WO2019102775A1 - ヘッドアップディスプレイ装置 - Google Patents

Abstract

偏光サングラスを着用しても視認者が表示光を視認することができるヘッドアップディスプレイ装置を提供する。　ヘッドアップディスプレイ装置１０は、表示器２０が出射した画像を表す表示光Ｌを反射部３０で反射させ、反射部３０で反射した表示光Ｌを出射部４１より出射して視認者Ｍの前方の虚像Ｖにより視認させるヘッドアップディスプレイ装置１０であって、出射部４１は、透光性を有する合成樹脂シート５０を備え、合成樹脂シート５０には、表示器２０が出射した表示光Ｌとしての直線偏光が入射し、合成樹脂シート５０は、入射した直線偏光を円偏光又はランダム偏光として出射する位相差機能を有し、出射部４１から、円偏光又はランダム偏光としての表示光Ｌを出射する。

Description

ヘッドアップディスプレイ装置

　本発明は、ヘッドアップディスプレイ装置に関する。

　従来のヘッドアップディスプレイ装置は、例えば、特許文献１に開示されるように、表示器から発せられる画像を表す表示光を凹面鏡で拡大し、この拡大した表示光をフロントガラスに照射する。視認者（運転者）は、フロントガラスに反射した表示光を受けることで、フロントガラスを通じて見える背景に、その表示光による虚像を重ねて視認することができる。

特開２００６－９１４８９号公報

　特許文献１に記載のヘッドアップディスプレイ装置は、表示器として液晶表示素子を２枚の偏光板で挟みこんだ液晶表示器を備える。この液晶表示器からの表示光は、通常、偏光板によって直線偏光のＳ偏光成分として出射されるように設定されている。
　一方、偏光サングラスは、その機能から一般的に、直線偏光のＰ偏光成分を視認し、Ｓ偏光成分はカットするように構成されている。
　そのため、視認者が偏光サングラスを着用した場合には、ヘッドアップディスプレイ装置における表示光が偏光サングラスを透過せず、その表示光による虚像を視認することができなくなってしまう。

　本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、偏光サングラスを着用しても視認者が表示光を視認することができるヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。

　上記目的を達成するため、本発明のヘッドアップディスプレイ装置は、
　表示器が出射した画像を表す表示光を反射部で反射させ、前記反射部で反射した前記表示光を出射部より出射して視認者の前方の虚像により視認させるヘッドアップディスプレイ装置であって、
　前記出射部は、透光性を有する合成樹脂シートを備え、
　前記合成樹脂シートには、前記表示器が出射した前記表示光としての直線偏光が入射し、
　前記合成樹脂シートは、入射した前記直線偏光を円偏光又はランダム偏光として出射する位相差機能を有し、
　前記出射部から、前記円偏光又は前記ランダム偏光としての前記表示光を出射する、
　ことを特徴とする。

　本発明によれば、偏光サングラスを着用しても表示光を視認することができる。

本発明の一実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置が搭載された車両の概略構成図である。 本発明の一実施形態に係る概略構成図である。 本発明の一実施形態に係る合成樹脂シートの断面図である。 本発明の他の一実施形態に係る合成樹脂シートの断面図である。

　以下に、本発明に係るヘッドアップディスプレイ装置の一実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。

　本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置１０は、図１に示すように、例えば、車両１のダッシュボード内に設置される。ヘッドアップディスプレイ装置１０は、車両１のフロントガラス２に向けて画像を表す表示光Ｌをケース４０の出射部４１から出射する。視認者Ｍ（主に車両１の運転者）は、フロントガラス２で反射した表示光Ｌを受けて、フロントガラス２を通して見える背景に重畳した虚像Ｖを視認する。

　ヘッドアップディスプレイ装置１０は、図２に示すように、表示器２０と、反射部３０と、ケース４０とを備え、ケース４０は、出射部４１を備える。

　表示器２０は、液晶表示器で構成され、液晶表示パネル２１と、発光素子２２と、配線基板２３と、を備える。液晶表示パネル２１は、透明電極膜が形成された一対の透光性基板に液晶を封入した液晶セル２１ａと、液晶セル２１ａの前面に貼着された偏光板２１ｂと、液晶セル２１ａの後面に貼着された偏光板２１ｃと、からなり、ケース体２４に保持される。発光素子２２は、液晶表示パネル２１の後方に配置され、液晶表示パネル２１を透過照明する。発光素子２２は、配線基板２３に実装されている。ケース体２４は、略角筒形状とされ、ケース体２４の後端部は、図示しない放熱部材に固定され、放熱できるようにしてある。

　反射部３０は、平面鏡３１と、凹面鏡３２と、を備える。平面鏡３１は、支持部材を介してケース４０に固定されている。液晶表示パネル２１から出射された画像を表す表示光Ｌは、平面鏡３１で反射され、凹面鏡３２に向けて出射される。

　凹面鏡３２は、樹脂（例えばポリカーボネート）に金属（例えばアルミニウム）を蒸着させて凹面状の反射面を形成したものである。凹面鏡３２は、図示しないミラーホルダーに両面粘着テープにより接着される。凹面鏡３２によって、平面鏡３１で反射された表示光Ｌが拡大され、拡大された虚像Ｖを表示することができる。凹面鏡３２には、角度調整機構が備えられており、ミラーホルダーを介して歯車とステッピングモータによって駆動され、凹面鏡３２の角度を調整できるようにケース４０に支持されている。
　これにより、視認者Ｍは、押しボタンスイッチなどの操作で画像を表す表示光Ｌが目の位置に反射されるように（即ち、虚像Ｖを視認できるように）凹面鏡３２の角度を調整する。

　ケース４０は、樹脂（例えばポリプロピレン）からなり、表示器２０及び反射部３０などの構成機器が収容される。ケース４０は、上面に表示器２０が発した表示光Ｌが出射する、開口された出射部４１が形成されており、出射部４１を介して表示光Ｌがフロントガラス２に向けて出射される。この出射部４１を構成する開口を塞ぐようにカバーガラスとして機能する合成樹脂シート５０が貼着されている。合成樹脂シート５０については、後述する。
　ケース４０には、図示省略したが、回路基板が収容されている。回路基板には、液晶表示パネル２１を駆動する駆動回路や発光素子２２を駆動する駆動回路が搭載される。回路基板と、液晶表示パネル２１の配線基板２３と、が配線部材によって電気的に接続されている。

　このように構成したヘッドアップディスプレイ装置１０では、液晶表示パネル２１から出射される画像を表す表示光Ｌは、液晶セル２１ａの前面に貼着された偏光板２１ｂによって直線偏光とされ、Ｓ偏光成分の表示光Ｌとなっている。この表示光Ｌは、反射部３０の平面鏡３１で反射され、さらに凹面鏡３２を介してケース４０の開口した出射部４１から出射される。
　したがって、出射部４１から出射される表示光Ｌは、直線偏光のＳ偏光成分であることから、視認者Ｍは、偏光サングラスＧを着用している場合には、Ｓ偏光成分が遮られるため、虚像Ｖを視認することができない。
　そこで、ケース４０の出射部４１に、合成樹脂シート５０を設け、位相差機能によって直線偏光の表示光Ｌを円偏光またはランダム偏光に偏光する。

　合成樹脂シート５０は、合成樹脂シート自体に直線偏光を円偏光またはランダム偏光に変換する位相差機能を備えており、λ／４板（１／４波長板）と同一の機能を有する高複屈折基材である。合成樹脂シート５０は、合成樹脂シート５０を透過する光に、直交する２つの偏光成分間に位相差π／２（９０°）を与える複屈折シートである。これにより、合成樹脂シート５０を透過する光は、透過前後で位相がπ／２ずれることになる。合成樹脂シート５０は、進相軸（fast軸）と遅相軸（slow軸）とを有しており、進相軸に対して±４５°の角度で入射した直線偏光の光を円偏光（またはランダム偏光）に変換する。
　合成樹脂シート５０は、液晶表示パネル２１の表側（視認側）の偏光板２１ｂの吸収軸（偏光軸とは直角な軸）と合成樹脂シート５０の遅相軸とのなす角が略４５°となるように出射部４１に取り付けられる。この合成樹脂シート５０は、ヘッドアップディスプレイ装置１０の開口した出射部４１を覆うカバーガラスに代えて用いられ、例えば２次曲面の外形に加工されて両面テープなどで出射部４１の周囲に貼り付けて取り付けられる。

　合成樹脂シート５０は、透明性の高分子シートが用いられ、例えばポリカーボネート（ＰＣ：poly carbonate）やポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ：Poly ethylene terephthalate）が好ましく用いられるほか、他の高分子シートを用いることができる。
　合成樹脂シート５０は、高リタデーションを有し、例えばリタデーションが８０００ｎｍ程度であり、厚みが３００μｍ以上、さらに好ましくは４００μｍ以上のものが用いられる。ここで、リタデーションとは、高分子シートの複屈折と厚さの積である。
　リタデーションが小さく３０００ｎｍでは複屈折体として機能しない。厚さが３００μｍより薄いとカバーガラスとしての剛性を確保することができず、厚さの上限は、厚くなると２重像が生じてしまうため、２重像の生じない範囲の厚さとされる。
　合成樹脂シート５０は、例えば、ポリカーボネートシートで構成する場合、ポリカーボネートを溶融し、シート状に押し出し成形し、これをガラス転移温度以上の温度で一方向又は二方向に延伸することで、高リタデーションシートとすることができる。リタデーションは、延伸倍率、延伸温度、シート厚さを調整することで設定でき、延伸倍率が高いほど、延伸温度が低いほど、シート厚みが厚いほど大きくなる傾向があることが知られている。

　このような高複屈折基材としての合成樹脂シート５０を出射部４１に設けておき、凹面鏡３２で反射された表示光Ｌを、合成樹脂シート５０を透過させて出射することで、直線偏光の表示光Ｌが合成樹脂シート５０の位相差機能によって円偏光（またはランダム偏光）の光に変換される。
　これにより、合成樹脂シート５０を透過した光は、円偏光またはランダム偏光の光となってフロントガラス２で反射されて視認者Ｍに届くことになり、偏光サングラスＧを着用していても虚像Ｖが遮られることなく視認できる。
　また、合成樹脂シート５０は、厚さが３００μｍ以上のものが使用されることで、これまでのカバーガラスに代えて用いても必要な剛性を確保することができる。

　合成樹脂シート５０は、表示光Ｌの出射側、すなわちケース４０の外側に位置する表面に透過性のハードコート層５１が設けられている（図３参照）。ハードコート層５１は、熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂などを合成樹脂シート５０に塗布することで形成される。これにより、合成樹脂シート５０の表面を傷などの損傷から保護することができる。
　なお、ハードコート層５１は、透過性の樹脂を塗布して形成する場合に限らず、他の合成樹脂フィルムを貼着して設けるようにしても良い。
　合成樹脂シート５０は、表示器２０側、すなわちケース４０の内側に位置する表面に遮光性の印刷層５２が設けられ、表示光Ｌによる画像の可視範囲外の領域を覆うように設けてある（図３参照）。これにより、ケース４０内の可視範囲以外を印刷層５２で目隠しされた状態にしている。

　また、出射部４１は、合成樹脂シート５０の表示器２０側に貼り合わされた偏光機能フィルム５３を備え、偏光機能フィルム５３は、表示器２０が出射した表示光Ｌを直線偏光として、合成樹脂シート５０に入射させるようにしてある。つまり、合成樹脂シート５０は、表示器２０側、すなわちケース４０の内側に位置する表面に偏光機能フィルム５３が貼り合わされている。偏光機能フィルム５３は、表示器２０の液晶表示パネル２１から直線偏光のＳ偏光成分のほか迷光が発せられる場合に，迷光を遮ることができ、ゴースト像の発生を防止できる。また、凹面鏡３２で反射された表示光Ｌが、合成樹脂シート５０の遅相軸とのなす角が略４５°となるように配置する必要があるが、合成樹脂シート５０に予め偏光機能フィルム５３を設けることで遅相角に対する調整ができ、ヘッドアップディスプレイ装置１０の組み立てが容易となる。
　さらに、偏光機能フィルム５３は、ケース４０内部への太陽光の入射をカットする（防ぐ）機能を有する。

　また、偏光機能フィルム５３を設ける場合には、図４に示すように、印刷層５２は、偏光機能フィルム５３の可視範囲以外を目隠しするように設ける。この場合には、印刷層５２と重ねて偏光機能フィルム５３を設ける必要はなく、印刷層５２の内側に偏光機能フィルム５３を貼着する。これにより、印刷層５２の内側に偏光機能フィルム５３を貼着することで、合成樹脂シート５０の全面に設ける場合に比べ、小さな偏光機能フィルム５３とすることができる。
　なお、図示省略したが、印刷層５２は、合成樹脂シート５０と偏光機能フィルム５３との間に設けるようにしても良い。

　以上、実施形態とともに、具体的に説明したように本発明のヘッドアップディスプレイ装置１０によれば、表示器２０が出射した画像を表す表示光Ｌを反射部３０で反射させ、反射部３０で反射した表示光Ｌを出射部４１より出射して視認者Ｍの前方の虚像Ｖにより視認させるヘッドアップディスプレイ装置１０であって、出射部４１は、透光性を有する合成樹脂シート５０を備え、合成樹脂シート５０には、表示器２０が出射した表示光Ｌとしての直線偏光が入射し、合成樹脂シート５０は、入射した直線偏光を円偏光又はランダム偏光として出射する位相差機能を有し、出射部４１から、円偏光又はランダム偏光としての表示光Ｌを出射するので、直線偏光の表示光Ｌが合成樹脂シート５０の位相差機能によって円偏光（またはランダム偏光）の光に変換される。これにより、合成樹脂シート５０を透過した光は、円偏光またはランダム偏光の光となってフロントガラス２で反射されて視認者Ｍに届くことになり、偏光サングラスＧを着用していても虚像Ｖが遮られることなく視認することができる。
　また、合成樹脂シート５０だけで位相差機能を備えているので、これまでの基材シートに位相差板を貼り合わせて構成する場合に比べ、薄くすることができ、各層の光学特性のばらつきによる輝度や透過率のばらつきの影響を抑えて偏光サングラスＧの着用による視認性を向上することができる。

　本発明のヘッドアップディスプレイ装置１０によれば、出射部４１は、合成樹脂シート５０の表示器２０側に貼り合わされた偏光機能フィルム５３を備え、偏光機能フィルム５３は、表示器２０が出射した表示光Ｌを直線偏光として、合成樹脂シート５０に入射させるので、表示器２０から迷光が発せられる場合に，迷光を遮ることができ、ゴースト像の発生を防止でき、偏光サングラスの着用による視認性を向上することができる。
　また、表示器２０からの表示光Ｌが、合成樹脂シート５０の遅相軸とのなす角が略４５°となるように配置する必要があるが、合成樹脂シート５０に予め偏光機能フィルム５３を設けることで、遅相角に対する調整が予めでき、ヘッドアップディスプレイ装置１０の組み立てが容易となる。

　本発明のヘッドアップディスプレイ装置１０によれば、合成樹脂シート５０は、厚さが３００μｍ以上であるので、薄くても剛性や耐久性が高く、これまでのガラスカバーに代えて用いることで必要な剛性や耐久性を確保することができ、２重像の発生も抑えることができ、偏光サングラスの着用による視認性を向上することができる。

　本発明のヘッドアップディスプレイ装置１０によれば、合成樹脂シート５０の表示光Ｌの出射側に、ハードコート層５１が設けられているので、合成樹脂シート５０の表面を保護することで、傷や損傷を防止でき、視認性や耐久性を高めることができ、偏光サングラスの着用による視認性を向上することができる。

　本発明のヘッドアップディスプレイ装置１０によれば、合成樹脂シート５０の表示器２０側に位置する遮光性の印刷層５２を備え、印刷層５２は、表示光Ｌが表す画像の可視範囲外に相当する領域に設けられているので、合成樹脂シート５０の視認に必要のない領域を印刷層５２で目隠しすることができ、ヘッドアップディスプレイ装置１０として必要な可視範囲を明確にすることができ、偏光サングラスの着用による視認性を向上することができる。

　なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものでなく、種々の変形が可能であり、例えば、合成樹脂シート５０は２次曲面で形成する場合に限らず、平面状であっても良い。

　上記の実施形態では、ヘッドアップディスプレイ装置１０は車載する場合を例に説明したが、車載用に限らず、飛行機、船等の乗り物に搭載されるものであっても良い。

１　　　車両
２　　　フロントガラス
１０　　ヘッドアップディスプレイ装置
２０　　表示器
２１　　液晶表示パネル
２１ａ　液晶セル
２１ｂ　偏光板
２１ｃ　偏光板
２２　　発光素子
２３　　配線基板
２４　　ケース体
３０　　反射部
３１　　平面鏡
３２　　凹面鏡
４０　　ケース
４１　　出射部
５０　　合成樹脂シート
５１　　ハードコート層
５２　　印刷層
５３　　偏光機能フィルム
Ｇ　　　偏光サングラス
Ｌ　　　表示光
Ｍ　　　視認者
Ｖ　　　虚像

Claims (5)

1. 　表示器が出射した画像を表す表示光を反射部で反射させ、前記反射部で反射した前記表示光を出射部より出射して視認者の前方の虚像により視認させるヘッドアップディスプレイ装置であって、
   　前記出射部は、透光性を有する合成樹脂シートを備え、
   　前記合成樹脂シートには、前記表示器が出射した前記表示光としての直線偏光が入射し、
   　前記合成樹脂シートは、入射した前記直線偏光を円偏光又はランダム偏光として出射する位相差機能を有し、
   　前記出射部から、前記円偏光又は前記ランダム偏光としての前記表示光を出射する、
   　ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
2. 　前記出射部は、前記合成樹脂シートの前記表示器側に貼り合わされた偏光機能フィルムを備え、
   　前記偏光機能フィルムは、前記表示器が出射した前記表示光を前記直線偏光として、前記合成樹脂シートに入射させる、
   　ことを特徴とする請求項１に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
3. 　前記合成樹脂シートは、厚さが３００μｍ以上である、
   　ことを特徴とする請求項１又は２に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
4. 　前記合成樹脂シートの前記表示光の出射側に、ハードコート層が設けられている、
   　ことを特徴とする請求項１乃至３のいずれか１項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
5. 　前記合成樹脂シートの前記表示器側に位置する遮光性の印刷層を備え、
   　前記印刷層は、前記表示光が表す画像の可視範囲外に相当する領域に設けられている、
   　ことを特徴とする請求項１乃至４のいずれか１項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。

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