本発明は、容量性負荷であるプラズマ発生装置に対して、交流電圧を出力する電源装置に関するものである。ここで、当該プラズマ発生装置は、複数の放電セルが接続されることにより構成されており、高純度・高濃度のオゾンやラジカルガスを生成することができる。なお、当該プラズマ発生装置の容量性力率(負荷力率)は、たとえば50%以下である。また、対象とする電源装置の出力範囲としては、電源装置1台当たり、たとえば1kW~100kW範囲のものとする。プラズマ発生装置としての対象は、たとえば周波数10kHz~60kHz範囲の交流出力をする電源装置からの電源供給により、動作するものとする。
図1は、本発明に係る電源装置と容量性負荷であるプラズマ発生装置とを含むシステムの構成を示すブロック図である。
図1において、プラズマ発生装置5は、複数個の放電セルが並列接続されることにより構成された、容量性負荷である。前述したように、放電セルは、1対の電極を、放電空間が形成されるように対面して配置させることにより、構成される。ここで、当該放電空間に面するように、電極に対して、誘電体が配置されている。プラズマ発生装置5の代表例としては、オゾンガス発生装置(オゾナイザ)がある。一般的には、当該オゾン発生装置は、水処理分野でのオゾン殺菌や化学プラントでのオゾン漂白用途の産業・工業分野において、主に用いられてきた。
プラズマ発生装置5には、酸素ガス等の原料ガスが供給されるが、当該原料ガスの流量制御は、簡易な、ガス流量計とガス流量バルブとの組合せで実施されている。また、プラズマ発生装置5内のガス圧力は、当該装置5に設けたガス流出口の出力ガスバルブを用いることにより、調整されている。また、プラズマ発生装置5内に水等の冷媒を流すことで、放電セルで発生する熱を除去し、放電セルの温度を冷やしている。当該冷媒の流量は、水冷バルブ等により調整される。
以上のように、ガス流量、ガス圧力および冷媒流量等は、簡易なバルブ等で調整されているので、ガス流量、ガス圧力、冷媒流量の設定値に対する変動が大きくなる可能性がある。したがって、後述するように、プラズマ発生装置5が安定に継続運転できるためには、これらの物理量の変動を抑制することが重要で、かつ、これらの物理量を所定値内に管理維持することが重要である。
図1に示すように、プラズマ発生装置5には、本発明に係る電源装置10が接続されており、当該電源装置10から、たとえば1000V以上の高電圧の交流が、プラズマ発生装置5の各放電セルに印加される。放電セルの電極間に、誘電体および放電空間を介して、電圧が印加されることで、放電空間に高電界放電が発生する。当該放電により、放電空間に供給された原料ガスが励起される。そして、プラズマ光化学反応により、原料ガスから、オゾンガスやラジカルガス等のプラズマガスが生成される。
なお、電源装置10は、プラズマ発生装置5に対して、たとえば0~4000Wの可変の交流電力を出力できる。
以下、本発明に係る電源装置10をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
<実施の形態1>
本実施の形態に係る電源装置10は、負荷の短絡保護のために、放電セル毎にヒューズを配設する代わりに、インバータ出力部以降の負荷短絡に対する保護協調機能を有し、異常発生時にはインバータ出力電圧を、非常に短時間で遮断できるように構成されている。つまり、本実施の形態に係る電源装置10は、故障が生じた場合の対策を講じられている。さらに、本実施の形態に係る電源装置10では、故障が生じれば、故障箇所を表示する。当該表示により、ユーザは、故障から電源装置10を短時間で復旧させることができる。
図1に示すように、電源装置10は、直流電圧出力部20、インバータ3およびトランス4を含んでいる。
直流電圧出力部20は、商用交流電源を直流電圧に変換し、当該直流電圧を出力する直流コンバータ、または蓄積している直流電圧を出力する直流電池である。直流コンバータは、外部から単相もしくは三相の商用交流電源(たとえば、200V)を入力し、交流電圧を整流し、直流電圧に変換し、昇圧した直流電圧を出力する。また、直流電池は、多段に接続された電池セルから出力する直流電圧を、所定の直流電圧までに昇圧し、当該昇圧後の直流電圧を出力する。
直流電圧出力部20の後段には、インバータ3が接続されている。直流電圧出力部20から出力された直流電圧は、インバータ3において、高周波交流電圧に変換され、インバータ3は当該高周波交流電圧を出力する。
インバータ3の後段には、トランス4が接続されている。トランス4では、インバータ3から出力された高周波交流電圧を、プラズマ発生装置5において放電が誘起できる電圧まで昇圧する。そして、トランス4の後段にはプラズマ発生装置5が接続されており、トランス4は、当該昇圧後の高周波交流電圧を、容量性負荷であるプラズマ発生装置5に対して印加する。
また、電源装置10内には、インバータ3の動作を制御する制御部6が配設されている。当該制御部5の制御により、図1に示すシステムの安定した駆動および故障時の迅速な停止および故障時の迅速対応が可能となり、長時間安定に運転できる電源装置10が提供される。
また、電源装置10内には、インバータ3とトランス4との間において、短絡電流を抑制する限流リアクトルLcが配設されている。当該限流リアクトルLcにより、電源装置10は、インバータ3出力部以降の負荷が短絡しても、本電源装置10内部で、保護協調がとれ、電源装置10外の配電盤等に対して影響が及ぶことを防止でき、電源装置10の主要部品自身の故障も防止でき、すみやかに電源停止が行える。
従来のプラズマ発生装置においては、交流負荷用の電源装置のインバータ出力直後の負荷が容量性であるため、下記の理由により、電源装置内の主要部品が破損し、また放電セルも破損する可能性があった。つまり、その理由は、大きな突入電流(負荷コンデンサ電流)が流れること、放電セル面の1部分に放電が集中すること、および放電セル部以外での異常放電が生じることである。よって、特許文献3に係る技術では、各放電セルに保護用のヒューズを配設させていた。本発明では、当該保護用のヒューズの代わりに、インバータ3の出力側に電流抑制用の限流リアクトルLcを配設させている。また、インバータ3のパルス幅を制御することで、放電セル面の1部分に放電が集中しないように負荷電流管理及び負荷電圧管理している。これらにより、負荷短絡時の短絡電流を抑制し、長時間安定な交流電圧を負荷側に供給できるように、電源装置の出力を制御している。
さらに、電源装置10では、インバータ3の出力側に、短絡を検知する検出部31,32,41,42が配設されている。検出部31,32は、インバータ3とトランス4との間に配設されている。検出部31は、インバータ3からの出力電流Ioを検出し、検出部32は、インバータ3からの出力電圧Voを検出する。また、検出部41,42は、トランス4とプラズマ発生装置5との間に配設されている。検出部41は、トランス4から出力される負荷電流Idを検出し、検出部42は、トランス4から出力される負荷電圧Vd検出する。
検出部31,32,41,42は、常時検出動作を行っており、検出した結果を、信号として制御部6に送信している。そして、制御部6は、検出部31,32,41,42が短絡を検知したとき、インバータ3を停止させる。つまり、検出部31,32,41,42から送信される上記検出結果に基づいて、制御部6は、負荷の短絡状態を判断する。そして、当該短絡状態が検知されたとき、制御部6は、論理回路61を介して、ゲート遮断信号をインバータドライブ回路62に送り込む。これにより、インバータ3の出力を停止することができる。ここで、論理回路61には、駆動信号(f:インバータ3の駆動パルス周期1/f,τ:インバータ3の(出力)パルス幅)が、制御部6から送信されている。
上記により、負荷の短絡が生じると、マイクロ秒程度で、インバータ3の出力が停止される。さらに、制御部6は、短絡の原因となる異常箇所を表示(通知)して、交流負荷用の電源装置の安定停止機能性能を高めるようにしている。
具体的に、次の通りである。プラズマ発生装置5の正常時の負荷電圧Vdの特性は、通常、図2に示した負荷電流Idに依存している。つまり、負荷電圧Vd=f(Id)であり(図2の実線)、プラズマ発生装置5は、負荷電圧Vdを維持して駆動している。ところが、プラズマ発生装置5に異常が発生すると、プラズマ発生装置5において、負荷電圧Vdで運転が維持できなくなり、非常に低い電圧が検出される。
そこで、たとえば、負荷電圧Vdの約0.3倍以下となる、近似の所定電圧Vth=c×Id+d(c,d:定数であり、図2の一点鎖線)を、制御部6に設定する。ここで、トランス4とプラズマ発生装置5との間には、電流検出器41と電圧検出器42とが配設されており、各検出器41,42は、常時、プラズマ発生装置5に供給される電流値・電圧値を検知している。
電流検出器41が電流値Id1を検出し、当該電流値Id1検出時における電圧検出器42における電圧検出値がV1であったとする。制御部6は、各検出値Id1,V1を受信し、電圧検出値V1が、所定電圧Vth(=c×Id1+d)以下であると判断したとする。
この場合には、制御部6は、プラズマ発生装置5において異常が発生したと判断し(プラズマ発生装置5の入力側において短絡が生じたと判断し)、制御部6は、インバータ3の出力を停止するゲート遮断信号を発信する。論理回路61は、上記駆動信号(f,τ)と当該ゲート遮断信号とを受信し、論理結果であるゲート遮断信号を、インバータドライブ回路62に対して出力する。そして、当該ゲート遮断信号に基づいて、インバータ3の出力が停止される。上記場合において、制御部6はさらに、プラズマ発生装置5で異常が発生した旨を通知するために、表示装置(図示せず)において異常表示を行い、当該異常をユーザに通知する。
一方で、インバータ3から出力される電圧Voは、高圧のトランス4の1次側の電圧であり、この電圧Voを監視することで、トランス4を含めた出力負荷部の異常状態を検知することができる。
正常時のインバータ出力電圧Voの特性、通常、図3に示したインバータ出力電流Ioに依存している。つまり、負荷電圧Vo=f(Io)であり(図3の実線)、電源装置1oは、インバータ出力電圧Voを維持して駆動している。ところが、プラズマ発生装置5やトランス4において異常が発生すると、電源装置10は、インバータ出力電圧Voを維持できなくなり、非常に低い電圧が検出される。
そこで、たとえば、インバータ出力電圧Voの約0.3倍以下となる、近似の所定電圧V’th=a×Io+b(a,b:定数であり、図3の一点鎖線)を、制御部6に設定する。ここで、インバータ3とトランス4との間には、電流検出器31と電圧検出器32とが配設されており、各検出器31,32は、常時、インバータ3から出力される電流値・電圧値を検知している。
電流検出器31が電流値Io2を検出し、当該電流値Io2検出時における電圧検出器32における電圧検出値がV2であったとする。制御部6は、各検出値Id2,V2を受信し、電圧検出値V2が、所定電圧V’th(=a×Io2+b)以下であると判断したとする。
この場合には、制御部6は、トランス4および/またはプラズマ発生装置5において異常が発生したと判断し(インバータ3の出力側において短絡が生じたと判断し)、制御部6は、インバータ3の出力を停止するゲート遮断信号を発信する。論理回路61は、上記駆動信号(f,τ)と当該ゲート遮断信号とを受信し、論理結果であるゲート遮断信号を、インバータドライブ回路62に対して出力する。そして、当該ゲート遮断信号に基づいて、インバータ3の出力が停止される。上記場合において、制御部6はさらに、インバータ3の出力側において異常が発生した旨を通知するために、表示装置(図示せず)において異常表示を行い、当該異常をユーザに通知する。
このように、電源装置10では、インバータ3の出力部に限流リアクトルLcが配設されることにより、故障(短絡)が生じた場合の対策を講じることができる(つまり、短絡電流の抑制が可能となる)。20μH~数百μH程度の限流リアクトルLcは、インバータ3の出力部以降で短絡が生じた場合においても、非常に大きな短絡電流を抑制することになる。よって、当該限流リアクトルLcの配設は、電源装置10の故障だけでなく、電源装置10自信を、保護協調がとれた安全な電源にしている。
例えば、電源装置10の保護協調が不十分であれば、図1に示すシステムにおいて短絡等の故障が生じた場合、当該システムを設置している工場全体の配電盤のブレーカを停止する事態になる。しかしながら、本発明では、電源装置10が上記限流リアクトルLcを有するので、上記のような事態を防止することができる。
限流リアクトルLcは、インバータ3の出力電流値の2乗(=2・π・f・L・I2)で電気容量が増し、負荷が容量性の場合は、インバータ3の出力電圧に対し、限流リアクトルLcに印加する電圧は昇圧する。このため、限流リアクトルLcのリアクトル値Lが大きくなると、限流リアクトルLcの電気容量も非常に大きくなり、電源装置10外形全体が大きくなり、電源装置10の重量も重くなる。そこで、複数個の放電セルを有するプラズマ発生装置5に電源を供給する、本発明に係る電源装置10では、当該電源装置10に配設される限流リアクトルLcのリアクトル値Lは、電源装置10の小型化・軽量化の観点から、特に、20μH~70μH程度が望ましい。
さらに、電源装置10は、短絡発生時に、速断でインバータ3の出力を停止できる機能が設けられていることにより、早期復旧が可能となる。つまり、即時、電源装置10による電源供給が停止され、異常発生個所が通知されることにより、早期の電源供給再開が可能となる。
ところで、プラズマ発生装置5に供給する電力、原料ガスの供給ガス流量、プラズマ発生装置5内のガス圧力および放電セルの温度に応じて、プラズマ発生装置5の負荷状態も変動する。このことから、プラズマ発生装置5において、プラズマによってオゾン等を所望の発生量・発生濃度で安定的に発生させるためには、次のことも重要な制御である。つまり、各放電セルに供給される原料ガス70の供給ガス流量、プラズマ発生装置5内のガス圧力、放電セルを冷却するためにプラズマ発生装置5内に循環供給される冷媒78の冷媒流量、当該冷媒による温度、およびプラズマ発生装置5から出力されるガス74の濃度を、一定精度範囲内に収まるようにするように、電源装置側からプラズマ発生装置5を制御する。当該制御により、プラズマ発生装置5で発生するプラズマ状態を安定な領域で動作させることができ、結果的に、プラズマ発生装置5を安定的に稼動させることができる。
そこで、プラズマ発生装置5の配設側において、原料ガス70の供給ガス流量を測定・調整できるガス流量調整部71、放電セル内のガス圧力を測定・調整できるガス圧力調整部73、プラズマ発生装置5内に循環供給する冷媒78の温度を測定・調整できる冷媒温度調整部74、および当該冷媒の流量を測定・調整することができる冷媒流量調整部75およびプラズマ発生装置5で生成したガス74の濃度を測定ができる濃度検出器(モニタ)72が、設けられている(図1参照)。
ここで、ガス流量調整部71は、設定ガス流量に対して、たとえば±5%以内の精度(所望範囲以内)で、原料ガスの供給ガス流量を調整する。また、ガス圧力調整部73は、設定ガス圧力に対して、たとえば±5%以内の精度(所望範囲以内)で、放電セル内のガス圧力を調整する。また、冷媒温度調整部74は、設定冷媒温度に対して、たとえば±10%以内の精度(所望範囲以内)で、冷媒の温度を調整する。さらに、冷媒流量調整部75は、設定冷媒流量に対して、たとえば±10%以内の精度(所望範囲以内)で、冷媒の循環流量を調整する。プラズマ発生装置5で生成したガス74の濃度は、たとえば±2%以内の精度(所望範囲以内)で、測定される。プラズマ発生装置5と電源装置10との間における信号の送受信により、これらの範囲で、各項目を制御・管理することにより、プラズマ発生装置5から、所望のガス量・ガス濃度のガス74が出力される。
また、ガス流量調整部71に設定される供給ガス流量設定値、ガス流量調整部71によって測定された供給ガス流量値、ガス圧力調整部73に設定されるガス圧力設定値、ガス圧力調整部73によって測定されたガス圧力値、冷媒温度調整部74によって測定された冷媒温度、および冷媒流量調整部75に設定される冷媒の流量設定値、および冷媒流量調整部75によって測定された冷媒の流量値は各々、電源装置10の外部信号インターフェース63を介して、制御部6と随時送受信される。当該送受信により、電源装置10からプラズマ発生装置5へ出力する電力量を制御・管理する。これにより、プラズマ発生装置5では流量・濃度が安定したガス74が生成・出力され、かつ、プラズマ発生装置5における、上記各物理量を監視している。
ここで、ガス流量調整部71および冷媒流量調整部75として、たとえば、ガス流量を精度良くコントロール制御するマスフローコントローラ(MFC)を採用できる。また、ガス圧力調整部73として、たとえば、ガス圧力を常時一定制御するオートプレシャーコントローラ(APC)を採用できる。
なお、プラズマ発生装置5配設側において、生成されるオゾンガスのガス濃度および当該オゾンガスの流量を検出するガス検知器72も、設けられている(図1参照)。そして、当該ガス検知器72で検出された、ガス濃度およびガス流量も、外部信号インターフェース63を介して、制御部6へと随時送信される。
さて、本実施の形態では、制御部6は、原料ガスの供給ガス流量(ガス流量調整部71の設定値信号および検出値)が送受信され、設定ガス流量に対して上記所望範囲以内であるか否かを判断し、電源装置10は、流れているガス流量と生成されるガス74の濃度に応じた電力を出力するように、インバータ3のパルス幅またはパルス周波数を制御している。さらに、制御部6は、放電セル内の圧力(ガス圧力調整部73の設定値信号および検出値)が、設定ガス圧力に対して上記所望範囲以内であるか否かを判断する。さらに、制御部6は、冷媒の温度(冷媒温度調整部74の検出値)が、設定冷媒温度に対して上記所望範囲以内であるか否か判断する。さらに、制御部6は、冷媒の流量(冷媒流量調整部75の設定値信号および検出値)が、設定冷媒流量に対して上記所望範囲以内であるか否かを判断する。各検出信号(検出値)が所望範囲以外であれば、電源装置10自身が異常信号を発し、プラズマ発生装置5を即座に停止するか。または、検出信号(検出値)に応じて、出力電力をインバータ3のパルス幅制御等を行う。これにより、生成するガスの濃度が所望値範囲外にならないように、プラズマ発生装置5が安定運転できるように監視できる。
上記各判断において、制御部6は、原料ガスの供給ガス流量(ガス流量調整部71の検出値)が、設定ガス流量に対して上記所望範囲外であることを検知したとする。または、制御部6は、放電セル内の圧力(ガス圧力調整部73の検出値)が、設定ガス圧力に対して上記所望範囲外であることを検知したとする。または、制御部6は、冷媒の温度(冷媒温度調整部74の検出値)が、設定冷媒温度に対して上記所望範囲外であることを検知したとする。または、制御部6は、冷媒の流量(冷媒流量調整部75の検出値)が、設定冷媒流量に対して上記所望範囲外であることを検知したとする。
上記各ケースでは、制御部6は、論理回路61を介して、ゲート遮断信号602をインバータドライブ回路62に送り込む。これにより、インバータ3の即出力を停止することができる。ここで、論理回路61には、駆動信号(f:インバータ3の駆動パルス周期1/f,τ:インバータ3のパルス幅)601が、制御部6から送信されている。
上記により、プラズマ発生装置5における各物理量において異常が生じると、マイクロ秒程度で、インバータ3の出力を停止できる。さらに、制御部6は、プラズマ発生装置5において異常が発生していることを(どの物理量が異常であるかを)、表示装置(図示せず)に表示(通知)させる。これにより、プラズマ発生装置5において上記物理量が異常であることを、ユーザは即時に認識できる。
このように、本実施の形態では、プラズマ発生装置5での運転の環境条件を一定に保つようにするとともに、電源装置10は、プラズマ発生装置5において発生した流量・圧力・温度等の物理量に応じて最適な電力量を電源装置10が出力できるようにインバータ3を調整するとともに、当該物理量の異常を即座に検知して、異常であれば、電源装置10は、インバータ3の出力を停止させることができる。さらに、電源装置10は、物理量の異常発生時には、当該異常を通知しているので、ユーザは、即時にプラズマ発生装置5で発生した異常を認識できる。プラズマ発生装置5で、負荷の短絡要因となり得る、ガス流量の急減や放電セル内の圧力の急減や冷却水量の低下や冷却水温度上昇等の異常状態を、電源装置10側で監視する。これにより、プラズマ発生装置5自身の不安定要因を事前に見つけることができ、負荷の短絡異常や過電圧異常状態が起こらないように、電源装置10自身を制御する。
ここで、制御部6が、駆動信号601およびゲート遮断信号602を論理回路61に出力し、当該出力に応じて、インバータ3の出力波形がどのように変化するかを、図4を用いて説明する。図4の2,3段目では、2つのゲート信号のON-OFF信号が示されており、これらの2つの信号を合わせることで、1つの駆動信号601となる。
インバータ3を直接駆動する駆動信号(ゲート信号であり、ON-OFF信号)601を、制御部6は、論理回路61に対して送信する。当該駆動信号は、図4の2,3段目に図示している。そして、論理回路61は、当該駆動信号に基づいて、インバータ3の駆動パルス周期(1/f)とパルス幅τを、インバータ3を駆動するインバータドライブ回路62に指令する。そして、当該指令を受けたインバータドライブ回路62は、駆動パルス周期(1/f)とパルス幅τとにより、インバータ3を駆動させる(図4の1段目(最上段)参照)。
ここで、ゲート遮断信号(図4の最下段)602がH信号である場合(正常時)、上記動作を行うが、ゲート遮断信号602がL信号である場合(異常発生時)には、駆動信号の入力に係らず、論理回路61は、インバータ3を停止させる指令をインバータドライブ回路62に送信する。そして、当該指令を受けたインバータドライブ回路62は、インバータ3の出力を停止する。なお、ゲート遮断信号602がL信号なら、上述したように、マイクロ秒程度で、インバータ3の出力を停止することができる。
また、正常時においては、インバータ3からは、駆動パルス周期(1/f)とパルス幅τの波形が出力され、当該波形に基づいて、電源装置10がプラズマ発生装置5に対して、高周波・高電圧の電力を供給する。そして、プラズマ発生装置5においては、供給ガス流量、ガス圧力、冷媒流量および冷媒温度が所望範囲以内であり、安定したプラズマ発生装置5の運転が可能となる。
プラズマ発生装置5と電源装置10との間において、供給ガス流量、ガス圧力、冷媒流量および冷媒温度等の設定信号および検出信号値が送受信されている。これにより、プラズマ発生装置5の安定運転が可能となる。つまり、最適な電力をプラズマ発生装置5に供給できるように、電源装置10は、設定信号および検出信号値に応じて、インバータ3のパルス幅・パルス周波数を、フォワード制御・フィードバック制御をしている。
<実施の形態2>
本実施の形態に係る電源装置10は、後述から分かるように、負荷変動に強い並列共振を主体にした構成を採用している。
プラズマ発生装置5のような容量性の負荷の場合、電圧波形位相に対して電流位相がほぼ90°程度進む。つまり、プラズマ発生装置5に供給される電気容量は非常に大きいが、有効電力が電気容量の1/5~1/10程度(負荷力率が約10%~20%程度)での状態でしか、安定に、プラズマ発生装置5にエネルギーを投入することは出来ない。そのため、電気容量の非常に大きい電源装置10が要求されていた。そこで、誘導性のリアクトルを設けることで、電源装置10での負荷力率の力率改善を行う(プラズマ発生装置5と電源装置10との間において、共振状態を作り出す)。
本実施の形態では、実施の形態1で説明した電源装置10において、トランス4は、2次側励磁インダクタンスは、漏れインダクタンスの5倍よりも大きい、高機能トランスである。共振周波数((1)式参照)がプラズマ発生装置5の動作周波数域となるように、プラズマ発生装置5の静電容量値と動作周波数を(1)式に代入し、インダクタンス値を算出する。当該算出したインダクタンス値がトランス4の2次側励磁インダクタンス、漏れインダクタンスを合成したインダクタンス値(以後、トランスインダクタンス値と呼ぶ)になるようにする。これにより、本実施の形態に係るトランス4は、従来の昇圧・絶縁機能を有するだけでなく、負荷と共振機能も兼ね備えた、プラズマ発生装置5専用の高機能トランスとなる。以下、本実施の形態について、詳細に説明する。
図5は、プラズマ発生装置5における、放電セルを複数個並列接続した等価回路図である。また、図6は、図5に示した複数個の放電セルを合成した等価回路図である。図6に示す等価回路を有するプラズマ発生装置5に対して、電源装置10が、負荷電圧Vd0を印加して、当該プラズマ発生装置5に負荷電流Id0を流しても、実際に各放電セルに流れる電流は、下記の理由で変動する。
つまり、図5で示すように、放電セルを複数個並列接続した場合、配線の長さ部分には、配線で作る配線インダクタンスLNがある。したがって、プラズマ発生装置5に対して負荷電圧Vd0を印加しても、各放電セルに印加される電圧は、配線に流れる電流と配線インダクタンスLNによる電圧降下作用(もしくは電圧昇圧作用)とにより、ばらつく。これにより、各放電セルには均等な電流が流れない。なお、複数個の放電セルを並列接続した場合には、各放電セルに投入される電力(電流)の変動が大きくなる。
つまり、図5に示した各電流値Id0,Id1,Id2・・・Idnにおいて、Id0/n(n:放電セルの数)≠Id1≠Id2・・・≠Idn、の関係となる。
さらに、上式に示した放電セル毎に流れる放電セル電流(Id1,Id2・・・Idn)の変動幅は、放電セル毎の製造精度および設定条件(原料ガスの供給ガス流量の設定値、放電セルのガス圧の設定値、冷媒の供給量の設定値および冷媒の温度の設定値等)からばらつき等に大きく依存している。したがって、複数個の放電セルを並列接続して構成されるプラズマ発生装置では、放電セル毎の製造精度および設定条件以外に、配線インダクタンスLNにより、各放電セルに流れる各放電セル電流が大きく変動していた。
また、図6に示した等価回路(プラズマ発生装置5)に負荷電圧Vd0を印加した場合、プラズマ発生装置5に投入されるプラズマ負荷電力Pwは、配線インダクタンスLNを除いた、放電セル自身の各定数で示す次式のようになる。
Pw=α・V*・Ib0=4・Cg0・V*・f・{20.5・Vd0-(1+Ca0/Cg0)・V*}=[A・F(Vd0)+B]・f (2)式
ここで、αは、放電空間でのプラズマ放電通流率(<1.0)である。V*は、放電維持電圧である。Ib0は、図6に示すように、トータル放電プラズマ電流である。Cg0は、図6に示すように、各放電セルにおける誘電体部分の静電容量値を合成した誘電体静電容量値である。fは、プラズマ発生装置5に印加される高周波交流電圧の動作周波数(kHz)である。Ca0は、図6に示すように、各放電セルにおける放電空間部分の静電容量値を合成した放電空間静電容量値である。F(Vd0)は、放電セル間に印加する負荷電圧Vd0に依存した関数値であることを示す。そして、AおよびBは、プラズマ発生装置5によって決定される定数である。
プラズマ負荷電力Pwは、上記定数A,Bおよび周波数fが決まれば、放電セル自身に印加するプラズマ負荷電圧Vd0(kV)に対応して一義的に決まる。つまり、Pwに関する上式により、図7に示すように、プラズマ負荷電力Pw(W)は、プラズマ負荷電圧Vd0(kV)に対し、直線的に増加する特性を示す。
ここで、図7において、左の縦軸は、プラズマ負荷電力Pw(W)であり、右の縦軸は、プラズマ発生装置5に電源を供給する電源装置10が備えるインバータ3のインバータ出力(%)であり、横軸は、プラズマ負荷電圧Vd0(kV)である。また、図7において、特性2003は、周波数f=15.5kHzで一定の場合であり、特性2004は、周波数f=16.0kHzで一定の場合であり、特性2005は、周波数f=16.5kHzで一定の場合である。
次に、図6で示したプラズマ発生装置5に印加するプラズマ負荷電圧Vd0の位相ベクトル、および当該プラズマ発生装置5に流れるプラズマ負荷Id0の位相ベクトルについて検証すると、図8のようになる。但し、図8の位相ベクトルは、等価回路の放電空間に印加される放電維持電圧V*と放電空間に流れる電流(放電電流)Ib0との、位相ベクトルを基準にして、放電セルの各部に印加している電圧・電流位相をベクトルで表現したものでる。
図8において、図6の等価回路で示した放電空間では、誘電体コンデンサCg0間に帯電する電荷Qが、放電空間での放電維持電圧V*を超えると放電し、電荷Qが放電すると、即座に放電空間での放電は停止する。そのため、放電空間においては、一定の放電維持電圧V*での間欠放電が、電極面全体で繰り返される。
放電空間で生じる放電部での放電インピーダンスは、純粋の抵抗負荷Rp0(図6参照)と見なされるため、放電空間に流れる電流(放電電流)Ib0と、放電電圧に相当する放電維持電圧V*との間で位相差は無く、電流Ib0は放電維持電圧V*と同位相(0相)である。
図8のベクトル図は、位相0°状態を水平ベクトルで示し、位相が90°進んだベクトルを上方の垂直方向で示し、逆に位相が90°遅れたベクトル状態を下方の垂直方向で定義している。
図8のベクトル図で、位相0°で、印加電圧α・V*で、放電電流Ib0が流れると、放電空間で放電していない空間(1-α)においては(放電空間での静電容量Ca0には)、トータルコンデンサ電流Ia0が流れる。ここで、トータルコンデンサ電流Ia0は、位相0の放電電流Ib0に対し、位相が90°進んでいる。次に、トータル負荷電流Id0は図6の等価回路が示すように、上記位相が0°の放電電流Ib0と位相が90°進んだトータルコンデンサ電流Ia0とのベクトル合成したものになり、図8に示す位相のトータル負荷電流Id0が流れる。
次に、放電セル内の誘電体のトータル静電容量Cg0間にかかる電圧Vcgの位相は、ベクトル表示したトータル負荷電流Id0に対して、90°遅れた位相であると定義される。したがって、図8に示すように位相の電圧Vcgが印加される。
さらに、放電セルに印加するトータル負荷電圧Vd0の位相は、誘電体のトータル静電容量Cg0間にかかる電圧Vcgと放電空間にかかる放電維持電圧V*との合成ベクトルであると定義される。したがって、図8に示すように位相のトータル負荷電圧Vd0が印加される。
したがって、図8により、放電セル間にかかるトータル負荷電圧Vd0の位相に対する、トータル負荷電流Id0の位相差は、φ°の進み負荷(容量性)になっているということが、明白になる。図8から、放電電力Pw(=α・V*・Ib0)に対する放電セルに必要な供給電力容量PQは、トータル負荷電流Id0とトータル負荷電圧Vd0とのベクトル合成で表せ、次式のようになる。
PQ=Id0・Vd0 (kVA)
放電電力Pwに対して、供給電力容量PQは非常に大きな値になる。
また、図6で示したプラズマ発生装置5での負荷力率(または、プラズマ負荷力率)ηd(=Pw/PQ×100)は、数十%程度で非常低い進み負荷となっている。そのため、容量性負荷であるプラズマ発生装置5では、所定の放電電力Pwを供給するために、プラズマ発生装置5の出力容量は非常に大きくなり、装置が大きくなっていた。当該問題を解決する手段が、負荷の力率を改善する力率改善手段である。
発明者らは、直列共振方式の力率改善手段および並列共振方式の力率改善手段とについて調べて、容量性負荷であるプラズマ発生装置5を安定的に運転できる共振方式を見出した。つまり、複数個の放電セルを並列接続したプラズマ発生装置5において、放電セル毎に投入する放電電力量の変動ができるだけ小さくして、力率改善が可能な共振方式を、発明者らは見出した。以下、具体的に説明がなされる。
図9は、直列共振方式の力率改善手段を図示した図である。図9において、図6で示したプラズマ発生装置5に、実施の形態1で説明した電源装置10が接続されている。そして、当該電源装置10のトランス4の出力部に、直列に、負荷共振用変成器7が配設されている。さらに、図10は、直列共振方式を採用した場合のベクトル特性を示す図である。
また、図11は、並列共振方式の力率改善手段を図示した図である。図11において、図6で示したプラズマ発生装置5に、実施の形態1で説明した電源装置10が接続されている。そして、当該電源装置10のトランス4の出力部に、並列に、負荷共振用変成器7が配設されている。さらに、図12は、並列共振方式を採用した場合のベクトル特性を示す図である。
直列共振方式を採用した電源装置10においては、図9で示すように、トランス4に対し直列に、負荷共振用変成器7としてのリアクトルLrが設けられている。負荷が容量性であり、トータル負荷電圧Vd0の位相とトータル負荷電流Id0の位相とが異なる場合、図9に示すように、電源装置10から供給される電流Isだけでなく、無効電流(反射電流)Icがトランス4を介して還流する(図9の破線矢印参照)。ここで、無効電流Icは、プラズマ発生装置(負荷)5側から電源装置10側へ戻る流れの電流である。
プラズマ発生装置5に電源装置10から供給される電流Isに無効電流Icが重畳されたトータル負荷電流Id0(=Is+Ic)が、負荷に対して直列に配置したリアクトルLrを介して流れる。そして、リアクトルLrにトータル負荷電流Id0が流れることにより、リアクトルLr間に、リアクトル電圧VLが誘起される。当該リアクトル電圧VLは、当然ながら、図8で示したトータル負荷電流Id0に対して、90°進んだ電圧になる。つまり、トータル負荷電圧Vd0のベクトル電圧から、リアクトル電圧VLのベクトル電圧を差し引いたベクトル電圧Vsが、トランス4から出力されるトランス電圧Vsになる。
上記直列共振方式を採用した電源装置10におけるベクトル特性を示す図が図10である。つまり、トランス4から出力するトータル負荷電流Id0と、トランス4の二次電圧であるトランス電圧Vsとは、同位相となっており、トランス4の出力部での電力容量(=Id0・Vs)は、プラズマ負荷電力Pwの値近くまで改善される(つまり、トランス4の出力部での力率ηが、100%近くまで改善される)。
直列共振方式においては、トランス電圧Vsが、負荷に印加するトータル負荷電圧Vd0に対し、非常に小さい値を示すことから、直列共振方式は電源出力に対し、電圧増幅する共振方式であることが判る。言い換えると、トランス電圧Vsが、放電セル部に対して直列になっている共振用リアクトルLrにより、負荷電圧Vdまで増幅されることになる。この直列共振方式においては、図5のように、複数個の放電セルを並列に接続して構成すると、各放電セル間の配線インダクタンスLNが直列共振機能の1部の役目を果たすことになる。そうすると、複数個の放電セルを並列に接続すると、配線インダクタンスLNの大きさの違いによって、電圧増幅度が変わる。これにより、放電セル間にかかる負荷電圧Vdが大きく変動することになり、各放電セルに注入される電力量も大きく変動する要素を内包している。
一方、並列共振方式を採用した電源装置10においては、図11で示すように、トランス4に対し並列に、負荷共振用変成器7としてのリアクトルLrが設けられている。負荷が容量性であり、トータル負荷電圧Vd0の位相とトータル負荷電流Id0の位相とが異なる場合、図11に示すように、電源装置10から供給される電流Isだけでなく、無効電流(反射電流)Icが、共振用のリアクトルLrを介して還流する(図11の破線矢印参照)。ここで、無効電流Icは、プラズマ発生装置(負荷)5側から電源装置10側へ戻る流れの電流である。
プラズマ発生装置5に電源装置10から供給される電流Isに無効電流Icが重畳されたトータル負荷電流Id0(=Is+Ic)が、電源装置10側からプラズマ発生装置5に向けて流れる。ここで、並列共振方式では、無効電流Icのみが、トランス4に対して並列に配置したリアクトルLrを流れる。並列に接続されたリアクトルLrに流れる無効電流Icは、負荷側からの反射電流であるため、当該無効電流Icは、負荷側に印加されたトータル負荷電圧Vd0に対し、90°遅れた位相の電流となる。つまり、トータル負荷電流Id0と無効電流Icとを合成したベクトル電流が、トランス4から出力される電流Isとなる。
上記並列共振方式を採用した電源装置10におけるベクトル特性を示す図が図12である。つまり、トランス4から出力するトータル負荷電圧Vd0と、トランス4からの出力電流である電流Isとは、同位相となっており、トランス4の出力部での電力容量(=Vd0・Is)は、プラズマ負荷電力Pwの値近くまで改善される(つまり、トランス4の出力部での力率ηが、100%近くまで改善される)。
並列共振方式においては、トランス4から出力電流Isが、負荷に流れるトータル負荷電流Id0に対し、非常に小さい値を示すことから、並列共振方式は電源出力に対し、電流増幅する共振方式であることが判る。
さて、発明者らは、直列共振方式を採用した電源装置10が、複数の放電セルを接続したプラズマ発生装置5に電源を供給する場合と、並列共振方式を採用した電源装置10が、複数の放電セルを接続したプラズマ発生装置5に電源を供給する場合とを検討し、どちらがより安定に当該プラズマ発生装置5を駆動させることができるかの実証試験を実施した。
その結果、図9に示した直列共振方式を採用した電源装置10が上記プラズマ発生装置5に電力を供給した場合には、以下の要因により、負荷の安定運転が損なわれたり、1部の放電セルが破損したりすることが明らかになった。
つまり、図5に示したように、各放電セルを並列接続すると、負荷の合成インピーダンスおよびトータル放電プラズマ抵抗Rp0が、n(放電セルの数)に反比例して小さくなり、負荷電流が、nに比例して大きくなり、トータル負荷電流Id0の変動幅が大きくなる。さらには、各放電セル間の接続配線部分での配線インダクタンス値LNの無視ができなくなる。そうすると、直列共振方式を主体にした共振方式であれば、配線インダクタンス値LNが、電源装置10において直列に配した負荷共振用変成器7(リアクトルLr)の電圧増幅機能の役目をする。これにより、電圧増幅した負荷電圧Vdの変動幅が助長され、(2)式に示す放電セル自身に印加される負荷電圧Vdによってプラズマ負荷電力Pwが決まる。これにより、各放電セル部に供給する電力容量変動が大きくなり、放電セル部に大きな電力容量が注入された放電セルが破損し得る。
これに対して、図11に示した並列共振方式を採用した電源装置10が上記プラズマ発生装置5に電力を供給した場合には、以下の要因により、負荷の安定運転が可能なことが明らかになった。
並列共振方式を主体にした共振方式であれば、負荷部で、電圧増幅機能を下げ、電流増幅が主体となる。このため、放電セルにかかる負荷電圧Vdは、ほとんどトランス電圧Vsに等しくなる。よって、複数個の放電セルを配設することで、配線インダクタンス値LNが大きく変動しても、その配線インダクタンス値LNによる電圧増幅度は、直列共振方式の電圧増幅度に比べ、非常に小さい値になる。このことから、各放電セルに印加する負荷電圧Vdの変動幅は非常に小さく抑えられる。結果として、各放電セル部に供給する電力容量変動が小さく、均等に電力が供給され、1部の放電セルに大きな電力注入が集中して、放電セルが破損させるなどの要因を解消できる。
つまり、トータル負荷電圧Vd0が一定で、トランス4に対して並列に設けたリアクトルLrに印加されるので、負荷側から反射された無効電流Icを利用した電流増幅共振方式となる。よって、各放電セル間の接続配線部分での配線インダクタンス値LNによる電圧共振が、行われない条件となる。このため、配線インダクタンス値LNと電源装置10に設けた負荷共振用変成器7(リアクトルLr)との相互干渉はほとんどなく、各放電セルに印加される負荷電圧Vdはほぼ一定になる。このように、負荷電圧Vdの変動が小さいので、(2)式のプラズマ負荷電力Pwによって決まる各放電セル部に供給する電力容量の変動も小さくなることが、要因である。
ここで、実際の電源装置10では、トランス4等の構成上、直列共振方式と並列共振方式とが共存することも分かった。そこで、発明者らは、プラズマ発生装置5の安定運転の観点から、二つの共振割合をどれぐらいの比率が適切であるかを試験した。
そして、当該試験の結果、電源装置10の出力部分で、直列リアクトル成分に対し、並列リアクトル成分が約5倍より大きくなるように構成することが、好適であることが分かった。また、トランス4の内部に対して、負荷共振用変成器7(つまり、トランス4における合成共振リアクトルLr)の機能を設けるように、当該トランス4を設計し、本発明に係るトランス4を、プラズマ発生装置5に対する専用トランス(高機能トランス)にする。
本実施の形態では、上記共振割合条件を満たすように(つまり、並列共振がメインとなるように)、電源装置10を提供する。より具体的には、上記共振割合条件を満たすように、負荷共振用変成器の機能をトランス4に持たせた、新規なトランス4を、本実施の形態において提供する。図13、当該新規のトランス(高機能トランス)4の等価回路構成を示す図である。また、図14は、トランス4の性能特性を示す図である。
ここで、図14において、左縦軸は、励磁インダクタンス(任意単位)であり、右縦軸は、漏れインダクタンス(任意単位)であり、横軸は、トランスギャップ長(mm)である。また、2001は、トランス4の2次側で換算した励磁インダクタンスLs2特性であり、2002は、トランス4の2次側で換算した漏れインダクタンス特性Ld2である。
図13には、実施の形態1で説明した限流リアクトルLcに加え、新規のトランス4の等価回路が図示されている。Ls1は、1次側トランスコイルでの、磁界を形成するための励磁インダクタンス成分である。また、Ld2は、1次側コイルと2次側コイルとの磁束の結合損失分から想定できる漏れインダクタンス成分である。
通常、トランスの2次側に接続される負荷としては、モータ等の誘導性負荷、熱電機器等の抵抗負荷、または本発明のようなプラズマ発生装置等の容量性負荷であり、一般的に、トランスは、前記さまざまな負荷に対応するように設計されている。つまり、通常のトランスでは、負荷からの無効(反射)電流Icのない条件で最適設計され、製作されている。よって、このような通常のトランスでは、1次側から供給される励磁するための1次電流をできるだけ小さくするため、励磁インダクタンス成分Ls1は、できるだけ大きくなるように設計し、また1次側コイルと2次側コイルとの磁界結合度を増すように、漏れインダクタンス成分Ld2を小さくするように設計していた。
したがって、通常トランスでは、トランス磁性体コアギャップ(トランスギャップ長、以下単にギャップ長と称することもある)が、0.2mm以下である領域3001の範囲以内となるように設計されていた(図14参照)。
上記のように、従来の通常トランスでは、励磁インダクタンスは、1次側で形成するインダクタンスLs1であった。これに対して、本発明に係る新規のトランス4においては、上述した無効電流Icがトランス4の2次側に流れることに注目し、当該無効電流Icによって2次側トランス4で形成される、2次側励磁インダクタンスLs2に着目した設計を行う。
本実施の形態では、トランス4の2次側励磁インダクタンスLs2と負荷側のプラズマ発生装置5とにおいて、並列共振作用を持たせる。これにより、負荷共振用変成器7の機能をトランス4内に設けることができ、トランス4の2次側において、負荷との並列共振を行える。
さらには、本実施の形態に係る新規のトランス4では、上記したように、並列共振を主体にしている。つまり、トランス4の2次側の励磁インダクタンスLs2とプラズマ発生装置5のトータル静電容量C0との関係で生じる並列共振の度合を、インバータ3の出力部に配設された限流リアクトルLcとトランス4の漏れインダクタンスLd2とプラズマ発生装置5のトータル静電容量C0との関係で生じる直列共振の度合よりも、大きくする。言い換えると、当該トランス4では、2次側の励磁インダクタンスLs2に比べ、漏れインダクタンス成分Ld2を出来るだけ小さくする。具体的には、図13において、次式の関係を満たすように設計されたトランス4が、本実施の形態に係る新規のトランス4である。
2次側の励磁インダクタンスLs2>5・漏れインダクタンス成分Ld2
つまり、本実施の形態に係る新規のトランス4では、2次側励磁インダクタンスLs2は、漏れインダクタンスLd2の5倍よりも大きい。また、共振周波数((1)式)がプラズマ発生装置5の動作周波数域となるように、負荷の静電容量値と動作周波数を(1)式に代入し、インダクタンス値を算出する。算出したインダクタンス値が、トランスインダクタンス値になるようにした。
力率改善のために上記要件を満たすトランス4を用いることで、上記無効電流の大部分を、トランス4の2次側励磁インダクタンスに還流させることができる。
上記要件を有するトランス4では、2次側励磁インダクタンスLs2を調整する。つまり、トランス4のギャップ長を、通常用いたトランスのギャップ長よりも広げる必要がある。発明者らの考察の結果、本実施の形態に係る新規のトランス4では、ギャップ長を3.5mm以下で用いることが好適であることが分かった。また、実際のトランス4の使用を考慮すると、トランス4のギャップ長は1mm以上が好適であることも分かった。つまり、本実施の形態に係る新規のトランス4では、図14に示すように、領域3002の範囲以内でギャップ長を設定することが好適である。
ここで、2次側の励磁インダクタンスLs2>5・漏れインダクタンス成分Ld2、の関係を満たすなら、トランス4のギャップ長は、3.5mmより大きくても良い(図14参照)。しかしながら、トランス4のギャップ長を3.5mmより大きくすると、ギャップ間への漏れ磁束が増大し、この漏れ磁束により電源装置10内の部品が発熱するなどの問題が生じる可能性がある。そこで、良好な電源装置10の使用の観点から、ギャップ長を3.5mm以下に設定することが望ましい。
また、トランス4のギャップ長を1mmより小さくして、励磁インダクタンスLs2を大きくし、(1)式における共振周波数を一定とすると、電源装置10の電気容量が小さくなる。しかし、電気容量が小さい電源装置10と負荷とを共振させたとしても、電源装置10のコンパクト化や低価格化にはあまり寄与しない。そこで、前記問題に鑑みて、本発明のトランス4のギャップ長を1.0mm以上に設定することが望ましい。これにより、電源装置10の入力容量は1kW以上となる。
なお、本実施の形態では、回路計算から、電源装置10の動作交流周波数(共振周波数)fcは、正確には、限流リアクトルLcのインダクタンス成分と、本実施の形態に係る新規のトランス4のインダクタンス成分(漏れインダクタンスおよび励磁インダクタンス等)と、プラズマ発生装置5のトータル静電容量C0とから求められる。電源装置10は、当該求めたfcを有する高周波・高電圧を、高機能トランス4を介して、プラズマ発生装置5に対して出力する。具体的に、制御部6は、インバータ3が共振周波数fcになり、高周波電圧が出力されるように、当該インバータ3を制御する(より具体的には、インバータ3のパルス周期を設定し、インバータ3のパルス幅で出力電圧を制御する)。
ここで、当該fcは、上記式(1)から算出される。ここで、式(1)のLは、上記限流リアクトルLcのインダクタンス成分と、トランス4のインダクタンス成分とを合成した合成インダクタンスL0である。換言すれば、式(1)のLは、インバータ3の出力側以降における電源装置10の合成インダクタンスL0である。また、式(1)のCは、プラズマ発生装置5の合成静電容量C0である。
以上のように、本実施の形態では、トランス4では、2次側励磁インダクタンスLs2は、漏れインダクタンスLd2の5倍よりも大きい。したがって、電源装置10は、並列共振を主体にした力率が改善できるようになり、電源装置10のコンパクト化および低コスト化と共に、安定な共振動作が行える。したがって、当該電源装置10からの電力供給を受けたプラズマ発生装置5は、非常に安定な動作が実施可能となる。
なお、本実施の形態では、実施の形態1で説明した、限流リアクトルLcおよび異常発生時停止機能および異常通知機能を有する電源装置10に対して、高機能トランス4において、2次側励磁インダクタンスLs2を、漏れインダクタンスLd2の5倍よりも大きくする場合について説明した。
しかし、実施の形態1で説明した、限流リアクトルLcおよび異常発生時停止機能および異常通知機能を有さない電源装置10に対しても、トランス4において、2次側励磁インダクタンスLs2を、漏れインダクタンスLd2の5倍よりも大きくする形態も採用でき、同様に、安定な並列共振動作が行えるという効果が奏される。また、同様に、限流リアクトルLcが配設されており、異常発生時停止機能および異常通知機能を有さない電源装置10に対しても、トランス4において、2次側励磁インダクタンスLs2を、漏れインダクタンスLd2の5倍よりも大きくする形態も採用できる。
<実施の形態3>
実施の形態1では、インバータ3の出力部とトランス4の入力部と間に、限流リアクトルLcを配設する場合について説明を行った(図1参照)。本実施の形態では、当該限流リアクトルLcの機能を、高機能トランス4の1次側コイルのインダクタンスが兼ね備える構成にする。これにより、限流リアクトルLcの物理的部品を省略でき、電源装置10は、直流電圧出力部20、インバータ部および高機能トランス4のみにより構成される主回路で構築できる。以下、本実施の形態に係るトランス4について説明する。
限流リアクトルLcの機能をトランス4が有するためには、限流リアクトルLcのインダクタンス成分を、トランス4の1次側漏れインダクタンスおよび/または1次側励磁インダクタンスが有するようにする。つまり、トランス4の1次側コイルの巻数を調整し、1次側漏れインダクタンスおよび/または1次側励磁インダクタンスが、限流リアクトル成分を兼ねるようにする。
たとえば、トランス4の1次側コイルで発生する磁束φ0の1部である磁束φLをリークさせ、トランス4の2次側コイルに鎖交する磁束φ2を小さくすれば、トランス4の1次側漏れインダクタンスが大きくなる。当該1次側漏れインダクタンスの増加分を、限流リアクトル成分となるように、1次側のコイルの巻数を調整する。
このように、本実施の形態では、トランス4が限流リアクトルの機能を有している。したがって、限流リアクトルLcの物理的部品を省略でき、トランス4のみで、短絡電流を抑制することができる。
ここで、実施の形態1で説明したトランス4が限流リアクトルの機能を有するようにしても良く、実施の形態2で説明したトランス4が限流リアクトルの機能を有するようにしても良い。
<実施の形態4>
本実施の形態では、実施の形態2で説明した電源装置10の容量アップに関するものである。大容量化されたプラズマ発生装置5に電力を供給する場合に、本実施の形態に係る電源装置10は有益である。
上記したように、電源装置に搭載される一般のトランスについては、誘導性負荷、抵抗負荷、容量性負荷のさまざまな負荷に対応した仕様となるように、設計されている。よって、電源駆動において負荷からの電圧反射(無効電流)を考慮せず、またトランス自身の熱損失が最小になることに重点をおいて、従来のトランスは設計されている。
つまり、トランスの1次側の励磁インピーダンスが大きくなるように、トランスの励磁インダクタンス値は出来るだけ大きく、トランスの漏れインダクタンスを小さくして、電気的ロスを抑制した状態で交流電力を供給できるように、トランスコアー条件が決まっている。よって、従来のトランスでは、ギャップ長をゼロもしくは極小となるように、設計されていた(図14の領域3001参照)。
このようなトランスを並列接続して運転(以下、(トランスの)並列運転と称する)した場合には、下記の理由により、トランス毎に流れる電流のばらつきも大きくなる欠点を有していた。そのため、小さい容量のトランスを複数個並列接続された電源装置はなく、1台のトランス自身を大きくことで、電源装置の電気容量アップが図られていた。
つまり、通常のトランスは、さまざまな負荷に対応できる万能なトランスとして仕様設計されている。そのため、通常のトランスは、トランスの磁束結合のみを考慮して、コイルインダクタンスを大きく(トランスのギャップ長を非常に小さく)した設計になっている。つまり、図14のトランス性能特性に示すように、トランスのギャップ長が小さい領域3001で設計される。したがって、励磁インダクタンス値は大きい値を示すが、励磁インダクタンス特性2001が非常に急峻な領域となる。これにより、製作精度の観点から見るとで、個々のトランスの励磁インダクタンスのばらつきが、±25%程度と大きくなる。このため、従来のトランスを複数個で並列運転させると、トランス個々の励磁インダクタンスのばらつきによって、トランスの1次励磁電流のばらつき幅が、最大50%程度変動する。このように、従来のトランスを並列運転した場合には、トランス毎に供給される電流のばらつきが大きくなる。
従来のトランスでは、1次側の励磁電流で、トランスの2次側に伝達する電力容量が左右される。このため、上記のようにトランス毎に電流のばらつきが生じると、トランスを並列運転した場合、1つのトランスに集中して電流が流れる。当該電流の集中は、トランス自身の発熱(熱損失)を招く。したがって、通常は、トランスの並列運転は行われないことが普通である。
しかしながら、本実施の形態では、力率改善機能を有した実施の形態2に係るトランスを用いることにより、トランスを並列運転することが可能となる。つまり、実施の形態2に係るトランスを並列運転し、トランスに供給する電気容量をアップさせても、各トランスに伝達する電力を均等に分配することが可能となる。
本発明では、負荷は、プラズマ発生装置5(つまり容量性負荷)に限定されている。このことから、実施の形態2に係るトランス4では、負荷から電源装置10側のトランス4に反射される無効電流Icを利用して、力率改善を図っている(実施の形態2参照)。これにより、並列構成にしたトランスに電力が、均等に分配する。
図15は、実施の形態2で説明した複数のトランス4が並列接続されている様子を示す図である。図15では、図面簡略化のために、電源装置10内に配設された複数のトランス4および限流リアクトルLcのみを図示している。なお、図15と異なり、限流リアクトルLcを省略しても良く、また当該限流リアクトルLcの機能をトランス4で兼ねるようにしても良い(実施の形態3参照)。なお、ここでのトランス4は、実施の形態2で説明した並列共振機能を有する高機能トランスである。
次に、当該トランス4の並列運転について説明する。
当該トランス4は、負荷側から反射する無効電流Icでつくる、2次側の励磁インダクタンスを利用したものである。したがって、当該トランス4には、1次側に供給される電流から無効電流Ic分だけ差し引いた分の電流が流れ、プラズマ発生装置5へと供給される。つまり、トランス4の1次側から供給され、各トランス4に流れる電流(負荷の無効電流Icを除いた有効電流のみの電流)は小さくなる。当該小さい電流が、トランス4の2次側コイルに流れるのみで、負荷の力率改善を図っており、トランス自身の発熱(熱損失)が大きくなることも防止できる。
なお、通常トランスでは、2次側の負荷電圧Vd2(kV)は、1次側のコイル巻数と2次側のコイル巻数比で一義的に決まる。一方、本実施の形態で説明するトランス4の2次側の負荷電圧Vd2(kV)は、1次、2次のコイル巻数比だけでなく、下式に示すように、負荷側から2次側コイルに反射する無効電流Icで誘起する電圧値で決まる。つまり、トランス4の2次側の励磁インダクタンス値に無効電流Icが流れることで、誘起するコイル電圧が左右されることになる。この誘起される電圧値は次式の関係になっている。
Vd2=2・π・f・Ls2・Ic
ここで、上式において、fは、共振周波数であり、この共振周波数域で電源装置10は動作していることから、ほぼ共振周波数数は動作周波数と等しい。Ls2は、2次側の励磁インダクタンスである。
複数個のトランス4を並列接続して使用し、トランス4の(2次側)励磁インダクタンスにばらつきが生じても、上式で決まる2次側の負荷電圧Vd2が一定となるように(並列接続なので、Vd2は各トランス4で同電位である)、個々のトランス4への無効電流Icが流れる。
ここで、実施の形態2で説明した高機能トランス4では、2次側の励磁インダクタンスLs2の製作精度は、高められる。これは、実施の形態2でも説明したように、トランス4のギャップを大きく(数mm程度)取るからである。具体的に、実施の形態2に係るトランス4では、2次側の励磁インダクタンスLs2の製作精度は、約±3%以内である(図14の領域3002参照)。
したがって、実施の形態2に係るトランス4を用いることにより、各トランス4間における、2次側の励磁インダクタンスLs2のばらつきを極小に留めることが可能となる。よって、各トランス4において流れる無効電流Icのばらつきもほぼなく、各トランス4においてほぼ均等に無効電流Icは流れる。そして、トランス4の1次側から2次側へ供給する電力量は、負荷に供給する無効電力量を除いた有効電力分のみで、かつ、各並列に接続したトランス4において、1次側電圧2次側電圧とは同電位である。このため、各トランス4に分配する有効電力のばらつきは、各コイルのインダクタンスのばらつき精度内で収まる。この各コイルのインダクタンスのばらつきについても、高機能トランス4においては、上述の製作精度(約±3%以内)であることから、並列接続したトランス4の1次側から2側に伝達する有効電力についても、ほぼトランス4毎に均等になる。よって、トランス4を熱損傷させることはない。
以上のように、本実施の形態では、実施の形態2で説明した高機能トランス4を用いることにより、当該トランス4を並列運転させたとしても、トランス4の発熱が過剰に発生しない。したがって、トランス4の並列運転が可能となり、プラズマ発生装置5が大容量化したとしても、それに合わせて電源装置10の容量アップも、可能となる。
また、一つのトランスで容量アップを図るとなると、トランスの大型化だけでなくコスト大幅に増加する。しかしながら、本実施の形態では、トランス4の並列運転が可能となるので、低コストにて、電源装置10の容量アップを図ることができる。
<実施の形態5>
たとえば、プラズマ発生装置5で生成されるオゾンガス等のガス濃度を変更するために、電源装置10の投入電力量(電源装置10が、プラズマ発生装置5に投入する電力量)を、可変とすることがある。ここで、一般的に、投入電力量をより大きくすることにより、より高濃度のガスが生成され、一対一の関係にある。また、投入電力量の可変は、電源装置10の定格電力の0~100%の範囲である。
ここで、電源装置10の投入電力量を所望の電力量値となるように可変し、定常的に当該所望の電力量値を負荷へと供給(投入)する制御方法としては、以下のようなものが考えられ、従来技術であった。
具体的には、通常、プラズマ発生装置5に供給する高周波交流の負荷電流Id0を検出する。そして、当該負荷電流Id0が目標電流値(所望の電力値となる電流値である)になるように、制御部6が、インバータ3の制御信号(インバータ周波数fもしくはインバータのパルス幅τ)を変更する。そして、変更後の当該制御信号を用いて、インバータ3のインバータ出力の交流波形が制御される、制御方法である。
このように、上記制御方法では、電源装置10から供給される投入電力量を直接的に制御量とせずに、検出した負荷電流Id0を制御量として、当該負荷電流Id0が目標電流値になるように、インバータ3に対してフィードバック制御方式を施していた。つまり、上記制御方式では、間接的に、電源装置10から供給される無効電力量も含んだ投入電力量を可変制御していた。
このため、上記制御方法では、投入電力量Pwは、下式により、図1の検出器41で検出した負荷電流波形の実効負荷電流Id0と、図1の検出器42で検出した負荷電圧波形の実効負荷電圧Vd0と、投入電力量に依存する負荷力率ηdとを、用いた演算で求める必要性があった。
Pw=(実効負荷電流Id0)×(実効負荷電圧Vd0)×(負荷力率ηd)
=(実効負荷電流Id0)×(実効負荷電圧Vd0)×cosφ
プラズマ発生装置5に印加する負荷電圧、およびプラズマ発生装置5に供給するガス流量によって、負荷状態が変わる。したがって、上式による投入電力量Pwを算出する方法は、検出した、負荷電流信号および負荷電圧信号値から、実効電流値と、実効電圧と、負荷電流と負荷電圧との位相差φとを、常時精度良く求めることが難しい。特に、高周波高電圧化された、実効負荷電流Id0および実効負荷電圧Vd0から、精度の良い位相差φを求めることは、非常に難しい。したがって、上記制御方法では、投入電力量Pwの精度が悪く、投入電力量Pwを一定に管理することが困難であった。
ところで、発明者らは、電源装置10からプラズマ発生装置5に投入される交流の投入電力量と、電源装置10内のインバータ3に入力される直流電力量とが、一対一に対応することに着目した。つまり、負荷の高電圧部ではなく、電源装置10の低電圧ある直流電力量が定まれば、当該直流電力量に対応して投入電力量が一義的に決定する(この逆も成立する)。よって、直流電力量が所望の直流電力量値で一定になるように制御すれば、プラズマ発生装置5に投入される投入電力量も所望の投入電力量値で一定になるように制御できることに着目した。
そこで、本実施の形態では、電源装置10のインバータ3に入力される直流電力量を直接的な制御量値とした、フィードフォワード制御およびフィードバック制御により、投入電力量を一定に管理し、当該投入電力量を、プラズマ発生装置5に対して安定に供給することができる、電源装置10を提供する。
まず、プラズマ発生装置5内では、プラズマ処理により、オゾンガス等のガスが生成されるが、ユーザは、当該生成されるガスの濃度を選択する(ガスの所望濃度Cの選択)。つまり、本実施の形態に係る電源装置10に対して、ユーザが上記ガスの所望濃度Cを入力する(なお、所望濃度Cでなく、所望濃度Cのガスを生成するために、投入電力量として後述する目標投入電力量値Po’を入力することもできる)。
すると、制御部6は、プラズマ発生装置5の運転状況およびガスの所望濃度C(または、目標投入電力値Po’)に応じて、目標直流電力量値Poを算出する(フィードフォワード制御)。上記から分かるように、目標直流電力量値Poから、目標投入電力量値Po’が一義的に決定される。ここで、プラズマ発生装置5の前記運転状況において、目標投入電力量値Po’の投入電力量がプラズマ発生装置5に投入されると、当該プラズマ発生装置5では、所望濃度Cのガスが生成される。
さらに、制御部6は、当該目標直流電力量値Poから、インバータ周波数foもしくはインバータパルス幅τoを決定する。そして、制御部6は、当該決定したインバータ周波数foもしくはインバータパルス幅τo(インバータ制御値と把握できる)にて、インバータ3の出力を制御する(フィードフォワード制御)。当該fo,τoを用いたインバータ3の制御により、電源装置10からプラズマ発生装置5へと投入される投入電力量は、目標投入電力量値Po’に近い値となる。
次に、制御部6は、直流電圧出力部20の出力部における、直流電流Iiおよび直流電圧Viを検出する。ここで、図1に示す電流検出器21が、直流電流Iiを随時検出し、当該検出した値を随時、制御部6に送信している。また、図1に示す電圧検出器22が、直流電圧Viを随時検出し、当該検出した値を随時、制御部6に送信している。なお、図1に示すように、各検出器21,22は、直流電圧出力部20とインバータ3との間に配設されている。
そして、制御部6は、当該検出結果Ii,Viから直流電力量値Pi(=Ii×Vi)を算出する。さらに、制御部6は、目標直流電力量値Poと直流電力量値Piとの差分ΔP(=Po-Pi)がゼロになるように、インバータ周波数fもしくはインバータパルス幅τ(インバータ制御値と把握できる)を微調整し、当該微調整後の、インバータ周波数fもしくはインバータパルス幅τにて、インバータ3の出力を制御する(フィードバック制御)。
たとえば、目標直流電力量値Po>直流電力量値Piである場合には、インバータ周波数fを大きし、および/または、インバータパルス幅τを大きくする。
上記のように、差分ΔPをゼロとなるように制御することにより、結果的には、プラズマ発生装置5に投入される投入電力量を、上記目標投入電力量値Po’で一定にすることができる。
上記制御動作の結果として、電源装置10は、ユーザによって選択されたガスの所望濃度Cに応じた、プラズマ発生装置5に対する投入電力量が、目標投入電力量値Po’で一定となるように、制御・管理できる。
ここで、上記の通り、電源装置10は、ガスの所望濃度に応じて、投入電力量を、定格電力の0~100%の範囲で変化させることができる。
なお、上記した目標直流電力量値Poの算出は、次のようにして行われる。つまり、制御部6には、テーブルや演算式が、データとして予め記憶されている。当該テーブルや演算式は、プラズマ発生装置5の運転状況およびガスの所望濃度Cに応じて、一義的に、目標直流電力量値Poを求め、決定することができるものである。
ここで、プラズマ発生装置5の運転状況を表す値としては、原料ガスのガス供給流量Q、放電セル内における圧力P、装置5内に流れる冷媒の流量Qw、および当該冷媒の温度Twである(実施の形態1で述べた物理量)。制御部6は、プラズマ発生装置5から、外部信号インターフェース63を介して、プラズマ発生装置5の運転状況を表すこれらの値Q,P,Qw,Twを、入力データとして随時取得している。
制御部6は、上記テーブルまたは演算式等のデータに、取得した上記値Q,P,Qw,Twと、ユーザによって選択・入力されたガスの所望濃度Cとを適用し、目標直流電力量値Poを算出する。
また、制御部6では、当該目標直流電力量値Poに対して、一義的に特定される、インバータ周波数foもしくはインバータパルス幅τoの値も、データとして、予め設定・記憶されている。よって、上記の通り、制御部6は、算出された目標直流電力量値Poに対して、一義的に、インバータ周波数foもしくはインバータパルス幅τoを決定することができる。上記の通り、当該fo,τoを用いたインバータ3の制御により、電源装置10からプラズマ発生装置5へと投入される投入電力量を、目標投入電力量値Po’に近づける(fo,τoは、理論に基づく値であるため、目標投入電力量Po’と同じでない)。
なお、上記各値Q,P,Qw,Twが一定であるなら、投入電力量を目標投入電力量値Po’ で一定にすることにより(インバータ3に入力される直流電力量を、目標直流電力量値Poで一定にすることにより)、プラズマ発生装置5では、一定の上記ガスの所望濃度Cで生成される。
なお、上記では、フィードバック制御において、直流電圧出力部20の出力部における、直流電流Iiおよび直流電圧Viを検出する場合について説明した。しかしながら、直流電圧出力部20の出力電圧を一定電圧となるように制御しておけば、フィードバック制御において、直流電圧出力部20の出力部における直流電流Iiのみを検出すれば、投入電力量値Pi(=Ii×一定電圧)を算出することができる。つまり、直流電圧出力部20の出力部における直流電流Iiのみの検出とフィードバック制御とにより、電源装置10の投入電力量を、目標投入電力量値Po’で一定に制御することができる。
上記のように、本実施の形態では、制御部6は、フィードフォワード制御(目標直流電力量値Poの算出、当該目標直流電力量値Poを用いた、インバータ周波数foもしくはインバータパルス幅τoの決定、当該インバータ周波数foもしくはインバータパルス幅τoを用いたインバータ3の制御)と、フィードバック制御(目標直流電力量値Poと、直流電圧出力部20の出力部における、実際の検出結果(少なくとも、直流電流の検出結果)とを用いた、インバータ周波数fもしくはインバータパルス幅τの微調整、当該微調整後の、インバータ周波数fもしくはインバータパルス幅τを用いたインバータ3の制御)とを、行っている。
つまり、本実施の形態では、電源装置10は、直流電圧出力部20からの直流出力結果を検出し、制御部6は、当該検出結果と制御値である目標直流電力量値Poとを用いて、投入電力量が目標投入電力量値Po’で一定となるように(インバータ3へ入力される直流電力量が目標直流電力量値Poで一定となるように)フィードバック制御を行い、インバータ周波数fもしくはインバータパルス幅τを微調整している。
負荷電流等よりも小さい値の直流電流等を用いたフィードバック制御を行い、直流電流等は、インバータ3に入力される直流電力量(換言すれば、投入電力量)に一対一に対応している(投入電力量を直接的な制御量値としていると解される)。したがって、投入電力量が、ガスの所望濃度に応じた目標投入電力量値Po’で一定となるように、精度良く制御することができる。また、検出される直流電流等は、負荷電流等に比べ、ノイズ等が重畳されない(インバータ3やトランス4においてノイズが生じる)。このことからも、投入電力量が、ガスの所望濃度に応じた目標投入電力量値Po’で一定となるように、精度良く制御することができる。結果、当該電源装置10は、安定した電力をプラズマ発生装置5に供給し続けることができる。
ここで、本実施の形態において、制御部6は、上記フィードフォワード制御の一部を省略し、上記フィードバック制御により、投入電力量を目標投入電力量値Po’で一定となるように、インバータ3を制御することもできる。
つまり、上記により、制御部6が目標直流電力量値Poを算出する。その直後から、制御部6は、直流電流等の検出結果用いて、フィードバック制御を行い、インバータ周波数fもしくはインバータパルス幅τを決定し、インバータ3に入力される直流電力量を目標直流電力量値Poに一致される(換言すれば、投入電力量を目標投入電力量値Po’に一致させる)。このように、インバータ周波数foもしくはインバータパルス幅τoの決定、当該インバータ周波数foもしくはインバータパルス幅τoを用いたインバータ3の制御を、省略することもできる。しかしながら、このような制御を行った場合には、応答性が悪くなり、投入電力量が目的とする値に到達するまでに、長い時間がかかる場合もあり得る。
そこで、上記したように下記の動作を行う。つまり、フィードフォワード制御により、インバータ周波数foもしくはインバータパルス幅τoにてインバータ3を制御し、投入電力量を目標投入電力量値Po’に近い値(直流電力量を目標直流電力量値Poに近い値)とする。その後に、フィードバック制御により、インバータ周波数fもしくはインバータパルス幅τを微調整し、当該微調整した、インバータ周波数fもしくはインバータパルス幅τを用いた、インバータ3の制御を行う。
このように、当該フィードフォワード制御とフィードバック制御とを当該順に組み合わせることにより、投入電力量が目標投入電力量値Po’に、短時間で到達することができる。
また、制御部6は、インバータ周波数およびインバータパルス幅の両方、または何れか一方のみを変更して、投入電力量を目標投入電力量値Po’(直流電力量を目標直流電力量値Po)になるように制御することもできる。
また、本実施の形態で説明した、フィードフォワード制御・フィードバック制御を行う制御部6は、上記何れかの実施の形態1-4に記載した電源装置10に適用しても良く、全ての実施の形態を組み合わせた電源装置10に適用しても良い。
たとえば、実施の形態1で説明した限流リアクトルを省略し、本実施の形態で説明した動作を行う、制御部6およびインバータ3を有する電源装置10であってもよく、あるいは、実施の形態2で説明した構成のトランス4でなく、一般のトランス4と、本実施の形態で説明した動作を行う、制御部6およびインバータ3とを有する電源装置10であってもよい。
つまり、電源装置10は、上記各実施の形態とは切り離して、本実施の形態で説明した構成(フィードフォワード制御・フィードバック制御を行う構成)を、単独で構築することも可能である。
なお、上記実施の形態で説明したように、共振振動の一定で電源装置10(より具体的には、インバータ3)を駆動させる場合には、フィードフォワード制御・フィードバック制御により、インバータパルス幅のみを可変として、投入電力量を目標投入電力量値Po’になるようにすれば良い。
<実施の形態6>
上記の図4において、最上段に示す波形は、インバータ3から出力される矩形状の交流電圧波形である。この矩形交流電圧波形が、トランス4等を介することで、プラズマ発生装置5に対して、正弦波状の高周波・高電圧が供給される。ここで、プラズマ発生装置5に供給される電力量が高くると、プラズマ発生装置5で生成されるガス等の生産量(濃度)が増す。
つまり、電源装置10からプラズマ発生装置5に供給される電力量と、プラズマ発生装置5で生成されるガスの濃度等とは、密接な関係にある。よって、プラズマ発生装置5で生成されるガスの濃度を安定的にコントロールするためには、図4で示したインバータ3の制御値である、インバータ周波数f(パルス周期1/f)もしくはインバータパルス幅τを制御して、上記電力量を一定にすることが重要である。ここで、当該電力量の一定制御については、実施の形態5で説明した通りである。
また、プラズマ発生装置5の負荷インピーダンス(生成されるガスの濃度)は、電源装置10から供給される電力量のみでなく、当該プラズマ発生装置5における負荷の状態(上記した「プラズマ発生装置5の運転状況」)によっても変化する。ここで、プラズマ発生装置5の運転状況を表す値としては、上記の通り、原料ガスのガス供給流量Q、放電セル内における圧力P、装置5内に流れる冷媒の流量Qw、および当該冷媒の温度Twである。
したがって、プラズマ発生装置5を安定的に駆動するためには、プラズマ発生装置5の運転状況を表す上記各値Q,P,Qw,Twの変動が小さくなるように(ほぼ一定に保つように)、管理する必要がある。しかしながら、信号線に重畳するノイズ等の外乱により、上記各値Q,P,Qw,Twを変化させる場合や大きく変動する場合があり、上記各値Q,P,Qw,Twをほぼ一定に保つことは、実際的に難しい。
そのため、実施の形態1でも述べたように、制御部6は、プラズマ発生装置5の運転状況を表す上記各値Q,P,Qw,Twを、電源装置10とプラズマ発生装置5との間での送受信により、常に取り込む。そして、制御部6は、当該各値Q,P,Qw,Twに応じて、インバータ3の制御値である、インバータ周波数f(パルス周期1/f)もしくはインバータパルス幅τを制御して、上記電力量を適量値になるように一定制御にしている。
さらに、プラズマ発生装置5は容量性負荷であり、通常、非常に負荷力率が悪いものである。よって、力率改善のために、電源装置10内おいて、電源装置10とプラズマ発生装置5との間において共振状態を作り出す共振手段を配設し、当該インバータ3の駆動周波数(動作周波数)を共振周波数付近に合わせている。当該力率改善のための技術としては、実施の形態2に係る発明または、実施の形態2で述べた、直列共振方式の力率改善手段および並列共振方式の力率改善手段がある。
本実施の形態に係る電源装置10は、上記した何れかの力率改善手段を有し、当該電源装置10は、自動的にインバータ3の駆動周波数を決定する機能を有する。つまり、共振周波数を自動的に詮索する機能を有している。
まず最初に、制御部6において、投入電力量、初期電源出力周波数、設定ガス流量、設定ガス圧力、設定冷媒温度および設定冷媒流量等が設定される。なお、設定ガス流量、設定ガス圧力、設定冷媒温度および設定冷媒流量は、制御部6から、外部信号インターフェース63を介して、プラズマ発生装置5内における、MFCおよびAPC等に対して出力される。
また、実施の形態1で説明したように、プラズマ発生装置5の運転中においては、常時、当該プラズマ発生装置5から、外部信号インターフェース63を介して、制御部6へと、測定値である、原料ガスのガス供給流量Q、放電セル内における圧力P、装置5内に流れる冷媒の流量Qwおよび当該冷媒の温度Tw(測定値である各物理量)が、送信される。
そして、実施の形態1で述べたように、制御部6は、ガス供給流量Qが設定ガス流量に対して所望範囲以内であるか否か、放電セル内における圧力Pが設定ガス圧力に対して所望範囲以内であるか否か、冷媒の流量Qwが設定冷媒流量に対して所望範囲以内であるか否か、および、冷媒の温度Twが設定冷媒温度に対して所望範囲以内であるか否かを判断する。
そして、当該各判断の結果、プラズマ発生装置5における各物理量において異常が生じていると判断したとき、実施の形態1で説明したように、制御部6は、インバータ3の出力を停止するなどの処置がなされている。さらに、制御部6は、プラズマ発生装置5において異常が発生していることを(どの物理量が異常であるかを)、外部に通知する。
前記までで、プラズマ発生装置5における異常が生じていない場合には、制御部6は、実施の形態1で述べたように、電源装置10内で測定された、各電圧値・電流値を用いて、負荷の短絡が生じているか否かを判断する(図2,3を用いた説明参照)。
そして、当該判断の結果、短絡が生じていると判断したとき、実施の形態1で説明したように、制御部6は、インバータ3の出力を停止する。さらに、制御部6は、短絡の原因となる異常箇所を外部に通知する。
前記までで、異常や短絡が生じていない場合には、電源装置10内の部品の動作に関して、異常・正常を制御部6は判断する。当該判断の結果、部品動作に異常があると判断したとき、制御部6は、インバータ3の出力を停止する。さらに、制御部6は、異常と判断された部品を外部に通知する。
上記までの各判断において全て正常であると判断されたとき、以下の動作を行う。ここで、制御部6は、上記までの各判断の動作を省略し、以下の動作(本実施の形態に係る特徴的技術)から動作を開始しても良い。
制御部6において上記投入電力量が設定されると、制御部6は、当該投入電力量が、電源装置10の定格電力に対して、100%に相当する電力値であるか否かを判断する。あるいは、制御部6は、当該投入電力量が、電源装置10の定格電力に対して、100%以下であり閾値%以上に相当する電力値であるか否かを判断する。ここで、当該閾値%は、制御部6に予めに設定されている。たとえば、閾値%が90%である場合には、制御部6は、投入電力量が、電源装置10の定格電力に対して、90%以上から100%以下であるか否かを判断する。
なお、下記に説明する動作は、電源最大容量運転時(または、電源最大容量近い容量での運転時)における、インバータ3の駆動周波数を決定する動作であり、所謂条件出しの動作である。したがって、プラズマ発生装置5を電源装置10に接続し、システムを組んだ後の初期動作段階では、一般的に、制御部6に対して、定格電力の100%あるいは定格電力の閾値%~100%の値の投入電力量が、最初に設定指示される。
さて、前記で設定指示された投入電力量が、電源装置10の定格電力に対して100%(あるいは、電源装置10の定格電力に対して、100%以下であり閾値%以上)である場合には、制御部6は、インバータ3に対する制御値であるインバータ周波数fを随時変化させ、各インバータ周波数fに基づいてインバータ3の出力を制御する。
ここで、制御部6は、上記で設定された初期電源出力周波数を中心に、所定の周波数範囲(たとえば、±2kHz)で、インバータ周波数fを変化(掃引)させる。全周波数範囲に渡って、インバータ周波数fを掃引させても良い。しかし、前記通り、掃引範囲を限定することにより、共振周波数を求めるまでの時間を短縮することができる。
なお、電源装置10とプラズマ発生装置5とを接続し、システムを組んだ段階で、上記式(1)から理論値の共振周波数が算出される(式(1)のLは、インバータ3の出力側以降における電源装置10の合成インダクタンスである。また、式(1)のCは、プラズマ発生装置5の合成静電容量である)。そこで、共振新周波数を求めるまでの時間を短縮する観点から、式(1)から算出される値を、上記初期電源出力周波数として制御部6に設定し、当該初期電源出力周波数を中心に、所定の周波数範囲で、インバータ周波数fを変化(掃引)させる(たとえば離散的に変化させる)。
なお、インバータ周波数fを変化させるとき、設定指示された投入電力量が満足されるように、制御部6は、当該インバータ周波数fの変化に応じて、インバータパルス幅τも変化させ、インバータ3に対して制御値として送信する。
制御部6は、インバータ周波数fを変化させるが、各インバータ周波数f毎に、検出部31,32から取得した電気量に基づいて、インバータ出力力率を各々求める。ここで、電気量とは、インバータ出力力率を求める際に利用される、インバータ3の出力側における電気に関する値である。
具体的に、掃引したインバータ周波数f毎に、図1に示す電流検出器31が、インバータ3の出力部における実効電流値を検出し、当該検出した結果を制御部6へと送信し、図1に示す電圧検出器32が、インバータ3の出力部における実効電圧値を検出し、当該検出した結果を制御部6へと送信する。そして、制御部6は、掃引したインバータ周波数f毎に、上記実効電流値および上記実効電圧値から、インバータ3の出力部における有効電力を求める。
そして、制御部6は、掃引したインバータ周波数f毎に、上記実効電流値および上記実効電圧値および上記有効電力を用いて、インバータ3の出力部におけるインバータ出力力率ηを演算する。ここで、インバータ出力力率η={(有効電力)/(実効電流値×実効電圧値)}×100 (%)、である。
図16は、所定の周波数範囲でインバータ周波数fを変化(掃引)させ、インバータ周波数f毎に求めたインバータ出力力率ηの変化の様子を示す図である。ここで、図16の縦軸は、インバータ出力力率η(%)であり、図16の横軸は、インバータ周波数f(kHz)である。
図16に示すように、掃引したインバータ周波数f毎にインバータ出力力率ηが求められた後、制御部6は、求めたインバータ出力力率ηの中で、最も高い値である最大インバータ出力力率ηmaxを検出する。そして、制御部6は、最大インバータ出力力率ηmaxが得られたときインバータ周波数(共振周波数fcであり、図16のfc参照)を、インバータ3の駆動周波数fcとして決定する。
そして、駆動周波数fcが決定された後は、制御部6は、インバータ周波数fとして駆動周波数fcを、インバータ3に対して送信する。さらに、制御部6は、上記で設定された投入電力量と駆動周波数fcとから決定されるインバータパルス幅τcを、インバータ3に対して送信する。
これにより、インバータ3からは、駆動周波数fcとインバータパルス幅τcとから成る高周波波形が出力され、上記で設定された投入電力量に応じた負荷電力が、プラズマ発生装置5に対して供給される。
さて、ユーザが、プラズマ発生装置5で生成されるガスの濃度を変化させたい場合、または、生成されるガス濃度は変化させないで、プラズマ発生装置5の運転状況を表す上記各値(各物理量)Q,P,Qw,Twを変化させたい場合がある。この場合には、ユーザは、電源装置10に対して、投入電力量を、前記変化させたい量に応じて、変化させることになる。
これに従い、たとえば、ユーザが、電源装置10に対して設定される投入電力量を変更したとする。
当該変更が行われたとき、制御部6は、変更後の投入電力量が、電源装置10の定格電力に対して、100%未満の投入電力値であるか否かを判断する。あるいは、制御部6は、変更後の投入電力量が、電源装置10の定格電力に対して、上記閾値%未満の投入電力値であるか否かを判断する。
ここで、変更後の投入電力量は、定格電力に対して100%未満(あるいは、定格電力に対して上記閾値%未満)であるとする。したがって、制御部6は、変更後の投入電力量が、電源装置10の定格電力に対して、定格電力に対して100%未満(あるいは、定格電力に対して上記閾値%未満)であると判断する。
そこで、制御部6は、インバータ周波数fとして駆動周波数fcを、インバータ3に対して送信する。換言すれば、投入電力量の変更が指示されても、インバータ周波数fは上記駆動周波数fcで固定である。さらに、制御部6は、上記で変更された投入電力量と駆動周波数fcとから決定されるインバータパルス幅τrを、インバータ3に対して送信する。
これにより、インバータ3からは、駆動周波数fcとインバータパルス幅τrとから成る高周波波形が出力され、上記で変更された投入電力量に応じた負荷電力が、プラズマ発生装置5に対して供給される。
なお、以後において、電源装置10に対して投入電力量の変更が指示されたとしても、変更後の投入電力量が、定格電力に対して100%未満(あるいは、定格電力に対して上記閾値%未満)であるなら、制御部6は、インバータ3に対して、インバータ周波数fとして駆動周波数fcを固定的に出力し続ける。なお、インバータパルス幅τは、変更後の投入電力量に応じて、その都度変更される。
ところで、変更後の投入電力量が、定格電力に対して100%(あるいは、定格電力に対して、100%以下~上記閾値%以上)である場合も想定できる。この場合には、電源装置10は、次の動作を実施する。
電源装置10は、上記において求めた共振周波数を再度決定し直すか否かの選択ができる切替部(図1等には図示せず)を、有している。
一度、電源装置10およびプラズマ発生装置5を含むシステムが組まれると、共振周波数は、ほとんど変更しない。そこで、ユーザは、切替部を操作し、駆動周波数の再度決定不実施を選択する。
この場合には、制御部6は、インバータ周波数fとして、上記で求めた駆動周波数fcを、インバータ3に対して送信する。つまり、投入電力量として、再び定格電力に対して100%(あるいは、定格電力に対して、100%以下~上記閾値%以上)が指示設定されたとしても、インバータ周波数fは上記駆動周波数fcで固定である。さらに、制御部6は、上記で設定された投入電力量と駆動周波数fcとから決定されるインバータパルス幅τcを、インバータ3に対して送信する。
これにより、インバータ3からは、駆動周波数fcとインバータパルス幅τcとから成る高周波波形が出力され、上記で設定された投入電力量に応じた負荷電力が、プラズマ発生装置5に対して供給される。
一方で、プラズマ発生装置5を長期間使用したとき、プラズマ発生装置5または電源装置10において設計変更等を行ったとき、プラズマ発生装置5と電源装置10とを接続する配線または、これらの装置5,10内部の配線に変更を加えた場合、共振周波数は変更される。よって、ユーザが、切替部を操作し、駆動周波数の再度決定実施を選択することも想定される。
この選択の場合において、変更後の投入電力量が、定格電力に対して100%(あるいは、定格電力に対して、100%以下~上記閾値%以上)である場合なら、電源装置10は、当該投入電力量が設定された際に、駆動周波数を決定する動作を再度実施する(上記インバータ周波数の掃引、および最大インバータ出力力率ηmaxが得られたときインバータ周波数(共振周波数)を求める動作と同様)。そして、当該決定の動作により、駆動周波数fc’が決定された場合には、制御部6は、以後、上記駆動周波数fcを、新しい駆動周波数fc’に置き換えて、電源装置10に対して設定される投入電力量が変更されると、上記で説明した動作と同じ動作を行う(投入電力量が変更した場合に、制御部6が、インバータ3に対して、インバータ周波数fとして駆動周波数を固定的に出力し続ける動作と同様)。
なお、上記駆動周波数fc,fc’と上記説明で求められたインバータパルス幅とで、インバータ3の出力は制御される。ここで、投入電力量が一定に精度良く制御されるように、実施の形態5で説明したフィードバック制御等により、制御部6は、インバータパルス幅を微調整しても良い。
以上のように、本実施の形態に係る電源装置10では、電源装置10およびプラズマ発生装置5を含むシステムが構築された後において、最初に、定格電力の100%あるいは定格電力の閾値%~100%の値が、投入電力量として設定指示されたとき、自動で、駆動周波数fcを決定している。
したがって、電源最大容量運転時(または、電源最大容量近い容量での運転時)において、インバータ出力力率ηを改善した駆動周波数(共振周波数)fcで、電源装置10を駆動させることができる。ここで、当該駆動周波数fcは、プラズマ発生装置5の機種や製造するロットばらつき等に応じて、自動的に求められる。
また、本実施の形態に係る電源装置10では、駆動周波数fcを求めた後において、投入電力量として、定格電力の100%未満あるいは定格電力の閾値%未満の値が、設定指示されたとき、制御部6は、上記で求めた駆動周波数fcを固定的にインバータ3に対して出力している。
したがって、投入電力量が変更される度に、駆動周波数を求める動作を行うことを防止でき、電源装置10の処理能力低下を防止できる。
なお、投入電力量が変更されても、当該投入電力量に応じた本来の共振周波数は、先にて求めた駆動(共振)周波数fcとは、然程差はない。また、本来の共振周波数と、先にて求めた駆動(共振)周波数fcとの差に起因して、インバータ出力力率ηは、最大インバータ出力力率ηmaxより多少低くなる。
しかしながら、投入電力量が、定格電力の100%未満あるいは定格電力の閾値%未満の値である場合には、電源装置10の容量は余力がある。したがって、投入電力量が、定格電力の100%未満あるいは定格電力の閾値%未満の値である場合、制御部6が、上記駆動周波数fcでインバータ3を制御したとしても、インバータ出力力率ηが最大インバータ出力力率ηmaxより多少低い状態であっても、電源装置10の性能上問題なく運転できる。
また、本実施の形態に係る電源装置10では、上記選択が可能な切替部を有している。したがって、当該電源装置10およびプラズマ発生装置5を含むシステムにおいて、共振周波数が変化する事情が生じたときに、ユーザの希望に応じて、制御部6は、再度、適正な駆動周波数を自動的に決定することができる。
なお、上記と異なり、最初に設定指示された投入電力量が、電源装置10の定格電力に対して100%(あるいは、電源装置10の定格電力に対して、100%以下であり閾値%以上)でない場合も想定できる。
この場合には、制御部6は、インバータ周波数fを、上記で設定された初期電源出力周波数として決定する。さらに、制御部6は、インバータパルス幅τを、上記で設定された投入電力量と上記で決定された初期電源出力周波数とから求める。そして、制御部6は、当該設定された初期電源出力周波数と、当該求めたインバータパルス幅とを、インバータ3に対して送信する。
これにより、インバータ3からは、該設定された初期電源出力周波数と当該求めたインバータパルス幅とから成る高周波波形が出力され、上記で設定された投入電力量に応じた負荷電力が、プラズマ発生装置5に対して供給される。
そして、電源装置10に設定される投入電力量が変更され、最初に、設定された投入電力量が、電源装置10の定格電力に対して100%(あるいは、電源装置10の定格電力に対して、100%以下であり閾値%以上)となったとき、制御部6は、上記駆動周波数fcを求める動作を行う。以後において投入電力量が変更された場合は、上記と同じ動作を行う(たとえば、投入電力量が変更した場合に、制御部6が、インバータ3に対して、インバータ周波数fとして駆動周波数fcを固定的に出力し続ける動作等と同様)。
なお、本実施の形態に係る特徴的技術(駆動周波数の自動決定、投入電力量変更の際における当該駆動周波数の固定出力等)は、上述した実施の形態1~5に、組み合わせることもでき、他方で、当該本実施の形態に係る特徴的技術のみを有する電源装置10を構成することも当然できる。
<実施の形態7>
実施の形態6において、電源装置10は力率改善手段を有し、負荷(プラズマ発生装置5)側からの反射電流を利用して共振させ、自動的に駆動周波数を決定していた。ここで、実施の形態6では、駆動周波数は、最大インバータ出力力率ηmaxが得られたときインバータ周波数(つまり、共振周波数)であった。
上記のように、反射電流を利用して共振させた場合、電源装置10のトランス4の出力から負荷のインピーダンスを見ると、上記力率改善手段の誘導性インピーダンス分と負荷側の容量性インピーダンス分がキャンセルすることになる。そのため、電源装置10の駆動周波数を共振周波数fcに合せると、上記誘導性インピーダンス分と負荷側の容量性インピーダンス分が打ち消し合い、0Ωとなる。よって、プラズマ発生装置5における、トータル放電プラズマインピーダンス(抵抗)Rp0(Ω)のみが残る。
放電セルの並列接続数nが少ない場合は、当該nに反比例するRp0は、大きい値となる。よって、プラズマ発生装置5におけるトータル負荷電流Id0は抑制され、結果として、共振の増幅度を示すQ値(換言ずれば、図16に示すインバータ出力力率ηの特性)は、インバータ周波数が変化しても、なだらかに変化し、共振周波数において、電源装置10は安定な動作を行うことができる。
これに対し、放電セルの並列接続数nを大きい場合や、プラズマ発生装置5における放電セルの放電抵抗分が非常に小さい場合には、Rp0は非常に小さい値となる。よって、プラズマ発生装置5におけるトータル負荷電流Id0は、非常に大きくなり、結果として、共振の増幅度を示すQ値(換言ずれば、図17に示すように、インバータ出力力率ηの特性)は、インバータ周波数fが変化したとき、急峻に変化する。このような状態において、電源装置10を共振周波数で駆動させると、負荷からの反射電流が増大するだけでなく、電流の時間的変化率が非常に大きくなり、共振系で発振モードが誘起される。
当該発振モードは、電源装置10におけるノイズ増大の原因なる。そして、ノイズが増大することにより、電源装置10内における電気部品の電気的損傷の発生、電源装置10の誤動作、およびプラズマ発生装置5の破損の発生を引き起こすこともある。
そこで、本実施の形態では、実施の形態6で決定した駆動周波数を、共振周波数そのものでなく、当該共振周波数fcを用いて決定する。
具体的に、実施の形態6と同様に、制御部6は、インバータ周波数の掃引により、最大インバータ出力力率ηmaxが得られたときインバータ周波数(つまり、共振周波数fc)を決定する。その後、本実施の形態では、制御部6は、当該共振周波数fcに対して、微小周波数Δfだけずらした値を、駆動周波数(=fc±Δf)として決定する。
ここで、当該微小周波数Δfは、実際に使用するプラズマ発生装置5の構成によって、個別に決定されるものである。電源装置10およびプラズマ発生装置5を含むシステムにおいて、共振周波数fcの近辺において、当該システムを事前に実験的運転を行う。なお、共振周波数fcに対して、プラス方向にずらすか、マイナス方向にずらすのかも、当該実験的運転を通じて決定される。そして、当該実験的運転を通じて、安定した運転が可能となる適正な微小周波数Δfが決定される。そして、当該微小周波数Δfは、電源装置10の動作前に、制御部6内に予め設定されている。
なお、微小周波数範囲を、上記実験的運転を通じて決定し、当該決定した微小周波数範囲を制御部6に予め設定することもできる。この場合には、次の様な範囲で、駆動周波数は決定される。たとえば、共振周波数fcを軸にマイナス方向にインバータ周波数をずらしても正常に運転ができる周波数下限値がΔfr1であったとする。他方、共振周波数fcを軸にプラス側にインバータ周波数をずらしても正常に運転ができる周波数上限値がΔfr2であったとする。この場合には、駆動周波数は、次の式の範囲で任意に決定される。つまり、fc-Δfr1≦駆動周波数≦fc+Δfr2、である(図17参照)。ただし、上記の通り、本実施の形態では、共振周波数fc自身は駆動周波数として採用しない(図17参照)。
以上のように、本実施の形態では、制御部6は、共振周波数fcを避けて駆動周波数を決定している。したがって、発振モードを誘起するような周波数帯での動作運転を事前に避けることができ、電源装置10の安定した運転が可能となる。
上記では、容量性負荷装置専用の電源装置10の負荷出力部の安定技術について述べた。電源装置10の直流電圧を出力する部分20は、商用交流電圧を整流し、直流化するコンバータであっても、直流電圧が出力できる蓄電池等の電池(たとえば、多段もしくは多並列構成の大容量電池バンク構成)であってもよい。
ここで、直流電圧出力部20を大容量電池バンクとした場合には、電池に相当する部分の等価回路は、電圧供給源と容量性のコンデンサで構成されていることになる。したがって、大容量電池バンクから電圧を出力した際の配線リアクトルLN分で、大容量電池バンク側に反射する電流が電圧増幅し、過電圧が大容量電池バンクに反射されることもある。これにより、大容量電池バンクの安定駆動が妨げられることもある。
大容量電池バンクを安定に駆動させるには、大容量電池バンクに過電圧が反射されないようにする技術が必要となる。そして、当該技術として、実施の形態2等で述べたように、容量性負荷に対して、並列リアクトルを挿入して、力率改善させる技術がある。これと同様の技術を利用して、大容量電池バンクに並列リアクトルを挿入する。これにより、大容量電池バンク内の静電容量値と、配線リアクトル部でのインダクタンス値との相互作用で、反射電流が直列共振(電圧増幅)する作用を抑制し、反射した無効電流分を並列リアクトルでバイパスさせる。
なお、上記各実施の形態で説明した電源装置10は、オゾン発生装置やラジカル発生装置等の半導体製造装置分野で用いられる、容量性負荷装置専用の電源装置として適用することができる。また、当該電源装置10は、レーザ装置分野の放電装置および、パルプ漂白分野、水処理分野または化学プラント分野で用いられる非常に大規模なオゾン発生装置、等の容量性負荷装置の電源装置としても利用できる。
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。また、上記各実施の形態に係る発明の特徴部のみを有する発明、および上記各実施の形態に係る発明の特徴部の任意の組合せも、発明の範囲から外れることなく想定し得る。