WO2022045169A1 - エンジニアリングされたCjCas9タンパク質 - Google Patents

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Abstract

以下の(a)~(c)のいずれか一つのアミノ酸配列を含む配列からなり、且つ、ガイドRNAと複合体を形成することができる、タンパク質。 (a)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、アミノ酸番号900位のアスパラギン酸の、リジン、又はアルギニンへの置換を少なくとも含むアミノ酸配列 (b)前記(a)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号900位以外の部分において、1~数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換若しくは付加されたアミノ酸配列 (c)前記(a)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号900位以外の部分において、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列

Description

エンジニアリングされたCjCas9タンパク質
 本発明は、エンジニアリングされたCjCas9タンパク質、及びその使用に関する。
 本願は、2020年8月25日に、日本に出願された特願2020-141825号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
 クラスター化した規則的な配置の短い回文反復配列(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats:CRISPR)は、Cas(CRISPR-associated)遺伝子と共に、細菌及び古細菌において侵入外来核酸に対する獲得耐性を提供する適応免疫系を構成することが知られている。CRISPRは、ファージ又はプラスミドDNAに起因することが多く、大きさの類似するスペーサーと呼ばれる独特の可変DNA配列が間に入った、24~48bpの短い保存された反復配列からなる。また、リピート及びスペーサー配列の近傍には、Casタンパク質ファミリーをコードする遺伝子群が存在する。
 CRISPR-Casシステムにおいて、外来性のDNAは、Casタンパク質ファミリーによって30bp程度の断片に切断され、CRISPRに挿入される。Casタンパク質ファミリーの一つであるCas1及びCas2タンパク質は、外来性DNAのプロトスペーサー隣接モチーフ(proto-spacer adjacent motif:PAM)と呼ばれる塩基配列を認識して、その上流を切り取って、宿主のCRISPR配列に挿入し、これが細菌の免疫記憶となる。免疫記憶を含むCRISPR配列が転写されて生成したRNA(pre-crRNAと呼ぶ。)は、一部相補的なRNA(trans-activating crRNA:tracrRNA)と対合し、Casタンパク質ファミリーの一つであるCas9タンパク質に取り込まれる。Cas9に取り込まれたpre-crRNA及びtracrRNAはRNAaseIIIにより切断され、外来配列(ガイド配列)を含む小さなRNA断片(CRISPR-RNAs:crRNAs)となり、Cas9-crRNA-tracrRNA複合体が形成される。Cas9-crRNA-tracrRNA複合体はcrRNAと相補的な外来侵入性DNAに結合し、DNAを切断する酵素(ヌクレアーゼ)であるCas9タンパク質が、外来侵入性DNAを切断することよって、外から侵入したDNAの機能を抑制及び排除する。
 Cas9タンパク質は外来侵入性DNA中のPAM配列を認識して、その上流で二本鎖DNAを平滑末端になるように切断する。PAM配列の長さや塩基配列は細菌種によってさまざまであり、Streptococcus pyogenes(S.pyogenes)では「NGG」の3塩基を認識する。Streptococcus thermophilus(S.thermophilus)は2種のCas9を持っており、それぞれ「NGGNG」又は「NNAGAA」の5~6塩基をPAM配列として認識する (Nは任意の塩基を表す)。PAM配列の上流の何bpのところを切断するかも細菌種によって異なり、S.pyogenesを含め多くのCas9オルソログはPAM配列の3塩基上流を切断する。
 近年、細菌でのCRISPR-Casシステムを、ゲノム編集に応用する技術が盛んに開発されている。crRNAとtracrRNAを融合させて、tracrRNA-crRNAキメラ(以下、ガイドRNA(guide RNA:gRNA)と呼ぶ。)として発現させ、活用している。これによりヌクレアーゼ(RNA-guided nuclease:RGN)を呼び込み、目的の部位でゲノムDNAを切断する。
 CRISPR-Casシステムには、typeI、II、IIIがあるが、ゲノム編集で用いるのはもっぱらtypeII CRISPR-Casシステムであり、typeIIではRGNとしてCas9タンパク質が用いられている。S.pyogenes由来のCas9タンパク質はNGGという3つの塩基をPAM配列として認識するため、グアニンが2つ並んだ配列がありさえすればその上流を切断できる。
 CRISPR-Casシステムを用いた方法は、目的のDNA配列に対応する配列を有する短いgRNAを合成するだけでよく、単一のタンパク質であるCas9タンパク質を用いてゲノム編集ができる。そのため、従来用いられていたジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)やトランス活性化因子様作動体(TALEN)のようにDNA配列ごとに異なる大きなタンパク質を合成する必要がなく、簡便かつ迅速にゲノム編集を行うことができる。
 特許文献1には、S.pyogenes由来のCRISPR-Casシステムを活用したゲノム編集技術が開示されている。
 特許文献2には、S.thermophilus由来のCRISPR-Casシステムを活用したゲノム編集技術が開示されている。さらに、特許文献2には、Cas9タンパク質のD31A又はN891A変異体が、一方のDNA鎖のみにニック(nick)を入れるDNA切断酵素であるニッカーゼとして機能することが開示されており、DNA切断後の修復メカニズムで挿入欠失などの変異を起こしやすい非相同末端結合の発生率は少ないままで、野生型Cas9タンパク質と同程度の相同組み換え効率を有することが示されている。
 非特許文献1には、S.pyogenes由来のCas9を使用したCRISPR-Casシステムであって、2つのCas9タンパク質のD10A変異体と、該D10A変異体と複合体を形成する1対の標的特異的ガイドRNAを利用するダブルニッカーゼシステムが開示されている。各Cas9タンパク質のD10A変異体及び標的特異的ガイドRNAの複合体は、ガイドRNAと相補するDNA鎖に1つだけニックを作る。一対のガイドRNAの標的位置同士は約20塩基程度ずれており、標的DNAの反対鎖に位置する標的配列のみを認識する。各Cas9タンパク質のD10A変異体及び標的特異的ガイドRNAの複合体によって作られた2つのニックは、DSB(DNA二本鎖切断)を模倣する状態になり、一対のガイドRNAを利用することで高レベルの効率を維持しつつ、Cas9タンパク質媒介型遺伝子編集の特異性を改善できることが示されている。
 また、近年、医療応用等の観点から、より分子量の小さいCas9に注目が集まっている。非特許文献2には、現在判明している中で構成アミノ酸数が最小のCas9である、984アミノ酸残基からなるCampylobacter jejuni由来のCas9(CjCas9)を、in vivoのゲノム編集に用いたことが開示されている。また、非特許文献3では、結晶構造解析を行いCjCas9の詳細な構造を明らかにしている。
国際公開第2014/093661号 特表2015-510778号公報
Ran, F.A., et al. 2013. Double nicking by RNA―guided CRISPR Cas9 for enhanced genome editing specificity. Cell 154: 1380-1389. Kim, E., Koo, T., Park, S. et al. In vivo genome editing with a small Cas9 orthologue derived from Campylobacter jejuni. Nat Commun 8, 14500 (2017) doi:10.1038/ncomms14500 Yamada et al. Crystal Structure of the Minimal Cas9 from Campylobacter jejuni Reveals the Molecular Diversity in the CRISPR-Cas9 Systems. Mol Cell. 2017 Mar 16;65(6):1109-1121
 C.jejuni由来のCas9タンパク質(CjCas9)の認識可能なPAM配列は、非特許文献2においては「NNNNACAC」又は「NNNNRYAC」であると報告されている。一方、非特許文献3においてより詳細な解析を行ったところ、PAM配列の4番目の塩基が「T」の場合には切断活性が無く、4番目の「N」(任意の塩基)は、実際は「V」(T以外の塩基)であることが判明した。非特許文献3においては、CjCas9のPAM配列は「NNNVRYM」であると報告されている。いずれの報告からも、野生型CjCas9には認識可能なPAM配列に制限があるため、編集可能な標的配列が制限されることが理解できる。
 また、CjCas9には、ゲノム編集ツールとして汎用されているSpCas9と比較してゲノムの認識・切断活性が低いという問題点もあった。
 本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、PAM配列の認識が広範化されたCas9タンパク質を提供することを目的とする。
 すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1]以下の(a)~(c)のいずれか一つのアミノ酸配列を含む配列からなり、且つ、ガイドRNAと複合体を形成することができる、タンパク質。
 (a)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、アミノ酸番号900位のアスパラギン酸の、リジン、又はアルギニンへの置換を少なくとも含むアミノ酸配列
 (b)前記(a)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号900位以外の部分において、1~数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換若しくは付加されたアミノ酸配列
 (c)前記(a)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号900位以外の部分において、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
[2]配列番号1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号900位がリジンである、[1]に記載のタンパク質。
[3]更に、配列番号1で表されるアミノ酸配列において、アミノ酸番号58位のロイシンが、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン、又はイソロイシンである、[1]又は[2]に記載のタンパク質。
[4]更に、配列番号1で表されるアミノ酸配列において、アミノ酸番号58位のロイシンが、チロシンである、[1]~[3]のいずれか一つに記載のタンパク質。
[5]更に、配列番号1で表されるアミノ酸配列において、少なくとも以下のいずれか一つの変異を含む、[1]~[4]のいずれか一つに記載のタンパク質。
 (d)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、アミノ酸番号911位のアラニンが、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、又はメチオニンである
 (e)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、アミノ酸番号790位のグルタミン酸が、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、又はメチオニンである
[6]ニッカーゼ活性を有する、[1]~[5]のいずれか一つに記載のタンパク質。
[7][1]~[6]のいずれか一つに記載のタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド。
[8][7]に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
[9][1]~[6]のいずれか一つに記載のタンパク質、[7]に記載のポリヌクレオチド、又は[8]に記載のベクターと、ガイドRNAと、を含む、組成物。
[10][9]に記載の組成物を用いる、単離された細胞中のゲノム編集方法。
[11]単離された細胞中の標的二本鎖ポリヌクレオチドを部位特異的に修飾するための方法であって、
 標的二本鎖ポリヌクレオチドと、[1]~[5]のいずれか一つに記載のタンパク質と、ガイドRNAとを接触させる工程を含み、
 前記タンパク質が、前記標的二本鎖ポリヌクレオチド中のPAM配列の上流に位置する切断部位で該標的二本鎖ポリヌクレオチドを切断して、平滑末端を作出し、
 前記ガイドRNAと前記標的二本鎖ポリヌクレオチドの相補的結合によって決定される領域において、前記標的二本鎖ポリヌクレオチドを修飾する、方法。
[12]単離された細胞中の標的二本鎖ポリヌクレオチドを部位特異的に修飾するための方法であって、
 標的二本鎖ポリヌクレオチドと、[1]~[5]のいずれか一つに記載のタンパク質と核酸塩基変換酵素との複合体と、ガイドRNAとを接触させる工程を含み、
 前記タンパク質が、前記ガイドRNAを介して前記標的二本鎖ポリヌクレオチドに特異的に結合し、ここで、前記タンパク質が、前記標的二本鎖ポリヌクレオチドを切断しないか又は一方の鎖のみを切断し、
 前記ガイドRNAと前記標的二本鎖ポリヌクレオチドの相補的結合によって決定される領域において、前記標的二本鎖ポリヌクレオチドを修飾する、方法。
[13]単離された細胞中の遺伝子の発現を調節するための方法であって、
 前記遺伝子に関連する標的二本鎖ポリヌクレオチドと、[1]~[5]のいずれか一つに記載のタンパク質と、ガイドRNAと、エフェクター分子とを接触させる工程を含み、 前記タンパク質は、標的二本鎖ポリヌクレオチドの一方又は両方の鎖を切断する能力を欠如しており、
 前記タンパク質が、前記ガイドRNAを介して前記標的二本鎖ポリヌクレオチドに特異的に結合し、それにより前記エフェクター分子が前記標的二本鎖ポリヌクレオチドに特異的に作用することによって前記遺伝子の発現を調節する、方法。
[14]以下の(f)~(h)のいずれか一つのアミノ酸配列を含む配列からなり、且つ、ガイドRNAと複合体を形成することができる、タンパク質。
 (f)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、アミノ酸番号58位のロイシンの、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン、又はイソロイシンへの置換を少なくとも含むアミノ酸配列
 (g)前記(f)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号58位以外の部分において、1~数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換若しくは付加されたアミノ酸配列
 (h)前記(f)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号58位以外の部分において、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
[15]配列番号1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号58位がチロシンである、[14]に記載のタンパク質。
[16]更に、配列番号1で表されるアミノ酸配列において、アミノ酸番号790位のグルタミン酸が、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、又はメチオニンである、[14]又は[15]に記載のタンパク質。
[17]更に、配列番号1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号790位がフェニルアラニンである、[14]~[16]のいずれか一つに記載のタンパク質。
[18]更に、配列番号1で表されるアミノ酸配列において、アミノ酸番号911位のアラニンが、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、又はメチオニンである、[14]~[17]のいずれか一つに記載のタンパク質。
[19]更に、配列番号1で表されるアミノ酸配列において、アミノ酸番号911位のアラニンが、フェニルアラニンである、[14]~[18]のいずれか一つに記載のタンパク質。
[20]以下の(i)~(k)のいずれか一つのアミノ酸配列を含む配列からなり、且つ、ガイドRNAと複合体を形成することができる、タンパク質。
 (i)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、アミノ酸番号790位のグルタミン酸の、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、又はメチオニンへの置換を少なくとも含むアミノ酸配列
 (j)前記(i)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号790位以外の部分において、1~数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換若しくは付加されたアミノ酸配列
 (k)前記(i)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号790位以外の部分において、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
[21]配列番号1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号790位がフェニルアラニンである、[20]に記載のタンパク質。
[22]下の(l)~(n)のいずれか一つのアミノ酸配列を含む配列からなり、且つ、ガイドRNAと複合体を形成することができる、タンパク質。
 (l)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、アミノ酸番号911位のアラニンの、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、又はメチオニンへの置換を少なくとも含むアミノ酸配列
 (m)前記(l)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号911位以外の部分において、1~数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換若しくは付加されたアミノ酸配列
 (n)前記(l)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号911位以外の部分において、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
[23]配列番号1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号911位がフェニルアラニンである、[22]に記載のタンパク質。
[24]以下の(o)~(q)のいずれか一つのアミノ酸配列を含む配列からなり、且つ、ガイドRNAと複合体を形成することができる、タンパク質。
 (o)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、以下の置換を少なくとも一つ含むアミノ酸配列:
 ・アミノ酸番号58位のロイシンの、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン、又はイソロイシンへの置換
 ・アミノ酸番号790位のグルタミン酸の、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、又はメチオニンへの置換
 ・アミノ酸番号900位のアスパラギン酸の、リジン、又はアルギニンへの置換、
 ・アミノ酸番号911位のアラニンの、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、又はメチオニンへの置換
 (p)前記(o)で表されるアミノ酸配列の、前記(o)に規定するアミノ酸番号以外の部分において、1~数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換若しくは付加されたアミノ酸配列
 (q)前記(o)で表されるアミノ酸配列の前記(o)に規定するアミノ酸番号以外の部分において、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
[25]配列番号1で表されるアミノ酸配列において、以下の置換の組合せの少なくともいずれか一つを含む、[24]に記載のタンパク質。
 ・アミノ酸番号58位のロイシンのチロシンへの置換
 ・アミノ酸番号790位のグルタミン酸のフェニルアラニンへの置換
 ・アミノ酸番号900位のアスパラギン酸のリジンへの置換、
 ・アミノ酸番号911位のアラニンのフェニルアラニンへの置換
[26][14]~[25]のいずれか一つに記載のタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド。
[27][26]に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
[28][14]~[25]のいずれか一つに記載のタンパク質、[26]に記載のポリヌクレオチド、又は[27]に記載のベクターと、ガイドRNAと、を含む、組成物。
[29][28]に記載の組成物を用いる、単離された細胞中のゲノム編集方法。
 本発明によれば、PAM配列の認識が広範化されたCas9タンパク質を提供することができる。
各PAM配列を含む標的DNAを用いて、野生型CjCas9のDNA切断活性を調べた結果である。 各PAM配列を含む標的DNAを用いて、変異型CjCas9のDNA切断活性を調べた結果である。 各PAM配列を含む標的DNAを用いて、変異型CjCas9のDNA切断活性を調べた結果である。 各PAM配列を含む標的DNAを用いて、野生型及び変異型CjCas9のDNA切断活性を調べた結果である。 各PAM配列を含む標的DNAを用いて、野生型及び変異型CjCas9のDNA切断活性を調べた結果である。 各PAM配列を含む標的DNAを用いて、野生型及び変異型CjCas9のDNA切断活性を調べた結果である。 各PAM配列を含む標的DNAを用いて、野生型及び変異型CjCas9のDNA切断活性を調べた結果である。 各PAM配列を含む標的DNAを用いて、野生型及び変異型CjCas9のDNA切断活性を調べた結果である。 野生型及び変異型CjCas9におけるPAM discovery assayの結果である。 野生型CjCas9のPAMプロファイルの結果である。 L58Y/D900K変異型CjCas9のPAMプロファイルの結果である。 野生型及び変異型CjCas9の培養細胞におけるindel解析の結果である。 図10Aにおけるゲノム編集効率の要約である。 HEK293Ta細胞における内在性標的部位での野生型CjCas9、変異型CjCas9、及びSpCas9によるIndel形成結果である。 HEK293Ta細胞における内在性標的部位での野生型CjCas9-AID、及び変異型CjCas9-AIDによるシトシン-チミン変換の結果である。 図11Aにおける塩基編集効率の要約である。
 以下、必要に応じて図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。
≪タンパク質≫
 野生型CjCas9タンパク質は、984個のアミノ酸残基からなるtypeII Cas9エンドヌクレアーゼである。野生型CjCas9タンパク質の全長アミノ酸配列を、配列番号1に示す。
 本発明者らは、CjCas9タンパク質の結晶構造解析データをもとに、ガイドRNAや標的DNAと相互作用する可能性のある領域に変異を導入したCjCas9タンパク質を作製し、無細胞系及び細胞系での標的ポリヌクレオチドの切断活性を評価することで、PAM配列の認識が広範化され、標的ポリヌクレオチドへの切断活性が向上したCas9タンパク質を見出した。
 本明細書において、Cas9タンパク質の「PAM配列の認識が広範化」されたこととは、野生型CjCas9タンパク質を対照として評価され、野生型CjCas9タンパク質と比較して、認識可能なPAM配列の種類の増加や、認識可能なPAM配列の認識頻度の向上を含む概念である。ここで、認識可能なPAM配列の種類の増加は、例えば、確認対象のPAM配列を含む標的ポリヌクレオチドの切断活性の有無により確認できる。認識可能なPAM配列の認識頻度の向上は、例えば、確認対象のPAM配列を含む標的ポリヌクレオチドの切断活性が向上したことにより確認できる。
 本明細書において、塩基配列を表す場合、「A」はアデニン、「G」はグアニン、「C」はシトシン、「T」はチミンをそれぞれ意味する。「R」は、アデニン又はグアニンを意味し、「Y」は、シトシン又はチミンを意味し、「M」は、アデニン又はシトシンを意味し、「H」は、アデニン、チミン、又はシトシンを意味し、「V」は、アデニン、グアニン又はシトシンを意味し、「D」は、アデニン、グアニン又はチミンを意味し、「N」は、アデニン、シトシン、チミン、又はグアニンを意味する。
 本明細書において、「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」とは、アミノ酸残基のポリマーを意味し、互換的に使用される。また、1つ若しくは複数のアミノ酸が、天然に存在する対応アミノ酸の化学的類似体、又は修飾誘導体である、アミノ酸ポリマーを意味する。本明細書においては、IUPAC-IUB Joint Commission on Biochemical Nomenclature(JCBN)に従い定義されるようなアミノ酸の一文字表記及び三文字表記を使用する。
 本明細書において、アミノ酸配列における置換変異を表す場合、元のアミノ酸の一文字表記、続いて1~4桁の数字による位置番号、次に置換されたアミノ酸の一文字表記により表現することがある。例えば、アミノ酸番号1022位においてアスパラギン酸(D)がアスパラギン(N)に置換される変異が生じている場合、「D1022N」と表され、これは、「アミノ酸番号1022位のAspのAsnへの置換」と同義である。
 以下、本発明の一実施形態のタンパク質として、野生型のCjCas9タンパク質を基準とした以下の変異を有するタンパク質を提供する。
<アミノ酸番号900位のアスパラギン酸に変異を有するCjCas9タンパク質>
 一実施形態において、本発明は、以下の(a)~(c)のいずれか一つのアミノ酸配列を含む配列からなり、且つ、ガイドRNAと複合体を形成することができる、タンパク質を提供する。
 (a)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、アミノ酸番号900位のアスパラギン酸の、リジン、又はアルギニンへの置換を少なくとも含むアミノ酸配列
 (b)前記(a)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号900位以外の部分において、1~数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換若しくは付加されたアミノ酸配列
 (c)前記(a)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号900位以外の部分において、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
 配列番号1で表されるアミノ酸配列とは、野生型CjCas9タンパク質の全長アミノ酸配列である。(a)において、アミノ酸番号900位の置換は、リジン、又はアルギニンであり、リジンが好ましい。
 (b)において、欠失、挿入、置換若しくは付加されたアミノ酸の数としては、1~200個が好ましく、1~150個が好ましく、1~100個がより好ましく、1~50個がより好ましく、1~40個がより好ましく、1~30個がより好ましく、1~15個がより好ましく、1~10個が更に好ましく、1~5個が最も好ましい。
 (c)において、同一性としては、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上が特に好ましく、98%以上が最も好ましい。
 本明細書において、「ガイドRNAと複合体を形成する」とは、実施形態のタンパク質がガイドRNAとの結合能を有することを意味する。ガイドRNAは、その5’末端に標的DNAに相補的な配列を有し、係る配列を介して標的DNAに結合することにより、本発明の一実施形態のタンパク質を標的DNAに導く。
 本実施形態のタンパク質は、更に、配列番号1で表されるアミノ酸配列において、アミノ酸番号58位のロイシンが、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン、又はイソロイシンであることが好ましく、チロシンであることがより好ましい。
 本実施形態のタンパク質は、更に、(d)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、アミノ酸番号911位のアラニンが、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、又はメチオニンであり、及び/又は(e)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、アミノ酸番号790位のグルタミン酸が、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、又はメチオニンであることが好ましい。
 更に、配列番号1で表されるアミノ酸配列において、アミノ酸番号911位のアラニンが、フェニルアラニンであることがより好ましい。
 更に、配列番号1で表されるアミノ酸配列において、アミノ酸番号790位のグルタミン酸が、フェニルアラニンであることがより好ましい。
 実施例にて後述するように、アミノ酸番号900位のアスパラギン酸がリジンに置換されたD900K、及び、更にアミノ酸番号58位のロイシンが、チロシンに置換されたL58Y/D900Kは、「NNNVRYAC」のPAM配列を含む標的DNAに対して野生型と比較して、無細胞系及び細胞系において、優れた切断活性を示した。特に、L58Y/D900Kは、野生型と比較して、細胞内で標的遺伝子におけるIndel頻度及び変異頻度に優れている。
 更に、L58Y/D900Kの認識可能なPAM配列は、実施例で後述するように、「NNNVRYAC」以外に、「NNNTACAC」や「NNNAACAD」といった野生型が認識できない配列も認識できており、認識の嗜好性が大幅に緩和されている。
 また、本実施形態のタンパク質は、ニッカーゼ活性を有していてもよい。ニッカーゼ活性を有するタンパク質としては、上記変異に加えて、アミノ酸番号8位のアスパラギン酸がアラニンであるか、又は、アミノ酸番号559位のヒスチジンがアラニンである、若しくは、アミノ酸番号582位のアスパラギンがアラニンであることが好ましい。
 また、本実施形態のタンパク質は、エンドヌクレアーゼ活性が失活していてもよい。エンドヌクレアーゼ活性が失活しているタンパク質としては、上記変異に加えて、アミノ酸番号8位のアスパラギン酸がアラニンであり、アミノ酸番号559位のヒスチジンがアラニンであり、及び/又は、アミノ酸番号582位のアスパラギンがアラニンであることが好ましい。
 ニッカーゼ活性を有している、又はエンドヌクレアーゼ活性が失活しているCas9タンパク質は、例えば後述するような、個々の塩基を一塩基単位で高精度に改変するゲノム編集(一塩基編集)や、遺伝子の発現を調節する方法等での使用において、特に有利である。
<アミノ酸番号58位のロイシンに変異を有するCjCas9タンパク質>
 一実施形態において、本発明は、以下の(f)~(h)のいずれか一つのアミノ酸配列を含む配列からなり、且つ、ガイドRNAと複合体を形成することができる、タンパク質を提供する。
 (f)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、アミノ酸番号58位のロイシンの、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン、又はイソロイシンへの置換を少なくとも含むアミノ酸配列
 (g)前記(f)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号58位以外の部分において、1~数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換若しくは付加されたアミノ酸配列
 (h)前記(f)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号58位以外の部分において、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
 (f)において、アミノ酸番号58位の置換は、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン、又はイソロイシンであり、チロシンが好ましい。
 (g)において、欠失、挿入、置換若しくは付加されたアミノ酸の数としては、1~200個が好ましく、1~150個が好ましく、1~100個がより好ましく、1~50個がより好ましく、1~40個がより好ましく、1~30個がより好ましく、1~15個がより好ましく、1~10個が更に好ましく、1~5個が最も好ましい。
 (h)において、同一性としては、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上が特に好ましく、98%以上が最も好ましい。
 本実施形態のタンパク質は、更に、配列番号1で表されるアミノ酸配列において、アミノ酸番号790位のグルタミン酸が、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、又はメチオニンであることが好ましく、フェニルアラニンであることがより好ましい。
 本実施形態のタンパク質は、更に、配列番号1で表されるアミノ酸配列において、アミノ酸番号911位のアラニンが、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、又はメチオニンであることが好ましく、フェニルアラニンであることがより好ましい。
<アミノ酸番号790位のグルタミン酸に変異を有するCjCas9タンパク質>
 一実施形態において、本発明は、以下の(i)~(k)のいずれか一つのアミノ酸配列を含む配列からなり、且つ、ガイドRNAと複合体を形成することができる、タンパク質を提供する。
 (i)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、アミノ酸番号790位のグルタミン酸の、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、又はメチオニンへの置換を少なくとも含むアミノ酸配列
 (j)前記(i)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号790位以外の部分において、1~数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換若しくは付加されたアミノ酸配列
 (k)前記(i)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号790位以外の部分において、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
 (i)において、アミノ酸番号790位の置換は、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、又はメチオニンであり、フェニルアラニンが好ましい。
 (j)において、欠失、挿入、置換若しくは付加されたアミノ酸の数としては、1~200個が好ましく、1~150個が好ましく、1~100個がより好ましく、1~50個がより好ましく、1~40個がより好ましく、1~30個がより好ましく、1~15個がより好ましく、1~10個が更に好ましく、1~5個が最も好ましい。
 (k)において、同一性としては、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上が特に好ましく、98%以上が最も好ましい。
 本実施形態のタンパク質は、更に、配列番号1で表されるアミノ酸配列において、アミノ酸番号911位のアラニンが、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、又はメチオニンであることが好ましく、フェニルアラニンであることがより好ましい。
<アミノ酸番号911位のアラニンに変異を有するCjCas9タンパク質>
 一実施形態において、本発明は、以下の(l)~(n)のいずれか一つのアミノ酸配列を含む配列からなり、且つ、標的特異的ガイドRNAと複合体を形成することができることを特徴とするタンパク質を提供する。
 (l)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、アミノ酸番号911位のアラニンの、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、又はメチオニンへの置換を少なくとも含むアミノ酸配列
 (m)前記(l)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号911位以外の部分において、1~数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換若しくは付加されたアミノ酸配列
 (n)前記(l)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号911位以外の部分において、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
 (l)において、アミノ酸番号911位の置換は、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、又はメチオニンであり、フェニルアラニンが好ましい。
 (m)において、欠失、挿入、置換若しくは付加されたアミノ酸の数としては、1~200個が好ましく、1~150個が好ましく、1~100個がより好ましく、1~50個がより好ましく、1~40個がより好ましく、1~30個がより好ましく、1~15個がより好ましく、1~10個が更に好ましく、1~5個が最も好ましい。
 (n)において、同一性としては、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上が特に好ましく、98%以上が最も好ましい。
 実施例にて後述するように、アミノ酸番号58位のロイシンがチロシンに置換されたD900K、アミノ酸番号790位のグルタミン酸がフェニルアラニンに置換されたE790F、アミノ酸番号911位のアラニンがフェニルアラニンに置換されたA911F、及びこれらの変異の組み合わせは、「NNNVRYAC」のPAM配列を含む標的DNAに対して野生型と比較して、無細胞系において、優れた切断活性を示した。特に、3重変異である、L58Y/E790/A911Fは、野生型と比較して、無細胞系において、特に優れた切断活性を示した。
 更に、L58Y/E790/A911Fの認識可能なPAM配列は、「NNNNRYDN」であって、認識の嗜好性が大幅に緩和されている。
 一実施形態において、本発明は、以下の(o)~(q)のいずれか一つのアミノ酸配列を含む配列からなり、且つ、ガイドRNAと複合体を形成することができる、タンパク質を提供する。
 (o)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、以下の置換からなる群から選ばれる少なくとも一つの置換を含むアミノ酸配列:
 ・アミノ酸番号58位のロイシンの、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン、又はイソロイシンへの置換
 ・アミノ酸番号790位のグルタミン酸の、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、又はメチオニンへの置換
 ・アミノ酸番号900位のアスパラギン酸の、リジン、又はアルギニンへの置換、及び
 ・アミノ酸番号911位のアラニンの、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、又はメチオニンへの置換
 (p)前記(o)で表されるアミノ酸配列の、前記(o)に規定するアミノ酸番号以外の部分において、1~数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換若しくは付加されたアミノ酸配列
 (q)前記(o)で表されるアミノ酸配列の前記(o)に規定するアミノ酸番号以外の部分において、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
 (p)において、欠失、挿入、置換若しくは付加されたアミノ酸の数としては、1~200個が好ましく、1~150個が好ましく、1~100個がより好ましく、1~50個がより好ましく、1~40個がより好ましく、1~30個がより好ましく、1~15個がより好ましく、1~10個が更に好ましく、1~5個が最も好ましい。
 (q)において、同一性としては、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上が特に好ましく、98%以上が最も好ましい。
 また、本実施形態のタンパク質は、ニッカーゼ活性を有していてもよい。ニッカーゼ活性を有するタンパク質としては、上記変異に加えて、アミノ酸番号8位のアスパラギン酸がアラニンであるか、又は、アミノ酸番号559位のヒスチジンがアラニンである、若しくは、アミノ酸番号582位のアスパラギンがアラニンであることが好ましい。
 また、本実施形態のタンパク質は、エンドヌクレアーゼ活性が失活していてもよい。エンドヌクレアーゼ活性が失活しているタンパク質としては、上記変異に加えて、アミノ酸番号8位のアスパラギン酸がアラニンであり、アミノ酸番号559位のヒスチジンがアラニンであり、及び/又は、アミノ酸番号582位のアスパラギンがアラニンであることが好ましい。
 また、本実施形態のタンパク質は、野生型のCjCas9タンパク質よりもPAM配列の認識が広範化される範囲において、任意のタンパク質や、ペプチド、タグ、糖鎖等の修飾物が付加されていてもよく、複合体が形成されていてもよい。
≪タンパク質をコードするポリヌクレオチド≫
 一実施形態において、本発明は、上述したCjCas9タンパク質変異体をコードするポリヌクレオチドを提供する。
 係るポリヌクレオチドとしては、例えば、以下の(o1)~(s9)のいずれか一つの塩基配列を含む配列からなり、且つ、ガイドRNAと複合体を形成することができるタンパク質をコードするポリヌクレオチドが挙げられる。
 (o1)配列番号3で表される塩基配列(L58Y変異型CjCas9の塩基配列)(p1)配列番号3で表される塩基配列の塩基配列番号172位~174位以外の部位において、1~数個の塩基が欠失、挿入、置換若しくは付加されている塩基配列、
 (q1)配列番号3で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号172位~174位以外の部位において、同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である塩基配列、
 (r1)配列番号3で表される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列
 (s1)前記(o1)~(r1)の塩基配列の縮重異性体
 (o2)配列番号4で表される塩基配列(E790F変異型CjCas9の塩基配列) (p2)配列番号4で表される塩基配列の塩基配列番号2368位~2370位以外の部位において、1~数個の塩基が欠失、挿入、置換若しくは付加されている塩基配列
 (q2)配列番号4で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号2368位~2370位以外の部位において、同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である塩基配列、
 (r2)配列番号4で表される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列
 (s2)前記(o2)~(r2)の塩基配列の縮重異性体
 (o3)配列番号5で表される塩基配列(D900K変異型CjCas9の塩基配列) (p3)配列番号5で表される塩基配列の塩基配列番号2698位~2700位以外の部位において、1~数個の塩基が欠失、挿入、置換若しくは付加されている塩基配列
 (q3)配列番号5で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号2698位~2700位以外の部位において、同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である塩基配列、
 (r3)配列番号5で表される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列
 (s3)前記(o3)~(r3)の塩基配列の縮重異性体
 (o4)配列番号6で表される塩基配列(A911F変異型CjCas9の塩基配列) (p4)配列番号6で表される塩基配列の塩基配列番号2731位~2733位以外の部位において、1~数個の塩基が欠失、挿入、置換若しくは付加されている塩基配列
 (q4)配列番号6で表される塩基配列の塩基配列番号2731位~2733位以外の部位において、同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である塩基配列、
 (r4)配列番号6で表される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列
 (s4)前記(o4)~(r4)の塩基配列の縮重異性体
 (o5)配列番号7で表される塩基配列(L58Y/E790F変異型CjCas9の塩基配列)
 (p5)配列番号7で表される塩基配列の塩基配列番号172位~174位及び2368位~2370位以外の部位において、1~数個の塩基が欠失、挿入、置換若しくは付加されている塩基配列
 (q5)配列番号7で表される塩基配列の塩基配列番号172位~174位及び2368位~2370位以外の部位において、同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である塩基配列、
 (r5)配列番号7で表される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列
 (s5)前記(o5)~(r5)の塩基配列の縮重異性体
 (o6)配列番号8で表される塩基配列(L58Y/D900K変異型CjCas9の塩基配列)
 (p6)配列番号8で表される塩基配列の塩基配列番号172位~174位及び2698位~2700位以外の部位において、1~数個の塩基が欠失、挿入、置換若しくは付加されている塩基配列
 (q6)配列番号8で表される塩基配列の塩基配列番号172位~174位及び2698位~2700位以外の部位において、同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である塩基配列、
 (r6)配列番号8で表される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列
 (s6)前記(o6)~(r6)の塩基配列の縮重異性体
 (o7)配列番号9で表される塩基配列(L58Y/A911F変異型CjCas9の塩基配列)
 (p7)配列番号9で表される塩基配列の塩基配列番号172位~174位及び2731位~2733位以外の部位において、1~数個の塩基が欠失、挿入、置換若しくは付加されている塩基配列
 (q7)配列番号9で表される塩基配列の塩基配列番号172位~174位及び2731位~2733位以外の部位において、同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である塩基配列、
 (r7)配列番号9で表される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列
 (s7)前記(o7)~(r7)の塩基配列の縮重異性体
 (o8)配列番号10で表される塩基配列(E790F/A911F変異型CjCas9の塩基配列)
 (p8)配列番号10で表される塩基配列の塩基配列番号2368位~2370位及び2731位~2733位以外の部位において、1~数個の塩基が欠失、挿入、置換若しくは付加されている塩基配列
 (q8)配列番号10で表される塩基配列の塩基配列番号2368位~2370位及び2731位~2733位以外の部位において、同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である塩基配列
 (r8)配列番号10で表される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列
 (s8)前記(o8)~(r8)の塩基配列の縮重異性体
 (o9)配列番号11で表される塩基配列(L58Y/E790F/A911F変異型CjCas9の塩基配列)
 (p9)配列番号11で表される塩基配列の塩基配列番号172位~174位、2368位~2370位、及び2731位~2733位以外の部位において、1~数個の塩基が欠失、挿入、置換若しくは付加されている塩基配列
 (q9)配列番号11で表される塩基配列の塩基配列番号172位~174位、2368位~2370位、及び2731位~2733位以外の部位において、同一性が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である塩基配列、
 (r9)配列番号11で表される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる塩基配列
 (s9)前記(o9)~(r9)の塩基配列の縮重異性体
 (p1)~(p9)において、欠失、挿入、置換若しくは付加されてもよい塩基の数としては、1~590個が好ましく、1~440個がより好ましく、1~290個が更に好ましく、1~140個が特に好ましく、1~70個が特に好ましく、1~30個が最も好ましい。
 (r1)~(r9)において、「ストリンジェントな条件下」とは、例えば、5×SSC(20×SSCの組成:3M 塩化ナトリウム,0.3M クエン酸溶液,pH7.0)、0.1重量% N-ラウロイルサルコシン、0.02重量%のSDS、2重量%の核酸ハイブルダイゼーション用ブロッキング試薬、及び50%フォルムアミドから成るハイブリダイゼーションバッファー中で、55~70℃で数時間から一晩インキュベーションを行うことによりハイブリダイズさせる条件を挙げることができる。なお、インキュベーション後の洗浄の際に用いる洗浄バッファーとしては、好ましくは0.1重量%SDS含有1×SSC溶液、より好ましくは0.1重量%SDS含有0.1×SSC溶液である。
 メチオニンとトリプトファン以外のアミノ酸は、1つのアミノ酸に対して複数のコドンが対応する。このことを遺伝暗号の縮重という。(s1)~(s9)において、塩基配列の縮重異性体とは、ある塩基配列がコードするアミノ酸に対応する他の塩基配列を意味する。
≪ベクター≫
 一実施形態において、本発明は、上記実施形態のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
 ベクターとしては、特に限定されず、プラスミドベクター、ウイルスベクター等、従来公知のものを用いることができる。プラスミドベクターとしては、例えば、CAGプロモーター、EF1αプロモーター、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウィルス)プロモーター、HSV-tkプロモーター等の動物細胞における発現用のプロモーター等を有するベクターが挙げられる。
 ウイルスベクターとしては、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴(AAV)ベクター、ワクシニアウイルスベクター、レンチウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アルファウイルスベクター、EBウイルスベクター、パピローマウイルスベクター、フォーミーウイルスベクター、シンドビスウイルスベクター等が挙げられる。本発明の一実施形態のタンパク質は、SpCas9と比較して、分子量が小さいため、そのポリヌクレオチドをAAV等に効率よく組み込むことができる。
 本実施形態において、Cas9をコードする塩基配列は、真核生物細胞等の特定の細胞における発現のためにコドン最適化されていてもよい。真核生物細胞としては、特定の生物、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ブタ、又は非ヒト霊長類等が挙げられ、これらに限定されない。
≪組成物≫
 一実施形態において、本発明は、上述したCjCas9タンパク質変異体である実施形態のタンパク質、前記タンパク質をコードするポリヌクレオチド、又は前記ポリヌクレオチドを含むベクターと、ガイドRNAと、を含む組成物を提供する。
 本実施形態の組成物を使用することにより、広範な配列から選択された標的配列において、標的配列特異的なゲノム編集及び遺伝子発現調節を簡便且つ迅速に行うことができる。
 本明細書中において、「標的配列」の「配列」とは、任意の長さのヌクレオチド配列を意味しており、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドであり、線状、環状、又は分岐状であり、一本鎖又は二本鎖である。
 本明細書中において、「ポリヌクレオチド」とは、線状又は環状配座であり、一本鎖又は二本鎖形態のいずれかである、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドポリマーを意味する。また、ポリヌクレオチドには、天然ヌクレオチドの公知の類似体、並びに塩基部分、糖部分及びリン酸部分のうち少なくとも一つの部分において修飾されるヌクレオチド(例えば、ホスホロチエート骨格)も包含される。一般に、特定ヌクレオチドの類似体は、元のヌクレオチドと同一の塩基対合特異性を有し、例えば、Aの類似体は、Tと塩基対合する。
 本明細書中において、「ガイドRNA」とは、tracrRNA-crRNAのヘアピン構造を模倣したものであり、標的二本鎖ポリヌクレオチド中のPAM配列の1塩基上流から、好ましくは20塩基以上24塩基以下、より好ましくは21塩基以上23塩基以下まで、さらに好ましくは21塩基又は22塩基、最も好ましくは22塩基の標的塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドを5’末端領域に含むものである。さらに、標的二本鎖ポリヌクレオチドと非相補的な塩基配列からなり、一点を軸として対称に相補的な配列になるように並び、ヘアピン構造をとり得る塩基配列からなるポリヌクレオチドを1つ以上含んでいてもよい。
 前記タンパク質及び前記ガイドRNAは、in vitro及びin vivoにおいて、温和な条件で混合することで、タンパク質-RNA複合体を形成することができる。温和な条件とは、温度及びpHが、タンパク質が分解又は変性しない程度の温度及びpHである条件を示しており、温度は4℃以上40℃以下が好ましく、pHは4以上10以下が好ましい。
 本実施形態において、組成物が、改変されたCjCas9をコードする遺伝子を含む場合、遺伝子は、線状(直鎖状)の遺伝子断片として提供されてもよいし、ベクターに組み込まれた状態で提供されてもよい。改変されたCjCas9をコードする遺伝子がベクターに組み込まれて提供される場合、Cas9をコードする遺伝子と、ガイドRNAをコードする遺伝子は、同一のベクターとして提供されてもよいし、複数の別個のベクターとして提供されてもよい。
 本実施形態の組成物は、医薬用であることが好ましく、薬学的に許容される担体を含むことがより好ましい。本実施形態の医薬用組成物は、例えば、錠剤、被覆錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤等の形態で経口的に、あるいは、注射剤、坐剤、皮膚外用剤等の形態で非経口的に投与することができる。
 薬学的に許容される担体としては、通常医薬組成物の製剤に用いられるものを特に制限なく用いることができる。より具体的には、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、アラビアゴム等の結合剤;デンプン、結晶性セルロース等の賦形剤;アルギン酸等の膨化剤;水、エタノール、グリセリン等の注射剤用溶剤;ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の粘着剤等が挙げられる。薬学的に許容される担体は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
 本実施形態の組成物は、更に添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤;ショ糖、乳糖、サッカリン、マルチトール等の甘味剤;ペパーミント、アカモノ油等の香味剤;ベンジルアルコール、フェノール等の安定剤;リン酸塩、酢酸ナトリウム等の緩衝剤;安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等の溶解補助剤;酸化防止剤;防腐剤等が挙げられる。添加剤は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
 本実施形態の組成物は、一種又は複数の疾患又は症状を治療及び/又は予防するために用いられる。好ましくは、前記疾患又は症状は、遺伝子疾患又は遺伝子の異常に起因する症状である。
≪標的二本鎖ポリヌクレオチドを部位特異的に切断するための方法≫
 一実施形態において、本発明は、標的二本鎖ポリヌクレオチドを部位特異的に切断するための方法であって、標的二本鎖ポリヌクレオチドと、本発明の一実施形態のタンパク質と、ガイドRNAとを接触させる工程を含み、前記タンパク質が、前記標的二本鎖ポリヌクレオチド中のPAM配列の上流に位置する切断部位で該標的二本鎖ポリヌクレオチドを切断して、平滑末端を作出する、方法を提供する。
 係る方法は、単離された細胞中の標的二本鎖ポリヌクレオチドを部位特異的に切断するための方法であることが好ましい。
 本実施形態の方法によれば、広範な配列から選択された標的配列において、部位特異的な標的二本鎖ポリヌクレオチドの切断を簡便且つ迅速に行うことができる。
 標的二本鎖ポリヌクレオチドを部位特異的に切断するための本実施形態の方法について、以下に詳細に説明する。
 まず、本実施形態のCas9タンパク質とガイドRNAとを接触させる。接触させる工程は、例えば、前記Cas9タンパク質とガイドRNAとを温和な条件で混合し、インキュベートすることによって行ってもよい。
 温和な条件とは、温度及びpHが、タンパク質が分解又は変性しない程度の温度及びpHである条件を示しており、温度は4℃以上40℃以下が好ましく、pHは4以上10以下が好ましい。インキュベートする時間は、0.5時間以上1時間以下が好ましい。前記Cas9タンパク質及び前記ガイドRNAによる複合体は、安定しており、室温で数時間静置しても安定性を保つことができる。
 本実施形態の標的二本鎖ポリヌクレオチドを部位特異的に切断するための方法において用いる実施形態のCas9タンパク質は、ヌクレアーゼ活性を有しているものである。
 本実施形態において、標的二本鎖ポリヌクレオチドは、5’→3’の方向で記載される、「NNNVRYAC」、又は「NNNNRYDN」のPAM配列を含む配列が好ましい。
 次に、前記標的二本鎖ポリヌクレオチド上において、前記タンパク質及び前記ガイドRNAは複合体を形成する。前記タンパク質は、「NNNVRYAC」、又は「NNNNRYDN」のPAM配列を認識し、PAM配列の上流に位置する切断部位で、前記標的二本鎖ポリヌクレオチドを切断して、平滑末端を作出する。
 より詳細には、前記Cas9タンパク質がPAM配列を認識し、PAM配列を起点として、前記標的二本鎖ポリヌクレオチドの二重らせん構造が引き剥され、前記ガイドRNA中の前記標的二本鎖ポリヌクレオチドに相補的な塩基配列とアニーリングすることで、前記標的二本鎖ポリヌクレオチドの二重らせん構造が部分的にほぐれる。このとき、前記Cas9タンパク質は、PAM配列の上流に位置する切断部位で、前記標的二本鎖ポリヌクレオチドのリン酸ジエステル結合を切断し、平滑末端を作出する。
 本実施形態において、切断部位は、例えば、標的二本鎖ポリヌクレオチド中のPAM配列の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10塩基上流である。好ましくは、切断部位は、標的二本鎖ポリヌクレオチド中のPAM配列の3塩基上流である。
 本実施形態の方法は、in vivo又はin vitroの任意の環境で行うことができる。一実施形態において、本実施形態の方法は、生体外、すなわちex vivo又はin vitroで行われる。
≪標的二本鎖ヌクレオチドを部位特異的に修飾するための第1の方法≫
 一実施形態において、本発明は、標的二本鎖ポリヌクレオチドを部位特異的に修飾するための方法であって、標的二本鎖ポリヌクレオチドと、本発明の一実施形態のタンパク質と、ガイドRNAとを接触させる工程を含み、前記タンパク質が、前記標的二本鎖ポリヌクレオチド中のPAM配列の上流に位置する切断部位で該標的二本鎖ポリヌクレオチドを切断して、平滑末端を作出し、前記ガイドRNAと前記標的二本鎖ポリヌクレオチドの相補的結合によって決定される領域において、前記標的二本鎖ポリヌクレオチドが修飾される、方法を提供する。
 係る方法は、単離された細胞中の標的二本鎖ポリヌクレオチドを部位特異的に修飾するための方法であることが好ましい。
 本実施形態によれば、広範な配列から選択された標的配列において、部位特異的な標的二本鎖ポリヌクレオチドの修飾を簡便且つ迅速に行うことができる。
 標的二本鎖ヌクレオチドを部位特異的に修飾するための本実施形態の方法について、以下に詳細に説明する。
 標的二本鎖ポリヌクレオチドと、実施形態のタンパク質と、ガイドRNAとを接触させる工程は、上記<標的二本鎖ポリヌクレオチドを部位特異的に切断するための方法>と同様に行うことができる。
 本実施形態において用いる標的二本鎖ポリヌクレオチド、Cas9タンパク質、及びガイドRNAについては、上述のとおりである。
 標的二本鎖ポリヌクレオチドを部位特異的に修飾するための方法について、以下に詳細を説明する。標的二本鎖ポリヌクレオチドを部位特異的に切断するまでの工程は上述のとおりである。続いて、前記ガイドRNAと前記二本鎖ポリヌクレオチドの相補的結合によって決定される領域において、目的に応じた修飾が施された標的二本鎖ポリヌクレオチドを得ることができる。
 本明細書中において、「修飾」とは、標的二本鎖ポリヌクレオチドの塩基配列が変化することを意味する。例えば、標的二本鎖ポリヌクレオチドの切断、切断後の外因性配列の挿入(物理的挿入又は相同指向修復を介する複製による挿入)による標的二本鎖ポリヌクレオチドの塩基配列の変化、切断後の非相同末端連結(NHEJ:切断により生じたDNA末端同士が再び結合すること)による標的二本鎖ポリヌクレオチドの塩基配列の変化等が挙げられる。本実施形態における標的二本鎖ポリヌクレオチドの修飾により、標的二本鎖ポリヌクレオチドへの変異の導入、又は、標的二本鎖ポリヌクレオチドの機能を破壊することができる。
 本実施形態の方法は、in vivo又はin vitroの任意の環境で行うことができる。一実施形態において、本実施形態の方法は、生体外、すなわちex vivo又はin vitroで行われる。
≪標的二本鎖ポリヌクレオチドを部位特異的に修飾するための第2の方法≫
 一実施形態において、本発明は、標的二本鎖ポリヌクレオチドを部位特異的に修飾するための方法であって、標的二本鎖ポリヌクレオチドと、本発明の一実施形態のタンパク質と核酸塩基変換酵素との複合体と、ガイドRNAとを接触させる工程を含み、前記タンパク質が、前記ガイドRNAを介して前記標的二本鎖ポリヌクレオチドに特異的に結合し、ここで、前記タンパク質が、前記標的二本鎖ポリヌクレオチドを切断しないか又は一方の鎖のみを切断し、前記ガイドRNAと前記標的二本鎖ポリヌクレオチドの相補的結合によって決定される領域において、前記標的二本鎖ポリヌクレオチドが修飾される、方法を提供する。
 係る方法は、単離された細胞中の標的二本鎖ポリヌクレオチドを部位特異的に修飾するための方法であることが好ましい。
 本実施形態によれば、部位特異的かつ一塩基単位の正確な標的二本鎖ポリヌクレオチドの修飾を簡便且つ迅速に行うことができる。特に、標的配列が広範化した本発明の実施形態のタンパク質を使用することにより、自由にガイドRNAを設計することができるため、編集する塩基を自由に選択することができる。そのため、実施形態の改変されたCjCas9タンパク質は、本実施形態の方法における使用に関して特に有利である。
 標的二本鎖ポリヌクレオチドと、実施形態のタンパク質と核酸塩基変換酵素との複合体と、ガイドRNAとを接触させる工程は、上記<標的二本鎖ポリヌクレオチドを部位特異的に切断するための方法>と同様に行うことができる。
 本実施形態において用いる標的二本鎖ポリヌクレオチド及びガイドRNAについては、上述のとおりである。本実施形態の標的二本鎖ポリヌクレオチドを部位特異的に修飾するための第2の方法において用いるCas9タンパク質は、上記<Cas9タンパク質のDNA切断活性>に記載している、標的二本鎖ポリヌクレオチドの一方又は両方の鎖を切断する能力を欠如している改変体である。
 標的二本鎖ポリヌクレオチドを部位特異的にかつ正確に修飾するための方法について、以下に詳細を説明する。各構成成分を上述のとおり接触させると、Cas9タンパク質とガイドRNAとが複合体を形成し、標的二本鎖ポリヌクレオチドに結合する。ここで、Cas9タンパク質は、前記標的二本鎖ポリヌクレオチドを切断しないか又は一方の鎖のみを切断して、すなわち、二本鎖切断を起こすことなく、標的ポリヌクレオチド内の塩基配列を修飾する。「修飾」とは、上で定義したとおりである。本実施形態において、修飾は、好ましくは一塩基単位で行われ、例えば、C-G塩基対をT-A塩基対へ変えること、又はその逆を行うことを意味する。
 本実施形態において、上記の一塩基単位の特異的かつ正確な修飾(一塩基編集)は、好ましくは、複合体中の核酸塩基変換酵素を用いて行われる。核酸塩基変換酵素としては、デアミナーゼ(脱アミノ化酵素)が挙げられる。デアミナーゼとしては、例えば、シトシンデアミナーゼ、シチジンデアミナーゼ、アデノシンデアミナーゼ等を使用することができる。本実施形態における複合体は、係る核酸塩基変換酵素に加えて、Indel形成を阻害するため、uracil DNA glycosylase inhibitor (UGI)といったIndel形成阻害因子を含んでいてもよい。
 本実施形態の方法は、in vivo又はin vitroの任意の環境で行うことができる。一実施形態において、本実施形態の方法は、生体外、すなわちex vivo又はin vitroで行われる。
≪遺伝子の発現を調節するための方法≫
 一実施形態において、本発明は、遺伝子の発現を調節するための方法であって、前記遺伝子に関連する標的二本鎖ポリヌクレオチドと、本発明の実施形態のタンパク質と、ガイドRNAと、エフェクター分子とを接触させる工程を含み、前記タンパク質が、前記ガイドRNAを介して前記標的二本鎖ポリヌクレオチドに特異的に結合し、それにより前記エフェクター分子が前記標的二本鎖ポリヌクレオチドに特異的に作用することによって前記遺伝子の発現を調節する、方法を提供する。係る方法は、単離された細胞中の遺伝子の発現を調節するための方法であることが好ましい。
 本実施形態によれば、広範な配列から選択された標的配列において、CRISPR/Cas9系による標的二本鎖ポリヌクレオチド認識を利用した遺伝子発現の調節を簡便且つ迅速に行うことができる。特に、標的配列が広範化した本発明の実施形態のタンパク質を使用することにより、自由にガイドRNAを設計することができるため、遺伝子発現の調節を最も効果的に行うことができる領域(ホットスポット)にエフェクター分子を正確に送達することができる。そのため、実施形態の改変されたCjCas9タンパク質は、本実施形態の方法における使用に関して特に有利である。
 本明細書において、「発現」とは、ポリヌクレオチドがmRNAへと転写されるプロセス、及び/又は転写されたmRNAが、ペプチド、ポリペプチド、若しくはタンパク質へと翻訳されるプロセスを意味する。ポリヌクレオチドがゲノムDNA由来のポリヌクレオチドである場合、発現は、真核生物細胞におけるmRNAのスプライシングを含み得る。
 本明細書において、「遺伝子の発現」とは、遺伝子中に含有される情報の、遺伝子産物への変換を意味する。遺伝子産物は、遺伝子の直接的転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、shRNA、マイクロRNA、構造RNAまたは任意の他の型のRNA)またはmRNAの翻訳によって産生されたタンパク質であり得る。遺伝子産物には、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化および編集などのプロセスによって改変されたRNA、ならびに例えば、メチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADP-リボシル化、ミリスチル化およびグリコシル化によって改変されたタンパク質もまた含まれる。
 本明細書において、遺伝子の発現の「調節」とは、遺伝子の活性における変化を意味する。発現の調節は、例えば遺伝子の活性化及び抑制、より具体的には転写の活性化又は抑制であるが、これらに限定されない。
 実施形態のCas9タンパク質を用いて遺伝子の発現を調節するための本実施形態の方法について、以下に詳細に説明する。
 標的二本鎖ポリヌクレオチドと、実施形態のCas9タンパク質と、ガイドRNAと、エフェクター分子とを接触させる工程は、上記<標的二本鎖ポリヌクレオチドを部位特異的に切断するための方法>と同様に行うことができる。
 本実施形態において用いる標的二本鎖ポリヌクレオチド及びガイドRNAについては、上述のとおりである。本実施形態において用いるCas9タンパク質は、上記<Cas9タンパク質のDNA切断活性>に記載している、標的二本鎖ポリヌクレオチドの一方又は両方、好ましくは両方の鎖を切断する能力を欠如している改変体である。
 本明細書において、「エフェクター分子」とは、細胞において局在化した効果を発揮することが可能な、タンパク質又はタンパク質ドメイン等の分子を意味する。エフェクター分子は、例えば生物学的活性を調節するために、タンパク質またはDNAに選択的に結合するものを含む、種々の異なる形態を取り得る。エフェクター分子の作用には、ヌクレアーゼ活性、酵素活性の増大又は低減、遺伝子発現の増大又は低減、細胞シグナル伝達に影響を与えること等が含まれるが、これらに限定されない。本発明の一実施形態において用いることができるエフェクター分子の具体的な例には、例えば、VP64又はNF-κB p65等の転写活性因子又はドメイン、KRAP、ERFリプレッサードメイン(ERD)、mSin3A相互作用ドメイン(SID)等の転写抑制因子又はドメイン、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNA脱メチル化酵素、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストン脱アセチル化酵素等のクロマチンリモデリング因子が含まれるが、これらに限定されない。
 本実施形態において、エフェクター分子は、実施形態のタンパク質とガイドRNAとの複合体が標的二本鎖ポリヌクレオチドに特異的に結合することによって、前記標的二本鎖ポリヌクレオチドへと導かれる。好ましくは、エフェクター分子は、場合によりリンカーを介して、実施形態のCas9タンパク質に作動可能に連結されている。
 本実施形態において、エフェクター分子は、標的二本鎖ポリヌクレオチドに特異的に作用することによって、前記標的二本鎖ポリヌクレオチドに関連する遺伝子の発現を調節する。標的とする二本鎖ポリヌクレオチドには、発現を調節しようとする遺伝子自身の塩基配列のポリヌクレオチドを選択してもよいし、あるいは、例えば、発現を調節しようとする遺伝子の発現を直接又は間接に、正又は負に制御している上流の遺伝子の塩基配列のポリヌクレオチドを選択することもできる。
 本実施形態の方法は、in vivo又はin vitroの任意の環境で行うことができる。一実施形態において、本実施形態の方法は、生体外、すなわちex vivo又はin vitroで行われる。
≪ゲノム編集及び遺伝子治療方法≫
 一実施形態において、本発明は、上述のタンパク質又は組成物を用いて、ゲノム編集を実行するための方法を提供する。以前に知られている標的化された遺伝子組換えの方法と対照的に、実施形態の方法ではゲノム編集を効率的かつ安価に行うことができ、また任意の細胞又は生物に適応可能である。細胞又は生物の二本鎖核酸の任意のセグメントは、実施形態の方法により改変され得る。この方法は、全ての細胞に内在性である相同組換えプロセス及び非相同組換えプロセスの両方を利用する。
 一実施形態において、本発明は、本発明の一実施形態の改変されたCjCas9タンパク質、該タンパク質をコードする遺伝子、又は該遺伝子を含むベクターと、ガイドRNAとを含む医薬組成物を対象に投与することを含む、遺伝子治療方法を提供する。
 本実施形態における医薬組成物の投与方法は特に限定されず、患者の症状、体重、年齢、性別等に応じて適宜決定すればよい。例えば、錠剤、被覆錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤等は経口投与される。また、注射剤は、単独で、又はブドウ糖、アミノ酸等の通常の補液と混合して静脈内投与され、更に必要に応じて、動脈内、筋肉内、皮内、皮下又は腹腔内投与される。
 本実施形態における医薬組成物の投与量は、患者の症状、体重、年齢、性別等によって異なり、一概には決定できないが、経口投与の場合には、例えば1日あたり1μg~10g、例えば1日あたり0.01~2000mgの有効成分を投与すればよい。また、注射剤の場合には、例えば1日あたり0.1μg~1g、例えば1日あたり0.001~200mgの有効成分を投与すればよい。
 本明細書において、「ゲノム編集」とは、CRISPR/Cas9システムやTranscription Activator-Like Effector Nucleases(TALEN)等の技術により標的化された遺伝子組換え又は標的化された変異を実行することにより、特異的な遺伝子破壊やレポーター遺伝子のノックイン等を行う新しい遺伝子改変技術である。本実施形態において、変異は、標的化可能な任意の標的ゲノムDNAの領域に生じさせることが可能であり、例えば、標的ゲノムDNAの遺伝子領域又は標的ゲノムDNAの発現調節領域における一部又は全部の欠失、置換、任意の配列の挿入等により生じる。
 また、一実施形態において、本発明は、標的化されたDNA挿入又は標的化されたDNA欠失を行う方法を提供する。この方法は、ドナーDNAを含む核酸構築物を用いて、細胞を形質転換する工程を包含する。標的遺伝子切断後のDNA挿入及びDNA欠失に関するスキームについては、公知の方法に従って当業者が決定できる。
 また、一実施形態において、本発明は、体細胞及び生殖細胞の両方で利用され、特定の遺伝子座で遺伝子操作を提供する。
 また、一実施形態において、本発明は、体細胞において遺伝子を破壊するための方法を提供する。ここで、遺伝子は、細胞又は生物に対して有害な産物を過剰発現し、細胞又は生物に対して有害な産物を発現する。このような遺伝子は、疾患において生じる1つ以上の細胞型において過剰発現され得る。本発明の実施形態の方法による、前記過剰発現した遺伝子の破壊は、前記過剰発現した遺伝子に起因する疾患を被る個体に、より良い健康をもたらし得る。すなわち、細胞のほんの小さな割合の遺伝子の破壊が働き、発現レベルを減少し、治療効果を生じ得る。
 また、一実施形態において、本発明は、生殖細胞において遺伝子を破壊するための方法を提供する。特定の遺伝子が破壊された細胞は、特定の遺伝子の機能を有さない生物を作製するために選択され得る。前記遺伝子が破壊された細胞において、遺伝子は完全にノックアウトされ得る。この特定の細胞における機能の欠損は、治療効果を有し得る。
 また、一実施形態において、本発明は、遺伝子産物をコードするドナーDNAの挿入をさらに提供する。この遺伝子産物は、構成的に発現された場合、治療効果を有する。例えば、膵細胞の個体群において、活性プロモーター及びインシュリン遺伝子をコードするドナーDNAの挿入を引き起こすために、前記ドナーDNAを、糖尿病を被る個体に挿入する方法が挙げられる。次いで、外因性DNAを含む膵細胞の前記個体群は、インシュリンを生成し、糖尿病患者を治療することができる。さらに、前記ドナーDNAは植物に挿入され、薬剤的関連遺伝子産物の生成を引き起こし得る。タンパク質産物の遺伝子(例えば、インシュリン、リパーゼ又はヘモグロビン)は、制御エレメント(構成的活性プロモーター、又は誘導性プロモーター)と一緒に植物に挿入され、植物中で大量の医薬品を生成し得る。
 次いで、このようなタンパク質産物は、植物から単離され得る。トランスジェニック植物又はトランスジェニック動物は、核酸移入技術を用いる方法で作製され得る。組織型特異的ベクター又は細胞型特異的ベクターは、選択した細胞内でのみ遺伝子発現を提供するために利用され得る。
 あるいは、上記の方法は、生殖細胞内で利用され、計画された様式で挿入が生じ、後の全ての細胞分裂が、設計された遺伝的変更を有する細胞を生成する細胞を選択し得る。
 実施形態の方法は、すべての生物に対してか、又は培養細胞、培養組織又は培養核(インタクトな生物を再生するために使用され得る細胞、組織又は核を含む)においてか、又は配偶子(例えば、それらの発達の様々な段階の卵又は精子)適用され得る。実施形態の方法は、任意の生物[昆虫、真菌、げっ歯類、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、及び他の農業上重要な動物、ならびに他の哺乳動物(イヌ、ネコ及びヒトが挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない]に由来する細胞に適用され得る。
 さらに、実施形態の組成物及び方法は、植物において使用され得る。組成物及び方法が、任意の様々な植物種(例えば、単子葉植物又は双子葉植物等)において使用され得る。
 以下に実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
 野生型CjCas9、及び変異型CjCas9をそれぞれコードする遺伝子(野生型CjCas9の塩基配列:配列番号2、L58Y変異型CjCas9の塩基配列:配列番号3、E790F変異型CjCas9の塩基配列:配列番号4、D900K変異型CjCas9の塩基配列:配列番号5、A911F変異型CjCas9の塩基配列:配列番号6、L58Y/E790F変異型CjCas9の塩基配列:配列番号7、L58Y/D900K変異型CjCas9の塩基配列:配列番号8、L58Y/A911F変異型CjCas9の塩基配列:配列番号9、E790F/A911F変異型CjCas9の塩基配列:配列番号10、L58Y/E790F/A911F変異型CjCas9の塩基配列:配列番号11)をそれぞれ、pE-SUMO vector(LifeSensors)に組み込んだ。
 さらに、SUMOタグとCjCas9遺伝子の間にTEV認識配列を付加した。完成したコンストラクトから発現するCas9のN末端には6残基のヒスチジンが連続し、続いてSUMOタグ(His-SUMOタグ)、TEVプロテアーゼ認識サイトが付加される設計になっている。
 作製したベクターを大腸菌Escherichia coli Rosetta2 (DE3)株へ形質転換した。その後、20μg/mlカナマイシンを含むLB培地で培養した。OD=0.8になるまで培養した時点で、発現誘導剤としてイソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(Isopropyl β-D-1-thiogalactopyranoside;IPTG)(終濃度0.1mM)を添加し、20℃で20時間培養した。培養後、大腸菌を遠心分離(8,000 g,10分間)により回収した。
 回収した菌体を緩衝液Aで懸濁し、超音波破砕した。遠心(25,000g,30分間)により上清を回収し、緩衝液Aで平衡化したNi-NTA Superflow樹脂(QIAGEN)と混合し、この混合物を、Poly-Prepカラム (Bio-Rad)に詰めた。
 緩衝液Bで目的タンパク質を溶出した。His-SUMOタグを除去するために、溶出したタンパク質を、SUMOプロテアーゼと混ぜ、緩衝液Cを用いて4℃で2時間透析した。このタンパク質を、緩衝液Cで平衡化したNi-NTAカラムに素通りさせ、緩衝液Dで平衡化したHiTrap Heparin HPカラム(GE Healthcare)にチャージした。0.3から2Mのリニアグラジエントでタンパク質を溶出し、使用まで-80℃で保存した。
 緩衝液A~Dの組成について、表1に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 目的のガイドRNA配列(配列番号12:5’-GGGGAAATTAGGTGCGCTTGGCGTTTTAGTCCCTGAAAAGGGACTAAAATAAAGAGTTTGCGGGACTCTGCGGGGTTACAATCCCCTAAAACCGC-3’)が挿入されたベクター作製を行った。ガイドRNA配列の上流にT7プロモーター配列を付加し、線状化したpUC119ベクターに組み込んだ。作製したベクターを基に、PCRを用いてプライマー同士をアニールさせて伸長反応を起こしてin vitro転写反応の鋳型DNAを作製した。この鋳型DNAを用いて、37℃、4時間、T7 RNAポリメラーゼによるin vitro転写反応を行った。転写産物を含む反応液に1/10量の3M 酢酸ナトリウム及び2.5倍量の100%エタノールを添加し、4℃にて遠心(8,000g、3分)し、転写産物を沈殿させた。上清を廃棄して70%エタノールを添加し、4℃にて遠心(8,000g、3分)し再び上清を廃棄した。沈殿を風乾後、TBE緩衝液に再懸濁し、7M Urea変性10%PAGEにより精製した。目的RNAの分子量に位置するバンドを切り出し、Elutrap電気溶出システム(GE Healthcare)によりRNAを抽出した。その後、抽出したRNAをPD-10カラム(GE Healthcare)に通し、緩衝液を緩衝液H(10 mM Tris-HCl(pH8.0)、150mM NaCl)に交換した。
 DNA切断活性測定試験に用いるために、標的DNA配列及びPAM配列が挿入されたベクターの作製を行った。標的DNA配列にPAM配列1~12をそれぞれ付加し、線状化したpUC119ベクターに組み込んだ。標的DNAの配列及びPAM配列1~12を表2に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
 作製したベクターを用いて、大腸菌Mach1株(Life Technologies)を形質転換し、20μg/mLアンピシリンを含むLB培地で37℃にて培養した。
 培養後、菌体を遠心(8,000g、1分)により回収し、QIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを精製した。
 精製した12種類のPAM配列が付加した標的プラスミドDNAを用いて切断実験を行った。プラスミドDNAは、制限酵素により線状化した。この線状化DNA中の標的DNA配列を野生型、又は変異型のCjCas9が切断すると、約1,000bpと約2,000bpの切断産物が生じる。切断の際に用いたバッファー(cleavage buffer B(10×)の組成を表3に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
 反応後のサンプルについて、MultiNAキャピラリー泳動装置(SHIMADZU)を用いて電気泳動を行い、切断産物のバンドを確認した。切断活性は、切断されたDNA断片(約2,000bp)の濃度と未切断の線状化DNA(約3,000bp)の濃度の合計に対する、切断DNA断片の濃度の割合(%)として表される。
 まず、PAM配列1~12を含む標的DNAを用いて、野生型CjCas9のDNA切断活性を調べた。結果を図1に示す。PAM配列4,8,11,12において、切断活性が低いことが確認された。野生型CjCas9は、「NNNVRYAC」共通配列のPAMの中でも、「NNNVAYAC」と比較して、「NNNVGYAC」(特に「NNNCGYAC」)を有するPAMの認識活性が減少することが確認された。
 野生型CjCas9のDNA切断活性の低かったPAM配列4,8,12において、L58Y変異型、D900K変異型、L58Y/D900K変異型CjCas9のDNA切断活性を調べた。結果を図2に示す。これらすべての変異型において、特にL58Y/D900K変異型において、切断活性の向上が確認された。
 更に、PAM配列1~12を含む標的DNAを用いて、L58Y/D900K変異型CjCas9のDNA切断活性を調べた。結果を図3に示す。野生型CjCas9のDNA切断活性の低かったPAM配列4,8,11,12全てにおいて、切断活性の向上が確認された。
 更に、PAM配列4,12を含む標的DNAを用いて、野生型,L58Y変異型,D900K変異型,A911F変異型CjCas9,E790F変異型CjCas9のDNA切断活性を調べた。結果を図4に示す。全ての変異型において、切断活性の向上が確認された。
 更に、PAM配列12を含む標的DNAを用いて、野生型(wt),L58Y変異型(mt1),E790F変異型(mt2),A911F変異型(mt3),これら変異型を組み合わせた変異型CjCas9のDNA切断活性を調べた。結果を図5に示す。全ての変異型において、特にL58Y/E790F/A911F変異型において、切断活性の向上が確認された。
 また、PAM配列1~12を含む標的DNAを用いて、wt,L58Y/E790F/A911F変異型CjCas9のDNA切断活性を調べた。結果を図6に示すPAM配列全てにおいて、L58Y/E790F/A911F変異型CjCas9による切断活性の向上が確認された。
 更に、表4に示すPAM配列を含む標的DNAを用いて、wt,L58Y/E790F/A911F変異型CjCas9のDNA切断活性を調べた。結果を図7に示す。野生型と比較して、すべてのPAM配列を含む標的DNAにおいて、切断活性の向上が確認された。L58Y/E790F/A911F変異型CjCas9の認識可能なPAM配列は、「NNNNRYDN」であり、wtと比較して認識の嗜好性が大幅に緩和されたことが確認された。
 また、L58Y/D900K変異型CjCas9について、同様の実験を行った。結果を図8に示す。図7に記載の野生型CjCas9と異なり、L58Y/D900K変異型CjCas9は、「NNNTACAC」や「NNNAACAD」といった、「NNNVRYAC」でないPAMも認識することが確認された。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
[実施例2]
 実施例1において調整した野生型及びL58Y/D900K変異型CjCas9を用いて、in vitro PAM discovery assay(Nishimasu, H. et al. Engineered CRISPR-Cas9 nuclease with expanded targeting space. Science 361, 1259-1262 (2018).参照。)を行った。ランダム化された8bp配列に近接した標的配列を含むDNAライブラリーは、配列番号22で表されるガイドsgRNAを備えた野生型又はL58Y/D900K変異型CjCas9により切断され、切断産物はディープシークエンスされる。
 図9Aに示すように、ランダム化された8bp配列の配列ロゴは、野生型及びL58Y/D900K変異型ともに、同様に「NNNVRYAC」を示した。しかし、L58Y/D900K変異型CjCas9は、5番目、7番目、8番目のPAMにより緩和された認識の嗜好性を示した。
 更に、得られたシークエンスデータを、PAMの4位から8位における2Dプロファイルとして表したところ、野生型CjCas9のPAMプロファイルは、同様に「NNNVRYAC」を示した(図9B参照。)。
 L58Y/D900K変異型CjCas9は、「NNNVRYAC」-PAMと、「NNNVAYTC」や「NNNVAYGC」といった「NNNVRYAC」でない配列も効率よく認識した(図9C参照。)。
[実施例3]
 哺乳動物細胞における野生型CjCas9、及び変異型CjCas9(L58Y/D900K変異型;enCjCas9ともいう。)の活性を調べるために、293Ta細胞での最適化されたNNNVACAC-PAM、サブに最適化されたNNNVGCAC-PAM、並びにNNNVRYACでない(NNNTACAC及びNNNAACAD)PAMを有する38種類の内在性標的部位における、野生型CjCas9、及び変異型CjCas9(L58Y/D900K変異型)によってもたらされるIndel形成を測定した。 具体的には、野生型CjCas9、及び変異型CjCas9(L58Y/D900K変異型)をそれぞれコードする遺伝子が組み込まれたプラスミド(120ng)とsgRNAプラスミド(40ng)をHEK293Ta細胞へトランスフェクトした。トランスフェクト3日後に回収した細胞からゲノムDNAを抽出し、PCRを行い、Indel頻度を解析した。結果を図10に示す。
 野生型CjCas9は、最適化されたNNNVACAC-PAM、サブに最適化されたNNNVGCAC-PAM、並びにNNNVRYACでない(NNNTACAC及びNNNAACAD)PAMを有する内在性標的部位に、それぞれ44.0~53.6%(平均48.5%)、10.1~20.7%(平均16.4%)、3.1~20.8%(平均12.9%)の頻度でIndelを誘導した(図10A及び図10B参照。)。
 一方、変異型CjCas9(L58Y/D900K変異型)は、最適化されたNNNVACAC-PAM、サブに最適化されたNNNVGCAC-PAM、並びにNNNVRYACでない(NNNTACAC及びNNNAACAD)PAMを有する内在性標的部位に、それぞれ58.4~68.7%(平均64.8%)、20.2~39.8%(平均32.3%)、14.8~41.0%(平均29.0%)の頻度でIndelを誘導した(図10A及び図10B参照。)。
 これらの結果から、野生型CjCas9と比較して、変異型CjCas9(L58Y/D900K変異型)は、ヒト細胞内において、高い切断活性及びより広範な標的範囲を示すことを示した。
 次いで、CjCas9 (NNNVRYAC PAM)及びSpCas9(NGG PAM)の両方によって認識可能なNGGAACAC-PAMを有する二つの標的部位における、野生型CjCas9及び変異型CjCas9(L58Y/D900K変異型)のゲノム編集効率と、SpCas9のゲノム編集効率を比較した。
 野生型CjCas9、変異型CjCas9(L58Y/D900K変異型)、及びSpCas9は、この二つの標的部位に、それぞれ、70.3~86.6%(平均78.4%)、79.7~87.5%(平均83.6%)、55.8~62.6%(平均59.2%)の頻度でIndelを誘導した(図10C参照。)。
[実施例4]
 野生型CjCas9、及び変異型CjCas9(L58Y/D900K変異型)のD8Aニッカーゼそれぞれに、Petromyzon marinus cytosine deaminase 1(PmCDA1) 及び uracil DNA glycosylase inhibitor (UGI)を融合させた野生型CjCas9-AID(activation-induced cytidine deaminase)、及び変異型CjCas9(L58Y/D900K変異型)-AID(enCjCas9-AIDともいう。)が、HEK293細胞において、38種類の内在性の標的部位のシトシンからチミンへの変換を仲介するかを調べた。
 具体的には、野生型CjCas9、及び変異型CjCas9(L58Y/D900K変異型)をそれぞれコードする遺伝子が組み込まれた塩基編集プラスミド(120ng)とsgRNAプラスミド(40ng)をHEK293Ta細胞へトランスフェクトした。トランスフェクト3日後に回収した細胞からゲノムDNAを抽出し、PCRを行い、変異を解析した。結果を図11に示す。
 野生型CjCas9-AIDは、試した標的部位においてシトシンからチミンへの変換を仲介しなかった。
 一方、変異型CjCas9(L58Y/D900K変異型)-AIDは、最適化されたNNNVACAC-PAM、サブに最適化されたNNNVGCAC-PAM、並びにNNNVRYACでない(NNNTACAC及びNNNAACAD)PAMを有する内在性標的部位に、それぞれ15.8~25.1%(平均21.5%)、4.3~13.2%(平均8.0%)、1.2~12.4%(平均6.2%)の頻度で、20種類の内在性の標的部位のシトシンからチミンへの変換を誘導した(図11A及び図11B参照。)。
 本発明によれば、PAM配列の認識が広範化されたCas9タンパク質を提供することができる。

Claims (13)

  1.  以下の(a)~(c)のいずれか一つのアミノ酸配列を含む配列からなり、且つ、ガイドRNAと複合体を形成することができる、タンパク質。
     (a)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、アミノ酸番号900位のアスパラギン酸の、リジン、又はアルギニンへの置換を少なくとも含むアミノ酸配列
     (b)前記(a)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号900位以外の部分において、1~数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換若しくは付加されたアミノ酸配列
     (c)前記(a)で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号900位以外の部分において、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列
  2.  配列番号1で表されるアミノ酸配列のアミノ酸番号900位がリジンである、請求項1に記載のタンパク質。
  3.  更に、配列番号1で表されるアミノ酸配列において、アミノ酸番号58位のロイシンが、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン、又はイソロイシンである、請求項1又は2に記載のタンパク質。
  4.  更に、配列番号1で表されるアミノ酸配列において、アミノ酸番号58位のロイシンが、チロシンである、請求項1~3のいずれか一項に記載のタンパク質。
  5.  更に、配列番号1で表されるアミノ酸配列において、少なくともいずれか一つの変異を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のタンパク質。
     (d)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、アミノ酸番号911位のアラニンが、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、又はメチオニンである
     (e)配列番号1で表されるアミノ酸配列において、アミノ酸番号790位のグルタミン酸が、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、又はメチオニンである
  6.  ニッカーゼ活性を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のタンパク質。
  7.  請求項1~6のいずれか一項に記載のタンパク質をコードする、ポリヌクレオチド。
  8.  請求項7に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
  9.  請求項1~6のいずれか一項に記載のタンパク質、請求項7に記載のポリヌクレオチド、又は請求項8に記載のベクターと、ガイドRNAと、を含む、組成物。
  10.  請求項9に記載の組成物を用いる、単離された細胞中のゲノム編集方法。
  11.  単離された細胞中の標的二本鎖ポリヌクレオチドを部位特異的に修飾するための方法であって、
     標的二本鎖ポリヌクレオチドと、請求項1~5のいずれか一項に記載のタンパク質と、ガイドRNAとを接触させる工程を含み、
     前記タンパク質が、前記標的二本鎖ポリヌクレオチド中のPAM配列の上流に位置する切断部位で該標的二本鎖ポリヌクレオチドを切断して、平滑末端を作出し、
     前記ガイドRNAと前記標的二本鎖ポリヌクレオチドの相補的結合によって決定される領域において、前記標的二本鎖ポリヌクレオチドを修飾する、方法。
  12.  単離された細胞中の標的二本鎖ポリヌクレオチドを部位特異的に修飾するための方法であって、
     標的二本鎖ポリヌクレオチドと、請求項1~5のいずれか一項に記載のタンパク質と核酸塩基変換酵素との複合体と、ガイドRNAとを接触させる工程を含み、
     前記タンパク質が、前記ガイドRNAを介して前記標的二本鎖ポリヌクレオチドに特異的に結合し、ここで、前記タンパク質が、前記標的二本鎖ポリヌクレオチドを切断しないか又は一方の鎖のみを切断し、
     前記ガイドRNAと前記標的二本鎖ポリヌクレオチドの相補的結合によって決定される領域において、前記標的二本鎖ポリヌクレオチドを修飾する、方法。
  13.  単離された細胞中の遺伝子の発現を調節するための方法であって、
     前記遺伝子に関連する標的二本鎖ポリヌクレオチドと、請求項1~5のいずれか一項に記載のタンパク質と、ガイドRNAと、エフェクター分子とを接触させる工程を含み、 前記タンパク質は、標的二本鎖ポリヌクレオチドの一方又は両方の鎖を切断する能力を欠如しており、
     前記タンパク質が、前記ガイドRNAを介して前記標的二本鎖ポリヌクレオチドに特異的に結合し、それにより前記エフェクター分子が前記標的二本鎖ポリヌクレオチドに特異的に作用することによって前記遺伝子の発現を調節する、方法。
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