WO2022219814A1 - 電子ビーム応用装置 - Google Patents

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達朗 井手
洋一 小瀬
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Abstract

パルス励起光を発光する光源7は、レーザー光源24と、レーザー光源が放出したパルスレーザー光を複数のパルスレーザー光に分配する光分配器103と、複数のパルスレーザー光ごとに設けられる位相調整器104及び光増幅器105と、位相調整され、増幅された複数のパルスレーザー光を結合し、パルス励起光として出力する光結合器106と、位相調整器の位相遅れ量を制御する位相制御装置104と、集光レンズの光軸に対するパルス励起光の傾きを検出する光モニタ107とを備え、位相制御装置は、傾きが所定の値となる複数の位相調整器それぞれの位相遅れ量を示す位相遅れ量データを保持し、位相遅れ量データに基づき複数の位相調整器それぞれの位相遅れ量を設定する。

Description

電子ビーム応用装置
 本発明は光励起電子源を用いる電子ビーム応用装置に関する。
 高分解能の電子顕微鏡においては、輝度が高く、放出する電子ビームのエネルギー幅が狭い電子源が必須である。さらに、近年、高い空間分解能に加え、高速の時間変化をとらえる目的で、パルス化した電子ビームをプローブとして用いる顕微鏡観察技術が進歩しつつある。高速で変化する現象をとらえるために、光パルス入射によりパルス電子ビームを発生するフォトカソードは極めて有用である。なかでも、負の電子親和力(Negative Electron Affinity:NEA)を利用した光励起電子源(フォトカソード)は平面状の電子源であり、光源サイズとなる励起光の焦点サイズは1μm程度と大きいものの、放出電子の直進性が良いために電流密度を大きくすることで高輝度化が期待される。
 特許文献1にはこのフォトカソードを用いた電子銃が開示されている。フォトカソードとして透明基板、具体的にはガラス上にフォトカソード膜(光電膜)を貼り付けたものを用い、透明基板に近接して置いた開口数(NA: Numerical aperture:NA)が大きい0.5程度の集光レンズで励起光を光電膜上に回折限界に集束することで小さな電子光源とし、ここから真空中に放出する電子線を利用する電子銃構造が示されている。高輝度化に適したフォトカソードとしては、特許文献2に示されるように、半導体の結晶成長技術を用いて半導体基板上にフォトカソード層を形成した半導体フォトカソードの開発が進められている。
 フォトカソードを励起させてパルス電子ビームを発生させる励起光にはパルスレーザー光を使用する。レーザー光の品質を落とさずに強度を増幅する手法として、コヒーレントビーム結合(Coherent Beam Combining)があり、この例は非特許文献1に示されている。この手法を用いて放出レーザー光の角度を高速で変える手法が、例えば非特許文献2に開示されている。
特開2001-143648号公報 特開2009-266809号公報
T. Y. Fan, 「Laser Beam Combining for High-Power, High-Radiance Sources」, IEEE JOURNAL OF SELECTED TOPICS IN QUANTUM ELECTRONICS, VOL. 11, NO. 3, 2005年, P567-577 W. R. Huang, et al.「High speed, high power one-dimensional beam steering from a 6-element optical phased array」, OPTICS EXPRESS、Vol.20, No.16, 2012年, p17311-17318
 光励起電子源の高輝度化のため、励起光の強度を上げていっても、連続光では得られるプローブ電流は途中から飽和し、増加しない。パルス光で励起する場合でもパルス光の強度に対して直線的な増加をみせない。また、励起光の光源として半導体レーザー(レーザーダイオード)は、そのパルス幅や周波数を電気信号で制御できるため、光励起電子源用途の励起光源として優れている一方、出力可能な励起光の強度には上限がある。
 本発明の一実施の形態である電子ビーム応用装置は、基板と光電膜を有するフォトカソードと、パルス励起光を発光する光源と、パルス励起光をフォトカソードに向けて集光する集光レンズとを備え、光電膜のパルス励起光が集光された位置からパルス電子ビームを放出させる電子銃と、
 パルス電子ビームを試料に照射する電子光学系とを有し、
 光源は、レーザー光源と、レーザー光源に電力を供給してパルスレーザー光を放出させる電源と、レーザー光源が放出したパルスレーザー光を複数のパルスレーザー光に分配する光分配器と、複数のパルスレーザー光ごとに設けられ、光分配器により分配されたパルスレーザー光の位相を調整する複数の位相調整器と、複数のパルスレーザー光ごとに設けられ、光分配器により分配されたパルスレーザー光を増幅する複数の光増幅器と、位相調整器で位相調整され、光増幅器で増幅された複数のパルスレーザー光を結合し、パルス励起光として出力する光結合器と、複数の位相調整器それぞれの位相遅れ量を制御する位相制御装置とを備え、
 位相制御装置は、集光レンズの光軸に対するパルス励起光の傾きが所定の値となる複数の位相調整器それぞれの位相遅れ量を示す位相遅れ量データを保持し、位相遅れ量データに基づき複数の位相調整器それぞれの位相遅れ量を設定する。
 高輝度なパルス電子ビームを放出する光励起電子源を備えた電子ビーム応用装置を提供する。
 その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
光励起電子銃の構成例である。 光電膜に形成される複数の電子源を示す図である。 角度変調機能を有する励起光学系の構成例である。 集光点siでの光強度Iのタイムチャートである。 光分配器または光結合器の構成例である。 分配されたレーザー光の例である。 分配されたレーザー光の例である。 分配されたレーザー光の例である。 位相調整器の構成例である。 半導体式増幅器を用いた光増幅器である。 光ファイバー式増幅器を用いた光増幅器である。 光モニタの構成例である。 走査電子顕微鏡の概略構成である。 実施例1の走査電子顕微鏡における電子光学系である。 実施例1のパルス電子ビームのプローブ電流Ipのタイムチャートである。 励起光集束光学系の一例である。 実施例2の検出系の構成例である。 パルス電子ビームの走査例(ラスタースキャン方式)である。 パルス電子ビームが照射される位置の軌跡を示す図である。 パルス電子ビームが照射される位置ごとの検出信号の大きさを示す図である。 励起光学系の構成例である。 励起光学系の構成例である。 図11Aの励起光学系の光モニタの構成例である。
 図1Aにフォトカソードに複数の電子源を形成する光励起電子銃の構成を示す。透明基板11に支持された光電膜10に対して、平行光源7からのパルス励起光12を集光レンズ2により集束させて照射する。パルス励起光12(実線)の方向が励起光集束光学系の中心軸101と平行な場合、光電膜10上の中心軸101の点からパルス電子ビーム13が放出される。中心軸101は集光レンズ2の光軸である。励起光源である平行光源7は角度変調機能を有しており、励起光を放出する角度を変えることができるものとする。平行光源7が傾いたパルス励起光12b(破線)を発生すると、パルス励起光12bは集光レンズ2の作用を受け、光電膜10上の中心軸101とは離れた場所に焦点を結ぶ。この焦点と中心軸との距離をr、傾けたパルス励起光12bの方向と中心軸101とのなす角度をθとすると、
r=f・tanθ・・・(式1)
の関係が成り立つ。ここでfは集光レンズ2の焦点距離である。このように、電子源の中心軸からの距離rは励起光の傾きθで決めることができる。
 平行光源7が傾きθを変えてパルス励起光12bを照射することにより、カソード表面(光電膜)Pでは、図1Bに示すように、複数の電子源s1,s2,s3,s4が形成される。図1Bには、カソード表面Pと中心軸101との交点O1をあわせて示している。上述したように、カソード表面Pにおける電子源siと交点O1との距離riは、パルス励起光12bの中心軸101に対する傾きθiに依存する。なお、図1Bの例では、電子源となる励起光の集光点siに中心軸101上の点(交点O1)を含んでいないが、点O1の位置に励起光の集光点が形成されるようにしてもよい。傾きθは3次元空間における傾きであり、中心軸101の方向をz軸とし、x軸とy軸で張られるxy平面がz軸に垂直な平面であるとしたとき、距離r及び傾きθは、それぞれx軸方向成分とy軸方向成分を有するベクトル(rx,ry),(θx,θy)として表現できる。
 図1Cに平行光源7の角度変調機能を有する励起光学系の構成例を示す。パルス光電源25の電力によりレーザー光源24からパルスレーザー光が放出される。レーザー光源24は半導体レーザー(レーザーダイオード)とコリメータ―レンズの組み合わせにより構成され、パルスレーザー光を空間光として放出する。半導体レーザーは、出射するパルスレーザー光の繰り返し周期やパルス幅を、電源を制御することにより容易に調整できるため、電子顕微鏡などの電子ビーム応用装置の光源に適している。本実施例の励起光学系はパルスレーザー光をコヒーレントビーム結合により強度を高め、かつ放出方向(傾きθ)をパルス毎に制御して励起光12や傾いた励起光12bを生成する。励起光学系の構成要素として、一本のレーザー光を複数のレーザー光109に分配する光分配器103、分配されたレーザー光109の位相を調整する位相調整器104、分配されたレーザー光109を増幅する光増幅器105、増幅されたレーザー光109を再び一本のレーザー光にする光結合器106、および各位相調整器104での位相遅れを最適化する位相制御装置108を有している。光結合器106に入射されるレーザー光109のそれぞれの位相が一致している場合、結合後のレーザー光は中心軸101と平行な励起光12となるのに対し、レーザー光109のそれぞれの位相が少しずつずれるよう各位相調整器104での位相遅れを設定することにより、結合後のレーザー光は中心軸101に対して傾いた励起光12bとすることができる。
 光分配器103の構成例を図2Aに示す。光分配器103は、回折光学素子(Diffractive Optical Element:DOE)114とコリメータ115により構成される。DOE114は、透明な材料の表面に微細な凹凸が設けられた光学素子である。DOE114に垂直に入射されたレーザー光119は、DOE表面の微細な凹凸で回折されることにより、複数のレーザー光に分岐され、コリメータ115により、互いに平行な光路をもつ、分配されたレーザー光109を得る。DOE114で分岐されるレーザー光のパターンはDOE表面の凹凸形状にしたがって定まる。例えば、図2Aに示すA-A’断面でのレーザー光を図2Bに示す。光分配器103により、レーザー光119が、図2Bの4つの円で表したレーザー光109-1~4に分配されている。
 図2Aに示す光学素子に対して、分配されたレーザー光109を図の右側から入射すると結合されたレーザー光119を得ることができ、この場合、図2Aに示す光学素子は光結合器106として機能する。上述のように、レーザー光119がDOEに垂直に出射されるには、分配されたレーザー光109の位相が一致している必要がある。
 このように光分配器103と光結合器106とを組み合わせることで、1本の光路の中に複数の分配された光路を設け、分配された光路それぞれにおける位相遅れを調整することで出射側の光路の傾きを変えることができる。図2Bは4本の光路に分配した例であるが、DOE114の凹凸の設計により、分配する光路の数や配置を変更できる。例えば、図2Cは分配する光路の数を増やした例であり、図2Dは、中心部に回折しないで素子を通過する光路も設けた例である。また、図2Aに示した透過型DOEではなく、反射型DOEを用いて構成することも可能である。この場合は、鏡などを追加して所望の光路を形成する必要がある。
 コリメータ115は、励起光12の断面積がきわめて細い場合には単レンズを用いてもよいが、面積のある光線の場合は、コリメータ115は分配されたレーザー光109毎に最適化されたレンズアレーもしくはプリズムアレーを用いることが望ましい。
 位相調整器104は、例えば図3に示すように、電気光学素子51とこれに電圧を加える電圧印加電源52とで構成される。電源52から印加される電圧に応じて、通過するレーザー光109の位相の変調を調整することができる。
 また、本実施例の励起光学系では、最終的に出力される励起光12の強度を高めるため、分配された光路それぞれに光増幅器105を設けている。光増幅器105としてはコンパクトに構成できる半導体式増幅器(図4A)、もしくは光ファイバー式増幅器(図4B)を適用できる。半導体式増幅器は、例えば図4Aに示すように、半導体増幅素子53とこれにバイアス電流を注入する電流印加電源54とで構成される。電源54から印加されるバイアス電流に応じて、通過するレーザー光109を増幅することができる。光ファイバー式増幅器は、例えば図4Bに示すように発光する元素を添加した光増幅ファイバー55と、これにポンプ光を注入するためのポンプ光源56と、カプラ57より構成される。光増幅ファイバー55としてよく知られているエルビウム(Er3+)添加光ファイバーを用いる場合には、さらに波長変換器58を光増幅ファイバー55と光結合器106との間に設ける。これは、フォトカソード1としてGaAsフォトカソードを使用する場合にはレーザー光109の波長は750~780 nmとなるのに対して、エルビウム添加光ファイバーが増幅する帯域はおよそ1500 nmである。このため、レーザー光源24に用いる半導体レーザーとして1500 nm帯域のレーザー光を発光する半導体レーザーを用い、増幅後に波長変換器58を入れて半分の波長のレーザー光に変換すればよい。なお、波長変換器58による波長変換は光結合器106で結合されたレーザー光に対して行うことも可能であるが、結合後のレーザー光の強度が強く、波長変換器58の破損を生じさせるおそれがある。そのため、ここでは結合前のレーザー光に対して波長変換を行っている。
 なお、励起光学系を構成する光学素子間における光の伝達は、空間光として伝搬させても光ファイバー中を伝搬させてもよい。空間光と光ファイバーとの接合は通常の技術、すなわちファイバー端とレンズのアラインメントにより行われる。
 励起光学系の位相調整器104のそれぞれに設定する位相遅れ量を決定するため、励起光学系が出射する励起光12の状態を測定する光モニタ107が設けられている。図5に光モニタ107の構成を示す。光モニタ107は、透過ミラー111、結像レンズ110、撮像素子113を備える。透過ミラー111は、入射された励起光12の大部分(例えば、90%以上)を透過させ、一部の励起光12(例えば10%以下)を反射させる光学素子であり、透過ミラー111からの反射光をサンプル光112として取り出す。励起光学系が出射する励起光は平行光線であるので、図では平行光12,12bをそれぞれ3本の直線によって表現している。結像レンズ110の光軸は、中心軸101と直交するように配置されるとともに、結像レンズ110と撮像素子113との間隔は結像レンズ110の焦点距離とされている。焦点距離は、撮像素子113において以下に説明する調整を精度よく行えるような値となるように選択する。
 励起光学系が出射する励起光が中心軸101に平行であるときに、サンプル光112は撮像素子113で一点に集光される。位相制御装置108は、撮像素子113上に形成されるサンプル光像の形状が集光された状態の像となるよう、各位相調整器104の位相遅れ量を調整し、調整された各位相調整器104の位相遅れ量を示す位相遅れ量データをそのストレージに記憶する。このとき、光結合器106に入射される分配された光109それぞれの位相が一致するように調整されたことにより、励起光学系から傾き角θ=0((θx,θy)=(0,0))の励起光12が出射されることになる。
 続いて、位相制御装置108は、傾き角θ=0の位相調整値から各位相調整器104の位相遅れ量を少しずつずらし、光モニタ107は撮像素子113上に形成されるサンプル光像の位置をモニタする。撮像素子113上のサンプル光像の位置は、図1Bに示したカソード表面P上の励起光の集光点に対応する。したがって、カソード表面P上の点O1と集光点siとの相対位置が、撮像素子113における傾き角θ=0の位相調整値のときのサンプル光像の位置と各位相調整器104の位相遅れ量をずらしたときのサンプル光像の位置との相対位置に対応するよう、各位相調整器104の位相遅れ量を調整し、調整された各位相調整器104の位相遅れ量を示す位相遅れ量データをそのストレージに記憶する。集光点si毎に同じ処理を繰り返すことで、各集光点(電子源)siについての位相遅れ量データが位相制御装置108のストレージに記憶される。
 光励起電子銃の制御について図1C及び図1Dを用いて説明する。電子顕微鏡の制御装置から、光励起電子銃が発生させるパルス電子ビームの周期やパルス幅などの情報を含む制御信号28がコントローラ26に送られる。コントローラ26は、パルス電子ビームの周期やパルス幅にあわせた励起光12を発生させるよう、パルス光電源25に発光制御信号27aを、位相制御装置108に発光制御信号27aと同期した位相制御信号27bを出力する。
 本実施例の励起光学系では、励起光12のパルス幅はマイクロ秒より長くとも、ピコ秒より短くても制御可能であるが、電子顕微鏡におけるパルス電子ビームの応用という観点からは、ナノ秒からピコ秒のパルス幅のビームの有用性が高い。また、本実施例の励起光学系は機械的な可動部品により励起光の放出方向を制御するものではないため、高速制御できることが利点である。走査型電子顕微鏡のスキャン中に各画素を1パルス以上の電子ビームで観測するためには、励起光の繰り返し周波数を1MHzあるいはそれ以上とすることが望ましい。本実施例の励起光学系では、100 MHz程度までの繰り返し周波数の励起光を問題なく出射させることができる。
 図1Dに各集光点si(i=1~4)での光強度Iのタイムチャートを示す。集光点siは図1Bに示した集光点siである。レーザー光源24は周期tdでパルス幅tpのパルスレーザー光を放出し、位相制御装置108は、位相制御信号27bを受けて、パルスレーザー光毎に、ストレージに格納した位相遅れ量データを位相調整器104に切り替え設定することにより、図1Bに示されるように、カソード表面Pの異なる場所に励起光を照射させる。各集光点ではそれぞれ周期Tのパルスレーザー光で励起されるので、各集光点(電子源)siからは、タイミングがずれた同じタイムチャートでパルス電子ビームが放出されることになる。レーザー光源24の周期tdと各電子源siでの電子放出の周期Tとの関係は(式2)で表せる。
T=n・td・・・(式2)
nは集光点の数であり、図1Dの例ではn=4である。
 実施例1の光励起電子銃を用いた走査電子顕微鏡の概略構成(第1の電子顕微鏡構成)を図6に示す。光励起電子銃15は真空容器9と図1Aに示した励起光集束光学系とを含み、真空容器9中で、フォトカソード1は引き出し電極3に対して加速電源5から加速電圧-V0が印加されたカソードホルダ4上に置かれ、フォトカソード1から発生するパルス電子ビーム13は加速V0で真空容器9の開口部14を通って、電子光学筐体16に入る。励起光12は窓6を通って真空容器9中に取り込まれる。電子光学筐体16は、コンデンサレンズ31、電子レンズ17、対物レンズ29などの電子レンズ類により縮小されたパルス電子ビーム13が試料20に入射され、ここから発生する電子を電子検出器19で電気信号に変換する。パルス電子ビーム13は偏向器18により試料20上に入射する位置を変えられ、画像形成部(図示しない)は、この位置情報と電子検出器19からの信号を画像として構成して走査電子顕微鏡像(SEM画像)が得られる。
 図7Aに図6に示した電子光学系の詳細を示す。電子光学系の光軸34に対して離れた位置に形成された励起光の焦点(Sk)から放出されるパルス電子ビームの軌道30は引き出し電極3を通過し、光軸34に対して、より離軸する方向に進み、コンデンサレンズ31により振り戻され、このままでは軌道30b(破線)をとるが、アライナ8によって偏向され、光軸34に一致する軌道30aとなる。図1Dに示したように、時間によってフォトカソード1上の異なる電子源si(i=1~n)が電子放出するため、電子源siから放出されるパルス電子ビームが同じ軌道30aとなって、試料上の同じ位置に照射されるよう、アライナ8の偏向量は電子源siに応じて制御される。このため、アライナ8による電子ビームの偏向量(偏向の向き、大きさを含む)を制御するアライナ電源33は、顕微鏡の制御装置32から発光制御信号27aと同期して出力される偏向制御信号28bによって制御される。アライナ8としては、電子ビームを磁界により偏向するもの、電界により偏向するものなどが用いられる。パルス電子ビームのパルス幅、あるいは次のパルス電子ビームの放出までの間隔が短い場合は、高速の静電アライナが好適である。この結果、試料20に入射するパルス電子ビーム13のプローブ電流Ipは図7Bに示すように、各電子源s1~s4からのパルス電子ビームのプローブ電流Ip1~Ip4の和となり、実質的な輝度は1本のパルス電子ビームの場合の4倍となる。なお、電子源の数は複数であれば高輝度化の効果があり、電子源の数を例えば10、100などと増加させることにより、さらに一層の高輝度化を達成することができる。
 なお、アライナ8はパルス電子ビーム13を電子光学系の光軸34に一致させるように偏向させる例で説明したが、1本のビームに見えれば同様の効果があるので、偏向後の軌道は傾いていてもよい。すなわち、電子源si(i=1~n)からのパルス電子ビームのアライナ8による偏向後の軌道が同じになっていればよい。
 さらに各電子源s1~s4からのパルス電子ビームの軌道を揃えるためにアライナ8ではなく、偏向器18(図6参照)に対して、偏向信号に電子源の位置の違いによる軌道差を補正する信号を重畳させても同様の効果を得ることができる。この場合、偏向制御信号28bは、偏向器18に入力され、かつ電子源の位置と電子光学系の倍率及び回転角とに基づく補正情報を含む。
 励起光集束光学系の最適な一例を説明する。集光レンズ2に、透明基板11を厚さ1.2 mm、屈折率が1.5 程度のガラス等とする場合に最適化された開口数(Numerical aperture)NA=0.5、焦点距離f=4.2の非球面レンズを用いる場合、フォトカソード1に集光される励起光は軸中心からおよそ80 μm以内の場所では励起光の波長での回折限界まで絞り込まれている。このため、高い輝度を得るためには、中心軸から80 μm以内の領域に電子源siが形成されるようにすればよい。このため、励起光の傾きθは中心軸から17 mrad以内を選ぶ。なお、高い輝度を得るには開口数が大きい、例えば、NAを0.4 以上の集光レンズ2を用いることが望ましく、特に上記仕様を満たす非球面レンズは光学記録媒体用のピックアップとして利用されているため、低コストに入手できる利点を有している。
 光電膜10としては、表面にCsを主とする仕事関数低下被膜を設けたp型GaAsを主成分とする化合物半導体膜を用い、負の電子親和力を用いた電子源(NEA電子源)を形成する。発明者らの検討によれば、このような光電膜に連続発振した励起光を照射し続ける場合、電子源としての最大の輝度は1×107A/sr/m2/V程度であった。この値は、高分解能電子顕微鏡で用いられているZr-O/Wを加熱して用いるSE(Schottky Emission)電子源と同等である。これに対して、最高分解能の電子顕微鏡には、より輝度の高い冷陰極電界放出(Cold Field Emission:CFE)電子源が用いられており、CFE電子源はSE電子源の10倍程度の輝度を有しているため、少なくともこれと同等輝度の電子源を実現できなければ、NEA電子源を用いた最高分解能の電子顕微鏡は実現できない。
 NEA電子源に対して、連続発振した励起光ではなく、パルス幅10 n秒程度のパルス励起光を照射すると、瞬間的にはCFE電子源と同等、あるいはCFE電子源を超える輝度が得られることが見出された。しかしながら、電子顕微鏡の電子源とするには、時間平均したプローブ電流量Ipが十分な値となる必要がある。このため、光電膜10にパルス励起光を連続的に照射させたところ、単発のパルス励起光を照射したときの輝度値から期待されるプローブ電流量は得られなかった。すなわち、パルス励起光を連続的に照射して得られる電子源の特性は、連続発振した励起光を照射して得られる電子源の特性に近づくことが分かった。そこで、1つのNEA電子源ではパルス励起光を使っても、時間平均すると高輝度化は達成できないと結論付け、1つのフォトカソードに複数のNEA電子源を形成する本実施例の構成を想到するに至った。NEA電子源の場合、フォトカソード上における励起光の集光点が電子源となるため、パルス励起光により瞬間的に輝度の高い電子ビームを発生させるNEA電子源を異なる場所に複数形成可能であり、NEA電子源からのプローブ電流が重ならないように時間分割して電子ビームを発生させることで、電子光学系の高輝度電子源として利用することができる。電子光学系の電子源を高輝度化することによって、電子顕微鏡はさらなる高分解能化が可能となるとともに、プローブ電流が増加することにより測定の短時間化が達成される。時間分割する電子源の数を例えば10、100などと増加させることにより、さらに一層の高輝度化を達成することが容易になる。
 また、フォトカソード1として、透明基板11に厚さ1.2 mmのガラスを用いたフォトカソードではなく、より高輝度な単結晶半導体透明基板60を用いたフォトカソードを用い、かつ、集光レンズ2には上述した非球面レンズをそのまま用いる場合には、図8に示すように、集光レンズ2とフォトカソード1との間に球面収差補整板61を入れる。球面収差補整板61の屈折率と厚さは、励起光が単結晶半導体透明基板60内を通り、光電膜10上に回折限界の小さい焦点を結ぶように決定される。
 NEA電子源の特徴として、カソード表面の仕事関数を低減しているCsが徐々に蒸発するために、同じ強度の励起光を照射しても時間が経過するにつれて、放出されるプローブ電流が減少するという現象がある。このため、長時間プローブ電流を一定に保ちたい場合には、電子光学系におけるパルス電子ビームの電流量や輝度の低下を検知するため、図6に示すようにファラデーカップ35を電子ビームの経路上に置いて、電流検出器36によりパルス電子ビームの電流量の変動を検出する。制御装置32は、検出された電流量が低下していると判断した場合には、平行光源7に制御信号28を送る。制御信号28を受けたコントローラ26は、励起光12の強度を調節するため、レーザー光源24の出力、および/または光増幅器105の増幅率などを調節する。あるいは、コントローラ26は、フォトカソード1上の電子源として使われていなかった位置に励起光を集光するよう、各位相調整器104での位相遅れ量の設定を別の位相遅れ量データに変更することにより、励起光12bの傾きθ(θx、θy)を変更してもよい。この場合は、新たな電子源からパルス電子ビームを放出させることにより、プローブ電流量が回復する。
 図6では、ファラデーカップ35は出し入れ式として、電流量モニタタイミングに合わせて、ファラデーカップを電子ビーム中に置いたり引き抜いたりすることが可能な構造としている。これに対して、ファラデーカップ35を電子ビームの軌道上に固定して、継続的に電流量をモニタ可能にしてもよい。その場合は、中心に穴を設けるなどして試料20に照射する電子ビームを通す構造とする。あるいは、標準試料から発生する二次電子や反射電子を電子検出器19で検出した信号を用いてもよい。または、試料20に流れ込む吸収電流をモニタしてもよい。吸収電流は、試料20を載置する試料台を、電流計を介してGNDに接続することで電子ビームの変動をモニタすることができる。
 本実施例の走査電子顕微鏡(SEM)は、ポンプ・アンド・プローブ法による観察に有効である。ポンプ・アンド・プローブ法とは、試料をパルスレーザーなどにより励起させ、励起からの経過時間に伴い試料が変化していく様子をSEMで観察するものである。SEMは、試料への励起光照射と同期させてパルス電子ビームを試料に照射し、発生する二次電子や反射電子の量を検出する。試料に対する励起光照射のタイミングからパルス電子ビーム照射のタイミングを変化させることによる、発生する二次電子や反射電子の量の変化から、試料の時間変化を捉えることができる。本実施例の電子銃は高輝度の電子源を実現できるため高分解能で微細構造を観察できる。上述のようにポンプ・アンド・プローブ法では、試料への励起光照射とパルス電子ビーム照射とを同期させる必要がある。このため、フォトカソード1に対する励起光(レーザー光源24からのレーザー光)、もしくは試料に照射する励起光の一部を取り出し、他方の励起光のトリガーもしくは種光とすることにより、時間誤差(ジッター)の少ない高時間精度の測定が可能となる。
 また、フォトカソード1として上述した以外の半導体系の材料、例えばGaN、InGaN、AlAs、GaPなどを用いてもよい。さらに、本実施例の電子銃構成は、量子効果が低く、通常は輝度の低い電子源となる金属系のフォトカソードの高輝度化にも有効である。一般に、金属やLaB、CeBのようなバンドギャップがない材料では光入射による電子放出の量子効率が低いため輝度が低く、電子顕微鏡のフォトカソードとして用いた場合には、空間分解能を高くすることが困難である。放出電流量を増やそうとして励起光の強度を上げると、材料へのダメージや蒸発によりカソードが破損してしまうためである。このようなフォトカソードに対しても、時間分割して電子放出位置を変えることでカソード面の損傷を最低限に抑えて高輝度化による高分解能、もしくは高速の観察が可能となる。
 図7Aの電子光学系では、複数のNEA電子源からのパルス電子ビームを試料20の1点に照射するよう軌道の制御を行っているのに対し、このような軌道の制御をおこなうことなく、試料20に照射してもよい。この場合、NEA電子源からのパルス電子ビームは、電子源の位置に応じてそれぞれ異なった位置に照射されることになる。この場合の走査型電子顕微鏡の構成(第2の電子顕微鏡構成)は図6と同様であるが、電子ビームの軌道を制御するためのアライナ8または偏向器18への偏向制御信号28bは不要になる。ただし、後述するように、走査電子顕微鏡の空間分解能によっては、画像形成時に電子源に応じた検出信号の弁別が必要になるため、制御装置32は、発光制御信号27aと同期して出力される弁別信号28cを出力する。
 図9Aに第2の電子顕微鏡構成の検出系を示す。図9Aに示すように、パルス電子ビームの軌道制御を行わない場合、電子源s1~s4からのパルス電子ビームはそれぞれ、試料20の位置p1~p4に、時間分割して入射される。図には、電子源s1からのパルス電子ビーム13-1が試料20の位置p1に入射されている様子を示している。パルス電子ビームが入射されることによって試料表面から発生する電子73は電子検出器19により検出される。
 パルス電子ビーム13は、図9Bに示されるように、偏向器18により試料20表面のx-y面上を偏向制御される。例えば、偏向器18は、パルス電子ビームの電子軌道72をまずx方向に掃引し、次にy方向に所定距離ずれた位置に移動して再度x方向に掃引する方式(ラスタースキャン方式)により、二次元の測定領域を走査する。図9Cに走査方向と電子源s1~s4からのパルス電子ビームが照射される位置p1~p4との関係を示す。位置p1~p4は、電子軌道72がx方向に掃引されたときの位置p1~p4の軌跡74の隣接するもの同士のy方向の距離Lが等しくなるように配置されている。位置p1~p4は、各電子源に集光する励起光の傾きθ(θx,θy)により、したがって、励起光学系において各位相調整器104に設定される位相遅れ量により調整することができる。高精度の位置決めを行う場合には、所定のパターンを設けた校正用試料を用いてパルス電子ビームが照射される位置p~pをキャリブレーションするとよい。
 図9Dは、電子源s1~s4からのパルス電子ビーム13を試料20に照射することにより発生する電子が、電子検出器19により検出されることによって出力される検出信号Spの大きさを示したものである。パルス電子ビーム13が照射された位置における試料20の状態(形状、組成など)に応じて、強度の異なる検出信号Spが出力される。
 ここで、図9Aに示す位置p1~p4間の間隔が、所望の空間分解能よりも十分小さい場合は、各位置からの検出信号を弁別する必要なく、同一位置からの検出信号とみなして、SEM像を形成すればよい。例えば、光電膜10上の電子源s1~s4は最大で互いに100 μm離れており、電子光学系の縮小率が1/1000であったとする。この場合、位置p1~p4の間は最大で100 nm離れることになる(なお、図9Cの例では、軌跡74-1と軌跡74-4との間の間隔である距離3Lが最大の距離である)。したがって、所望の空間分解能が100 nmより大きい場合には、照射位置の異なるパルス電子ビームを1本のビームとして扱うことができる。
 これに対して、上述の例で所望の空間分解能が100 nm以下の場合には、電子源s1~s4からのパルス電子ビームを照射したときの検出信号を、それぞれ位置p1~p4からの検出信号として独立に扱う。このため、図9Aの検出系では、電子検出器19からの検出信号を増幅するプリアンプ71と増幅された検出信号を弁別する検出信号弁別部70を設けている。検出信号弁別部70は制御装置32からの弁別信号28cにより、プリアンプ71から出力される検出信号が、どの電子源からのパルス電子ビームを照射したことによって得られた検出信号であるかを弁別する。なお、ここでは、弁別信号28cによりスイッチにより検出信号を弁別する例を示したが、検出信号をデジタル信号化した後、信号処理により弁別する構成としてもよい。
 画像形成部がこのように弁別した検出信号を試料上の異なる位置の検出信号として画像を形成することにより、第1の電子顕微鏡構成と同等の高解像画像を得ることができる。第2の電子顕微鏡構成の場合、パルス電子ビームの軌道を制御する第1の電子顕微鏡構成における掃引速度の1/4の掃引速度とすれば、図9Cに示すように、一度に4本のパルス電子ビームを掃引しているので、1枚のSEM画像を得るためのトータルのプローブ電流量は同じになるためである。
 また、第2の電子顕微鏡構成のより積極的な応用としては、試料上で測定したいポイントが限られている場合、そのポイントに配されるように位置pi(i=1~n)を決めてパルス電子ビームを照射すると、きわめて高速な測定が可能となる。
 また、パルス電子ビームを発生させる励起光の繰り返し周波数を高速にすることで、測定時間を短縮できる一方、図9Aのように電子検出器19を時間分割により位置piごとの検出信号を得る検出系の構成では、検出系の応答特性がパルス電子ビームの切り替え速度に追随できなくなる可能性がある。この場合には、検出系を投影光学系とし、位置piごとの信号電子を投影光学系により拡大して撮像装置に結像させることでSEM像を得ることができる。投影光学系による検出系は、検出系のレスポンス速度が例えばシンチレータの残光特性などにより限界がくる場合にも有効である。
 図9Bにおいて、パルス電子ビームをラスタースキャンする例を示したが、これに限らず、ベクタースキャンやランダムスキャンなども用途に応じて適用可能である。
 実施例1、実施例2では、フォトカソード1上の複数の位置を電子源としてパルス電子ビームを放出させる例であるが、フォトカソード1上の1か所を電子源としてパルス電子ビームを放出させることも可能である。この構成では電子源の輝度は実施例1、実施例2に及ばないものの、通常のSEMなどの電子光学系がそのまま使えること、パルス電子ビームを放出させる繰り返し周波数を高くできるので、速いスキャンに対応できること、などの利点がある。レーザー光源24としてダイオードレーザーが使えることで、安価であり、パルス幅や繰り返し周波数の選択肢が広く、任意の時間変化する周波数のパルス光も形成できるので、使い勝手がよい。
 図10にフォトカソード1上に単一の電子源を形成する励起光学系の構成を示す。励起光学系の基本的な構成は図1Cに示した構成と同様であるため、同じ構成要素については同じ符号を付して示し、重複する説明は省略する。励起光12が中心軸101に平行に出射しているかどうかを測定する光モニタ801が設けられている。光モニタ801は図5に示した構成をそのまま用いることも可能であるが、ここではより簡素化された構成の光モニタを示す。光モニタ801は透過ミラー802と光ディテクタ803を有している。光ディテクタ803は、励起光12が中心軸101に平行であるときに、透過ミラー802からの反射光が受光面に垂直に入射するように配置されている。位相制御装置804は、励起光学系の各位相調整器104の位相遅れ量を調整し、光ディテクタ803は透過ミラー802からの反射光の強度をモニタし、検出される反射光の強度が最大になったときに、励起光12は中心軸101に平行になっている。このときの各位相調整器104の位相遅れ量を位相制御装置804のストレージに記憶する。
 本実施例の電子銃構造は図1Aあるいは図8と同じであり、適用される電子光学系は図6に示すものと同様だが、複数の電子源に対応するための構成は不要である。具体的には、図10の励起光学系において位相制御装置804はパルスレーザー光毎に各位相調整器104の位相遅れ量を切り替えるための位相制御信号27bは不要であり、図6の電子光学系において電子ビームの軌道を制御するためのアライナ8または偏向器18への偏向制御信号28bは不要である。
 光分配器103、光結合器106としてハーフミラーを使っても、同様の励起光学系を構成できる。図11Aに、その構成例を示す。ハーフミラーは入射されたレーザー光の半分を透過させ、レーザー光の半分を反射させる光学素子である。レーザー光源24からのパルスレーザー光は光分配ハーフミラー901により透過光と反射光の2つのレーザー光に分配され、それぞれ位相調整器104と光増幅器105により、位相の調整と増幅がなされた後、再度光結合ハーフミラー903で結合され、1つの励起光12となる。光分配ハーフミラー901からの透過光と反射光は進行方向が90度の角度を持っているため、光結合ハーフミラー903で結合させるために、両方の光路にはミラー902が配置されている。図10と同様に、励起光12が中心軸101に出射しているかどうかを測定する光モニタ801が設けられている。位相制御装置904は、励起光学系の各位相調整器104の位相遅れ量を調整し、光ディテクタ803は透過ミラー802からの反射光の強度をモニタし、検出される反射光の強度が最大になったときに、励起光12は中心軸101に平行になっている。このときの各位相調整器104の位相遅れ量を示す位相遅れ量データを位相制御装置904のストレージに記憶する。
 図11Bに光モニタの別の構成例を示す。図11Bの例では、光結合ハーフミラー903の励起光12の取り出し方向とは反対側に設けた光ディテクタ905を光モニタとする。光分配ハーフミラー901で分配されたレーザー光の位相がずれたまま結合される場合には、位相のずれに応じて非結合光906が出射される。光ディテクタ905で検出される非結合光906が最小になるように各位相調整器104の位相遅れ量を調整する。
 なお、ハーフミラーではレーザー光は2本に分岐される。光分配ハーフミラー901からの透過光、反射光をそれぞれハーフミラーで分岐させることにより、合計4本に分岐することができる。このように、ハーフミラーを光分配器、光結合器として用いる場合にも、分岐数を任意に設定できる。
 ハーフミラーの代わりに偏向ビームスプリッタ(Polarizing Beam Splitter:PBS)を用いても同様の励起光学系を構成できる。この場合、分配されたレーザー光109はそれぞれ直線偏光となるので、再結合させるときには、偏光状態についても調整する必要がある。
 高分解能観察時には、試料上での電子ビームの径を最小にするため、図1Aあるいは図8に示すように平行光源7から放出する励起光12は、フォトカソード1の光電膜10上に最良の焦点を結ぶよう、平行で波面のそろったコヒーレント光であることが望ましい。この条件が乱れると、試料上での電子ビームの径が大きくなる。本実施例の励起光学系は、分配されたレーザー光の位相を制御することで、簡単に条件を変更できるため、分配されたレーザー光の位相がずれた状態を積極的に利用することもできる。
 例えば、励起光学系において分配されたレーザー光の位相を完全に合わせずに、1つ以上の位相調整器の位相遅れ量をずらすことにより、励起光12の強度と平行性を劣化させると、集光レンズ2により形成される光電膜10上の焦点も強度が下がり、集光径も広がることになる。この不完全な結合でのパルスレーザー光によりできるパルス電子ビームは光源径が広く電流量は少ないので、試料上に照射される電子線プローブは、径が大きく、電流量は減少する。この電子線プローブを観察用の電子線プローブのパルス幅よりも長くして試料に照射することにより、観察中の試料の帯電を除去することができる。これにより、SEM観察中に他の条件を一切変えることなく帯電を防ぎながら観察できる。
 フォトカソード1の光電膜10としては、前出のGaAs系のNEA電子源に限らず、GaP,AlGaAs,GaN,InGaNなどでもよく、また、金などの金属膜でもよい。
 以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能なものである。例えば、電子顕微鏡の例として走査電子顕微鏡を例に説明したが、透過電子顕微鏡、走査電子顕微鏡などの各種電子ビーム応用装置に適用できる。また、電子ビームが照射されることにより発生する電子(二次電子、反射電子等)を検出する電子検出器を備える電子ビーム応用装置に限られず、特性X線を検出する検出器など他の検出器を備えていてもよい。
1:フォトカソード、2:集光レンズ、3:引き出し電極、4:カソードホルダ、5:加速電源、6:窓、7:平行光源、8:アライナ、9:真空容器、10:光電膜、11:透明基板、12:励起光、13:パルス電子ビーム、14:開口部、15:光励起電子銃、16:電子光学筐体、17:電子レンズ、18:偏向器、19:電子検出器、20:試料、24:レーザー光源、25:パルス光電源、26:コントローラ、27a:発光制御信号、27b:位相制御信号、28:制御信号、28b:偏向制御信号、28c:弁別信号、29:対物レンズ、30:パルス電子ビームの軌道、31:コンデンサレンズ、32:制御装置、33:アライナ電源、34:電子光学系の光軸、35:ファラデーカップ、36:電流検出器、51:電気光学素子、52:電圧印加電源、53:半導体増幅素子、54:電流印加電源、55:光増幅ファイバー、56:ポンプ光源、57:カプラ、58:波長変換器、60:単結晶半導体透明基板、61:球面収差補整板、70:検出信号弁別部、71:プリアンプ、72:パルス電子ビームの電子軌道、73:電子、74:軌跡、101:励起光集束光学系の中心軸、103:光分配器、104:位相調整器、105:光増幅器、106:光結合器、107:光モニタ、108:位相制御装置、109:分配されたレーザー光、110:結像レンズ、111:透過ミラー、112:サンプル光、113:撮像素子、114:回折光学素子、115:コリメータ、119:レーザー光、801:光モニタ、802:透過ミラー、803,905:光ディテクタ、804、904:位相制御装置、901:光分配ハーフミラー、902:ミラー、903:光結合ハーフミラー、906:非結合光。

Claims (17)

  1.  基板と光電膜を有するフォトカソードと、パルス励起光を発光する光源と、前記パルス励起光を前記フォトカソードに向けて集光する集光レンズとを備え、前記光電膜の前記パルス励起光が集光された位置からパルス電子ビームを放出させる電子銃と、
     前記パルス電子ビームを試料に照射する電子光学系とを有し、
     前記光源は、
     レーザー光源と、
     前記レーザー光源に電力を供給してパルスレーザー光を放出させる電源と、
     前記レーザー光源が放出したパルスレーザー光を複数のパルスレーザー光に分配する光分配器と、
     前記複数のパルスレーザー光ごとに設けられ、前記光分配器により分配されたパルスレーザー光の位相を調整する複数の位相調整器と、
     前記複数のパルスレーザー光ごとに設けられ、前記光分配器により分配されたパルスレーザー光を増幅する複数の光増幅器と、
     前記位相調整器で位相調整され、前記光増幅器で増幅された前記複数のパルスレーザー光を結合し、前記パルス励起光として出力する光結合器と、
     前記複数の位相調整器それぞれの位相遅れ量を制御する位相制御装置とを備え、
     前記位相制御装置は、前記集光レンズの光軸に対する前記パルス励起光の傾きが所定の値となる前記複数の位相調整器それぞれの位相遅れ量を示す位相遅れ量データを保持し、前記位相遅れ量データに基づき前記複数の位相調整器それぞれの位相遅れ量を設定する電子ビーム応用装置。
  2.  請求項1において、
     前記光源は、前記電源及び前記位相制御装置を制御するコントローラをさらに備え、
     前記コントローラは、前記レーザー光源の発光を制御するため前記電源に出力する発光制御信号と同期した位相制御信号を前記位相制御装置に出力し、
     前記位相制御装置は、前記集光レンズの光軸に対する前記パルス励起光の傾きが互いに異なる値となる複数の前記位相遅れ量データを保持し、前記複数の位相調整器それぞれの位相遅れ量を設定する前記位相遅れ量データをパルスレーザー光ごとに切り替える電子ビーム応用装置。
  3.  請求項2において、
     制御装置をさらに有し、
     前記電子光学系は、前記パルス電子ビームの軌道を制御するアライナまたは偏向器を備え、
     前記制御装置は、前記発光制御信号と同期した偏向制御信号を前記アライナまたは前記偏向器に出力し、前記アライナまたは前記偏向器により偏向されたパルス電子ビームの軌道が同じになるよう制御する電子ビーム応用装置。
  4.  請求項2において、
     前記電子光学系は、前記パルス電子ビームを前記試料上で第1の方向に掃引する偏向器を備え、
     前記試料上で前記パルス電子ビームが照射される位置の軌跡は、前記第1の方向に垂直な方向に等間隔で並ぶ電子ビーム応用装置。
  5.  請求項4において、
     前記パルス電子ビームが前記試料に照射されることにより発生する電子を検出する電子検出器を備える検出系と、
     制御装置とを備え、
     前記制御装置は、前記発光制御信号と同期した弁別信号を前記検出系に出力し、
     前記検出系は、前記パルス電子ビームが照射される位置を弁別して、前記電子検出器からの検出信号に基づく画像を形成する電子ビーム応用装置。
  6.  請求項2において、
     制御装置をさらに有し、
     前記電子光学系は、前記パルス電子ビームの変動をモニタする電子ビームモニタを備え、
     前記制御装置は、前記電子ビームモニタにより前記パルス電子ビームの電流量が低下していると判断した場合に、前記コントローラに前記パルス電子ビームの電流量を回復させるための制御信号を出力する電子ビーム応用装置。
  7.  請求項6において、
     前記コントローラは、前記制御信号を受けて、前記レーザー光源の出力、および/または前記光増幅器による増幅率を調整する電子ビーム応用装置。
  8.  請求項6において、
     前記コントローラは、前記制御信号を受けて、前記位相制御装置がパルスレーザー光ごとに前記複数の位相調整器それぞれの位相遅れ量を設定するために使用する前記位相遅れ量データを変更する電子ビーム応用装置。
  9.  請求項1において、
     前記レーザー光源の発光は、前記試料に照射する励起光と同期されている電子ビーム応用装置。
  10.  請求項1において、
     前記位相遅れ量データは、前記パルス励起光が前記集光レンズの光軸に平行になるときの前記複数の位相調整器それぞれの位相遅れ量を示し、
     前記位相制御装置は、前記位相遅れ量データに基づき前記複数の位相調整器それぞれの位相遅れ量を設定する電子ビーム応用装置。
  11.  請求項10において、
     前記光源は、前記パルス励起光が前記集光レンズの光軸に平行であることをモニタする光モニタを備え、
     前記光モニタは、前記パルス励起光が入射され、その一部を反射する透過ミラーと、前記パルス励起光が前記集光レンズの光軸に平行であるときに前記透過ミラーからの反射光が受光面に垂直に入射するよう配置される光ディテクタとを備える電子ビーム応用装置。
  12.  請求項10において、
     前記光源は、前記電源及び前記位相制御装置を制御するコントローラをさらに備え、
     前記コントローラは、前記レーザー光源の発光を制御する発光制御信号を前記電源に出力し、
     前記レーザー光源を第1のパルス幅で発光させているときには、前記位相制御装置は、前記位相遅れ量データに基づき前記複数の位相調整器それぞれの位相遅れ量を設定し、
     前記レーザー光源を第1のパルス幅よりも長い第2のパルス幅で発光させているときには、前記位相制御装置は、前記パルス励起光の前記光電膜上での集光径が広がるよう、前記複数の位相調整器の少なくとも一つの位相遅れ量を変更する電子ビーム応用装置。
  13.  請求項1において、
     前記光電膜は、化合物半導体膜と前記化合物半導体膜の表面に設けられた仕事関数低下被膜とを有する電子ビーム応用装置。
  14.  請求項1において、
     前記光分配器及び光結合器はそれぞれ、回折光学素子とコリメータとを備え、
     前記回折光学素子に垂直に入射されたパルスレーザー光は、複数のパルスレーザー光に分岐され、前記コリメータにより、前記複数のパルスレーザー光の光路は互いに平行とされる電子ビーム応用装置。
  15.  請求項1において、
     前記光源は、前記集光レンズの光軸に対する前記パルス励起光の傾きを検出する光モニタを備え、
     前記光モニタは、前記パルス励起光が入射され、その一部を反射する透過ミラーと、光軸が前記集光レンズの光軸と垂直となるように配置され、前記透過ミラーからの反射光が入射される結像レンズと、前記結像レンズとの間隔が前記結像レンズの焦点距離となるように配置される撮像素子とを備える電子ビーム応用装置。
  16.  請求項1において、
     前記光分配器及び光結合器はそれぞれ、ハーフミラーで構成される電子ビーム応用装置。
  17.  請求項16において、
     前記光源は、前記パルス励起光が前記集光レンズの光軸に平行であることをモニタする光モニタを備え、
     前記光モニタは、前記光結合器からの非結合光をモニタする光ディテクタである電子ビーム応用装置。
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JP2003506828A (ja) * 1999-07-30 2003-02-18 エテック システムズ インコーポレイテッド 光電陰極の高開口数照光を用いた電子ビームコラム
JP2012093675A (ja) * 2010-10-29 2012-05-17 Nano Photon Kk 偏光ビーム変換素子、偏光ビーム変換方法、電子銃、ビーム測定装置、及び電子発生方法
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