WO2016006175A1 - バルブ装置 - Google Patents
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Abstract
バルブ装置は、凸形球面形状を呈するボール面(1a)を有するボールバルブ(1)と、凹形球面形状を呈するシート面(2a)が前記ボール面に押し付けられるバルブシート(2)とを備える。前記ボールバルブが回動操作されて、前記ボールバルブに形成されたバルブ開口(1b)と前記バルブシートに形成されたシート開口(2b)が連通することで開弁し、非連通となることで閉弁する。シート開口の開口径φ2はバルブ開口の開口径φ1より小さい。ボール面の曲率半径R1はシート面の曲率半径R2以下である。
Description
本出願は、2014年7月7日に出願された日本出願番号2014-139702号と、2014年7月7日に出願された日本出願番号2014-139729号と、2014年7月7日に出願された日本出願番号2014-139759号と、2014年7月7日に出願された日本出願番号2014-139789号と、2014年9月5日に出願された日本出願番号2014-181346号と、2015年4月21日に出願された日本出願番号2015-86608号と、に基づくもので、ここにそれらの記載内容を援用する。
本開示は、凸形球面形状のボール面に、凹形球面形状のバルブシートが押し付けられるバルブ装置に関し、例えば流体の一例として冷却水をコントロールするバルブ装置に用いて好適な技術に関する。なお、凸形球面形状は外側へ膨出する球面形状であり、凹形球面形状は内側へ凹む球面形状である。
ボールバルブにおける凸形球面形状のボール面に、バルブシートにおける凹形球面形状のシート面を押し付け、ボールバルブを回動操作することで、ボールバルブのバルブ開口とバルブシートのシート開口の連通と非連通の切替えを行うバルブ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
従来技術のバルブ装置は、シート開口の開口径と、バルブ開口の開口径とが一致して設けられていた。あるいは、シート開口の開口径が、バルブ開口の開口径より大きく設けられていた。なお、開口径は開口の内径寸法である。
バルブシートのシート面は、ボールバルブのボール面に押し付けられる。そして、ボールバルブは、開閉操作および開度調整のたびに回動する。このため、ボール面とシート面は、圧接された状態で摺動する。
ここで、ボールバルブのボール面は、シート面に対して移動する。このため、開弁時にシート面に接するボール面と、閉弁時にシート面に接するボール面とは、異なる箇所になる。これに対し、シート面は移動しないため、開弁時にボール面に接するシート面と、閉弁時にボール面に接するシート面とは、同じ箇所となる。
即ち、閉弁時にシート面に接するボール面は、閉弁時のみにシート面と接するのに対し、閉弁時にボール面に接するシート面は、閉弁時から全開時までの全範囲に亘ってボール面と接する。このように、閉弁時にシート面に接する箇所のボール面は摩耗し難い。
これに対し、閉弁時にボール面に接する箇所のシート面は、常にボール面に摺動するため摩耗が生じやすい。このため、バルブ装置が長期に亘って使用されると、閉弁時にシール性を確保するボール面より先に、閉弁時にシール性を確保するシート面の摩耗が進行してしまい、閉弁時に漏れが生じる懸念がある。
また、特許文献1のバルブシートは、このバルブシートの周囲に装着される円筒部によって保持部材に組付けられる。特許文献1の円筒部は、バルブシートを保持部材に装着するための独立部品であったため、部品点数が増加する。
さらに、特許文献1の円筒部は、バルブシートを内側に嵌め入れる環状溝を形成する部品であったため、円筒部の軸方向の長さ寸法がバルブシートの厚み寸法より長く設けられている。上述したように、従来構造のバルブ装置では、バルブシートが摩耗し易い。このため、バルブシートの摩耗が進んで薄くなると、ボールバルブが円筒部に直接接触する不具合が生じて、バルブシートがシール効果を果たさなくなる懸念がある。
本開示の目的は、摺動摩耗によるシール性の悪化を防ぐことのできるバルブ装置の提供にある。
本開示の一態様において、バルブ装置は、凸形球面形状を呈するボール面を有するボールバルブと、凹形球面形状を呈するシート面が前記ボール面に押し付けられるバルブシートとを備える。ボールバルブが回動操作されて、ボールバルブに形成されたバルブ開口とバルブシートに形成されたシート開口が連通することでバルブ装置は開弁する。シート開口の開口径を、バルブ開口の開口径より小径に設けるとともに、ボール面の曲率半径を、シート面の曲率半径と同じか、あるいはシート面の曲率半径より小さく設ける。即ち、バルブ装置は、φ1>φ2およびR1≦R2の関係を満足するように設けられる。
これにより、開弁時にボール面に接するシート面と、閉弁時にボール面に接するシート面とが、異なる箇所になる。即ち、閉弁時にボール面に接してシール性を確保する箇所のシート面を、開弁時においてボール面に接しないように設けることができる。このため、閉弁時にボール面に接してシール性を確保する箇所のシート面の摩耗を抑えることができ、長期に亘って閉弁時のシール性を確保することができる。
本開示についての上記およびその他の目的、特徴や利点は、添付の図面を参照しながら下記の詳細な記述により、より明確になる。
開弁時におけるバルブ装置の断面図である(実施例1)。
閉弁時におけるバルブ装置の断面図である(実施例1)。
ボール面とシート面の接触箇所を示す説明図である(実施例1)。
開弁時におけるバルブ装置の断面図である(実施例2)。
閉弁時におけるバルブ装置の断面図である(実施例3)。
バルブ装置の軸方向に沿う断面図である(実施例4)。
バルブ装置を軸方向から見た図である(実施例4)。
エンジン冷却装置の概略図である(実施例5)。
バルブ装置の断面図である(実施例5)。
図9の部分拡大図である(実施例5)。
図10のXI-XI断面図である(実施例5)。
バルブ装置の断面図である(実施例5の変形例)。
バルブ装置の断面図である(実施例5の変形例)。
実施例は具体的な一例を開示するものであり、本開示が実施例に限定されないことは言うまでもない。
[実施例1]
バルブ装置は、自動車に搭載され、図1~図3に示されるように、ボールバルブ1のボール面1aに、バルブシート2のシート面2aを押し付け、ボールバルブ1を回動操作することでエンジン冷却水の流量制御あるいは分配制御を行う。
[実施例1]
バルブ装置は、自動車に搭載され、図1~図3に示されるように、ボールバルブ1のボール面1aに、バルブシート2のシート面2aを押し付け、ボールバルブ1を回動操作することでエンジン冷却水の流量制御あるいは分配制御を行う。
バルブ装置は、
・エンジンから冷却水が導かれるインレットと当該バルブ装置で水量コントロールされた冷却水が排出されるアウトレットが設けられるハウジング3と、
・ハウジング3に対して回動自在に支持されるシャフトと、
・シャフトを回動操作する電動アクチュエータと、
・シャフトと一体に回動するボールバルブ1と、
・ボールバルブ1に押し付けられるリング状のバルブシート2と、
を備える。
・エンジンから冷却水が導かれるインレットと当該バルブ装置で水量コントロールされた冷却水が排出されるアウトレットが設けられるハウジング3と、
・ハウジング3に対して回動自在に支持されるシャフトと、
・シャフトを回動操作する電動アクチュエータと、
・シャフトと一体に回動するボールバルブ1と、
・ボールバルブ1に押し付けられるリング状のバルブシート2と、
を備える。
具体的に、ボールバルブ1は内外を貫通するバルブ開口1bを備え、バルブシート2は中央部を貫通するシート開口2bを備える。ボールバルブ1が回動操作されてバルブ開口1bとシート開口2bが連通することで開弁し、バルブ開口1bとシート開口2bが非連通になることで閉弁する。
この実施例のバルブ開口1bは、図3に示すように、ボールバルブ1の回動方向に沿う長穴形状に設けられる。具体的に、バルブ開口1bは、ボールバルブ1の回動方向に平行な開口縁が延びる長穴形状に設けられている。
ボールバルブ1は、シャフトを介して電動アクチュエータにより回動操作される。ボールバルブ1は、一例として略カップ形状を呈する。なお、冷却水の流れ方向は限定するものではないが、理解補助の一例としてインレットから供給された冷却水がカップ開口部からボールバルブ1の内側に供給される。そして、ボールバルブ1が開弁すると、ボールバルブ1の内側に供給された冷却水が、バルブ開口1bとシート開口2bの重なり箇所を通ってアウトレットへ導かれる。
ボールバルブ1は、例えばPPS等の樹脂によって設けられ、少なくともバルブシート2と摺接する面が凸形球面形状を呈する平滑なボール面1aに設けられている。即ち、ボールバルブ1は、凸形球面形状を呈するボール面1aを有するものであり、電動アクチュエータによって回動操作される。
バルブシート2は、中心部に貫通したシート開口2bが形成されるリング体であり、例えばPTFE等の樹脂によって設けられる。バルブシート2は、凹形球面形状を呈するシート面2aが、ボールバルブ1のボール面1aに押し付けられものであり、ボール面1aと摺接するシート面2aが平滑に設けられている。
バルブシート2は、ハウジング3に支持されるものであり、ハウジング3にはバルブシート2を支持する支持部が設けられる。
この支持部は、
・ハウジング3の流路壁に固定されるスペーサ5と、
・バルブシート2とスペーサ5の間に配置されるスプリング6と、
・スプリング6とスペーサ5との間に配置されるプレート7と、
・バルブシート2を支持するスリーブ8と、
を用いて構成される。
・ハウジング3の流路壁に固定されるスペーサ5と、
・バルブシート2とスペーサ5の間に配置されるスプリング6と、
・スプリング6とスペーサ5との間に配置されるプレート7と、
・バルブシート2を支持するスリーブ8と、
を用いて構成される。
スペーサ5は、例えばアウトレットに通じる流路の内壁に圧入等により固定され、略円筒形状を呈する。スプリング6は、例えば圧縮コイルスプリングであり、圧縮された状態で組付けられる。プレート7は、金属製のバネ座であり、リング円板形状を呈する。
スリーブ8は、ボールバルブ1に近い一端側においてバルブシート2を支持し、ボールバルブ1から遠い他端側がスペーサ5の内部に挿し入れられる略円筒状の通路部材であり、シート開口2bを通過した冷却水をアウトレットに通じる流路内へ導く。
具体的に、スリーブ8は、体腐食性に優れたステンレス等の金属材料によって設けられ、筒状を呈するスリーブ8の一端には、バルブシート2を支持する手段として、バルブシート2の外端を径方向の外側から拘束する筒体8aと、シート裏面に圧接するリング板8bとが一体に設けられている。なお、シート裏面は、バルブシート2のうち、シート面2aとは反対側の面である。
さらに具体的な一例を説明する。この実施例におけるバルブシート2の外端は、リング形状を呈するバルブシート2の外周縁に形成される円筒面である。筒体8aは、バルブシート2の外端を拘束してバルブシート2の広がりを防ぐものであり、軸方向が径方向より短い円筒形状を呈する。そして、バルブシート2の外端の円筒面が筒体8aの内周面に圧入等により押し入れられて、筒体8aがバルブシート2の外径方向への広がりを抑制する。
一方、バルブシート2のシート裏面はリング状の平面であり、リング板8bもリング状の平面に設けられる。具体的に、リング板8bは、スプリング6の内側に挿通される範囲のスリーブ8の筒径より外径側へ拡径した段差形状に設けられる。そして、バルブシート2の外端の円筒面が筒体8aの内周面に拘束されることで、シート裏面がリング板8bと圧接した状態が保たれるものであり、シート裏面がリング板8bに圧接する状態が保たれることでバルブシート2の反り等の変形を抑制する。
なお、スリーブ8とスペーサ5の間には、リップシール等のシール部品9が配置され、ハウジング3とスペーサ5の間にはOリング等のシール部品10が配置される。
バルブ装置は、開弁時にボール面1aに接するシート面2aと、閉弁時にボール面1aに接するシート面2aとが、異なる箇所となる。この構成を以下において具体的に説明する。
バルブ装置は、開弁時にボール面1aに接するシート面2aと、閉弁時にボール面1aに接するシート面2aとを、異なる箇所にするための手段として、シート面2aの内側に、開弁時にはボール面1aに接触しない範囲を設ける。
具体的に、この実施例のシート面2aには、シート開口2bより外径側に、バルブ開口1bにおける平行な開口縁と摺接する個所を設けている。この摺接する箇所は、長期の使用による摩耗によって段差Dが生じる箇所である。
上記のように設ける具体的な手段として、シート開口2bの開口径φ2を、バルブ開口1bの開口径φ1より小径に設けている。即ち、この実施例のバルブ装置は、バルブ開口1bの開口径をφ1、シート開口2bの開口径をφ2とした場合、φ1>φ2の関係を満足するように設けられている。
ここで、この実施例のバルブ開口1bは、上述したように、ボールバルブ1の回動方向に沿う長穴形状を呈するものであり、回動方向に延びる平行な開口縁を有する。このため、バルブ開口1bの開口径φ1は、図3に示すように、ボールバルブ1の回転軸方向の幅によって決定される。
また、この実施例のバルブ装置は、開弁時にボール面1aに接するシート面2aと、閉弁時にボール面1aに接するシート面2aとを、異なる箇所にするための手段として、閉弁時に、シート面2aのうちで開弁中にボール面1aに接していなかった箇所を、ボール面1aに接するように設けてシール性を確保する必要がある。具体的には、閉弁時にシート面2aの内径側を、ボール面1aに、確実に接するように設ける必要がある。
そこで、ボール面1aの曲率半径R1を、シート面2aの曲率半径R2と同じか、あるいはシート面2aの曲率半径R2より小さく設けている。即ち、この実施例のバルブ装置は、ボール面1aの曲率半径をR1、シート面2aの曲率半径をR2とした場合、R1≦R2の関係を満足するように設けられている。
具体的な一例として、この実施例では、シート面2aの内径方向の端に、閉弁時のみにボール面1aに接触する接触輪Aを設けている。この接触輪Aは、ボール面1aを成す凸形球面形状と、シート面2aを成す凹形球面形状との曲率差によって形成したシールリングである。
このことを具体的に説明すると、上述したように、ボール面1aは凸形球面形状に設けられ、シート面2aは凹形球面形状に設けられる。そして、この実施例では、ボール面1aの曲率半径R1を、シート面2aの曲率半径R2より小さく設けている。
このように設けることにより、ボール面1aとシート面2aの曲率差によって、閉弁時においてシート面2aの内径方向の端のみに、ボール面1aと接触する接触輪Aを設けることができる。
この実施例のバルブ装置は、開弁時にボール面1aに接するシート面2aと、閉弁時にボール面1aに接するシート面2aとが、異なる箇所になる。即ち、閉弁時にボール面1aに接してシール性を確保する箇所のシート面2aは、開弁時においてボール面1aに接しない。
このため、閉弁時にボール面1aに接してシール性を確保する箇所のシート面2aの摩耗を長期に亘って抑えることができ、閉弁時のシール性を長期に亘って確保することができる。これにより、バルブ装置の長期信頼性を高めることができる。
この実施例のバルブ開口1bは、上述したように、ボールバルブ1の回動方向に沿う長穴形状を呈する。このため、ボールバルブ1が回動操作されると、長穴の開口縁がシート面2aの一部に局部的に当たり、シート面2aの一部に摩耗によって局所的な段差Dができてしまう。
しかし、シート面2aに段差Dが生じても、段差Dが形成される箇所は、閉弁時のシール性を確保する接触輪Aの外径側であるため、段差Dは閉弁時のシール性に影響を及ぼさない。
このように、この実施例は、バルブ開口1bを成す長穴の開口縁によって、シート面2aに段差Dが生じても、閉弁時のシール性を長期に亘って確保することができる。
この実施例のバルブ装置は、上述したように、シート面2aの径方向の内端に、閉弁時のみにボール面1aに接触する接触輪Aを設けている。
この接触輪Aは、摺動による摩耗が生じ難い上記効果に加え、ボール面1aとシート面2aの接触幅を、ボール面1aとシート面2aの曲率の違いによりコントロールすることができる。これにより、接触輪Aにスプリング6の集中荷重を加えることができ、ボール面1aとシート面2aとのシール性能を高めることができる。
また、長期の使用により、摩耗によって接触輪Aの接触幅が少量広がった場合であっても、閉弁時にボール面1aに接触するシート面2aの箇所を、シート面2aの内径側に限定することができ、閉弁時のシール性を確保できる。
[実施例2]
図4に基づいて実施例2を説明する。
[実施例2]
図4に基づいて実施例2を説明する。
なお、以下の各実施例は、上記実施例1の形態を採用するものであり、上記実施例1とは異なる形態のみを説明するものである。そして、以下の各実施例において上述した実施例1と同一符号は同一機能物を示すものである。
このバルブ装置は、バルブシート2の変形を防ぐ剛体を備えて構成される。この剛体は、少なくともバルブシート2の外端を拘束してバルブシート2が径方向の外側へ広がる変形を抑制するものであり、スリーブ8と一体に設けられる。具体的に、剛体を含むスリーブ8は、ステンレス等の金属により形成されるものであり、例えばプレス加工や削り出し等により設けられる。
ここで、剛体は、バルブシート2の外端の円筒面とシート裏面の両方を拘束する。具体的に、バルブシート2のシート裏面は平らなリング面に設けられており、剛体は、バルブシート2の外周の円筒面を覆う円筒形状の筒体8aと、平らなシート裏面の全面と圧接する平らなリング板8bとによって設けられる。なお、筒体8aとリング板8bの具体的な一例は実施例1に記載されており、詳細な説明は割愛する。
このように、剛体は、バルブシート2を拘束するものであり、剛体にバルブシート2が固定される。なお、剛体に対するバルブシート2の結合技術は限定するものではないが、一例として圧入技術を採用する。
バルブ装置は、上述したように、少なくともバルブシート2の外端の円筒面が筒体8aによって拘束される。このため、バルブシート2を樹脂等で設けても、シート面2aの外径側がボール面1aの影響で外側へ広がってしまう不具合がない。即ち、バルブシート2が外側へ広がる変形を防ぐことができ、バルブシート2の変形による漏れを長期に亘って回避できる。
バルブ装置は、上述したように、少なくともバルブシート2の外端の円筒面が筒体8aによって拘束されて、バルブシート2の変形が抑制される。このため、ボールバルブ1に設けられるバルブ開口1bが、長穴形状を呈しても、バルブシート2が楕円状に変形する不具合がなく、バルブシート2の変形による漏れを長期に亘って回避できる。
バルブ装置は、ボール面1aの曲率半径が、シート面2aの曲率半径より小さく設けられる。すると、シート面2aとボール面1aの接触箇所が極めて局所的になり、局所的な応力集中によりバルブシート2に反り等の変形が生じるおそれがある。
しかるに、この実施例2の剛体は、上述したように、バルブシート2の外端の円筒面とともにシート裏面を拘束する。具体的には、シート裏面がリング板8bに圧接した状態で、バルブシート2の外端の円筒面が筒体8aによって拘束される。このため、シート面2aとボール面1aの接触箇所が極めて局所的になっても、バルブシート2に反り等の変形を防ぐことができ、バルブシート2の変形による漏れを長期に亘って回避できる。
バルブ装置は、ボール面1aとシート面2aが共に平滑に仕上げられており、剛体におけるリング板8bとバルブシート2の間の摩擦係数μ1が、ボールバルブ1とバルブシート2の間の摩擦係数μ2より大きく設けられる。
これにより、ボールバルブ1の回動時に、ボールバルブ1とバルブシート2が接する箇所で確実に摺動させることができ、リング板8bに対するバルブシート2の滑りを抑制できる。
筒体8aは、リング板8bと一体に設けられる。これにより、筒体8aが比較的薄い材料で形成されても、リング板8bが筒体8aの変形を防ぐように作用する。このため、例えば、筒体8aの肉厚が薄く設けられて、筒体8aが単体では強度不足になってしまう場合であっても、筒体8aの変形をリング板8bにより防ぐことができる。
即ち、比較的薄い板厚で剛体を設ける場合であっても、筒体8aとリング板8bの組み合わせによってバルブシート2の変形を効果的に防ぐことができる。
上述した特許文献1には、バルブシート2の周囲を覆う円筒部が開示されている。特許文献1の円筒部は、バルブシート2を保持部材に組付けるための独立部品であり、部品点数の増加を招くものであった。
これに対し、この実施例のバルブ装置が採用する筒体8aは、スプリング6のガイドの機能を果たすスリーブ8と一体に設けられる。具体的にこの実施例のスリーブ8は、スプリング6の内側に挿入されてスプリング6のガイド機能を果たす個所と、バルブシート2のガイド機能を果たす筒部8aと、バルブシート2を受ける支持機能を果たすリング板8bが、一体に設けられている。これにより、バルブ装置の部品点数を減らすことができるとともに、部品の低減によりバルブ装置の組付性を向上できる。
また、特許文献1に開示される円筒部は、バルブシート2を嵌め入れる環状溝を形成するための部品であったため、円筒部の筒方向の長さ寸法がバルブシート2の厚み寸法より長く設けられていた。このため、バルブシート2がボールバルブ1の摺動により摩耗すると、ボールバルブ1が円筒部に接触して、バルブシート2がシール効果を果たさなくなる懸念がある。
これに対し、この実施例においてスリーブ8の端に設けられる筒体8aは、その筒方向の長さ寸法が、バルブシート2の外周縁の厚み寸法より短く設けられる。即ち、バルブシート2の外周縁の一部が、筒体8aよりボールバルブ1側へ向けてはみ出るように設けられる。
これにより、バルブシート2がボールバルブ1の摺動により摩耗しても、ボールバルブ1がスリーブ8に接触することを防止することができ、バルブ装置の長期信頼性を高めることができる。
上記の効果をより具体的に説明する。
この実施例2のバルブ装置は、実施例1で説明したように、φ1>φ2およびR1≦R2の関係を満足するものであり、具体的な一例として、φ1>φ2およびR1<R2の関係に設けられるものである。
このため、実施例1の効果1で示したように、開弁時にボール面1aに接するシート面2aと、閉弁時にボール面1aに接するシート面2aとが異なる箇所になり、バルブシート2の摩耗を長期に亘って抑えることができる。
この効果に加え、この実施例2では、筒体8aの長さ寸法をバルブシート2の外周縁の厚み寸法より短く設けて、バルブシート2の外周縁の一部を筒体8aよりボールバルブ1側へ向けてはみ出るように設けている。
このため、実施例1の効果によって摩耗が抑えられるバルブシート2が、長期の使用により摩耗したとしても、筒体8aが短く設けられることでボールバルブ1がスリーブ8に接触することを防止することができ、バルブ装置の長期信頼性を確保できる。
[実施例3]
図5に基づいて実施例3を説明する。バルブ装置は、閉弁時に、バルブシート2におけるシート面2aとシート裏面の両面に、水圧を意図的に導く構成を採用する。この構成を以下において具体的に説明する。シート裏面側には、インレットからバルブ装置の内部に流入する冷却水が導かれる背圧空間αが設けられる。
[実施例3]
図5に基づいて実施例3を説明する。バルブ装置は、閉弁時に、バルブシート2におけるシート面2aとシート裏面の両面に、水圧を意図的に導く構成を採用する。この構成を以下において具体的に説明する。シート裏面側には、インレットからバルブ装置の内部に流入する冷却水が導かれる背圧空間αが設けられる。
具体的な背圧空間αは、スプリング6が配置されるスリーブ8の周囲の空間であり、更に詳しく説明すると、背圧空間αは、ハウジング3においてアウトレットに通じる流路壁、スリーブ8、プレート7、リング板8bに囲まれる空間である。この背圧空間αは、ハウジング3とリング板8bとの間に形成される隙間を介して、ハウジング3内においてボールバルブ1を収容する空間に連通する。ボールバルブ1を収容する空間はインレットと常に連通する。このため、背圧空間αには、図中の破線矢印Xに示すように、インレットを介してエンジンから冷却水が導かれる。
ここで、スリーブ8の一端に設けられるリング板8bは、スリーブ8の筒径より外径側へ拡径した段差形状に設けられる。このため、背圧空間αへ導かれた水圧は、リング板8bにおいてスプリング6が着座する面に印加される。
その結果、水圧が上昇すると、水圧によりバルブシート2をボールバルブ1へ押し付ける力が大きくなる。
一方、閉弁時にボール面1aとシート面2aが対向する個所には、シート面2aの内径側のみをボール面1aに接触させる接触輪Aが設けられる。
この接触輪Aの形状や接触幅等は限定するものではないが、接触輪Aの具体的な一例を説明する。この実施例では、ボール面1aの曲率半径を、シート面2aの曲率半径より小さく設けている。このように設けることにより、ボール面1aとシート面2aの曲率差によって、閉弁時にシート面2aの内径方向の端のみがボール面1aに接触する接触輪Aが形成される。
この接触輪Aを設けることで、閉弁時には、接触輪Aの外周側で、且つボールバルブ1とバルブシート2の間に、冷却水が流入可能な環状隙間βが形成される。この環状隙間βは、ハウジング3内においてボールバルブ1を収容し、インレットに通じる空間に連通する。このため、環状隙間βには、図中の破線矢印Yに示すように、背圧空間αへ導かれる冷却水と共通の冷却水が導かれる。
環状隙間βへ導かれた水圧は、シート面2aに印加される。その結果、水圧が上昇すると、水圧によりバルブシート2をボールバルブ1から離反させる力が大きくなる。
車両に搭載されるエンジン冷却水の循環系は、周知な密閉加圧冷却式を採用するものであり、エンジンが運転されて水温が上昇すると水圧が例えば、ラジエータキャップの開弁圧等まで上昇する。即ち、エンジンからバルブ装置のインレットに供給される冷却水の圧力は変動する。
この実施例のバルブ装置は、上述したように、背圧空間αと環状隙間βとを設けて、閉弁時に、バルブシート2のシート面2aとシート裏面に水圧を意図的に導く構成を採用する。
これにより、シート裏面からバルブシート2に付与され力と、シート面2aからバルブシート2に付与される力とを、互いに相殺することができる。
このため、ボールバルブ1に対するバルブシート2の押し付け力を、スプリング6の付勢力のみに近づけることができ、水圧が増減しても、ボールバルブ1に対するバルブシート2の押し付け力の変化を抑えることができる。これにより、ボールバルブ1とバルブシート2の摺動抵抗を略一定に保つことができる。
具体的には、ボールバルブ1を回動させる駆動力を抑えることができるため、ボールバルブ1を回動操作する電動アクチュエータの小型化が可能になる。また、摺動摩耗を抑えることができるため、バルブ装置の長期信頼性を高めることができる。
バルブ装置は、ボール面1aの曲率半径を、シート面2aの曲率半径より小さく設け、ボール面1aとシート面2aの曲率差により、シート面2aの内径方向の端にボール面1aに接触する接触輪Aを設けるものである。このため、接触輪Aを環状のリブ形状等に加工する必要がなく、環状隙間βの形成コストを抑えることができる。
バルブ装置は、背圧空間αへ導かれた水圧を、スリーブ8の一端において拡径したリング板8bに印加し、リング板8bを介してシート裏面に作用させる構成を採用する。
この構成により、背圧空間αの外周側から背圧空間αへ冷却水を導くとともに、環状隙間βの外周側から環状空間へ冷却水を導くことができる。具体的には、ハウジング3内においてボールバルブ1を収容する空間から背圧空間αと環状隙間βの両方へ直接的に冷却水を導くことができる。
バルブ装置は、背圧空間αからシート裏面側に水圧を印加する受圧投影面積と、環状隙間βからシート面2aに水圧を印加する受圧投影面積とを、略同じに設けている。
これにより、バルブシート2のシート裏面に作用する水圧と、シート面2aに作用する水圧との差圧をゼロに近づけることができ、水圧がバルブシート2に与える力を略ゼロにできる。
このため、ボールバルブ1とバルブシート2の摺動抵抗をより一定に保つことができ、水圧の増加によるボールバルブ1の駆動力の増加をより確実に抑制することができる。
[実施例4]
図6、図7に基づいて実施例4を説明する。バルブ装置のハウジング3は、3個の冷却水出口を備えるものであり、3個の冷却水出口をそれぞれ第1~第3アウトレット11~13として区別する。なお、第1アウトレット11は、エンジンを通過した冷却水をラジエータへ導く冷却水出口である。第2アウトレット12は、エンジンを通過した冷却水を空調用のヒータコアへ導く冷却水出口である。第3アウトレット13は、エンジンを通過した冷却水をオイルクーラまたはトランスミッションのオイルウォーマ等へ導く冷却水出口である。
[実施例4]
図6、図7に基づいて実施例4を説明する。バルブ装置のハウジング3は、3個の冷却水出口を備えるものであり、3個の冷却水出口をそれぞれ第1~第3アウトレット11~13として区別する。なお、第1アウトレット11は、エンジンを通過した冷却水をラジエータへ導く冷却水出口である。第2アウトレット12は、エンジンを通過した冷却水を空調用のヒータコアへ導く冷却水出口である。第3アウトレット13は、エンジンを通過した冷却水をオイルクーラまたはトランスミッションのオイルウォーマ等へ導く冷却水出口である。
第1~第3アウトレット11~13の開閉を行う構造は、実施例1で開示されたバルブ装置と同じであり、
・ハウジング3と、
・このハウジング3に対して回動自在に支持されるシャフト14と、
・このシャフト14を回動操作する電動アクチュエータ15と、
・シャフト14と一体に回動するボールバルブ1と、
・このボールバルブ1に押し付けられるリング状のバルブシート2と、
を備えて構成される。
・ハウジング3と、
・このハウジング3に対して回動自在に支持されるシャフト14と、
・このシャフト14を回動操作する電動アクチュエータ15と、
・シャフト14と一体に回動するボールバルブ1と、
・このボールバルブ1に押し付けられるリング状のバルブシート2と、
を備えて構成される。
ハウジング3は、一例としてエンジンに直接組付けられるものであり、エンジン装着面には冷却水をハウジング3の内部に導くインレット16が設けられる。具体的に、ハウジング3の内部には、インレット16に連通するとともに、ボールバルブ1を収容するバルブ室17が設けられており、このバルブ室17とボールバルブ1の間の空間はインレット16から供給された冷却水が満たされる。
ハウジング3には、バルブ室17から第1アウトレット11へ冷却水を導く第1アウトレット通路11aと、バルブ室17から第2アウトレット12へ冷却水を導く第2アウトレット通路12aと、バルブ室17から第3アウトレット13へ冷却水を導く第3アウトレット通路(図示しない)とが形成されている。
なお、限定するものではないが、ハウジング3において第1アウトレット通路11aがインレット16から遠い側に設けられ、第2アウトレット通路12aと第3アウトレット通路がインレット16に近い側に設けられる。
また、第1アウトレット通路11aは、エンジンからラジエータに向かう冷却水を流す流路である。このため、第1アウトレット通路11aの流路径は、大流量の冷却水を流すことが可能なように、第2アウトレット通路12aや第3アウトレット通路の流路径より大径に設けられる。
シャフト14は、バルブ室17の中心部を通って配置されるものであり、一端がハウジング3に組付けたボールベアリング18を介して回転自在に支持されるとともに、他端がインレット16に装着した軸受プレート19を介して回転自在に支持される。なお、軸受プレート19は、冷却水の通過を許容する開口部を備える。
電動アクチュエータ15は、周知な構成を採用するものであり、一例を開示すると、電力を回転トルクに変換する電動モータと、この電動モータの回転出力を減速してシャフト14の駆動トルクを増大させる減速機構と、シャフト14の回転角度を検出する非接触型の回転角度センサとを組み合わせて構成される。
ボールバルブ1は、シャフト14を介して電動アクチュエータ15により回動操作される。このボールバルブ1は、略カップ形状を呈する。冷却水の流れ方向を説明すると、インレット16から供給された冷却水がカップ開口部からボールバルブ1の内側に供給される。そして、ボールバルブ1が回動操作されてバルブ開口1bとシート開口2bとが重なると、その重なり箇所を通って冷却水が流れる。即ち、この実施例のバルブ装置は、ボールバルブ1を回動操作することによってインレット16と第1~第3アウトレット13の連通度合が変化させる。
ここで、ボールバルブ1の外部からカップ内へ流体を導く流路の中心をインレット軸jαとする。また、ボールバルブ1のカップ内から第1アウトレット通路11aへ流体を排出する流路の中心をアウトレット軸jβとする。
この実施例では、インレット軸jαまたはアウトレット軸jβの一方が、ボールバルブ1の回動軸と同方向に設けられるとともに、アウトレット軸jβがインレット軸jαに対して鈍角に設けられる。
即ち、ボールバルブ1は、ボールバルブ1の回動軸と同方向にカップ開口を有する。そして、ボールバルブ1の回動軸は、アウトレット軸jβまたはインレット軸jαに対して鈍角に設けられる。
上記を具体的に説明する。ボールバルブ1において流体の入口となるカップ開口は、回動軸方向に向かって開口する。そして、ハウジング3に形成されるインレット16も、ボールバルブ1の回動軸方向に設けられる。このように、インレット軸jαは、ボールバルブ1の回動軸と同方向に設けられる。
この実施例では、第1アウトレット通路11a、第2アウトレット通路12a、図示しない第3アウトレット通路のうち、最も流路径の大きいのは、大量の冷却水をラジエータに導くことが可能な第1アウトレット通路11aである。
この実施例では、最も流路径の大きい第1アウトレット通路11aへ冷却水を導くアウトレット軸jβを、ボールバルブ1の回動軸に対して鈍角(例えば、100°~150°等)に設けている。
なお、ボールバルブ1の内部からバルブ開口1bを介して第2アウトレット通路12aへ流体を導く流路中心が第2アウトレット軸jγであり、限定するものではないが第2アウトレット軸jγは回動軸に対して直角に設けられる
バルブ装置は、ボールバルブ1の内部へ冷却水を導くカップ開口がボールバルブ1の回動軸方向に向かって開口する。そして、ボールバルブ1の回動軸とアウトレット軸jβを鈍角に設けている。即ち、インレット軸jαに対してアウトレット軸jβが鈍角に設けられている。
バルブ装置は、ボールバルブ1の内部へ冷却水を導くカップ開口がボールバルブ1の回動軸方向に向かって開口する。そして、ボールバルブ1の回動軸とアウトレット軸jβを鈍角に設けている。即ち、インレット軸jαに対してアウトレット軸jβが鈍角に設けられている。
これにより、インレット16からボールバルブ1の内部を介して第1アウトレット通路11aに向かう冷却水の曲がり角度を緩やかにでき、ボールバルブ1から第1アウトレット通路11aに向かう冷却水の圧力損失を低減できる。
このように、インレット16から第1アウトレット通路11aに向かう曲がり角度を緩やかにして圧力損失を低減することができるため、第1アウトレット通路11aおよびこの第1アウトレット通路11aに冷却水を導くバルブ開口1bの開口径を縮径することが可能になり、バルブ装置の体格を小型化することができる。即ち、バルブ装置は、体格を縮小しつつ圧力損失の低減を図ることができる。
ボールバルブ1は、バルブシート2に摺動する箇所が凸形球面形状であるため、回動軸に対するアウトレット軸jβ、第2アウトレット軸jγの角度を自由に設定できる。
このため、第1アウトレット通路11a、第2アウトレット通路12aの一方または両方が搭載上の制約を受ける場合、第1アウトレット通路11a、第2アウトレット通路12aの向きを邪魔にならない角度方向へ変更することが可能になり、バルブ装置の車両搭載性を向上できる。
第1アウトレット通路11a、第2アウトレット通路12a、図示しない第3アウトレット通路のうち、もっとも流路径の大きいのは、大量の冷却水をラジエータに導くことが可能な第1アウトレット通路11aである。
そこで、この実施例では、流路径の大きい第1アウトレット通路11aのアウトレット軸jβをインレット軸jαに対して鈍角に設けている。
これにより、インレット16からラジエータに冷却水を導く第1アウトレット通路11aへ向かう曲がり角度を緩やかに設けることができる。このため、エンジンからラジエータに向かって大量に流れる冷却水の圧力損失を確実に抑えることができる。
[実施例5]
図8~図11に基づいて実施例5を説明する。エンジン冷却装置は、エンジン21に冷却水を強制的に循環させてエンジン21を冷却する冷却水回路を有している。この冷却水回路は、エンジン21→ラジエータ22→ウォータポンプ23の順に冷却水を循環させる第1回路、エンジン21→エアコンのヒータコア24→ウォータポンプ23の順に冷却水を循環させる第2回路、エンジン21→デバイス25→ウォータポンプ23の順に冷却水を循環させる第3回路を有している。
[実施例5]
図8~図11に基づいて実施例5を説明する。エンジン冷却装置は、エンジン21に冷却水を強制的に循環させてエンジン21を冷却する冷却水回路を有している。この冷却水回路は、エンジン21→ラジエータ22→ウォータポンプ23の順に冷却水を循環させる第1回路、エンジン21→エアコンのヒータコア24→ウォータポンプ23の順に冷却水を循環させる第2回路、エンジン21→デバイス25→ウォータポンプ23の順に冷却水を循環させる第3回路を有している。
冷却水は、例えばエチレングリコールを含むLLCなどが用いられる。ヒータコア24は、エンジン21から流出する冷却水を空気と熱交換させて空気を加熱させる。デバイス25は、例えば、オイルクーラやターボチャージャー等であって、エンジン21から流出する冷却水との熱交換を必要とする。
エンジン21は、シリンダヘッド26とシリンダブロック27とを備え、シリンダヘッド26およびシリンダブロック27には、冷却水が流通するウォータジャケット28が形成されている。
冷却水回路内には冷却水の流量を制御するバルブ装置29が配されている。このバルブ装置29は、ウォータジャケット28の出口に配置される。バルブ装置29は、第1回路、第2回路、第3回路への冷却水の流量を調整する三方流量調整弁となっている。なお、バルブ装置29は、三方以上の多方流量調整弁であってもよい。
冷却水回路には、回路全体を真空引きする真空引き工程の後に、その負圧によって冷却水を注入することで冷却水が充填される。第1回路にはラジエータ22をバイパスする流路が設けられ、この流路の途中に設けられたリザーブタンク22aから真空引きおよび冷却水の注入がなされる。
バルブ装置29は、
・ボールバルブ1を内側に収容するハウジング3と、
・このハウジング3を貫通してボールバルブ1と一体に回動するシャフト14と、
・ハウジング3とシャフト14との間をシールするシール部材31と、
・ハウジング3の内側においてシール部材31へ向かう流体の運動エネルギを減衰させるラビリンス部32と、
を備える。
・ボールバルブ1を内側に収容するハウジング3と、
・このハウジング3を貫通してボールバルブ1と一体に回動するシャフト14と、
・ハウジング3とシャフト14との間をシールするシール部材31と、
・ハウジング3の内側においてシール部材31へ向かう流体の運動エネルギを減衰させるラビリンス部32と、
を備える。
ハウジング3には、ハウジング3を貫通してシャフト14を軸受けするための軸受孔33が形成されている。この軸受孔33は、ハウジング3を貫通するものであり、バルブ室17への開口を有している。なお、以下では、軸受孔33におけるバルブ室17への開口箇所を、軸受開口33aと呼ぶ。
また、軸受孔33の軸方向を弁軸方向とし、バルブ室17に向かう側を弁軸方向一端側、その反対側を弁軸方向他端側とする。
軸受孔33の弁軸他端側は、ハウジング3に装着されるカバー34とハウジング3との間に形成されるアクチュエータ室35に向かって開口している。なお、アクチュエータ室35は、減速機構を構成するギヤ36等が収容される空間である。
軸受孔33の弁軸方向他端側に突出するシャフト14の部分は、アクチュエータ室35内でギヤ36に固定される。
本実施例では、軸受開口33aが形成された位置に対して、ボールバルブ1を挟んで弁軸方向に対向する位置にボールバルブ1のカップ開口が設けられる。
シャフト14は、軸受孔33に挿入されて、ハウジング3とシャフト14の間に介在されるボールベアリング18によって回動自在に支持される。
ボールバルブ1は、バルブ室17に収容されるとともにシャフト14に保持されており、シャフト14の回動によって回動し、カップ開口から各バルブ開口1bへ流れる冷却水の流量を変更する。
ボールバルブ1とシャフト14とは、ボールバルブ1に形成されたシャフト孔14aにシャフト14が挿入固定されることで固定されている。
このため、シャフト孔14aの開口と軸受開口33aとは、弁軸方向に対向することになる。
シール部材31は、軸受孔33の内周面とシャフト14の外周面との間に配され、自身よりも反バルブ室17側の空間をバルブ室17に対して液密にシールする。シール部材31は、バルブ室17からアクチュエータ室35への冷却水の漏れを防ぐために設けられている。
シール部材31は、環状の金属部31aと、その金属部31aを芯とする環状のゴム部31bとを有する一般的な軸シール部品である。また、ゴム部31bは、ゴム材料で形成されており、シャフト14の外周面に弾接するシールリップを有する。
このシールリップは、弁軸方向一端側に向かって突出する第1リップ44aと、弁軸方向他端側に向かって突出する第2リップ44bと、第1リップ44aと第2リップ44bとの間に設けられた第3リップ44cとを有する。なお、第1リップ44aのみが設けられていてもよい。
軸受孔33は、弁軸方向一端側から弁軸方向一端側に向けて2段階に内径を拡大しており、1段目を中径後部33b、2段目を大径後部33cと呼ぶ。シール部材31は大径後部33cに配されている。そして、シール部材31の弁軸方向他端面は中径後部33bと大径後部33cとの間の段差面に当接している。そして、中径後部33bの内側空間は、ボールベアリング18の軸受クリアランスを介してわずかにアクチュエータ室35に連通しているが、バルブ室17からアクチュエータ室35への冷却水の漏れはシール部材31により防がれる。
ラビリンス部32は、バルブ室17から軸受開口33aを介してシール部材31へ向かう隙間に設けられて、シール部材31へ向かう冷却水の運動エネルギを減衰させる。
このラビリンス部32は、軸受開口33aの開口縁からバルブ室17に向けて突出するとともに、シャフト14の外周面に対して隙間C1を介して囲う筒部50と、ボールバルブ1に設けられて、筒部50の外周面50aに隙間C2を介して径方向に対向する周壁51とを用いて形成されている。
ハウジング3は、軸受開口33aの開口縁をバルブ室17に向かって突出させた筒部50を有する。この筒部50は、バルブ室17の内壁面から弁軸方向一端側へ突出しており、シャフト14と同軸の円筒状を呈している。具体的に、大径後部33cの弁軸方向一端が軸受開口33aとなっている。そして、筒部50の内周面50bが大径後部33cの内周面と同一面になっている。
ボールバルブ1には、軸受開口33aに対向する箇所に凹部53が形成されている。この凹部53は、シャフト14の外周面と径方向に対向する周壁51と、シャフト14に対して垂直で筒部50の端面と対向する平面部54とを有する。
筒部50は、凹部53内に突出している。即ち、筒部50と凹部53が弁軸方向にオーバーラップし、筒部50と周壁51とが径方向に重なる配置となっている。
これによれば、バルブ室17からシール部材31に向かおうとする冷却水の流れは、周壁51と筒部50の外周面50aとの間の隙間C2、平面部54と筒部50の弁軸方向一端面との間の隙間C3を通過せねばならない。即ち、バルブ室17から軸受開口33aを介してシール部材31へ向かう流路が蛇行しており、シール部材31へ向かう冷却水の運動エネルギが減衰するようになっている。
また、筒部50は、ボールバルブ1を回動方向に係止して、ハウジング3に対するボールバルブ1の回動範囲を規制するストッパ56を有している。このストッパ56は、筒部50の外周面50aから外周に向かって突出する突出部として設けられている。
そして、ストッパ56は、周壁51に内周に向かって突出して設けられた突出部57と回動方向に当接可能となっている。これにより、ボールバルブ1はストッパ56と突出部57とが当接する位置で回動が停止する。
バルブ装置29は、バルブ室17から軸受開口33aを介してシール部材31へ向かう冷却水の運動エネルギを減衰させるラビリンス部32を備える。
これによれば、ラビリンス部32によって、バルブ室17から軸受開口33aを介してシール部材31へ向かう冷却水の運動エネルギが減衰するため、冷却水がシール部材31に衝突する際の衝撃力が小さくなり、第1リップ44aのめくれ発生を防止できる。
したがって、軸受孔33を介するバルブ室17からの冷却水の漏れを確実に防止することができる。
具体的に、冷却水回路の真空引き工程の後に冷却水を注入することで、バルブ装置29に冷却水が充填される。これにより、冷却水を充填する工程でバルブ室17内に勢いよく冷却水が流れ込む。このため、従来の構造では、水圧による大きな衝撃力を受けて第1リップ44aがめくれる可能性があったが、この実施例ではラビリンス部32を設けることで第1リップ44aのめくれを防止できる。
ラビリンス部32は、シャフト14の外周を隙間C1を介して囲う筒部50と、筒部50の外周面50aに隙間C2を介して径方向に対向する周壁51とを用いて形成されている。これにより、容易にラビリンス部32を形成することができる。
筒部50は、ボールバルブ1の回動範囲を規制するストッパ56を有する。
一般的に、ボールバルブ1の回動範囲を規制するストッパは、ギヤ36を係止するようにハウジング3に設けられている。しかし、この場合、シャフト14とボールバルブ1との固定箇所が破損した場合に、シャフト14だけが回動範囲を規制され、ボールバルブ1が空回りしてしまう。
これに対して、本実施例では、ストッパ56によってボールバルブ1の回動を直接止めるため、シャフト14とボールバルブ1との固定箇所が破損した場合でもボールバルブ1の回動を止めることができる。
(実施例5の変形例)
ラビリンス部32の態様は上記の実施例のものに限られない。例えば、図12に示すように、周壁51に加えて、筒部50の内周面50bに隙間C4を介して径方向に対向する周壁59をボールバルブ1に設けても良い。
(実施例5の変形例)
ラビリンス部32の態様は上記の実施例のものに限られない。例えば、図12に示すように、周壁51に加えて、筒部50の内周面50bに隙間C4を介して径方向に対向する周壁59をボールバルブ1に設けても良い。
これによれば、周溝60の内周側の溝側面が、筒部50の内周面50bに隙間C4を介して径方向に対向する周壁59をなし、周溝60の外周側の溝側面が、筒部50の外周面50aに隙間C2を介して径方向に対向する周壁51をなす。
この図12のラビリンス部32によっても、バルブ室17から軸受開口33aを介してシール部材31へ向かう流路を蛇行させることができ、シール部材31へ向かう冷却水の運動エネルギを減衰できる。
また、筒部50の筒内径を、図12に示すように、軸受開口33aの開口径よりも大きくし、軸受開口33aの外側を筒部50によって囲うように設けても良い。
図12に示す構成の変形例として、周壁51を削除した構成を考えることができる。即ち、この構成では、筒部50の内周面50bに隙間C4を介して径方向に対向する周壁59がボールバルブ1に設けられることでラビリンス部32を形成する。
上記とは異なり、図13に示すように、軸受孔33の内部に挿入される筒部62をボールバルブ1に設けることでラビリンス部32を形成しても良い。
この場合、筒部62の内側に第1リップ44aが位置するように筒部62を配置しても良い。また、筒部62の弁軸方向他端に外周に広がるフランジ62aを設け、フランジ62aよりも弁軸方向一端側における軸受孔33の内周面に内周に突出する内フランジ63を設けても良い。
なお、図13に示す構造においては、シール部材31を圧縮変形させながら内フランジ63の内側を通過させて、シール部材31を組み付けることになる。もしくは、シール部材31組付け後に、別部材で設けた内フランジ63を組付けても良い。
図13に示すラビリンス部32によっても、バルブ室17から軸受開口33aを介してシール部材31へ向かう流路を蛇行させることができ、シール部材31へ向かう冷却水の運動エネルギを減衰できる。
上記の実施例では、ボールバルブ1がカップ形状に設けられる例を示したが、バルブシート2に摺動する面が凸形球面形状であれば良く、ボールバルブ1をカップ形状に限定しない。
上記の実施例では、ボールバルブ1やバルブシート2を樹脂で設けられる例を示したが、ボールバルブ1およびバルブシート2の素材を限定しない。
上記の実施例では、ボール面1aの曲率半径R1はシート面2aの曲率半径R2より小さく設けたが、ボール面1aの曲率半径R1はシート面2aの曲率半径R2と等しくても良い。
上記の実施例では、ボール面1aとシート面2aの曲率差により接触輪Aを設ける例を示したが、接触輪Aの形成手段は限定するものではなく、例えばボール面1aとシート面2aの曲率が同じの場合、シート面2aの内径側に環状のリブ等を形成することで接触輪Aを設けても良い。
上記の実施例では、スリーブ8とバルブシート2の固定技術として圧入を用いる例を示したが、例えば接着剤等を用いて結合しても良い。
上記の実施例では、開弁時に流体がボールバルブ1の内側から外側へ向かって流れる例を示したが、流体を流す方向は逆でも良い。
上記の実施例では、電動アクチュエータ15によってボールバルブ1を回動操作する例を示したが、ボールバルブ1の駆動手段を限定しない。
上記の実施例では、スプリング6の一例として圧縮コイルスプリングを用いたが、ボールバルブ1とバルブシート2の圧迫手段は限定しない。
上記の実施例では、エンジン冷却水のコントロールを行うバルブ装置に本発明を適用する例を示したが、エンジンを搭載しない車両の冷却水のコントロールを行うバルブ装置に本開示を適用しても良い。
上記の実施例では、液体のコントロールを行うバルブ装置に本発明を適用する例を示したが、流体は液体に限定されるものではなく、気体のコントロールを行うバルブ装置に本開示を適用しても良い。
上述した複数の実施例を組み合わせて用いても良い。
Claims (14)
- 凸形球面形状を呈するボール面(1a)を有するボールバルブ(1)と、
凹形球面形状を呈するシート面(2a)が前記ボール面に押し付けられるバルブシート(2)とを備え、
前記ボールバルブが回動操作されて、前記ボールバルブに形成されたバルブ開口(1b)と前記バルブシートに形成されたシート開口(2b)が連通することで開弁するバルブ装置において、
前記バルブ開口の開口径をφ1、
前記シート開口の開口径をφ2、
前記ボール面の曲率半径をR1、
前記シート面の曲率半径をR2とした場合、
φ1>φ2、
R1≦R2、
の関係を満足するバルブ装置。 - 請求項1に記載のバルブ装置において、
前記バルブ開口は、前記ボールバルブの回動方向に沿う長穴形状を呈するバルブ装置。 - 請求項1または請求項2に記載のバルブ装置において、
前記ボール面の曲率半径を、前記シート面の曲率半径より小さく設けることで、前記シート面の内径方向の端には、閉弁時に前記ボール面(1a)に接触する接触輪(A)が設けられるバルブ装置。 - 請求項1~請求項3のいずれか1つに記載のバルブ装置において、
少なくとも前記バルブシートの外端を拘束して前記バルブシートが径方向の外側へ広がる変形を抑制する剛体(8a、8b)をさらに備えるバルブ装置。 - 請求項4に記載のバルブ装置において、
前記バルブシートのうちで前記シート面とは反対側の面をシート裏面とした場合、
前記剛体は、前記バルブシートの外端の円筒面を拘束する筒体(8a)と、前記シート裏面に圧接するリング板(8b)とを備えるバルブ装置。 - 請求項5に記載のバルブ装置において、
前記筒体の軸方向の寸法は、前記バルブシートの外周縁の厚み寸法より短く設けられるバルブ装置。 - 請求項5または請求項6に記載のバルブ装置において、
前記リング板と前記バルブシートの間の摩擦係数(μ1)は、前記ボールバルブと前記バルブシートの間の摩擦係数(μ2)より大きく設けられるバルブ装置。 - 請求項1~請求項7のいずれか1つに記載のバルブ装置において、
前記バルブシートのうち前記シート面とは反対側の面をシート裏面とした場合、
前記シート裏面側には、当該バルブ装置の内部に流入する流体が導かれる背圧空間(α)が設けられ、
閉弁時において前記ボール面と前記シート面が対向する個所には、前記シート面の内径側のみを前記ボール面に接触させる接触輪が設けられ、
前記接触輪の外周側で、且つ前記ボールバルブと前記バルブシートの間には、閉弁時に流体が流入可能な環状隙間(β)が形成され、
前記環状隙間には、前記背圧空間へ導かれる流体と共通の流体が導かれるバルブ装置。 - 請求項8に記載のバルブ装置において、
前記背圧空間(α)から前記シート裏面側に流体圧を印加する受圧投影面積と、前記環状隙間(β)から前記シート面に流体圧を印加する受圧投影面積とが、同じに設けられるバルブ装置。 - 請求項1~請求項9のいずれか1つに記載のバルブ装置において、
流体が流入するインレット(16)と流体が流出するアウトレット(11)を有するハウジング(3)をさらに備え、
前記ボールバルブは、前記ハウジング内において回動操作され、略カップ形状を呈し、
前記ボールバルブを回動操作することで前記インレットと前記アウトレットの連通度合が変化し、
前記インレットから前記ボールバルブのカップ内へ流体を導く流路中心をインレット軸(jα)、前記ボールバルブのカップ内から前記アウトレットへ向けて流体を導く流路中心をアウトレット軸(jβ)とした場合、
前記ボールバルブは、前記ボールバルブの回動軸と同方向に開口を有し、
前記回動軸は、前記アウトレット軸または前記インレット軸に対して鈍角に設けられるバルブ装置。 - 請求項10に記載のバルブ装置において、
前記アウトレットは複数のアウトレット(11、12、13)のひとつであり、
前記ハウジングは、複数の前記アウトレットにそれぞれ独立して通じる複数のアウトレット通路(11a、12a)を備え、
複数の前記アウトレット通路のうち、少なくとも最も開口径の大きい前記アウトレット通路のアウトレット軸が前記回動軸に対して鈍角に設けられるバルブ装置。 - 請求項1~請求項11のいずれか1つに記載のバルブ装置において、
前記ボールバルブを内側に収容するハウジング(3)と、
前記ハウジングを貫通して前記ボールバルブと一体に回動するシャフト(14)と、
前記ハウジングと前記シャフトとの間をシールするシール部材(31)と、
前記ハウジングの内側において前記シール部材へ向かう流体の運動エネルギを減衰させるラビリンス部(32)と、
をさらに備えるバルブ装置。 - 請求項12に記載のバルブ装置において、
前記ラビリンス部は、
前記ハウジングにおける前記シャフトの挿通穴の開口縁から前記ボールバルブを収容するバルブ室(17)に向けて突出するとともに、前記シャフトの外周を隙間を介して囲う筒部(50)と、
前記ボールバルブに設けられて、前記筒部の外周面または内周面の少なくともいずれか一方に隙間(C2、C4)を介して径方向に対向する周壁(51、59)を有するバルブ装置。 - 請求項13に記載のバルブ装置において、
前記筒部は、前記ボールバルブの回動範囲を規制するストッパ(56)を有するバルブ装置。
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