WO2023139791A1 - 原版、リブレット成形方法、リブレット用転写シート及びその製造方法、並びにツール - Google Patents
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Abstract
リブレットパターンをインプリントの手法により樹脂に転写するための原版(10)は、樹脂に転写後に複数のリブレットとなる凹溝(10c)が所定間隔sで形成された一面(10a)を有する、所定厚さTの部材から成り、一面(10a)に該一面より突出した複数の凸部(12)が所定間隔sより広い所定間隔pで配置されている。
Description
本発明は、原版、リブレット成形方法、リブレット用転写シート及びその製造方法、並びにツールに係り、さらに詳しくは、リブレットパターンをインプリントの手法により樹脂に転写するための原版、該原版を用いて物体の表面にリブレットを成形するリブレット成形方法、物体の表面にリブレットパターンを成形するのに用いられるリブレット用転写シート及びその製造方法、リブレットパターンをインプリントの手法により樹脂に転写するための原版を樹脂層が形成された物体上に載置するためのツールに関する。
航空機の表面や船舶の表面等にリブレットパターン(微細な縦溝(旅客機では一例として10μm~100μm程度の間隔と5μm~50μm程度の高さ))を設けることで、これらの表面を流れる気体や液体の乱流摩擦抵抗が低減することが知られている。例えば、小型機では6%程度の抵抗低減が飛行実証されており、リブレットを用いた乱流摩擦抵抗の低減は、温室効果ガスの排出、燃料コストの低減に大きく貢献すると期待されている。
例えば、航空機の機体にリブレットを実装する技術は、種々知られているが、従来の技術は、いずれも実装に費やす時間及びコストの問題、その他耐久性などの点で実用化には程遠いものであった。しかし、近年、それらの欠点を克服するため、紫外線硬化型の塗料に紫外線透過型の樹脂雌型を押し当て、紫外線を照射しながら機体表面に直接リブレットを施工する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、特許文献1に記載の技術には、リブレットのベース層の膜厚が傾斜する傾向があるなど、十分な空力特性を得る観点からは更なる改良の余地がある。
本発明の第1の態様によれば、リブレットパターンをインプリントの手法により樹脂に転写するための原版であって、前記樹脂に転写後に複数のリブレットとなる凹溝が第1の所定間隔で形成された一面を有する部材から成り、前記一面に該一面より突出した複数の凸部が前記第1の所定間隔より広い第2の所定間隔で配置されている原版が、提供される。
本発明の第2の態様によれば、物体の表面にリブレットパターンを成形するリブレット成形方法であって、前記物体は使用時に流体の流れにその表面が接する物体であり、前記物体の表面の少なくとも一部に樹脂を塗布して樹脂層を形成することと、第1の態様に係る原版を、前記樹脂層を覆う状態で前記物体の前記表面上に載置し、複数の凸部それぞれの先端面を前記物体の前記表面に当接させることと、前記原版の前記複数の凸部それぞれの先端面が前記物体の前記表面に当接したままの状態で前記樹脂層を硬化させることと、前記樹脂層が硬化した後、硬化した前記樹脂層の表面から前記原版を除去することと、を含むリブレット成形方法が、提供される。
本発明の第3の態様によれば、物体にリブレットパターンを成形するのに用いられるリブレット用転写シートであって、ポリマーフィルムから成るべースフィルムと、樹脂から成るコーティング材層と、水溶性樹脂シートとが積層されて一体化した三層構造を有し、前記水溶性樹脂シートの一方の面には、第1の態様に係る原版と同様の配置で前記凹部と同一の形状を有する複数の凹部と前記凸部と同一の形状を有する複数の凸部とを有する凹凸パターンが形成され、前記コーティング材層は、前記凹凸パターンに対応するリブレット及び凹部を有するリブレット用転写シートが、提供される。
本発明の第4の態様によれば、第3の態様に係るリブレット用転写シートの製造方法であって、前記凹凸パターンを水溶性樹脂シートの一方の面に形成することと、前記べースフィルムをベース部材の上面に載置し、前記ベースフィルムの上面にコーティング材料を塗布することと、前記水溶性樹脂シートの前記一方の面を前記コーティング材料が塗布された前記ベースフィルムの上面に対向させた状態で前記水溶性樹脂シートを前記ベースフィルムに上方から重ね合わせることと、前記水溶性樹脂シートを前記ベースフィルムに上方から重ね合わせた状態のまま、前記コーティング材料を硬化させて前記コーティング材層を形成することと、を含むリブレット用転写シートの製造方法が、提供される。
本発明の第5の態様によれば、使用時に流体の流れにその表面が接する物体の表面にリブレットパターンを成形するリブレット成形方法であって、前記物体の表面に表面コーティング材を塗布することと、前記表面コーティング材が未硬化の状態で、前記ベースフィルムが前記表面コーティング材と対向する向きで、第3の態様に係るリブレット用転写シートを前記物体に密着させ、加圧して固定することと、前記表面コーティング材が硬化後、前記水溶性樹脂シートを除去することと、を含むリブレット成形方法が、提供される。
本発明の第6の態様によれば、リブレットパターンをインプリントの手法により樹脂に転写するための原版を吸着保持するツールであって、キューブ状の複数の配管接手部材と複数の支持配管と複数の真空配管とを構成部材として備え、これらの構成部材を組み合わせることで全体として櫓状に構成され、前記複数の配管接手部材は、所定面内に2次元配置されており、前記複数の支持配管は、前記複数の配管接手部材に個別に対応して設けられ、前記複数の支持配管のそれぞれは、対応する配管接手部材に一端が接続され他端に被吸着面に合わせてチルト自在の真空吸着パッドを有する前記所定面に直交する方向に延びる真空配管から成り、前記複数の真空配管のそれぞれは、前記複数の配管接手部材のうちの隣接する2つに一端と他端がそれぞれ接続され、前記複数の支持配管がそれぞれ有する前記真空吸着パッドにより前記原版を吸着可能であり、前記複数の真空配管の少なくとも一部を、長さの異なる真空配管と交換することにより、吸着対象の前記原版の形状及び大きさに合わせて前記複数の吸着パッドが配置される前記原版の被吸着面上の領域の形状及び面積を自在に変更可能な分解組み立て式のツールが、提供される。
以下、図1~図11に基づいて、一実施形態について説明する。
図1には、一実施形態に係る原版10の断面図が一部省略して示されている。原版10は、リブレットパターンをインプリントの手法により樹脂に転写するのに用いられる。
原版10は、リブレットを成形する対象となる物体の転写対象部分に応じたサイズを有しているが、図1はその一部を切り取って示したものである。
図1には、一実施形態に係る原版10の断面図が一部省略して示されている。原版10は、リブレットパターンをインプリントの手法により樹脂に転写するのに用いられる。
原版10は、リブレットを成形する対象となる物体の転写対象部分に応じたサイズを有しているが、図1はその一部を切り取って示したものである。
リブレットが成形される物体としては、使用時に流体の流れにその表面が接する物体であり、種々の物体が挙げられるが、本実施形態では、航空機にリブレットを成形する場合について説明する。
原版10は、図1における紙面左右方向に第1の長さを有し、図1における紙面直交方向に第2の長さを有する、例えば矩形板状の部材から成る。原版10は、互いに平行な第1面10aと第2面10bとを有し、第1面10aには、深さhの溝状の凹部10cが所定ピッチsで、図1における紙面内左右方向(以下、適宜、第1方向と称する)の全長に渡って形成されている。凹部10cは、例えば第1面10a側から第2面10b側に向かって幅が狭くなる左右の斜面を有するV溝であるが、これに限らず、V溝の底部に第1面と平行な平面が設けられた溝であっても良い。あるいは、凹部10cは、左右の斜面に代えて例えば第1面10a側から第2面10b側に向かって幅が狭くなる左右対称な曲面を有する溝であっても良いし、深さ方向の全域で幅が一様な所定深さの溝であっても良い。また、第1面10aには、第1方向に関して所定間隔(ピッチ)pで高さtのボス状の凸部12が複数設けられている。凸部12は、図1における紙面奥行方向(以下、適宜、第2方向と称する)に関してもピッチpで複数設けられている。すなわち、第1面10aには、第1方向及び第2方向に2次元配置(本実施形態では特にマトリックス状)で複数の凸部12が配置されている。凸部12の高さtは、後述するリブレットのベース層の厚さに相当する。また、原版10の素材としては、柔軟性を有する樹脂、例えば型取り用のシリコンゴムなどが用いられる。なお、原版10は、シリコンゴムに限らず、型取りに好適な柔軟性を有する樹脂であれば良く、例えばポリビニルアルコール系樹脂等の水溶性の樹脂なども素材として用いることができる。原版10の素材は、例えば航空機の翼、胴体などのような曲面を表面に有する物体(部材)上に置いたときに、その表面の曲面に倣って変形する程度の柔軟性を有していることが望ましい。また、リブレットを成形する物体の表面が平面であるなら、原版10の素材は柔軟性を有していなくても良く、剛体などでも良い。また、原版10は、リブレットが成形される物体に応じた形態のものが用いられ、例えば航空機の場合、シート状のものが用いられる。ここで、シート(sheet)とは、一般的には、薄くて広いもので、敷いたりかぶせたり書いたりするのに使うものを指すとされ、ペラペラのフィルムのようなものに限られない。
原版10は、例えば航空機の翼などの物体上に塗布された樹脂に転写する際に用いられるが、その際には、第1面10aのピッチpの正方形の各頂点位置に配置された隣接する4つの凸部12の中心の位置に最大たわみδ(図2参照)が生じる。ここで、原版10の厚さ(第1面10aと第2面10bとの距離)をTとし、樹脂への転写の際に原版10に作用する単位面積当たりの等分布荷重(自重又は自重と外力との和)をwとすると、原版10に生じる最大たわみδの値はwp4/T3にほぼ比例するものと考えることができる。そこで、本実施形態では、最大たわみδの値が凸部12の高さtの20%程度以下の範囲になるように、パラメータw、p、Tの組み合わせを調整している。
ここで、原版10の凹部10cのピッチs、深さh及び凸部12のピッチpについて、具体的な寸法を説明する。凹部10cのピッチs及び深さhは、原版10の凹凸パターンを樹脂に転写後に物体の表面に成形されるリブレットが十分な性能を発揮するように定められている。例えば、航空機の場合、リブレットのピッチは、10μm~100μm程度に設定される。例えば、原版10を樹脂に転写して作製されるリブレットのピッチが100μmであるとすると、これに対応して原版10の凹部10cのピッチsは100μmに設定される。この場合、凸部12は、例えば凹部10cのピッチ方向に関して100本の凹部10cにつき、1つの割合で設けられる。すなわち、ピッチsが100μmであれば、ピッチpは10mmに設定される。なお、凹部10cのピッチs及び凸部12のピッチpが、これに限定されるものではない。特に凸部12は、後述するリブレット成形後には、リブレットのベース層に形成される穴となるので、そのピッチpは、空力特性に与える影響が極力小さくなるように原版10の素材、例えばシリコンゴムの剛性と転写圧とに基づいて最適化することが望ましい。
原版10のようなピッチsで配置されたV溝形の凹部10cを転写して成形されるリブレットは、spaced-V grooveと呼ばれるタイプになる。このspaced-V grooveと呼ばれるタイプのリブレットの場合、ピッチsに対して高さhが、h=s/2程度の値になるように設定すると、乱流摩擦抵抗と圧力抵抗とを加算した抵抗を低減する観点から望ましいとされている。したがって、深さhは、例えば50μmに設定される。
図3には、一実施形態に係るリブレットの成形方法の処理の流れを示すフローチャートが示されている。
《原版を製造する工程》
まず、図3のフローチャートにおける原版を製造するステップ(ステップS100)について説明する。
ステップS100は、ポジ型を製造する工程と、製造したポジ型を用いて原版10を製造する工程と、を含む。
まず、図3のフローチャートにおける原版を製造するステップ(ステップS100)について説明する。
ステップS100は、ポジ型を製造する工程と、製造したポジ型を用いて原版10を製造する工程と、を含む。
<ポジ型を製造する工程>
ここでは、例えばアルミニウム板あるいはステンレス板などの金属板を微細加工してポジ型(以下では、適宜、金属型とも呼ぶ)を製造する場合について説明する。
ここでは、例えばアルミニウム板あるいはステンレス板などの金属板を微細加工してポジ型(以下では、適宜、金属型とも呼ぶ)を製造する場合について説明する。
製造される原版10と少なくとも同じサイズを有する矩形状の金属板を用意する。その金属板の表面(第1面)に例えば超短パルスレーザを用いて精密加工が可能な光加工機によって、図4(A)~(C)に概略的に示されるような凹凸パターンを形成し、金属型(ポジ型)20を製作する。図4(B)は、金属型20を概略的に示す平面図であり、図4(A)は、図4(B)中のA-A線に沿った断面図、図4(C)は、図4(B)中のC-C線に沿った断面図である。この金属型20の上面(第1面)には、第1方向(図4(A)及び(B)における左右方向)に関してピッチs、高さhを有する断面二等辺三角形状の複数の直線リブレット20aを有するspaced-V grooveと呼ばれるタイプのリブレットパターンが形成されている。また、100本のリブレット20aにつき1つの割合で、第1面上の隣接するリブレット20a相互間の位置に深さtの平面視円形の凹部(より正確には円錐台状の凹部)20bが形成されている。図4(A)~(C)は概略図であることからリブレットの数、凹部の数、及び両者の位置関係などが実際と相違しているが、実際には凹部20bのピッチpは、p=100sに設定されている。第1面には、実際には図4(A)の紙面直交方向にもピッチpで複数の凹部20bが形成されている(図4(B)、(C)参照)。
図4(A)~(C)では、図示の便宜上から、金属型20の第1面上にリブレット20aが5本のみ示され、また凹部20bもリブレット4本につき1つ示されているが、実際には、前述した通り、リブレット20aは、多数設けられ、凹部20bは、100本のリブレット20aにつき1つの割合で設けられている。
なお、実際の金属型20の製造工程では、光加工機による加工の結果、金属型20の凹凸パターンが設計値通り(許容誤差の範囲内で)に精度良く加工されているか否かを計測により確認し、必要に応じて修正加工を施す。このようにして、十分な精度を有する金属型20が用意される。
<ポジ型を用いて原版10を製造する工程>
用意した金属型20の表面をエアブローした後、金属型20を洗浄する。洗浄後、残っている水滴を吹き飛ばすため、再度金属型20の表面をエアブローした後、自然乾燥させる。図5(A)には、この自然乾燥後の金属型20が示されている。
用意した金属型20の表面をエアブローした後、金属型20を洗浄する。洗浄後、残っている水滴を吹き飛ばすため、再度金属型20の表面をエアブローした後、自然乾燥させる。図5(A)には、この自然乾燥後の金属型20が示されている。
次に、例えば二液型液状シリコンゴムの混合液を用意し、その混合液を金属型20の表面全面に塗布し、所定厚さの混合液の層10を形成する。図5(B)には、表面に混合液の層が形成された金属型20が示されている。
次いで、表面にシリコンゴムの混合液の層10が形成されている金属型20を、不図示の真空層内に投入し、脱泡のため、真空層内の空気を真空排気する。そして、シリコンゴムの混合液が固まるまで、室温で放置する。そして、混合液が固まった後、図5(C)に示されるように、固まったシリコンゴムを金属型20から剥離すると、その剥離後のシリコンゴムが原版10となる。
《物体表面にリブレットを成形する工程》
次に、物体表面にリブレットを成形する工程、すなわち、図3のフローチャートのステップS102~ステップS108について説明する。ここでは、航空機、例えば亜音速ジェット旅客機の翼の上面にリブレットを成形する場合について説明する。このリブレットを成形する工程(ステップS102~ステップS108)は、例えば、航空機の格納庫内で実行される。
次に、物体表面にリブレットを成形する工程、すなわち、図3のフローチャートのステップS102~ステップS108について説明する。ここでは、航空機、例えば亜音速ジェット旅客機の翼の上面にリブレットを成形する場合について説明する。このリブレットを成形する工程(ステップS102~ステップS108)は、例えば、航空機の格納庫内で実行される。
ここで、説明は前後するが、ステップS102の説明に先立って、原版10(のパターン)を樹脂層に転写するステップ(ステップS104)で用いられる、原版10を吸着保持するためのツール30について説明する。
ツール30は、図6に示されるように、下端部に第1の数(m×n個)の真空吸着パッド40を有する全体として櫓状の構造体から成る。具体的には、ツール30は、図6に示されるように、2次元平面内にm行n列(図6では3行4列)のマトリックス状に配置された第1の数(m×n個)のマニホールドキューブ32と、第1の数のマニホールドキューブ32にそれぞれの一端(上端)が個別に接続された真空配管36をそれぞれ有する第1の数の支持配管34と、マトリックスの同一行又は同一列に属する隣接するマニホールドキューブ32同士をそれぞれ連結する第2の数({(m-1)×(n-1)}個)の真空配管42とを有する。ここで、マニホールドキューブ32とは、キューブ(立方体)状の多岐管(マニホールド)である。マニホールドキューブ32には、それぞれの4面、5面、又は6面に真空配管接続部を兼ねる開口部が形成されている。図6では、第1の数のマニホールドキューブ32のうちの特定1つの上面の開口部には真空ホース50の一端が接続されている。真空ホース50の他端は、不図示の真空ポンプなどの真空排気装置に接続されている。また、上記の特定の1つを除く残りの全てのマニホールドキューブ32それぞれの上面の開口部は、蓋部材44で閉塞されている。また、それぞれのマニホールドキューブ32の側面に形成された開口部には、真空配管42の一端部が着脱可能に接続されている。第1の数の支持配管34のそれぞれの他端(下端)には、可撓性を有するフレキシブルジョイント38を介して真空吸着パッド40が設けられている。したがって、各真空吸着パッドは、被吸着面に合わせてチルト自在になっている。また、本実施形態に係るツール30では、全ての支持配管34それぞれの全体の長さ(全高)が個別に調整可能となるようにフレキシブルジョイント38と真空配管36との間に不図示の調整機構が設けられている。これは、原版10のパターンを転写する対象となる物体の転写対象領域が平面以外の曲面である場合に、その曲面の形状に合わせて全ての真空吸着パッド40の吸着面の高さを予め調整した状態で原版10の第2面10bを吸着することで、物体の曲面状の転写対象領域に倣って原版10の第1面10aを変形させることができるようにするためである。これにより、転写の際に、ツール30により吸着保持された原版10と物体との位置関係を調整した状態で原版10を物体上に載置することで原版10の第1面10aを物体の曲面状の転写対象領域に確実に当接させることが可能となる。ただし、少なくとも一部の支持配管34では、調整機構は設けられていなくても良い。
本実施形態に係るツール30は、上記説明から明らかなように、マニホールドキューブ32と支持配管34と真空配管42とを、構成部品とし、これらの構成部品をレゴブロックのように組み合わせることで構成されている。したがって、各構成部品、すなわちマニホールドキューブ32、支持配管34、真空配管42をそれぞれ複数用意し、特に真空配管42については、長さの異なるものを複数種類用意しておく。これらの構成部品を適宜選択して組み合わせ、これらの構成部品を上記と同様にして組み立てることで、複数の真空吸着パッド40が配置される原版10の被吸着面(第2面10b)上の領域の形状及び面積(ツール30のフットプリントと言うこともできる)を自在に変更することが可能になる。これにより、大きさ形状の異なる原版10を、吸着保持することが可能になる。勿論、原版10の大きさ、形状は、転写対象の物体の大きさ、形状に合わせて変更すれば良い。
次に物体(一例として航空機の翼)の表面(ここでは上面)に樹脂層を形成するステップ(図3のステップS102)について説明する。
図3のステップS102では、図8(A)に概念図にて示されるように、例えばアルミニウム合金(あるいは炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等)を素材とする翼200の上面(実際には、不図示の塗装膜の上)に例えば液体状の紫外線硬化樹脂が塗布され、紫外線硬化樹脂の層60が形成される(図9(A)参照)。ここで、紫外線硬化樹脂としては、紫外線を照射すると、ラジカルが発生してラジアル重合反応が開始するアクリル樹脂、あるいは紫外線を照射すると、カチオン(酸)が発生してカチオン重合反応が開始するエポキシ樹脂などを用いることができる。
なお、紫外線硬化樹脂に代えて、例えば不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂あるいはエポキシなどの加熱されることによって硬化する熱硬化樹脂を用いても良い。この他、常温で所定時間以上放置されることによって硬化する樹脂を用いることも可能である。
図3のステップS104では、層60が形成された物体(翼)200に原版10を上方から重ね合わせ、圧接させる。ステップS104の処理は、次のようにして行われる。
図8(B)に概念図にて示されるように、翼200の上面に形成された紫外線硬化樹脂層60の上に翼200を複数に分割したサイズにそれぞれ対応するサイズの原版10が、ツール30によってそれぞれ載置される。
さらに詳述すると、図7(A)に示されるように、ツール30の複数の真空吸着パッド40によって吸着保持された原版10が、ツール30を自在にハンドリングする不図示のロボットアームによって、ツール30と一体で翼200の直上に搬送される。ここで、ツール30が原版10を吸着保持する前提として、両者の位置関係が所望の位置関係に調整されている。
そして、図7(A)に示される位置に原版10が搬送されたとき、原版10と翼200との位置関係が調整された状態で、ロボットアームによってツール30と一体で原版10が、下方に移動されて、翼200の上面に形成された紫外線硬化樹脂の層60の上に載置される(図8(B)参照)。ここで、上述の原版10と翼200との位置関係の調整は、原版10を吸着保持したツール30と翼200とのそれぞれにターゲット(マーカー)を取り付け、これらのターゲットを、例えばレーザートラッカーで検出することで、その検出結果に基づいてロボットアームによって翼200に対するツール30の位置を調整することで行われる。ここで、レーザートラッカーは、測定対象物に取り付けられた(あるいは接触させた)ターゲット(リフレクター(球体のアクセサリ)などが用いられる)にレーザ光を照射し、ターゲットから反射したレーザ光が発光源に戻ることで、ターゲットの中心位置の三次元位置(座用)を取得する光学式測定機である。
原版10を保持したツール30を、図7(B)に示されるように、翼200上に載置(搭載)した後、ロボットアームはツール30から離れる。これにより、原版10は自重及び外力(ツール30の自重)による等分布荷重によって加圧されることになる。図9(B)には、このときの翼200、層60、原版10の位置関係が示されている。図9(B)において、符号wは、前述した樹脂への転写の際に原版10に作用する単位面積当たりの等分布荷重(自重又は自重と外力との和)を示す。この図9(B)に示されるように、等分布荷重wによって原版10は、翼200上の層60に押し付けられるが、その際複数の凸部12の先端面が翼200(物体)の表面に当接した段階で、原版10の第1面10aの翼200(物体)の表面へのそれ以上の接近が阻止される。この凸部12の先端面が翼200(物体)の表面に当接した状態では、原版10と翼200(物体)の表面との間は、硬化前の紫外線硬化樹脂で満たされた状態となっている。このとき、原版10の第1面10aと翼200(物体)の表面との間の層60の厚みは、複数の凸部12によって規定されるので、場所による偏りがなく、ほぼ全域に渡って均一な厚みとなっている。
次のステップS106(図3)では、図8(C)に概念図にて示されるように、原版10を圧接させたまま、紫外線照射器52からの紫外線UVを、原版10を介して紫外線硬化樹脂に照射する。ここで、原版10を保持したツール30が、翼200上に載置(搭載)されている場合(図7(B)参照)、ツール30の一部を構成する格子部(真空配管と、マニホールドキューブとの組み合わせによって構成される)の隙間から紫外線を照射し、そのまま紫外線硬化樹脂を硬化させても良い。図9(C)には、図8(C)に対応する、紫外線硬化樹脂60の硬化中の様子が示されている。
なお、紫外線硬化樹脂に代えて、熱硬化樹脂を用いる場合には、ステップS106において、紫外線の照射に代えて、熱硬化樹脂に対する加熱が行われる。
次のステップS108(図3)では、硬化後の樹脂層から原版10を除去する。この原版10の除去は、ロボットアームでツール30と一体で原版10を持ち上げて、原版10を剥がすことで行われる。図8(D)には、翼200の上面の硬化した紫外線硬化樹脂層60から原版10が剥離される(除去される)ときの様子が、概念図にて示されている。また、図9(D)には、原版10が、硬化した紫外線硬化樹脂層60から剥離された後の状態が示されている。この図9(D)及び図8(D)からわかるように、翼200の上面に硬化した紫外線樹脂によってspaced-V grooveタイプのリブレットが成形される。このリブレットのベース層は、図9(B)及び図9(C)に示される層60が紫外線の照射によって硬化した層であるから、その厚みは、場所による偏りがなく、ほぼ全域に渡って均一な厚みとなっている。
なお、ツール30の一部を構成する格子部(真空配管と、マニホールドキューブとの組み合わせによって構成される)の隙間から紫外線を照射し、そのまま紫外線硬化樹脂を硬化させた場合には、原版10を除去した後、複数の真空吸着パッド40でそれぞれ吸着された領域に対応する紫外線硬化樹脂の領域を紫外線でさらに硬化させることとすれば良い。
なお、原版10が水溶性樹脂によって形成されている場合には、ステップS108では、水を用いて原版10を溶かすことで、硬化後の樹脂層から原版が除去される。
以上説明したように、本実施形態によると、原版10の第1面10aに複数の凹部10cとともに、複数の凸部12が形成されていることから、物体200の表面に塗布された硬化前の樹脂の層に原版10の凹凸パターンを転写するため、原版10をその層に押し付ける際に、凸部12の先端面が物体200の表面に当接すると、それ以後原版10の第1面10aの物体200の表面に対する更なる接近が阻止される。また、複数の凸部12は、第1面10aの全面に渡って偏りがない所定の配置(例えばマトリックス状)で2次元的に配置されているので、原版10の第1面10aの全面に渡って物体200の表面への一定距離以上の接近が阻止される。その結果、原版10の第1面10aと物体200の表面との間にほぼ均一な厚さのリブレットのベース層、換言すれば膜厚の傾斜の傾向がみられないベース層が形成される(図9(D)参照)。また、本実施形態によると、原版10の最大撓みδが凸部12の高さtの20%程度以下になるように、パラメータ(等分布荷重w、凸部のピッチp、原版の厚さTなど(図1参照))が設定されているので、この点においても膜厚の均一性が高いベース層を有するリブレットパターンを成形することが可能になる。
また、本実施形態によると、原版10のサイズの設定に応じて、一度にリブレットを成形する物体表面の領域の面積を設定できるので、例えば特表2020-518458号公報に開示されるようなDLIP(直接レーザー干渉パターニング)を用いてすでに塗装されかつ硬化された物体の表面にリブレットを成形する方法などに比べて、はるかに短時間で同一面積に対してリブレットを成形することが可能である。
なお、上記実施形態で用いたツール30は、上記実施形態の原版10のようなボス状の凸部12を有する原版に限らず、凸部を持たないネガ型の原版の取り扱い用にも適している。
なお、上記実施形態では、原版10に凸部12とともにその反転パターンが形成されたリブレットが、spaced-V grooveタイプのリブレットである場合について説明したが、これに限らず、その他のタイプのリブレットの反転パターンを原版10に凸部とともに形成しても良い。例えば、V字型、U字型、フェンス型その他のリブレットの反転パターンを、凸部とともに原版10に形成しても良い。ここで、V字型のリブレットとは、Vの字が連続的に連なる断面形状を有するリブレットであり、U字型のリブレットとは、丸みのあるUの字が連続的に連なる断面形状を有するリブレットであり、フェンス型のリブレットとは、刃状リブレット(blade Riblet)とも呼ばれ、薄いフェンスを並べたような断面形状を持つリブレットである。このフェンス型のリブレットは、上記実施形態において、凹部10cとして前述した深さ方向の全域で幅が一様な所定深さの溝を形成した原版10を用いることで、成形することができる。
また、上記実施形態では、原版10を用いるインプリントの手法により成形される各リブレット(の峰)の平面視における形状が直線状である場合について説明したが、各リブレットの平面視における形状は、サインカーブ状、ジグザク状などであっても良い。V字型、U字型、フェンス型その他のリブレットについても同様である。また、リブレットの断面形状が、三角形状であるタイプでは、三角形をその頂部を切り落としたような台形状の断面形状を有するリブレットに代えても良い。また、これまでは、原版10に形成される複数のリブレットの向きが同一で、かつ間隔が一定であることを前提として説明を行ったが、実際の航空機の翼にリブレットを成形する場合には、複数のリブレットの配置や向きを、例えば風洞実験又はシミュレーションなどにより求めた空力特性に基づいて決定しても良い。ここで説明した種々のタイプのいずれにも、上記実施形態と同様、その反転パターンを凸部とともに原版10に形成することで、上記実施形態を適用することができる。
また、上記実施形態では、凸部12が、ボス形状(円筒形)である場合について説明したが、凸部は、円筒形に限らず、断面が円形以外の筒状であっても良い。
なお、上記実施形態では、原版10を、金属型20を用いたインプリントの手法により製造する場合について説明したが、原版10の製造方法がこれに限られるものではない。原版10の素材に上記実施形態で説明した金属型20に形成されたリブレット及び凹部を反転したパターンと同形状の凹凸パターンを、光加工あるいは機械加工などにより直接形成することが可能であれば、そのようにしても良い。この場合、その直接加工により製造(製作)された原版10を用いて、ステップS102~ステップS108の一連のリブレットの成形工程の処理を行えば良い。
また、上記実施形態では、リブレットを成形する対象となる物体(例えば航空機の翼)の表面に樹脂(紫外線硬化樹脂など)を塗布して樹脂層を形成し、その樹脂層に原版10の凹凸パターンを転写することで物体の表面にリブレットを成形するものとしたが、物体の表面に例えばポリマーフィルムなどのフィルムの一面を貼りつけ、そのフィルムの他面に樹脂を塗布して樹脂層を形成し、その樹脂層に原版10の凹凸パターンを転写することで物体の表面にリブレットを成形することも可能である。この場合、フィルムの物体に対する貼りつけは、一例として後述する表面コーティング材を用いて行われる。
《リブレット用転写シートの製造方法》
次に、物体の表面にリブレットパターンを成形するのに用いられるリブレット用転写シートの製造方法について簡単に説明する。
リブレット用転写シートとしては、一方の面にリブレットを成形する凹部を有する水溶性樹脂シートと、該凹部を有する面上に形成されたコーティング材層とを具備するリブレット用転写シートが知られている(例えば、特開2018-27510号公報参照)。
次に、物体の表面にリブレットパターンを成形するのに用いられるリブレット用転写シートの製造方法について簡単に説明する。
リブレット用転写シートとしては、一方の面にリブレットを成形する凹部を有する水溶性樹脂シートと、該凹部を有する面上に形成されたコーティング材層とを具備するリブレット用転写シートが知られている(例えば、特開2018-27510号公報参照)。
ここでは、上記公報に記載の転写シートと同様に水溶性樹脂シート及びコーティング材層を有するリブレット用転写シートの製造方法の実施形態について説明する。ここで、シートとは、薄くて広いものという意味で用いられる一般的な用語であり、少なからず柔軟性があれば良く、フィルムのようなペラペラしたものに限られない。
リブレット用転写シート80は、図10に示されるように、ポリマーフィルムから成るべースフィルム62と、樹脂から成るコーティング材層64と、例えばポリビニルアルコール系樹脂等の水溶性樹脂から成る水溶性樹脂シート70とが積層されて一体化した三層構造のシートである。水溶性樹脂シート70の第1面70aには、前述の原版10と同様の配置で前述の凹部10cと同一形状かつ同一サイズ(以下、単に「同一形状」と称する)を有する複数の凹部70cと前述の凸部12と同一形状の複数の凸部72とを有する凹凸パターンが形成されている。コーティング材層64は、水溶性樹脂シート70の凹凸パターンに対応するリブレット及び凹部を有する。
図11には、リブレット用転写シート80の製造方法の処理の流れを示すフローチャートが示されている。
図11のステップS302では、水溶性樹脂シート70の一方の面(第1面)70aに前述した原版10と同様の配置で複数の凹部70cと複数の凸部72とを有する凹凸パターンを形成する。この凹凸パターンの形成は、前述した金属型20と同様の凹凸パターンを有するポジ型を用いて行っても良いし、上記特開2018-27510号公報に記載の技術と同様に、加熱凹凸ローラを用いて行っても良い。後者の場合、加熱凹凸ローラには、その外周面上に上記凹凸パターンが形成され、加熱凹凸ローラの回転に同期して水溶性樹脂シート70を移動させながら凹凸パターの形成が行われる。
図11のステップS302では、水溶性樹脂シート70の一方の面(第1面)70aに前述した原版10と同様の配置で複数の凹部70cと複数の凸部72とを有する凹凸パターンを形成する。この凹凸パターンの形成は、前述した金属型20と同様の凹凸パターンを有するポジ型を用いて行っても良いし、上記特開2018-27510号公報に記載の技術と同様に、加熱凹凸ローラを用いて行っても良い。後者の場合、加熱凹凸ローラには、その外周面上に上記凹凸パターンが形成され、加熱凹凸ローラの回転に同期して水溶性樹脂シート70を移動させながら凹凸パターの形成が行われる。
次のステップS304では、べースフィルム62を、撓み、歪などが無い状態でベース部材(不図示)の平面度が良好な上面に載置し、べースフィルム62の上面にコーティング材料(液体状の樹脂)64を塗布する。ここで、コーティング材料64としては、一例として加熱硬化タイプの材料が用いられる。
次のステップS306では、水溶性樹脂シート70の第1面をコーティング材料64が塗布されたベースフィルム62の上面に対向させた状態で水溶性樹脂シート70をベースフィルム62に上方から重ね合わせる。このとき水溶性樹脂シート70は、その自重の作用により複数の凸部72がベースフィルム62の上面に当接した状態となる。
次のステップS308では、水溶性樹脂シート70をベースフィルム62に上方から重ね合わせた状態のまま、コーティング材料64を加熱して、溶媒を揮発させ、乾燥させて硬化させる。この乾燥、硬化の工程は、ベース部材が設けられた乾燥・硬化室にて、例えば大気中で、50~200℃で1~15分、好ましくは80~150℃の温度で2~3分行う。コーティング材料64は硬化することで、ベースフィルム62とは反対側の面に複数のリブレットを有する全面に渡って厚さが均一なベース層を有するコーティング材層64(リブレット層と呼ぶこともできる)となり、これにより、ベースフィルム62とコーティング材層64と水溶性樹脂シート70とが積層された三層構造のリブレット用転写シート80が製造される。
なお、上では、コーティング材料として加熱硬化タイプのものを用いるものとしたが、これに限られない。例えば、コーティング材料として、常温乾燥硬化タイプ、紫外線乾燥硬化タイプ、電子線乾燥硬化タイプを用いても良い。この場合、材料の種類によって、乾燥・硬化室を紫外線照射室、電子線照射室等に置き換えれば良い。したがって、コーティング材料として、アルキド樹脂系、アミノアルキド樹脂系、アクリル樹脂系、アクリル-ウレタン樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、塩化ゴム系、紫外線硬化系、電子線硬化系、珪素樹脂系、石油系、ビニル樹脂系、フェノール樹脂系、フッ素樹脂系、ポリエステル樹脂系、メラミン樹脂系、ラッカー系などを用いることができる。特に、航空機の場合、耐衝撃性、耐候性、耐溶剤性、長期耐久性を確保する上で、アルキド樹脂系、アクリル‐ウレタン樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、フッ素樹脂系、ポリエステル樹脂系、ラッカー系が好ましく、ウレタン樹脂系やフッ素樹脂系がより好ましい。
次に、リブレット成形対象の物体である前述の翼200に上述のリブレット用転写シート80を用いてリブレットを成形する方法について説明する。
図12には、この成形方法の処理の流れを示すフローチャートが示されている。
まず、ステップS402において、翼200の表面に表面コーティング材層を構成する表面コーティング材を塗布する。この表面コーティング材は、リブレット用転写シートのコーティング材層64と同じ材料を用いても良いし、異なる材料を用いても良い。
まず、ステップS402において、翼200の表面に表面コーティング材層を構成する表面コーティング材を塗布する。この表面コーティング材は、リブレット用転写シートのコーティング材層64と同じ材料を用いても良いし、異なる材料を用いても良い。
次のステップS404では、表面コーティング材層を構成する表面コーティング材が未硬化の状態で、リブレット用転写シート80のベースフィルム62が表面コーティング材と対向する向きで、リブレット用転写シート80を翼200に密着させ、加圧して固定する。ここで、未硬化の状態とは、半硬化の状態も含み、完全に硬化していない状態を指す。リブレット用転写シート80を翼200の表面に貼りつける際、流体の流れに沿ってリブレットが配置されるように、リブレット用転写シートを引っ張りながら貼りつける。
所定時間経過後、表面コーティング材層を構成する表面コーティング材が硬化した後、ステップS406で水により水溶性樹脂シート70を除去する。これにより、翼200の表面上に、リブレットを有するコーティング膜が成形される。ここで説明したリブレット用転写シートを用いるリブレットの成形方法は、航空機の場合、特に胴体表面にリブレットを成形する場合などに適している。
これまでに説明した航空機に対するリブレットの成形方法は、新製機だけでなく既存の機体にもレトロフィット可能であることは言うまでもない。
なお、原版10の押しつけに使用するツールは上記実施形態の構成に限られるものでなく、ツールの自重のみでなく、ツールの自重に加えて、押しつけ力(外力)を原版10に付与するタイプでも良い。
なお、原版10の押しつけに使用するツールは上記実施形態の構成に限られるものでなく、ツールの自重のみでなく、ツールの自重に加えて、押しつけ力(外力)を原版10に付与するタイプでも良い。
なお、これまでの説明では、リブレットが成形される物体として航空機を取り上げて説明したが、これに限らず、本実施形態に係る原版10を用いたリブレットの成形方法及びリブレット用転写シート80を用いるリブレットの成形方法は、例えば、船(船体やスクリューなど)、高速鉄道(新幹線、リニアモータカーなど)、レーシングカー、潜水艦、ロケットなどに適用できる。また、スキーなどの高速のスピードを伴うスポーツや水泳等のスポーツ分野等に適用可能であり、スキー板やウエア、水着などにも適用可能である。また、流体が流れるパイプラインにも適用可能である。また、風力発電用の風車などにも適用可能である。
10…原版、一面…10a、10c…凹溝、12…凸部、20…金属型(ポジ型)、30…ツール、32…マニホールドキューブ、34…支持配管、40…真空吸着パッド、42…真空配管、50…真空ホース、60…樹脂層、200…翼(物体)。
Claims (19)
- リブレットパターンをインプリントの手法により樹脂に転写するための原版であって、
前記樹脂に転写後に複数のリブレットとなる凹溝が第1の所定間隔で形成された一面を有する部材から成り、前記一面に該一面より突出した複数の凸部が前記第1の所定間隔より広い第2の所定間隔で配置されている原版。 - 請求項1に記載の原版において、
前記凹溝は、該凹溝の長手方向に直交する断面の幅が前記一面側から他面側に向かって徐々に小さくなる台形状又は三角形状を有する所定深さの溝である原版。 - 請求項1に記載の原版において、
前記凹溝は、該凹溝の長手方向に直交する断面の幅が深さ方向の全域で一様な所定深さの溝である原版。 - 請求項1~3のいずれか一項に記載の原版において、
前記複数の凸部のそれぞれは、前記一面上の互いに前記第2の所定間隔離れた位置でかつ隣接する前記凹溝相互間の位置に配置されている原版。 - 請求項1~4のいずれか一項に記載の原版において、
前記複数の凸部のそれぞれは、前記第1の所定間隔より小さい直径を有する円柱状である原版。 - 請求項1~5のいずれか一項に記載の原版において、
前記原版のリブレットパターンを転写する対象面が曲面である場合、前記部材は、自重によって曲面に倣って変形する程度の柔軟性を有する原版。 - 請求項1~6のいずれか一項に記載の原版において、
前記複数の凸部は、前記一面に2次元的に配置されている原版。 - 請求項7に記載の原版において、
前記複数の凸部は、前記一面にマトリックス状の配置で設けられている原版。 - 物体の表面にリブレットパターンを成形するリブレット成形方法であって、
前記物体は使用時に流体の流れにその表面が接する物体であり、
前記物体の表面の少なくとも一部に樹脂を塗布して樹脂層を形成することと、
請求項1~8のいずれか一項に記載の原版を、前記樹脂層を覆う状態で前記物体の前記表面上に載置し、複数の凸部それぞれの先端面を前記物体の前記表面に当接させることと、
前記原版の前記複数の凸部それぞれの先端面が前記物体の前記表面に当接したままの状態で前記樹脂層を硬化させることと、
前記樹脂層が硬化した後、硬化した前記樹脂層の表面から前記原版を除去することと、を含むリブレット成形方法。 - 請求項9に記載のリブレット成形方法において、
前記樹脂層は光硬化性樹脂から成る層であり、
前記原版は、光透過性を有し、
前記硬化させることは、前記原版を介して前記樹脂層に光を照射して前記樹脂層を硬化させることを含み、
前記除去することは、硬化した前記樹脂層から前記原版を剥離することを含むリブレット成形方法。 - 請求項9に記載のリブレット成形方法において、
前記樹脂層は熱硬化性樹脂から成る層であり、
前記硬化させることは、前記樹脂層を加熱して硬化させることを含み、
前記除去することは、前記原版を硬化した前記樹脂層から剥離することを含むリブレット成形方法。 - 請求項9~11のいずれか一項に記載のリブレット成形方法において、
前記原版は、水溶性の樹脂から成り、
前記除去することでは、水を用いて前記原版を溶かすことで、硬化した前記樹脂層の表面から前記原版を除去するリブレット成形方法。 - 請求項9~12のいずれか一項に記載のリブレット成形方法において、
前記樹脂層を形成することに先立って、インプリントの手法により前記原版を製造することをさらに含むリブレット成形方法。 - 請求項13に記載のリブレット成形方法において、
前記原版を製造することは、
前記原版の前記一面に形成された前記複数の凹溝に対応するリブレットと前記複数の凸部に対応する凹部が、前記複数の凹溝及び前記複数の凸部に対応する位置関係でその一面に形成されたポジ型を用意することと、
前記ポジ型の前記一面上に型取り用の樹脂材料を塗布して所定厚さの樹脂層を形成することと、
前記樹脂層を所定時間放置して固めることと、
前記所定時間経過後に、固まった前記樹脂層を前記ポジ型から分離することと、を含むリブレット成形方法。 - 物体にリブレットパターンを成形するのに用いられるリブレット用転写シートであって、
ポリマーフィルムから成るベースフィルムと、樹脂から成るコーティング材層と、水溶性樹脂シートとが積層されて一体化した三層構造を有し、
前記水溶性樹脂シートの一方の面には、請求項1~8のいずれか一項に記載の原版と同様の配置で前記凹部と同一の形状を有する複数の凹部と前記凸部と同一の形状を有する複数の凸部とを有する凹凸パターンが形成され、
前記コーティング材層は、前記凹凸パターンに対応するリブレット及び凹部を有するリブレット用転写シート。 - 請求項15に記載のリブレット用転写シートの製造方法であって、
前記凹凸パターンを水溶性樹脂シートの一方の面に形成することと、
前記ベースフィルムをベース部材の上面に載置し、前記ベースフィルムの上面にコーティング材料を塗布することと、
前記水溶性樹脂シートの前記一方の面を前記コーティング材料が塗布された前記ベースフィルムの上面に対向させた状態で前記水溶性樹脂シートを前記ベースフィルムに上方から重ね合わせることと、
前記水溶性樹脂シートを前記ベースフィルムに上方から重ね合わせた状態のまま、前記コーティング材料を硬化させて前記コーティング材層を形成することと、
を含むリブレット用転写シートの製造方法。 - 使用時に流体の流れにその表面が接する物体の表面にリブレットパターンを成形するリブレット成形方法であって、
前記物体の表面に表面コーティング材を塗布することと、
前記表面コーティング材が未硬化の状態で、前記ベースフィルムが前記表面コーティング材と対向する向きで、請求項15に記載のリブレット用転写シートを前記物体に密着させ、加圧して固定することと、
前記表面コーティング材が硬化後、前記水溶性樹脂シートを除去することと、
を含むリブレット成形方法。 - リブレットパターンをインプリントの手法により樹脂に転写するための原版を吸着保持するツールであって、
キューブ状の複数の配管接手部材と複数の支持配管と複数の真空配管とを構成部材として備え、これらの構成部材を組み合わせることで全体として櫓状に構成され、
前記複数の配管接手部材は、所定面内に2次元配置されており、
前記複数の支持配管は、前記複数の配管接手部材に個別に対応して設けられ、前記複数の支持配管のそれぞれは、対応する配管接手部材に一端が接続され他端に被吸着面に合わせてチルト自在の真空吸着パッドを有する前記所定面に直交する方向に延びる真空配管から成り、
前記複数の真空配管のそれぞれは、前記複数の配管接手部材のうちの隣接する2つに一端と他端がそれぞれ接続され、
前記複数の支持配管がそれぞれ有する前記真空吸着パッドにより前記原版を吸着可能であり、
前記複数の真空配管の少なくとも一部を、長さの異なる真空配管と交換することにより、吸着対象の前記原版の形状及び大きさに合わせて前記複数の吸着パッドが配置される前記原版の被吸着面上の領域の形状及び面積を自在に変更可能な分解組み立て式のツール。 - 請求項18に記載のツールにおいて、
請求項1~8のいずれか一項に記載の原版を樹脂層が形成された物体上に載置するため、前記複数の支持配管がそれぞれ有する前記真空吸着パッドにより吸着するツール。
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- 2022-01-24 WO PCT/JP2022/002439 patent/WO2023139791A1/ja unknown
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