WO2022210759A1 - 抗血栓性材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、従来の医療用材料に比べて、抗血栓性、ひいては生体適合性に優れ、かつ、親水性の高い表面処理剤を提供することを課題とする。 【解決手段】本発明は、疎水性(メタ)アクリレートと親水性(メタ)アクリレートとからなる(メタ)アクリレート共重合体であって、疎水性(メタ)アクリレートがシリコーン(メタ)アクリレート及び/又はアルキル(メタ)アクリレートであって、残留モノマー量が4,000ppm以下、還元粘度(ηsp/c)が0.18dl/g以上3.00dl/g以下、水不溶性、かつ室温で粘性液状である(メタ)アクリレート共重合体を含む抗血栓性材料である。

Description

抗血栓性材料
 本発明は、医療機器に血液適合性を付与する抗血栓性材料に関する。より詳しくは、疎水性(メタ)アクリレートと親水性(メタ)アクリレートとを含む(メタ)アクリレート共重合体であって、疎水性(メタ)アクリレートとして少なくともシリコーン(メタ)アクリレートを含む水不溶性で、かつ室温で粘性液状である抗血栓性材料に関する。
 近年、各種の高分子材料を利用した医療機器の検討が進められており、血液フィルター、人工腎臓、血漿分離、カテーテル、人工肺、人工血管、癒着防止膜、人工皮膚等への利用が期待されている。この場合、生体にとって異物である合成材料を生体内組織や血液と接触させて使用することとなるため、医療機器が生体適合性を有していることが要求される。
 医療機器を血液と接する材料として使用する際には、(a)血液凝固系の抑制、(b)血小板の粘着・活性化の抑制、および(c)補体系の活性化の抑制の3要素が、生体適合性として重要な項目となる。中でも、体外循環用医療機器(例えば、人工腎臓、血漿分離膜)のように、血液と接する時間が比較的短い材料として使用する場合においては、一般に、ヘパリン、クエン酸ナトリウム等の抗凝固剤を同時に使用するため、特に、前記(b)および(c)の血小板や補体系の活性化の抑制が重要となる。
 出願人は、上記使用に適した材料について検討し、アルキル(メタ)アクリレート及びシリコーン(メタ)アクリレート、およびメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートからなり、数平均分子量が2,000~200,000、水不溶性で、かつ室温で粘性液状であり、炭素数1~6のアルコールのいずれかに可溶であり、37℃における粘度が0.5~10,000Pa・sである(メタ)アクリレート共重合体を含む抗血栓性材料について出願している(特許文献1)。
特許第4793700号公報
 本発明は、従来の医療用材料に比べて、血液と接する時間が比較的長い材料として使用することが可能であり、血液接触に対する耐久性をさらに高めた抗血栓性材料を提供することを課題とする。
 本発明者は、アルキル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、およびシリコーン(メタ)アクリレートを共重合することにより得られる共重合体において、残留モノマー量および還元粘度を特定の範囲に調整した前記共重合体を医療機器に適用することで従来よりもさらに長期間にわたる抗血栓性を付与できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は以下のような構成を有する。
(1) 下記一般式1で示されるアルキル(メタ)アクリレート単位及び下記一般式2で示されるシリコーン(メタ)アクリレート単位及び下記一般式3で示されるメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート単位を80~20/10~0.01/10~79.99のモル比で共重合させた、重量平均分子量が50,000以上1,500,000以下である(メタ)アクリレート共重合体であって、水不溶性(ここで、水不溶性であるとは、(メタ)アクリレート共重合体を該共重合体1質量%に対して99質量%の37℃生理食塩水に30日間静置した際、該共重合体の質量減少率が1質量%以下であることを指す)で、かつ室温で粘性液状であり、炭素数1~6のアルコールのいずれかに可溶であり、残留モノマー量が4,000ppm以下であり、還元粘度(ηsp/c)が0.18dl/g以上3.00dl/g以下である(メタ)アクリレート共重合体を含む抗血栓性材料。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000004
(式中、Rは炭素原子数8~12のアルキル基、Rは水素原子またはメチル基を示す)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000005
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素原子数1~6のアルキレン基、Rは炭素数1~6のアルキル基、nは1~30の整数を示す)
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000006
(式中、Rは水素原子またはメチル基、nは2~4の整数を示す)
(2) (1)に記載の抗血栓性材料を含む医療機器。
 本発明の抗血栓性材料は、生体適合性に優れ、かつ血液接触に対する耐久性の高い材料である。また、材料としての物性が水に不溶な粘性物質であるため医療機器に担持された抗血栓性材料が血液に接触した場合でも、容易に血液中に溶出せず、医療機器が長期間の抗血栓性を維持できる。さらに、疎水性(メタ)アクリレートとして、シリコーン(メタ)アクリレートを含んでいるため、その撥水作用により(メタ)アクリレート共重合体の加水分解等を抑制する効果が期待できる。
 本発明において、疎水性(メタ)アクリレートおよび親水性(メタ)アクリレートを含む(メタ)アクリレート共重合体は血液接触に対する耐久性があり、かつ室温で粘性を有する液状であることが好ましい。ここで、血液接触に対する耐久性があるとは、(メタ)アクリレート共重合体をアルコール浸漬処理液に室温で16時間浸漬した際、(メタ)アクリレート共重合体が一定以上残存しており抗血栓性を示すことを表す。アルコール浸漬処理液中に室温で16時間浸漬して(メタ)アクリレート共重合体が所定量残存していれば37℃の血液に30日間接触した場合にも十分な抗血栓性を有する(維持する)と判断できる。また、室温で液状であるが粘性があるため、医療機器等にコーティングして使用した際にも血液への溶出を抑制することができる利点がある。
 本発明において、親水性(メタ)アクリレートは、下記一般式3で示されるメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。下記一般式3において、エチレンオキサイド単位は2~10であるものを使用するのが好ましい。より好ましくは2~5である。具体的には、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシペンタエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシヘプタエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシオクタエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシノナエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシデカエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。繰り返し単位が大きくなり親水性が増大しすぎると共重体の血液への溶出が多くなるため、医療材料から容易に脱離する可能性がある。したがって、繰り返しエチレンオキサイド単位が4のメトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、3のメトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートがさらに好ましい。3のメトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートが特に好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000007
(式中、Rは水素原子またはメチル基、nは2~4の整数を示す。)
 本発明において、疎水性(メタ)アクリレートは、下記一般式2で示されるシリコーン(メタ)アクリレートを含むのが好ましい。シリコーン(メタ)アクリレートは、ジメチルシロキサン繰り返し単位が1~50であるシリコーン(メタ)アクリレートを用いるのが好ましい。繰り返し単位が大きすぎると、得られる共重合体の粘度が高くなりすぎて取り扱いが困難となることがある。また、繰り返し単位が小さすぎると、粘度が下がりすぎて医療機器等の塗布面から容易に消失してしまう恐れがある。したがって、ジメチルシロキサン繰り返し単位は、より好ましくは1~20である。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000008
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素数1~6のアルキレン基、Rは炭素数1~6のアルキル基、nは1~30の整数を示す。)
 本発明において、疎水性(メタ)アクリレートは、シリコーン(メタ)アクリレートに他の疎水性(メタ)アクリレートを含んでいても良い。他の疎水性(メタ)アクリレートは特に限定されるものではないが、一例として下記一般式1で示される疎水性(メタ)アクリレートを添加するのが好ましい。下記一般式1において、Rの炭素数は8~20のものを使用するのが好ましく、より好ましくは8~12である。このような疎水性(メタ)アクリレートの具体例として、ノルマルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等があるが、コストと性能の観点から2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000009
(式中、Rは炭素原子数8~12のアルキル基、Rは水素原子またはメチル基を示す。)
 本発明の水不溶性の(メタ)アクリレート共重合体に属する代表的なものを具体的に挙げると、シリコーン(メタ)アクリレート-メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-ノルマルヘキシル(メタ)アクリレート-メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-ノルマルヘキシル(メタ)アクリレート-メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-ノルマルヘキシル(メタ)アクリレート-メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-シクロヘキシル(メタ)アクリレート-メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-シクロヘキシル(メタ)アクリレート-メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-シクロヘキシル(メタ)アクリレート-メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-フェニル(メタ)アクリレート-メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-フェニル(メタ)アクリレート-メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-フェニル(メタ)アクリレート-メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-n-オクチル(メタ)アクリレート-メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-n-オクチル(メタ)アクリレート-メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-n-オクチル(メタ)アクリレート-メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート-メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート-メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート-メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-ラウリル(メタ)アクリレート-メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-ラウリル(メタ)アクリレート-メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-ラウリル(メタ)アクリレート-メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-n-ノニル(メタ)アクリレート-メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-n-ノニル(メタ)アクリレート-メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-n-ノニル(メタ)アクリレート-メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-n-デシル(メタ)アクリレート-メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-n-デシル(メタ)アクリレート-メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-n-デシル(メタ)アクリレート-メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-ステアリル(メタ)アクリレート-メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-ステアリル(メタ)アクリレート-メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-ステアリル(メタ)アクリレート-メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-ラウリル(メタ)アクリレート-メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-ラウリル(メタ)アクリレート-メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-ラウリル(メタ)アクリレート-メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-ミリスチル(メタ)アクリレート-メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-ミリスチル(メタ)アクリレート-メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、シリコーン(メタ)アクリレート-ミリスチル(メタ)アクリレート-メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体のような、これに限定されるものではないが、一般式1で示されるアルキル(メタ)アクリレート単位及び下記一般式2で示されるシリコーン(メタ)アクリレート単位及び下記一般式3で示されるメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート単位が80~20/10~0.01/10~79.99のモル比からなる(メタ)アクリレート共重合体である。疎水性(メタ)アクリレートが少なすぎると共重合体が血液などに溶解しやすくなり、多すぎると親水性(メタ)アクリレートの血液適合性が十分に発揮されない可能性がある。したがって、モル比は80~50/5~0.01/15~49.99であることがより好まく、モル比は77~55/5~0.01/18~44.99であることがさらに好まく、モル比は73~57/5~0.01/22~42.99であることがよりさらに好ましい。
 共重合体の分子量を表す指標には数平均分子量と重量平均分子量があるが、重量平均分子量の方がより安定性、粘着性に影響を与えるため、本発明においては重量平均分子量をその指標として選択した。重量平均分子量が小さすぎると、血液中に容易に溶出する恐れがあるばかりでなく、塗膜の強度、安定性などが失われる可能性がある。また、重量平均分子量が大きいほどコーティング溶液を調製した際に粘度が上昇するためコーティング基材との粘着性が向上するという副次効果もある。したがって、(メタ)アクリレート共重合体の重量平均分子量は、60,000以上がより好ましい。また、該(メタ)アクリレート共重合体の重量平均分子量は1,500,000以下とすることが(メタ)アクリレート共重合体を医療機器等にコーティングする際の作業性が向上するため好ましい。より好ましくは1,000,000以下、さらに好ましくは500,000以下である。ここで、重量平均分子量とは全分子の分子量の和を分子重量の和で割ったものであり、高分子の特性の指標の一つである。
 この(メタ)アクリレート共重合体の重量平均分子量を、50,000以上1,500,000以下とすることは、該共重合体の精製、処理液の取り扱い、医療機器への適応性、塗膜の安定性などに関する特定の技術課題を達成する為には、非常に重要な技術要件でもある。
 重量平均分子量を測定する方法としては、末端基定量法、浸透圧法、蒸気圧オスモメトリー、蒸気圧降下法、氷点降下法、沸点上昇法、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法などがあるが、本発明においては操作の容易さの点でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法という慣用の手法を採用する。
 本発明において、(メタ)アクリレート共重合体の還元粘度(ηsp/c)は0.18dl/g以上3.00dl/g以下であることが好ましい。このような粘度範囲にある共重合体(抗血栓性材料)を用いることにより、人工心肺回路やカテーテルなどの医療機器にコーティングした際に、該共重合体と医療機器との粘着性に優れ、長期使用での抗血栓性の持続が可能となる。より好ましい還元粘度範囲は0.18dl/g以上1.50dl/g以下、さらに好ましくは0.18dl/g以上0.50dl/g以下である。
 また、本発明において、疎水性(メタ)アクリレートとしてシリコーン(メタ)アクリレートを必ずしも含むものではないが、シリコーンは、その基本骨格からもわかるように耐熱性、耐寒性に優れておりガラス転移温度(Tg)も低いため、種々の温度範囲で安定した特性を発揮できる利点がある。また、結合エネルギーが大きいため、酸、アルカリ耐性があり、化学的にも安定性が高いという利点がある。さらに、(メタ)アクリレートモノマーとの共重合性に優れており、本発明の(メタ)アクリレート共重合体の原料として好ましく利用できる。シリコーン(メタ)アクリレートは、近年コンタクトレンズの材料に採用されるなど生体に対する高い安全性を有する材料としても認知されている。したがって、抗血栓性材料中のシリコーン(メタ)アクリレート含有量は多すぎて問題となることはないと思われ、シリコーン(メタ)アクリレート-メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体でも構わない。しかし現状、シリコーン(メタ)アクリレートは原料価格が比較的高いこともあり、疎水性(メタ)アクリレートとしてシリコーン(メタ)アクリレートを単独で用いると費用対効果の面で不利になることがある。性能、品質、コストなどを総合的に考慮して、シリコーン(メタ)アクリレートの添加量の上限は50質量%以下含まれていれば足りるといえる。より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下である。また、シリコーン(メタ)アクリレートと先述した他のアルキル(メタ)アクリレートを混合して用いても良い。一方、シリコーン(メタ)アクリレート含有量が少なすぎると、保存中に加水分解が進行し、抗血栓性材料として長期安定性が低下することがあるので、疎水性(メタ)アクリレート中のシリコーン(メタ)アクリレート含有量は0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、1.0質量%以上含むのがさらにより好ましい。
 この(メタ)アクリレート共重合体は、上記一般式2のモノマーと一般式3のモノマーが交互に配列した共重合体であることも有り得るが、トータル量から解析すれば、疎水性モノマーからなるセグメント又はブロックと、親水性モノマーからなるセグメント又はブロックからなる共重合体であることも有り得る。疎水性モノマーからなるセグメント又はブロックが、親水性モノマーからなるセグメント又ブロックを固定する機能を果たす、いわゆるミクロ相分離構造、モザイク模様のような構造というような複雑な構造を採ることも有り得ることが一応想定できる。いずれにせよ、共重合体の分子量の大小および親水性モノマーの種類、特性なども多少影響するだろうが、疎水性モノマーの量を若干多くすれば、該共重合体の親水性モノマーからなるセグメント又はブロックの溶出を抑えることができる。また、この疎水性セグメントをやや多くするということは、疎水性医療機器との親和性を上げる機能も果たすものと思われ、被膜として医療機器との固着に有利な役割を果たすことも想定できるが、セグメントの有無およびその親和性の状態に関する挙動に関して、現状では技術的根拠に基づいて正確に検証することができないが、該共重合体は生体にやさしい親和性をもった高分子材料である。
 メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート単独重合体は親水性が高いため血液適合性には優れているが、水溶性であるので血液等に長期間接触させた場合、徐々に溶出する問題があった。本発明者は血液適合性に優れるだけでなく、長期使用に耐える材料について鋭意検討した結果、血液等への溶出を防止するための適度な疎水性と、コーティング被膜の物理的な膜剥がれを防止するための柔軟性とを付与することにより得られる共重合体が該課題を解決できることを見出した。
 このように、処理液に含まれる該共重合体は、血液に対する例えば抗血栓性、溶出防止のような機能を有する親水性モノマー、セグメント、又はブロックからなるものと、医療機器に対する、例えば親和性、固着性のような機能を有する疎水性モノマー、セグメント又はブロックから構成されているという、いわゆる異なる二面の界面機能を果たす二種類のモノマー成分から実質的に構成されているが、一方で、該共重合体を構成する、モノマー、セグメント、又はブロック同志がお互いに分子構造内で補完しあって、溶出、分散などに対して安定な分子も結合又は構造を形成しているようにも見える。
 本発明において、(メタ)アクリレート共重合体は炭素数1~6のアルコールのいずれかに可溶であることが好ましい。炭素数1~3のアルコールに可溶であることがコーティング後の乾燥が容易になるためより好ましい。ここで、可溶であるとは前記アルコール10mlに(メタ)アクリレート共重合体1gを25℃で浸漬した際、室温下16時間以内に少なくとも90質量%の(メタ)アクリレート共重合体が溶解することを言う。
 本発明において、(メタ)アクリレート共重合体からなる抗血栓性材料は抗菌性物質などの物質を含んでいても良い。抗菌性物質は、特に限定されるものではなく、例えば、アンピシリン、ナフシリン、アモキシシリン、オキサシリン、アズロシリン、ペニシリンG、カルベニシリン、ペニシリンV、ジクロキサシリン、フェネチシリン、フロキサシリン、ピペラシリン、メシリナム、スルベニシリン、メチシリン、チカルシリン、メズロシリン、セファクロール、セファロチン、セファドロキシル、セファピリン、セファマンドール、セフラジン、セファトリジン、セフスロジン、セファゾリン、セフタジジム、セフォラニド、セフトリアキソン、セフォキシチン、セフロキシム、セファセトリル、ラタモキセフ、セファレキシン、アミカシン、ネオマイシン、ジベカシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、ネチルマイシン、カナマイシン、トブラマイシン、アンホテリシンB、ノボビオシン、バシトラシン、ニスタチン、クリンダマイシン、ポリミキシン、コリスチン、ロヴァマイシン、エリトロマイシン、ストレプトマイシン、スペクチノマイシン、リンコマイシン、バンコマイシン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ロリテトラサイクリン、ドキシサイクリン、テトラサイクリン、ミノサイクリン等の抗生物質、アンホテリシンB、ケトコナゾール、クロトリマゾール、ミコナゾール、エコナゾール、ナタマイシン、フルシトシン、ニスタチン、グリセオフルビン等の抗真菌剤、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル等のパラオキシ安息香酸エステル、クロルヘキシジン等のビグアニド化合物、ベンゼトニウム、ベンザルコニウム、ラウリル硫酸、アルキルポリアミノエチルグリシン、脂肪酸、臭化ドミフェンなど表面活性を有する化合物、チモール、フェノール、ヘキサクロロフェン、レゾルシン等のフェノール誘導体、ホウ酸、ホウ砂等のホウ酸化合物、ヨウ素、ヨードホルム、ポビドンヨード等のヨウ素化合物、金、銀、銅、水銀などの金属、チメロサール、メチロブロミン、スルファジアジン銀等の金属化合物、アクリノール、メチルロザリニン等の抗菌色素化合物、酢酸マフェニド、スルファジアジン、スルフィソミジン、スルファメトキサゾール等のサルファ剤等が挙げられる。これらの抗菌性物質は、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、塩酸塩、硫酸塩、グルコン酸塩等の塩化合物であってもよく、また、2種類以上の抗菌性物質を併用してもよい。
 上記抗菌性物質は水溶性と難水溶性に大別でき、水溶性の抗菌性物質として代表的なものは塩化ベンザルコニウム、ポビドンヨード、ペニシリンGカリウム、硫酸ストレプトマイシンなどが挙げられる。また、難水溶性の抗菌性物質として代表的なものはスルファジアジン銀、クロルヘキシジンなどが挙げられる。
 本発明において、医療機器等に抗血栓性物質(共重合体)と難水溶性の抗菌性物質とをコーティングした場合、共重合体が水不溶性であるためか、共重合体の水不溶性と抗菌性物質の難水溶性とが相補的に機能するためか不明だが、抗菌性物質の溶出が極微量かつ持続的となり、長期的な抗菌性を維持することができる。一方、共重合体と水溶性の抗菌性物質とをコーティングした場合には、共重合体は水不溶性であるが、抗菌性物質が水溶性であるため、その溶出量は難水溶性の抗菌性物質を用いた場合に比べて多くなり、瞬間的な強い抗菌性を発現することはできるが、長期的な抗菌性を維持することはできない。例えば、血管内留置カテーテル、輸液チューブ、人工肺などは1~数日連続して使用される医療用具であり、このような用途には長期的な抗菌性の持続が必要である。また、共重合体に水溶性と難水溶性の抗菌性物質を併用することによって、初期は水溶性の抗菌性物質による強い殺菌力を発揮し、その後は難水溶性の抗菌性物質によって長期的な抗菌性を発揮するといった多段階的な抗菌性を付与することも可能である。この多段階的抗菌性を血管内留置カテーテルに応用すれば、水溶性の抗菌性物質が早期に溶出し、強い抗菌性を発現させることによって、カテーテル挿入時に血管内へ持ち込んでしまう皮膚常在菌を殺菌し、挿入時の感染のリスクを低減させる。そして、カテーテル留置中には、難水溶性の抗菌性物質の長期的な抗菌性により、細菌のカテーテルへの定着や挿入部位から浸入してきた細菌の増殖を阻止することができ、留置時における感染のリスクを低減させることができる。
 本発明において、抗菌性物質は抗血栓性組成物の質量に対して0.01質量%以上70質量%以下が好ましく、より好ましくは0.05質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以上30質量%以下、さらにより好ましくは0.1質量%以上10質量%以下である。抗菌性物質の含有量が低すぎる場合は、抗菌性物質の抗菌性が十分に発揮できない可能性がある。また、抗菌性物質の含有量が高すぎる場合は、コーティング等の表面処理後の医療用具に外観不良が発生したり、体内への抗菌性物質の溶出が増加し、溶出した抗菌性物質による局所的な炎症を起こすことがある。したがって、抗菌性物質は医療用具表面全体に存在させてもよいが、皮膚を挿通している刺入部近傍にのみ存在させるのが局所的な炎症を抑制する点で好ましい。
 本発明の抗血栓性材料は、ランダム共重合体、ブロック共重合体およびグラフト共重合体のいずれであってもよい。また、本発明の抗血栓性材料を製造するための共重合反応自体には特別の制限はなく、ラジカル重合、イオン重合、光重合、マクロマーを利用した重合等の公知の方法を用いることができる。
 本発明の(メタ)アクリレート共重合体を製造するための一例としてラジカル重合による製造方法を以下に示す。
 例えば、還流塔を装着した攪拌可能な反応装置にモノマーと重合溶媒、開始剤を加え、窒素置換の後加熱することで重合を開始し、一定時間その温度を保つことで重合を進行させる。この重合の際に連鎖移動剤を併用し、分子量をコントロールすることも可能である。重合終了後の溶液より溶媒を除去し、粗(メタ)アクリレート共重合体を得る。引き続き、得られた粗(メタ)アクリレート共重合体を貧溶媒中で攪拌して精製処理を行う。精製処理を1~数回繰り返し(メタ)アクリレート共重合体の純度を上げる。このようにして得られた共重合体を乾燥する。
 共重合の際に用いる重合溶剤としては、メタノールやエタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸エチル、トルエン、ベンゼン、メチルエチルケトン等の有機溶剤、あるいは水を用いることができるが、本発明においてはモノマーおよび得られる共重合体の溶解性や入手の容易さの面から酢酸エチル、メタノール、エタノール等を用いるのが好ましい。また、前記溶剤の複数種を混合して用いることもできる。これら重合溶媒とモノマーとの仕込み質量比は20~90/60~10が好ましく、30~90/70~10がより好ましく、35~85/65~15がさらに好ましい。仕込み比が前記範囲にあれば、重合反応率を最大限に高めることができる。
 重合開始剤としては、一般的にラジカル重合で用いられる過酸化物系、アゾ系のラジカル開始剤が用いられる。過酸化物系ラジカル開始剤としては例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の無機系過酸化物、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンパーオキサイド等の有機系過酸化物が、アゾ系ラジカル開始剤としては例えば2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-アミノジプロパン)ジハイドロクロライド、ジメチル2,2’-アゾビスブチレート、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等が用いられる。また、過酸化物系の開始剤に還元剤を組み合わせたレドックス開始剤も使用できる。これらの重合開始剤等は重合溶液中のモノマーに対して0.01質量%以上1質量%以下添加するのが好ましい。より好ましい添加量は0.05質量%以上0.5質量%以下、0.05質量%以上0.3質量%以下がさらに好ましい。重合開始剤等の添加量を前記範囲にすることにより、良好なモノマー反応率で適正な重量平均分子量を有する共重合体を得ることができる。
 重合する際の温度は、溶剤の種類、開始剤の種類によって異なるが、開始剤の10時間半減期温度付近を使用するのが好ましい。具体的には、前記開始剤を使用する場合20℃以上90℃以下が好ましい。30℃以上90℃以下がより好ましく、40℃以上90℃以下がさらに好ましい。重合の際に分子量を制御するため用いられる連鎖移動剤としては、ドデシルメルカプタン、チオリンゴ酸、チオグリコール酸等の高沸点のチオール化合物、イソプロピルアルコール、亜リン酸、次亜リン酸等を用いることができる。
 本発明において、(メタ)アクリレート共重合体は親水性と疎水性のモノマーを共重合してできるものであるため、親水性と疎水性の両方の性質を有する。したがって、共重合後の溶液中には、未反応モノマーである親水性モノマー(メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート)と疎水性モノマー(シリコーン(メタ)アクリレート、場合によりアルキル(メタ)アクリレート)、および(メタ)アクリレート共重合体からなる成分が混在している。これらの混合物の中から水不溶性の(メタ)アクリレート共重合体を単離するためには、例えば親水性モノマーを溶解する溶媒に該共重合体溶液を滴下して精製を行い、続いて疎水性モノマーを溶解する溶媒を用いて共重合体を精製することができる。また、アルコールと水とを特定の割合で混合した再沈殿貧溶媒を用いることにより効率よく(メタ)アクリレート共重合体を回収できる。さらに、重合反応が完了した溶液中に、特定の割合のアルコールと水との混合液からなる水不溶性の(メタ)アクリレート共重合体に貧溶媒を添加して一定温度で攪拌することにより、(メタ)アクリレート共重合体を分離した後、沈殿をデカンテーションにて回収し、洗浄液を添加して同じ方法を繰り返し行うことによる精製方法をとることもできる。
 本発明において、該共重合体を精製するために用いる貧溶媒としては、該共重合体を溶解せず、親水性・疎水性モノマーの両方を溶解する貧溶媒を用いるのが好ましい。
 本発明において、再沈殿処理に用いるアルコールとしては、炭素数1以上10以下のアルコールを用いるのが好ましく、より好ましくは炭素数1以上7以下のアルコールであり、さらに好ましくは炭素数1以上4以下のアルコールである。このようなアルコールの具体例として、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メトキシ-1-プロパノール、ターシャリーブタノールなどがあるが、低温、短時間乾燥ができることからメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノールがより好ましい。
 本発明において、残留モノマー量(重合において未反応のモノマー量)は安全性に関わるため重要である。抗血栓性材料中の残留モノマー量を低くすることによって医療器具からの溶出に関するガイドラインに示される基準をクリアすることは当然であるが、残留モノマー量を4,000ppm以下という非常に少ないレベルとすることによって、抗血栓性材料の医療用具表面への付着性、滞留性を高めることに繋がったことは予想外の効果である。また、モノマー投入量に対する得られたポリマー量の割合を回収率として表している。
 前記したような精製処理を1回、必要により2~8回行うことにより、未反応モノマー含有量が4,000ppm以下である水不溶性の(メタ)アクリレート共重合体を30質量%以上という高回収率で回収することが可能となる。該共重合体中に含まれる未反応モノマー、オリゴマー、重合残渣の含有量が多い場合には、それが血液中に溶出して、患者のショック症状などの原因物質となることが考えられる。それらの原因物質は精製処理で大部分は除去できるが、患者の安全を考慮すれば、その含有量を3,000ppm以下にするのがより好ましく、2,000ppm以下がさらに好ましく、1,000ppm以下が特に好ましい。
 本発明の粗(メタ)アクリレート共重合体と貧溶媒の体積比は1:1~1:20が好ましく、1:3~1:10がより好ましい。体積比が前記範囲にあれば精製効率と回収率を最大限に高めることができる。
 本発明の粗(メタ)アクリレート共重合体の精製時の温度としては30~60℃が好ましく、40~60℃がより好ましい。精製時の温度が前記範囲にあれば粗(メタ)アクリレート共重合体の粘度が加熱により低下して貧溶媒との分離がしやすくなることになり、(メタ)アクリレート共重合体の回収率を最大限に高めることができる。
 本発明において、精製処理後の(メタ)アクリレート共重合体の回収率が90質量%を超えると回収物中に未反応モノマー含有の恐れが生じ、20質量%を下回ると生産効率が低下するため、回収率は20~90質量%であることが好ましい。この回収率を20~90質量%にとどめるということは、共重合体を若干損失又は放棄することにもなるが、未反応モノマーの混入をできるだけ防ぐということからすれば仕方がないことである。というのも、医療機器に適用する親水性、疎水性の性質を兼ね備えた共重合体であるという特有の事情からすれば、それぐらいの配慮は当然にしなければならないことである。
 精製された共重合体を医療機器への抗血栓性付与に用いるためには乾燥により溶媒の除去が必要となる。乾燥方法としては例えば、60℃で1Torr以下の減圧下において実施し、十分な乾燥が得られないときは引き続き減圧乾燥を行えば良い。
 上述した本発明の抗血栓性材料は、水不溶性であり、医療機器等の表面処理剤として好ましく用いることができる。具体的な態様として、得られた抗血栓性材料を有機溶媒に溶解することにより得られる溶液を医療機器等の基材表面に塗布した後、溶媒を除去することによって得ることができる。本発明の抗血栓性材料を基材表面に担持させる方法としては、コーティング法や放射線、電子線、紫外線によるグラフト重合を利用する方法、基材の官能基との化学反応を利用する方法等の公知の方法が挙げられる。中でも、コーティング法は、製造工程が容易であるため、実用上好ましい。コーティング法は、特に限定されず、塗布法、スプレー法、ディップ法等を用いることができる。例えば、塗布法によるコーティング法は、例えば、アルコール、クロロホルム、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド等の適当な有機溶媒に本発明の抗血栓性材料を溶解したコーティング液に、基材を浸せきした後、余分な溶液を除き、ついで風乾させるなどの簡単な操作で実施できる。また、コーティング後の基材に熱を加え乾燥させることも好ましい。これにより、基材と本発明の抗血栓性材料との接着性をより高め、より強固に固定することができる。
 有機溶媒としては、基材である医療機器にできる限り損傷を与えないものが選択され、具体的にはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、アセトン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、1、4-ジオキサン、シクロヘキサノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が使用されるが、この中でも沸点が低く、コーティング後の乾燥が容易なメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールがより好ましい。
 本発明のアルキル(メタ)アクリレート及び/又はシリコーン(メタ)アクリレートとメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートとを共重合することにより得られる(メタ)アクリレート共重合体は、親水性と疎水性が適度にバランスされているので、血液適合性材料として好適に使用することができる。特に、シリコーン(メタ)アクリレートを特定の範囲含有する(メタ)アクリレート共重合体は、血中タンパク等の吸着や粘着を抑制することができるため、医療機器や人工臓器の処理材料として好適に使用することができる。また、本発明の(メタ)アクリレート共重合体は、単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。
 本抗血栓性材料を用いて処理を行った医療機器が血液と接触した際、親水性の高いメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが表面に張り出して抗血栓性を発揮し、また疎水性(メタ)アクリレートは基材近傍に留まることによって血液と医療機器が直接接触することを防いでいるものと考えられる。
 本抗血栓性材料の血中溶出に対する耐久性を確認する方法として、室温下のアルコール浸漬処理が挙げられる。メタノールとエタノールの混合溶媒を用いるのが好ましい。メタノールとエタノールを質量比で80/20で混合した溶媒は、血液の溶出力よりも若干強いため、抗血栓性材料を前記混合溶媒に16時間浸漬させることにより、抗血栓性の持続性を評価することができる。
 本発明において、(メタ)アクリレート共重合体は、メタノールに溶解せず、エタノールに溶解する性質を有する。37℃の血液接触30日後の耐久性(抗血栓性の持続性)を確認するためのアルコール浸漬処理液としてメタノールとエタノールを所定の比率で混合すると16時間という短い時間でも37℃の血液接触30日後の耐久性を確認することができる。アルコール浸漬処理液中のメタノールとエタノールの質量比は90~60:10~40が好ましく、90~70:10~30がより好ましい。なお、後述する評価用シートを用いた試験において、血餅の付着が少なく、すなわち溶剤浸漬後の血餅付着数を確認した評価用シートが10枚中1枚以下であり、かつ(メタ)アクリレート共重合体が0.1μg/cm以上残存していれば十分な耐久性があると判断できる。
 本発明において、(メタ)アクリレートの血液適合性評価方法の一つとして、血液凝固試験が挙げられる。具体的には、血漿中のフィブリンがカルシウムイオンによってゲル化し、フィブリンゲルになる反応を利用するものである。サンプルと接触したカルシウムイオン添加血漿において、水へ浸漬後の血餅付着の有無を確認することで、ポリマーの血液適合性を確認することができる。血餅付着が少ないほど血液適合性が高いことを意味する。後述する評価用シートを用いた評価において、血餅付着が確認された評価用シートが10枚中4枚以下であれば血液適合性が良好であると判断できる。
 本発明において、試料のコート量を算出する方法としてNMRによる定量が挙げられる。具体的には、試料をコートした基材をエタノールで抽出し、その抽出液を乾固後、NMR測定し該当ピークの面積からコート量を算出する方法である。アルコール浸漬処理前後のコート量を比較することで、耐久性を評価することができる。99.5質量%エタノールに評価用シートを浸漬した後の(メタ)アクリレート共重合体の残存量が3.0μg/cm以上であれば、血液接触初期の抗血栓性を十分発現可能と判断できる。
 本発明の抗血栓性材料により表面の少なくとも一部が被覆された医療機器は、優れた抗血栓性を発現することができる。そのような医療機器としては、例えば、血液フィルター、血液保存容器、血液回路、留置針、カテーテル、ガイドワイヤー、ステント、人工肺装置、透析装置、癒着防止材、創傷被覆材、生体組織の粘着材、生体組織再生用の補修材が挙げられる。特に、体外循環回路を有し、そこに血液接触部を有する医療機器が好ましい態様である。
 ここで、医療機器の基材としては通常使用される全ての材料が含まれる。すなわち、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-4-メチルペンテン-1、熱可塑性ポリエーテルポリウレタン、熱硬化性ポリウレタン、架橋部を有するポリジメチルシロキサン等のシリコーンゴム、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアセタール、ポリスチレン、ABS樹脂およびこれらの樹脂の混合物、ステンレス、チタニウム、アルミニウム等の金属などが挙げられる。本発明の抗血栓性材料は、材料組成、分子量、粘性等をバランスさせていることに加えて、コーティング条件を適正化しているため、コーティングを施す材料、形状、表面性状等によらず均一、強固にコーティングすることが可能となっている。
 本発明において、抗血栓性材料を医療機器に担持させるための方法は特に限定されないが、例えば、有機溶媒等に該抗血栓性材料を溶解または分散させた処理液に医療機器を浸漬したのち、加熱するなどして溶媒を除去すればよい。該処理液中の(メタ)アクリレート共重合体の濃度は0.001質量%以上10質量%以下であることが好ましい。(メタ)アクリレート共重合体の濃度が低すぎると、例えば医療機器に適用した場合に十分に性能が発現しない可能性があるため、0.01質量%以上であることがより好ましい。また、濃度が高すぎると、溶液粘度が上昇しすぎて作業性が低下する恐れがあるために5質量%以下であることが好ましい。
 以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(アルコール可溶性の評価)
 50mLバイアル中に試料1gを加えた後、エタノール99gを加え、十分混和させた。30分後、目視により溶解を確認した。エタノール不溶物が目視できなかった場合は○(良)と判断し、エタノール不溶物が目視できた場合は×(不良)と判断した。
(水不溶性の評価)
 アルコール可溶性○(良)と判断した溶液に水100gを加え混和した。30分間混和を継続しても白濁が解消しなかった場合は○(良)と判断し、30分間混和を継続すると白濁が解消した場合は×(不良)と判断した。
(重量平均分子量の測定)
 試料15mgをバイアル瓶に秤量し、GPC測定用移動相を3.0mL加えて一夜静置した。この溶解液を0.45μmの親水性PTFEメンブレンフィルターカートリッジ(Millex-LH、日本ミリポア社)でろ過した。GPC測定には515 HPLCポンプ、717plus自動注入装置(日本ウォーターズ社)を用い、カラムは2×PLgel 5μMIXED-D,7.5×300mm(アジレント・テクノロジー社)を用いた。カラム温度は40℃で行い、移動相は安定剤としてジブチルヒドロキシトルエンを含んだ液クロ用テトラヒドロフラン(富士フイルム和光純薬社)を用いた。RIにて検出を行い、20μL注入した。分子量校正は単分散ポリスチレン(Easi Cal PS-1, アジレント・テクノロジー社)で行った。
(還元粘度の測定)
 ガラス瓶に試料1gを測り取り、アセトン(富士フイルム和光純薬社)15mLを加えた。20分に1回手で振り混合させた。1~2時間後、溶解していることを目視で確認し、25mLのメスフラスコに移した。共洗いを行った後、アセトンを加え25mLとなるように調製した。その後、5μm径のフィルター(Merck社)でろ過を行ったものを試験溶液とした。粘度計定数C=0.003426(cSt/s)のウベローデ粘度計を使用し、30℃における試料溶液およびアセトンの落下時間を測定し、以下の式1により還元粘度を算出した。
 (A/B-1)/C=(A/B-1)/(S/25×100)=(A/B-1)/(S×4)
  A:試料溶液の落下秒数(秒)
  B:アセトンの落下秒数(秒)
  S:検体重量(g)
  C:試料溶液濃度(g/dL)
(質量減少の測定)
 105℃に設定した電気炉中に秤量瓶を入れて、30分乾燥させた。その後、デシケーター内で20分間放冷し、秤量瓶の質量を測定した。秤量瓶に試料0.5gを測り取った。同様に105℃に設定した電気炉中に秤量瓶を入れて、2時間乾燥させた。その後、デシケーター内で20分間放冷し、秤量瓶の質量を測定した。得られた各秤量瓶の質量から質量減少(%)を算出した。質量減少(%)が5%以下であれば試料が十分乾燥できたと判断した。
(残留モノマー量の測定)
 試料0.2gをアセトン(富士フイルム和光純薬社)2mLにて溶解後、適宜希釈した後GC測定により残留モノマーを定量した。測定装置はGC-2010Plus(島津社)を使用し、カラムはRtx-5(ジーエルサイエンス社)を使用した。注入口温度は150℃、検出器温度は280℃、オーブン温度は40℃に設定した。残留モノマーが4,000ppm以下であれば十分精製できたと判断した。
(共重合組成比の測定)
 試料20mgを1mLの重クロロホルムに溶解し、400MHz超電導フーリエ変換核磁気共鳴装置(400-MR、Agilent社)にてH-NMR測定を行った。
(評価用シートの作製)
 計100gとなるように試料にエタノールを加えて溶解することで、各濃度のエタノール溶液を調製し、処理液を得た。調製した濃度は表2に示した各濃度の試料である。処理液中にポリカーボネートシート(4cm×2cm×0.1cm)の半面部分(2cm×2cm×0.1cm)を10秒浸漬した後、ポリカーボネートシートを取り出し10mL/minの流量のエアで両面30秒ずつ乾燥させた。その後、室温で16時間乾燥させ、評価用シートとした。
(血液凝固試験)
 ウサギ保存血液(型番:003-00053-01ジャパンバイオ・シーラム社)800μLを15mLの遠沈管へ添加した。80mM塩化カルシウム溶液66.6μLを加え、よく撹拌したものを試験血液溶液とした。評価用シートをプラスチックシャーレ上に置いた。プラスチックシャーレを37℃に設定した水浴上に置いた。評価用シートの未処理部分および処理部分に試験血液溶液を200μL添加した。その後37℃で25分間インキュベートした。インキュベート後の評価用シートを100mLの生理食塩液(大塚製薬社)中に沈め、軽く振とうした。生理食塩液から引き上げた評価用シート表面の血餅付着数を確認した。血餅付着が確認された評価用シートが10枚中4枚以下であれば血液適合性が良好と判断した。
(コート定量試験)
 評価用シートをエタノール(99.5質量%)5mLに30分浸漬し抽出液を得た。得られた抽出液に40℃で窒素ガスを吹き付け、エタノール臭が無くなるまで乾固した。この操作を3回繰り返した。得られた乾固物全量にイソフタル酸ジメチル0.13mgを添加した後、0.6mLの重クロロホルムに溶解し、30℃でH-NMR測定を実施した。得られたピーク面積からコート量を計算した。コート量は下記式を用いて算出した。
 コート量=C×218.023×B×1000000÷19400÷A
  A:試料重量
  B:ジメチルイソフタレート重量
  C:1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン由来ピークの積分値を100とした時の、メトキシトリエチレングリコールアクリレート由来ピークの積分値
(アルコール浸漬処理試験)
 評価用シートをアルコール浸漬処理液(メタノール:エタノール=80質量%:20質量%)150mL中に16時間浸漬させた。浸漬後、十分に乾燥した評価用シートに対して、上記の血液凝固試験、コート定量を同様に行った。
(実施例1)
 メトキシトリエチレングリコールアクリレート(MTEGA)(新中村化学工業社)471.8gおよびシリコーンメタクリレート(PDMSMA)(Gelest社、製品名;MCR-M11)78.0gおよび2-エチルヘキシルアクリレート(EHA)(東亜合成株式会社)694.5gにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(富士フイルム和光純薬株式会社)1.2325gを加え、エタノール(キシダ化学株式会社)1628.3g中で85℃、3時間の条件で重合反応を行った。重合反応終了後85℃、2時間の条件で常圧乾燥した。その後60℃、1時間の条件で減圧乾燥して濃縮物を得た。濃縮物を濃縮物Aと濃縮物Bに二等分した。次に濃縮物A612.1gにメタノール(キシダ化学株式会社)3162.7gおよび水305.3g加え、30分間撹拌した。撹拌終了後1.5時間静置し、デカンテーションにより上清を除去した。この沈殿にメタノールを加えて30分間攪拌し、1.5時間静置後デカンテーションにより上清を除去する作業を同様に3回繰り返し、沈殿Aを得た。使用したメタノールの添加量は順に3161.7g、3161.4g、3163.9gであった。同様に、濃縮物B 614.4gにメタノール3162.3g、水303.1g加え、30分間撹拌した。撹拌終了後1.5時間静置し、デカンテーションにより上清を除去した。この沈殿にメタノールを加えて30分間攪拌し、1.5時間静置後デカンテーションにより上清を除去する作業を同様に3回繰り返し、沈殿Bを得た。使用したメタノールの添加量は順に3165.5g、3167.5g、3165.4gであった。得られた沈殿A及び沈殿Bを一つにまとめ、40℃、1.5時間の条件で減圧乾燥して共重合体1を得た。
(実施例2)
 メトキシトリエチレングリコールアクリレート(MTEGA)(新中村化学工業社)94.25gおよびシリコーンメタクリレート(PDMSMA)(Gelest社、製品名;MCR-M11)15.59gおよび2-エチルヘキシルアクリレート(EHA)(東亜合成株式会社)138.68gにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(富士フイルム和光純薬株式会社)0.2469gを加え、エタノール(キシダ化学株式会社)165.18g中で85℃、3時間の条件で重合反応を行った。重合反応終了後85℃、1時間の条件で常圧乾燥した。その後60℃、1.5時間の条件で減圧乾燥して濃縮物を得た。濃縮物を濃縮物Aと濃縮物Bに二等分した。次に濃縮物A122.51gにメタノール(キシダ化学株式会社)631.97gを加え、60℃で30分間撹拌した。撹拌終了後1.5時間静置し、デカンテーションにより上清を除去した。この沈殿にメタノールを加えて60℃で30分間攪拌し、1.5時間静置後デカンテーションにより上清を除去する作業を同様に3回繰り返し、沈殿Aを得た。使用したメタノールの添加量は順に631.98g、632.03g、632.05gであった。同様に、濃縮物B122.50gにメタノール631.99gを加え、60℃で30分間撹拌した。撹拌終了後1.5時間静置し、デカンテーションにより上清を除去した。この沈殿にメタノールを加えて60℃で30分間攪拌し、1.5時間静置後デカンテーションにより上清を除去する作業を同様に3回繰り返し、沈殿Bを得た。使用したメタノールの添加量は順に631.98g、632.00g、632.01gであった。得られた沈殿A及び沈殿Bを一つにまとめ、沈殿を85℃、30分の条件で常圧乾燥し、その後40℃、1時間の条件で減圧乾燥して共重合体2を得た。
(比較例1)
 メトキシトリエチレングリコールアクリレート(MTEGA)(新中村化学工業社)94.25gおよびシリコーンメタクリレート(Gelest社、製品名;MCR-M11)15.59gおよび2-エチルヘキシルアクリレート(EHA)(東亜合成株式会社)138.68gにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(富士フイルム和光純薬株式会社)0.247gを加え、エタノール(富士フイルム和光純薬株式会社)165.18g中で85℃、3時間の条件で重合反応を行った。重合反応終了後85℃、1時間の条件で常圧乾燥した。その後60℃、1.5時間の条件で減圧乾燥して濃縮物を得た。濃縮物にメタノール(富士フイルム和光純薬株式会社)696.35gを加え、30分撹拌した。撹拌終了後1時間静置し、上清をデカンテーションにより除去した。沈殿を85℃、30分の条件で常圧乾燥し、その後40℃、1時間の条件で減圧乾燥して共重合体3を得た。
(比較例2)
 メトキシトリエチレングリコールアクリレート(MTEGA)(新中村化学工業社)94.27gおよびシリコーンメタクリレート(PDMSMA)(Gelest社、製品名;MCR-M11)15.60gおよび2-エチルヘキシルアクリレート(EHA)(東亜合成株式会社)138.66gにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(富士フイルム和光純薬株式会社)0.2465gを加え、エタノール(キシダ化学株式会社)580.03g中で85℃、3時間の条件で重合反応を行った。重合反応終了後85℃、1時間の条件で常圧乾燥した。その後60℃、1.5時間の条件で減圧乾燥して濃縮物を得た。濃縮物を濃縮物Aと濃縮物Bに二等分した。次に濃縮物A122.53gにメタノール(キシダ化学株式会社)632.00gを加え、室温で30分間撹拌した。撹拌終了後1.5時間静置し、デカンテーションにより上清を除去した。この沈殿にメタノールを加えて室温で30分間攪拌し、1.5時間静置後デカンテーションにより上清を除去する作業を同様に3回繰り返し、沈殿Aを得た。使用したメタノールの添加量は順に632.09g、632.09g、632.32gであった。得られた沈殿Aを85℃、30分の条件で常圧乾燥し、その後40℃、1時間の条件で減圧乾燥して共重合体4を得た。
 表1、2に示したように、還元粘度及び重量平均分子量が高い実施例の共重合体を使用して評価用シートを作製するとアルコール浸漬処理後の血液凝固試験で良好な結果が得られた。実施例の共重合体は、従来の(メタ)アクリレート共重合体よりも還元粘度が大きいため、コート厚みがより均一になると推測される。そのメカニズムを表3に示す。
 すなわち、実施例の共重合体をコートするとエタノール除去時にコート上面に付着する空気中の水が非局在化するためコート厚みが均一になる。その後のアルコール浸漬処理によりコートできていない面(コーティング斑等の欠陥)の発生を抑制することができた結果と推測する。ひいては十分な血中溶出に対する耐久性を保持していることが分かった。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000010
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000011
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000012
 本発明において、室温で16時間のアルコール浸漬処理後も良好な血液適合性を示すことがわかった。この結果、従来の抗血栓性材料に比較して、さらに長期間の血液適合性を維持可能であることが示された。
 本発明の共重合体は、血液適合性に優れ、かつ、親水性の高い材料として用いることができる。また材料としての物性が水に不溶な粘性物質であるため医用機材の物性を損なうことなく血液回路全体にコーティングできる材料を提供できる。したがって、産業の発展に寄与することが大である。
 
 

Claims (2)

  1.  下記一般式1で示されるアルキル(メタ)アクリレート単位及び下記一般式2で示されるシリコーン(メタ)アクリレート単位及び下記一般式3で示されるメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート単位を80~20/10~0.01/10~79.99のモル比で共重合させた、重量平均分子量が50,000以上1,500,000以下である(メタ)アクリレート共重合体であって、水不溶性(ここで、水不溶性であるとは、(メタ)アクリレート共重合体を該共重合体1質量%に対して99質量%の37℃生理食塩水に30日間静置した際、該共重合体の質量減少率が1質量%以下であることを指す)で、かつ室温で粘性液状であり、炭素数1~6のアルコールのいずれかに可溶であり、残留モノマー量が4,000ppm以下であり、還元粘度(ηsp/c)が0.18dl/g以上3.00dl/g以下である(メタ)アクリレート共重合体を含むことを特徴とする抗血栓性材料。
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
    (式中、Rは炭素原子数8~12のアルキル基、Rは水素原子またはメチル基を示す)
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000002
    (式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素原子数1~6のアルキレン基、Rは炭素数1~6のアルキル基、nは1~30の整数を示す)
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000003
    (式中、Rは水素原子またはメチル基、nは2~4の整数を示す)
  2.  請求項1に記載の抗血栓性材料を含むことを特徴とする医療機器。
     
     
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