WO2022191095A1 - 二酸化炭素ガスの中和処理システム及び二酸化炭素ガスの中和処理方法 - Google Patents

二酸化炭素ガスの中和処理システム及び二酸化炭素ガスの中和処理方法 Download PDF

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Abstract

大規模かつ経済性を持って二酸化炭素を直接削減することができる、二酸化炭素ガスの中和処理システム及び二酸化炭素ガスの中和処理方法を提供する。本発明の二酸化炭素ガスの中和処理システムは、電解装置と、二酸化炭素処理装置と、酸性液中和装置と排出装置とを含む。前記電解装置が、電解液とカソード電極とアノード電極と隔膜とを有し、前記電解液が塩化ナトリウムを含む水溶液である。前記電解装置において前記電解液を電解し、前記電解装置の前記カソード側において、塩基性の第一水溶液を生成し、前記電解装置の前記アノード側において、酸性の第二水溶液を生成する。本発明の二酸化炭素ガスの中和処理システムにおいて、二酸化炭素吸収のエネルギー原単位が、少なくとも前記電解装置で用いる電力の発電設備の二酸化炭素排出のエネルギー原単位よりも大きいことを特徴とする。

Description

二酸化炭素ガスの中和処理システム及び二酸化炭素ガスの中和処理方法
 本発明は、二酸化炭素ガスの中和処理システム及び二酸化炭素ガスの中和処理方法に関する。
 本願は、2021年3月10日に、日本に出願された特願2021-038494号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
 パリ協定に従い2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロを目指す必要があるがその実現は簡単では無い。二酸化炭素排出実質ゼロのためには、省エネやゼロエミッションだけでなく、二酸化炭素のネガティブエミッションの技術が必要になる。二酸化炭素排出量は膨大であり、大規模性と経済合理性、現実性のある革新技術が求められている。太陽光発電や風力などの再生可能エネルギーは最も期待されているが、まだ経済性は低く、電力貯蔵が難しく、変動が激しい、稼働率が低いなどために利用形態が限定される。CCS(二酸化炭素の高深度地下貯留)はネガティブエミッションの切り札であるが、その大規模実用化は環境保護など考慮も必要であり未知数である。DACCS(空中二酸化炭素固定)やBECCS(バイオマスCCS)もCCSの実現が前提である。CCU(カーボンリサイクル)は直接二酸化炭素のネガティブエミッションにつながらない。バイオマス利用は植物の光合成速度や効率が律速である。再エネ電力を利用した水電解や二酸化炭素電解還元も非常にコストが高く、且つそれ自体はネガティブエミッションではない。
 これまで世界中の英知を結集してこの地球温暖化問題に取り組まれてきたが、二酸化炭素排出実質ゼロにする決定的な方法は見いだされていないのが現状である。二酸化炭素の問題の難しさは、部分的な最適解だけでは地球全体として解決できないことである。例えば、二酸化炭素を回収やリサイクルするための技術の裏で、分離して純度を上げたり、還元用の膨大な水素や電力が必要など、途中や他の所で膨大な二酸化炭素を排出している可能性もある。つまり、首尾一貫したトータルシステムで、二酸化炭素削減につながり、本当にゼロエミッションになるかどうかを考慮する必要がある。また、1つの国や地域では完結できない方法では、連係協力の協議が難しい場合がある。
 二酸化炭素ガスを固定する技術として、塩基性物質、特に塩基性鉱物による中和反応を利用した風化促進がある。地球全体で見れば、塩基性鉱物を含む塩基性物質の総量は膨大であり、人類の社会活動から発生する二酸化炭素を十分に吸収できる。しかし、鉱物の風化促進の速度は非常に遅い欠点がある。固体表面だけ炭酸塩になってもバルク内部までの中和にはかなり時間がかかり、また微細化にも限界がある。単純な風化促進はその有効性の検証自体が難しい。塩基性鉱物の岩盤への二酸化炭素ガス注入はまさにCCSとほぼ類似であるが、適地と処理量、処理速度は非常に限定される。
 近年の急激な二酸化炭素ガスの増加を抑制するには、喫緊の大規模性および経済合理性のある革新技術が必要である。二酸化炭素はNaOH等のアルカリ金属水酸化物とはすぐに反応するが、試薬レベルのNaOH利用は高価である。NaOHは海水電解でCl生成を伴って製造される。大規模にNaOHで二酸化炭素を反応させると、毒性や腐食性のあるClガスが大量に余剰になる問題がある。ガス状態では蓄積保管できない。Clは水に溶解するとHClOを生成し、一部殺菌剤などでは有用化学品として有効であるが、大量生成した場合には低濃度でも環境への影響が大きいのでそのままでは外部環境に廃棄できない。カソード側からの水素とClを反応させてHClを生成する方法もあるが、電力およびHの消費分は不利になる面も含めて考慮する必要がある。また、その電解に用いる電力が二酸化炭素排出する火力発電所由来であると全体として二酸化炭素増加する等の矛盾を生じる可能性がある。電解用の電力が再エネ由来では、その電力が高価であり、かつ電解稼働率(設備利用率)が上がらずにさらに経済性がなくなる。再エネ電力の水電解で水素製造する方法は、水素製造コストが高く、輸送と利用も含めて水素利用インフラが普及しないジレンマがある。
 太陽光発電の場合は、日本では14%、サンベルト地帯でも20%程度である。風力発電の場合は、20-30%程度である。そのために連続運転は難しい。連続運転するために蓄電と組み合わせる方法もあるが、コスト高になる。稼働率が低くても、再エネ電力のみで稼働すれば、運用中の二酸化炭素排出は見かけ上は非常に低くでき、ネガティブエミッションも可能であるが、経済性を成り立たせるのが難しい。DACCSや太陽光発電と水電解の組み合わせのように、ネガティブエミッションであっても、コストが非常に高い場合は普及が難しい。二酸化炭素の地球温暖化問題はもはや経済性の問題でもあり、その両立は非常に重要である。
 二酸化炭素のネガティブエミッションとポジティブエミッション技術は、相対的な比較だけの意味ではなく、得られる結果が全く異なる。少しでもネガティブエミッションであれば、大量導入することで、膨大な二酸化炭素削減になる可能性がある。一方で、少しでもポジティブエミッションであれば、大量導入することで、膨大な二酸化炭素排出になる。稼働率をできるだけ高くして、かつネガティブエミッションになるアイデアが求められている。
 例えば、非特許文献1では、以下の方法を開示している。多孔質膜を隔膜に用い、NaSO水溶液を電解し、カソードでは水素ガスとNaOH水溶液を生成させ、アノード側で水から酸素と硫酸水を発生させるとともに、アノード槽に直接塩基性鉱物を入れて中和をしている。NaOH水溶液には後から空気を吹き込んで、空気中の二酸化炭素とNaOHの中和で炭酸のアニオンに変換している。
 また、特許文献1では、以下の方法を開示している。塩化ナトリウム電解でNaOHとHClOを生成させている。NaOHは目的の製造する有価物として考えている。HClOは火力発電所の焼却灰のカルシウムをCa(ClO)経由でCaClとして回収することで経済性の向上を考えている。
 特許文献2-5では、以下の方法を開示している。海水電解においてできるだけ低電圧でNaOHを製造し、排ガス中の二酸化炭素ガスを炭酸塩にし、その後にHClと反応させて、純粋な二酸化炭素ガスを回収する目的の特許発明を開示している。アノード側の生成物としてはClまたは、カソード側で発生するHと反応させてHClにしている。二酸化炭素ガスのメチルアミン回収法と比較している。また、石炭火力発電所から排出される二酸化炭素に対して、海水電解して、二酸化炭素回収のためのポンプ等の電力消費の二酸化炭素も含めて計算し、二酸化炭素回収部分としては二酸化炭素排出にならない(部分的なネガティブエミッション)ことを試算している。
特開2006―137620号公報 特開2016-172252号公報 特開2011-25241号公報 特表2008-514406号公報 国際公開第2014/006742号
Direct electrolytic dissolution of silicate minerals for air CO2 mitigation and carbon-negative H2 production, PNAS, 18, 2013, 10095-10100; https://doi.org/10.1073/pnas.1222358110。
 しかし、非特許文献1の方法では、カソード側で水素生成する電位の影響で、電解電圧が3.5V以上と高く、消費電力が大きい欠点がある。この実験値では火力発電の中で二酸化炭素排出の少ないLNG火力の電力を使っても、二酸化炭素排出が逆により多くなる。原料のNaSOの利用は、Clは生成しないが、賦存量および経済性の観点で塩化ナトリウムよりも劣る。海水利用の概念も触れているが、酸性水に変換する具体的な方法を示していない。化石燃料では無い再生可能エネルギーの電力の利用を想定しているが、その稼働率が高くならない問題に対しては解決手段を提示していない。二酸化炭素が本当に削減されるのかの条件や想定も不明確である。実際に、電圧や電流効率が悪いために、実験的には二酸化炭素がネガティブエミッションになっていない。
 また、特許文献1では、CaClをさらにCaCOで回収するために、NaOHに二酸化炭素を反応させてNaCOにして、そのNaCOとCaClを反応させる複雑なシステムである。全体の目的としては二酸化炭素の回収システムの位置づけであり、回収した二酸化炭素をどうするか(外部環境への排出を含めた最終的な処理)についての考慮はされていない。全体として生成物収支が合っておらず、火力発電所からの二酸化炭素排出も含めてゼロエミッションやネガティブエミッションになっていない。
 特許文献2-5では、二酸化炭素を回収しただけのシステムでは、回収した二酸化炭素をどうするかについての考慮はされていなく、その二酸化炭素を最後にどうするのかという考慮に欠けている。同時に生成しているはずのHClやClの全体としての生成物収支が合っていない。なお、「鉱物」という表現が入っているが、NaOHと二酸化炭素と反応させて沈降する炭酸塩のことを明確に示しており、塩基性鉱物などの利用については全く言及が無い。
 以上のように、稼働率を高くした状態で、システム全体として、なお、二酸化炭素ガスの回収までではなく、二酸化炭素ガスの外部環境への中和処理までを含み、二酸化炭素のネガティブエミッションを実現する方法が開示されていない。
 本発明は、上記のような課題を解決するものであり、地球温暖化の原因となる二酸化炭素ガスの長期固定化を可能にする一貫統合型システムの技術を提供することを課題としている。パリ協定および日本政府の2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロという目標に貢献する、革新的な経済性の高いネガティブエミッション技術を提供するものである。また、本発明の一実施形態では、特に塩基性鉱物の中和反応を用いた本質的な二酸化炭素吸収促進処理についての技術である。
 発明者は、上記の中和反応を利用するネガティブエミッション技術に関して、多くの問題を同時に解決する方法として、様々な技術の組み合わせパターンや運用を考慮しながら、経済性やLCA試算を行って、もっとも現実的な二酸化炭素削減のシステムを開発した。生成する酸や塩基性の水溶液の純度は低くても問題無い。本発明の手法は一つの国や地域で完結しやすい技術である。ある一定の方法を一定の条件で実施することが明確化し、ネガティブエミッションシステムの実現に貢献できる。
 本発明は、これらの知見に基づいて完成に至ったものであり、具体的には以下のことを特徴としている。
〔1〕 電解装置と、二酸化炭素処理装置と、酸性液中和装置と排出装置とを含む、二酸化炭素ガスの中和処理システムであって、
 前記電解装置が、電解液とカソード電極とアノード電極と隔膜とを有し、
 前記電解液が塩化ナトリウムを含む水溶液であり、
 前記電解装置において前記電解液を電解し、前記電解装置の前記カソード側において、塩基性の第一水溶液を生成し、前記電解装置の前記アノード側において、酸性の第二水溶液を生成し、
 前記二酸化炭素処理装置において、前記カソード側で生成した前記第一水溶液と二酸化炭素ガスとを中和溶解反応させて炭酸のアニオンを含む第三水溶液を生成し、
 前記酸性液中和装置において、前記アノード側において生成した前記第二水溶液を塩基性物質によって中和して第四水溶液を生成し、
 前記排出装置が、第一排出部と第二排出部を有し、
 前記第一排出部は、前記第一水溶液又は前記第三水溶液を外部環境に排出し、
 前記第二排出部は、前記第二水溶液又は前記第四水溶液を外部環境に排出し、
 二酸化炭素吸収のエネルギー原単位が、少なくとも前記電解装置で用いる電力の発電設備の二酸化炭素排出のエネルギー原単位よりも大きいことを特徴とする、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
〔2〕 前記二酸化炭素吸収のエネルギー原単位が、0.5kg-CO/kWh以上である、〔1〕に記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
〔3〕 前記酸性液中和装置において、前記第二水溶液を中和する前記塩基性物質が、塩基性鉱物または塩基性廃棄物を含むことを特徴とする、〔1〕又は〔2〕に記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
〔4〕 前記二酸化炭素処理装置において、
 前記カソード側において、前記第一水溶液と二酸化炭素ガスとを中和溶解反応させて前記第三水溶液を生成し、前記第三水溶液を外部環境に排出する、又は、
 前記二酸化炭素処理装置が第一貯留区画を含み、前記第一水溶液を前記カソード側から前記第一貯留区画に移送し、前記第一貯留区画において、前記第一水溶液と二酸化炭素ガスとを中和溶解反応させて前記第三水溶液を生成すし、前記第三水溶液を外部環境に排出する、〔1〕~〔3〕の何れかに記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
〔5〕 前記電解装置が、火力発電を含む前記電力を用い、
 前記電解装置を連続運転して、二酸化炭素を中和処理することを特徴とする、〔1〕~〔4〕の何れかに記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
〔6〕 前記電解装置において、電解の稼働率が20%以上であることを特徴とする、〔1〕~〔5〕の何れかに記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
〔7〕 前記酸性液中和装置が第二貯留区画を含み、
 前記アノード側において生成した前記第二水溶液を前記第二貯留区画に移送し、
 前記第二貯留区画において、前記第二水溶液を前記塩基性物質で中和し、中和した水溶液を外部環境に排出する、〔1〕~〔6〕の何れかに記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
〔8〕 電解電圧をXとし、前記発電設備の前記二酸化炭素排出のエネルギー原単位がAとする場合、前記電解電圧と電流効率Q、前記二酸化炭素排出のエネルギー原単位との関係が以下の式(1)で表される、〔1〕~〔7〕の何れかに記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
  1.64×Q/X>A  (1)
(式中、Xの単位がVであり、Aの単位がkg-CO/kWhである。) 
〔9〕 電解電圧をXとし、電解以外の補機および塩基性物質の中和導入による二酸化炭素排出のエネルギー効率をZとして、システム全体の二酸化炭素エネルギー効率をCEEとし、電解で用いる電力の発電設備の二酸化炭素排出のエネルギー原単位がAとする場合、その関係が以下の式(4)で表される、〔1〕~〔8〕の何れかに記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
  CEE = (X/1.64×Q)+Z < (1/A)  (4)
(式中、Xの単位がVであり、Z及びAの単位がkg-CO/kWhである。)
〔10〕 前記隔膜がイオン交換膜である、〔1〕~〔9〕の何れかに記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
〔11〕 更に、酸素還元装置を含み、
 前記電解装置のカソード側で、前記酸素還元装置を用いて、酸素を含むガスを供給し、酸素還元を行う、〔1〕~〔10〕の何れかに記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
〔12〕 前記電解装置において、前記カソード側の水溶液に、前記二酸化炭素処理装置から供給した二酸化炭素を接触して、炭酸水素イオンを生成させることを特徴とする、〔1〕~〔11〕の何れかに記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
〔13〕 更にセンサーを含み、
 前記センサーが、前記第二水溶液を中和するため、pHをモニターする第一センサー、又は、溶解物の組成をモニターする第二センサーを有する〔1〕~〔12〕の何れかに記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
〔14〕 前記第二貯留区画が2つ以上の貯留分区画を有し、
 前記2つ以上の貯留分区画が、酸濃度の順に2つ以上の多段階でつながっている、および、前記2つ以上の貯留分区画に対して、塩基性物質を添加する装置が2つ以上の多段でつながっている、〔1〕~〔13〕の何れかに記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
〔15〕 前記イオン交換膜を前記アノード電極の表面上にまたは前記アノード電極の近傍に配置する、〔1〕~〔14〕の何れかに記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
〔16〕 前記酸素還元装置を用いて、前記アノード側で生成する高純度の酸素を、前記カソード側に送ることを特徴とする、〔11〕~〔15〕の何れかに記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
〔17〕 前記アノード側で生成する高純度の酸素を火力発電設備に送ることを特徴とする、請求項1~16の何れか1項に記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
〔18〕 前記塩基性鉱物または塩基性廃棄物がFe2+、V4+、Mn2+を含み、 前記第二貯留区画の前記第二水溶液で前記塩基性鉱物または塩基性廃棄物を溶解し、副製するClの酸化された化合物をその溶解水溶液に接触させて還元してHClに変換する、〔7〕~〔17〕の何れかに記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
〔19〕 前記塩基性鉱物または塩基性廃棄物がR物質であり、
 前記R物質は、R鉱物、R鉱物以外の鉄鋼スラグ、或いはR鉱物以外のセメント廃材を含む物質であり、
 前記第二貯留区画の前記第二水溶液でR物質を溶解し、電解反応を劣化させる物質を除去してから、R元素としてFe2+、V4+、Mn2+のイオンを含む溶液を電解装置のアノード側に導入して電解電圧を低下させる、〔7〕~〔18〕の何れかに記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
〔20〕 電解工程と、二酸化炭素処理工程と、酸性液中和工程と排出工程とを含む、二酸化炭素ガスの中和処理方法であって、
 前記電解工程が、電解液とカソード電極とアノード電極と隔膜とを有する電解装置を用い、
 前記電解液が塩化ナトリウムを含む水溶液であり、
 前記電解工程において前記電解液を電解し、前記電解装置の前記カソード側において、塩基性の第一水溶液を生成し、前記電解装置の前記アノード側において、酸性の第二水溶液を生成し、
 前記二酸化炭素処理工程において、前記カソード側で生成した前記第一水溶液と二酸化炭素ガスとを中和溶解反応させて炭酸のアニオンを含む第三水溶液を生成し、
 前記酸性液中和工程において、前記アノード側において生成した前記第二水溶液を塩基性物質によって中和して第四水溶液を生成し、
 前記排出工程が、第一排出サブ工程と第二排出サブ工程を有し
 前記第一排出サブ工程は、前記第一水溶液又は前記第三水溶液を外部環境に排出し、 前記第二排出サブ工程は、前記第二水溶液又は前記第四水溶液を外部環境に排出し、 二酸化炭素吸収のエネルギー原単位が、少なくとも前記電解工程で用いる電力の発電設備の二酸化炭素排出のエネルギー原単位よりも大きいことを特徴とする、二酸化炭素ガスの中和処理方法。
 本発明によれば、二酸化炭素吸収のエネルギー原単位が、電解装置で用いる電力の発電設備の二酸化炭素排出のエネルギー原単位よりも大きい、二酸化炭素ガスの中和処理システムができる。従来技術に比べて経済性のあるネガティブエミッションの現実性が向上できることを見いだした。
 また、本発明者らは、上記の組み合わせシステムの一実施例態様では、電解電圧が低下したり、副反応が抑制されたりなど、経済合理性が向上できることを見出した。二酸化炭素問題の対策システムは、複雑に工程を組み合わせるほど逆に二酸化炭素排出が多くなることが多いが、本発明ではネガティブエミッションの運用の最適条件があることを見いだすことができた。
本発明の一実施形態にかかる二酸化炭素ガスの中和処理システムの概念図である。
 以下、本発明の実施形態にかかる二酸化炭素ガスの中和処理システムについて、詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限られない。
(用語の説明)
 電流効率(Q)とは、ファラデー効率とも呼ばれ、流れた電子数に対して目的の反応に使われた電子の割合や選択性を示している。本発明の電解での目的反応は塩基(OH-イオン)の生成割合である。通常は0~1の割合数字またはパーセントで表す。中和反応の前に、pHを測定することで電解生成した塩基濃度を評価することができる。反応途中で好ましくない反応が起こると電流効率は低下する。例えば、酸と塩基が途中で混合すると塩基生成の電流効率は低下する。
 二酸化炭素排出のエネルギー原単位とは、エネルギー効率を表す値であり、単位量の製品や額を生産するのに必要な電力、熱(燃料)などエネルギー消費して排出される二酸化炭素の量のことであり、二酸化炭素排出係数とも呼ばれる。発電所の場合は、例えば、kg-CO/kWhの単位で表される。
 二酸化炭素吸収のエネルギー原単位とは、二酸化炭素の吸収においてエネルギー効率を表す値であり、単位量の電力などのエネルギーを消費して吸収される二酸化炭素の量のことである。単位はkg-CO/kWhの単位で表される。二酸化炭素吸収のエネルギー原単位は、二酸化炭素排出のエネルギー原単位と逆に、本発明のような、電力を消費して二酸化炭素を吸収しているネガティブエミッション技術に対応する概念である。
(二酸化炭素ガスの中和処理システム)
 本発明の一実施形態の二酸化炭素ガスの中和処理システムは、図1に示すように、電解装置と、二酸化炭素処理装置と、酸性液中和装置と排出装置とを含む。電解装置が、電解液とカソード電極とアノード電極と隔膜とを有し、前記電解液が塩化ナトリウムを含む水溶液である。
 前記電解装置において電解液を電解し、電解装置のカソード側において、塩基性の第一水溶液を生成し、前記電解装置の前記アノード側において、酸性の第二水溶液を生成する。
 前記二酸化炭素処理装置において、前記カソード側で生成した前記第一水溶液と二酸化炭素ガスとを中和溶解反応させて炭酸のアニオンを含む第三水溶液を生成する。
 前記酸性液中和装置において、前記アノード側において生成した前記第二水溶液を塩基性物質によって中和して第四水溶液を生成する。
 前記排出装置が、第一排出部と第二排出部を有し、前記第一排出部は、前記第一水溶液又は前記第三水溶液を外部環境に排出し、前記第二排出部は、前記第二水溶液又は前記第四水溶液を外部環境に排出する。
 本実施形態の二酸化炭素ガスの中和処理システムは、二酸化炭素吸収のエネルギー原単位が、少なくとも前記電解装置で用いる電力の発電設備の二酸化炭素排出のエネルギー原単位よりも大きいことを特徴とする。前記二酸化炭素吸収のエネルギー原単位が、0.5kg-CO/kWh以上であることが好ましく、0.8kg-CO/kWh以上であることがより好ましい。
 本実施形態では、電力源として火力発電所を定格出力の連続運転をしても、ネガティブエミッションになる方法を提供している。電解装置の連続運転とは、保守期間以外はできるだけ長期間の定格近くで運転を続けることで、それによって経済性を向上できる。太陽光発電や風力発電などの変動する再エネに対して火力発電等で調整して平準化できる。近年、太陽光発電や風力発電などの変動する再エネが系統に負荷をかけているが、これを緩和することができる。
<電解装置>
 本実施形態の電解装置は、電解液と、隔膜と、カソード電極と、アノード電極とからなる。電解液がアノード電解液とカソード電解液を含む。隔膜が、電解装置のアノード電解液とカソード電解液を隔てる。本実施形態に係る隔膜としては、イオン交換膜又は多孔質膜などが利用できるが、電解効率や二酸化炭素中和の効率の向上のためにはイオン交換膜が好ましい。特にカソード側との間にはアルカリ金属イオンを透過するカチオン交換膜、さらに1価カチオンの選択透過膜の利用が好ましい。想定外の電子やイオンの移動があると、流れた電流が酸塩基生成に使われなくなり、電流効率が低下する。多孔質膜を使う場合は好ましく無いイオンの流れを防ぐために、例えば塩基性水溶液が酸性水溶液と混合しないように一方方向の水の流れを作るなどの工夫が必要である。また、アノード側に更にアニオン交換膜を配置することも電流効率の向上には好ましい。バイポーラ膜を使うこともでき、全体はシンプルになる長所はあるが、電圧が高くならない工夫が必要になる。電流効率は少なくとも70%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは100%に近いほど良い。
<電力源>
 本実施形態の二酸化炭素ガスの中和処理システムの電力源は、特に制限されなく、例えば、二酸化炭素ガスを発生する火力発電所が挙げられる。
 火力発電所としては、石炭や石油、天然ガス等の化石資源を原料とするので、二酸化炭素を膨大に排出する問題がある。火力発電所は出力変動させることもできるが、連続定格出力の運転する方が効率的で経済性も向上する。
<電解液>
 本実施形態にかかる電解液である、塩化ナトリウムを含む水溶液は、海水や塩水が利用できる。従来の海水でのクロロアルカリ法電解と同じ程度の原料の精製技術が使える。電解質濃度は0.1M以上、抵抗を下げるために好ましくは0.5M以上、より好ましくは1M以上またはその塩の飽和濃度である。濃度は溶解する範囲でできるだけ高い方よいため、5M以上がさらに好ましい。
<二酸化炭素処理装置>
 本実施形態に係る二酸化炭素処理装置において、前記電解装置の前記カソード側において、前記第一水溶液と二酸化炭素ガスとを中和溶解反応させて前記第三水溶液を生成し、前記第三水溶液を外部環境に排出してもよい。または、前記二酸化炭素処理装置が第一貯留区画を含み、前記第一水溶液を前記カソード側から前記第一貯留区画に移送し、前記第一貯留区画において、前記第一水溶液と二酸化炭素ガスとを中和溶解反応させて前記第三水溶液を生成すし、前記第三水溶液を外部環境に排出してもよい。
 前記電解装置が、火力発電所の電力を用いる場合、前記電解装置を連続運転して、二酸化炭素を中和処理することができる観点から、本実施形態に係る二酸化炭素処理装置は、前記電解装置の前記カソード側において、前記中和溶解反応をさせて前記第三水溶液を生成することが好ましい。
 前記塩基性の第一水溶液と二酸化炭素ガスとを中和溶解反応して生成した第三水溶液は、炭酸のアニオンを含む。炭酸のアニオンとはHCO やCO 2-のことであるが、形式上、HCOとして水に溶解していても良い。塩基性の第一水溶液のOHと二酸化炭素ガスが中和によりHCO とCO 2-に変化する。第三水溶液を外部環境に排出する場合は、第三水溶液が中性であることが好ましい。HCO とCO 2-の割合はpHで決まるが、中性ほどHCO が多くなる。
 また、本発明の二酸化炭素ガスの中和処理システムは、更にセンサーを含むことが好ましく、このセンサーが、pHをモニターする第一センサー、又は、溶解物の組成をモニターする第二センサーを有してもよい。第三水溶液のpHや組成は適宜センサーなどでモニターすることが好ましい。また、第三水溶液を外部環境に排出する場合、海や湖に流さずに、管理池で貯留したり、水溶液を蒸発して炭酸水素塩の固体として保存しても良い。
 電解のカソード側第一水溶液に二酸化炭素を接触して炭酸水素イオンを生成させる場合、pHがすぐに中和してpHが中性に近くなれば、電解電圧は高アルカリのpH=14より、大幅削減できる利点がある。ただし、二酸化炭素はカソード電極を汚染しないように、多少の不純物除去が必要になる。超高純度化は不要であり、水スクラバーや水バブリング程度で良いので、そのエネルギー消費ロスは小さくすることはできる。高濃度の中性に近いNaHCO水溶液と接触させる場合は、中和した下流のNaHCO水溶液を循環して電解のカソード側水溶液に戻すこともできる。
 二酸化炭素ガスをカソード電極付近に送り込む方法とガス拡散電極の組み合わせでは、炭酸塩の電極上で析出する可能性があるので、塩水で洗い流すなどの対策を講じることが望ましい。本発明では、アルカリ性水溶液を高純度と高濃度にする必要があまりないという特徴があるので、水や塩水、NaOH水溶液などで洗い流す方法は有効である。また、塩水のカソード電極側への導入によって、カソード槽の電気伝導度を高めることもできる。一般的なNaOH製造では、純度向上のために、薄いNaOHを導入しているが、その低濃度ために初期伝導度が悪く電圧増加の原因となる。一方で、本発明はNaOHに塩化ナトリウム等の原料塩が混在しても問題なく、初期の電解質濃度およびその電気伝導度を良くすることができる。
<酸性液中和装置>
 本実施形態では、前記アノード側において生成した前記第二水溶液を中和して第四水溶液を生成する塩基性物質は、塩基性鉱物または塩基性廃棄物を含むことが好ましい。
 塩基性鉱物とは、水に入れるとアルカリ性を示す鉱物である。周期表の第1~3族元素を多く含んでいることが多い。超苦鉄質岩、苦鉄質岩、カンラン岩や玄武岩などに代表される。塩基性鉱物の多くは表面付近が炭酸イオンなどで安定化されている。石灰岩などの炭酸イオンを含む鉱物も使えるが、中和により二酸化炭素を発生する場合があるので、炭酸イオンの含有量は少ないことが望ましい。
 塩基性鉱物による酸性第二水溶液の中和では、塩基性鉱物は粉砕することで中和速度が速くなるので、塩基性鉱物を細かくすることが好ましい。一方で、粉砕エネルギーを多く消費するのは避ける必要がある。pHが低ければ中和速度は速くなる。貯留時間を長めにとることで中和を進めることができる。長時間かけるのであれば、塩基性鉱物の地層の割れ目や、露天掘りの穴、溜め池状の貯留区画で静置して中和ができる。自然中和は時間がかかるが、エネルギーロスやコストは小さくなる。
 塩基性廃棄物とは、塩基性鉱物の他に、鉄鋼スラグやセメント関連の廃棄物など塩基性の物質であり、これらをHClとの中和のために混ぜて利用も可能である。
「第二貯留区画」
 本実施形態にかかる酸性液中和装置が第二貯留区画を含むことが好ましい。前記アノード側において生成した塩基性の第二水溶液を前記第二貯留区画に移送することが好ましい。移送手段としては、例えば、パイプライン等が挙げられる。前記第二貯留区画において、前記第二水溶液を前記塩基性物質で中和し、中和した水溶液を外部環境に排出することができる。
 前記第二貯留区画を2つ以上の貯留分区画を有することが好ましい。前記2つ以上の貯留分区画が、酸濃度の順に2つ以上の多段階でつながってもよく、又は、前記2つ以上の貯留分区画に対して、塩基性物質を添加する装置が2つ以上の多段でつながってもよい。貯留区画の多段化によって、最終的に環境に排出するために、pHや組成をモニターしながら、塩基性鉱物の種類や量を多段階で導入して中和条件をコントロールすることできる。
 貯留区画の前段貯留分区画のpHが非常に低い場所では、鉱物の溶解速度が速く、鉱物からの高付加価値物質の抽出やFe2+などの還元的なイオン生成などに工業利用できる。炭酸イオンを多く含む鉱物の利用は避けるのが望ましい。前段はジュール熱で溶液が温かいので鉱物溶解には適している。
 貯留区画の後段貯留分区画では、環境に排出する制御と管理を行う。石灰岩などの炭酸イオンを多く含む鉱物も後段では二酸化炭素発生せずに利用できる。中性付近ではFe2+等のイオンは沈殿する。最終的なpH微調整はカソード側の酸性溶液を適宜混合して行う。
「アノード電解の生成物の選択性」
 アノード側においては、水の酸化によるO発生、または海水(塩水)の塩素イオン(Cl)の酸化による塩素(Cl)または塩素酸化合物(HClO)を生成する反応を行う。塩素(Cl)の生成は従来の海水でのクロロアルカリ法と同じである。Cl経由の反応の電極としてはチタン基板に酸化ルテニウムや酸化イリジウムなどの白金族をコートしたDSA電極が望ましい。Clは有用化学品として従来通り塩化ビニルなどの工業的な利用ができる。次亜塩素酸(HClO)は殺菌や消毒、漂白などに利用できる。その他のHClおよびHClO、HClO、HClOも各種化学品として販売できる。一方で、カソード側で大規模の二酸化炭素処理を行う場合、このような各種塩素酸化合物は将来的に余剰になることが想定される。
 余剰のHClおよび塩素化合物は、貯留区画などに単純貯蔵するか、または無害化処理や中和処理して外部環境に排出する。
 海水を酸化して酸素を生成する場合はHClの酸性水、硫酸塩を酸化して酸素を生成する場合は硫酸の酸性水が生成する。海水のようにClを含む場合は、水の酸化とClの酸化は競争反応になる。従来の海水でのクロロアルカリ法ではO生成よりもCl生成がメインになる。海水やClを含む塩水の利用において無害化処理や中和処理して外部環境に排出する場合は、最終的には酸素発生およびHCl生成の形式が望ましい。
 海水を用いて、選択的にO発生させる方法はいくつかある。
 Clの酸化の過電圧が高い電極触媒を用いる。例えばマンガンの酸化物やZnドープのRuOなどの電極触媒を用いる。またアノード電解液に緩衝作用のあるアニオンを導入する方法も有効である。
 アノード電極の表面または近傍にClを近づけないように、マイナスチャージを持った膜などを置くことは好ましい。例えば、カチオン交換樹脂やカチオン性の置換基を持った膜を配置する方法は非常に有効である。カチオン交換樹脂を筒状や囲い状にして、中には高濃度の安定な酸性水を入れる。例えば硫酸、過塩素酸、リン酸、硝酸などである。囲いの上部からは高純度の酸素が発生する。生成したプロトンはカチオン交換樹脂から外へ移動する。囲いには水を供給する。膜を多く配置すると、電流効率や反応選択性を向上するのに役立つが、電気抵抗が上がることで電流電圧特性を低下させることがあるので、バランスを考慮する必要がある。電圧や電力を犠牲にしても電流効率が向上して、結果的に二酸化炭素吸収のエネルギー原単位が向上することが重要である。電気抵抗が悪くならないように、膜はできるだけ薄く、配置間隔も狭いことが望ましい。
<酸性の第二水溶液の管理>
 酸性の第二水溶液は、第二貯留区画に単純貯蔵するか、または無害化処理や中和処理して外部環境に排出することが好ましい。第二貯留区画としては、例えば、貯留管理池、貯留槽、貯留施設、貯留設備、天然の窪地や割れ目などが挙げられる。外部環境に排出する場合、海や湖に流さずに、管理池貯留や、水溶液を蒸発して金属塩の固体として保存しても良い。
 揮発しやすい塩素化合物を貯蔵する場合は、揮散を防ぐ覆いをして環境に配慮する。また、岩盤の想定外の亀裂にも気をつける。その管理には鉱山のリーチング(浸出)と呼ばれる抽出工程が参考になり、中和に利用できる。下記の後者の方法ほど時間はかかるが、エネルギー消費は少ない。
 タンクリーチング(高品位鉱石を粉砕しスラリーとし、タンク内で攪拌浸出する。)、バットリーチング(鉱石を破砕し、大型の容器の中 に堆積し、液に漬けて浸出する。)ヒープリーチング(鉱石を破砕し、不透水基盤(含シート)上に堆積し、液を掛けて浸出する。)、ダンプリーチング(低品位鉱石Run-of-Mine Ore、廃石を堆積し、そのまま液を掛け浸出する。)、インプレースリーチング(鉱石を動かさず、元来の場所で割れ目を作り、その場所で浸出する。
 酸性水の生成速度と中和時間が釣り合和なければ、破砕を細かくするか、貯留区画の中和接触時間を長くして対応する。省エネ性を考えると後者を優先する。
「R鉱物でClを還元してHClへ」
 本実施形態において、塩基性鉱物または塩基性廃棄物がFe2+、V4+、Mn2+などを含むことが好ましい。前記第二貯留区画の第二水溶液で、このような塩基性鉱物または塩基性廃棄物を溶解し、副製するClの酸化された化合物をその溶解水溶液に接触させて還元してHClに変換することが好ましい。
 有毒で貯蔵しにくいClを還元してHClへ変換して無害化する方法として、カソード電極側で生成する水素でClを還元する反応がある。しかし、水素が必須であり、エネルギーロスにつながる。水素発生は酸素還元よりも電解電圧が高く、電力エネルギー消費が増大する。水素を使わない方法として、例えば、鉱物を使う反応を本発明では使うことができる。塩基性鉱物はFe2+などの安定な酸化体(鉄ではFe3+)の還元されたイオン(還元体)を含むことが多い。FeSiOは代表例である。この還元体を含む鉱物(R鉱物。RはReductionの頭文字)を第二貯留区画の酸性のHCl水溶液で溶解すると、Fe2+イオンなどの還元体を含む溶液ができる。このFe2+とClを反応させると、Fe3+と塩酸に変換することができる。この反応をシステムに組み込むことで、カソードでは酸素還元を積極的に行い、電圧を下げることにつながる。既存のクロロアルカリ法の技術が使えるので、海水からの選択的酸素生成の新規開発を迂回して回避でき、その部分でのエネルギーロスを低減できるメリットは大きい。
 Fe2+以外には、レドックスポテンシャルが+1.3V(RHE)より負の反応の還元体、V5+/V4+、Mn4+/Mn2+などが利用できる。R鉱物を溶解せずに、熱反応でClと反応させてHClを生成しても良い。
 R鉱物の他に、鉄鋼スラグやセメント廃材など還元体を含む物質を混ぜて利用も可能である。R鉱物、R鉱物以外の鉄鋼スラグ、或いはR鉱物以外のセメント廃材を含む物質を総称して本発明ではR物質とする。
「溶解したR物質の還元体イオンをアノードに入れて電圧低下」
 第二貯留区画の酸性の水溶液でR物質を溶解し、その還元体イオン(例としてFe2+、V4+、Mn2+など)を含む溶液を電解装置のアノード側に導入して電解電圧を低下させる方法は有効である。その際は、電解反応を劣化させる物質を除去してから、その水溶液を電解装置のアノード側に導入することが好ましい。Fe2+などのカチオンは、アノード電極にカチオン交換膜を設置されていても、接触することができる。
「その他の電圧低下の方法」
 その他の電解電圧低下の方法としては、光触媒によるFe2+生成による低電圧NaOH製造の特許の溶液をアノードに送る方法(特許第6345524号)との組み合わせがある。この技術を本特許明細提案と組み合わせることで更なる低電圧化に利用できる。ただし特許第6345524号は、本提案のようなネガティブエミッション目的ではないので、システムの組み合わせ方や運用条件が大きく異なり、また塩基性鉱物による中和やO還元などの概念は入っていない点でも異なることを申し述べる。
 また、アノード電極として、半導体光電極を用いる方法も活用できる。半導体としてはBiVOなどの酸化物やTaなどの窒化物、酸窒化物などが使えるが、特に酸性に強いWO等が利用できる。シート状にして、酸化面にはO選択生成助触媒を担持し、還元面にO還元用助触媒を担持することで、外部バイアス無しの自立型にすることができる。酸化と還元を分ける面には多孔質化したり、その穴をカチオン交換膜で充填する構造が良い。
 Fe2+イオンが共存している場合は、Clの酸化よりもFe2+酸化が優先して起きる。
 アノード電極の表面上に、又はアノード電極の近傍にイオン交換膜を設置して鉄イオンの流出を抑えるのが好ましい。
 本方法はFe3+/Fe2+以外の様々なレドックス媒体が利用できる。レドックスの準位としては0V~+2V(RHE)の範囲、より好ましくは+0.2V~1.3V(RHE)の範囲である。Fe3+/Fe2+、V5+/V4+、Mn4+/Mn2+、ヨウ素レドックス、硝酸レドックスなどがある。
(二酸化炭素排出のエネルギー原単位の計算)
 本実施形態に係る二酸化炭素ガスの中和処理システムにおいて、電解のための電力としては、再エネ電力および化石燃料を用いた二酸化炭素排出する火力発電所の電力を含む運用により現実性が向上できるため、電解のための電力が再エネ電力および化石燃料を用いた二酸化炭素排出する火力発電所の電力を含むことが好ましい。変動が大きく稼働率が上げられない再エネ電力の欠点を火力発電所等の電力と併用することで補うことができる。二酸化炭素を排出しながら、二酸化炭素回収する本システムに関してLCA(ライフサイクルアセスメント)解析を行い、火力発電が100%でもネガティブエミッションに矛盾なく十分に貢献できることが分かった。再エネ割合は多いほど二酸化炭素排出削減になるが、徐々に無理なく再エネ電力の割合を増やせる技術になる。
 本実施形態に係る二酸化炭素ガスの中和処理システムでは、二酸化炭素吸収のエネルギー原単位は次のように計算できる。
 長期の運用をすることでシステムの製造に関係する二酸化炭素排出分は限りなく無視できる。長期の運用時のエネルギー消費が非常に重要である。その最大のエネルギー消費分は電解電力である。本発明では、その電解の塩基性水溶液が生成する電流効率をQとし、その電解で用いる電力の発電設備の二酸化炭素排出のエネルギー原単位がA[kg-CO/kWh]と置いた場合、少なくとも電解電圧X[V]との関係が次式(1)で表される条件が必要であることが示された。
  1.64×Q/X >A  (1)
(なお、左辺が電解の二酸化炭素吸収のエネルギー原単位[kg-CO/kWh]を示す。
 また、1.64の係数の算出計算方法は下記である。
 (1000Wh×3600秒×M)÷(F×1000g)=1.64  (1-1) Mは二酸化炭素の質量数の44、Fはファラデー定数(96500)である。)
 さらに、割合である電流効率Qと電圧Vの関係を入れる。これで式(1)の左辺は[kg-CO/kWh]となる。)
 少なくとも左辺は、右辺Aよりも大きくなる必要があるという関係式である。
 一方、単位二酸化炭素量当たりのエネルギー、つまり二酸化炭素エネルギー効率(CEE。エネルギー部分をkWhで換算)[kWh/kg-CO]を使う場合は、式(1)の逆数で表わして、式(2)となる。電解電圧をX[V]、システム全体の二酸化炭素エネルギー効率[kWh/kg-CO]を左辺とし、電解で用いる電力の発電設備の二酸化炭素排出のエネルギー原単位がA[kg-CO/kWh]とする場合である。
  (X/(1.64×Q)) < (1/A)  (2)
 右辺も左辺も[kWh/kg-CO]である。左辺は電解での単位二酸化炭素量当たりの必要なエネルギー分である。少なくとも左辺は、右辺よりも小さくなる必要があるという関係式である。
「補機のエネルギー消費の考慮」
 本実施形態に係る電解装置で使用する電解電力と比較すると、電解装置を補助する装置である補機等でのエネルギー消費は少なく、逆に補機での消費少なくなるように運用することが重要である。
 主要な電解電力以外のエネルギー消費(補機のエネルギー消費等)としては、例えば下記がある。補機のエネルギー消費が無視できない場合は、補正する必要がある。この補正よって式(1)よりも更に運用の条件を絞ることができる。
(ア)塩水や海水の不純物除去と送液。
(イ)カソード側の運用:発電所からの二酸化炭素ガスの塩基性水溶液による中和。二酸化炭素の不純物除去。二酸化炭素とNaOHとの接触増加。中和したNaHCO水溶液の管理と排出。
(ウ)酸素還元の場合は空気の送り込み。
(エ)DACの大気の二酸化炭素の取り込みのファン電力。
(オ)アノード側の運用:酸性水の送液と管理、排出。
(カ)塩基性鉱物の粉砕や搬入。
 上記(ア)~(カ)は、電解のエネルギーに比べるとかなり小さい。DAC用のファンの電力は2V電解時で電解電力の2%程度である。送水電力は水ポンプ特性から試算して、1台当たり2V電解時で電解電力の0.2%程度である。ポンプ台数多くしたり、処理濃度が薄くなっても、数%レベルになる。塩基性鉱物に関しては、鉱石を動かさず、元来の 場所で割れ目を作り、その場所で中和する方法などではエネルギー消費を無視できる。破砕に関しては、ダイナマイト破砕をメインにすれば、消費エネルギーと二酸化炭素排出は小さくできる。各種の不純物除去は基本フィルター管理で省エネ化する。
 上記の電解電力以外の補機および塩基性物質導入によるエネルギー消費からの二酸化炭素排出の総和を元に、これをkg-CO/kWhの単位に換算(Y[kg-CO/kWh])することで、式(1)を変形できる。例えば、Yは年単位など一定期間での平均値で計算できる。Yに含まれる項目は電圧Vの変数の時も定数の時もある。
  (1.64×Q/X)―Y > A  (3)
 上記式(1)や式(2)は最低限満たす必要があるが、好ましくは式(3)を満たす。
 一方、二酸化炭素エネルギー効率(CEE)[kWh/kg-CO]で積み上げる場合は、式(4)になる。Zは、電解電力以外の補機および塩基性物質導入によるエネルギー消費からの二酸化炭素排出をCEE[kWh/kg-CO]で表している。
  CEE = (X/1.64×Q)+Z < (1/A)  (4)
 二酸化炭素エネルギー効率(CEE)[kWh/kg-CO]を使った詳細なZの試算で、各種過程のエネルギー消費を積み重ねていく。これらは小さな数字が好ましい。例えば、破砕に関しては、ダイナマイト破砕をメインにすれば、消費エネルギーと二酸化炭素排出は小さくできるが、非特許文献2(Nature,583,2020,pages242-248)を参考にすれば、式(4)においてZは0.0153kWh/kg-CO程度と試算できてかなり小さくできるので、この条件を満たせる。海水ポンプ電力のZは1台で0.002kWh/kg-CO程度であり、数台レベルなら誤差範囲である。二酸化炭素吸収用のファン電力は1台で0.04kWh/kg-CO程度であり、やはり数台レベルなら誤差範囲である。システム建屋の保安、照明などであり、電解のエネルギー等に比べると遙かに小さいので無視できる。この式は逆に、電解以外の補機等の二酸化炭素排出をどの程度に抑制したら良いのか、ポンプなどの台数をどの程度にすべきかについて重要な指針を与えていると言える。この不等号が成り立つネガティブエミッションの範囲は存在し、その範囲での運用は十分に可能である。
「混合電力の考え方」
 本実施形態の二酸化炭素ガスの中和処理システムでは、火力発電が100%でも成立する条件はある一方で、火力発電が100%ではなく、再エネ割合は多いほど二酸化炭素排出削減になるので、徐々に無理なく再エネ電力の割合を増やせる技術になる。再エネ電力を使いつつ、本発明のシステムの稼働率が100%に近くできる。例えば、火力発電と太陽光発電の電力の「混合電力」では、その混合割合(MPとMP’:0~1の値)で二酸化炭素排出のエネルギー原単位は以下の式(5)のようになる。系統電力を用いると地域差はあるが、多くの場合は混合電力となる。
 混合電力での二酸化炭素排出のエネルギー原単位 = 火力発電の二酸化炭素排出のエネルギー原単位×混合率MP+太陽光発電の二酸化炭素排出のエネルギー原単位×混合率MP’  (5)
<酸素還元装置>
 本実施形態の二酸化炭素ガスの中和処理システムは、更に、酸素還元装置を含むことが好ましい。前記電解装置のカソード側で、酸素還元装置を用いて、酸素を含むガスを供給し、酸素還元を行うことが好ましい。
 例えば、酸素還元装置を用いて、カソード側に、空気を送り込み、カソードでの酸素還元を行うことができる。また、酸素還元装置を用いて、アノード側で生成する高純度の酸素を収集し、収集した高純度の酸素をカソード側に循環させても良い。
 また、アノード側で生成する高純度の酸素を火力発電設備に送ることで、火力発電の発電効率を向上させることも可能である。
 電解装置のカソード側で酸素還元を行う場合は、様々な電極が用いられるが、高表面積のガス拡散電極を用いることが好ましい。
<本実施形態の二酸化炭素ガスの中和処理システムの運用>
「DACとファン」
 本実施形態の二酸化炭素ガスの中和処理システムの設置方法において、その立地に関して、電力消費地などの都市に近いことはそれほど優先度が高くないのが本技術の特徴である。二酸化炭素排出源は火力発電所だけでなく、大気を用いるDirect air capture(DAC)と組み合わせても良い。DACのファンの電力消費を考慮しても誤差範囲になる。浄化過程を省く場合は電解装置の後段の塩基性水溶液へガスを導入するのが望ましい。空気中の酸素をカソード側で還元させる場合、その空気を送り込むファンと共用することができる。
 通常のDACCSでは、特殊な二酸化炭素回収装置の処理速度に合わせて大きなファン装置と大きな電力で運用しているが、コストが著しく高い。本特許との組み合わせでは、自然対流を有効利用することで、ファン装置と電力コストを抑制できる。
「二酸化炭素源」
 本発明で吸収する二酸化炭素源は火力発電やDAC以外に、あらゆる排出源が利用できる。製鉄所やセメント工業など大量の高濃度排出源の近くで使用しても良い。
「二酸化炭素吸収後の電力」
 本発明の二酸化炭素吸収後の電力はDACの他に、様々な用途に利用される。中でも再エネ電力の普及に貢献できる利用法が望ましい。例えば、光触媒―電解ハイブリッドシステムや光電極反応の外部バイアスに使うことができる。
「立地」
 100%の火力発電でも、実質的に式(1)~(4)を満たして二酸化炭素のネガティブエミッションが実現できる場合、徐々に電力源として再生可能エネルギーの電力を入れていけば最終的に真のゼロエミッション社会を構築できる。
 電力源の火力発電の電力比率としては、100%でも良いが、90%以下、より好ましくは80%以下が良い。サンベルト地帯の太陽光発電の混合電力利用では80%以下に、パタゴニアなどの風力有望地帯では60%以下にできる可能性がある。
 火力発電所は本発明の電解システムに隣接して、離れていても良い。好ましくは隣接してそこから排出される高濃度二酸化炭素ガスを本発明で中和処理することが望ましい。
 塩基性鉱物の利用を考えると、本発明の中和システムの立地としては塩基性鉱物の産出地に近いことが望ましい。塩基性鉱物は重いのでこの運搬にエネルギーを多く消費するのは好ましくないからである。塩基性鉱物としては、カンラン岩や玄武岩等がある。重い鉱石を運搬するエネルギーを減らすことは重要である。この鉱物産出地に近いところに発電所(火力+再エネ)と一緒に立地するのが好ましい。海水や塩水もできるだけ近くにあることは重要である。塩基性鉱物は海に近い地域に露出していることが多い。
「稼働率」
 電解装置などシステム全体の稼働率は、高いことが望ましい。再エネ電力だけで20%以上、火力を含めた混合電力では50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。
「電解電圧について」
 実際の電解電圧は、式(1)~(4)に条件に依存するが、好ましくは3V以下、より好ましくは2V以下、さらに好ましくは1V以下が良い。
 上述の本実施形態で述べた各種方法を取り入れれば、電解電圧は十分に低下できる。 想定される酸化反応/還元反応の対と、それぞれの理論電解電圧、実際の商用の電圧を記載する。
 Cl生成/H生成:1.3+0.83=2.13V(理論)。商用3.2V。
 Cl生成/O還元:0.07+0.83=0.9V(理論)。商用2.0V。
 O生成/O還元:0.83V(理論)。
 O生成/O還元(二酸化炭素で中性):0.42V(理論)。
 Fe2+酸化/ O還元(二酸化炭素で中性):-0.04(理論)。
 商用での理論値と実際の電圧差は約1Vであり、これが過電圧分のロスである。他の反応も同様の過電圧ならば、1~1.8V程度の電解電圧は可能と想定される。
 初期はクロロアルカリ法で実績のある、Cl生成/H生成の商用3.2Vと、Cl生成/O還元の商用2.0Vの応用が中心であるが、徐々に低電圧方向に置き換わっていくと考えられる。
「電流について」
 ネガティブエミッションになる範囲のある電解電圧に対して、電流および見かけの電流密度は高いほど経済性が良くなるので望ましい。通常のアルカリ電解では、見かけの電流密度は数百mA~数A/cmであるので、それと同等レベルかそれ以上が望ましい。見かけの電流密度は電極実面積が大きくなるほど大きくなるので、電極実面積を増やすことは非常に効果がある。
(二酸化炭素ガスの中和処理方法)
 本発明の一実施形態の二酸化炭素ガスの中和処理方法は、電解工程と、二酸化炭素処理工程と、酸性液中和工程と排出工程とを含む。
 前記電解工程が、電解液とカソード電極とアノード電極と隔膜とを有する電解装置を用い、前記電解液が塩化ナトリウムを含む水溶液である。
 前記電解工程において前記電解液を電解し、前記電解装置の前記カソード側において、塩基性の第一水溶液を生成し、前記電解装置の前記アノード側において、酸性の第二水溶液を生成する。
 前記二酸化炭素処理工程において、前記カソード側で生成した前記第一水溶液と二酸化炭素ガスとを中和溶解反応させて炭酸のアニオンを含む第三水溶液を生成する。
 前記酸性液中和工程において、前記アノード側において生成した前記第二水溶液を塩基性物質によって中和して第四水溶液を生成する。
 前記排出工程が、第一排出サブ工程と第二排出サブ工程を有し、前記第一排出サブ工程は、前記第一水溶液又は前記第三水溶液を外部環境に排出し、前記第二排出サブ工程は、前記第二水溶液又は前記第四水溶液を外部環境に排出する。
 本実施形態の二酸化炭素ガスの中和処理方法を用いると、二酸化炭素吸収のエネルギー原単位が、少なくとも前記電解工程で用いる電力の発電設備の二酸化炭素排出のエネルギー原単位よりも大きい。
 本実施形態の二酸化炭素ガスの中和処理方法の好ましい実施例態様は、上述の本実施形態の二酸化炭素ガスの中和処理システムの好ましい実施例態様を援用することができる。
 以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
(評価方法)
「電圧、電流の測定方法」
 アノード槽、中間槽、およびカソード槽からなるPyrex製のH型電解セルを用い、必要に応じてアノード槽およびカソード槽にガスを1分間に100ccの流速でバブリングした条件下で評価した。カソード槽およびカソード槽の電解液はそれぞれスターラーを用いて100rpm程度で攪拌した。隔膜を1枚用いる実験では、アノード室および中間槽の間に何も挟まず、アノード+中間槽(電解液:50mL)およびカソード槽(電解液:40mL)の2室で評価した。隔膜が2枚の場合、アノード槽(40mL)、中間槽(10mL)、およびカソード槽(40mL)の3室で評価した。隔膜を3枚用いる場合、中間槽をさらにもう1槽接続し、アノード槽(40mL)、中間槽(10mL)、中間槽’(10mL)、およびカソード槽(40mL)の4室で評価した。カチオン交換膜には膜厚約51μmのNafion(NRE212)、アニオン交換膜には膜厚120μmのセレミオン(ASV)をそれぞれ用いた。カチオン交換膜およびアニオン交換膜は、富士フイルム和光純薬株式会社製のNaClを5Mに調整した水溶液に1日程度浸漬させてから実験に使用した。電解液にも同様に調製した水溶液を用いた。必要に応じてHSO(富士フイルム和光純薬株式会社製)およびFeSO(関東化学)を用いて電解液を調整した。アノード電極およびカソード電極にはPt網電極をそれぞれ用いた。ポテンショスタット(BAS製)を用い、1V~6Vの条件で電圧を印可し、それぞれ40C通電させた。
「二酸化炭素吸収のエネルギー原単位の評価方法」
 上記式(1)及び式(1)に関する前述説明から、各実施例の電解の塩基性水溶液が生成する電流効率をQ、電解電圧X[V]を用いて、以下の式(5)で、各実施例の二酸化炭素吸収のエネルギー原単位[kg-CO/kWh]求めた。
 二酸化炭素吸収のエネルギー原単位=1.64×Q/X   (5)
「pHの測定方法」
 電解液のpHはポータブルpH計(東亜DKK製。IM-32P)を用いて測定した。測定後の電解液を円柱状のガラスセル(直径2cm)へ10mL分取し測定した。
 40C通電後、アノード槽の電解液を3本の13mLバイアル瓶1~バイアル瓶3へ5mLずつ分取した。バイアル瓶1およびバイアル瓶2へはそれぞれ0.1gのMgO(富士フイルム和光純薬株式会社製)もしくは0.1gのFeO(高純度化学製)をそれぞれ投入し、栓をした後に、10秒ほど激しくミキシングし、15分間静置した後のpHを測定した。
「DPD法による塩素の濃度評価」
 40C通電後、アノード槽の電解液を3本の13mLバイアル瓶1~バイアル瓶3へ5mLずつ分取した。バイアル瓶1およびバイアル瓶2へはそれぞれ0.1gのMgO(富士フイルム和光純薬株式会社製)もしくは0.1gのFeOをそれぞれ投入し、栓をした後に、10秒ほど激しくミキシングし、15分間静置した。その後、溶け残ったFeOまたはMgOをろ過した溶液中の塩素濃度C(単位:M)を吸光光度計(JASCO, V760)を用いてDPD法により算出した。柴田化学製のDPD試薬を用いた。塩素濃度Cの算出には下記の式(6)を用いた。
  C(塩素濃度)=552nmの吸光度/(2.1×10)  (6)
(使用原材料と装置)
 「電解装置」:幕張理化学硝子製作所製H型電解セル(直径2cm,円柱状)に、1つもしくは2つの中間槽(直径2cm,幅3cm)を接続し、両電極に円柱状の白金網電極(直径1.5cm,高さ4cm)を備えた電解セルを用いた。バイトン製oリングを用いそれぞれ接続した。内径1mmテフロン(登録商標)チューブをカソード電解槽の水溶液中に導入し、必要に応じてN、CO、もしくはOガスをバブリングして評価した。 隔膜の設定方法:1枚、2枚、3枚
 「電源」:ビー・エー・エス株式会社
 「カチオン交換膜」:シグマアルドリッチ社製Nafion(NRE212)、膜厚51μm
 「アニオン交換膜」:AGCエンジニアリング株式会社製セレミオン(AMV)、膜厚120μm
 「塩化ナトリウム」、「MgO粉」、「硫酸」:富士フイルム和光純薬株式会社製
 「二酸化炭素ガス」:巴商会、常圧
 「FeO粉末」:高純度化学
(実施例1)
 アノード電極、カソード電極、電解液、及び2室セルにイオン交換膜(ナフィオン。カチオン交換膜)を隔膜として有する電解装置を用いて、電解を行った。電解液の溶液量は40mLであり、アノード側とカソード側はどちらも5M-塩化ナトリウムを用いた。Nガスでカソード側の溶存酸素をパージした。両極はPt電極を用いた。3Vで40Cを通電した。電解時間が17分間であり、温度が20℃~25℃であった。実験時間中としての電解セルの稼働率は100%と言える。電流値は42mAとなった。
 電解後に、両側の電解液の一部を別の容器(貯留区画を模擬)に移送した。アノード側のpHは約12、カソード側のpHは約3となった。その結果を表1に示す。NaOH生成の電流効率は、多孔質膜の隔膜よりも良く、ほぼ100%となった(以下の実施例では同じイオン交換膜(ナフィオン)を使っているので、電解効率は同じになると想定される。)。
 また、一部移送したカソードの塩基性水溶液(本実施形態の第一水溶液)に二酸化炭素を導入するとpHは6になり、中和されていることが分かった。一部移送したアノードの酸性溶液(本実施形態の第二水溶液)に対して、塩基性鉱物を模擬してFeO粉末を導入すると、FeOが溶解することが分かった。さらに、一部移送したアノードの酸性溶液に対して、塩基性鉱物を模擬してMgO粉末を導入するとpHは10になり、中和されることが分かった。
 アノード側には5M-塩化ナトリウムとPtアノード電極が触れており、塩素が発生したが、その一部水に溶けていた(次亜塩素酸として溶解)。この塩素の化合物の溶解物の存在はDPD法(ジエチルパラフェニレンジアミン法)によって確認できた(1.8mM)。その塩素化合物を含むアノード溶液について、それを一部移送し、FeO(Fe2+イオン)を添加すると、0.1mM程度に大きく減少した。大部分の塩素の化合物が還元されてHClになった。
 上記評価方法を用いて得られた二酸化炭素吸収のエネルギー原単位は0.55kg-CO/kWhであった。その結果を表1に示す。
 東京電力の平均的な系統電力の二酸化炭素排出のエネルギー原単位(0.44kg-CO/kWh)よりも大きいので、この系統電力(混合電力になっている)を用いてもネガティブエミッションになっている。二酸化炭素エネルギー効率(CEE)[kWh/kg-CO]を使って比較する場合は、1.8kWh/kg-COであり、十分に小さくなった。
(実施例2)
 カソード側にOを導入した以外は、実施例1と同様な電解装置を用いて電解を行った。Oを導入したため、必要電圧は低減し、わずか2Vでも27mA程度の電流が観測された。40C通電した。実験時間中としての電解セルの稼働率は100%と言える。
 電解後に、両側の電解液の一部を別の容器に移送した。アノード側のpHは約12、カソード側のpHは約3となった。NaOH生成の電流効率はほぼ100%となった。アノード側には5M-塩化ナトリウムとPtアノード電極が触れており、塩素発生に関しては実施例1と同様であった。
 実施例1と同様な方法で、二酸化炭素吸収のエネルギー原単位を得た。0.82kg-CO/kWhであった。その結果を表1に示す。
 東京電力の平均的な系統電力の二酸化炭素排出のエネルギー原単位(0.44kg-CO/kWh)よりも大きいので、この系統電力(混合電力になっている)を用いてもネガティブエミッションになっている。二酸化炭素エネルギー効率(CEE)[kWh/kg-CO]を使って比較する場合は、1.2kWh/kg-COであり、十分に小さくなった。
(実施例3)
 カソード側に二酸化炭素を導入した以外は、実施例1と同様な電解装置を用いて電解を行った。二酸化炭素を導入したため、必要電圧は低減し、わずか2.6Vでも27mA程度の電流が観測された。40C通電した。実験時間中としての電解セルの稼働率は100%と言える。
 電解後に、両側の電解液の一部を別の容器に移送した。アノード側のpHは二酸化炭素ですぐに中和されて約6、カソード側のpHは約3となった。その結果を表1に示す。
 実施例1と同様な方法で、二酸化炭素吸収のエネルギー原単位を得た。0.63kg-CO/kWhであった。その結果を表1に示す。
 東京電力の平均的な系統電力の二酸化炭素排出のエネルギー原単位(0.44kg-CO/kWh)よりも大きいので、この系統電力(混合電力になっている)を用いてもネガティブエミッションになっている。二酸化炭素エネルギー効率(CEE)[kWh/kg-CO]を使って比較する場合は、1.6kWh/kg-COであり、十分に小さくなった。
(実施例4)
 カソード側に二酸化炭素とOの両方を導入した以外は、実施例1と同様な電解装置を用いて電解を行った。二酸化炭素とOの両方を導入したため、必要電圧は低減し、わずか1.6Vでも17mA程度の電流が観測された。40C通電した。実験時間中としての電解セルの稼働率は100%と言える。
 電解後に、両側の電解液の一部を別の容器に移送した。アノード側のpHは二酸化炭素ですぐに中和されて約9、カソード側のpHは約3となった。その結果を表1に示す。
 実施例1と同様な方法で、二酸化炭素吸収のエネルギー原単位を得た。1.03kg-CO/kWhであった。その結果を表1に示す。
 東京電力の平均的な系統電力の二酸化炭素排出のエネルギー原単位(0.44kg-CO/kWh)よりも大きいので、この系統電力(混合電力になっている)を用いてもネガティブエミッションになっている。二酸化炭素エネルギー効率(CEE)[kWh/kg-CO]を使って比較する場合は、0.97kWh/kg-COであり、十分に小さくなった。
(実施例5)
 表1に示すように、アノード電解液側にもう1枚、イオン交換膜(ナフィオン。カチオン交換膜)を配置し;電解液としては3種類が直列になり、アノード電解液(1M-HSO)、カチオン交換膜、中央電解液(5M-塩化ナトリウム)、カチオン交換膜、カソード電解液(5M-塩化ナトリウム)の組成でスタートした以外は、実施例4と同様な電解装置を用いて電解を行った。追加したカチオン交換膜によって、アノード電極に直接Clが接触せず、Clや次亜塩素酸の生成が抑制される。HClは中央電解液で生成する利点がある。
 カソード側に二酸化炭素とOの両方を導入したため、必要電圧は低減し、わずか1.7Vでも10mA程度の電流が観測された。40C通電した。実験時間中としての電解セルの稼働率は100%と言える。
 電解後に、両側の電解液の一部を別の容器に移送した。アノード側のpHは二酸化炭素ですぐに中和されて約6、中央電解液のpHは約0となった。その結果を表1に示す。
 実施例1と同様な方法で、二酸化炭素のエネルギー吸収原単位を得た。0.97kg-CO/kWhであった。その結果を表1に示す。
 東京電力の平均的な系統電力の二酸化炭素排出のエネルギー原単位(0.44kg-CO/kWh)よりも大きいので、この系統電力(混合電力になっている)を用いてもネガティブエミッションになっている。二酸化炭素エネルギー効率(CEE)[kWh/kg-CO]を使って比較する場合は、1.03kWh/kg-COであり、十分に小さくなった。
(実施例6)
 表1に示すように、アノード電解液(1M-HSOおよび0.1M-FeSOこの混合)、カチオン交換膜、中央電解液(5M-塩化ナトリウム)、カチオン交換膜、カソード電解液(5M-塩化ナトリウム)の組成を用いた以外は、実施例5と同様な電解装置を用いて電解を行った。追加したカチオン交換膜によって、アノード電極に直接Clが接触せず、Clや次亜塩素酸の生成が抑制されるだけでなく、Fe2+の存在で電圧の低下ができる。HClは中央電解液で生成する利点がある。
 カソード側に二酸化炭素とOの両方を導入し、さらにアノード側にFe2+を導入したため、必要電圧は大きく低減し、わずか1Vでも19mA程度の電流が観測された。40C通電した。実験時間中としての電解セルの稼働率は100%と言える。
 電解後に、両側の電解液の一部を別の容器に移送した。アノード側のpHは二酸化炭素ですぐに中和されて約6、中央電解液のpHは約0となった。その結果を表1に示す。
 実施例1と同様な方法で、二酸化炭素吸収原単位を得た。1.64kg-CO/kWhであった。その結果を表1に示す。
 東京電力の平均的な系統電力の二酸化炭素排出原単位(0.44kg-CO/kWh)よりも大きいので、この系統電力(混合電力になっている)を用いてもネガティブエミッションになっている。二酸化炭素エネルギー効率(CEE)[kWh/kg-CO]を使って比較する場合は、0.61kWh/kg-COであり、十分に小さくなった。
(実施例7)
 表1に示すように、2つのカチオン交換膜の間にアニオン交換膜を設置し;アノード電解液(1M-HSOおよび0.1M-FeSOこの混合)、カチオン交換膜、中央電解液(5M-塩化ナトリウム)、アニオン交換膜、中央電解液‘(5M-塩化ナトリウム)、カチオン交換膜、カソード電解液(5M-塩化ナトリウム)を用いた以外は、実施例6と同様な電解装置を用いて電解を行った。追加したアニオン交換膜によって、鉄イオンやアルカリ金属、プロトンなど好ましくない陽イオンの移動を抑制する利点がある。
 カソード側に二酸化炭素とOの両方を導入し、さらにアノード側にFe2+を導入したため、必要電圧は大きく低減し、わずか1.2Vでも15mA程度の電流が観測された。膜や電解液が多くなった割に電流電圧特性の低下はそれほど目立っていなかった。40C通電した。
 電解後に、両側の電解液の一部を別の容器に移送した。アノード側のpHは二酸化炭素ですぐに中和されて約6、中央電解液のpHは約0となった。その結果を表1に示す。
 実験時間中としての電解セルの稼働率は100%と言える。実施例1と同様な方法で、二酸化炭素吸収のエネルギー原単位を得た。1.37kg-CO/kWhであった。その結果を表1に示す。
 東京電力の平均的な系統電力の二酸化炭素排出のエネルギー原単位(0.44kg-CO/kWh)よりも大きいので、この系統電力(混合電力になっている)を用いてもネガティブエミッションになっている。二酸化炭素エネルギー効率(CEE)[kWh/kg-CO]を使って比較する場合は、0.73kWh/kg-COであり、十分に小さくなった。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 (考察)
 これまで二酸化炭素による地球温暖化問題はエネルギー問題と表裏一体と考えられてきた。しかし、地球上に膨大に賦存する塩基性鉱物を利用した中和反応の概念を考慮すると、2つの問題を別々にして、前者に関して全く新しい解決策が提供できることになる。二酸化炭素はガスであるため、地上に貯留が難しい。地球規模の二酸化炭素の推移を考えると、弱酸の性質を持つ二酸化炭素は塩基性鉱物と数億年単位で中和できるが、そのタイムスケールではパリ協定の2050年目標は達成できない。本発明の一部の概念は非特許文献1に似ている。二酸化炭素の電解中和は、電解水素製造よりも直接的解決であり、必要電子数は著しく(1/4~1/8程度)削減できることであるが、このような比較優位性の開示はこれまでされていなかった。全体概念があまりにも離れた異分野の融合で初めて成り立つので、その重要性の認識や議論がされていなかったからである。本発明は地球規模での二酸化炭素の鉱物吸収速度を、化石資源を使っても逆に加速するというコンセプトであり、エネルギー法則や熱力学法則の議論を迂回することができる。発明者のコスト試算やLCA試算に基づき、本発明の新規性としては、電解電力用に火力発電だけを利用して連続運転しても、すぐ実用化できるネガティブエミッション可能条件を見いだしたこと、である。
 本発明は、大規模かつ経済性を持って二酸化炭素を直接削減することができる、二酸化炭素ガスの中和処理システム及び二酸化炭素ガスの中和処理方法を提供する。本発明に示すある一定の方法を一定の条件で実施することでネガティブエミッションに貢献できる。二酸化炭素による地球温暖化を抑制し、低炭素社会の実現を推進する技術である。
 1:二酸化炭素ガスの中和処理システム

Claims (20)

  1.  電解装置と、二酸化炭素処理装置と、酸性液中和装置と排出装置とを含む、二酸化炭素ガスの中和処理システムであって、
     前記電解装置が、電解液とカソード電極とアノード電極と隔膜とを有し、
     前記電解液が塩化ナトリウムを含む水溶液であり、
     前記電解装置において前記電解液を電解し、前記電解装置の前記カソード側において、塩基性の第一水溶液を生成し、前記電解装置の前記アノード側において、酸性の第二水溶液を生成し、
     前記二酸化炭素処理装置において、前記カソード側で生成した前記第一水溶液と二酸化炭素ガスとを中和溶解反応させて炭酸のアニオンを含む第三水溶液を生成し、
     前記酸性液中和装置において、前記アノード側において生成した前記第二水溶液を塩基性物質によって中和して第四水溶液を生成し、
     前記排出装置が、第一排出部と第二排出部を有し、
     前記第一排出部は、前記第一水溶液又は前記第三水溶液を外部環境に排出し、
     前記第二排出部は、前記第二水溶液又は前記第四水溶液を外部環境に排出し、
     二酸化炭素吸収のエネルギー原単位が、少なくとも前記電解装置で用いる電力の発電設備の二酸化炭素排出のエネルギー原単位よりも大きいことを特徴とする、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
  2.  前記二酸化炭素吸収のエネルギー原単位が、0.5kg-CO/kWh以上である、請求項1に記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
  3.  前記酸性液中和装置において、前記第二水溶液を中和する前記塩基性物質が、塩基性鉱物または塩基性廃棄物を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
  4.  前記二酸化炭素処理装置において、
     前記カソード側において、前記第一水溶液と二酸化炭素ガスとを中和溶解反応させて前記第三水溶液を生成し、前記第三水溶液を外部環境に排出する、又は、
     前記二酸化炭素処理装置が第一貯留区画を含み、前記第一水溶液を前記カソード側から前記第一貯留区画に移送し、前記第一貯留区画において、前記第一水溶液と二酸化炭素ガスとを中和溶解反応させて前記第三水溶液を生成すし、前記第三水溶液を外部環境に排出する、請求項1~3の何れか1項に記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
  5.  前記電解装置が、火力発電を含む前記電力を用い、
     前記電解装置を連続運転して、二酸化炭素を中和処理することを特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
  6.  前記電解装置において、電解の稼働率が20%以上であることを特徴とする、請求項1~5の何れか1項に記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
  7.  前記酸性液中和装置が第二貯留区画を含み、
     前記アノード側において生成した前記第二水溶液を前記第二貯留区画に移送し、
     前記第二貯留区画において、前記第二水溶液を前記塩基性物質で中和し、中和した水溶液を外部環境に排出する、請求項1~6の何れか1項に記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
  8.  電解電圧をX、電流効率をQとし、前記発電設備の前記二酸化炭素排出のエネルギー原単位がAとする場合、前記電解電圧と前記二酸化炭素排出のエネルギー原単位との関係が以下の式(1)で表される、請求項1~7の何れか1項に記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
      1.64×Q/X>A  (1)
    (式中、Xの単位がVであり、Aの単位がkg-CO/kWhである。)
  9.  電解電圧をXとし、電解以外の補機および塩基性物質の中和導入による二酸化炭素排出のエネルギー効率をZとして、システム全体の二酸化炭素エネルギー効率をCEEとし、電解で用いる電力の発電設備の二酸化炭素排出のエネルギー原単位がAとする場合、その関係が以下の式(4)で表される、請求項1~8の何れか1項に記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
      CEE = (X/1.64×Q)+Z < (1/A)  (4)
    (式中、Xの単位がVであり、Z及びAの単位がkg-CO/kWhである。)
  10.  前記隔膜がイオン交換膜である、請求項1~9の何れか1項に記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
  11.  更に、酸素還元装置を含み、
     前記電解装置のカソード側で、前記酸素還元装置を用いて、酸素を含むガスを供給し、酸素還元を行う、請求項1~10の何れか1項に記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
  12.  前記電解装置において、前記カソード側の水溶液に、前記二酸化炭素処理装置から供給した二酸化炭素を接触して、炭酸水素イオンを生成させることを特徴とする、請求項1~11の何れか1項に記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
  13.  更にセンサーを含み、
     前記センサーが、前記第二水溶液を中和するため、pHをモニターする第一センサー、又は、溶解物の組成をモニターする第二センサーを有する、請求項1~12の何れか1項に記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
  14.  前記第二貯留区画が2つ以上の貯留分区画を有し、
     前記2つ以上の貯留分区画が、酸濃度の順に2つ以上の多段階でつながっている、かつ、前記2つ以上の貯留分区画に対して、塩基性物質を添加する装置が2つ以上の多段でつながっている、請求項7~13の何れか1項に記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
  15.  前記イオン交換膜を前記アノード電極の表面上にまたは前記アノード電極の近傍に配置する、請求項10~14の何れか1項に記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
  16.  前記酸素還元装置を用いて、前記アノード側で生成する高純度の酸素を、前記カソード側に送ることを特徴とする、請求項11~15の何れか1項に記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
  17.  前記アノード側で生成する高純度の酸素を火力発電設備に送ることを特徴とする、請求項1~16の何れか1項に記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
  18.  前記塩基性鉱物または塩基性廃棄物がFe2+、V4+、Mn2+を含み、
     前記第二貯留区画の前記第二水溶液で前記塩基性鉱物または塩基性廃棄物を溶解し、副製するClの酸化された化合物をその溶解水溶液に接触させて還元してHClに変換する、請求項7~17の何れか1項に記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
  19.  前記塩基性鉱物または塩基性廃棄物がR物質であり、
     前記R物質は、R鉱物、R鉱物以外の鉄鋼スラグ、或いはR鉱物以外のセメント廃材を含む物質であり、
     前記第二貯留区画の前記第二水溶液でR物質を溶解し、電解反応を劣化させる物質を除去してから、R元素としてFe2+、V4+、Mn2+のイオンを含む溶液を電解装置のアノード側に導入して電解電圧を低下させる、請求項7~18の何れか1項に記載の、二酸化炭素ガスの中和処理システム。
  20.  電解工程と、二酸化炭素処理工程と、酸性液中和工程と排出工程とを含む、二酸化炭素ガスの中和処理方法であって、
     前記電解工程が、電解液とカソード電極とアノード電極と隔膜とを有する電解装置を用い、
     前記電解液が塩化ナトリウムを含む水溶液であり、
     前記電解工程において前記電解液を電解し、前記電解装置の前記カソード側において、塩基性の第一水溶液を生成し、前記電解装置の前記アノード側において、酸性の第二水溶液を生成し、
     前記二酸化炭素処理工程において、前記カソード側で生成した前記第一水溶液と二酸化炭素ガスとを中和溶解反応させて炭酸のアニオンを含む第三水溶液を生成し、
     前記酸性液中和工程において、前記アノード側において生成した前記第二水溶液を塩基性物質によって中和して第四水溶液を生成し、
     前記排出工程が、第一排出サブ工程と第二排出サブ工程を有し
     前記第一排出サブ工程は、前記第一水溶液又は前記第三水溶液を外部環境に排出し、 前記第二排出サブ工程は、前記第二水溶液又は前記第四水溶液を外部環境に排出し、 二酸化炭素吸収のエネルギー原単位が、少なくとも前記電解工程で用いる電力の発電設備の二酸化炭素排出のエネルギー原単位よりも大きいことを特徴とする、二酸化炭素ガスの中和処理方法。 
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