WO2023188042A1 - ファスナーエレメント、ファスナーストリンガー及びファスナーエレメントの評価方法 - Google Patents

ファスナーエレメント、ファスナーストリンガー及びファスナーエレメントの評価方法 Download PDF

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Abstract

ステンレス合金製のファスナーエレメント11に関する。バレル研磨により単に表面の平滑度を向上させるだけでなく、有機物の付着などによる黒色化の度合いを低減させることで、本来のステンレス合金素材が有する色をもった光沢度の高い外観としたステンレス合金製のファスナーエレメント11が本出願では開示されている。具体的には、ファスナーエレメント11の側面のSEM(Scanning Electron Microscope)画像のBSE(Backscattered Electron)像において観察される有機物の黒点のうち、ファスナーエレメント11の頭部23又は中間部25において観察される、長さが所定値以上の大きさを有する有機物の黒点の数によって、ファスナーエレメントの光沢度合いを評価し、その評価をもとに適切なバレル研磨条件で製造されたファスナーエレメントが本発明により提示される。

Description

ファスナーエレメント、ファスナーストリンガー及びファスナーエレメントの評価方法
 本発明は、ステンレス合金製のスライドファスナーエレメントと、そのファスナーエレメントをファスナーテープに取り付けたファスナーストリンガー、及びファスナーエレメントの評価方法とその評価方法に基づいた適切なバレル研磨条件の設計方法に関するものである。
 従来から、スライドファスナー用の金属製ファスナーエレメントをバレル研磨装置で研磨することは、例えば、特許文献1に記載されているように公知の技術である。特許文献1には、ファスナーエレメントをバレル研磨することに関しての具体的な説明は記載されてはいないが、バレル研磨自体は広く周知の技術であり、バレル研磨に使用する研磨メディアも、既に、一般技術として広く知られているとおり、材料としては、セラミックメディア、プラスチックメディア、金属メディア、植物系メディアなどがある。これら研磨メディアのなかでも、比較的に研削力の高いセラミックメディアは特に広く使用されているところである。
 ここで、金属製のスライドファスナーに使用される金属材料としては、特許文献1にも記載のような、銅合金、ニッケル合金、アルミニウム合金などがあり、これら銅合金、ニッケル合金、アルミニウム合金のスライドファスナーは既に実用化されているが、そのなかでも、銅亜鉛合金はスライドファスナーのエレメントのような微細な凹凸形状への加工の作業性の点やスライドファスナーに必要な強度を維持する点で優れた材料であるため、最も広く使用されている材料である。
 従来、銅亜鉛合金製のスライドファスナーの金属エレメントをバレル研磨する場合には、セラミックメディアを研磨メディアとして使用し、液体コンパウンドを混入させて湿式研磨条件において、回転バレル研磨機で研磨していた。セラミックメディアが他のメディアに比較して研削力が強いとされており、また、セラミックメディアは長時間使用下における耐久性も比較的高く、その種類も豊富であるなどの理由もあり、研磨時間の短縮化や作業性の面などからセラミックメディアを使うことが好ましいと考えられており、あえてプラスチックメディアや金属メディア、植物系メディアを使う必要までもない状況であった。
 近年になり、従来から実用化されていた銅合金、ニッケル合金、アルミニウム合金によるスライドファスナーに加え、ステンレス合金材料を使用したスライドファスナーに対する市場ニーズが高まってきている。ステンレス合金材料は、銅亜鉛合金などに比べて硬い材料であるため、ステンレス合金を微細な凹凸を有するスライドファスナーエレメントの形状に加工することが難しいことや、加工のための部品の耐久性の面などの理由からスライドファスナー製品としては実用化されにくい材料とされていた。そのため、これまでは、銅亜鉛合金製のスライドファスナーが主流になっており、ステンレス合金製のスライドファスナーは汎用品レベルとしては実用化されてきていなかった。しかしながら、近年になり、特に高級品を扱う鞄分野やアパレル分野などから、より高級感のあるステンレス合金を使ったステンレス合金製のスライドファスナーへの要望が高まってきている。
国際出願公開2010-089854号公報
 ステンレス合金をファスナーエレメントの材料として使った場合にも、その表面の平滑性を向上させるためにバレル研磨工程を使うことは有効である。この場合、ステンレス合金が銅亜鉛合金に比べて硬い材質であることから、従来の銅亜鉛合金製のファスナーエレメントに行っていたのと同じように、研磨時間などの短縮化や作業性の面から総合的に優位性のあるセラミックメディアを研磨メディアとして使用して研磨を行うことが、最初に考えられる常套手段となる。実際に、セラミックメディアの種類や液体コンパウンドの条件を適宜調整することで、エレメントの表面を所望の程度の平滑面に研磨することは可能である。
 しかしながら、この場合には、研磨後のファスナーエレメントの状態が、所望の程度の平滑面にはなるものの、本来のステンレス合金材料が有する光沢度合いよりも若干ながら黒みがかった外観になってしまう現象が生じる。ファスナーを使用する顧客によっては、ステンレス合金材料がもともと有するような白色系に近い色を好む場合もある。そのため、このファスナーエレメントのバレル研磨後の黒みをより少なくすることが要望されるようになってきている。そこで開発者は、ステンレス合金製のファスナーエレメントのバレル研磨後に生じる特有の黒みの原因を調べるべく、以下のような分析を行った。
 図5から図7は、ステンレス合金製のファスナーエレメントに、研磨メディアとしてセラミックメディアを使い、液体コンパウンドを混入させて回転バレル研磨を行った後のファスナーエレメントの一例のSEM(Scanning Electron Microscope)画像のBSE像であり、図8から図10は、図5から図7のファスナーエレメントと同様な研磨処理を行った別のファスナーエレメントの例である。なお、ここでいうBSE像とは後方散乱電子(Backscattered Electron)を利用した撮影によって得られる画像である。図5から図10のファスナーエレメントは、フェライト系のステンレス合金を材料に使ったファスナーエレメントである。SEM画像(BSE像)における黒く写っているところは、有機物が付着している部分である。実際に肉眼で目視した場合には、SEM画像(BSE像)のようにはっきりと黒く見えるわけではなく、その周辺全体が黒っぽくくすんで光沢が無いように見えるにすぎないが、BSE像にすることではっきりと黒く見えるようになる。この画像分析により、本来はステンレス合金材料表面に存在しないような有機物が多く付着していることが原因で、全体的に黒みがかった色合いとなっていることが分かった。
 このような現象は銅亜鉛合金製のファスナーエレメントをバレル研磨していたときには生じていなかったものであることなどから、ステンレス合金製のファスナーエレメントに限って有機物が多く付着する理由のひとつとしては、ステンレス合金が磁性を帯びやすい(あるいは最初から磁性を帯びている)ということが理由として考えられる。つまり、バレル研磨の経過時間とともにファスナーエレメントと研磨屑の両方が磁性をおびてしまい、研磨屑がステンレス合金務歯に付着しやすくなり、それに伴って有機物などがファスナーエレメントの表面に付着して、全体的に黒色化しているものと考えられる。ステンレス合金は磁性を帯びやすく、なかでもフェライト系のステンレス合金にはもともと磁性があることから、その不具合が顕著であると考えられる。
 本発明は、本発明の発明者が発見した上記の不具合を解決することを目的とするものであり、具体的には、ステンレス合金製のスライドファスナーエレメントに対して、研磨により単に表面の平滑度を向上させるだけでなく、有機物の付着などによる黒色化の度合いを低減させることで、本来のステンレス合金素材が有する光沢度の高い外観を有するスライドファスナーエレメントを提供することを目的とするものである。更に、有機物を数として計測し、付着度を評価対象とすることで新たな光沢度を示す評価方法を確立することを目的とするものである。更にはその評価方法に基づいた適切なバレル研磨条件の設計方法を提供することを目的とするものである。
上記目的を達成するために、本発明におけるファスナーエレメントは、ステンレス合金製のファスナーエレメントであって、前記ファスナーエレメントは、バレル研磨で研磨処理された後のステンレス合金製のファスナーエレメントであり、前記ファスナーエレメントは、一方側に噛合凸部を有する頭部を備え、他方側には一対の脚部を備え、前記頭部と前記脚部のあいだには中間部を備えており、前記ファスナーエレメントを側面から見た場合における、前記ファスナーエレメントの左右方向の前記頭部の側の端部を通る上下方向の直線を直線L11とし、前記ファスナーエレメントの前記頭部と前記中間部の境界を区画する上下方向の直線を直線L12とし、前記ファスナーエレメントの前記中間部と前記脚部の境界を区画する上下方向の直線を直線L13とし、前記ファスナーエレメントの前記中間部の上下方向の上側の端部を通る左右方向の直線を直線L21とし、前記ファスナーエレメントの前記中間部の上下方向の下側の端部を通る左右方向の直線を直線L23とし、前記直線L21と直線L23の中間位置に相当する左右方向の直線を直線L22とし、前記直線L11、前記直線L12、前記直線L21、前記直線L22で囲まれた長方形領域を頭部側面上半部領域と定義し、また前記直線L12、前記直線L13、前記直線L21、前記直線L22で囲まれた長方形領域を中間部側面上半部領域と定義した場合に、前記ファスナーエレメントの側面のSEM(Scanning Electron Microscope)画像のBSE(Backscattered Electron)像において観察される有機物の黒点のうち、長さが10μm以上の部分を有する有機物の黒点の数が、前記頭部側面上半部領域において9未満であること、または、前記中間部側面上半部領域において9未満であることを特徴とするものである。
 また、本発明におけるファスナーエレメントとしては、ファスナーエレメントの側面のSEM(Scanning Electron Microscope)画像のBSE(Backscattered Electron)像において観察される有機物の黒点のうち、長さが10μm以上の部分を有する有機物の黒点の数が、頭部側面上半部領域において5以下であること、または、前記中間部側面上半部領域において5以下であることが好ましい。
 さらに、本発明におけるファスナーエレメントとしては、ファスナーエレメントの側面のSEM(Scanning Electron Microscope)画像のBSE(Backscattered Electron)像において観察される有機物の黒点のうち、長さが10μm以上の部分を有する有機物の黒点の数が、頭部側面上半部領域及び中間部側面上半部領域において合計5以下であることが好ましい。
 また、本発明の実施形態としては、ファスナーエレメントをファスナーテープに取り付けたファスナーストリンガーが含まれる。
 また、本発明における別の実施形態のファスナーストリンガーは、ステンレス合金製のファスナーエレメントをファスナーテープに取り付けたファスナーストリンガーであって、前記ファスナーエレメントは、バレル研磨で研磨処理された後のステンレス合金製のファスナーエレメントであり、前記ファスナーストリンガーのファスナーエレメントを任意に10個抽出して計測した明度L値の平均値が68以上であることを特徴とするものである。
また、本発明における別の実施形態であるファスナーエレメントの評価方法は、ステンレス合金製のファスナーエレメントの光沢度合いを評価するファスナーエレメントの評価方法であって、前記ファスナーエレメントは、バレル研磨で研磨処理された後のステンレス合金製のファスナーエレメントであり、前記ファスナーエレメントは、一方側に噛合凸部を有する頭部を備え、他方側には一対の脚部を備え、前記頭部と前記脚部のあいだには中間部を備えており、前記ファスナーエレメントの側面のSEM(Scanning Electron Microscope)画像のBSE(Backscattered Electron)像において観察される有機物の黒点のうち、頭部又は中間部における長さが所定値以上の大きさを有する有機物の黒点の数によって、ファスナーエレメントの光沢度合いを評価することを特徴とするものである。
 さらに、このファスナーエレメントの評価方法を応用した実施形態として、上記したステンレス合金製のファスナーエレメントの光沢度合いを評価する評価方法により適切なバレル研磨条件を求めることを特徴とするバレル研磨条件の設計方法がある。
 本発明によれば、ステンレス合金製のスライドファスナーエレメントに対して、研磨により単に表面の平滑度を向上させるだけでなく、有機物の付着などによる黒色化の度合いを低減させることで、本来のステンレス合金素材が有する色をもった光沢度の高い外観とすることができる。
本発明の実施形態のスライドファスナーを示す平面図である。 図1のスライドファスナーのエレメント列の一部を拡大した図であり、斜線部でハッチングしたところは部分断面図で表示した図である。 図2に示すファスナーエレメントの一つをスライドファスナーの上側からみた場合の様子を表す図であり、ファスナーテープの部分は断面で表している図である。 図2に示すファスナーエレメントをスライドファスナーの下側からみた場合の様子を表す図であり、ファスナーテープの部分は断面で表している図である。 比較例1のファスナーエレメントのSEM画像(観察倍率は30倍、観察視野は3mm×4.2mm)である。 図5のファスナーエレメントの中間部近辺を拡大したSEM画像(観察倍率は75倍、観察視野は1.2mm×1.7mm)である。 図5のファスナーエレメントの頭部近辺を拡大したSEM画像(観察倍率は75倍、観察視野は1.2mm×1.7mm)である。 比較例2のファスナーエレメントのSEM画像(観察倍率は30倍、観察視野は3mm×4.2mm)である。 図8のファスナーエレメントの中間部近辺を拡大したSEM画像(観察倍率は75倍、観察視野は1.2mm×1.7mm)である。 図8のファスナーエレメントの頭部近辺を拡大したSEM画像(観察倍率は75倍、観察視野は1.2mm×1.5mm)である。 実施例1のファスナーエレメントのSEM画像(観察倍率は30倍、観察視野は3mm×4.2mm)である。 図11のファスナーエレメントの中間部近辺を拡大したSEM画像(観察倍率は75倍、観察視野は1.2mm×1.7mm)である。 図11のファスナーエレメントの頭部近辺を拡大したSEM画像(観察倍率は75倍、観察視野は1.2mm×1.7mm)である。 実施例2のファスナーエレメントのSEM画像(観察倍率は30倍、観察視野は3mm×4.2mm)である。 図14のファスナーエレメントの中間部近辺を拡大したSEM画像(観察倍率は75倍、観察視野は1.2mm×1.7mm)である。 図14のファスナーエレメントの頭部近辺を拡大したSEM画像(観察倍率は75倍、観察視野は1.2mm×1.7mm)である。 「頭部側面上半部領域60」と「中間部側面上半部領域61」の定義を説明する図である。 比較例1について、「頭部側面上半部領域60」と「中間部側面上半部領域61」における有機物の黒点の数の計数の要領を説明する図である。 比較例2について、「頭部側面上半部領域60」と「中間部側面上半部領域61」における有機物の黒点の数の計数の要領を説明する図である。 実施例1について、「頭部側面上半部領域60」と「中間部側面上半部領域61」における有機物の黒点の数の計数の要領を説明する図である。 実施例2について、「頭部側面上半部領域60」と「中間部側面上半部領域61」における有機物の黒点の数の計数の要領を説明する図である。 「長さが10μm以上の部分を有する有機物の黒点」の測り方を説明する図である。
 以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に何ら限定されるものではなく、各実施形態の特徴を組み合わせたり、組み替えたりすることも本発明の範囲として想定されるべきものであるし、各実施形態の一部分をそれと実質的に同一な構成を有するものへ置き換えることも本発明の範囲として想定されるべきものである。
 図1は、本発明の実施形態のスライドファスナー1を示す平面図である。スライドファスナー1は、左右のファスナーストリンガー2、3を有し、左右のファスナーストリンガー2、3は、それぞれは、ファスナーテープ4、5とファスナーテープ4、5に取り付けられたファスナーエレメント11を有する。ファスナーエレメント11はファスナーテープ4、5の側縁部12、13に取り付けられている。スライダー6がファスナーエレメント11の列にそって前進及び後進することで、左右のファスナーストリンガー2、3の開閉が行われる。スライダー6には、スライダー6を操作するための引手7が設けられている。各ファスナーテープ4、5にはファスナーエレメント11の最上端に隣接して上止め14、15が設けられ、ファスナーエレメント11の上端側からスライダー6が抜けてしまわないようになっている。また、ファスナーエレメント11の列の下端側には下止め16が設けられており、ファスナーエレメント11の下端側からスライダー6が抜けてしまわないようになっている。なお、この図1のスライドファスナーは、下止め16を使った止めタイプのスライドファスナーの完成品であるが、本発明におけるファスナーエレメント11が使用されるスライドファスナーは、この止めタイプのスライドファスナーの完成品に限るものではない。例えば、左右のファスナーストリンガー2、3を左右に分離可能になるような開具を下止め16に代えて備えるようにした、開きタイプのスライドファスナーの完成品などにも、本発明におけるファスナーエレメント11は使用されるものである。
 なお、本出願の明細書の説明において、上方向は、ファスナーストリンガー2、3を閉じるようにスライダー6を動かす方向と定義し、下方向は、ファスナーストリンガー2、3を開けるようにスライダー6を動かす方向と定義する。また、左右方向は、、ファスナーストリンガー2、3を閉じた状態においてファスナーテープ4、5を平面状に広げることで形成される平面内において前記上下方向と直交する方向と定義する。つまり、図1の平面図で示されるスライドファスナー1を閉じた状態において、前記上下方向とは直交する方向が左右方向である。また、表裏方向は、前記で定義した上下方向及び左右方向に直交する方向と定義する。つまり、図1の状態において、図1の紙面と直交する方向が表裏方向であり、図1は表側から裏側に向かってファスナーストリンガー2、3を見ている図となる。
 ファスナーテープ4、5は織物または編物のような柔軟な布地であり、上下方向に長尺で左右方向に短尺である。ファスナーテープ4、5は表裏方向に一定の厚みを有するものであり、その左右方向の一方の側縁部12、13にファスナーエレメント11が取り付けられる。この側縁部12、13は、テープの主体部の一定の厚みよりも太く構成することが好ましく、この太い部分を芯紐とよぶ。側縁部12、13を適切な太さの芯紐とすることで、ファスナーエレメント11をより強固に取り付けることができる。
 図2は、図1のスライドファスナー1のエレメント列の一部を拡大した図であり、ファスナーエレメント11の具体的な形状が理解しやすいように、斜線部でハッチングしたところを部分断面図で表示した図である。当該断面部分には、ファスナーエレメント11の噛合凸部21が、隣接するファスナーエレメント11の噛合凹部22に入り込んで、ファスナーエレメント11どうしが連続的に噛み合っている状態が表されている。なお、本出願においてファスナーストリンガーとは、図1に示された止めタイプのスライドファスナー1の完成品に使われているファスナーストリンガー2またはファスナーストリンガー3のみを意味する用語ではなく、図2に示されたようなファスナーテープにファスナーエレメント11が連続的に取り付けられただけの状態の長尺状の部材(言い換えれば、図1のスライドファスナーの完成品に仕上げられる前の、ファスナーテープとファスナーエレメントだけから構成される部品)のことも含むように意味する用語である。なお、先に定義した上下方向、左右方向表裏方向については、図2のようにファスナーストリンガー2、3を閉じた状態におけるファスナーエレメント11を単独で見た場合の方向の定義としても使用する。つまり、図2のファスナーエレメント11は左右方向と上下方向の2つの方向がなす平面におけるファスナーエレメント11の平面図であり、その一部を断面で表した部分断面図でもある。また、図2のファスナーエレメント11はファスナーエレメント11を表面側から見た図でもある。なお、本明細書においては、図2のようにファスナーエレメント11を表面側または裏面側から見た場合のファスナーエレメント11の表面のことをファスナーエレメント11の側面ということもあり、ファスナーエレメント11の左右方向のことをファスナーエレメント11の長さ方向ということもあり、ファスナーエレメント11の上下方向のことをファスナーエレメント11の厚み方向ということもある。
 図3は、図2に示すファスナーエレメント11の一つをスライドファスナー1の上側からみた場合の様子を表す図であり、ファスナーテープ5の部分は断面で表している。ファスナーエレメント11は、一方側が噛合凸部21を備えた頭部23となっており、その頭部23と反対の側には一対の脚部24が延びている。噛合凸部21は、その凸部の頂点を含む面となる頂面部21-1と、頂面部21-1の周囲を囲む凸部傾斜面21-2を有する。なお、説明の便宜上、ファスナーエレメント11を頭部23と脚部24と中間部25の3か所に区分して説明する。図3において、点線L1は、ファスナーエレメント11の左右方向の一方側の端部(頭部側の端部、左端部)を通る表裏方向の直線であり、点線L4は、ファスナーエレメント11の左右方向の他方側の端部(脚部側の端部、右端部)を通る表裏方向の直線である。点線L2は、ファスナーエレメント11の噛合凸部21の脚部側の端部(右端部)を通る表裏方向の直線である。点線L3は、ファスナーテープ5の側縁部13の頭部側の端部(左端部)を通る表裏方向の直線である。言い換えれば、点線L3は、一対の脚部が分岐される分岐点を通る表裏方向の直線である。点線L1を含む上下方向の平面と点線L2を含む上下方向の平面のあいだで区画される部分がファスナーエレメント11の頭部23であり、点線L2を含む上下方向の平面と点線L3を含む上下方向の平面のあいだで区画される部分がファスナーエレメント11の中間部25であり、点線L3を含む上下方向の平面と点線L4を含む上下方向の平面のあいだで区画される部分がファスナーエレメント11の脚部24である。脚部24は一対の部材からなりこの一対の脚部24をファスナーテープ5の側縁部13に加締めることで、ファスナーエレメント11はファスナーテープ5に固定される。なお、上記の説明における「端部」とは、図3ではファスナーエレメント11の外形形状の線の大部分を直線で簡略化して記載しているため、線分が端部のように表されているが、実物の写真の場合にはファスナーエレメント11の外形形状は曲線となっていることもあり、そのような場合にはファスナーエレメント11の外形形状を区画する曲線の最も端部となる点の位置を意味する。
 図4は、図2に示すファスナーエレメントをスライドファスナーの下側からみた場合の様子を表す図であり、ファスナーテープの部分は断面で表している図である。ファスナーエレメント11は一方側に噛合凹部22を備えており、他方側には一対の脚部24が延びている。噛合凹部22は、噛合凸部とは上下方向において反対側の位置に形成されており、その凹部の底面となる底面部22-1と、底面部22-1の周囲を囲む凹部傾斜面22-2を有する。なお、図4においては、図3に示した点線L1から点線L4は省略されているが、頭部23、脚部24、中間部25の定義は図3での説明したとおりである。
 本発明におけるスライドファスナー1のファスナーエレメント11は、その材質がステンレス合金材から構成されている。ステンレス合金材としては、例えば、フェライト系のステンレス合金材であるSUS430が一例として挙げられるが、これに限るものではない。一例の組成を具体的に説明すると、鉄に一定量以上のクロムを含ませたステンレス鋼であり、ステンレス鋼の種類としてはクロムを16.0~18.0%含有するフェライト系ステンレスである。また、フェライト系以外のステンレス合金材の一例としては、ニッケルが8.0~10.50%とクロムが18.0~20.0%含有されたオーステナイト系ステンレスがある。
 本発明におけるスライドファスナー1のファスナーエレメント11は、金属材料の切断とプレス加工によって製造される。そして、本発明におけるファスナーエレメント11は、プレス加工によって噛合凸部21と噛合凹部22を有する形状にした段階の後であり、ファスナーテープ5に取り付ける段階の前の時点において、バレル研磨装置によって研磨される。この研磨工程において、バレル研磨装置は、一般に汎用されている回転式のバレル研磨装置が使用される。
 この研磨工程に関して、はじめに、本発明の実施形態との比較対象となる、従来の銅亜鉛合金製のスライドファスナーエレメントにバレル研磨を行った場合について説明する。これを本明細書では比較例とよぶ。
 この比較例の製造方法を説明する。クロムを16.0~18.0%含有するフェライト系ステンレス合金材を原材料として、プレス加工によって噛合凸部21と噛合凹部22を有する形状とされたファスナーエレメント11は、まずは、研磨工程の前段階として、脱脂工程にかけられる。脱脂工程では、ファスナーエレメント11をセラミック系の研磨メディア、水、脱脂剤等とともにバレルに入れて攪拌した後、水洗する。水洗の後のバレルには、続く研磨工程のために水と液体コンパウンド等が投入されてから、バレルを攪拌して研磨工程が行われる。液体コンパウンドとしては、例えば、中央化学株式会社製の金属表面処理剤Gildaonシリーズや、新東工業株式会社製のバレル用研磨材コンパウンドなどの市販品のものから適宜選択して使用できる。研磨工程を終了した後のファスナーエレメント11は水洗により洗浄され、その後、酸洗い処理をした後に、乾燥させることで、ファスナーテープに加締め固定する前の状態となる。
 この比較例で研磨処理されたファスナーエレメントをSEM画像(BSE像)として撮影したものが、図5から図10である。図5から図7は、その一例のSEM(Scanning Electron Microscope)画像のBSE像であり、本明細書において比較例1とよぶ。図8から図10は、その別の一例であり、本明細書において比較例2とよぶ。図5は比較例1のエレメントの側面のSEM画像であり、図6は図5のファスナーエレメントの画像の中間部近辺を拡大したSEM画像であり、図7は図5のファスナーエレメントの画像の頭部近辺を拡大したSEM画像である。同様に、図8は比較例2のエレメントの側面のSEM画像であり、図9は図8のファスナーエレメントの画像の中間部近辺を拡大したSEM画像であり、図10は図9のファスナーエレメントの画像の頭部近辺を拡大したSEM画像である。SEM画像(BSE像)における黒く写っているところは、有機物が付着している部分である。実際に肉眼で目視した場合には、SEM画像(BSE像)のようにはっきりと黒く見えるわけではなく、その周辺が黒っぽくくすんで光沢が無いように見えるにすぎないが、BSE像にすることではっきりと黒く見えるようになる。この画像分析により、本来はステンレス合金材料表面に存在しないような有機物が多く付着していることが原因で、全体的に黒みがかった色合いとなっていることが分かった。
 このような現象は銅亜鉛合金製のファスナーエレメントをバレル研磨していたときには生じていなかったものである。ステンレス合金製のファスナーエレメントに限って有機物が多く付着する理由のひとつとしては、ステンレス合金が磁性を帯びやすい(あるいは最初から磁性を帯びている)ということが理由として考えられる。つまり、バレル研磨の経過時間とともにファスナーエレメントと研磨屑が磁性をおびてしまい、研磨屑がステンレス合金のファスナーエレメントに引き付けられやすくなり、その際に一緒に研磨屑の有機物がファスナーエレメントに付着し、ファスナーエレメントの表面が黒色化しているものと考えられる。ステンレス合金は磁性を帯びやすく、なかでもフェライト系ステンレス合金にはもともと磁性があることから、その不具合が顕著であると考えられる。
 そのような技術的な推察のもとで、このような有機物の付着を抑えるには、原因となる研磨屑の発生を低下させることと、発生した研磨屑をファスナーエレメント11に付着する前に取り除くという2つの対策を取ることが有効と考えられる。研磨メディアは研磨剤とそれらをつなぐバインダーの成分とを焼結してつくられる。本発明における研磨メディアは、その材質をプラスチック製とすること、また、これと同時に、汚れの吸着性が特に優れたコンパウンドを使用することで、発生した研磨屑がファスナーエレメントに付着するのを最小限にとどめている。プラスチックメディアは一般に超硬金属の研磨から軟質金属の表面の平滑仕上げまで、幅広く利用されているが、本発明におけるステンレス合金製のファスナーエレメント11の研磨においても、研磨加工と表面の平滑仕上の両方に優れたプラスチックメディアを使用することで目的の外観を得ている。コンパウンドは、液中の研磨屑を吸着することで、効率の良い研磨状態を維持しながら研磨屑がファスナーエレメント11に付着するのを最小限にとどめる働きがある。研磨屑を吸着させるための粉体コンパウンドとしては、例えば、木村石鹸工業株式会社製の洗浄用コンパウンド(エコフレンド粉末コンパウンド)や、東邦鋼機株式会社製の洗浄用コンパウンド(クリマックスコンパウンド)があるが、これに限らず研磨屑を吸着する機能を有する粉体コンパウンドの利用が可能である。また、上記の本発明のステンレス製のファスナーエレメント11は、比較例で行っていたような研磨工程の後の酸洗い工程を加えることなく、製造できたものである。酸洗い工程は、酸性の薬品を使用するため環境負荷があり、この工程を省略しても十分な光沢が得られることは環境保護の面から優れているともいえる。
 図11から図13は、本発明におけるファスナーエレメント11をSEM画像(BSE像)として撮影したものであり、本明細書において実施例1とよぶ。図14から図16は、本発明のおけるファスナーエレメント11の別の例をSEM画像(BSE像)として撮影したものであり、本明細書において実施例2とよぶ。この実施例1、実施例2のファスナーエレメント11も、フェライト系ステンレス合金を材料に使ったファスナーエレメント11である。図11は実施例1のエレメントの側面のSEM画像であり、図12は実施例1のファスナーエレメント11の中間部近辺を拡大したSEM画像であり、図13は実施例1のファスナーエレメント11の頭部近辺を拡大したSEM画像である。同様に、図14は実施例2のファスナーエレメント11の側面のSEM画像であり、図15は実施例2のファスナーエレメント11の中間部近辺を拡大したSEM画像であり、図16は実施例2のファスナーエレメント11の画像の頭部近辺を拡大したSEM画像である。なお、図15において「テープ」と矢印で記載されている黒い部分があるが、これはファスナーテープの糸の一部がファスナーエレメント11にかかってしまって映り込んでしまったものであるため、研磨屑による有機物の付着ではないことを説明するために記載したものである。
 この実施例1、実施例2のSEM画像を、図5から図10に示していた比較例1、比較例2のSEM画像と比較すると、実施例1、実施例2のSEM画像における黒色の部分が大幅に少ないことが分かる。黒色の部分の量の多さを客観的に数値的に表現するべく、図17において「頭部側面上半部領域60」と「中間部側面上半部領域61」という領域を定義し、それらの領域において、長さが10μm以上の部分を有する有機物の黒点の観察数の数での比較を行う。ここで、「長さ」とは、SEM画像で観察された黒点の黒い部分を任意の方向に途切れることない線分として計測した場合に計測できる長さのことである。参考のため、図22に「長さ」が10μm以上かどうかの測り方の例を示す。図22において、矢印70を10μmの長さの線分とする。付番71で示す黒枠線は、有機物の黒点例71の外縁線とする。付番72で示す黒枠線は、有機物の黒点例72の外縁線とする。有機物の黒点例71においては、線分70が途切れることなく外縁線の内部で計測可能である。一方、有機物の黒点例72の場合は、線分70が外縁線の内部で計測可能できずに途中で途切れてしまう。そのため、有機物の黒点例72は、本明細書で定義している「長さが10μm以上の部分を有する有機物の黒点」ではない。
 図17は、その「頭部側面上半部領域60」と「中間部側面上半部領域61」の定義を説明するための図である。図17で点線L11、点線L12、点線L21、点線L22で囲まれた長方形領域を「頭部側面上半部領域60」と定義する。また、図17で点線L12、点線L13、点線L21、点線L22で囲まれた長方形領域を「中間部側面上半部領域61」と定義する。
ここで、点線L11はファスナーエレメントを側面から見た場合(表面側から見た場合)における、ファスナーエレメント11の左右方向の一方側の端部(左端部)を通る上下方向の直線である。点線L12はファスナーエレメントを側面から見た場合における、噛合凸部21の脚部側の端部(噛合凸部21の右側の端部)を通る上下方向の直線である。言い換えれば、点線L11と点線L12は、図3の線図で定義したファスナーエレメント11の頭部23を区画する線である点線L1と点線L2と左右方向の位置がそれぞれ一致する直線である。そして、点線L13は、図3の線図で定義したファスナーエレメント11の中間部25と脚部24の境界を区画する線である点線L3と左右方向の位置が一致する直線である。そして、点線L21はファスナーエレメントを側面から見た場合における、中間部25の上下方向の上側の端部を通る左右方向の直線である。点線L23はファスナーエレメントを側面から見た場合における、中間部25の上下方向の下側の端部を通る左右方向の直線である。点線L22はファスナーエレメントを側面から見た場合における、点線L21と点線L23の中間位置に相当する直線である(言いかえれば、中間部25の上下方向の厚みの中間位置における左右方向の直線である。)。なお、上記の説明における「端部」とは、図17ではファスナーエレメントの外形形状の線を直線で簡略化して記載しているため、線分が端部のようになっているが、実物の写真の場合にはファスナーエレメント11の外形形状は曲線となっていることもあり、そのような場合にはファスナーエレメント11の外形形状を区画する曲線の最も端部となる点の位置を意味する。図17では、「頭部側面上半部領域60」と「中間部側面上半部領域61」の長方形の外周線を太い点線でそれぞれ強調して表示している。
 次に、「頭部側面上半部領域60」と「中間部側面上半部領域61」において、長さが10μm以上の大きさを有する有機物の黒点の観察数を計数するの例を説明する。
 図18は、比較例1について、「頭部側面上半部領域60」と「中間部側面上半部領域61」における有機物の黒点の数の計数の要領を説明する図である。わかりやすいように2つのSEM画像を並べており、図18の左側の画像が図6であり、右側の画像が図7である。このSEM画像の観察倍率は75倍、観察視野は1.2mm×1.7mmであり、各画像の右下に500μmを10目盛りに区分する線が表示されている。この図18において、「頭部側面上半部領域60」と「中間部側面上半部領域61」はおおむね長方形の点線の部分に相当する(ただし、「頭部側面上半部領域60」と「中間部側面上半部領域61」は、ファスナーエレメント11の周りの黒い部分で線が見えにくくならないように、実際よりも若干小さめに表示している。)。「頭部側面上半部領域60」と「中間部側面上半部領域61」の各部分において、長さが10μm以上の部分を有する有機物の黒点として明確に識別できるものに丸印をつけている。
 図18の左側のSEM画像では、「中間部側面上半部領域61」に少なくとも11個の丸印をつけることができる。ここで、少なくとも11個とは、本願明細書において、特許公開公報等に掲載できる図面の作成条件に制約があることにより、解像度の高い鮮明な画像での説明ができないため、その範囲で説明のために分かりやすく数えたものが少なくとも11個という意味であり、実際に存在するファスナーエレメントについて本発明との比較を行うような場合には、より高画質な画像で比較されるべきであることはいうまでもない。本願の図面は白黒画像であるため、ファスナーエレメント11の加工の際などに生じたファスナーエレメント11の表面の加工痕や傷など影が黒くなって表示されてしまう場合もあるが、そのような加工の痕跡や傷の影の黒い部分であるかどうかは、より高画質な画像で観察すれば目視でも識別することが容易であり、本願の説明においてはそのような加工痕や傷の影の黒部には丸印をつけないように十分に注意している。また、図18の丸印のなかには、一つの丸の中にいくつかの黒点が重なりあって連続的な直線状の黒色部となっているように見えるところもあるが、そのようなものを2つ以上に区分せずに1つの黒点として数えた場合であっても、図18の左側のSEM画像の「中間部側面上半部領域61」には少なくとも11個の丸印をつけることができるということも強調して説明しておく。一方、図18の右側のSEM画像からは、「頭部側面上半部領域60」に少なくとも12個の丸印をつけることができる。少なくとも12個という意味は、上記「中間部側面上半部領域61」での計数のときに説明したのと同じ意味で解釈されるべきである。
 図19は、比較例2について、「頭部側面上半部領域60」と「中間部側面上半部領域61」における有機物の黒点の数の計数の要領を説明する図である。図19の左側の画像が図9であり、右側の画像が図10である。丸印のつけ方と数え方の要領は図18で説明したことと同じである。
 図19の左側のSEM画像では、「中間部側面上半部領域61」に少なくとも9個の丸印をつけることができる。一方、図19の右側のSEM画像からは、「頭部側面上半部領域60」に少なくとも18個の丸印をつけることができる。
続いて、実施例1と実施例2についても同様にSEM画像の分析を行う。
図20は、実施例1について、「頭部側面上半部領域60」と「中間部側面上半部領域61」における有機物の黒点の数の計数の要領を説明する図である。図20の左側の画像が図12であり、右側の画像が図13である。丸印のつけ方と数え方の要領は図18で説明したことと同じである。
 図20の左側のSEM画像では、「中間部側面上半部領域61」に1個の丸印をつけることができる。一方、図20の右側のSEM画像からは、「頭部側面上半部領域60」には丸印をつけるべき黒点は観察されなかった。なお、、図20の右側のSEM画像には若干黒い部分があるが、これは、ファスナーエレメント11の表面の加工痕や傷の影が黒くなって表示されているものである(特許公開公報等に掲載できる図面の作成条件の制約で本出願には添付することができなかったより高画質の図面で確認)。
図21は、実施例2について、「頭部側面上半部領域60」と「中間部側面上半部領域61」における有機物の黒点の数の計数の要領を説明する図である。図21の左側の画像が図15であり、右側の画像が図16である。丸印のつけ方と数え方の要領は図18で説明したことと同じである。
 図21の左側のSEM画像を参考にしつつ、図21の左側のSEM画像を確認すると、実施例2においては「中間部側面上半部領域61」に5個の丸印をつけることができる。また、図21の右側のSEM画像からは、「頭部側面上半部領域60」には丸印をつけるべき黒点は観察されなかった。
これら、本発明の実施例のファスナーエレメント11は、比較例のファスナーエレメントと比べた場合、目視においても、その光具合が白色具合の違いが判るものであるが、より客観的な指標で説明すべく、色差を測定してみた。ここで色差測定とは、JIS規格におけるJIS Z8781-4であり、明度L*値、赤みa*値、青みb*値を基本量として計測するものである。本願の試験においては池上通信機(株)製のRTC-21 ILOREAL Real True Color XYZカメラを使用して色差測定を行った。
結果は、実施例のサンプルの色差を10回計測してみたところ、その明度L値の計測結果の平均値は70.971であった。なお、実施例のサンプルの明度L値の10回の計測値は、70.8946、70.8657、71.1024、71.2827、70.9779、70.8181、71.0721、70.5552、71.3319、70.812であった。この10回計測は、1本のファスナーチェーンから異なる10個のエレメントを抽出して、その側面を計測したものである。なお、赤みa*値、青みb*値の計測値は本発明の光沢度の比較と直接的に関係性が見られなかったため、本明細書の記載は省略する。一方、比較例のサンプルの色差を10回計測してみたところ、その明度L値の計測結果の平均値は67.360であった。なお、比較例のサンプルの明度L値の10回の計測値は68.3598、68.5746、67.5335、67.4546、67.9951、66.8156、67.2344、65.2125、67.1513、67.2675であった。この10回計測は、1本のファスナーチェーンから異なる10個のエレメントを抽出して、その側面を計測したものである。測定回数は10回に限らず、10回以上であれば概ね比較可能な平均値が得られる。
 このように、本発明の発明者によって、ステンレス合金製のファスナーエレメント11の研磨時に研磨屑がファスナーエレメントの表面に付着する度合いを低減させることにより、明度が高いステンレス合金製のファスナーエレメント11を提供できることがわかった。比較例の明度L値の平均値は68を下回り、10回の個別の計測結果も大多数が68を下回る結果である一方、本発明の実施例の明度L値の平均値は68を上回る結果であることから、本発明のように有機物の黒点の量を減らすことで、明度の平均値が68以上のステンレス合金製のファスナーエレメント11を得ることができることが明らかになった。また、上記計測結果によれば、より好ましい光沢性を有するステンレス合金製のファスナーエレメント11であるためには、明度L値の平均値が70以上であることが数値的な目安になるであろうことも理解できる。
そして、その研磨時に研磨屑がファスナーエレメント11の表面に付着する度合いを低減させる目安は、先に説明した図18から図21における、比較例と実施例のSEM画像の分析結果から得ることができる。先に説明した図18から図21におけるSEM画像の分析結果を整理すると以下のとおりとおりである。
・実施例1:頭部側面上半部領域60の観察黒点数0、
      中間部側面上半部領域61の観察黒点数1、 合計数1
 
・実施例2:頭部側面上半部領域60の観察黒点数0、
      中間部側面上半部領域61の観察黒点数5、 合計数5
 
・比較例1:頭部側面上半部領域60の観察黒点数12、
      中間部側面上半部領域61の観察黒点数11、 合計数23
 
・比較例2:頭部側面上半部領域60の観察黒点数18、
      中間部側面上半部領域61の観察黒点数9、 合計数27
この結果からは、比較例のように頭部側面上半部領域60または中間部側面上半部領域61の観察黒点数が9以上では本発明の目的が達成できないであろうことが理解できる。すなわち、頭部側面上半部領域60または中間部側面上半部領域61の観察黒点数が9未満であることが、本発明のスライドファスナーエレメント11とするための指標のひとつになるであろうことが理解できる。
そして、この指標をより好ましい数値範囲に限定するとすれば、実施例2のSEM画像から観察されるとおり、エレメントの中間部側面上半部領域61の大きさの範囲に観察黒点数が5つ程度存在してもエレメントの外観の光沢に大きな遜色はなく、実施例2のエレメント全体のSEM画像である図14をみても黒点の付着量は全体として十分に低減できていることがわかる。このことから、頭部側面上半部領域60または中間部側面上半部領域61の観察黒点数が5以下ということも、本発明のスライドファスナーエレメント11とするための指標のひとつになるであろうことが理解できる。
さらにいえば、実施例のように頭部側面上半部領域60及び中間部側面上半部領域61の両方を合わせた範囲における合計の観察黒点数が5以下であれば最も好ましいであろうことも理解できるため、頭部側面上半部領域60及び中間部側面上半部領域61の合計の観察黒点数が5以下であることも、本発明の実施形態のためのひとつの条件目安になるであろうことが理解できる。
 上記のようにして得られたステンレス合金製のファスナーエレメント11は、先に図1から図4を使って説明したとおり、ファスナーテープ5の側縁部13に一定間隔ごとに連続的にカシメ固定されることで、本発明におけるファスナーストリンガー2、3となる。そして、そのファスナーストリンガー2、3を適宜の長さに切断しつつ、止具や開具やスライダーなどを適宜取り付けて仕上げ加工することで、スライドファスナーの完成品となる。
以上のとおり、本発明の開示により、ステンレス合金製のスライドファスナーエレメント11に対する研磨時の有機物の付着によってファスナーエレメント11が黒色化されてしまうことが明らかになり、本発明で開示された条件にしたがって有機物の付着の度合いを低減させることで、本来のステンレス合金素材が有する色をもった光沢度の高い外観を有するスライドファスナーエレメント11を提供できることが明らかになった。
なお、本発明の実施形態の説明においては、ファスナーエレメント11の頭部23の一方の面側に噛合頭部21を有し他方の面側に噛合凹部22を有する、いわゆる片面エレメントについて説明したが、ファスナーエレメントの形状はこれに限るものではなく、例えば、一方の面側に噛合頭部と噛合凹部を有し、他方の面側にも噛合頭部と噛合凹部を有する、いわゆる両面エレメントについても本発明の技術思想が適用できるものである。
また、本発明におけるSEM画像の拡大倍率等の画像分析の諸条件について、本発明の実施の形態で説明した条件で本発明と実際の製品との比較を行うことに限定しているわけではなく、本発明との比較が行える条件であれば任意の手法が利用可能である。
また、本発明は、上記で開示された実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の実施の形態で説明した各技術事項と実質的に同一な技術または同様な効果を奏する技術として当業者に認識される技術を適宜利用したり、代替技術として使用したり、追加で付加したりすることも可能である。
 
1  スライドファスナー
2、3 ファスナーストリンガー
4、5 ファスナーテープ
6  スライダー
7  引手
11 ファスナーエレメント
12、13 側縁部
14、15 上止め
16 下止め
21 噛合凸部
21-1 噛合凸部21の頂面部
21-2 噛合凸部21の凸部傾斜面
22 噛合凹部
22-1 噛合凹部22の底面部
22-2 噛合凹部22の凹部傾斜面
23 ファスナーエレメント11の頭部
24 ファスナーエレメント11の脚部
25 ファスナーエレメント11の中間部
60 頭部側面上半部領域
61 中間部側面上半部領域
 

Claims (7)

  1. ステンレス合金製のファスナーエレメント11であって、
    前記ファスナーエレメント11は、バレル研磨で研磨処理された後のステンレス合金製のファスナーエレメントであり、
    前記ファスナーエレメント11は、一方側に噛合凸部21を有する頭部23を備え、他方側には一対の脚部24を備え、前記頭部23と前記脚部24のあいだには中間部25を備えており、
    前記ファスナーエレメント11を側面から見た場合における、
    前記ファスナーエレメント11の左右方向の前記頭部23の側の端部を通る上下方向の直線を直線L11とし、
    前記ファスナーエレメント11の前記頭部23と前記中間部25の境界を区画する上下方向の直線を直線L12とし、
    前記ファスナーエレメント11の前記中間部25と前記脚部24の境界を区画する上下方向の直線を直線L13とし、
    前記ファスナーエレメント11の前記中間部25の上下方向の上側の端部を通る左右方向の直線を直線L21とし、
    前記ファスナーエレメント11の前記中間部25の上下方向の下側の端部を通る左右方向の直線を直線L23とし、
    前記直線L21と直線L23の中間位置に相当する左右方向の直線を直線L22とし、
    前記直線L11、前記直線L12、前記直線L21、前記直線L22で囲まれた長方形領域を頭部側面上半部領域60と定義し、また前記直線L12、前記直線L13、前記直線L21、前記直線L22で囲まれた長方形領域を中間部側面上半部領域61と定義した場合に、
    前記ファスナーエレメント11の側面のSEM(Scanning Electron Microscope)画像のBSE(Backscattered Electron)像において観察される有機物の黒点のうち、長さが10μm以上の部分を有する有機物の黒点の数が、前記頭部側面上半部領域60において9未満であること、または、前記中間部側面上半部領域61において9未満であること、
    を特徴とするファスナーエレメント。
  2. 前記請求項1におけるファスナーエレメント11の側面のSEM(Scanning Electron Microscope)画像のBSE(Backscattered Electron)像において観察される有機物の黒点のうち、長さが10μm以上の部分を有する有機物の黒点の数が、頭部側面上半部領域60において5以下であること、または、前記中間部側面上半部領域61において5以下であること、
    を特徴とする請求項1に記載のファスナーエレメント。
  3. 前記請求項1又は2におけるファスナーエレメント11の側面のSEM(Scanning Electron Microscope)画像のBSE(Backscattered Electron)像において観察される有機物の黒点のうち、長さが10μm以上の部分を有する有機物の黒点の数が、頭部側面上半部領域60及び中間部側面上半部領域61において合計5以下であること、
    を特徴とする請求項1又は2に記載のファスナーエレメント。
  4.  前記請求項1乃至3に記載のファスナーエレメント11をファスナーテープ4、5に取り付けたファスナーストリンガー。
  5.  ステンレス合金製のファスナーエレメント11をファスナーテープに取り付けたファスナーストリンガーであって、
    前記ファスナーエレメント11は、バレル研磨で研磨処理された後のステンレス合金製のファスナーエレメントであり、
    前記ファスナーストリンガーのファスナーエレメントを任意に10個抽出して計測した明度L値の平均値が68以上であるファスナーストリンガー。
  6.  ステンレス合金製のファスナーエレメントの光沢度合いを評価するファスナーエレメントの評価方法であって、
    前記ファスナーエレメント11は、バレル研磨で研磨処理された後のステンレス合金製のファスナーエレメントであり、
    前記ファスナーエレメント11は、一方側に噛合凸部21を有する頭部23を備え、他方側には一対の脚部24を備え、前記頭部23と前記脚部24のあいだには中間部25を備えており、
    前記ファスナーエレメント11の側面のSEM(Scanning Electron Microscope)画像のBSE(Backscattered Electron)像において観察される有機物の黒点のうち、頭部23又は中間部25における長さが所定値以上の大きさを有する有機物の黒点の数によって、ファスナーエレメントの光沢度合いを評価すること、
    を特徴とするステンレス合金製のファスナーエレメントの評価方法。
  7.  前記請求項6に記載のステンレス合金製のファスナーエレメントの光沢度合いを評価する評価方法により適切なバレル研磨条件を求めること、
    を特徴とするバレル研磨条件の設計方法。
     
     
     
     
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