本発明の態様に係る露光装置、露光システム、基板処理方法、および、デバイス製造装置について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。なお、本発明の態様は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、多様な変更または改良を加えたものも含まれる。つまり、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれ、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態において、基板(被照射体である対象物)Pに露光処理を施す露光装置EXを含むデバイス製造システム10の概略構成図である。なお、以下の説明においては、特に断わりのない限り、XYZ直交座標系を設定し、図に示す矢印にしたがって、X方向、Y方向、およびZ方向を説明する。
デバイス製造システム10は、例えば、電子デバイスとしてのフレキシブル・ディスプレイを製造する製造ラインに組み込まれる製造システムである。フレキシブル・ディスプレイとしては、例えば、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ等がある。デバイス製造システム10は、可撓性のシート状の基板(シート基板)Pをロール状に巻いた図示しない供給ロールから基板Pが送出され、送出された基板Pに対して各種処理を連続的に施した後、各種処理後の基板Pを図示しない回収ロールで巻き取る、いわゆる、ロール・ツー・ロール(Roll To Roll)方式の構造を有する。基板Pは、基板Pの搬送方向が長手方向(長尺)となり、幅方向が短手方向(短尺)となる帯状の形状を有する。各種処理後の基板Pは、複数の電子デバイスの各々の形成領域(露光領域)が長尺方向に沿って連なった状態となっており、いわゆる、多面取り用の基板となっている。前記供給ロールから送られた基板Pは、順次、プロセス装置PR1、露光装置EX、および、プロセス装置PR2等で各種処理が施され、前記回収ロールで巻き取られる。ここでは、フレキシブルな基板P上の1つの露光領域に、1つまたは複数のディスプレイ用パネルを形成するものとするが、その他の電子デバイスとして、生体用のフレキシブル・センサ、液晶ディスプレイ用のフレキシブルなカラーフィルターや配向膜フィルム、またはフレキシブルな多層配線フィルム(長尺の配線用ハーネス)等を形成してもよい。
なお、X方向は、水平面内において、プロセス装置PR1から露光装置EXを経てプロセス装置PR2に向かう方向である。Y方向は、水平面内においてX方向に直交する方向であり、基板Pの幅方向である。Z方向は、X方向とY方向とに直交する方向(上方向)であり、-Z方向は、重力が働く方向と平行である。
基板Pは、例えば、樹脂フィルム、若しくは、ステンレス鋼等の金属または合金からなる箔(フォイル)等が用いられる。樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、および酢酸ビニル樹脂のうち、少なくとも1つ以上を含んだものを用いてもよい。また、基板Pの厚みや剛性(ヤング率)は、露光装置EXの搬送路を通る際に、基板Pに座屈による折れ目や非可逆的なシワが生じないような範囲であればよい。基板Pの母材として、厚みが25μm~200μm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)等のフィルムは、好適なシート基板の典型である。
基板Pは、プロセス装置PR1、露光装置EX、および、プロセス装置PR2で施される各処理において熱を受ける場合があるため、熱膨張係数が顕著に大きくない材質の基板Pを選定することが好ましい。例えば、無機フィラーを樹脂フィルムに混合することによって熱膨張係数を抑えることができる。無機フィラーは、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、または、酸化ケイ素等でもよい。また、基板Pは、フロート法等で製造された厚さ100μm程度の極薄ガラスの単層体であってもよいし、この極薄ガラスに上記の樹脂フィルム、箔等を貼り合わせた積層体であってもよい。
ところで、基板Pの可撓性とは、基板Pに自重程度の力を加えてもせん断したり破断したりすることはなく、その基板Pを撓めることが可能な性質をいう。また、自重程度の力によって屈曲する性質も可撓性に含まれる。また、基板Pの材質、大きさ、厚さ、基板P上に成膜される層構造、温度、湿度等の環境等に応じて、可撓性の程度は変わる。いずれにしろ、本実施の形態によるデバイス製造システム10内の搬送路に設けられる各種の搬送用ローラ、回転ドラム等の搬送方向転換用の部材に基板Pを正しく巻き付けた場合に、座屈して折り目がついたり、破損(破れや割れが発生)したりせずに、基板Pを滑らかに搬送できれば、可撓性の範囲といえる。
プロセス装置PR1は、露光装置EXで露光処理される基板Pを長尺方向に沿って+X方向側に連続的に搬送しつつ、基板Pに対して前工程の処理を行う。前工程の処理が行われた基板Pは露光装置EXへ向けて搬送される。この前工程の処理により、露光装置EXへ送られる基板Pは、その表面に感光性機能層(感光層)が形成された基板(感光基板)Pとなっている。
この感光性機能層は、溶液として基板P上に塗布され、乾燥することによって層(膜)となる。感光性機能層の典型的なものはフォトレジストであるが、現像処理が不要な材料として、紫外線の照射を受けた部分の親撥液性が改質される感光性シランカップリング剤(SAM)、或いは紫外線の照射を受けた部分にメッキ還元基が露呈する感光性還元剤等がある。感光性機能層として感光性シランカップリング剤を用いる場合は、基板P上の紫外線で露光されたパターン部分が撥液性から親液性に改質される。そのため、親液性となった部分の上に導電性インク(銀や銅等の導電性ナノ粒子を含有するインク)や半導体材料を含有した液体等を選択塗布することで、パターン層を形成することができる。感光性機能層として、感光性還元剤を用いる場合は、基板P上の紫外線で露光されたパターン部分にメッキ還元基が露呈する。そのため、露光後、基板Pを直ちにパラジウムイオン等を含むメッキ液中に一定時間浸漬することで、パラジウムによるパターン層が形成(析出)される。このようなメッキ処理はアディティブ(additive)なプロセスであるが、その他、サブトラクティブ(subtractive)なプロセスとしてのエッチング処理を前提にする場合、露光装置EXへ送られる基板Pは、母材をPETやPENとし、その表面にアルミニウム(Al)や銅(Cu)等の金属性薄膜を全面または選択的に蒸着し、さらにその上にフォトレジスト層を積層したものであってもよい。
露光装置EXは、プロセス装置PR1から搬送されてきた基板Pを長尺方向に沿って+X方向側に連続的に搬送しつつ、感光性機能層が形成された基板Pの被照射面(感光面)に対して、ディスプレイ用の回路または配線等の所定のパターンを露光する。これにより、露光した所定のパターンに応じた潜像が基板Pの感光性機能層に形成される。基板Pは、搬送方向に沿って連続的に搬送されるので、露光装置EXによってパターンが露光される露光領域Wは、基板Pの長尺方向に沿って所定の間隔をあけて複数設けられる(図3参照)。この露光領域Wに電子デバイスが形成されるので、露光領域Wは、デバイス形成領域でもある。なお、電子デバイスは、複数のパターン層(パターンが形成された層)が重ね合わされることで構成されるので、露光装置EXによって各層に対応したパターンが露光されることになる。
プロセス装置PR2は、露光装置EXで露光処理された基板Pを長尺方向に沿って+X方向側に連続的に搬送しつつ、基板Pに対しての後工程の処理(例えば、メッキ処理または現像・エッチング処理等)を行う。この後工程の処理により、潜像に応じたパターン層が基板P上に形成される。
上述したように、電子デバイスは、複数のパターン層が重ね合わされることで構成されるので、デバイス製造システム10の少なくとも各処理を経て、1つのパターン層が形成される。そのため、電子デバイスを形成するために、図1に示すようなデバイス製造システム10の各処理を少なくとも2回は経なければならない。基板Pが巻き取られた回収ロールを供給ロールとして別のデバイス製造システム10に装着することで、パターン層を積層することができる。そのような動作を繰り返して、電子デバイスが形成される。処理後の基板Pは、複数の電子デバイス、または電子デバイスの特定のパターン層が形成された領域が所定の間隔をあけて基板Pの長尺方向に沿って連なった状態となる。
電子デバイスが連なった状態で形成された基板Pを回収した回収ロールは、図示しないダイシング装置に装着されてもよい。回収ロールが装着されたダイシング装置は、処理後の基板Pを電子デバイスごとに分割(ダイシング)することで、複数個の電子デバイスにする。基板Pの寸法は、例えば、幅方向(短尺となる方向)の寸法が10cm~2m程度であり、長さ方向(長尺となる方向)の寸法が10m以上である。なお、基板Pの寸法は、上記した寸法に限定されない。
次に、露光装置EXについて詳しく説明する。露光装置EXは、温調チャンバーECV内に格納されている。この温調チャンバーECVは、内部を所定の温度に保つことで、内部において搬送される基板Pの温度による形状変化を抑制する。温調チャンバーECVは、パッシブまたはアクティブな防振ユニットSU1、SU2を介して製造工場の設置面Eに配置される。防振ユニットSU1、SU2は、設置面Eからの振動を低減する。この設置面Eは、設置土台上の面であってもよく、床であってもよい。露光装置EXは、基板搬送機構12と、第1のパターン露光部(露光部)EXH1と、第2のパターン露光部(露光部)EXH2と、制御装置14と、複数のアライメント顕微鏡ALG(ALG1~ALG4)とを少なくとも備えている。制御装置14は、露光装置EXの各部(基板搬送機構12、第1のパターン露光部EXH1、第2のパターン露光部EXH2、アライメント顕微鏡ALG等)を制御するものである。この制御装置14は、コンピュータと、プログラムやパターンデータ等が記憶された記憶媒体等とを含み、前記コンピュータが前記プログラムを実行することで、本実施の形態の制御装置14として機能する。第1のパターン露光部EXH1と第2のパターン露光部EXH2とは、基板搬送機構12の回転ドラムDRの上方(+Z方向側)に設けられている。
基板搬送機構(搬送装置)12は、プロセス装置PR1から搬送される基板Pを、プロセス装置PR2に所定の速度で搬送する。この基板搬送機構12によって、露光装置EX内で搬送される基板Pの搬送路が規定される。基板搬送機構12は、基板Pの搬送方向の上流側(-X方向側)から順に、エッジポジションコントローラEPC、駆動ローラR1、テンション調整ローラRT1、回転ドラム(円筒ドラム)DR、テンション調整ローラRT2、駆動ローラR2、および、駆動ローラR3を有している。
エッジポジションコントローラEPCは、プロセス装置PR1から搬送される基板Pの幅方向(Y方向であって基板Pの短尺方向)における位置を調整する。つまり、エッジポジションコントローラEPCは、所定のテンションが掛けられた状態で搬送されている基板Pの幅方向の端部(エッジ)における位置が、目標位置に対して±十数μm~数十μm程度の範囲(許容範囲)に収まるように、基板Pを幅方向に移動させて、基板Pの幅方向における位置を調整する。エッジポジションコントローラEPCは、基板Pの幅方向の端部(エッジ)の位置を検出する図示しないエッジセンサ(端部検出部)を有し、エッジセンサが検出した検出信号に基づいて、基板Pの幅方向における位置を調整する。駆動ローラR1は、エッジポジションコントローラEPCから搬送される基板Pの表裏両面を保持しながら回転し、基板Pを回転ドラムDRへ向けて搬送する。エッジポジションコントローラEPCは、回転ドラムDRに搬送される基板Pの長尺方向が、回転ドラムDRの中心軸AXoに対して直交するように、基板Pの幅方向における位置を調整する。
回転ドラムDRは、Y方向に延びるとともに重力が働く方向と交差した方向に延びた中心軸AXoと、中心軸AXoから一定半径の円筒状の外周面とを有し、外周面(円周面)に倣って基板Pの一部を長尺方向に支持しつつ、中心軸AXoを中心に回転して基板Pを搬送方向(副走査方向)に搬送する。回転ドラムDRのY方向の両側には、中心軸AXoの周りを回転するようにベアリングで支持されたシャフトSftが設けられている。このシャフトSftは、制御装置14によって制御される図示しない回転駆動源(例えば、モータや減速機構等)からの回転トルクが与えられることで中心軸AXo回りに回転する。
駆動ローラR2、R3は、+X方向に沿って所定の間隔を空けて配置されおり、露光後の基板Pに所定の弛み(あそび)を与えている。駆動ローラR2、R3は、駆動ローラR1と同様に、基板Pの表裏両面を保持しながら回転し、基板Pをプロセス装置PR2へ向けて搬送する。駆動ローラR2、R3は、回転ドラムDRに対して搬送方向の下流側(+X方向側)に設けられており、この駆動ローラR2は、駆動ローラR3に対して、搬送方向の上流側(-X方向側)に設けられている。テンション調整ローラRT1、RT2は、-Z方向に付勢されており、回転ドラムDRに巻き付けられて支持されている基板Pに、長尺方向に所定のテンションを与えている。これにより、回転ドラムDRにかかる基板Pに付与される長尺方向のテンションを所定の範囲内に安定化させている。X方向に関してテンション調整ローラRT1、RT2間の距離を短くすることで、基板Pの回転ドラムDRへの巻き付け角を大きくすることができる。なお、制御装置14は、図示しない回転駆動源(例えば、モータや減速機構等)を制御することで、駆動ローラR1~R3を回転させる。この駆動ローラR1、R2、および、回転ドラムDRの回転速度によって、回転ドラムDRに支持されている基板Pの搬送速度、つまり、基板Pの副走査方向の速度が規定される。
次に、図2を用いて第1のパターン露光部EXH1の構成を説明する。第1のパターン露光部EXH1は、マスクを用いない直描方式、いわゆるラスタースキャン方式でパターンを露光する。第1のパターン露光部EXH1は、回転ドラムDRで搬送されながら支持されている基板Pの露光領域Wに対して、露光用のエネルギー線であるビームLBのスポット光SPを投射しつつ、スポット光SP(エネルギー線)を基板P上(基板Pの被照射面上)で主走査方向(Y方向)に1次元に走査(主走査)する。そして、第1のパターン露光部EXH1は、主走査方向に走査しているスポット光SPの強度を、描画したいパターンの設計情報であるパターンデータ(描画データ)に応じて高速に変調(オン/オフ)する。これにより、基板Pの被照射面にディスプレイ用の回路または配線等の所定のパターンに応じた光パターンが描画露光される。つまり、基板Pの副走査と、スポット光SPの主走査とで、スポット光SPが基板Pの被照射面上で相対的に2次元走査されて、基板Pの露光領域Wに所定のパターンが描画露光される。
第1のパターン露光部EXH1は、光源装置20と、複数の光導入光学系BDU(BDU1~BDU6)と、複数の走査ユニットU(U1~U6)とを備えている。光源装置20は、パルス光源を有し、パルス状のビーム(パルス光、レーザ)LBを射出する。このビームLBは、370nm以下の波長帯域にピーク波長を有する紫外線光であり、ビームLBの発光周波数をFeとする。光源装置20は、紫外波長域で高輝度なパルスビームを高い発光周波数Feで発振可能なファイバーアンプレーザ光源とすることができる。ファイバーアンプレーザ光源は、100MHz以上の高い周波数でパルス発光する赤外波長域の半導体レーザと、赤外波長域のパルス光を増幅するファイバーアンプと、増幅された赤外波長域のパルス光を紫外波長域のパルス光に変換する波長変換素子(高調波発生素子)とで構成される。半導体レーザからの赤外波長域のパルス光は種光とも呼ばれ、種光の発光特性(パルス持続時間や立上りや降下の急峻性等)を変えることで、ファイバーアンプでの増幅効率(増幅率)を変えることができ、最終的に出力される紫外波長域のパルスビームの強度を高速に変調することができる。また、ファイバーアンプレーザ光源から出力される紫外波長域のパルスビームは、その発光持続時間を数ピコ秒~数十ピコ秒と極めて短くすることができる。そのため、ラスタースキャン方式であっても、パルスビームのパルス発光で作られるスポット光SPは、基板Pの被照射面上でほとんどブレることがなく、ビームの断面内での形状と強度分布(例えば、円形のガウス分布)を保ったものとなる。
第1のパターン露光部EXH1は、互いに構成が同一である複数の走査ユニットU(U1~U6)を備えることによって、いわゆるマルチビーム型のパターン露光部となっている。複数の走査ユニットU(U1~U6)は、後述する中心面Poc1を挟んで回転ドラムDRの周方向に2列に配置される。奇数番の走査ユニットU1、U3、U5は、中心面Poc1に対して基板Pの搬送方向の上流側で、Y方向に沿って1列に配置されている。偶数番の走査ユニットU2、U4、U6は、中心面Poc1に対して基板Pの搬送方向の下流側で、Y方向に沿って1列に配置されている。各走査ユニットU(U1~U6)は、スポット光SPを基板Pの被照射面に投射しつつ、そのスポット光SPを基板Pの被照射面上で、Y方向に延びる所定の描画ライン(走査線)SLに沿って1次元に走査する。なお、各走査ユニットU(U1~U6)の描画ラインSLを区別するため、走査ユニットU1によってスポット光SPが走査される描画ラインSLをSL1で表し、同様に、走査ユニットU2~U6によってスポット光SPが走査される描画ラインSLをSL2~SL6で表す場合がある。
この走査ユニットU1、U3、U5によって基板Pの被照射面上に照射されるスポット光SPの位置は、基板Pの搬送方向に関して同じ位置、つまり、Y方向に沿って1列となる。偶数番の走査ユニットU2、U4、U6によって基板Pの被照射面上に照射されるスポット光SPの位置は、基板Pの搬送方向に関して同じ位置、つまり、Y方向に沿って1列となる。なお、基板Pの搬送方向に関して、走査ユニットU1、U3、U5によって基板Pの被照射面上に照射されるスポット光SPの位置と、走査ユニットU2、U4、U6によって基板Pの被照射面上に照射されるスポット光SPの位置との中心点と、回転ドラムDRの中心軸AXoとを通り、Y方向に延びる面を中心面Poc1とする。また、図2においては、中心面Poc1においてY方向と垂直する方向をZ1´とし、中心面Poc1と直交する方向をX1´とする。-Z1´方向が重力が働く方向側であり、+X1´方向は、基板Pの搬送方向側である。奇数番の走査ユニットU1、U3、U5と偶数番の走査ユニットU2、U4、U6とは、X1´方向に関して中心面Poc1に対して対称となるように配置されている。
ここで、図3を用いて、簡単に、各走査ユニットU(U1~U6)の描画ラインSL(SL1~SL6)について簡単に説明する。複数の走査ユニットU(U1~U6)は、複数の描画ラインSL(SL1~SL6)が、図3に示すように、Y方向に関して、互いに分離することなく、継ぎ合わさるように配置されている。複数の走査ユニットU(U1~U6)全部で露光領域Wの幅方向の全てをカバーするように、各走査ユニットU(U1~U6)は、走査領域を分担している。これにより、各走査ユニットU(U1~U6)は、基板Pの幅方向に分割された複数の領域毎にパターンを描画することができる。例えば、1つの走査ユニットUによるY方向の走査長(描画ラインSLの長さ)を20~50mm程度とすると、奇数番の走査ユニットU1、U3、U5の3個と、偶数番の走査ユニットU2、U4、U6の3個との計6個の走査ユニットUをY方向に配置することによって、描画可能なY方向の幅を120~300mm程度に広げている。各描画ラインSL1~SL6の長さは、原則として同一とする。つまり、描画ラインSL1~SL6の各々に沿って走査されるビームLBのスポット光SPの走査距離は、原則として同一とする。なお、露光領域Wの幅を長くしたい場合は、描画ラインSL自体の長さを長くするか、Y方向に配置する走査ユニットUの数を増やすことで対応することができる。
描画ラインSL(SL1~SL6)は、中心面Poc1を挟んで、回転ドラムDRの周方向に2列に配置される。奇数番の描画ラインSL1、SL3、SL5は、中心面Poc1に対して基板Pの搬送方向の上流側(-X方向側)の基板Pの被照射面上に位置する。偶数番の描画ラインSL2、SL4、SL6は、中心面Poc1に対して基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)の基板Pに被照射面上に位置する。描画ラインSL1~SL6は、基板Pの幅方向(Y方向)と略並行となっている。
描画ラインSL1、SL3、SL5は、基板Pの幅方向(走査方向)に沿って所定の間隔をあけて直線上に配置されている。描画ラインSL2、SL4、SL6も同様に、基板Pの幅方向(走査方向)に沿って所定の間隔をあけて直線上に配置されている。このとき、描画ラインSL2は、基板Pの幅方向に関して、描画ラインSL1と描画ラインSL3との間に配置される。同様に、描画ラインSL3は、基板Pの幅方向に関して、描画ラインSL2と描画ラインSL4との間に配置されている。描画ラインSL4は、基板Pの幅方向に関して、描画ラインSL3と描画ラインSL5との間に配置され、描画ラインSL5は、基板Pの幅方向に関して、描画ラインSL4と描画ラインSL6との間に配置されている。本実施の形態では、描画ラインSL1、SL3、SL5に沿って走査されるビームLBのスポット光SPの走査方向を-Y方向とし、描画ラインSL2、SL4、SL6に沿って走査されるビームLBのスポット光SPの走査方向を+Y方向とする。
次に、図2を用いて走査ユニットU(U1~U6)の構成について説明する。走査ユニットU(U1~U6)は、同一の構成を有することから、走査ユニットU1についてのみ説明し、走査ユニットU2~U6の説明は省略する。また、走査ユニットU1の説明においては、XtYZt直交座標系を用いて説明する。Zt方向は、走査ユニットU1から基板Pに照射されるビームLBの進行方向と平行であり、Xt方向は、YZt平面と直交する方向である。なお、-Zt方向は、重力が働く方向側であり、+Xt方向は、基板Pの搬送方向側である。
走査ユニットU1は、シリンドリカルレンズCYa、CYb、ポリゴンミラーPM、fθレンズFT、および、ビームLBの光路を適宜折り曲げる光路規定部材RGを有する。光路規定部材RGは、複数の反射ミラー等を有する。このシリンドリカルレンズCYa、CYb、ポリゴンミラーPM、fθレンズFTは、光路規定部材RGによって規定されるビームLBの光路上に設けられている。光導入光学系BDU1から入射したビームLBは、ポリゴンミラーPMに入射する。ポリゴンミラーPMは、入射したビームLBをfθレンズFTに向けて反射する。ポリゴンミラーPMは、基板Pの被照射面上に照射されるスポット光SPを走査するために、入射したビームLBを偏向して反射する。ポリゴンミラーPMは、詳しくは図示しないが、Zt方向に延びる回転軸AXpと回転軸AXpの周りに形成された複数の反射面を有する回転多面鏡である。回転軸AXpを中心にこのポリゴンミラーPMを回転させることで、ポリゴンミラーPMの前記反射面に入射するパルス状のビームLBの反射角を連続的に変化させることができる。これにより、1つの前記反射面によってビームLBの反射方向(偏向方向)が連続的に変化し、基板Pの被照射面上に照射されるビームLBのスポット光SPが描画ラインSL1(図3参照)上に沿って走査される。このポリゴンミラーPMの回転は、制御装置14の制御の下、モータ等を含む図示しないポリゴン駆動部によって一定の速度で回転する。
ビームLBの進行方向に関して、ポリゴンミラーPMの手前にはシリンドリカルレンズCYaが設けられている。したがって、ビームLBは、シリンドリカルレンズCYaを通過した後ポリゴンミラーPMに入射する。母線がY方向と平行となっているシリンドリカルレンズCYaによって、ポリゴンミラーPMの反射面がZt方向に対して傾いている場合(XtY平面の法線に対する反射面の傾きがある場合)であっても、その影響を抑制することができる。例えば、基板Pの被照射面上に照射されるビームLBのスポット光SPの照射位置がXt方向にずれることを抑制する。
fθレンズFTは、ポリゴンミラーPMからのビームLBを、XtY平面においてfθレンズFTの光軸と平行となるように透過するテレセントリック系のスキャンレンズである。このfθレンズFTの光軸は、Xt方向と平行である。fθレンズFTを透過したビームLBは、シリンドリカルレンズCYbを透過して基板Pの被照射面に投射される。この母線がY方向と平行となっているシリンドリカルレンズCYbによって、基板Pに投射されるビームLBが基板Pの被照射面上で約直径数μm程度(例えば、3μm)の微小なスポット光SPに収斂される。この基板Pの被照射面上に投射されるスポット光SPは、ポリゴンミラーPMによって、主走査方向に延びる描画ラインSL1に沿って走査される。スポット光SPが所定量(例えば、スポット光SPの径の1/2、つまり、1.5μm)ずつオーバーラップしながら描画ラインSL1に沿ってスポット光SPが照射されるように、ポリゴンミラーPMの回転速度および光源装置20の発光周波数Feが規定されている。
fθレンズFTへのビームLBの入射角θbは、ポリゴンミラーPMの回転角度位置(θb/2の範囲)に応じて変わる。fθレンズFTは、その入射角θbに比例した基板Pの被照射面上の像高位置にビームLBのスポット光SPを投射する。焦点距離をfとし、像高位置をyとすると、fθレンズFTは、y=fθb、の関係を有する。したがって、このfθレンズFTによって、ビームLBのスポット光SPをY方向に正確に等速で走査することが可能となる。fθレンズFTへのビームLBの入射角θbが0度のときに、fθレンズFTに入射したビームLBは、fθレンズFTの光軸上に沿って進む。
走査ユニットU1から描画ラインSL1上の任意の点(例えば、中点)に照射されるビームLBの光軸を、照射軸Le1とする。同様に、走査ユニットU2~U6から描画ラインSL2~SL6上の任意の点(例えば、中点)に照射されるビームLBの光軸を、照射軸Le2~Le6とする。この各照射軸Le(Le1~Le6)は、X1´Z1´平面(XZ平面)において、描画ラインSL(SL1~SL6)と中心軸AXoとを結ぶ線となっている。したがって、各走査ユニットU(U1~U6)は、X1´Z1´平面(XZ平面)に関して、基板Pの被照射面と直交するようにビームLBを照射する。つまり、各走査ユニットU(U1~U6)は、X1´Z1´平面(XZ平面)に関して、ビームLBが回転ドラムDRの中心軸AXoに向かうように照射する。照射軸Le1、Le3、Le5は、X1´Z1´平面(XZ平面)において同じ方向となっており、照射軸Le2、Le4、Le6は、X1´Z1´平面(XZ平面)において同じ方向となっている。また、X1´Z1´平面(XZ平面)において、照射軸Le1、Le3、Le5と照射軸Le2、Le4、Le6とは、中心面Poc1に対しての角度が±θとなるように設定されている(図2参照)。
複数の光導入光学系BDU(BDU1~BDU6)は、光源装置20からのビームLBを複数の走査ユニットU(U1~U6)に導く。光導入光学系BDU1は、ビームLBを走査ユニットU1に導き、光導入光学系BDU2は、ビームLBを走査ユニットU2に導く。同様に、光導入光学系BDU3~BDU6は、ビームLBを走査ユニットU3~U6に導く。光導入光学系BDU(BDU1~BDU6)は、ビームLBを照射軸Le(Le1~Le6)上に沿って走査ユニットU(U1~U6)に射出する。つまり、光導入光学系BDU1から走査ユニットU1に導かれるビームLBは、照射軸Le1上を通る。同様に、光導入光学系BDU2~BDU6から走査ユニットU2~U6に導かれるビームLBは、照射軸Le2~Le6上を通る。なお、光源装置20からのビームLBは、不図示のビームスプリッタや反射ミラー等によって6つのビームLBに分割されて各光導入光学系BDU(BDU1~BDU6)に入射する。
複数の光導入光学系BDU(BDU1~BDU6)は、複数の走査ユニットU(U1~U6)に導くビームLBの強度をパターンデータに応じて高速に変調(オン/オフ)する描画用光学素子AOM(AOM1~AOM6)を有する。光導入光学系BDU1は、描画用光学素子AOM1を有し、同様に、光導入光学系BDU2~BDU6は、描画用光学素子AOM2~AOM6を有する。描画用光学素子AOM(AOM1~AOM6)は、ビームLBに対して透過性を有する音響光学変調器(Acousto-Optic Modulator)である。描画用光学素子AOM(AOM1~AOM6)は、駆動信号としての高周波信号の周波数に応じた回折角で、光源装置20からのビームLBを回折させた1次回折光を発生し、その1次回折光を、各走査ユニットU(U1~U6)に向かうビームLBとして射出する。描画用光学素子AOM(AOM1~AOM6)は、制御装置14からの駆動信号(高周波信号)のオン/オフにしたがって、入射したビームLBを回折させた1次回折光の発生をオン/オフする。
描画用光学素子AOM(AOM1~AOM6)は、制御装置14からの駆動信号(高周波信号)がオフの状態のときは、入射したビームLBを回折させずに透過することで、光導入光学系BDU(BDU1~BDU6)内に設けられた図示しない吸収体にビームLBを導く。したがって、駆動信号がオフの状態のときは、描画用光学素子AOM(AOM1~AOM6)を透過したビームLBは、走査ユニットU(U1~U6)に入射しない。つまり、走査ユニットU(U1~U6)内を通るビームLBの強度が低レベル(ゼロ)になる。このことは、基板Pの被照射面上でみると、被照射面上に照射されるビームLBのスポット光SPの強度が低レベル(ゼロ)に変調されていることを意味する。一方、描画用光学素子AOM(AOM1~AOM6)は、制御装置14からの駆動信号(高周波信号)がオンの状態のときは、入射したビームLBを回折させて1次回折光を射出することで、走査ユニットU(U1~U6)にビームLBを導く。したがって、駆動信号がオンの状態のときは、走査ユニットU(U1~U6)内を通るビームLBの強度が高レベルになる。このことは、基板Pの被照射面上でみると、被照射面上に照射されるビームLBのスポット光SPの強度が高レベルに変調されていることを意味する。このように、オン/オフの駆動信号を描画用光学素子AOM(AOM1~AOM6)に印加することで、描画用光学素子AOM(AOM1~AOM6)をオン/オフにスイッチングすることができる。
パターンデータは、走査ユニットU(U1~U6)毎に設けられており、制御装置14は、各走査ユニットU(U1~U6)によって描画されるパターンのパターンデータ(例えば、所定の画素単位を1ビットに対応させて、論理値「0」、または「1」でオフ状態とオン状態とを表すデータ列)に基づいて、各描画用光学素子AOM(AOM1~AOM6)に印加する駆動信号を高速にオン状態/オフ状態にスイッチングする。
ここで、パターンデータについて簡単に説明すると、パターンデータは、各走査ユニットUによって描画されるパターンを、スポット光SPのサイズに応じて設定される寸法の画素によって分割し、複数の画素の各々をパターンに応じた論理情報(画素データ)で表したものである。つまり、スポット光の走査方向(主走査方向、Y方向)に沿った方向を行方向とし、基板Pの搬送方向(副走査方向、X方向、X1´方向)に沿った方向を列方向とするように2次元に分解された複数の画素データで構成されているビットマップデータである。この画素データは、「0」または「1」の1ビットのデータである。「0」の画素データは、基板Pに照射するスポット光SPの強度を低レベルにすることを意味し、「1」の画素データは、基板P上に照射するスポット光SPの強度を高レベルにすることを意味する。したがって、制御装置14は、画素データが「0」のときは、描画用光学素子AOMに印加する駆動信号をオフ状態とし、画素データが「1」のときは、描画用光学素子AOMに印加する駆動信号をオン状態にする。パターンデータの1列分の画素データは、1本分の描画ラインSL(SL1~SL6)に対応するものであり、1本の描画ラインSL(SL1~SL6)に沿って基板Pに投射されるスポット光SPの強度が、1列分の画素データに応じて変調される。この1列分の画素データをシリアルデータDLと呼ぶ。つまり、パターンデータは、1列目のシリアルデータDL1、2列目のシリアルデータDL2、・・・・、n列目のシリアルデータDLnが列方向に並んだビットマップデータである。
図2の本体フレームUBは、複数の光導入光学系BDU(BDU1~BDU6)と複数の走査ユニットU(U1~U6)を保持する。本体フレームUBは、複数の光導入光学系BDU(BDU1~BDU6)を保持する第1フレームUb1と、複数の走査ユニットU(U1~U6)を保持する第2フレームUb2とを有する。第1フレームUb1は、第2フレームUb2によって保持された複数の走査ユニットU(U1~U6)の上方(+Z1´方向側)で、複数の光導入光学系BDU(BDU1~BDU6)を保持する。第1フレームUb1は、複数の光導入光学系BDU(BDU1~BDU6)を下方(-Z1´方向側)から支持する。奇数番の光導入光学系BDU1、BDU3、BDU5は、奇数番の走査ユニットU1、U3、U5の位置に対応して、中心面Poc1に対して基板Pの搬送方向の上流側(-X1´方向側)で、Y方向に沿って1列に配置されるように、第1フレームUb1に支持されている。偶数番の光導入光学系BDU2、BDU4、BDU6は、偶数番の走査ユニットU2、U4、U6の位置に対応して、中心面Poc1に対して基板Pの搬送方向の下流側(+X1´方向側)で、Y方向に沿って1列に配置されるように、第1フレームUb1に支持されている。第1フレームUb1には、複数の光導入光学系BDU(BDU1~BDU6)に対応して複数の開口部Hs(Hs1~Hs6)が設けられている。この複数の開口部Hs(Hs1~Hs6)によって、複数の光導入光学系BDU(BDU1~BDU6)の各々から射出されるビームLBが第1フレームUb1によって遮られることなく、対応する走査ユニットU(U1~U6)に入射する。
第2フレームUb2は、各走査ユニットU(U1~U6)が照射軸Le(Le1~Le6)回りに微少量(例えば±2°程度)だけ回動できるように、走査ユニットU(U1~U6)を回動可能に保持する。走査ユニットU(U1~U6)が照射軸Le(Le1~Le6)回りに回動した場合であっても、ビームLBが走査ユニットU(U1~U6)に入射するXtY面内での位置と、各走査ユニットU(U1~U6)に対応した描画ラインSL(SL1~SL6)のXtY面内での中心位置との相対的な位置関係は変わらない。したがって、走査ユニットU(U1~U6)が回動した場合であっても、走査ユニットU(U1~U6)は、ビームLBのスポット光SPを基板Pに投射しつつ、スポット光SPを描画ラインSL(SL1~SL6)に沿って走査することできる。この走査ユニットU(U1~U6)の回転によって、描画ラインSL(SL1~SL6)が照射軸Le(Le1~Le6)を中心に回転するので、描画ラインSL(SL1~SL6)は、Y軸と平行な状態に対して、僅かな範囲内(例えば±2°)で傾けることができる。なお、この走査ユニットU(U1~U6)の照射軸Le(Le1~Le6)回りの回動は、制御装置14の制御の下、図示しないアクチュエータによって行われる。
露光装置EXのアライメント顕微鏡ALG(ALG1~ALG4)は、図3に示す基板Pに形成されたアライメント用のマークMK(MK1~MK4)の位置情報(マーク位置情報)を検出するためのマーク位置検出部であり、Y方向に沿って設けられている。マークMK(MK1~MK4)は、基板Pの被照射面上の露光領域Wに描画される所定のパターンと、基板P、或いは基板Pに既に形成された下地パターンの層とを相対的に位置合わせする(アライメントする)ための基準マークである。アライメント顕微鏡ALG(ALG1~ALG4)は、回転ドラムDRの円周面で支持されている基板P上のマークMK(MK1~MK4)を撮像する。アライメント顕微鏡ALG(ALG1~ALG4)は、第1のパターン露光部EXH1から基板Pの被照射面上に投射されるビームLBのスポット光SPよりも基板Pの搬送方向の上流側(-X方向側)に設けられている。
アライメント顕微鏡ALG(ALG1~ALG4)は、アライメント用の照明光を基板Pに投射する光源と、その反射光を撮像するCCD、CMOS等の撮像素子とを有する。アライメント顕微鏡ALG(ALG1~ALG4)が撮像した撮像信号は、制御装置14に送られる。制御装置14は、撮像信号に基づいて、マークMK(MK1~MK4)の基板P上の位置情報を検出する。一般に、この種のアライメント顕微鏡ALGによる基板P上での検出領域(撮像範囲)は、1mm角以下であり、撮像信号に基づいたマークMKの位置計測(マークの位置ずれ量等)は、検出領域(撮像範囲)内に限られる。そこで、基板P上の実際のマーク位置を特定するためには、回転ドラムDRの回転角度位置(すなわち基板Pの移動位置や移動量)を精密に計測するエンコーダシステムを設け、アライメント顕微鏡ALGの検出領域(撮像範囲)内でマークMKを撮像した瞬間にエンコーダシステムから出力される計測情報もサンプリングしておく。これによって、基板P上の各マークMK(MK1~MK4)の位置が、回転ドラムDRの回転角度位置に対応付けて求められる。このアライメント顕微鏡ALG、または、アライメント顕微鏡ALGおよびエンコーダシステムは、本発明のマーク検出部に相当する。なお、アライメント用の照明光は、基板Pの感光性機能層に対してほとんど感度を持たない波長域の光、例えば、波長500~800nm程度の光である。
マークMK1~MK4は、各露光領域Wの周りに設けられている。このマークMK(MK1~MK4)は、第1層(ファースト露光で形成される下地の層)のパターンの形成の際に一緒に形成されてもよい。例えば、第1層用のパターンを露光する際に、パターンが露光される露光領域Wの回りにマークMK(MK1~MK4)用のパターンも一緒に露光してもよい。また、マークMK(MK1~MK4)用のパターンは、第1層用のパターンを露光する前に基板P上に形成しておいてもよい。その場合、第1層用のパターンを露光する段階から、マークMK(MK1~MK4)を使って、基板Pの変形等を考慮したアライメント動作が可能となる。なお、マークMKは、露光領域W内に形成されてもよい。例えば、露光領域W内であって、露光領域Wの輪郭に沿ってマークMK(MK1~MK4)を形成してもよい。
アライメント顕微鏡ALG1は、観察領域(検出領域)Vw1内に存在するマークMK1を撮像する。同様に、アライメント顕微鏡ALG2~ALG4は、観察領域Vw2~Vw4内に存在するマークMK2~MK4を撮像する。したがって、複数のアライメント顕微鏡ALG1~ALG4は、複数のマークMK1~MK4の位置に対応して、基板Pの-Y方向側からアライメント顕微鏡ALG1~ALG4の順で設けられている。アライメント顕微鏡ALG(ALG1~ALG4)は、X方向に関して、露光位置(描画ラインSL1~SL6)とアライメント顕微鏡ALG(ALG1~ALG4)の観察領域Vw(Vw1~Vw4)との周方向の距離が、露光領域WのX方向の長さよりも短くなるように設けられている。なお、Y方向に設けられるアライメント顕微鏡ALGの数や配置は、基板Pの幅方向に形成されるマークMKの数や配置に応じて変更可能である。また、観察領域Vw1~Vw4の基板Pの被照射面上の大きさは、マークMK1~MK4の大きさやアライメント精度(位置計測精度)に応じて設定されるが、100~500μm角程度の大きさである。
第1のパターン露光部EXH1は、制御装置14の制御の下、アライメント顕微鏡ALG(ALG1~ALG4)を用いて検出したマークMK(MK1~MK4)の位置情報(実際は回転ドラムDRの回転角度位置に対応付けた位置情報)に基づいて、走査ユニットU(U1~U6)によって描画されるパターンの設計情報(パターンデータ)に対応したスポット光SPを位置調整して投射する。露光領域Wが傾斜していない場合や歪んでいない場合は、図3に示すように複数のマークMK(MK1~MK4)が長方形に配列されているが、露光領域Wが傾斜したり歪んだ場合は、マークMK(MK1~MK4)の配列もそれに応じて傾斜したり歪む。そのため、露光領域Wが傾斜している場合や歪んでいる場合は、基板Pに照射するスポット光SPの位置もそれに応じて調整する必要がある。例えば、下地のパターン層の上に新たに所定のパターンを重ね合わせて描画する際に、下地のパターン層の全体または一部の傾き若しくは歪みに応じて、描画する所定のパターンも傾斜させたり歪ませたりする必要が生じる。したがって、制御装置14は、マークMK(MK1~MK4)の位置情報に基づいて、設計情報に対応して第1のパターン露光部EXH1によって基板Pに投射されるスポット光SPの位置を調整する。
例えば、制御装置14は、走査ユニットU(U1~U6)を照射軸Le(Le1~Le6)回りに回動させて各描画ラインSL(SL1~SL6)のY方向に対する傾き角を調整することで、スポット光SPの位置を調整してもよい。また、描画ラインSL(SL1~SL6)の傾きを調整すると、Y方向に隣り合う描画ラインSL(SL1~SL6)の端部同士が離れたり、端部同士が重畳したりするので、描画ラインSL1~SL6がY方向に継ぎ合わさらない。したがって、隣り合う描画ラインSLの端部がY方向に継ぎ合わさるように各描画ラインSL(SL1~SL6)の走査長(主走査方向の倍率)、および、各描画ラインSL(SL1~SL6)の主走査方向の位置の少なくとも一方を補正する必要が生じる。
描画ラインSL(SL1~SL6)の主走査方向の倍率を調整することで、描画ラインSL(SL1~SL6)の走査長を変更することができる。これにより、基板P上に投射されるパルス状のスポット光SPのY方向の位置が微調整される。この主走査方向の倍率調整は、例えば、光源装置20の発光周波数Feを調整すればよい。1本の描画ラインSL(SL1~SL6)に沿って照射されるスポット光SP(パルス光)の数を、主走査方向に並ぶ画素の数と一義的な関係(例えば、1画素に対して2パルス分のスポット光がスポット径の1/2程度でオーバーラップする状態)になるように設定した場合、発光周波数Feが僅かでも高くなると、主走査方向に沿って投射されるスポット光SPのパルス間隔は短くなる。その結果、描画ラインSL(SL1~SL6)で描画されるパターンは主走査方向に関して全体的に短くなる。逆に、発光周波数Feが僅かに低くなると、主走査方向に沿って投射されるスポット光SPのパルス間隔が長くなり、その結果、描画ラインSL(SL1~SL6)で描画されるパターンは主走査方向に関して全体的に長くなる。また、走査ユニットU(U1~U6)の内部に、走査方向の倍率を補正するためのレンズ素子等による倍率補正用光学部材(図示略)を設けることで、描画ラインSL(SL1~SL6)の走査長を変更することもできる。
また、各描画ラインSL(SL1~SL6)を主走査方向に微少にシフトすることで、描画ラインSL(SL1~SL6)によって露光されるパターンを主走査方向に位置補正することができる。各走査ユニットU(U1~U6)には、走査ユニットU(U1~U6)のポリゴンミラーPMによって走査されるスポット光SPの走査開始タイミングを光学的に検出する原点センサ(図示略)が設けられている。この原点センサは、ポリゴンミラーPMの反射面に投射した計測光の反射光を受光して原点信号を出力する検出器である。原点センサは、ポリゴンミラーPMの反射面の角度位置が、スポット光SPが描画ラインSL(SL1~SL6)の走査開始点に投射される前の所定の角度位置になると原点信号を出力する。通常は、原点信号が出力されてから一定の時間Tsが経過した後に、描画用光学素子AOM(AOM1~AOM6)をパターンデータのシリアルデータDLに基づいてスイッチングして描画を開始する。しかしながら、原点信号が出力されてからシリアルデータDLに基づく描画用光学素子AOM(AOM1~AOM6)のスイッチングの開始タイミングまでの時間Tsを変更することで、描画ラインSL(SL1~SL6)の各々を主走査方向にシフトすることができる。
例えば、時間Tsを短くするとスポット光SPによる描画開始タイミングが早まるので、描画ラインSL1、SL3、SL5の場合は+Y方向側にシフトされ、描画ラインSL2、SL4、SL6の場合は-Y方向側にシフトされる(図3参照)。逆に、時間Tsを長くすると、描画ラインSL1、SL3、SL5の場合は-Y方向側にシフトされ、描画ラインSL2、SL4、SL6の場合は+Y方向側にシフトされる(図3参照)。このようにして、設計情報(パターンデータ)に対応して基板Pに投射されるスポット光SPの主走査方向の位置が微調整される。なお、このような描画ラインSL(SL1~SL6)の各々の主走査方向への位置調整は、各走査ユニットU(U1~U6)内を通るビームLBを主走査方向に対応した向きにシフトさせたり、角度を変えたりする光学部材(例えば、傾斜可能な平行平板ガラス、角度調整可能な反射ミラー等)によっても可能である。描画ラインSLの主走査方向への位置調整は、各描画ラインSLの傾き補正や各描画ラインSLの主走査方向の倍率補正の際に併せて行なうことで、描画ラインSL(SL1~SL6)の各々の端部での継ぎ精度の劣化が抑えられる。スポット光SPの走査軌跡である描画ラインSL(SL1~SL6)の位置調整には、上記のように、描画ラインSLの傾き補正、描画ラインSLの主走査方向の倍率補正、描画ラインSLの主走査方向へのシフト補正等があるが、それらの位置調整に関る情報(誤差量や補正量等)を調整情報と呼ぶ。
次に、第2のパターン露光部EXH2について説明する。図4は、第2のパターン露光部EXH2の構成の一例を示す図である。第2のパターン露光部EXH2は、円筒状の反射型マスク(以下、円筒マスク)Mを回転させることで、回転ドラムDRによって搬送されながら支持されている基板Pの露光領域Wに対して、円筒マスクMのパターン(マスクパターン)の像を投影する走査型の露光装置である。このような反射型マスクを使った露光装置は、例えば国際公開第2013/094286号パンフレットに開示されているので、以下では簡単に説明する。
第2のパターン露光部EXH2は、光源装置22と、照明光学系を構成する複数の照明モジュールIL(IL1~IL6)と、円筒マスクMを保持する回転保持ドラム(円筒状または円柱状の母材)DR2と、投影光学系を構成する複数の投影モジュールPL(PL1~PL6)とを有するマルチレンズ式のパターン露光部である。円筒マスクMは、例えば、金属製の円筒体を用いた反射型のマスクとなっている。円筒マスクMは、Y方向に延びるとともに重力が働く方向と交差した方向に延びた中心軸AX1と、中心軸AX1から一定半径の円筒状の外周面とを有する円筒体の母材表面に形成される。円筒マスクMの周面は、所定のマスクパターンが形成されたマスク面P1となっている。マスク面P1には、照明光を高い効率で反射する高反射領域と、反射光を反射しないか、または極めて低い効率で反射する低反射領域とでパターニングされたマスクパターンが形成される。このような円筒マスクMは、母材が金属製の円筒体であることから、安価に作成することができる。円筒マスクMには、1つのパターン層の全部または一部に対応するマスクパターンが形成されていてもよい。また、1つのパターン層に対応するマスクパターンが複数形成されていてもよい。つまり、円筒マスクMに周方向に1つのパターン層に対応するマスクパターンが繰り返し複数形成されてもよい。
回転保持ドラムDR2は、円筒マスクMの中心軸AX1が回転中心となるように円筒マスクMを保持する。この回転保持ドラムDR2は、制御装置14によって制御される図示しない回転駆動源(例えば、モータや減速機構等)からの回転トルクが与えられることで中心軸AX1回りに回転する。これにより、円筒マスクMが走査される。この回転保持ドラムDR2の回転方向は、回転ドラムDRの回転方向と逆方向であり、回転保持ドラムDR2は、回転ドラムDRの回転と同期して回転する。つまり、回転保持ドラムDR2の回転速度は、回転ドラムDRの回転速度と同一である。なお、回転ドラムDRの中心軸AXoと円筒マスクMの中心軸AX1とを通り、Y方向に延びる面を中心面Poc2と呼ぶ。また、図4においては、中心面Poc2においてY方向と直交する方向をZ2´とし、中心面Poc2と直交する方向をX2´とする。-Z2´方向は、重力が働く方向側であり、+X2´方向は、基板Pの搬送方向(走査方向)側である。
光源装置22は、基板Pに照射する紫外線等の光(照明光)ELを発生するものである。光源装置22は、例えば、水銀ランプ等のランプ光源、レーザダイオード、発光ダイオード等の固体光源を含む。光源装置22が発生した照明光は、例えば、図示しない光ファイバー等の導光部材を介して複数の照明モジュールIL(IL1~IL6)に導かれる。照明モジュールIL(IL1~IL6)は、例えば、インテグレータ光学系、ロッドレンズ、または、フライアイレンズ等の複数の光学部材を含む。照明モジュールIL(IL1~IL6)は、均一な照度分布のエネルギー線である照明光EL(以下、照明光束EL1と称する)を、円筒マスクMのマスク面P1上の複数の照明領域IR(IR1~IR6)に照射する。照明モジュールIL1は、照明光束EL1を円筒マスクM上の照明領域IR1に照射する。同様にして、照明モジュールIL2~IL6は、照明光束EL1を円筒マスクM上の照明領域IR2~IR6に照射する。この複数の照明モジュールIL(IL1~IL6)は、互いに構成が同一である。
複数の照明モジュールIL(IL1~IL6)と円筒マスクMとの間には、複数の偏光ビームスプリッタPBS(PBS1~PBS6)と複数のλ/4波長板QW(QW1~QW6)が設けられている。偏光ビームスプリッタPBS(PBS1~PBS6)は、例えば、所定の方向に偏光した直線偏光(例えば、P偏光)の光を反射し、所定の方向と直交する方向に偏光した直線偏光(例えば、S偏光)の光を透過する。したがって、照明モジュールIL(IL1~IL6)からの照明光束EL1(例えば、P偏光の光)は、偏光ビームスプリッタPBS(PBS1~PBS6)を反射した後、λ/4波長板QW(QW1~QW6)を透過して円筒マスクMに照射される。そして、円筒マスクMで反射した照明光束EL1の反射光(以下、結像光束EL2)は、λ/4波長板QW(QW1~QW6)および偏光ビームスプリッタPBS(PBS1~PBS6)を透過して、投影モジュールPL(PL1~PL6)に入射する。複数の投影モジュールPL(PL1~PL6)は、結像光束EL2(エネルギー線)を回転ドラムDRによって支持されている基板Pに被照射面上の複数の投影領域PA(PA1~PA6)に投射する。なお、偏光ビームスプリッタPBS1およびλ/4波長板QW1には、照明モジュールILからの照明光束EL1およびその反射光である結像光束EL2が入射する。同様に、偏光ビームスプリッタPBS2~PBS6およびλ/4波長板QW2~QW6には、照明モジュールIL2~IL6からの照明光束EL1およびその反射光である結像光束EL2が入射する。
複数の照明モジュールIL(IL1~IL6)は、中心面Poc2を挟んで円筒マスクMの周方向に2列に配置される。奇数番の照明モジュールIL1、IL3、IL5は、中心面Poc2に対して円筒マスクMの走査方向(回転方向)の上流側(-X2´方向側)で、Y方向に沿って1列に配置されている。偶数番の照明モジュールIL2、IL4、IL6は、中心面Poc2に対して円筒マスクMの走査方向(回転方向)の下流側(+X2´方向側)で、Y方向に沿って1列に配置されている。
図5Aは、回転保持ドラムDR2に保持された円筒マスクM上の照明領域IR(IR1~IR6)を-Z2´方向側からみた平面図である。図5Aに示すように、複数の照明領域IR(IR1~IR6)は、中心面Poc2を挟んで円筒マスクMの周方向(X2´方向)に2列に配置されている。円筒マスクMの走査方向の上流側(-X2´方向側)の円筒マスクM上に照明領域IR1、IR3、IR5が配置され、円筒マスクMの走査方向の下流側(+X2´方向側)の円筒マスクM上に照明領域IR2、IR4、IR6が配置される。照明領域IR(IR1~IR6)は、円筒マスクMの幅方向(Y方向)に延びる平行な短辺および長辺を有する細長い台形状の領域となっている。このとき、奇数番の照明領域IR1、IR3、IR5と偶数番の照明領域IR2、IR4、IR6とは、その短辺が互いに向き合うように内側に配置され、長辺が外側となるように設置されている。
奇数番の照明領域IR1、IR3、IR5は、Y方向に沿って所定の間隔をあけて1列に配置されている。同様に、偶数番の照明領域IR2、IR4、IR6も、Y方向に沿って所定の間隔をあけて1列に配置されている。このとき、照明領域IR2は、Y方向に関して、照明領域IR1と照明領域IR3との間に配置されている。また、照明領域IR3は、Y方向に関して、照明領域IR2と照明領域IR4との間に配置されている。照明領域IR4は、Y方向に関して、照明領域IR3と照明領域IR5との間に配置され、照明領域IR5は、Y方向に関して、照明領域IR4と照明領域IR6との間に配置されている。
各照明領域IR(IR1~IR6)は、X2´方向に関して、隣り合う台形状の照明領域IRの三角部が重なるように(オーバーラップするように)配置されている。なお、各照明領域IR(IR1~IR6)は、台形状の領域としたが長方形状の領域であってもよい。なお、円筒マスクMは、マスクパターンが形成されるパターン形成領域A1とマスクパターンが形成されないパターン非形成領域A2とを有する。パターン非形成領域A2は、照明光束EL1を吸収する低反射領域である。このようにして、複数の照明領域IR(IR1~IR6)は、パターン形成領域A1のY方向の全幅をカバーするように配置されている。このパターン形成領域A1は、基板Pの露光領域Wに対応するものである。
複数の投影モジュールPL(PL1~PL6)は、基板Pの被照射面上に位置する複数の投影領域PA(PA1~PA6)に、円筒マスクMからの結像光束EL2を投射する。投影モジュールPL1は、円筒マスクMの照明領域IR1からの結像光束EL2を投影領域PA1に投射する。同様に、投影モジュールPL2~PL6は、円筒マスクMの照明領域IR2~IR6からの反射光である結像光束EL2を投影領域PA2~PA6に投射する。これにより、投影モジュールPL(PL1~PL6)は、円筒マスクM上の照明領域IR(IR1~IR6)におけるマスクパターンの像を、基板P上の投影領域PA(PA1~PA6)に投影することができる。
複数の投影モジュールPLは、複数の照明モジュールIL(IL1~IL6)と対応して配置されている。複数の投影モジュールPL(PL1~PL6)は、中心面Poc2を挟んで回転ドラムDRの周方向に2列に配置される。奇数番の投影モジュールPL1、PL3、PL5は、奇数番の照明モジュールIL1、IL3、IL5の位置に対応して、中心面Poc2に対して基板Pの搬送方向の上流側(-X2´方向側)で、Y方向に沿って1列に配置されている。偶数番の投影モジュールPL2、PL4、PL6は、偶数番の照明モジュールIL2、IL4、IL6の位置に対応して、中心面Poc2に対して基板Pの搬送方向の下流側(+X2´方向側)で、Y方向に沿って1列に配置されている。
図5Bは、回転ドラムDRに支持された基板Pの被照射面上の投影領域PA(PA1~PA6)を+Z方向側からみた平面図である。基板P上の複数の投影領域PA(PA1~PA6)は、円筒マスクM上の複数の照明領域IR(IR1~I6)と対応させて配置されている。つまり、複数の投影領域PA(PA1~PA6)は、中心面Poc2を挟んで回転ドラムDRの周方向(X2´方向)に2列に配置されている。基板Pの搬送方向の上流側(-X2´方向側)の基板P上に投影領域PA1、PA3、PA5が配置され、基板Pの搬送方向の下流側(+X2´方向側)の基板P上に投影領域PA2、PA4、PA6が配置される。投影領域PA(PA1~PA6)は、基板P(回転ドラムDR)の幅方向(Y方向)に延びる平行な短辺および長辺を有する細長い台形状の領域となっている。このとき、奇数番の投影領域PA1、PA3、PA5と偶数番の投影領域PA2、PA4、PA6とは、その短辺が互いに向き合うように内側に配置され、長辺が外側となるように設置されている。
奇数番の投影領域PA1、PA3、PA5は、Y方向に沿って所定の間隔をあけて1列に配置されている。同様に、偶数番の投影領域PA2、PA4、PA6も、Y方向に沿って所定の間隔をあけて1列に配置されている。このとき、投影領域PA2は、Y方向に関して、投影領域PA1と投影領域PA3との間に配置されている。また、投影領域PA3は、Y方向に関して、投影領域PA2と投影領域PA4との間に配置されている。投影領域PA4は、Y方向に関して、投影領域PA3と投影領域PA5との間に配置され、投影領域PA5は、Y方向に関して、投影領域PA4と投影領域PA6との間に配置されている。
各投影領域PA(PA1~PA6)は、X2´方向に関して、隣り合う台形状の投影領域PAの三角部が重なるように(オーバーラップするように)配置されている。なお、各投影領域PA(PA1~PA6)は、台形状の領域としたが長方形状の領域であってもよい。このようにして、複数の投影領域PA(PA1~PA6)は、基板P上に設定される露光領域WのY方向の全幅をカバーするように配置されている。
円筒マスクMの走査(回転)によって円筒マスクMのマスク面P1上の照明領域IR(IR1~IR6)が-X2´方向に走査され、回転ドラムDRの回転によって基板Pの被照射面上の投影領域PA(PA1~PA6)が-X2´方向に走査される。したがって、-X2´方向に走査される照明領域IR(IR1~IR6)におけるマスクパターンの像に応じた結像光束EL2が、投影モジュールPL(PL1~PL6)によって、-X2´方向に走査される基板Pの被照射面上の投影領域PA(PA1~PA6)に投射される。これにより、円筒マスクMのマスク面P1に形成されたマスクパターンが、基板Pの露光領域Wに露光される。
なお、詳しくは説明しないが、各投影モジュールPL(PL1~PL6)には、基板P上に投影される投影領域PA(PA1~PA6)の位置、大きさ(倍率)、および、Y方向に対する傾きの少なくとも1つを調整することができる補正用光学系(図示略)が設けられている。これにより、円筒マスクM上の照明領域IR(IR1~IR6)におけるマスクパターンの像の基板P上の位置、大きさ(倍率)、および、Y方向に対する傾きの少なくとも1つを調整することができる。このような、円筒マスクMを用いて投影露光する際に、マスクパターンの投影像を補正するマルチレンズ方式のパターン露光部は、先に挙げた国際公開第2013/094286号パンフレットにも開示されている。制御装置14は、アライメント顕微鏡ALG(ALG1~ALG4)を用いて検出したマークMK(MK1~MK4)の位置情報に基づいて、投影モジュールPL(PL1~PL6)の補正用光学系を駆動して、投影されるマスクパターンの像を補正してもよい。この補正用光学系は、制御装置14の制御の下、図示しないアクチュエータによって駆動される。
図6は、透過型の円筒マスクを用いる第2のパターン露光部EXH2の他の方式による構成の一例を示す図である。図6に示す第2のパターン露光部EXH2は、いわゆるプロキシミティ方式によって基板Pに所定のパターンを露光するものである。なお、図4と同一の構成については同一の参照符号を付す。図6の第2のパターン露光部EXH2は、光源装置24と、透過型の円筒マスクMを保持する回転保持ドラムDR2とを有する。図6の場合、回転保持ドラムDR2は、一定の肉厚を有する石英等の円管で構成され、その円管の外周面に、遮光性の層(クロム等)でパターニングされたマスクパターンが形成される。円筒マスクMは、回転保持ドラムDR2との隙間が微小となるように設置されている。円筒マスクMを走査方向(回転方向)に回転させながら、光源装置24が回転ドラムDRによって支持された基板Pに対して直接エネルギー線である照明光(照明光束)ELを照射することで、円筒マスクMに形成されたマスクパターンの影像に応じた照明光束ELが基板Pの被照射面上に投射される。光源装置24から基板Pに照射される照明光束ELは、中心面Poc2上に-Z2´方向に照射される。なお、回転保持ドラムDR2は、回転ドラムDRの回転方向とは反対側の方向に回転し、回転ドラムDRの回転と同期して回転する。
以上のように、2種類の第2のパターン露光部EXH2を説明したが、第2のパターン露光部EXH2の方式はこれに限られない。つまり、第2のパターン露光部EXH2は、その円筒マスクMのマスク面P1に形成されたマスクパターンの像(反射光による像や透過光による影像)を、基板Pの露光領域Wに対して走査露光する走査型の露光装置であればよい。
図7は、第1の実施の形態における露光システム30の構成を示す図である。露光システム30は、露光装置EXと、実パターン情報生成部32と、マスク作成装置34とを備える。図7では、実パターン情報生成部32を露光装置EXおよびマスク作成装置34とは別体のものとして図示しているが、実パターン情報生成部32は、露光装置EXまたはマスク作成装置34の中に設けてもよい。第1の実施の形態による露光システム30は、基板Pがフレキシブルなシート基板であることから、基板P上に形成される露光領域Wの変形の傾向を、マークMK(MK1~MK4)の位置計測の結果等に基づいて推定し、露光領域W上に重ね合わせ露光すべき新たなパターンを備えたマスクを露光領域Wの変形の傾向を加味して作成するシステムであり、作成されたマスクを露光装置(第2のパターン露光部EXH2)に装着することによって、基板Pの重ね合わせ露光時の重ね合わせ精度を高めつつ、生産性を向上させるものである。
図7において、露光装置EXの制御装置(出力部)14は、露光領域W内に露光すべきパターンに対応したマスクパターンの作成のために、アライメント顕微鏡ALGによって逐次検出されるマークMK(MK1~MK4)の位置情報、および調整情報(描画ラインSLの傾き補正、描画ラインSLの主走査方向の倍率補正、描画ラインSLの主走査方向へのシフト補正等のための誤差量や調整量)の少なくとも一方を、実パターン情報生成部32に出力する。「露光領域W内に露光すべきパターン」とは、第1のパターン露光部EXH1によって実際に露光されたパターン、つまり、スポット光SPの投射位置(描画位置)が位置調整された後のパターンである。つまり、制御装置14は、第1のパターン露光部EXH1によって実際に露光されたパターンに対応するマスクパターンを作成するために、マークMK(MK1~MK4)の位置情報および調整情報の少なくとも一方を出力する。なお、調整情報とは、上述したように、マークMK(MK1~MK4)の位置情報に基づいて、設計情報(パターンデータ)に対応して基板Pに投射されるスポット光SPの位置を調整した位置調整に関する情報(描画ラインSLの傾き角、描画ラインSLの走査方向の倍率、描画ラインSLの走査方向へのシフト量等)である。制御装置14は、調整情報を出力する場合は、各走査ユニットU(U1~U6)のスポット光SPの位置調整に関する情報を出力する。
実パターン情報生成部32は、コンピュータと、プログラム等が記憶された記憶媒体等とを含み、前記コンピュータが前記プログラムを実行することで、本実施の形態の実パターン情報生成部32として機能する。実パターン情報生成部32は、送られてきたマークMK(MK1~MK4)の位置情報および調整情報の少なくとも一方に基づいて、設計情報(パターンデータ)を補正して、基板P上の露光領域W内に露光すべきパターンに対応したマスクパターンの作成のための実パターン情報(パターンデータ)を生成する。つまり、実パターン情報生成部32は、マークMK(MK1~MK4)の位置情報および調整情報の少なくとも一方に基づいて設計情報(パターンデータ)を補正して、第1のパターン露光部EXH1によって実際に露光されたパターンを得るマスクパターンを作成するための実パターン情報(パターンデータ)を生成する。「設計情報」とは、露光装置EXの第1のパターン露光部EXH1で用いられる設計情報(パターンデータ)である。このパターンデータ(設計情報)は、実パターン情報生成部32の記憶媒体に記憶されている。実パターン情報生成部32は、生成した実パターン情報をマスク作成装置34に出力する。なお、実パターン情報生成部32は、各走査ユニットU(U1~U6)の設計情報(パターンデータ)を補正した実パターン情報をそれぞれ生成する。
マスク作成装置34は、実パターン情報に応じたパターンを円筒状のマスク用基板MPに露光することで、実パターン情報に対応したマスクパターンをマスク用基板MP上に形成する。実パターン情報に対応したマスクパターンが形成されたマスク用基板MPが、第2のパターン露光部EXH2に用いられる円筒マスクMとなる。マスク作成装置34は、露光装置EX2を備える。露光装置EX2は、第3のパターン露光部EXH3と、表面に感光性機能層(例えば、フォトレジスト層)が形成された円筒状のマスク用基板MPを保持する回転保持ドラムDR3と、制御装置36とを有する。制御装置36は、第3のパターン露光部EXH3による露光と回転保持ドラムDR3の回転とを制御するコンピュータである。第3のパターン露光部EXH3は、第1のパターン露光部EXH1と同一の構成を有する。そのため、第1のパターン露光部EXH1の構成に付された符号を適宜援用して、第3のパターン露光部EXH3を説明する。なお、回転保持ドラムDR3は、回転保持ドラムDR2と同一の構成を有し、マスク用基板MPの中心軸AX1が回転中心となるように、マスク用基板MPを保持する。
第3のパターン露光部EXH3の各走査ユニットU(U1~U6)は、制御装置36の制御の下、回転保持ドラムDR3に保持されて回転しているマスク用基板MPに対して、エネルギー線であるビームLBのスポット光SPをマスク用基板MPに投射しつつ、マスク用基板MP上でスポット光SPを主走査方向(Y方向)に1次元に走査(主走査)する。このとき、制御装置36は、実パターン情報生成部32から送られてきた実パターン情報(パターンデータ)を第3のパターン露光部EXH3に与えることで、第3のパターン露光部EXH3に、実パターン情報に対応するパターンをマスク用基板MPの被照射面上に露光させる。つまり、第3のパターン露光部EXH3は、制御装置36の制御の下、実パターン情報に基づいて主走査方向に走査しているスポット光SPの強度を高速に変調(オン/オフ)することで、実パターン情報に対応したパターンを露光する。第3のパターン露光部EXH3では、この実パターン情報がパターンをマスク用基板MPに露光するための設計情報となる。スポット光SPの強度の変調は、第3のパターン露光部EXH3に第1のパターン露光部EXH1と同様に設けられた光導入光学系BDU(BDU1~BDU6)の描画用光学素子AOM(AOM1~AOM6)をスイッチングすることによって行われる。なお、第3のパターン露光部EXH3の光源装置20が発光するパルス状のビームLBは、電子ビームであってもよく、紫外線等の光ビームであってもよい。
このように、第3のパターン露光部EXH3は、実パターン情報に基づいて、マスク用基板MPの被照射面上に投射されるスポット光SPの強度を変調しているので、第3のパターン露光部EXH3によって描画されるパターンは、第1のパターン露光部EXH1によって実際に露光されたパターンを得るためのマスクパターンとなる。
ここで、マスク作成装置34は、特に、図示しないが、マスク用基板MPの表面に感光性機能層(例えば、フォトレジスト層)を形成する成膜装置、露光装置EX2によって露光処理が施されたマスク用基板MPに対して現像を行う現像装置、および、現像が行われたマスク用基板に対してエッチングを行うエッチング装置等を備える。成膜装置、露光装置EX2、現像装置、および、エッチング装置等がマスク用基板MPに処理を施すことで、実パターン情報に対応したマスクパターンが形成された円筒マスクMが形成される。つまり、マスク用基板MPは、マスクパターンが円筒状に担持された円筒マスクとなる。なお、マスク用基板MPをフレキシブルな透明樹脂シートやシートガラス等で作成する場合は、シート状のマスク用基板MPを露光装置EX内の円筒状の回転保持ドラムDR2の外周面に貼り付ける。マスク用基板MPを円筒状の母材の外周面に直接作成して円筒マスクにする場合は、回転保持ドラムDR2の全体を交換する。
露光装置EXの制御装置14は、デバイス製造システム10に装着された供給ロールから送られてくる基板Pに対して初めて重ね合わせ露光を行う場合は、基板Pがどのような状態の変形傾向をしているかわからないので、描画するパターンを柔軟に変形することができる第1のパターン露光部EXH1で重ね合わせすべきパターンの露光を行わせる。つまり、アライメント顕微鏡ALG(ALG1~ALG4)を用いて検出したマークMK(MK1~MK4)の位置情報に基づいて、設計情報(描画データ)に対応して基板Pに投射されるスポット光SPの位置を微調整して、パターンを描画する。制御装置14は、スポット光SPの位置調整に関する調整情報および検出したマークMK(MK1~MK4)の位置情報のうち少なくとも一方を逐次記憶する。
その後、マークMK(MK1~MK4)の位置情報に基づいて、露光領域Wが一定の変形傾向を有することが判明した場合、制御装置14は、一定の変形傾向で配列される一連のマークMK(MK1~MK4)の位置情報、および、その位置情報に基づいて位置調整したスポット光SPの調整情報のうち少なくとも一方を、実パターン情報生成部32に出力する。長尺方向に配置された複数の露光領域Wに亘って、マークMK(MK1~MK4)の位置情報が、露光領域Wの一定の傾向を反映している場合、複数の露光領域Wに亘ったマークMKの位置情報および調整情報の少なくとも一方が実パターン情報生成部32に出力される。マークMK(MK1~MK4)の位置情報に一定の誤差傾向が見られる場合、露光領域Wも一定の変形(歪み)傾向を有することになる。
そして、実パターン情報生成部32は、マークMKの位置情報および調整情報の少なくとも一方に基づいて実パターン情報を生成する。マスク作成装置34は、実パターン情報に対応したマスクパターンを有する円筒マスクMを生成する。つまり、露光領域Wの変形(線形歪み、2次~3次程度の高次歪み)に一定の傾向(規則性)が見られる場合、マスク作成装置34は、その規則性を反映したマスクパターンを円筒マスクMに生成する。このとき、マスク作成装置34の第3のパターン露光部EXH3は、主走査方向に走査されているスポット光SPの強度を実パターン情報に基づいて変調することで、実パターン情報に応じたパターンをマスク用基板MPに露光する。
以上のようにして、露光システム30によって作成された円筒マスクMは、第2のパターン露光部EXH2に装着され、第2のパターン露光部EXH2は、制御装置14の制御の下、作成された円筒マスクMを用いて基板Pに対してパターン露光を行う。つまり、円筒マスクMに形成されたマスクパターンを基板Pの被照射面に投影する。制御装置14は、第2のパターン露光部EXH2による露光が開始される前に、第1のパターン露光部EXH1による露光を中止する。これにより、円筒マスクMが第2のパターン露光部EXH2に装着された後は、第2のパターン露光部EXH2のみによって露光が行われるので、基板Pの搬送速度を速くすることができ、パターン露光の処理時間を短くすること(生産性を向上させること)ができる。その結果、パターン層の形成時間が短くなる。
制御装置14は、第2のパターン露光部EXH2に露光を行わせている最中も、アライメント顕微鏡ALG(ALG1~ALG4)を用いてマークMK(MK1~MK6)の位置情報を検出する。第2のパターン露光部EXH2として図4に示した走査型の露光装置を用いる場合は、制御装置14は、第2のパターン露光部EXH2の露光中に、マークMK(MK1~MK4)の位置情報に基づいて、第2のパターン露光部EXH2の投影モジュールPL(PL1~PL6)に設けられている補正用光学系を駆動させることで、基板Pに投影されるマスクパターンの像を補正してもよい。この段階では、第2のパターン露光部EXH2に装着された円筒マスクMに形成されたマスクパターンが、基板P上の露光領域W内の下地パターン層の2次元的な変形に対して、全体的に概ね重ね合わせできるように、設計上のパターンから補正(修正)されている。そのため、投影モジュールPL(PL1~PL6)の各々に設けられている補正用光学系の駆動量も僅かで済むことになり、そのことも基板Pの搬送速度を高めることに寄与する。
また、制御装置14は、第2のパターン露光部EXH2の露光動作中(基板Pの走査露光中)に、逐次検出されるマークMK(MK1~MK4)の位置情報に基づいて推定される露光領域Wの変形の傾向が許容範囲(第2のパターン露光部EXH2の補正用光学系等による補正限界)を超えて変わりそうな場合は、第2のパターン露光部EXH2による露光を中止する。つまり、露光領域Wの変形の傾向が許容範囲を超えるような場合は、もはや円筒マスクMに形成されたマスクパターンでは対応できないからである。そこで制御装置14は、第1のパターン露光部EXH1による露光を再開させる。これにより、基板Pの搬送状態や露光領域Wの変形に応じて描画するパターンを柔軟に変形させて、基板Pの露光処理を継続することができる。なお、制御装置14は、第1のパターン露光部EXH1で露光を行う場合は、第1のパターン露光部EXH1でパターンを描画することができる速度まで基板Pの搬送速度を低下させる。
ただし、1つの露光領域Wに対して円筒マスクMを使った第2のパターン露光部EXH2での露光処理が完了し、その次の露光領域Wからは第1のパターン露光部EXH1による露光処理を開始する場合、図1に示した第1のパターン露光部EXH1と第2のパターン露光部EXH2の配置では、次の露光領域Wの先端部が、第1のパターン露光部EXH1による露光位置(描画ラインSL1~SL6の位置)を通り過ぎている可能性がある。そのため、第2のパターン露光部EXH2での露光処理が完了したら、基板Pが回転ドラムDR上で滑らないように、回転ドラムDRの回転および基板搬送機構12の搬送動作を中止する。その後、一定距離だけ基板Pを逆搬送するように回転ドラムDRの回転や基板搬送機構12の動作を逆転させた後、再び、第1のパターン露光部EXH1に適した所定の搬送速度で基板Pを順方向に送ればよい。
そして、その後も、アライメント顕微鏡ALG(ALG1~ALG4)を用いて検出したマークMK(MK1~MK4)の位置情報に基づいて推定される露光領域Wの変形が一定の傾向を有する場合は、制御装置14は、マークMK(MK1~MK4)の位置情報および調整情報のうち少なくとも一方を実パターン情報生成部32に出力する。そして、実パターン情報生成部32は、実パターン情報を再度生成し、マスク作成装置34は、再度生成された実パターン情報を設計情報として別のマスク用基板MP上に、実パターン情報に応じたマスクパターンを形成する。そして、制御装置14は、第1のパターン露光部EXH1による露光を再び中止させ、第2のパターン露光部EXH2に、新たに作成されたマスク用基板MPを用いた露光を開始させる。
このように、第1の実施の形態による露光装置EXは、電子デバイスが形成されるべき基板P上のマークMK(MK1~MK4)の位置を検出するためのアライメント顕微鏡ALG(ALG1~ALG4)と、基板P上の露光領域(デバイス形成領域)Wにパターンを露光するために、パターンデータ(設計情報)に対応したビームLBのスポット光SPを、検出されたマークMK(MK1~MK4)の位置情報に基づいて位置調整して投射する第1のパターン露光部EXH1と、位置調整に関する調整情報とマークMK(MK1~MK4)の位置情報との少なくとも一方を、露光領域Wに露光すべきパターンに対応したマスクパターンの作成のために出力する制御装置(出力部)14を備える。したがって、第1のパターン露光部EXH1によって実際に露光されたパターン(基板P上の露光領域Wの変形に対応するように調整された後の描画パターン)を反映したマスクパターンを作成することが可能になる。
また、露光装置EXは、制御装置14が出力した調整情報とマークMK(MK1~MK4)の位置情報との少なくとも一方に基づいて作成されたマスクパターンを用いて、露光領域Wにマスクパターンの像に応じた照明光束ELを投射する第2のパターン露光部EXH2を備える。これにより、円筒マスクMを用いて露光を行う第2のパターン露光部EXH2によって、マスクレスの第1のパターン露光部EXH1で実際に露光されたパターンを露光することができる。つまり、第1のパターン露光部EXH1を用いなくても、第2のパターン露光部EXH2は、第1のパターン露光部EXH1で実際に露光されたパターンと同等に調整(補正)されたマスクパターンによる露光処理を実行できる。
第2のパターン露光部EXH2は、検出されたマークMK(MK1~MK4)の位置情報に基づいて投射するマスクパターンの像を変形させる。これにより、第2のパターン露光部EXH2の露光中に、基板Pの搬送状態の変化に起因して露光領域Wが変形した場合であっても、その変形が許容範囲内(補正限界内)であれば、変形した露光領域Wに合せてパターンを露光することが可能となる。
第2のパターン露光部EXH2による露光中に、検出されたマークMK(MK1~MK4)の位置情報に基づいて推定される露光領域Wの変形の傾向が所定の許容範囲を超えて変わるような場合は、第2のパターン露光部EXH2による露光動作を中止して、第1のパターン露光部EXH1による露光動作に切り替えられるが、その切り替えのタイミングは、基板Pを逆搬送する機能を使うことによって、1つの露光領域Wが第2のパターン露光部EXH2で露光処理されている途中であってもよい。
第1のパターン露光部EXH1および第2のパターン露光部EXH2は、1つの回転ドラムDRの外周面に支持されたシート状の基板P上でパターンを露光する。これにより、第1のパターン露光部EXH1および第2のパターン露光部EXH2によってパターンが露光される基板Pの搬送状態(回転ドラムDRに密着支持された状態)は同一となる。したがって、第1のパターン露光部EXH1によって露光されるパターンと基板P上の露光領域W(下地パターン)との重ね合わせ精度と、第2のパターン露光部EXH2によって露光されるパターンと基板P上の露光領域W(下地パターン)との重ね合わせ精度は同程度になり、製造される電子デバイスの品質ばらつきを抑えることができる。
実パターン情報生成部32は、検出されたマークMK(MK1~MK4)の位置情報に基づいて推定される露光領域Wの変形の傾向が許容範囲を超えるような場合は、実パターン情報を再度生成し、マスク作成装置34は、再度生成された実パターン情報に基づいてマスクパターンを別のマスク用基板MP上に形成する。これにより、新たに作成されたマスク用基板MP(円筒マスクM)を用いて、第2のパターン露光部EXH2によるパターン露光が継続される。そのため、ロール長(基板Pの全長)が数Kmに及ぶ場合でも、基板Pの搬送をほとんど止めることなく、連続した露光処理が可能となり、生産性が向上する。
なお、第1のパターン露光部EXH1は、マスクレス方式で露光するものであればよい。したがって、第1のパターン露光部EXH1は、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD:Digital Micromirror Device)を用いて、描画データに応じた所定のパターンを露光するものであってもよい。
[変形例]
上記第1の実施の形態は、以下のように変形してもよい。
(変形例1)上記第1の実施の形態では、第1のパターン露光部EXH1と第2のパターン露光部EXH2とは、同一の回転ドラムDRで支持された基板Pに対してパターンを露光するようにしたが、第1のパターン露光部EXH1によって露光が行われる基板Pを支持する回転ドラムDRと、第2のパターン露光部EXH2によって露光が行われる基板Pを支持する回転ドラムDRとを異ならせるようにしてもよい。
図8は、変形例1における露光装置EXaの構成を示す図である。なお、上記第1の実施の形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略し、上記実施の形態と異なる部分だけを説明する。露光装置EXaの基板搬送機構12aは、基板Pの搬送方向の上流側(-X方向側)から順に、エッジポジションコントローラEPC、駆動ローラR1、テンション調整ローラRT1、回転ドラムDR(DRa)、テンション調整ローラRT2、回転ドラムDR(DRa)、テンション調整ローラRT3、および、駆動ローラR3を備える。エッジポジションコントローラEPCから搬出された基板Pは、駆動ローラR1、テンション調整ローラRT1、回転ドラムDRa、テンション調整ローラRT2、回転ドラムDRb、テンション調整ローラRT3、および、駆動ローラR3に掛け渡された後、プロセス装置PR2に送られる。
この2つの回転ドラムDRa、DRbは、図1~図6で説明した回転ドラムDRと同一の構成を有する。なお、図8に示すように、回転ドラムDRaは基板Pの搬送方向の上流側(-X方向側)に配置され、その中心軸AXoおよびシャフトSftをAXo1、Sft1で表している。そして、回転ドラムDRbは基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)に配置され、その中心軸AXoおよびシャフトSftをAXo2、Sft2で表している。テンション調整ローラRT3も、テンション調整ローラRT1、RT2と同様に-Z方向に付勢されている。テンション調整ローラRT1、RT2は、回転ドラムDRaに巻き付けられて支持されている基板Pに長尺方向に所定のテンションを与えており、テンション調整ローラRT2、RT3は、回転ドラムDRbに巻き付けられて支持されている基板Pに長尺方向に所定のテンションを与えている。これにより、回転ドラムDRa、DRbにかかる基板Pに付与されている長尺方向のテンションを所定の範囲内に安定化させている。
第1のパターン露光部EXH1は、回転ドラムDRaの上方(+Z方向側)に設けられ、第2のパターン露光部EXH2は、回転ドラムDRbの上方(+Z方向側)に設けられている。これにより、第1のパターン露光部EXH1は、回転ドラムDRaに支持されている基板Pに対して露光を行うことができ、第2のパターン露光部EXH2は、回転ドラムDRbに支持されている基板Pに対して露光を行うことができる。図8では、Poc1は、回転ドラムDRaの中心軸AXo1を通り、Z方向に延びる面となっている。また、Poc2は、回転ドラムDRbの中心軸AXo2を通り、Z方向に延びる面となっている。
このように、第1のパターン露光部EXH1によって露光が行われる基板Pを支持する回転ドラムDRと、第2のパターン露光部EXH2によって露光が行われる基板Pを支持する回転ドラムDRとを異ならせることで、第1のパターン露光部EXH1と第2のパターン露光部EXH2の配置の自由度が向上する。
なお、アライメント顕微鏡ALGa(ALGa1~ALGa4)は、回転ドラムDRaに支持された基板P上のマークMK(MK1~MK4)を撮像し、アライメント顕微鏡ALGb(ALGb1~ALGb4)は、回転ドラムDRbに支持された基板P上のマークMK(MK1~MK4)を撮像する。このアライメント顕微鏡ALGa、ALGbは、上記の第1の実施の形態のアライメント顕微鏡ALGと同一の構成を有する。第1のパターン露光部EXH1は、アライメント顕微鏡ALGa(ALGa1~ALGa4)を用いて検出されたマークMK(MK1~MK4)の位置情報に基づいて、設計情報に対応したスポット光SPを位置調整しつつ、ラスタースキャン方式でパターン描画を行う。また、第2のパターン露光部EXH2が、図4に示す円筒マスクMを用いた走査型の露光装置である場合は、第2のパターン露光部EXH2は、アライメント顕微鏡ALGb(ALGb1~ALGb4)を用いて検出されたマークMK(MK1~MK4)の位置情報に基づいて推定される露光領域Wの変形傾向が変動してきた場合は、投影されるマスクパターンの投影像の位置や投影像の形状(倍率、回転)を補正する。また、基板P上の露光領域Wの変形の傾向が許容範囲を超えるか否かの判断は、アライメント顕微鏡ALGa(ALGa1~ALGa4)を用いて検出されたマークMK(MK1~MK4)の位置情報、および、アライメント顕微鏡ALGb(ALGb1~ALGb4)を用いて検出されたマークMK(MK1~MK4)の位置情報の少なくとも一方を用いて判断される。
(変形例2)上記第1の実施の形態および変形例1では、第1のパターン露光部EXH1を基板Pの搬送方向の上流側(-X方向側)に配置し、第2のパターン露光部EXH2を基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)に配置したが、配置関係はその逆であってもよい。つまり、第1のパターン露光部EXH1が第2のパターン露光部EXH2より基板Pの搬送方向の下流側に位置するように、第1のパターン露光部EXH1および第2のパターン露光部EXH2を配置してもよい。
(変形例3)上記第1の実施の形態および上記各変形例では、第1のパターン露光部EXH1および第2のパターン露光部EXH2は、回転ドラムDR(DRa、DRb)の外周面の周方向に沿って湾曲して支持される基板P上にパターン露光を行うようにしたが、平面状に支持された基板Pに対してパターン露光を行うようにしてもよい。また、本変形例3の第2のパターン露光部EXH2は、平面マスクを使う走査型の露光装置(スキャニングステッパ)であってもよく、ステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)であってもよい。スキャニングステッパは、平面マスクと基板PとをX方向に同期移動して平面マスクのマスクパターンの像に応じた結像光束EL2を基板Pに対して走査露光するものである。ステッパは、平面マスクと基板Pとを静止した状態で、マスクパターンを露光領域Wに対して一括露光した後、基板Pをステップ移動させて再び静止させた状態でマスクパターンを一括露光するものである。このように平面マスクが装着される第2のパターン露光部EXH2を用いる場合は、マスク作成装置34で形成されるマスク用基板(ブランクス)MPは、マスクパターンを平面状に担持するため、石英等の平行平板となる。
(変形例4)上記第1の実施の形態および上記各変形例では、マークMK(MK1~MK4)の位置情報に基づいて推定される露光領域W(または基板P)の変形に対応するように、第1のパターン露光部EXH1における描画ラインSL(SL1~SL6)をY軸に対して傾けたり、描画ラインSL(SL1~SL6)の走査長(倍率)を変えたり、描画ラインSL(SL1~SL6)を主走査方向にシフトしたりすることで、基板Pに投射されるスポット光SPの走査位置を微調整した。本変形例4では、これらの方法に加え、または、代えて、マークMK(MK1~MK4)の位置情報に基づいて推定される露光領域W(または基板P)の変形に対応するように、原設計情報(パターンの原データ)を補正したパターンデータ(修正設計情報)を生成してもよい。第1のパターン露光部EXH1は、この生成された修正設計情報(ビットマップデータ)を用いて、走査中のスポット光SPの強度を変調する。原設計情報(原パターンデータ)自体を修正することで、スポット光SPの走査によって基板P上に描画されるパターンの位置が結果的に微少に補正される。この場合は、生成された修正設計情報も実パターン情報生成部32に送られ、実パターン情報生成部32は、送られてきた修正設計情報のみ、またはマークMK(MK1~MK4)の位置情報および調整情報の少なくとも一方と修正設計情報とを用いて実パターン情報を生成する。その際、実パターン情報生成部32は、マークMK(MK1~MK4)の位置情報および調整情報の少なくとも一方を用いて修正設計情報を再補正して、実パターン情報を生成してもよい。
[第2の実施の形態]
図9、図10は、第2の実施の形態による露光装置EXbの構成をZ方向から見た平面図である。なお、上記第1の実施の形態と同一の構成については同一の符号を付してその詳細な説明を省略し、上記実施の形態と異なる部分について説明する。露光装置EXbは、基板Pを所定のテンション状態でX方向に搬送する搬送装置を備えており、基板Pは、露光位置において回転ドラムDRで湾曲して支持されるか、フラットステージ(例えば、流体ベアリング層で基板Pを支持する平面ホルダ)によって平面状に支持される。図9に示すように、本実施の形態の露光装置EXbは、DMDを使った6つの投影モジュールU1’~U6’を千鳥配置にしたマスクレス方式の第1のパターン露光部EXH1と、中心軸AX1の回りに回転する回転保持ドラムDR2の外周面にマスクパターンが形成された透過型の円筒マスクM(図6と同様)を用いる第2のパターン露光部EXH2とを有する。第1のパターン露光部EXH1と第2のパターン露光部EXH2は、露光部支持フレーム200上にY方向(基板Pの長尺方向と直交する幅方向)に並んで配置され、それぞれ露光部支持フレーム200のY方向に延びた直線ガイド部200a、200bに案内されてY方向に移動可能となっている。なお、フラットステージによって基板Pを平面状に支持する構成として、例えば、国際公開第2013/150677号パンフレットに開示された構成を使ってもよい。
したがって、本実施の形態では、第1のパターン露光部EXH1と第2のパターン露光部EXH2のいずれか一方を、基板Pと対向するようにY方向にスライドさせることによって、マスクレス方式の露光処理とマスク方式の露光処理とを選択することができる。図9は、第1のパターン露光部EXH1を基板Pと対向させたマスクレス露光時の状態を示し、図10は第2のパターン露光部EXH2を基板Pと対向させたマスク露光時の状態を示す。第1の実施の形態と同様に、4つのアライメント顕微鏡ALG1~ALG4は、基板P上の露光位置に対して基板Pの搬送方向の上流側に配置され、それぞれ基板P上のマークMK(MK1~MK4)を検出する。なお、DMDを使ったマスクレス方式の第1のパターン露光部EXH1としては、例えば国際公開第2008/090942号パンフレットに開示された構成を利用することができ、透過型の円筒マスクMを用いる第2のパターン露光部EXH2としては、例えば国際公開第2013/136834号パンフレットに開示されたプロキシミティ方式の露光機構を利用することができる。
本実施の形態の第1のパターン露光部EXH1は、基板PがX方向(副走査方向)に一定速度で送られる間、描画すべきパターンに対応した局所的な投影光の2次元的な分布をDMDで動的に変調している。その際、DMDの多数のマイクロミラーの各々を駆動する信号は、推定される露光領域Wの変形等による歪み分だけ、元の設計情報(CAD情報)を補正して作られる。したがって、DMDの各マイクロミラーを駆動する信号の状態変化と、基板Pの副走査方向の移動位置(またはマークMKの移動位置)とを精密に対応させて記憶すれば、基板Pの露光領域Wに実際に重ね合わせ露光された実パターンの情報(補正後の修正設計情報)を、図7の実パターン情報生成部32によって生成することができる。これによって、第1の実施の形態と同様に、第2のパターン露光部EXH2に装着すべき円筒マスクMを図7のマスク作成装置34によって直ちに作成することができる。
本実施の形態によれば、第1のパターン露光部EXH1と第2のパターン露光部EXH2のいずれか一方を使って基板Pの露光処理を行っている間、他方は、基板Pの搬送経路の外(側方)に退出した状態で配置される。そのため、パターン露光部EXH1、EXH2の保守点検(メンテナンス)が容易になる。さらに、第2のパターン露光部EXH2においては、円筒マスクMの装着(交換)作業が容易になるとともに、マスクの自動交換を行うためのマスクチェンジャー機構を容易に組み込むことができる。また、第1のパターン露光部EXH1においては、DMDを使った6つの投影モジュールU1’~U6’の各々から投影される光分布の相互の位置関係を計測してキャリブレーションするための較正ユニット部を、図10のように位置した第1のパターン露光部EXH1の直下(-Z方向側)に配置することができる。
[変形例]
上記第2の実施の形態は、以下のように変形してもよい。
(変形例1)図11は、第2の実施の形態の変形例1による露光装置EXbの平面配置を示す図である。変形例1では、第1のパターン露光部EXH1と第2のパターン露光部EXH2とを、軸210aを中心に回動可能な露光部支持ターレット210に一体的に設ける。そして、第1のパターン露光部EXH1と第2のパターン露光部EXH2とを切り替える際は、露光部支持ターレット210を一定距離(例えば、1cm程度)だけ+Z方向に上昇させた後、軸210aを中心に時計回りまたは反時計回りに180度回動させる。このように、露光部支持ターレット210の回動によって切り替える構成の場合、軸210aを支持するベアリングの精度(±数μm)で、第1のパターン露光部EXH1や第2のパターン露光部EXH2を機械的に所定の位置に設定できる。この変形例1の場合も、パターン露光部EXH1、EXH2の保守点検(メンテナンス)作業、円筒マスクMの装着(交換)作業が容易になり、マスクチェンジャー機構や較正ユニット部を容易に組み込むことができる。
(変形例2)図12は、第2の実施の形態の変形例2による露光装置EXbの概略構成を正面から見た図である。この変形例2では、第1のパターン露光部EXH1と第2のパターン露光部EXH2とを、X方向に直線的に延びた露光部支持フレーム220のガイド部220aで支持する。ガイド部220aはX方向に直線的に形成されたレールとして機能し、第1のパターン露光部EXH1と第2のパターン露光部EXH2の各々は、ガイド部220aに沿ってX方向に移動可能に設けられている。この変形例2の場合は、パターン露光部EXH1、EXH2を、基板Pの搬送方向(中心面Poc2を横切るときの基板Pの移動方向)に移動させて、マスク露光モードとマスクレス露光モードとを切り替えられるようにした。したがって、先の図9~図11のように、第1のパターン露光部EXH1と第2のパターン露光部EXH2のいずれか一方を、XY面内で見たときに基板Pの搬送経路の外側に配置することはできないが、露光装置EXbの全体としてのフットプリント(設置面積)は小さくすることができる。
[第3の実施の形態]
図13は第3の実施の形態によるデバイス製造装置の全体の構成を示し、図14は、図13のデバイス製造装置に組み込まれる露光部の構成を示す図である。本実施の形態のデバイス製造装置は、図13のように、供給ロールFR1に巻かれた可撓性の長尺の基板Pを引き出して前工程のプロセス装置(処理部)PR1に供給する供給部SUと、プロセス装置PR1で処理された基板Pを露光処理する露光装置EXCと、露光後の基板Pに後工程を施すプロセス装置(処理部)PR2と、後処理された基板Pを回収ロールFR2に巻き取る回収部PUとで構成される。露光装置EXCは、図14に示すように、例えば3つの露光部EXc1、EXc2、EXc3を備え、それらを統括制御するための露光制御部ECTを有する。
プロセス装置PR1は、供給部SUから送られてくる基板Pを外周面で支持して長尺方向に移動させる回転ドラムRS1と、回転ドラムRS1で支持された基板Pの表面に液体状の感光材料(レジスト、感光性シランカップリング材等)を塗布するダイコートヘッドDHと、塗布された感光材料から溶剤を除去する溶剤除去部HS1と、さらに基板Pをヒータや温風等で加熱乾燥する乾燥部HS2とで構成される。プロセス装置PR1によって感光材料による感光性機能層が形成された基板Pは露光装置EXCで露光処理された後、プロセス装置PR2で感光性機能層に対する湿式処理が施される。プロセス装置PR2は、感光性機能層に対して湿式で化学的な処理を施すための液体槽WB1と、化学的に処理された基板Pを純水で洗浄する液体漕WB2と、洗浄された基板Pを加熱して乾燥させる乾燥部HS3とで構成される。
本実施の形態の露光装置EXCは、図14に示すように、透過型の円筒マスクM1を使う図6と同様のプロキシミティ方式の露光部EXc1と、図2と同様の走査ビームによるマスクレス方式の露光部EXc2と、反射型の円筒マスクM2を使う図4と同様の投影方式の露光部EXc3と、露光部EXc1、EXc2、EXc3の順にプロセス装置PR1からの基板Pを搬送するための複数のローラR11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18を含む搬送部とで構成される。露光部EXc1は、中心軸AX1の回りに円筒マスクM1を回転させる不図示の駆動機構と、円筒マスクM1の内部に配置され、基板Pに露光光を照射するための光源装置(照明系)24(図6参照)と、基板Pを外周面(支持面)で支持しつつ中心軸AXaの回りに回転可能な回転ドラム(基板支持部材)DRAと、回転ドラムDRAを回転させて基板Pを長尺方向に移動させる不図示の駆動機構と、回転ドラムDRAの回転角度位置(基板Pの移動量)を計測するエンコーダシステムのスケール円盤SDと、図1や図3に示したアライメント顕微鏡ALG1~ALG4で構成されるアライメント系ALGAと、を備える。このような露光部EXc1は、例えば、国際公開第2013/136834号パンフレット、および、国際公開第2013/146184号パンフレットに開示されているので、詳細な説明は省略する。
露光部EXc2は、図2と同様に、搬送部のローラR13、R14を介して露光部EXc1から送られてくる基板Pを外周面(支持面)で支持しつつ中心軸AXbの回りに回転可能な回転ドラム(基板支持部材)DRBと、回転ドラムDRBを回転させて基板Pを長尺方向に移動させる不図示の駆動機構と、回転ドラムDRBの回転角度位置(基板Pの移動量)を計測するエンコーダシステムのスケール円盤SDと、図1や図3に示したアライメント顕微鏡ALG1~ALG4で構成されるアライメント系ALGBと、CADデータに基づいて強度変調された描画ビーム(露光光)をスポット光SPに集光して基板P上で走査することでパターンを描画するビーム走査方式の複数の走査ユニットU1~U6と、を備える。このような露光部EXc2については、例えば、国際公開第2015/152217号パンフレット、および、国際公開第2015/152218号パンフレットにも具体的に説明されているので、ここでは詳細な説明を省略するが、走査ユニットU1~U6はアライメント系ALGBによって計測されるマークMK1~MK4(図3参照)の配列状態に基づいて、走査ユニットU1~U6の各々によって描画されるパターンの描画位置、傾き(微少回転)、描画倍率等を補正することで、回転ドラムDRBに支持された基板P自体の変形や伸縮、または基板P上の露光領域Wの2次元的な変形(歪み)に対応した高精度なパターニング(重ね合わせ露光等)が可能である。
露光部EXc3は、図4と同様に、中心軸AX1の回りに反射型の円筒マスクM2を回転させる不図示の駆動機構と、搬送部のローラR15、R16を介して露光部EXc2から送られてくる基板Pを外周面(支持面)で支持しつつ中心軸AXcの回りに回転可能な回転ドラム(基板支持部材)DRCと、回転ドラムDRCを回転させて基板Pを長尺方向に移動させる不図示の駆動機構と、回転ドラムDRCの回転角度位置(基板Pの移動量)を計測するエンコーダシステムのスケール円盤SDと、図1や図3に示したアライメント顕微鏡ALG1~ALG4で構成されるアライメント系ALGCと、円筒マスクM2に形成されたパターンで反射された結像光(露光光)を基板Pに投影露光する複数の投影モジュール(投影系)PL1~PL6と、を備える。このようなマルチレンズ投影方式の露光部EXc3は、例えば、国際公開第2014/073535号パンフレットにも開示されているので、詳細な説明は省略するが、アライメント系ALGCで計測される基板P上の複数のマークMK1~MK4の配列状態に基づいて、基板P(或いは露光領域W)の2次元的な変形を推定し、その変形に合わせるように、投影モジュールPL1~PL6の各々に設けられている投影像のシフト補正系、投影像の微少回転補正系、投影像の倍率補正系が調整される。そのような補正系についても国際公開第2014/073535号パンフレットに開示されている。
以上の構成において、露光部EXc1、EXc2、EXc3の各々に設けられる回転ドラムDRA、DRB、DRCの各々は同じ寸法で作られ、また表面特性としての外周面の光学的な反射特性や基板Pとの摩擦特性等は揃っているものとする。これらの表面特性としての形状特性、光学特性、摩擦特性は、いずれか1つが揃っていればよい。ここで形状特性とは、外周面の曲率(直径)、粗さ、硬さ、材質等を含み、摩擦特性とは外周面の摩擦係数を含むものである。光学特性は、露光光(ビーム、照明光束、結像光束等)に対する反射率を含む。また、基板Pが各回転ドラムDRA、DRB、DRCに支持され始める位置(接触開始位置)から各アライメント系ALGA、ALGB、ALGCの検出領域(図3中のVw1~Vw4)までの基板Pの距離は、略同じになるように設定されている。さらに、各回転ドラムDRA、DRB、DRCの回転角度を計測するエンコーダシステム(スケール円盤SD)も同じものが使われる。また、ローラR12、R14、R16等は、各回転ドラムDRA、DRB、DRCの上流側の基板Pに付与するテンションを略同じに設定するためのテンションローラとして構成される。ただし、露光部EXc1、EXc2、EXc3のうちで基板Pの露光処理を行わない露光部では、基板Pに付与するテンションを他の露光部でのテンションと同じに設定しなくてもよい。
本実施の形態の露光装置EXCは、基板Pの搬送状態、基板P或いは基板P上に設定される電子デバイス用のパターンの露光領域Wの変形状態、或いは生産性等を考慮した最適な露光方式で良好なパターン露光が行われるように、露光方式の異なる複数(ここでは3つ)の露光部EXc1、EXc2、EXc3の少なくとも1つを使って基板Pの露光処理を実行する。例えば、プロセス装置PR1から送られてくる基板Pが銅箔やアルミ箔を蒸着したPETフィルムであり、何もパターンが形成されていない第1層露光(ファースト露光)用の基板である場合は、基板Pの変形がほとんどないので、生産性を考慮して、プロキシミティ方式の露光部EXc1と投影方式の露光部EXc3のいずれか一方を使う。さらに、プロセス装置PR1から送られてくる基板Pの露光領域W内に既に下地パターン層が形成されている場合は、重ね合わせ露光(セカンド露光)となるので、重ね合わせ精度を良好にするために、マスクレス方式の露光部EXc2または投影方式の露光部EXc3が選択される。ただし、ファースト露光時やセカンド露光時において、露光部EXc1、EXc2、EXc3のうちの2つを併用して基板Pを露光処理することができる。
露光部EXc1による円筒マスクM1を用いたプロキシミティ方式の露光処理は、露光すべきパターンの最小寸法(最小線幅)が数十μm以上と比較的に大きく、高い重ね合わせ精度を必要としない場合に、高い生産性(タクト)を得られるという利点がある。一方、円筒マスクM2を使うマルチレンズ投影方式の露光部EXc3による露光処理では、露光すべきパターンの最小寸法(最小線幅)として数μm程度の高い解像が得られるとともに、マルチレンズ(投影モジュールPL)毎の投影像の補正によって高い重ね合わせ精度が得られ、比較的に高い生産性(タクト)を得られるという利点がある。これに対して、マスクレス方式の露光部EXc2による露光処理では、最小寸法(最小線幅)として数μm程度の高い解像が得られるとともに、基板P(または露光領域W)の大きな変形に対する補正能力が投影方式の露光部EXc3よりも高く、高い重ね合わせ精度が得られる反面、生産性(タクト)が露光部EXc1や露光部EXc3に比べて低くなる傾向がある。
本実施の形態では、以上のような各露光部EXc1、EXc2、EXc3の特質を考慮して、図13に示した露光制御部ECTは、プロセス装置PR1から送られてくる基板Pに適した露光モードを選択して実施する。第1の露光モードは単純に3つの露光部EXc1、EXc2、EXc3のうちの1つを使うものであり、第2の露光モードは2つの露光部EXc1とEXc2を併用するものであり、第3の露光モードは2つの露光部EXc2とEXc3を併用するものである。第1の露光モードでは、基板Pがファースト露光の場合、ファースト露光で露光すべきパターンの微細度が高い(最小寸法が小さい)ときは、露光部EXc2と露光部EXc3のいずれかを使う。ファースト露光で露光すべきパターンの微細度が低い(最小寸法が大きい)ときは、露光部EXc1と露光部EXc3のいずれかを使う。ただし、露光部EXc1または露光部EXc3を使う場合は、ファースト露光用のパターンを形成した円筒マスクM1またはM2を用意する。また第1の露光モードでは、基板Pがセカンド露光の場合、重ね合わせ精度が優先されるときは、露光部EXc2と露光部EXc3のいずれかを使う。重ね合わせ精度が厳しくないときは、セカンド露光の場合でも露光部EXc1、或いは露光部EXc3のいずれかが使われる。ただし、露光部EXc1または露光部EXc3を使う場合は、セカンド露光用のパターンを形成した円筒マスクM1またはM2が用意される。そのセカンド露光用の円筒マスクM1またはM2は、先の第1の実施の形態(図7)のようにして作成することができる。
第2の露光モードでは、基板P上の露光領域Wに転写すべきパターンの一部を露光部EXc1によってプロキシミティ方式で露光した後、露光領域Wに転写すべきパターンの他の一部を露光部EXc2によってマスクレス方式で露光する。第2の露光モードは、ファースト露光とセカンド露光のいずれにも適用可能であり、露光部EXc1で露光される一部のパターンは微細度が低い(最小寸法が大きい)部分とし、露光部EXc2で露光される他の一部のパターンは微細度が高い(最小寸法が小さい)部分、または高い重ね合わせ精度が必要とされる部分とする。すなわち、ファースト露光用またはセカンド露光用のパターンを微細度(または重ね合わせ精度)が低い部分と高い部分とに分解し、微細度(または重ね合わせ精度)が低い部分のパターンを形成した円筒マスクM1を用意し、微細度(または重ね合わせ精度)が高い部分のパターンは露光部EXc2の描画データとして用意する。したがって、第2の露光モードでは、基板Pの露光領域Wに対して時間を空けて2回の露光が行われ、露光部EXc1で最初に露光されたパターンと露光部EXc2で2回目に露光されるパターンとが、アライメント系ALGA、ALGBの各々で検出される基板P上のマークMK1~MK4の位置情報に基づいて、必要な精度で位置合わせされる。なお、セカンド露光を第2の露光モードで行う場合、露光部EXc1に装着される円筒マスクM1にはセカンド露光用のパターンが形成されるが、その円筒マスクM1は先の第1の実施の形態(図7)によって作成することができる。
第3の露光モードでは、基板Pの露光領域Wに転写すべきパターンの一部を露光部EXc2によってマスクレス方式で露光した後、露光領域Wに転写すべきパターンの他の一部を露光部EXc3によって投影方式で露光する。第3の露光モードも、ファースト露光とセカンド露光のいずれにも適用可能であるが、特にセカンド露光に適している。そして露光部EXc2で露光される露光領域Wの一部分は変形が大きい部分とし、露光部EXc3で露光される露光領域Wの他の部分は変形が小さい部分とする。すなわち、基板P上の露光領域Wの変形の傾向を予め推定または計測し、変形の程度が大きい部分(領域)に対応したパターンはマスクレス方式で露光し、変形の程度が小さい部分(領域)に対応したパターンは円筒マスクM2に形成して投影方式で露光する。なお、第3の露光モードでも、セカンド露光(またはファースト露光)用のパターンを微細度が低い部分と高い部分とに分解し、微細度が低い部分のパターンは円筒マスクM2に形成し、微細度が高い部分のパターンは露光部EXc2の描画データとして用意してもよい。第3の露光モードで露光部EXc3に装着される円筒マスクM2は、先の第1の実施の形態(図7)によって作成することができる。
以上、本実施の形態によれば、連続的に搬送される長尺な基板P(露光領域W)に転写する際のパターンの微細度、生産性、或いは重ね合わせ精度に応じて、露光形式が異なる複数の露光部EXc1、EXc2、EXc3を選択して連続的に露光処理することができるので、基板P上に製造される電子デバイスの品質を保ちつつ、生産性を確保することができる。特に、第2の露光モードや第3の露光モードのように、マスクレス方式の露光部EXc2を併用する場合、円筒マスクM1、M2に形成される露光領域W内のパターンの一部は、露光部EXc2で露光される部分が基板P上で未露光となるように設定される。したがって、露光部EXc2で露光される基板P上の部分が露光領域W内の搬送方向の先端部分や終端部分に限られている場合は、その先端部分や終端部分を露光部EXc2で露光する期間だけ、基板Pの搬送速度を露光部EXc2に適した速度に低下させることができる。すなわち、露光部EXc2における基板Pの搬送速度を、露光部EXc2に適した速度と、他の露光部EXc1(またはEXc3)に適した速度とに間欠的に切り替える。このように、露光部EXc2での基板Pの搬送速度を間欠的に変更する場合は、図14に示したローラR13とローラR14の間、またはローラR15とローラR16の間に、基板Pを所定の長さに渡って蓄積可能なバッファ機構(アキュムレータ)が設けられる。このようにすると、マスクレス方式の露光部EXc2を併用する場合であっても、基板Pの搬送速度を露光部EXc2に適した一律に低い速度で一定にして露光処理する場合に比べて、生産性を向上させることができる。
さらに、本実施の形態では、基板Pを露光位置で支持して搬送する回転ドラムDRA、DRB、DRCの各々の構成や表面特性、基板Pの搬送条件(基板Pのテンション等)を同じにしてあるため、露光部EXc1、EXc2、EXc3の各々は、基板Pを同じ状態で支持した状態で露光処理することができる。そのため、基板P(または露光領域W)が各回転ドラムDRA、DRB、DRCに支持されたときに生じ得る僅かな変形やずれの状況を揃えることが可能となり、露光領域Wに形成される電子デバイスの品質のばらつきを抑えることができる。
[変形例]
上記第3の実施の形態は、以下のように変形してもよい。
(変形例1)上記の実施の形態では、例えば、露光部EXc2(EXc3)の露光処理時には、アライメント系ALGB(ALGC)で計測された基板P(或いは露光領域W)の変形情報のみに基づいて、2番目(3番目)の露光部EXc2(EXc3)による基板Pへのパターン露光時の補正を実施するようにした。しかしながら、図14の構成において、例えば1番目の露光部EXc1のアライメント系ALGAで検出された基板PのマークMK1~MK4の配列状態に基づいて取得された基板P(露光領域W)の変形情報を、2番目の露光部EXc2のアライメント系ALGBで検出された基板PのマークMK1~MK4の配列状態に基づいて取得される基板P(露光領域W)の変形情報に加味して、2番目の露光部EXc2による基板Pへのパターン描画時に、描画ビーム(露光光)と基板Pとの相対位置関係を補正してもよい。これによって、2番目の露光部EXc2は、基板P(露光領域W)の変形状況を、アライメント系ALGBによって露光直前に計測される前に把握することができ、描画時の補正量の精密な設定や描画データの精密な修正等の時間的な余裕ができ、重ね合わせ誤差をさらに小さくすることが可能となる。
また、2番目の露光部EXc2のアライメント系ALGBで検出された基板PのマークMK1~MK4の位置関係に基づいて取得された基板P(露光領域W)の変形情報を、3番目の露光部EXc3のアライメント系ALGCで検出された基板PのマークMK1~MK4の位置関係に基づいて取得される基板P(露光領域W)の変形情報に加味して、3番目の露光部EXc3による基板Pへのパターン投影時に、投影像(露光光)と基板Pとの相対位置関係を補正してもよい。この場合も、3番目の露光部EXc3は、基板P(露光領域W)の変形状況を、アライメント系ALGCによって露光直前に計測される前に把握することができ、投影像の補正量を精密に設定する時間的な余裕ができ、重ね合わせ誤差をさらに小さくすることが可能となる。以上のような変形情報の管理や補正制御は、図13に示した露光制御部ECTによって指示される。
(変形例2)図14では、露光装置EXCを構成する露光部EXc1、EXc2、EXc3を、基板Pの搬送経路に沿って、プロキシミティ方式、マスクレス方式、投影方式の順で配置したが、その順番はどのようなものであってもよい。また、プロキシミティ方式の露光部EXc1または投影方式の露光部EXc3に装着される円筒マスクM1またはM2は、先の第1の実施の形態(図7)のようにして作成してもよい。さらに、先の第1の実施の形態と同様に、露光方式の異なる2つの露光部EXc1と露光部EXc2のみ、或いは露光方式の異なる2つの露光部EXc2と露光部EXc3のみを、基板Pの搬送方向に沿って配置してもよい。さらに、図13のような製造ライン(製造方法)によって、ロール・ツー・ロール方式でシート状の基板Pに形成される電子デバイスのパターンの品質(重ね合わせ精度やパターン寸法の再現性等)が安定してきた場合は、プロキシミティ方式の露光部EXc1と投影方式の露光部EXc3とを併用する第4の露光モードを適用してもよい。その際、プロキシミティ方式の露光部EXc1に装着される円筒マスクM1には微細度が低いパターン部分を形成し、投影方式の露光部EXc3に装着される円筒マスクM2には微細度が高いパターン部分を形成し、両者を重ね合わせて露光領域Wを露光してもよい。また、マスクレス方式の露光部EXc2は、パターンの設計情報(CADデータ等)に基づいて2次元配列された多数の微少ミラーの各々の姿勢や位置を制御するデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を用いて、パターンに応じて強度分布が変調される露光光を生成し、その露光光を投影系を介して基板Pに投射する方式、いわゆるDMDによるマスクレス方式であってもよい。
(変形例3)ロール・ツー・ロール方式でシート状の基板Pにパターン露光する工程(ファースト露光、またはセカンド露光)では、感光材料としての溶液(フォトレジスト液、紫外線硬化樹脂液、感光性メッキ還元液、感光性シランカップリング液等)を塗布して乾燥させた感光層が表面に形成された基板P以外に、ドライフィルムレジスト層が形成されたシートフィルムと基板Pとをラミネーター(貼り合せ機)等に通して、ドライフィルムレジスト層が表面に転着された基板Pを使うことがある。ドライフィルムレジスト層(以下、DFR層とも呼ぶ)は、400nm~300nm程度の紫外波長域の露光光が照射されると、透明度が低下して変色する特性を有するため、現像処理を行わなくても、露光されたパターンやアライメントマークを、図14に示したアライメント系ALGB、ALGCによって潜像として検出することが可能となる。図14の構成の場合、例えば、基板Pの搬送方向の上流側に設置される露光部EXc1で基板PのDRF層に露光されたパターンの一部分やアライメント用のマークは、下流側の露光部EXc2のアライメント系ALGB、または露光部EXc3のアライメント系ALGCで検出することが可能となる。したがって、露光部EXc1によって基板P上の露光領域W内に実際に露光されたパターンの一部の像(或いはマークの像)の位置をアライメント系ALGB(またはALGC)によって検出することにより、露光部EXc1によって基板Pに露光された微細度の低いパターン部分と、引き続き露光部EXc2(またはEXc3)によって基板Pに露光される微細度の高いパターン部分とを精密に合せ込む(継ぎ合わせる)ことができる。
以上の図14の第3の実施の形態、および各変形例で説明した露光部EXc1~EXc3の各々に対して設けられる光源装置20、22、24は、気体または固体のレーザ光源、水銀放電ランプ、高輝度LED等のように、別々の種類のものであってもよいし、同じ種類の光源であってもよい。同種の光源装置、または全く同じ光源装置を使える場合は、光源装置の調整作業、保守メンテナンス作業、或いは交換(リプレイス)作業が共通化されるので、ランニングコストが抑えられる。さらに、図14に示した露光部EXc1のアライメント系ALGA、露光部EXc2のアライメント系ALGB、露光部EXc3のアライメント系ALGCの各々は、いずれも図3に示したように、基板Pの短尺方向(Y方向)に所定間隔で配置した複数のアライメント顕微鏡ALG1~ALG4で構成される。その場合、アライメント顕微鏡ALG1~ALG4の各観察領域(検出領域)Vw1~Vw4のY方向の配置関係は、アライメント系ALGA、ALGB、ALGCの間で同じに設定されるが、異なった配置関係に設定してもよい。また、アライメント顕微鏡ALGのY方向の配置数は、図3のような4ヶ所に限られず、アライメント系ALGA、ALGB、ALGCの間で異なった配置数(少なくとも2ヶ所以上)であってもよい。
(変形例4)ロール・ツー・ロール方式での製造に適した電子デバイスの1つとして、長尺のフレキシブル・シートセンサーがある。図15は、X方向を長尺とするシート状の基板P(PETやPEN)上に、X方向に数m~数十m以上の長さに渡ってリボン状に形成される4本のシートセンサーRSS1、RSS2、RSS3、RSS4の構成例を示す。4本のシートセンサーRSS1~RSS4の各々は、基板P上に複数の電源ラインVdd、Vss(GND)、信号ラインCBLが形成され、点線で示す微細パターン領域FPA内に、各種センサー、マイコンチップ、TFT(薄膜トランジスタ)、コンデンサ、抵抗等のデバイスが形成されると、スリッターと呼ばれるカッター装置によって、Y方向(基板Pの幅方向)に切断される。シートセンサーRSS1~RSS4の各々は、いずれも同じ構成であるので、代表してシートセンサーRSS1について詳細に説明する。
シートセンサーRSS1は、例えば、農作物を育てる土壌(圃場)中に埋設されて、土壌中の一定間隔Lsp毎に、水分量、ph値、温度、養分量(窒素成分、リン成分等)等を各種センサーで計測し、その計測値を微細パターン領域FPAに形成された電子デバイス(マイコンチップ等)でデジタルデータに変換して、シートセンサーRSS1の末端に取付けられた情報収集装置(データ中継機器)に信号ラインCBLを介してシリアル通信するものである。このシートセンサーRSS1~RSS4は、微細パターン領域FPA内に形成するセンサーの種類やマイコンチップによる計測アルゴリズム(計測ソフトウェア)を変えることによって、農作物用の土壌用だけでなく、漁業用の養殖場の海水中の深度方向の間隔Lsp毎に、温度、海水の流速、海水成分等を計測するセンサーとしても使える。
図15のようなリボン状のシートセンサーRSS1では、プラス極の電源ラインVddやマイナス極(アース)の電源ラインVss(GND)、信号ラインCBLを、厚みが数μm~数十μmの銅箔層をエッチングして形成するが、シートセンサーRSS1の一方の末端に接続される情報収集装置から他方の末端までの距離が数十m以上に及ぶことがあり、電源ラインVdd、Vss、信号ラインCBLの各線の幅は、電圧降下(信号損失)を軽減する為に、なるべく太く作られる。一方、微細パターン領域FPA内に形成される電子回路用の配線パターンの太さは実装される電子部品の形状や密度等によって異なるが、最小では数十μm~数百μm程度になる。さらに、微細パターン領域FPA内に複数のTFTを直接形成する必要がある場合、TFTのゲート線、ソース/ドレイン線の線幅は数十μm以下、好ましくは20μm以下になるとともに、重ね合せのパターニング(セカンド露光)も必要となる。
そこで本変形例では、図15のようなシートセンサーRSS1~RSS4を基板P上に形成する際、例えば、間隔Lspで配置されるX方向の長さがLfa(Lfa<Lsp)の微細パターン領域FPA内の微細なパターンは、図14中の露光部EXc2(またはEXc3)で露光し、微細パターン領域FPA間の信号ラインCBLや電源ラインVdd、Vss等の太いパターン(ラフなパターン)は図14中の露光部EXc1で露光するように分担させる。その場合、図14中のローラR13とローラR14の間にバッファ機構(アキュムレータ)を設ける。そして露光部EXc1がラフなパターンを露光するときの基板Pの搬送速度をV1、露光部EXc2が微細パターン領域FPAにパターン露光するときの基板Pの搬送速度をV2(V2<V1とする)としたとき、露光部EXc2が1つの微細パターン領域FPAに対するパターン露光を完了したら、露光部EXc2の回転ドラムDRBの回転速度を上げて、基板Pを搬送速度V1よりも早い速度V3で送り、次の微細パターン領域FPAに対するパターン露光が開始される前に、元の搬送速度V2に低下させるようにしてもよい。このように基板Pの搬送速度(回転ドラムDRBの回転速度)を変化させることによって、バッファ機構に蓄積される基板Pの蓄積長が時間とともに増加(または減少)していくことが抑制される。なお、基板P上で、間隔Lspは1m~数m程度、微細パターン領域FPAの長さLfaは数cm~十数cm程度である。
また、基板P上に形成するシートセンサーRSS1~RSS4が2層以上の多層配線構造を有し、層間で高い重ね合せ精度が必要となる部分と、重ね合せ精度が低くてもよい部分とが混在するようなパターンを露光する際でも、図14に示した3つの露光部EXc1~EXc3のうちの少なくとも2つ(露光部EXc1と露光部EXc2の2つ、露光部EXc2と露光部EXc3の2つ、或いは露光部EXc1と露光部EXc3の2つ)を用いて連続した露光処理が可能となり、効率的な生産が可能となる。図14に示した3つの露光部EXc1~EXc3のうちの露光部EXc1と露光部EXc3の2つを並べた製造ラインでは、それぞれ円筒マスクM1、M2を用意する必要があり、マスク作製の為の費用が増えるので、ランニングコスト(生産上の原価)を増加させることがある。しかしながら、円筒マスクM1、M2を用いることから、基板Pの搬送速度を高めることができるとともに、微細なパターン部分と線幅が太くて粗いパターン部分、或いは高い重ね合せ精度が要求されるパターン部分と重ね合せ精度が低くてもよいパターン部分とを、基板Pの一度の搬送中に露光領域W内に順次露光することができるので、生産性(タクト)を高めることができ、トータルの生産コストを抑えることができる。