WO2015174499A1 - 血圧推定方法および血圧測定装置 - Google Patents
血圧推定方法および血圧測定装置 Download PDFInfo
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- FIG. 15 is a waveform diagram showing waveforms obtained by subjecting the waveform data for one period of the pulse wave measured at the wrists of subjects D, E, and F to time width normalization processing and wavelength displacement normalization processing.
- the correlation diagram showing the correlation between the predicted systolic blood pressure and the reference systolic blood pressure shown in FIG. 16 shows the verification result of the verification model.
- FIGS. 23 to 26 show the normalization processing for the waveform data of the pulse wave acquired from the wrists of the subjects A, B, and C, respectively.
- FIG. 26 shows a correlation between an estimated value (predicted diastolic blood pressure) and an actual measurement value (reference diastolic blood pressure) based on a calibration model constructed by the PLS regression analysis method.
- the PLS regression analysis method is adopted as the regression analysis method. It is also possible to construct a calibration model using a regression analysis method other than this and estimate the blood pressure value with a predetermined accuracy from the waveform data of the pulse wave.
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Abstract
血圧測定装置(1)は、被検者の脈波をFBGセンサ(10)を用いて測定する脈波測定部(20)と、測定した脈波の波形データから血圧値を算出する血圧値算出部(30)とを備えている。血圧算出部(30)は、事前に測定された脈波の測定波形データと、当該測定波形データのそれぞれの測定時点において自動血圧計により測定された測定血圧値との相関関係を表す検量モデルを用いて、脈波の測定波形データから被検者の血圧値を推定する。自動血圧計に要求される精度で血圧値を推定でき、連続的な血圧測定も可能な使い勝手の良い血圧測定装置を実現できる。
Description
本発明は、被検者から測定した加速度脈波を用いて当該被検者の血圧値を推定する血圧推定方法および当該血圧推定方法を用いた血圧測定装置に関する。
血圧は人の健康状態を示す生体情報としてしばしば測定される。血圧の測定方法としては、被検者の脈波を測定し、測定した脈波に基づき血圧を算出する方法が提案されている。本出願人は、特許文献1において、被検者の複数の部位に取り付けたファイバブラッググレーティングセンサ(以下、「FBGセンサ」と呼ぶ。)によって測定される脈波の間の時間差(伝播速度)から、当該被検者の血圧を推定する非侵襲的な血圧測定方法を提案している。
また、特許文献2には、動脈波形に基いて、動脈波形が最小値から最大値になるまでの時間等を検出して、最高血圧と最低血圧を検出する方法が提案されている。特許文献3には、測定した容積脈波から加速度脈波を算出し、加速度脈波の変曲点などから被検者の最高血圧、最小血圧を求める方法が提案されている。
被検者の脈波の伝播速度から血圧を推定する特許文献1に記載の方法は、脈波を検出するために複数のFBGセンサを使用しなければならない。また、脈波波形、脈波パターンの特徴に基づいて血圧を推定する特許文献2、3に記載の方法は、波形のゼロクロス点の算出、波形の微分処理などの演算が必要であり、必ずしも正確に血圧を推定できない。
本発明の課題は、被検者から測定した加速度脈波に基づき簡単かつ高精度に血圧を推定可能な血圧推定方法、および、当該血圧推定方法を用いた血圧測定装置を提供することにある。
本発明の血圧推定方法は、測定された加速度脈波の測定波形データと、当該測定波形データのそれぞれの測定時点において測定された測定血圧値との相関関係を表す検量モデルを構築し、被検者から測定した加速度脈波の波形データから、前記検量モデルを用いて、前記加速度脈波の測定時における前記被検者の血圧値を推定することを特徴としている。
本発明の方法では、事前に構築した検量モデルを用いて、被検者の加速度脈波の波形データから当該被検者の脈波測定時における血圧値を推定している。本発明者等の検証実験によれば、検量モデルを適切に構築することにより、予測目標精度として平均較差が5mmg以内という国際標準を満足することが確認された。
ここで、血圧値には収縮期血圧(最大血圧)と拡張期血圧(最小血圧)がある。これらを加速度脈波の波形データから推定するためには、前記検量モデルとして、脈波波形データと収縮期血圧値との相関関係を表す第1検量モデル、および、脈波波形データと拡張期血圧値との相関関係を表す第2検量モデルを構築しておけばよい。
本発明の方法において使用する前記検量モデルは、前記測定波形データから1周期分波形データを切り出し、切り出した前記1周期分波形データのそれぞれを、波長変位量が同一となるように規格化し、あるいは、波長変位量および時間幅が同一となるように規格化し、規格化後の前記1周期分波形データを説明変数とし、前記測定血圧値を目的変数として、回帰分析を行って算出することができる。
また、前記検量モデルは、PLS回帰分析方法を用いて算出されたものであることが望ましい。
次に、本発明の血圧測定装置は、
被検者の加速度脈波を測定する脈波測定部と、
事前に測定された加速度脈波の測定波形データと、当該測定波形データのそれぞれの測定時点において測定された測定血圧値との相関関係を表す検量モデルを用いて、前記脈波測定部によって測定された前記加速度脈波の波形データから、前記加速度脈波の測定時における前記被検者の血圧値を推定する血圧値算出部と
を有していることを特徴としている。
被検者の加速度脈波を測定する脈波測定部と、
事前に測定された加速度脈波の測定波形データと、当該測定波形データのそれぞれの測定時点において測定された測定血圧値との相関関係を表す検量モデルを用いて、前記脈波測定部によって測定された前記加速度脈波の波形データから、前記加速度脈波の測定時における前記被検者の血圧値を推定する血圧値算出部と
を有していることを特徴としている。
前記検量モデルとして、予め構築しておいた汎用的な検量モデルを用いることができる。この代わりに、測定開始前等において、多数の加速度脈波の波形データと多数の測定血圧値とから、これらの相関関係を表す検量モデルを構築して、実際の血圧測定に臨むこともできる。検量モデルの再構築は、例えば、定期的にキャリブレーションする場合などに行う。
この場合には、本発明の血圧測定装置は、所定数の前記測定波形データと当該測定波形データのそれぞれの測定時点において測定された所定数の前記測定血圧値とを用いて前記検量モデルを構築する検量モデル構築部を有している。
また、前記検量モデルは、前記測定波形データのそれぞれから1周期分波形データを切り出し、切り出した前記1周期分波形データを説明変数、前記測定血圧値を目的変数として回帰分析を行って算出することができる。
この場合、血圧値の予測精度を高めるために、前記検量モデルは、切り出した前記1周期分波形データのそれぞれを、波長変位量が同一となるように規格化し、あるいは、波長変位量および時間幅が同一となるように規格化し、規格化後の前記1周期分波形データを前記説明変数として用いて算出することが望ましい。
前記時間幅が同一となるようにするための規格化として、前記1周期分波形データのそれぞれを、これら1周期分波形データにおける最小時間幅に各1周期分波形データの長さを切り揃える方法を用いることができる。
前記検量モデルを構築するための回帰分析方法には各種の方法があるが、PLS回帰分析方法を用いることが望ましい。
前記血圧値算出部は、前記被検者の収縮期血圧値および拡張期血圧値のうちの少なくとも一方を推定するようにしてもよい。
本発明において、前記脈波測定部は、前記加速度脈波を取得するセンサとして、所要の精度を備えたセンサを有していればよい。特に、センサとして、前記加速度脈波を測定するFBGセンサを備えていることが望ましい。当該センサを用いることにより、精度良く加速度脈波を測定できるので、血圧値の測定精度(推定精度)を高めることができる。
加速度脈波を直接に検出せずに、容積脈波を測定するセンサを配置し、測定された容積脈波を2次微分して加速度脈波を算出することも可能である。
本発明者等は後述のように主として以下の項目について検量モデルの検証実験を行った。
(a)個人差による血圧値推定精度への影響
(b)加速度脈波の測定位置と血圧値推定精度との関係
(c)収縮期血圧および拡張期血圧の推定精度
(d)加速度脈波の測定波形データの規格化と血圧値推定精度との関係
(e)PLS回帰分析におけるファクター数と血圧値推定精度との関係
(a)個人差による血圧値推定精度への影響
(b)加速度脈波の測定位置と血圧値推定精度との関係
(c)収縮期血圧および拡張期血圧の推定精度
(d)加速度脈波の測定波形データの規格化と血圧値推定精度との関係
(e)PLS回帰分析におけるファクター数と血圧値推定精度との関係
これらに関する検証実験の結果、本発明の血圧推定方法を用いることにより、個人差、脈波の測定位置の違い、収縮期血圧および拡張期血圧の違いに拘わりなく、所定の推定精度で血圧値を推定できることが確認された。よって、本発明の血圧測定装置によれば、従来の血圧計と同程度以上の精度で、加速度脈波から血圧値を算出可能である。したがって、簡単な構成で精度良く血圧値が得られる血圧測定装置を実現できる。
また、本発明の血圧推定方法において、測定によって得られた加速度脈波の波形データを適切に規格化することにより、推定精度の高い検量モデルを構築でき、また、PLS回帰分析を用いる場合には、そのファクター数を適切に設定することにより推定精度の高い検量モデルを構築できることが確認された。よって、本発明の血圧測定装置によれば、波形データの適切な規格化およびPLS回帰分析における適切なファクター数の設定により、加速度脈波から高い精度で血圧値を算出できる。
さらに、本発明の血圧測定装置によれば、被検者の肘あるいは手首などの脈波を検出しやすい部位に脈波検出用のセンサを取付けて脈波を検出するだけで、血圧値を知ることができ、センサは一箇所に取り付けるだけでよい。また、血圧を連続測定するような場合に、体位を変えて測定することができ、被検者に与えるストレスを抑えた状態で血圧の連続測定を行うことができる。よって、使い勝手のよい血圧測定装置を実現できる。さらに、脈波の波形データの処理を自動プログラム化することにより、検量モデルの構築、検量モデルに基づく血圧測定を簡単に行うことができ、装置の小型化も容易である。
[血圧測定装置]
図1(a)は、本発明を適用した血圧測定装置の構成例を示すブロック図である。血圧測定装置1は、被検者の脈波を測定する部位、例えば、手首の内側位置、肘の内側位置などの脈波を測定しやすい部位に取り付けるFBGセンサ10と、FBGセンサ10に入射させる参照用の光源12と、FBGセンサ10からの反射光を検出する光検出器20と、光検出器20の検出結果に基いて血圧値を算出する血圧値算出部30とを備えている。血圧値算出部30には、必要に応じて、被検者の血圧値を記録する記録部、血圧値を表示する表示部、各種制御操作を行うためのスイッチ等を備えた操作部が配置される。
図1(a)は、本発明を適用した血圧測定装置の構成例を示すブロック図である。血圧測定装置1は、被検者の脈波を測定する部位、例えば、手首の内側位置、肘の内側位置などの脈波を測定しやすい部位に取り付けるFBGセンサ10と、FBGセンサ10に入射させる参照用の光源12と、FBGセンサ10からの反射光を検出する光検出器20と、光検出器20の検出結果に基いて血圧値を算出する血圧値算出部30とを備えている。血圧値算出部30には、必要に応じて、被検者の血圧値を記録する記録部、血圧値を表示する表示部、各種制御操作を行うためのスイッチ等を備えた操作部が配置される。
FBGセンサ10は、1本の光ファイバ内に所定間隔をあけて回折格子構造を形成したものである。後述の実験では、FBGセンサ10として、センサ部分の長さ10mm、波長分解能±0.1pm、波長範囲1550±0.5nmのものを使用した。ファイバ直径は145μm、コア径は10.5μmである。実験においては、手首と肘を測定部位とし、FBGセンサ10を医療用テープによって、これらの測定部位に貼り付けた。FBGセンサ10が取付け位置で位置ずれするおそれがある場合には、FBGセンサ10を、皮膚に接触させた状態で、スポンジなどの緩衝材を介して包帯で巻いて、取り付ければよい。
光源12には、波長範囲1525~1570nmのASE(Amplified Spontaneous Emission)光源を使用した。光源12からの出射光を、サーキュレータ16を介してFBGセンサ10に入射させる。FBGセンサ10からの反射光を、サーキュレータ16を介してマッハツェンダー干渉計18に導き、マッハツェンダー干渉計18からの出力光を光検出器20によって検出する。
マッハツェンダー干渉計18は、ビームスプリッタにより光路差のある2つの光路に分離し、再び、ビームスプリッタにより一つに重ね合わせて干渉光を作り出すためのものである。光路差をつけるために、本例では、一方の光ファイバの長さを長くしている。コヒーレント光は、光路差に応じて干渉縞が生じるので、干渉縞のパターンを測定することによって、FBGセンサ10に生じた歪の変化、すなわち、加速度脈波を検知することができる。
血圧測定装置1において、FBGセンサ10の歪量を検出して、加速度脈波の波形を検出する部分が脈波測定部40である。脈波測定部40は、光源12、サーキュレータ16、マッハツェンダー干渉計18、ビームスプリッタなどの光学系、光検出器20、当該光検出器20に含まれている波長シフト量を解析する解析手段等を含む。
脈波測定部40は、使用するFBGセンサ10の特性に応じて、光源、帯域光を選択して使用することができる。また、検波方法等の解析手段についても、種々の方法を採用することができる。
血圧値算出部30は、光検出器20によるFBGセンサ10からの光信号の検出結果に基いて、加速度脈波の波形データを検出し、検出した波形データに基づいて血圧値を予測(推定)する機能を備える。後述するように、加速度脈波の波形データと血圧値との間には、特定のデータ処理を行うことにより相関関係を見出すことができる。したがって、図1に示す血圧測定装置1を利用することにより、被検者の血圧を連続的に測定することができる。
図1(b)は、血圧測定装置1において採用している血圧推定方法を示す概略フローチャートである。まず、予備測定(ステップST1~ST5)において、加速度脈波および血圧値の同時測定を必要回数行い、測定された加速度脈波の測定波形データと、当該測定波形データのそれぞれの測定時点において測定された測定血圧値との相関関係を表す検量モデルを構築する。実際の血圧測定を行う本測定(ステップST6、ST7)おいては、FBGセンサ10を用いて被検者の加速度脈波を測定し、血圧値算出部30において、得られた波形データから、検量モデルを用いて、加速度脈波の測定時における被検者の血圧値を予測(推定)する。
検量モデルとして、測定波形データと測定血圧値である収縮期血圧値との相関関係を表す第1検量モデル、および、測定波形データと測定血圧値である拡張期血圧値との相関関係を表す第2検量モデルの双方を構築することができる。これらのうちの一方を構築しておき、収縮期血圧値および拡張期血圧値の一方のみを測定してもよい。
検量モデルの構築は具体的には次の手順で行う。まず、予備測定では、加速度脈波の測定と、各加速度脈波測定時における自動血圧計による血圧測定とを行い、必要数の加速度脈波データおよび、これらに対応する血圧値データを収集する(ステップST1:データ収集)。データ収集は同一人あるいは複数の人から行うことができる。
収集した複数個の加速度脈波のそれぞれについて、その波形データから、血圧測定時点に対応する時点における脈拍1パルス分に相当する1周期分毎のデータを切り出し、各加速度脈波の1周期分波形データとして用いる(ステップST2:データ切り出し)。
次に、複数個の加速度脈波のそれぞれの1周期分波形データを規格化する処理を行う(ステップST3:データ規格化)。規格化処理として、波長変位量が一定となるようにデータを規格化する波長変位規格化処理、および、時間幅が同一となるように規格化する時間幅規格化処理を用いる。後述のように、波長変位規格化処理を行うか、波長変位規格化処理と時間幅規格化処理の双方を行うことが望ましい。
規格化後の複数個の1周期分波形データを説明変数とし、各1周期分波形データに対応する測定血圧値を目的変数として、回帰分析を行って、検量モデルを構築する(ステップST4:PLS回帰分析、ステップST5:検量モデル構築)。回帰分析方法としてはPLS回帰分析方法を用いることができる。
ここで、血圧測定装置1は、図1(a)において想像線で示すように、加速度脈波の波形データと血圧の実測値とから検量モデルを構築する検量モデル構築部50を備えていてもよい。検量モデル構築部50を用いて、必要に応じて、検量モデルの再構築あるいは校正を行うことができる。
本発明者等は、本発明による血圧推定方法を採用した血圧測定装置1を用いて実験を行った結果、十分に高い精度で血圧値を推定(予測)することができ、本発明による血圧測定装置が十分に実用可能であることを確認した。以下に、本発明者等が行った実験のうちの3種類の実験を、実験例1、2、3として説明する。
実験例1~3は、脈波波形と実測血圧値との間の相関関係に基づき構築した検量モデルを用いて、測定した脈波から血圧値を推定できることを示す。また、実験例2は、異なる被検者に対しても共通の検量モデルを用いて血圧値を推定できることを示す。実験例3は、血圧値として収縮期血圧および拡張期血圧の双方を本発明の推定方法によって推定できることを示す。
[実験例1]
被検者の脈波波形と、血圧値、本実験では収縮期血圧との相関関係について調べるために、以下の手順で実験および解析を行った。
被検者の脈波波形と、血圧値、本実験では収縮期血圧との相関関係について調べるために、以下の手順で実験および解析を行った。
FBGセンサを用いて脈波を検出するために、手首の内側の動脈の位置と、肘の内側の動脈の位置に、それぞれFBGセンサを取付け、手首の脈波と肘の脈波を検出した。検出された脈波の波形データと血圧値との相関関係を見るために、FBGセンサを用いて脈波波形を検出する際に、同時に、自動血圧計(オムロン社製電子血圧計:HEM-120)を用いて、被検者の血圧値をモニターした。実験は、手首の脈波と、肘の脈波について別個に行った。測定は、仰臥位で行い、データを取得する1回の測定時間15秒、サンプリング周波数は10kHzとした。
なお、FBGセンサを用いて得られる脈波の波形は加速度脈波であり、容積脈波の二次微分に相当する。すなわち、脈波のピーク位置間で切り出した1周期分波形データは、容積脈波の1パルス分に相当する。なお、以下の説明においては、FBGセンサを用いて検出される加速度脈波を単に「脈波」と呼ぶ場合もある。
図2は、図1に示す血圧測定装置1を用いて検出した脈波波形の一例である。脈拍に対応してFBGセンサに生じた歪の変化が周期的な脈波として捉えられる。取得した脈波の波形データと血圧値(収縮期血圧)との相関関係を解析するために、本実験では、説明変数をFBGセンサによって取得した脈波の波形データとし、目的変数を自動血圧計によって測定した収縮期血圧として、PLS回帰分析方法を利用して解析した。
自動血圧計を用いる血圧値の測定は連続測定ではないので、参照血圧測定時点に対応するFBGセンサの脈波の一つの波形データ、すなわち、1周期分波形データを説明変数とする。但し、自動血圧計を用いる血圧測定は連続測定ではないことと、自動血圧計ではカフを使用して測定するので、測定時点が正確には分からない。そこで、参照血圧の測定時に直近の脈波の1周期分波形データを説明変数として選択した。実際上は、参照血圧の測定時点と、説明変数として選択するFBGセンサから得られる1周期分波形データの測定時点とは、厳密には一致しない可能性がある。
PLS回帰分析方法は、参照値である自動血圧計による参照血圧値にも誤差があることを前提とし、参照値の誤差を目的変数として逐次的に減少させていく解析手法である。よって、脈波の波形データと血圧値との相関関係を解析する有効な方法である。
図3は、最高血圧値(収縮期血圧)が113mmHg、123mmHg、130mmHgのときのFBGセンサによって得られた測定波形データから切り出された1周期分波形データを示す波形図である。これらの波形データは、自動血圧計を用いて測定した参照血圧に対応する測定時点の脈波波形データとして抽出したものである。
図3の1周期分波形データを見ると、血圧値が異なると、脈波1周期分の時間が異なることが分かる。そこで、処理対象の1周期分波形データの周期を合わせるために、解析対象とする全データのうち、最も周期が短い1周期分波形データの時間幅で解析対象の脈波波形を切り出す処理(時間幅規格化処理)を行った。
図4は、図3に示す波形データについて、時間幅規格化処理を施して得られた1周期分波形データを示す波形図である。この処理により、各1周期分波形データの終端側のデータがカットされ、全ての1周期分波形データの時間幅が一致する。解析においては、解析対象の全ての1周期分波形データについて時間幅規格化処理を施した。時間幅規格化処理を行う目的は、図3に示すように、1周期分波形データの終端側(図3の波形における右端の上昇部分)で、各波形データに大きな差が現れるので、この部分を削除して、各1周期分波形データの本体部分(0.8secより前の範囲)を解析対象とすることにある。
図4に示す時間幅規格化処理を行った後の波形データについて、縦軸の波長変位量を見ると、血圧値によって変位量が異なることが分かる。波長変位量は、FBGセンサの歪の大きさに相当し、血圧が異なると、FBGセンサ10の歪の大きさも異なることを示している。
図5は、図4に示す時間幅規格化処理を行った後の1周期分波形データについて、さらに波長変位規格化処理を施して得られた1周期分波形データを示す波形図である。本実験例の波長変位規格化処理においては、波長変位の最小値が0、波長変位の最大値が1となるように、規格化処理を行った。波長変位量の規格化は、例えば、最小値が-1、最大値が+1などのように、適宜、規格化条件を設定できる。
(解析結果)
本実験では、検量モデルの構築のために、波長変位量を規格化する処理を行わなかった場合と、波長変位量の規格化を行った場合の双方について、解析を行った。
本実験では、検量モデルの構築のために、波長変位量を規格化する処理を行わなかった場合と、波長変位量の規格化を行った場合の双方について、解析を行った。
図6は、肘で測定した脈波の時間幅規格化処理後の波形データから推定した推定血圧値である算出収縮期血圧と実測血圧値である参照収縮期血圧との相関を示す相関図である。図7は、手首で測定した脈波の時間幅規格化処理後の波形データから推定した推定血圧値である算出収縮期血圧と実測血圧値である参照収縮期血圧との相関を示す相関図である。
これらの図において、ベタ黒の四角マークは、PLS回帰分析方法により、測定した脈波の波形データから血圧値を推定(予測)した推定血圧値であり、丸マークは検証値である。肘についての測定データ数は、四角マークで示す検量モデル作成用として75個、丸マークで示す検証用として24個である。
表1には、図6、7に示した肘と手首についての検量結果と自動血圧計による測定結果との相関関係を示す。表1の相関係数と、標準推定誤差(SEC)、標準予測誤差(SEP)をみると、時間幅規格化処理のみを施して回帰分析を行う方法では、脈波の取得波形に基づく血圧値の推定値と実測値との相関関係が低いことを示している。
図8は、肘で測定した脈波について時間幅規格化処理と波長変位規格化処理を施して得られた1周期分波形データから、PLS回帰分析方法により推定した推定血圧値(算出収縮期血圧)と、自動血圧計による実測血圧値(参照収縮期血圧)との相関を示す相関図である。同様に、図9は、手首で測定した脈波について時間幅規格化処理と波長変位規格化処理を施して得られた1周期分波形データから、PLS回帰分析方法により推定した推定血圧値(算出収縮期血圧)と、自動血圧計による実測血圧値(参照収縮期血圧)との相関を示す相関図である。これらの図においてベタ黒の四角マークは、FBGセンサを用いて取得した脈波波形から推定(予測)した推定血圧値であり、丸マークは検証値である。
本実験では、最適ファクター数が4であり、ファクター数を4とした検量モデルにおいて誤差が最小となった。したがって、ファクター数を4とした検量モデルを用いた場合の相関関係を見た。
表2には、図8、9に示した肘と手首についての検量結果と自動血圧計による測定結果との相関関係を示す。
この表に示すように、FBGセンサによる取得波形データから推定した推定血圧値と自動血圧計による実測血圧値とは良い相関関係を示している。相関係数および標準推定誤差(SEC)、標準予測誤差(SEP)共に、表1に示した波長変位規格化処理を行わないデータ処理による場合と比較して、高い相関関係にある。また、肘の波形データと手首の波形データを比較すると、肘から取得した脈波の波形データの方が、より良い相関関係にある。
波長変位規格化処理は、FBGセンサを測定部位に取り付ける際の押し付け圧力のばらつき、測定時におけるFBGセンサの位置ずれ、等に起因する測定データのばらつきを平均化する作用を有すると考えられる。波長変位規格化処理は、このような測定時のばらつきに起因するノイズを抑え、波形データと実測血圧値との相関関係の精度を向上させる上で有効であると考えられる。
図10は、肘で測定した加速度脈波の波形データから検量モデルを構築した際のローディング波形を示す波形図である。このローディング波形は、脈波の1周期分波形データのうち、脈波が開始する時点から0.1sec、0.2sec周辺のデータが検量モデルに大きく影響することを示している。上記の血圧測定では、心臓の収縮期血圧を測定している。脈波は心臓が収縮を開始するときからのデータを反映するので、脈波の開始時近傍のデータが血圧値(収縮期血圧)との相関関係により強く寄与していると考えられる。
(実験結果についての考察)
上述した実験および解析結果は、血圧を測定しようとする被検者の肘、手首などの脈波を測定し易い部にFBGセンサを配置して脈波の波形データを取得することにより、被検者の血圧値を十分に予測できることを示している。
上述した実験および解析結果は、血圧を測定しようとする被検者の肘、手首などの脈波を測定し易い部にFBGセンサを配置して脈波の波形データを取得することにより、被検者の血圧値を十分に予測できることを示している。
具体的には、FBGセンサを用いて取得した脈波の波形データと、波形データを取得する際に同時に取得した実測血圧値との相関関係に基いて、脈波の波形データと血圧値との相関関係を表す検量モデル(検量式あるいは検量線)を構築し、検量モデルを構築した後は、当該検量モデルに基いて、被検者から脈波の波形データを取得して血圧値を推定(予測)する。
検量モデルが構築されれば、被検者の肘、手首等の脈波を検出しやすい部位にFBGセンサを取付けて脈波の波形を検出することにより、連続的に被検者の血圧値を測定することができる。FBGセンサは肘、手首等の一箇所に装着すればよい。よって、体を動かしても脈波のセンシングに影響を与えることが無く、連続的に血圧測定を行う場合においても、無理なく血圧測定を行うことが出来るという利点がある。
なお、脈波の波形データと実測血圧値との相関関係に基づく検量モデルは、後述の実験例2で示すように異なる被検者に対して共通に用いることが可能であるが、被検者毎に構築しておいてもよい。例えば、図1に示す血圧測定装置1を用いて血圧を連続して測定する場合等においては、被検者毎に、事前に脈波の波形データと血圧の実測値を取得して、検量モデルを構築する操作を行い、構築した検量モデルを用いて血圧値を測定する。また、同一の被検者であっても、時間の経過とともに体調等が変わった場合などには検量モデルを再構築(校正する)ことが良いことがある。
また、本実験では、収縮期血圧(最大血圧)を参照血圧値として解析を行った。後述の実験例3に示すように、拡張期血圧(最低血圧)を参照血圧値として脈波の波形データとの相関関係を見出すことにより、FBGセンサを用いて検出した脈波の波形データに基づいて拡張期血圧を推定(予測)することも可能である。
[実験例2]
実験例1と同様に、FBGセンサを用いて異なる被検者の脈波波形を測定し、PLS回帰分析方法を用いて検量モデルを構築し、脈波の測定波形データから推定した推定血圧値と、自動血圧計で測定した実測血圧値との相関関係について検討した。
実験例1と同様に、FBGセンサを用いて異なる被検者の脈波波形を測定し、PLS回帰分析方法を用いて検量モデルを構築し、脈波の測定波形データから推定した推定血圧値と、自動血圧計で測定した実測血圧値との相関関係について検討した。
本実験では、20代の男性3名を被検者A、B、Cとして、FBGセンサを手首の脈波検出位置に医療用テープで固定し、仰臥位で脈波を測定した。脈波測定におけるサンプリング周期は10kHzとした。FBGセンサによる脈波の測定と同時に、上腕で自動血圧計により収縮期血圧を測定して参照値とした。脈波の波形データは、自動血圧計による1回の測定開始から終了までの間を1セットとして取得し、当該脈波の波形データを平均化する処理を行って使用した。被検者毎に50回の測定を行った。
図11は、被検者A、B、Cの手首で測定した脈波を処理して切り取った1周期分波形データに時間幅規格化処理と波長変位規格化処理を施して得られた波形を示す波形図である。脈波波形の処理は、ノズル除去のために、バンドパスフィルタ(0.5<f<5)に脈波を通し、脈波のピークを基準点として、1心拍毎に脈波を切り取り、1周期分波形データを得た。
また、1周期分波形データのうちの最も短い周期の時間幅に揃えて、各1周期分波形データを切り取る時間幅規格化処理を施した。さらに、体動によるノズルを低減させるために、脈波測定時間中に現れた複数の1周期分波形データ(1心拍脈波)を平均し、ベースライン変動の影響を除去するために、各1周期分波形データについて、最初の点を1とし、最小値を0とする波長変位規格化処理を行った。図11から、被検者A、B、C毎に、脈波形状がかなり異なっていることがわかる。
次に、図11に示す時間幅規格化処理および波長変位規格化処理を施した後の1周期分波形データを説明変数、自動血圧計による実測血圧値である参照収縮期血圧を目的変数として、PLS回帰分析方法により、検量モデルを構築した。被検者A、B、Cから取得した150のデータから125のデータセットを無作為に選定して検量モデルを構築し、残りの25のデータセットを用いて検量モデルの検証を行った。
検量モデルの精度評価には、leave-one-out法によるクロスバリデーションを使用した。PLSファクター数を増加させ、F検定によりPRESS値(予測残差平方和)に有意差がないと判断された際のファクター数を採用した。
ここで、自動血圧計(電子血圧計)の精度基準として、聴診法との平均較差が5mmHg以内にあることが規定されている。以下の解析では、精度基準を満たした自動血圧計を用いて測定した収縮期血圧を基準値とし、当該基準値との平均較差が5mmHg以内となることを目標とした。
図12は、PLS回帰分析による検量モデルの構築において、leave-one-out法によるクロスバリデーションを行った際のPLSファクター毎のPRESS値を示すグラフである。F検定の結果、ファクター数が8と9でPRESS値の差が有意でないと判定されたため、PLSファクター数として8を採用した。
図13は、予測収縮期血圧値と参照収縮期血圧との相関関係を示す相関図であり、図11に示す3名の被検者A、B、Cの手首の波形データに基づいて構築した検量モデルの構築データを示す。また、図14は、検量モデルの検証結果をプロットした予測収縮期血圧と参照収縮期血圧との相関関係を示す相関図である。
表3は検量モデルの構築結果をまとめたものであり、表4は検証結果をまとめたものである。表3から、検量モデルの予測値と血圧参照値の相関関係は高度に有意であり、平均較差は目標精度を達成していることが分かる。また、表4から、検証結果の平均較差が3mmHgであり、高精度に収縮期血圧を推定可能(予測可能)であるという結果が得られた。
次に、検量モデルの構築に用いた3名の被検者A、B、Cとは別の3名の被検者D、E、Fについて、FBGセンサを用いて脈波測定を行った。測定回数はそれぞれ25回ずつとした。測定した脈波の波形データを用いて、上記のように構築した検量モデルの検証を行った。
図15は、被検者D、E、Fの手首で測定した脈波の1周期分波形データに時間幅規格化処理および波長変位規格化処理を施して得られた波形を示す波形図である。図16に示す予測収縮期血圧と参照収縮期血圧との相関関係を示す相関図は、検証モデルの検証結果を示すものである。
表5は、被検者D、E、Fの平均較差と被検者全体の平均較差を示す。表5において、被検者全体の平均較差は目標精度を満たしたものの、被検者Eについては目標精度を満たしていない。
表5において、被検者Eのみが目標精度を満たさなかった理由として、PLSファクター数が8と多く、オーバーフィッティングしている可能性が考えられた。そこで、ファクター数を1から8まで変化させ、検量モデルを新たに構築し、被検者D、E、Fの脈波を使用して、検証した。表6にファクター数の検証結果を示す。
表6における矩形枠で囲む値は、各列での最小値である。ファクター数が4で被検者E、Fと全体の平均較差が最小値となり、ファクター数が5のときに被検者Dの平均較差が最小値となっている。ファクター数が4における被検者Dの平均較差は3.5mmHgであり、十分に小さいので、4が最適なファクター数である可能性がある。
図17に示す予測収縮期血圧と参照収縮期血圧との相関関係を示す相関図は、ファクター数を4として検量モデルを再構築した場合の検証結果を示す。参照値と予測値の相関係数は0.95と高度に有意となり、また、すべての被検者について目標精度を満たしている。
以上説明したように、再構築した検量モデルは、被検者A、B、Cの取得データに基づいて構築した検量モデル(検量式、検量線)が、別の被検者D、E、Fに適用しても、十分な精度で血圧値を推定できることを示すものである。よって、本発明の血圧推定方法は、汎用的な血圧測定方法として利用できる可能性を示している。すなわち、検量モデルを被検者毎に前もって校正するなどの操作を必要とすることなく、汎用的に1つの検量モデルを利用できる可能性を示唆している。
[実験例3]
上記の実験例1、2では、共に、FBGセンサを用いて取得した脈波から収縮期血圧を推定(予測)した例である。本実験では、取得した脈波の波形データから拡張期血圧を推定した。
上記の実験例1、2では、共に、FBGセンサを用いて取得した脈波から収縮期血圧を推定(予測)した例である。本実験では、取得した脈波の波形データから拡張期血圧を推定した。
実験例1、2の場合と同様に、FBGセンサを、手首に取り付けた場合と肘に取り付けた場合について、それぞれの脈波を測定し、同時に、自動血圧計を用いて被検者の血圧値として拡張期血圧をモニターした。脈波の測定回数を100回、サンプリング周波数を10kHzとした。
図18は、FBGセンサを用いて測定した脈波をノズル除去のためにフィルタに通した後に得られた波形を示す波形図である。1回の血圧想定で取得した1セットの脈波データからピーク位置を基準として1パルス分毎に1周期分波形データとして切り出し、これらのデータを平均して平均波形データを算出し、算出された1周期分平均波形データを解析用の基礎データとした。
図19~図22は、拡張期血圧が63mmHg、65mmHgおよび75mmHgのときに得られた脈波の1周期分波形データを示す波形図であり、それぞれ別の形態で規格化処理を施した場合を示す。
図19は、各データを脈波の最小の時間幅でカットする時間幅規格化処理を施してある。図20は、図19の1周期分波形データに、更に、高さが1となるように波長変位規格化処理を施して得られる波形を示す波形図である。これに対して、図21は、1周期分波形データを、長さ(時間)が1となるように時間幅規格化処理を施した場合の波形を示す波形図である。図22は、図21に示す波形に対して、さらに高さが1となるように波長変位規格化処理を施した場合の波形を示す波形図である。
なお、時間幅を規格化する方法には、図19に示すような最小の時間幅で脈波波形データを切り出す方法と、図21で示すような時間幅を1(sec)に規格化する方法があるが、いずれの方法でも、推定精度には差がないことが確認された。
図23~図26に示す予測拡張期血圧と参照拡張期血圧との相関を示す相関図は、それぞれ、被検者A、B、Cの手首から取得した脈波の波形データについて、規格化処理を行わない場合(図23)、波長変位規格化のみを行った場合(図24)、時間幅規格化のみを行った場合(図25)、および、波長変位規格化と時間幅規格化の双方を行った場合(図26)において、PLS回帰分析方法により構築した検量モデルによる推定値(予測拡張期血圧)と実測値(参照拡張期血圧)との相関関係を示す。
図27~図30に示す予測拡張期血圧と参照拡張期血圧との相関を示す相関図は、それぞれ、被検者A、B、Cの肘から取得した脈波の波形データについて、規格化処理を行わない場合(図27)、波長変位規格化のみを行った場合(図28)、時間幅規格化のみを行った場合(図29)、および、波長変位規格化と時間幅変位規格化の双方を行った場合(図30)において、PLS回帰分析方法により構築した検量モデルによる推定値(予測拡張期血圧)と実測値(参照拡張期血圧)との相関関係を示す。
PLS回帰分析方法により構築した検量モデルによる血圧の推定値と拡張期血圧との相関関係を調べるために、それぞれの被検者A、B、Cについての100回分のデータの中から無作為に75個のデータセットを取出して検量モデルを構築した。残りの25個のデータセットを用いて、検量モデルの検証を行った。表7、8、9には、被検者A、B、Cについての検証結果を示す。
表7、8、9は、時間幅規格化に比べて波長変位規格化の方が予測精度を向上させる上で有効であることを示している。また、波長変位規格化、または、波長変位規格化と時間幅規格化を行うことにより、平均較差が5mmHg以内という国際標準を満たすこと、すなわち、脈波の波形データに基づいて、十分な精度で拡張期血圧を推定(予測)できることを示している。
図31は、脈波の波形データから検量モデルを構築した際のローディング波形を示す波形図である。図31(a)は、収縮期の検量モデルを構築した際のローディング波形を示し、図31(b)は拡張期の検量モデルを構築した際のローディング波形を示す。いずれも、ファクター4までのローディング波形を示す。
図32は、図31のローディング波形における収縮期(SBP)と拡張期(DBP)について、ファクター1、2および3の波形それぞれを抜き出して示す波形図である。図32(a)はファクター1のローディング波形であり、図32(b)はファクター2のローディング波形であり、図32(c)はファクター3のローディング波形である。
各ファクターの波形は常に一定している訳ではないので、一概には言えないが、ファクター1については収縮期と拡張期が殆ど一致し、ファクター2、3については、通常、収縮期と拡張期で波形に相違が見られる。すなわち、ファクター2、3が収縮期と拡張期の検量モデルの差に寄与していると考えられる。
図33はFBGセンサによって測定された脈波の1パルス分の基本波形を示す波形図である。この基本波形は図18に示す波形の1パルス分である。この図において、a波は収縮初期陽性波、b波は収縮初期陰性波、c波は収縮中期再上昇波、d波は収縮後期下降波、e波は拡張初期陽性波である。a波とb波は収縮期の前方成分であり、心臓が収縮して血液が押し出されるときの駆動圧波に相当し、c波とe波は駆動圧が抹消に伝播して反射して戻ってきた反射圧波に相当する。
図34は、FBGセンサにより測定された脈波の1パルス分の波形と図32に示すファクター1の波形とを示す波形図である。この2つの波形をみると、相互にプロフィールが良く一致している。このことから、ファクター1は脈波の駆動圧波と反射圧波の双方の情報を有しており、中心血圧を予測するものと考えられる。これに対して、収縮期と拡張期で波形が異なるファクター2、3、4は、収縮期血圧と拡張期血圧の予測に関係するものと考えられる。また、脈波のe波は、心臓の拡張期に起因することから、拡張期血圧に関わるものと考えられる。
図35(a)、(b)および(c)は、被検者A、B、Cについての脈波の波形データから検量モデルを構築した際のローディング波形を示す波形図である。これらの図において、aで示す領域は、多くのファクターで正の相関があるところであり、心臓の収縮初期の血圧の情報を多く含んでいると考えられる。bで示す領域は、ファクター2が正の相関となるところであり、心臓の収縮中期と反射波成分が血圧予測に寄与していることを示す。
また、図35におけるローディング波形において、aで示す領域とbで示す領域の配置位置関係は、被検者A、B、Cに共通している。このローディング波形における共通点は、血圧に関する脈波の潜在因子に共通性が有ることを意味しており、回帰分析による検量モデルの結果は個人者による影響が小さいこと、すなわち、血圧推定方法として汎用的に利用できる可能性を示している。
以上説明したように、本実験の結果は、脈波の波形データは拡張期血圧とも相関関係があることを示しており、脈波データを取得することにより、収縮期血圧と拡張期血圧を共に推定できることを示している。すなわち、取得した脈波の波形データに基づいて、回帰分析を行うことにより、血圧値を推定する検量モデルを構築することができ、検量モデルに基いて、収縮期血圧と拡張期血圧の双方を予測することが可能なことを示している。
[その他の実施の形態]
なお、上記の実施の形態では、脈波の波形データを取得する方法として、FBGセンサを使用した。FBGセンサは歪(変形)の検知能力が極めて高く、脈波のような微小な歪を高精度で検知できるという特徴がある。上述の実験例では、サンプリング周波数を10kHzとし、回帰分析方法を利用して平均較差が5mmHgの国際標準の精度を達成している。このような高精度の推定が可能なのは、FBGセンサが高精度の分析を可能にするセンシング能力を備えていることにある。
なお、上記の実施の形態では、脈波の波形データを取得する方法として、FBGセンサを使用した。FBGセンサは歪(変形)の検知能力が極めて高く、脈波のような微小な歪を高精度で検知できるという特徴がある。上述の実験例では、サンプリング周波数を10kHzとし、回帰分析方法を利用して平均較差が5mmHgの国際標準の精度を達成している。このような高精度の推定が可能なのは、FBGセンサが高精度の分析を可能にするセンシング能力を備えていることにある。
したがって、FBGセンサと同等のセンシング能力を有するセンサであれば、FBGセンサ以外のセンサであっても、同様に利用することができる。例えば、シート形の静電容量型の感圧センサ、触覚アレイセンサは、高精度の圧力検知が可能である。よって、FBGセンサの代わりに用いることが可能である。
また、上記の実施の形態では、回帰分析方法としてPLS回帰分析方法を採用している。これ以外の回帰分析方法を用いて検量モデルを構築して、脈波の波形データから所定の精度で血圧値を推定することも可能である。
Claims (11)
- 測定された加速度脈波の測定波形データと、当該測定波形データのそれぞれの測定時点において測定された測定血圧値との相関関係を表す検量モデルを構築し、
被検者から測定した加速度脈波の波形データから、前記検量モデルを用いて、前記加速度脈波の測定時における前記被検者の血圧値を推定することを特徴とする血圧推定方法。 - 前記検量モデルは、前記測定波形データと前記測定血圧値である収縮期血圧値との相関関係を表す第1検量モデル、および、前記測定波形データと前記測定血圧値である拡張期血圧値との相関関係を表す第2検量モデルのうちの少なくとも一方である請求項1に記載の血圧推定方法。
- 前記検量モデルは、
前記測定波形データのそれぞれから1周期分波形データを切り出し、
切り出した前記1周期分波形データのそれぞれを、波長変位量が同一となるように規格化し、あるいは、波長変位量および時間幅が同一となるように規格化し、
規格化後の前記1周期分波形データを説明変数とし、前記測定血圧値を目的変数として、回帰分析を行って算出したものである
請求項1に記載の血圧推定方法。 - 前記検量モデルは、PLS回帰分析方法を用いて算出されたものである請求項3に記載の血圧推定方法。
- 被検者の加速度脈波を測定する脈波測定部と、
事前に測定された加速度脈波の測定波形データと、当該測定波形データのそれぞれの測定時点において測定された測定血圧値との相関関係を表す検量モデルを用いて、前記脈波測定部によって測定された前記加速度脈波の波形データから、前記加速度脈波の測定時における前記被検者の血圧値を推定する血圧値算出部と
を有していることを特徴とする血圧測定装置。 - 前記測定波形データと当該測定波形データのそれぞれの測定時点において測定された前記測定血圧値とを用いて前記検量モデルを構築する検量モデル構築部を有している請求項5に記載の血圧測定装置。
- 前記検量モデルは、
前記測定波形データのそれぞれから1周期分波形データを切り出し、
切り出した前記1周期分波形データを説明変数、前記測定血圧値を目的変数として回帰分析を行って算出されたものである
請求項5に記載の血圧測定装置。 - 前記検量モデルは、
切り出した前記1周期分波形データのそれぞれを、波長変位量が同一となるように規格化し、あるいは、波長変位量および時間幅が同一となるように規格化し、
規格化後の前記1周期分波形データを前記説明変数として用いて算出されたものである請求項7に記載の血圧測定装置。 - 前記検量モデルは、PLS回帰分析方法を用いて算出されたものである請求項7に記載の血圧測定装置。
- 前記血圧値算出部は、前記被検者の収縮期血圧値および拡張期血圧値のうちの少なくとも一方を推定する
請求項5に記載の血圧測定装置。 - 前記脈波測定部は、前記加速度脈波を測定するファイバブラッググレーティングセンサを備えている請求項5に記載の血圧測定装置。
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