WO2018131717A1

WO2018131717A1 - 生地、焼き菓子、医薬組成物、及びこれらの製造方法

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Publication number: WO2018131717A1
Application number: PCT/JP2018/001011
Authority: WO
Inventors: 道雄野村; 崇亘 ▲濱▼淵
Original assignee: 株式会社カネカ
Priority date: 2017-01-16
Filing date: 2018-01-16
Publication date: 2018-07-19

Abstract

イオン吸着能又はイオン交換能を有する高分子材料を含有しながらも成形性に優れる生地と、当該生地の焼成体である焼き菓子と、当該焼き菓子からなる医薬組成物、及びこれらの製造方法を提供すること。　焼成体からなる焼き菓子を製造するための生地であって、イオン吸着能又はイオン交換能を有する高分子材料（Ａ）と、糖アルコール（Ｂ１）、及び前記糖アルコール（Ｂ１）以外の糖（Ｂ２）と、を含み、糖アルコール（Ｂ１）の質量をＷ_Ｂ１とし、糖（Ｂ２）の質量をＷ_Ｂ２とする場合に、生地におけるＷ_Ｂ１／（Ｗ_Ｂ１＋Ｗ_Ｂ２）の値が０．０７５以上０．９２５以下であり、高分子材料（Ａ）の含有量が、生地の質量から水の質量を除いた質量に対して、２５質量％以上である。

Description

生地、焼き菓子、医薬組成物、及びこれらの製造方法

　本発明は、生地、焼き菓子、医薬組成物、及びこれらの製造方法に関する。詳しくは、イオン吸着能又はイオン交換能を有する高分子材料を含む生地、焼き菓子、医薬組成物、及びこれらの製造方法に関する。

　ビスケット、クッキー、クラッカー等の焼き菓子は、穀物粉や糖類を主原料とした生地を成形し、オーブン等に入れて焼成した菓子である。これらの焼き菓子は、水分が少なく保存性に富むことから、世界中に広く普及している菓子の１つである。また、焼き菓子については、サクサクとした食感のビスケットや、ソフトな食感のビスケット等、個人の嗜好に合わせて様々な食感を有するものが提案されている。例えば、特許文献１では、実施例に、糖アルコール（ソルビトール）を含むか、糖アルコールとショ糖等の糖類とを組み合わせて含む生地を焼成した焼き菓子が提案されている。

特開２００９－１４８２５３号公報

　ところで、各種疾病の予防・治療薬として用いられているイオン吸着能又はイオン交換能を有する高分子材料について、ある程度多量に経口摂取することが不快であったり困難であったりすることから、これらを焼き菓子として提供することが検討されている。しかしながら、このような高分子材料を含む焼き菓子は、高分子材料を含む原材料の種類やその配合量によって成形性が必ずしも良好ではない。例えば、型枠を用いずに生地を焼成する場合には、生地の弛みが大きすぎると、焼成の際に生地が過度に流れてしまい、所望の形状を有する焼き菓子を製造しにくかったり、生地の粘性が高すぎると、混練時に原料が均一になりにくく、所望の形状を有する焼き菓子を製造しにくかったり、所望の形状を有する焼き菓子を安定して製造し難かったりする場合がある。

　本発明は、上述した事情に鑑みて提案されたものであり、イオン吸着能又はイオン交換能を有する高分子材料を含有しながらも成形性に優れる生地と、当該生地の焼成体である焼き菓子と、当該焼き菓子からなる医薬組成物、及びこれらの製造方法を提供することを目的とする。

　本発明者らは、イオン吸着能又はイオン交換能を有する高分子材料の含有量と、糖アルコール及び糖類の含有比とが所定の範囲内に調整された生地が成形性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。

　すなわち、本発明は
　（ｉ）焼成体からなる焼き菓子を製造するための生地であって、
　イオン吸着能又はイオン交換能を有する高分子材料（Ａ）と、糖アルコール（Ｂ１）、及び前記糖アルコール（Ｂ１）以外の糖（Ｂ２）と、を含み、
　前記糖アルコール（Ｂ１）の質量をＷ_Ｂ１とし、前記糖（Ｂ２）の質量をＷ_Ｂ２とする場合に、前記生地におけるＷ_Ｂ１／（Ｗ_Ｂ１＋Ｗ_Ｂ２）の値が０．０７５以上０．９２５以下であり、
　高分子材料（Ａ）の含有量が、生地の質量から水の質量を除いた質量に対して、２５質量％以上である、生地。
　（ｉｉ）高分子材料（Ａ）の質量と、糖アルコール（Ｂ１）の質量と、糖（Ｂ２）との質量との合計が、生地の質量から水の質量を除いた質量に対して、９０質量％以上である、（ｉ）に記載の生地、
　（ｉｉｉ）高分子材料（Ａ）の含有量が、生地の質量から水の質量を除いた質量に対して８０質量％以下であり、糖アルコール（Ｂ１）及び糖（Ｂ２）の含有量が生地の質量から水の質量を除いた質量に対して２．０質量％以上６０質量％以下である、（ｉ）又は（ｉｉ）に記載の生地、
　（ｉｖ）糖（Ｂ２）の質量平均分子量が、１８０以上５００，０００以下である、（ｉ）～（ｉｉｉ）のいずれか１つに記載の生地、
　（ｖ）糖（Ｂ２）が、ぶどう糖、果糖、ガラクトース、マンノース、ショ糖、乳糖、麦芽糖、トレハロース、パラチノース、スクラロース、及びデキストリンからなる群より選択される１つ以上である、（ｉ）～（ｉｖ）のいずれか１つに記載の生地、
　（ｖｉ）糖アルコール（Ｂ１）が、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、及びイソマルツロース還元物からなる群より選択される１種以上を含む、（ｉ）～（ｖ）のいずれか１つに記載の生地、
　（ｖｉｉ）高分子材料（Ａ）が、スチレンスルホン酸ナトリウムに由来する構成単位、又はスチレンスルホン酸カルシウムに由来する構成単位を有する陽イオン交換樹脂、及び／又は陰イオン交換樹脂である、（ｉ）～（ｖｉ）のいずれか１つに記載の生地、
　（ｖｉｉｉ）油脂を含まない、（ｉ）～（ｖｉｉ）のいずれか１つに記載の生地、
　（ｉｘ）（ｉ）～（ｖｉｉｉ）のいずれか１つに記載の生地からなる成形物を焼成してなる、焼き菓子、
　（ｘ）（ｉｘ）に記載の焼き菓子からなり、経口摂取することにより、血中の金属イオンの濃度を低減させる、医薬組成物、
　（ｘｉ）金属イオンがカリウムイオンである、請求項（ｘ）に記載の医薬組成物、
　（ｘｉｉ）イオン吸着能又はイオン交換能を有する高分子材料（Ａ）と、糖アルコール（Ｂ１）と、糖アルコール（Ｂ１）以外の糖（Ｂ２）と、を混合することを含む、（ｉ）～（ｖｖｉｉｉ）のいずれか１つに記載の生地の製造方法、
　（ｘｉｉｉ）イオン吸着能又はイオン交換能を有する高分子材料（Ａ）と、糖アルコール（Ｂ１）と、糖アルコール（Ｂ１）以外の糖（Ｂ２）と、水と、を混合することを含む、（ｘｉｉ）に記載の生地の製造方法、
　（ｘｉｖ）（ｘｉｉ）又は（ｘｉｉｉ）に記載の方法で製造された生地を成形して、焼成用の成形体を得ることと、
　成形体を焼成することと、を含む焼き菓子又は医薬組成物の製造方法、を提供する。

　本発明によれば、イオン吸着能又はイオン交換能を有する高分子材料を含有しながらも成形性に優れる生地、当該生地の焼成体である焼き菓子、当該焼き菓子からなる医薬組成物、及びこれらの製造方法を提供することができる。

　以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に何ら限定されず、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。

　＜生地＞
　本実施形態に係る生地は、イオン吸着能又はイオン交換能を有する高分子材料（Ａ）と、糖アルコール（Ｂ１）、及び糖アルコール（Ｂ１）以外の糖（Ｂ２）と、を含む。当該生地を適宜成形した後に焼成して、焼成体からなる焼き菓子が製造される。

　糖アルコール（Ｂ１）の質量をＷ_Ｂ１とし、糖（Ｂ２）の質量をＷ_Ｂ２とする場合、生地におけるＷ_Ｂ１／（Ｗ_Ｂ１＋Ｗ_Ｂ２）の値は、０．０７５以上０．９２５以下であり、
０．１以上０．９以下が好ましい。Ｗ_Ｂ１／（Ｗ_Ｂ１＋Ｗ_Ｂ２）の値が上記範囲であることにより、生地を焼成する際の成形性に優れ、良好且つ均一な形状の焼成体を得ることができる。また、Ｗ_Ｂ１／（Ｗ_Ｂ１＋Ｗ_Ｂ２）の値が大きいほど、口腔内での崩壊性が良好で（崩壊時間が短い）、食感及び舌触りが良好である焼成体を得やすい傾向にある。

　高分子材料（Ａ）の含有量は、生地の質量から水の質量を除いた質量に対して、２５質量％以上であり、３０質量％以上が好ましい。高分子材料（Ａ）の含有量が上記範囲であることにより、型枠を用いずとも焼成時に生地が過度に流動・変形しない良好な成形性を有する。

　上記所定の条件を満たす生地を焼成した焼成体は、良好且つ均一な形状を有する。

　以下、各原料について説明する。

　［高分子材料（Ａ）］
　高分子材料（Ａ）は、イオン吸着能又はイオン交換能を有する高分子材料である。高分子材料（Ａ）は、経口摂取された場合に、消化器系において、特定のイオンを吸着するか、高分子材料（Ａ）がもつイオンと交換する。その結果、高分子材料（Ａ）は、経口摂取されることにより、血中における特定のイオンの濃度を下げる作用を奏する。
　高分子材料（Ａ）としては、陽イオン交換樹脂、及び／又は陰イオン交換樹脂を用いることができる。
　高分子材料（Ａ）に吸着されるか、高分子材料（Ａ）がもつイオンと交換されるイオンは、特に限定されないが、典型的には、カリウムイオン等の金属イオンである。

　高分子材料（Ａ）としては、スチレンスルホン酸ナトリウムに由来する構成単位、又はスチレンスルホン酸カルシウムに由来する構成単位を有する陽イオン交換樹脂、及び／又は陰イオン交換樹脂を用いることができる。
　高分子材料の好ましい具体例としては、例えば、高カリウム血症の予防・治療薬として用いられる、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸カルシウム等の陽イオン交換樹脂、高コレステロール血症や高リン血症の予防・治療薬として用いられるコレスチラミン等の陰イオン交換樹脂が挙げられる。特に、血中のカリウムイオン濃度を下げるポリスチレンスルホン酸ナトリウムが好ましく用いられる。

　高分子材料（Ａ）の含有量は、上述したように、成形性が良好である点から、生地の質量から水の質量を除いた質量に対して、２５質量％以上であり、好ましくは３０質量％以上であり、より好ましくは４０質量％以上である。焼き菓子の口腔内での崩壊性が良好である点から、高分子材料（Ａ）の含有量は、生地の質量から水の質量を除いた質量に対して、好ましくは４０質量％以上であり、より好ましくは５０質量％以上である。
　高分子材料（Ａ）の含有量の上限は、特に限定されないが、焼き菓子におけるひび割れの発生の抑制と、良好な触感や舌触りとを両立しやすい点から、好ましくは８０質量％以下、より好ましくは７０質量％以下、特に好ましくは６５質量％以下である。

　焼成時に高分子材料が失活しにくい点において、高分子材料の融点又は分解温度は、１５０℃以上であることが好ましく２５０℃以上であることが好ましく、３５０℃以上であることが特に好ましい。

　［糖アルコール（Ｂ１）］
　糖アルコール（Ｂ１）としては、特に限定されない。市販される種々の糖アルコールを糖アルコール（Ｂ１）として使用することができる。糖アルコール（Ｂ１）としては、粉末状糖アルコール用いてもよく、糖アルコールを含有するシロップを用いてもよい。糖アルコール（Ｂ１）は、ショ糖と混合されて販売されている場合がある。このような糖アルコール（Ｂ１）と、糖（Ｂ２）とを含む組成物を用いてもよい。また、糖アルコール（Ｂ１）は、水を含んでいてもよい。
　糖アルコール（Ｂ１）は、胃や腸で消化・吸収されないくい糖質である。このため、糖アルコール（Ｂ１）のカロリーは、糖（Ｂ２）のカロリーに比べて低い。このため、低カロリーの焼成体の製造が望まれる場合には、生地に糖アルコール（Ｂ１）を含有させるのが好ましい。
　糖アルコール（Ｂ１）は、強い甘味を呈することが多い。生地に糖アルコール（Ｂ１）を含有させることにより、良好な甘味を呈する焼成体を形成しやすい。

　糖アルコール（Ｂ１）としては、特に限定されない。糖アルコール（Ｂ１）は、例えば、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、及びイソマルツロース還元物からなる群より選択される１種以上を含むのが好ましく、マルチトール（還元麦芽糖水飴）を含むのがより好ましい。

　生地中の糖アルコール（Ｂ１）の含有量は、成形性が良好である点から、生地の質量から水の質量を除いた質量に対して、好ましくは６０質量％以下、より好ましくは４０質量％以下である。糖アルコール（Ｂ１）の含有量が過大であると、成形性が悪化しやすい。
　生地中の糖アルコール（Ｂ１）の含有量の下限は、特に限定されず、好ましくは２．０質量％以上、より好ましくは１５質量％以上、さらにより好ましくは３０質量％以上である。生地が糖アルコール（Ｂ１）を含有することにより、焼成体に甘味を付与でき、嗜好性が向上する。

　［糖（Ｂ２）］
　糖（Ｂ２）は、糖アルコール（Ｂ１）以外の糖である。糖（Ｂ２）は、通常、粉末状原料であり、生地の賦形剤としての機能を果たす。なお、異性化糖のシロップのような液状の糖製品も糖（Ｂ２）として使用することができる。糖（Ｂ２）がシロップである場合、糖（Ｂ２）の使用量は、シロップ中の固形分量として求められる。
　糖（Ｂ２）としては、質量平均分子量が１８０以上５００，０００以下の糖が好ましく用いられる。
　糖（Ｂ２）の具体例としては、ぶどう糖、果糖、ガラクトース、マンノース等の単糖類；ショ糖、乳糖、麦芽糖、トレハロース、パラチノース、スクラロース等の二糖類；デキストリン等の多糖類が挙げられる。糖（Ｂ２）としては、これらの単糖類、二糖類、及び多糖類から選択される１つ以上を好ましく用いることができる。これらの中では、特にデキストリン等の多糖類が好適である。
　高分子材料（Ａ）の使用量が少ないと、糖（Ｂ２）として単糖類や二糖類を用いた場合に、焼き菓子の口腔内での崩壊時間がやや長い傾向がある。
　他方、糖（Ｂ２）としてデキストリン等の多糖類を用いると、高分子材料（Ａ）の使用量が少なくても、口腔内で短時間で崩壊する焼き菓子を得やすい。

　糖（Ｂ２）の質量平均分子量は、成形性が良好である点から、好ましくは５００，０００以下であり、より好ましくは３００，０００以下であり、さらにより好ましくは１５０，０００以下であり、さらによりいっそう好ましくは１００，０００以下であり、特に好ましくは５０，０００以下であり、特にいっそう好ましくは１０，０００以下である。焼き菓子の口腔内での崩壊性の点からは、糖（Ｂ２）の質量平均分子量は、好ましくは３００，０００以下であり、より好ましくは１５０，０００以下であり、さらにより好ましくは１００，０００以下であり、さらによりいっそう好ましくは５０，０００以下であり、特に好ましくは１０，０００以下である。
　糖（Ｂ２）の質量平均分子量の下限は、特に限定されないが、好ましくは１８０以上であり、より好ましくは３００以上であり、さらにより好ましくは６００以上であり、特に好ましくは１０００以上である。
　なお、本明細書において、質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー（ＧＰＣ）によるポリスチレン換算の値である。

　生地中の糖（Ｂ２）の含有量は、焼き菓子の口腔内での崩壊性が良好である点から、生地の質量から水の質量を除いた質量に対して、好ましくは６０質量％以下であり、より好ましくは４０質量％以下であり、さらにより好ましくは３０質量％以下である。
　生地中の糖アルコール（Ｂ２）の含有量の下限は、成形性が良好である点から、好ましくは２．０質量％以上であり、より好ましくは３．５質量％以上である。生地中の糖アルコール（Ｂ２）の含有量が過小であると、成形性が悪化しやすい。

　生地中の糖アルコール（Ｂ１）及び糖（Ｂ２）の含有量は、口腔内での崩壊性が良好である焼成体を得やすい点から、生地の質量から水の質量を除いた質量に対して６０質量％以下が好ましく、５０質量％以下がより好ましく、４０質量％以下が特に好ましい。
　生地中の糖アルコール（Ｂ１）及び糖（Ｂ２）の含有量は、焼成体の良好な嗜好性と、良好な食感とを両立しやすい点から、２．０質量％以上が好ましく、１０質量％以上がより好ましく、２０質量％以上が特に好ましい。
　また、高分子材料（Ａ）の質量と、糖アルコール（Ｂ１）の質量と、糖（Ｂ２）との質量との合計は、生地の質量から水の質量を除いた質量に対して、９０質量％以上であることが好ましい。焼成前の生地における、高分子材料（Ａ）の質量と、糖アルコール（Ｂ１）の質量と、糖（Ｂ２）との質量との合計が、生地の質量から水の質量を除いた質量に対して、９０質量％以上であることにより、すなわち水分量が少ないことにより、成形性に優れ、焼成の際にふくらみが抑えられ、焼成体の耐衝撃性、及び流通性が向上する。

　［その他の成分］
　生地は、本発明の目的を阻害しない範囲で、穀粉（小麦粉、ライ麦粉、米粉等）、動物性又は植物性の油脂（ショートニング、マーガリン、バター、粉末油脂、乳化油脂等）、鶏卵等の、従来から焼き菓子の主材料として使用されている種々の材料を含んでいてもよい。
　ただし、生地の焼成体である焼き菓子は、後述するようにある程度多量に摂取される場合がある。このため、焼成体である焼き菓子のカロリーが低く、摂取カロリーが制限されている消費者でも摂取しやすい点から、生地は、油脂を含まないのが好ましい。

　また、生地は、焼き菓子の原料として従来から使用されている種々の副材料を含んでいてもよい。
　かかる副材料としては、乳製品（脱脂粉乳、全脂粉乳、牛乳等）、香料（バニラエッセンス等）、香辛料（シナモン、バジル等）、糖アルコール（Ｂ１）及び糖（Ｂ２）以外の甘味料（アスパルテーム等）、着色料、酒類（ブランデー、ラム酒等）、ナッツ類（落花生、アーモンド、くるみ等）、シード類（ゴマ、ケシの実等）、ドライフルーツ（レーズン、ドライチェリー、ドライマンゴー等）、酵素（αアミラーゼ、βアミラーゼ、グルコオキシターゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、キシラナーゼ、ヘミセルラーゼ、グルコースオキシターゼ等）、乳化剤（グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、及びステアロイル乳酸カルシウム等）、茶粉末、ココアパウダー、及びチョコレート等が挙げられる。

＜焼き菓子＞
　焼き菓子は、上述した生地を焼成してなる焼成体である。生地は、通常、所望する形状に成形された成形物として焼成される。

　本出願の特許請求の範囲、及び明細書において、「焼成」とは、焼き菓子の製造工程で通常実施される焼成工程と同様の加熱方法により、生地の内部温度が、生地の表面温度に到達するまで加熱することを、「焼成」という。
　例えば、「焼成」は、遠赤外線等による放射熱、伝導熱、及び対流を利用したオーブン内で加熱する方法である。典型的には、生地の内部温度が１００℃以上となる温度条件に１分以上生地をさらすように加熱する。

　焼き菓子は、上述したように、糖アルコール（Ｂ１）の質量をＷ_Ｂ１とし、糖（Ｂ２）の質量をＷ_Ｂ２とする場合に、生地におけるＷ_Ｂ１／（Ｗ_Ｂ１＋Ｗ_Ｂ２）の値が０．０７５以上０．９２５以下であり、高分子材料（Ａ）の含有量が、生地の質量から水の質量を除いた質量に対して、２５質量％以上である生地を焼成した焼成体である。これによって、良好且つ均一な形状で焼成された焼成体が形成される。また、Ｗ_Ｂ１／（Ｗ_Ｂ１＋Ｗ_Ｂ２）の値が大きいほど、口腔内での崩壊性が良好で（崩壊時間が短い）、食感及び舌触りが良好な焼成体を得やすい傾向にある。かかる焼き菓子を食することにより、単体では多量に摂取しにくい高分子材料（Ａ）を摂取しやすい。

　焼き菓子の表面には、粉糖、ザラメ、ココアパウダー、茶粉末等がまぶされてもよい。また、焼き菓子には、ナッツ類（落花生、アーモンド、くるみ等）、シード類（ゴマ、ケシの実等）、ドライフルーツ（レーズン、ドライチェリー、ドライマンゴー等）等がトッピングされてもよい。
　さらに、焼き菓子の表面の一部又は全部は、消費者の味の嗜好性への対応や、意匠性の向上の目的で、チョコレートやアイシング等によりコーティングされてもよい。

＜医薬組成物＞
　医薬組成物は、上述した焼き菓子からなる。医薬組成物は、経口摂取することにより、血中の金属イオンの濃度を低減させる。例えば、高分子材料（Ａ）としてポリスチレンスルホン酸ナトリウムを用いた焼き菓子である場合には、経口摂取することにより、血中のカリウムイオン濃度を低減させる。

　血中の金属イオンの濃度が過度に高い疾病の患者における上記医薬組成物の摂取量は、特に限定されず、患者の症状の重篤度等を勘案して、医学的観点、薬理学的観点から適宜決定される。

　医薬組成物を摂取するタイミングは、経口摂取による所望する血中金属イオン濃度低減の効果が得られる限り特に限定されない。
　医薬組成物を摂取するタイミングは、典型的には、服用しやすい点で食間が好ましい。

＜生地の製造方法＞
　生地の製造方法は、イオン吸着能又はイオン交換能を有する高分子材料（Ａ）と、糖アルコール（Ｂ１）、及び糖アルコール（Ｂ１）以外の糖（Ｂ２）と、を混合することを含む。これらを混合する順序は限定されない。
　例えば、高分子材料（Ａ）と、糖アルコール（Ｂ１）と、糖（Ｂ２）とから選択される任意の２種を混合した後に、残りの１種を混合してもよい。また、高分子材料（Ａ）と、糖アルコール（Ｂ１）と、糖（Ｂ２）とを同時に混合してもよい。

　具体的には、まず、粉末状の高分子材料（Ａ）と糖（Ｂ２）とをパドル等の撹拌機を用いて均一に混合する。次いで、高分子材料（Ａ）と糖（Ｂ２）との混合物に、糖アルコール（Ｂ１）を必要に応じて水と共に添加して混合し、生地に纏まりと粘度が出るまで混練すればよい。
　前述のその他の成分を生地に加える場合、材料に応じた任意のタイミングで、所望するその他の成分を、生地の原料に加えればよい。
　なお、生地中の水分量が多いと、生地の状態が緩く、その後の成形が難しい場合がある。そのような場合には、混練した生地を乾燥させて水分量を少なくするとよい。
　生地を乾燥させる方法は、特に限定されないが、温風等を送風しながら混練したり、自然乾燥させたり、減圧乾燥させたりする方法等が挙げられる。

　このような生地の製造方法によれば、成形性に優れ、良好且つ均一な形状である焼き菓子を与える生地を製造することができる。

＜焼き菓子又は医薬組成物の製造方法＞
　焼き菓子又は医薬組成物の製造方法は、前述の生地を成形して、焼成用の成形体を得ることと、この成形体を焼成することとを含む。

　生地を成形して焼成用の成形体を得る方法としては、所定の形状に成形できれば、特に限定されない。
　典型的な、成形体の形成方法としては、
１）所望する形状の型枠内に生地を充填する方法、
２）ブロック状、円柱状、又はシート状の生地を、成形体の形状に合わせて切断する方法、
３）シート状の生地から、所望する形状の型を用いて、成形体を型抜きする方法、
４）押出し口より板上に生地を押出す方法、及び、
５）所定量に計量された、例えば略球状の生地の塊を、板上で押しつぶす方法、
等が挙げられる。
　なお、上述した生地は、成形しやすい配合となっているため、型枠がなくても成形しやすく、多量生産に向いた成形方法を選択することが可能である。具体的には、型枠を用いずとも、良好且つ均一な形状の焼き菓子を製造できるため、上記の２）、４）、５）等の方法を生地の成形方法として適用できる。

　成形体を焼成する方法としては、上述したように、焼き菓子を製造する製造工程で通常行われる焼成方法であれば、特に限定されない。焼成条件としては、例えば、炉内温度１３０℃～３００℃で、３０分～１時間程度である。
　焼成時の温度は、一定であっても、変化してもよい。焼成温度の変化は、高温から低温への変化でも、低温から高温への変化であってもよい。水分等の揮発成分の急激な揮発を抑制しやすく、それによって、焼き菓子の膨れや割れといった、焼成時における成形体の形状の変化を抑制しやすいことから、焼成温度の変化としては、低温から高温への変化が好ましい。例えば、炉内温度１３０～２５０℃で１分～１時間焼成する第１焼成を行った後、第１焼成の炉内温度よりも高温となる炉内温度１８０～３００℃で１分～１時間焼成する第２焼成を行ってもよい。
　また、異なる温度条件で複数回（例えば３回以上）の焼成を行ってもよい。さらに、糖（Ｂ２）にカラメル化反応を生じさせることにより、香ばしい焼き上がりとすることも好ましい。

　上述した焼成条件においては、成形性、特に焼成時における成形体の形状の変化を抑制し、且つ衝撃に対する強度を担保する点から、焼成用の成形体の表面温度が内部よりも早く１００℃に達し、内部よりも先行して表面から水分等の揮発成分が揮発する条件とすることが好ましい。

　なお、ここで、成形体及び焼成体は、第１主面となる表面と、第２主面となる平面又は略平面である底面を含み、底面と平行な面により、それぞれ体積の等しい、表面側の第１層と、底面側の第２層と、第１層と第２層との中間の中間層（内部）とに分割できるものとする。成形体の表面温度は、表面の略中央部の温度であり、表面の略中央部に温度計、例えば熱電対を当てることより測定することができる。成形体の内部温度は、中間層の略中央部の温度であり、表面の略中央部から中間層の略中央部（厚み方向中間部）に向かって温度計を挿入することによって測定することができる。

　焼き菓子又は医薬組成物の製造方法は、具体的に、焼成用の成形体の表面温度が１００℃に達してから、成形体の内部温度が加熱開始から１００℃に達するまでの間隔時間が、１８０秒以上である加熱工程を含むことが好ましい。このような加熱工程を含むことにより、焼成時に成形体の形状の変化を抑制しやすく、衝撃に対する焼き菓子又は医薬組成物の強度を担保しやすくなる。

　さらに、上述した焼成条件においては、焼成体を咀嚼する際の抵抗が低い、焼成体の圧縮荷重を低い、サクサク感がある等の好ましい食感を得る点から、成形体の内部温度が１００℃に達してから、成形体の内部温度が１６０℃に達するまでの間隔時間が、４８０秒以上である加熱工程をさらに含むことが好ましい。

　以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。

　［実施例１～実施例１６、及び比較例１～比較例５］
　表１～表６に示す原料を用いて、以下の方法で生地及び焼き菓子を製造した。
　高分子材料（Ａ）として、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム（表中、ＰＳＮａと記す。）７５ｇを用いた。各実施例及び比較例では、糖（Ｂ２）として以下のＢ２－１～Ｂ２－４を用いた。
　Ｂ２－１：デキストリン（パインデックス（＃２）、質量平均分子量１６００、松谷化学社製）
　Ｂ２－２：デキストリン（パインデックス（＃３）、質量平均分子量６８０、松谷化学社製）
　Ｂ２－３：デキストリン（アミコール６－Ｈ、質量平均分子量１６０００、日澱化学社製）
　Ｂ２－４：馬鈴薯澱粉（質量平均分子量４６４０００）

　これら高分子材料（Ａ）と糖（Ｂ２）とを表１～表６に示す配合量で均一に混合した後、これに糖アルコール（Ｂ１）としてマルチトールを加えて混合し生地を調製した。

　この生地を、焼成用の板上に置かれた内径約２８ｍｍの円筒状の成形器に充填した後、生地を円筒内で十分に圧縮して、略円盤状の未焼成形体を形成した。
　高分子材料（Ａ）の配合量が２０質量％である生地については、円筒内に、質量約１２．５ｇの焼成体が得られる量の生地を充填した。
　高分子材料（Ａ）の配合量が３０質量％である生地については、円筒内に、質量約８．３３ｇの焼成体が得られる量の生地を充填した。
　高分子材料（Ａ）の配合量が６５質量％である生地については、円筒内に、質量約３．８４ｇの焼成体が得られる量の生地を充填した。
　高分子材料（Ａ）の配合量が８０質量％である生地については、円筒内に、質量約３．１２ｇの焼成体が得られる量の生地を充填した。

　形成された未焼成成形体を庫内温度１６０℃のオーブン（遠赤外線炉）で１０分間一次焼成した後、引き続き庫内温度２３０℃のオーブンで２０分間二次焼成し、焼成体である焼き菓子を得た。（一次焼成と二次焼成併せて、生地の内部温度が１００℃以上となる時間は約２０分であった。）。

　得られた焼き菓子について、成形性と崩壊性を、以下に示す崩壊性試験により評価した。
　（成形性）
　成形性は、以下に示す基準により評価した。表１～表６に、成形性の評価結果を示す。
　〇：円筒状の成形器に充填された生地を押し出し網状トレイに並べた際、生地の形状にほとんど変化がなく、焼成後に表面にひびや膨れがない。
　△：円筒状の成形器に充填された生地を押し出し網状トレイに並べた際、生地の形状に若干変化がある。又は、焼成後に形状変化はほとんどないが、表面の一部に軽微なひびや膨れがある。
　×：円筒状の成形器に充填された生地を押し出し網状トレイに並べた際、生地が流れて、形状が変化したり、或いは、円筒状の成形器から生地が押し出せない。又は、焼成後に割れてしまったり、表面に大きな膨れがある。

　（崩壊性試験）
　容量１Ｌの丸底セパラブルフラスコ内に水１０００ｍＬを張り込み、水温を３７℃±０．５℃に調整した。水面付近に網かごを置き、網かご内に焼き菓子１枚を載置した。焼き菓子が水中に完全に浸漬するように、網かごの位置を水面近くにおいて調整した後、マグネティックスターラー（商品名：マルチスターラーＭ－３、井内盛栄堂製）と、撹拌子（直径７ｍｍφ、長さ２０ｍｍの棒状）を用いて、渦ができない適度な回転数（ｓｃａｌｅ：３）で撹拌した。そして、焼き菓子が水中に崩壊し、網かご上に残存する焼き菓子が観測されなくなるまでの崩壊時間を測定した。表１～表６に、崩壊時間の測定結果を示す。

　表１～６から、糖アルコール（Ｂ１）と糖（Ｂ２）との質量比がＷ_Ｂ１／（Ｗ_Ｂ１＋Ｗ_Ｂ２）の値が０．０７５以上０．９２５以下であり、高分子材料（Ａ）の含有量が、生地の質量から水の質量を除いた質量に対して、２５質量％以上である実施例１～実施例１６の生地は、焼成時に生地が過度に流動・変形しない良好な成形性を示した。
　また、糖（Ｂ２）の質量平均分子量が１６０００以下である実施例１～１３の生地を焼成した焼き菓子は、崩壊時間が短く、崩壊性に優れていた。
　特に、糖アルコール（Ｂ１）と糖（Ｂ２）との質量比がＷ_Ｂ１／（Ｗ_Ｂ１＋Ｗ_Ｂ２）の値が０．５以上である実施例１，２，３，５，６，８，９，１１，１２，１４，及び１５の生地を焼成した焼き菓子は、Ｗ_Ｂ１／（Ｗ_Ｂ１＋Ｗ_Ｂ２）の値が０．５未満である実施例４，７，１０，及び１３に比べ崩壊性に優れていることが確認された。

　対して、高分子材料（Ａ）の含有量が２０質量％であり、多量の糖アルコール（Ｂ１）と糖（Ｂ２）とを含む比較例１，２及び３の生地は、成形性が悪かった。

Claims

　焼成体からなる焼き菓子を製造するための生地であって、
　イオン吸着能又はイオン交換能を有する高分子材料（Ａ）と、糖アルコール（Ｂ１）、及び前記糖アルコール（Ｂ１）以外の糖（Ｂ２）と、を含み、
　前記糖アルコール（Ｂ１）の質量をＷ_Ｂ１とし、前記糖（Ｂ２）の質量をＷ_Ｂ２とする場合に、前記生地におけるＷ_Ｂ１／（Ｗ_Ｂ１＋Ｗ_Ｂ２）の値が０．０７５以上０．９２５以下であり、
　前記高分子材料（Ａ）の含有量が、前記生地の質量から水の質量を除いた質量に対して、２５質量％以上である、生地。
　前記高分子材料（Ａ）の質量と、前記糖アルコール（Ｂ１）の質量と、前記糖（Ｂ２）との質量との合計が、前記生地の質量から水の質量を除いた質量に対して、９０質量％以上である、請求項１に記載の生地。
　前記高分子材料（Ａ）の含有量が、前記生地の質量から水の質量を除いた質量に対して８０質量％以下であり、前記糖アルコール（Ｂ１）及び前記糖（Ｂ２）の含有量が前記生地の質量から水の質量を除いた質量に対して２．０質量％以上６０質量％以下である、請求項１又は２に記載の生地。
　前記糖（Ｂ２）の質量平均分子量が、１８０以上５００，０００以下である、請求項１～３のいずれか１項に記載の生地。
　前記糖（Ｂ２）が、ぶどう糖、果糖、ガラクトース、マンノース、ショ糖、乳糖、麦芽糖、トレハロース、パラチノース、スクラロース、及びデキストリンからなる群より選ばれる１つ以上を含む、請求項１～４のいずれか１項に記載の生地。
　前記糖アルコール（Ｂ１）が、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、及びイソマルツロース還元物からなる群より選択される１種以上を含む、請求項１～５のいずれか１項に記載の生地。
　前記高分子材料（Ａ）が、スチレンスルホン酸ナトリウムに由来する構成単位、又はスチレンスルホン酸カルシウムに由来する構成単位を有する陽イオン交換樹脂、及び／又は陰イオン交換樹脂である、請求項１～６のいずれか１項に記載の生地。
　油脂を含まない、請求項１～７のいずれか１項に記載の生地。
　請求項１～８のいずれか１項に記載の生地からなる成形物を焼成してなる、焼き菓子。
　請求項９に記載の焼き菓子からなり、経口摂取することにより、血中の金属イオンの濃度を低減させる、医薬組成物。
　前記金属イオンがカリウムイオンである、請求項１０に記載の医薬組成物。
　イオン吸着能又はイオン交換能を有する高分子材料（Ａ）と、糖アルコール（Ｂ１）と、前記糖アルコール（Ｂ１）以外の糖（Ｂ２）と、を混合することを含む、請求項１～８のいずれか１項に記載の生地の製造方法。
　イオン吸着能又はイオン交換能を有する高分子材料（Ａ）と、糖アルコール（Ｂ１）と、前記糖アルコール（Ｂ１）以外の糖（Ｂ２）と、水と、を混合することを含む、請求項１２に記載の生地の製造方法。
　請求項１２又は請求項１３に記載の方法で製造された生地を成形して、焼成用の成形体を得ることと、
　前記成形体を焼成することと、を含む焼き菓子又は医薬組成物の製造方法。