WO2022050321A1 - 液晶回折素子、光学素子、画像表示ユニット、ヘッドマウントディスプレイ、ビームステアリングおよびセンサー - Google Patents

液晶回折素子、光学素子、画像表示ユニット、ヘッドマウントディスプレイ、ビームステアリングおよびセンサー Download PDF

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Abstract

回折効率の波長依存性が小さく、かつ、同じ波長であれば同じ角度で回折を行う液晶回折素子、および、これを用いる光学素子、ならびに、これを用いる画像表示ユニット、ヘッドマウントディスプレイ、ビームステアリングおよびセンサーの提供を課題とする。液晶化合物を含む光学異方性層を備え、光学異方性層は、液晶化合物の光学軸の向きが一方向に連続的に回転する液晶配向パターンを有し、断面を走査型電子顕微鏡で観察した画像において、一方の表面から他方の表面に延在する明部と暗部とを有し、暗部が2か所以上の角度の変曲点を有し、さらに、厚さ方向に、暗部の傾斜方向が異なる領域を有することにより、課題を解決する。

Description

液晶回折素子、光学素子、画像表示ユニット、ヘッドマウントディスプレイ、ビームステアリングおよびセンサー
 本発明は、入射光を回折して透過する液晶回折素子、および、この液晶回折素子を用いる光学素子、ならびに、これを用いる画像表示ユニット、ヘッドマウントディスプレイ、ビームステアリングおよびセンサーに関する。
 入射光を回折して透過する液晶回折素子が知られている。
 このような液晶回折素子として、液晶化合物を含む液晶組成物を用いて形成された光学異方性層を有する液晶回折素子が知られている。
 例えば、特許文献1には、基板と、基板上の第1の偏光回折格子層であって、第1の偏光回折格子層の両面間に定められる第1の厚さにわたって第1の捩じれ性に従って捩じられている分子構造を含んでいる、第1の偏光回折格子層と、第1の偏光回折格子層上の第2の偏光回折格子層であって、第2の偏光回折格子層の両面間に定められる第2の厚さにわたって第1の捩じれ性と逆の第2の捩じれ性に従って捩じられている分子構造を含んでいる、第2の偏光回折格子層と、を有する液晶回折素子(偏光回折格子)が記載されている。
 特許文献1には、この偏光回折格子層が、液晶化合物を所定の配向パターンで配向することで光を回折できることが記載されている。
 特許文献1に記載されるような液晶化合物の配向パターンを有する液晶回折素子は、入射した光を、波長に応じた角度で回折できる。また、液晶化合物の配向パターンが一定の場合は、同じ波長の光であれば、入射位置によらず、一定の角度で光を回折できる。
 液晶化合物の配向パターンを有する液晶回折素子は、このような特性を利用して、各種の用途に利用可能である。
 例えば、実際に見ている光景に、仮想の映像および各種の情報等を重ねて表示する、AR(Augmented Reality(拡張現実))グラスでは、画像表示装置が表示したが画像を、全反射可能な角度で導光板に入射する必要がある。
 この導光板に光を入射するための入射素子として、特許文献1に記載される液晶化合物の配向パターンを有する液晶回折素子を用いることにより、入射光(映像)を回折して、全反射可能な角度で導光板に入射できる。また、導光板の他端にも液晶回折素子を用いることにより、導光板内を導光してきた光を回折して光を出射し、映像を使用者に視認させることができる。
 また、上述のように、特許文献1に記載される液晶化合物の配向パターンを有する液晶回折素子は、入射光を波長に応じた回折角度で回折でき、かつ、液晶化合物の配向パターンが一定の場合は、同じ波長であれば面内における回折角度が等しい。
 そのため、この液晶回折素子は、入射光を多数の波長域に分光して撮影するハイパースペクトルカメラにおける分光素子としても、好適に利用可能である。
 また、面内で液晶化合物の配向パターンを変化させることで、光の入射位置によって回折角度を変えることができ、例えば、レンズ機能を発現させる素子として用いることができる。
 例えば、現実世界の外光を通さない、いわゆる没入型の仮想現実(VR)を体験するために、使用者に装着されて、画像を使用者の眼に導く画像表示ユニットを有するヘッドマウントディスプレイがある。このようなヘッドマウントディスプレイに用いられる画像表示ユニットでは、画像表示装置から出射された光が使用者の眼の位置で光を集光するレンズが必要である。
 VR用のヘッドマウントディスプレイのレンズ素子として、面内で液晶化合物の配向パターンを変化させて、レンズ機能を有する液晶回折素子を用いることにより、入射光(映像)を回折して、画像表示装置から出射された光を使用者の眼の位置で集光することにより、映像を使用者に視認させることができる。
 また、ガラスやプラスチックなどを成形した屈折レンズは、レンズとして使用する材料の屈折率の波長分散性により、レンズで屈折した光の進行方向が波長によって変わるため、色割れ(色収差)が生じる。具体的には、短波長の方がレンズで屈折する角度が大きく、長波長の方が屈折する角度が小さくなる。一方、面内で液晶化合物の配向パターンを変化させて、レンズ機能を有する液晶回折素子は、回折する角度が、短波長の方が小さく、長波長の方が大きくなる特徴がある。このため、屈折レンズと面内で液晶化合物の配向パターンを変化させて、レンズ機能を有する液晶回折素子を組み合わせることで、屈折レンズの色割れを改善することができる。
特表2010-525394号公報
 ARグラスにおける導光板への入射素子、および、ハイパースペクトルカメラにおける分光素子は、共に、例えば、可視光の波長域全域など、広い波長域の光に対応して、各波長の光を回折する。
 従って、これらの光学素子には、回折効率の波長依存性が小さいこと、すなわち、波長によらず、同様の回折効率で光を回折できることが要求される。
 しかしながら、特許文献1に記載される液晶回折素子も含めて、従来の液晶化合物の配向パターンを有する液晶回折素子は、回折効率の波長依存性が十分に小さくはない。
 また、VR用のヘッドマウントディスプレイにおけるレンズ素子、および、屈折レンズと組み合わせることで色割れを改善するレンズ素子は、例えば、可視光の波長域全域など、広い波長域の光に対応して、各波長の光を回折する。
 従って、これらの光学素子には、回折効率の波長依存性が小さいこと、すなわち、波長によらず、同様の回折効率で光を回折できることが要求される。
 しかしながら、特許文献1に記載される液晶回折素子も含めて、従来の液晶化合物の配向パターンを有する液晶回折素子は、回折効率の波長依存性が十分に小さくはない。
 本発明の目的は、このような従来技術の問題点を解決することにあり、回折効率の波長依存性が小さい液晶回折素子、および、これを用いる光学素子、ならびに、これを用いる画像表示ユニット、ヘッドマウントディスプレイ、ビームステアリングおよびセンサーを提供することにある。
 この課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
 [1] 液晶化合物を含む液晶組成物を用いて形成された光学異方性層を備え、
 光学異方性層は、液晶化合物由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有し、かつ、
 光学異方性層は、一方向に沿って厚さ方向に切断した断面を走査型電子顕微鏡で観察した断面画像において、一方の表面から他方の表面に延在する明部および暗部を有し、かつ、暗部が、2か所以上の角度の変曲点を有し、さらに、厚さ方向において、暗部の傾斜方向が異なる領域を有する、液晶回折素子。
 [2] 液晶配向パターンにおける液晶化合物由来の光学軸の向きが面内で180°回転する長さを1周期とした際に、1周期の長さが一定である、[1]に記載の液晶回折素子。
 [3] 液晶配向パターンにおける液晶化合物由来の光学軸の向きが面内で180°回転する長さを1周期とした際に、1周期の長さが一方向に沿って漸次変化する、[1]に記載の液晶回折素子。
 [4] 液晶配向パターンが、液晶化合物由来の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化する一方向を、内側から外側に向かう同心円状に有する、同心円状のパターンである、[1]または[3]に記載の液晶回折素子。
 [5] 暗部が、傾斜方向が折り返される変曲点を、奇数か所、有する、[1]~[4]のいずれかに記載の液晶回折素子。
 [6] 暗部が、傾斜方向が折り返される変曲点を、1か所、有する、[5]に記載の液晶回折素子。
 [7] 暗部が、傾斜方向が折り返される変曲点を、3か所、有する、[5]に記載の液晶回折素子。
 [8] 光学異方性層は、一方向に沿って厚さ方向に切断した断面を走査型電子顕微鏡で観察した断面画像において、暗部の形状が、光学異方性層の厚さ方向の中心線に対して、対称である、[1]~[7]のいずれかに記載の液晶回折素子。
 [9] 光学異方性層は、一方向に沿って厚さ方向に切断した断面を走査型電子顕微鏡で観察した断面画像において、暗部の形状が、光学異方性層の厚さ方向の中心線に対して、非対称である、[1]~[7]のいずれかに記載の液晶回折素子。
 [10] 光学異方性層の屈折率異方性に伴う屈折率差Δn550が0.2以上である、[1]~[9]のいずれかに記載の液晶回折素子。
 [11] 液晶配向パターンにおける液晶化合物由来の光学軸の向きが面内で180°回転する長さを1周期とした際に、1周期の長さが1.0μm以下である領域を面内に有する、[1]~[9]のいずれかに記載の液晶回折素子。
 [12] [1]~[11]のいずれかに記載の液晶回折素子と円偏光板とを有する、光学素子。
 [13] 円偏光板が位相差板と偏光子からなり、液晶回折素子と位相差板と偏光子とが、この順で配置される、[12]に記載の光学素子。
 [14] [1]~[11]のいずれかに記載の液晶回折素子と酸化ケイ素層と支持体をこの順で有する、光学素子。
 [15] [1]~[11]のいずれかに記載の液晶回折素子または[12]~[14]のいずれかに記載の光学素子を少なくとも1つ以上有し、少なくとも1つ以上の位相変調素子を有する、光学素子。
 [16] [1]~[11]のいずれかに記載の液晶回折素子または[12]~[15]のいずれかに記載の光学素子を有する、画像表示ユニット。
 [17] [16]に記載の画像表示ユニットを有する、ヘッドマウントディスプレイ。
 [18] [1]~[11]のいずれかに記載の液晶回折素子または[12]~[15]のいずれかに記載の光学素子を有する、ビームステアリング。
 [19] [1]~[11]のいずれかに記載の液晶回折素子または[12]~[15]のいずれかに記載の光学素子を有する、センサー。
 本発明によれば、回折効率の波長依存性が少ない液晶回折素子、および、これを用いる光学素子、ならびに、これを用いる画像表示ユニット、ヘッドマウントディスプレイ、ビームステアリングおよびセンサーを提供できる。
図1は、本発明の液晶回折素子の光学異方性層の一例を概念的に示す図である。 図2は、本発明の液晶回折素子の光学異方性層の別の例を概念的に示す図である。 図3は、本発明の液晶回折素子の光学異方性層の別の例を概念的に示す図である。 図4は、本発明の液晶回折素子の光学異方性層の別の例を概念的に示す図である。 図5は、本発明の液晶回折素子の光学異方性層の別の例を概念的に示す図である。 図6は、本発明の液晶回折素子の光学異方性層の別の例を概念的に示す図である。 図7は、本発明の液晶回折素子の光学異方性層の別の例を概念的に示す図である。 図8は、光学異方性層の平面図の部分拡大図である。 図9は、光学異方性層の一部の領域を拡大して示す断面図である。 図10は、配向膜を露光する露光装置の一例を概念的に示す図である。 図11は、光学異方性層の作用を説明するための概念図である。 図12は、光学異方性層の作用を説明するための概念図である。 図13は、本発明の液晶回折素子の光学異方性層の別の例を概念的に示す図である。 図14は、配向膜を露光する露光装置の一例を概念的に示す図である。
 以下、本発明の液晶回折素子、光学素子、画像表示ユニット、ヘッドマウントディスプレイ、ビームステアリングおよびセンサーについて、添付の図面に示される好適実施例を基に詳細に説明する。
 本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
 本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレートおよびメタクリレートのいずれか一方または双方」の意味で使用される。
 本明細書において、可視光は、電磁波のうち、ヒトの目で見える波長の光であり、380~780nmの波長域の光を示す。非可視光は、380nm未満の波長域および780nmを超える波長域の光である。
 [液晶回折素子]
 図1に、本発明の液晶回折素子の光学異方性層の一例を概念的に示す。
 本発明の液晶回折素子において、光学異方性層は、液晶化合物を含む液晶組成物を用いて形成されたものであり、液晶化合物に由来する光学軸の向きが、面内の少なくとも一方向に向かって、連続的に変換している液晶配向パターンを有する。
 また、光学異方性層は、光学軸の向きが連続的に変化する方向に沿って、厚さ方向に切断した断面を走査型電子顕微鏡(SEM(Scanning Electron Microscope))で観察した断面画像において、一方の表面から他方の表面に延在する明部と暗部とを有し、かつ、暗部(明部)が、角度が変更する変曲点(角度の変曲点)を、2か所以上、有する。さらに、光学異方性層は、厚さ方向に、暗部(明部)の傾斜方向が異なる領域を有する。
 断面をSEMで観察した画像における明部および暗部(明線および暗線)は、液晶配向パターンを有する液晶相に由来して観察されるものである。
 図1に示す光学異方性層36aは、液晶化合物40として、棒状液晶化合物を用いている。従って、光学軸の方向は、液晶化合物40の長手方向と一致する。
 光学異方性層36は、液晶化合物40に由来する光学軸が、一方向に向かって、連続的に回転しながら変化している所定の液晶配向パターンを有する。
 また、光学異方性層36aは、一方向に向かって液晶化合物40に由来する光学軸の向きが面内で180°回転する長さを1周期とした際に、液晶配向パターンにおける1周期の長さが、一定である。
 このような液晶配向パターンを有する光学異方性層36aは、入射した光を、光学軸が180°回転する1周期、および、入射光の波長に応じて回折(屈折)して透過する、液晶回折素子として作用する。この光学異方性層36aの回折素子としての作用は、後に詳述する。
 光学異方性層36aは、光学軸が回転する一方向に沿って厚さ方向に切断した断面をSEMで観察する断面画像において、液晶相に由来して、一方の表面から他方の表面に延在する明部42と暗部44とを交互に有する縞模様が観察される。なお、図1では、この明部42と暗部44とを、光学異方性層36aの断面に重ねて示している。以下の説明では、光学軸が回転する一方向に沿って厚さ方向に切断した断面をSEMで観察する断面画像を、単に『断面SEM画像』ともいう。
 図示例の光学異方性層36aは、断面SEM画像において、暗部44は、角度が変化する変曲点を、2か所、有する。すなわち、光学異方性層36aは、暗部44の変曲点に応じて、厚さ方向に、領域37a、領域37bおよび領域37cの、3つの領域を有するということもできる。
 図1に示すように、光学異方性層36aは、厚さ方向のどの位置においても、面内方向において、液晶化合物40に由来する光学軸が、図中左方向に向かって、時計回りに回転する液晶配向パターンを有する。
 また、液晶配向パターンにおいて、一方向に向かって光学軸が180°回転する長さである1周期は、面内方向のどの領域でも、一定である。
 また、図1に示すように、液晶化合物40は、厚さ方向の下側の領域37cでは、厚さ方向に図中上側から下側に向かって時計回り(右回り)に螺旋状に捩じれるように、捩じれ配向されている。
 厚さ方向の真ん中の領域37bでは、液晶化合物40は、厚さ方向に捩じれておらず、厚さ方向に積み重ねられた液晶化合物40は、光学軸が同じ方向を向いている。すなわち、面内方向の同じ位置に存在する液晶化合物40は、光学軸が同じ方向を向いている。
 厚さ方向の上側の領域37aでは、液晶化合物40は、厚さ方向に図中上側から下側に向かって反時計回り(左回り)に螺旋状に捩じれるように捩じれ配向されている。
 すなわち、図1に示す光学異方性層36aは、領域37a、領域37bおよび領域37cは、厚さ方向における液晶化合物40の捩じれの状態がそれぞれ異なっている。
 液晶化合物に由来する光学軸が一方向に向かって連続的に回転する液晶配向パターンを有する光学異方性層において、光学異方性層36aの断面SEM画像における明部42および暗部44は、同じ向きの液晶化合物40を結ぶように観察される。
 一例として、図1では、光学軸が紙面に直交する方向を向いている液晶化合物40を結ぶように暗部44が観察されることを示している。
 厚さ方向の一番下の領域37cでは、暗部44は、図中左上方に向かうように傾斜している。真ん中の領域37bでは、暗部44は厚さ方向に延在している。一番上の領域37aでは、暗部44は、図中右上方に向かうように傾斜している。
 すなわち、図1に示す光学異方性層36aは、暗部44の角度が変わる、角度の変曲点を、2つ、有している。また、一番上の領域37aでは、暗部44は右上方に向かうように傾斜しており、一番下の領域37bでは、暗部44は左上方に向かうように傾斜している。すなわち、領域37aと領域37cとでは、暗部44の傾斜方向が異なる。
 さらに、図1に示す光学異方性層36aは、暗部44は、傾斜方向が逆方向に折り返される変曲点を1か所、有している。
 具体的には、光学異方性層36aの暗部44は、領域37aにおける傾斜方向と、領域37bにおける傾斜方向とが逆方向である。そのため、領域37aおよび領域37bの界面に位置する変曲点が、傾斜方向が逆方向に折り返される変曲点である。すなわち、光学異方性層36aは、傾斜方向が逆方向に折り返される変曲点を、1か所、有している。
 また、光学異方性層36aは、領域37aおよび領域37cは、一例として、厚さが等しく、かつ、上述のように、液晶化合物40の厚さ方向の捩じれの状態がそれぞれ異なっている。そのため、図1に示すように、断面SEM画像における明部42および暗部44は、略C字状をなしている。
 従って、光学異方性層36aは、暗部44(明部42)の形状が厚さ方向の中心線に対して、対称である。
 本発明の液晶回折素子は、このような光学異方性層36a、すなわち、断面SEM画像において、一方の表面から他方の表面まで延在する明部42および暗部44を有し、暗部44が、2つ以上の角度の変曲点を有し、かつ、厚さ方向において、傾斜方向が異なる領域を有することにより、回折効率の波長依存性を小さくして、波長によらず、同様の回折効率で光を回折できる。
 上述のように、液晶化合物に由来する光学軸の向きが、少なくとも一方向に向かって連続的に回転する液晶配向パターンを有する光学異方性層を有する液晶回折素子は、例えば可視光全域など、広い波長範囲にわたって、入射光を波長に応じて異なる回折角度で回折できる。
 しかしながら、本発明者らの検討によれば、従来の液晶配向パターンを有する液晶回折素子は、断面SEM画像において、表面(主面)に対して傾斜する暗部を有するものの、角度が変化する変曲点を有さない、または、特許文献1にも示されるように、変曲点を1点しか有さない。そのため、従来の液晶回折素子は、例えば、赤色光および緑色光の回折効率は高いが、青色光の回折効率は他の2色に比して低い等、回折効率の波長依存性が大きい。
 これに対して、本発明の液晶回折素子は、断面SEM画像において観察される暗部44が、2か所以上の角度の変曲点を有し、かつ、厚さ方向において、傾斜方向が異なる領域を有する。そのため、本発明の液晶回折素子は、回折効率の波長依存性が小さく、波長によらず同様の回折効率で光を回折できる。しかも、このような本発明の液晶回折素子は、波長によらず、高い回折効率で光を回折できる。
 また、後述するが、本発明の液晶回折素子の液晶配向パターンは、光学軸が180°回転する1周期の長さが一定でもよい。1周期の長さが一定の場合、本発明の液晶回折素子は、面内における光の入射位置によらず、波長が同じであれば同じ角度で光を回折(屈折)する。従って、本発明の液晶回折素子は、ARグラスにおける導光板への光入射素子、および、ハイパースペクトルカメラにおける分光素子等、入射位置によらず、同じ波長の光は同じ角度で光を回折することが要求される各種の光学装置に、好適に利用可能である。
 なお、このような作用効果に関しては、以下に示す光学異方性層を有する本発明の液晶回折素子も、同様である。
 図1に示す光学異方性層36aは、厚さ方向に3つの領域を有し、暗部44が、変曲点を2か所、有し、さらに、傾斜方向が折り返される変曲点を1か所、有する。
 しかしながら、本発明の液晶回折素子において、光学異方性層は、この構成に限定はされない。
 すなわち、本発明の液晶回折素子において、光学異方性層は、上述の液晶配向パターンを有すると共に、液晶配向パターンの1周期が一定で、さらに、断面SEM画像において、液晶層に起因して、一方の表面から他方の表面まで延在する明部42および暗部44を有し、かつ、暗部44が、2か所以上の角度の変曲点を有し、さらに、厚さ方向において、傾斜方向が異なる領域を有するものであれば、各種の構成が利用可能である。
 図2に、本発明の液晶回折素子の光学異方性層の別の例を示す。
 図2に示す光学異方性層36bも、液晶化合物に由来する光学軸が、一方向に向かって、連続的に回転しながら変化している所定の液晶配向パターンを有する。従って、光学異方性層36bも、断面SEM画像において、液晶層に由来して、一方の表面から他方の表面に延在する明部42と暗部44とを交互に有する縞模様が観察される。
 図2も、図1と同様、この明部42と暗部44とを、光学異方性層36aの断面に重ねてして示している。
 図2に示す光学異方性層36bは、断面SEM画像で観察される暗部44が、角度が変化する変曲点を、3か所、有する。
 すなわち、光学異方性層36bは、暗部44の変曲点に応じて、厚さ方向に、上から、領域37d、領域37e、領域37fおよび領域37gの、4つの領域を有するということができる。
 図2の光学異方性層36bも、厚さ方向のどの位置においても、面内方向において、液晶化合物40に由来する光学軸が、図中左方向に向かって、時計回りに回転する、液晶配向パターンを有する。
 また、液晶配向パターンにおいて、一方向に向かって光学軸が180°回転する長さである1周期は、面内方向のどの領域でも、一定である。
 図2に示す光学異方性層36bにおいて、厚さ方向の最も下の領域37gでは、液晶化合物40は、厚さ方向に図中上側から下側に向かって時計回りに螺旋状に捩じれるように、捩じれ配向されている。
 下から2番目の領域37fでは、液晶化合物40は、厚さ方向に図中上側から下側に向かって反時計回りに螺旋状に捩じれるように、捩じれ配向されている。
 下から3番目の領域37eでは、液晶化合物40は、厚さ方向に図中上側から下側に向かって時計回りに螺旋状に捩じれるように、捩じれ配向されている。
 さらに、最も上の領域37dでは、液晶化合物40は、厚さ方向に図中上側から下側に向かって反時計回りに螺旋状に捩じれるように捩じれ配向されている。
 すなわち、図2に示す光学異方性層36bは、液晶配向パターンは厚さ方向の全域で均一であるが、液晶化合物40の厚さ方向の螺旋状の捩じれの状態が、領域37dと領域37fとが同じで、領域37eと領域37gとが同じである。また、図2に示す光学異方性層36bは、液晶化合物40の厚さ方向の螺旋状の捩じれの状態が、領域37dと領域37eとで、逆である。
 上述のように、液晶化合物に由来する光学軸が一方向に向かって連続的に回転する液晶配向パターンを有する光学異方性層において、光学異方性層36aの断面SEM画像における明部42および暗部44は、同じ向きの液晶化合物40を結ぶように観察される。
 従って、図2に示す光学異方性層36bでは、領域37dと領域37fとの暗部44の傾斜方向が一致し、領域37eと領域37gの暗部44の傾斜方向が一致する。
 具体的には、厚さ方向の一番下の領域37gでは、暗部44は、図中左上方に向かうように傾斜している。下から2番目の領域37fでは、暗部44は、図中右上方に向かうように傾斜している。下から3番目の領域37eでは、暗部44は、一番下の領域37gと同様に、図中左上方に向かうように傾斜している。さらに、一番上の領域37dでは、暗部44は、下から2番目の領域37fと同様に、図中右上方に向かうように傾斜している。
 すなわち、図2に示す光学異方性層36bは、暗部44の角度が変わる、暗部の角度の変曲点を、3か所、有している。
 ここで、光学異方性層36bでは、厚さ方向に隣接する領域である領域37gと領域37fとでは、暗部の傾斜方向が異なる。また、厚さ方向に隣接する領域である領域37fと領域37eとでも、暗部の傾斜方向が異なる。さらに、厚さ方向に隣接する領域である領域37eと領域37dとでも、暗部の傾斜方向が異なる。すなわち、図2に示す光学異方性層36dにおいて、暗部44は、暗部の角度が変わる3か所の変曲点は、全てが、傾斜方向が折り返される変曲点である。
 また、領域37dと領域37g、および、領域37eと領域37fとは、一例として、厚さが等しい。
 そのため、図2に示す光学異方性層36bにおいて、断面SEM画像における明部42および暗部44は、略W字状となる。従って、光学異方性層36bも、暗部44の形状が厚さ方向の中心線に対して、対称である。
 また、本発明の液晶回折素子において、光学異方性層の構成は、上述の例以外にも、上述の液晶配向パターンを有すると共に、液晶配向パターンの1周期が一定で、さらに、断面SEM画像で観察される液晶相に起因して、一方の表面(主面)から他方の表面に延在する明部42および暗部44を有し、暗部44が、2か所以上の角度の変曲点を有し、かつ、厚さ方向において、傾斜方向が異なる領域を有するものであれば、各種の構成が利用可能である。
 なお、以下に示す例においては、光学異方性層の断面SEM画像における明部42および暗部44のみを図示する。しかしながら、いずれの例も、各図において破線で囲む部分を拡大して示すように、光学異方性層の各領域は、一方向に向かって光学軸が連続的に回転する、上述した液晶配向パターンを有する。また、液晶配向パターンにおいて、液晶化合物に由来する光学軸が180°回転する1周期は、一定である。
 また、以下に示す光学異方性層において、暗部44が光学異方性層の表面(主面)に対して傾斜する領域では、液晶化合物40は、厚さ方向に捩れ配向されている。なお、主面とは、シート状物(板状物、フィルム、層)における最大面である。
 一例として、図3に概念的に示すような、暗部44の変曲点に応じて、厚さ方向に4つの領域を有する光学異方性層が例示される。
 本例では、最も下の領域では、暗部44は、図中左上方に向かって傾斜する。下から2番目の領域では、暗部44は、最も下の領域よりも表面に対して大きな角度で図中左上方に向かって傾斜する。下から3番目の領域では、暗部44は、図中右上方に向かって傾斜する。さらに、最も上の領域では、暗部44は、下から3番目の領域よりも表面に対して小さい角度で図中右上方に向かって傾斜する。
 すなわち、図3に示す光学異方性層は、暗部44の角度が変化する変曲点を、3か所、有し、かつ、暗部傾斜方向が折り返される変曲点を、下から2番目の領域と下から3番目の領域との界面に、1か所、有する。
 図3に示す光学異方性層も、一番下の領域と一番上の領域、および、下から2番目の領域と下から3番目の領域とは、厚さが等しい。さらに、一番下の領域と、一番上の領域とは、傾斜方向は異なるが、光学異方性層の表面と暗部44とが成す角度(角度の絶対値)は、等しい。同様に、下から2番目の領域と、下から3番目の領域とは、傾斜方向は異なるが、光学異方性層の表面と暗部44とが成す角度は、等しい。
 すなわち、図3に示す光学異方性層も、断面SEM画像における明部42および暗部44は、略C字状である。従って、図3に示す光学異方性層も、暗部44の形状が厚さ方向の中心線に対して、対称である。
 なお、光学異方性層の表面に対する暗部44の角度は、後述する、面内の一方向に向かって光学軸が180°回転する長さである1周期の長さ、および、厚さ方向に捩れ配向される液晶化合物40の捩れの大きさによって、調節できる。
 別の例として、図4に概念的に示す、暗部44の変曲点に応じて、厚さ方向に5つの領域を有する光学異方性層が例示される。
 本例では、最も下の領域では、暗部44は、図中左上方に向かって傾斜する。下から2番目の領域では、暗部44は、最も下の領域よりも表面に対して大きな角度で図中左上方に向かって傾斜する。下から3番目の領域すなわち厚さ方向の中央の領域では、暗部44は、光学異方性層の厚さ方向に延在する。下から4番目の領域では、暗部44は、図中右上方に向かって傾斜する。さらに、最も上の領域では、暗部44は、下から4番目の領域よりも表面に対して小さい角度で図中右上方に向かって傾斜する。
 すなわち、図4に示す光学異方性層は、暗部44の角度が変化する変曲点を、4か所、有する。
 また、一番下の領域および下から2番目の領域と、下から4番目の領域と一番上の領域とでは、暗部44の傾斜方向が逆である。そのため、下から2番目の領域と、下から4番目の領域との界面に位置する変曲点が、傾斜方向が逆方向に折り返される変曲点である。すなわち、図3に示す光学異方性層は、傾斜方向が逆方向に折り返される変曲点を、1か所、有している。
 図4に示す光学異方性層も、一番下の領域と一番上の領域、および、下から2番目の領域と上から2番目の領域とは、厚さが等しい。
 この光学異方性層は、一番下の領域と、一番上の領域とは、傾斜方向は異なるが、光学異方性層の表面と暗部44とが成す角度は、等しい。同様に、下から2番目の領域と、下から4番目の領域とは、傾斜方向は異なるが、光学異方性層の表面と暗部44とが成す角度は、等しい。さらに、真ん中に位置する下から3番目の領域は、暗部44は光学異方性層の厚さ方向に延在する。
 すなわち、図4に示す光学異方性層も、断面SEM画像における明部42および暗部44は、略C字状である。従って、図4に示す光学異方性層も、暗部44の形状が厚さ方向の中心線に対して、対称である。
 さらに、本発明の液晶回折素子の光学異方性層は、図5に、図3および図4に示す略C字状の暗部44を有する構成を例示して概念的に示すように、厚さ方向の領域の間隔、すなわち、厚さ方向の変曲点の間隔を短くすることで、暗部44が連続的に変化するような構成とすることも可能である。
 本発明の液晶回折素子において、光学異方性層の暗部44が有する変曲点の数には、制限はなく、2か所以上、有すればよい。
 また、暗部44の傾斜方向が折り返される変曲点の数にも制限はない。しかしながら、図1~5に示すように、暗部44の形状を厚さ方向の中心線に対して対称にできる等の点で、傾斜方向が折り返される変曲点の数は、奇数が好ましく、1か所または3か所がより好ましい。さらに、傾斜方向が折り返される変曲点の数は、5か所以上も好適に用いることができる。
 以上、説明した光学異方性層は、いずれも、暗部44の形状が、厚さ方向の中心線に対して、対称である。しかしながら、本発明の液晶回折素子において、光学異方性層における暗部44の形状は、厚さ方向の中心線に対して、対称でなくてもよい。
 一例として、図6に概念的に示す光学異方性層が例示される。
 図6に示す光学異方性層は、暗部44の変曲点に応じて、3つの領域を有する。
 本例では、最も下の領域では、暗部44は、図中左上方に向かって傾斜する。下から2番目の領域では、暗部44は、最も下の領域よりも表面に対して大きな角度で図中左上方に向かって傾斜する。さらに、最も上の領域では、暗部44は、図中右上方に向かって傾斜する。
 すなわち、図6に示す光学異方性層は、暗部44が3か所の変曲点を有する。また、下から2番目の領域と、最も上の領域との界面に、暗部44の傾斜方向が折り返される変曲点を、1か所、有する。
 ここで、暗部44の光学異方性層の表面に対する傾斜角は、3つの領域で、全て異なり、傾斜方向の違いはあるが、下から上に向かって、漸次、光学異方性層の表面に対する角度(角度の絶対値)が、大きくなる。すなわち、図6に示す光学異方性層において、暗部44の形状は、厚さ方向の中心線に対して、非対称である。
 上述した図1~5に示す、暗部44の形状が、厚さ方向の中心線に対して対称な構成は、回折効率の波長依存性が、より小さい点で有利である。
 これに対して、暗部44の形状が、厚さ方向の中心線に対して非対称な構成、中でも、図6に示すように、光学異方性層の表面に対して、傾斜角が、順次、大きくなる構成は、回折角度(屈折角度)が大きい場合でも回折効率を高くできる点で、有利である。本例において、暗部44の傾斜角とは、傾斜角の絶対値である。
 本発明の液晶回折素子において、光学異方性層の断面SEM画像における暗部44の傾斜角には、制限はない。
 なお、本発明において、暗部44の平均傾斜角とは、暗部44の一方の表面との接点と他方の表面との接点とを結んだ線が、光学異方性層の表面の垂線となす角度である。従って、図1~図5に示すような、暗部44の形状が厚さ方向の中心線に対象である場合には、暗部44の平均傾斜角が、略0°になる。
 以上の光学異方性層は、いずれも、液晶化合物として、棒状液晶化合物を用いているが、本発明は、これに制限はされず、円盤状液晶化合物を用いることも可能である。
 なお、円盤状液晶化合物の場合には、液晶化合物に由来する光学軸は、円盤面に垂直な軸、いわゆる進相軸として定義される。
 また、本発明の液晶回折素子において、光学異方性層は、図7に概念的に示すように、棒状液晶化合物と、円盤状液晶化合物とを組み合わせて用いてもよい。棒状液晶化合物と、円盤状液晶化合物を組み合わせることで、異なる角度で入射した光に対し、高い回折効率で光を回折することができる。なお、棒状液晶化合物と、円盤状液晶化合物を組み合わせは図7に概念的に示した構成に制限されず、様々な構成で用いることができる。例えば、図2、図3、図4、図5および図6において、棒状液晶化合物を、棒状液晶化合物と、円盤状液晶化合物を組み合わせにしてもよい。また、例えば、図7および上述の組み合わせにおいて、棒状液晶化合物と、円盤状液晶化合物を厚さ方向で、より細分化して積層した構成としてもよい。
 このような液晶配向パターンおよび暗部44(明部42)を有する光学異方性層を有する本発明の液晶回折素子は、一例として、支持体と、支持体の表面に形成された配向膜と、配向膜の表面に形成された光学異方性層とを有する。
 図9に、光学異方性層36a(領域37c)を含む液晶回折素子の微小な領域を拡大した概念図を示す。なお、図8は、図9に示す光学異方性層36aの平面図である。
 図9に示す液晶回折素子は、上述のように、支持体30、配向膜32および光学異方性層36a、を有する。しかしながら、本発明の液晶回折素子は、これに制限はされず、各種の層構成が利用可能である。例えば、本発明の液晶回折素子は、図9に示す液晶回折素子から、支持体30を剥離した、配向膜32と光学異方性層36aとからなるものであってもよい。また、本発明の液晶回折素子は、図9に示す液晶回折素子から、支持体30および配向膜32を剥離した、光学異方性層36aのみからなるものであってもよい。また、本発明の液晶回折素子は、支持体30と光学異方性層36aとからなるものであってもよい。さらに、本発明の液晶回折素子は、これらの構成に加え、保護層(ハードコート層)および反射防止層などの、他の層を有するものであってもよい。
 また、本発明の液晶回折素子は、
 液晶化合物を含む液晶組成物を用いて形成された光学異方性層を備え、
 光学異方性層は、液晶化合物由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有し、
 液晶化合物由来の光学軸の向きが面内で180°回転する長さを1周期とした際に、液晶配向パターンにおける1周期の長さが、一方向に沿って漸次変化し、
 光学異方性層は、一方向に沿って厚さ方向に切断した断面を走査型電子顕微鏡で観察される断面画像において、一方の表面から他方の表面に延在する明部および暗部を有し、暗部が、2つ以上の角度の変曲点を有し、
 厚さ方向において、暗部の傾斜方向が異なる領域を有している液晶回折素子であってもよい。
 図13に示す例では、液晶層36の液晶配向パターンが、液晶化合物40の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化する一方向(矢印A1~A3)を、内側から外側に向かう同心円状に有する、同心円状のパターンである。同心円状のパターンとは、光学軸が同じ方向を向いた液晶化合物を結んだ線が円形であり、円形の線分が同心円状となるパターンである。言い換えれば、図13に示す光学異方性層36aの液晶配向パターンは、液晶化合物40の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化する一方向が、液晶層36の中心から放射状に設けられた液晶配向パターンである。
 図13に示す光学異方性層36aにおいて、液晶化合物40の光学軸(図示省略)は、液晶化合物40の長手方向である。
 光学異方性層36aでは、液晶化合物40の光学軸の向きは、光学異方性層36aの中心から外側に向かう多数の方向、例えば、矢印A1で示す方向、矢印A2で示す方向、矢印A3で示す方向…に沿って、連続的に回転しながら変化している。矢印A1、矢印A2、および、矢印A3は、後述する配列軸である。
 液晶回折素子が有する光学異方性層36aは、液晶配向パターンの1周期Λが、面内において異なる領域を有している。ここで、液晶配向パターンの1周期Λとは、液晶配向パターンの、面内で光学軸の向きが連続的に回転して変化する一方向において、液晶化合物40の光学軸が180°回転する長さ(距離)である。
 具体的には、例えば、図13における矢印A1に沿った方向では、液晶化合物40の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化する方向において、中心から外側に向かうにしたがって、1周期Λが漸次、短くなる構成を有する。すなわち、図13において、外側付近の1周期は、中心部付近の1周期よりも短い。
 なお、本発明において、1周期Λが漸次変化するとは、1周期Λが連続的に変化するもの、および、1周期Λが段階的に変化するものを意図している。
 後に詳述するが、液晶回折素子による回折角度は、液晶配向パターンの1周期Λに依存し、1周期Λが小さいほど回折角度が大きくなる。
 光学異方性層36aが、液晶配向パターンが液晶化合物40の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化する一方向を、光学異方性層36aの中心から放射状に設けられ、各方向において、中心から外側に向かうにしたがって、液晶配向パターンの1周期Λが漸次、短くなる構成を有すると、この液晶配向パターンを有する光学異方性層36aに入射した円偏光は、液晶化合物40の光学軸の向きが異なる個々の局所的な領域において、それぞれ屈曲(回折)される。この際に、それぞれの回折角度は、円偏光が入射した領域における1周期に応じて異なる。同心円状の液晶配向パターン、すなわち、放射状に光学軸が連続的に回転して変化する液晶配向パターンを有する光学異方性層36aは、液晶化合物40の光学軸の回転方向および入射する円偏光の方向に応じて、入射光を、集束光として透過できる。
 すなわち、光学異方性層36aの液晶配向パターンを同心円状とすることにより、液晶回折素子10aは、例えば、凸レンズとして機能を発現する。
 ここで、本発明においては、図1に示すように、光学異方性層36aは、SEM画像において、一方の表面から他方の表面に延在する明部42および暗部44を有し、暗部44が、2つ以上の角度の変曲点を有し、厚さ方向において、暗部44の傾斜方向が異なる領域を有している。
 図1に示す例では、光学異方性層36aは、明部42および暗部44の縞模様を有し、1つの暗部44はそれぞれ、厚さ方向の2か所で、表面に対する傾斜角度が変化している。すなわち、各暗部44はそれぞれ2つの変曲点を有している。また、いずれの暗部44においても、図中上側の領域における傾斜方向と、図中下側の領域における傾斜方向とが互いに逆である。すなわち、各暗部44は、傾斜方向が異なる領域を有している。
 また、図9に示す液晶回折素子は、支持体30を有しているが、支持体30を設けなくてもよい。
 例えば、本発明の光学素子は、上記構成から、支持体30を剥離して、配向膜および液晶層のみで、または、配向膜も剥離して、液晶層のみで、本発明の光学素子を構成してもよい。
 すなわち、液晶回折素子は、液晶層が、液晶化合物由来の光学軸の向きが一方向に向かって回転する液晶配向パターンを有するものであれば、各種の層構成が利用可能である。
 上述のように、本発明の液晶回折素子は、断面SEM画像において観察される暗部44が、2か所以上の角度の変曲点を有し、かつ、厚さ方向において、傾斜方向が異なる領域を有する。そのため、本発明の液晶回折素子は、回折効率の波長依存性が小さく、波長によらず同様の回折効率で光を回折できる。しかも、このような本発明の液晶回折素子は、波長によらず、高い回折効率で光を回折できる。
 また、本発明の液晶回折素子の液晶配向パターンは、光学軸が180°回転する1周期の長さが面内で変化してもよい。1周期の長さが面内で変化する場合、本発明の液晶回折素子は、面内における光の入射位置によって、波長が同じ光を異なる角度で回折(屈折)する。従って、本発明の液晶回折素子は、VR用のヘッドマウントディスプレイにおけるレンズ素子、および、屈折レンズと組み合わせることで色割れを改善するレンズ素子等、入射位置によらず、同じ波長の光を異なる角度で回折することが要求される各種の光学装置にも、好適に利用可能である。
 <<支持体>>
 支持体30は、配向膜32、ならびに、光学異方性層36aを支持するものである。
 支持体30は、配向膜および光学異方性層を支持できるものであれば、各種のシート状物(フィルム、板状物)が利用可能である。
 支持体30としては、透明支持体が好ましく、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリル系樹脂フィルム、セルローストリアセテート等のセルロース系樹脂フィルム、シクロオレフィンポリマー系フィルム(例えば、商品名「アートン」、JSR社製、商品名「ゼオノア」、日本ゼオン社製)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、および、ポリ塩化ビニル等を挙げることができる。支持体は、可撓性のフィルムに限らず、ガラス基板等の非可撓性の基板であってもよい。
 また、支持体30は、多層のものであってもよい。多層の支持体としては、上述した支持体のいずれかなどを基板として含み、この基板の表面に他の層を設けたもの等が例示される。
 支持体30の厚さには、制限はなく、液晶回折素子の用途および支持体30の形成材料等に応じて、配向膜および光学異方性層を保持できる厚さを、適宜、設定すればよい。
 支持体30の厚さは、1~1000μmが好ましく、3~250μmがより好ましく、5~150μmがさらに好ましい。
 <<配向膜>>
 支持体30の表面には配向膜32が形成される。
 配向膜32は、光学異方性層36aを形成する際に、液晶化合物40を上述した所定の液晶配向パターンに配向するための配向膜である。
 上述したとおり、本発明の液晶回折素子において、光学異方性層は、液晶化合物40に由来する光学軸40A(図8参照)の向きが、面内の一方向(後述する矢印X方向)に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有する。従って、配向膜は、光学異方性層が、この液晶配向パターンを形成できるように、形成される。
 また、液晶配向パターンにおける、光学軸30Aの向きが連続的に回転しながら変化する一方向において、光学軸30Aの向きが180°回転する長さを1周期Λ(光学軸の回転周期)とする。
 以下の説明では、『光学軸40Aの向きが回転』を単に『光学軸40Aが回転』とも言う。
 配向膜は、公知の各種のものが利用可能である。
 例えば、ポリマーなどの有機化合物からなるラビング処理膜、無機化合物の斜方蒸着膜、マイクログルーブを有する膜、ならびに、ω-トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライドおよびステアリル酸メチルなどの有機化合物のラングミュア・ブロジェット法によるLB(Langmuir-Blodgett:ラングミュア・ブロジェット)膜を累積させた膜、等が例示される。
 ラビング処理による配向膜は、ポリマー層の表面を紙または布で一定方向に数回こすることにより形成できる。配向膜に使用する材料としては、ポリイミド、ポリビニルアルコール、特開平9-152509号公報に記載された重合性基を有するポリマー、特開2005-97377号公報、特開2005-99228号公報、および、特開2005-128503号公報記載の配向膜等の形成に用いられる材料が好ましく例示される。
 本発明の液晶回折素子においては、配向膜は、光配向性の素材に偏光または非偏光を照射して配向膜とした、いわゆる光配向膜が好適に利用される。すなわち、本発明の液晶回折素子においては、配向膜として、支持体30上に、光配向材料を塗布して形成した光配向膜が、好適に利用される。
 偏光の照射は、光配向膜に対して、垂直方向または斜め方向から行うことができ、非偏光の照射は、光配向膜に対して、斜め方向から行うことができる。
 本発明に利用可能な光配向膜に用いられる光配向材料としては、例えば、特開2006-285197号公報、特開2007-76839号公報、特開2007-138138号公報、特開2007-94071号公報、特開2007-121721号公報、特開2007-140465号公報、特開2007-156439号公報、特開2007-133184号公報、特開2009-109831号公報、特許第3883848号公報および特許第4151746号公報に記載のアゾ化合物、特開2002-229039号公報に記載の芳香族エステル化合物、特開2002-265541号公報および特開2002-317013号公報に記載の光配向性単位を有するマレイミドおよび/またはアルケニル置換ナジイミド化合物、特許第4205195号および特許第4205198号に記載の光架橋性シラン誘導体、特表2003-520878号公報、特表2004-529220号公報および特許第4162850号に記載の光架橋性ポリイミド、光架橋性ポリアミドおよび光架橋性エステル、ならびに、特開平9-118717号公報、特表平10-506420号公報、特表2003-505561号公報、国際公開第2010/150748号、特開2013-177561号公報および特開2014-12823号公報に記載の光二量化可能な化合物、特にシンナメート化合物、カルコン化合物およびクマリン化合物等が、好ましい例として例示される。
 中でも、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、光架橋性ポリアミド、光架橋性エステル、シンナメート化合物、および、カルコン化合物は、好適に利用される。
 配向膜の厚さには制限はなく、配向膜の形成材料に応じて、必要な配向機能を得られる厚さを、適宜、設定すればよい。
 配向膜の厚さは、0.01~5μmが好ましく、0.05~2μmがより好ましい。
 配向膜の形成方法には、制限はなく、配向膜の形成材料に応じた公知の方法が、各種、利用可能である。一例として、配向膜を支持体30の表面に塗布して乾燥させた後、配向膜をレーザー光によって露光して、配向パターンを形成する方法が例示される。
 図10に、配向膜を露光して、上述した配向パターンを形成する露光装置の一例を概念的に示す。
 図10に示す露光装置60は、レーザー62を備えた光源64と、レーザー62が出射したレーザー光Mの偏光方向を変えるλ/2板65と、レーザー62から出射したレーザー光Mを光線MAおよびMBの2つに分離するビームスプリッター68と、分離された2つの光線MAおよびMBの光路上にそれぞれ配置されたミラー70Aおよび70Bと、λ/4板72Aおよび72Bと、を備える。
 なお、図示は省略するが、光源64は直線偏光P0を出射する。λ/4板72Aは、直線偏光P0(光線MA)を右円偏光PRに、λ/4板72Bは直線偏光P0(光線MB)を左円偏光PLに、それぞれ変換する。
 配向パターンを形成される前の配向膜32を有する支持体30が露光部に配置され、2つの光線MAと光線MBとを配向膜32上において交差させて干渉させ、その干渉光を配向膜32に照射して露光する。
 この際の干渉により、配向膜32に照射される光の偏光状態が干渉縞状に周期的に変化するものとなる。これにより、配向膜32において、配向状態が周期的に変化する配向パターンが得られる。すなわち、配向状態が周期的に変化する配向パターンを有する配向膜(以下、パターン配向膜ともいう)が得られる。
 露光装置60においては、2つの光線MAおよびMBの交差角αを変化させることにより、配向パターンの周期を調節できる。すなわち、露光装置60においては、交差角αを調節することにより、液晶化合物40に由来する光学軸40Aが一方向に沿って連続的に回転する配向パターンにおいて、光学軸40Aが回転する1方向における、光学軸40Aが180°回転する1周期の長さ(1周期Λ)を調節できる。
 このような配向状態が周期的に変化した配向パターンを有するパターン配向膜上に、光学異方性層を形成することにより、後述するように、液晶化合物40に由来する光学軸40Aが一方向に向かって連続的に回転する液晶配向パターンを有する、光学異方性層36aを形成できる。
 また、λ/4板72Aおよび72Bの光学軸を各々90°回転することにより、光学軸40Aの回転方向を逆にすることができる。
 上述のとおり、パターン配向膜は、パターン配向膜の上に形成される光学異方性層中の液晶化合物に由来する光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンとなるように、液晶化合物40を配向させる配向パターンを有する。パターン配向膜が、液晶化合物40を配向させる向きに沿った軸を配列軸とすると、パターン配向膜は、配列軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している配向パターンを有するといえる。パターン配向膜の配列軸は、吸収異方性を測定することで検出することができる。例えば、パターン配向膜に直線偏光を回転させながら照射して、パターン配向膜を透過する光の光量を測定した際に、光量が最大または最小となる向きが、面内の一方向に沿って漸次変化して観測される。
 なお、本発明の液晶回折素子において、配向膜は、好ましい態様として設けられるものであり、必須の構成要件ではない。
 例えば、支持体30をラビング処理する方法、支持体30をレーザー光等で加工する方法等によって、支持体30に配向パターンを形成することで、光学異方性層36a等が、液晶化合物40に由来する光学軸40Aの向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有する構成とすることも、可能である。
 配向膜32の露光装置としては、図10に示すような例に限定はされない。図14に配向膜32を露光する露光装置の別の例を示す。図14に示す露光装置は、配向膜に、図13に示すような同心円状の配向パターンを形成する露光装置の一例である。
 露光装置80は、レーザ82を備えた光源84と、レーザ82からのレーザ光MをS偏光MSとP偏光MPとに分割する偏光ビームスプリッター86と、P偏光MPの光路に配置されたミラー90AおよびS偏光MSの光路に配置されたミラー90Bと、S偏光MSの光路に配置されたレンズ92と、偏光ビームスプリッター94と、λ/4板96とを有する。
 偏光ビームスプリッター86で分割されたP偏光MPは、ミラー90Aによって反射されて、偏光ビームスプリッター94に入射する。他方、偏光ビームスプリッター86で分割されたS偏光MSは、ミラー90Bによって反射され、レンズ92によって集光されて偏光ビームスプリッター94に入射する。
 P偏光MPおよびS偏光MSは、偏光ビームスプリッター94で合波されて、λ/4板96によって偏光方向に応じた右円偏光および左円偏光となって、支持体30の上の配向膜32に入射する。
 ここで、右円偏光と左円偏光の干渉により、配向膜に照射される光の偏光状態が干渉縞状に周期的に変化するものとなる。同心円の内側から外側に向かうにしたがい、左円偏光と右円偏光の交差角が変化するため、内側から外側に向かってピッチが変化する露光パターンが得られる。これにより、配向膜において、配向状態が周期的に変化する同心円状の配向パターンが得られる。
 この露光装置80において、液晶化合物40の光学軸が一方向に沿って連続的に180°回転する液晶配向パターンの1周期Λは、レンズ92の屈折力(レンズ92のFナンバー)レンズ92の焦点距離、および、レンズ92と配向膜32との距離等を変化させることで、制御できる。
 また、レンズ92の屈折力(レンズ92のFナンバー)を調節することによって、光学軸が連続的に回転する一方向において、液晶配向パターンの1周期の長さΛを変更できる。
 具体的には、平行光と干渉させる、レンズ92で広げる光の広がり角によって、光学軸が連続的に回転する一方向において、液晶配向パターンの1周期の長さΛを変えることができる。より具体的には、レンズ92の屈折力を弱くすると、平行光に近づくため、液晶配向パターンの1周期の長さΛは、内側から外側に向かって緩やかに短くなり、Fナンバーは大きくなる。逆に、レンズ92の屈折力を強めると、液晶配向パターンの1周期の長さΛは、内側から外側に向かって急に短くなり、Fナンバーは小さくなる。
 なお、例えば透過光に光量分布を設けたい場合など、液晶回折素子の用途によって、配列軸D方向に向かって、1周期Λを漸次、変更するのではなく、配列軸D方向において、部分的に1周期Λが異なる領域を有する構成も利用可能である。例えば、部分的に1周期Λを変更する方法として、集光したレーザー光の偏光方向を任意に変えながら、光配向膜をスキャン露光してパターニングする方法等を利用することができる。
 また、配向膜の露光に使用するレーザーの波長は、使用する配向膜の種類等に応じて、適宜設定することができる。例えば、深紫外~可視光~赤外の波長のレーザーを好ましく用いることができる。一例として、波長266nm、325nm、355nm、370nm、385nm、405nm、および、460nmなどの波長のレーザーを用いることができるが、上記には限定されず、配向膜の種類等に応じて様々な波長のレーザーを用いることができる。
 配向膜上に光学異方性層を設けた後、光学異方性層を配向膜から剥離・転写しても良い。転写は、光学異方性層の貼合面に応じて、複数回実施する事もできる。目的に応じて剥離・転写方法を自由に選択する事ができるが、例えば、接着層を有する基材に一度転写した後、転写したい物体に再転写し、前記基材を剥離する事で、光学異方性層の配向膜側の界面を、転写したい物体側になる様にする事ができる。また、光学異方性層の配向膜とは逆側の面を、転写したい物体側にする場合は、光学異方性層と転写したい物体を、接着剤を介して貼り合わせた後、配向膜から光学異方性層を剥離しても良い。
光学異方性層を配向膜から剥離する場合は、光学異方性層、配向膜のダメージ(裂け、クニックなど)を低減するために、剥離角度や速度などを調節する事が好ましい。
また、配向膜は配向性に問題ない範囲で、繰り返し用いても良い。配向膜上に光学異方性層を設ける前に、配向膜を有機溶媒などで洗浄する事もできる。
 <<光学異方性層>>
 配向膜32の表面には、光学異方性層36aが形成される。
 なお、図8においては、図面を簡略化して光学異方性層36aの構成を明確に示すために、光学異方性層36aは、配向膜の表面の液晶化合物40(液晶化合物分子)のみを示している。しかしながら、光学異方性層36aは、図9に光学異方性層36aを例示して概念的に示すように、通常の液晶化合物を含む組成物を用いて形成された光学異方性層と同様に、配向された液晶化合物40が積み重ねられた構造を有する。
 また、光学異方性層36aは、上述のように、下から、暗部44の変曲点に応じて、領域37c、領域37bおよび領域37aの、3つの領域を有するが、図9では、図面を簡略化するために、最も下(支持体30側)の領域37cのみを示している。
 前述のように、本発明の液晶回折素子において、光学異方性層36aは、液晶化合物を含む組成物を用いて形成されたものである。
 光学異方性層は、面内レタデーションの値をλ/2に設定した場合に、一般的なλ/2板としての機能、すなわち、光学異方性層に入射した光に含まれる互いに直交する2つの直線偏光成分に半波長すなわち180°の位相差を与える機能を有している。
 ここで、光学異方性層は、面内方向において液晶化合物が回転して配向されているため、入射した円偏光を光学軸の向きが連続的に回転している向きに屈折(回折)させて透過する。その際、入射する円偏光の旋回方向に応じて回折する方向が異なる。
 すなわち、光学異方性層は、円偏光を透過し、かつ、この透過光を回折する。
 また、光学異方性層は、透過した円偏光の旋回方向を逆方向に変化させる。
 光学異方性層36aは、光学異方性層の面内において、液晶化合物に由来する光学軸の向きが、矢印D(以下、配列軸Dともいう)で示す一方向に連続的に回転しながら変化する液晶配向パターンを有する。図8に示す例では、配列軸Dの方向はX方向とし、配列軸Dの方向と直交する方向をY方向とする。
 なお、液晶化合物40に由来する光学軸40Aとは、液晶化合物40において屈折率が最も高くなる軸、いわゆる遅相軸である。例えば、液晶化合物40が棒状液晶化合物である場合には、光学軸40Aは、棒形状の長軸方向に沿っている。
 以下の説明では、液晶化合物40に由来する光学軸40Aを、『液晶化合物40の光学軸40A』または『光学軸40A』とも言う。
 光学異方性層において、液晶化合物40は、それぞれ、光学異方性層36aにおいて、矢印X方向と、この矢印X方向と直交するY方向とに平行な面内に二次元的に配向している。なお、図1~図6では、Y方向は、紙面に垂直な方向となる。
 図8に、光学異方性層36aの平面図を概念的に示す。
 なお、平面図とは、図9において、液晶回折素子を上方から見た図であり、すなわち、液晶回折素子を厚さ方向(=各層(膜)の積層方向)から見た図である。言い換えれば、光学異方性層36aを表面と直交する方向から見た図である。
 また、図8では、本発明の液晶回折素子の構成を明確に示すために、液晶化合物40は配向膜32の表面の液晶化合物40のみを示している。しかしながら、光学異方性層36aは、厚さ方向には、図9に示されるように、この配向膜32の表面の液晶化合物40から、液晶化合物40が積み重ねられた構造を有する。
 なお、図8では、光学異方性層36aの面内の一部を代表例として説明するが、光学異方性層の面内の各位置においては、基本的に、同様の構成および作用効果を有する。
 光学異方性層36aは、光学異方性層36aの面内において、光学軸40Aの向きが、配列軸D方向に沿って連続的に回転しながら変化する液晶配向パターンを有する。
 光学軸40Aの向きが配列軸D方向(所定の一方向)に連続的に回転しながら変化しているとは、具体的には、配列軸D方向に沿って配列されている液晶化合物40の光学軸40Aと、配列軸D方向とが成す角度が、配列軸D方向の位置によって異なっており、配列軸D方向に沿って、光学軸40Aと配列軸D方向とが成す角度がθからθ+180°あるいはθ-180°まで、順次、変化していることを意味する。
 なお、配列軸D方向に互いに隣接する液晶化合物40の光学軸40Aの角度の差は、45°以下であるのが好ましく、15°以下であるのがより好ましく、より小さい角度であるのがさらに好ましい。
 一方、光学異方性層36aを形成する液晶化合物40は、配列軸D方向と直交するY方向、すなわち光学軸40Aが連続的に回転する一方向と直交するY方向では、光学軸40Aの向きが等しい液晶化合物40が等間隔で配列されている。
 言い換えれば、光学異方性層36aを形成する液晶化合物40において、Y方向に配列される液晶化合物40同士では、光学軸40Aの向きと配列軸D方向とが成す角度が等しい。
 本発明の液晶回折素子は、このような液晶化合物40の液晶配向パターンにおいて、面内で光学軸40Aの向きが連続的に回転して変化する配列軸D方向に、光学軸40Aが180°回転する長さ(距離)を、液晶配向パターンにおける1周期の長さΛとする。言い換えれば、液晶配向パターンにおける1周期の長さは、光学軸40Aと配列軸D方向とのなす角度がθからθ+180°となるまでの距離により定義される。液晶配向パターンにおける1周期の長さとは、回折素子の周期構造における1周期の長さである。
 すなわち、配列軸D方向に対する角度が等しい2つの液晶化合物40の、配列軸D方向の中心間の距離を、1周期の長さΛとする。具体的には、図8に示すように、配列軸D方向と光学軸40Aの方向とが一致する2つの液晶化合物40の、配列軸D方向の中心間の距離を、1周期の長さΛとする。以下の説明では、この1周期の長さΛを『1周期Λ』とも言う。
 本発明の液晶回折素子において、光学異方性層の液晶配向パターンは、この1周期Λを、配列軸D方向すなわち光学軸40Aの向きが連続的に回転して変化する一方向に繰り返す。
 前述のように光学異方性層において、Y方向に配列される液晶化合物は、光学軸40Aと配列軸D方向(液晶化合物40の光学軸の向きが回転する1方向)とが成す角度が等しい。この光学軸40Aと配列軸D方向とが成す角度が等しい液晶化合物40が、Y方向に配置された領域を、領域Rとする。
 この場合に、それぞれの領域Rにおける面内レタデーション(Re)の値は、半波長すなわちλ/2であるのが好ましい。これらの面内レタデーションは、領域Rの屈折率異方性に伴う屈折率差Δnと光学異方性層の厚さとの積により算出される。ここで、光学異方性層における領域Rの屈折率異方性に伴う屈折率差とは、領域Rの面内における遅相軸の方向の屈折率と、遅相軸の方向に直交する方向の屈折率との差により定義される屈折率差である。すなわち、領域Rの屈折率異方性に伴う屈折率差Δnは、光学軸40Aの方向の液晶化合物40の屈折率と、領域Rの面内において光学軸40Aに垂直な方向の液晶化合物40の屈折率との差に等しい。つまり、上記屈折率差Δnは、液晶化合物の屈折率差に等しい。
 このような光学異方性層36aに円偏光が入射すると、光は、回折(屈折)され、かつ、円偏光の方向が変換される。
 この作用を、図11および図12に光学異方性層36aを例示して概念的に示す。なお、図11および図12においては、図面を簡略化して液晶回折素子の構成を明確に示すために、光学異方性層36aは、配向膜の表面の液晶化合物40(液晶化合物分子)のみを示している。
 また、光学異方性層36aは、液晶化合物の屈折率差と光学異方性層の厚さとの積の値がλ/2であるとする。
 図11に示すように、光学異方性層36aの液晶化合物の屈折率差と光学異方性層の厚さとの積の値がλ/2の場合に、光学異方性層36aに左円偏光である入射光L1が入射すると、入射光L1は、光学異方性層36aを通過することにより180°の位相差が与えられて、透過光L2は、右円偏光に変換される。
 また、光学異方性層36aに形成された液晶配向パターンは、配列軸D方向に周期的なパターンであるため、透過光L2は、入射光L1の進行方向とは異なる方向に進行する。このように、左円偏光の入射光L1は、入射方向に対して配列軸D方向に一定の角度だけ傾いた、右円偏光の透過光L2に変換される。
 一方、図12に示すように、光学異方性層36aの液晶化合物の屈折率差と光学異方性層36aの厚さとの積の値がλ/2のとき、光学異方性層36aに右円偏光の入射光L4が入射すると、入射光L4は、光学異方性層36aを通過することにより、180°の位相差が与えられて、左円偏光の透過光L5に変換される。
 また、光学異方性層36aに形成された液晶配向パターンは、配列軸D方向に周期的なパターンであるため、透過光L5は、入射光L4の進行方向とは異なる方向に進行する。このとき、透過光L5は透過光L2と異なる方向、つまり、入射方向に対して配列軸D方向とは逆の方向に進行する。このように、入射光L4は、入射方向に対して配列軸D方向とは逆の方向に一定の角度だけ傾いた左円偏光の透過光L5に変換される。
 光学異方性層36aは、形成される液晶配向パターンの1周期Λを変化させることにより、透過光L2およびL5の回折(屈折)の角度を調節できる。具体的には、光学異方性層36aは、液晶配向パターンの1周期Λが短いほど、互いに隣接した液晶化合物40を通過した光同士が強く干渉するため、透過光L2およびL5を大きく回折できる。
 また、配列軸D方向に沿って回転する、液晶化合物40の光学軸40Aの回転方向を逆方向にすることにより、透過光の回折の方向を、逆方向にできる。すなわち、図11~図12に示す例では、配列軸D方向に向かう光学軸40Aの回転方向は時計回りであるが、この回転方向を反時計回りにすることで、透過光の回折の方向を、逆方向にできる。
 ここで、光学異方性層36aによる回折の角度(屈折角度)は、入射する光の波長によって異なる。具体的には、長波長の光ほど、大きく回折される。すなわち、赤色光、緑色光および青色光であれば、赤色光が最も大きく回折され、緑色光が次いで大きく回折され、青色光の回折が最も小さい。
 なお、本発明において、光学異方性層36aの液晶配向パターンにおける1周期Λは、均一である。従って、同じ波長の光は、同じ角度で回折される。
 上述のように、光学異方性層の表面に対する暗部44の角度は、面内の一方向に向かって液晶化合物の光学軸が180°回転する長さである1周期の長さ、および、厚さ方向に捩れ配向される液晶化合物40の捩れの大きさによって、調節できる。
 1周期Λが短いほど、および、厚さ方向の捩じれが小さいほど、光学異方性層の表面に対する暗部44の角度は大きくなる。すなわち、1周期が短いほど、および、厚さ方向の捩じれが小さいほど、光学異方性層の表面に対して暗部44が立ち上がった状態となる。
 上述のように、液晶配向パターンの1周期Λが短いほど、入射光の回折角度は大きくなる。
 また、暗部44の傾斜方向、例えば、図中右上方に向かう傾斜方向と、図中左上方に向かう傾斜方向とは、面内の一方向に向かう光学軸40Aの回転方向(時計回りか、反時計回りか)、および、液晶化合物40の厚さ方向の捩れ方向(時計回りか、反時計回りか)によって、選択できる。
 光学異方性層36aにおいて、複数の領域Rの面内レタデーションの値は、半波長であるのが好ましいが、波長が550nmである入射光に対する光学異方性層36aの複数の領域Rの面内レタデーションRe(550)=Δn550×dが下記式(1)に規定される範囲内であるのが好ましい。ここで、Δn550は、入射光の波長が550nmである場合の、領域Rの屈折率異方性に伴う屈折率差であり、dは、光学異方性層36aの厚さである。
  200nm≦Δn550×d≦350nm・・・(1)
 すなわち、光学異方性層36aの複数の領域Rの面内レタデーションRe(550)=Δn550×dが式(1)を満たしていれば、光学異方性層36aに入射した光の十分な量の円偏光成分を、配列軸D方向に対して順方向または逆方向に傾いた方向に進行する円偏光に変換することができる。面内レタデーションRe(550)=Δn550×dは、225nm≦Δn550×d≦340nmがより好ましく、250nm≦Δn550×d≦330nmがさらに好ましい。
 なお、上記式(1)は波長550nmである入射光に対する範囲であるが、波長がλnmである入射光に対する光学異方性層の複数の領域Rの面内レタデーションRe(λ)=Δnλ×dは下記式(1-2)に規定される範囲内であるのが好ましく、適宜設定することができる。
  0.7×(λ/2)nm≦Δnλ×d≦1.3×(λ/2)nm・・・(1-2)
 また、光学異方性層36aにおける、複数の領域Rの面内レタデーションの値は、上記式(1)の範囲外で用いることもできる。具体的には、Δn550×d<200nmまたは350nm<Δn550×dとすることで、入射光の進行方向と同一の方向に進行する光と、入射光の進行方向とは異なる方向に進行する光に分けることができる。Δn550×dが0nmまたは550nmに近づくと入射光の進行方向と同一の方向に進行する光の成分は増加し、入射光の進行方向とは異なる方向に進行する光の成分は減少する。
 さらに、波長が450nmの入射光に対する光学異方性層36aの領域Rのそれぞれの面内レタデーションRe(450)=Δn450×dと、波長が550nmの入射光に対する光学異方性層36aの領域Rのそれぞれの面内レタデーションRe(550)=Δn550×dは、下記式(2)を満たすのが好ましい。ここで、Δn450は、入射光の波長が450nmである場合の、領域Rの屈折率異方性に伴う屈折率差である。
  (Δn450×d)/(Δn550×d)<1.0・・・(2)
 式(2)は、光学異方性層36aに含まれる液晶化合物40が逆分散性を有していることを表している。すなわち、式(2)が満たされることにより、光学異方性層36aは、広帯域の波長の入射光に対応できる。
 光学異方性層は、棒状液晶化合物または円盤状液晶化合物を含む液晶組成物の硬化層からなり、棒状液晶化合物の光学軸または円盤状液晶化合物の光学軸が、上述のように配向された液晶配向パターンを有している。
 光学異方性層は、支持体30上に、上述した配向パターンを有する配向膜32を形成し、この配向膜上に液晶組成物を塗布、硬化することにより形成される。
 また、光学異方性層が有する、液晶化合物の光学軸が光学異方性層の厚さ方向で螺旋状に捩じれて回転する構造は、液晶組成物に、液晶化合物を厚さ方向に螺旋配向するキラル剤を添加することによって形成することができる。
 さらに、光学異方性層が、暗部44が2つ以上の変曲点を有し、厚さ方向において暗部44の傾斜方向が異なる領域を有する構成とするためには、厚さ方向の領域ごとに、異なる構成の光学異方性層を形成すればよい。
 例えば、図1に示す光学異方性層36aを形成する場合には、まず、支持体30上に形成された配向パターンを有する配向膜32上に、厚さ方向に右捩じれを誘起するキラル剤を含む液晶組成物を塗布し、加熱等によって液晶化合物40を厚さ方向に螺旋配向させた後に、液晶組成物を硬化して領域37cを形成する。
 配向膜32に形成された配向パターンは、面内の一方向(配列軸D)に向かって、液晶化合物40に由来する光学軸40Aが連続的に回転する配向パターンである。従って、領域37cは、面内方向では、一方向に向かって、液晶化合物40に由来する光学軸40Aが連続的に回転し、かつ、厚さ方向では、厚さ方向の上から下に向かって液晶化合物40が時計方向に捩れ配向された状態となる。
 次に、形成した領域37cの上にキラル剤を含まない以外は、領域37cと同様の液晶組成物を塗布し、液晶組成物を硬化して領域37bを形成する。
 液晶層の上に液晶層を塗布法によって形成すると、面内の液晶化合物の配向パターンは、下層の液晶層の配向パターンを踏襲する。従って、領域37bは、面内方向では、領域37cと同様、一方向に向かって、液晶化合物40に由来する光学軸40Aが連続的に回転し、かつ、厚さ方向では、捩れ配向はされずに、液晶化合物40の光学軸40Aの方向が揃った状態となる。
 さらに、形成した領域37bの上に、厚さ方向に左捩じれを誘起するキラル剤を用いる以外は領域37cと同様の液晶組成物を塗布し、加熱等によって液晶化合物40を厚さ方向に捩れ配向させた後に、液晶組成物を硬化して領域37aを形成する。
 上述のように、塗布法による液晶層は、下層の配向パターンを踏襲する。従って、領域37aは、面内方向では、領域37b等と同様、一方向に向かって、光学軸40Aが連続的に回転し、かつ、厚さ方向では、厚さ方向の上から下に向かって液晶化合物40が反時計方向に捩れ配向された状態となる。
 これにより、図1に示すような、暗部44の傾斜方向が左上方向に向かう領域37c、暗部44が厚さ方向に延在する領域37b、および、暗部44の傾斜方向が左上方向に向かう領域37aを有する光学異方性層36aが形成できる。
 厚さ方向に捩れ配向される液晶化合物の捩れ配向の大きさは、液晶組成物に添加するキラル剤の種類、および、キラル剤の添加量によって、調節可能である。
 また、厚さ方向の液晶化合物の捩れ方向(右捩じれ/左捩じれ)も、液晶組成物に添加するキラル剤の種類を選択することで、選択できる。
 また、図1に示すように、本発明の光学異方性層は、光学異方性層の界面において液晶化合物に由来する光学軸が、光学異方性層の界面に対し傾斜していない例を示したが、本発明の光学異方性層は液晶化合物に由来する光学軸が傾斜していてもよい。例えば、WO2019/189586 A1に記載のように、液晶化合物に由来する光学軸が、光学異方性層の界面に対しプレチルト角を有していてもよい。また、WO2020/122127 A1に記載のように、液晶化合物に由来する光学軸が、光学異方性層の一方の界面から、他方の界面に向けて、厚さ方向で傾斜角が変化していてもよい。液晶化合物に由来する光学軸を光学異方性層の界面に対し、傾斜させることで、光学異方性層の位相差を調節することができ、高い回折効率を得るように、適宜、調節することができる。
 また、本発明の光学異方性層は、面内で光学異方性層の膜厚が変化していてもよい。特に、液晶配向パターンにおける1周期の長さが面内で変化する液晶回折素子では、面内で光学異方性層の膜厚を変えることで、入射位置の異なる光に対して、高い回折効率を得るように、適宜、調節することができる。
 また、液晶配向パターンにおける1周期の長さが面内で変化する液晶回折素子では、図1の例で示す、光学異方性層の領域37a、領域37b、および、領域37cは、中心部分と外側部分で、各領域の厚さが同一であってもよいし、異なっていてもよい。上述の例に限らず、本発明の液晶回折素子は、光学異方性層の各領域の厚さを、面内で同じにしてもよいし、変化させてもよい。光学異方性層の各領域の厚さは、所望の性能に合せて、適宜、設定することができる。
 なお、いわゆるλ/2板として機能するのは光学異方性層であるが、本発明は、支持体および配向膜を一体的に備えた積層体がλ/2板として機能する態様を含む。
 また、光学異方性層を形成するための液晶組成物は、棒状液晶化合物または円盤状液晶化合物を含有し、さらに、レベリング剤、配向制御剤、重合開始剤および配向助剤などのその他の成分を含有していてもよい。
 本発明において、光学異方性層の厚さには制限はなく、液晶配向パターンの1周期Λ、要求される回折の角度、および、回折効率等に応じて、目的とする光学特性が得られる厚さを、適宜、設定すればよい。
 また、暗部44の変曲点に応じた各領域の厚さは、均一でも、均一ではなくてもよく、要求される回折の角度等に応じて、適宜、設定すればよい。
―棒状液晶化合物―
 棒状液晶化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶性分子だけではなく、高分子液晶性分子も用いることができる。
 棒状液晶化合物を重合によって配向を固定することがより好ましく、重合性棒状液晶化合物としては、Makromol. Chem., 190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開第95/22586号、同95/24455号、同97/00600号、同98/23580号、同98/52905号、特開平1-272551号公報、同6-16616号公報、同7-110469号公報、同11-80081号公報、および、特願2001-64627号公報などに記載の化合物を用いることができる。さらに棒状液晶化合物としては、例えば、特表平11-513019号公報および特開2007-279688号公報に記載のものも好ましく用いることができる。
―円盤状液晶化合物―
 円盤状液晶化合物としては、例えば、特開2007-108732号公報および特開2010-244038号公報に記載のものを好ましく用いることができる。
 なお、光学異方性層に円盤状液晶化合物を用いた場合には、光学異方性層において、液晶化合物40は厚さ方向に立ち上がっており、液晶化合物に由来する光学軸40Aは、円盤面に垂直な軸、いわゆる進相軸として定義される。
 液晶化合物としては、高い回折効率を得るために、屈折率異方性Δnの高い液晶化合物を好ましく用いることができる。屈折率異方性を高める事により、入射角度が変化した際の回折効率を高く維持する事ができる。屈折率異方性Δnの高い液晶化合物としては、特に限定されないが、WO2019/182129 A1に例示の化合物、および、下記一般式(I)で表される化合物を好ましく用いる事ができる。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
 一般式(I)中、
 P1およびP2は、それぞれ独立に、水素原子、-CN、-NCSまたは重合性基を表す。
 Sp1およびSp2は、それぞれ独立に、単結合または2価の連結基を表す。ただし、Sp1およびSp2は、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基および脂肪族炭化水素環基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を含む2価の連結基を表すことはない。
 Z1、Z2およびZ3は、それぞれ独立に、単結合、-O-、-S-、-CHR-、-CHRCHR-、-OCHR-、-CHRO-、-SO-、-SO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NR-、-NR-CO-、-SCHR-、-CHRS-、-SO-CHR-、-CHR-SO-、-SO-CHR-、-CHR-SO2-、-CF2O-、-OCF2-、-CF2S-、-SCF2-、-OCHRCHRO-、-SCHRCHRS-、-SO-CHRCHR-SO-、-SO2-CHRCHR-SO2-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-COO-CHRCHR-、-OCO-CHRCHR-、-CHRCHR-COO-、-CHRCHR-OCO-、-COO-CHR-、-OCO-CHR-、-CHR-COO-、-CHR-OCO-、-CR=CR-、-CR=N-、-N=CR-、-N=N-、-CR=N-N=CR-、-CF=CF-またはC≡C-を表す。Rは水素原子または炭素原子数1~10のアルキル基を表す。Rが複数存在する場合は、同一であっても異なっていてもよい。Z1およびZ2は、それぞれ複数存在する場合は、同一であっても異なっていてもよい。複数存在するZ3は、同一であっても異なっていてもよい。ただし、Sp2に連結したZ3は、単結合を表す。
1およびX2は、それぞれ独立に、単結合またはS-を表す。複数存在するX1およびX2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。ただし、複数存在するX1および複数存在するX2のうち、いずれか少なくとも1つは-S-を表す。
 kは2~4の整数を表す。
 mおよびnは、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。複数存在するmは、同一であっても異なっていてもよい。
 A1、A2、A3およびA4は、それぞれ独立に、下記一般式(B-1)~(B-7)のいずれかで表される基、または下記一般式(B-1)~(B-7)のいずれかで表される基を2つ以上3つ以下連結してなる基を表す。複数存在するA2およびA3は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。A1およびA4は、それぞれ複数存在する場合は、同一であっても異なっていてもよい。
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000002

 一般式(B-1)~(B-7)中、
 W1~W18は、それぞれ独立に、CR1またはNを表し、R1は水素原子または下記置換基Lを表す。
 Y1~Y6は、それぞれ独立に、NR2、OまたはSを表し、R2は水素原子または下記置換基Lを表す。
 G1~G4は、それぞれ独立に、CR34、NR5、OまたはSを表し、R3~R5は、それぞれ独立に、水素原子または下記置換基Lを表す。
 M1およびM2は、それぞれ独立に、CR6またはNを表し、R6は水素原子または下記置換基Lを表す。
 *は結合位置を表す。
 置換基Lは、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数1~10のアルキルアミノ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数1~10のアルカノイル基、炭素原子数1~10のアルカノイルオキシ基、炭素原子数1~10のアルカノイルアミノ基、炭素原子数1~10のアルカノイルチオ基、炭素原子数2~10のアルキルオキシカルボニル基、炭素原子数2~10のアルキルアミノカルボニル基、炭素原子数2~10のアルキルチオカルボニル基、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、カルボキシ基、スルホ基、アミド基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子または重合性基である。ただし、置換基Lとして記載した上記基が-CH-を有する場合、上記基に含まれる-CH2-の少なくとも1つを、-O-、-CO-、-CH=CH-またはC≡C-に置き換えてなる基も置換基Lに含まれる。また、置換基Lとして記載した上記基が水素原子を有する場合、上記基に含まれる水素原子の少なくとも1つを、フッ素原子および重合性基からなる群より選択される少なくとも1つに置き換えてなる基も置換基Lに含まれる。
 入射角度が変化した際の回折効率を高く維持するため、液晶化合物の屈折率異方性Δn550は0.15以上が好ましく、0,2以上がより好ましく、0.25以上がさらに好ましく、0.3以上が最も好ましい。
 また、本発明の液晶回折素子は、光学異方性層の屈折率異方性Δnや平均屈折率を面内で変えてもよい。光学異方性層の屈折率異方性Δnや平均屈折率を面内で変えることで、入射位置の異なる光に対して、回折効率を、適宜、調節することができる。
 ―キラル剤―
 キラル剤(カイラル剤)は、厚さ方向に液晶化合物を捩じれ配向する、螺旋構造を誘起する機能を有する。キラル剤は、化合物によって、誘起する螺旋の捩れ方向および/または捩じれの程度(螺旋ピッチ)が異なるため、目的に応じて選択すればよい。
 キラル剤としては、特に制限はなく、公知の化合物(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4-3項、TN(Twisted Nematic)、STN(Super Twisted Nematic)用キラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)、イソソルビド(イソソルビド構造を有するキラル剤)、および、イソマンニド誘導体等を用いることができる。
 また、キラル剤は、光の照射によって、戻り異性化、二量化、ならびに、異性化および二量化等を生じて、螺旋誘起力(HTP:Helical Twisting Power)が低下するキラル剤も、好適に利用可能である。
 キラル剤は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物または面性不斉化合物もキラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファン、および、これらの誘導体が含まれる。キラル剤は、重合性基を有していてもよい。キラル剤と液晶化合物とがいずれも重合性基を有する場合は、重合性キラル剤と重合性液晶化合物との重合反応により、重合性液晶化合物から誘導される繰り返し単位と、キラル剤から誘導される繰り返し単位とを有するポリマーを形成することができる。この態様では、重合性キラル剤が有する重合性基は、重合性液晶化合物が有する重合性基と、同種の基であるのが好ましい。従って、キラル剤の重合性基も、不飽和重合性基、エポキシ基またはアジリジニル基であるのが好ましく、不飽和重合性基であるのがより好ましく、エチレン性不飽和重合性基であるのがさらに好ましい。
 また、キラル剤は、液晶化合物であってもよい。
 キラル剤が光異性化基を有する場合には、塗布、配向後に活性光線などのフォトマスク照射によって、発光波長に対応した所望の反射波長のパターンを形成することができるので好ましい。光異性化基としては、フォトクロッミック性を示す化合物の異性化部位、アゾ基、アゾキシ基、または、シンナモイル基が好ましい。具体的な化合物として、特開2002-080478号公報、特開2002-080851号公報、特開2002-179668号公報、特開2002-179669号公報、特開2002-179670号公報、特開2002-179681号公報、特開2002-179682号公報、特開2002-338575号公報、特開2002-338668号公報、特開2003-313189号公報、および、特開2003-313292号公報等に記載の化合物を用いることができる。
 液晶組成物における、キラル剤の含有量は、目的とする厚さ方向の螺旋状の捩れ量に応じて、キラル剤の種類等に応じて、適宜、設定すればよい。
 <液晶回折素子の作用>
 前述のように、液晶化合物を含む組成物を用いて形成された、光学軸40Aの方向が配列軸D方向に沿って回転する液晶配向パターンを有する光学異方性層は、円偏光を屈折させる。
 ここで、本発明の液晶回折素子は、断面SEM画像において観察される暗部44が、2か所以上の角度の変曲点を有し、かつ、厚さ方向において、傾斜方向が異なる領域を有する。そのため、本発明の液晶回折素子は、回折効率の波長依存性が小さく、波長によらず同様の回折効率で光を回折できる。すなわち、例えば、赤色光でも、緑色光でも、青色光でも、同様の回折効率で光を回折できる。しかも、波長によらず、高い回折効率で光を回折でき、かつ、回折効率が高いほど、回折効率の波長依存性を低くできる。
 加えて、本発明の液晶回折素子において、液晶配向パターンにおいて、液晶化合物に由来する光学軸が180°回転する1周期Λが一定である。そのため、面内における光の入射位置によらず、波長が同じであれば同じ角度で光を回折(屈折)する。すなわち、例えば赤色光であれば、液晶回折素子への入射位置によらず、同じ角度で光を回折することができる。
 また、図13等に示す例では、光学異方性層が、液晶化合物由来の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化する一方向を、内側から外側に向かう同心円状に有する、同心円状の液晶配向パターンを有する構成としたがこれに限定はされない。
 例えば、光学異方性層の液晶配向パターンの配列軸Dを一方向に有し、1周期Λがこの一方向に沿って漸次変化してもよい。
 また、液晶配向パターンが、内側から外側に向かって対称な同心円状でなく、非対称な液晶配向パターンであってもよい。そのとき、液晶配向パターンの中心が、液晶回折素子の中心と異なっていてもよい。液晶配向パターンは上述の構成には限定されず、液晶回折素子に求められる機能に応じて、適宜、設定すればよい。
 このような本発明の液晶回折素子は、円偏光板と組み合わせる形態も好ましく用いることができる。
 本発明の液晶回折素子に入射した円偏光の一部は回折されずに、液晶回折素子を透過する場合がある(0次光)。液晶回折素子に回折されなかった円偏光は、用途によって性能を低下させる恐れがある。これに対して、液晶回折素子と円偏光板とを組み合わせることで、液晶回折素子で回折されずに透過した光(0次光)を低減することができる。
 以下、本発明の液晶回折素子と円偏光板とを有する、本発明の光学素子について説明する。なお、円偏光板は、一例として、位相差板と直線偏光板とを有するものであり、本発明の光学素子は、液晶回折素子と、位相差板と直線偏光板とを、この順番で配置したものである。
 本発明の液晶回折素子に右円偏光を入射すると、入射した右円偏光は回折されて液晶回折素子から出射される。また、回折される際に右円偏光は左円偏光に変換される。液晶回折素子に回折された左円偏光(すなわち、1次光)は、円偏光板の位相差板(1/4波長板)によって直線偏光に変換される。位相差板によって変換された直線偏光は、直線偏光板を透過して出射される。
 ここで、液晶回折素子で一部の光が回折されなかった場合、液晶回折素子に入射した右円偏光の一部は回折されずに、液晶回折素子を透過する。円偏光板がない場合には、液晶回折素子で回折されなかった右円偏光は、そのまま直進する。この直進する右円偏光は用途によって不要な光となり性能を低下させる。
 これに対して、本発明の液晶回折素子と円偏光板とを有する本発明の光学素子では、液晶回折素子で回折されなかった右円偏光(すなわち、0次光)は、円偏光板の位相差板に入射して回折された左円偏光(1次光)と直交する方向の直線偏光に変換され、直線偏光板に入射して吸収される。すなわち、液晶回折素子によって回折されなかった右円偏光は、円偏光板によって吸収される。従って、左円偏光による所望の1次光を透過させ、回折されなかった右円偏光は低減することができる。そのため、不要な光(0次光)により性能が低下することを抑制することができる。
 本発明の液晶回折素子と円偏光板とを組み合わせた、本発明の光学素子において、円偏光板の下流に他の光学素子を組み合わせて用いてもよい。
 一例として、円偏光板の下流に位相差板を配置してもよい。上述のように、円偏光板は、位相差板と直線偏光板をこの順で配置したものである。具体的には、円偏光板を透過した直線偏光を、円偏光板の下流に配置した位相差板により円偏光、楕円偏光、および、偏光方向の異なる直線偏光等に変換する構成も好ましく用いることができる。
 また、位相差板に替えて、少なくとも一部の波長域の光の偏光状態を解消する偏光解消層を用いてもよい。偏光解消層としては、高位相差フィルムおよび光散乱層等が例示される。このように円偏光板から出射した光の偏光状態を制御することにより、用途に応じて偏光状態を合せることができる。なお、高位相差フィルムとは、例えば、面内位相差が3000nm以上のフィルムである。
 他の一例として、円偏光板の下流に光を偏向する光学素子を配置してもよい。例えば、円偏光板の下流にレンズ等の光を偏向する光学素子を配置することにより、円偏光板から出射した光の進行方向を変えることができる。このように円偏光板から出射した光の偏向方向を制御することにより、用途に応じて光の出射方向を合せることができる。
 <偏光板>
 本発明で用いる直線偏光板は、一方の偏光方向の直線偏光を透過し、他方の偏光方向の直線偏光を吸収する機能を有する直線偏光板であれば、特に限定されず、従来公知の直線偏光板を利用することができる。直線偏光板は、吸収型の直線偏光板であっても反射型の直線偏光板であってもよい。
 吸収型直線偏光板としては、吸収型偏光子であるヨウ素系偏光子、二色性染料を利用した染料系偏光子、および、ポリエン系偏光子などが用いられる。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子には、塗布型偏光子と延伸型偏光子があり、いずれも適用できる。なかでも、ポリビニルアルコールにヨウ素または二色性染料を吸着させ、延伸して作製される偏光子が好ましい。
 また、基材上にポリビニルアルコール層を形成した積層フィルムの状態で延伸および染色を施すことで偏光子を得る方法として、特許第5048120号公報、特許第5143918号公報、特許第4691205号公報、特許第4751481号公報、および、特許第4751486号公報に記載される方法を挙げることができる。さらに、これらの偏光子に関する公知の技術も好ましく利用することができる。
 吸収型偏光子としては、延伸を行わず、液晶の配向性を利用して二色性色素を配向させた偏光子は特に好ましい。この偏光子は、厚さが0.1~5μm程度と非常に薄層化できること、特開2019-194685号公報に記載されているように折り曲げた時のクラックが入りにくいことや熱変形が小さいこと、特許6483486号公報に記載されるように50%を超えるような透過率の高い偏光板でも耐久性に優れること、および、加熱成形性に優れること等、多くの長所を有する。
 二色性色素を配向させた偏光子は、これらの長所を生かして、高輝度が求められる用途、小型軽量が求められる用途、微細な光学系用途、曲面を有する部位への成形用途、および、フレキシブルな部位への用途が可能である。また、支持体を剥離して偏光子を転写して使用することも可能である。
 ヘッドアップディスプレイ等の車載ディスプレイ光学系、ARグラスおよびVRグラス等の光学系、LiDAR、顔認証システム、ならびに、偏光イメージング等の光学センサなどの用途では、迷光抑止の目的で吸収型偏光子を組み込むことも好ましい。
 反射型の直線偏光板としては、例えば、特開2011-053705号公報に記載されているような、2種のポリマーを含む層を延伸したフィルム、および、ワイヤーグリッド偏光子等を用いることができる。輝度の観点から、ポリマーを含む層を延伸したフィルムが好ましい。
 反射型の直線偏光板は、市販品も利用可能である。反射型の直線偏光板の市販品としては、3M社製の反射型偏光子(商品名APF)、および、旭化成株式会社製のワイヤーグリッド偏光子(商品名WGF)等を、好適に用いることができる。あるいは、コレステリック液晶膜とλ/4板とを組み合わせた反射型直線偏光板を用いても良い。
 本発明に用いる偏光板は、表面が平滑であることが好ましい。特に、偏光板をレンズ等に適用する場合は、レンズの像拡大の効果によって、僅かな表面凹凸が像の歪みに繋がることがあるため、表面に凹凸がないことが望まれる。
 具体的には、偏光板は、表面の平均算術粗さRaが50nm以下であるのが好ましく、30nm以下であるのがさらにより好ましく、10nm以下であるのがさらには好ましく、5nm以下であるのが特に好ましい。また、偏光板は、その表面上において、1平方ミリメートルの範囲内における表面凹凸の高低差が、100nm以下であるのが好ましく、50nm以下であるのがより好ましく、20nm以下であるのさらに好ましい。
 表面の凹凸および平均算術粗さは、粗さ計および干渉計等を用いて測定することができる。例えば、株式会社菱化システム製の干渉計「vertscan」を用いて測定することができる。
<位相差板>
 本発明で用いる位相差板は、入射した偏光の位相を変換する位相差板である。位相差板は、入射する偏光を直線偏光に近くなるように変換するか、円偏光に近くなるように変換するかに応じて、遅相軸の方向を調節して配置される。具体的には、位相差板は、隣接して配置される直線偏光板の吸収軸に対して、遅相軸が+45°または-45°となるように配置すればよい。
 本発明に用いる位相差板は、光学異方性層1層で構成された単層型でもよいし、それぞれ複数の異なる遅相軸を持つ2層以上の光学異方性層の積層によって構成された複層型もよい。複層型の位相差板の例として、国際公開第2013/137464公報、国際公開第2016/158300号、特開2014-209219号公報、特開2014-209220号公報、国際公開第2014/157079号、特開2019-215416号公報、および、国際公開第2019/160044号等が挙げられるが、これに限定されない。
 直線偏光を円偏光に変換し、または、円偏光を直線偏光に変換する観点から、位相差板は、λ/4板であることが好ましい。
 λ/4板には制限はなく、公知のλ/4機能を有する板が、各種、利用可能である。λ/4板の具体例としては、例えば米国特許出願公開2015/0277006号明細書に記載のものなどが挙げられる。
 例えば、λ/4板が単層構造である態様としては、具体的には、延伸ポリマーフィルム、および、支持体上にλ/4機能を有する光学異方性層を設けた位相差フィルム等が挙げられる。また、λ/4板が複層構造である態様としては、具体的には、λ/4板とλ/2波長板とを積層してなる広帯域λ/4板が挙げられる。
 λ/4板の厚さは特に制限はないが、1~500μmが好ましく、1~50μmがより好ましく、1~5μmがさらに好ましい。
 本発明に用いられる位相差板は、逆波長分散性を有することが好ましい。逆波長分散性を有することで、位相差板における位相変化が理想的になり、直線偏光と円偏光との間の変換が理想的になる。
 本発明の液晶回折素子と円偏光板とを組み合わせた形態において、円偏光板の下流に他の光学素子を組み合わせて用いてもよい。
 一例として、円偏光板の下流に位相差板を配置してもよい。円偏光板(位相差板と直線偏光板をこの順で配置)を透過した直線偏光を、円偏光板の下流に配置した位相差板により円偏光および楕円偏光、偏光方向の異なる直線偏光に変換する構成も好ましく用いることができる。また、位相差板に替えて、少なくとも一部の波長域の光の偏光状態を解消する偏光解消層を用いてもよい。偏光解消層としては、高位相差フィルム(面内位相差が3000nm以上)、および、光散乱層等を用いることができる。このように円偏光板から出射した光の偏光状態を制御することにより、用途に応じて偏光状態を合せることができる。
 他の一例として、円偏光板の下流に光を偏向する光学素子を配置してもよい。例えば、円偏光板の下流にレンズ等の光を偏向する光学素子を配置することにより、円偏光板から出射した光の進行方向を変えることができる。このように円偏光板から出射した光の偏向方向を制御することにより、用途に応じて光の出射方向を合せることができる。
<接着層(粘着剤層)、接着剤>
 光学フィルムは、各層の接着のために接着層を含んでいてもよい。本明細書において、「接着」は「粘着」も含む概念で用いられる。
 例えば、水溶性接着剤、紫外線硬化型接着剤、エマルジョン型接着剤、ラテックス型接着剤、マスチック接着剤、複層接着剤、ペースト状接着剤、発泡型接着剤、サポーテッドフィルム接着剤、熱可塑型接着剤、熱溶融型(ホットメルト)接着剤、熱固化接着剤、熱活性接着剤、ヒートシール接着剤、熱硬化型接着剤、コンタクト型接着剤、感圧性接着剤(すなわち、粘着剤)、重合型接着剤、溶剤型接着剤、溶剤活性接着剤、セラミック接着剤等が挙げられる。具体的には、ホウ素化合物水溶液、特開2004-245925号公報に示されるような、分子内に芳香環を含まないエポキシ化合物の硬化性接着剤、特開2008-174667号公報記載の360~450nmの波長におけるモル吸光係数が400以上である光重合開始剤と紫外線硬化性化合物とを必須成分とする活性エネルギー線硬化型接着剤、特開2008-174667号公報記載の(メタ)アクリル系化合物の合計量100質量部中に(a)分子中に(メタ)アクリロイル基を2以上有する(メタ)アクリル系化合物と、(b)分子中に水酸基を有し、重合性二重結合をただ1個有する(メタ)アクリル系化合物と、(c)フェノールエチレンオキサイド変性アクリレートまたはノニルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレートとを含有する活性エネルギー線硬化型接着剤なども挙げられる。必要に応じて、各種接着剤を単独で用いる事も、混合して用いる事もできる。
 積層光学フィルムにおいて、余計な反射を低減する観点から、接着層は隣接する層との屈折率差が小さいことが好ましい。具体的には、隣接する層の屈折率差は、0.05以下が好ましく、0.01以下がより好ましい。接着層の屈折率の調節方法として特に制限はないが、ジルコニア系、シリカ系、アクリル系、アクリル-スチレン系、メラミン系などの微粒子を添加する方法、樹脂屈折率の調節、および、特開平11-223712号公報に記載の方法など既知の方法を用いる事ができる。
 また、隣接する層が、面内において屈折率の異方性を有する場合には、面内における全ての方向において、隣接する層との屈折率差が0.05以下であることが好ましい。そのため、接着層は面内に屈折率異方性を有するものであってもよい。
 接着する界面間の屈折率差が大きい場合は、接着層の厚さ方向で屈折率に分布を付ける事で、界面反射率を低減する事ができる。厚さ方向で屈折率に分布を付ける方法としては、接着剤層を複数層設ける方法、複数層設けた接着剤層間の界面を混合する方法、接着剤層内の素材の偏在状態を制御して屈折率分布を付与する方法などがあげられる。
 また、接着層は、貼合する一方の部材、または両方の部材に、塗布、蒸着、転写などの任意の方法で設ける事ができ、接着強度を上げる観点から、加熱処理および紫外線照射などの後処理を接着剤の種類に合わせて施す事ができる。接着層の厚さは任意に調節する事ができるが、20μ以下が好ましく、0.1μ以下が更に好ましい。0.1μ以下の接着層を形成する方法としては、酸化ケイ素(SiOx層)などのセラミック接着剤を貼合面に蒸着する方法があげられる。貼合部材の貼合面は、貼合前にプラズマ処理、コロナ処理、鹸化処理等の表面改質処理を施す事、ならびに、プライマー層を付与する事等ができる。また、貼合面が複数ある場合は、貼合面毎に接着層の種類および厚さ等を調節する事ができる。
<積層体の裁断>
 作製した積層体を所定サイズに切断する事ができる。積層体の切断方法には限定はなく、トムソン刃等の刃物を用いて物理的に切断する方法、レーザーを照射して切断する方法等の公知の方法が各種利用可能である。レーザーを用いる場合は、裁断性や材料へのダメージを考慮して、パルス幅(ナノ秒、ピコ秒、フェムト秒)、波長を選択する事が好ましい。また、積層体を所定形状に加工した後、例えば、端面の研磨加工を行ってもよい。
裁断時の加工性を改善や、発塵抑制などの観点で、剥離可能な保護フィルムを付けた状態で裁断する事もできる。また、例えば特開2004-141889に示す方法により、液晶配向パターンを観察しながら裁断する事で、裁断位置を任意に決める事が可能である。この際、液晶配向パターンを見えやすくするために、偏光板や位相差膜等を通して観察する事もできる。また、1つの基板上に複数の光学素子を設けた場合には、複数の光学素子を同時に裁断する事が好ましい。
<その他の処理>
 積層体をデバイスに精度良く設置する、裁断時の軸や裁断位置の精度を向上させる等の目的から、必要に応じて任意の形状の目印を付与する事ができる。目印の種類は、任意に選択する事ができ、レーザー、インクジェット方式等で物理的に付与する方法、液晶の配向状態を部分的に変更する方法、部分的に脱色または染色された領域を付与する方法などを選択する事ができる。
 また、液晶層を保護する目的から、必要に応じて保護層(ガスバリア層、水分などに対する遮断層、紫外線吸収層、耐傷擦性層など)を設ける事ができる。保護層は液晶層上に直接形成する事もできるし、粘着剤層や、他の光学フィルムを介して設けても良い。表面の反射率を低減する目的で反射防止層(LR層、AR層、モスアイ層など)を設けても良い。各種保護層は、公知のものの中から適宜選択することができる。ガスバリア層を設ける場合は、ポリビニルアルコールが好ましい。ポリビニルアルコールは偏光子としての機能を兼ねる事もできる。また、紫外線吸収層は、紫外線吸収剤を含有する層であり、紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。紫外線吸収剤は1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。例えば、特開2001-72782号公報や特表2002-543265号公報に記載の紫外線吸収剤が挙げられる。紫外線吸収剤の具体例としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。
<複数の液晶回折素子の組み合わせ>
 本発明の液晶回折素子は、複数の液晶回折素子を組み合わせて用いることができる。
 例えば、Optics Express, Vol.28, No16/3 August 2020に開示されているように複数の液晶回折素子を組み合わせて、液晶回折素子へ入射する偏光状態を変えることで、出射する光の集光性/発散性を複数切り替えることができる。
 このような複数の液晶回折素子を組み合わせることで、ARグラスおよびVRグラスになどのHMDにおいて、中心窩に対応した表示(Foveated display)を行うことができる。
<位相変調素子との組み合わせ>
 本発明の液晶回折素子は、位相変調素子と組み合わせる構成も好ましく用いることができる。
 例えば、US10,379,419B1に開示されているような電圧で位相差を変調できるスイッチング可能なλ/2板(Switchable Half Waveplate)と本発明の液晶回折素子(Passive Elementとして使用)を組み合わせることで、素子面内の光の入射位置によらず、高い回折効率を有する焦点可変レンズを実現することができる。また、位相変調素子と液晶回折素子との組み合わせを複数セット組み合わせることで、調節可能な焦点距離を複数に増やすことができる。
 このような焦点可変レンズをARグラスおよびVRグラスに用いることで、HMDの表示画像の焦点位置を任意に変更することができる。
<レンズとの組み合わせ>
 本発明の液晶回折素子は、他のレンズ素子と組み合わせる構成も好ましく用いることができる。
 例えば、SID 2020 DIGEST, 40-4, pp579-582.に開示されているようなフレネルレンズと液晶回折素子の組み合わせに、本発明の液晶回折素子を用いることで素子面内の光の入射位置によらず、高い回折効率で、レンズの色収差を改善することができる。組み合わせるレンズとして制限はなく、屈折率レンズ、US3,443,858、および、Optics Express, Vol.29, No4/15 February 2021等に開示されているようなパンケーキレンズ(Pancake lens)との組み合わせも好適に用いることができる。
 このようなレンズと液晶回折素子を組み合わせた光学系をARグラスおよびVRグラス等に用いることで、HMDの表示画像の色ズレ(レンズの色収差)を改善することができる。
<導光板との組み合わせ>
 本発明の液晶回折素子は、導光板と組み合わせる構成も好ましく用いることができる。
 例えば、Proc. of SPIE Vol.11062, Digital Optical Technologies 2019, 110620J (16 July 2019)に開示されているような導光板とレンズの組み合わせにおいて、上記レンズとして本発明の液晶回折素子を用いることで、導光板から出射した表示画像の焦点位置を変えることができる。
 このように導光板と組み合わせることで、ARグラスおよびVRグラスなどのHMDの表示画像の焦点位置を調節することができる。なお、ARグラスに用いる場合は、Proc. of SPIE Vol.11062, Digital Optical Technologies 2019, 110620J (16 July 2019)に開示されているように、導光板を挟んで、正/負が異なるレンズとして本発明の液晶回折素子を用いることで、実際の光景と導光板から出力される表示画像の両方を歪みがなく観察することができる。
<画像表示装置との組み合わせ>
 本発明の液晶回折素子は、画像表示装置との組み合わせも好ましく用いることができる。
 例えば、Crystals 2021, 11, 107 に開示されているような画像表示装置と液晶回折素子(Diffractive Deflection Filmとして使用)を組み合わせることで、画像表示装置からの出射光の輝度分布を調節することができる。
 このように画像表示装置と組み合わせた画像表示ユニットとすることで、ARグラスおよびVRグラスなどのHMDの輝度分布を好適に調節することができる。
<ビームステアリングとの組み合わせ>
 本発明の液晶回折素子は、光偏向素子(ビームステアリング)との組み合わせも好ましく用いることができる。
 例えば、WO2019/189675に開示されているような光偏向素子の回折素子として、本発明の液晶回折素子を用いることで、高い回折効率で、出射光の高偏向角化が可能である。
 このように光偏向素子(ビームステアリング)と組み合わせることで、LiDAR(Light Detection and Ranging)などの測距センサーの光の照射角度を好適に広げることができる。
 以上、本発明の液晶回折素子、光学素子、画像表示ユニット、ヘッドマウントディスプレイ、ビームステアリングおよびセンサーについて詳細に説明したが、本発明は上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんである。
 以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、使用量、物質量、割合、処理内容、および、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
 [比較例1]
 <液晶回折素子の作製>
(支持体)
 支持体として、ガラス基板を用意した。
(配向膜の形成)
 支持体上に、下記の配向膜形成用塗布液をスピンコートで塗布した。この配向膜形成用塗布液の塗膜が形成された支持体を60℃のホットプレート上で60秒間乾燥し、配向膜を形成した。
  配向膜形成用塗布液
――――――――――――――――――――――――――――――――
 光配向用素材A                 1.00質量部
 水                      16.00質量部
 ブトキシエタノール              42.00質量部
 プロピレングリコールモノメチルエーテル    42.00質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
-光配向用素材A-
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000003
(配向膜の露光)
 図10に示す露光装置を用いて配向膜を露光して、配向パターンを有する配向膜P-1を形成した。
 露光装置において、レーザーとして波長(325nm)のレーザー光を出射するものを用いた。干渉光による露光量を1000mJ/cm2とした。
(光学異方性層の形成)
 第1の光学異方性層を形成する液晶組成物として、下記の組成物A-1を調製した。
  組成物A-1
――――――――――――――――――――――――――――――――
 液晶化合物L-1              100.00質量部
 カイラル剤M-1                0.18質量部
 重合開始剤(BASF製、Irgacure OXE01)
                         1.00質量部
 レベリング剤T-1               0.08質量部
 メチルエチルケトン            1050.00質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
  液晶化合物L-1
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000004
  カイラル剤M-1
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000005
  レベリング剤T-1
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000006
 光学異方性層は、組成物A-1を配向膜P-1上に多層塗布することにより形成した。多層塗布とは、先ず配向膜の上に1層目の組成物A-1を塗布、加熱後に紫外線硬化を行って液晶固定化層を作製した後、2層目以降はその液晶固定化層に重ね塗りして塗布を行い、同様に加熱後に紫外線硬化を行うことを繰り返すことを指す。多層塗布により形成することにより、光学異方性層の総厚が厚くなった時でも配向膜の配向方向が光学異方性層の下面から上面にわたって反映される。
 先ず、1層目は、配向膜P-1上に下記の組成物A-1を塗布して、塗膜をホットプレート上で80℃に加熱し、その後窒素雰囲気下で高圧水銀灯を用いて波長365nmの紫外線を300mJ/cm2の照射量で塗膜に照射することにより、液晶化合物の配向を固定化した。
 2層目以降は、この液晶固定化層に重ね塗りして、上と同じ条件で加熱後に紫外線硬化を行って液晶固定化層を作製した。このようにして、総厚が所望の膜厚になるまで重ね塗りを繰り返し、光学異方性層を形成して、液晶回折素子を作製した。
 なお、液晶組成物A-1の硬化層の複素屈折率Δnは、液晶組成物A-1を別途に用意したリターデーション測定用の配向膜付き支持体上に塗布し、液晶化合物のダイレクタが基材に水平となるよう配向させた後に紫外線照射して固定化して得た液晶固定化層(硬化層)のリタ―デーション値および膜厚を測定して求めた。リタ―デーション値を膜厚で除算することによりΔnを算出できる。リタ―デーション値はAxometrix社製のAxoscanを用いて目的の波長で測定し、膜厚はSEMを用いて測定した。
 光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が275nmになり、かつ、周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、10μmであった。また、この光学異方性層において、液晶化合物の厚さ方向のねじれ角は70°であった。以下、特に記載が無い場合には、『Δn550××d』等の測定は、同様に行った。
 第2の光学異方性層を形成する液晶組成物として、下記の組成物A-2を調製した。
  組成物A-2
――――――――――――――――――――――――――――――――
 液晶化合物L-1              100.00質量部
 カイラル剤H-1                0.32質量部
 重合開始剤(BASF製、Irgacure OXE01)
                         1.00質量部
 レベリング剤T-1               0.08質量部
 メチルエチルケトン            1050.00質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
  カイラル剤H-1
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000007
 組成物A-2を用い、光学異方性層の膜厚を調節した以外は、第1の光学異方性層と同様にして第2の光学異方性層を形成した。
 光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が275nmになり、かつ、周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、10μmであった。また、この光学異方性層において、液晶化合物の厚さ方向のねじれ角は-70°であった。
 [実施例1]
 <液晶回折素子の作製>
(配向膜の形成)
 比較例1と同様にして、ガラス基板上に配向膜を形成し、配向膜を露光して、配向パターンを有する配向膜P-1を形成した。
(光学異方性層の形成)
 第1の光学異方性層を形成する液晶組成物として、下記の組成物B-1を調製した。
  組成物B-1
――――――――――――――――――――――――――――――――
 液晶化合物L-1              100.00質量部
 カイラル剤M-1                0.36質量部
 重合開始剤(BASF製、Irgacure OXE01)
                         1.00質量部
 レベリング剤T-1               0.08質量部
 メチルエチルケトン            1050.00質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
 組成物B-1を用い、光学異方性層の膜厚を調節した以外は、比較例1と同様にして第1の光学異方性層を形成した。
 光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が160nmになり、かつ、周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、10μmであった。また、この光学異方性層において、液晶化合物の厚さ方向のねじれ角は80°であった。
 第2の光学異方性層を形成する液晶組成物として、下記の組成物B-2を調製した。
  組成物B-2
――――――――――――――――――――――――――――――――
 液晶化合物L-1              100.00質量部
 重合開始剤(BASF製、Irgacure OXE01)
                         1.00質量部
 レベリング剤T-1               0.08質量部
 メチルエチルケトン            1050.00質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
 組成物B-2を用い、光学異方性層の膜厚を調節した以外は、第1の光学異方性層と同様にして第2の光学異方性層を形成した。
 光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が330nmになり、かつ、周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、10μmであった。また、この光学異方性層において、液晶化合物の厚さ方向のねじれ角は0°であった。
 第3の光学異方性層を形成する液晶組成物として、下記の組成物B-3を調製した。
  組成物B-3
――――――――――――――――――――――――――――――――
 液晶化合物L-1              100.00質量部
 カイラル剤H-1                0.63質量部
 重合開始剤(BASF製、Irgacure OXE01)
                         1.00質量部
 レベリング剤T-1               0.08質量部
 メチルエチルケトン            1050.00質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
 組成物B-3を用い、光学異方性層の膜厚を調節した以外は、第1の光学異方性層と同様にして第3の光学異方性層を形成した。
 光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が160nmになり、かつ、周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、10μmであった。また、この光学異方性層において、液晶化合物の厚さ方向のねじれ角は-80°であった。
 [実施例2]
 <液晶回折素子の作製>
(配向膜の形成)
 比較例1と同様にして、ガラス基板上に配向膜を形成し、配向膜を露光して、配向パターンを有する配向膜P-1を形成した。
(光学異方性層の形成)
 第1の光学異方性層を形成する液晶組成物として、実施例1の組成物B-1において、カイラル剤M-1を0.34質量部に変更して組成物C-1を調製し、光学異方性層の膜厚を調節した以外は、実施例1の第1の光学異方性層と同様にして第1の光学異方性層を形成した。
 光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が190nmになり、かつ、周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、10μmであった。また、この光学異方性層において、液晶化合物の厚さ方向のねじれ角は87°であった。
 第2の光学異方性層を形成する液晶組成物として、実施例1の組成物B-3において、カイラル剤H-1を0.12質量部に変更して組成物C-2を調製し、光学異方性層の膜厚を調節した以外は、実施例1の第3の光学異方性層と同様にして第2の光学異方性層を形成した。
 光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が150nmになり、かつ、周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、10μmであった。また、この光学異方性層において、液晶化合物の厚さ方向のねじれ角は-14°であった。
 第3の光学異方性層を形成する液晶組成物として、実施例1の組成物B-1において、カイラル剤M-1を0.07質量部に変更して組成物C-3を調製し、光学異方性層の膜厚を調節した以外は、実施例1の第1の光学異方性層と同様にして第3の光学異方性層を形成した。
 光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が150nmになり、かつ、周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、10μmであった。また、この光学異方性層において、液晶化合物の厚さ方向のねじれ角は14°であった。
第4の光学異方性層を形成する液晶組成物として、実施例1の組成物B-3において、カイラル剤H-1を0.58質量部に変更して組成物C-4を調製し、光学異方性層の膜厚を調節した以外は、実施例1の第3の光学異方性層と同様にして第4の光学異方性層を形成した。
 光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が190nmになり、かつ、周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、10μmであった。また、この光学異方性層において、液晶化合物の厚さ方向のねじれ角は-87°であった。
 [実施例3]
 <液晶回折素子の作製>
(配向膜の形成)
 比較例1と同様にして、ガラス基板上に配向膜を形成し、配向膜を露光して、配向パターンを有する配向膜P-1を形成した。
(光学異方性層の形成)
 第1の光学異方性層を形成する液晶組成物として、実施例1の組成物B-1において、カイラル剤M-1を0.40質量部に変更して組成物D-1を調製し、光学異方性層の膜厚を調節した以外は、実施例1の第1の光学異方性層と同様にして第1の光学異方性層を形成した。
 光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が150nmになり、かつ、周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、10μmであった。また、この光学異方性層において、液晶化合物の厚さ方向のねじれ角は83°であった。
 第2の光学異方性層を形成する液晶組成物として、実施例1の組成物B-1において、カイラル剤M-1を0.02質量部に変更して組成物D-2を調製し、光学異方性層の膜厚を調節した以外は、実施例1の第1の光学異方性層と同様にして第2の光学異方性層を形成した。
 光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が335nmになり、かつ、周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、10μmであった。また、この光学異方性層において、液晶化合物の厚さ方向のねじれ角は8°であった。
 第3の光学異方性層を形成する液晶組成物として、実施例1の組成物B-3において、カイラル剤H-1を0.57質量部に変更して組成物D-3を調製し、光学異方性層の膜厚を調節した以外は、実施例1の第3の光学異方性層と同様にして第3の光学異方性層を形成した。
 光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が170nmになり、かつ、周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、1μmであった。また、この光学異方性層において、液晶化合物の厚さ方向のねじれ角は-78°であった。
 [比較例2]
 <液晶回折素子の作製>
 比較例1と同様にして第1の光学異方性層を形成した。
 光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が275nmになり、かつ、周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、10μmであった。また、この光学異方性層において、液晶化合物の厚さ方向のねじれ角は70°であった。
 [比較例3]
 <液晶回折素子の作製>
 比較例1の配向膜露光において、図10に示す露光装置における、2つの光線MAおよびMBの交差角αを変化させることにより、配向パターンの周期を調節した以外は同様にして配向膜P-2を作製した。
(光学異方性層の形成)
 比較例1と同様にして、配向膜P-2上に第1および第2の光学異方性層を形成した。
 第1および第2の光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が275nmになり、かつ、周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、1μmであった。また、第1光学異方性層において、液晶化合物の厚さ方向のねじれ角は面内で70°であり、第2光学異方性層において、液晶化合物の厚さ方向のねじれ角は-70°あった。
 [実施例4]
 <液晶回折素子の作製>
 比較例3と同様にして配向膜P-2を作製した。
(光学異方性層の形成)
 第1の光学異方性層を形成する液晶組成物として、実施例1の組成物B-1において、カイラル剤M-1を0.52質量部に変更して組成物E-1を調製し、光学異方性層の膜厚を調節した以外は、実施例1の第1の光学異方性層と同様にして第1の光学異方性層を形成した。
 光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が160nmになり、かつ、周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、1μmであった。また、この光学異方性層において、液晶化合物の厚さ方向のねじれ角は115°であった。
 第2の光学異方性層を形成する液晶組成物として、実施例1の組成物B-1において、カイラル剤M-1を0.16質量部に変更して組成物E-2を調製し、光学異方性層の膜厚を調節した以外は、実施例1の第1の光学異方性層と同様にして第2の光学異方性層を形成した。
 光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が335nmになり、かつ、周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、1μmであった。また、この光学異方性層において、液晶化合物の厚さ方向のねじれ角は76°であった。
 第3の光学異方性層を形成する液晶組成物として、実施例1の組成物B-3において、カイラル剤H-1を0.38質量部に変更して組成物E-3を調製し、光学異方性層の膜厚を調節した以外は、実施例1の第3の光学異方性層と同様にして第3の光学異方性層を形成した。
 光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が160nmになり、かつ、周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、1μmであった。また、この光学異方性層において、液晶化合物の厚さ方向のねじれ角は-48°であった。
 [実施例5]
<液晶回折素子の作製>
 比較例3と同様にして配向膜P-2を作製した。
(光学異方性層の形成)
 第1の光学異方性層を形成する液晶組成物として、実施例2の組成物C-1において、カイラル剤M-1を0.44質量部に変更して組成物F-1を調製し、光学異方性層の膜厚を調節した以外は、実施例2の第1の光学異方性層と同様にして第1の光学異方性層を形成した。
 光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が190nmになり、かつ、周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、1μmであった。また、この光学異方性層において、液晶化合物の厚さ方向のねじれ角は115°であった。
 第2の光学異方性層を形成する液晶組成物として、実施例2の組成物C-1において、カイラル剤M-1を0.09質量部に変更して組成物F-2を調製し、光学異方性層の膜厚を調節した以外は、実施例2の第1の光学異方性層と同様にして第2の光学異方性層を形成した。
 光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が150nmになり、かつ、周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、1μmであった。また、この光学異方性層において、液晶化合物の厚さ方向のねじれ角は18°であった。
 第3の光学異方性層を形成する液晶組成物として、実施例2の組成物C-3において、カイラル剤M-1を0.04質量部に変更して組成物F-3を調製し、光学異方性層の膜厚を調節した以外は、実施例2の第3の光学異方性層と同様にして第3の光学異方性層を形成した。
 光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が150nmになり、かつ、周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、1μmであった。また、この光学異方性層において、液晶化合物の厚さ方向のねじれ角は8°であった。
 第4の光学異方性層を形成する液晶組成物として、実施例2の組成物C-4において、カイラル剤H-1を1.99質量部に変更して組成物F-4を調製し、光学異方性層の膜厚を調節した以外は、実施例2の第4の光学異方性層と同様にして第4の光学異方性層を形成した。
 光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が190nmになり、かつ、周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、1μmであった。また、この光学異方性層において、液晶化合物の厚さ方向のねじれ角は-237°であった。
 [実施例6]
 <液晶回折素子の作製>
 比較例3と同様にして配向膜P-2を作製した。
(光学異方性層の形成)
 第1の光学異方性層を形成する液晶組成物として、実施例1の組成物B-1において、カイラル剤M-1を0.55質量部に変更して組成物F-1を調製し、光学異方性層の膜厚を調節した以外は、実施例1の第1の光学異方性層と同様にして第1の光学異方性層を形成した。
 光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が150nmになり、かつ、周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、1μmであった。また、この光学異方性層において、液晶化合物の厚さ方向のねじれ角は114°であった。
 第2の光学異方性層を形成する液晶組成物として、実施例1の組成物B-1において、カイラル剤M-1を0.18質量部に変更して組成物F-2を調製し、光学異方性層の膜厚を調節した以外は、実施例1の第1の光学異方性層と同様にして第2の光学異方性層を形成した。
 光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が335nmになり、かつ、周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、1μmであった。また、この光学異方性層において、液晶化合物の厚さ方向のねじれ角は85°であった。
 第3の光学異方性層を形成する液晶組成物として、実施例1の組成物B-3において、カイラル剤H-1を0.30質量部に変更して組成物F-3を調製し、光学異方性層の膜厚を調節した以外は、実施例1の第3の光学異方性層と同様にして第3の光学異方性層を形成した。
 光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が170nmになり、かつ、周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、1μmであった。また、この光学異方性層において、液晶化合物の厚さ方向のねじれ角は-41°であった。
[評価]
<厚さ方向角度の変曲点および傾斜方向が折り返される変曲点の評価>
 作製した光学異方性層の断面をSEMで観察したところ、明部および暗部のパターンが観察された。SEMで観察した断面画像において、暗部の角度の変曲点および暗部の傾斜方向が折り返される変曲点の数を評価した。
 結果を表1に示す。
<回折効率の評価>
 作製した液晶回折素子に正面(法線に対する角度0°の方向)から光を入射した際における、出射光の、回折効率を評価した。
 具体的には、光源から405nm、450nm、532nm、および、650nmに出力中心波長を持つレーザー光を照射し、作製した液晶回折素子に垂直入射させた。出射光のうち、液晶回折素子からの所望の方向に回折した回折光(1次光)、その他方向へ出射した0次光、および、-1次光の光強度を光検出器で測定し、各波長における回折効率を下記式で算出した。なお、0次光とは、入射光と同一方向へ出射した光である。また、-1次光とは、0次光に対する1次光の回折角度をθとしたときに、-θ方向へ回折した光である。
  回折効率 = 1次光/(1次光+0次光+(-1次光))
 波長405nm、450nm、532nm、および、650nmの各測定値から回折効率の平均値を求め、回折効率の波長依存性を以下の基準で評価した。
 なお、レーザー光の波長に対応する円偏光板に垂直入射させて、円偏光にした後、作製した液晶回折素子に光を入射し、評価を行った。
A:回折効率の平均値が95%以上
B:回折効率の平均値が90%以上、95%未満
C:回折効率の平均値が90%未満
 結果を表1に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000008
 [実施例7]
 <液晶回折素子の作製>
 比較例3と同様にして配向膜P-2を作製した。
(光学異方性層の形成)
 実施例6において、液晶化合物L-1を下記液晶化合物L-2に変更し、カイラル剤M-1、カイラル剤H-1、レベリング剤T-1の添加量を適宜変更し、光学異方性層の膜厚を調節した以外は、実施例6と同様にして、第1から第3の光学異方性層を形成した。
  液晶化合物L-2
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000009
 第1の光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が150nmになり、かつ、周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、1μmであった。また、この光学異方性層において、液晶化合物の厚さ方向のねじれ角は114°であった。
 第2の光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が335nmになり、かつ、周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、1μmであった。また、この光学異方性層において、液晶化合物の厚さ方向のねじれ角は85°であった。
 第3の光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が170nmになり、かつ、周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、1μmであった。また、この光学異方性層において、液晶化合物の厚さ方向のねじれ角は-41°であった。
 作製した光学異方性層の断面をSEMで観察したところ、明部および暗部のパターンが観察された。SEMで観察した断面画像において、暗部の角度の変曲点の数は2および暗部の傾斜方向が折り返される変曲点の数は1であった。
 [実施例8]
 <液晶回折素子の作製>
 比較例3と同様にして配向膜P-2を作製した。
(光学異方性層の形成)
 実施例6において、液晶化合物L-1を下記液晶化合物L-3に変更し、カイラル剤M-1、カイラル剤H-1、レベリング剤T-1の添加量を適宜変更し、光学異方性層を形成するときの塗膜の加熱温度を55℃に変更し、光学異方性層の膜厚を調節した以外は、実施例6と同様にして、第1から第3の光学異方性層を形成した。
  液晶化合物L-3
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000010
 第1の光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が150nmになり、かつ、周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、1μmであった。また、この光学異方性層において、液晶化合物の厚さ方向のねじれ角は114°であった。
 第2の光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が335nmになり、かつ、周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、1μmであった。また、この光学異方性層において、液晶化合物の厚さ方向のねじれ角は85°であった。
 第3の光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が170nmになり、かつ、周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、1μmであった。また、この光学異方性層において、液晶化合物の厚さ方向のねじれ角は-41°であった。
 作製した光学異方性層の断面をSEMで観察したところ、明部および暗部のパターンが観察された。SEMで観察した断面画像において、暗部の角度の変曲点の数は2および暗部の傾斜方向が折り返される変曲点の数は1であった。
 なお、実施例6の液晶層(液晶化合物)のΔn550は0.15、実施例7の液晶層のΔn550は0.25、実施例8の液晶層のΔn550は0.32であった。
<回折効率の評価>
 作製した液晶回折素子に、正面(法線に対する角度0°の方向)から±40°(10°刻み)で入射角度を変えて光を入射した際における、出射光の、回折効率を評価した。
 具体的には、光源から405nm、450nm、532nm、および、650nmに出力中心波長を持つレーザー光を照射し、作製した液晶回折素子に垂直入射させた。出射光のうち、液晶回折素子からの所望の方向に回折した回折光(1次光)、その他方向へ出射した0次光、および、-1次光の光強度を光検出器で測定し、各波長における回折効率を下記式で算出した。なお、0次光とは、入射光と同一方向へ出射した光である。また、-1次光とは、0次光に対する1次光の回折角度をθとしたときに、-θ方向へ回折した光である。
  回折効率 = 1次光/(1次光+0次光+(-1次光))
 異なる入射角度で測定した、波長405nm、450nm、532nm、および、650nmの各測定値から回折効率の平均値を求め、回折効率の波長依存性を評価した。
 なお、レーザー光の波長に対応する円偏光板に垂直入射させて、円偏光にした後、作製した液晶回折素子に光を入射し、評価を行った。
評価の結果、実施例6に対し、実施例7の回折効率の平均値は向上しており、実施例8の回折効率の平均値はさらに向上していた。
 以上から、液晶回折素子の液晶層の屈折率差Δn550が高い方が、異なる入射角に対する光の利用効率が向上することがわかる。
<円偏光板の作製>
(位相差板の作製)
 特開2019-215416号公報の段落0102から段落0126に記載のポジティブAプレートと同様の方法で、セルロースアシレートフィルム、配向膜および光学異方性層Cを有するフィルムを得た。
 光学異方性層CはポジティブAプレート(位相差板)であり、Re(550)が138nmとなるように、ポジティブAプレートの厚さを制御している。
 直線偏光板(ポリビニルアルコール層型)に、粘着剤を介して作製した位相差板を貼合して、円偏光板を作製した。なお、位相差板の遅相軸と直線偏光板の吸収軸の相対角度が45°になるように配置した。
<光学素子の作製>
 実施例1~実施例8で作製した液晶回折素子に、上記作製した円偏光板を貼合し光学素子を作製した。なお、光学素子は、液晶回折素子、位相差板、および、直線偏光板の順になるように配置して、作製した。
[評価]
 作製した光学素子に正面(法線に対する角度0°の方向)から光を入射した際における、出射光の光強度を評価した。
 具体的には、光源から405nm、450nm、532nm、および、650nmに出力中心波長を持つレーザー光を照射し、作製した光学素子に垂直入射させた。出射光のうち、液晶回折素子からの所望の方向に回折した回折光(1次光)と、他方向へ出射した0次光の光強度を光検出器で測定した。なお、レーザー光の波長に対応する円偏光板に垂直入射させて、円偏光にした後、作製した光学素子の液晶回折素子側から光を入射して、評価を行った。
 実施例1~実施例6で作製した液晶回折素子に円偏光板を貼合した光学素子では、円偏光板の貼合前に対して、いずれの波長においても0次光の光強度を大幅に低減することができ、コントラスト比(1次光/0次光の光強度比)が向上することを確認した。
[評価]
<回折効率の評価>
 実施例6~実施例8で作製した液晶回折素子を用いた光学素子に、正面(法線に対する角度0°の方向)から±40°(10°刻み)で入射角度を変えて光を入射した際における、出射光の、光強度を評価した。
 具体的には、光源から405nm、450nm、532nm、650nmのそれぞれに出力中心波長を持つレーザー光を照射し、作製した液晶回折素子に入射させた。出射光のうち、液晶回折素子からの所望の方向に回折した回折光(1次光)と他方向へ出射した0次光(入射光と同一方向へ出射)の光強度を光検出器で測定した。
 異なる入射角度で測定した、波長405nm、450nm、532nm、650nmそれぞれの測定値から光強度の入射角に対する平均値を求めた。
 なお、レーザー光の波長に対応する円偏光板に垂直入射させて、円偏光にした後、作製した光学素子の液晶回折素子側から光を入射し、評価を行った。
 実施例6~実施例8で作製した液晶回折素子に円偏光板を貼合した光学素子では、円偏光板の貼合前に対して、いずれの波長においても0次光の光強度を大幅に低減することができ、コントラスト比(1次光/0次光の光強度比)が向上することを確認した。
 また、評価の結果、実施例6に対し、実施例7の光学素子のコントラスト比の入射角に対する平均値は向上しており、実施例8の光学素子のコントラスト比の入射角に対する平均値はさらに向上していた。
 以上から、液晶回折素子に円偏光板を貼合した光学素子においても、液晶層の屈折率差Δn550が高い方が、異なる入射角に対するコントラスト比が向上することがわかる。
<円偏光板の作製>
 上述の円偏光板の作製において、直線偏光板(ポリビニルアルコール層型)を、下記のように作製した吸収型偏光板に変更した以外は、同様にして、円偏光板を作製した。
<光学素子の作製>
 実施例1~実施例6で作製した液晶回折素子に、下記のように作製した吸収型偏光板を用いて作製した円偏光板を貼合して、光学素子を作製した。なお、光学素子は、液晶回折素子、位相差板、および、吸収型偏光板の順になるように配置して、作製した。
[吸収型偏光板(直線偏光板)の作成]
 <透明支持体1の作製>
 後述する配向層形成用塗布液PA1を、ワイヤーバーで連続的にセルロースアシレートフィルム(厚さ40μmのTAC基材;TG40 富士フイルム社製)上に塗布した。塗膜が形成された支持体を140℃の温風で120秒間乾燥し、続いて、塗膜に対して偏光紫外線照射(10mJ/cm2、超高圧水銀ランプ使用)することで、光配向層PA1を形成し、光配向層付きTACフィルムを得た。
 光配向層の膜厚は0.3μmであった。
  配向層形成用塗布液PA1
――――――――――――――――――――――――――――――――
 下記記重合体PA-1            100.00質量部
 下記酸発生剤PAG-1              5.00質量部
 下記酸発生剤CPI-110TF        0.005質量部
 キシレン                 1220.00質量部
 メチルイソブチルケトン           122.00質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
 重合体PA-1
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000011
 酸発生剤PAG-1
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000012
 酸発生剤CPI-110F
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000013
 <光吸収異方性層P1の形成>
 得られた配向層PA1上に、下記の光吸収異方性層形成用組成物P1をワイヤーバーで連続的に塗布し、塗布層P1を形成した。
 次いで、塗布層P1を140℃で30秒間加熱し、塗布層P1を室温(23℃)になるまで冷却した。
 次いで、90℃で60秒間加熱し、再び室温になるまで冷却した。
 その後、LED灯(中心波長365nm)を用いて、照度200mW/cm2の照射条件で紫外線を2秒間照射することにより、配向層PA1上に光吸収異方性層P1を作製した。
 光吸収異方性層の膜厚は1.6μmであった。
 これを積層体1Bとした。
  光吸収異方性層形成用組成物P1
――――――――――――――――――――――――――――――――
 下記二色性物質D-1              0.25質量部
 下記二色性物質D-2              0.36質量部
 下記二色性物質D-3              0.59質量部
 下記高分子液晶性化合物P-1          2.21質量部
 下記低分子液晶性化合物M-1          1.36質量部
 重合開始剤 IRGACUREOXE-02(BASF社製)
                        0.200質量部
 下記界面活性剤F-1             0.026質量部
 シクロペンタノン               46.00質量部
 テトラヒドロフラン              46.00質量部
 ベンジルアルコール               3.00質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
 D-1
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000014
 D-2
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000015
 D-3
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000016
 高分子液晶性化合物P-1
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000017
 低分子液晶性化合物M-1
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000018
 界面活性剤F-1
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000019
<UV接着剤の作製>
 下記のUV接着剤組成物を調製した。
  UV接着剤組成物
――――――――――――――――――――――――――――――――
 CEL2021P(ダイセル社製)          70質量部
 1、4-ブタンジオールジグリシジルエーテル     20質量部
 2-エチルヘキシルグリシジルエーテル        10質量部
 CPI-100P                2.25質量部
────────────────────────────────
 CPI-100P
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000020
<吸収型偏光板の作製>
 積層体1Bの光吸収異方性層の表面に、調製したUV接着剤を用いて、樹脂基材S1としてテクノロイS001G(メタクリル樹脂50μm厚、tanδピーク温度128℃、住化アクリル販売(株))を貼り合わせた。その後、セルロースアシレートフィルムのみ剥離して、樹脂基材/接着層/光吸収異方性層/配向層がこの順に配置された吸収型偏光板を作製した。UV接着剤層の厚さは2μmであった。
 得られた吸収型偏光板の平均算術粗さRaは、10nm以下であった。一方、直線偏光板(ポリビニルアルコール層型)の平均算術粗さRaは、20nm以上であった。
 これにより、作製した吸収型偏光板は、偏光フィルムの表面凹凸での光の偏向(屈折や散乱)を低減できる。また、画像表示装置に用いた場合、表示される画像の歪みを抑制することができる。
 なお、平均算術粗さRaは、株式会社菱化システム製の干渉計「vertscan」を用いて測定した。
[評価]
 作製した光学素子に正面(法線に対する角度が0°の方向)から光を入射した際における、出射光の光強度を評価した。
 具体的には、光源から405nm、450nm、532nm、および、650nmに出力中心波長を持つレーザー光を照射し、作製した光学素子に垂直入射させた。出射光のうち、液晶回折素子からの所望の方向に回折した回折光(1次光)と他方向へ出射した0次光の光強度を光検出器で測定した。なお、レーザー光の波長に対応する円偏光板に垂直入射させて、円偏光にした後、作製した光学素子の液晶回折素子側から光を入射し、評価を行った。
 実施例1~実施例6で作製した液晶回折素子に円偏光板を貼合した光学素子では、円偏光板の貼合前に対して、いずれの波長においても0次光の光強度を大幅に低減することができ、コントラスト比(1次光/0次光の光強度比)が向上することを確認した。
[評価]
<回折効率の評価>
 実施例6~実施例8で作製した液晶回折素子を用いた光学素子に、正面(法線に対する角度0°の方向)から±40°(10°刻み)で入射角度を変えて光を入射した際における、出射光の、光強度を評価した。
 具体的には、光源から405nm、450nm、532nm、650nmのそれぞれに出力中心波長を持つレーザー光を照射し、作製した液晶回折素子に入射させた。出射光のうち、液晶回折素子からの所望の方向に回折した回折光(1次光)と他方向へ出射した0次光(入射光と同一方向へ出射)の光強度を光検出器で測定した。
 異なる入射角度で測定した、波長405nm、450nm、532nm、650nmそれぞれの測定値から光強度の入射角に対する平均値を求めた。
 なお、レーザー光の波長に対応する円偏光板に垂直入射させて、円偏光にした後、作製した光学素子の液晶回折素子側から光を入射し、評価を行った。
 実施例6~実施例8で作製した液晶回折素子に円偏光板を貼合した光学素子では、円偏光板の貼合前に対して、いずれの波長においても0次光の光強度を大幅に低減することができ、コントラスト比(1次光/0次光の光強度比)が向上することを確認した。
 また、評価の結果、実施例6に対し、実施例7の光学素子のコントラスト比の入射角に対する平均値は向上しており、実施例8の光学素子のコントラスト比の入射角に対する平均値はさらに向上していた。
 以上から、液晶回折素子に円偏光板を貼合した光学素子においても、液晶層の屈折率差Δn550が高い方が、異なる入射角に対するコントラスト比が向上することがわかる。
 [比較例11]
<液晶回折素子の作製>
(配向膜の露光)
 図14に示す露光装置を用いて配向膜を露光して、同心円状の配向パターンを有する配向膜PL-1を形成した。
 露光装置において、レーザとして波長(325nm)のレーザ光を出射するものを用いた。干渉光による露光量を1000mJ/cm2とした。なお、図14に示す露光装置を用いることによって、配向パターンの1周期が、中心から外方向に向かって、漸次、短くなるようにした。
(光学異方性層の形成)
 比較例1において、上記で作製した配向膜PL-1を用いた以外は同様にして、光学異方性層を形成した。
 第1の光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が275nmになり、かつ、図13に示すような同心円状(放射状)の周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、中心から約2mmの距離での1周期が10μm、中心から25mmの距離での1周期が1μm、中心から30mmの距離での1周期が0.6μmであり、外方向に向かって周期が短くなる液晶配向パターンであった。また、光学異方性層の厚さ方向のねじれ角は70°であった。
 第2の光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が275nmになり、かつ、図13に示すような同心円状(放射状)の周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、中心から約2mmの距離での1周期が10μm、中心から25mmの距離での1周期が1μm、中心から30mmの距離での1周期が0.6μmであり、外方向に向かって周期が短くなる液晶配向パターンであった。また、光学異方性層の厚さ方向のねじれ角は-70°であった。
 作製した光学異方性層の断面をSEMで観察したところ、明部および暗部のパターンが観察された。SEMで観察した断面画像において、暗部の角度の変曲点の数は1および暗部の傾斜方向が折り返される変曲点の数は1であった。
 [実施例11]
<液晶回折素子の作製>
(配向膜の露光)
 比較例11と同様にして、同心円状の配向パターンを有する配向膜PL-1を形成した。
(光学異方性層の形成)
 実施例1において、上記で作製した配向膜PL-1を用いた以外は同様にして、光学異方性層を形成した。
 第1の光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が160nmになり、かつ、図13に示すような同心円状(放射状)の周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、中心から約2mmの距離での1周期が10μm、中心から25mmの距離での1周期が1μm、中心から30mmの距離での1周期が0.6μmであり、外方向に向かって周期が短くなる液晶配向パターンであった。また、光学異方性層の厚さ方向のねじれ角は80°であった。
 第2の光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が330nmになり、かつ、図13に示すような同心円状(放射状)の周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、中心から約2mmの距離での1周期が10μm、中心から25mmの距離での1周期が1μm、中心から30mmの距離での1周期が0.6μmであり、外方向に向かって周期が短くなる液晶配向パターンであった。また、光学異方性層の厚さ方向のねじれ角は0°であった。
 第3の光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が160nmになり、かつ、図13に示すような同心円状(放射状)の周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、中心から約2mmの距離での1周期が10μm、中心から25mmの距離での1周期が1μm、中心から30mmの距離での1周期が0.6μmであり、外方向に向かって周期が短くなる液晶配向パターンであった。また、光学異方性層の厚さ方向のねじれ角は-80°であった。
 作製した光学異方性層の断面をSEMで観察したところ、明部および暗部のパターンが観察された。SEMで観察した断面画像において、暗部の角度の変曲点の数は2および暗部の傾斜方向が折り返される変曲点の数は1であった。
 [実施例12]
<液晶回折素子の作製>
(光学異方性層の形成)
 実施例11において、液晶化合物L-1を液晶化合物L-2に変更し、カイラル剤M-1、カイラル剤H-1、レベリング剤T-1の添加量を適宜変更し、光学異方性層の膜厚を調節した以外は、実施例11と同様にして、第1から第3の光学異方性層を形成した。
 第1の光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が160nmになり、かつ、図13に示すような同心円状(放射状)の周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、中心から約2mmの距離での1周期が10μm、中心から25mmの距離での1周期が1μm、中心から30mmの距離での1周期が0.6μmであり、外方向に向かって周期が短くなる液晶配向パターンであった。また、光学異方性層の厚さ方向のねじれ角は80°であった。
 第2の光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が330nmになり、かつ、図13に示すような同心円状(放射状)の周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、中心から約2mmの距離での1周期が10μm、中心から25mmの距離での1周期が1μm、中心から30mmの距離での1周期が0.6μmであり、外方向に向かって周期が短くなる液晶配向パターンであった。また、光学異方性層の厚さ方向のねじれ角は0°であった。
 第3の光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が160nmになり、かつ、図13に示すような同心円状(放射状)の周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、中心から約2mmの距離での1周期が10μm、中心から25mmの距離での1周期が1μm、中心から30mmの距離での1周期が0.6μmであり、外方向に向かって周期が短くなる液晶配向パターンであった。また、光学異方性層の厚さ方向のねじれ角は-80°であった。
 作製した光学異方性層の断面をSEMで観察したところ、明部および暗部のパターンが観察された。SEMで観察した断面画像において、暗部の角度の変曲点の数は2および暗部の傾斜方向が折り返される変曲点の数は1であった。
 [実施例13]
<液晶回折素子の作製>
(光学異方性層の形成)
 実施例11において、液晶化合物L-1を液晶化合物L-3に変更し、カイラル剤M-1、カイラル剤H-1、レベリング剤T-1の添加量を適宜変更し、光学異方性層を形成するときの塗膜の加熱温度を55℃に変更し、光学異方性層の膜厚を調節した以外は、実施例11と同様にして、第1から第3の光学異方性層を形成した。
 第1の光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が160nmになり、かつ、図13に示すような同心円状(放射状)の周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、中心から約2mmの距離での1周期が10μm、中心から25mmの距離での1周期が1μm、中心から30mmの距離での1周期が0.6μmであり、外方向に向かって周期が短くなる液晶配向パターンであった。また、光学異方性層の厚さ方向のねじれ角は80°であった。
 第2の光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が330nmになり、かつ、図13に示すような同心円状(放射状)の周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、中心から約2mmの距離での1周期が10μm、中心から25mmの距離での1周期が1μm、中心から30mmの距離での1周期が0.6μmであり、外方向に向かって周期が短くなる液晶配向パターンであった。また、光学異方性層の厚さ方向のねじれ角は0°であった。
 第3の光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が160nmになり、かつ、図13に示すような同心円状(放射状)の周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、中心から約2mmの距離での1周期が10μm、中心から25mmの距離での1周期が1μm、中心から30mmの距離での1周期が0.6μmであり、外方向に向かって周期が短くなる液晶配向パターンであった。また、光学異方性層の厚さ方向のねじれ角は-80°であった。
 作製した光学異方性層の断面をSEMで観察したところ、明部および暗部のパターンが観察された。SEMで観察した断面画像において、暗部の角度の変曲点の数は2および暗部の傾斜方向が折り返される変曲点の数は1であった。
 なお、実施例11の液晶層(液晶化合物)のΔn550は0.15、実施例12の液晶層のΔn550は0.25、実施例13の液晶層のΔn550は0.32であった。
 [実施例14]
<液晶回折素子の作製>
(配向膜の露光)
 比較例11と同様にして、同心円状の配向パターンを有する配向膜PL-1を形成した。
(光学異方性層の形成)
 実施例3において、上記で作製した配向膜PL-1を用いた以外は同様にして、光学異方性層を形成した。
 第1の光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が150nmになり、かつ、図13に示すような同心円状(放射状)の周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、中心から約2mmの距離での1周期が10μm、中心から25mmの距離での1周期が1μm、中心から30mmの距離での1周期が0.6μmであり、外方向に向かって周期が短くなる液晶配向パターンであった。また、光学異方性層の厚さ方向のねじれ角は83°であった。
 第2の光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が335nmになり、かつ、図13に示すような同心円状(放射状)の周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、中心から約2mmの距離での1周期が10μm、中心から25mmの距離での1周期が1μm、中心から30mmの距離での1周期が0.6μmであり、外方向に向かって周期が短くなる液晶配向パターンであった。また、光学異方性層の厚さ方向のねじれ角は8°であった。
 第3の光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が170nmになり、かつ、図13に示すような同心円状(放射状)の周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、中心から約2mmの距離での1周期が10μm、中心から25mmの距離での1周期が1μm、中心から30mmの距離での1周期が0.6μmであり、外方向に向かって周期が短くなる液晶配向パターンであった。また、光学異方性層の厚さ方向のねじれ角は-78°であった。
 作製した光学異方性層の断面をSEMで観察したところ、明部および暗部のパターンが観察された。SEMで観察した断面画像において、暗部の角度の変曲点の数は2および暗部の傾斜方向が折り返される変曲点の数は1であった。
 [実施例15]
<液晶回折素子の作製>
(光学異方性層の形成)
 実施例14において、液晶化合物L-1を液晶化合物L-2に変更し、カイラル剤M-1、カイラル剤H-1、レベリング剤T-1の添加量を適宜変更し、光学異方性層の膜厚を調節した以外は、実施例14と同様にして、第1から第3の光学異方性層を形成した。
 第1の光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が150nmになり、かつ、図13に示すような同心円状(放射状)の周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、中心から約2mmの距離での1周期が10μm、中心から25mmの距離での1周期が1μm、中心から30mmの距離での1周期が0.6μmであり、外方向に向かって周期が短くなる液晶配向パターンであった。また、光学異方性層の厚さ方向のねじれ角は83°であった。
 第2の光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が335nmになり、かつ、図13に示すような同心円状(放射状)の周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、中心から約2mmの距離での1周期が10μm、中心から25mmの距離での1周期が1μm、中心から30mmの距離での1周期が0.6μmであり、外方向に向かって周期が短くなる液晶配向パターンであった。また、光学異方性層の厚さ方向のねじれ角は8°であった。
 第3の光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が170nmになり、かつ、図13に示すような同心円状(放射状)の周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、中心から約2mmの距離での1周期が10μm、中心から25mmの距離での1周期が1μm、中心から30mmの距離での1周期が0.6μmであり、外方向に向かって周期が短くなる液晶配向パターンであった。また、光学異方性層の厚さ方向のねじれ角は-78°であった。
 作製した光学異方性層の断面をSEMで観察したところ、明部および暗部のパターンが観察された。SEMで観察した断面画像において、暗部の角度の変曲点の数は2および暗部の傾斜方向が折り返される変曲点の数は1であった。
 [実施例16]
<液晶回折素子の作製>
(光学異方性層の形成)
 実施例14において、液晶化合物L-1を液晶化合物L-3に変更し、カイラル剤M-1、カイラル剤H-1、レベリング剤T-1の添加量を適宜変更し、光学異方性層の膜厚を調節した以外は、実施例14と同様にして、第1から第3の光学異方性層を形成した。
 第1の光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が150nmになり、かつ、図13に示すような同心円状(放射状)の周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、中心から約2mmの距離での1周期が10μm、中心から25mmの距離での1周期が1μm、中心から30mmの距離での1周期が0.6μmであり、外方向に向かって周期が短くなる液晶配向パターンであった。また、光学異方性層の厚さ方向のねじれ角は83°であった。
 第2の光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が335nmになり、かつ、図13に示すような同心円状(放射状)の周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、中心から約2mmの距離での1周期が10μm、中心から25mmの距離での1周期が1μm、中心から30mmの距離での1周期が0.6μmであり、外方向に向かって周期が短くなる液晶配向パターンであった。また、光学異方性層の厚さ方向のねじれ角は8°であった。
 第3の光学異方性層は、最終的に液晶のΔn550×厚さ(Re(550))が170nmになり、かつ、図13に示すような同心円状(放射状)の周期的な配向表面になっていることを偏光顕微鏡で確認した。なお、この光学異方性層の液晶配向パターンにおいて、液晶化合物の光学軸が180°回転する1周期は、中心から約2mmの距離での1周期が10μm、中心から25mmの距離での1周期が1μm、中心から30mmの距離での1周期が0.6μmであり、外方向に向かって周期が短くなる液晶配向パターンであった。また、光学異方性層の厚さ方向のねじれ角は-78°であった。
 作製した光学異方性層の断面をSEMで観察したところ、明部および暗部のパターンが観察された。SEMで観察した断面画像において、暗部の角度の変曲点の数は2および暗部の傾斜方向が折り返される変曲点の数は1であった。
 なお、実施例14の液晶層(液晶化合物)のΔn550は0.15、実施例15の液晶層のΔn550は0.25、実施例16の液晶層のΔn550は0.32であった。
[評価]
<回折効率の評価>
 作製した比較例11および実施例11~実施例16の液晶回折素子に正面(法線に対する角度0°の方向)から光を入射した際における、出射光の、回折効率を評価した。
 具体的には、光源から405nm、450nm、532nm、650nmのそれぞれに出力中心波長を持つレーザー光を照射し、作製した液晶回折素子に垂直入射させた。出射光のうち、液晶回折素子からの所望の方向に回折した回折光(1次光)とその他方向へ出射した0次光(入射光と同一方向へ出射)、-1次光(0次光に対する1次光の回折角度をθとしたときに、-θ方向へ回折する光)の光強度を光検出器で測定し、各波長における回折効率を下記式で算出した。
  回折効率 = 1次光/(1次光+0次光+(-1次光))
 波長405nm、450nm、532nm、650nmそれぞれの測定値から回折効率の平均値を求め、回折効率の波長依存性を評価した。
 なお、レーザー光の波長に対応する円偏光板に垂直入射させて、円偏光にした後、作製した液晶回折素子に光を入射し、評価を行った。
 また、作製した液晶回折素子における液晶配向パターンの同心円の中心部および同心円の中心付近(1周期が10μm)、端部付近(1周期が1μm)、および端部(1周期が0.6μm)の3か所において評価を行った。
 比較例11に対し、実施例11~実施例16では、回折効率の波長依存性において、高い回折効率が得られた。
[評価]
<回折効率の評価>
 比較例11、実施例11~実施例13、および、実施例14~実施例16で作製した液晶回折素子に、正面(法線に対する角度0°の方向)から±40°(10°刻み)で入射角度を変えて光を入射した際における、出射光の、回折効率を評価した。
 具体的には、光源から405nm、450nm、532nm、650nmのそれぞれに出力中心波長を持つレーザー光を照射し、作製した液晶回折素子に入射させた。出射光のうち、液晶回折素子からの所望の方向に回折した回折光(1次光)とその他方向へ出射した0次光(入射光と同一方向へ出射)、-1次光(0次光に対する1次光の回折角度をθとしたときに、-θ方向へ回折する光)の光強度を光検出器で測定し、各波長における回折効率を下記式で算出した。
  回折効率 = 1次光/(1次光+0次光+(-1次光))
 異なる入射角度で測定した、波長405nm、450nm、532nm、および、650nmのそれぞれの測定値から回折効率の平均値を求め、回折効率の波長依存性を評価した。
 なお、レーザー光の波長に対応する円偏光板に垂直入射させて、円偏光にした後、作製した液晶回折素子に光を入射し、評価を行った。
 また、作製した液晶回折素子における液晶配向パターンの同心円の中心部および同心円の中心付近(1周期が10μm)、端部付近(1周期が1μm)、および端部(1周期が0.6μm)の3か所において評価を行った。
 評価の結果、比較例11に対し、実施例11~実施例16は高い回折効率の平均値が得られた。
 また、評価の結果、実施例11に対し、実施例12の回折効率の平均値は向上しており、実施例13の回折効率の平均値はさらに向上していた。
 また、評価の結果、実施例14に対し、実施例15の回折効率の平均値は向上しており、実施例16の回折効率の平均値はさらに向上していた。
 以上から、液晶回折素子の液晶層の屈折率差Δn550が高い方が、異なる入射角に対する光の利用効率が向上することがわかる。
<円偏光板の作製>
[吸収型偏光板(直線偏光板)の作成]
 上述の方法で吸収型偏光板(直線偏光板)および位相差板を作製し、円偏光板を作製した。
<光学素子の作製>
 比較例11および実施例11~実施例16で作製した液晶回折素子に、上記のように作製した吸収型偏光板を用いて作製した円偏光板を貼合して、光学素子を作製した。なお、光学素子は、液晶回折素子、位相差板、および、吸収型偏光板の順になるように配置して、作製した。
[評価]
 比較例11および実施例11~実施例16で作製した光学素子に正面(法線に対する角度0°の方向)から光を入射した際における、出射光の光強度を評価した。
 具体的には、光源から405nm、450nm、532nm、および、650nmに出力中心波長を持つレーザー光を照射し、作製した光学素子に垂直入射させた。出射光のうち、液晶回折素子からの所望の方向に回折した回折光(1次光)と他方向へ出射した0次光(入射光と同一方向へ出射)の光強度を光検出器で測定した。なお、レーザー光の波長に対応する円偏光板に垂直入射させて、円偏光にした後、作製した光学素子の液晶回折素子側から光を入射し、評価を行った。
 実施例1~実施例7で作製した液晶回折素子に円偏光板を貼合した光学素子では、円偏光板の貼合前に対して、いずれの波長においても0次光の光強度を大幅に低減することができ、コントラスト比(1次光/0次光の光強度比)が向上することを確認した。
[評価]
<入射角度依存性の評価>
 比較例11および実施例11~実施例16で作製した液晶回折素子を用いた光学素子に、正面(法線に対する角度0°の方向)から±40°(10°刻み)で入射角度を変えて光を入射した際における、出射光の、光強度を評価した。
 具体的には、光源から405nm、450nm、532nm、および、650nmのそれぞれに出力中心波長を持つレーザー光を照射し、作製した液晶回折素子に入射させた。出射光のうち、液晶回折素子からの所望の方向に回折した回折光(1次光)と他方向へ出射した0次光(入射光と同一方向へ出射)の光強度を光検出器で測定した。
 異なる入射角度で測定した、波長405nm、450nm、532nm、および、650nmそれぞれの測定値から光強度の入射角に対する平均値を求めた。
また、作製した液晶回折素子における液晶配向パターンの同心円の中心部および同心円の中心付近(1周期が10μm)、および、端部付近(1周期が1μm)、および端部(1周期が0.6μm)の3か所において評価を行った。
なお、レーザー光の波長に対応する円偏光板に垂直入射させて、円偏光にした後、作製した光学素子の液晶回折素子側から光を入射し、評価を行った。
 実施例11~実施例16で作製した液晶回折素子に円偏光板を貼合した光学素子では、円偏光板の貼合前に対して、いずれの波長においても0次光の光強度を大幅に低減することができ、コントラスト比(1次光/0次光の光強度比)が向上することを確認した。
 また、比較例11で作製した光学素子に対し、実施例11~実施例16で作製した光学素子は高いコントラスト比が得られた。
 また、評価の結果、実施例11に対し、実施例12のコントラスト比の入射角に対する平均値は向上しており、実施例13のコントラスト比の入射角に対する平均値はさらに向上していた。
 また、評価の結果、実施例14に対し、実施例15のコントラスト比の入射角に対する平均値は向上しており、実施例16のコントラスト比の入射角に対する平均値はさらに向上していた。
 以上から、液晶回折素子に円偏光板を貼合した光学素子においても、液晶層の屈折率差Δn550が高い方が、異なる入射角に対するコントラスト比が向上することがわかる。
 <支持体の変更>
 以下に記載の方法を用い、目的に応じて液晶回折素子の支持体を適宜変更することができる。また、以下に記載の方法では、液晶回折素子と変更した支持体間の厚さを薄くすることができ、例えば粘着剤(厚さ:数μm~数十μm)に対し、支持体変更後の液晶回折素子面内の厚さを均一にすることができる。このように、液晶回折素子の支持体を変更した場合でも、面内の厚さを均一にすることで、液晶回折素子から出射した光の方向を面内で精密に制御することができる。
 なお、液晶回折素子と新たな支持体の積層は、一例として、以下の手順で行えばよい。
 (1) 積層する、支持体、配向膜および液晶回折素子の液晶層側に、仮支持体を貼合する。本例においては、仮支持体は、藤森工業社製、MASTACK AS3-304を用いた。
 (2) 次に、液晶回折素子の作製段階から存在していた支持体および配向膜を剥離し、液晶回折素子の配向膜側の界面を露出させる。
 (3) この液晶回折素子の配向膜側の界面と、新たに準備した支持体の界面との両方に対し、酸化ケイ素層(SiOx層)を形成する。酸化ケイ素層の形成方法には、制限はないが、真空蒸着が好ましく例示される。本例においては、酸化ケイ素層の形成は、アルバック社製の蒸着装置(型番ULEYES)を用いて行った。蒸着源は、SiO2粉体を用いた。酸化ケイ素層の厚さには制限はないが、50nm以下が好ましい。本例においても、酸化ケイ素膜の厚さは50nm以下とした。
 (4) 次いで、形成した酸化ケイ素膜の両方にプラズマ処理を施し、形成した酸化ケイ素層同士を、120℃で貼合した後、仮支持体を剥離する。
 上記(1)~(4)の工程により、液晶回折素子と新たに準備した支持体が積層された回折素子を作製できる。また、支持体を別の液晶回折素子に変え、(1)~(4)の工程を繰り返すことにより、2層あるいは3層以上の液晶回折素子が積層された回折素子を作製できる。
 上記(1)~(4)の工程により、実施例1で作製した液晶回折素子の支持体を厚さ0.3mmのガラス基板に変更した。比較として、厚さ25μmの粘着剤を用い、実施例1で作製した液晶回折素子の支持体を厚さ0.3mmのガラス基板に変更(粘着剤を介して、液晶回折素子をガラス基板に貼合)した。上記(1)~(4)の工程で、作製した液晶回折素子は、粘着剤を介して作製したものより、液晶回折素子面内の厚さを均一にすることができた。
<積層体の作製>
 同様にして、液晶回折素子と他の光学部材等の積層体を作製することができる。
 一例として、液晶回折素子、位相差板、偏光板の積層体を下記方法により作製した。
 積層する、支持体、配向膜および液晶層を有する液晶回折素子の液晶層側と、液晶回折素子に貼合する位相差板の貼合面側に酸化ケイ素層(SiOx層)を形成した。酸化ケイ素層の形成方法には、制限はないが、真空蒸着が好ましく例示される。本例においては、酸化ケイ素層の形成は、アルバック社製の蒸着装置(型番ULEYES)を用いて行った。蒸着源は、SiO2粉体を用いた。酸化ケイ素層の厚さには制限はないが、50nm以下が好ましい。本例においても、酸化ケイ素膜の厚さは50nm以下とした。形成した酸化ケイ素膜の両方にプラズマ処理を施し、酸化ケイ素層同士を、120℃で貼合した。これにより、液晶回折素子と位相差板の積層体を形成した。同様にして、位相差板上に偏光板層を貼合し、上記支持体、配向膜を剥離する事で、液晶層(液晶回折素子)/位相差板/偏光板からなる積層体を作製した。
 なお、液晶回折素子として、実施例1~実施例16で作製した液晶回折素子を用いた。位相差板として、上述の円偏光板作製で用いた位相差板を用いた。偏光板として、上述の直線偏光板(ポリビニルアルコール層型)および吸収型偏光板をそれぞれ用いて積層体を作製した。
 液晶回折素子、位相差板、偏光板の積層体した光学素子では、円偏光板(位相差板と偏光板の積層体)の貼合前に対して、いずれの波長においても0次光の光強度を大幅に低減することができ、コントラスト比(1次光/0次光の光強度比)が向上することを確認した。
 以上の結果より、本発明の効果は明らかである。
 30 支持体
 32 配向膜
 36a、36b 光学異方性層
 37a~37g 領域
 40 液晶化合物
 40A 光学軸
 42 明部
 44 暗部
 60 露光装置
 62 レーザー
 64 光源
 65 λ/2板
 68 ビームスプリッター
 70A,70B,90A,90B ミラー
 72A,72B, 96 λ/4板
 86,94 偏光ビームスプリッター
 92 レンズ
 Λ 1周期
 D 配列軸
 R 領域
 M レーザー光
 MA,MB 光線
 MP P偏光
 MS S偏光
 PO 直線偏光
 PR 右円偏光
 PL 左円偏光
 α 交差角
 L1,L4 入射光
 L2,L5 透過光

Claims (19)

  1.  液晶化合物を含む液晶組成物を用いて形成された光学異方性層を備え、
     前記光学異方性層は、前記液晶化合物由来の光学軸の向きが面内の少なくとも一方向に沿って連続的に回転しながら変化している液晶配向パターンを有し、
     前記光学異方性層は、前記一方向に沿って厚さ方向に切断した断面を走査型電子顕微鏡で観察した断面画像において、一方の表面から他方の表面に延在する明部および暗部を有し、かつ、前記暗部が、2か所以上の角度の変曲点を有し、さらに、厚さ方向において、前記暗部の傾斜方向が異なる領域を有する、液晶回折素子。
  2.  前記液晶配向パターンにおける前記液晶化合物由来の光学軸の向きが面内で180°回転する長さを1周期とした際に、前記1周期の長さが一定である、請求項1に記載の液晶回折素子。
  3.  前記液晶配向パターンにおける前記液晶化合物由来の光学軸の向きが面内で180°回転する長さを1周期とした際に、前記1周期の長さが一方向に沿って漸次変化する、請求項1に記載の液晶回折素子。
  4.  前記液晶配向パターンが、前記液晶化合物由来の光学軸の向きが連続的に回転しながら変化する一方向を、内側から外側に向かう同心円状に有する、同心円状のパターンである、請求項1または請求項3に記載の液晶回折素子。
  5.  前記暗部が、傾斜方向が折り返される前記変曲点を、奇数か所、有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の液晶回折素子。
  6.  前記暗部が、傾斜方向が折り返される前記変曲点を、1か所、有する、請求項5に記載の液晶回折素子。
  7.  前記暗部が、傾斜方向が折り返される前記変曲点を、3か所、有する、請求項5に記載の液晶回折素子。
  8.  前記光学異方性層は、前記一方向に沿って厚さ方向に切断した断面を走査型電子顕微鏡で観察した断面画像において、前記暗部の形状が、前記光学異方性層の厚さ方向の中心線に対して、対称である、請求項1~7のいずれか1項に記載の液晶回折素子。
  9.  前記光学異方性層は、前記一方向に沿って厚さ方向に切断した断面を走査型電子顕微鏡で観察した断面画像において、前記暗部の形状が、前記光学異方性層の厚さ方向の中心線に対して、非対称である、請求項1~7のいずれか1項に記載の液晶回折素子。
  10.  前記光学異方性層の屈折率異方性に伴う屈折率差Δn550が0.2以上である、請求項1~9のいずれか1項に記載の液晶回折素子。
  11.  前記液晶配向パターンにおける前記液晶化合物由来の光学軸の向きが面内で180°回転する長さを1周期とした際に、前記1周期の長さが、1.0μm以下である領域を面内に有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の液晶回折素子。
  12.  請求項1~11のいずれか1項に記載の液晶回折素子と円偏光板とを有する、光学素子。
  13.  前記円偏光板が位相差板と偏光子からなり、前記液晶回折素子と前記位相差板と前記偏光子とが、この順で配置される、請求項12に記載の光学素子。
  14.  請求項1~11のいずれか1項に記載の液晶回折素子と酸化ケイ素層と支持体をこの順で有する、光学素子。
  15.  請求項1~11のいずれか1項に記載の液晶回折素子、または請求項12~14のいずれか1項に記載の光学素子を少なくとも1つ以上有し、さらに少なくとも1つ以上の位相変調素子を有する、光学素子。
  16.  請求項1~11のいずれか1項に記載の液晶回折素子、または請求項12~請求項15 のいずれか1項に記載の光学素子を有する、画像表示ユニット。
  17.  請求項16に記載の画像表示ユニットを有する、ヘッドマウントディスプレイ。
  18.  請求項1~11のいずれか1項に記載の液晶回折素子、または請求項12~15のいずれか1項に記載の光学素子を有する、ビームステアリング。
  19.  請求項1~11のいずれか1項に記載の液晶回折素子、または請求項12~15のいずれか1項に記載の光学素子を有する、センサー。
     
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