WO2023026391A1

WO2023026391A1 - 吸引具のたばこ消費材及び吸引具

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Publication number: WO2023026391A1
Application number: PCT/JP2021/031125
Authority: WO
Inventors: 里望津久井; 亮祐長瀬
Original assignee: 日本たばこ産業株式会社
Priority date: 2021-08-25
Filing date: 2021-08-25
Publication date: 2023-03-02

Abstract

たばこ材料の香味を味わうことができるとともに、吸引具の負荷に焦げが発生することを抑制することができる技術を提供する。　吸引具のたばこ消費材６０は、粉末状のたばこ材料が複数固められて所定の形状に成形された成形体６１と、成形体の全表面をコーティングするコーティング材６２と、を備え、コーティング材の材質は、ポリビニルアルコール、かんてん、ゼラチン、キトサン、及び、アルギン酸の中から選択された少なくとも１つの物質からなる水溶性ポリマーである。

Description

吸引具のたばこ消費材及び吸引具

　本発明は、吸引具のたばこ消費材、及び、吸引具に関する。

　従来、非燃焼加熱型の吸引具として、エアロゾル液を収容する液体収容部と、液体収容部のエアロゾル液が導入されるとともに、導入されたエアロゾル液を霧化してエアロゾルを発生させる電気的な負荷と、を有し、エアロゾル液の内部に、たばこ材料が配置されたことを特徴とする、吸引具が知られている（例えば、特許文献１参照）。このような吸引具によれば、エアロゾル液の内部にたばこ材料が配置されているので、たばこ材料の香味成分をエアロゾル液に溶出させることができる。これにより、たばこ材料の香味を味わうことができる。

　なお、他の先行技術文献として、特許文献２が挙げられる。特許文献２には、非燃焼加熱型の吸引具の基本的な構成態様が開示されている。

特表２０１８－５２３９８５号公報特開２０２０－１４１７０５号公報

　上述したような特許文献１に例示されるような従来の吸引具の場合、たばこ材料から、水溶性ポリフェノール類や多糖類等のような、「吸引具の負荷に付着した場合に負荷に焦げを発生させるような成分（これ以降、「焦げ成分」と称する場合がある）」が、エアロゾル液に多量に溶出するおそれがある。この場合、吸引具の負荷に焦げが発生するおそれがある。この点において、従来技術は改善の余地があった。

　本発明は、上記のことを鑑みてなされたものであり、たばこ材料の香味を味わうことができるとともに、吸引具の負荷に焦げが発生することを抑制することができる技術を提供することを目的の一つとする。

（態様１）
　上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る吸引具のたばこ消費材は、エアロゾル液を収容する液体収容部と、前記液体収容部の前記エアロゾル液が導入されるとともに、導入された前記エアロゾル液を霧化してエアロゾルを発生させる電気的な負荷と、を有する吸引具の前記液体収容部の前記エアロゾル液の内部に配置されて使用される、吸引具のたばこ消費材であって、前記たばこ消費材は、粉末状のたばこ材料が複数固められて所定の形状に成形された成形体と、前記成形体の全表面をコーティングするコーティング材と、を備え、前記コーティング材の材質は、ポリビニルアルコール、かんてん、ゼラチン、キトサン、及び、アルギン酸の中から選択された少なくとも１つの物質からなる水溶性ポリマーである。

　ポリビニルアルコール、かんてん、ゼラチン、キトサン、及び、アルギン酸の中から選択された少なくとも１つの物質からなる水溶性ポリマーは、相対的に分子量の小さい物質（低分子量物質）がこの水溶性ポリマーの結合隙間を通過することを許容しつつ、相対的に分子量の大きい物質（高分子量物質）が結合隙間を通過することは抑制する性質を有している。したがって、この態様によれば、このような水溶性ポリマーを材質とするコーティング材で成形体の全表面がコーティングされているので、成形体のたばこ材料に含まれる香味成分（これは、低分子量物質である）がエアロゾル液に溶出することは許容しつつ、焦げ成分(これは、高分子量物質である）がエアロゾル液に溶出することは抑制することができる。

　また、成形体のたばこ材料に含まれる香味成分と焦げ成分とを比較した場合、香味成分は上述した水溶性ポリマーに溶解することができるが、焦げ成分は水溶性ポリマーへの溶解が困難である。したがって、たばこ材料の香味成分は、水溶性ポリマーに溶解することができ、その後、エアロゾル液に溶出することができる。一方、焦げ成分は、水溶性ポリマーに溶解することが困難であるので、エアロゾル液に溶出することが抑制される。この観点においても、この態様によれば、香味成分がエアロゾル液に溶出することは許容しつつ、焦げ成分がエアロゾル液に溶出することは抑制することができる。

　以上のように、この態様によれば、たばこ材料の香味を味わうことができるとともに、吸引具の負荷に焦げが発生することを抑制することができる。

（態様２）
　上記の態様１において、前記粉末状のたばこ材料の平均粒径は１００μｍ以下であってもよい。

　この態様によれば、例えば、粉末状のたばこ材料の平均粒径が１００μｍよりも大きい場合に比較して、成形体の表面を滑らかな表面にすることができる。これにより、成形体の全表面をコーティング材によって均一にコーティングすることが容易にできる。

（態様３）
　上記の態様１又は２において、前記エアロゾル液は、水、プロピレングリコール、及び、グリセロールの中から選択された少なくとも１つの物質を含んでいてもよい。

（態様４）
　上記の態様１～３のいずれか１態様において、前記たばこ消費材は、シート形状を有していてもよい。

（態様５）
　上記の態様１～３のいずれか１態様において、前記たばこ消費材は、ペレット形状を有していてもよい。

（態様６）
　上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る吸引具は、エアロゾル液を収容する液体収容部と、前記液体収容部の前記エアロゾル液が導入されるとともに、導入された前記エアロゾル液を霧化してエアロゾルを発生させる電気的な負荷と、前記液体収容部の前記エアロゾル液の内部に配置された、たばこ消費材と、を備え、前記たばこ消費材は、上記の態様１～５いずれか１態様に係るたばこ消費材である。

　この態様によれば、たばこ消費材が上記の態様１～５いずれか１態様に係るたばこ消費材であるので、たばこ材料の香味を味わうことができるとともに、吸引具の負荷に焦げが発生することを抑制することができる。

　本発明の態様によれば、たばこ材料の香味を味わうことができるとともに、吸引具の負荷に焦げが発生することを抑制することができる。

実施形態に係る吸引具の外観を模式的に示す斜視図である。実施形態に係る吸引具の霧化ユニットの主要部を示す模式的断面図である。図２のＡ１－Ａ１線断面図である実施形態に係るたばこ消費材の模式的な斜視図である。図５（Ａ）は、図４のたばこ消費材をＸ－Ｙ平面で切断した模式的断面図であり、図５（Ｂ）は、図４のたばこ消費材をＹ－Ｚ平面で切断した模式的断面図である。実施形態の変形例に係るたばこ消費材の模式的な斜視図である。コーティングの評価結果を説明するためのＳＥＭ画像を示す図である。ＧＣ－ＭＳによる成分分析の結果を示す図である。ＧＣ－ＭＳによる成分分析の結果を示す図である。焦げの発生に関する実験結果を説明するための図である。

　以下、本発明の実施形態に係る吸引具１０について、図面を参照しつつ説明する。なお、本願の図面は、特徴の理解を容易にするために模式的に図示されており、各構成要素の寸法比率等は実際のものと同じであるとは限らない。また、本願の図面には、必要に応じて、Ｘ－Ｙ－Ｚの直交座標が図示されている。

　図１は、本実施形態に係る吸引具１０の外観を模式的に示す斜視図である。本実施形態に係る吸引具１０は、非燃焼加熱型の吸引具であり、具体的には、非燃焼加熱型の電子たばこである。

　本実施形態に係る吸引具１０は、一例として、吸引具１０の中心軸線ＣＬの方向に延在している。具体的には、吸引具１０は、一例として、「長手方向（中心軸線ＣＬの方向）」と、長手方向に直交する「幅方向」と、長手方向及び幅方向に直交する「厚み方向」と、を有する外観形状を呈している。吸引具１０の長手方向、幅方向、及び、厚み方向の寸法は、この順に小さくなっている。なお、本実施形態において、Ｘ－Ｙ－Ｚの直交座標のうち、Ｚ軸の方向（Ｚ方向又は－Ｚ方向）は長手方向に相当し、Ｘ軸の方向（Ｘ方向又は－Ｘ方向）は幅方向に相当し、Ｙ軸の方向（Ｙ方向又は－Ｙ方向）は厚み方向に相当する。

　吸引具１０は、電源ユニット１１と、霧化ユニット１２とを有している。電源ユニット１１は、霧化ユニット１２に着脱自在に接続されている。電源ユニット１１の内部には、電源としてのバッテリや、制御装置等が配置されている。霧化ユニット１２が電源ユニット１１に接続されると、電源ユニット１１の電源と、霧化ユニット１２の後述する負荷４０とが電気的に接続される。

　霧化ユニット１２には、エア（すなわち、空気）を排出するための排出口１３が設けられている。エアロゾルを含むエアは、この排出口１３から排出される。吸引具１０の使用時において、吸引具１０のユーザは、この排出口１３から排出されたエアを吸い込むことができる。

　電源ユニット１１には、排出口１３を通じたユーザの吸引により生じた吸引具１０の内部の圧力変化の値を出力するセンサが配置されている。ユーザによるエアの吸引が開始すると、このエアの吸引開始をセンサが感知して、制御装置に伝え、制御装置が後述する霧化ユニット１２の負荷４０への通電を開始させる。また、ユーザによるエアの吸引が終了すると、このエアの吸引終了をセンサが感知して、制御装置に伝え、制御装置が負荷４０への通電を終了させる。

　なお、電源ユニット１１には、ユーザの操作によって、エアの吸引開始要求、及び、エアの吸引終了要求を制御装置に伝えるための操作スイッチが配置されていてもよい。この場合、ユーザが操作スイッチを操作することで、エアの吸引開始要求や吸引終了要求を制御装置に伝えることができる。そして、このエアの吸引開始要求や吸引終了要求を受けた制御装置は、負荷４０への通電開始や通電終了を行う。

　なお、上述したような電源ユニット１１の構成は、例えば、特許文献２に例示されるような公知の吸引具の電源ユニットと同様であるので、これ以上詳細な説明は省略する。

　図２は、吸引具１０の霧化ユニット１２の主要部を示す模式的断面図である。具体的には図２は、霧化ユニット１２の主要部を、中心軸線ＣＬを含む平面で切断した断面を模式的に図示している。図３は、図２のＡ１－Ａ１線断面（すなわち、中心軸線ＣＬを法線とする切断面で切断した断面）を模式的に示す図である。図２及び図３を参照しつつ、霧化ユニット１２について説明する。

　霧化ユニット１２は、長手方向（中心軸線ＣＬの方向）に延在する複数の壁部（壁部７０ａ～壁部７０ｇ）を備えるとともに、幅方向に延在する複数の壁部（壁部７１ａ～壁部７１ｃ）を備えている。また、霧化ユニット１２は、エア通路２０と、ウィック３０と、電気的な負荷４０と、液体収容部５０と、たばこ消費材６０とを備えている。

　エア通路２０は、ユーザによるエアの吸引時（すなわち、エアロゾルの吸引時）に、エア（Ａｉｒ）が通過するための通路である。本実施形態に係るエア通路２０は、上流通路部と、負荷通路部２２と、下流通路部２３とを備えている。本実施形態に係る上流通路部は、一例として、複数の上流通路部、具体的には、上流通路部２１ａ（「第１の上流通路部」）、及び、上流通路部２１ｂ（「第２の上流通路部」）を備えている。

　上流通路部２１ａ，２１ｂは、負荷通路部２２よりも上流側（エア流動方向で上流側）に配置されている。上流通路部２１ａ，２１ｂの下流側端部は、負荷通路部２２に連通している。負荷通路部２２は、負荷４０が内部に配置された通路部である。下流通路部２３は、負荷通路部２２よりも下流側（エア流動方向で下流側）に配置された通路部である。下流通路部２３の上流側端部は負荷通路部２２に連通している。また、下流通路部２３の下流側端部は、前述した排出口１３に連通している。下流通路部２３を通過したエアは、排出口１３から排出される。

　具体的には、本実施形態に係る上流通路部２１ａは、壁部７０ａと壁部７０ｂと壁部７０ｅと壁部７０ｆと壁部７１ａと壁部７１ｂとによって囲まれた領域に設けられている。また、上流通路部２１ｂは、壁部７０ｃと壁部７０ｄと壁部７０ｅと壁部７０ｆと壁部７１ａと壁部７１ｂとによって囲まれた領域に設けられている。負荷通路部２２は、壁部７０ａと壁部７０ｄと壁部７０ｅと壁部７０ｆと壁部７１ｂと壁部７１ｃとによって囲まれた領域に設けられている。下流通路部２３は、筒状の壁部７０ｇによって囲まれた領域に設けられている。

　壁部７１ａには、孔７２ａ及び孔７２ｂが設けられている。エアは、孔７２ａから上流通路部２１ａに流入し、孔７２ｂから上流通路部２１ｂに流入する。また、壁部７１ｂには、孔７２ｃ及び孔７２ｄが設けられている。上流通路部２１ａを通過したエアは、孔７２ｃから負荷通路部２２に流入し、上流通路部２１ｂを通過したエアは、孔７２ｄから負荷通路部２２に流入する。

　本実施形態において、上流通路部２１ａ，２１ｂにおけるエアの流動方向は、下流通路部２３におけるエアの流動方向の反対方向である。具体的には、本実施形態において、上流通路部２１ａ，２１ｂにおけるエアの流動方向は、－Ｚ方向であり、下流通路部２３におけるエアの流動方向は、Ｚ方向である。

　また、図２及び図３を参照して、本実施形態に係る上流通路部２１ａ及び上流通路部２１ｂは、上流通路部２１ａと上流通路部２１ｂとによって液体収容部５０を挟持するように、液体収容部５０に隣接して配置されている。

　具体的には、本実施形態に係る上流通路部２１ａは、図３に示すように、中心軸線ＣＬを法線とする切断面で切断した断面視で、液体収容部５０を挟んで一方の側（－Ｘ方向の側）に配置されている。一方、上流通路部２１ｂは、この断面視で、液体収容部５０を挟んで他方の側（Ｘ方向の側）に配置されている。換言すると、上流通路部２１ａは、吸引具１０の幅方向で、液体収容部５０の一方の側に配置され、上流通路部２１ｂは、吸引具１０の幅方向で、液体収容部５０の他方の側に配置されている。

　ウィック３０は、液体収容部５０の抽出液を負荷通路部２２の負荷４０に導入するための部材である。このような機能を有するものであれば、ウィック３０の具体的な構成は特に限定されるものではないが、本実施形態に係るウィック３０は、一例として、毛管現象を利用して、液体収容部５０の抽出液を負荷４０に導入している。

　負荷４０は、液体収容部５０の抽出液が導入されるとともに、この導入された抽出液を霧化してエアロゾルを発生させるための電気的な負荷である。負荷４０の具体的な構成は特に限定されるものではなく、例えば、ヒータのような発熱素子や、超音波発生器のような素子を用いることができる。本実施形態では、負荷４０の一例として、ヒータを用いている。このヒータとしては、発熱抵抗体（すなわち、電熱線）や、セラミックヒータ、誘電加熱式ヒータ等を用いることができる。本実施形態では、このヒータの一例として、発熱抵抗体を用いている。また、本実施形態において、負荷４０としてのヒータは、コイル形状を有している。すなわち、本実施形態に係る負荷４０は、いわゆるコイルヒータである。このコイルヒータは、ウィック３０に巻き付けられている。

　負荷４０は、前述した電源ユニット１１の電源や制御装置と電気的に接続されており、電源からの電気が負荷４０に供給されることで発熱する（すなわち、通電時に発熱する）。また、負荷４０の動作は、制御装置によって制御されている。負荷４０は、ウィック３０を介して負荷４０に導入された液体収容部５０の抽出液を加熱することで霧化して、エアロゾルを発生させる。

　なお、このウィック３０や負荷４０の構成は、例えば特許文献２等に例示されるような公知の吸引具に用いられているウィックや負荷と同様であるので、これ以上詳細な説明は省略する。

　液体収容部５０は、エアロゾル液（Ｌｅ）を収容するための部位である。本実施形態に係る液体収容部５０は、壁部７０ｂと壁部７０ｃと壁部７０ｅと壁部７０ｆと壁部７１ａと壁部７１ｂとによって囲まれた領域に設けられている。

　また、本実施形態において、前述した下流通路部２３は、一例として、液体収容部５０を中心軸線ＣＬの方向に貫通するように設けられている。但し、この構成に限定されるものではなく、例えば下流通路部２３は、吸引具１０の厚み方向（Ｙ軸の方向）で液体収容部５０に隣接するように配置されていてもよい。

　本実施形態では、エアロゾル液の一例として、水、プロピレングリコール、及び、グリセロールの中から選択された少なくとも１つの物質を含む液体を用いている。本実施形態では、エアロゾル液の具体例として、水、プロピレングリコール、及び、グリセロールが混合した液体を用いている。

　図２及び図を参照して、たばこ消費材６０は、少なくとも吸引具１０の使用時において、液体収容部５０のエアロゾル液の内部に配置されている。本実施形態に係るたばこ消費材６０は、液体収容部５０のエアロゾル液の内部に２個配置されている。但し、たばこ消費材６０の個数は、これに限定されるものではなく、１個でもよく、３個以上であってもよい。

　詳細は後述するが、たばこ消費材６０は、たばこ材料を含んでいる。このたばこ消費材６０に含まれるたばこ材料の香味成分は、液体収容部５０のエアロゾル液に溶出する。

　吸引具１０を用いた吸引は以下のように行われる。まず、ユーザがエアの吸引を開始した場合、エアはエア通路２０の上流通路部２１ａ，２１ｂを通過して、負荷通路部２２に流入する。負荷通路部２２に流入したエアには、負荷４０において発生したエアロゾルが付加される。このエアロゾルには、たばこ消費材６０に含まれるたばこ材料から溶出した香味成分が含まれている。この香味成分を含むエアロゾルが付加されたエアは、下流通路部２３を通過して排出口１３から排出されて、ユーザに吸引される。

　続いて、たばこ消費材６０の詳細について説明する。図４は、たばこ消費材６０の模式的な斜視図である。本実施形態に係るたばこ消費材６０は、一例として、所定方向に延在するシート形状を有している。

　たばこ消費材６０の全長（Ｌ１）、幅（Ｌ２）、及び、厚み（Ｌ３）の具体的な値は、特に限定されるものではないが、数値の一例を挙げると、以下のとおりである。すなわち、たばこ消費材６０の全長（Ｌ１）として、例えば５ｍｍ以上５０ｍｍ以下の範囲から選択された値を用いることができる。たばこ消費材６０の幅（Ｌ２）として、例えば、２ｍｍ以上１０ｍｍ以下の範囲から選択された値を用いることができる。たばこ消費材６０の厚み（Ｌ３）として、例えば、１ｍｍ以上５ｍｍ以下の範囲から選択された値を用いることができる。但し、これらの値は、たばこ消費材６０の寸法の一例に過ぎず、たばこ消費材６０の寸法は、吸引具１０のサイズに応じて適宜設定すればよい。

　図５（Ａ）は、図４のたばこ消費材６０をＸ－Ｙ平面で切断した模式的断面図である。図５（Ｂ）は、図４のたばこ消費材をＹ－Ｚ平面で切断した模式的断面図である。本実施形態に係るたばこ消費材６０は、成形体６１と、成形体６１の全表面をコーティングするコーティング材６２と、を備えている。

　成形体６１は、粉末状のたばこ材料が複数固められて所定の形状に成形されたものである。すなわち、成形体６１は、「粉末状のたばこ材料」を複数含んでいる。また、この成形体６１に含まれる「粉末状のたばこ材料」の種類は１種類であってもよく、複数種類であってもい。すなわち、成形体６１に含まれる複数の「粉末状のたばこ材料」は、１種類のたばこ材料が複数の粉末状になったものであってもよく、あるいは、複数種のたばこ材料（例えば、オリエント葉、バージニア葉等の複数の種類のたばこ材料）が複数の粒状になったものであってもよい。

　また、この「粉末状のたばこ材料」の「たばこ材料」は、たばこ葉の「たばこラミナ」であってもよく、「たばこステム」であってもよく、「たばこラミナ」及び「たばこステム」の両方を含んでいてもよい。

　本実施形態において、粉末状のたばこ材料の平均粒径は１００μｍ以下である。また、前述したように、本実施形態では、所定の形状の一例として、シート形状を用いている。たばこ材料をシート形状にする際には、例えば、抄造加工、鋳造加工、圧延加工等を用いて、たばこ材料をシート状にすることができる。

　本実施形態によれば、粉末状のたばこ材料の平均粒径が１００μｍ以下であるので、例えば、粉末状のたばこ材料の平均粒径が１００μｍよりも大きい場合等に比較して、成形体６１の表面を滑らかな表面にすることができる。これにより、成形体６１の全表面をコーティング材６２によって均一にコーティングすることが容易にできる。

　なお、粉末状のたばこ材料の平均粒径が小さいほど、成形体６１の表面の凹凸がより小さくなる傾向があり、この結果、成形体６１の全表面をコーティング材６２によって均一にコーティングすることがより容易にできる。したがって、この観点において、粉末状のたばこ材料の平均粒径は、８０μｍ以下がより好ましく、５０μｍ以下がさらに好ましく、３０μｍ以下がさらに好ましい。

　コーティング材６２は、成形体６１の外表面がたばこ消費材６０の表面に露出しないように、成形体６１の全表面（全ての外表面）をコーティングしている。したがって、本実施形態に係るたばこ消費材６０の全表面は、コーティング材６２の表面によって構成されている。

　成形体６１の表面にコーティング材６２をコーティングするための具体的な手法は、特に限定されるものではなく、例えば、コーティングされる前の成形体６１を、コーティング材６２を含む溶液に浸漬させた後に、乾燥させることで、成形体６１の表面にコーティング材６２をコーティングすることができる。

　あるいは、コーティングされる前の成形体６１の表面に、コーティング材６２をスプレーで塗布することで、成形体６１の表面にコーティング材６２をコーティングすることもできる。

　コーティング材６２の材質としては、水溶性ポリマーを用いることができる。この水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール（ＰＶＡ）、かんてん、ゼラチン、キトサン、及び、アルギン酸の中から選択された少なくとも１つの物質からなる水溶性ポリマーを用いることができる。すなわち、コーティング材６２の材質は、ポリビニルアルコールであってもよく、かんてんであってもよく、ゼラチンであってもよく、キトサンであってもよく、アルギン酸であってもよく、これらの組み合わせであってもよい。

　ここで、上述したような水溶性ポリマーは、相対的に分子量の小さい物質（低分子量物質）がこの水溶性ポリマーの結合隙間を通過することを許容しつつ、相対的に分子量の大きい物質（高分子量物質）がこの結合隙間を通過することは抑制する性質を有している。したがって、本実施形態によれば、このような水溶性ポリマーを材質とするコーティング材６２で成形体６１の全表面がコーティングされているので、成形体６１のたばこ材料に含まれる香味成分（これは、低分子量物質である）がエアロゾル液に溶出することは許容しつつ、焦げ成分(これは、高分子量物質である）がエアロゾル液に溶出することは抑制することができる。なお、焦げ成分の具体例としては、水溶性ポリフェノールや多糖類が挙げられる。

　また、成形体６１のたばこ材料に含まれる香味成分と焦げ成分とを比較した場合、香味成分は上述した水溶性ポリマーに溶解することができるが、焦げ成分は水溶性ポリマーへの溶解が困難である。したがって、香味成分は、水溶性ポリマーに溶解することができ、その後、エアロゾル液に溶出することができる。一方、焦げ成分は、水溶性ポリマーに溶解することが困難であるので、エアロゾル液に溶出することが抑制される。この観点においても、本実施形態によれば、香味成分がエアロゾル液に溶出することは許容しつつ、焦げ成分がエアロゾル液に溶出することは抑制することができる。

　以上のように、本実施形態によれば、ユーザがたばこ材料の香味を味わうことができるとともに、吸引具１０の負荷４０に焦げが発生することを抑制することができる。

（実施形態の変形例）
　上述した実施形態において、たばこ消費材６０はシート形状を有しているが、たばこ消費材６０の形状はこれに限定されるものではない。図６は、上述した実施形態の変形例に係るたばこ消費材６０Ａの模式的な斜視図である。例えば、たばこ消費材６０Ａは、ペレット形状（あるいは、錠剤形状）を有していてもよい。具体的には、本変形例に係るたばこ消費材６０Ａは、ペレット形状の成形体６１の全表面がコーティング材６２によってコーティングされた構成を有している。

　なお、図６に例示するたばこ消費材６０Ａは、断面が円形であるが、この構成に限定されるものではない。たばこ消費材６０Ａの断面形状は、楕円形でもよく、角形（三角形、四角形、五角形等のｎ角形（ｎは３以上の数））でもよい。

　たばこ消費材６０Ａの具体的な寸法は、特に限定されるものではないが、一例を挙げると、以下のとおりである。すなわち、たばこ消費材６０Ａの全長（Ｌ１）として、例えば１ｍｍ以上１０ｍｍ以下の範囲から選択された値を用いることができる。たばこ消費材６０Ａの幅方向の最大寸法（Ｄ１）として、例えば、１ｍｍ以上１０ｍｍ以下の範囲から選択された値を用いることができる。但し、これらの値はたばこ消費材６０Ａの寸法の一例に過ぎず、たばこ消費材６０Ａの寸法は、吸引具１０のサイズに応じて適宜設定すればよい。

　また、本変形例に係る成形体６１のペレット形状は、以下の手法によって作成されている。具体的には、まず、平均粒径が１００μｍ以下のたばこ材料の粉末を複数準備する。次いで、この複数の粉末に、１ｗｔ％以上２０ｗｔ％以下の濃度のエタノールを混合して混合物を作成する。次いで、この混合物からエタノールを除去する。次いで、このエタノールが除去された混合物を、圧縮成形することでペレット形状にする。以上の手法によって、本変形例に係る成形体６１のペレット形状は作成されている。

　なお、混合物からエタノールを除去する際には、例えば、混合物を自然乾燥させることで混合物からエタノールを除去してもよく、混合物を加熱することで混合物からエタノールを除去してもよい。

　本変形例においても、前述した実施形態と同様の作用効果を奏することができる。

（実施例）
　上述した実施形態の作用効果について実験によって確認した。以下、この実験結果について説明する。なお、上述した実施形態は、以下の実施例に限定されるものではない。

（コーティングの評価）
　コーティング材によるコーティングの均一度合いを評価したので、これについて説明する。まず、平均粒径が１００μｍ以下のたばこ材料の粉末を有する「実施例１に係るたばこ消費材６０」として、以下のものを用いた。具体的には、まず、たばこ材料をミルで粉砕し、この粉砕後の粉末を１００μｍの篩にかけることで、平均粒径が１００μｍ以下のたばこ材料の粉末（複数個の粉末）を準備した。次いで、このたばこ材料の粉末３６．５ｇと、水２５０ｇと、パルプ１．４ｇと、バインダー１．４ｇ（商品名：「グアガム」）と、グリセロール６．９ｇと、を混合することで、混合物を作成した。次いで、この混合物を薄く引き延ばして乾燥させることで、シート形状の成形体６１を作成した。

　次いで、このシート形状の成形体６１（５ｇ）を、ポリビニルアルコールを１５ｗｔ％含む水溶液に浸漬させた後に、室温で３０分間乾燥させることで、成形体６１の全表面にポリビニルアルコールからなるコーティング材６２をコーティングさせて、「実施例１に係るたばこ消費材６０」を作成した。

　一方、「比較例１に係るたばこ消費材」として、以下のものを用いた。具体的には、たばこ葉の「たばこ刻（平均粒径が１００μｍよりも大きい、たばこ刻であって、具体的には全長が３０ｍｍ、厚みが０．２５ｍｍの長方形状のもの）」を準備した。このたばこ刻を、ポリビニルアルコールを１５ｗｔ％含む水溶液に浸漬させた後に、室温で３０分間乾燥させることで、たばこ刻の表面にポリビニルアルコールをコーティングさせて、「比較例１に係るたばこ消費材」を作成した。

　図７は、コーティングの評価結果を説明するためのＳＥＭ画像を示す図である。具体的には、図７のＮｏ．１は実施例１で用いたコーティング前の成形体６１の表面のＳＥＭ画像であり、Ｎｏ．２は実施例１に係るたばこ消費材６０のＳＥＭ画像（すなわち、コーティング後のコーティング材６２の表面のＳＥＭ画像）である。Ｎｏ．３は比較例１で用いたコーティング前のたばこ刻の表面のＳＥＭ画像であり、Ｎｏ．４は比較例１に係るたばこ消費材の表面の（すなわち、コーティング後のコーティング材の表面のＳＥＭ画像）である。

　図７のＮｏ．１をＮｏ．３と比較すると分かるように、実施例１に係る成形体６１の表面は、比較例１に係るたばこ刻の表面に比較して平坦であることが分かる。そして、Ｎｏ．２をＮｏ．４と比較すると分かるように、実施例１に係るコーティング材６２の表面は、凹凸がほとんど存在しない平坦な面になっている。すなわち、実施例１に係るたばこ消費材６０は、コーティング材６２が均一にコーティングされていることが分かる。

　以上の実験結果から、前述した実施形態のように、成形体６１を構成する粉末状のたばこ材料の平均粒径として１００μｍ以下を用いることで、成形体６１の全表面をコーティング材６２によって均一にコーティングすることが容易にできることが裏付けられた。

（第１の溶出成分分析）
　たばこ消費材から溶出する成分を分析したので、これについて説明する。表１は、溶出成分の分析で用いたサンプルの一覧表である。なお、表１において、重量は、たばこ消費材に含まれるたばこ材料の重量である。

　実施例２－１及び実施例２－２は、前述した実施例１と同様の手法で作成した、たばこ消費材６０を用いている。但し、実施例２－１のたばこ材料の平均粒径は３０μｍであり、実施例２－２のたばこ材料の平均粒径は１００μｍである。次いで、これらのたばこ消費材６０を、エアロゾル液（４０ｗｔ％のプロピレングリコールと、２０ｗｔ％のグリセロールと、２０ｗｔ％の水と、を含むエアロゾル液）の内部に配置して、６０℃で６６時間、放置することで、たばこ消費材６０から香味成分を溶出させた。次いで、このエアロゾル液（香味成分が溶出したエアロゾル液）を５ｇ採取し、これに５ｇの蒸留水を加えた「抽出液」を作成した。そして、この抽出液に含まれる成分を、ＳＡ－ＳＢＳＥ法（Ｓｔｉｒ　Ｂａｒ　Ｓｏｒｐｔｉｖｅ　Ｅｘｔｒａｃｔｉｏｎ法）を用いて抽出した。次いで、この抽出された成分を加熱脱着装置で加熱した後に、ガスクロマトグラフィー質量分析法（ＧＣ－ＭＳ）を用いて、分析した。

　一方、比較例２－１及び比較例２－２は、主として、コーティング材６２のコーティングが施されていない点において、実施例２－１や実施例２－２と異なっている。すなわち、比較例２－１及び比較例２－２は、共に、平均粒径が１００μｍ以下のたばこ材料の粉末に対して、１０ｗｔ％の濃度のエタノールを加えて混合した混合物を、シート形状にして、シート形状の成形体を作成した。そして、このシート形状の成形体（コーティングは施されていない）を、エアロゾル液（４０ｗｔ％のプロピレングリコールと、２０ｗｔ％のグリセロールと、２０ｗｔ％の水と、を含むエアロゾル液）の内部に配置して、６０℃で６６時間、放置することで、たばこ消費材６０から香味成分を溶出させた。次いで、このエアロゾル液（香味成分が溶出したエアロゾル液）を５ｇ採取し、これに５ｇの蒸留水を加えた抽出液を作成した。そして、この抽出液に含まれる成分を、ＳＡ－ＳＢＳＥ法を用いて抽出した。次いで、この抽出された成分を加熱脱着装置で加熱した後に、ＧＣ－ＭＳを用いて分析した。

　ＧＣ－ＭＳによる成分分析の結果を、図８に示す。なお、抽出液に含まれる香味成分として、メガスティグマトリエノン（Ｍｅｇａｓｔｉｇｍａｔｒｉｅｎｏｎｅ）と、ジピリジル（２，３´－Ｄｉｐｙｒｉｄｙｌ）とが検出された。このうち、メガスティグマトリエノンは、４種類の異性体のうち３種類の異性体が検出された。この３種類の異性体を、「メガスティグマトリエノン－１」、「メガスティグマトリエノン－２」、及び、「メガスティグマトリエノン－３」と称する。図８のＮｏ．１の縦軸はメガスティグマトリエノン－１の成分量をＧＣ－ＭＳのエリア値で示し、Ｎｏ．２の縦軸はメガスティグマトリエノン－２の成分量をＧＣ－ＭＳのエリア値で示し、Ｎｏ．３の縦軸はメガスティグマトリエノン－３の成分量をＧＣ－ＭＳのエリア値で示している。一方、Ｎｏ．４の縦軸はジピリジルの成分量をＧＣ－ＭＳのエリア値で示している。

　図８から、実施例に係るサンプルＳＡ１及びサンプルＳＡ３は、比較例に係るサンプルＳＡ２及びサンプルＳＡ４と同様に、たばこ材料の香味成分（メガスティグマトリエノン及びジピリジル）がエアロゾル液に溶出していることが分かる。

（第２の溶出成分分析）
　上述した「第１の溶出成分分析」と同様の手法で、抽出液に含まれる香味成分として、ノルソラナジオン（Ｎｏｒｓｏｌａｎａｄｉｏｎｅ）と、ソラノン（Ｓｏｌａｎｏｎｅ）と、メガスティグマトリエノンの４種類の異性体のうち、残りの１種類の異性体（「メガスティグマトリエノン－４」と称する）とについて、ＧＣ－ＭＳで成分分析を行った。この結果を図９に示す。

　図９のＮｏ．１の縦軸はノルソラナジオンの成分量をＧＣ－ＭＳのエリア値で示し、Ｎｏ．２の縦軸はメガスティグマトリエノン－４の成分量をＧＣ－ＭＳのエリア値で示し、Ｎｏ．３の縦軸はソラノンの成分量をＧＣ－ＭＳのエリア値で示している。なお、Ｎｏ．１とＮｏ．３で用いた「サンプルＳＡ５」は、コーティング材として、ポリビニルアルコールの代わりに、「かんてん」を用いている点において、サンプルＳＡ１と異なっている。

　図９のＮｏ．１に示すように、実施例に係るサンプルＳＡ１及びサンプルＳＡ５は、比較例に係るサンプルＳＡ２と同様に、たばこ材料の香味成分（ノルソラナジオン）がエアロゾル液に溶出していることが分かる。図９のＮｏ．２に示すように、実施例に係るサンプルＳＡ１は、比較例に係るサンプルＳＡ２と同様に、たばこ材料の香味成分（メガスティグマトリエノン－４）がエアロゾル液に溶出していることが分かる。図９のＮｏ．３に示すように、実施例に係るサンプルＳＡ５は、比較例に係るサンプルＳＡ２と同様に、たばこ材料の香味成分（ソラノン）がエアロゾル液に溶出していることが分かる。

　なお、ＧＣ－ＭＳの結果の提示は省略するが、コーティング材６２として、ゼラチン、キトサン、又は、アルギン酸を用いた場合においても、たばこ材料の香味成分がエアロゾル液に溶出することを確認している。

　以上の実験結果から、前述した実施形態の構成によって、成形体６１のたばこ材料に含まれる香味成分をエアロゾル液に溶出させることができることが裏付けられた。

（焦げの発生に関する実験）
　焦げが発生するか否かについて実験したので、これについて説明する。実施例３として、前述した実施例２－１と同様の手法で作成したたばこ消費材６０を６ｇ準備し、このたばこ消費材６０を、３０ｇのエアロゾル液（４０ｗｔ％のプロピレングリコールと、２０ｗｔ％のグリセロールと、２０ｗｔ％の水と、を含むエアロゾル液）を収容したアルミニウム製の容器（具体的には皿状の容器）に入れて、２５０℃で水分が全て揮発するまで、加熱した。そして、加熱後の容器の内部に焦げが発生したか否かを確認した。この実施例３に係る加熱後の容器の内部を上方から撮影した写真を図１０のＮｏ．１に示す。

　一方、比較例３として、前述した比較例２－１と同様の手法で作成したたばこ消費材（すなわち、コーティングが施されていない、たばこ消費材）を準備した。このたばこ消費材を、実施例３と同様の条件で加熱して、加熱後の容器の内部に焦げが発生したか否かを確認した。この比較例３に係る加熱後の容器の内部を上方から撮影した写真を図１０のＮｏ．２に示す。

　図１０のＮｏ．１の写真とＮｏ．２の写真とを比較すると分かるように、比較例３では容器の内部に黒い焦げ（Ｂｕ）が発生している。一方、実施例３では、容器の内部に焦げ（Ｂｕ）が発生しておらず、容器の底が視認できている。

　このように実施例３に係るたばこ消費材６０は、加熱後の容器の内部に焦げが発生しないので、このような実施例３に係るたばこ消費材６０を吸引具１０に用いた場合、負荷４０に焦げが発生することを抑制することができる。

　なお、写真の提示は省略するが、コーティング材６２として、ポリビニルアルコールに代えて、かんてん、ゼラチン、キトサン、又は、アルギン酸を用いた場合についても、上述した実施例３と同様の実験を行った。この結果、コーティング材６２として、かんてん、ゼラチン、キトサン、又は、アルギン酸を用いた場合においても、焦げが発生しないことを目視で確認した。

　以上の実験結果から、前述した実施形態の構成によって、負荷４０への焦げの発生を抑制することができることが裏付けられた。

１０　吸引具
１２　霧化ユニット
２０　エア通路
４０　負荷
５０　液体収容部
６０　たばこ消費材
６１　成形体
６２　コーティング材
Ｌｅ　抽出液

Claims

　エアロゾル液を収容する液体収容部と、前記液体収容部の前記エアロゾル液が導入されるとともに、導入された前記エアロゾル液を霧化してエアロゾルを発生させる電気的な負荷と、を有する吸引具の前記液体収容部の前記エアロゾル液の内部に配置されて使用される、吸引具のたばこ消費材であって、
　前記たばこ消費材は、粉末状のたばこ材料が複数固められて所定の形状に成形された成形体と、前記成形体の全表面をコーティングするコーティング材と、を備え、
　前記コーティング材の材質は、ポリビニルアルコール、かんてん、ゼラチン、キトサン、及び、アルギン酸の中から選択された少なくとも１つの物質からなる水溶性ポリマーである、吸引具のたばこ消費材。
　前記粉末状のたばこ材料の平均粒径は１００μｍ以下である、請求項１に記載の吸引具のたばこ消費材。
　前記エアロゾル液は、水、プロピレングリコール、及び、グリセロールの中から選択された少なくとも１つの物質を含む、請求項１又は２に記載の吸引具のたばこ消費材。
　前記たばこ消費材は、シート形状を有する、請求項１～３のいずれか１項に記載の吸引具のたばこ消費材。
　前記たばこ消費材は、ペレット形状を有する、請求項１～３のいずれか１項に記載の吸引具のたばこ消費材。
　エアロゾル液を収容する液体収容部と、
　前記液体収容部の前記エアロゾル液が導入されるとともに、導入された前記エアロゾル液を霧化してエアロゾルを発生させる電気的な負荷と、
　前記液体収容部の前記エアロゾル液の内部に配置された、たばこ消費材と、を備え、
　前記たばこ消費材は、請求項１～５のいずれか１項に記載のたばこ消費材である、吸引具。