さいことを、本発明者は確認している。

　静電スプレー法によって粉体を含む繊維の堆積物を形成する場合、該繊維の太さは、円相当直径で表した場合、１０ｎｍ以上であることが好ましく、５０ｎｍ以上であることが更に好ましい。また３０００ｎｍ以下であることが好ましく、１５００ｎｍ以下であることが更に好ましい。繊維の太さは、例えば走査型電子顕微鏡（ＳＥＭ）観察によって、繊維を１００００倍に拡大して観察し、その二次元画像から欠陥（繊維の塊、繊維の交差部分、液滴）を除き、繊維を任意に１０本選び出し、繊維の長手方向に直交する線を引き、最小の繊維径を直接読み取ることで測定することができる。

　静電スプレー法によって形成された繊維の堆積物である被膜は、構成する繊維に、成分（Ａ）が担持されている。繊維に成分（Ａ）が担持されているとは、繊維に成分（Ａ）の一部又は全部が内包されている又は埋め込まれていることを意味する。被膜形成用組成物における成分（Ａ）の含有量が、繊維形成能を有するポリマーと成分（Ａ）との親和性にも依存するが、概ね０．００３質量％以上４０質量％以下であれば、構成する繊維の肌への密着性が高く、肌への追従性に優れた粉体担持被膜が形成され易く、一方、被膜形成用組成物における成分（Ａ）の含有量が４０質量％超であれば、構成する繊維の内側に粉体担持被膜が形成されにくい。このように被膜を構成する繊維に粉体担持被膜が形成されると、粉体が繊維に覆われている為、被膜が半透明化する傾向にあり、ソフトフォーカス効果を持つ自然な見た目に近づく。更に、密着の持続性が高まることから化粧の仕上がりが持続する。なお、これらの密着性や粉体による化粧効果の均一性の効果は、後述する液剤塗布によりさらに増強される。

　前記のように、成分（Ａ）、成分（Ｂ）、成分（Ｃ）及び成分（Ｅ）を含有する粉体組成物を、被膜形成対象物、例えば樹脂などの基材表面上に静電スプレーすれば、成分（Ｃ）が揮発して、成分（Ａ）、成分（Ｂ）及び成分（Ｅ）を含む繊維を含む堆積物からなる被膜、すなわちファイバーシートが形成される。得られたファイバーシートは、皮膚への貼付用ファイバーシートとすることができる。
　従って、本発明の一態様は、次の成分（Ａ）、（Ｂ）及び（Ｅ２）を含有するファイバーシートである。
（Ａ）粉体、
（Ｂ）カルボキシル基を２個以上有するヒドロキシカルボン酸及び芳香族カルボン酸から選ばれる１種又は２種以上、
（Ｅ２）繊維を構成するポリマー
　このファーバーシートを構成する繊維の太さは、円相当直径で１０ｎｍ以上３０００ｎｍ以下であるのが好ましく、このようなファイバーシートは、貼付用ファイバーシートとして特に好ましい。
　（Ｅ２）繊維を構成するポリマーは、成分（Ｅ）であり、繊維の骨格を構成するポリマーである。
　繊維を構成するポリマー（Ｅ２）と成分（Ａ）の質量比（Ｅ２／Ａ）は、静電スプレーにより形成された繊維を含む堆積物を安定に形成する観点、及び形成される被膜の発色性の改善、化粧崩れの抑制の観点から、１以上６０以下が好ましく、２以上４０以下がより好ましく、３以上３０以下がさらに好ましく、４以上２０以下がさらに好ましい。
　また、前記皮膜形成用組成物として、成分（Ｄ）を含有する組成物を用いた場合は、得られるファイバーシートにも、成分（Ｄ）が含まれる。

　被膜を形成する前記繊維は、製造の原理上は無限長の連続繊維となるが、少なくとも繊維の太さの１００倍以上の長さを有することが好ましい。本明細書においては、繊維の太さの１００倍以上の長さを有する繊維のことを「連続繊維」と定義する。そして、静電スプレー法によって製造される被膜は、連続繊維の堆積物からなる多孔性の不連続被膜であることが好ましい。このような形態の被膜は、集合体として１枚のシートとして扱えるだけでなく、非常に柔らかい特徴を持っており、それに剪断力が加わってもばらばらになりにくく、身体の動きへの追従性に優れるという利点がある。また、被膜の完全除去が容易であるという利点もある。これに対して、細孔を有さない連続被膜は剥離が容易でなく、また汗の放散性が低いので、皮膚に蒸れが生じる虞がある。また、粒子の集合体からなる多孔性の不連続被膜は、被膜を完全に除去するために、被膜全体に摩擦をかける等の動作が必要となるなど、皮膚へのダメージなく完全除去することは困難である。

　静電スプレー装置１０を用いた静電スプレー工程において、静電スプレーされ繊維状となった被膜形成用組成物は、先に述べたとおり皮膚も帯電していることから、成分（Ｃ）が揮発しながら、成分（Ａ）、成分（Ｂ）及び成分（Ｅ）が帯電した状態で皮膚に直接到達する。このエレクトロスピニング（電界紡糸）技術によって、連続繊維として吐出され、皮膚に多孔性の堆積物となって密着する。その際、粉体は繊維内に高分散性を維持した状態で担持され、繊維が皮膚表面の肌理の皮丘と皮丘の上を亘るように皮膚をコートし、固定されるので、粉体を皮膚表面に均一に付着させ、維持させることができる。
　その結果、成分（Ａ）粉体が成分（Ｂ）と緩く結合した粉体の凝集物（軟粒子集合体）が形成している為、攪拌等により破壊され、容易に一次粒子の粉体に再分散した状態で突出され、メイクアップとしての発色性が飛躍的に改善し、着色力や隠ぺい力が向上するだけでなく、綺麗な仕上がりを実現することができ、この粉体の凝集体は静置すると、元の状態に戻るが、攪拌などにより破壊され、再分散するので、繰り返し使用しても塗布色が変化せず、安定していることを見出した。

　ノズルと皮膚との間の距離は、ノズルに印加する電圧にも依存するが、５０ｍｍ以上、１５０ｍｍ以下であることが、被膜を首尾よく形成するうえで好ましい。ノズルと皮膚との間の距離は、一般的に用いられる非接触式センサ等で測定することができる。

　静電スプレー法によって形成された被膜が多孔性のものであるか否かを問わず、被膜の坪量は、０．１ｇ／ｍ²以上であることが好ましく、１ｇ／ｍ²以上であることが更に好ましい。また５０ｇ／ｍ²以下であることが好ましく、４０ｇ／ｍ²以下であることが更に好ましい。例えば被膜の坪量は、０．１ｇ／ｍ²以上５０ｇ／ｍ²以下であることが好ましく、１ｇ／ｍ²以上４０ｇ／ｍ²以下であることが更に好ましい。被膜の坪量をこのように設定することで、粉体による化粧効果及び被膜の密着性を向上させることができる。

　なお、皮膚に組成物を直接に静電スプレーして被膜を形成する静電スプレー工程とは、皮膚に静電スプレーして、被膜を形成する工程を意味し、静電紡糸する工程であることが好ましい。
　他の被膜の形成方法としては、組成物を皮膚以外の場所に紡糸、好ましくは静電紡糸して、繊維の堆積物で構成され、皮膚転写して用いる貼付用ファイバーからなるシートを作製し、その貼付用ファイバーシートを皮膚に塗布又は転写する工程を含む方法が挙げられる。かかる、貼付用ファイバーシートを用いる方法は、前記静電スプレー工程とは異なる方法である。

　本発明においては、上述した静電スプレーによって被膜を形成する静電スプレー工程の前に、若しくはその後に、又は該静電スプレー工程の前後に、水、ポリオール及び２０℃で液体の油から選ばれる１種又は２種以上を含有する液剤を、静電スプレー以外の手段により皮膚に施す液剤適用工程を行うこともできる。静電スプレー工程の前に液剤を施すことで、皮膚表面が静電誘導によってより一層分極しやすくなり、スプレーされた被膜形成用組成物が静電力により更に強く付着しやすくなるとともに、スプレーされた被膜形成用組成物の外観の透明性を向上することができる。また、静電スプレー工程の後に、特に静電スプレー工程の直後に、静電スプレー以外の手段により液剤適用工程を行うことで、静電スプレー工程で形成された被膜が、該液剤で皮膚になじみやすくなり、該被膜が皮膚に高密着化するとともに、一層透明性が向上する。被膜の端部と皮膚との間に段差が生じにくくなり、それによっても被膜と皮膚との密着性が向上する。その結果、皮膚の伸び縮みの程度が大きい部位や、曲率の大きい部位に被膜を形成しても、その剥離や破れ等が生じにくくなる。好適には被膜が、繊維の堆積物からなる多孔性被膜である場合、高い空隙率であるにもかかわらず皮膚との密着性が高く、また大きな毛管力が発生しやすい。更に、繊維が微細である場合には多孔性被膜を高比表面積化することが容易となる。

　静電スプレー工程において繊維の堆積物からなる多孔性被膜を形成する工程の前、及び／又は後に、静電スプレー以外の手段により液剤適用工程を行うことにより、該多孔性被膜を形成する繊維間、及び／又は繊維表面に保湿液剤及び粉体が存在する保湿液剤及び粉体の担持被膜が形成される。これによって、被膜の密着性が向上する。特に被膜を構成する繊維のポリマーが無色透明、あるいは半透明である場合には、より被膜として視認しにくくなるが、粉体が着色粉体又は白色粉体である場合は、粉体の色だけが視認されることによって、例えばファンデーション、或いはポイントメイクは、チーク等の色合いが皮膚上に自然な化粧として見せることができる。また、被膜が有色不透明である場合には、被膜に透明感が出るため、皮膚の一部のように見せることができる。なお、前記有色とは、白色も含む。

　液剤適用工程において用いられる液剤が水を含む場合、該液剤としては、例えば水、水溶液及び水分散液等の水系液体などが挙げられる。また、化粧水や、Ｏ／Ｗエマルション、Ｗ／Ｏエマルション等の乳化液からなる乳液や化粧クリーム、増粘剤で増粘された水性液なども挙げられる。

　静電スプレー以外の手段により、水又は液体油を含む液剤を皮膚に施すには種々の方法を用いることができる。例えば、滴下、振りかけ等の皮膚に液剤を適用できる方法によって液剤を皮膚に施し、必要に応じて、該液剤を塗り広げる工程を備えることにより、皮膚又は被膜になじませることで、該液剤の薄層を形成することができる。液剤を塗り広げる工程は、例えば使用者本人の指や、アプリケータ等の道具を用いた擦過などの方法を採用することができる。液剤を単に滴下したり振りかけたりしただけでもよいが、塗り広げる工程を備えることにより、皮膚や被膜になじませることが可能となり、被膜の密着性を十分に向上させることができる。別法として、液剤を皮膚にスプレーにより噴霧して該液剤の薄層を形成することもできる。この場合には、別途の塗り広げは格別必要ないが、噴霧後に塗り広げの操作を行うことは妨げられない。なお、被膜の形成後に液剤を施す場合には、十分な液剤を皮膚に適用し、余分の液剤はシート材を液剤の施した範囲に接触させる工程により、余剰の液剤を除去することができる。

　本発明を用いる用途としては、化粧下地、ファンデーション、コンシーラー、ほお紅、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、アイブロウ、オーバーコート剤、口紅等のメイクアップ化粧料；日焼け止め化粧料等の紫外線防御化粧料、保湿化粧料、しわ改善化粧料、美白化粧料、皮脂対策化粧料、アクネケア化粧料、エイジングケア化粧料等のスキンケア化粧料などとして適用することができる。なかでも、化粧下地、ファンデーション、コンシーラー、オーバーコート剤、日焼け止め化粧料がより好ましい。

　以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態においては、自己の皮膚に被膜を形成させたい者が静電スプレー装置１０を把持し、該装置１０のノズルとその者の皮膚との間に電界を生じさせたが、両者間に電界が生じる限り、自己の皮膚に被膜を形成させたい者が静電スプレー装置１０を把持する必要はない。

　上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の被膜の製造方法等を開示する。

＜１＞次の成分（Ａ）、（Ｂ）及び（Ｃ）を含有する粉体分散液。
（Ａ）粉体、
（Ｂ）カルボキシル基を２個以上有するヒドロキシカルボン酸及び芳香族カルボン酸から選ばれる１種又は２種以上、
（Ｃ）アルコール及びケトンから選ばれる１種又は２種以上の揮発性物質
＜２＞成分（Ａ）が、親水性粉体及び疎水性粉体から選ばれる１種又は２種以上の粉体である＜１＞記載の粉体分散液。
＜３＞成分（Ｂ）が、分子量５００以下の、カルボキシル基を２個以上有するヒドロキシカルボン酸及び芳香族カルボン酸から選ばれる１種又は２種以上であり、カルボキシル基を２～４個以上有する炭素数４～１２のヒドロキシカルボン酸及びカルボキシル基を２～４個有する炭素数８～１４の芳香族カルボン酸から選ばれる１種又は２種以上がより好ましい＜１＞又は＜２＞記載の粉体分散液。
＜４＞成分（Ｂ）に対する成分（Ａ）の質量割合（Ａ／Ｂ）が、５以上３００以下が好ましく、１０以上２５０以下がより好ましく、１５以上２００以下がさらに好ましい＜１＞～＜３＞のいずれかに記載の粉体分散液。
＜５＞成分（Ａ）の含有量が、１質量％以上６０質量％以下が好ましく、３質量％以上５５質量％以下がより好ましく、５質量％以上５０質量％以下がさらに好ましい＜１＞～＜４＞のいずれかに記載の粉体分散液。
＜６＞成分（Ｂ）の含有量が、０．０１質量％以上１０質量％以下が好ましく、０．０５質量％以上７質量％以下がより好ましく、０．１質量％以上３質量％以下がさらに好ましい＜１＞～＜５＞のいずれかに記載の粉体分散液。
＜７＞成分（Ｃ）が、エタノールを含む＜１＞～＜６＞のいずれかに記載の粉体分散液。
＜８＞成分（Ｃ）の含有量が、３５質量％以上９５質量％以下、好ましくは４０質量％以上９３質量％以下、より好ましくは４５質量％以上９２質量％以下である＜１＞～＜７＞のいずれかに記載の粉体分散液。
＜９＞さらに成分（Ｄ）少なくともＳＰ値が８．６以上のモノマーユニットであってポリグリセリル構造を含まないモノマーユニットを有するポリマーを含有する＜１＞～＜８＞のいずれかに記載の粉体分散液。
＜１０＞成分（Ｄ）が、少なくともＳＰ値が８．６以上のモノマーユニットを有するアクリル系コポリマー、メタクリル系コポリマー、シリコーン系コポリマー及びビニル系コポリマーから選ばれる１種又は２種以上のコポリマー（但し、ポリグリセリル構造を有するコポリマーを除く）である＜９＞記載の粉体分散液。
＜１１＞成分（Ｄ）が、アクリルアミド、メタクリルアミド、Ｎ－アシルアルキレンイミン構造、ベタイン構造、ポリエチレン構造及びポリプロピレン構造から選ばれる構造を持つモノマーユニットを有するアクリル系コポリマー、メタクリル系コポリマー、シリコーン系コポリマー及びビニル系コポリマーから選ばれる１種又は２種以上のコポリマーである＜９＞記載の粉体分散液。
＜１２＞成分（Ｄ）の含有量が０．１質量％以上１０質量％以下、好ましくは０．２質量％以上８質量％以下、より好ましくは０．５質量％以上５質量％以下である＜９＞～＜１１＞のいずれかに記載の粉体分散液。
＜１３＞成分（Ｄ）に対する成分（Ａ）の質量割合（Ａ／Ｄ）が、５以上２００以下が好ましく、６以上１００以下がより好ましく、７以上５０以下がさらに好ましく、８以上４０以下がよりさらに好ましい＜９＞～＜１２＞のいずれかに記載の粉体分散液。
＜１４＞さらに成分（Ｅ）繊維形成能を有するポリマーを含有する＜１＞～＜１３＞のいずれかに記載の粉体分散液。
＜１５＞成分（Ｅ）の含有量が１質量％以上４５質量％以下、好ましくは４質量％以上３５質量％以下、好ましくは５質量％以上３０質量％以下、好ましくは６質量％以上２０質量％以下である＜１４＞記載の粉体分散液。
＜１６＞成分（Ｅ）が、部分鹸化ポリビニルアルコール、低鹸化ポリビニルアルコール、完全鹸化ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、成分（Ｄ）以外のポリアクリル樹脂、成分（Ｄ）以外のポリメタクリル樹脂、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、及びポリ乳酸からなる群より選択された少なくとも１種である＜１４＞又は＜１５＞記載の粉体分散液。
＜１７＞成分（Ｂ）に対する成分（Ｅ）の質量割合（（Ｅ）／（Ｂ））が、１以上１５０以下が好ましく、２以上１００以下がより好ましく、３以上８０以下がさらに好ましく、４以上６０以下がよりさらに好ましい＜１４＞～＜１６＞のいずれかに記載の粉体分散液。
＜１８＞皮膚用粉体分散液である、＜１＞～＜１７＞のいずれかに記載の粉体分散液。
＜１９＞次の成分（Ａ）、（Ｂ）、（Ｃ）及び（Ｅ）：
（Ａ）粉体、
（Ｂ）カルボキシル基を２個以上有するヒドロキシカルボン酸及び芳香族カルボン酸から選ばれる１種又は２種以上、
（Ｃ）アルコール及びケトンから選ばれる１種又は２種以上の揮発性物質、及び
（Ｅ）繊維形成能を有するポリマー
を含有する粉体分散液を静電スプレーにより皮膚上に繊維を含む堆積物からなる被膜を形成するための被膜形成用組成物。
＜２０＞成分（Ａ）の含有量が０．０１質量％以上２０質量％以下、好ましくは０．１質量％以上１０質量％以下、より好ましくは０．５質量％以上５質量％以下である＜１９＞記載の被膜形成用組成物。
＜２１＞成分（Ｂ）の含有量が、０．００１質量％以上１質量％以下が好ましく、０．００２質量％以上０．５質量％以下がより好ましく、０．００５質量％以上０．３質量％以下がさらに好ましい＜１９＞又は＜２０＞記載の被膜形成用組成物。
＜２２＞成分（Ｃ）の含有量が、４５質量％以上９５質量％以下、好ましくは５０質量％以上９２質量％以下、より好ましくは５５質量％以上９０質量％以下である＜１９＞～＜２１＞のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
＜２３＞成分（Ｅ）の含有量が３質量％以上４５質量％以下、好ましくは４質量％以上３５質量％以下、好ましくは５質量％以上３０質量％以下、好ましくは６質量％以上２０質量％以下である＜１９＞～＜２２＞のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
＜２４＞さらに成分（Ｄ）少なくともＳＰ値が８．６以上のモノマーユニットであってポリグリセリル構造を含まないモノマーユニットを有するポリマーを含有する＜１９＞～＜２３＞のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
＜２５＞成分（Ｄ）に対する成分（Ｂ）の質量割合（（Ｂ）／（Ｄ））が、０．０２以上８以下が好ましく、０．０４以上３以下がより好ましく、０．０７以上１．３以下がさらに好ましい＜１９＞～＜２４＞のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
＜２６＞成分（Ｄ）に対する成分（Ａ）の質量割合（（Ａ）／（Ｄ））が、３以上１００以下がより好ましく、６以上６０以下がさらに好ましく、８以上４０以下がよりさらに好ましい＜１９＞～＜２５＞のいずれかに記載の被膜形成用組成物。
＜２７＞次の成分（Ａ）、（Ｂ）、（Ｃ）及び（Ｅ）：
（Ａ）粉体、
（Ｂ）カルボキシル基を２個以上有するヒドロキシカルボン酸及び芳香族カルボン酸から選ばれる１種又は２種以上、
（Ｃ）アルコール及びケトンから選ばれる１種又は２種以上の揮発性物質、及び
（Ｅ）繊維形成能を有するポリマー
を含有する粉体分散液を用いて、被膜形成対象物の表面に繊維を含む堆積物からなる被膜を形成する、被膜の製造方法。
＜２８＞前記粉体分散液が、さらに成分（Ｄ）少なくともＳＰ値が８．６以上のモノマーユニットであってポリグリセリル構造を含まないモノマーユニットを有するポリマーを含有する＜２７＞記載の被膜の製造方法。
＜２９＞次の成分（Ａ）、（Ｂ）及び（Ｅ２）を含有するファイバーシート。
（Ａ）粉体、
（Ｂ）カルボキシル基を２個以上有するヒドロキシカルボン酸及び芳香族カルボン酸から選ばれる１種又は２種以上、
（Ｅ２）繊維を構成するポリマー
＜３０＞シートを構成する繊維の太さが円相当直径で１０ｎｍ以上３０００ｎｍ以下である、＜２９＞記載のファイバーシート。
＜３１＞さらに成分（Ｄ）少なくともＳＰ値が８．６以上のモノマーユニットであってポリグリセリル構造を含まないモノマーユニットを有するポリマーを含有する＜３０＞記載のファイバーシート。

　次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。特に断らない限り、「％」は「質量％」を意味する。

（製造例）（ポリ（Ｎ－プロピオニルエチレンイミン）変性シリコーン　硫酸ジエチル７．５７ｇ（０．０４９モル）及び２－エチル－２－オキサゾリン２６３．３ｇ（２．６６モル）を、脱水した酢酸エチル５５０ｇに溶解し、窒素雰囲気下、８時間加熱還流し、末端反応性ポリ（Ｎ－プロピオニルエチレンイミン）を合成した。ここに、側鎖１級アミノプロピル変性ポリジメチルシロキサン（重量平均分子量６００００、アミン当量３８７０）２５０ｇ（アミノ基にして０．０６５ｍｏｌ）の５０％酢酸エチル溶液を一括して加え、１２時間加熱還流した。ＧＰＣにより測定した数平均分子量は５４００であった。
　反応混合物を減圧濃縮し、Ｎ－プロピオニルエチレンイミン・ジメチルシロキサン共重合体を淡黄色ゴム状固体（５０５ｇ、収率９７％）として得た。最終生成物におけるオルガノポリシロキサンセグメントの質量比は０．５１、最終生成物の重量平均分子量は８８４００であった。

［試験例１］
　〔実施例１～１５及び比較例１～４〕
　表１～表５に記載の粉体分散液を製造した。
　〔評価〕
（１）保存後の沈降状態の評価
　表１～表５の粉体分散液について、製造後６０℃で３日間静置後沈降状態を目視で評価した。
Ａ：嵩高い沈降物を形成している。上澄みが透明。
Ｂ：嵩高い沈降物を形成している。上澄みが濁っている。
Ｃ：底面に薄い沈降層を形成している。
（２）保存後の再分散性の評価
　表１～表５の粉体分散液について、製造後６０℃で３日間静置し、３０秒振とうし（攪拌球入り）、振とう後の底面の沈降物（固形物）の残留性を目視で評価した。
Ａ：沈降物なし。溶液が均一である。
Ｂ：沈降物がほとんどなし。溶液がほとんど均一である。
Ｃ：沈降物がほぐれにくく、壁面や底面に若干残っている。
Ｄ：沈降物が壁面や底面に多量に残っている。

［試験例２］
〔実施例１６～３６及び比較例５～８〕
　表６～表１１に記載の被膜形成用組成物を製造した。
　〔評価〕
（１）６０℃、３日間保管時に沈降した粉体相の高さ
　表６～表１１の被膜形成用組成物について、製造後６０℃で３日間静置保管し、液の高さに対する粉体相の割合を算出した。
　具体的には、マルエム社製ＰＰ容器Ｎｏ．３（容器容量９ｍｌ）に、前記被膜形成用組成物９ｍｌを充填しており、充填後の液の高さは４５ｍｍである。
　再分散性の悪い粉体相は、経時で沈降し、比較例のように容器底面に凝集沈降するので、見た目の粉体相は０％であるが、易分散性の粉体相は、実施例のように、フロキュレーションを有する粉体相を確認することができる。
（２）保存後の再分散性の評価
　表６～表１１の被膜形成用組成物について、製造後６０℃で３日間静置し、３０秒振とうし（攪拌球入り）、振とう後の底面の沈降物（固形物）の残留性を目視で評価した。
Ａ：沈降物なし。溶液が均一である。
Ｂ：沈降物がほとんどなし。溶液がほとんど均一である。
Ｃ：沈降物がほぐれにくく、壁面や底面に若干残っている。
Ｄ：沈降物が壁面や底面に多量に残っている。
（３）被膜形成用組成物を基板に静電スプレーし、得られた被膜のカバー力（発色性）を評価した。
Ａ：基板の色が隠蔽され、十分に発色している。
Ｂ：基板の色がやや隠蔽され」、発色している。
Ｃ：基板の色があまり隠蔽されず、あまり発色していない。
Ｄ：基板の色がほとんど隠蔽されず、ほとんど発色していない。
（４）被膜形成用組成物を６０℃で１週間静置した後、基板に静電スプレーして塗膜を形成した。その塗膜と製造直後に作成した塗膜との色変化を目視で評価した。
Ａ：製造直後の塗膜とほとんど変化なし。
Ｂ：製造直後の塗膜からわずかに変化するが、問題なし。
Ｃ：製造直後の塗膜から少し色が変化し、仕上がりの違いが気になる。
Ｄ：製造直後の塗膜から大きく色が変化し、仕上がりの違いがかなり気になる。

　静電スプレー工程
　図１に示す構成を有し、図２に示す外観を有する静電スプレー装置１０を用い、樹脂製基板に向けて静電スプレー法を２０秒間行った。静電スプレー法の条件は以下に示すとおりとした。
・印加電圧：１０ｋＶ
・導電性ノズルと基板との距離：１００ｍｍ
・被膜形成用組成物の吐出量：５ｍＬ／ｈ
・環境：２５℃、３０％ＲＨ
　この静電スプレーによって、樹脂製基板の表面に繊維の堆積物からなる多孔性被膜が形成された。被膜は直径約４ｃｍの円であり、質量は約５．５ｍｇであった。上述した方法で測定された繊維の太さは１μｍであった。

［試験例３］
　処方例１の被膜形成用組成物を基板に静電スプレーし、ファイバーシートを製造し、カバー力（発色性）を評価し、良好であった。
　〔処方例１〕
ジメチコン処理酸化チタン
（三好化成社製、ＳＡ処理、石原産業社製、ＣＲ－５０）　　１．８１％
ジメチコン処理黄酸化鉄　　　　　　　　　　　　　　　　　０．２４％
ジメチコン処理赤酸化鉄　　　　　　　　　　　　　　　　　０．１１％
トリエトキシカプリリルシラン処理微粒子酸化チタン
（堺化学工業社製、ＳＴＲ－１００Ｗ－ＯＴＳ）　　　　　　２．０％
クエン酸　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　０．０５％
（製造例）（ポリ（Ｎ－プロピオニルエチレンイミン）変性シリコーン
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　０．７９％
エタノール　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　８３．３％
ポリビニルブチラール
（積水化学工業社製、エスレック　Ｂ　ＢＭ－１）　　　　１１．２％
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
（花王社製、エマノーンＣＨ－６０（Ｋ））　　　　　　　０．５％

１０　　静電スプレー装置
１１　　低電圧電源
１２　　高電圧電源
１３　　補助的電気回路
１４　　マイクロギヤポンプ
１５　　容器
１６　　ノズル
１７　　管路
１８　　フレキシブル管路
１９　　電流制限抵抗
２０　　筐体

Claims

　次の成分（Ａ）、（Ｂ）、（Ｃ）及び（Ｅ）：
（Ａ）粉体、
（Ｂ）カルボキシル基を２個以上有するヒドロキシカルボン酸及び芳香族カルボン酸から選ばれる１種又は２種以上、
（Ｃ）アルコール及びケトンから選ばれる１種又は２種以上の揮発性物質、及び
（Ｅ）繊維形成能を有するポリマー
を含有する粉体分散液を静電スプレーにより皮膚上に繊維を含む堆積物からなる被膜を形成するための被膜形成用組成物。
　前記分散液における成分（Ｂ）に対する成分（Ａ）の質量割合（Ａ／Ｂ）が５以上３００以下である請求１記載の被膜形成用組成物。
　成分（Ｂ）の含有量が０．００１質量％以上１質量％以下であり、成分（Ｃ）の含有量が４５質量％以上９５質量％以下である請求項１又は２記載の被膜形成用組成物。
　さらに成分（Ｄ）少なくともＳＰ値が８．６以上のモノマーユニットであってポリグリセリル構造を含まないモノマーユニットを有するポリマーを含有する請求項１～３のいずれか１項記載の被膜形成用組成物。
　成分（Ｄ）が、アクリルアミド、メタクリルアミド、Ｎ－アシルアルキレンイミン構造、ベタイン構造、ポリエチレン構造及びポリプロピレン構造から選ばれる構造を持つモノマーユニットを有するアクリル系コポリマー、メタクリル系コポリマー、シリコーン系コポリマー及びビニル系コポリマーから選ばれる１種又は２種以上のコポリマーである請求項４記載の被膜形成用組成物。
　成分（Ｄ）の含有量が０．１質量％以上１０質量％以下である請求項４又は５記載の被膜形成用組成物。
　請求項１～６のいずれか１項記載の皮膜形成用組成物を用いて、被膜形成対象物の表面に繊維を含む堆積物からなる被膜を形成する、被膜の製造方法。
　次の成分（Ａ）、（Ｂ）及び（Ｅ２）を含有するファイバーシート。
（Ａ）粉体、
（Ｂ）カルボキシル基を２個以上有するヒドロキシカルボン酸及び芳香族カルボン酸から選ばれる１種又は２種以上、及び
（Ｅ２）繊維を構成するポリマー
　前記シートを構成する繊維の太さが円相当直径で１０ｎｍ以上３０００ｎｍ以下である請求項８記載のファイバーシート。