WO2015087732A1 - 回転機械部品の携帯端末利用検査システムおよび検査方法 - Google Patents

Abstract

　スマートフォン等の携帯情報端末器と専用センサ用いることで、軸受等の回転機械部品の動作状態を簡易に検査することができる検査方法を提供する。また、携帯情報端末器からサーバへの通信の過程で通信障害により検出データが損なわれる可能性を低くできる一方、回転機械部品の全周の検査と同等の異常診断等の処理が行える検査方法を提供する。スマートフォン等の汎用の携帯情報端末器（2）と、これに接続される専用センサ（3）とを用いる。専用センサ（3）で検出した検出データを携帯情報端末器（2）からサーバ（6）へ送信し、サーバ（6）はデータ処理して処理結果を携帯情報端末器（2）へ送信する。携帯情報端末器（２）は、送られた処理結果を画面（21ａ）に表示させる。専用センサ（3）による１回の検出時間は、回転機械部品（1）の１回転未満の時間とし、複数回の検出およびデータ処理の結果から、作業者が回転機械部品（1）の異常を判断する。

Description

回転機械部品の携帯端末利用検査システムおよび検査方法 関連出願

　本出願は、２０１３年１２月１２日出願の、特願２０１３－２５６６５９および特願２０１３－２５６８８９の優先権を主張するものであり、それらの全体を参照により本願の一部をなすものとして引用する。

　この発明は、転がり軸受や等速ボールジョイント等の転動体を備えた機械部品である回転機械部品の運転状態につき、一般に普及しているスマートフォン等の携帯情報端末器を用いて検査する回転機械部品の携帯端末利用検査システムおよび検査方法に関する。

　軸受等の回転機械部品の検査方法として、軸受等の回転機械部品の振動や温度の測定を行い、状態の表示や検査を行う方法がある（例えば、特許文献１，２）。

　しかし、特許文献１や特許文献２に開示された従来の検査方法は、検査するための専用の表示装置や処理装置が必要であり、装置も大きく高価なものであり、一般的には使用が難しいという課題がある。

　このような課題を解消する軸受振動の診断装置として、振動分析はサーバで行うようにし、測定者は振動ピックアップ等の専用センサとその検出データをサーバへ送るスマートフォン等の携帯情報端末器と、振動ピックアップのデータを携帯情報端末器へ送るＡ／Ｄ変換器のみを持つようにしたシステムを考えた（特許文献３）。振動ピックアップの振動検出データは携帯情報端末器からサーバへ送り、サーバで分析してその結果を携帯情報端末器へ送り返し、表示させる。そのため、測定者は振動を分析させるパーソナルコンピュータ等が不要となって、低コストで分析が可能になる。スマートフォン等の携帯情報端末器による通信は、通常はインターネット等の通信機能を用い、また無線による移動体通信が用いられる。

実公平５－１７６２５号公報 特許第２９５４１８３号公報 特開２０１３－２２８３５２号公報

　しかし、上記のようにインターネット等の通信機能を用いてデータ搬送して、サーバで軸受等の振動検査を行う場合、データ量が大きいと通信時間がかかり、通信状態によっては通信途中で通信不能となる。

　この発明の目的は、一般的に普及している携帯情報端末器と、これに検知データを供給する専用センサとを用いることで、軸受等の回転機械部品の動作状態を簡易に検査することができ、かつ携帯端末からサーバへの通信の過程で通信障害により検出データが損なわれる可能性を低くでき、また回転機械部品の全周の検査と同等の検査による異常診断等の処理が行える回転機械部品の携帯端末利用検査システムおよび検査方法を提供することである。

　以下、便宜上理解を容易にするために、実施形態の符号を参照して説明する。

　この発明の一構成に係る、回転機械部品の携帯端末利用検査システムは、回転機械部品１を検査するシステムであって、前記回転機械部品１の状況を検出する専用センサと、前記専用センサが検出した状況についての検出データが供給される少なくとも１つの汎用の携帯情報端末器２と、前記少なくとも１つの携帯情報端末器２に通信回線網によって接続されるサーバ６とを備える。

　前記少なくとも１つの携帯情報端末器２は、前記専用センサ３から供給された検出データを前記サーバ６へ送信し、このサーバ６でデータ処理されてサーバ６から送信された処理結果を画面２１ａに表示させるように構成される。前記専用センサ３によって供給される検出データの１回の検出時間は、検出対象である前記回転機械部品１の１回転未満の時間を含み、この１回の検出データごとに、前記サーバへの送信が実行される。

　前記サーバ６は、データ処理ソフトウェア４および前記回転機械部品１の型番毎の仕様のデータ５を蓄積したデータベース１５を有し、前記データ処理ソフトウェア４は、前記少なくとも１つの携帯情報端末器２から送信された検出データおよび前記仕様のデータを用いてデータ処理し、処理結果を前記少なくとも１つの携帯情報端末器２へ送信する手順を有する。

　前記少なくとも１つの携帯情報端末器２による前記サーバ６への検出データ送信、ならびに前記サーバ６によるデータ処理および処理結果の前記少なくとも１つの携帯情報端末器２への送信が、複数回繰り返される。

　前記の「回転機械部品１の１回転未満の時間（１回転周期未満の時間）」を定めるための１回転の時間は、検査時の回転数（＝回転速度）が既知であれば、その回転数から定まる時間であり、不明の場合は、その回転機械部品１の使用形態等に応じた標準的な回転時間とする。この１回転未満の時間は、１回転の時間に基づいて、任意に定めれば良い。前記設定時間は、さらに、１回転の時間に対する所定の割合の時間として定められても良い。この所定の割合は、任意に定めれば良く、各回の検出で異なっていても良い。

　この明細書において、「回転機械部品１」は、転がり軸受や等速ボールジョイント等の転動体を備えた機械部品を言う。前記汎用の携帯情報端末器２は、スマートフォンやタブレット等であり、電話機能は必ずしも備えていなくても良いが、電話網，インターネット等の広域の通信回線網７を介してサーバ６と接続可能で、かつアプリケーションプログラムをダウンロードしてインストール可能なＯＳ（オペレーションプログラム）９を有する情報処理機器である。前記専用センサ３は、例えば振動を検出するピックアップや、温度検出用のセンサ３であり、マイクロＵＳＢ（接続インタフェース規格であるＵＳＢ規格の一つ）等の規格適合した端子８ａを持つケーブル８や、無線ＬＡＮ等で携帯情報端末器２と接続される。前記専用センサ３は、この他に、メモリチップやＵＳＢメモリ等の着脱自在な記憶媒体を介して携帯情報端末器２にデータの供給が可能なものあっても良い。前記回転機械部品１の型番は、軸受の場合、呼び名または呼び番号等とも称される、仕様毎に定められた回転機械部品１の番号、または回転機械部品１の１個毎に定められた番号である。前記仕様のデータ５は、回転機械部品１が転がり軸受の場合、例えば、ボール個数、ボール径、内輪・外輪寸法等である。なお、データ処理ソフトウェア４によるデータ処理には、前記仕様のデータ５と専用センサ３から供給された検出データの他に、携帯情報端末器２の持つ手入力手段２２から入力した軸受等の回転機械部品１の回転速度等のデータを用いても良い。

　この構成によると、専用センサ３を準備するだけで、その他は一般的に普及しているスマートフォンやタブレット等の携帯情報端末器２を用いて、回転機械部品１の動作状態を簡易に検査することができる。

　また、前記専用センサ３により前記検出を行って１回で送信するデータの検出時間、すなわち検査のために測定を持続する時間は、検査対象である前記回転機械部品１の１回転未満の時間とするため、データ量を少なくできる。特に、振動検出等のデータ量が多くなる検査においても、データ量を少なくできて送信時間が短くなる。そのため、送信中に電波障害等の通信障害により送信が中断したり、ノイズが乗るなどして検出データが損なわれる可能性が低くなる。検査時間を１回転未満の時間とするため、回転機械部品１の回転方向である周方向の全周の検査を１回の検査で行うことはできない。これに対して、専用センサ３による検出からサーバ６によるデータ処理、処理結果の送信、前記携帯情報端末器２の画面２１ａへの表示に至る検査過程を複数回繰り返す。その複数回の前記携帯情報端末器２の画面２１ａの表示内容から、オペレータが前記回転機械部品１の１回の異常判断を行えば、全周の検査が行える可能性が極めて高くなる。

　各回の検出で回転機械部品１の全周のどの範囲を検出するかは定めていなくても、何回か、例えば数回検出すれば、重複部分は生じるが、回転機械部品１の全周のうちの全体の検出データが得られる可能性が極めて高く、このため全周の検査が行える可能性が極めて高い。したがって、回転機械部品１の全周のうちの一部に異常が生じている場合であっても、異常判定の検査が行える。なお、作業者が回転機械部品１の異常を聴覚や視覚等で感じているが、数回の検出では携帯情報端末器２の画面２１ａに異常発生の旨が表示されないことがある。そのような場合は、全周のうちの異常箇所の検査が行われていない恐れがあるため、検出の繰り返し回数を増やせばよい。これにより、その異常箇所の検査が行われて異常が検出され、画面２１ａに異常発生の旨が表示される。

　好ましい実施形態において、前記専用センサ３は振動または音響を検出するセンサ３であり、前記検出データは波形データであり、前記サーバ６はこの波形データの周波数分析を行って前記回転機械部品１の部位毎の異常有無の結果を前記少なくとも１つの携帯情報端末器２へ送信し、前記少なくとも１つの携帯情報端末器２は前記部位毎の異常有無の結果を前記画面２１ａに表示させるようにしても良い。

　振動や音響の検出であって検出データが波形データである場合は、検出データのデータ量が多いが、複数回に分けてこのデータの検出時間を短くして検出することにより、通信中の検出データが損なわれる可能性が低くなる。したがって、検出データが損なわれる可能性を低減するという利点が効果的に達成される。また、周波数分析を行って前記回転機械部品１の部位毎の異常有無の結果を表示させるようにすると、回転機械部品１の異常の内容（異常が発生している、回転機械部品の部位）が明確に分かり、回転機械部品１の対処が行い易い。このような周波数分析を行って回転機械部品１の部位毎の異常有無を判断するデータ処理ソフトウェア４は、複雑でデータ処理量が多くなるが、サーバ６がそのデータ処理ソフトウェア４を有するため、パーソナルコンピュータ等で処理を行う場合と異なり、高速の処理が行える。

　好ましい実施形態において、前記回転機械部品１が転がり軸受であっても良い。転がり軸受である場合、前記各利点がより効果的に達成される。

　好ましい実施形態において、前記回転機械部品の回転周期の１／４以下である。

　好ましい実施形態において、前記１回の検出時間に前記複数回を乗じた時間が、前記回転機械部品の回転周期よりも長い。

　この発明の一構成に係る、回転機械部品の携帯端末利用検査方法は、汎用の携帯情報端末器２を用いて回転機械部品１を検査する方法であって、（i）専用センサ３によって、前記回転機械部品１の状況を検出することと、（ii）前記専用センサ３から、検出した状況についての検出データを前記携帯情報端末器２に供給することであって、前記専用センサ３によって供給される検出データの１回の検出時間は、検査対象である前記回転機械部品１の１回転未満の時間を含む、ことと、（iii）前記携帯情報端末器２に供給された１回の検出データを、前記携帯情報端末器２から前記サーバ６に１回で送信することと、（iv）前記サーバ６に備えられたデータ処理ソフトウェア４により、前記検出データと前記回転機械部品１の型番毎の仕様のデータとを用いてデータ処理することと、（v）このデータ処理の結果である処理結果を前記サーバ６から前記携帯情報端末器２に送信することと、（vi）前記処理結果を前記携帯情報端末器２の画面２１ａに表示することと、
　前記（i）から（vi）を複数回繰り返して、その複数回の前記携帯情報端末器２の画面２１ａに表示された内容に基づいて、オペレータによる前記回転機械部品１の１回の異常判断を可能にする。

　この検査方法においても、前記の「回転機械部品１の１回転未満の時間（１回転周期未満の時間）」を定めるための１回転の時間は、検査時の回転数（＝回転速度）が既知であれば、その回転数から定まる時間であり、不明の場合は、その回転機械部品１の使用形態等に応じた標準的な回転時間とする。この１回転未満の時間は、１回転の時間に基づいて、任意に定めれば良い。前記設定時間は、さらに、１回転の時間に対する所定の割合の時間として定められても良い。この所定の割合は、１回転に対する１回の検出時間の割合についても、任意に定めれば良く、各回の検出で異なっていても良い。

　この検査方法によると、前記一構成の検査システムについて前述した各作用，効果が得られる。

　好ましい実施形態において、前記専用センサ３は振動または音響を検出するセンサ３であり、前記検出データは波形データであり、前記（iv）は、前記波形データの周波数分析を行うことを含み、前記（v）は、前記処理結果として、前記回転機械部品１の部位毎の異常有無の結果を前記携帯情報端末器２へ送信することを含み、前記（vi）は、前記携帯情報端末器２が前記部位毎の異常有無の結果を前記画面２１ａに表示させることを含んでも良い。

　好ましい実施形態において、前記回転機械部品１が転がり軸受であっても良い。
　この構成の場合、前記一構成の検査システムについて前述した各作用，効果が得られる。

　この発明の別の構成に係る、携帯端末利用振動検査システムは、検査対象物を検査する携帯端末利用検査システムであって、前記検査対象物１の振動の加速度を検出する振動センサ３と、前記振動センサ３が検出した加速度についての加速度データが供給される、少なくとも１つの汎用の携帯情報端末器２と、前記携帯情報端末器２に通信回線網７によって接続されるサーバ６Ａとを備える。

　前記少なくとも１つの携帯情報端末器２は、前記振動センサ３で検出した加速度データからなる検出データを前記サーバ６Ａに送信する検出データ送信手段３５、および前記送信した検出データに対して前記サーバ６Ａから返送された処理結果を表示する処理結果表示手段３６を有する。

　前記サーバ６Ａは、前記少なくとも１つの携帯情報端末器２から送信された検出データである加速度データを受信する受信処理手段１３、この受信した検出データを処理するデータ処理手段４０と、およびこのデータ処理手段４０の処理結果を前記少なくとも１つの携帯情報端末器２へ返送する処理結果返送手段３４を有し、
　前記データ処理手段４０は、前記検出データである加速度データを積分して速度を求める速度計算部４ｂ、およびこの速度計算部４ｂで求めた速度を積分して変位を求める変位計算部４ｃを有する。

　この構成によると、サーバ６Ａに設けられたデータ処理手段４０に、検出データである加速度データを積分して速度を求める速度計算部４ｂ、およびこの速度計算部４ｂで求めた速度を積分して変位を求める変位計算部４ｃを有する。そのため、専用ＩＣを備えた振動センサを用いることなく、サーバ６Ａに設けられたソフトウェアを用いて速度および変位を求めることができる。

　また、振動センサ３の検出データを読み込み、その検出データをサーバ６Ａへ送って処理させる手段、およびサーバ６Ａから送信された処理結果を表示する手段として、汎用の携帯情報端末器２を用いる。そのため、専用センサ３を準備するだけで、その他は一般的に普及しているスマートフォンやタブレット等の携帯情報端末器２を用いて、振動の速度および変位まで求めることができる。

　前記サーバ６Ａの前記処理結果返送手段３４が、データ処理手段４０で求めた振動の速度および変位を携帯情報端末器２へ返信する構成であれば、計算用の専用ＩＣを持たない振動センサ３を用いながら、携帯情報端末器２を接続することで、あたかも専用ＩＣを持つ振動センサを用いた場合と同様に、振動の加速度だけでなく、速度および変位を、振動測定の現場で知ることができる。

　なお、前記汎用の携帯情報端末器２は、スマートフォンやタブレット等であり、電話機能は必ずしも備えていなくても良いが、電話網，インターネット等の広域の通信回線網７を介してサーバ６と接続可能で、かつアプリケーションプログラムをダウンロードしてインストール可能なＯＳ（オペレーションプログラム）９を有する情報処理機器である。前記振動センサ３は、例えば振動ピックアップであり、マイクロＵＳＢ（接続インタフェース規格であるＵＳＢ規格の一つ）等の規格適合した端子８ａを持つケーブル８や、無線ＬＡＮ等で携帯情報端末器２と接続される。前記振動センサ３は、この他に、メモリチップやＵＳＢメモリ等の着脱自在な記憶媒体を介して携帯情報端末器２にデータの供給が可能なものあっても良い。

　好ましい実施形態において、前記サーバ６Ａの前記データ処理手段４０は、前記速度計算部４ｂの前段に、前記検出データである加速度データから低周波成分をカットする低周波成分カット部４ａを有する構成であっても良い。
　加速度データから低周波成分をカットすることで、発散を生じることなく、加速度から速度および変位の積分が行える。そのため、速度および変位の計算を確実に行える。

　前記低周波成分カット部４ａは、例えば、前記検出データである加速度データを周波数分析し、その周波数分析の結果から低周波成分を除去し、この除去後の周波数分析結果を時間軸データによる加速度データに戻す処理を行う構成とする。これにより、低周波成分のカットが確実，かつ適切に行える。
　前記低周波成分カット部４ａはローカットフィルタであっても良い。その場合、低周波成分カット部４ａが簡単な構成で済む。

　好ましい実施形態において、前記サーバ６Ａの前記データ処理手段４０は、前記加速度データから加速度の実効値を計算する加速度実効値計算部４ｄ、前記速度計算部４ｄで求めた速度から速度の実効値を計算する速度実効値計算部４ｅ、および前記変位計算部４ｃで求めた変位から変位の実効値を計算する変位実効値計算部４ｆのうちの少なくとも一つの実効値計算部を有し、前記処理結果返送手段３４は、前記少なくとも一つの実効値計算部４ｄ，４ｅ，４ｆで計算された実効値のうちのいずれか一つの実効値、前記速度計算部４ｂで求めた速度、および前記変位計算部４ｃで求めた変位を前記処理結果として前記少なくとも１つの携帯情報端末器２へ返送する構成であっても良い。

　この構成の場合、振動センサ３に接続された携帯情報端末器２で、振動の速度および変位の速度を知ることができ、さらに振動の加速度の実効値、速度の実効値、または変位の実効値を知ることができる。これらの実効値は、回転機械部品等の検査対象物の異常診断を精度良く行う上で必要なデータであり、簡易な振動センサ３と携帯情報端末器２とを用いるだけで、これらの各種データを知ることができる。

　好ましい実施形態において、前記検査対象物１が回転機械部品であっても良い。回転機械部品、特に転がり軸受等であると、異常判断等を行う場合に、振動の加速度の検出データだけでなく、振動の速度および変位を求めて判断を行うことが、より精度の良い異常判断に繋がる。そのため、この発明システムによる、簡易に振動の速度および変位を求めることができる効果が、より効果的に発揮される。

　この発明の一構成に係る携帯端末利用振動検査システム用サーバ６Ａは、検査対象物を検査する携帯端末利用振動検査システムに含まれるサーバであって、
　前記携帯端末利用検査システムは、前記サーバ６Ａに加えて、前記検査対象物の振動の加速度を検出する振動センサ３と、前記振動センサ３が検出した加速度についての加速度データが供給される、少なくとも１つの汎用の携帯情報端末器２とを備える。当該サーバ６Ａは、少なくとも１つの前記携帯情報端末器２に通信回線網によって接続される。
　前記サーバ６Ａは、前記少なくとも１つの携帯情報端末器２から送信された検出データである加速度データを受信する受信処理手段１３、この受信した検出データを処理するデータ処理手段４、およびこのデータ処理手段４の処理結果を前記携帯情報端末器２へ返送する処理結果返送手段１４を有し、
　前記データ処理手段４は、前記検出データである加速度データをから低周波成分をカットする低周波成分カット部４ａ、この低周波成分のカット後の加速度データを積分して速度を求める速度計算部４ｂ、およびこの速度計算部４ｂで求めた速度を積分して変位を求める変位計算部４ｃを有する。

　この構成のサーバ６によると、この発明の携帯端末利用振動検査システムにつき説明したと同様に、計算用の専用ＩＣを持たない振動センサ３を用い、その検出した振動加速度の検出データから簡易に速度および変位を求めることができる。

　請求の範囲および／または明細書および／または図面に開示された少なくとも２つの構成のどのような組合せも、本発明に含まれる。特に、請求の範囲の各請求項の２つ以上のどのような組合せも、本発明に含まれる。

　この発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施形態の説明から、より明瞭に理解されるであろう。しかしながら、実施形態および図面は単なる図示および説明のためのものであり、この発明の範囲を定めるために利用されるべきものではない。この発明の範囲は添付の請求の範囲によって定まる。添付図面において、複数の図面における同一の符号は、同一または相当する部分を示す。
この発明の第１の実施形態に係る回転機械部品の携帯端末利用検査システムを示す説明図であって、携帯端末器および専用センサの斜視図、回転機械部品の正面図、およびサーバのブロック図を含む。 図１の検査システムの概念構成のブロック図である。 図１の検査システムによる検査方法の流れ図である。 この発明の第２の実施形態に係る携帯端末利用振動検査システムを示す説明図であって、携帯端末器および専用センサの斜視図、回転機械部品の正面図、およびサーバのブロック図を含む。 図４の検査システムにより速度、変位、実効値等を求める様子を示す説明図である。 この発明の第３の実施形態に係る携帯端末利用振動検査システムの概念構成のブロック図である。

　この発明の第１の実施形態に係る携帯端末利用検査方法を、図１～図３と共に説明する。この検査方法は、回転機械部品１の異常を検査する方法であって、スマートフォン等の汎用の携帯情報端末器２と、これに接続される専用センサ３と、携帯情報端末器２にインターネット等の通信回線網７を介して接続されるサーバ６とを用いる。サーバ６に、データ処理ソフトウェア４および回転機械部品１の仕様等のデータ（仕様に関するデータ）５を記憶したデータベース１５が設けられる。サーバ６は、この回転機械部品の携帯端末利用検査方法に用いる専用のサーバであっても、この回転機械部品の携帯端末利用検査方法とは無関係の種々のアプリケーションプログラムやデータを配信する機能を備えたものであっても良い。

　回転機械部品１は、転がり軸受や等速ボールジョイント等の転動体を備えた機械部品である。回転機械部品１の具体例を挙げると、連続鋳造設備に用いられる軸受や、遊園地の遊具に用いられる軸受である。携帯情報端末器２は、スマートフォンやタブレット等であり、電話機能は必ずしも備えていなくても良いが、電話網，インターネット等の広域の通信回線網７を介してサーバ６と接続可能で、かつアプリケーションプログラムをダウンロードしてインストール可能なＯＳ（オペレーションプログラム）９を有する情報処理機器である。なお、スマートフォンは、上記の携帯情報端末器２の定義のうち、電話機能を備えたものを言う。前記通信回線網７は、移動体通信が行える回線網である。

　前記専用センサ３は、例えば振動または音響を検出するセンサであり、この例では振動検出用のピックアップである。専用センサ３は、マイクロＵＳＢ（接続インターフェース規格であるＵＳＢ規格の一つ）等の規格に適合した端子８ａを持つケーブル８により携帯情報端末器２に差し込み接続される。この他に、専用センサ３は、無線ＬＡＮ等で携帯情報端末器２と接続されるものであっても、また、メモリチップやＵＳＢメモリ等の着脱自在な記憶媒体（図示せず）が着脱可能で、この記憶媒体を介して携帯情報端末器２にデータの供給が可能なものあっても良い。

　なお、この実施形態における専用センサ３は、前記振動検出用のピックアップからなるセンサ本体３ａと、Ａ／Ｄ変換器３ｂとでなる。センサ本体３ａで検出して電圧値で出力されるアナログ信号の振動波形のデータは、Ａ／Ｄ変換器３ｂでディジタルデータに変換されて携帯情報端末器２に取り込まれる。Ａ／Ｄ変換器３ｂはセンサ本体３ａと同じ筐体内に設けられていても良い。

　図２に示すように、サーバ６は、通信処理手段１１と、データ処理ソフトウェア４を記憶した記憶手段（図示せず）と、端末側処理ソフトウェア３３を記憶した記憶手段（図示せず）と、軸受等の回転機械部品１の仕様についてのデータベース１５と、処理結果記憶手段３１とを備える。

　通信処理手段（通信等処理手段）１１は、通信制御手段１２と、要求応答手段３７と、処理結果返送手段３４と、課金処理手段１４と有する。通信制御手段１２は、通信回線網７を介して、携帯情報端末器２からのアクセスに対応し、通信を確立して通信に関する種々の制御を行う手段である。要求応答手段３７は、携帯情報端末器２からのデータ処理の要求に応答して、前記データ処理ソフトウェア４によるデータ処理を行わせ、また端末側処理ソフトウェア３３を携帯情報端末器２へ送信する。処理結果返送手段３４は、データ処理ソフトウェア４による処理結果を携帯情報端末器２へ返送する。課金処理手段１４は、携帯情報端末器２からのデータ処理ソフトウェア４による処理に対して課金を行う手段である。課金の方法は、データ処理ソフトウェア４の使用毎に課金する方法であっても良く、または定額の課金を行う方法や、端末側処理ソフトウェア３３のダウンロードに対して課金する方法であっても良い。

　前記データ処理ソフトウェア４は、サーバ６に回転機械部品１の検査のためのデータ処理を行わせるプログラムおよびデータであって、サーバ６の持つＯＳ（オペレーションプログラム）上で実行するアプリケーションプログラムである。データ処理ソフトウェア４は、例えば、軸受振動データの周波数分析（ＦＦＴ分析）を行い、ＦＦＴ分析結果から上記軸受の各部位（例えば、内輪、外輪、転動体、保持器）の振動数の振動レベルを検出する構成とされる。これら検出した振動レベルをそれぞれ対応する閾値と比較する。閾値を超えた部位については、異常が発生していると判断する。データ処理ソフトウェア４は、少なくとも１つの部位に異常が発生していると判断したときは、帯情報端末器２の画面２１ａに、異常があることを表示させ、全ての検出した振動レベルが閾値未満の場合は異常がないと判断して異常がない旨の表示を前記画面２１ａに表示させる処理を、前記処理結果返送手段３４を介して行わせる機能を有する。

　データ処理ソフトウェア４は、この異常の判断を行うにつき、閾値以内であっても経時的な処理結果の比較で定められた条件に該当するときは異常であると判断し、その判断結果を前記携帯情報端末器２の画面２１ａに表示させるようにしても良い。

　データベース１５は、携帯情報端末器２からのアクセスによって検索可能なデータベースマネジメントシステム（図示せず）とデータの記憶手段とでなり、検索項目１６として、回転機械部品１が軸受の場合、その軸受を階層的に分類した名称を有している。検索項目１６は、玉軸受ところ軸受とに区分した階層、玉軸受につき、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、その他の各形式の軸受に区分し、ころ軸受につき、テーパころ軸受と円筒ころ軸受、その他の各形式の軸受に区分した階層、さらにサイズ別に区分した階層、シール有無、シール形式に区分した階層に区分されている。検索項目１６は、区分の形式が互いに異なる複数種類の階層を持つようにしても良い。最下層となる一つの型番についての仕様のデータ５は、ファイルとして設けられている。データベース１５は、複数の仕様のデータ５を、種々の階層のフォルダとして抽出可能とされている。

　仕様のデータ５は、回転機械部品が転がり軸受の場合、例えば、ボール個数、ボール径、内輪・外輪寸法等である。回転機械部品１の型番は、回転機械部品１の仕様毎に定められた回転機械部品の番号、または回転機械部品の１個毎に定められた番号であり、回転機械部品１が軸受の場合、呼び名または呼び番号等とも称される番号、または製造番号が用いられる。

　処理結果記憶手段３１は、前記データ処理ソフトウェア４で処理された処理結果を記憶する手段である。処理結果記憶手段３１は、例えばデータベースとして設けられ、データ処理ソフトウェア４で処理した仕様のデータ５や、専用センサ３から得たデータを、携帯情報端末器２の識別データ等と共に記憶する構成としても良い。また、前記データ処理ソフトウェア４は、前記処理結果を複数比較する機能、並びに処理結果をサーバ６の前記処理結果記憶手段３１に記憶させる機能、およびこの処理結果記憶手段３１から適宜の検索条件で検索して、記憶されている処理結果をダウンロードする機能を有するものとしても良い。前記携帯情報端末器２により、上記の比較する機能を用いて前記複数の前記処理結果を比較しても良い。複数の処理結果を比較することで、より一層適切な検査や、検査結果の評価を行うことができる。

　端末側処理ソフトウェア３３は、携帯情報端末器２で使用するソフトウェアであり、携帯情報端末器２からの送信要求に応答して前記要求応答手段３７より携帯情報端末器２へ送信する。

　前記端末側処理ソフトウェア３３は、詳しくは専用センサ３で検出して携帯情報端末器２に供給された検出データをサーバ６へ送信し、サーバ６にデータ処理を行わせる処理等のソフトウェアである。端末側処理ソフトウェア３３は、携帯情報端末器２でインストールされ、つまり実行可能状態とされることで、携帯情報端末器２に、検出データ送信手段３５、処理結果表示手段３６、および異常判断手段３８を構成する。

　携帯情報端末器２の構成につき、具体的に説明する。携帯情報端末器２は、前述のようにスマートフォンやタブレット等であり、前述のアプリケーションプログラムをダウンロードしてインストール可能なＯＳ９と、画面表示装置２１と、手入力手段２２と、通信制御手段２３と、接続インタフェース２４と、入力情報記憶手段２５とを有する。

　画面表示装置２１は、液晶等の画面２１ａに画像を表示する手段である。手入力手段２２は、オペレータが手で入力するための手段（オペレータによる入力のためのインタフェース）であり、文字，数字の入力用のハードウェアキーボード、または画面２１ａ上に手指やタッチペン等を触れて入力を可能とするソフトェアキーボード等からなる。通信制御手段２３は、通信回線網７を介してサーバ６と通信を行う各種の処理を行う手段である。接続インタフェース２４は、携帯情報端末器２と他の機器とを接続するインタフェースであり、この例では、前記マイクロＵＳＢ規格の差し込み接続用端子、およびその入出力処理の回路やソフトウェアで構成される。

　入力情報記憶手段２５は、サーバ６や、手入力手段２２、接続インタフェース２４を介して入力された専用センサ３の検出データを記憶する手段である。入力情報記憶手段２５には、前記データ処理ソフトウェア４が入力されて、実行可能なようにインストールされ、またサーバ６からダウンロードした仕様のデータ５が、階層構造のフォルダからなる仕様データ群２６として記憶される。入力情報記憶手段２５の検出データ記憶部２７には、専用センサ３から得た検出データが記憶され、入力データ記憶部２８には、手入力手段２２から入力された各種のデータ、例えば軸受回転速度等が記憶される。

　前記端末側ソフトウェア３３が携帯情報端末器２にインストールされると、検出データ送信手段３５、異常判断手段３８、および処理結果表示手段３６が構成される。

　検出データ送信手段３５は、専用センサ３で検出されて携帯情報端末器２に取り込まれた検出データをサーバ６へ送信する手段である。検出データ送信手段３５は、例えば、携帯情報端末器２の手入力手段２１の操作等で検出開始が指示されると、設定時間だけ専用センサ３の検出データを取り込み、その取り込んだ検出データを１回の送信のデータとしてサーバ６へ送信する。前記設定時間は、検出対象となる回転機械部品１の１回転未満の時間（１回転周期未満の時間）とする。回転機械部品１の１回転の時間は、検査時の回転数（＝回転速度）が既知であれば、その回転数から定まる時間であり、不明の場合は、その回転機械部品１の使用形態等に応じた標準的な１回転の時間とする。前記設定時間は、この１回転の時間に基づいて、任意に定めれば良い。前記設定時間は、さらに、１回転の時間に対する所定の割合の時間として定められても良い。この所定の割合は、任意に定めれば良く、各回の検出で異なっていても良い。例えば１／４回転以下の時間を前記設定時間とする。

　検出データ送信手段３５は、検出時間を上記設定時間とする代わりに、例えば手入力手段２１でオン操作が続けられている間だけ継続させ、作業者によって検出時間を自由に変えるようにしても良い。また、このオン操作が続けられている間だけ検出を継続させるモードと、上述のように設定時間だけ検出を継続するモードとを、手入力手段２１等の操作によって切換可能としても良い。前記検出データ送信手段３５において、前記設定時間は、回転数が既知である場合は、回転機械部品１の機種や使用形態が入力にされることによって、設定規則に従って定めるようにしても良い。

　この実施形態の検査システムを用いた検査方法を説明する。まず、準備過程として、携帯情報端末器２から端末側処理ソフトウェア３３の送信要求をサーバ６に行う。この送信要求に応答して、サーバ６は、端末側処理ソフトウェア３３を携帯情報端末器２へ送信する。携帯情報端末器２は、ダウンロードした端末側処理ソフトウェア３３をインストールし、実施可能な状態とする。

　検査に際しては、携帯情報端末器２に専用センサ３から供給された検出データと、手入力手段２２等から入力された回転機械部品１の型番と、回転機械部品１における専用センサ３による検査時の回転数（＝回転速度）のデータを、携帯情報端末器２から前記サーバ６に送信する。回転数のデータは、手入力手段２２から入力したデータであっても、また回転検出器（図示せず）から得たデータであっても良い。

　サーバ６は、受信した検出データを、前記データ処理ソフトウェア４により前記型番毎の仕様のデータ５と回転数を用いて処理し、処理結果を処理結果返送手段３４によって前記携帯情報端末器２に送り返す。このとき、サーバ６は、例えば、回転機械部品２の部位毎（転がり軸受の場合、内輪、外輪、転動体、保持器等）の異常有無を判断し、各部位毎の異常有無の結果を処理結果として送り返す。携帯情報端末器２は、この送り返された処理結果を画面２１ａに表示させる。例えば、内輪、外輪、転動体、保持器の各部を表す文字、絵文字や記号と、異常有無を知らせる文字、絵文字や記号によって表示する。具体例を挙げると、「内輪：○、外輪：○、転動体：○、保持器：×」のような表示を行う。

　専用センサ３で検出して送信する検出データは、回転機械部品１の１回転未満の時間で検出されるデータである。そのため、図３に示すように、専用センサ３で検出して携帯情報端末器２へ検出信号を送信し（Ｓ１（Ｓ４，Ｓ７））、サーバ６で異常判断等の処理を行って携帯情報端末器２へ処理結果を送り（Ｓ２（Ｓ５，Ｓ８））、携帯情報端末器２で結果を表示して作業者がその表示された結果を見る（Ｓ３（Ｓ６，Ｓ９））と言う過程を、複数回、例えば数回（３～６回）繰り返す。なお、サーバ６による異常判断等の処理（Ｓ２（Ｓ５，Ｓ８））は、携帯情報端末機２から送信された１回の検出データに対して行い、回転機械部品１の回転方向である周方向の全周のうち、データが検出されていない部分については異常判断等を行わない。

　その後、この複数回の繰り返し過程における各回の処理結果の内容から回転機械部品１の異常判断を作業者が行う（Ｓ１０）。例えば、回転機械部品１の部位毎（内輪、外輪、転動体、保持器毎）の○，×の等の表示による異常判断結果において、１回でも異常を示す×の結果があると、その回転機械部品１は異常が生じていると判断できる。

　この実施形態に係る方法によると、検出データの処理をサーバ６で行うため、携帯端末２からサーバ６に検出データの送信を行うことは必要となるが、サーバ６は携帯端末２に比べて飛躍的に高速の処理機能を持つものが通常である。そのため、その高速の処理機能を用いて検出データの異常判断のための処理を高速に行え、また高度な処理を行って詳しく精度の高い診断を行うことができる。

　ただし、所謂生データである信号波形のデータをサーバ６に送信すると、送信する検出データのデータ量が多く、上記の通信障害の懸念がある。これに対して、この実施形態に係る方法によると、専用センサ３により前記検出を行って１回で送信するデータの検出時間、すなわち検査のために測定を持続する時間は、検査対象である回転機械部品１の１回転未満の時間とするため、データ量を少なくできる。特に、振動検出等のデータ量が多くなる検査においても、データ量を少なくできて送信時間が短くなる。そのため、送信中に電波障害等の通信障害により送信が中断したり、ノイズが乗るなどして検出データが損なわれる可能性が低くなる。検査時間を１回転未満の時間とするため、回転機械部品１の回転方向である周方向の全周の検査を１回の検査で行うことはできない。これに対して、専用センサ３による検出からサーバ６によるデータ処理、処理結果の送信、前記携帯情報端末器２の画面２１ａへの表示に至る検査過程を複数回繰り返す。その複数回の前記携帯情報端末器２の画面２１ａの表示内容から、作業者が回転機械部品１の異常判断を行えば、全周の検査が行える可能性が極めて高くなる。

　なお、各回の検出で回転機械部品１の全周のどの範囲を検出するかは定めていなくても、何回か、例えば数回検出すれば、重複部分は生じるが、回転機械部品１の全周の検出データが得られる可能性が極めて高く、このため全周の検査が行える可能性が極めて高い。したがって、回転機械部品１の全周のうちの一部に異常が生じている場合であっても、異常判定の検査が行える。作業者が回転機械部品１の異常を聴覚で感じているが、数回の検出では携帯情報端末器２の画面２１ａに異常発生の旨が表示されないことがある。そのような場合は、全周のうちの異常箇所の検査が行われていない恐れがあるため、検出の繰り返し回数を増やせばよい。これにより、その異常箇所の検査が行われて異常が検出され、画面２１ａに異常発生の旨が表示される。

　このようにサーバ６でデータ処理を行うが、前記携帯情報端末器２に、前記データ処理ソフトウェア４でデータ処理された処理結果を記憶し、携帯情報端末器２が複数の処理結果を比較するようにしても良い。この処理結果の比較は、端末側処理ソフトウェア３３により行う。

　また、このようにサーバ６でデータ処理を行うが、前記データ処理による処理結果として数値データを求め、この数値データが、前記型番毎に定められた閾値を超えるか、または閾値以内であっても経時的な処理結果の比較で定められた条件に該当するときは異常であると判断し、その判断結果を処理結果表示手段３６等で前記携帯情報端末器２の画面に表示させるようにしても良い。

　次に、この発明の第２の実施形態に係る携帯端末利用検査方法を、図４および図５と共に説明する。本実施形態において、第１の実施形態と共通する構成要素については、同一の参照符号を付して説明を省略する。この携帯端末利用振動検査システムは、回転機械部品等の検査対象物１を検査するシステムであって、汎用の携帯情報端末器２と、前記検査対象物１の振動を検出しその検出したデータである加速度データを前記携帯情報端末器２に入力する振動センサ３と、前記携帯情報端末器２にインターネット等の通信回線網７によって接続されるサーバ６Ａとを備える。検査対象物１は、例えば、転がり軸受や等速ボールジョイント等の転動体を備えた機械部品である。

　第１の実施形態に関連して述べたように、携帯情報端末器２は、スマートフォンやタブレット等であり、電話機能は必ずしも備えていなくても良いが、電話網，インターネット等の広域の通信回線網７を介してサーバ６Ａと接続可能で、かつアプリケーションプログラムをダウンロードしてインストール可能なＯＳ（オペレーションプログラム）９、および液晶表示装置等の画像を表示する画面表示装置２１を有する情報処理機器である。なお、スマートフォンは、上記の携帯情報端末器２の定義のうち、電話機能を備えたものを言う。前記通信回線網７は、移動体通信が行える回線網である。

　この携帯情報端末器２は、前記振動センサ３で検出した加速度データからなる検出データを前記サーバに送信する検出データ送信手段３５、およびその送信した検出データに対して前記サーバ６Ａから返送された処理結果を前記画面表示装置２１に表示させる処理結果表示手段３６を有する。

　図４において、前記振動センサ３は、振動の加速度を検出するセンサであり、振動ピックアップからなるセンサ本体３ａと、Ａ／Ｄ変換器３ｂとでなる。センサ本体３ａで検出して電圧値で出力されるアナログ信号の振動波形を示す加速度データは、Ａ／Ｄ変換器３ｂでディジタルデータに変換して携帯情報端末器２に取り込まれる。Ａ／Ｄ変換器３ｂはセンサ本体３ａと同じ筐体内に設けられていても良い。なお、振動センサ３は、マイクロＵＳＢ（接続インタフェース規格であるＵＳＢ規格の一つ）等の規格に適合した端子８ａを持つケーブル８により携帯情報端末器２に差し込み接続される。この他に、振動センサ３は、無線ＬＡＮ等で携帯情報端末器２と接続されるものであっても、また、メモリチップやＵＳＢメモリ等の着脱自在な記憶媒体（図示せず）が着脱可能で、この記憶媒体を介して携帯情報端末器２にデータの付与が可能なものあっても良い。

　サーバ６Ａは、携帯情報端末器２から送信された検出データである加速度データを受信する受信処理手段１３、その受信した検出データを処理するデータ処理手段４０、およびこのデータ処理手段４０の処理結果を前記携帯情報端末器２へ返送する処理結果返送手段３４を有する。データ処理手段４０は、データ処理ソフトウェアにより構成される。

　前記データ処理手段４０は、前記検出データである加速度データを積分して速度を求める速度計算部４ｂ、およびこの速度計算部４ｂで求めた速度を積分して変位を求める変位計算部４ｃを有し、前記速度計算部４ｂの前段に、前記検出データである加速度データから低周波成分をカットする低周波成分カット部４ａを有する。また、データ処理手段４０は、加速度実効値計算部４ｄ、速度実効値計算部４ｅ、および変位実効値演算部４ｆを有し、かつ前記変位計算部４ｃの後段に、検査対象物１の異常を診断する異常診断部４ｇを有する。異常診断部４ｇは必ずしも設けなくても良い。

　前記低周波成分カット部４ａは、例えば、前記検出データである加速度データを周波数分析し、その周波数分析の結果から低周波成分を除去し、この除去後の周波数分析結果を時間軸データによる加速度データに戻す処理を行う手段とされる。
　前記低周波成分カット部４ａは、ローカットフィルタであっても良い。

　加速度実効値計算部４ｄは、前記検出データである加速度データから、加速度の振動波形の実効値（「ＲＭＳ（Root Mean Square）値」とも称される。）を算出する。計算に用いる加速度データは、前記低周波成分カット部４ａの前段のデータであっても、後段の低周波成分がカットされたデータであっても良い。

　速度度実効値計算部４ｅは、速度計算部４ｂで計算された速度の振動波形の実効値を算出する。変位実効値計算部４ｆは、変位計算部４ｃで計算された変位の振動波形の実効値を算出する。

　前記処理結果返送手段３４は、具体的には、上記のようにデータ処理手段４０で求めた、速度、変位、加速度実効値、速度実効値、および変位実効値を、携帯情報端末器２へ返送する。異常診断部４ｇを設けた場合は、その診断結果も携帯情報端末器２へ返送する。

　この構成の検査システムを用いた振動検査につき説明する。振動センサ３は携帯情報端末器３に接続しておき、検査対象物１の加速度を振動センサ３により測定する。得られた加速度の検出データは、携帯情報端末器２からサーバ６Ａへ送信する。

　サーバ６Ａでは、受信した加速度の検出データを、データ処理手段４０により図５のように処理する。すなわち、前記検出データである加速度データから低周波成分カット部４ａ（図４参照）により低周波成分をカットする。この低周波成分をカットした加速度データを積分して速度のデータを積分により求め、この求められた速度のデータをさらに積分して変位のデータを得る。この場合に、加速度データから低周波成分をカットするようにしたため、加速度から速度および変位の積分を行うときに、発散を生じることなく計算が行える。そのため、速度および変位の計算を確実に行える。

　低周波成分カット部４ａは、ローカットフィルタまたは周波数分析を用いて低周波成分をカットするが、ローカットフィルタである場合は、低周波成分カット部が簡単な構成で済む。加速度データを周波数分析し、その周波数分析の結果から低周波成分を除去し、この除去後の周波数分析結果を時間軸データによる加速度データに戻す処理を行う構成である場合は、低周波成分のカットが確実，かつ適切に行える。

　このように、上記構成の検査システムによると、サーバ６Ａに、速度計算部４ｂ、およびこの速度計算部４ｂで求めた速度を積分して変位を求める変位計算部４ｃを有する。そのため、専用ＩＣを備えた振動センサを用いることなく、サーバ６Ａに設けられたソフトウェアを用いて速度および変位を求めることができる。

　また、振動センサ３の検出データを読み込み、その検出データをサーバ６Ａへ送って処理させる手段、およびサーバ６Ａから送信された処理結果を表示する手段として、汎用の携帯情報端末器２を用いる。そのため、専用センサ３を準備するだけで、その他は一般的に普及しているスマートフォンやタブレット等の携帯情報端末器２を用いて、振動の速度および変位まで求めることができる。

　前記サーバ６Ａの前記処理結果返送手段３４は、データ処理手段４０で求めた振動の速度および変位を携帯情報端末器２へ返信するため、計算用の専用ＩＣを持たない振動センサ３を用いながら、携帯情報端末器２を接続することで、あたかも専用ＩＣを持つ振動センサを用いた場合と同様に、振動の加速度だけでなく、速度および変位を、振動測定の現場で知ることができる。

　この実施形態の場合は、これらの他に、振動の加速度の実効値、振動の速度の実効値、および振動の変位の実効値についてもサーバ６Ａで計算し、携帯情報端末器２へ送信する。そのため、振動の加速度だけを検出する振動センサ３と携帯情報端末器２を用いて、回転機械部品等の検査対象物の診断に用いる各種のデータを得て、高精度な異常診断に供することができる。

　図６は、この発明の第３の実施形態に係る携帯端末利用振動検査システムを示す。この実施形態は、特に説明した事項の他は、第１の実施形態または第２の実施形態で説明した事項と同様である。したがって、第１の実施形態または第２の実施形態と共通する構成要素については、同一の参照符号を付して説明を省略する。

　この実施形態では、サーバ６Ａは、通信処理手段１１と、前記データ処理手段４０を構成するデータ処理ソフトウェアを記憶した記憶手段（図示せず）と、端末側処理ソフトウェア３３を記憶した記憶手段（図示せず）と、軸受等の検査対象物１の仕様についてのデータベース１６と、処理結果記憶手段３１とを備える。なお、以下の記載において、データ処理手段４０を前記データ処理ソフトウェアとして説明する場合もある。また、センサ３は、第１の実施形態では専用センサであるが、本実施形態では振動センサ３に限定される。さらに、第１の実施形態は回転機械部品１の検査システムに関するが、本実施形態では、回転機械部品に限定されない検査対象物１の検査システムに関する。

　通信処理手段１１は、第１の実施形態でそれぞれ説明した、通信制御手段１２と、要求応答手段３７と、処理結果返送手段３４と、課金処理手段１４とを有する。

　前記データ処理手段４０は、図４と共に説明した第２の実施形態のデータ処理手段４０と同様であるが、図６では、各実効値計算部は図示を省略した。

　データ処理手段４０の異常診断部４ｇは、第１の実施形態においてデータ処理ソフトウェアの機能として説明したように、異常の診断に関連する処理を行う。

　この第３の実施形態に係る検査方法は、第１の実施形態における検査方法と同様の方法であるが、第１の実施形態における検査方法における要件である、１回の検出時間が１回転未満の時間であって、この１回の検出データごとにサーバ６への送信が実行され、この検出と送信が繰り返される構成については、要件としていない。ただし、上記構成がこの第３の実施形態に組み込まれてもよい。

　なお、この第３の実施形態に係る検査方法では、サーバ６Ａが、処理結果を処理結果返送手段３４によって前記携帯情報端末器２に送り返す際に、データ処理手段４０で求めた、速度、変位、加速度実効値、速度実効値、および変位実効値を、携帯情報端末器２へ返送する。

　以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施形態を説明したが、当業者であれば、本件明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。したがって、そのような変更および修正は、請求の範囲から定まる発明の範囲内のものと解釈される。

１…回転機械部品
２…携帯情報端末器
３…専用センサ
４…データ処理ソフトウェア
５…仕様のデータ
６…サーバ
７…通信回線網
２１ａ…画面

Claims (14)

1. 　回転機械部品を検査する携帯端末利用検査システムであって、
   　前記回転機械部品の状況を検出する専用センサと、
   　前記専用センサが検出した状況についての検出データが供給される少なくとも１つの汎用の携帯情報端末器と、
   　前記少なくとも１つの携帯情報端末器に通信回線網によって接続されるサーバとを備え、
   　前記少なくとも１つの携帯情報端末器は、
   　　前記専用センサから供給された検出データを前記サーバへ送信し、このサーバでデータ処理されてサーバから送信された処理結果を画面に表示させるように構成され、
   　　前記専用センサによって供給される検出データの１回の検出時間は、検出対象である前記回転機械部品の１回転未満の時間であり、この１回の検出データごとに、前記サーバへの送信が実行され、
   　前記サーバは、
   　　データ処理ソフトウェアおよび前記回転機械部品の型番毎の仕様のデータを蓄積したデータベースを有し、前記データ処理ソフトウェアは、前記少なくとも１つの携帯情報端末器から送信された検出データおよび前記仕様のデータを用いてデータ処理し、処理結果を前記少なくとも１つの携帯情報端末器へ送信する手順を有し、
   　前記少なくとも１つの携帯情報端末器による前記サーバへの検出データの送信、ならびに前記サーバによるデータ処理および処理結果の前記少なくとも１つの携帯情報端末器への送信が、複数回繰り返される、
   　回転機械部品の携帯端末利用検査システム。
2. 　請求項１に記載の回転機械部品の携帯端末利用検査システムにおいて、
   　前記専用センサは振動または音響を検出するセンサであり、前記検出データは波形データであり、
   　前記サーバはこの波形データの周波数分析を行って前記回転機械部品の部位毎の異常有無の結果を前記少なくとも１つの携帯情報端末器へ送信し、
   　前記少なくとも１つの携帯情報端末器は前記部位毎の異常有無の結果を前記画面に表示させる、回転機械部品の携帯端末利用検査システム。
3. 　請求項１または請求項２に記載の回転機械部品の携帯端末利用検査システムにおいて、前記回転機械部品が転がり軸受である、回転機械部品の携帯端末利用検査システム。
4. 　請求項１から請求項３のいずれか１項に記載の回転機械部品の携帯端末利用検査システムにおいて、前記１回の検出時間が、前記回転機械部品の回転周期の１／４以下である、回転機械部品の携帯端末利用検査システム。
5. 　請求項１から請求項３のいずれか１項に記載の回転機械部品の携帯端末利用検査システムにおいて、前記１回の検出時間に前記複数回を乗じた時間が、前記回転機械部品の回転周期よりも長い、回転機械部品の携帯端末利用検査システム。
6. 　汎用の携帯情報端末器を用いて回転機械部品を検査する方法であって、
   （i）専用センサによって、前記回転機械部品の状況を検出することと、
   （ii）前記専用センサから、検出した状況についての検出データを前記携帯情報端末器に供給することであって、前記専用センサによって供給される検出データの１回の検出時間は、検査対象である前記回転機械部品の１回転未満の時間である、ことと、
   （iii）前記携帯情報端末器に供給された１回の検出データを、前記携帯情報端末器から前記サーバに１回で送信することと、
   （iv）前記サーバに備えられたデータ処理ソフトウェアにより、前記検出データと前記回転機械部品の型番毎の仕様のデータとを用いてデータ処理することと、
   （v）このデータ処理の結果である処理結果を前記サーバから前記携帯情報端末器に送信することと、
   （vi）前記処理結果を前記携帯情報端末器の画面に表示することと、
   　前記（i）から（vi）を複数回繰り返して、その複数回の前記携帯情報端末器の画面に表示された内容に基づいて、オペレータによる前記回転機械部品の１回の異常判断を可能にする、回転機械部品の携帯端末利用検査方法。
7. 　請求項６に記載の回転機械部品の携帯端末利用検査方法において、前記専用センサは振動または音響を検出するセンサであり、前記検出データは波形データであり、
   　前記（iv）は、前記波形データの周波数分析を行うことを含み、
   　前記（v）は、前記処理結果として、前記回転機械部品の部位毎の異常有無の結果を前記携帯情報端末器へ送信することを含み、
   　前記（vi）は、前記携帯情報端末器が前記部位毎の異常有無の結果を前記画面に表示させることを含む、回転機械部品の携帯端末利用検査方法。
8. 　請求項６または請求項７に記載の回転機械部品の携帯端末利用検査方法において、前記回転機械部品が転がり軸受である回転機械部品の携帯端末利用検査方法。
9. 　検査対象物を検査する携帯端末利用検査システムであって、
   　前記検査対象物の振動の加速度を検出する振動センサと、
   　前記振動センサが検出した加速度についての加速度データが供給される、少なくとも１つの汎用の携帯情報端末器と、
   　前記少なくとも１つの携帯情報端末器に通信回線網によって接続されるサーバとを備え、
   　前記少なくとも１つの携帯情報端末器は、
   　　前記振動センサで検出した加速度データからなる検出データを前記サーバに送信する検出データ送信手段、および
   　　前記送信した検出データに対して前記サーバから返送された処理結果を表示する処理結果表示手段を有し、
   　前記サーバは、
   　　前記少なくとも１つの携帯情報端末器から送信された検出データである加速度データを受信する受信処理手段、
   　　この受信した検出データを処理するデータ処理手段、および
   　　このデータ処理手段の処理結果を前記少なくとも１つの携帯情報端末器へ返送する処理結果返送手段を有し、
   　　前記データ処理手段は、
   　　　前記検出データである加速度データを積分して速度を求める速度計算部、および
   　　　この速度計算部で求めた速度を積分して変位を求める変位計算部を有する、携帯端末利用振動検査システム。
10. 　請求項９に記載の携帯端末利用振動検査システムにおいて、前記サーバの前記データ処理手段は、前記速度計算部の前段に、前記検出データである加速度データから低周波成分をカットする低周波成分カット部を有する携帯端末利用振動検査システム。
11. 　請求項１０に記載の携帯端末利用振動検査システムにおいて、前記低周波成分カット部は、前記検出データである加速度データを周波数分析し、その周波数分析の結果から低周波成分を除去し、この除去後の周波数分析結果を時間軸データによる加速度データに戻す処理を行う、携帯端末利用振動検査システム。
12. 　請求項９ないし請求項１１のいずれか１項に記載の携帯端末利用振動検査システムにおいて、前記サーバの前記データ処理手段は、前記加速度データから加速度の実効値を計算する加速度実効値計算部、前記速度計算部で求めた速度から速度の実効値を計算する速度実効値計算部、および前記変位計算部で求めた変位から変位の実効値を計算する変位実効値計算部のうちの少なくとも一つの実効値計算部を有し、前記処理結果返送手段は、前記少なくとも一つの実効値計算部で計算された実効値のうちのいずれか一つの実効値、前記速度計算部で求めた速度、および前記変位計算部で求めた変位を前記処理結果として前記少なくとも１つの携帯情報端末器へ返送する、携帯端末利用振動検査システム。
13. 　請求項９ないし請求項１２のいずれか１項に記載の携帯端末利用振動検査システムにおいて、前記検査対象物が回転機械部品である携帯端末利用振動検査システム。
14. 　請求項９ないし請求項１３のいずれか１項に記載の携帯端末利用振動検査システムに含まれる前記サーバ。

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