(1)基板処理装置の構成 本発明の一実施形態について図1乃至図3を用いて説明する。 処理炉12は、加熱機構としてのヒータ14を有する。ヒータ14は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ14は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
ヒータ14の内側には、このヒータ14と同心円状に反応管16が配設されている。反応管16は、上端が閉塞し下端が開口した円筒状に形成されている。反応管16は、例えば石英(SiO2)や炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料で構成される。
反応管16の下方には、この反応管16と同心円状にインレットフランジ(以後、インレット、またはマニホールドという場合がある)18が配設されている。インレット18は上端及び下端が開口した円筒状に形成され、例えばステンレス等の金属で構成される。インレット18の上端部は、反応管16の下端部に係合しており、この反応管16を支持するように構成されている。
インレット18と反応管16との間には、シール部材としてのOリング20aが設けられている。インレット18がヒータベースに支持されることにより、反応管16は垂直に据え付けられた状態となる。
主に、反応管16とインレット18とにより処理容器が構成され、この処理容器の筒中空部に処理室22が形成される。処理室22の下方に、基板としてのウエハ24を搬入および搬出する開口が形成される。処理室22は、基板24を保持する基板保持具としてのボート28を用いて、基板24を水平姿勢で垂直方向に多段に整列した状態で収容する。
ボート28は、複数枚の基板24を水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で整列させて多段に保持する。ボート28は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料で構成される。ボート28の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる断熱部材30が設けられており、ヒータ14からの熱が下方に伝わりにくくなるように構成されている。断熱部材30は、石英やSiC等の耐熱性材料からなる複数枚の断熱板と、これら断熱板を水平姿勢で多段に支持する断熱板ホルダとにより構成するようにしてもよい。
処理炉12には、基板24を処理する第一のガス(例えば、原料ガス)を処理室22内に供給する第一のガス供給系(原料ガス供給系)32と、基板24を処理する第二のガス(例えば、反応ガス)を処理室22内に供給する第二のガス供給系(反応ガス供給系)34と、この処理室22内をクリーニングする第三のガス(クリーニングガス)を供給する第三のガス供給系(クリーニングガス供給系)36とが設けられている。
処理炉12は、処理室22内にガスを導入する三つのノズル40a,40b,40cを備え、これらノズル40a,40b,40cは、それぞれ、インレット18の側壁を貫通するようにして設けられている。ノズル40a,40b,40cは、それぞれ、例えば石英やSiC等の耐熱性材料で構成される。ノズル40aには、ガス供給管42a及び不活性ガス供給管52aが接続されている。ノズル40bには、クリーニングガス供給管62b及び不活性ガス供給管52bが接続されている。ノズル40cには、ガス供給管42c、不活性ガス供給管52c、クリーニングガス供給管62a、ガス供給管42d及び不活性ガス供給管52dが接続されている。
ガス供給管42aには、処理室22側を下流として上流方向から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)44aと開閉弁であるバルブ46aとが設けられ、このバルブ46aよりも下流側には、不活性ガス供給管52aが接続されている。ガス供給管42aの先端部に、ノズル40aが接続されている。不活性ガス供給管52aには上流方向から順に、MFC54aとバルブ56aとが設けられている。
ノズル40aは、反応管16の内壁と処理室22内に収容された基板24との間における円環状の空間に配設され、インレット18からこの反応管16内まで基板24の積載方向に対して立ち上がるように設けられている。ノズル40aは、基板24が保持されるウエハ保持領域(基板保持領域)の側方であって、この基板保持領域を水平に取り囲む領域に沿うようにして設けられている。
ノズル40aの側面には、ガスを供給するガス供給孔48aが設けられている。ガス供給孔48aは反応管16の中心側に向いており、処理室22内に収容された基板24に向けてガスを供給するようになっている。ガス供給孔48aは、反応管16の基板保持領域の下部から上部にわたって複数設けられている。
主に、ガス供給管42a、MFC44a及びバルブ46aにより第一のガス供給系32が構成される。また、主に、不活性ガス供給管52a、MFC54a及びバルブ56aにより不活性ガス供給系が構成される。
ガス供給管42aからは、所定元素とハロゲン元素とを含む原料ガスが供給される。所定元素としてのシリコン(Si)とハロゲン元素としての塩素(Cl)とを含む原料ガス(Si及びCl含有ガス)として、例えば、クロロシラン系原料ガスの一種であるヘキサクロロジシラン(Si2Cl6、略称:HCDS)ガスが、MFC44a、バルブ46a及びノズル40aを介して、ガス供給管42aから処理室22内に供給される。
原料ガスとは、気体状態の原料、例えば、常温常圧下で液体状態である原料を気化することで得られるガスや、常温常圧下で気体状態である原料等のことである。また、クロロシラン系原料とは、ハロゲン基としてのクロロ基を有するシラン系原料のことであり、少なくともSi及びClを含む原料のことである。
ガス供給管42cには、上流方向から順に、MFC44cとバルブ46cとが設けられ、このバルブ46cよりも下流側には、不活性ガス供給管52cが接続されている。不活性ガス供給管52cには、上流方向から順に、MFC54cとバルブ56cとが設けられている。
ノズル40cは、反応管16の内壁の下部から上部に沿って基板24の積載方向に対して立ち上がるように設けられている。ノズル40cは、基板24が配列されるウエハ保持領域の側方であって、この基板保持領域を水平に取り囲む領域に沿うようにして設けられている。
ノズル40cの側面には、ガスを供給するガス供給孔48cが設けられている。ガス供給孔48cは反応管16の中心側に向いており、処理室22内に収容された基板24に向けてガスを供給するようになっている。ガス供給孔48cは、基板保持領域の一端側から他端側にわたって複数設けられている。
ガス供給管42cのバルブ46c及び不活性ガス供給管52cのバルブ56cよりも下流側には、ガス供給管42dが接続されている。ガス供給管42dには、上流方向から順に、MFC44dとバルブ46dとが設けられ、このバルブ46dよりも下流側には不活性ガス供給管52dが接続されている。不活性ガス供給管52dには、上流方向から順に、MFC54dとバルブ56dとが設けられている。
主に、ノズル40c、ガス供給管42c,42d、MFC44c,44d、バルブ46c,46dにより第二のガス供給系34が構成される。主に、不活性ガス供給管52c,52d、MFC54c,54d、バルブ56c,56dにより不活性ガス供給系が構成される。
ガス供給管42cからは、反応ガスとして酸化性ガス(酸化ガス)である酸素含有ガスが供給される。酸素含有ガスとして、例えば、酸素(O2)ガスが、MFC44c、バルブ46c、ガス供給管42c及びノズル40cを介して処理室22内に供給される。このとき、不活性ガス供給管52cから、MFC54c及びバルブ56cを介して、ガス供給管42c内に不活性ガスを供給するようにしてもよい。
ガス供給管42dからは、反応ガスとして還元性ガス(還元ガス)である水素含有ガスが供給される。水素含有ガスとして、例えば、水素(H2)ガスが、MFC44d、バルブ46d、ガス供給管42d及びノズル40cを介して処理室22内に供給される。このとき、不活性ガス供給管52dから、不活性ガスが、MFC54d、バルブ56dを介してガス供給管42d内に供給されるようにしてもよい。
クリーニングガス供給管62aは、ガス供給管42cに接続されている。クリーニングガス供給管62aには、上流方向から順に、MFC64aとバルブ66aとが設けられている。クリーニングガス供給管62bには、上流方向から順に、MFC64bとバルブ66bとが設けられ、このバルブ66bよりも下流側には、不活性ガス供給管52bが接続されている。不活性ガス供給管52bには、上流方向から順に、MFC54bとバルブ56bとが設けられている。ノズル40bは、平面視において、処理室22内に収容されたボート28すなわち基板24を挟むようにして排気管90(後述する)と対向するように配置されている(図3参照)。なお、図1においては、ノズル40a,40b,40c、排気管90等の位置は図示の関係上、便宜的なものとなっている。
ノズル40bの先端にはガスを供給するガス供給孔48bが設けられており、このガス供給孔48bは水平方向に向かって開口する(インレット18内壁側から内側に向かう方向に開口する)ように構成されている。ノズル40bは、ノズル40cがガスを供給する位置よりもインレット18側の断熱領域において、処理室22内の内側に向けてガスを供給するようになっている。
主に、ノズル40b、クリーニングガス供給管62b、MFC64b及びバルブ66bにより第1クリーニングガス供給系が構成される。また、主に、ノズル40c、クリーニングガス供給管62a、MFC64a、バルブ66aにより第2クリーニングガス供給系が構成される。また、不活性ガス供給管52b、MFC54b及びバルブ56bにより不活性ガス供給系が構成される。この第1クリーニングガス供給系及び第2クリーニングガス供給系によりクリーニングガス供給系としての第三のガス供給系36が構成される。
クリーニングガス供給管62aからはクリーニングガスが供給される。クリーニングガスとして、例えばフッ素含有ガスであるフッ化水素(HF)ガスが、MFC64a、バルブ66a、ガス供給管42c及びノズル40cを介して、クリーニングガス供給管62aから処理室22内に(主に、ウエハ保持領域の反応管16の内壁や、処理室22内に設けられたボート28等の部材の表面に対して)供給される。このとき、不活性ガス供給管52c,52dから不活性ガスが、MFC54c,54d、バルブ56c,56d、ガス供給管42c及びノズル40cを介して処理室22内に供給されるようにしてもよい。HFガスは、他のクリーニングガスと比べて100℃より低い低温で酸化物系の堆積物を除去することができる。
同様に、クリーニングガス供給管62bからは、クリーニングガスが供給される。クリーニングガスとして、例えばフッ素含有ガスであるHFガスが、MFC64b、バルブ66b及びノズル40bを介して、クリーニングガス供給管62bから処理室22内に(主に、断熱領域の反応管16の内壁や、インレット18の内壁、処理室22内に設けられたボート28等の部材の表面に対して)供給される。このとき、不活性ガス供給管52bから、不活性ガスが、MFC54b、バルブ56bを介してクリーニングガス供給管62b内に供給されるようにしてもよい。
反応管16には、処理室22内の雰囲気を排気する排気管90が設けられている。排気管90には、処理室22内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ92及び圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ94を介して、真空排気装置としての真空ポンプ96が接続されている。APCバルブ94は、真空ポンプ96を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室22内の真空排気及び真空排気停止を行う。
主に、排気管90、圧力センサ92及びAPCバルブ94により排気系が構成される。真空ポンプ96を排気系に含めて考えてもよい。排気系は、真空ポンプ96を作動させつつ、圧力センサ92により検出された圧力情報に基づいてAPCバルブ94の弁の開度を調節することにより、処理室22内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気する。排気管90は、反応管16に設けるようにすることに限らず、ノズル40aやノズル40b等と同様にインレット18に設けるようにしてもよい。
インレット18の下方には、このインレット18の下端開口を気密に閉塞する第1の炉口蓋体としてのシールキャップ100が設けられている。蓋体100は、インレット18の下端に垂直方向下側から当接するように構成されている。蓋体100は、例えばステンレス等の金属で構成され、円盤状に形成されている。蓋体100の上面には、インレット18の下端と当接するシール部材としてのOリング20bが設けられている。
蓋体100の処理室22と反対側には、ボート28を回転させる回転機構102が設置されている。回転機構102の回転軸104は、例えばステンレス等の金属で構成され、蓋体100を貫通してボート28に接続されている。回転機構102は、ボート28を回転させることでこのボート28に保持された基板24を回転させる。
反応管16の外部には、昇降機構としてのボートエレベータ106が垂直に設置されており、このボートエレベータ106はシールキャップ100を垂直方向に昇降させるように構成されている。ボートエレベータ106はシールキャップ100を昇降させることで、この蓋体100に載置されたボート28を処理室22内外に搬入及び搬出する。ボートエレベータ106は、ボート28(及びこれに保持された基板24)を、処理室22内外に搬送する搬送装置(搬送機構)として機能する。
インレット18の下方には、このインレット18の下端開口を気密に閉塞する第2の炉口蓋体としてのシャッタ110が設けられている。シャッタ110は円盤状に形成され、ステンレス等の金属で構成される。シャッタ110の上面には、インレット18の下端と当接するシール部材としてのOリング20cが設けられている。シャッタ110は、蓋体100が降下してインレット18の下端開口を開いた状態とする場合にこの下端開口を閉じ、この蓋体100が上昇してインレット18の下端開口を閉じた状態とする場合にこの下端開口から退避するようになっている。シャッタ110は、反応管16の外部に設置されたシャッタ開閉機構112によって、開閉動作(昇降動作や回動動作等)をするよう制御される。
反応管16内には、温度検出器としての温度センサ114が設置されている(図3参照)。温度センサ114により検出された温度情報に基づいてヒータ14への通電具合を調整することで、処理室22内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ114は、ノズル40a及びノズル40cと同様に、反応管16の内壁に沿って設けられている。
制御部(制御手段)であるコントローラ200は、CPU(Central Processing Unit)202と、RAM(Random Access Memory)204と、記憶装置206と、I/Oポート208とを備えたコンピュータとして構成されている。RAM204、記憶装置206及びI/Oポート208は、内部バス210を介して、CPU202とデータ交換するように構成されている。制御部200には、例えばタッチパネル等の入出力装置212が接続されている。
記憶装置206は、例えばフラッシュメモリや、HDD(Hard Disk Drive)等により構成されている。記憶装置206内には、基板処理装置10の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理(成膜処理)の手順や条件等が記載されたプロセスレシピや、後述するクリーニング処理の手順や条件等が記載されたクリーニングレシピ等のCPUの動作プログラム等が、読み出し自在に格納されている。
プロセスレシピは、基板処理工程における各手順を制御部200に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。また、クリーニングレシピは、後述するクリーニング工程における各手順を、制御部200に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピやクリーニングレシピや制御プログラム等を総称して、単に「プログラム」ともいう。本明細書において、「プログラム」という文言は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、クリーニングレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、又は、プロセスレシピ、クリーニングレシピおよび制御プログラムのうち任意の組み合わせを含む場合がある。
RAM204は、CPU202によって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域として構成されている。
I/Oポート208は、MFC44a,44c,44d,54a,54b,54c,54d,64a,64b、バルブ46a,46c,46d,56a,56b,56c,56d,66a,66b、圧力センサ92、APCバルブ94、真空ポンプ96、ヒータ14、温度センサ114、回転機構102、ボートエレベータ106、シャッタ開閉機構112等に接続されている。
CPU202は、操作部の中枢を構成し、記憶装置206から制御プログラムを読み出して実行するとともに、入出力装置212からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置206からプロセスレシピやクリーニングレシピを読み出す。CPU202は、読み出したプロセスレシピやクリーニングレシピの内容に沿うように、MFC44a,44c,44d,54a,54b,54c,54d,64a,64bによる各種ガスの流量調整動作や、バルブ46a,46c,46d,56a,56b,56c,56d,66a,66bの開閉動作、APCバルブ94の開閉動作及び圧力センサ92に基づくAPCバルブ94による圧力調整動作、温度センサ114に基づくヒータ14の温度調整動作、真空ポンプ96の起動及び停止、回転機構102によるボート28の回転及び回転速度調節動作、ボートエレベータ106によるボート28の昇降動作、シャッタ開閉機構112によるシャッタ110の開閉動作等を制御するように構成されている。
制御部200は、外部記憶装置220に格納された上述のプログラムをコンピュータにインストールすることにより構成することができる。外部記憶装置220としては、例えば、ハードディスク等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ等を用いることができる。記憶装置206や外部記憶装置220は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に、「記録媒体」ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置206単体のみを含む場合、外部記憶装置220単体のみを含む場合、又は、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置220を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
次に、基板処理装置10の処理炉12を用いて、半導体装置の製造工程の一工程として、基板24上に薄膜を形成する処理を実施した後(基板処理工程)、処理室22内をクリーニングする方法(クリーニング工程)について説明する。基板処理装置10を構成する各部の動作は、制御部200により制御される。
以下、原料ガスとしてHCDSガスを用い、反応ガスとしてO2ガス及びH2ガスを用い、基板24上にシリコン酸化膜(SiO2膜、以下「SiO膜」ともいう)を形成した後、クリーニングガスとしてHFガスを用いて処理室22内をクリーニングする例について、図5~図8を参照しつつ説明する。
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同様であり、その場合、上記説明において、「ウエハ」を「基板」に置き換えて考えればよい。
(2)基板処理工程(ウエハチャージ及びボートロード) まず、複数枚の基板24をボート28に装填(ウエハチャージ)する。基板24がボート28に装填されると、シャッタ開閉機構112によりシャッタ110が移動させられて、インレット18の下端開口が開放される。複数枚の基板24を保持したボート28はボートエレベータ106によって持ち上げられて、処理室22内に搬入(ボートロード)される。蓋体100は、Oリング20bを介してインレット18の下端をシールした状態となる。
(圧力調整及び温度調整) 処理室22内が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ96によって真空排気される。この際、処理室22内の圧力が圧力センサ92で測定され、この測定された圧力情報に基づいてAPCバルブ94がフィードバック制御される(圧力調整)。真空ポンプ96は、少なくとも基板24に対する処理が完了するまでの間は常時作動した状態を維持する。また、処理室22内が第1の温度として所望の温度となるようにヒータ14によって加熱される。この際、処理室22内が所望の温度分布となるように温度センサ114が検出した温度情報に基づいてヒータ14への通電具合がフィードバック制御される(温度調整)。ヒータ14による処理室22内の加熱は、少なくとも基板24に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。また、回転機構102によりボート28及び基板24を回転させる。回転機構102によるボート28及び基板24の回転は、少なくとも基板24に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。
その後、図5、図6に示すように、以下の「ステップ1」~「ステップ4」を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数行うことにより、基板24上に、所定膜厚のSiO膜を成膜する。
(ステップ1) 「ステップ1」において、処理室22内に収容された基板24に対して原料ガス(HCDSガス)を供給し、この基板24上に層(Si含有層)を形成する。
まず、バルブ46aを開き、ガス供給管42a内にHCDSガスを流す。HCDSガスは、ガス供給管42aから流れ、MFC44aにより流量調整される。流量調整されたHCDSガスは、ノズル40aのガス供給孔48aから、加熱された減圧状態の処理室22内の基板24に向けて供給され、排気管90から排気される。このようにして、基板24に対してHCDSガスが供給される(HCDSガス供給)。
このとき、バルブ56aを開き、不活性ガス供給管52aから不活性ガスとしてN2ガスを供給するようにしてもよい。N2ガスは、MFC54aにより流量調整されて、ガス供給管42a内に供給される。流量調整されたN2ガスは、流量調整されたHCDSガスとガス供給管42a内で混合され、ノズル40aのガス供給孔48aから、加熱された減圧状態の処理室22内に供給され、排気管90から排気される。
ノズル40b,40c内へのHCDSガスの侵入を防止するため、バルブ56b,56c,56dを開き、不活性ガス供給管52b,52c,52d内にN2ガスを流すようにする。N2ガスは、クリーニングガス供給管62b、ガス供給管42c、ガス供給管42d、ノズル40b及びノズル40cを介して処理室22内に供給され、排気管90から排気される。
この際、APCバルブ94を調整して、処理室22内の圧力を、例えば1~2000Pa、好ましくは10~1330Paの範囲内の圧力とする。HCDSガスの供給流量は、例えば1~1000sccmの範囲内の流量とする。各ガス供給管より供給するN2ガスの供給流量はそれぞれ、例えば100~2000sccmの範囲内の流量とする。HCDSガスを基板24に対して供給する時間は、例えば1~120秒の範囲内の時間とする。
ヒータ14の温度は、基板24の温度が、例えば350~800℃、好ましくは450~800℃、より好ましくは550~750℃の範囲内の温度となるように設定する。
上述の条件下で基板24に対してHCDSガスを供給することにより、基板24(表面の下地膜)上に、例えば1原子層未満から数原子層程度の厚さのSi含有層が形成される。Si含有層はHCDSガスの吸着層であってもよいし、Si層であってもよいし、それらの両方を含んでいてもよい。Si含有層は、Si及びClを含む層であることが好ましい。
処理室22内に供給されたHCDSガスは、基板24に対して供給されるだけでなく、処理室22内の部材の表面(反応管16の内壁や、インレット18の内壁、処理室22内に設けられたボート28等の部材の表面)に対しても供給される。このため、Si含有層は、基板24上だけでなく、処理室22内の部材の表面にも形成されることとなる。処理室22内の部材の表面に形成されるSi含有層も、基板24上に形成されるSi含有層と同様に、HCDSガスの吸着層を含む場合や、Si層を含む場合や、それらの両方を含む場合がある。
原料ガスとしては、HCDSガスの他、テトラクロロシラン(シリコンテトラクロライド、SiCl4、略称:STC)ガス、トリクロロシラン(SiHCl3、略称:TCS)ガス、ジクロロシラン(SiH2Cl2、略称:DCS)ガス、モノクロロシラン(SiH3Cl、略称:MCS)ガスを用いてもよい。不活性ガスとしては、N2ガスの他、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、キセノン(Xe)等の希ガスを用いてもよい。
(ステップ2) 基板24上にSi含有層が形成された後、バルブ46aを閉じ、HCDSガスの供給を停止する。排気管90のAPCバルブ94は開いたままとして、真空ポンプ96により処理室22内を真空排気し、処理室22内に残留するガスを処理室22内から排除する(残留ガス除去)。このときバルブ56a,56b,56c,56dは開いたままにして、N2ガスの処理室22内への供給を維持する。N2ガスはパージガスとして作用する。各ガス供給管から供給するN2ガスの供給流量は、それぞれ例えば100~2000sccmの範囲内の流量とする。パージガスとしては、N2ガスの他、Ar,He,Ne,Xe等の希ガスを用いてもよい。
(ステップ3) 「ステップ3」において、大気圧未満の圧力下にある処理室22内の加熱された基板24に対して反応ガスとしてO2ガスとH2ガスとを供給し、「ステップ1」において形成された層(Si含有層)を酸化して酸化層に改質する。
処理室22内の残留ガスを除去した後、バルブ46cを開き、ガス供給管42c内にO2ガスを流す。O2ガスはガス供給管42cから流れ、MFC44cにより流量調整される。流量調整されたO2ガスは、ノズル40cのガス供給孔48cから加熱された減圧状態の処理室22内に供給される。
バルブ46dを開き、ガス供給管42d内にH2ガスを流す。H2ガスはガス供給管42dから流れ、MFC44dにより流量調整される。流量調整されたH2ガスは、ガス供給管42cを経由して、ノズル40cのガス供給孔48cから加熱された減圧状態の処理室22内に供給される。
H2ガスは、ガス供給管42cを経由する際に、このガス供給管42c内でO2ガスと混合される。ノズル40cのガス供給孔48cからは、O2ガスとH2ガスとの混合ガスが加熱された減圧状態の処理室22内の基板24に向けて供給され、その後、排気管90から排気される。このようにして、基板24に対してO2ガスとH2ガスとが供給される(O2ガス+H2ガス供給)。
このとき、バルブ56cを開き、不活性ガス供給管52cからN2ガスを供給するようにしてもよい。N2ガスはMFC54cにより流量調整されて、ガス供給管42c内に供給される。また、バルブ56dを開き、不活性ガス供給管52dから不活性ガスとしてN2ガスを供給するようにしてもよい。N2ガスはMFC54dにより流量調整されて、ガス供給管42c内に供給される。この場合、ノズル40cからは、O2ガス、H2ガス及びN2ガスの混合ガスが供給されることとなる。不活性ガスとしては、N2ガスの他、Ar,He,Ne,Xe等の希ガスを用いてもよい。
ノズル40a,40b内へのO2ガスとH2ガスとの侵入を防止するため、バルブ56a,56bを開き、不活性ガス供給管52a,52b内にN2ガスを流すようにする。N2ガスは、ガス供給管42a及びノズル40a、クリーニングガス供給管62b及びノズル40bを介して処理室22内に供給され、排気管90から排気される。
APCバルブ94を調整して、処理室22内の圧力を、大気圧未満、例えば1~1000Paの範囲内の圧力に維持する。O2ガスの供給流量は、例えば1000~10000sccmの範囲内の流量とする。H2ガスの供給流量は、例えば1000~10000sccmの範囲内の流量とする。各ガス供給管から供給するN2ガスの供給流量はそれぞれ、例えば100~2000sccmの範囲内の流量とする。O2ガス及びH2ガスを基板24に対して供給する時間は、例えば1~120秒の範囲内の時間とする。
ヒータ14の温度は、基板24の温度が、「ステップ1」のHCDSガスの供給時と同様な温度帯であって、酸化力向上の効果が顕著となる温度帯、例えば450~800℃、好ましくは550~750℃の範囲内の温度となるように設定する。この範囲内の温度であれば減圧雰囲気下でのO2ガスへのH2ガス添加による酸化力向上の効果が顕著となる。また、基板24の温度が低すぎると酸化力向上の効果が得られにくい。
上述の条件下でO2ガス及びH2ガスを処理室22内に供給することで、O2ガス及びH2ガスは、加熱された減圧雰囲気下においてノンプラズマで熱的に活性化(励起)されて反応し、これにより原子状酸素(O)等の酸素を含む水分(H2O)非含有の酸化種が生成される。そして、主にこの酸化種により、「ステップ1」で基板24上に形成されたSi含有層に対して酸化処理が行われる。このようにして、Si含有層は、Cl等の不純物の含有量が少ないSi酸化層(SiO2層、以下、単にSiO層ともいう。)へと変化させられる(改質される)。
この酸化処理によれば、O2ガスを単独で供給する場合や水蒸気(H2O)を供給する場合に比べ、酸化力を大幅に向上させることができる。減圧雰囲気下においてO2ガスにH2ガスを添加することで、O2ガス単独供給の場合やH2Oガスを供給する場合に比べ大幅な酸化力向上効果が得られる。
処理室22内で生成される酸化種は、基板24に対して供給されるだけでなく、処理室22内の部材の表面にも供給されることとなる。その結果、処理室22内の部材の表面に形成されたSi含有層の一部は、基板24上に形成されたSi含有層と同様に、SiO層へと変化させられる(改質される)。
酸素含有ガスとしては、O2ガス及びO3ガスよりなる群から選択される少なくとも一つのガスを用いることができ、水素含有ガスとしては、H2ガス及びD2ガスよりなる群から選択される少なくとも一つのガスを用いることができる。
(ステップ4) Si含有層をSiO酸化層へと変化させた後、バルブ46cを閉じ、O2ガスの供給を停止する。また、バルブ46dを閉じ、H2ガスの供給を停止する。排気管90のAPCバルブ94は開いたままとし、真空ポンプ96により処理室22内を真空排気し、残留するガスを処理室22内から排除する(残留ガス除去)。このときバルブ56a,56b,56c,56dは開いたままとして、N2ガスの処理室22内への供給を維持する。N2ガスはパージガスとして作用する。各ガス供給管から供給するN2ガスの供給流量はそれぞれ、例えば100~2000sccmの範囲内の流量とする。パージガスとしては、N2ガスの他、Ar,He,Ne,Xe等の希ガスを用いてもよい。
(所定回数実施) 「ステップ1」~「ステップ4」を1サイクルとして、このサイクルを所定回数(n回)行うことにより、基板24上に所定膜厚のSiO膜が成膜される。
(パージ及び大気圧復帰) 所定膜厚のSiO膜を成膜した後、不活性ガス供給管52a,52b,52c,52dのそれぞれからN2ガスを処理室22内へ供給し、排気管90から排気する。N2ガスはパージガスとして作用し、処理室22内が不活性ガスでパージされ、処理室22内に残留するガスが処理室22内から除去される(パージ)。その後、処理室22内の雰囲気が不活性ガスに置換され、処理室22内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
(ボートアンロード及びウエハディスチャージ) ボートエレベータ106により蓋体100が下降されて、インレット18の下端が開口されるとともに、処理済の基板24がボート28に保持された状態でインレット18の下端から反応管16の外部に搬出(ボートアンロード)される。ボートアンロードの後、シャッタ開閉機構112によりシャッタ110が移動させられて、インレット18の下端開口がOリング20cを介してシャッタ110によりシールされる(シャッタクローズ)。そして、処理済みの基板24、すなわちバッチ処理後の基板24をボート28から取り出す(ウエハディスチャージ)。
(3)クリーニング工程 続いて、主に図7及び図8に基づき、処理室22内のクリーニングを行う。
SiO膜の形成工程に際して、反応管16及びインレット18の内壁やボート28等の部材の表面にも膜が堆積する。この堆積した膜(堆積膜)は、上述のバッチ処理を繰り返し行うことで累積し、徐々に厚くなる。この累積した堆積膜は、その後の処理において剥離して基板24に付着する等により、異物の要因となる。このため、以降の処理に備え、堆積膜の厚さが所定の厚さに達した時点で処理室22内から堆積膜を除去する。尚、本実施形態では、以下、この堆積膜の所定の厚さが、例えば3000nmである場合について説明する。
(ボートロード) 基板24が装填されていない状態のボート28(空のボート28)を、上述のボートロードと同様の手順により処理室22内に搬入する。
(圧力調整及び温度調整) 処理室22内が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ96によって真空排気される。この際、処理室22内の圧力が圧力センサ92で測定され、この測定された圧力情報に基づいてAPCバルブ94がフィードバック制御される(圧力調整)。真空ポンプ96は、少なくとも処理室22内のクリーニングが完了するまでの間は常時作動した状態を維持する。
図7に示すように処理室22内の温度を第1の温度としての所定温度(例えば、450℃)に安定させる。この際、処理室22内が所望の温度分布となるように温度センサ114が検出した温度情報に基づいてヒータ14への通電具合がフィードバック制御される(温度調整)。次に、処理室22内の温度が450℃から降温させる。ここで、処理室22内の温度を降温しているときは、上記のようにヒータ14への通電具合をフィードバック制御して温度調整してもよいし、ヒータ14への通電具合をフィードバック制御せずに通電具合を遮断(OFF)して温度調整しないようにしてもよい。ヒータ14への電力供給を遮断すると、速やかに温度降下することができる。なお、ヒータ14への通電具合をフィードバック制御して温度調整しつつ温度降下することも、ヒータ14への通電具合をフィードバックせずに通電具合を遮断して温度調整しないで温度降下することも、いずれであっても処理室22内の温度を制御することになる。そして、それぞれ後述する第2の温度、第3の温度、第4の温度に到達すると、また、上記のように温度調整される。
続いて、処理室22内の温度が第1の温度で安定した後、回転機構102によりボート28を回転させる。回転機構102によるボート28の回転は、少なくとも処理室22内のクリーニングが完了するまでの間は継続して行われる。なお、ボート28は、回転させなくてもよい。
(クリーニングガス供給) 次いで、第1の温度よりも低く室温よりも高い温度(第2の温度)として処理室22内の温度が温度センサ114により検出されると、クリーニングガスを処理室22内に供給する。クリーニングガス供給において、まずノズル40bから処理室22内の温度を例えば100℃(第2の温度)から第2の温度よりも低い温度(第3の温度)、例えば第75℃に降温しながらクリーニングガスを供給した後(断熱領域クリーニング)、ノズル40cから処理室内22内の温度を75℃から50℃(第4の温度)に降温しながらクリーニングガスを供給する(ウエハ保持領域クリーニング)。尚、断熱領域クリーニングとウエハ保持領域クリーニングのそれぞれの終了温度で所定期間保持してクリーニングして終了してもよい。また、第2の温度は、必ずしも100℃に限定されるわけではなく、第3の温度は、必ずしも75℃に限定されるわけではなく、第4の温度は、必ずしも50℃に限定されるわけではない。ここで、断熱領域クリーニングとウエハ保持領域クリーニングについて具体的に詳述する。
[断熱領域クリーニング] まず、バルブ66bを開き、クリーニングガス供給管62b内にHFガスを流す。HFガスはクリーニングガス供給管62bから流れ、MFC64bにより流量調整される。流量調整されたHFガスは、ノズル40bのガス供給孔48bから処理室22内に供給され、インレット18の内壁やシールキャップ100の上面や回転軸104の側面等に接触し、排気管90から排気される。具体的には、断熱領域を構成する部材(インレット18、断熱部材30、回転軸104)に堆積した堆積物とHFガスが反応することにより、堆積物が除去される。また、ノズル40bは、ガス供給孔48bからHFガスを直接断熱部材30に供給するように構成されている。特に、ノズル40bは、このような構成であるので、断熱部材30の間にHFガスを確実に供給することができるので、断熱部材30に堆積された堆積物が効率的に除去される。尚、ノズル40bから供給されたHFガスは断熱領域から処理室22内のあらゆる部材と接触された後、排気管90に排気されるので、ウエハ保持領域を構成する部材(ボート28等)に堆積した堆積物をクリーニングする場合もある。このとき、バルブ56c,56dを開き、ノズル40cから不活性ガスとしてのN2ガスを供給する。
なおこのとき、ノズル40a内へのHFガスの侵入を防止するため、バルブ56aを開き、不活性ガス供給管52a内にN2ガスを流すようにするのが好ましい。この場合、N2ガスは、ガス供給管42a、ノズル40aを介して処理室22内に供給され、排気管90から排気されることとなる。
この断熱領域クリーニングにおいて、ノズル40bからHFガスの供給し、処理室22内の温度が第3の温度としての75℃程度まで降温したらバルブ66b,56c,56dを閉じて、クリーニングガス供給管62bからのHFガスの供給及び不活性ガス供給管52c,52dからのN2ガスの供給を停止する。
[ウエハ保持領域クリーニング] 次いで、バルブ66aを開き、クリーニングガス供給管62a内にHFガスを流す。HFガスはクリーニングガス供給管62aから流れ、MFC64aにより流量調整される。流量調整されたHFガスは、ノズル40cのガス供給孔48cから処理室22内に供給され、反応管16及びインレット18の内壁やボート28の表面等に接触し、排気管90から排気される。具体的には、ウエハ保持領域を構成する部材(反応管16、インレット18、ボート28等)に堆積された堆積膜とノズル40cから供給されたHFガスを反応させて堆積膜が除去される。尚、ノズル40cのガス供給孔48cから供給されたHFガスは、処理室22内のあらゆる部材と接触された後、排気管90から排気されるので、断熱領域をクリーニングする場合がある。このとき、バルブ56bを開き、ノズル40bから不活性ガスとしてのN2ガスを供給する。
なおこのとき、ノズル40a内へのHFガスの侵入を防止するため、バルブ56aを開き、不活性ガス供給管52a内にN2ガスを流すようにするのが好ましい。この場合、N2ガスは、ガス供給管42a、ノズル40aを介して処理室22内に供給され、排気管90から排気されることとなる。
この基板保持領域クリーニングにおいて、ノズル40cからHFガスの供給し、処理室22内の温度が第4の温度としての50℃程度まで降温したら、バルブ66a,56bを閉じて、クリーニングガス供給管62aからのHFガスの供給及び不活性ガス供給管52bからのN2ガスの供給を停止する。
上述した断熱領域クリーニング及び基板保持領域クリーニングを含むクリーニングガス供給工程の間、APCバルブ94を調整して、処理室22内の圧力が制御される。処理室22内の圧力は、例えば、所定圧力(13kPa)で一定に制御してもよいし、例えば0.1kPa(第一の圧力)から26kPa(第二の圧力)程度の範囲内で変動させてもよい。好適には、処理室22内の圧力が、所定の高圧(例えば、10kPa)以上になる期間t2と所定の高圧未満になる期間t1とを繰り返し行い、かつ、処理室22内の圧力が所定の高圧未満になる期間t1が所定の高圧以上になる期間t2よりも長くなるように変動させるのが好ましい。図8に示すように、例えば10kPa未満になる期間t1を293秒程度とし、10kPa以上になる期間t2を132秒程度とする。これにより、処理室22内でのHFガスの滞在時間が増えて、エッチングレート(1サイクルあたりに除去される堆積膜厚)が向上しクリーニング時間が短縮する。また、期間t1を長くすることで、HFガスの流速が遅くなり、HFガスの使用効率が向上される。ここで、1サイクルは、期間t1+期間t2で算出される時間である。つまり、1サイクルは、293秒+132秒=425秒である。
MFC64a,64bで制御するHFガスの供給流量はそれぞれ、例えば2.0slmとし、MFC54a,54b,54c,54dでそれぞれ制御するN2ガスの供給流量は、例えば合計で3.0slmとする。すなわち、窒素ガスに対して40%のHFガスを処理室22内に供給するよう供給流量を制御するのが好ましい。これにより、処理室22内のHF濃度が高くなり、後述する比較例と比較してエッチングレートが大幅に向上される。この場合、エッチングレートが、後述する図13に示すように1900Å/サイクル程度となり、1サイクルの時間は後述する比較例よりも長くなるが、堆積膜を除去するのに必要なサイクル数が大幅低減される。結果として、クリーニングに要する時間が短縮されるため、装置のダウンタイムが短縮される。
更に、図1に示すように、基板保持領域よりも断熱領域のほうが処理室22内の雰囲気を排出する排気管90に近く構成されているので、断熱領域クリーニングの後に基板保持領域クリーニングがわれるので、効率よく処理室22内をクリーニングすることができる。なお、クリーニングガスとしては、HFガスを単独で用いる他、HFガスを、N2ガス、Arガス、Heガス等の不活性ガスで希釈したガスや、HFガスとフッ素(F2)ガスとの混合ガスや、HFガスとフッ化塩素(ClF3)ガスとの混合ガス等を用いるようにしてもよい。
(パージ及び大気圧復帰) 処理室22内の温度が第4の温度としての50℃、又は、50℃で予め定められた時間、HFガスを供給して堆積膜を除去した後、バルブ56a,56b,56c,56dを開き、不活性ガス供給管52a,52b,52c,52dのそれぞれから不活性ガスとしてのN2ガスを処理室22内へ供給し、排気管90から排気する。N2ガスはパージガスとして作用し、処理室22内が不活性ガスでパージされ、処理室22内に残留するガスが処理室22内から除去される(パージ)。その後、処理室22内の雰囲気が不活性ガスに置換され、処理室22内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
(ボートアンロード) 上述したボートアンロードと同様の手順により、ボート28を反応管16の外部に搬出する。そして、シャッタ110によりインレット18の下端開口をシールする。尚、シール後、若しくは、ボートアンロード終了後、所定の待機温度(例えば、450℃)まで処理室22内の温度を上昇するようにしてもよい。
<実験結果1> 図9は、ボート28の断熱領域と基板保持領域にテスト用部材を配置して、上述した本実施形態に係るクリーニング工程を行った際のエッチングレートを示した図である。グラフの縦軸は、エッチングレートを示しており、横軸は、処理室22内のテスト用部材のボート28の下端からの位置を示している。□は、断熱領域クリーニング結果を示し、●は、基板保持領域クリーニング結果を示している。図9では、断熱領域クリーニング結果と基板保持領域クリーニング結果を重ねて表示している。
図9に示すように、断熱領域クリーニング結果によれば、断熱領域に配置されたテスト用部材のエッチングレートは175Å/cycle程度であり、ウエハ保持領域に近づくにつれて0に近づき、基板保持領域に配置されたテスト用部材ではほぼ0に近いことが分かった。また、基板保持領域クリーニング結果によれば、断熱領域に配置されたテスト用部材のエッチングレートが10Å/cycle程度まで低下するが、ウエハ保持領域とボート28の最下端部に配置されたテスト用部材においては175Å/cycle程度、ボート28の最上端部に配置されたテスト用部材においては100Å/cycle程度であった。
ノズル40bは、断熱領域にガスを供給するようになっている。このため、図10Aに示すように、処理室22内の断熱部材30を収容する部分である断熱領域の反応管16の内壁面及びインレット18の内壁面等に対してガスを供給し易い。したがって、ノズル40bからのガス供給によれば、基板保持領域側と比較して、断熱領域側の反応管16等がクリーニングされ易い。一方、ノズル40cは、基板24上に形成されたSi含有層を改質する反応ガスを供給することに用いられることから、処理室22内に収容された基板24の近傍に向けてガスを供給するようになっている。このため、ノズル40cは、図10Bに示すように、処理室22内の基板24を収容する部分である基板保持領域の反応管16の内壁面等に対してガスを供給し易い。したがって、ノズル40cからのガス供給によれば、断熱領域側と比較して、基板保持領域側の反応管16等がクリーニングされ易い。
図11は、本実施の形態における処理室22内の温度と冷却時間との関係を示す図である。処理室22内の温度が450℃から100℃まで急激に降下し、100℃に到達するのに約1.2時間程度である。但し、100℃以下になると温度降下が緩やかになり、時間が所定温度に降下するまで時間がかかることが分かる。例えば、処理室22内の温度が450℃から70℃前後に降温するのに約1.5時間、450℃から50℃前後に降温するのに約3.0時間、450℃から30℃前後に降温するのに約6.0時間かかることが分かっている。このように、処理室22内の温度が室温に近づくにつれて温度低下に要する時間が長くなることが分かっている。
すなわち、本実施の形態におけるクリーニング工程では、処理室22内の温度を変動させながらクリーニングを行うので、クリーニングに要する時間を短縮することができる。本実施の形態では、まず、クリーニング可能な温度帯がある程度高いことが分かっている断熱領域にノズル40bからクリーニングガスを供給して、100℃から75℃に降温しながらクリーニングを行った後に、基板保持領域にノズル40cからクリーニングガスを供給して、75℃から50℃に降温しながらクリーニングを行うことにより、断熱領域と基板保持領域とでクリーニングを行う温度帯を分けることでクリーニング時間を短縮しつつ、断熱領域及び基板保持領域に付着した反応副生成物等の堆積膜を除去でき、クリーニング領域によるエッチングのばらつきが解消される。
<比較例> 次に、本実施形態の比較例に係るクリーニング工程について説明する。
図12Aに示すように、比較例では、450℃から75℃まで処理室22内の温度を降温した後、処理室22内の温度を75℃で一定に保持した状態で断熱領域クリーニング、基板保持領域クリーニング、パージ、大気圧復帰、ボートアンロード等一連の動作を行う。また、比較例では、窒素ガスに対して20%のHFガスを用いた。HFガスの供給流量は、例えば2.0slmであり、N2ガスの供給流量は、例えば8.0slmであった。
比較例のクリーニングガス供給工程においては、APCバルブ94を調整して、図12Bに示すように、処理室22内の圧力が10kPa以上になる期間と10kPa未満になる期間とを繰り返し行い、かつ、処理室22内の圧力が10kPa未満になる期間t1よりも10kPa以上になる期間t2が長くなるように変動させる。ここで、例えば10kPa未満になる期間t1を135秒程度とし、10kPa以上になる期間t2を140秒程度とする。10kPa以上となる期間t2を10k未満になる期間t1より長くすることにより、エッチングレートの向上が図れるが、10kPa以上となる期間t2を長くすると連続フローとなってしまい、局所的にエッチングレートは増加するが全体としてはクリーニングに要する時間が長くなり、全体としてはクリーニング性能が低下してしまう。すなわち、比較例によれば、クリーニングに要する時間が本実施形態よりも長くなってしまうことが分かる。
<実験結果2> 図13A、図13Bは、ボート28の断熱領域と基板保持領域にテスト用部材を配置して、上述した本実施形態(本実施例)に係るクリーニング工程と、上述した比較例に係るクリーニング工程を行った際の図13Aはノズル40b(断熱領域クリーニング)によるエッチングレートを示した図であって、図13Bはノズル40c(基板保持領域クリーニング)によるエッチングレートを示した図である。グラフの縦軸は、エッチングレートを示しており、横軸は、処理室22内のテスト用部材のボート28の下端からの位置を示している。□は、本実施例によるクリーニング結果を示し、●は、比較例によるクリーニング結果を示している。
本実施形態に係るクリーニング工程によれば、図13Aに示すように、ノズル40bによるエッチングレートの平均は約1900Å/cycleであって、図13Bに示すように、ノズル40cによるエッチングレートの平均は約3100Å/cycleであった。一方、比較例に係るクリーニング工程では、ノズル40bによるエッチングレートの平均は約10Å/cycleであって、ノズル40cによるエッチングレートの平均は約5Å/cycleであった。本実施形態に係るクリーニング工程によれば、比較例と比較するとノズル40bによるエッチングレートが約190倍、ノズル40cによるエッチングレートが約620倍向上した。
また、図7及び図8に示す本実施形態に係るクリーニング工程においては、断熱領域クリーニングに要する時間(1サイクル時間×サイクル数)は、3時間程度、ウエハ保持領域クリーニング時間は、2時間程度を要し、ボートロードからボートアンロードまでの工程に10時間弱程度の時間を要した。一方、図12に示す比較例に係るクリーニング工程においては、断熱領域クリーニングに要する時間(1サイクル時間×サイクル数)は、7時間程度、ウエハ保持領域クリーニング時間は、10.5時間程度を要し、ボートロードからボートアンロードまでの工程に24時間弱程度の時間を要した。すなわち、本実施形態によれば、比較例と比較してクリーニングに要する時間が大幅に短縮され、スループットが大幅に向上されることが分かった。
例えばSiO膜等のHFガスを用いたクリーニングにおいては、100℃以下の低温であればあるほどエッチングレートが向上するため30℃前後で行うのが好ましいが、処理温度(若しくは、待機温度)から降温するのに時間がかかり、図11に示すように、例えば450℃から30℃まで降温させるだけで6時間もかかってしまう。つまり、HFガスを用いたクリーニングに適切な温度と処理室22内の冷却時間(または降温時間)は、トレードオフの状態であるといえる。
そこで、本実施形態のように降温中にまず100℃~75℃の温度帯で、断熱領域をノズル40bにクリーニングガスを供給することでクリーニングし、続いて75℃~50℃の温度帯でウエハ保持領域をノズル40cにクリーニングガスを供給することでクリーニングすることにより、降温時間が短縮され、比較例で示したように一定の温度でクリーニングガスを供給する場合と比較して、断熱領域及び基板保持領域の反応副生成物等の緻密な除去を可能にし、処理室22内のクリーニングに要する時間が短縮され、スループットを向上させることができる。
更に、本実施形態において、第2の温度は、断熱領域クリーニングを開始する温度又は終了する温度と同じでなくてもよく、第3の温度は、基板保持領域クリーニングを開始する温度又は終了する温度と同じでなくてもよい。
本実施形態において、以下(1)乃至(8)記載の効果のうち、少なくとも一つの効果の効果を奏する。
(1)本実施の形態におけるクリーニング工程では、処理室22内の温度が100℃以下の範囲で行われるので、温度を変動させながらクリーニングを行うことにより、クリーニングに要する時間を短縮することができる。
(2)本実施の形態におけるクリーニング工程では、温度帯によりクリーニングする領域を変更させながらクリーニングを行うことにより、クリーニング領域によるエッチングレートのばらつきを解消しつつ、クリーニングに要する時間を短縮することができる。
(3)本実施の形態におけるクリーニング工程では、HFガスの供給流量を一定にし、窒素ガスを減少させてクリーニングガスを供給することで、クリーニングガスの流速が遅くなり、処理室内でのHFガスの滞在時間が増え、且つ、処理室内のクリーニングガス濃度が高くなるので、エッチングレートが向上する。
(4)本実施の形態におけるクリーニング工程では、処理室内に供給する全ガス流量を減少させることで、クリーニングガスを供給する時間が長くなるため、クリーニングガスの使用効率が向上される。エッチングレートが向上するので、サイクル数を減らすことができ、クリーニングによる時間を短縮できる。
(5)本実施の形態におけるクリーニング工程では、HFガスを用いたクリーニングに適切な温度と処理室内の冷却時間の関係(トレードオフの関係)を考慮しつつ、処理室内のクリーニング領域によるエッチングレートのばらつきを解消しつつ、クリーニングに要する時間を短縮することができる。
(6)本実施の形態におけるクリーニング工程では、クリーニング条件を調整することで(例えば、クリーニングガス濃度を高くすることで)、クリーニング可能な温度帯を広げることができる。よって、処理室内の温度が従来よりも高い温度でクリーニング時間を開始することができるので、クリーニングに要する時間が短縮できる。
(7)本実施の形態におけるクリーニング工程では、クリーニング条件を調整することで(例えば、クリーニングガス濃度を高くすることで)、処理室内のクリーニング領域によるエッチングレートのバラツキを解消することができる。
(8)本実施の形態におけるクリーニング工程では、クリーニング条件を調整することで(例えば、クリーニングガス濃度を高くすることで)、処理室内のクリーニング領域に応じて、クリーニングする温度帯を個別に設定することができる。よって、処理室内のクリーニング領域によるエッチングのバラツキを解消することができる。
<変形例> 次に、本実施形態に係るクリーニング工程の変形例を図14に基づいて説明する。本変形例において、上述した実施形態と異なる部分のみ以下に説明し、同じ部分は説明を省略する。
本変形例では、上述したクリーニング工程において、処理室22内の温度を450℃から50℃まで一旦降温し、その後、ノズル40cから処理室22内の温度を75℃まで昇温しながらクリーニングガスを供給し(基板保持領域クリーニング)、ノズル40bから処理室内22内の温度を100℃まで昇温しながらクリーニングガスを供給し(断熱領域クリーニング)、待機温度としての100℃でパージ、大気圧復帰、ボートアンロードを行う。
本変形例によっても、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
上記実施形態では、薄膜として、SiO膜を形成する例を挙げ、半導体元素であるシリコンを含むシリコン系薄膜を形成する例について説明したが、本発明は係る場合に限定されない。本発明は、薄膜として、例えばチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)等の金属元素を含む金属系薄膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。
このように、本発明は、Si系薄膜を形成する場合だけでなく、金属系薄膜を形成する場合にも適用することができ、この場合であっても、上述の実施形態と同様な作用効果が得られる。すなわち、本発明は、半導体元素や金属元素等の所定元素を含む薄膜を形成する場合に、好適に適用することができる。
また、上記実施形態では、クリーニング工程において、ボートロードした後に処理室22内へクリーニングガスを供給する場合(処理室22内にボート28が収容されている状態で処理室22内をクリーニングする場合)について説明したが、これに限らず、ボート28のクリーニングが不要な場合は、ボートロードを省略して(処理室22内にボート28が収容されていない状態で)処理室22内へクリーニングガスを供給するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、クリーニング工程において、ノズル40bとノズル40cのいずれか一方から順番にクリーニングガスを供給する構成について説明したが、これに限らず、ノズル40bとノズル40cから同時にクリーニングガスを供給するようにしてもよい。更にまた、クリーニングガス供給管62aは、ガス供給管42cに接続されている形態に限定されず、ガス供給管42aに接続されてもよく、また、ガス供給管42aとガス供給管42cの両方に接続されてもよい。
本発明は、例えば、所定の基板処理装置のプロセスレシピやクリーニングレシピを変更することでも実現できる。プロセスレシピやクリーニングレシピを変更する場合は、本発明に係るプロセスレシピやクリーニングレシピを電気通信回線や当該プロセスレシピやクリーニングレシピを記録した記録媒体を介して所定の基板処理装置にインストールしたり、所定の基板処理装置の入出力装置を操作してそのプロセスレシピやクリーニングレシピ自体を本発明に係るプロセスレシピやクリーニングレシピに変更したりする。
本発明は半導体製造装置に限らず、LCD装置のようなガラス基板を処理する装置にも適用できる。また、本実施形態では、基板に膜を堆積させた後にクリーニング処理を行う構成について説明したが、本発明はこのような態様に限定されない。例えば、酸化処理、拡散処理、アニール処理等の処理を行う場合にも、好適に適用可能である。
尚、この出願は、2016年6月10日に出願された日本出願特願2016-116528を基礎として優先権の利益を主張するものであり、その開示の全てを引用によってここに取り込む。