WO2017146265A1 - 車両用空気調和装置 - Google Patents
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Abstract
放熱器への冷媒の寝込みによる冷媒やオイル不足状態での運転を円滑に回避し、空調性能の低下や圧縮機の破損を未然に防止する。 圧縮機(2)から吐出された冷媒を放熱器(4)に流す第1の運転モードと、室外膨張弁(6)を全閉とし、バイパス装置(45)により放熱器及び室外膨張弁をバイパスして冷媒を室外熱交換器(7)に直接流入させる第2の運転モードを実行する。コントローラは、放熱器に溜まっている冷媒が多いか否か判定し、多いと判定された場合、第1の運転モードから圧縮機を起動することにより、放熱器の冷媒掃気運転を実行した後、第2の運転モードに切り換える。
Description
本発明は、車両の車室内を空調するヒートポンプ方式の空気調和装置、特にハイブリッド自動車や電気自動車に適用可能な空気調和装置に関するものである。
近年の環境問題の顕在化から、ハイブリッド自動車や電気自動車が普及するに至っている。そして、このような車両に適用することができる空気調和装置として、冷媒を圧縮して吐出する圧縮器と、車室内側に設けられて冷媒を放熱させる内部凝縮機と、車室内側に設けられて冷媒を吸熱させる蒸発器と、車室外側に設けられて冷媒を放熱又は吸熱させる外部凝縮機と、この外部凝縮機に流入する冷媒を膨張させる第1膨張バルブと、蒸発器に流入する冷媒を膨張させる第2膨張バルブと、内部凝縮機及び第1膨張バルブをバイパスする配管と、圧縮器から吐出された冷媒を内部凝縮機に流すか、この内部凝縮機と第1膨張バルブをバイパスして前記配管から外部凝縮機に直接流すかを切り換える第1バルブを備え、圧縮器から吐出された冷媒を第1バルブにより内部凝縮機に流して放熱させ、この放熱した冷媒を第1膨張バルブで減圧した後、外部凝縮機において吸熱させる暖房モードと、圧縮器から吐出された冷媒を第1バルブにより内部凝縮機において放熱させ、放熱した冷媒を第2膨張バルブで減圧した後、蒸発器において吸熱させる除湿モードと、圧縮器から吐出された冷媒を第1バルブにより内部凝縮機及び第1膨張バルブをバイパスして外部凝縮機に流して放熱させ、第2膨張バルブで減圧した後、蒸発器において吸熱させる冷房モードを切り換えて実行するものが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
上記のように、特許文献1では冷房モードにおいて内部凝縮機(本願での放熱器)には冷媒を流さない状況となる。しかしながら、除湿モードなどから冷房モードに切り換えた時点(第1バルブが切り換わる)で内部凝縮機に残留している冷媒は、当該内部凝縮機内に寝込んだ状態となる。
また、第1バルブを切り換えて内部凝縮機に冷媒を流さない状態とした後、当該内部凝縮機の温度が低下すると、内部に溜まった冷媒は凝縮するため、内部凝縮機内の圧力は低下する。そのため、第1膨張バルブを全閉としても、圧縮器の吐出側と内部凝縮機内の圧力差から、第1膨張バルブにはどうしても漏れが発生する。この漏れにより、冷房モードでの運転中に第1膨張バルブを通って内部凝縮機内に冷媒が逆流入するため、内部凝縮機内に寝込む冷媒の量が増大していく状況が発生する。
このように内部凝縮機内に冷媒が溜まって寝込み、その量が多くなると、冷媒回路内の冷媒循環量が減少してしまうため、空調性能が低下して来る。また、冷媒には潤滑用のオイルも含まれているため、圧縮器(本願での圧縮機)に戻るオイル量が不足して焼き付きが発生し、最悪の場合には破損を来す問題もある。
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、放熱器への冷媒の寝込みによる冷媒やオイル不足状態での運転を円滑に回避し、空調性能の低下や圧縮機の破損を未然に防止することができる車両用空気調和装置を提供することを目的とする。
また、第1バルブを切り換えて内部凝縮機に冷媒を流さない状態とした後、当該内部凝縮機の温度が低下すると、内部に溜まった冷媒は凝縮するため、内部凝縮機内の圧力は低下する。そのため、第1膨張バルブを全閉としても、圧縮器の吐出側と内部凝縮機内の圧力差から、第1膨張バルブにはどうしても漏れが発生する。この漏れにより、冷房モードでの運転中に第1膨張バルブを通って内部凝縮機内に冷媒が逆流入するため、内部凝縮機内に寝込む冷媒の量が増大していく状況が発生する。
このように内部凝縮機内に冷媒が溜まって寝込み、その量が多くなると、冷媒回路内の冷媒循環量が減少してしまうため、空調性能が低下して来る。また、冷媒には潤滑用のオイルも含まれているため、圧縮器(本願での圧縮機)に戻るオイル量が不足して焼き付きが発生し、最悪の場合には破損を来す問題もある。
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、放熱器への冷媒の寝込みによる冷媒やオイル不足状態での運転を円滑に回避し、空調性能の低下や圧縮機の破損を未然に防止することができる車両用空気調和装置を提供することを目的とする。
本発明の車両用空気調和装置は、冷媒を圧縮する圧縮機と、車室内に供給する空気が流通する空気流通路と、冷媒を放熱させて空気流通路から車室内に供給する空気を加熱するための放熱器と、冷媒を吸熱させて空気流通路から車室内に供給する空気を冷却するための吸熱器と、車室外に設けられた室外熱交換器と、放熱器を出て室外熱交換器に流入する冷媒を減圧するための室外膨張弁と、放熱器及び室外膨張弁をバイパスして圧縮機から吐出された冷媒を室外熱交換器に流すためのバイパス装置と、制御装置を備え、この制御装置により、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器に流す第1の運転モードと、室外膨張弁を全閉とし、バイパス装置により放熱器及び室外膨張弁をバイパスして圧縮機から吐出された冷媒を室外熱交換器に直接流入させる第2の運転モードを切り換えて実行するものであって、制御装置は、放熱器に溜まっている冷媒が多いか否か判定し、多いと判定された場合、又は、多いか否か不明な場合には、第1の運転モードから圧縮機を起動すること、若しくは、第2の運転モードから第1の運転モードに切り換えることにより、放熱器の冷媒掃気運転を実行した後、第2の運転モードに切り換えることを特徴とする。
請求項2の発明の車両用空気調和装置は、上記発明において制御装置は、圧縮機を起動する際、外気温度、車室内の温度、又は、放熱器の温度が、圧縮機を停止したときのそれらの値に近いか、それらの値より低いこと、車室内の温度が外気温度に近いか、それより低いこと、及び、放熱器の温度が室外熱交換器の温度に近いか、それより低いこと、のうちの何れか、又は、それらの組み合わせ、若しくは、それらの全てが成立している場合、放熱器に溜まっている冷媒が多いと判定することを特徴とする。
請求項3の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明において制御装置は、第2の運転モードを実行している際、圧縮機の吐出冷媒圧力である吐出圧力Pdと放熱器の冷媒圧力である放熱器圧力PCIとの差に基づいて放熱器への冷媒の漏れ量を推定し、当該漏れ量から放熱器に溜まっている冷媒の量を算出して、当該冷媒の量が所定値以上となった場合、放熱器に溜まっている冷媒が多いと判定することを特徴とする。
請求項4の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明において制御装置は、放熱器の冷媒掃気運転を所定時間実行すると共に、圧縮機の回転数が高い場合は短く、低い場合は長くする方向で前記所定時間を変更することを特徴とする。
請求項5の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明において空気流通路から車室内に供給する空気を加熱するための補助加熱装置を備え、制御装置は、第1の運転モードとして、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器に流して放熱させ、放熱した当該冷媒を室外膨張弁で減圧した後、室外熱交換器にて吸熱させる暖房モードと、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器から室外熱交換器に流して当該放熱器及び室外熱交換器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、吸熱器にて吸熱させる除湿冷房モードと、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器から室外熱交換器に流して当該室外熱交換器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、吸熱器にて吸熱させる冷房モードのうちの何れか、又は、それらの組み合わせ、若しくは、それらの全てを有すると共に、第2の運転モードとして、圧縮機から吐出された冷媒をバイパス装置により室外熱交換器に流して放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、吸熱器にて吸熱させ、且つ、補助加熱装置を発熱させる除湿暖房モードと、圧縮機から吐出された冷媒をバイパス装置により室外熱交換器に流して放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、吸熱器にて吸熱させる最大冷房モードのうちの何れか、又は、双方を有することを特徴とする。
請求項6の発明の車両用空気調和装置は、上記発明において制御装置は、除湿暖房モードで圧縮機を起動する際、又は、除湿暖房モードでの運転中、放熱器に溜まっている冷媒が多いと判定された場合、又は、多いか否か不明な場合、外気温度が所定値より低く、且つ、吸熱器の温度である吸熱器温度Teから所定値差し引いた値が吸熱器温度Teの目標値である目標吸熱器温度TEOより低く、且つ、放熱器の温度の目標値である目標放熱器温度TCOが所定値より高い条件が成立するときは、暖房モードで圧縮機を起動し、又は、暖房モードに切り換えることで冷媒掃気運転を実行した後、除湿暖房モードに切り換えると共に、前記条件が成立しないときは、除湿冷房モード、若しくは、冷房モードで圧縮機を起動し、又は、除湿冷房モード、若しくは、冷房モードに切り換えることで冷媒掃気運転を実行した後、除湿暖房モードに切り換えることを特徴とする。
請求項7の発明の車両用空気調和装置は、上記発明において制御装置は、暖房モードを実行する際、放熱器における冷媒の過冷却度SCが所定値以下となるように室外膨張弁の弁開度を制御し、若しくは、当該弁開度を固定することを特徴とする。
請求項8の発明の車両用空気調和装置は、請求項5乃至請求項7の発明において制御装置は、最大冷房モードで圧縮機を起動する際、又は、最大冷房モードでの運転中、放熱器に溜まっている冷媒が多いと判定された場合、又は、多いか否か不明な場合、冷房モードで圧縮機を起動し、又は、冷房モードに切り換えることで冷媒掃気運転を実行した後、最大冷房モードに切り換えることを特徴とする。
請求項2の発明の車両用空気調和装置は、上記発明において制御装置は、圧縮機を起動する際、外気温度、車室内の温度、又は、放熱器の温度が、圧縮機を停止したときのそれらの値に近いか、それらの値より低いこと、車室内の温度が外気温度に近いか、それより低いこと、及び、放熱器の温度が室外熱交換器の温度に近いか、それより低いこと、のうちの何れか、又は、それらの組み合わせ、若しくは、それらの全てが成立している場合、放熱器に溜まっている冷媒が多いと判定することを特徴とする。
請求項3の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明において制御装置は、第2の運転モードを実行している際、圧縮機の吐出冷媒圧力である吐出圧力Pdと放熱器の冷媒圧力である放熱器圧力PCIとの差に基づいて放熱器への冷媒の漏れ量を推定し、当該漏れ量から放熱器に溜まっている冷媒の量を算出して、当該冷媒の量が所定値以上となった場合、放熱器に溜まっている冷媒が多いと判定することを特徴とする。
請求項4の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明において制御装置は、放熱器の冷媒掃気運転を所定時間実行すると共に、圧縮機の回転数が高い場合は短く、低い場合は長くする方向で前記所定時間を変更することを特徴とする。
請求項5の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明において空気流通路から車室内に供給する空気を加熱するための補助加熱装置を備え、制御装置は、第1の運転モードとして、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器に流して放熱させ、放熱した当該冷媒を室外膨張弁で減圧した後、室外熱交換器にて吸熱させる暖房モードと、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器から室外熱交換器に流して当該放熱器及び室外熱交換器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、吸熱器にて吸熱させる除湿冷房モードと、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器から室外熱交換器に流して当該室外熱交換器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、吸熱器にて吸熱させる冷房モードのうちの何れか、又は、それらの組み合わせ、若しくは、それらの全てを有すると共に、第2の運転モードとして、圧縮機から吐出された冷媒をバイパス装置により室外熱交換器に流して放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、吸熱器にて吸熱させ、且つ、補助加熱装置を発熱させる除湿暖房モードと、圧縮機から吐出された冷媒をバイパス装置により室外熱交換器に流して放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、吸熱器にて吸熱させる最大冷房モードのうちの何れか、又は、双方を有することを特徴とする。
請求項6の発明の車両用空気調和装置は、上記発明において制御装置は、除湿暖房モードで圧縮機を起動する際、又は、除湿暖房モードでの運転中、放熱器に溜まっている冷媒が多いと判定された場合、又は、多いか否か不明な場合、外気温度が所定値より低く、且つ、吸熱器の温度である吸熱器温度Teから所定値差し引いた値が吸熱器温度Teの目標値である目標吸熱器温度TEOより低く、且つ、放熱器の温度の目標値である目標放熱器温度TCOが所定値より高い条件が成立するときは、暖房モードで圧縮機を起動し、又は、暖房モードに切り換えることで冷媒掃気運転を実行した後、除湿暖房モードに切り換えると共に、前記条件が成立しないときは、除湿冷房モード、若しくは、冷房モードで圧縮機を起動し、又は、除湿冷房モード、若しくは、冷房モードに切り換えることで冷媒掃気運転を実行した後、除湿暖房モードに切り換えることを特徴とする。
請求項7の発明の車両用空気調和装置は、上記発明において制御装置は、暖房モードを実行する際、放熱器における冷媒の過冷却度SCが所定値以下となるように室外膨張弁の弁開度を制御し、若しくは、当該弁開度を固定することを特徴とする。
請求項8の発明の車両用空気調和装置は、請求項5乃至請求項7の発明において制御装置は、最大冷房モードで圧縮機を起動する際、又は、最大冷房モードでの運転中、放熱器に溜まっている冷媒が多いと判定された場合、又は、多いか否か不明な場合、冷房モードで圧縮機を起動し、又は、冷房モードに切り換えることで冷媒掃気運転を実行した後、最大冷房モードに切り換えることを特徴とする。
本発明によれば、冷媒を圧縮する圧縮機と、車室内に供給する空気が流通する空気流通路と、冷媒を放熱させて空気流通路から車室内に供給する空気を加熱するための放熱器と、冷媒を吸熱させて空気流通路から車室内に供給する空気を冷却するための吸熱器と、車室外に設けられた室外熱交換器と、放熱器を出て室外熱交換器に流入する冷媒を減圧するための室外膨張弁と、放熱器及び室外膨張弁をバイパスして圧縮機から吐出された冷媒を室外熱交換器に流すためのバイパス装置と、制御装置を備え、この制御装置により、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器に流す第1の運転モードと、室外膨張弁を全閉とし、バイパス装置により放熱器及び室外膨張弁をバイパスして圧縮機から吐出された冷媒を室外熱交換器に直接流入させる第2の運転モードを切り換えて実行する車両用空気調和装置において、制御装置が、放熱器に溜まっている冷媒が多いか否か判定し、多いと判定された場合、又は、多いか否か不明な場合には、第1の運転モードから圧縮機を起動すること、若しくは、第2の運転モードから第1の運転モードに切り換えることにより、放熱器の冷媒掃気運転を実行した後、第2の運転モードに切り換えるようにしたので、放熱器に冷媒を流さない第2の運転モードで起動するときに放熱器に溜まって寝込んでいる冷媒、若しくは、第2の運転モードでの運転中に放熱器に溜まって寝込んだ冷媒を、第1の運転モードで放熱器から追い出すことができるようになる。
これにより、放熱器に多量の冷媒が寝込んで冷媒循環量が減少し、空調性能が低下してしまう不都合を未然に回避することができるようになる。また、オイル不足状態での運転も回避することができるようになるので、圧縮機に破損が生じる不都合も未然に防止し、円滑且つ快適な空調運転を実現することができるようになる。
ここで、圧縮機を起動する際、外気温度や車室内の温度、又は、放熱器の温度が前回圧縮機を停止したときのそれらの値より高いがそれらに近いかそれらより低い場合は、他の部分よりも放熱器の温度が低くなっていて、冷媒が寝込み易い状況となっていると考えられる。また、車室内の温度が外気温度より高いがそれに近い値か、それより低い場合も同様に他の部分よりも放熱器の温度が低くなっていて、冷媒が寝込み易い状況となっていると考えられる。また、放熱器の温度が室外熱交換器の温度より高いがそれに近い値か、それより低い場合も同様に他の部分よりも放熱器の温度が低くなっていて、冷媒が寝込み易い状況となっていると考えられる。
そこで、請求項2の発明の如く制御装置が、圧縮機を起動する際、外気温度、車室内の温度、又は、放熱器の温度から所定値差し引いた値が、前回圧縮機を停止したときの外気温度、車室内の温度、又は、放熱器の温度より低いこと、車室内の温度から所定値差し引いた値が外気温度より低いこと、及び、放熱器の温度から所定値差し引いた値が室外熱交換器の温度より低いこと、のうちの何れか、又は、それらの組み合わせ、若しくは、それらの全てが成立している場合、放熱器に溜まっている冷媒が多いと判定することで、圧縮機の起動時に放熱器に多量の冷媒が溜まって寝込んでいることを的確に予測し、放熱器の冷媒掃気運転を実行することができるようになる。
また、第2の運転モードを実行している間に全閉となっている室外膨張弁から放熱器に漏れる冷媒の量は、圧縮機の吐出冷媒圧力である吐出圧力Pdと放熱器の冷媒圧力である放熱器圧力PCIとの差が大きい程多くなる。
そこで、請求項3の発明の如く制御装置が、第2の運転モードを実行している際、圧縮機の吐出圧力Pdと放熱器圧力PCIとの差に基づいて放熱器への冷媒の漏れ量を推定し、当該漏れ量から放熱器に溜まっている冷媒の量を算出して、当該冷媒の量が所定値以上となった場合、放熱器に溜まっている冷媒が多いと判定することで、運転中に室外膨張弁から漏れて放熱器に逆流入して寝込む冷媒の量を的確に推定し、放熱器の冷媒掃気運転を実行することができるようになる。
また、請求項4の発明の如く制御装置が、放熱器の冷媒掃気運転を所定時間実行するようにし、更に、圧縮機の回転数が高い場合はこの所定時間を短く、低い場合は長くする方向で変更することで、放熱器に寝込んでいる冷媒を確実に追い出しながら、放熱器の冷媒掃気運転を最小限の時間で終わらせることが可能となる。
また、請求項5の発明の如く空気流通路から車室内に供給する空気を加熱するための補助加熱装置を設け、制御装置により、第1の運転モードとして、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器に流して放熱させ、放熱した当該冷媒を室外膨張弁で減圧した後、室外熱交換器にて吸熱させる暖房モードと、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器から室外熱交換器に流して当該放熱器及び室外熱交換器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、吸熱器にて吸熱させる除湿冷房モードと、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器から室外熱交換器に流して当該室外熱交換器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、吸熱器にて吸熱させる冷房モードのうちの何れか、又は、それらの組み合わせ、若しくは、それらの全てを実行し、第2の運転モードとして、圧縮機から吐出された冷媒をバイパス装置により室外熱交換器に流して放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、吸熱器にて吸熱させ、且つ、補助加熱装置を発熱させる除湿暖房モードと、圧縮機から吐出された冷媒をバイパス装置により室外熱交換器に流して放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、吸熱器にて吸熱させる最大冷房モードのうちの何れか、又は、双方を実行するようにすれば、放熱器に冷媒を流して行う暖房モードと、放熱器に冷媒を流さずに行う除湿暖房モードと、放熱器に冷媒を流して行う除湿冷房モード及び冷房モードと、放熱器に冷媒を流さずに行う最大冷房モードなどを切り換えて快適な車室内空調を実現することが可能となる。
このとき、請求項6の発明の如く制御装置が、除湿暖房モードで圧縮機を起動する際、又は、除湿暖房モードでの運転中、放熱器に溜まっている冷媒が多いと判定された場合、又は、多いか否か不明な場合、外気温度が所定値より低く、且つ、吸熱器の温度である吸熱器温度Teから所定値差し引いた値が吸熱器温度Teの目標値である目標吸熱器温度TEOより低く、且つ、放熱器の温度の目標値である目標放熱器温度TCOが所定値より高い条件が成立するときは、暖房モードで圧縮機を起動し、又は、暖房モードに切り換えることで冷媒掃気運転を実行した後、除湿暖房モードに切り換えると共に、前記条件が成立しないときは、除湿冷房モード、若しくは、冷房モードで圧縮機を起動し、又は、除湿冷房モード、若しくは、冷房モードに切り換えることで冷媒掃気運転を実行した後、除湿暖房モードに切り換えるようにすることで、圧縮機の起動時に除湿暖房モードが選択されているときや、除湿暖房モードでの運転中における冷媒掃気運転による車室内の快適性の悪化を最小限に抑えることができるようになる。
この場合において請求項7の発明の如く制御装置が、暖房モードを実行する際、放熱器における冷媒の過冷却度SCが所定値以下となるように室外膨張弁の弁開度を制御し、若しくは、当該弁開度を固定することで、圧縮機の起動時に除湿暖房モードの前に実行される暖房モードや除湿暖房モードでの運転中に実行される暖房モードで車室内に吹き出される空気の温度が必要以上に高くなる不都合を回避することができるようになる。
一方、請求項8の発明の如く制御装置が、最大冷房モードで圧縮機を起動する際、又は、最大冷房モードでの運転中、放熱器に溜まっている冷媒が多いと判定された場合、又は、多いか否か不明な場合、冷房モードで圧縮機を起動し、又は、冷房モードに切り換えることで冷媒掃気運転を実行した後、最大冷房モードに切り換えるようにすることで、圧縮機の起動時に最大冷房モードが選択されているときや、最大冷房モードでの運転中における冷媒掃気運転による車室内の快適性の悪化も最小限に抑えることができるようになる。
これにより、放熱器に多量の冷媒が寝込んで冷媒循環量が減少し、空調性能が低下してしまう不都合を未然に回避することができるようになる。また、オイル不足状態での運転も回避することができるようになるので、圧縮機に破損が生じる不都合も未然に防止し、円滑且つ快適な空調運転を実現することができるようになる。
ここで、圧縮機を起動する際、外気温度や車室内の温度、又は、放熱器の温度が前回圧縮機を停止したときのそれらの値より高いがそれらに近いかそれらより低い場合は、他の部分よりも放熱器の温度が低くなっていて、冷媒が寝込み易い状況となっていると考えられる。また、車室内の温度が外気温度より高いがそれに近い値か、それより低い場合も同様に他の部分よりも放熱器の温度が低くなっていて、冷媒が寝込み易い状況となっていると考えられる。また、放熱器の温度が室外熱交換器の温度より高いがそれに近い値か、それより低い場合も同様に他の部分よりも放熱器の温度が低くなっていて、冷媒が寝込み易い状況となっていると考えられる。
そこで、請求項2の発明の如く制御装置が、圧縮機を起動する際、外気温度、車室内の温度、又は、放熱器の温度から所定値差し引いた値が、前回圧縮機を停止したときの外気温度、車室内の温度、又は、放熱器の温度より低いこと、車室内の温度から所定値差し引いた値が外気温度より低いこと、及び、放熱器の温度から所定値差し引いた値が室外熱交換器の温度より低いこと、のうちの何れか、又は、それらの組み合わせ、若しくは、それらの全てが成立している場合、放熱器に溜まっている冷媒が多いと判定することで、圧縮機の起動時に放熱器に多量の冷媒が溜まって寝込んでいることを的確に予測し、放熱器の冷媒掃気運転を実行することができるようになる。
また、第2の運転モードを実行している間に全閉となっている室外膨張弁から放熱器に漏れる冷媒の量は、圧縮機の吐出冷媒圧力である吐出圧力Pdと放熱器の冷媒圧力である放熱器圧力PCIとの差が大きい程多くなる。
そこで、請求項3の発明の如く制御装置が、第2の運転モードを実行している際、圧縮機の吐出圧力Pdと放熱器圧力PCIとの差に基づいて放熱器への冷媒の漏れ量を推定し、当該漏れ量から放熱器に溜まっている冷媒の量を算出して、当該冷媒の量が所定値以上となった場合、放熱器に溜まっている冷媒が多いと判定することで、運転中に室外膨張弁から漏れて放熱器に逆流入して寝込む冷媒の量を的確に推定し、放熱器の冷媒掃気運転を実行することができるようになる。
また、請求項4の発明の如く制御装置が、放熱器の冷媒掃気運転を所定時間実行するようにし、更に、圧縮機の回転数が高い場合はこの所定時間を短く、低い場合は長くする方向で変更することで、放熱器に寝込んでいる冷媒を確実に追い出しながら、放熱器の冷媒掃気運転を最小限の時間で終わらせることが可能となる。
また、請求項5の発明の如く空気流通路から車室内に供給する空気を加熱するための補助加熱装置を設け、制御装置により、第1の運転モードとして、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器に流して放熱させ、放熱した当該冷媒を室外膨張弁で減圧した後、室外熱交換器にて吸熱させる暖房モードと、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器から室外熱交換器に流して当該放熱器及び室外熱交換器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、吸熱器にて吸熱させる除湿冷房モードと、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器から室外熱交換器に流して当該室外熱交換器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、吸熱器にて吸熱させる冷房モードのうちの何れか、又は、それらの組み合わせ、若しくは、それらの全てを実行し、第2の運転モードとして、圧縮機から吐出された冷媒をバイパス装置により室外熱交換器に流して放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、吸熱器にて吸熱させ、且つ、補助加熱装置を発熱させる除湿暖房モードと、圧縮機から吐出された冷媒をバイパス装置により室外熱交換器に流して放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、吸熱器にて吸熱させる最大冷房モードのうちの何れか、又は、双方を実行するようにすれば、放熱器に冷媒を流して行う暖房モードと、放熱器に冷媒を流さずに行う除湿暖房モードと、放熱器に冷媒を流して行う除湿冷房モード及び冷房モードと、放熱器に冷媒を流さずに行う最大冷房モードなどを切り換えて快適な車室内空調を実現することが可能となる。
このとき、請求項6の発明の如く制御装置が、除湿暖房モードで圧縮機を起動する際、又は、除湿暖房モードでの運転中、放熱器に溜まっている冷媒が多いと判定された場合、又は、多いか否か不明な場合、外気温度が所定値より低く、且つ、吸熱器の温度である吸熱器温度Teから所定値差し引いた値が吸熱器温度Teの目標値である目標吸熱器温度TEOより低く、且つ、放熱器の温度の目標値である目標放熱器温度TCOが所定値より高い条件が成立するときは、暖房モードで圧縮機を起動し、又は、暖房モードに切り換えることで冷媒掃気運転を実行した後、除湿暖房モードに切り換えると共に、前記条件が成立しないときは、除湿冷房モード、若しくは、冷房モードで圧縮機を起動し、又は、除湿冷房モード、若しくは、冷房モードに切り換えることで冷媒掃気運転を実行した後、除湿暖房モードに切り換えるようにすることで、圧縮機の起動時に除湿暖房モードが選択されているときや、除湿暖房モードでの運転中における冷媒掃気運転による車室内の快適性の悪化を最小限に抑えることができるようになる。
この場合において請求項7の発明の如く制御装置が、暖房モードを実行する際、放熱器における冷媒の過冷却度SCが所定値以下となるように室外膨張弁の弁開度を制御し、若しくは、当該弁開度を固定することで、圧縮機の起動時に除湿暖房モードの前に実行される暖房モードや除湿暖房モードでの運転中に実行される暖房モードで車室内に吹き出される空気の温度が必要以上に高くなる不都合を回避することができるようになる。
一方、請求項8の発明の如く制御装置が、最大冷房モードで圧縮機を起動する際、又は、最大冷房モードでの運転中、放熱器に溜まっている冷媒が多いと判定された場合、又は、多いか否か不明な場合、冷房モードで圧縮機を起動し、又は、冷房モードに切り換えることで冷媒掃気運転を実行した後、最大冷房モードに切り換えるようにすることで、圧縮機の起動時に最大冷房モードが選択されているときや、最大冷房モードでの運転中における冷媒掃気運転による車室内の快適性の悪化も最小限に抑えることができるようになる。
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例の車両用空気調和装置1の構成図を示している。本発明を適用する実施例の車両は、エンジン(内燃機関)が搭載されていない電気自動車(EV)であって、バッテリに充電された電力で走行用の電動モータを駆動して走行するものであり(何れも図示せず)、本発明の車両用空気調和装置1も、バッテリの電力で駆動されるものとする。即ち、実施例の車両用空気調和装置1は、エンジン廃熱による暖房ができない電気自動車において、冷媒回路を用いたヒートポンプ運転により暖房モードを行い、更に、除湿暖房モード、除湿冷房モード、冷房モード、MAX冷房モード(最大冷房モード)の各運転モードを選択的に実行するものである。
尚、車両として電気自動車に限らず、エンジンと走行用の電動モータを供用する所謂ハイブリッド自動車にも本発明は有効であり、更には、エンジンで走行する通常の自動車にも適用可能であることは云うまでもない。
実施例の車両用空気調和装置1は、電気自動車の車室内の空調(暖房、冷房、除湿、及び、換気)を行うものであり、冷媒を圧縮する電動式の圧縮機2と、車室内空気が通気循環されるHVACユニット10の空気流通路3内に設けられ、圧縮機2から吐出された高温高圧の冷媒が冷媒配管13Gを介して流入し、この冷媒を車室内に放熱させる放熱器4と、暖房時に冷媒を減圧膨張させる電動弁から成る室外膨張弁6と、車室外に設けられて冷房時には放熱器として機能し、暖房時には蒸発器として機能すべく冷媒と外気との間で熱交換を行わせる室外熱交換器7と、冷媒を減圧膨張させる電動弁から成る室内膨張弁8と、空気流通路3内に設けられて冷房時及び除湿時に車室内外から冷媒に吸熱させる吸熱器9と、アキュムレータ12等が冷媒配管13により順次接続され、冷媒回路Rが構成されている。
そして、この冷媒回路Rには所定量の冷媒と潤滑用のオイルが充填されている。尚、室外熱交換器7には、室外送風機15が設けられている。この室外送風機15は、室外熱交換器7に外気を強制的に通風することにより、外気と冷媒とを熱交換させるものであり、これにより停車中(即ち、車速が0km/h)にも室外熱交換器7に外気が通風されるよう構成されている。
また、室外熱交換器7は冷媒下流側にレシーバドライヤ部14と過冷却部16を順次有し、室外熱交換器7から出た冷媒配管13Aは冷房時に開放される電磁弁17を介してレシーバドライヤ部14に接続され、過冷却部16の出口側の冷媒配管13Bは室内膨張弁8介して吸熱器9の入口側に接続されている。尚、レシーバドライヤ部14及び過冷却部16は構造的に室外熱交換器7の一部を構成している。
また、過冷却部16と室内膨張弁8間の冷媒配管13Bは、吸熱器9の出口側の冷媒配管13Cと熱交換関係に設けられ、両者で内部熱交換器19を構成している。これにより、冷媒配管13Bを経て室内膨張弁8に流入する冷媒は、吸熱器9を出た低温の冷媒により冷却(過冷却)される構成とされている。
また、室外熱交換器7から出た冷媒配管13Aは冷媒配管13Dに分岐しており、この分岐した冷媒配管13Dは、暖房時に開放される電磁弁21を介して内部熱交換器19の下流側における冷媒配管13Cに連通接続されている。この冷媒配管13Cがアキュムレータ12に接続され、アキュムレータ12は圧縮機2の冷媒吸込側に接続されている。更に、放熱器4の出口側の冷媒配管13Eは室外膨張弁6を介して室外熱交換器7の入口側に接続されている。
また、圧縮機2の吐出側と放熱器4の入口側の間の冷媒配管13Gには後述する除湿暖房とMAX冷房時に閉じられる電磁弁30(流路切換装置を構成する)が介設されている。この場合、冷媒配管13Gは電磁弁30の上流側でバイパス配管35に分岐しており、このバイパス配管35は除湿暖房とMAX冷房時に開放される電磁弁40(これも流路切換装置を構成する)を介して室外膨張弁6の下流側の冷媒配管13Eに連通接続されている。これらバイパス配管35、電磁弁30及び電磁弁40により本発明におけるバイパス装置45が構成される。
このようなバイパス配管35、電磁弁30及び電磁弁40によりバイパス装置45を構成したことで、後述する如く圧縮機2から吐出された冷媒を室外熱交換器7に直接流入させる除湿暖房モードやMAX冷房モードと、圧縮機2から吐出された冷媒を放熱器4に流入させる暖房モードや除湿冷房モード、冷房モードとの切り換えを円滑に行うことができるようになる。
また、吸熱器9の空気上流側における空気流通路3には、外気吸込口と内気吸込口の各吸込口が形成されており(図1では吸込口25で代表して示す)、この吸込口25には空気流通路3内に導入する空気を車室内の空気である内気(内気循環モード)と、車室外の空気である外気(外気導入モード)とに切り換える吸込切換ダンパ26が設けられている。更に、この吸込切換ダンパ26の空気下流側には、導入した内気や外気を空気流通路3に送給するための室内送風機(ブロワファン)27が設けられている。
また、図1において23は実施例の車両用空気調和装置1に設けられた補助加熱装置としての補助ヒータである。実施例の補助ヒータ23は電気ヒータであるPTCヒータにて構成されており、空気流通路3の空気の流れに対して、放熱器4の空気上流側となる空気流通路3内に設けられている。そして、補助ヒータ23に通電されて発熱すると、吸熱器9を経て放熱器4に流入する空気流通路3内の空気が加熱される。即ち、この補助ヒータ23が所謂ヒータコアとなり、車室内の暖房を行い、或いは、それを補完する。
また、補助ヒータ23の空気上流側における空気流通路3内には、当該空気流通路3内に流入し、吸熱器9を通過した後の空気流通路3内の空気(内気や外気)を補助ヒータ23及び放熱器4に通風する割合を調整するエアミックスダンパ28が設けられている。更に、放熱器4の空気下流側における空気流通路3には、FOOT(フット)、VENT(ベント)、DEF(デフ)の各吹出口(図1では代表して吹出口29で示す)が形成されており、この吹出口29には上記各吹出口から空気の吹き出しを切換制御する吹出口切換ダンパ31が設けられている。
次に、図2において32はプロセッサを備えたコンピュータの一例であるマイクロコンピュータから構成された制御装置としてのコントローラ(ECU)であり、このコントローラ32の入力には車両の外気温度(Tam)を検出する外気温度センサ33と、外気湿度を検出する外気湿度センサ34と、吸込口25から空気流通路3に吸い込まれる空気の温度を検出するHVAC吸込温度センサ36と、車室内の空気(内気)の温度を検出する内気温度センサ37と、車室内の空気の湿度を検出する内気湿度センサ38と、車室内の二酸化炭素濃度を検出する室内CO2濃度センサ39と、吹出口29から車室内に吹き出される空気の温度を検出する吹出温度センサ41と、圧縮機2の吐出冷媒圧力(吐出圧力Pd)を検出する吐出圧力センサ42と、圧縮機2の吐出冷媒温度を検出する吐出温度センサ43と、圧縮機2の吸込冷媒圧力を検出する吸込圧力センサ44と、圧縮機2の吸込冷媒温度を検出する吸込温度センサ55と、放熱器4の温度(放熱器4を経た空気の温度、又は、放熱器4自体の温度:放熱器温度TH)を検出する放熱器温度センサ46と、放熱器4の冷媒圧力(放熱器4内、又は、放熱器4を出た直後の冷媒の圧力:放熱器圧力PCI)を検出する放熱器圧力センサ47と、吸熱器9の温度(吸熱器9を経た空気の温度、又は、吸熱器9自体の温度:吸熱器温度Te)を検出する吸熱器温度センサ48と、吸熱器9の冷媒圧力(吸熱器9内、又は、吸熱器9を出た直後の冷媒の圧力)を検出する吸熱器圧力センサ49と、車室内への日射量を検出するための例えばフォトセンサ式の日射センサ51と、車両の移動速度(車速)を検出するための車速センサ52と、設定温度や運転モードの切り換えを設定するための空調(エアコン)操作部53と、室外熱交換器7の温度(室外熱交換器7から出た直後の冷媒の温度、又は、室外熱交換器7自体の温度:室外熱交換器温度TXO)を検出する室外熱交換器温度センサ54と、室外熱交換器7の冷媒圧力(室外熱交換器7内、又は、室外熱交換器7から出た直後の冷媒の圧力:室外熱交換器圧力PXO)を検出する室外熱交換器圧力センサ56の各出力が接続されている。また、コントローラ32の入力には更に、補助ヒータ23の温度(補助ヒータ23で加熱された直後の空気の温度、又は、補助ヒータ23自体の温度:補助ヒータ温度Tptc)を検出する補助ヒータ温度センサ50の出力も接続されている。
一方、コントローラ32の出力には、前記圧縮機2と、室外送風機15と、室内送風機(ブロワファン)27と、吸込切換ダンパ26と、エアミックスダンパ28と、吹出口切換ダンパ31と、室外膨張弁6、室内膨張弁8と、補助ヒータ23、電磁弁30(除湿用)、電磁弁17(冷房用)、電磁弁21(暖房用)、電磁弁40(これも除湿用)の各電磁弁が接続されている。そして、コントローラ32は各センサの出力と空調操作部53にて入力された設定に基づいてこれらを制御する。
以上の構成で、次に実施例の車両用空気調和装置1の動作を説明する。コントローラ32は実施例では暖房モード、除湿暖房モード、除湿冷房モード、冷房モード及びMAX冷房モード(最大冷房モード)の各運転モードを切り換えて実行する。先ず、各運転モードにおける冷媒の流れと制御の概略について説明する。
(1)暖房モード
コントローラ32により(オートモード)或いは空調操作部53へのマニュアル操作(マニュアルモード)により暖房モードが選択されると、コントローラ32は電磁弁21(暖房用)を開放し、電磁弁17(冷房用)を閉じる。また、電磁弁30(除湿用)を開放し、電磁弁40(除湿用)を閉じる。
そして、圧縮機2、及び、各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は図1に破線で示す如く、室内送風機27から吹き出されて吸熱器9を経た空気流通路3内の全ての空気が補助ヒータ23及び放熱器4に通風される状態とする。これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は電磁弁30を経て冷媒配管13Gから放熱器4に流入する。放熱器4には空気流通路3内の空気が通風されるので、空気流通路3内の空気は放熱器4内の高温冷媒(補助ヒータ23が動作するときは当該補助ヒータ23及び放熱器4)により加熱され、一方、放熱器4内の冷媒は空気に熱を奪われて冷却され、凝縮液化する。
放熱器4内で液化した冷媒は当該放熱器4を出た後、冷媒配管13Eを経て室外膨張弁6に至る。室外膨張弁6に流入した冷媒はそこで減圧された後、室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒は蒸発し、走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気中から熱を汲み上げる。即ち、冷媒回路Rがヒートポンプとなる。そして、室外熱交換器7を出た低温の冷媒は冷媒配管13A及び電磁弁21及び冷媒配管13Dを経て冷媒配管13Cからアキュムレータ12に入り、そこで気液分離された後、ガス冷媒が圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。放熱器4(補助ヒータ23が動作するときは当該補助ヒータ23及び放熱器4)にて加熱された空気は吹出口29から吹き出されるので、これにより車室内の暖房が行われることになる。
コントローラ32は、後述する目標吹出温度TAOから算出される目標放熱器温度TCO(放熱器温度THの目標値)から目標放熱器圧力PCO(放熱器圧力PCIの目標値)を算出し、この目標放熱器圧力PCOと、放熱器圧力センサ47が検出する放熱器4の冷媒圧力(放熱器圧力PCI。冷媒回路Rの高圧圧力)に基づいて圧縮機2の回転数を制御する。また、コントローラ32は、放熱器温度センサ46が検出する放熱器4の温度(放熱器温度TH)及び放熱器圧力センサ47が検出する放熱器圧力PCIに基づいて室外膨張弁6の弁開度を制御し、放熱器4の出口における冷媒の過冷却度SCを制御する。前記目標放熱器温度TCOは基本的にはTCO=TAOとされるが、制御上の所定の制限が設けられる。
また、コントローラ32はこの暖房モードにおいては、車室内空調に要求される暖房能力に対して放熱器4による暖房能力が不足する場合、その不足する分を補助ヒータ23の発熱で補完するように補助ヒータ23の通電を制御する。それにより、快適な車室内暖房を実現し、且つ、室外熱交換器7の着霜も抑制する。このとき、補助ヒータ23は放熱器4の空気上流側に配置されているので、空気流通路3を流通する空気は放熱器4の前に補助ヒータ23に通風されることになる。
ここで、補助ヒータ23が放熱器4の空気下流側に配置されていると、実施例の如くPCTヒータで補助ヒータ23を構成した場合には、補助ヒータ23に流入する空気の温度が放熱器4によって上昇するため、PTCヒータの抵抗値が大きくなり、電流値も低くなって発熱量が低下してしまうが、放熱器4の空気上流側に補助ヒータ23を配置することで、実施例の如くPTCヒータから構成される補助ヒータ23の能力を十分に発揮させることができるようになる。
(2)除湿暖房モード
次に、除湿暖房モードでは、コントローラ32は電磁弁17を開放し、電磁弁21を閉じる。また、電磁弁30を閉じ、電磁弁40を開放すると共に、室外膨張弁6の弁開度は全閉とする。そして、圧縮機2、及び、各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は図1に破線で示す如く、室内送風機27から吹き出されて吸熱器9を経た空気流通路3内の全ての空気が補助ヒータ23及び放熱器4に通風される状態とする。
これにより、圧縮機2から冷媒配管13Gに吐出された高温高圧のガス冷媒は、放熱器4に向かうこと無くバイパス配管35に流入し、電磁弁40を経て室外膨張弁6の下流側の冷媒配管13Eに至るようになる。このとき、室外膨張弁6は全閉とされているので、冷媒は室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒はそこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aから電磁弁17を経てレシーバドライヤ部14、過冷却部16と順次流入する。ここで冷媒は過冷却される。
室外熱交換器7の過冷却部16を出た冷媒は冷媒配管13Bに入り、内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気は冷却され、且つ、当該空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気流通路3内の空気は冷却され、且つ、除湿される。吸熱器9で蒸発した冷媒は内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cを介し、アキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。
このとき、室外膨張弁6の弁開度は全閉とされているので、圧縮機2から吐出された冷媒が室外膨張弁6から放熱器4に逆流入する不都合を抑制若しくは防止することが可能となる。これにより、冷媒循環量の低下を抑制若しくは解消して空調能力を確保することができるようになる。更に、この除湿暖房モードにおいてコントローラ32は、補助ヒータ23に通電して発熱させる。これにより、吸熱器9にて冷却され、且つ、除湿された空気は補助ヒータ23を通過する過程で更に加熱され、温度が上昇するので車室内の除湿暖房が行われることになる。
コントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)とその目標値である目標吸熱器温度TEOに基づいて圧縮機2の回転数を制御すると共に、補助ヒータ温度センサ50が検出する補助ヒータ温度Tptcと前述した目標放熱器温度TCOに基づいて補助ヒータ23の通電(発熱)を制御することで、吸熱器9での空気の冷却と除湿を適切に行いながら、補助ヒータ23による加熱で吹出口29から車室内に吹き出される空気温度の低下を的確に防止する。
これにより、車室内に吹き出される空気を除湿しながら、その温度を適切な暖房温度に制御することが可能となり、車室内の快適且つ効率的な除湿暖房を実現することができるようになる。また、前述した如く除湿暖房モードではエアミックスダンパ28は空気流通路3内の全ての空気を補助ヒータ23及び放熱器4に通風する状態とされるので、吸熱器9を経た空気を効率良く補助ヒータ23で加熱して省エネ性を向上させ、且つ、除湿暖房空調の制御性も向上させることができるようになる。
尚、補助ヒータ23は放熱器4の空気上流側に配置されているので、補助ヒータ23で加熱された空気は放熱器4を通過することになるが、この除湿暖房モードでは放熱器4に冷媒は流されないので、補助ヒータ23にて加熱された空気から放熱器4が吸熱してしまう不都合も解消される。即ち、放熱器4によって車室内に吹き出される空気の温度が低下してしまうことが抑制され、COPも向上することになる。
(3)除湿冷房モード
次に、除湿冷房モードでは、コントローラ32は電磁弁17を開放し、電磁弁21を閉じる。また、電磁弁30を開放し、電磁弁40を閉じる。そして、圧縮機2、及び、各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は図1に破線で示す如く、室内送風機27から吹き出されて吸熱器9を経た空気流通路3内の全ての空気が補助ヒータ23及び放熱器4に通風される状態とする。これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は電磁弁30を経て冷媒配管13Gから放熱器4に流入する。放熱器4には空気流通路3内の空気が通風されるので、空気流通路3内の空気は放熱器4内の高温冷媒により加熱され、一方、放熱器4内の冷媒は空気に熱を奪われて冷却され、凝縮液化していく。
放熱器4を出た冷媒は冷媒配管13Eを経て室外膨張弁6に至り、開き気味で制御される室外膨張弁6を経て室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒はそこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aから電磁弁17を経てレシーバドライヤ部14、過冷却部16と順次流入する。ここで冷媒は過冷却される。
室外熱交換器7の過冷却部16を出た冷媒は冷媒配管13Bに入り、内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気は冷却され、且つ、除湿される。
吸熱器9で蒸発した冷媒は内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cを介し、アキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。この除湿冷房モードではコントローラ32は補助ヒータ23に通電しないので、吸熱器9にて冷却され、除湿された空気は放熱器4を通過する過程で再加熱(暖房時よりも放熱能力は低い)される。これにより車室内の除湿冷房が行われることになる。
コントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)に基づいて圧縮機2の回転数を制御すると共に、前述した冷媒回路Rの高圧圧力に基づいて室外膨張弁6の弁開度を制御し、放熱器4の冷媒圧力(放熱器圧力PCI)を制御する。
(4)冷房モード
次に、冷房モードでは、コントローラ32は上記除湿冷房モードの状態において室外膨張弁6の弁開度を全開とする。尚、コントローラ32はエアミックスダンパ28を制御し、図1に実線で示す如く、室内送風機27から吹き出されて吸熱器9を通過した後の空気流通路3内の空気が、補助ヒータ23及び放熱器4に通風される割合を調整する。また、コントローラ32は補助ヒータ23に通電しない。
これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は電磁弁30を経て冷媒配管13Gから放熱器4に流入すると共に、放熱器4を出た冷媒は冷媒配管13Eを経て室外膨張弁6に至る。このとき室外膨張弁6は全開とされているので冷媒はそれを通過し、そのまま室外熱交換器7に流入し、そこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮液化する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aから電磁弁17を経てレシーバドライヤ部14、過冷却部16と順次流入する。ここで冷媒は過冷却される。
室外熱交換器7の過冷却部16を出た冷媒は冷媒配管13Bに入り、内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気は冷却される。また、空気中の水分は吸熱器9に凝結して付着する。
吸熱器9で蒸発した冷媒は内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cを介し、アキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。吸熱器9にて冷却され、除湿された空気が吹出口29から車室内に吹き出されるので(一部は放熱器4を通過して熱交換する)、これにより車室内の冷房が行われることになる。また、この冷房モードにおいては、コントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)とその目標値である目標吸熱器温度TEOに基づいて圧縮機2の回転数を制御する。
(5)MAX冷房モード(最大冷房モード)
次に、最大冷房モードとしてのMAX冷房モードでは、コントローラ32は電磁弁17を開放し、電磁弁21を閉じる。また、電磁弁30を閉じ、電磁弁40を開放すると共に、室外膨張弁6の弁開度は全閉とする。そして、圧縮機2、及び、各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は図3に示す如く補助ヒータ23及び放熱器4に空気流通路3内の空気が通風されない状態とする。但し、多少通風されても支障はない。また、コントローラ32は補助ヒータ23に通電しない。
これにより、圧縮機2から冷媒配管13Gに吐出された高温高圧のガス冷媒は、放熱器4に向かうこと無くバイパス配管35に流入し、電磁弁40を経て室外膨張弁6の下流側の冷媒配管13Eに至るようになる。このとき、室外膨張弁6は全閉とされているので、冷媒は室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒はそこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aから電磁弁17を経てレシーバドライヤ部14、過冷却部16と順次流入する。ここで冷媒は過冷却される。
室外熱交換器7の過冷却部16を出た冷媒は冷媒配管13Bに入り、内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気は冷却される。また、空気中の水分は吸熱器9に凝結して付着するので、空気流通路3内の空気は除湿される。吸熱器9で蒸発した冷媒は内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cを介し、アキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。このとき、室外膨張弁6は全閉とされているので、同様に圧縮機2から吐出された冷媒が室外膨張弁6から放熱器4に逆流入する不都合を抑制若しくは防止することが可能となる。これにより、冷媒循環量の低下を抑制若しくは解消して空調能力を確保することができるようになる。
ここで、前述した冷房モードでは放熱器4に高温の冷媒が流れているため、放熱器4からHVACユニット10への直接の熱伝導が少なからず生じるが、このMAX冷房モードでは放熱器4に冷媒が流れないため、放熱器4からHVACユニット10に伝達される熱で吸熱器9からの空気流通路3内の空気が加熱されることも無くなる。そのため、車室内の強力な冷房が行われ、特に外気温度Tamが高いような環境下では、迅速に車室内を冷房して快適な車室内空調を実現することができるようになる。また、このMAX冷房モードにおいても、コントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)とその目標値である目標吸熱器温度TEOに基づいて圧縮機2の回転数を制御する。
(6)運転モードの切換
空気流通路3内を流通される空気は上記各運転モードにおいて吸熱器9からの冷却や放熱器4(及び補助ヒータ23)からの加熱作用(エアミックスダンパ28で調整)を受けて吹出口29から車室内に吹き出される。コントローラ32は外気温度センサ33が検出する外気温度Tam、内気温度センサ37が検出する車室内の温度、前記ブロワ電圧、日射センサ51が検出する日射量等と、空調操作部53にて設定された車室内の目標車室内温度(設定温度)とに基づいて目標吹出温度TAOを算出し、各運転モードを切り換えて吹出口29から吹き出される空気の温度をこの目標吹出温度TAOに制御する。
この場合、コントローラ32は、外気温度Tam、車室内の湿度、目標吹出温度TAO、放熱器温度TH、目標放熱器温度TCO、吸熱器温度Te、目標吸熱器温度TEO、車室内の除湿要求の有無、等のパラメータに基づいて各運転モードの切り換えを行うことで、環境条件や除湿の要否に応じて的確に暖房モード、除湿暖房モード、除湿冷房モード、冷房モード及びMAX冷房モードを切り換え、快適且つ効率的な車室内空調を実現する。
(7)放熱器4の冷媒掃気運転
ここで、圧縮機2から吐出された冷媒を放熱器4に流す運転モード(本発明における第1の運転モード)である暖房モード、除湿冷房モード、又は、冷房モードから、室外膨張弁6の弁開度を全閉とし、電磁弁30を閉じ、電磁弁35を開いてバイパス装置45により放熱器4と室外膨張弁6をバイパスして圧縮機2から吐出された冷媒を室外熱交換器7に直接流入させる運転モード(本発明における第2の運転モード)である除湿暖房モード、又は、MAX冷房モードに切り換えた場合、そのときに放熱器4に残留している冷媒は、当該放熱器4内に寝込んだ状態となる。
また、放熱器4に冷媒を流さない運転モード(第2の運転モードである除湿暖房モードやMAX冷房モード)とした後、当該放熱器4の温度が低下すると、内部に残留した冷媒は凝縮するため、放熱器4の冷媒圧力は低下する。そのため、室外膨張弁6を全閉としても、圧縮機2の吐出圧力Pdと放熱器圧力PCIの圧力差ΔP(ΔP=Pd−PCI)から、室外膨張弁6には漏れが発生し、除湿暖房モードやMAX冷房モードでの運転中に室外膨張弁6を通って放熱器4に冷媒が逆流入する。これにより、放熱器4内に溜まって寝込む冷媒の量が増大していくことになる。
このように放熱器4内に冷媒が溜まって寝込み、その量が多くなると、冷媒回路R内の冷媒循環量が減少してしまうため、空調性能が低下してしまう。また、冷媒には潤滑用のオイルも含まれているため、圧縮機2に戻るオイル量が不足して焼き付きが発生し、最悪の場合には破損を来すようになる。そこで、コントローラ32は他の運転モード(暖房モード、除湿冷房モード、冷房モード)から除湿冷房モード、又は、MAX冷房モードに切り換える場合、先ず電磁弁30を閉じてから室外膨張弁6を一旦全開とし、その後、弁開度を全閉とする。このように、電磁弁30を閉じた状態で室外膨張弁6を全開とし、放熱器4から冷媒が流出し易くすることで、除湿冷房モードやMAX冷房モードに切り換えたときに放熱器4内に残留する冷媒の量をできるだけ少なくする。
更に、コントローラ32は圧縮機2の起動時や運転中に、放熱器4に溜まって寝込んでいる冷媒の量が多いか否か判定し、多いと判定された場合、又は、多いか否か不明な場合は、放熱器4の冷媒掃気運転を実行する。次に、図4~図6を参照しながら、このコントローラ32による放熱器4の冷媒掃気運転について説明する。
図4はコントローラ32による放熱器4の冷媒掃気運転を説明するフローチャートである。コントローラ32は、図4のステップS1で車両用空気調和装置(HPシステム)1が故障判定されているか否か判断し、故障判定されている場合は空調操作部53にて警報し、運転を停止する。故障判定されていない場合は(正常)、ステップS2に進み、現在選択されている運転モード(HPモード)が除湿暖房モード、又は、MAX冷房モードであるか否か判断する。現在選択されている運転モードが除湿暖房モードかMAX冷房モードである場合は、ステップS3に進み、圧縮機2(HP)を起動しようとしているとき(起動中)か否か判断する。
(7−1)起動時の冷媒寝込み判定
ステップS3で現在圧縮機2を起動しているとき(起動中)の場合は、当該圧縮機2を起動する前に、ステップS4に進んで放熱器4に溜まって寝込んでいる冷媒が多いか否か判定する。ここで、コントローラ32は、前回圧縮機2を停止したときの外気温度センサ33が検出する外気温度Tam、内気温度センサ37が検出する車室内の温度、及び、放熱器温度センサ46が検出する放熱器温度TH、室外熱交換器温度センサ54が検出する室外熱交換器7の温度を記憶している。そして、実施例では以下の(i)~(v)の条件のうちの何れかが成立している場合、コントローラ32は放熱器4に溜まって寝込んでいる冷媒が多い、又は、多いか否か不明と判定する。即ち、
(i)前回圧縮機2を停止したときの放熱器温度TH>(今回起動時の放熱器温度TH−所定値(例えば5~10deg))
(ii)外気温度Tam>(車室内の温度−所定値)
(iii)室外熱交換器7の温度>(放熱器温度TH−所定値)
(iv)前回停止時の状態が不明
(v)掃気運転終了フラグfSCAVrefがリセット(=0)
上記条件(i)は、今回起動時の放熱器温度THが、前回圧縮機2を停止したときの放熱器温度THより高いがそれに近い値(前回停止時の放熱器温度TH+所定値より低い値)か、それより低いこと、条件(ii)は、車室内の温度が外気温度Tamより高いがそれに近い値(外気温度Tam+所定値より低い値)か、それより低いこと、条件(iii)は、放熱器温度THが室外熱交換器7の温度より高いがそれに近い値(室外熱交換器7の温度+所定値より低い値)か、それよりも低いことであり、何れも冷媒回路Rの他の部分よりも放熱器温度THが低くなっていて、放熱器4に冷媒が溜まって寝込んでいる量が多い状況となっていることを意味している。
また、上記条件(iv)は、前回圧縮機2を停止したときの状態(外気温度Tam、車室内の温度、放熱器温度TH、室外熱交換器7の温度)が不明であることであり、これは放熱器4に溜まって寝込んでいる冷媒の量が多いか否か不明であることを意味している。尚、条件(v)は後述する掃気運転終了フラグfSCAVrefがリセット(=0)されていることであり、これは冷媒掃気運転を実施していないことを意味する。
コントローラ32は、圧縮機2を起動する際、ステップS4の判定で条件(i)~(v)のうちの何れかが成立しており、放熱器4に溜まって寝込んでいる冷媒が多い、又は、多いか否か不明と判定した場合(Y)、ステップS5に進んで放熱器4の冷媒掃気運転を実行する。
(7−2)コントローラ32による冷媒掃気運転の選択
コントローラ32はステップS5の冷媒掃気運転で、現在選択されている運転モードが除湿暖房モードである場合、外気温度Tamが所定値(例えば+5℃)より低く、且つ、吸熱器温度Teから所定値(例えば2deg)差し引いた値(Te−2)が目標吸熱器温度TEOより低く、且つ、目標放熱器温度TCOが所定値(例えば+50℃)より高い条件(vi)が成立している場合、運転モードを暖房モードとして圧縮機2を起動する。この暖房モードでは前述した如く放熱器4に冷媒が流れるので、放熱器4内に溜まって寝込んだ冷媒を追い出すことができる。即ち、この場合暖房モードが冷媒掃気運転となる。コントローラ32は係る暖房モード(冷媒掃気運転)での運転を所定時間(例えば1分程度)実行した後、冷媒掃気運転を終了して除湿暖房モードに運転モードを切り換える。
また、コントローラ32は上記暖房モードを実行しているとき、放熱器4の冷媒過冷却度SCが所定値以下となるように室外膨張弁6の弁開度を制御するか、或いは、室外膨張弁6の弁開度を固定する。それにより、圧縮機2の起動時に除湿暖房モードの前に実行される暖房モードや、後述する除湿暖房モードでの運転中に実行される暖房モードで車室内に吹き出される空気の温度が必要以上に高くなる不都合を回避する。
尚、係る条件(vi)が成立しない場合は、コントローラ32は運転モードを除湿冷房モード、又は、冷房モードとして圧縮機2を起動する。この除湿冷房モードや冷房モードでも前述した如く放熱器4に冷媒が流れるので、放熱器4内に溜まって寝込んだ冷媒を追い出すことができる。即ち、この場合、除湿冷房モードや冷房モードが冷媒掃気運転となる。コントローラ32はこの場合も除湿冷房モード、又は、冷房モード(冷媒掃気運転)での運転を所定時間(例えば1分程度)実行した後、冷媒掃気運転を終了して除湿暖房モードに運転モードを切り換える。このように条件(vi)で暖房モード、又は、除湿冷房モード(又は、冷房モード)の何れかを冷媒掃気運転として選択することにより、除湿暖房モードが選択されているときの冷媒掃気運転による車室内の快適性の悪化を最小限に抑えることができるようになる。
一方、コントローラ32はステップS5で、現在選択されている運転モードがMAX冷房モードである場合、運転モードを冷房モードとして起動する。図5は起動時にMAX冷房モードが選択されているときに、放熱器4に溜まって寝込んでいる冷媒が多いと判定された場合、又は、多いか否か不明な場合にコントローラ32が実行する制御を説明するタイミングチャートである。尚、図中ΔPdxは吐出圧力センサ42が検出する吐出圧力Pdと室外熱交換器温度センサ54が検出する室外熱交換器7の温度から換算される室外熱交換器7の圧力(或いは、室外熱交換器圧力センサ56が検出する室外熱交換器7の圧力)との差から得られる電磁弁40前後の差圧、ΔPixは同じく吐出圧力Pdと放熱器圧力PCIから得られる電磁弁30の前後の差圧である。また、NCは圧縮機2の回転数である。
図5に示されるように、コントローラ32は起動時に先ず冷房モードで起動する(電磁弁30は開、電磁弁40は閉)。その後、所定時間(例えば1分程度)経過した場合、MAX冷房モードに各電磁弁30、40を切り換え(電磁弁30は閉、電磁弁40は開)、圧縮機2の回転数NCを一旦低下させ、室外膨張弁6を全閉とした後、MAX冷房モードでの圧縮機2の制御に移行する。起動時に実行される冷房モードでも前述した如く放熱器4に冷媒が流れるので、放熱器4内に溜まって寝込んだ冷媒を追い出すことができる。
即ち、この場合冷房モードが冷媒掃気運転となる。コントローラ32は上記のように冷房モード(冷媒掃気運転)での運転を所定時間実行した後、冷媒掃気運転を終了してMAX冷房モードに切り換えることで、圧縮機2の起動時や後述する運転中にMAX冷房モードが選択されているときの冷媒掃気運転による車室内の快適性の悪化も最小限に抑えることができるようになる。
ここで、コントローラ32は、係る冷媒掃気運転を実行する所定時間を圧縮機2の回転数NCが高い場合は短く、低い場合は長くする方向で前記所定時間を変更する。この変更は、例えば前述した1分を中心にそれより長くするか、短くするかで実行される。圧縮機2の回転数NCが高い程、放熱器4から迅速に冷媒を追い出すことができるので、このように冷媒掃気運転を実行する所定時間を変更することで、放熱器4に溜まって寝込んでいる冷媒を確実に追い出しながら、放熱器4の冷媒掃気運転を最小限の時間で終わらせることが可能となる。
コントローラ32はステップS6で上記冷媒掃気運転が終了したか否か判断し、前記所定時間中で未だ終了していないときはステップS8で掃気運転終了フラグfSCAVrefをリセット(=0)し、所定時間実行して冷媒掃気運転が終了したときは、ステップS7で掃気運転終了フラグfSCAVrefをセット(=1)する。
(7−3)運転中の冷媒寝込み判定
他方、ステップS3で起動後であるとき、即ち、除湿暖房モードかMAX冷房モードで運転中であるときは、コントローラ32はステップS9に進んで放熱器4に溜まって寝込んでいる冷媒の量、即ち、冷媒寝込み量STrefを演算して推定する。前述した如く除湿暖房モードやMAX冷房モードでは室外膨張弁6が全閉とされ、電磁弁30も閉じられるため、放熱器4内には冷媒が封じ込まれることになる。この封じ込まれた冷媒はその後の放熱器4の温度低下で凝縮するため、放熱器圧力PCIは低下する。
一方、全閉となっている室外膨張弁6は、その前後(放熱器4側と圧縮機2側)の差圧が大きくなる程、漏れる冷媒の量が多くなる。図6はこの様子を示しており、室外膨張弁6の単位時間当たりの冷媒漏れ量Lref(単位はg/sec)は、圧縮機2の吐出圧力Pdと放熱器圧力PCIの圧力差ΔP(ΔP=Pd−PCI。単位はMPa)に比例して多くなる。このときの比例式はLref=f(ΔP)で示される。即ち、この圧力差ΔPに基づいて室外膨張弁6から放熱器4への冷媒の漏れ量を的確に推定することができる。
コントローラ32は、ステップS9で上記単位時間当たりの冷媒漏れ量Lrefを積分することで、除湿暖房モードやMAX冷房モードでの運転中に室外膨張弁6から放熱器4に漏れて溜まった冷媒の量を、即ち、冷媒寝込み量STrefを算出する。このときの積分式は図4や図6に示す式(I)で示される。
冷媒寝込み量STref=∫Lrefdt=∫{f(ΔP)}dt ・・(I)
そして、コントローラ32はステップS10に進み、ステップS9で算出された冷媒寝込み量Lrefが所定値以上となったか否か判断し(STref≧所定値)、所定値未満である場合は冷媒寝込みなしと判定し、所定値以上である場合は冷媒寝込みと判定してステップS5に進み、冷媒掃気運転を実行する。尚、この場合の所定値は、放熱器4に通常設けられるレシーバタンクの容量、又は、プラトー領域幅(当該レシーバタンクに溜まるまで変化しなくなる領域。溢れ出して変化し出す。)とする。即ち、放熱器4のレシーバタンクの容量と同じくらい寝込んでも許容するということである。
この場合にステップS5で実行される冷媒掃気運転も前述したものと同様である。即ち、現在運転している運転モードが除湿暖房モードであるとき、前述した条件(vi)が成立している場合は、コントローラ32は運転モードを暖房モードに切り換える。そして、コントローラ32は係る暖房モード(冷媒掃気運転)での運転を所定時間(同様に1分程度)実行した後、冷媒掃気運転を終了して除湿暖房モードに運転モードを切り換え、ステップS6からステップS7に進む。この場合の暖房モードでの放熱器4の冷媒過冷却度SCの制御も前述と同様である。
また、条件(vi)が成立しない場合は、コントローラ32は運転モードを除湿冷房モード、又は、冷房モードに切り換える。そして、コントローラ32はこの場合も除湿冷房モード、又は、冷房モード(冷媒掃気運転)での運転を所定時間(同様に1分程度)実行した後、冷媒掃気運転を終了して除湿暖房モードに運転モードを切り換え、ステップS6からステップS7に進む。
一方、現在運転している運転モードがMAX冷房モードであるとき、コントローラ32は運転モードを冷房モード(冷媒掃気運転)に切り換える。その後、所定時間(同様に1分程度)経過した場合、コントローラ32は冷媒掃気運転を終了して運転モードをMAX冷房モードに切り換え、ステップS6からステップS7に進む。この場合の所定時間も圧縮機2の回転数NCに応じて前述同様に変更される。
このようにして圧力差ΔPに基づいて冷媒寝込み量STrefを演算することで、コントローラ32は除湿暖房モードやMAX冷房モードでの運転中に室外膨張弁6から漏れて放熱器4に逆流入する冷媒の量を的確に推定し、放熱器4の冷媒掃気運転を実行することができるようになる。
以上詳述した如くコントローラ32が放熱器4に溜まっている冷媒が多いか否か判定し、多いと判定された場合、又は、多いか否か不明な場合には、第1の運転モード(暖房モード、除湿冷房モード、冷房モード)から圧縮機2を起動すること、若しくは、第2の運転モード(除湿暖房モードやMAX冷房モード)から上記第1の運転モードに切り換えることにより、放熱器4の冷媒掃気運転を実行した後、上記第2の運転モードに切り換えるようにしたので、放熱器4に冷媒を流さない除湿暖房モードやMAX冷房モード(第2の運転モード)で起動するときに放熱器4に溜まって寝込んでいる冷媒、若しくは、除湿暖房モードやMAX冷房モード(第2の運転モード)での運転中に放熱器4に溜まって寝込んだ冷媒を、上記第1の運転モードで放熱器4から追い出すことができるようになる。
これにより、放熱器4に多量の冷媒が寝込んで冷媒循環量が減少し、空調性能が低下してしまう不都合を未然に回避することができるようになる。また、オイル不足状態での運転も回避することができるようになるので、圧縮機2に破損が生じる不都合も未然に防止し、円滑且つ快適な空調運転を実現することができるようになる。
また、コントローラ32は圧縮機2を起動する際、放熱器温度THから所定値差し引いた値が、前回圧縮機2を停止したときの放熱器温度THより低いこと(i)、車室内の温度から所定値差し引いた値が外気温度Tamより低いこと(ii)、及び、放熱器温度THから所定値差し引いた値が室外熱交換器7の温度より低いこと(iii)、のうちの何れかが成立している場合、放熱器3に溜まっている冷媒が多いと判定するようにしたので、圧縮機2の起動時に放熱器4に多量の冷媒が溜まって寝込んでいることを的確に予測し、放熱器4の冷媒掃気運転を実行することができるようになる。
尚、実施例では各部の温度や圧力差ΔPで放熱器4に溜まっている冷媒の量を推定したが、放熱器4の冷媒貯留量を直接計測できる冷媒貯留量センサを用いて放熱器4に溜まって寝込んでいる冷媒の量を直接計測してもよい。また、実施例では前述した条件(i)について放熱器温度THについて判定したが、それに限らず、前回圧縮機2を停止したときの外気温度Tamや車室内の温度と、今回起動時の外気温度Tamや車室内の温度で判定してもよい。更に、実施例では前記条件(i)~(v)の何れかが成立したときに放熱器4に溜まっている冷媒が多いと判定したが、それに限らず、条件(i)~(v)のうちの何れか一つのみ、又は、それらのうちの二つを組み合わせて判定するようにしてもよい。
また、実施例では第1の運転モードとして暖房モード、除湿冷房モード、冷房モードを、また、第2の運転モードとして除湿暖房モード、MAX冷房モードを実行するようにしたが、それに限らず、第1の運転モードとして暖房モード、除湿冷房モード、冷房モードのうちの何れかを実行し、第2の運転モードも除湿暖房モードとMAX冷房モードの何れか一つを実行する車両用空気調和装置にも本発明は有効である。
更に、実施例で示した各運転モードの切換制御は、それに限られるものでは無く、車両用空気調和装置の能力や使用環境に応じて、外気温度Tam、車室内の湿度、目標吹出温度TAO、放熱器温度TH、目標放熱器温度TCO、吸熱器温度Te、目標吸熱器温度TEO、車室内の除湿要求の有無、等のパラメータの何れか、又は、それらの組み合わせ、それらの全てを採用して適切な条件を設定すると良い。
更にまた、補助加熱装置は実施例で示した補助ヒータ23に限られるものでは無く、ヒータで加熱された熱媒体を循環させて空気流通路内の空気を加熱する熱媒体循環回路や、エンジンで加熱されたラジエター水を循環するヒータコア等を利用してもよい。また、実施例で示した電磁弁30及び電磁弁40は、バイパス配管35の分岐部に設けられた一つの三方弁(流路切換装置)で構成し、圧縮機2から吐出された冷媒を放熱器4に流す状態とバイパス配管35に流す状態とに切り換えるようにしてもよい。即ち、上記各実施例で説明した冷媒回路Rの構成はそれに限定されるものでは無く、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
図1は本発明の一実施例の車両用空気調和装置1の構成図を示している。本発明を適用する実施例の車両は、エンジン(内燃機関)が搭載されていない電気自動車(EV)であって、バッテリに充電された電力で走行用の電動モータを駆動して走行するものであり(何れも図示せず)、本発明の車両用空気調和装置1も、バッテリの電力で駆動されるものとする。即ち、実施例の車両用空気調和装置1は、エンジン廃熱による暖房ができない電気自動車において、冷媒回路を用いたヒートポンプ運転により暖房モードを行い、更に、除湿暖房モード、除湿冷房モード、冷房モード、MAX冷房モード(最大冷房モード)の各運転モードを選択的に実行するものである。
尚、車両として電気自動車に限らず、エンジンと走行用の電動モータを供用する所謂ハイブリッド自動車にも本発明は有効であり、更には、エンジンで走行する通常の自動車にも適用可能であることは云うまでもない。
実施例の車両用空気調和装置1は、電気自動車の車室内の空調(暖房、冷房、除湿、及び、換気)を行うものであり、冷媒を圧縮する電動式の圧縮機2と、車室内空気が通気循環されるHVACユニット10の空気流通路3内に設けられ、圧縮機2から吐出された高温高圧の冷媒が冷媒配管13Gを介して流入し、この冷媒を車室内に放熱させる放熱器4と、暖房時に冷媒を減圧膨張させる電動弁から成る室外膨張弁6と、車室外に設けられて冷房時には放熱器として機能し、暖房時には蒸発器として機能すべく冷媒と外気との間で熱交換を行わせる室外熱交換器7と、冷媒を減圧膨張させる電動弁から成る室内膨張弁8と、空気流通路3内に設けられて冷房時及び除湿時に車室内外から冷媒に吸熱させる吸熱器9と、アキュムレータ12等が冷媒配管13により順次接続され、冷媒回路Rが構成されている。
そして、この冷媒回路Rには所定量の冷媒と潤滑用のオイルが充填されている。尚、室外熱交換器7には、室外送風機15が設けられている。この室外送風機15は、室外熱交換器7に外気を強制的に通風することにより、外気と冷媒とを熱交換させるものであり、これにより停車中(即ち、車速が0km/h)にも室外熱交換器7に外気が通風されるよう構成されている。
また、室外熱交換器7は冷媒下流側にレシーバドライヤ部14と過冷却部16を順次有し、室外熱交換器7から出た冷媒配管13Aは冷房時に開放される電磁弁17を介してレシーバドライヤ部14に接続され、過冷却部16の出口側の冷媒配管13Bは室内膨張弁8介して吸熱器9の入口側に接続されている。尚、レシーバドライヤ部14及び過冷却部16は構造的に室外熱交換器7の一部を構成している。
また、過冷却部16と室内膨張弁8間の冷媒配管13Bは、吸熱器9の出口側の冷媒配管13Cと熱交換関係に設けられ、両者で内部熱交換器19を構成している。これにより、冷媒配管13Bを経て室内膨張弁8に流入する冷媒は、吸熱器9を出た低温の冷媒により冷却(過冷却)される構成とされている。
また、室外熱交換器7から出た冷媒配管13Aは冷媒配管13Dに分岐しており、この分岐した冷媒配管13Dは、暖房時に開放される電磁弁21を介して内部熱交換器19の下流側における冷媒配管13Cに連通接続されている。この冷媒配管13Cがアキュムレータ12に接続され、アキュムレータ12は圧縮機2の冷媒吸込側に接続されている。更に、放熱器4の出口側の冷媒配管13Eは室外膨張弁6を介して室外熱交換器7の入口側に接続されている。
また、圧縮機2の吐出側と放熱器4の入口側の間の冷媒配管13Gには後述する除湿暖房とMAX冷房時に閉じられる電磁弁30(流路切換装置を構成する)が介設されている。この場合、冷媒配管13Gは電磁弁30の上流側でバイパス配管35に分岐しており、このバイパス配管35は除湿暖房とMAX冷房時に開放される電磁弁40(これも流路切換装置を構成する)を介して室外膨張弁6の下流側の冷媒配管13Eに連通接続されている。これらバイパス配管35、電磁弁30及び電磁弁40により本発明におけるバイパス装置45が構成される。
このようなバイパス配管35、電磁弁30及び電磁弁40によりバイパス装置45を構成したことで、後述する如く圧縮機2から吐出された冷媒を室外熱交換器7に直接流入させる除湿暖房モードやMAX冷房モードと、圧縮機2から吐出された冷媒を放熱器4に流入させる暖房モードや除湿冷房モード、冷房モードとの切り換えを円滑に行うことができるようになる。
また、吸熱器9の空気上流側における空気流通路3には、外気吸込口と内気吸込口の各吸込口が形成されており(図1では吸込口25で代表して示す)、この吸込口25には空気流通路3内に導入する空気を車室内の空気である内気(内気循環モード)と、車室外の空気である外気(外気導入モード)とに切り換える吸込切換ダンパ26が設けられている。更に、この吸込切換ダンパ26の空気下流側には、導入した内気や外気を空気流通路3に送給するための室内送風機(ブロワファン)27が設けられている。
また、図1において23は実施例の車両用空気調和装置1に設けられた補助加熱装置としての補助ヒータである。実施例の補助ヒータ23は電気ヒータであるPTCヒータにて構成されており、空気流通路3の空気の流れに対して、放熱器4の空気上流側となる空気流通路3内に設けられている。そして、補助ヒータ23に通電されて発熱すると、吸熱器9を経て放熱器4に流入する空気流通路3内の空気が加熱される。即ち、この補助ヒータ23が所謂ヒータコアとなり、車室内の暖房を行い、或いは、それを補完する。
また、補助ヒータ23の空気上流側における空気流通路3内には、当該空気流通路3内に流入し、吸熱器9を通過した後の空気流通路3内の空気(内気や外気)を補助ヒータ23及び放熱器4に通風する割合を調整するエアミックスダンパ28が設けられている。更に、放熱器4の空気下流側における空気流通路3には、FOOT(フット)、VENT(ベント)、DEF(デフ)の各吹出口(図1では代表して吹出口29で示す)が形成されており、この吹出口29には上記各吹出口から空気の吹き出しを切換制御する吹出口切換ダンパ31が設けられている。
次に、図2において32はプロセッサを備えたコンピュータの一例であるマイクロコンピュータから構成された制御装置としてのコントローラ(ECU)であり、このコントローラ32の入力には車両の外気温度(Tam)を検出する外気温度センサ33と、外気湿度を検出する外気湿度センサ34と、吸込口25から空気流通路3に吸い込まれる空気の温度を検出するHVAC吸込温度センサ36と、車室内の空気(内気)の温度を検出する内気温度センサ37と、車室内の空気の湿度を検出する内気湿度センサ38と、車室内の二酸化炭素濃度を検出する室内CO2濃度センサ39と、吹出口29から車室内に吹き出される空気の温度を検出する吹出温度センサ41と、圧縮機2の吐出冷媒圧力(吐出圧力Pd)を検出する吐出圧力センサ42と、圧縮機2の吐出冷媒温度を検出する吐出温度センサ43と、圧縮機2の吸込冷媒圧力を検出する吸込圧力センサ44と、圧縮機2の吸込冷媒温度を検出する吸込温度センサ55と、放熱器4の温度(放熱器4を経た空気の温度、又は、放熱器4自体の温度:放熱器温度TH)を検出する放熱器温度センサ46と、放熱器4の冷媒圧力(放熱器4内、又は、放熱器4を出た直後の冷媒の圧力:放熱器圧力PCI)を検出する放熱器圧力センサ47と、吸熱器9の温度(吸熱器9を経た空気の温度、又は、吸熱器9自体の温度:吸熱器温度Te)を検出する吸熱器温度センサ48と、吸熱器9の冷媒圧力(吸熱器9内、又は、吸熱器9を出た直後の冷媒の圧力)を検出する吸熱器圧力センサ49と、車室内への日射量を検出するための例えばフォトセンサ式の日射センサ51と、車両の移動速度(車速)を検出するための車速センサ52と、設定温度や運転モードの切り換えを設定するための空調(エアコン)操作部53と、室外熱交換器7の温度(室外熱交換器7から出た直後の冷媒の温度、又は、室外熱交換器7自体の温度:室外熱交換器温度TXO)を検出する室外熱交換器温度センサ54と、室外熱交換器7の冷媒圧力(室外熱交換器7内、又は、室外熱交換器7から出た直後の冷媒の圧力:室外熱交換器圧力PXO)を検出する室外熱交換器圧力センサ56の各出力が接続されている。また、コントローラ32の入力には更に、補助ヒータ23の温度(補助ヒータ23で加熱された直後の空気の温度、又は、補助ヒータ23自体の温度:補助ヒータ温度Tptc)を検出する補助ヒータ温度センサ50の出力も接続されている。
一方、コントローラ32の出力には、前記圧縮機2と、室外送風機15と、室内送風機(ブロワファン)27と、吸込切換ダンパ26と、エアミックスダンパ28と、吹出口切換ダンパ31と、室外膨張弁6、室内膨張弁8と、補助ヒータ23、電磁弁30(除湿用)、電磁弁17(冷房用)、電磁弁21(暖房用)、電磁弁40(これも除湿用)の各電磁弁が接続されている。そして、コントローラ32は各センサの出力と空調操作部53にて入力された設定に基づいてこれらを制御する。
以上の構成で、次に実施例の車両用空気調和装置1の動作を説明する。コントローラ32は実施例では暖房モード、除湿暖房モード、除湿冷房モード、冷房モード及びMAX冷房モード(最大冷房モード)の各運転モードを切り換えて実行する。先ず、各運転モードにおける冷媒の流れと制御の概略について説明する。
(1)暖房モード
コントローラ32により(オートモード)或いは空調操作部53へのマニュアル操作(マニュアルモード)により暖房モードが選択されると、コントローラ32は電磁弁21(暖房用)を開放し、電磁弁17(冷房用)を閉じる。また、電磁弁30(除湿用)を開放し、電磁弁40(除湿用)を閉じる。
そして、圧縮機2、及び、各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は図1に破線で示す如く、室内送風機27から吹き出されて吸熱器9を経た空気流通路3内の全ての空気が補助ヒータ23及び放熱器4に通風される状態とする。これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は電磁弁30を経て冷媒配管13Gから放熱器4に流入する。放熱器4には空気流通路3内の空気が通風されるので、空気流通路3内の空気は放熱器4内の高温冷媒(補助ヒータ23が動作するときは当該補助ヒータ23及び放熱器4)により加熱され、一方、放熱器4内の冷媒は空気に熱を奪われて冷却され、凝縮液化する。
放熱器4内で液化した冷媒は当該放熱器4を出た後、冷媒配管13Eを経て室外膨張弁6に至る。室外膨張弁6に流入した冷媒はそこで減圧された後、室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒は蒸発し、走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気中から熱を汲み上げる。即ち、冷媒回路Rがヒートポンプとなる。そして、室外熱交換器7を出た低温の冷媒は冷媒配管13A及び電磁弁21及び冷媒配管13Dを経て冷媒配管13Cからアキュムレータ12に入り、そこで気液分離された後、ガス冷媒が圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。放熱器4(補助ヒータ23が動作するときは当該補助ヒータ23及び放熱器4)にて加熱された空気は吹出口29から吹き出されるので、これにより車室内の暖房が行われることになる。
コントローラ32は、後述する目標吹出温度TAOから算出される目標放熱器温度TCO(放熱器温度THの目標値)から目標放熱器圧力PCO(放熱器圧力PCIの目標値)を算出し、この目標放熱器圧力PCOと、放熱器圧力センサ47が検出する放熱器4の冷媒圧力(放熱器圧力PCI。冷媒回路Rの高圧圧力)に基づいて圧縮機2の回転数を制御する。また、コントローラ32は、放熱器温度センサ46が検出する放熱器4の温度(放熱器温度TH)及び放熱器圧力センサ47が検出する放熱器圧力PCIに基づいて室外膨張弁6の弁開度を制御し、放熱器4の出口における冷媒の過冷却度SCを制御する。前記目標放熱器温度TCOは基本的にはTCO=TAOとされるが、制御上の所定の制限が設けられる。
また、コントローラ32はこの暖房モードにおいては、車室内空調に要求される暖房能力に対して放熱器4による暖房能力が不足する場合、その不足する分を補助ヒータ23の発熱で補完するように補助ヒータ23の通電を制御する。それにより、快適な車室内暖房を実現し、且つ、室外熱交換器7の着霜も抑制する。このとき、補助ヒータ23は放熱器4の空気上流側に配置されているので、空気流通路3を流通する空気は放熱器4の前に補助ヒータ23に通風されることになる。
ここで、補助ヒータ23が放熱器4の空気下流側に配置されていると、実施例の如くPCTヒータで補助ヒータ23を構成した場合には、補助ヒータ23に流入する空気の温度が放熱器4によって上昇するため、PTCヒータの抵抗値が大きくなり、電流値も低くなって発熱量が低下してしまうが、放熱器4の空気上流側に補助ヒータ23を配置することで、実施例の如くPTCヒータから構成される補助ヒータ23の能力を十分に発揮させることができるようになる。
(2)除湿暖房モード
次に、除湿暖房モードでは、コントローラ32は電磁弁17を開放し、電磁弁21を閉じる。また、電磁弁30を閉じ、電磁弁40を開放すると共に、室外膨張弁6の弁開度は全閉とする。そして、圧縮機2、及び、各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は図1に破線で示す如く、室内送風機27から吹き出されて吸熱器9を経た空気流通路3内の全ての空気が補助ヒータ23及び放熱器4に通風される状態とする。
これにより、圧縮機2から冷媒配管13Gに吐出された高温高圧のガス冷媒は、放熱器4に向かうこと無くバイパス配管35に流入し、電磁弁40を経て室外膨張弁6の下流側の冷媒配管13Eに至るようになる。このとき、室外膨張弁6は全閉とされているので、冷媒は室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒はそこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aから電磁弁17を経てレシーバドライヤ部14、過冷却部16と順次流入する。ここで冷媒は過冷却される。
室外熱交換器7の過冷却部16を出た冷媒は冷媒配管13Bに入り、内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気は冷却され、且つ、当該空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気流通路3内の空気は冷却され、且つ、除湿される。吸熱器9で蒸発した冷媒は内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cを介し、アキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。
このとき、室外膨張弁6の弁開度は全閉とされているので、圧縮機2から吐出された冷媒が室外膨張弁6から放熱器4に逆流入する不都合を抑制若しくは防止することが可能となる。これにより、冷媒循環量の低下を抑制若しくは解消して空調能力を確保することができるようになる。更に、この除湿暖房モードにおいてコントローラ32は、補助ヒータ23に通電して発熱させる。これにより、吸熱器9にて冷却され、且つ、除湿された空気は補助ヒータ23を通過する過程で更に加熱され、温度が上昇するので車室内の除湿暖房が行われることになる。
コントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)とその目標値である目標吸熱器温度TEOに基づいて圧縮機2の回転数を制御すると共に、補助ヒータ温度センサ50が検出する補助ヒータ温度Tptcと前述した目標放熱器温度TCOに基づいて補助ヒータ23の通電(発熱)を制御することで、吸熱器9での空気の冷却と除湿を適切に行いながら、補助ヒータ23による加熱で吹出口29から車室内に吹き出される空気温度の低下を的確に防止する。
これにより、車室内に吹き出される空気を除湿しながら、その温度を適切な暖房温度に制御することが可能となり、車室内の快適且つ効率的な除湿暖房を実現することができるようになる。また、前述した如く除湿暖房モードではエアミックスダンパ28は空気流通路3内の全ての空気を補助ヒータ23及び放熱器4に通風する状態とされるので、吸熱器9を経た空気を効率良く補助ヒータ23で加熱して省エネ性を向上させ、且つ、除湿暖房空調の制御性も向上させることができるようになる。
尚、補助ヒータ23は放熱器4の空気上流側に配置されているので、補助ヒータ23で加熱された空気は放熱器4を通過することになるが、この除湿暖房モードでは放熱器4に冷媒は流されないので、補助ヒータ23にて加熱された空気から放熱器4が吸熱してしまう不都合も解消される。即ち、放熱器4によって車室内に吹き出される空気の温度が低下してしまうことが抑制され、COPも向上することになる。
(3)除湿冷房モード
次に、除湿冷房モードでは、コントローラ32は電磁弁17を開放し、電磁弁21を閉じる。また、電磁弁30を開放し、電磁弁40を閉じる。そして、圧縮機2、及び、各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は図1に破線で示す如く、室内送風機27から吹き出されて吸熱器9を経た空気流通路3内の全ての空気が補助ヒータ23及び放熱器4に通風される状態とする。これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は電磁弁30を経て冷媒配管13Gから放熱器4に流入する。放熱器4には空気流通路3内の空気が通風されるので、空気流通路3内の空気は放熱器4内の高温冷媒により加熱され、一方、放熱器4内の冷媒は空気に熱を奪われて冷却され、凝縮液化していく。
放熱器4を出た冷媒は冷媒配管13Eを経て室外膨張弁6に至り、開き気味で制御される室外膨張弁6を経て室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒はそこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aから電磁弁17を経てレシーバドライヤ部14、過冷却部16と順次流入する。ここで冷媒は過冷却される。
室外熱交換器7の過冷却部16を出た冷媒は冷媒配管13Bに入り、内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気は冷却され、且つ、除湿される。
吸熱器9で蒸発した冷媒は内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cを介し、アキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。この除湿冷房モードではコントローラ32は補助ヒータ23に通電しないので、吸熱器9にて冷却され、除湿された空気は放熱器4を通過する過程で再加熱(暖房時よりも放熱能力は低い)される。これにより車室内の除湿冷房が行われることになる。
コントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)に基づいて圧縮機2の回転数を制御すると共に、前述した冷媒回路Rの高圧圧力に基づいて室外膨張弁6の弁開度を制御し、放熱器4の冷媒圧力(放熱器圧力PCI)を制御する。
(4)冷房モード
次に、冷房モードでは、コントローラ32は上記除湿冷房モードの状態において室外膨張弁6の弁開度を全開とする。尚、コントローラ32はエアミックスダンパ28を制御し、図1に実線で示す如く、室内送風機27から吹き出されて吸熱器9を通過した後の空気流通路3内の空気が、補助ヒータ23及び放熱器4に通風される割合を調整する。また、コントローラ32は補助ヒータ23に通電しない。
これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は電磁弁30を経て冷媒配管13Gから放熱器4に流入すると共に、放熱器4を出た冷媒は冷媒配管13Eを経て室外膨張弁6に至る。このとき室外膨張弁6は全開とされているので冷媒はそれを通過し、そのまま室外熱交換器7に流入し、そこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮液化する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aから電磁弁17を経てレシーバドライヤ部14、過冷却部16と順次流入する。ここで冷媒は過冷却される。
室外熱交換器7の過冷却部16を出た冷媒は冷媒配管13Bに入り、内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気は冷却される。また、空気中の水分は吸熱器9に凝結して付着する。
吸熱器9で蒸発した冷媒は内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cを介し、アキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。吸熱器9にて冷却され、除湿された空気が吹出口29から車室内に吹き出されるので(一部は放熱器4を通過して熱交換する)、これにより車室内の冷房が行われることになる。また、この冷房モードにおいては、コントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)とその目標値である目標吸熱器温度TEOに基づいて圧縮機2の回転数を制御する。
(5)MAX冷房モード(最大冷房モード)
次に、最大冷房モードとしてのMAX冷房モードでは、コントローラ32は電磁弁17を開放し、電磁弁21を閉じる。また、電磁弁30を閉じ、電磁弁40を開放すると共に、室外膨張弁6の弁開度は全閉とする。そして、圧縮機2、及び、各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は図3に示す如く補助ヒータ23及び放熱器4に空気流通路3内の空気が通風されない状態とする。但し、多少通風されても支障はない。また、コントローラ32は補助ヒータ23に通電しない。
これにより、圧縮機2から冷媒配管13Gに吐出された高温高圧のガス冷媒は、放熱器4に向かうこと無くバイパス配管35に流入し、電磁弁40を経て室外膨張弁6の下流側の冷媒配管13Eに至るようになる。このとき、室外膨張弁6は全閉とされているので、冷媒は室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒はそこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aから電磁弁17を経てレシーバドライヤ部14、過冷却部16と順次流入する。ここで冷媒は過冷却される。
室外熱交換器7の過冷却部16を出た冷媒は冷媒配管13Bに入り、内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気は冷却される。また、空気中の水分は吸熱器9に凝結して付着するので、空気流通路3内の空気は除湿される。吸熱器9で蒸発した冷媒は内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cを介し、アキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。このとき、室外膨張弁6は全閉とされているので、同様に圧縮機2から吐出された冷媒が室外膨張弁6から放熱器4に逆流入する不都合を抑制若しくは防止することが可能となる。これにより、冷媒循環量の低下を抑制若しくは解消して空調能力を確保することができるようになる。
ここで、前述した冷房モードでは放熱器4に高温の冷媒が流れているため、放熱器4からHVACユニット10への直接の熱伝導が少なからず生じるが、このMAX冷房モードでは放熱器4に冷媒が流れないため、放熱器4からHVACユニット10に伝達される熱で吸熱器9からの空気流通路3内の空気が加熱されることも無くなる。そのため、車室内の強力な冷房が行われ、特に外気温度Tamが高いような環境下では、迅速に車室内を冷房して快適な車室内空調を実現することができるようになる。また、このMAX冷房モードにおいても、コントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)とその目標値である目標吸熱器温度TEOに基づいて圧縮機2の回転数を制御する。
(6)運転モードの切換
空気流通路3内を流通される空気は上記各運転モードにおいて吸熱器9からの冷却や放熱器4(及び補助ヒータ23)からの加熱作用(エアミックスダンパ28で調整)を受けて吹出口29から車室内に吹き出される。コントローラ32は外気温度センサ33が検出する外気温度Tam、内気温度センサ37が検出する車室内の温度、前記ブロワ電圧、日射センサ51が検出する日射量等と、空調操作部53にて設定された車室内の目標車室内温度(設定温度)とに基づいて目標吹出温度TAOを算出し、各運転モードを切り換えて吹出口29から吹き出される空気の温度をこの目標吹出温度TAOに制御する。
この場合、コントローラ32は、外気温度Tam、車室内の湿度、目標吹出温度TAO、放熱器温度TH、目標放熱器温度TCO、吸熱器温度Te、目標吸熱器温度TEO、車室内の除湿要求の有無、等のパラメータに基づいて各運転モードの切り換えを行うことで、環境条件や除湿の要否に応じて的確に暖房モード、除湿暖房モード、除湿冷房モード、冷房モード及びMAX冷房モードを切り換え、快適且つ効率的な車室内空調を実現する。
(7)放熱器4の冷媒掃気運転
ここで、圧縮機2から吐出された冷媒を放熱器4に流す運転モード(本発明における第1の運転モード)である暖房モード、除湿冷房モード、又は、冷房モードから、室外膨張弁6の弁開度を全閉とし、電磁弁30を閉じ、電磁弁35を開いてバイパス装置45により放熱器4と室外膨張弁6をバイパスして圧縮機2から吐出された冷媒を室外熱交換器7に直接流入させる運転モード(本発明における第2の運転モード)である除湿暖房モード、又は、MAX冷房モードに切り換えた場合、そのときに放熱器4に残留している冷媒は、当該放熱器4内に寝込んだ状態となる。
また、放熱器4に冷媒を流さない運転モード(第2の運転モードである除湿暖房モードやMAX冷房モード)とした後、当該放熱器4の温度が低下すると、内部に残留した冷媒は凝縮するため、放熱器4の冷媒圧力は低下する。そのため、室外膨張弁6を全閉としても、圧縮機2の吐出圧力Pdと放熱器圧力PCIの圧力差ΔP(ΔP=Pd−PCI)から、室外膨張弁6には漏れが発生し、除湿暖房モードやMAX冷房モードでの運転中に室外膨張弁6を通って放熱器4に冷媒が逆流入する。これにより、放熱器4内に溜まって寝込む冷媒の量が増大していくことになる。
このように放熱器4内に冷媒が溜まって寝込み、その量が多くなると、冷媒回路R内の冷媒循環量が減少してしまうため、空調性能が低下してしまう。また、冷媒には潤滑用のオイルも含まれているため、圧縮機2に戻るオイル量が不足して焼き付きが発生し、最悪の場合には破損を来すようになる。そこで、コントローラ32は他の運転モード(暖房モード、除湿冷房モード、冷房モード)から除湿冷房モード、又は、MAX冷房モードに切り換える場合、先ず電磁弁30を閉じてから室外膨張弁6を一旦全開とし、その後、弁開度を全閉とする。このように、電磁弁30を閉じた状態で室外膨張弁6を全開とし、放熱器4から冷媒が流出し易くすることで、除湿冷房モードやMAX冷房モードに切り換えたときに放熱器4内に残留する冷媒の量をできるだけ少なくする。
更に、コントローラ32は圧縮機2の起動時や運転中に、放熱器4に溜まって寝込んでいる冷媒の量が多いか否か判定し、多いと判定された場合、又は、多いか否か不明な場合は、放熱器4の冷媒掃気運転を実行する。次に、図4~図6を参照しながら、このコントローラ32による放熱器4の冷媒掃気運転について説明する。
図4はコントローラ32による放熱器4の冷媒掃気運転を説明するフローチャートである。コントローラ32は、図4のステップS1で車両用空気調和装置(HPシステム)1が故障判定されているか否か判断し、故障判定されている場合は空調操作部53にて警報し、運転を停止する。故障判定されていない場合は(正常)、ステップS2に進み、現在選択されている運転モード(HPモード)が除湿暖房モード、又は、MAX冷房モードであるか否か判断する。現在選択されている運転モードが除湿暖房モードかMAX冷房モードである場合は、ステップS3に進み、圧縮機2(HP)を起動しようとしているとき(起動中)か否か判断する。
(7−1)起動時の冷媒寝込み判定
ステップS3で現在圧縮機2を起動しているとき(起動中)の場合は、当該圧縮機2を起動する前に、ステップS4に進んで放熱器4に溜まって寝込んでいる冷媒が多いか否か判定する。ここで、コントローラ32は、前回圧縮機2を停止したときの外気温度センサ33が検出する外気温度Tam、内気温度センサ37が検出する車室内の温度、及び、放熱器温度センサ46が検出する放熱器温度TH、室外熱交換器温度センサ54が検出する室外熱交換器7の温度を記憶している。そして、実施例では以下の(i)~(v)の条件のうちの何れかが成立している場合、コントローラ32は放熱器4に溜まって寝込んでいる冷媒が多い、又は、多いか否か不明と判定する。即ち、
(i)前回圧縮機2を停止したときの放熱器温度TH>(今回起動時の放熱器温度TH−所定値(例えば5~10deg))
(ii)外気温度Tam>(車室内の温度−所定値)
(iii)室外熱交換器7の温度>(放熱器温度TH−所定値)
(iv)前回停止時の状態が不明
(v)掃気運転終了フラグfSCAVrefがリセット(=0)
上記条件(i)は、今回起動時の放熱器温度THが、前回圧縮機2を停止したときの放熱器温度THより高いがそれに近い値(前回停止時の放熱器温度TH+所定値より低い値)か、それより低いこと、条件(ii)は、車室内の温度が外気温度Tamより高いがそれに近い値(外気温度Tam+所定値より低い値)か、それより低いこと、条件(iii)は、放熱器温度THが室外熱交換器7の温度より高いがそれに近い値(室外熱交換器7の温度+所定値より低い値)か、それよりも低いことであり、何れも冷媒回路Rの他の部分よりも放熱器温度THが低くなっていて、放熱器4に冷媒が溜まって寝込んでいる量が多い状況となっていることを意味している。
また、上記条件(iv)は、前回圧縮機2を停止したときの状態(外気温度Tam、車室内の温度、放熱器温度TH、室外熱交換器7の温度)が不明であることであり、これは放熱器4に溜まって寝込んでいる冷媒の量が多いか否か不明であることを意味している。尚、条件(v)は後述する掃気運転終了フラグfSCAVrefがリセット(=0)されていることであり、これは冷媒掃気運転を実施していないことを意味する。
コントローラ32は、圧縮機2を起動する際、ステップS4の判定で条件(i)~(v)のうちの何れかが成立しており、放熱器4に溜まって寝込んでいる冷媒が多い、又は、多いか否か不明と判定した場合(Y)、ステップS5に進んで放熱器4の冷媒掃気運転を実行する。
(7−2)コントローラ32による冷媒掃気運転の選択
コントローラ32はステップS5の冷媒掃気運転で、現在選択されている運転モードが除湿暖房モードである場合、外気温度Tamが所定値(例えば+5℃)より低く、且つ、吸熱器温度Teから所定値(例えば2deg)差し引いた値(Te−2)が目標吸熱器温度TEOより低く、且つ、目標放熱器温度TCOが所定値(例えば+50℃)より高い条件(vi)が成立している場合、運転モードを暖房モードとして圧縮機2を起動する。この暖房モードでは前述した如く放熱器4に冷媒が流れるので、放熱器4内に溜まって寝込んだ冷媒を追い出すことができる。即ち、この場合暖房モードが冷媒掃気運転となる。コントローラ32は係る暖房モード(冷媒掃気運転)での運転を所定時間(例えば1分程度)実行した後、冷媒掃気運転を終了して除湿暖房モードに運転モードを切り換える。
また、コントローラ32は上記暖房モードを実行しているとき、放熱器4の冷媒過冷却度SCが所定値以下となるように室外膨張弁6の弁開度を制御するか、或いは、室外膨張弁6の弁開度を固定する。それにより、圧縮機2の起動時に除湿暖房モードの前に実行される暖房モードや、後述する除湿暖房モードでの運転中に実行される暖房モードで車室内に吹き出される空気の温度が必要以上に高くなる不都合を回避する。
尚、係る条件(vi)が成立しない場合は、コントローラ32は運転モードを除湿冷房モード、又は、冷房モードとして圧縮機2を起動する。この除湿冷房モードや冷房モードでも前述した如く放熱器4に冷媒が流れるので、放熱器4内に溜まって寝込んだ冷媒を追い出すことができる。即ち、この場合、除湿冷房モードや冷房モードが冷媒掃気運転となる。コントローラ32はこの場合も除湿冷房モード、又は、冷房モード(冷媒掃気運転)での運転を所定時間(例えば1分程度)実行した後、冷媒掃気運転を終了して除湿暖房モードに運転モードを切り換える。このように条件(vi)で暖房モード、又は、除湿冷房モード(又は、冷房モード)の何れかを冷媒掃気運転として選択することにより、除湿暖房モードが選択されているときの冷媒掃気運転による車室内の快適性の悪化を最小限に抑えることができるようになる。
一方、コントローラ32はステップS5で、現在選択されている運転モードがMAX冷房モードである場合、運転モードを冷房モードとして起動する。図5は起動時にMAX冷房モードが選択されているときに、放熱器4に溜まって寝込んでいる冷媒が多いと判定された場合、又は、多いか否か不明な場合にコントローラ32が実行する制御を説明するタイミングチャートである。尚、図中ΔPdxは吐出圧力センサ42が検出する吐出圧力Pdと室外熱交換器温度センサ54が検出する室外熱交換器7の温度から換算される室外熱交換器7の圧力(或いは、室外熱交換器圧力センサ56が検出する室外熱交換器7の圧力)との差から得られる電磁弁40前後の差圧、ΔPixは同じく吐出圧力Pdと放熱器圧力PCIから得られる電磁弁30の前後の差圧である。また、NCは圧縮機2の回転数である。
図5に示されるように、コントローラ32は起動時に先ず冷房モードで起動する(電磁弁30は開、電磁弁40は閉)。その後、所定時間(例えば1分程度)経過した場合、MAX冷房モードに各電磁弁30、40を切り換え(電磁弁30は閉、電磁弁40は開)、圧縮機2の回転数NCを一旦低下させ、室外膨張弁6を全閉とした後、MAX冷房モードでの圧縮機2の制御に移行する。起動時に実行される冷房モードでも前述した如く放熱器4に冷媒が流れるので、放熱器4内に溜まって寝込んだ冷媒を追い出すことができる。
即ち、この場合冷房モードが冷媒掃気運転となる。コントローラ32は上記のように冷房モード(冷媒掃気運転)での運転を所定時間実行した後、冷媒掃気運転を終了してMAX冷房モードに切り換えることで、圧縮機2の起動時や後述する運転中にMAX冷房モードが選択されているときの冷媒掃気運転による車室内の快適性の悪化も最小限に抑えることができるようになる。
ここで、コントローラ32は、係る冷媒掃気運転を実行する所定時間を圧縮機2の回転数NCが高い場合は短く、低い場合は長くする方向で前記所定時間を変更する。この変更は、例えば前述した1分を中心にそれより長くするか、短くするかで実行される。圧縮機2の回転数NCが高い程、放熱器4から迅速に冷媒を追い出すことができるので、このように冷媒掃気運転を実行する所定時間を変更することで、放熱器4に溜まって寝込んでいる冷媒を確実に追い出しながら、放熱器4の冷媒掃気運転を最小限の時間で終わらせることが可能となる。
コントローラ32はステップS6で上記冷媒掃気運転が終了したか否か判断し、前記所定時間中で未だ終了していないときはステップS8で掃気運転終了フラグfSCAVrefをリセット(=0)し、所定時間実行して冷媒掃気運転が終了したときは、ステップS7で掃気運転終了フラグfSCAVrefをセット(=1)する。
(7−3)運転中の冷媒寝込み判定
他方、ステップS3で起動後であるとき、即ち、除湿暖房モードかMAX冷房モードで運転中であるときは、コントローラ32はステップS9に進んで放熱器4に溜まって寝込んでいる冷媒の量、即ち、冷媒寝込み量STrefを演算して推定する。前述した如く除湿暖房モードやMAX冷房モードでは室外膨張弁6が全閉とされ、電磁弁30も閉じられるため、放熱器4内には冷媒が封じ込まれることになる。この封じ込まれた冷媒はその後の放熱器4の温度低下で凝縮するため、放熱器圧力PCIは低下する。
一方、全閉となっている室外膨張弁6は、その前後(放熱器4側と圧縮機2側)の差圧が大きくなる程、漏れる冷媒の量が多くなる。図6はこの様子を示しており、室外膨張弁6の単位時間当たりの冷媒漏れ量Lref(単位はg/sec)は、圧縮機2の吐出圧力Pdと放熱器圧力PCIの圧力差ΔP(ΔP=Pd−PCI。単位はMPa)に比例して多くなる。このときの比例式はLref=f(ΔP)で示される。即ち、この圧力差ΔPに基づいて室外膨張弁6から放熱器4への冷媒の漏れ量を的確に推定することができる。
コントローラ32は、ステップS9で上記単位時間当たりの冷媒漏れ量Lrefを積分することで、除湿暖房モードやMAX冷房モードでの運転中に室外膨張弁6から放熱器4に漏れて溜まった冷媒の量を、即ち、冷媒寝込み量STrefを算出する。このときの積分式は図4や図6に示す式(I)で示される。
冷媒寝込み量STref=∫Lrefdt=∫{f(ΔP)}dt ・・(I)
そして、コントローラ32はステップS10に進み、ステップS9で算出された冷媒寝込み量Lrefが所定値以上となったか否か判断し(STref≧所定値)、所定値未満である場合は冷媒寝込みなしと判定し、所定値以上である場合は冷媒寝込みと判定してステップS5に進み、冷媒掃気運転を実行する。尚、この場合の所定値は、放熱器4に通常設けられるレシーバタンクの容量、又は、プラトー領域幅(当該レシーバタンクに溜まるまで変化しなくなる領域。溢れ出して変化し出す。)とする。即ち、放熱器4のレシーバタンクの容量と同じくらい寝込んでも許容するということである。
この場合にステップS5で実行される冷媒掃気運転も前述したものと同様である。即ち、現在運転している運転モードが除湿暖房モードであるとき、前述した条件(vi)が成立している場合は、コントローラ32は運転モードを暖房モードに切り換える。そして、コントローラ32は係る暖房モード(冷媒掃気運転)での運転を所定時間(同様に1分程度)実行した後、冷媒掃気運転を終了して除湿暖房モードに運転モードを切り換え、ステップS6からステップS7に進む。この場合の暖房モードでの放熱器4の冷媒過冷却度SCの制御も前述と同様である。
また、条件(vi)が成立しない場合は、コントローラ32は運転モードを除湿冷房モード、又は、冷房モードに切り換える。そして、コントローラ32はこの場合も除湿冷房モード、又は、冷房モード(冷媒掃気運転)での運転を所定時間(同様に1分程度)実行した後、冷媒掃気運転を終了して除湿暖房モードに運転モードを切り換え、ステップS6からステップS7に進む。
一方、現在運転している運転モードがMAX冷房モードであるとき、コントローラ32は運転モードを冷房モード(冷媒掃気運転)に切り換える。その後、所定時間(同様に1分程度)経過した場合、コントローラ32は冷媒掃気運転を終了して運転モードをMAX冷房モードに切り換え、ステップS6からステップS7に進む。この場合の所定時間も圧縮機2の回転数NCに応じて前述同様に変更される。
このようにして圧力差ΔPに基づいて冷媒寝込み量STrefを演算することで、コントローラ32は除湿暖房モードやMAX冷房モードでの運転中に室外膨張弁6から漏れて放熱器4に逆流入する冷媒の量を的確に推定し、放熱器4の冷媒掃気運転を実行することができるようになる。
以上詳述した如くコントローラ32が放熱器4に溜まっている冷媒が多いか否か判定し、多いと判定された場合、又は、多いか否か不明な場合には、第1の運転モード(暖房モード、除湿冷房モード、冷房モード)から圧縮機2を起動すること、若しくは、第2の運転モード(除湿暖房モードやMAX冷房モード)から上記第1の運転モードに切り換えることにより、放熱器4の冷媒掃気運転を実行した後、上記第2の運転モードに切り換えるようにしたので、放熱器4に冷媒を流さない除湿暖房モードやMAX冷房モード(第2の運転モード)で起動するときに放熱器4に溜まって寝込んでいる冷媒、若しくは、除湿暖房モードやMAX冷房モード(第2の運転モード)での運転中に放熱器4に溜まって寝込んだ冷媒を、上記第1の運転モードで放熱器4から追い出すことができるようになる。
これにより、放熱器4に多量の冷媒が寝込んで冷媒循環量が減少し、空調性能が低下してしまう不都合を未然に回避することができるようになる。また、オイル不足状態での運転も回避することができるようになるので、圧縮機2に破損が生じる不都合も未然に防止し、円滑且つ快適な空調運転を実現することができるようになる。
また、コントローラ32は圧縮機2を起動する際、放熱器温度THから所定値差し引いた値が、前回圧縮機2を停止したときの放熱器温度THより低いこと(i)、車室内の温度から所定値差し引いた値が外気温度Tamより低いこと(ii)、及び、放熱器温度THから所定値差し引いた値が室外熱交換器7の温度より低いこと(iii)、のうちの何れかが成立している場合、放熱器3に溜まっている冷媒が多いと判定するようにしたので、圧縮機2の起動時に放熱器4に多量の冷媒が溜まって寝込んでいることを的確に予測し、放熱器4の冷媒掃気運転を実行することができるようになる。
尚、実施例では各部の温度や圧力差ΔPで放熱器4に溜まっている冷媒の量を推定したが、放熱器4の冷媒貯留量を直接計測できる冷媒貯留量センサを用いて放熱器4に溜まって寝込んでいる冷媒の量を直接計測してもよい。また、実施例では前述した条件(i)について放熱器温度THについて判定したが、それに限らず、前回圧縮機2を停止したときの外気温度Tamや車室内の温度と、今回起動時の外気温度Tamや車室内の温度で判定してもよい。更に、実施例では前記条件(i)~(v)の何れかが成立したときに放熱器4に溜まっている冷媒が多いと判定したが、それに限らず、条件(i)~(v)のうちの何れか一つのみ、又は、それらのうちの二つを組み合わせて判定するようにしてもよい。
また、実施例では第1の運転モードとして暖房モード、除湿冷房モード、冷房モードを、また、第2の運転モードとして除湿暖房モード、MAX冷房モードを実行するようにしたが、それに限らず、第1の運転モードとして暖房モード、除湿冷房モード、冷房モードのうちの何れかを実行し、第2の運転モードも除湿暖房モードとMAX冷房モードの何れか一つを実行する車両用空気調和装置にも本発明は有効である。
更に、実施例で示した各運転モードの切換制御は、それに限られるものでは無く、車両用空気調和装置の能力や使用環境に応じて、外気温度Tam、車室内の湿度、目標吹出温度TAO、放熱器温度TH、目標放熱器温度TCO、吸熱器温度Te、目標吸熱器温度TEO、車室内の除湿要求の有無、等のパラメータの何れか、又は、それらの組み合わせ、それらの全てを採用して適切な条件を設定すると良い。
更にまた、補助加熱装置は実施例で示した補助ヒータ23に限られるものでは無く、ヒータで加熱された熱媒体を循環させて空気流通路内の空気を加熱する熱媒体循環回路や、エンジンで加熱されたラジエター水を循環するヒータコア等を利用してもよい。また、実施例で示した電磁弁30及び電磁弁40は、バイパス配管35の分岐部に設けられた一つの三方弁(流路切換装置)で構成し、圧縮機2から吐出された冷媒を放熱器4に流す状態とバイパス配管35に流す状態とに切り換えるようにしてもよい。即ち、上記各実施例で説明した冷媒回路Rの構成はそれに限定されるものでは無く、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
1 車両用空気調和装置
2 圧縮機
3 空気流通路
4 放熱器
6 室外膨張弁
7 室外熱交換器
8 室内膨張弁
9 吸熱器
23 補助ヒータ(補助加熱装置)
27 室内送風機(ブロワファン)
28 エアミックスダンパ
30、40 電磁弁(流路切換装置)
31 吹出口切換ダンパ
32 コントローラ(制御装置)
35 バイパス配管
45 バイパス装置
R 冷媒回路
2 圧縮機
3 空気流通路
4 放熱器
6 室外膨張弁
7 室外熱交換器
8 室内膨張弁
9 吸熱器
23 補助ヒータ(補助加熱装置)
27 室内送風機(ブロワファン)
28 エアミックスダンパ
30、40 電磁弁(流路切換装置)
31 吹出口切換ダンパ
32 コントローラ(制御装置)
35 バイパス配管
45 バイパス装置
R 冷媒回路
Claims (8)
- 冷媒を圧縮する圧縮機と、
車室内に供給する空気が流通する空気流通路と、
冷媒を放熱させて前記空気流通路から前記車室内に供給する空気を加熱するための放熱器と、
冷媒を吸熱させて前記空気流通路から前記車室内に供給する空気を冷却するための吸熱器と、
前記車室外に設けられた室外熱交換器と、
前記放熱器を出て前記室外熱交換器に流入する冷媒を減圧するための室外膨張弁と、
前記放熱器及び前記室外膨張弁をバイパスして前記圧縮機から吐出された冷媒を前記室外熱交換器に流すためのバイパス装置と、
制御装置を備え、
該制御装置により、前記圧縮機から吐出された冷媒を前記放熱器に流す第1の運転モードと、前記室外膨張弁を全閉とし、前記バイパス装置により前記放熱器及び前記室外膨張弁をバイパスして前記圧縮機から吐出された冷媒を前記室外熱交換器に直接流入させる第2の運転モードを切り換えて実行する車両用空気調和装置において、
前記制御装置は、前記放熱器に溜まっている冷媒が多いか否か判定し、多いと判定された場合、又は、多いか否か不明な場合には、前記第1の運転モードから前記圧縮機を起動すること、若しくは、前記第2の運転モードから前記第1の運転モードに切り換えることにより、前記放熱器の冷媒掃気運転を実行した後、前記第2の運転モードに切り換えることを特徴とする車両用空気調和装置。 - 前記制御装置は、前記圧縮機を起動する際、
外気温度、前記車室内の温度、又は、前記放熱器の温度から所定値差し引いた値が、前回圧縮機を停止したときの外気温度、車室内の温度、又は、放熱器の温度より低いこと、
前記車室内の温度から所定値差し引いた値が外気温度より低いこと、及び、
前記放熱器の温度から所定値差し引いた値が前記室外熱交換器の温度より低いこと、
のうちの何れか、又は、それらの組み合わせ、若しくは、それらの全てが成立している場合、前記放熱器に溜まっている冷媒が多いと判定することを特徴とする請求項1に記載の車両用空気調和装置。 - 前記制御装置は、前記第2の運転モードを実行している際、前記圧縮機の吐出冷媒圧力である吐出圧力Pdと前記放熱器の冷媒圧力である放熱器圧力PCIとの差に基づいて前記放熱器への冷媒の漏れ量を推定し、当該漏れ量から前記放熱器に溜まっている冷媒の量を算出して、当該冷媒の量が所定値以上となった場合、前記放熱器に溜まっている冷媒が多いと判定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用空気調和装置。
- 前記制御装置は、前記放熱器の冷媒掃気運転を所定時間実行すると共に、前記圧縮機の回転数が高い場合は短く、低い場合は長くする方向で前記所定時間を変更することを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちの何れかに記載の車両用空気調和装置。
- 前記空気流通路から前記車室内に供給する空気を加熱するための補助加熱装置を備え、
前記制御装置は、
前記第1の運転モードとして、
前記圧縮機から吐出された冷媒を前記放熱器に流して放熱させ、放熱した当該冷媒を前記室外膨張弁で減圧した後、前記室外熱交換器にて吸熱させる暖房モードと、
前記圧縮機から吐出された冷媒を前記放熱器から前記室外熱交換器に流して当該放熱器及び室外熱交換器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、前記吸熱器にて吸熱させる除湿冷房モードと、
前記圧縮機から吐出された冷媒を前記放熱器から前記室外熱交換器に流して当該室外熱交換器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、前記吸熱器にて吸熱させる冷房モードのうちの何れか、又は、それらの組み合わせ、若しくは、それらの全てを有すると共に、
前記第2の運転モードとして、
前記圧縮機から吐出された冷媒を前記バイパス装置により前記室外熱交換器に流して放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、前記吸熱器にて吸熱させ、且つ、前記補助加熱装置を発熱させる除湿暖房モードと、
前記圧縮機から吐出された冷媒を前記バイパス装置により前記室外熱交換器に流して放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、前記吸熱器にて吸熱させる最大冷房モードのうちの何れか、又は、双方を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちの何れかに記載の車両用空気調和装置。 - 前記制御装置は、前記除湿暖房モードで前記圧縮機を起動する際、又は、前記除湿暖房モードでの運転中、前記放熱器に溜まっている冷媒が多いと判定された場合、又は、多いか否か不明な場合、
外気温度が所定値より低く、且つ、前記吸熱器の温度である吸熱器温度Teから所定値差し引いた値が吸熱器温度Teの目標値である目標吸熱器温度TEOより低く、且つ、前記放熱器の温度の目標値である目標放熱器温度TCOが所定値より高い条件が成立するときは、前記暖房モードで前記圧縮機を起動し、又は、前記暖房モードに切り換えることで前記冷媒掃気運転を実行した後、前記除湿暖房モードに切り換えると共に、
前記条件が成立しないときは、前記除湿冷房モード、若しくは、前記冷房モードで前記圧縮機を起動し、又は、前記除湿冷房モード、若しくは、前記冷房モードに切り換えることで前記冷媒掃気運転を実行した後、前記除湿暖房モードに切り換えることを特徴とする請求項5に記載の車両用空気調和装置。 - 前記制御装置は、前記暖房モードを実行する際、前記放熱器における冷媒の過冷却度SCが所定値以下となるように前記室外膨張弁の弁開度を制御し、若しくは、当該弁開度を固定することを特徴とする請求項6に記載の車両用空気調和装置。
- 前記制御装置は、前記最大冷房モードで前記圧縮機を起動する際、又は、前記最大冷房モードでの運転中、前記放熱器に溜まっている冷媒が多いと判定された場合、又は、多いか否か不明な場合、前記冷房モードで前記圧縮機を起動し、又は、前記冷房モードに切り換えることで前記冷媒掃気運転を実行した後、前記最大冷房モードに切り換えることを特徴とする請求項5乃至請求項7のうちの何れかに記載の車両用空気調和装置。
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---|---|
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2016
- 2016-02-26 JP JP2016035616A patent/JP6719923B2/ja active Active
-
2017
- 2017-02-21 WO PCT/JP2017/008038 patent/WO2017146265A1/ja active Application Filing
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