WO2022249886A1 - オルソ水素-パラ水素変換触媒、及び、オルソ水素-パラ水素変換方法 - Google Patents

オルソ水素-パラ水素変換触媒、及び、オルソ水素-パラ水素変換方法 Download PDF

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Abstract

本発明のオルソ水素-パラ水素変換触媒は、マンガンの平均酸化数が、+2を超えて、+4未満である、混合原子価マンガン酸化物を含み、液体窒素の製造に不可欠な、オルソ水素-パラ水素の変換を素早く実施できる。

Description

オルソ水素-パラ水素変換触媒、及び、オルソ水素-パラ水素変換方法
 本発明は、オルソ水素-パラ水素変換触媒、及び、オルソ水素-パラ水素変換方法に関する。
 液化水素中に残るオルソ水素が経時的にパラ水素に変換し、生じる発熱によって液化水素の貯蔵効率が下がることが知られている。このため、液化水素の製造時には、常温でオルソ:パラが3:1(モル比)である水素ガスのパラ水素の比率を上げる処理が行われている。通常この処理には、効率の向上のために固体触媒が用いられる。このような固体触媒として、非特許文献1には、鉄系化合物が記載されている。
Journal of Research of the National Bureau of Standards Vol. 60, No. 3, March, 1958 Research Paper 2840 Ortho-Para Catalysis In Liquid-Hydrogen Production
 本発明者らの検討によれば、非特許文献1に記載されたような鉄系化合物は、オルソ水素-パラ水素の変換(以下「OP変換」ともいう。)に要する時間が長いという課題があった。そこで、本発明は、OP変換を素早く実施できるOP変換触媒を提供することを課題とする。
 また、本発明は、OP変換方法を提供することも課題とする。
 本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
[1] マンガンの平均酸化数が、+2を超えて、+4未満である、混合原子価マンガン酸化物を含む、オルソ水素-パラ水素変換触媒。
[2]上記混合原子価マンガン酸化物が、1<x<2としたとき、MnOで表される[1]に記載のオルソ水素-パラ水素変換触媒。
[3] 上記オルソ水素-パラ水素変換触媒のXPS(X線光電子分光)測定におけるMn2p3/2に由来するピークの測定データを、以下の参照波形;Mn2+OのMn2p3/2に由来するピーク波形A、Mn3+O(OH)のMn2p3/2に由来するピーク波形B、及び、Mn4+のMn2p3/2に由来するピーク波形C、の合成波形によりフィッティングした場合に、上記フィッティングの結果得られたフィッティング波形における上記ピーク波形Bの面積分率が0より大きい、[1]又は[2]に記載のオルソ水素-パラ水素変換触媒。
[4] 上記面積分率が、0.50以上である、[3]に記載のオルソ水素-パラ水素変換触媒。
[5] 上記面積分率が0.90以下である、[4]に記載のオルソ水素-パラ水素変換触媒。
[6] 上記ピーク波形Bの面積分率は、上記ピーク波形Aの面積分率、及び、上記ピーク波形Cの面積分率からなる群より選択される少なくとも一方の面積分率より大きい、[3]~[5]のいずれかに記載のオルソ水素-パラ水素変換触媒。
[7] 上記ピーク波形Bの面積分率が、上記ピーク波形Aの面積分率、及び、上記ピーク波形Cの面積分率より大きい、[6]に記載のオルソ水素-パラ水素変換触媒。
[8] 上記測定データが、束縛エネルギーで636~650eVの範囲のデータである、[3]~[7]のいずれかに記載のオルソ水素-パラ水素変換触媒。
[9] マンガン以外の金属元素を含む、[1]~[8]のいずれかに記載のオルソ水素-パラ水素変換触媒。
[10] 上記金属元素が、リチウム、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、及び、亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種である、[9]に記載のオルソ水素-パラ水素変換触媒。
[11] [1]~[10]のいずれかに記載のオルソ水素-パラ水素変換触媒に、気相水素を接触させることを含む、オルソ水素-パラ水素変換方法。
[12] 上記接触させることが77K以下で行われる、[11]に記載のオルソ水素-パラ水素変換方法。
 本発明によれば、OP変換を素早く実施できるOP変換触媒を提供することができる。また、本発明によれば、OP変換方法を提供することももできる。
 本発明のOP変換触媒は、マンガンの平均酸化数が、+2を超えて、+4未満である、混合原子価マンガン酸化物を含む。
 上記によって本発明の効果が得られる機序は必ずしも明らかではないが、所定の電子状態を有するマンガン原子の周囲のごく限られた領域が反応サイトとなり、触媒効果が発揮されるものと推測される。そのため、OP変換触媒に、例えば、マンガン以外の金属(例えば、リチウム、コバルト、亜鉛、及び、銅等)が含まれていたとしても、触媒の活性自体には特に影響はない。
 なお、マンガンの平均酸化数が+2を超えて、+3以下であると、より優れたOP変換効率を有するOP変換触媒が得られる。
 また、本発明のOP変換触媒が、1<x<2としたとき、MnOで表される混合原子価マンガン酸化物を含む場合、より優れたOP変換効果が得られる。
 また、本発明のOP変換触媒のXPS測定におけるMn2p3/2に由来するピークの測定データを、以下の参照波形;Mn2+OのMn2p3/2に由来するピーク波形A、Mn3+O(OH)のMn2p3/2に由来するピーク波形B、及び、Mn4+のMn2p3/2に由来するピーク波形C、の合成波形によりフィッティングした場合に、フィッティングの結果得られたフィッティング波形におけるピーク波形Bの面積分率が0より大きい場合、より優れたOP変換効果が得られる。
 また、ピーク波形Bの面積分率が0.50(50%)以上であると、より優れたOP変換効果が得られる。
 また、ピーク波形Bの面積分率が0.90以下であると、より優れたOP変換効果が得られる。
 また、ピーク波形Bの面積分率が、ピーク波形Aの面積分率、及び、ピーク波形Cの面積分率からなる群より選択される少なくとも一方の面積分率より大きい場合、より優れたOP変換効果が得られる。この傾向は、ピーク波形Aの面積分率、及び、ピーク波形Cの面積分率の両方より大きい場合により顕著である。
 また、測定データが、束縛エネルギーで636~650eVであると、より優れたOP変換効果が得られる。
 また、マンガン以外の金属元素(例えば、リチウム、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、及び、亜鉛)を含む場合も、優れたOP変換効果が得られる。
 本発明のOP変換方法は、上記OP変換触媒に、気相水素を接触させることを含む。上記OP変換触媒が有する優れた特性によって、本方法を用いれば、OP変換に必要な時間が劇的に短縮される。
 また、上記接触することが、77K以下で行われる場合、上記OP変換触媒が有する優れた特性により、気相中のパラ水素の体積分率がより速やかに略50%以上に達しやすい。
MnOのMnの2p3/2の参照波形(ピーク波形A)を表す図である。 MnO(OH)の2p3/2の参照波形(ピーク波形B)を表す図である。 MnOのMnの2p3/2の参照波形(ピーク波形C)を表す図であり。 MnのXPS測定データと、参照波形の合成により得られたフィッティング波形とを表す図である。 触媒試験に利用したOP変換触媒活性評価装置の構成を表す図である。 Fe触媒によるOP変換の様子を表した図である。 オルソ水素・パラ水素のそれぞれに特徴的な588cm-1・353cm-1のピーク強度をもとに算出したパラ水素の体積分率[パラ水素/(オルソ水素+パラ水素)]を縦軸に、横軸に冷却開始からの経過時間をとった、Fe触媒のOP変換効率を表す図である。 FeOの液体窒素温度(77K)でのOP変換効率を表す図である。 Feの液体窒素温度(77K)でのOP変換効率を表す図である。 FeOOHの液体窒素温度(77K)でのOP変換効率を表す図である。 MnOの液体窒素温度(77K)でのOP変換効率を表す図である。 Mnの液体窒素温度(77K)でのOP変換効率を表す図である。 MnOの液体窒素温度(77K)でのOP変換効率を表す図である。 Mn触媒の内殻領域のHard X-ray Photoemission Spectroscopy (HAXPES)スペクトラのうち、Mn2p領域を表す図である。 Mn触媒の内殻領域のHard X-ray Photoemission Spectroscopy (HAXPES)スペクトラのうち、O1s領域を表す図である。 Mn、Mn、LiMnO、LiMn、及び、MnOの液体窒素温度(77K)でのOP変換効率を表す図である。
 以下、本発明について詳細に説明する。
 以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に制限されるものではない。
 なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
 [OP変換触媒]
 本発明の実施形態に係るOP変換触媒は、マンガンの平均酸化数が、+2を超えて、+4未満である、混合原子価マンガン酸化物を含む。
 本明細書において、混合原子価マンガン酸化物とは、マンガンを含む酸化物であって、複数の酸化数のマンガン原子を含むものを意味し、例えば、Mn(II)、Mn(III)、及び、Mn(IV)からなる群より選択されるマンガン原子を含むものが挙げられる。
 なお、マンガン酸化物の原子価は後述するHAXPEによる方法で測定することができる。
 混合原子価マンガン酸化物は上記以外の金属元素を含んでいてもよい。このような金属としては、特に制限されないが、Li(リチウム)等のアルカリ金属、Cr(クロム)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、及び、Zn(亜鉛)等が挙げられ、なかでもアルカリ金属が好ましい。なお、混合原子価マンガン酸化物は、異なる酸化数を有するマンガン酸化物の混合物とは異なる。
 上記混合原子価マンガン酸化物を含むOP変換触媒は、OP変換触媒のXPS(X線光電子分光)測定におけるMn2p3/2に由来するピークの測定データを、参照波形;
・Mn2+OのMn2p3/2に由来するピーク波形A
・Mn3+O(OH)のMn2p3/2に由来するピーク波形B
・Mn4+のMn2p3/2に由来するピーク波形C
の合成波形によりフィッティングした場合に、上記フィッティングの結果得られたフィッティング波形における、上記ピーク波形Bの面積分率が0より大きいことが好ましい。
 ピーク波形Bの面積分率が0より大きいことは、OP触媒中の混合原子価マンガン酸化物中に、酸化数が+3のMnが存在することを示唆するものである。ピーク波形Bの面積比率は0より大きいことが好ましく、より優れた本発明の効果を有するOP変換触媒が得られる点で0.50以上が好ましい。上限は特に制限されないが、一般に、0.90以下が好ましい。
 次に、ピーク波形Bの面積分率の算出方法について説明する。
 まず、参照波形について説明する。参照波形は、Applied Surface Science 366(2016)475-485の「Fig.1」から算出する。
 まず、上記「Fig.1」には3枚×3枚のマトリクス状に図面が配置されているが、このうち、左側の列の3枚の図を用いる。すなわち、Mn2+OのMn2p3/2、Mn3+O(OH)のMn2p3/2、及び、Mn4+のMn2p3/2のスペクトルである。
 次に、Mn2+OのMn2p3/2の場合について参照波形の算出方法を説明する。まず、「Fig.1」には、実測値が、白丸「data」としてプロットされている。これをデジタルデータとして読み取り、BIC(Bayesian information criterion)-fittingで自動ピーク分離を行い、和の擬似Voigt関数を基底関数としてフィッティング結果を得る。なお、ピーク本数はBIC値を評価基準として自動的に選出される。
 このようにして、Mn2+OのMn2p3/2の参照波形(ピーク波形A)、Mn3+O(OH)のMn2p3/2の参照波形(ピーク波形B)、及び、Mn4+のMn2p3/2の参照波形(ピーク波形C)が得られる。図1は、このようにして得られたピーク波形Aを表す図である。同様に、図2はピーク波形B、図3はピーク波形Cを表す図である。なお、図1~3のそれぞれの図中において、白丸で「spectrum」とあるのは、上記文献からの引用データである。また、「background」とは、背景からの白色放射を表し、「fitted」は得られた各参照波形を表す。なお、各参照波形は、それぞれ4~5つのピーク波形に分離されている。
 次に、OP変換触媒のXPS測定結果(実測データ)の解析処理について説明する。OP変換触媒のXPS測定方法は、後段の実施例に記載の方法に従う。具体的には、励起光に硬X線を用いた、硬X線光電子分光(HAXPES)により行う。
 まず、OP変換触媒のXPS測定結果(測定データ)のうち、束縛エネルギー(BE)が636-650eVの範囲を切り出す。本明細書では、上記範囲の測定データを、Mn2p3/2に由来する信号と定義し、その範囲におけるピークを、Mn2p3/2に由来するピークと定義する。
 次に、測定データから得られたMn2p3/2に由来するピーク(測定データ)を、ピーク波形A~Cの合成波形によってフィッティングする。
 図4は、MnのXPS測定データと、参照波形の合成により得られたフィッティング波形とを表す図である。図4中、黒丸(図4中では「spectrum」と記載されている)は、実測データを表す。これに対し、3つの参照波形を合成してフィッティングしたのが、「fitting_spectrum」である。図4中では、この合成波形は、ピーク波形Aとピーク波形Bとを重ね合わせてなり、ピーク波形Cは使われていない。
 図4中、MnOとある波形は、合成波形中のピーク波形A成分であり、同様にして、MnO(OH)とある波形はピーク波形B成分、MnOとある波形はピーク波形C成分を表している。
 合成波形におけるピーク波形Bの面積分率は1.203/(1+1.203+0)=0.546(54.6%)だった。
 なお、合成波形におけるピーク波形Bの面積分率は以下の計算式から算出される。式:(合成波形におけるピーク波形Bの面積分率)=(合成波形におけるピーク波形Bの面積)/(合成波形におけるピーク波形A~Cの面積の合計)
 得られたフィッティング波形(合成波形)におけるピーク波形Bの面積分率が0より大きい場合、OP変換触媒はより優れたOP変換効率を有する。
 また、より優れた本発明の効果を有するOP変換触媒が得られる観点からは、ピーク波形Bの面積分率は、ピーク波形Aの面積分率、及び、ピーク波形Cの面積分率(いずれも算出方法は、上記式と同様とする。)からなる群より選択される少なくとも一方より大きいことが好ましく、両方より大きいことが好ましい。
 また、より優れた本発明の効果を有するOP変換触媒が得られる観点からは、合成波形が、ピーク波形A、及び、ピーク波形Bの合成で表されることが好ましい。
 本発明者らの検討によれば、本発明のOP変換触媒によるOP変換は、所定の電子状態にあるMn原子の近傍のごく狭い領域をその反応サイトとするものと推測される。上記方法で測定されるMn2p3/2スペクトルにおいて、ピーク波形Bの面積分率が0より大きい場合、上記のような電子状態にあるMn原子が存在することを意味し、優れたOP変換触媒としての機能を発揮し得る
 このような観点からは、OP変換触媒中に他の電子状態のMn原子が含まれる、及び/又は、他の金属元素が含まれる場合であっても、反応サイトは所定の電子状態にあるMn原子の近傍のごく狭い領域であるから、OP変換触媒としての機能には影響を与えず、優れたOP変換効果が得られる。
 混合原子価マンガンとしては、より優れた本発明の効果を有するOP変換触媒が得られる観点で、1<x<2としたとき、MnOで表されることが好ましい。このような混合原子価マンガンとしては、Mn等が挙げられる。
 また、他の形態としては、混合原子価マンガンは、MMn(マンガン酸アルカリ金属;Mはアルカリ金属)、及び、上記のMnサイトの一部がCr、Fe、Co、Ni、及び、Zn等によって置換されたもの等が挙げられる。
 OP変換触媒の形状は特に制限されず、使用の形態に合わせて適宜選択されればよく、このような選択は当業者にとって公知である。
 例えば、OP変換触媒が平均粒子径が1~10000nmの粒子状であれば、これをガスの入り口と出口とを備えた密閉ケーシング内に充填し、典型的には冷却しながら気相水素を通せばよい。
 本発明の実施形態に係るOP変換触媒は市販品を用いてもよいし、公知の方法によって製造して用いてもよい。OP変換触媒の製造方法としては特に制限されないが、Mn金属、Mn酸化物、Mn窒化物、及び、Mn炭化物等と、必要に応じてドーパント金属成分(純金属、及び、金属化合物等)を混合して、例えば、酸化雰囲気で焼成すればよい。
[OP変換方法]
 本発明の実施形態に係るOP変換方法は、すでに説明したOP変換触媒に水素ガスを接触させることを含む、OP変換方法である。
 水素ガスをOP変換触媒に接触させる方法としては、例えば、水素ガスの流路の内面にOP変換触媒を担持させる方法等が挙げられる。
 このとき、典型的には、水素ガスが冷却される。冷却の方法としては特に制限されないが、例えば、液体窒素等によって冷却すればよい。
 本方法によって、オルソ水素の少なくとも一部がパラ水素に変換される。
 本方法では、上記OP触媒を用いるため、OP変換効率が高く、より短時間でOP変換が実現できる。
 以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
 Mn粉末(スピネル構造;(Mn2+)(Mn3+;粒子径~100nm)は、購入した後に前処理をしないまま、OP触媒試験に利用した。
 比較試料として、他に、粒子径約100nmのMnO粉末(NaCl構造)、MnO粉末(歪みルチル構造)、FeO粉末(NaCl構造)、及び、Fe(コランダム構造)を、いずれも購入後、特段の前処理をしないまま、触媒試験に利用した。以下、上記各試料を「試料粉末」ともいう。
 図5は、触媒試験に利用したOP変換触媒活性評価装置の構成を表す図である。OP変換触媒活性評価装置10は、試料管11と、ガスセル13が組み込まれたラマン分光装置12と、試料管11及びガスセル13を接続する管路14と、試料管11及びラマン分光装置12の間にポンプ15とが配置されている。試料管11は、冷却室16内に配置されている。
 上記装置を用いると、ポンプ15によって、管路14及び試料管11内に気相水素を循環させる(図中矢印「F」方向)ことができ、そのオルソ-パラの組成をラマン分光装置12で測定できる。この時、冷却室16(例えば、液体窒素を満たした容器等であってよい)を用いることもできる。
 具体的な実験方法は以下のとおりである。
 まず、試料粉末100mgを、内直径4mmのパイレックス(登録商標)ガラス製試料管に、ひとつまみの石英綿で上下から挟み込む形で充填して試料管とした。
 ラマン分光装置(JASCO RMP-510)に組み込まれたガスセル(容量50ml;石英窓)と試料管とをプラスティック管で接続し、両者の間にプランジャポンプを挟んだ循環システムを構築し、試料粉末を通過する形で、水素(H)ガスを繰り返し流通した。
 試料管を液体窒素を満たしたデュワー瓶に漬けこむことで試料の冷却を開始し、その時点から、水素ガス中のオルソ水素とパラ水素の存在比率を、時間の関数として、ラマン分光装置によって定量測定した。オルソ水素とパラ水素の存在比率は、ラマンスペクトル上にあらわれるそれぞれを特徴づけるピーク(オルソ水素:588cm-1;パラ水素:353cm-1)の強度比から算出した。
 図6は、Fe触媒によるOP変換の様子を表した図である。常温時(RT)、77K冷却開始後0.0時間(「77K 0hr」)、1.5時間(「77K 1.5hr」)、及び、2.0時間(「77K 2.0hr」)経過後の水素ガスのラマンスペクトラを表している。
 図7は、オルソ水素・パラ水素のそれぞれに特徴的な588cm-1・353cm-1のピーク強度をもとに算出したパラ水素の体積分率[パラ水素/(オルソ水素+パラ水素)]を縦軸に、横軸に冷却開始からの経過時間をとった、Fe触媒のOP変換効率を表す図である。パラ水素の体積分率は、常温(RT)における熱力学平衡値(=25%)から77Kにおける熱力学平衡値(=50%)へ向かってなだらかに増加していく。
 図8~図13は、FeO(図8)、Fe(図9)、FeOOH(図10)、MnO(図11)、Mn(図12)、及び、MnO(図13)の、液体窒素温度(77K)でのOP変換効率を表す図である。
 各図は、縦軸がパラ水素の体積分率に、横軸が冷却開始時からの経過時間に、それぞれ対応している。
 FeO(図8)やMnO(図11)の場合、冷却開始時から3時間にわたり、オルソ水素の体積分率は初期の25%からほとんど変化しなかった。
 一方、MnO(図13)やFe(図9)の場合は、オルソ水素の体積分率は25%から増加傾向を見せ、3時間経過時点で40%に達した。
 しかし、いずれの場合のパラ水素体積分率も、冷却開始後3時間を過ぎた段階で、目的とする50%には達しなかった。
 これに対し、Mn(図12)の場合、冷却直後から急速にオルソ水素の体積分率は上昇し、30分から45分経過した時点で50%に達した。
 図14、及び、図15は、Mn触媒の内殻領域のHard X-ray Photoemission Spectroscopy (HAXPES)スペクトラのうち、Mn2p、及び、O1s領域である。
 なお、HAXPES測定は、播磨「SPring-8(登録商標)」のアンジュレータ型ビームラインにおいて、入射エネルギー5.95keVのX線を利用して、実施した。測定には、常温の超高真空下において、半球型電子分光器(VG SCIENTA R4000;エネルギー分解能220 meV)を利用した。光電子の束縛エネルギーは、金薄膜のフェルミ準位をゼロ点として算出した。
 MnのMn2p領域には、Mn3+からの光電子放出に由来する642.2eVの強いピークとMn2+に由来する弱い肩が641.1eVに観測され、混合原子価マンガンであることがわかる。すなわち、強いMn3+光電子放出と弱いMn2+光電子放出からなるひとつの肩を持った束縛エネルギー642.2eVの光電子ピークが観察された。
 図16は、上記と同様の方法で測定したMn、Mn、LiMnO、LiMn、及び、MnOの液体窒素温度(77K)でのOP変換効率を表す図である。横軸が経過時間、縦軸がパラ水素変換効率を表している。
 なお、Mn、LiMnO、LiMnは、Aldrich社製の粉末試料を前処理なしに使用した。
 ここで、Mn、及び、LiMnOにおけるMnの平均酸化数は+3のみである(混合原子価マンガン酸化物ではない)。また、同様に、MnOにおけるMnの平均酸化数は+2のみである(混合原子価マンガン酸化物ではない)。
 一方、MnにおけるMnの平均酸化数は、+8/3であり、酸化数が+2のMnと、酸化数が+3のMnとを含む混合原子価マンガン酸化物である。
 また、LiMnにおけるMnの平均酸化数は、+7/2であり、酸化数が+3のMnと、酸化数が+4のMnとを含む混合原子価マンガン酸化物である。
 上記の結果から、Mnの平均酸化数が+2を超えて+4未満である混合原子価マンガン酸化物である、Mn、及び、LiMnは、Mnの平均酸化数が+3であって、混合原子価マンガン酸化物ではないMn、及び、LiMnO2、並びに、Mnの平均酸化数が+2であって、混合原子価マンガン酸化物ではないMnOと比較して、優れたOP変換効率を有していた。
 また、Mnの平均酸化数が+2を超えて+3以下である、Mnは、LiMnと比較して、より優れたOP変換効率を有していた。
 現行のOP触媒は、Fe系触媒の効率を最高として、そこでとどまっており、この数十年間飛躍的な進歩が見られなかった。Feは資源豊富であるが、Fe系OP変換触媒には変換効率に上限がある。CrはFeにくらべて優れたOP変換効率を示す場合があるものの、その資源量はFeの1000分の1程度である。
 それに引き換えMnは鉄よりも産出量は低いものの大規模な鉱床が海中に分布するなど未開発な面が多く、今後採掘量の増大に伴って原料コストの低下が見込まれる。本発明の混合原子価マンガン酸化物を含むOP変換触媒は、その変換効率が従来のFe系触媒を大きく上回り、既存のFe系触媒を駆逐するに十分な価値がある。
 本OP変換触媒、及び、OP変換方法を用いることにより、液化水素の製造に係るコストの大部分を占める貯留に係る時間、費用を大幅に削減できる可能性があり、今後の水素社会に向けて多大な利用可能性がある。
10    :OP変換触媒活性評価装置
11    :試料管
12    :ラマン分光装置
13    :ガスセル
14    :管路
15    :ポンプ
16    :冷却室

 

Claims (12)

  1.  マンガンの平均酸化数が、+2を超えて、+4未満である、混合原子価マンガン酸化物を含む、オルソ水素-パラ水素変換触媒。
  2. 前記混合原子価マンガン酸化物が、1<x<2としたとき、MnOで表される請求項1に記載のオルソ水素-パラ水素変換触媒。
  3.  前記オルソ水素-パラ水素変換触媒のXPS(X線光電子分光)測定におけるMn2p3/2に由来するピークの測定データを、以下の参照波形;
    Mn2+OのMn2p3/2に由来するピーク波形A、
    Mn3+O(OH)のMn2p3/2に由来するピーク波形B、及び、
    Mn4+のMn2p3/2に由来するピーク波形C、
    の合成波形によりフィッティングした場合に、
    前記フィッティングの結果得られたフィッティング波形における、前記ピーク波形Bの面積分率が0より大きい、請求項1又は2に記載のオルソ水素-パラ水素変換触媒。
  4.  前記面積分率が、0.50以上である、請求項3に記載のオルソ水素-パラ水素変換触媒。
  5.  前記面積分率が0.90以下である、請求項4に記載のオルソ水素-パラ水素変換触媒。
  6.  前記ピーク波形Bの面積分率は、前記ピーク波形Aの面積分率、及び、前記ピーク波形Cの面積分率からなる群より選択される少なくとも一方の面積分率より大きい、請求項3~5のいずれか1項に記載のオルソ水素-パラ水素変換触媒。
  7.  前記ピーク波形Bの面積分率が、前記ピーク波形Aの面積分率、及び、前記ピーク波形Cの面積分率より大きい、請求項6に記載のオルソ水素-パラ水素変換触媒。
  8.  前記測定データが、束縛エネルギーで636~650eVの範囲のデータである、請求項3~7のいずれか1項に記載のオルソ水素-パラ水素変換触媒。
  9.  マンガン以外の金属元素を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のオルソ水素-パラ水素変換触媒。
  10.  前記金属元素が、リチウム、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、及び、亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項9に記載のオルソ水素-パラ水素変換触媒。
  11.  請求項1~10のいずれか1項に記載のオルソ水素-パラ水素変換触媒に、気相水素を接触させることを含む、オルソ水素-パラ水素変換方法。
  12.  前記接触させることが77K以下で行われる、請求項11に記載のオルソ水素-パラ水素変換方法。

     
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