WO2023157822A1 - 抗vegf抗体の放射性複合体、及び、放射性医薬 - Google Patents

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Abstract

本発明は、核医学診断又は放射線治療に適用可能な新規な放射性標識抗VEGF抗体を提供することを課題とする。本発明の複合体は、抗体修飾ペプチドで部位特異的に修飾された抗体とキレート剤との複合体であって、抗体が抗VEGF抗体であり、キレート剤に放射性金属核種がキレート化している。

Description

抗VEGF抗体の放射性複合体、及び、放射性医薬
 本発明は、抗VEGF抗体の放射性複合体、及び、放射性医薬に関する。
 血管内皮細胞増殖因子(VEGF)は、脈管形成や血管新生に関与する一群の糖タンパクで、主に血管内皮細胞表面にある血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)にリガンドとして結合し、細胞分裂や遊走、分化を刺激したり、微小血管の血管透過性を亢進させたりする働きを有する。加えて、単球・マクロファージの活性化にも関与することが知られている。脈管形成や血管新生、リンパ管新生に関与する増殖因子にはVEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGF-E、PlGF(胎盤増殖因子 placental growth factor)-1、PlGF-2の7つがあり、これらはまとめて「VEGFファミリー」と呼ばれている。さらにいくつかのVEGFファミリーメンバーには、オルタナティブスプライシング(Alternative splicing)によりいくつかの亜型が存在する。例えばVEGF-Aは、ヒトでは通常アミノ酸数が121個(VEGF-A121)、165個(VEGF-A165)、189個(VEGF-A189)、206個(VEGF-A206)の4種類が存在する他、VEGF-A145、VEGF-A183といった稀な亜型も報告されている。VEGF-BにはVEGF-B167、VEGF-B186が知られている。
 抗VEGF抗体は、例えば、VEGFの細胞受容体への結合を妨げること、VEGFが細胞受容体に結合した後の血管内皮細胞の活性化を妨げること、又はVEGFによって活性化される細胞を死滅させることによって作用する。抗VEGF抗体としては、例えばベバシズマブ(商品名:アバスチン)、アフリベルセプト ベータ(商品名:ザルトラップ)、アフリベルセプト(商品名:アイリーア)及びブロルシズマブ(商品名:ベオピュ)が挙げられる。
 抗体医薬は、標的への選択性が高く比較的副作用が少ない一方で、薬効が不十分な場合があることがある。一方、化学療法剤は、強力な薬効を有するが、標的に対する選択性が低いため、がん細胞を死滅させるために必要な最小有効量が高く、一方で、毒性の観点から用量をあまり上げられないことから最大耐性用量が低く、治療用量域が狭いことが課題とされている。
 これらの欠点を補う技術として、抗体-薬物複合体(Antibody-drug conjugate,ADC)がある。ADCは、抗体によって標的となる細胞(例えばがん細胞)を絞り、抗体に付加した薬物(ペイロード)を標的細胞内に直接届けることで、正常な細胞への影響を避け、標的細胞特異的にその薬物の持つ生物活性が発揮される。
 ADCによれば、化学療法剤を標的細胞に選択的に多く届けることができるようになり、その結果、より少量で効果を示すようになり、正常細胞へ到達する化学療法剤が低減することから最大耐性用量も高くなることで、治療用量域が広くなることが期待される。
 ADCの一つのアプローチとして放射性免疫複合体(Radioimmunoconjugate)がある。放射性免疫複合体においては、ペイロードの代わりに放射性核種が用いられる。
 抗体の標的分子に対する特異性に影響を与えずに機能付加するための部位特異的な化学修飾として、抗体に特異的又は選択的に結合するペプチド(以下、抗体修飾ペプチドとも称する)に架橋剤と結合可能なアミノ酸を導入し、該アミノ酸を架橋剤により修飾することで、架橋剤により部位特異的に修飾された抗体修飾ペプチドを調製し、それを用いて抗体を部位特異的に修飾する技術が報告されている(特許文献1、2)。
 また、特許文献3、4には、抗体を放射性核種で標識するいくつかの手法に関する技術が開示されている。
 また、非特許文献1には、抗VEGF抗体であるベバシズマブをジルコニウム-89で標識し、ヒトに投与して陽電子断層撮像法(PET)により撮影した結果が報告されている。この例では、ベバシズマブのアミノ基にランダムにFe-N-suc-Df-TFPを結合させ、デフェロキサミン(Df)にジルコニウム-89をキレートさせる方法が開示されている。
国際公開第2017/217347号 国際公開第2019/203191号 国際公開第2019/125982号 国際公開第2020/229974号
EJNMMI Res. 2014 Dec;4(1):35. doi: 10.1186/s13550-014-0035-5.
 ベバシズマブは、ヒトVEGFと特異的に結合することにより、VEGFと血管内皮細胞上に発現しているVEGF受容体との結合を阻害し、VEGFの生物活性を阻止することにより、腫瘍組織での血管新生を抑制し、腫瘍の増殖を阻害する。しかしながら、単独使用では十分な効果を得ることができず、臨床上他薬剤(抗がん剤)との併用が必須であった。
 ベバシズマブを利用した放射線治療効果は未だ知られていない。
 また、部位特異的に放射性核種で修飾されたベバシズマブは未だ知られていない。
 従って、本発明は、核医学診断又は放射線治療に適用可能な新規な放射性標識抗VEGF抗体を提供することを課題とする。
 本発明の一態様は、抗体修飾ペプチドで部位特異的に修飾された抗体とキレート剤との複合体であって、抗体が抗VEGF抗体であり、キレート剤に放射性金属核種がキレート化している、複合体である。
 本発明の他の態様は、上記の複合体を有効成分として含有する放射性医薬である。
 なお、本発明でいう「連結」とは、特に断りがない場合、直接的又は間接的に接続していることの両方を意味する。
 本発明によれば、核医学診断又は放射線治療に適用可能な新規な放射性標識抗VEGF抗体が提供される。
本発明の放射性複合体の一例(225Ac-CCAP-ベバシズマブ1)によるインビトロでの薬効(殺細胞効果)を評価した結果を示す図である。この図では、比較対象として未標識のベバシズマブによる結果を示している。 本発明の放射性複合体の一例(225Ac-CCAP-ベバシズマブ1)によるインビボでの薬効(抗腫瘍効果)を評価した結果を示す図である。 本発明の放射性複合体の一例(89Zr-CCAP-ベバシズマブ1)の担癌マウスにおけるPET画像の代表例を示す図である。
(1)放射性複合体
 本発明は、抗体修飾ペプチドで部位特異的に修飾された抗体とキレート剤との複合体であって、抗体が抗VEGF抗体であり、キレート剤に放射性金属核種がキレート化している、複合体(以下、本発明の放射性複合体とも称する)である。
(1-1)放射性金属核種
 本発明の放射性複合体に含まれる放射性金属核種は、α線を放出する放射性核種、β線を放出する放射性核種、ポジトロンを放出する放射性核種又はγ線を放出する放射性核種である。本発明の放射性複合体をがん治療に用いる場合は、α線を放出する放射性核種又はβ線を放出する放射性核種を用いることが好ましい。また、本発明の放射性複合体をがんの診断若しくは検出に用いる場合は、ポジトロンを放出する放射性核種又はγ線を放出する放射性核種を用いることが好ましい。α線を放出する放射性核種として、Bi-212、Bi-213、Ac-225、Th-227が例示される。また、β線を放出する放射性核種として、Cu-64、Y-90又は、Lu-177が例示される。また、ポジトロンを放出する放射性核種として、Cu-64、Ga-68、Y-86、Zr-89が例示される。また、γ線を放出する放射性核種として、Tc-99m又はIn-111が例示される。本発明の放射性複合体に含まれる放射性金属核種は、Ga-68、Zr-89、Y-90、In-111、Lu-177又はAc-225であることが、より好ましい。
(1-2)抗体
 本発明の放射性複合体に含まれる抗体は、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)に特異的に結合する免疫グロブリン(以下、本発明で用いられる抗体とも称する)である。本発明で用いられる抗体は、ポリクローナル抗体であってもよいし、モノクローナル抗体であってもよいが、モノクローナル抗体が好ましい。抗体の由来は、特に限定されないが、例えば、非ヒト動物の抗体、非ヒト哺乳動物の抗体、およびヒト抗体が挙げられ、好ましくは、ヒト、ラット、マウス及びウサギの抗体を例示できる。抗体がヒト以外の種に由来する場合は、周知の技術を用いて、キメラ化又はヒト化することが好ましいが、本発明に用いられる抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体であってもよい。また、本発明で用いられる抗体は、二重特異性抗体であってもよい。抗体は、単離された抗体、または精製された抗体であり得る。抗体は、例えば、IgGであり得る。抗体は、例えば、IgG1、IgG2(例えば、IgG2aおよびIgG2b)、IgG3、またはIgG4であり得る。
 本発明の放射性複合体に用いられる抗体は、抗VEGF抗体であれば限定されないが、例えば、ベバシズマブ、アフリベルセプト ベータ、アフリベルセプト、ブロルシズマブが挙げられるが、ベバシズマブであることがより好ましい。
 ベバシズマブ(Bevacizumab)は、VEGFに対するモノクローナル抗体である。VEGFの働きを阻害することにより、血管新生を抑えたり腫瘍の増殖や転移を抑えたりする作用を持つ。分子標的治療薬の一つであり、抗がん剤として使用されるほか、加齢黄斑変性や糖尿病性網膜症の治療薬として期待されている。ベバシズマブは、マウス抗VEGFモノクローナル抗体の相補性決定部位及びヒトIgG1に由来するフレームワーク部分と定常部からなるヒト化モノクローナル抗体をコードするcDNAの発現により、チャイニーズハムスター卵巣細胞で産生される214個のアミノ酸残基(C10341591273338;分子量:23446.71)の軽鎖2分子と453個のアミノ酸残基(C2235341358567816;分子量:約49838.57:C末端のリジン1残基が欠損しているものを含む)の重鎖2分子からなる糖タンパク質である。
 ベバシズマブは、アバスチン(AVASTIN;登録商標)や、種々のバイオシミラー品(ベバシズマブBS)としても公知であり、例えば、既報(Presta et al., Cancer Res.(1997)57:4593-4599)に従って製造することができる。具体的には、下記構造を有する。
 ここで、分子内ジスルフィド結合を実線で示す。
H鎖E1:部分的ピログルタミン酸;H鎖N303:糖鎖結合;H鎖K453:部分的プロセシング
L鎖C214-H鎖C226,H鎖C232-H鎖C232,H鎖C235-H鎖C235:ジスルフィド結合
 糖鎖構造は以下に示されている。
 ここで、FucがL-フコースであり、(Gal)0-2が0、1又は2分子のD-ガラクトースであり、GlcNacがD-N-アセチルグルコサミンであり、ManがD-マンノースである。
 アフリベルセプト ベータは、遺伝子組換え融合糖タンパク質であり、1~104番目はヒト血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)1の第2免疫グロブリン(Ig)様C2ドメイン、105~205番目はヒトVEGFR2の第3Ig様C2ドメイン、また206~432番目はヒトIgG1のFcドメインからなる。アフリベルセプト ベータは、チャイニーズハムスター卵巣細胞により産生される。アフリベルセプト ベータは、432個のアミノ酸残基からなるサブユニット2個から構成される糖タンパク質(分子量:約115,000)であり、ザルトラップ(登録商標)の商品名で市販されている。
 また、アフリベルセプトは、アイリーア(登録商標)として入手可能であり、ブロルシズマブは、ベオピュ(登録商標)として入手可能である。
(1-3)キレート剤
 本発明においてキレート剤は、放射性金属核種が配位する部位を構造中に有するものであれば特に限定されない。キレート剤として、例えば、CB-TE2A(1,4,8,11-Tetraazabicyclo[6.6.2]hexadecane-4,11-diacetic acid)、CDTA(Cyclohexane-trans-1,2-diamine tetra-acetic acid)、CDTPA(4-cyano-4-[[(dodecylthio)thioxomethyl]thio]-Pentanoic acid)、DOTA(1,4,7,10-Tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetraacetic acid)、DOTMA((1R,4R,7R,10R)-α,α’,α’’,α’’’-tetramethyl-1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetraacetic acid)、DOTAM(1,4,7,10-tetrakis(carbamoylmethyl)-1,4,7,10-tetraazacyclododecane)、DOTA-GA(α-(2-Carboxyethyl)-1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetraacetic acid)、DOTP(((1,4,7,10-Tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetrayl)tetrakis(methylene))tetraphosphonic acid)、DOTMP(1,4,7,10-Tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetrakis(methylenephosphonic acid))、DOTA-4AMP(1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetrakis(acetamidomethylenephosphonic acid)、D02P(Tetraazacyclododecane dimethanephosphonic acid)、Deferoxamine(DFO)、DTPA(Glycine, N,N-bis[2-[bis(carboxymethyl)amino]ethyl]-)、DTPA-BMA(5,8-Bis(carboxymethyl)-11-[2-(methylamino)-2-oxoethyl]-3-oxo-2,5,8,11-tetraazatridecan-13-oic acid)、EDTA(2,2’,2’’,2’’’-(ethane-1,2-diylbis(azanetriyl))tetraacetic acid)、NOTA(1,4,7-Triazacyclononane-1,4,7-triacetic acid)、NOTP(1,4,7-Triazacyclononane-1,4,7-triyltris(methylenephosphonic acid)、TETPA(1,4,8,11-tetraazacyclotetradecane-1,4,8,11-tetrapropionic acid)、TETA(1,4,8,11-Tetraazacyclotetradecane-N,N’,N’’,N’’’-tetraacetic acid)、TTHA(3,6,9,12-Tetrakis(carboxymethyl)-3,6,9,12-tetraazatetradecanedioic acid)、HEHA(1,2,7,10,13-hexaazacyclooctadecane-1,4,7,10,13,16-hexaacetic acid)、1,2-HOPO(N,N’,N’’,N’’’-tetra(1,2-dihydro-1-hydroxy-2-oxopyridine-6-carbonyl)-1,5,10,14-tetraazatetradecane)、PEPA(1,4,7,10,13-pentaazacyclopentadecane-N,N’,N’’,N’’’,N’’’’-penta-acetic acid)、H4octapa(N,N’-bis(6-carboxy-2-pyridylmethyl)-ethylenediamine-N,N’-diacetic acid)、H2bispa2(6,6’-({9-hydroxy-1,5-bis(methoxycarbonyl)-2,4-di(pyridine-2-yl)-3,7-diazabicyclo[3.3.1]nonane-3,7-diyl}bis(-methylene))dipicolinic acid)、H2dedpa(1,2-[{6-(carboxy)-pyridin-2-yl}-methylamino]ethane)、H2macropa(6-(1,4,10,13-tetraoxa-7,16-diazacyclooctadecan-N,N’-methyl)picolinic acid)、H5decapa(N,N’’-bis(6-carboxy-2-pyridylmethyl)-diethylenetriamine-N,N’,N’’-triacetic acid)、H6phospa(N,N’-(methylenephosphonate)-N,N’-[6-(methoxycarbonyl)pyridin-2-yl]-methyl-1,2-diaminoethane)、HP-D03A(Hydroxypropyltetraazacyclododecanetriacetic acid)又はporphyrinといったものが挙げられるが、下記式(A)で表される化合物が好ましい。
(式(A)中、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ独立して、-(CHCOOH、-(CHN、-(CHPO、-(CHCONH若しくは、-(CHCOOH)(CH)COOHからなる基であり、R15が、水素原子であり、pが0以上3以下の整数である。)
 式(A)で表される化合物としては、好ましくは1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸(DOTA)、又はその誘導体に由来する構造を含む化合物であり、具体的には、構造中にDOTA(1,4,7,10-Tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetraacetic acid)、DOTMA((1R,4R,7R,10R)-α,α’,α”,α’”-tetramethyl-1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetraacetic acid)、DOTAM(1,4,7,10-tetrakis(carbamoylmethyl)-1,4,7,10-tetraazacyclododecane)、DOTPA(1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetrapropionic acid)、Lpy(1,4,7,10-tetrakis(pyridin-2-ylmethyl)-1,4,7,10-tetraazacyclododecane)、DOTA-GA(α-(2-Carboxyethyl)-1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetraacetic acid)、DOTP(((1,4,7,10-Tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetrayl)tetrakis(methylene))tetraphosphonicacid)、DOTMP(1,4,7,10-Tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetrakis(methylenephosphonic acid))、DOTA-4AMP(1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetrakis(acetamidomethylenephosphonic acid)、D02P(Tetraazacyclododecane dimethanephosphonic acid)から選択される一のキレート剤に由来する構造を含むことができ、
より好ましくは以下の式(A-1)~(A-6)で表される化合物が挙げられる。本発明の放射性複合体に用いられるキレート剤は、DOTA-GA(式(A-6)で表される化合物)がさらにより好ましい。用いられるキレート剤がDOTA-GAである場合、前記キレート剤が立体異性体(S体、R体)又はラセミ体でもよく、該ラセミ体においてS体とR体の立体異性体は任意の割合で混合していてもよい。
 本発明で用いられるキレート剤は、リンカー(L)を介してペプチドと連結していることが好ましい。具体的には、本発明の放射性複合体において、キレート剤とリンカー(L)とは共有結合により接続されていることが好ましい。したがって、前述したキレート剤は、本発明の放射性複合体においては、化合物内の一部の基がリンカー(L)と共有結合を形成する基に置換されていてもよい。例えば、本発明で用いられるキレート剤が、式(A)で表される化合物である場合は、R12又はR15がリンカー(L)と共有結合を形成する基に置換されていてもよい。好ましくは、R12がリンカー(L)と共有結合を形成する基に置換されているときR15は水素原子であり、R12が-(CHCOOH、-(CHN、-(CHPO、-(CHCONH又は、-(CHCOOH)(CH)COOHからなる基であるとき、R15がリンカー(L)と共有結合を形成する基に置換されている。
 キレート剤とリンカー(L)との共有結合は、チオウレア結合を含まないことが好ましい。こうすることで、薬効を損なうことなく安定性が高められた複合体を提供することができる。キレート剤とリンカー(L)との共有結合の例として、炭素-炭素結合、アミド結合、エーテル結合、エステル結合などが挙げられる。
 キレート剤とリンカー(L)との接続は、例えば、下記式(A-7)や(A-8)のN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)基、又は、下記式(A-9)の2,6-ジオキソテトラヒドロ-2H-ピラニル基と、リンカー(L)の第1級アミンとの反応により形成される。
(1-4)抗体修飾ペプチド
 本発明において用いる抗体修飾ペプチドは、抗体を部位特異的に、好ましくはFc領域を部位特異的に、より好ましくは抗体のFc領域におけるリシン残基を部位特異的に修飾するものであれば、特に限定されない。これにより、抗体そのものの活性(抗原認識作用、中和作用、補体活性化作用及び/又はオプソニン作用)を維持することができる。
 本発明に用いられる抗体修飾ペプチドは、鎖状ペプチドでも環状ペプチドであってもよいが、環状ペプチドが好ましい。より好ましくは、下記式(i)で表される、13以上17以下のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含み、かつ架橋剤で修飾されている。なお、式(i)において、アミノ酸配列の紙面左側がN末端側を示し、アミノ酸配列の紙面右側がC末端側を示すものとして説明する。
 (Xa)-Xaa-(Xb)-Xaa-(Xc)-Xaa-(Xd)・・・(i)
 式(i)中、Xa、Xb、Xc及びXdは、それぞれ、連続するa個のX、連続するb個のX、連続するc個のX、及び連続するd個のXを表し、
Xは、側鎖にチオール基及びハロアセチル基のいずれも有しないアミノ酸残基であり、
a、b、c及びdはそれぞれ独立に1以上5以下の整数で、かつa+b+c+d≦14を満たし
Xaa及びXaaは、それぞれ独立に、
側鎖にチオール基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸残基、又は、側鎖にハロアセチル基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸残基を表し、ただし、Xaa及びXaaのいずれか一方がチオール基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸残基であり、好ましくは、Xaa及びXaaが連結することで、環構造が形成されており、
Xaaは、リシン残基、アルギニン残基、システイン残基、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、2-アミノスベリン酸、又はジアミノプロピオン酸、好ましくはリシン残基であり、かつXaaが架橋剤で修飾されている。
 上記式(i)におけるXに含まれ得るアミノ酸残基としては、例えば、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、プロリン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン、セリン、トレオニン、チロシン、メチオニン等のアミノ酸に由来するものが挙げられ、Xは、同一の種類のアミノ酸からなるアミノ酸残基であってもよく、それぞれ異なる種類のアミノ酸からなるアミノ酸残基であってもよい。
 式(i)中のa、b、c及びdは、上述した範囲の数であれば特に制限はないが、ペプチドと抗VEGF抗体との結合安定性の観点から、a+b+c+d≦14を条件として、aは好ましくは1以上3以下の整数、bは好ましくは1以上3以下の整数、cは好ましくは3以上5以下の整数、及びdは好ましくは1以上3以下の整数である。
 Xaa及びXaaの少なくとも一方は、側鎖にチオール基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸残基であり、該アミノ酸はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。側鎖にチオール基を有するアミノ酸としては、例えばシステイン、ホモシステインが挙げられる。このようなアミノ酸残基は、ジスルフィド結合によって結合しているか、又は以下の式(4)に示す構造を介して、スルフィド基が結合されていることが好ましい。式(4)中、破線部分はスルフィド基との結合部分を示す。
 Xaa及びXaaは、上述した組み合わせに代えて、Xaa及びXaaのうち一方が側鎖にチオール基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸残基であり、他方が側鎖にハロアセチル基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸残基であってもよい。これらは、チオエーテル結合を介して結合している。ハロアセチル基は、その末端がヨウ素等のハロゲンで置換されており、他方の側鎖におけるチオール基との反応によってハロゲンが脱離して、チオエーテル結合が形成される。
 式(i)で表される抗体修飾ペプチドの具体的なアミノ酸配列は、例えば国際公開第2016/186206号、国際公開第2017/217347号及び国際公開第2018/230257号に記載のペプチドが挙げられ、これらを用いることもできる。
 好ましくは、本発明で用いられる抗体修飾ペプチドは、下記式(i)’で表される、13~17アミノ酸残基からなるアミノ酸配列である。
(X1-3)-C-(Xaa’)-(Xaa’)-H-(Xaa’)-G-(Xaa’)-L-V-W-C-(X1-3) (i)’
 式(i)’中、Xの各々は独立的にシステイン以外の任意のアミノ酸残基であり、
Cはシステイン残基であり、
Hはヒスチジン残基であり、
Xaa’はリシン残基、システイン残基、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、2-アミノスベリン酸、又はジアミノプロピオン酸であり、
Gはグリシン残基であり、
Xaa’はグルタミン酸残基又はアスパラギン残基であり、
Lはロイシン残基であり、
Vはバリン残基であり、
Wはトリプトファン残基であり、
Xaa’はアラニン残基、セリン残基又はトレオニン残基であり、かつ
Xaa’はチロシン残基又はトリプトファン残基である。
 上記式(i)’で、N末端又はC末端のX1-3という表記は、システイン(C又はCys)以外の独立的に任意のアミノ酸残基Xが1~3個連続していることを意味し、それを構成するアミノ酸残基は同じか又は異なる残基であるが、好ましくは3個すべてが同じ残基でない配列からなる。
 これらのうち、抗体修飾ペプチドのアミノ酸配列として、以下の配列(1)~(14)のいずれか一つを有していることが好ましく、以下の配列(1)、(2)、(13)又は(14)を有していることが更に好ましい。以下のアミノ酸配列(1)~(14)において、(Xaa)はリシン残基、システイン残基、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、2-アミノスベリン酸、又はジアミノプロピオン酸、好ましくはリシン残基を示し、好ましくは(Xaa)は架橋剤で修飾されており、(Xaa)及び(Xaa)はともにホモシステイン残基を示す。また、以下のアミノ酸配列(1)~(14)中、(Xaa)、(Xaa)及び(Xaa)以外のアミノ酸は一文字略号にて表記する。
 (1)DCAYH(Xaa)GELVWCT(配列番号3)
 (2)GPDCAYH(Xaa)GELVWCTFH(配列番号4)
 (3)RCAYH(Xaa)GELVWCS(配列番号5)
 (4)GPRCAYH(Xaa)GELVWCSFH(配列番号6)
 (5)SPDCAYH(Xaa)GELVWCTFH(配列番号7)
 (6)GDDCAYH(Xaa)GELVWCTFH(配列番号8)
 (7)GPSCAYH(Xaa)GELVWCTFH(配列番号9)
 (8)GPDCAYH(Xaa)GELVWCSFH(配列番号10)
 (9)GPDCAYH(Xaa)GELVWCTHH(配列番号11)
 (10)GPDCAYH(Xaa)GELVWCTFY(配列番号12)
 (11)SPDCAYH(Xaa)GELVWCTFY(配列番号13)
 (12)SDDCAYH(Xaa)GELVWCTFY(配列番号14)
 (13)RGNCAYH(Xaa)GQLVWCTYH(配列番号15)
 (14)G(Xaa1)DCAYH(Xaa)GELVWCT(Xaa)H(配列番号16)
 上記の式(i)又は(i)’で表されるペプチド、又は、配列(1)~(14)を有するペプチドは、好ましくはN末端にリンカー(L)が導入され、C末端がアミド化される。また、これらのペプチドのXaa(又はXaa相当部分)が架橋剤で修飾されており、これにより、架橋剤を介してペプチドが抗VEGF抗体のFc領域と共有結合することができる。
 架橋剤は、当業者であれば適宜選択することが可能であり、所望のアミノ酸(例えば、リシン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、2-アミノスベリン酸、又はジアミノプロピオン酸、及びアルギニン等)と結合可能な部位を少なくとも2箇所有する化合物とすることができる。その例として、限定するものではないが、DSG(disuccinimidyl glutarate、ジスクシンイミジルグルタレート)、DSS(disuccinimidyl suberate、ジスクシンイミジルスベレート)等のスクシンイミジル基を好ましくは2以上含む架橋剤、DMA(dimethyl adipimidate・2HCl、アジプイミド酸ジメチル二塩酸塩)、DMP(dimethyl pimelimidate・2HCl、ピメルイミド酸ジメチル二塩酸塩)、及びDMS(dimethyl suberimidate・2HCl、スベルイミド酸ジメチル二塩酸塩)等のイミド酸部分を好ましくは2以上含む架橋剤、並びにDTBP(dimethyl 3,3’-dithiobispropionimidate・2HCl、3,3’-ジチオビスプロピオンイミド酸ジメチル二塩酸塩)及びDSP(dithiobis(succinimidyl propionate)、ジチオビススクシンイミジルプロピオン酸))等のSS結合を有する架橋剤、SBAP(succinimidyl 3-(bromoacetamido)propionate)が挙げられる。DSS又はDSG等のスクシンイミジル基を含む架橋剤は、N末端に存在する一級アミンと反応するため、N末端をブロッキングした上でDSS又はDSGと反応させることで、Xaaのアミノ基のみをDSS又はDSGで特異的に修飾することができる。例えば、抗体修飾ペプチドのN末端にあらかじめリンカー(L)を導入させた後にDSS又はDSGと反応させてもよい。DSS又はDSGのスクシンイミジル基が、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)におけるEuナンバリングに従うLys252残基又はLys254残基、好ましくはLys254残基と反応することで、抗VEGF抗体がペプチドで部位特異的に修飾される。これらのLys残基は、ヒトIgGにおけるFc領域に存在し、ベバシズマブ以外の抗VEGF抗体であっても当業者であれば抗体のアミノ酸配列をアラインメントし、相当するLys残基を特定することができる。
(1-5)リンカー(L)
 リンカー(L)は、本発明の放射性複合体において、キレート剤と抗体修飾ペプチドとを連結できるものであれば特に限定されない。本発明で用いられるリンカー(L)は、チオウレア結合を含むものでなければ特に限定されず、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のヘテロアルキル基、ポリエチレングリコール(PEG)基、ペプチド、糖鎖、ジスルフィド基、アミド基、及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。
 本明細書においてリンカー(L)とは、抗体修飾ペプチドで修飾された抗VEGF抗体とキレート剤との接続に用いられるリンカーの総称であり、抗体修飾リンカー(L)及びキレートリンカー(L)を含む用語である。抗体修飾リンカー(L)は、詳細は後述するが、(1-4)で説明した抗体修飾ペプチドのN末端側に導入されるものであり、キレートリンカー(L)も、詳細は後述するが、(1-3)で説明したキレート剤の官能基に導入されるものである。
 本発明で用いられるリンカー(L)は、クリック反応で形成された結合部位を含んでいてもよく、好ましくは、抗体修飾リンカー(L)とキレートリンカー(L)とがクリック反応により結合している。本発明において、クリック反応で形成された結合部位と、キレート剤との間に、チオウレア結合を含まないことが好ましい。言い換えると、キレートリンカー(L)がチオウレア結合を含まないことが好ましい。ここで、クリック反応で形成された結合部位は、好ましくは、下記式(10a)又は(10b)で表されるトリアゾール骨格含有構造又は下記式(10c)で表されるピリダジン骨格含有構造が考えられる。式(10a)と式(10b)は異性体の関係にあるため任意の割合で含まれていてもよい。
 式(10a)及び式(10b)中、R1Aはキレート剤との連結部位を示し、R2Aは抗体修飾ペプチドとの連結部位を示す。式(10c)中、R3A及びR4Aのうち一方は水素原子、メチル基、フェニル基又はピリジル基を示し、他方はキレート剤との連結部位を示し、R5Aは抗体修飾ペプチドとの連結部位を示す。式(10a)、式(10b)及び式(10c)において、抗体修飾ペプチドとの連結部位は、抗体修飾リンカー(L)を介してペプチドが連結しており、キレート剤との連結部位は、キレートリンカー(L)を介してキレート剤が連結している。
 本発明の放射性複合体は、抗体修飾ペプチドで部位特異的に抗体が修飾され、ペプチドとキレート剤とがリンカー(L)を介して連結するため、抗VEGF抗体1分子に対して1分子又は2分子のキレート剤を複合化させたものになる。
(1-6)複合体の製造方法
 本発明の放射性複合体の製造方法は、キレート剤と抗VEGF抗体とをコンジュゲーションするコンジュゲーション工程と、放射性金属核種とキレート剤との錯体を形成する錯体形成工程との2つの工程から製造することができる。コンジュゲーション工程は、錯体形成工程の前であってもよいし錯体形成工程の後であってもよい。
 コンジュゲーション工程においては、前述した式(i)で示す抗体修飾ペプチドを有するキレート剤又はリンカー(L)を、抗体のFc領域に部位特異的に修飾する。
 錯体形成工程では、キレート剤に放射性金属核種をキレート(錯体形成)させる。ここで使用する放射性金属核種は、錯体形成効率を高める観点から、電離可能な態様で用いることが好ましく、イオンの態様で用いることが更に好ましい。錯体形成工程は、放射性金属核種との錯体形成が可能であれば、キレート剤への放射性金属核種の添加順序は問わない。例えば、水を主体とする溶媒に、放射性金属イオンが溶解した溶液を放射性核種として用いることができる。
 錯体形成後、ろ過フィルター、メンブランフィルター、種々の充填剤を充填したカラム、クロマトグラフィー等を用いて、得られた錯体を精製してもよい。
 本発明の放射性複合体の製造方法は、錯体形成工程の後にコンジュゲーション工程が実行されることが好ましい。
 より好ましい態様において、錯体形成工程(A)では、放射性金属核種と、クリック反応可能な第1原子団を抗体と複合化を可能とするための置換基として有するキレート剤と、の間で錯体を形成する。次いで、コンジュゲーション工程(B)では、前述した式(i)で示す抗体修飾ペプチドとクリック反応可能な第2原子団とを有する抗体修飾リンカー(L)を用いて、Fc領域を部位特異的に修飾されたペプチド修飾抗体と、工程(A)で得られた錯体形成されたキレート剤との間でクリック反応を実行し、本発明の放射性複合体を得る。
 以下工程(A)及び(B)について、詳述する。
 クリック反応可能な第1原子団と第2原子団の組み合わせとしては、クリック反応の種類に応じて適切なものが選択され、例えば、アルキンとアジドとの組み合わせ、1,2,4,5-テトラジンとアルケンとの組み合わせ等が挙げられる。これらの原子団は、第1原子団が上記原子団の組み合わせのうち一つを有し、第2原子団が上記原子団の組み合わせのうち第1原子団と異なる一つとなる原子団を有していればよい。キレート剤及び抗体の安定性と、これらの結合効率の向上とを両立する観点から、キレートリンカー(L)がアルキンであり且つ抗体修飾リンカー(L)がアジドであるか、又はキレートリンカー(L)が1,2,4,5-テトラジンであり且つ抗体修飾リンカー(L)がアルケンであることが好ましい。このような原子団の組み合わせによるクリック反応の具体例として、ヒュスゲン環化付加反応、あるいは逆電子要請型ディールスアルダー反応等が挙げられる。
 クリック反応可能な原子団の組み合わせの具体例としては、以下の式に示すように、第1原子団のアルキンとしてジベンジルシクロオクチン(DBCO)を含む原子団(式(1a))と、第2原子団のアジドとしてアジド基を含む原子団(式(2a))との組み合わせ、あるいは、第1原子団として1,2,4,5-テトラジンを含む原子団(式(1b))と、第2原子団のアルケンとしてtrans-シクロオクテン(TCO)を含む原子団(式(2b))との組み合わせが挙げられる。好ましくは式(1a)と式(2a)との組合せである。
 式(1a)中、Rは、キレート剤との連結部位を示し、式(2a)中、Rは、抗体修飾ペプチドとの連結部位を示す。
 式(1b)中、R及びRのうち一方がキレート剤との連結部位又は抗体修飾ペプチドとの連結部位を示し、他方が水素原子、メチル基、フェニル基又はピリジル基を示す。Rは、式(1b)の原子団がキレート剤と連結しているとき、抗体修飾ペプチドとの連結部位であり、式(1b)の原子団が抗体修飾ペプチドと連結しているときキレート剤との連結部位を示す。
 第1原子団のアルキンとして、上記式(1a)で表されるジベンジルシクロオクチン(DBCO)を含む原子団を用いる場合は、市販されている種々のDBCO試薬が挙げられる。具体的には、例えば、DBCO-C6-Acid、Dibenzylcyclooctyne-Amine、Dibenzylcyclooctyne Maleimide、DBCO-PEG acid、DBCO-PEG-Alcohol、DBCO-PEG-amine、DBCO-PEG-NH-Boc、Carboxyrhodamine-PEG-DBCO、Sulforhodamine-PEG-DBCO、TAMRA-PEG-DBCO、DBCO-PEG-Biotin、DBCO-PEG-DBCO、DBCO-PEG-Maleimide、TCO-PEG-DBCO、DBCO-mPEGなどが選択でき
るが、好ましくはDibenzylcyclooctyne Maleimideを用いる。
 錯体形成工程(A)では、より好ましくは、以下の式(ii)で表される構造を有する化合物を用いる。
 A-B-C ・・・(ii) 
 式(ii)中、Aは、前述したキレート剤であり、BとCとの総称がキレートリンカー(L)である。
 式(ii)中、Bは以下の式(iib)で表される。
 式(iib)中、La及びLbは、独立して、少なくともアミド結合を含む炭素数1以上50以下の結合リンカーであり、tは0以上30以下の整数であり、sは0又は1であり、*はAとの結合部位であり、**はCとの結合部位である。
 式(ii)中、Cは、以下の式(iic)で表されるアルキン誘導体又は式(iid)で表されるテトラジン誘導体のいずれかである。
 式(iic)中、XはCHRk-**又はN-**であり、YはCHRk又はC=Oであり、Rkは独立して水素原子であるか、炭素数1以上5以下のアルキル基であって、XがCHRk-**で、YがCHRkである場合は、Rk部分が一緒になってシクロアルキル基を形成してもよく、Rf、Rg、Rh及びRiは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基であり、RfとRgが一緒になって、若しくはRhとRiが一緒になって炭化水素環を形成してもよく、**はBとの結合部位を示し、式(iid)中、**はBとの結合部位を示し、Rjは水素原子、メチル基、フェニル基又はピリジル基を示す。
 工程(A)で使用されるキレート剤として、上記式(A)中、R11乃至R14が、-(CHCOOHであり、pが1であり、R15がBとの結合部位であるDOTA誘導体;又はR11乃至R14が、-(CHCOOHであり、pが1であり、R12がBとの結合部位(*)であり、R15が水素原子であるDO3A誘導体若しくはDOTAGA誘導体のいずれかがより好ましい。
 式(ii)中、Aが上記DO3Aである場合、Bは、Laがアミド結合を含む炭素数1以上50以下の結合リンカーであり、sが0又は1であり、sが1である場合は、tが0以上30以下の整数であり、Lbがアミド結合を含む炭素数1以上50以下の結合リンカーであり、Cは、式(iic)で表されるアルキン誘導体であり、式(iic)中、XがN-**であり、YがCHRkであり、Rkが水素原子であり、RfとRgが一緒になってベンゼン環を形成しており、RhとRiが一緒になってベンゼン環を形成しており、**はBとの結合部位である、DO3A-PEGt-DBCOが好ましい。
 式(ii)中、Aが上記DOTAGA誘導体である場合、Bは、Laがアミド結合を含む炭素数1以上50以下の結合リンカーであり、sが0又は1であり、sが1である場合は、tが0以上30以下の整数であり、Lbがアミド結合を含む炭素数1以上50以下の結合リンカーであり、Cは、式(iic)で表されるアルキン誘導体であり、式(iic)中、XがN-**であり、YがCHRkであり、Rkが水素原子であり、RfとRgが一緒になってベンゼン環を形成しており、RhとRiが一緒になってベンゼン環を形成しており、**はBとの結合部位である、DOTAGA-PEGt-DBCO誘導体が好ましい。より好ましくは、下記のDOTAGA-DBCOである。
 キレート剤と放射性金属核種とのモル比率は、キレート部/放射性金属核種として、下限が、10/1以上が好ましく、100/1以上がより好ましく、500/1以上がさらに好ましく、上限が、10000/1以下が好ましく、8000/1以下がより好ましく、7000/1以下がさらに好ましく、例えば、100/1以上7000/1以下の範囲が好ましく、より好ましくは500/1以上7000/1以下の範囲である。
 錯体形成反応は、溶媒下に行うことが好ましい。溶媒としては、例えば水、生理食塩水、又は酢酸ナトリウム緩衝液、酢酸アンモニウム緩衝液、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、トリスヒドロキシメチルアミノメタン緩衝液(Tris緩衝液)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸緩衝液(HEPES緩衝液)、若しくはテトラメチルアンモニウム酢酸緩衝液等の緩衝液等を用いることができる。
 溶媒の液量は特に限定されないが、製造工程における実用性の観点から、工程(A)の開始時において、下限は、0.01mL以上、好ましくは0.1mL以上、より好ましくは1.0mL以上、さらに好ましくは10mL以上、よりさらに好ましくは100mL以上であり、上限は、好ましくは1000mL以下、より好ましくは100mL以下、さらに好ましくは10mL以下、よりさらに好ましくは1.0mL以下であり、例えば、0.01mL以上100mL以下の範囲である。
 錯体形成反応の反応液中のキレート剤の濃度は、目的とするキレート剤の収率の観点から、それぞれ独立して、工程(A)の開始時において、下限は、好ましくは0.001μmol/L以上、より好ましくは0.01μmol/L以上、さらに好ましくは0.1μmol/L以上、より好ましくは1μmol/L以上であり、上限は、好ましくは1000μmol/L以下、より好ましくは100μmol/L以下、さらに好ましくは10μmol/L以下であり、例えば、1μmol/L以上100μmol/L以下の範囲が挙げられる。
 錯体形成反応の温度としては、例えば室温(25℃)であってもよく、加熱条件下であってもよいが、キレート剤の分解抑制と錯体の形成効率向上とを両立する観点から、下限は、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上、さらに好ましくは35℃以上、よりさらに好ましくは37℃以上、特に好ましくは45℃以上であり、上限は、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは100℃以下、よりさらに好ましくは90℃以下であり、例えば、30℃以上100℃以下の範囲が好ましく、より好ましくは35℃以上90℃以下の範囲である。
 工程(B)で使用される抗体は、前述した式(i)で示す抗体修飾ペプチドと、クリック反応可能な第2の原子団とを有する抗体修飾リンカー(L)を用いて、上記「(1-2)抗体」の項で詳述した抗VEGF抗体のFc領域(定常領域)が部位特異的に修飾されたペプチド修飾抗体である。
 抗体修飾ペプチドは、天然アミノ酸及び非天然アミノ酸を問わないアミノ酸を組み合わせて用いて、例えば液相合成法、固相合成法、自動ペプチド合成法、遺伝子組み換え法及びファージディスプレイ法等のペプチド合成法に供することよって製造することができる。ペプチドの合成にあたり、必要に応じて、用いられるアミノ酸の官能基の保護を行ってもよい。これらは、例えば、国際公開第2017/217347号及び国際公開第2018/230257号に記載の方法に準じて行うことができる。
 抗体修飾リンカー(L)は、抗体修飾ペプチドと、以下の式(S1)で表されるリンカー(L)とが結合したものであってもよい。
  *-((L-Z)-Lii-AG2 ・・・(S1)
(式中、*は、ペプチドのN末端又はC末端との結合部位を示し、
 Lは、ポリエチレングリコール(PEG)リンカー部であり、
 mは、1以上50以下の整数であり、
 Zは、(LとLiiとを結合する第2リンカー部であり、
 kは、0又は1であり、
 Liiは、第2のPEGリンカー部であり、
 AG2は第2原子団である。)
 前記式(S1)において、Zの構造は、(LとLiiとを互いに結合するリンカー構造であれば特に限定されないが、例えば1以上5以下のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含むことができる。この場合、Zに含まれるアミノ酸配列は、システイン残基を含むことが好ましく、システイン残基のチオール基とマレイミド基との結合により形成されたチオエーテル基を介してLと結合していることがより好ましい。
 本発明において、Liiを構成するポリエチレングリコール(PEG)リンカー部は、以下の式(P2)に示す構造を有していることが好ましい。式(P2)中、nは整数であり、好ましくは1以上50以下、より好ましくは1以上20以下、さらに好ましくは2以上10以下、一層好ましくは2以上6以下である。
 PEGリンカー部の構造の一端は、市販されているPEG化試薬に由来する構造又はPEG化する際に通常用いられる試薬に由来する構造によって修飾されていてもよく、特に限定されないが、例えばジグリコール酸又はその誘導体、マレイミド又はその誘導体に由来する構造が例示される。
 抗体修飾リンカー(L)への前記第2原子団への導入方法は、上述の方法によって所望のアミノ酸配列を有する抗体修飾ペプチドを得た後、該ペプチドを、溶解補助剤及び還元剤、並びに必要に応じて酸を加えた溶液に溶解し、該溶液に第2原子団として、アジド基又はtrans-シクロオクテン(TCO)を含む原子団の有機溶媒溶液を添加し、室温で攪拌することにより導入する方法が挙げられる。
 第2原子団としてアジド基を含む原子団を導入する場合には、市販のアジド基導入試薬を用いて、常法に従い、ペプチドのN末端又はC末端に直接アジド基を導入するか、又は上述したリンカー構造を介してアジド基を含む原子団を導入することができる。用いられるアジド基導入試薬としては例えば、シリルアジド、リン酸アジド、アルキルアンモニウムアジド、無機アジド、スルホニルアジド、又はPEGアジド等が挙げられる。
 また、第2原子団としてTCOを含む原子団を導入する場合には、TCOを含む市販のクリックケミストリー用試薬を用いて、常法に従い、ペプチドのN末端又はC末端に直接TCOを導入するか、又は上述したリンカー構造を介してTCOを含む原子団を導入することができる。
 抗体修飾ペプチドと抗VEGF抗体とを結合させて、ペプチド修飾抗体を得る方法は、国際公開第2017/217347号の記載に準じて、例えば、上述した抗体修飾ペプチドと、抗VEGF抗体と、架橋剤と、必要に応じて触媒とを、適切な緩衝液中に分散させて行うことができる。ここで、架橋剤は上述のものを用いることができる。また、抗体修飾ペプチドと抗VEGF抗体とを結合させる際に、必要に応じて抗VEGF抗体を含む溶液を、限外ろ過フィルター等で処理して緩衝液に分散させる緩衝液置換を1回又は2回以上実施してから、抗体修飾ペプチドと結合させてもよい。
 一態様において、本開示は、架橋剤で修飾されている抗体修飾ペプチドと抗VEGF抗体を混合する工程を含む、抗体修飾ペプチドと抗VEGF抗体の複合体を生産する方法に関する。本工程により、架橋剤で修飾されている抗体修飾ペプチドと抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)の間で架橋反応が生じ得る。架橋反応は、抗体修飾ペプチドの上記Xaaのアミノ酸残基と、ヒトIgG FcにおけるEu numberingに従うLys252残基又はLys254残基、好ましくはLys254残基との間で部位特異的に生じ得る。
 該混合工程の条件は、抗体修飾ペプチドと抗VEGF抗体の間で架橋反応が生じる条件で行うものであれば特に限定しない。例えば、抗体修飾ペプチドと抗VEGF抗体を、適当なバッファー中において、室温(例えば約15℃~30℃)で混合することにより反応を行うことができる。該混合工程は、必要に応じて架橋反応を促進する触媒を適量加えて行ってもよい。
 一例として、少なくとも水を含む溶媒を加えて、抗VEGF抗体を溶解する。この溶媒は、水以外には、例えば、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、生理食塩水、又は、酢酸ナトリウム緩衝液、酢酸アンモニウム緩衝液、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、Tris緩衝液、HEPES緩衝液、テトラメチルアンモニウム酢酸緩衝液若しくはヒスチジン緩衝液等の緩衝液等が挙げられる。緩衝液を用いる場合、抗体の安定性の観点から、25℃におけるpHを好ましくは4.0以上10.0以下、より好ましくは5.5以上8.5以下とする。抗体の濃度は、架橋反応の開始時において、好ましくは、下限を1.0μmol/L以上、上限を1000μmol/L以下とし、上限についてより好ましくは500μmol/L以下とすることが好ましい。
 次いで、架橋剤により修飾された抗体修飾ペプチドと必要に応じて触媒を加え、10℃以上30℃以下で分散させて行うことができる。
 該混合工程における抗体修飾ペプチドと抗VEGF抗体の混合比率は、特に限定しない。抗体修飾ペプチドと抗VEGF抗体のモル比率は、例えば1:1~20:1、好ましくは2:1~20:1又は5:1~10:1とすることができる。
 ある好ましい態様では、上記混合工程においては、抗VEGF抗体に対して抗体修飾ペプチド(モル比)は、0.5~2.2、好ましくは0.8~1.8で混合することができる。このようにすることで、抗VEGF抗体1分子に対して抗体修飾ペプチド1分子が結合した抗体(以下、「一価抗体」という)を効率よく得ることができる。
 該混合工程における混合時間(反応時間)は、抗体修飾ペプチドと抗VEGF抗体の間で架橋反応が生じる限り限定するものではないが、例えば、1分~5時間、好ましくは10分~2時間とすることができる。
 以上の工程を経て得られるペプチド修飾抗体は、抗VEGF抗体1分子に対して抗体修飾ペプチド1分子が結合した抗体(すなわち、一価抗体)と、抗VEGF抗体1分子に対して抗体修飾ペプチド2分子が結合した抗体(以下、「二価抗体」という)とを任意の割合で含有する混合物であるが、これをそのままで以後の工程に供してもよく、ろ過フィルター、メンブランフィルター、種々の充填剤を充填したカラム、各種クロマトグラフィー等の方法で、未修飾抗体と、一価抗体と、二価抗体とを分離精製したあとでいずれかの価数の抗体のみを以後の工程に供してもよい。精製の結果、未修飾抗体と他の価数の抗体との分離ができない場合には、これらを含有する混合物として以降の工程に供してもよい。
 未修飾抗体と、一価抗体と、二価抗体とを分離精製する場合は、上記のいずれの精製方法で分離精製してもよいが、種々の充填剤を充填したカラムを用いることができ、例えば、プロテインA、プロテインG又は上述の抗体修飾ペプチド等のタンパク質が担体に結合した充填剤が充填されたカラムを用いることができる。このようなカラムに充填される充填剤の担体の形状としては、ゲル(例えばカラム用ゲル)、粒子、ビーズ、ナノ粒子、微粒子及びマクロビーズなどの形状が挙げられ、担体の材質としては、磁性物質、ラテックス、アガロース、ガラス、セルロース、セファロース、ニトロセルロース、ポリスチレン、その他の高分子材料が挙げられる。具体的には上述の抗体修飾ペプチドを、カラム用ゲルに結合させたIgG-BPカラムが例示できる(国際公開第2021/080008号)。
 IgG-BPカラムは、IgG結合ペプチドを固相化したカラムである。二価抗体は、結合部位がすでにIgG結合ペプチドで占有されているために当該カラムには結合し得ず、一価抗体のみが当該カラムに対して親和性を示す。このIgG-BPカラムを用いて、抗体修飾ペプチドに対するそれぞれの相互作用の違いを利用して、未修飾抗体および一価抗体を相対的に多く含む第一の抗体組成物と、二価抗体を相対的に多く含む第二の抗体組成物とをそれぞれ分離精製することができる。ある好ましい態様では、第一の抗体組成物において、未修飾抗体と一価抗体とのモル比が4~47:53~96、好ましくは4~30:70~96、より好ましくは4~20:80~96、さらに好ましくは、4~10:90~96である。
 このようにして、分離精製した第一の抗体組成物又は第二の抗体組成物は、そのまま以降の工程(B)におけるクリック反応に用いてもよく、含有するペプチド修飾抗体のタンパク質濃度を調節してから工程(B)におけるクリック反応に用いてもよい。
 工程(B)におけるクリック反応は、キレート剤が有するクリック反応可能な第一原子団と、ペプチド修飾抗体が有するクリック反応可能な第二原子団との間で実行されるものである。かかるクリック反応によりキレート剤と抗体とを連結する結合基(抗体との複合化を可能とする置換基)が形成される。
 ペプチド修飾抗体と工程(A)で得られた錯体とがクリック反応可能であれば、これらの添加順序は問わず、例えば、溶媒を収容した反応容器に、該錯体及び該ペプチド修飾抗体の一方を添加し、次いで他方を添加して反応させてもよく、該キレート剤及び該抗体の一方を溶媒に分散した分散液に他方を添加して反応させてもよい。あるいは、溶媒を収容した反応容器に、これらを同時に添加して反応させてもよい。
 工程(B)のクリック反応に用いられる溶媒としては、水を含む溶媒を用いることができ、例えば、水、生理食塩水、又は酢酸ナトリウム緩衝液、酢酸アンモニウム緩衝液、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、Tris緩衝液、HEPES緩衝液、若しくはテトラメチルアンモニウム酢酸緩衝液等の緩衝液等を用いることができる。緩衝液を用いる場合、錯体及び抗体の安定性と、これらの結合効率とを両立する観点から、25℃におけるpHを好ましくは4.0以上10.0以下、更に好ましくは5.5以上8.5以下とする。
 反応液量は、特に限定されないが、製造工程における実用性の観点から、工程(B)の開始時において、下限は、0.001mL以上が好ましく、0.01mL以上がより好ましく、0.1mL以上がさらに好ましく、1mL以上がよりさらに好ましく、上限は、1000mL以下が好ましく、100mL以下がより好ましく、10mL以下がさらに好ましく、1mL以下がよりさらに好ましく、例えば0.001mL以上1000mL以下の範囲が好ましく、0.1mL以上10mL以下の範囲がより好ましい。
 また、キレート剤及び抗体の反応液中の濃度は、それぞれ独立して、工程(B)の開始時において、下限として、0.001μmol/L以上が好ましく、0.01μmol/L以上がより好ましく、0.1μmol/L以上がさらに好ましく、1.0μmol/L以上がよりさらに好ましく、上限として、1000μmol/L以下が好ましく、100μmol/L以下がより好ましく、例えば、0.1μmol/L以上1000μmol/L以下の範囲が好ましく、1μmol/L以上100μmol/L以下の範囲であることが、目的とする複合体の収量の観点からより好ましい。
 抗体の意図しない変性を防ぎつつ、反応効率を高める観点から、工程(B)におけるクリック反応は、反応温度の上限は、50℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましい。また、反応温度の下限は、反応が進行する温度であれば特に制限はないが、15℃以上が好ましい。クリック反応の反応時間は、上述の反応温度であることを条件として、好ましくは5分以上、より好ましくは10分以上であり、24時間以下が好ましく、より好ましくは20時間以下であり、例えば、5分以上24時間以下の範囲が好ましく、より好ましくは10分以上20時間以下の範囲である。
 得られた複合体は、これをそのままで用いてもよく、あるいは、ろ過フィルター、メンブランフィルター、種々の充填剤を充填したカラム、クロマトグラフィー等を用いて精製してもよい。
 工程(A)及び(B)によって製造される複合体は、抗VEGF抗体のFc領域のリシン残基がキレート剤により特異的に修飾されたものである。この複合体は、該抗体1分子に対し、前記キレート剤を1分子又は2分子備える。キレート剤は、リンカー(L)を介して、本発明の抗体のFc領域を部位特異的に修飾している。該リンカー(L)は、キレート剤に接続するキレートリンカー(L)、該リンカー(L)に接続する第1原子団、第1原子団とクリック反応し得る第2原子団、第2原子団に接続する抗体修飾リンカー(L)(上記式(i)で表される抗体修飾ペプチドを含む)で構成される。従って、該リンカー(L)は、第1原子団と第2原子団とに由来する化学構造を有する。このような化学構造としては、前述の式(10a)又は(10b)で表されるトリアゾール骨格含有構造又は前述の式(10c)で表されるピリダジン骨格含有構造が考えられる。式(10a)と式(10b)は異性体の関係にあるため任意の割合で含まれていてもよい。
(1-7)放射性医薬
 放射性医薬とは、本発明の放射性複合体を含み、対象の生体内への投与に適した形態となっている組成物を指す。放射性医薬は、例えば上述の(1-6)に示す方法で製造した放射性複合体をそのままで、又はこれを精製したあとで、水を主体とし、且つ生体と等張の溶媒に溶解させて製造することができる。この場合、放射性医薬は水溶液の形態であることが好ましく、必要に応じて、薬学的に許容される他の成分を含んでいてもよい。放射性医薬は、その有効量が、経口的に、又は静脈内、皮下、腹腔内若しくは筋肉内等の非経口的に生体に投与され、がんの治療、がんの診断、あるいは病巣の検出等に用いられる。
 ここで投与対象としてはヒト、又はマウス、ラット、サル、モルモット、チンパンジー、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシもしくはウマなどの動物であるが、特に限定されるものではない。好ましくはヒトである。
 好ましい対象疾患としてVEGF陽性のがんが挙げられる。本発明で治療、診断若しくは検出されるVEGF陽性のがんは、VEGFを発現していればその種類は特に限定されないが、例えば、肺がん、結腸・直腸がん、肝細胞がん、乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、悪性神経膠腫を挙げることができる。また、VEGFが発現しているがんは、いかなる病期のがんであってもよく、限局性若しくは転移性、又は原発性若しくは再発性のいずれであってもよい。ここで「発現」とは、公知の検査手法で測定した場合に腫瘍組織におけるVEGF遺伝子が非腫瘍組織に比べて有意な増幅又はVEGFタンパク質の発現が非腫瘍組織に比べて有意な亢進が観察される状態をいう。
 ここでの「有効量」とは、投与対象における診断上又は治療上有効な効果を得ることができる量である。対象に投与するべき有効量は、対象の種類、対象の体重、投与する剤形(錠剤、注射剤など)および経路(経口投与、非経口投与など)、および疾患(例、がん)の重篤度などにより異なる。医師や獣医師はそれらの因子を考慮して、適切な有効量を決定することができる。
 本発明の放射性医薬は、室温で保管したとき、その放射性医薬を構成する放射性金属核種の半減期を基準として、半減期の1以上5以下の倍数の期間経過時点において、一定の割合以上の放射化学的純度を有する。上記の放射性金属核種がβ線核種(例えば、Lu-177又はY-90)であるとき、好ましくは、室温で製造終了から7日間保管した時の複合体の放射化学的純度が90%以上であり、より好ましくは95%以上である。また、放射性金属核種がα線核種(例えば、Ac-225)であるときに、好ましくは、室温で製造終了から14日間保管した時の複合体の放射化学的純度が90%以上であり、より好ましくは95%以上である。
 本発明の放射性医薬の具体的な態様は、放射性金属核種がキレート化したキレート剤と、抗VEGF抗体との複合体とを有効成分として含有し、抗VEGF抗体とキレート剤との連結(特にリンカー(L)を介した連結)にチオウレア結合を含まず、室温で保管したとき、その放射性医薬を構成する放射性金属核種の半減期を基準として、半減期の1以上5以下の倍数の期間経過時点において、一定の割合以上の放射化学的純度を有する。上記の放射性金属核種がβ線核種(例えば、Lu-177又はY-90)であるとき、好ましくは、室温で製造終了から7日間保管した時の前記複合体の放射化学的純度が90%以上であり、より好ましくは95%以上である。また、放射性金属核種がα線核種(例えば、Ac-225)であるときに、好ましくは、室温で製造終了から14日間保管した時の複合体の放射化学的純度が90%以上であり、より好ましくは95%以上である。
 ここで本明細書における「室温」とは、好ましくは日本薬局方で定義される「常温」をいい、具体的には15~25℃である。
 ここで、放射化学的純度は、試料を市販の放射線検出器で分析した場合に検出された全放射能(カウント)に対する、複合体に相当するピークの放射能(カウント)の百分率をいう。放射化学的純度の分析には高速液体クロマトグラフィーや薄層クロマトグラフィーを用いることができるが、薄層クロマトグラフィーを用いることが好ましい。より好ましくは後述する実施例に記載の条件を用いた薄層クロマトグラフィーを用いる。
 前述のとおり、本発明の放射性医薬は、水溶液の形態であることが好ましいが、放射化学的純度を維持する観点から緩衝液の形態がより好ましい。緩衝液としては、抗VEGF抗体又は抗VEGF抗体のADCを有効成分として含有する抗体医薬で使用されている任意の緩衝液を用いることができ、特に限定されない一例として、リン酸緩衝液、コハク酸緩衝液又はクエン酸緩衝液を使用することができる。リン酸緩衝液は、リン酸とその塩から構成され、例えば、リン酸とそのナトリウム塩から構成することができる。コハク酸緩衝液は、コハク酸とその塩から構成され、例えば、コハク酸とそのナトリウム塩から構成することができる。クエン酸緩衝液は、クエン酸とその塩から構成され、例えば、クエン酸とそのナトリウム塩から構成することができる。本発明の放射性医薬には、トレハロース、スクロースなどの任意の糖を含んでいてもよいし、ヒスチジンなどの任意のアミノ酸を含んでいてもよいし、ポリソルベート20、ポリソルベート80などの可溶化剤を含んでいてもよい。
 放射性金属核種として治療効果を有するもの、具体的には、α線を放出する放射性核種又はβ線を放出する核種(好ましくは、Ac-225、Y-90、Lu-177であり、より好ましくはAc-225)を選択することにより、本発明の放射性医薬は、がんの放射線内用療法に用いることができる。この放射線内用療法では、本発明の放射性医薬を静注や経口で投与し、がん原発巣や転移巣のような病巣部位に本発明の放射性複合体を集積させ、放射性金属核種から放出される放射線により、病巣部位のがん細胞を破壊することができる。本発明の放射性医薬の投与量、用量は、有効成分の有効性、投与の形態・経路、がんの進行ステージ、患者の体型・体重・年齢、併用する他の疾患の治療薬の種類や量に応じ、適宜選択される。
 また、放射性金属核種として、ポジトロンを放出する放射性核種やγ線を放出する放射性核種(好ましくは、Ga-68、Zr-89、In-111)を選択することで、がんの診断又は病巣の検出に用いることができる。ポジトロンを放出する放射性核種が用いられた放射性医薬の場合、PET(Positron Emission Tomography)検査に好適に用いることができ、γ線を放出する放射性核種が用いられた放射性医薬の場合、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)検査に好適に用いることができる。これを上述したがんの放射線内用療法におけるがんの診断又は病巣の検出に併用してもよい。本発明のがんの診断用放射性医薬は、がんの放射線内用療法を行う前の診断に用いてもよいし、がんの放射線内用療法を行った後の診断に用いてもよい。がんの放射線内用療法を行う前の診断に用いられることによって、α線を放出する金属核種を備えた本発明の放射性医薬を用いたがんの放射線内用療法を実行するかどうかの治療選択の判断に用いることができる。また、がんの放射線内用療法を行った後の診断に用いられることによって、本発明の放射性医薬を用いたがんの放射線内用療法の効果があるかどうかの判定や投与量の増減などの治療計画の適正化に用いることができる。
 以下の態様も本発明の技術的思想に包含される。
[1]抗体修飾ペプチドで部位特異的に修飾された抗体とキレート剤との複合体であって、
 前記抗体が抗VEGF抗体であり、
 前記キレート剤に放射性金属核種がキレート化している、複合体。
[2]前記ペプチドが、下記の式(i):
(Xa)-Xaa-(Xb)-Xaa-(Xc)-Xaa-(Xd)・・・(i)
(式(i)中、Xa、Xb、Xc及びXdは、それぞれ、連続するa個のX、連続するb個のX、連続するc個のX、及び連続するd個のXを表し、
Xは、側鎖にチオール基及びハロアセチル基のいずれも有しないアミノ酸残基であり、
a、b、c及びdはそれぞれ独立に1以上5以下の整数で、かつa+b+c+d≦14を満たし
Xaa及びXaaは、それぞれ独立に、
側鎖にチオール基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸残基、又は、側鎖にハロアセチル基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸残基を表し、ただし、Xaa及びXaaのいずれか一方がチオール基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸残基であり、
Xaa及びXaaが連結することで、環構造が形成されており、
Xaaは、リシン残基、アルギニン残基、システイン残基、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、2-アミノスベリン酸、又はジアミノプロピオン酸であり、かつXaaが架橋剤で修飾されている。)
で表される、13~17アミノ酸残基からなるアミノ酸配列である、[1]に記載の複合体。
[3]前記放射性金属核種がGa-68、Zr-89、Y-90、In-111、Lu-177又はAc-225である、[1]又は[2]に記載の複合体。
[4]前記抗VEGF抗体がベバシズマブである、[1]乃至[3]いずれか一項に記載の複合体。
[5]前記ペプチドとキレート剤とがリンカー(L)を介して連結しており、該連結がチオウレア結合を含まない共有結合によるものである、[1]乃至[4]いずれか一項に記載の複合体。
[6]前記ペプチドとキレート剤とがリンカー(L)を介して連結しており、前記リンカー(L)が式(10a)、式(10b)又は式(10c)を含む、[1]乃至[5]いずれか一項に記載の複合体。
(式(10a)及び式(10b)中、R1Aは前記キレート剤との連結部位を示し、R2Aは前記ペプチドとの連結部位を示す。式(10c)中、R3A及びR4Aのうち一方は水素原子、メチル基、フェニル基又はピリジル基を示し、他方は前記キレート剤との連結部位を示し、R5Aは前記ペプチドとの連結部位を示す。)
[7]前記ペプチドとの連結部位と前記ペプチドとの間に、ポリエチレングリコール基を含む、[6]に記載の複合体。
[8]前記キレート剤がDOTAGA(α-(2-Carboxyethyl)-1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetraacetic acid)である、[1]乃至[6]いずれか一項に記載の複合体。
[9]N末端にアジド基が導入された前記ペプチドが部位特異的に修飾している抗VEGF抗体と、下記式で表されるDOTAGA-DBCOの放射性金属錯体とをクリック反応させることで複合化した、[1]乃至[8]いずれか一項に記載の複合体。
[10][1]乃至[9]いずれか一項に記載の複合体を有効成分として含有する放射性医薬。
[11]がんの放射線内用療法に用いられる、[10]に記載の放射性医薬。
[12]がんの診断に用いられる、[10]に記載の放射性医薬。
[13][11]に記載された放射性医薬を用いたがんの放射線内用療法に併用される、[12]に記載の放射性医薬。
[14]放射性金属核種がキレート化したキレート剤と、抗VEGF抗体との複合体を有効成分として含有し、
 抗VEGF抗体とキレート剤との連結にチオウレア結合を含まない、下記(1)または(2)の条件を満たす放射性医薬:
(1)前記放射性金属核種が177Lu又は90Yであって、室温で7日間保管した時の前記複合体の放射化学的純度が90%以上である。
(2)前記放射性金属核種が225Acであって、室温で14日間保管した時の前記複合体の放射化学的純度が90%以上である。
[15]放射性金属核種がキレート化したキレート剤と、抗VEGF抗体との複合体を有効成分として含有し、
 抗VEGF抗体とキレート剤との連結にチオウレア結合を含まず、
 前記放射性金属核種の半減期を基準として、前記半減期の1以上5以下の倍数の期間経過時点において、前記複合体の放射化学的純度が90%以上である放射性医薬。
 以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
[実施例1]部位特異的に225Ac標識されたDOTAGAとベバシズマブとの複合体(225Ac-CCAP-ベバシズマブ1)の製造
(1.抗体修飾工程)
 国際公開第2017/217347号に記載の方法で、下記式(P3)で表される17個のアミノ酸残基を含むペプチドを得た。このペプチドのアミノ酸配列は、配列番号(2)のXaaがリシン残基である配列と同一であり、リシン残基の側鎖末端アミノ基がRで示される構造で修飾されていた。また、2つのシステイン残基で互いにジスルフィド結合しており、ペプチドのN末端はジグリコール酸及び8つのPEGを有するリンカー(L)構造を介して、第2原子団であるアジド基を含む原子団として、エチルアジドが結合しているものであった。
 (式(P3)中、Glyはグリシンを、Proはプロリンを、Aspはアスパラギン酸を、Cysはシステインを、Alaはアラニンを、Tyrはチロシンを、Lysはリシンを、Hisはヒスチジンを、Gluはグルタミン酸を、Leuはロイシンを、Valはバリンを、Trpはトリプトファンを、Thrはスレオニンを、Pheはフェニルアラニンをそれぞれ示す。)
 上述のペプチドと、ベバシズマブ(Rоche社製)とを、0.02mol/L酢酸・酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)に混合した混合液を、室温で60分間反応させて、ペプチド修飾抗体を含む溶液を得た。このペプチド修飾抗体は、上記のペプチドによって抗体のFc領域が部位特異的に修飾されたものである。
 次いで、IgG-BPカラムに通液して、未標識抗体及び一価抗体を相対的に多く含む第一の抗体組成物を得た。回収した画分に含まれる一価抗体の濃度が14.6mg/mLになるように保存緩衝液(60g/Lトレハロース及び5.8g/Lリン酸二水素ナトリウム一水和物、無水リン酸一水素ナトリウム、0.4g/Lポリソルベート20混液)で濃度を調整した。得られた第一の抗体組成物を含む溶液を後述の標識工程に供した。
(2.錯体形成工程)
 下記式で表されるDOTAGA-DBCOをBernhard et al. DOTAGA-Anhydride: A Valuable Building Block for the Preparation of DOTA-Like Chelating Agents.Chem.Eur. J.2012,18, 7834-7841に記載の方法を基にして製造した。このキレート剤を、溶媒として0.1mol/L酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)に分散させて、キレート剤を0.3mmol/L含む分散液とした。この分散液0.028mLと放射性金属源として225Acイオン含有溶液(0.1mol/L塩酸水溶液、放射能濃度237.6MBq/mL、State Atomic Energy Corporation Rosatom製より調製、液量0.0126mL)約2.99MBq(検定日時放射能量から減衰計算した計算値)とを混合した反応液を、加熱条件下で反応させて、225Ac錯体溶液を得た。キレート剤と放射性金属イオンとのモル比率は、キレート剤:225Acイオン=約1350:1であり、反応液の加熱温度は70℃、加熱時間は30分間とした。
 得られた225Ac錯体の放射化学的純度(RCP、%)を次の方法で測定した。すなわち225Ac錯体溶液の一部を薄層クロマトグラフィー(Agilent社製、型番:SGI0001、展開溶媒:アセトニトリル/水混合液(体積比1:1))で展開し、その後、ラジオγ-TLCアナライザー(raytest製、MODEL GITA Star)で測定した。検出された全放射能(カウント)に対する、原点付近に検出されるピークの放射能(カウント)の百分率を225Ac錯体のRCPとした。その結果、225Ac錯体のRCPは79%であった。得られた225Ac錯体溶液は、そのまま標識工程に用いた。
(3.標識工程)
 上述の工程(2)を経て得られた未精製のままの225Ac錯体の溶液に、上記の工程(1)で得られたペプチド修飾抗体(一価抗体)を含む溶液を添加し、37℃で120分間クリック反応させて、225Ac-CCAP-ベバシズマブ1を得た。225Ac錯体の量及びペプチド修飾抗体(一価抗体)の量はそれぞれ8.7nmol及び10.2nmolであり、DBCO基とアジド基とのモル比はそれぞれ約1:1.2であった。未精製時の225Ac-CCAP-ベバシズマブ1の反応率(%)は72%であった。ここで、反応率(%)とは、錯体形成工程での標識率(%)に対する225Ac-CCAP-ベバシズマブ1のRCPを意味し、標識率(%)とは仕込み放射能に対する225Ac錯体の放射能の割合(%)を意味する。
 更に、37℃で2時間反応させて得られた225Ac-CCAP-ベバシズマブ1の溶液を限外ろ過フィルター(Merck社製、型番:UFC505096)を用いて精製した。精製後の225Ac-CCAP-ベバシズマブ1の放射化学的収率(RCY、%)は70%であり、RCPは97%であった。
 225Ac-CCAP-ベバシズマブ1の反応率、RCP及びRCYの測定方法は以下のとおりとした。すなわち、薄層クロマトグラフィー(Agilent社製、型番:SGI0001、展開溶媒はアセトニトリル:0.1mmol/L EDTA溶液の混液(体積比1:1))をラジオγ-TLCアナライザー(raytest社製、MODEL GITA Star)で測定し、検出された全放射能(カウント)に対する、原点付近に検出されたピークの放射能(カウント)の百分率をRCP(%)とし、標識率(%)で除して反応率(%)を算出した。また、標識工程開始時に加えた全放射能(γ線スペクトロメーター(Ge半導体検出器:GMX10P4-70(ORTEC社製)、マルチチャンネルアナライザ:M7-000(セイコー・イージーアンドジー社製)、データ処理:Spectrum Navigator:DS-P300(セイコー・イージーアンドジー社製)及びGamma Studio:DS-P600(セイコー・イージーアンドジー社製)で測定したカウントから計算した放射能量)に対して、限外ろ過精製後に回収した放射能(上述と同様に、γ線スペクトロメーターで測定したカウントから計算した放射能量)の百分率をRCY(%)とした。
[実施例2]部位特異的に225Ac標識されたDOTAとベバシズマブとの複合体(225Ac-CCAP-ベバシズマブ2)の製造
 DOTAGA-DBCOを下記DOTA-Bn-DBCOに代えた以外は、実施例1に準じて操作を行い、225Ac-CCAP-ベバシズマブ2を得た。反応率は50%、RCYは15%、RCPは62%であった。
[実施例3]製剤化工程
 実施例1の記載に従って製造した225Ac-CCAP-ベバシズマブ1を5mLエッペンチューブ(LoBind、エッペンドルフ社製)に一部抜き取り、処方緩衝液(60g/Lトレハロース及び5.8g/Lリン酸二水素ナトリウム一水和物、無水リン酸一水素ナトリウム、0.4g/Lポリソルベート20混液)で希釈した。
[評価1]in vitro薬効評価
 以下の肺がん由来の細胞株を用いて本発明の放射性複合体のin vitroでの薬効を評価した。
・A549(ヒト肺腺癌;入手先:ECACC(The European Collection of Authenticated Cell Cultures);F-12K培地)
・NCI-H358(ヒト肺腺癌;入手先:ATCC(American Type Culture Collection);RPMI 1640培地)
・NCI-H520(ヒト肺扁平上皮癌;入手先:ATCC;RPMI 1640培地)・NCI-H460(ヒト非小細胞肺癌;入手先:ATCC;RPMI 1640培地)
 上述の細胞をそれぞれ適した培地で培養し、実施例3の記載に従って製剤化された225Ac-CCAP-ベバシズマブ1を0、0.001、0.01、0.03、0.1、0.3、1、3、10、30kBq/mL(ベバシズマブとして0.00229、0.0229、0.0687、0.229、0.687、2.29、6.87、22.9、68.7μg/mL)となるように各培地で希釈し、細胞に添加した。また、未標識のベバシズマブを各放射能濃度のサンプルと同様の抗体濃度になるように添加し、培養した。サンプル添加から120時間後、培地にCellTiter-Glo(登録商標)2.0 Cell Viability Assay(Promega社製)を添加し、マイクロプレートリーダー(SpectraMax i3x、モレキュラーデバイス社製)を用いて化学発光を検出し、生細胞数を算出した。算出された生細胞数に対し、抗体を添加していない条件の場合の生細胞数との比率を取り,殺細胞効果を評価した。
 結果を図1に示す。縦軸は、抗体を添加しなかった条件での生細胞数を100%とした場合の相対値を表し、横軸は、添加した抗体濃度を示す。元抗体であるベバシズマブ(未標識)(図中、○)に比べ225Ac-CCAP-ベバシズマブ1(図中、●)は、少量の抗体投与で殺細胞効果が確認された。また、殺細胞効果に添加した放射能依存性が確認された。
[評価2]in vivoの薬効評価
 マウスを用いてA549の皮下担癌モデルを作製し、本発明の放射性複合体のin vivoでの薬効を評価した。
 ATCCから購入したVEGF陽性のヒト肺線がん由来細胞株であるA549細胞をF-12K培地に懸濁し,5週齢の雌性BALB/c nu/nu(ジャクソン・ラボラトリー・ジャパン社製)の脇腹皮下に5×10cells移植して担癌マウスを作製した。腫瘍体積が100~300mmとなるまで成長させ、腫瘍径測定に適した形状の個体から無作為に群分けを実施した。その際の各マウスの腫瘍体積と体重は表1に示す。腫瘍体積は以下の式に従って算出した。
 腫瘍体積(mm)=(腫瘍長径×(腫瘍短径))×1/2
 225Ac-CCAP-ベバシズマブ1を10kBq/匹(ベバシズマブとして60μg/匹)の用量で尾静脈内投与した。
 なお、コントロール群として、抗体対照群、放射能対照群及びVehicle群それぞれを設定した。
 抗体対照群は、225Ac-CCAP-ベバシズマブ1と同じ抗体量のベバシズマブ(未標識)を投与した群である。
 放射能対照群は、実施例1においてベバシズマブをヒトIgG抗体(InVivoPlus human IgG1 isotype control、Bio X cell社製)に代えた以外は同様な手順で製造した225Ac-CCAP-ヒトIgG抗体を10kBq/匹の用量で投与した群である。
 Vehicle群は、実施例3で使用した処方緩衝液のみを投与した群である。
 各群100μL/匹の量で投与した。
 各群は5又は6匹とし、投与後42日まで経時的に、一般状態の観察、体重及び腫瘍体積を計測した。経時的な腫瘍体積の変化を図2のグラフに示す。図2の縦軸は、各薬剤投与時の腫瘍体積を1とした場合の相対値を表し、図2の横軸は、各薬剤を投与してからの経過日数を示す。グラフは各群の腫瘍体積の平均値±標準偏差を表し、「*」はVehicle群に対して有意差(p<0.01)が認められた時点、「†」は放射能対照群に対して有意差(p<0.05)が認められた時点を示す。
 225Ac-CCAP-ベバシズマブ1を投与した群は、投与後42日点において、放射能対照群、及びVehicle群と比較して抗腫瘍効果に有意な差が認められた(P<0.05及びP<0.01)。有意差の検定には、統計解析ソフトStat Preclinica(タクミインフォメーションテクノロジー社製)を用いてTukey検定を行った。一方、225Ac-CCAP-ベバシズマブ1は、抗体対照群と比較して、抗腫瘍効果に有意な差は確認されなかったが、抗腫瘍効果が強い傾向が得られた。また各群とも一般状態に著しい変化はなく、著しい体重減少などの毒性兆候は認められなかった。
[実施例4]部位特異的に89Zr標識されたDOTAGAとベバシズマブとの複合体(89Zr-CCAP-ベバシズマブ1)の製造
(1.錯体形成工程)
 DOTAGA-DBCOを、溶媒として0.1mol/L酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)に分散させて、キレート剤を0.3mmol/L含む分散液とした。この分散液0.1086mLと0.075mol/Lゲンチジン酸含有0.156mol/L酢酸ナトリウム溶液0.0815mL、放射性金属源として89Zrイオン含有溶液(0.1mol/L塩酸水溶液、放射能濃度5.76GBq/mL、日本メジフィジックス株式会社製より調製、液量0.055mL)317MBqとを混合した反応液を、加熱条件下で反応させて、89Zr錯体溶液を得た。キレート剤と放射性金属イオンとのモル比率は、キレート剤:89Zrイオン=約152:1であり、反応液の加熱温度は70℃、加熱時間は60分間とした。得られた89Zr錯体溶液は、そのまま標識工程に用いた。得られた89Zr錯体のRCPを次の方法で測定した。すなわち、89Zr錯体溶液の一部を薄層クロマトグラフィー(Agilent社製、型番:SGI0001、展開溶媒はアセトニトリル:水混合液(体積比1:1))で展開し、その後、ラジオγ-TLCアナライザー(raytest製、MODEL GITA Star PS)で測定した。検出された全放射能(カウント)に対する、原点付近に検出されたピークの放射能(カウント)の百分率を89Zr錯体のRCP(%)とした。その結果、89Zr錯体のRCPは74%であった。得られた89Zr錯体溶液は、そのまま標識工程に用いた。
(2.標識工程)
 上述の工程(1)を経て得られた未精製のままの89Zr錯体の溶液と、実施例1と同様にして得られたペプチド修飾抗体(一価抗体)を含む溶液とを、未精製のままそれぞれ0.1mol/Lアルギニン含有0.05mmol/Lヒスチジン緩衝液(pH6.1)に添加し、37℃で90分間クリック反応させて、89Zr-CCAP-ベバシズマブ1を得た。89Zr錯体の量及びペプチド修飾抗体(一価抗体)の量はそれぞれ32.6nmol及び24.6nmolであり、DBCOとアジドとのモル比はそれぞれ約1:0.75であった。未精製時の89Zr-CCAP-ベバシズマブ1の反応率(%)は74%であった。ここで、反応率(%)とは、錯体形成工程での標識率(%)に対する89Zr錯体標識抗体のRCPを意味し、標識率(%)とは仕込み放射能に対する89Zr錯体の放射能の割合(%)を意味する。
 さらに、37℃で2時間反応させて得られた89Zr-CCAP-ベバシズマブ1の溶液を限外濾過フィルター(Merck社製、型番:UFC505096)を用いて精製した。精製後の89Zr-CCAP-ベバシズマブ1のRCPは96%であり、RCYは62%であった。なお、89Zr-CCAP-ベバシズマブ1のRCP及びRCYの測定方法は、実施例1と同様に行った。
[実施例5]製剤化工程
 実施例4の記載に従って製造した放射性複合体をそれぞれ5mLエッペンチューブ(LoBind、エッペンドルフ社製)に1.0mL抜き取り、処方緩衝液(42g/Lトレハロース水和物、0.47g/L L-ヒスチジン塩酸塩水和物、0.30g/L L-ヒスチジン及び85mg/Lポリソルベート20混液)3.64mLで希釈した。
[評価3]in vivo腫瘍集積性
 評価2で使用した細胞に加えて以下の肺がん由来の細胞株を用いて担癌マウスを作製した。
・NCI-H209(ヒト小細胞肺癌;入手先:ATCC;RPMI 1640培地)
 各細胞株の細胞懸濁液を調製し、5週齢の雌性BALB/c nu/nu(日本チャールス・リバー)の左前脚部に皮下に5×10cells移植して担癌マウスを作製した。腫瘍体積がおおよそ100~300mmとなるまで成長させ、89Zr-CCAP-ベバシズマブ1を6MBq/匹(各n=3)の用量で尾静脈内投与した。投与後72時間後に小動物PETイメージング装置(PET/CT Si78、Bruker社製)を用いて撮像を行った。PETの撮像条件はAcquisition timeは600秒、Energy windowは30%(357.7-664.3keV)とした。データ補正として散乱補正、ランダム補正、減衰補正、パーシャルボリューム(Partial volume)、アテニュエーション(Attenuation)を実施し、PET画像再構成にはMLEM(Maximum likelihood-expectation maximization)法(Iteraions:12)を用いた。
 なお、腫瘍体積は以下の式に従って算出した。
 腫瘍体積(mm)=(腫瘍長径×(腫瘍短径))×1/2
 PET撮像を実施した結果の代表例を図3に示す。図3中、矢印は腫瘍部位を示す。
 腫瘍には他の臓器と比較して放射能が高い濃度で集積し、VEGF陽性腫瘍の描出が可能であった。
[評価4]安定性評価
 実施例1及び実施例2の記載に従って製造し、実施例3の記載に従って製剤化した各放射性複合体(225Ac-CCAP-ベバシズマブ1及び225Ac-CCAP-ベバシズマブ2)を、室温(24.8~24.9℃)で2週間保存し、各時間点(0日点、1日点、7日点、及び14日点)において、RCP、凝集体の割合を評価した。なお、製造終了から14日間は、放射性金属核種が225Acである場合には、約1.5半減期に相当する。
[評価4-1]放射化学的純度
 RCPを薄層クロマトグラフィー(TLC)で分析した。TLCの条件は、実施例1で反応率を調べるときに使用した条件と同様とした。
 結果を表2に示す。
 225Ac-CCAP-ベバシズマブ1では、製造終了後室温で7日間保存した場合はRCPが98%以上に維持されており、14日間保存した場合でもRCPの著しい低下は確認されなかった。
 225Ac-CCAP-ベバシズマブ2は、製造終了後室温で7日以上保存した場合、RCPが80%を下回っていた。
 凝集体の割合は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で確認した。液体クロマトグラフィー装置としてWater社製の2695型セパレーションモジュール又はe2695型セパレーションモジュールを用い、UV検出器としてWaters社製の2489型UV/Vis検出器を使用し、下記の条件で分析した。製造終了後14日間保存した場合の各成分の割合を表3に示す。製造終了後14日間保存した場合、225Ac-CCAP-ベバシズマブ1と225Ac-CCAP-ベバシズマブ2で凝集体の割合は同程度であった。
〔HPLC条件〕
カラム:TOSOH TSKgel guardcolumnSWXL(6mm×4cm),TOSOH TSKgel G3000SWXL(5μm、7.8×30cm)×2本(直列)
カラム温度:25℃付近の一定温度
移動相:0.2mol/Lアルギニン塩酸塩含有0.1mol/Lリン酸二水素ナトリウム緩衝液(pH6.8)
流量:毎分 1.0mL
面積測定範囲:30分
検出波長:280nm
 本出願は、日本で出願された特願2022-021663(出願日:2022年2月15日)を基礎としておりそれらの内容は本明細書に全て包含されるものである。

Claims (13)

  1.  抗体修飾ペプチドで部位特異的に修飾された抗体とキレート剤との複合体であって、
     前記抗体が抗VEGF抗体であり、
     前記キレート剤に放射性金属核種がキレート化している、複合体。
  2.  前記抗体修飾ペプチドが、下記の式:
     (Xa)-Xaa-(Xb)-Xaa-(Xc)-Xaa-(Xd)・・・(i)
    (式(i)中、Xa、Xb、Xc及びXdは、それぞれ、連続するa個のX、連続するb個のX、連続するc個のX、及び連続するd個のXを表し、
    Xは、側鎖にチオール基及びハロアセチル基のいずれも有しないアミノ酸残基であり、
    a、b、c及びdはそれぞれ独立に1以上5以下の整数で、かつa+b+c+d≦14を満たし
    Xaa及びXaaは、それぞれ独立に、
    側鎖にチオール基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸残基、又は、側鎖にハロアセチル基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸残基を表し、ただし、Xaa及びXaaのいずれか一方がチオール基を有するアミノ酸に由来するアミノ酸残基であり、
    Xaa及びXaaが連結することで、環構造が形成されており、
    Xaaは、リシン残基、アルギニン残基、システイン残基、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、2-アミノスベリン酸、又はジアミノプロピオン酸であり、かつXaaが架橋剤で修飾されている。)
    で表される、13~17アミノ酸残基からなるアミノ酸配列である、請求項1に記載の複合体。
  3.  前記放射性金属核種がGa-68、Zr-89、Y-90、In-111、Lu-177又はAc-225である、請求項1に記載の複合体。
  4.  前記抗VEGF抗体がベバシズマブである、請求項1に記載の複合体。
  5.  前記ペプチドとキレート剤とがリンカー(L)を介して連結しており、該連結がチオウレア結合を含まない共有結合によるものである、請求項1に記載の複合体。
  6.  前記ペプチドとキレート剤とがリンカー(L)を介して連結しており、前記リンカー(L)が式(10a)、式(10b)又は式(10c)を含む、請求項1に記載の複合体。

    (式(10a)及び式(10b)中、R1Aは前記キレート剤との連結部位を示し、R2Aは前記ペプチドとの連結部位を示す。式(10c)中、R3A及びR4Aのうち一方は水素原子、メチル基、フェニル基又はピリジル基を示し、他方は前記キレート剤との連結部位を示し、R5Aは前記ペプチドとの連結部位を示す。)
  7.  前記ペプチドとの連結部位と前記ペプチドとの間に、ポリエチレングリコール基を含む、請求項6に記載の複合体。
  8.  前記キレート剤がDOTAGA(α-(2-Carboxyethyl)-1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetraacetic acid)である、請求項1に記載の複合体。
  9.  N末端にアジド基が導入された前記ペプチドが部位特異的に修飾している抗VEGF抗体と、下記式で表されるDOTAGA-DBCOの放射性金属錯体とをクリック反応させることで複合化した、請求項1に記載の複合体。
  10.  請求項1乃至9いずれか一項に記載の複合体を有効成分として含有する放射性医薬。
  11.  がんの放射線内用療法に用いられる、請求項10に記載の放射性医薬。
  12.  がんの診断に用いられる、請求項10に記載の放射性医薬。
  13.  請求項11に記載された放射性医薬を用いたがんの放射線内用療法に併用される、請求項12に記載の放射性医薬。
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