WO2023033178A1 - 癌についての情報を提供する方法、癌についての情報を提供するシステム及び癌を治療する方法 - Google Patents

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Abstract

癌の判定、治療には多くの選択肢が存在するが、個別の患者の特性や状態を見極め、治療効果やコスト効率を向上させることが望まれている。 対象の生体試料中のD-アミノ酸の量に基づく指標を用いる、前記対象における癌についての情報を提供する方法であって、 前記情報が: 前記対象における癌の検査又は診断結果の妥当性の検証結果; 前記対象における癌の進行度の分類; 前記対象における癌の予後予測の結果;及び 前記対象における癌の治療手段の選択のための情報 からなる群から選択される、方法を提供する。また、対象における癌についての情報を提供するシステムを提供する。また、該方法又はシステムによって提供される情報に基づいて選択された癌の治療手段によって、前記対象を治療する、癌の治療方法を提供する。

Description

癌についての情報を提供する方法、癌についての情報を提供するシステム及び癌を治療する方法
 本発明は、癌についての情報を提供する方法及び癌についての情報を提供するシステムに関する。また、本発明は、癌を治療する方法に関する。
 細胞の遺伝子に何らかの異常が起きることで、正常な制御を受け付けず自律的に増殖する細胞が腫瘍であり、浸潤的に細胞増殖、及び転移するものを癌(悪性腫瘍)という。癌の治療には、手術、放射線療法、化学療法、薬物療法、免疫療法等があり、単独、或いはそれらのいくつかを選択して組合せる集学的治療が行われる。1990年後半からの癌研究の進展により、化学療法、薬物療法においては、癌の性質により効果や副作用等の薬物の反応が異なることが明らかとされ、最適な薬物を選択するための指標(バイオマーカー)が開発されてきた。バイオマーカーには、血液、尿、唾液、細胞・組織等に含まれるタンパク質や遺伝子の変化を調べることで個人の特性やタイプを確認するものや、健康診断や人間ドックで利用される腫瘍マーカー等がある。癌の増殖に関わる分子を標的にした薬剤(分子標的薬)においては、その作用機序に関連して、肺癌のEGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、乳癌や胃癌のHER2タンパク過剰発現等がバイオマーカーとして利用されている。例えば、EGFR遺伝子の変異マーカーは、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR阻害薬)の治療効果を予測するために用いられる。免疫チェックポイント阻害剤においては、マイクロサテライト不安定性、Tumor mutation burden,PD-L1陽性率、Epstein-Berr virusがマーカー候補として研究されている。
 近年、キラルアミノ酸を識別して分析する技術の高性能化により、哺乳類をはじめとする生体において微量なD-アミノ酸とL-アミノ酸が識別された定量的な研究が進展したことで、従来の技術的限界により総アミノ酸(D-アミノ酸+L-アミノ酸)、又は便宜的にL-アミノ酸として取り扱われてきた一部のD-アミノ酸の存在や機能が明らかになってきている。D-アミノ酸は、摂取、共生細菌、代謝(分解、合成)、輸送、排泄等(非特許文献1~5)の影響により生体、組織、細胞、体液中の量が変化すること、そして腎臓病等、体調や疾患によって特徴的なキラルアミノ酸プロファイルを示すこと(特許文献1)、さらには、D-アミノ酸の腸管における免疫への関与(非特許文献6)や、腎臓由来細胞を保護する現象(非特許文献2)、神経細胞において糖質代謝がD-セリンの生合成に関与している報告がある(非特許文献7)。癌患者の血液においては、腎臓癌で、D-セリン、D-スレオニン、D-アラニン、D-アスパラギン、D-アロ-スレオニン、D-グルタミン、D-プロリン、D-フェニルアラニン、前立腺癌で、D-ヒスチジン、D-アスパラギン、肺癌で、D-アラニンが変動することが開示されている(特許文献1)。しかしながら、D-アミノ酸の量に基づいて、癌を有する患者個人の層別化等の評価は行われていない。
国際公開第2013/140785号 特開2008-96313号公報 国際公開第2020/196436号
Y. Miyoshi, R. Konno, J. Sasabe, K. Ueno, Y. Tojo, M. Mita, S. Aiso and K. Hamase, Alteration of intrinsic amounts of D-serine in the mice lacking serine racemase and D-amino acid oxidase, Amino Acids, 43, 1919-1931 (2012). DOI: 10.1007/s00726-012-1398-4 Y. Nakade, Y. Iwata, K. Furuichi, M. Mita, K. Hamase, R. Konno, T. Miyake, N. Sakai, S. Kitajima, T. Toyama, Y. Shinozaki, A. Sagara, T. Miyagawa, A. Hara, M. Shimizu, Y. Kamikawa, K. Sato, M. Oshima, S. Yoneda-Nakagawa, Y. Yamamura, S. Kaneko, T. Miyamoto, M. Katane, H. Homma, H. Morita, W. Suda, M. Hattori and T. Wada, Gut microbiota-derived D-serine protects against acute kidney injury, JCI Insight, 3 (20) (2018). DOI: 10.1172/jci.insight.97957 M. Ariyoshi, M. Katane, K. Hamase, Y. Miyoshi, M. Nakane, A.Hoshino, Y. Okawa, Y. Mita, S. Kaimoto, M. Uchihashi, K. Fukai, K. Ono, S. Tateishi, D. Hato, R. Yamanaka, S. Honda, Y. Fushimura, E. Iwai-Kanai, N. Ishihara, M. Mita, H. Homma and S. Matoba, D-Glutamate is metabolized in the heart mitochondria, Scientific Reports, 7, 43911 (2017). DOI: 10.1038/srep43911 P. Wiriyasermkul, S. Moriyama, Y. Tanaka, P. Kongpracha, N. Nakamae, M. Suzuki, T. Kimura, M. Mita, J. Sasabe and S. Nagamori, D-Serine, an emerging biomarker of kidney diseases, is a hidden substrate of sodium-coupled monocarboxylate transporters, bioRxiv preprint. DOI: 10.1101/2020.08.10.244822 A. Hesaka, S. Sakai, K. Hamase, T. Ikeda, R. Matsui, M. Mita, M. Horio, Y. Isaka and T. Kimura, D-Serine reflects kidney function and diseases, Scientific Reports, 9, 5104 (2019). DOI: 10.1038/s41598-019-41608-0 J. Sasabe, Y. Miyoshi, S. Rakoff-Nahoum, T. Zhang, M. Mita, B.M. Davis, K. Hamase and M.K. Waldor, Interplay between microbial D-amino acids and host D-amino acid oxidase modifies murine mucosal defence and gut microbiota, Nature Microbiology, 1, 16125 (2016). DOI: 10.1038/nmicrobiol.2016.125 M. Suzuki, J. Sasabe, Y. Miyoshi, K. Kuwasako, Y. Muto, K. Hamase, M. Matsuoka, N. Imanishi and S. Aiso, Glycolytic flux controls D-serine synthesis through glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase in astrocytes, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 112 (17), E2217-E2224 (2015). DOI: 10.1073/pnas.1416117112 N. Okamoto, Y. Miyagi, A. Chiba, M. Akaike, M. Shiozawa, A. Imaizumi, H. Yamamoto, T. Ando, M. Yamakado and O. Tochikubo, Diagnostic modeling with differences in plasma amino acid profiles between non-cachectic colorectal/breast cancer patients and healthy individuals, International Journal of Medicine and Medical Sciences, 1 (1), 001-008 (2009). DOI: 10.5897/IJMMS.9000074 岡本直幸,「アミノインデックス技術」を用いたがんスクリーニング,人間ドック,26 (3), 454-466 (2011).DOI:10.11320/ningendock.26.454
 癌は、死因順位第一位の疾患であり、手術、放射線療法、化学療法、薬物療法、免疫療法等の治療法それぞれに多くの選択肢が存在するが、個別の患者の特性や状態を見極めることで、治療効果やコスト効率をより向上させる方法が切望されている。
 発明者らは、癌患者の血液中のキラルアミノ酸(D-アミノ酸とL-アミノ酸)を網羅的に定量し解析したところ、病態、病期や予後、及び治療効果と、血液中のキラルアミノ酸量に関連があることを発見した。その関連について鋭意研究を行った結果、D-アミノ酸に基づく指標を開発することで、診断や病期分類、予後予測、治療法の選択における臨床上の有用性を見出し、課題の解決法を提供する本発明に至った。すなわち本発明は以下の発明を包含する。
[1] 対象の生体試料(例えば、血液、尿又は糞便)中のD-アミノ酸の量に基づく指標を用いる、前記対象における癌についての情報を提供する方法であって、
 前記情報が:
  前記対象における癌の検査又は診断結果の妥当性の検証結果;
  前記対象における癌の進行度の分類;
  前記対象における癌の予後予測の結果;及び
  前記対象における癌の治療手段の選択のための情報
からなる群から選択される、方法。
[2] 前記指標が、前記D-アミノ酸の量を、前記対象の生体内物質の量で補正した式又は値である、項目1に記載の方法。
[3] 前記生体内物質がL-アミノ酸である、項目2に記載の方法。
[4] 前記指標が、前記D-アミノ酸の量を、前記対象の腎機能の指標で補正した式又は値である、項目1に記載の方法。
[5] 前記腎機能の指標が、クレアチニン、シスタチンC、イヌリンクリアランス、クレアチニンクリアランス、尿蛋白、尿中アルブミン、β2-MG、α1-MG、NAG、L-FABP、NGALからなる群から1又は複数選択される因子の量である、項目4に記載の方法。
[6] 前記D-アミノ酸が、D-プロリン、D-セリン、D-アラニン、D-アスパラギン、及びD-ロイシンからなる群から1又は複数選択される、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
[7] 前記癌が、消化器癌である、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
[8] 前記消化器癌が、胃癌、食道癌又は大腸癌である、項目7に記載の方法。
[9] 前記癌の治療手段が抗悪性腫瘍薬である、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
[10] 前記抗悪性腫瘍薬が、免疫チェックポイント阻害薬及び/又はNMDA受容体拮抗薬である、項目9に記載の方法。
[11] 前記免疫チェックポイント阻害薬が、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、TIM3、BTLA、B7H3、B7H4、2B4、CD160、A2aR、KIR、VISTAおよびTIGITからなる群から選択される免疫チェックポイント分子の阻害薬である、項目10に記載の方法。
[12] 前記指標と、癌を有する対象の生体試料中のD-アミノ酸の量から決定された判定値とを比較することにより、前記対象における癌の検査又は診断結果の妥当性の検証結果を提供する、項目1~11のいずれか1項に記載の方法。
[13] 前記指標と、癌の治療手段に応答する及び/又は応答しない癌を有する患者の生体試料中のD-アミノ酸の量から決定された判定値とを比較することにより、前記対象における癌の治療手段の選択のための情報を提供する、項目1~11のいずれか1項に記載の方法。
[14] 前記指標と、癌の進行度が分類された癌を有する患者の生体試料中のD-アミノ酸の量から決定された判定値とを比較することにより、前記対象における癌の進行度の分類についての情報を提供する、項目1~11のいずれか1項に記載の方法。
[15] 前記指標と、予後についての情報を備えた癌を有する患者の生体試料中のD-アミノ酸の量から決定された判定値とを比較することにより、前記対象における癌の予後予測についての情報を提供する、項目1~11のいずれか1項に記載の方法。
[16] 項目1~15のいずれか1項に記載の方法によって提供される情報に基づいて選択された癌の治療手段によって、前記対象を治療する、癌の治療方法。
[17] 前記癌が、消化器癌である、項目16に記載の方法。
[18] 前記消化器癌が、胃癌、食道癌又は大腸癌である、項目17に記載の方法。
[19] 前記癌の治療手段が抗悪性腫瘍薬である、項目16~18のいずれか一項に記載の方法。
[20] 前記抗悪性腫瘍薬が、免疫チェックポイント阻害剤である、項目19に記載の方法。
[21] 前記免疫チェックポイント阻害剤が、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、TIM3、BTLA、B7H3、B7H4、2B4、CD160、A2aR、KIR、VISTAおよびTIGITからなる群から選択される免疫チェックポイント分子の阻害剤である、項目20に記載の方法。
[22] 前記癌の治療手段が、前記対象の生体試料中のD-アミノ酸の量に基づく指標の値が所定の範囲となる又は近づくように、前記対象の生体試料中のD-アミノ酸の量を調製する手段である、又はその手段を含む、項目16~21のいずれか1項に記載の方法。
[23] 前記D-アミノ酸の量を調製する手段が、D-アミノ酸又は薬学的に許容されるその塩の投与、あるいは、D-アミノ酸又は薬学的に許容されるその塩を抜去した組成物の投与である、項目22に記載の方法。
[24] 前記癌の治療手段が、NMDA受容体拮抗薬である、項目16~23のいずれか1項に記載の方法。
[25] 前記NMDA受容体拮抗薬が、メマンチン又は医薬的に許容されるその塩である、項目24に記載の方法。
[26] 記憶部と、入力部と、分析測定部と、データ処理部と、出力部とを含む、対象における癌についての情報を提供するシステムであって、
 前記記憶部は、生体試料(例えば、血液、尿又は糞便)中のD-アミノ酸の量と、癌に関する判定値を記憶し、ここで判定値が:
  癌を有する患者の生体試料中のD-アミノ酸の量から決定された癌の検査又は診断結果の妥当性に関する判定値;
  癌を有する患者の生体試料中のD-アミノ酸の量から決定された癌の進行度に関する判定値;
  癌を有する患者の生体試料中のD-アミノ酸の量から決定された癌の予後に関する判定値;並びに
  癌を有する患者の生体試料中のD-アミノ酸の量から決定された癌の治療手段の選択についての判定値、からなる群から選択されるものであり;
 前記分析測定部は、前記対象の生体試料中のD-アミノ酸を分離し定量し;
 前記データ処理部は、前記対象のD-アミノ酸の量に基づく指標を、前記記憶部に記憶された判定値と比較することで、前記対象における癌についての情報を選択し;
 前記出力部は、前記情報を出力する、システム。
[27] 前記指標が、前記D-アミノ酸の量を、前記対象の生体内物質の量で補正した式又は値である、項目26に記載のシステム。
[28] 前記生体内物質がL-アミノ酸である、項目27に記載のシステム。
[29] 前記指標が、前記D-アミノ酸の量を、前記対象の腎機能の指標で補正した式又は値である、項目26に記載のシステム。
[30] 前記腎機能の指標が、クレアチニン、シスタチンC、イヌリンクリアランス、クレアチニンクリアランス、尿蛋白、尿中アルブミン、β2-MG、α1-MG、NAG、L-FABP、NGALからなる群から1又は複数選択される因子の量である、項目29に記載のシステム。
[31] 前記D-アミノ酸が、D-プロリン、D-セリン、D-アラニン、D-アスパラギン、及びD-ロイシンからなる群から1又は複数選択される、項目26~30のいずれか一項に記載のシステム。
[32] 前記癌が、消化器癌である、項目26~31のいずれか一項に記載のシステム。
[33] 前記消化器癌が、胃癌、食道癌又は大腸癌である、項目32に記載のシステム。
[34] 前記癌の治療手段が抗悪性腫瘍薬である、項目26~33のいずれか一項に記載のシステム。
[35] 前記抗悪性腫瘍薬が、免疫チェックポイント阻害剤である、項目34に記載のシステム。
[36] 前記免疫チェックポイント阻害剤が、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、TIM3、BTLA、B7H3、B7H4、2B4、CD160、A2aR、KIR、VISTAおよびTIGITからなる群から選択される免疫チェックポイント分子の阻害剤である、項目35に記載のシステム。
[37] 前記指標と、癌を有する対象の生体試料中のD-アミノ酸の量から決定された判定値とを比較することにより、前記対象における癌の検査又は診断結果の妥当性の検証結果を提供する、項目26~36のいずれか1項に記載のシステム。
[38] 前記指標と、癌の治療手段に応答する及び/又は応答しない癌を有する患者の生体試料中のD-アミノ酸の量から決定された判定値とを比較することにより、前記対象における癌の治療手段の選択のための情報を提供する、項目26~36のいずれか1項に記載のシステム。
[39] 前記指標と、癌の進行度が分類された癌を有する患者の生体試料中のD-アミノ酸の量から決定された判定値とを比較することにより、前記対象における癌の進行度の分類についての情報を提供する、項目26~36のいずれか1項に記載のシステム。
[40] 前記指標と、予後についての情報を備えた癌を有する患者の生体試料中のD-アミノ酸の量から決定された判定値とを比較することにより、前記対象における癌の予後予測についての情報を提供する、項目26~36のいずれか1項に記載のシステム。
 本発明によれば、癌を有する対象のD-アミノ酸の量に基づく指標を用い、個人レベルで最適な治療法を分析・抽出・検討・選択・提供することで、その効果や副作用を制御できるようになることから、患者のQOLの向上、医療費の軽減に資するプレシジョン・メディシンを実現することができる。
健常者及び胃癌又は食道癌を有する対象から採取された血漿中のD-アミノ酸の量 血漿中のD-セリン量又はD-アラニン量を説明変数とし、対象の癌の有無をアウトカムとしたROC曲線 血漿中のD-セリン量とD-アラニン量からなる式を説明変数とし、対象の癌の有無をアウトカムとしたROC曲線 健常者及び胃癌又は食道癌を有する対象から採取された血漿中の各アミノ酸の総量におけるD-アミノ酸の割合(%D) 血漿中の%D-アラニンを説明変数とし、対象の癌の有無をアウトカムとしたROC曲線 血漿中の%D-セリンと%D-アスパラギンからなる式を説明変数とし、対象の癌の有無をアウトカムとしたROC曲線 健常者及び胃癌を有する対象から採取された血漿中のD-アミノ酸の量をクレアチニンで補正した値(D-AA/Cre) 血漿中のD-セリン/Cre、又はD-アラニン/Creを説明変数とし、対象の癌の有無をアウトカムとしたROC曲線 血漿中のD-セリン/CreとD-アラニン/Creからなる式を説明変数とし、対象の癌の有無をアウトカムとしたROC曲線 健常者及び進行度別の胃癌を有する対象から採取された血漿中のD-アミノ酸の量 健常者及び進行度別の胃癌を有する対象から採取された血漿中の各アミノ酸の総量におけるD-アミノ酸の割合(%D) 血漿中のD-セリン量を説明変数とし、胃癌を有する対象のニボルマブ投与の奏功をアウトカムとしたROC曲線 血漿中のD-セリン量、D-アスパラギン量、D-プロリン量、L-アラニン量からなる式を説明変数とし、胃癌を有する対象のニボルマブ投与における奏功をアウトカムとしたROC曲線 血漿中のD-セリン量、D-アラニン量からなる式を説明変数とし、胃癌を有する対象のニボルマブ投与における不応をアウトカムとしたROC曲線 血漿中のD-セリン量、D-アラニン量からなる式を説明変数とし、胃癌を有する対象のニボルマブ投与における無増悪生存期間又は全生存期間の生存曲線 癌を移植したマウスの体内D-アミノ酸の量の制御による、腫瘍の体積及び重量 本発明のシステムの構成図 癌を移植したマウスの体内D-アミノ酸の作用量の制御(メマンチンの添加の有無)による、腫瘍の体積 健常者及び進行度別の胃癌を有する対象から採取された尿中のD-アミノ酸の量(クレアチニン(Cr)で補正)(上段)、及び排泄率(FED-Ser)(下段) 血健常者及び進行度別の胃癌を有する対象から採取された尿中のD-Leu又はL-Leuの量(クレアチニン(Cr)で補正) 健常者及び進行度別の胃癌を有する対象から採取された尿中のL-アミノ酸の量(クレアチニン(Cr)で補正)(Crによる補正)(上段)、及び排泄率(FED-Ser)(下段) 糞便中の%D-アミノ酸、D-アミノ酸量(nmol/g)及びL-アミノ酸量(nmol/g) 健常者及び進行度別の胃癌を有する対象から採取された血漿中のD-アミノ酸の量(上段)及び各アミノ酸の総量におけるD-アミノ酸の割合(%D)(下段) 健常者及び進行度別の胃癌を有する対象から採取された血漿中のD-アミノ酸量及びeGFRの値でプロットした相関図
 以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明の技術的範囲は下記の形態のみに限定されない。なお、本明細書で引用されている先行技術文献は、参照により本明細書に取り込まれる。
 本発明は、癌に対する新しい評価・アプローチである、生体試料中のD-アミノ酸の量に基づく指標を用いることで、診断の精度を向上させ、適切な治療手段の選択を補助する方法を提供する。
 一実施態様において、本発明は、対象の生体試料(例えば、血液、尿又は糞便)中のD-アミノ酸の量に基づく指標を用いる、前記対象における癌についての情報を提供する方法であって、
 前記情報が:
  前記対象における癌の検査又は診断結果の妥当性の検証結果;
  前記対象における癌の進行度の分類;
  前記対象における癌の予後予測の結果;及び
  前記対象における癌の治療手段の選択のための情報
からなる群から選択される、方法を提供する。
 本明細書において、「癌」とは特に限定されないが、例えば、白血病(例えば、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病)、悪性リンパ腫(ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(例えば、成人T細胞白血病、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫))、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、頭頸部癌、消化器癌(例えば、食道癌、食道腺癌、胃癌、大腸癌、結腸癌、直腸癌)、肝臓癌(例えば、肝細胞癌)、胆嚢・胆管癌、胆道癌、膵臓癌、甲状腺癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌(例えば、扁平上皮非小細胞肺癌、非扁平上皮非小細胞肺癌)、小細胞肺癌)、乳癌、卵巣癌(例えば、漿液性卵巣癌)、子宮頚癌、子宮体癌、子宮内膜癌、膣癌、外陰部癌、腎癌(例えば、腎細胞癌)、尿路上皮癌(例えば、膀胱癌、上部尿路癌)、前立腺癌、精巣腫瘍(例えば、胚細胞腫瘍)、骨・軟部肉腫、皮膚癌(例えば、ブドウ膜悪性黒色腫、悪性黒色腫、メルケル細胞癌)、神経膠腫、脳腫瘍(例えば、膠芽腫)、胸膜中皮腫および原発不明癌)が挙げられる。本発明を適用可能な癌は、例えば、消化器癌、好ましくは、胃癌、食道癌又は大腸癌である。
 本明細書において、「D-アミノ酸」とは、「L体」のタンパク質構成アミノ酸の立体異性体である「D体」のタンパク質構成アミノ酸、及び、立体異性体を有さないグリシンを含む意味で用いられ、具体的には、グリシン、D-アラニン、D-ヒスチジン、D-イソロイシン、D-アロ-イソロイシン、D-ロイシン、D-リシン、D-メチオニン、D-フェニルアラニン、D-スレオニン、D-アロ-スレオニン、D-トリプトファン、D-バリン、D-アルギニン、D-システイン、D-グルタミン、D-プロリン、D-チロシン、D-アスパラギン酸、D-アスパラギン、D-グルタミン酸、及びD-セリンを含むものをいう。なお、生物試料に含まれるD-システインは、生体外においては、酸化されてD-シスチンと変化するため、本発明の一実施態様において、D-システインの代わりにD-シスチンを測定することで生物試料に含まれるD-システインの量を算出することができる。
 本明細書において、「生体試料中のD-アミノ酸の量」とは、特定の量の生体試料(例えば、血液、尿又は糞便)中のD-アミノ酸の量のことをいい、濃度で表されてもよい。生体試料中のD-アミノ酸の量は、採取された生体試料において、遠心分離、沈降分離、或いは分析のための前処理が行われた試料における量として測定される。したがって、生体試料中のD-アミノ酸の量は、採取された生体試料(例えば全血、血清、血漿等の血液に由来する血液試料;尿;糞便)における量として測定され得る。一例として、HPLCを用いた分析の場合、所定量の生体試料に含まれるD-アミノ酸の量は、クロマトグラムで表され、ピークの高さ・面積・形状について標準品との比較やキャリブレーションによる解析によって定量され得る。
 D-アミノ酸の量及び/又はL-アミノ酸の量は、任意の方法によって測定することができ、例えばキラルカラムクロマトグラフィー法や、酵素法を用いた測定、さらにはアミノ酸の光学異性体を識別するモノクローナル抗体を用いる免疫学的手法によって定量することができる。本発明における試料中のD-アミノ酸の量及び/又はL-アミノ酸の量の測定は、当業者に周知ないかなる方法を用いて実施しても構わない。例えば、以下のクロマトグラフィー法や酵素法(Y. Nagata et al., Clinical Science, 73 (1987), 105. Analytical Biochemistry, 150 (1985), 238., A. D'Aniello et al., Comparative Biochemistry and Physiology Part B, 66 (1980), 319. Journal of Neurochemistry, 29 (1977), 1053., A. Berneman et al., Journal of Microbial & Biochemical Technology, 2 (2010), 139., W. G. Gutheil et al., Analytical Biochemistry, 287 (2000), 196., G. Molla et al., Methods in Molecular Biology, 794 (2012), 273., T. Ito et al., Analytical Biochemistry, 371 (2007), 167. 等)、抗体法(T. Ohgusu et al., Analytical Biochemistry, 357 (2006), 15.,等 )、ガスクロマトグラフィー(GC)(H. Hasegawa et al., Journal of Mass Spectrometry, 46 (2011), 502., M. C. Waldhier et al., Analytical and Bioanalytical Chemistry, 394 (2009), 695., A. Hashimoto, T. Nishikawa et al., FEBS Letters, 296 (1992), 33., H. Bruckner and A. Schieber, Biomedical Chromatography, 15 (2001), 166. , M. Junge et al., Chirality, 19 (2007), 228., M. C. Waldhier et al., Journal of Chromatography A, 1218 (2011), 4537. 等)、キャピラリー電気泳動法(CE)(H. Miao et al., Analytical Chemistry, 77 (2005), 7190., D. L. Kirschner et al., Analytical Chemistry, 79 (2007), 736., F. Kitagawa, K. Otsuka, Journal of Chromatography B, 879 (2011), 3078., G. Thorsen and J. Bergquist, Journal of Chromatography B, 745 (2000), 389. 等)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(N. Nimura and T. Kinoshita, Journal of Chromatography, 352 (1986), 169., A. Hashimoto et al., Journal of Chromatography, 582 (1992), 41., H. Bruckner et al., Journal of Chromatography A, 666 (1994), 259., N. Nimura et al., Analytical Biochemistry, 315 (2003), 262., C. Muller et al., Journal of Chromatography A, 1324 (2014), 109., S. Einarsson et al., Analytical Chemistry, 59 (1987), 1191., E. Okuma and H. Abe, Journal of Chromatography B, 660 (1994), 243., Y. Gogami et al., Journal of Chromatography B, 879 (2011), 3259., Y. Nagata et al., Journal of Chromatography, 575 (1992), 147., S. A. Fuchs et al., Clinical Chemistry, 54 (2008), 1443., D. Gordes et al., Amino Acids, 40 (2011), 553., D. Jin et al., Analytical Biochemistry, 269 (1999), 124., J. Z. Min et al., Journal of Chromatography B, 879 (2011), 3220., T. Sakamoto et al., Analytical and Bioanalytical Chemistry, 408 (2016), 517., W. F. Visser et al., Journal of Chromatography A, 1218 (2011), 7130., Y. Xing et al., Analytical and Bioanalytical Chemistry, 408 (2016), 141., K. Imai et al., Biomedical Chromatography, 9 (1995), 106., T. Fukushima et al., Biomedical Chromatography, 9 (1995), 10., R. J. Reischl et al., Journal of Chromatography A, 1218 (2011), 8379., R. J. Reischl and W. Lindner, Journal of Chromatography A, 1269 (2012), 262., S. Karakawa et al., Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis, 115 (2015), 123., Hamase K, et al.,Chromatography 39 (2018) 147-152 等)がある。
 本発明における光学異性体の分離分析系は、複数の分離分析を組み合わせてもよい。具体例として、光学異性体を有する成分を含む試料を、移動相としての第一の液体と共に、固定相としての第一のカラム充填剤に通じて、前記試料の前記成分を分離するステップ、前記試料の前記成分の各々をマルチループユニットにおいて個別に保持するステップ、前記マルチループユニットにおいて個別に保持された前記試料の前記成分の各々を、移動相としての第二の液体と共に、固定相としての光学活性中心を有する第二のカラム充填剤に流路を通じて供給し、前記試料の成分の各々に含まれる前記光学異性体を分割するステップ、及び前記試料の成分の各々に含まれる前記光学異性体を検出するステップを含むことを特徴とする光学異性体の分析方法を用いることにより、試料中のD-アミノ酸の量及び/又はL-アミノ酸量を測定することができる(特許第4291628号広報)。HPLC分析では、予めo-フタルアルデヒド(OPA)や4-フルオロ-7-ニトロ-2,1,3-ベンゾキサジアゾール(NBD-F)のような蛍光試薬でD-及びL-アミノ酸を誘導体化したり、N-tert-ブチルオキシカルボニル-L-システイン(Boc-L-Cys)等を用いてジアステレオマー化する場合がある(浜瀬健司及び財津潔、分析化学、53巻、677-690(2004))。代替的には、アミノ酸の光学異性体を識別するモノクローナル抗体、例えば、D-アミノ酸又はL-アミノ酸等に特異的に結合するモノクローナル抗体を用いる免疫学的手法によってD-アミノ酸及び/又はL-アミノ酸を測定することができる。また、D-アミノ酸及びL-アミノ酸の合計量を指標とする場合、D-アミノ酸及びL-アミノ酸を分離して分析する必要はなく、D-アミノ酸及びL-アミノ酸を区別せずにアミノ酸を分析することもできる。その場合も酵素法、抗体法、GC、CE、HPLCで分離及び定量することができる。
 本発明において、D-アミノ酸、L-アミノ酸、クレアチニン、タンパク質等の生体分子や薬剤の量は、単なる質量、重量、物質量(mol)のみならず、組織・細胞・器官・分子ユニット単位や体積・重量当たりの質量、重量、物質量(mol)、糞便、血液や尿のような生体試料中の質量、重量、物質量(mol)、濃度、比重、及び密度等、計測され得る任意の物理量で表現される。
 本明細書において、「D-アミノ酸の量に基づく指標」とは、測定されたD-アミノ酸の量の値や、D-アミノ酸クリアランス、D-アミノ酸排泄率(非特許文献5)、さらにD-アミノ酸の量を説明変数とし目的に応じて補正された式や値、及び設定された式より算出される値のことであり、対象において測定されたものをD-アミノ酸の量に基づく指標における検査値という。一実施態様の本発明において、生体試料中のD-アミノ酸の量は、生理的変動要因、例えば、年齢、性別、BMI等で補正したものを用いてもよい。また、D-アミノ酸の動態が腎臓の働きの影響を受ける場合、腎機能の指標で補正したものを用いてもよい。限定を意図するものではないが、腎機能の指標として、クレアチニン、シスタチンC、イヌリンクリアランス、クレアチニンクリアランス、尿蛋白、尿中アルブミン、β2-MG、α1-MG、NAG、L-FABP、NGAL、糸球体濾過量、推算糸球体濾過量(eGFR)等から一つ、又は複数選択することができ、具体例として、D-アミノ酸の量/クレアチニン量比が挙げられる。さらに、神経変性疾患(ALS等)、自己免疫疾患(多発性硬化症等)等で体内のD-アミノ酸が変動していることが知られていることから(特許文献1~2)、それぞれの疾患の変動要因やマーカーで補正することもできる。
 本明細書において、「検査又は診断結果の妥当性の検証」とは、問診や対象から採取された検体の検査(生化学検査、血清学検査、内分泌検査、腫瘍マーカー検査、微生物学検査、ウイルス学検査、遺伝子・染色体検査、細胞性免疫検査、病理学検査等)、画像検査(内視鏡検査、造影剤検査、超音波検査、CT検査、MRI検査等)、遺伝子パネル検査、線虫検査、マイクロRNA検査、アミノインデックス(登録商標)、5-ALA蛍光リスク検査、特定の薬剤の効果や副作用を予め調べるコンパニオン診断に関する検査等、偽陽性の判定を含み得る臨床検査によって診断された対象について、原理の異なる別の指標を用いることで診断結果の妥当性を検証することをいう。具体例として、所定の腫瘍マーカーによって陽性と判定された対象について、生体試料中のD-アミノ酸の量に基づく指標による検査値が陽性と判定されれば真陽性、陰性と判定されれば偽陽性(第一種過誤)と判定することができる。
 D-アミノ酸の量に基づく指標による検査又は診断結果の妥当性の検証は、その指標の判定値(本明細書において「基準範囲」又は「臨床判断値」ともいう。)を用いて実施され得る。本発明において用いられる得る判定値(基準範囲又は臨床判断値)は、一定の基準を満たす健常者(基準固体)又は癌を有する対象の検査値分布の中央の一般に95%区間として設定されるが、目的に応じて任意の区間を設定することもできる。判定値は、特定の病態について、その診断、予防や治療、予後について判定を行う基準で、診断閾値、治療閾値、予防医学閾値がある。これらの閾値(カットオフ値)は、ROC曲線(Receiver Operatorating Characteristic curve)、多変量ロジスティック回帰モデル、Cox比例ハザードモデル等を用いた予測能・判定能に関する解析データや結果が利用され、症例対照研究、臨床医学の経験則、症例集積研究、コホート研究、専門家による合意等により設定され得る。一実施態様において、例えば、前記指標と、癌を有する対象の生体試料中のD-アミノ酸の量から決定された判定値とを比較することにより、前記対象における癌の検査又は診断結果の妥当性の検証結果を提供することができる。
 本明細書において、「癌の進行度の分類」とは、癌の重篤度を進行度(Stage)として分類することをいう。進行度は主に壁深達度(T)、リンパ節転移の程度(N)、その他の転移の有無と部位(M)のTNM因子に基づいて決定され、臨床分類、及び病理分類がある。臨床分類は、身体所見や画像診断、生検・細胞診等から行うものであり、治療法決定の基礎となる。一方、病理分類は、手術で得られた材料、腹腔洗浄細胞診等から行うものであり、予後評価の基礎となる。一般的には、学会等が定める各種癌の取り扱い規約や、国際対がん連合が定めるTNM分類が用いられ、例えば、胃癌ではI~IV期(Stage)に分類される。一実施態様において、例えば、前記指標と、癌の進行度が分類された癌を有する対象の生体試料中のD-アミノ酸の量から決定された判定値とを比較することにより、前記対象における癌の進行度の分類についての情報を提供することができる。
 本明細書において「予後の予測」とは、疾患や治療について、その後の経過や見通しを予測、推定することをいう。予後の予測を表す際には、時間・日・週・月・年等の単位を用いてもよく、カプランマイヤー解析や癌患者におけるPaPスコア(Palliative Prognosis Score)やPPI(Palliative Prognostic Index)が代表的な予後予測ツールとして用いられ得る。予後には、臓器等の機能予後、死亡推定の生命予後や、腫瘍の縮小、増大、転移、再発等があり、それぞれの評価項目の変数(パラメータ)や単位で表すことができ、予後の予測は治療手段の選択において重要な情報となる。一実施態様において、例えば、前記指標と、予後についての情報を備えた癌を有する対象の生体試料中のD-アミノ酸の量から決定された判定値とを比較することにより、前記対象における癌の予後予測についての情報を提供することができる。
 本明細書において、「治療手段の選択」とは、特定の疾患を診断された対象において、手術、放射線療法、化学療法、薬物療法、免疫療法、食事療法、運動療法等や、さらにそれぞれの技術(例えば、術式、投与法等)から最適な手段を選んだり、或いはその優先度を決定すること、また、所定の治療手段の選択が好適になるように対象に処置を加えることをいう。選択の基準や目的として、疾患の治癒、症状の軽減又は排除、疾患の進行の停止又は減速、疾患又は症状の予防、基礎疾患の悪化抑制、副作用の回避又は最小化、費用対効果、QOLの向上・維持等がある。一実施態様において、例えば、前記指標と、癌の治療手段に応答する及び/又は応答しない癌を有する対象の生体試料中のD-アミノ酸の量から決定された判定値とを比較することにより、前記対象における癌の治療手段の選択のための情報を提供することができる。
 本発明では、所定の臨床検査により癌の疑いや癌の診断を有する対象の生体試料中のD-アミノ酸の量に基づく指標を用い、検査・診断結果の妥当性を検証することができる。癌を有する対象と、有さない対象の生体試料中のD-アミノ酸及び、L-アミノ酸のプロファイルが異なることを利用し、一実施態様として、D-アミノ酸の量に基づく指標について、対象の検査値と予め設定されたD-アミノ酸の量に基づく指標の判定値(基準範囲又は臨床判断値)と比較することによって、真陽性、偽陽性を判定し得る。腫瘍マーカー(例えば、消化器癌では、SCC、CEA、CA19-9、AFP、PIVKA-II、Span-1、抗p53抗体等)は、癌細胞がつくる物質又は患者の細胞が腫瘍に反応してつくる物質であり、その検出が腫瘍の診断や再発、転移、治療効果の判定等に用いられるが、健常者や良性疾患でも陽性を呈する場合があることが問題となっていた。生体試料中のD-アミノ酸の量は、その摂取、吸収、輸送、分布、代謝(合成・分解)、排泄、作用等の一部が癌による影響を受け変動することから、生体試料中のD-アミノ酸の量に基づく指標における検査値の変動は、従来の腫瘍マーカーの変動と原理的に異なるため、真陽性・偽陽性の判定に有用性が高い。対象の症状等から癌の疑いがあるが、所定の検査において陰性との結果が得られた場合は、D-アミノ酸の量に基づく指標を用いて偽陰性(第二種過誤)、真陰性の判定をすることもできる。アミノインデックス(登録商標)検査(非特許文献8~9)は立体異性体を識別しないアミノ酸量に基づいた検査であり、遺伝子に関連する検査は遺伝子型(genotype)に基づいた検査であることから、D-アミノ酸とL-アミノ酸を識別し、疾患状態の表現型(phenotype)を検査することができるD-アミノ酸の量に基づく指標はそれらと異なる特徴を有し、検査結果の真偽判定に効果を奏する。
 別の態様では、本発明により提供され得る検査・診断結果の検証結果を利用し、癌のスクリーニングやその病態の診断に用いてもよい。さらに別の態様では検査・診断結果の妥当性の検証結果を、薬剤開発における効果・副作用・副反応のスクリーニングや治験の判定、代替的なエンドポイント等に用いることができる。検査・診断結果の検証を行う場合、D-アミノ酸種、L-アミノ酸種や補正因子、指標は一又は複数用いることができ、同時に複数の指標セットを用いてパネル検査に供してもよい。対象の検体は所定の検査と同一のものを用いてもよく、癌に対する応答や特性に関連して別のタイミングで採取されたものでもよい。また、対象はヒトを含む哺乳類、癌細胞の移植や遺伝子改変や薬剤により癌を誘発させた動物でもよく、所定の癌モデルとなる個体、細胞、組織、オルガノイド等でもよい。
 本発明では、対象の生体試料中のD-アミノ酸の量に基づく指標を用い、癌の進行度(Stage)を分類することができる。癌の進行度に応じて癌を有する対象の生体試料中のD-アミノ酸及び、L-アミノ酸のプロファイルが変動することを利用し、一実施態様として、D-アミノ酸の量に基づく指標について、対象の検査値と予め設定されたD-アミノ酸の量に基づく判定値(基準範囲又は臨床判断値)と比較することによって癌の進行度を分類し、それによって対象の予後や治療に関する情報を提供することができる。例えば、前記指標と、癌の進行度が分類された癌を有する患者の生体試料中のD-アミノ酸の量から決定された判定値とを比較することにより、前記対象における癌の進行度の分類についての情報を提供してもよい。
 本発明は、所定の判定値(基準範囲又は臨床判断値)と、対象における検査値の比較により実施されることから、医師による判断を含まず、検証の結果に基づく医師の診断精度の向上を目的とした診断の予備方法、又は診断の補助方法である。この方法は、医師でない者、例えば、臨床検査・健康診断・データ処理業者、分析・解析システム、及び分析・解析プログラムにより実施され得る。
 一実施態様において、本発明では、対象の生体試料中のD-アミノ酸の量に基づく指標を用い、癌の治療手段の選択を補助するための情報を提供する。治療における癌の応答や予後に関連して、対象の生体試料中のD-アミノ酸及び、L-アミノ酸のプロファイルが異なることを利用し、D-アミノ酸の量に基づく指標について予め設定された判定値(基準範囲又は臨床判断値)と対象の検査値を比較することによって手術、放射線療法、化学療法、薬物療法、免疫療法、食事療法、運動療法等から最適な手段を選択したり、或いはその優先度の決定について補助する。化学療法は、抗癌剤を用いて癌を治療することであり、手術や放射線療法が局所的な効果であることと比較して、全身等の、より広範囲の部位で効果が得られる。早期癌、進行癌では外科的治療(縮小手術、定型手術、拡大手術等)、内視鏡的治療が選択されることが多いが、手術と併用して化学療法を実施する場合もある。手術前の化学療法は癌の縮小によって出血や体への負担を軽減することが目的であり、手術後は残存癌の再発・転移・増殖を抑制することが目的となる。切除不能例では、化学療法が選択されるが、別の態様では、D-アミノ酸の量に基づく指標によって、最適な薬剤を選択したり、或いはその優先度の決定について補助するための情報を提供し得る。具体例として、D-アミノ酸の量に基づく指標について、予め所定の薬剤の効果や副作用、副反応に関する判定値(基準範囲又は臨床診断値)を設定し、対象の検査値と比較することにより、薬剤投与の可否を検討することができる。さらに、別の態様では、D-アミノ酸の量に基づく指標によって薬剤投与後の効果や副作用、副反応を予測、判定したり、投与の継続や中止、或いは投与量や投与タイミングの決定について補助するための情報を提供し得る。ここで使用される薬剤として、以下に限定されるわけではないが、抗悪性腫瘍薬として、例えば、代謝拮抗薬(フルオロウラシル(5-FU)、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合(S-1)、ゲムシタビン塩酸塩(GEM)、レボホリナートカルシウム(l-LV)、ホリナートカルシウム(LV)、テガフール・ウラシル配合、カペシタビン、トリフルリジン・チピラシル塩酸塩配合)、白金製剤(シスプラチン(CDDP)、オキサリプラチン、ミリプラチン水和物)、アントラサイクリン系(エピルビシン塩酸塩)、トポイソメラーゼ阻害薬(イリノテカン塩酸塩水和物)、微小管阻害薬(パクリタキセル、ドセタキセル水和物)、アルキル化薬(ストレプトゾシン)、分子標的薬(抗VEGF抗体製剤:ベバシズマブ、抗EGFR抗体製剤:セツキシマブ、パニツムマブ、抗HER2抗体製剤:トラスツズマブ、抗VEGFR抗体製剤:ラムシルマブ、BCR/ABL阻害薬:イマチニブメシル酸塩、マルチキナーゼ阻害薬:スニチニブリンゴ酸塩、レゴラフェニブ水和物、ソラフェニブトシル酸塩、レンバチニブメシル酸塩、EGFR阻害薬:エルロチニブ塩酸塩、VEGF阻害薬:アフリベルセプトベータ、mTOR阻害薬:エベロリムス)、免疫チェックポイント阻害薬(例えば、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、TIM3、BTLA、B7H3、B7H4、2B4、CD160、A2aR、KIR、VISTAおよびTIGITからなる群から選択される免疫チェックポイント分子の阻害薬、例えば、抗PD-1抗体(ニボルマブ、ペムブロリズマブ))、抗腫瘍性抗生物質(マイトマイシンC)、副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン、プデソニド)、漢方薬等が用いられ得る。胃癌の代表的なレジメンとして、SP療法、XP療法、SOX療法、CapeOX(XELOX)等があり、対象の遺伝子検査やタンパク質検査(例えば、HER2等)の結果によって分子標的薬が、治療効果によって微小管阻害薬、トポイソメラーゼ阻害薬、免疫チェックポイント阻害薬が併用されるが、本発明によってその選択に必要な情報を提供することができる。一例として、D-アミノ酸の量に基づく指標における検査値が、免疫チェックポイント阻害薬の適用が好適と判断される範囲に含まれる場合は、治療効果の向上を目的とした治療方針において、免疫チェックポイント阻害薬の選択、優先度、投与タイミングの切り替え等に必要な情報を提供することができる。
 本発明では、対象の生体試料中のD-アミノ酸の量に基づく指標における検査値に基づいて、体内のD-アミノ酸の量を調整すること(例えば、対象の生体試料中(例えば血液)のD-アミノ酸の量に基づく指標の値が所定の範囲となる又は近づくように、前記対象の生体試料中(例えば血液)のD-アミノ酸の量を調整すること)で、癌の進行を制御したり、癌と診断された対象における治療の応答能を変化させ、治療手段の選択を補助することができる。薬剤投与における癌の予後に関連して、対象の生体試料中のD-アミノ酸及び、L-アミノ酸のプロファイルが異なることを利用し、一実施態様として、D-アミノ酸の量に基づく指標について、予め治療の効果が期待される範囲や判定値(臨床診断値)を設定し、対象の検査値がその範囲に適応するように処置する(検査値の調整)。具体的には、対象の体内のD-アミノ酸の量を制御することによって、検査値が設定範囲内にある場合はその値を維持する方向、検査値が設定範囲を超える場合はその値を低下させる方向、検査値が設定範囲を下回る場合はその値を上昇させる方向へ調整する。別の態様として、D-アミノ酸の量に基づく指標について、副作用、副反応が生じる範囲や判定値(臨床診断値)が設定される場合は、対象の検査値がその範囲から外れるように処置する。本発明に用いられ得る生体試料中のD-アミノ酸の量に基づく指標の検査値の調整には、外部からのD-アミノ酸の投与や、食品(組成物)中へのD-アミノ酸の添加、或いは抜去により、組織、細胞、器官、体液中のD-アミノ酸の量を増加又は減少させることができる薬剤や食品を用いることができる。例えば、D-アミノ酸を含む水溶液を飲用することにより、血液や組織中のD-アミノ酸濃度を上昇させることができ(非特許文献1)、D-アミノ酸を抜去した食品の摂取により、血液中のD-アミノ酸濃度を低下させることができる。ここで用いるD-アミノ酸は、生体中のD-アミノ酸の量を増加又は減少させ、検査値の調整が可能な限り、D-アミノ酸の修飾体又は誘導体、或いはそれらの薬学的に許容される塩を含有してもよいし、薬理学的に許容され得る担体、希釈剤若しくは賦形剤を含んでいてもよく、プロドラッグの形態をとってもよい。対象の検査値の調整のために薬剤を用いる場合は、任意の投与経路に適した剤形を選択し製剤化することができる。経口投与に用いる場合、錠剤、カプセル剤、液剤、粉末剤、顆粒剤、咀嚼剤等、非経口投与の場合、注射剤、粉末剤、輸液製剤等の剤形が設計され得る。また、これらの製剤は医薬用に用いられる種々の補助剤、即ち、担体や他の助剤、例えば、安定化剤、防腐剤、無痛化剤、味剤、矯味剤、香料、乳化剤、充填剤、pH調整剤等が含まれてもよく、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。薬剤、及び原料としてのD-アミノ酸の光学純度は50%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましいが、効果を示す範囲においては任意の光学純度を選択することができ、限定されるものではない。また、任意の生理機構を利用してD-アミノ酸の量に基づく指標における検査値を調整することができる。具体例として、D-アミノ酸の吸収、輸送、分布、代謝(合成及び/又は分解)、排泄、又は作用等に関連するタンパク質や、D-アミノ酸の輸送体、又は受容体の発現(促進、抑制等)及び/又は活性(作動、阻害、刺激等)等の機構に作用させることで、D-アミノ酸の量の制御が可能である。従って、本発明に用いられ得るD-アミノ酸の量の制御剤は、D-アミノ酸の吸収、輸送、分布、代謝又は排泄に関連するタンパク質の遺伝子発現を直接的又は間接的に促進するもの、例えば、当該タンパク質、又はそれを発現するベクターや、当該タンパク質の発現を促進するカスケードの上流の活性を調整する因子、又はそれを発現するベクターであってもよい。本発明に用いられ得るD-アミノ酸の量の制御剤は、D-アミノ酸の吸収、輸送、分布、代謝又は排泄に関連するタンパク質の遺伝子発現を直接的又は間接的に抑制するもの、例えば、低分子化合物、アプタマー、抗体、抗体フラグメント、並びに、アンチセンスRNA又はDNA分子、RNAi誘導性核酸、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、ゲノム編集核酸及びそれらの発現ベクターから選択することができる。D-アミノ酸の吸収、輸送、分布、代謝(合成及び/又は分解)、排泄、又は作用等に関連するタンパク質、例えば、D-アミノ酸酸化酵素(DAO)、D-アスパラギン酸酸化酵素(DDO)、セリン異性化酵素(SRR)、DPP-4等の酵素であってもよい。具体例として、DAOの阻害薬(例えば、リスペリドン(Risperidone)等)は、D-アミノ酸の酸化を抑制することで、D-アミノ酸の量を増加させることができるため、D-アミノ酸の量の制御剤として用いられ得る。また、D-アミノ酸輸送体は輸送元・輸送先のD-アミノ酸の量を増加又は減少させるため、D-アミノ酸輸送体に直接又は間接的に作用する剤も本発明に適用され得る。非特許文献4には、D-アミノ酸輸送体タンパク質として、脳や腎臓、腸管に発現するSMCTファミリー、ASCTファミリー等が作動/阻害薬によってD-アミノ酸の局在量を変化させることが開示されている。これらの輸送体は共輸送物質(例えば、ナトリウムイオン)やスキャフォールドを通じた協調・競合等の影響を受け、例えば、ナトリウム/グルコース共輸送体(SGLT2)阻害薬等によってもD-アミノ酸の輸送活性は制御されるため、このような輸送体に作用する剤もD-アミノ酸の量の制御剤として利用できる。特許文献3には、アンジオテンシン2受容体拮抗薬(ARB)が、血液中D-アミノ酸の量を変化させることが開示されており、このような受容体に作用する剤もD-アミノ酸の量の制御剤として使用することができる。また、D-セリン、D-アラニン及びグリシンはNMDA型グルタミン酸受容体(NMDA受容体:N-methyl-D-aspartate receptor)のコアゴニストであるため、NMDA受容体拮抗薬(例えば、メマンチン、ケタミン、デキストロメトルファン、デキストロルファン、アマンタジン、エリプロディル、イフェンプロジル、フェンシクリジン、MK-801、ジゾシルピン、CCPene、フルピルチン又はその医薬的に許容される塩)も生体中D-アミノ酸の作用量、活性を変化させることができ、D-アミノ酸の量の制御剤として使用することができる。NMDA受容体拮抗薬としては、好ましくはメマンチン又はその医薬的に許容される塩を本発明に適用し得る。同様に、デルタ型グルタミン酸受容体、AMPA型グルタミン酸受容体を介して作用を発揮する薬剤も本発明に適用し得る。
 本明細書において、「D-アミノ酸の量の制御剤」とは、それが適用される(例えば、投与される)ことで、対象の生体中(例えば、細胞内、組織内、器官内又は体液中)、又は単離された細胞、組織、オルガノイド内のD-アミノ酸の量を増加又は減少させ得る剤をいい、吸収、輸送、分布、代謝(合成及び/又は分解)、排泄等いかなる機構に作用するものであってもよい。目的とするD-アミノ酸の量、濃度がある場合は、検体中のD-アミノ酸の量について、適宜検査、モニタリングによって評価することができる。
 本明細書において、「アプタマー」とは、特異的に標的物質に結合する能力を持つ合成DNA又はRNA分子及びペプチド性分子をいい、試験管内において化学的に短時間で合成することができる。本発明に用いられるアプタマーは、例えば、D-アミノ酸の吸収、輸送、分布、代謝又は排泄に関連するタンパク質に結合し、その活性を阻害し得るものである。本発明に用いられるアプタマーは、例えば、SELEX法を用い、小分子、タンパク質、核酸等各種の分子標的への結合を、インビトロで反復して選択することにより得ることができる(Tuerk C.,Gold L.,Science,1990,249(4968),505-510;Ellington AD,Szostak JW.,Nature,1990,346(6287):818-822;米国特許第6,867,289号明細書;米国特許第5,567,588号明細書;米国特許第6,699,843号明細書を参照)。
 本明細書において、「抗体フラグメント」とは、抗原に結合し得る活性を維持した完全長抗体の一部をいい、一般的には、その抗原結合ドメイン、或いは可変ドメインを含むものである。抗体フラグメントの例として、F(ab’)2、Fab’、Fab又はFv抗体フラグメント(scFv抗体フラグメントを含む。)等が挙げられる。また、抗体をプロテアーゼ酵素により処理し、場合により還元して得ることができる断片も、抗体フラグメントに含まれる。本発明に用いられる抗体又は抗体フラグメントは、ヒト由来抗体、マウス由来抗体、ラット由来抗体、ウサギ由来抗体、ラマ等のラクダ科由来抗体又はヤギ由来抗体のいずれの抗体でもよく、さらにそれらのポリクローナル若しくはモノクローナル抗体、完全型若しくは短縮型(例えば、F(ab’)2、Fab’、Fab又はFvフラグメント)抗体、キメラ化抗体、ヒト化抗体又は完全ヒト型抗体のいずれのものでもよい。
 本明細書において、「アンチセンスRNA又はDNA分子」とは、メッセンジャーRNA(mRNA)等、ある機能を持つRNA(センスRNA)と相補的な塩基配列を持ち、センスRNAと2本鎖を形成することで、そのセンスRNAが担うべきタンパク質の合成を阻害する機能を有する分子をいう。本発明において、アンチセンスRNA又はDNA分子を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドは、D-アミノ酸の吸収、輸送、分布、代謝又は排泄に関連するタンパク質のmRNAに結合することによってタンパク質に翻訳されることを阻害する。それにより、D-アミノ酸の吸収、輸送、分布、代謝又は排泄に関連するタンパク質の発現量を低減させ、その活性を阻害することができる。アンチセンスRNA又はDNA分子を合成する方法は、当該技術分野で周知であり、本発明に用いることができる。
 本明細書において、「RNAi誘導性核酸」とは、細胞内に導入されることにより、RNA干渉(RNAi)を誘導し得るポリヌクレオチドをいい、通常、19~30ヌクレオチド、好ましくは19~25ヌクレオチド、より好ましくは19~23ヌクレオチドを含むRNA、DNA、又はRNAとDNAのキメラ分子であり、任意に修飾が施されている。RNAiは、mRNAに対して生じてもよいし、プロセッシング前の転写直後のRNA、すなわちエキソン、イントロン、3’非翻訳領域、及び5’非翻訳領域を含むヌクレオチド配列のRNAであってもよい。本発明で使用可能なRNAi法は、(1)短い二重鎖RNA(siRNA)を細胞内に直接導入するか、(2)低分子ヘアピンRNA(shRNA)を各種発現ベクターに組み込み、そのベクターを細胞内に導入するか、或いは(3)対立方向に並ぶ2個のプロモーターを持つベクターに、siRNAに対応する短い二重鎖DNAをプロモーター間に挿入してsiRNAを発現させるベクターを作製し、細胞内に導入する、等の手法によりRNAiを誘導させてもよい。RNAi誘導性核酸は、D-セリン輸送体タンパク質のRNAの切断又はその機能抑制を可能にするsiRNA、shRNA又はmiRNAを含んでもよく、これらのRNAi核酸は、リポソーム等を用いて直接導入されてもよいし、これらのRNAi核酸を誘導する発現ベクターを用いて導入されてもよい。
 本発明で用いられるD-アミノ酸の吸収、輸送、分布、代謝又は排泄に関連するタンパク質に対するRNAi誘導性核酸は、D-アミノ酸の吸収、輸送、分布、代謝又は排泄に関連するタンパク質の発現を阻害する、又は有意に抑制する生物学的効果を示す核酸であればよく、当業者であれば、当該タンパク質の塩基配列を参考に合成することが可能である。例えば、固相ホスホアミダイト法等のDNA合成技術を利用したDNA(/RNA)自動合成装置を使用して化学的に合成するか、或いは、siRNA関連の受託合成会社(例えばLife Technologies社等)に委託して合成することも可能である。一実施形態において、本発明に用いられるsiRNAは、その前駆体であるshort-hairpin型二本鎖RNA(shRNA)から、細胞内RNaseであるダイサー(Dicer)によるプロセシングを介して誘導されるものであってもよい。
 本明細書において、「マイクロRNA(miRNA)」とは、21~25塩基長の1本鎖RNA分子であり、真核生物において遺伝子の転写後発現調節に関与する分子をいう。miRNAは、一般にmRNAの3’UTRを認識して、標的mRNAの翻訳を抑制し、タンパク質産生を抑制する。従って、D-セリン輸送体タンパク質の発現量を直接的及び/又は間接的に低減させることができるmiRNAも、本発明の範囲に含まれる。
 本明細書において、「リボザイム」とは、RNAの特異的切断を触媒することができる酵素的RNA分子の総称をいう。リボザイムには、グループIイントロン型やRNase Pに含まれるM1 RNAのように400ヌクレオチド以上の大きさのものもあるが、ハンマーヘッド型やヘアピン型と呼ばれる40ヌクレオチド程度の活性ドメインを有するものもある(例えば、小泉誠及び大塚栄子、タンパク質核酸酵素、1990、35、2191を参照)。例えば、ハンマーヘッド型リボザイムの自己切断ドメインは、G13U14C15という配列のC15の3’側を切断するが、その活性にはU14とA9との塩基対形成が重要とされ、C15の代わりにA15又はU15でも切断され得ることが示されている(例えば、Koizumi,M.et al.,FEBS Lett,1988,228,228.を参照)。基質結合部位が標的部位近傍のRNA配列と相補的なリボザイムを設計すれば、標的RNA中のUC、UU又はUAという配列を認識する制限酵素的なRNA切断リボザイムを得ることが可能であり、当業者であれば、以下の文献を参考に製造可能である:Koizumi,M.et al.,FEBS Lett,1988,239,285.;小泉誠及び大塚栄子,タンパク質核酸酵素,1990,35,2191.;Koizumi,M.et al.,Nucl.Acids Res.,1989,17,7059.。また、ヘアピン型リボザイムも本発明に用いることができる。このリボザイムは、例えば、タバコリングスポットウイルスのサテライトRNAのマイナス鎖に見出される(Buzayan,JM.,Nature,1986,323,349.)。ヘアピン型リボザイムからも、標的特異的なRNA切断リボザイムを作出できることが示されている(例えば、Kikuchi,Y.&Sasaki,N.,Nucl.Acids.Res.,1991,19,6751.;菊池洋,化学と生物,1992,30,112.を参照)。リボザイムを用いてD-セリン輸送体タンパク質をコードする遺伝子の転写産物を特異的に切断することで、D-セリン輸送体タンパク質の発現を阻害することができる。
 本明細書において、「ゲノム編集核酸」とは、遺伝子ターゲッティングに用いられるヌクレアーゼを利用したシステムにおいて、所望の遺伝子を編集するために用いられる核酸をいう。遺伝子ターゲッティングに用いられるヌクレアーゼは、公知のヌクレアーゼの他、今後遺伝子ターゲッティングのために使用される新たなヌクレアーゼも包含される。例えば、公知のヌクレアーゼとしては、CRISPR/Cas9(Ran,F.A.,et al.,Cell,2013,154,1380-1389)、TALEN(Mahfouz,M.,et al.,PNAS,2011,108,2623-2628)、ZFN(Urnov,F.,et al.,Nature,2005,435,646-651)等が挙げられる。
 腸内細菌をはじめとする共生細菌が生体のD-アミノ酸のリソースの一つであることを利用し、抗生物質、整腸剤、オリゴ糖類の投与やプロバイオティクス、微生物移植、糞便移植、ディスバイオシスの改善等の手段によって、微生物叢や生育環境を変化させ、その結果、生体中のD-アミノ酸の量を増加又は減少させることができる。限定を意図するものではないが、プロバイオティクスの一例として、1073R-1乳酸菌を含むヨーグルトの摂取により、便中のD-セリンが増加し、D-リジンが減少することが知られているため、このような乳酸菌を本発明のD-アミノ酸の量の制御剤として用いてもよい。
 上述の機序にかかわらずD-アミノ酸の量に基づく指標における検査値を調整させ得る医薬品又は食品等は、本発明における生体中D-アミノ酸の量を制御する手段として任意に利用することができる。
 本明細書において、「医薬品」とは、医薬品及び医薬部外品を含む意味で用いられる。
 本明細書において、「食品」は、食品全般を意味するが、いわゆる健康食品を含む一般食品の他、特定保健用食品や栄養機能食品等の保健機能食品をも含むものであり、さらにダイエタリーサプリメント(サプリメント、栄養補助食品)、飼料、食品添加物等も本発明の食品に包含される。
 本発明の別の態様では、本発明は、上記の対象における癌についての情報を提供する方法を実行するシステム又はプログラムを提供する。例えば、本発明は、
 記憶部と、入力部と、分析測定部と、データ処理部と、出力部とを含む、対象における癌についての情報を提供するシステムであって、
 前記記憶部は、生体試料中のD-アミノ酸の量と、癌に関する判定値を記憶し、ここで判定値が:
  癌を有する患者の生体試料中のD-アミノ酸の量から決定された癌の検査又は診断結果の妥当性に関する判定値;
  癌を有する患者の生体試料中のD-アミノ酸の量から決定された癌の進行度に関する判定値;
  癌を有する患者の生体試料中のD-アミノ酸の量から決定された癌の予後に関する判定値;並びに
  癌を有する患者の生体試料中のD-アミノ酸の量から決定された癌の治療手段の選択についての判定値、からなる群から選択されるものであり;
 前記分析測定部は、前記対象の生体試料中のD-アミノ酸を分離し定量し;
 前記データ処理部は、前記対象のD-アミノ酸の量に基づく指標を、前記記憶部に記憶された判定値と比較することで、前記対象における癌についての情報を選択し;
 前記出力部は、前記情報を出力する、システムを提供する。
 図17は、本発明のシステムの構成図である。図17に示す試料分析システム10は、本発明の方法を実施することができるように構成される。このような試料分析システム10は、記憶部11と、入力部12、分析測定部13と、データ処理部14と、出力部15とを含んでおり、生体試料を分析し、対象における癌についての情報を出力することができる。
 より具体的に、本発明の試料分析システム10において、記憶部11は、入力部12から入力された生体試料中のD-アミノ酸の量と、癌に関する判定値を記憶し、分析測定部13は、生体試料を分離定量し、データ処理部14は、対象のD-アミノ酸の量に基づく指標を、前記記憶部に記憶された判定値と比較することで、前記対象における癌についての情報を選択し、出力部15が前記情報を出力することができる。
 記憶部11は、RAM、ROM、フラッシュメモリ等のメモリ装置、ハードディスクドライブ等の固定ディスク装置、又はフレキシブルディスク、光ディスク等の可搬用の記憶装置等を有する。記憶部は、分析測定部で測定したデータ、入力部から入力されたデータ及び指示、データ処理部で行った演算処理結果等の他、情報処理装置の各種処理に用いられるコンピュータプログラム、データベース等を記憶する。コンピュータプログラムは、例えばCD-ROM、DVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体や、インターネットを介してインストールされてもよい。コンピュータプログラムは、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶部にインストールされる。記憶部は、予め入力部12から入力された癌に関する判定値についてのデータを記憶する。
 入力部12は、インターフェイス等であり、キーボード、マウス等の操作部も含む。これにより、入力部は、分析測定部13で測定したデータ、データ処理部14で行う演算処理の指示等を入力することができる。また、入力部12は、例えば分析測定部13が外部にある場合は、操作部とは別に、測定したデータ等をネットワークや記憶媒体を介して入力することができるインターフェイス部を含んでもよい。
 分析測定部13は、生体試料の少なくともD-アミノ酸の量の測定を行う。したがって、分析測定部13は、アミノ酸のD体及びL体の分離及び測定を可能にする構成を有してもよい。アミノ酸は、1つずつ分析されてもよいが、一部又は全ての種類のアミノ酸についてまとめて分析してもよい。分析測定部13は、以下のものに限定されることを意図するものではないが、例えば試料導入部、光学分割カラム、検出部を備えたキラルクロマトグラフィーシステム、好ましくは高速液体クロマトグラフィーシステムであってもよい。特定のアミノ酸量のみを検出する観点では、酵素法や免疫学的手法による定量を実施してもよい。分析測定部13は、腎病態の評価システムとは別に構成されていてもよく、測定したデータ等をネットワークや記憶媒体を用いて入力部12を介して入力してもよい。
 データ処理部14は、測定されたD-アミノ酸の量に基づく指標を、前記記憶部に記憶された判定値と比較することで、対象における癌についての情報を選択ができる。D-アミノ酸の量に基づく指標は、対象の生体内物質の量(例えば、L-アミノ酸の量、又は腎機能の指標)で補正した式又は値であってもよく、生理的変動要因、例えば、年齢、性別、BMI等で補正した式又は値であってもよい。
 データ処理部14は、記憶部に記憶しているプログラムに従って、分析測定部13で測定され、記憶部11に記憶されたデータに対して、各種の演算処理を実行する。演算処理は、データ処理部に含まれるCPUにより行われる。このCPUは、分析測定部13、入力部12、記憶部11、及び出力部15を制御する機能モジュールを含み、各種の制御を行うことができる。これらの各部は、それぞれ独立した集積回路、マイクロプロセッサ、ファームウェア等で構成されてもよい。
 出力部15は、データ処理部で演算処理を行った結果である、対象の癌についての情報を出力するように構成さる。出力部15は、演算処理の結果を直接表示する液晶ディスプレイ等の表示装置、プリンタ等の出力手段であってもよいし、外部記憶装置への出力又はネットワークを介して出力するためのインターフェイス部であってもよい。
 また、他の態様において、本発明は、上記の対象における癌についての情報を提供する方法を情報処理装置に実行させるプログラムであってもよい。
 一実施態様において、本発明は、上記の方法、システム、又はプログラムが実装された情報装置によって提供される癌のついての情報に基づいて選択される、癌の治療手段によって、対象を治療する、癌の治療方法であってもよい。上記発明によってもたらされる癌のついての情報を参照することにより、対象における最適な治療手段を選択することが可能となる。
 本明細書において、明示的に引用される全ての特許文献及び非特許文献若しくは参考文献の内容は、全て本明細書の一部としてここに引用し得る。
 以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。当業者は本明細書の記載に基づいて容易に本発明に修飾・変更を加えることができ、それらは本発明の技術的範囲に含まれる。
 実施例において、記号の意味は下記の通りである。
 D-AA:D-アミノ酸
 L-AA:L-アミノ酸
 Asn:アスパラギン
 Ser:セリン
 Ala:アラニン
 Pro:プロリン
 Leu:ロイシン
 PD-AA:血漿中のD-アミノ酸濃度(nmol/mL)
 PL-AA:血漿中のL-アミノ酸濃度(nmol/mL)
 PCre:血漿中のクレアチニン濃度
 UD-AA/Cre:尿中D-アミノ酸量/尿中クレアチニン量(nmol/mg)
 UL-AA/Cre:尿中L-アミノ酸量/尿中クレアチニン量(nmol/mg)
 FD-AA:糞便中のD-アミノ酸量(nmol/g)
 FL-AA:糞便中のL-アミノ酸量(nmol/g)
 P%D:PD-AA/PD-AA+PL-AA×100(%)
 被験者は、慶應義塾大学病院において受診した癌を有する対象、また、人間ドックで癌や腎臓病等の疾患の診断を受けていない対象(健常対象:M. Suzuki, et al, Amino Acids, 54, 421-432 (2022)参照)であり、それぞれ絶食2時間以上経過した対象の採血後に分離した血漿を2D-HPLCによるキラルアミノ酸分析に供し、取得されたデータについて比較、解析した。いずれの研究も、慶應義塾大学病院の倫理委員会において承認を受けたものであり、総ての被験者から書類によるインフォームドコンセントが取得された。なお、癌を有する対象は、慶應義塾大学病院において学会ガイドラインに従った標準的な治療が実施されている。
[実施例1]血液中のD-アミノ酸の量に基づいた指標による判定
 被験検体として、抗悪性腫瘍薬である免疫チェックポイント阻害薬が使用されていない胃癌を有する対象25名、食道癌を有する対象6名、健常者81名から採取された血漿中のD-アミノ酸について、検査若しくは診断結果の検証、及び/又は癌の進行度の分類に利用する指標について解析した。ROC曲線における判定値(カットオフ値)或いは判定値候補は、曲線と陽性率(感度)が1.00(100%)、特異度が1.00(100%)となる点との距離が最小となる点から導かれた。
(1)「PD-AA」を指標とした判定
 癌を有する対象群と健常者群の血漿中に検出されたD-Asn、D-Ser、D-Ala、D-Pro、D-Leuの量について、PD-AA(nmol/mL)を図1に示す。
 D-Leuは、健常者由来の血漿中では観察されず、癌を有する対象のみで検出されることから、定性検査に利用することができ、その陽性率(感度)は100%、特異度48.4%であった。
 PD-Asn、PD-Ser、PD-Ala、PD-Proについて、癌を有する対象群と健常者群間のt検定の結果は図下表の通りであった。癌患者由来の血漿中に検出されたPD-AAは、それぞれ有意に上昇していることから、血液中のD-アミノ酸を用いる指標として、PD-AAで表される「血液中のD-アミノ酸の量」を利用して検査・診断結果を検証することができる。
 ROC曲線の解析により、胃癌におけるPD-Serの判定値を1.49と設定した場合は、陽性率96.0%、特異度76.5%(図2A)、PD-Alaの判定値を1.57と設定した場合は、陽性率92.0%、特異度92.6%となった(図2B)。また、食道癌におけるPD-Serの判定値を1.89と設定した場合は、陽性率100%、特異度92.6%(図2C)、PD-Alaの判定値を2.31と設定した場合は、陽性率100%、特異度95.1%となった(図2D)。
 癌の疑いのある対象個々の複数キラルアミノ酸種のPD-AAをパネル検査することにより、相互に検査・診断結果を検証することができる。
 食道癌において、PD-SerとPD-Alaの検査値から得られる回帰式:
 2.03 x D-Ser + 0.268 x D-Ala - 7.75
のROC曲線の解析により、この式から算出される値の判定値を-3.10と設定した場合は、陽性率100%、特異度97.5%となった(図3)。
(2)「P%D」を指標とした判定
 癌を有する対象群と健常者群の血漿中に検出されたAsn、Ser、Ala、Proについて、PD%を図4に示す。
 P%D-Asn、P%D-Ser、P%D-Ala、P%D-Proについて、癌を有する対象群と健常者群間のt検定の結果は図下表の通りであった。癌を有する対象由来の血漿中に検出されたP%D-AAは、それぞれ有意に上昇していることから、血液中のD-アミノ酸を用いる指標として、P%D-AAで表される「血液中のD-アミノ酸の量とL-アミノ酸量の割合」を利用して検査・診断結果を検証することができる。
 ROC曲線の解析により、胃癌におけるP%D-Alaの判定値を54.6%と設定した場合は、陽性率88.0%、特異度93.8%となった(図5)。
 癌を有する対象個々の複数キラルアミノ酸種のP%Dをパネル検査することにより、相互に検査・診断結果を検証することができる。
 P%D-AlaとP%D-Asnの検査値から得られる回帰式:
 2.45 x %D-Ala + 1.06 x %D-Asn -3.57
のROC曲線の解析により、この式から算出される値の判定値を-1.85と設定した場合は、陽性率92.0%、特異度92.6%となった(図6)。
(3)「PD-AA/PCre」を指標とした判定
 癌を有する対象群と健常者群の血漿中に検出されたD-Asn、D-Ser、D-Ala、D-Proについて、腎機能の指標であるCreで補正したPD-AA/PCreを図7に示す。
 PD-Asn/PCre、PD-Ser/PCre、PD-Ala/PCre、PD-Pro/PCreについて、癌を有する対象群と健常者群間のt検定の結果は図下表の通りであった。癌患者由来の血漿中に検出されたPD-AA/Pcreは、それぞれ有意に上昇していることから、血液中のD-アミノ酸を用いる指標として、PD-AAで表される「血液中のD-アミノ酸の量」を利用して検査・診断結果を検証することができる。
 ROC曲線の解析により、胃癌におけるPD-Ser/PCreの判定値を1.87と設定した場合は、陽性率96.0%、特異度70.4%(図8A)、PD-Ala/PCreの判定値を2.18と設定した場合は、陽性率92.0%、特異度93.8%となった。(図8B)。
 癌の疑いのある対象個々の複数キラルアミノ酸種のPD-AAをパネル検査することにより、相互に検査・診断結果を検証することができる。
 PD-Ser/CreとPD-Ala/PCreの検査値から得られる回帰式:
 0.983 x D-Ala/Cre + 1.96 x D-Ser/Cre - 8.10
のROC曲線の解析により、この式から算出される値の判定値を-2.02と設定した場合は、陽性率96.0%、特異度93.8%となった(図9)。
(4)「PD-AA」、「P%D-AA」を指標とした癌の進行度の分類
 胃癌におけるPD-AA、P%D-AAについて、胃癌ガイドライン第6版(日本胃癌学会2021年7月)に従い進行度分類(Stage-I~IV)を行い、t検定を実施した(図10、11)。
 D-Asn、D-Ala、D-Proに関する指標であるPD-AA、P%D-AAは、健常者群と比較してStage-I群で有意に上昇しており、早期の検査・診断の検証に有用であった。癌の疑いのある対象個々の複数キラルアミノ酸種のPD-AAをパネル検査することにより、相互に検査・診断結果を検証、病期を判定することができる。
 PD-Ala、PD-Proのいずれか、若しくは複数が上昇している場合は、進行度がStage-I~IIIと分類することができ、同時にPD-Serの上昇がある場合は、Stage-IVと分類することができる。また、P%D-Asn、P%D-Ala、P%D-Proのいずれか、若しくは複数が上昇している場合は、進行度がStage-I~IIIと分類することができ、同時にP%D-Serの上昇がある場合は、Stage-IVと分類することができる。
[実施例2]血液中のD-アミノ酸の量に基づいた指標による予後予測
 被験検体として、抗悪性腫瘍薬である免疫チェックポイント阻害薬(Immunocheck inhibitor:ICI)の抗PD-1抗体製剤ニボルマブ(Nivolumab)が使用された切除不能進行再発胃癌を有する対象28名から、薬剤治療開始前に採取された血漿中のD-アミノ酸の量に基づき、予後の予測に利用する指標について解析した。治療及び免疫チェックポイント阻害薬の使用は、胃癌ガイドライン第6版(日本胃癌学会2021年7月)に従い、保険適応の範囲でニボルマブを2週又は4週毎に1日480mgを点滴静注した。なお、胃癌ガイドラインによるとマイクロサテライト不安定性の高い(MSI-High)腫瘍を有する患者は例外的に2次治療から抗PD-1抗体が使用可能となっている。予後の評価として癌治療の効果測定基準である、完全奏功CR(癌の兆候が消失)、部分奏功PR(状態が改善)、安定SD(変化なし)、進行PD(状態が悪化)、に分類した。6か月以上状態を改善したCR~PRは7例、無増悪生存期間が6か月未満のSDは8例、不応PDは13例であった。
(1)「PD-AA」を指標としたSD~PDの予後予測
 ニボルマブ投与後のCR~PRとSD~PDをアウトカムとするROC曲線の解析により、PD-Serの判定値を2.00とした場合、予後不良率(感度)100%、特異度75.0%であった(図12)。
 癌を有する対象個々の複数キラルアミノ酸種の各指標についてパネル検査することにより、相互に予後予測を検証することができる。
 各指標の検査値から得られる回帰式から算出される値のROC曲線の解析により、
 -21.6 x D-Ser - 0.0370 x L-Ala + 46.7
で予後予測値(判定値)を-1.24と設定した場合は、SD~PD(予後不良率)100%、特異度90.0%となり(図13A)、
 -87.4 x D-Ser -0.151 x L-Ala -6.11 x D-Pro + 195.6
で予後予測値(判定値)を-0.72と設定した場合は、SD~PD(予後不良率)100%、特異度95.0%となり(図13B)、
 -18.0 x D-Ser -0.0332 x L-Ala + 3.47 x D-Asn/Cre + 38.5
で予後予測値を-1.12と設定した場合は、予後不良率100%、特異度95.0%となった(図13C)。
 健常者群のPD-Ser検査値の95%信頼区間から算出される閾値を2.12と設定した場合は、指標がそれを上回る対象におけるSD~PD(予後不良率)は100%、特異度75.0%であった。
 これらの予後予測により、薬剤投与等の治療手段の選択を補助することができる。
(2)「PD-AA」を指標としたPDの予後予測
 ニボルマブ投与後のCR~SD群(non-PD群)とPD群間におけるPD-AAのt検定を実施したところ、PD-Ser(p=0.0021),PD-Asn(p=0.0158)について有意に高値を示した。
 健常者群のPD-Ser検査値の95%信頼区間から算出される閾値を2.12と設定した場合、それを上回る対象のPD(予後不良率)は100%、特異度75.0%であった。
 癌を有する対象個々の複数キラルアミノ酸種(例えば、D-Ser、D-Ala)の各指標についてパネル検査することにより、相互に予後予測を検証することができる。
 ステップワイズ法及びROC曲線を用いた解析により、Nivolumab不応(PD)の予測式:
 -4.65 x D-Ser + 0.32 x D-Ala + 8.28
で、予後予測値(判定値)を-9.01(D-Ser 2.18,D-Ala 3.56)と設定したした場合、PD(予後不良率)は76.9%,特異度100%で不応例が検出された。このとき、ROC曲線におけるArea under the curve(AUC)は0.9333であった(図14)。
 さらに、判定値-9.01で2群に分けて無増悪生存期間又は全生存期間を解析したところ,無増悪生存期間では中央値1.1ヶ月(95%信頼区間:0.5-1.8)vs3.8ヶ月(95%信頼区間:3.0-6.1),ハザード比5.1(95%信頼区間2.0-13.1),p=0.0003,全生存期間では中央値3.4ヶ月(95%信頼区間0.6-5.9)vs18.9ヶ月(95%信頼区間5.2-未到達),ハザード比7.1(2.1-24.6),p=0.001であり、いずれにおいても有意差を認める結果となった。(図15)
 これらの予後予測により、薬剤投与等の治療手段の選択を補助することができる。
 一般に3次治療以降の抗癌剤治療を受ける進行切除不能再発胃癌患者の全生存期間中央値は半年以下と言われており、選択した抗癌剤が効果のないものであった場合、健康上や経済上で大きな不利益を被る可能性がある。治療の不応及び奏効を予測して適切な治療法(抗癌剤等)を選択することは患者にとって大きな利益となり、適切な効果予測マーカーの利用は,QOL改善や医療経済全体の負担軽減にもつながるという特別な効果を示す。
[実施例3]体内のD-アミノ酸の量の制御による予後
 Ly.5.1マウス雌(6~8週齢)について、D-アミノ酸を含まない水(対象群:n=11)、1%D-Ser溶液(D-Ser群:n=11)、1%D-Ala溶液(D-Ala群:n=12)の飲水を開始(Day-14)した後、2週後(Day-0)に大腸癌株であるMC38細胞(5×10)を移植し、さらに3週後(Day-20、21)に、腫瘍の体積、重量を計測し、解析に供した。
 D-Ser群は、PD-Serが上昇し、対照群と比較して腫瘍の体積、重量とも有意に増加し、癌の予後は不良と判定された(図16)。
 これらのデータより、体内のD-Ser量、PD-Serを低位に維持することが癌の増悪を抑制させることが示された。
[実施例4]NMDA受容体拮抗剤による腫瘍増大の抑制
 Ly.5.1マウス雌(6~8週齢)について、D-アミノ酸を含まない水(対象群)又は1%D-Ser溶液(D-Ser群)の飲水を開始した後、大腸癌株であるMC38細胞(5×10)を皮下移植後、それぞれメマンチンを投与群と対象群に分け、投与群についてはDay 4以降、NMDA受容体拮抗剤であるメマンチン(Memantine)を、毎日腹腔内投与(10~20μg/BW(g))した。その結果、D-Serによる腫瘍体積の増大は、メマンチンの投与によって抑制された(図18)。
 このことから、D-アミノ酸の受容体であるタンパク質に作用するD-アミノ酸量を低減させることにより、腫瘍増大を抑制するという抗癌作用を発揮させることができることが明らかとなった。
[実施例5]尿中のD-アミノ酸の量に基づいた指標による癌の検出と進行度の分類
 人間ドック患者(=健常者)71人と、胃癌患者78人(Stage I:33人、Stage II、III:20人、Stage IV:25人)を対象に、診断後治療前の尿検体を採取しUD-AAを測定し、UD-AA/Cre及び排泄率を算出した。UD-AA/Creは、PD-AAと同様に上昇傾向を示し、癌の検出及び進行度に関する情報の提供が可能であった(図19上段、図20左)。特に、UD-Leu/Creは、健常者の多くで検出されないことから効果的に定性検査を実施することができ、複数のUD-AA及びPD-AAに基づいた指標を用いたパネル検査により、癌の検出、診断結果の妥当性の検証及び進行度の分類についてより精度の高い判定を行うことを可能とした。
 D-Asn及びD-Leuの排泄率(FED-AA)も癌の進行に応じて上昇し、癌の進行度に関する情報の提供が可能であった。
 UL-AA/Creは、Stage Iにおける癌の検出能力はあるものの(図21)、進行度に関してはUD-AA/Creがより高精度に情報を提供することができた。
[実施例6]糞便中のD-アミノ酸の量に基づいた指標による癌の検出と進行度の分類
 健常者24人及び胃癌33人(Stage IV:30人、Stage I:3人)のFD-AA及びFL-AAを測定し、F%Dを算出した。FD-AA、FL-AA及びF%D-Alaは癌のStageの進行に応じて上昇傾向を示し、進行度の分類に関する情報を提供した。(図22)。これらの結果から、複数のFD-AA、UD-AA及びPD-AAに基づいた指標を用いたパネル検査により、癌の検出、診断結果の妥当性の検証及び進行度の分類についてより精度の高い判定を行うことを可能とした。
[実施例7]実施例1の実証及び妥当性確認
 健常者84人及び胃癌患者137人(Stage I:52人、Stage II、III:24人、Stage IV:32人(いずれのStageの患者も治療前))のPD-AAについて、実施例1、2に関してバリデートを実施した(図23)。その結果、何れのPD-AA、P%Dも実施例1と同様の傾向を示し(図10及び11参照)、PD-AAの量に基づいた指標による癌の各種判定関する概念の実証及び妥当性の確認をすることができた。さらに、この傾向は腎機能で補正しても同様であった。(図24)。
 各PD-AA、特にPD-Ala及びPD-Proは早期のStage Iから大幅に上昇することが示され、健常者84人と早期胃癌患者52人のデータから、腎機能で補正した値を用いたROC曲線による解析では、早期胃癌についてAUC 0.976、感度92.3%、特異度98.8%と高精度に検出及び分類できた。また、これらのデータから腎機能の範囲を限定することでより精密な癌の進行度に関する情報を提供することもでき、具体的には、腎機能が比較的正常(eGFR>60)の患者ではPD-Ala、PD-Proは、より高分解能にて進行度を分類することが可能であった。さらに、腎機能が比較的正常で、PD-AAが高い患者(例えば、D-Ser>3.0nmol/mL)では予後不良であった(P<0.001)。

Claims (18)

  1.  対象の生体試料中のD-アミノ酸の量に基づく指標を用いる、前記対象における癌についての情報を提供する方法であって、
     前記情報が:
      前記対象における癌の検査又は診断結果の妥当性の検証結果;
      前記対象における癌の進行度の分類;
      前記対象における癌の予後予測の結果;及び
      前記対象における癌の治療手段の選択のための情報
    からなる群から選択される、方法。
  2.  前記指標が、前記D-アミノ酸の量を、前記対象の生体内物質の量で補正した式又は値である、請求項1に記載の方法。
  3.  前記生体内物質がL-アミノ酸である、請求項2に記載の方法。
  4.  前記指標が、前記D-アミノ酸の量を、前記対象の腎機能の指標で補正した式又は値である、請求項1に記載の方法。
  5.  前記腎機能の指標が、クレアチニン、シスタチンC、イヌリンクリアランス、クレアチニンクリアランス、尿蛋白、尿中アルブミン、β2-MG、α1-MG、NAG、L-FABP、NGALからなる群から1又は複数選択される因子の量である、請求項4に記載の方法。
  6.  前記D-アミノ酸が、D-プロリン、D-セリン、D-アラニン、D-アスパラギン、及びD-ロイシンからなる群から1又は複数選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
  7.  前記癌が、消化器癌である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
  8.  前記消化器癌が、胃癌、食道癌又は大腸癌である、請求項7に記載の方法。
  9.  前記癌の治療手段が抗悪性腫瘍薬である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
  10.  前記抗悪性腫瘍薬が、免疫チェックポイント阻害薬及び/又はNMDA受容体拮抗薬である、請求項9に記載の方法。
  11.  前記免疫チェックポイント阻害薬が、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、TIM3、BTLA、B7H3、B7H4、2B4、CD160、A2aR、KIR、VISTAおよびTIGITからなる群から選択される免疫チェックポイント分子の阻害薬である、請求項10に記載の方法。
  12.  前記指標と、癌を有する対象の生体試料中のD-アミノ酸の量から決定された判定値とを比較することにより、前記対象における癌の検査又は診断結果の妥当性の検証結果を提供する、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
  13.  前記指標と、癌の治療手段に応答する及び/又は応答しない癌を有する患者の生体試料中のD-アミノ酸の量から決定された判定値とを比較することにより、前記対象における癌の治療手段の選択のための情報を提供する、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
  14.  前記指標と、癌の進行度が分類された癌を有する患者の生体試料中のD-アミノ酸の量から決定された判定値とを比較することにより、前記対象における癌の進行度の分類についての情報を提供する、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
  15.  前記指標と、予後についての情報を備えた癌を有する患者の生体試料中のD-アミノ酸の量から決定された判定値とを比較することにより、前記対象における癌の予後予測についての情報を提供する、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
  16.  請求項1~15のいずれか1項に記載の方法によって提供される情報に基づいて選択された癌の治療手段によって、前記対象を治療する、癌の治療方法。
  17.  前記癌の治療手段が、前記対象の生体試料中のD-アミノ酸の量に基づく指標の値が所定の範囲となる又は近づくように、前記対象の生体試料中のD-アミノ酸の量を調整する手段である又はその手段を含む、請求項16に記載の方法。
  18.  記憶部と、入力部と、分析測定部と、データ処理部と、出力部とを含む、対象における癌についての情報を提供するシステムであって、
     前記記憶部は、生体試料中のD-アミノ酸の量と、癌に関する判定値を記憶し、ここで判定値が:
      癌を有する患者の生体試料中のD-アミノ酸の量から決定された癌の検査又は診断結果の妥当性に関する判定値;
      癌を有する患者の生体試料中のD-アミノ酸の量から決定された癌の進行度に関する判定値;
      癌を有する患者の生体試料中のD-アミノ酸の量から決定された癌の予後に関する判定値;並びに
      癌を有する患者の生体試料中のD-アミノ酸の量から決定された癌の治療手段の選択についての判定値、からなる群から選択されるものであり;
     前記分析測定部は、前記対象の生体試料中のD-アミノ酸を分離し定量し;
     前記データ処理部は、前記対象のD-アミノ酸の量に基づく指標を、前記記憶部に記憶された判定値と比較することで、前記対象における癌についての情報を選択し;
     前記出力部は、前記情報を出力する、システム。
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