WO2014115267A1 - 高濃度オゾン水を用いた放射性物質除去装置及び放射性物質除去方法 - Google Patents

高濃度オゾン水を用いた放射性物質除去装置及び放射性物質除去方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高濃度かつ時間経過によるオゾン濃度の低下を抑制したオゾン水を生成し、これを用いて放射性物質の除去を行う技術を実現する。 【解決手段】オゾン分子が少なくとも原水(溶媒)の水分子間に高密度に存在し、水分子間の水素結合が形成される割合(以下「水素結合率」という。)が原水の水素結合率より小さくなる程度に高密度でオゾン分子が溶存保持された分子水和オゾン水(Ozone water molecules hydrated)を用いて、放射性物質の除去を行う。

Description

高濃度オゾン水を用いた放射性物質除去装置及び放射性物質除去方法
 本発明は、放射性物質による汚染地域ないし原子力発電所等の廃炉作業における放射性物質の除去技術に関する。
 東京電力福島第1原子力発電所の外部交流電源の喪失に伴う事故は、国際原子力・放射線事象評価尺度(INES)で最悪のレベル7と評価される事態となり、核燃料及び核燃料を覆う被覆管の溶融に伴う水素爆発及び原子炉内部の圧力を低下させるためのベント処理によって外部環境に放出された放射性物質の量は、セシウム-134、137(Cs-134、137)だけでも数万TBqレベルに達し、チェルノブイリ原発事故に匹敵する大事故となった。
 福島第一原子力発電所の事故においては、ベントや水素爆発による放射性物質の吹上高度はチェルノブイリ原発事故よりも低く、また、事故発生当時降雨・降雪による放射性物質の湿性沈着があったため、チェルノブイリ原発事故よりも放射性濃度の高い地域(高濃度汚染地帯、いわゆるホットスポット)が福島県内のみならず栃木県、群馬県、茨城県、千葉県、東京都、神奈川県の一部に局所的に出現する事態となっている。かかるホットスポットを含め、汚染された地域について効果的な除染措置(いわゆるデコンタミネーション)を推進する必要性は極めて高い。
 居住地域、農地さらには森林、海底等における放射性物質の除去、隔離又は遮蔽について、現状では例えば土木工学的手法を用いた除染ないし高圧水道水を放射することによる除染が行われている。また、植物を用いた環境修復(いわゆるファイトレメディエーション)、ゼオライト、セシウムを選択的に摂取する微生物を用いた実験等が行われており、これらを用いた放射性物質の除去も想定されている。
 しかし、土木工学的手法が適用されるのは学校施設の校庭や畑など平坦かつ広い土地に限られており、住宅地や森林内には大型重機の搬入が困難で、人海戦術的な手法を取らざるを得ない。また、土木工学的手法は、大要、汚染された土砂、がれき、樹木等を現場から除去することを内容とするものであり、その量は膨大であることから、除去した瓦礫等の仮置場、中間処理施設及び最終処分場の確保が不可欠であるにもかかわらず、その用地確保は地域住民の反対運動もあってなかなか進んではいない。
 また、高圧水道水による除染の場合、放射性物質の除去率は必ずしも高くない。例えば放射性物質の一つであるセシウム-134、137は、土壌、コンクリート等の表面の有機物と錯体を形成し、さらに時間をかけて土壌等の母材である粘土鉱物の結晶構造中に取り込まれていく性質を有しており、高圧水道水によっては、土壌等の表面から放射性物質を分離除去することは困難である。
 さらに、植物を用いた環境修復については、現状、実用的ではないとの結論が出されている。例えば、放射性物質に汚染された土壌にひまわりを栽培した場合、ひまわりが土壌から吸収する放射性物質の量は非常に低い(移行係数にして0.0005)ことが明らかとなっている。また、ゼオライト、微生物を用いた技術においても実用化の目途は立っていない。
 他方、老朽化した原子力発電所の廃炉をいかに行うかについても、近年議論がなされている。すなわち、過去に建設された原子力発電所が耐用年数を超過すれば、廃炉処理(いわゆるデコミッショニング)を行うこととなるが、長年の使用により原子炉及び配管設備等には放射性物質が大量に付着していることから、廃炉処理にあたっては、放射化された構造物は除外して、配管等に付着している高線量の放射線を放出するこれらの放射性物質をいかに除去するかが重要な問題となる。放射化反応で生じた放射性物質は一般に半減している放射性物質は半減期が長いものも多いことから配管等の洗浄は極めて重要である。
 近年、除染及び廃炉処理における上記問題点を解決する放射性物質の除去技術として、酸化力が極めて強いオゾン水を使用することが提案されている。上述のとおり、放射性物質(例えばセシウム-134、137)は物理的な吸着・結合の他に、有機物と錯体を形成し、他の部材と強固に結合する性質を有するところ、オゾン水による酸化作用によって放射性物質を他の部材から剥離・溶解させることによって、作業員の被ばくリスクを抑えつつ効率的に除染を行うというのがそのメカニズムである。オゾン水を使用した放射性物質の除去については、例えば、以下の特許文献1~4において開示されている。
日本国特開2002-257986号公報 日本国特開2003-075587号公報 日本国特開2005-283414号公報 日本国特開2007-309864号公報 日本国特許4059506号
 しかし、従来のオゾン水は、オゾンの濃度が低く、かつ、容易にオゾンが脱気することから、オゾン水を使用した除染技術は、想定したほどの効果を発揮できないという問題がある。
 通常の手法によりオゾンを溶解させた場合、オゾンの一部は溶媒中に溶解するものの、多くは溶媒中において低濃度の気泡として存在する。気泡の状態のオゾンは、浮力の影響を受けて容易に脱気することから、オゾン水中のオゾン濃度は極めて短い時間で急激に低下する。
 すなわち、特許文献1~4を含む従来技術においては、オゾン水の濃度が低くその酸化作用が十分でないことに加え、脱気によりオゾン水生成後1分程度でその濃度が半分程度まで低下するという欠点がある。このため、広範囲を対象に長時間にわたり行われる除染・廃炉において、散気法などの従来技術により生成されるオゾン水を使用することは現実的ではない。このことは、いわゆる従来の気液混合によりオゾン水を生成した場合も、電気分解によりオゾン水を生成した場合も同様である。
 この点、特許文献5においては、1カ月以上オゾン濃度を保持できるオゾン水の生成に関する技術が開示されている。しかしながら、発明者が特許文献5に記載の技術を利用してオゾン水を生成したところ、数日経過した段階でもオゾンはすべて脱気しており、水中にその存在を確認することはできなかった。特許文献5において1カ月以上オゾン濃度を保持できるとされた根拠は、紫外線吸収式のオゾン濃度計による測定結果であるところ、特許文献5で開示されたオゾン水は元々ナトリウム、マンガン等海水に近い成分を有しており、これに電気分解を行うことによって過マンガン酸カリウム等の過酸化物に変化したものが含まれている。このため特許文献5に開示されたオゾン水は全体として赤紫色を呈するところ、これが紫外線吸収式のオゾン濃度計の測定結果に影響を及ぼし、既に脱気しているオゾンがあたかも溶液中に残存しているかの如き測定結果が得られているものと思われる。
 また、電気分解によりオゾン水を生成する技術に関しては、電気分解時にオゾンのみならず過マンガン酸カリウム等の毒物を有する副生成物が発生する。かかるオゾン水を除染、廃炉の際に使用した場合、これらの毒物が多量に生成されてしまうという問題がある。
 本発明は従来技術における以上の課題に鑑みてなされたものであり、高濃度かつ時間経過によるオゾン濃度の低下を抑制したオゾン水を生成し、これを用いて放射性物質の除去を行う技術を実現することを目的とする。
 上記目的を達成するため、請求項1にかかる放射性物質除去装置は、原水中にオゾンを溶存させることにより生成したオゾン水を用いて、放射性物質に汚染された対象物から放射性物質を分離する放射性物質除去装置であって、オゾン分子が原水の水分子間に存在し、水素結合率が前記原水の水素結合率よりも小さくなるほどに高密度で前記オゾン分子が溶存保持されたオゾン水を生成する気液混合機構と、前記気液混合機構によって生成されたオゾン水を、放射性物質が付着した対象物に接触させ、オゾン分子の酸化作用及びオゾンがプロモーターとして働き生成される各種ラジカルの酸化作用により対象物から放射性物質を分離させるオゾン水供給機構とを備えたことを特徴とする。
 また、上記目的を達成するため、請求項2にかかる放射性物質除去装置は、上流側から下流側に向かって被処理水を通過させるよう形成され、順に絞り傾斜路と小径路と開放傾斜路とを有するベンチュリ管と、前記小径路に連通し、前記小径路に対しオゾンを供給するオゾン供給構造と、前記ベンチュリ管のうち前記小径路及び前記小径路近傍領域に対し磁場を印加する磁場回路とを備えた気液混合機構と、前記ベンチュリ管下流側から送出されたオゾン水を放射性物質が付着した対象物に接触させ、オゾン分子の酸化作用により対象物から放射性物質を分離させるオゾン水供給機構とを備えたことを特徴とする。
 また、上記目的を達成するため、請求項3にかかる放射性物質除去装置は、上記の発明において、前記オゾン水供給機構から送出されたオゾン水を15℃以下の温度にて保持する温度保持機構をさらに備えたことを特徴とする。
 また、上記目的を達成するため、請求項4にかかる放射性物質除去装置は、前記オゾン水とは別の酸化作用を有する液体を供給する酸化作用水供給機構をさらに備え、前記酸化作用水供給機構は、前記オゾン水と個別かつ同時に前記酸化作用を有する液体を対象物に供給することを特徴とする。
 また、上記目的を達成するため、請求項5にかかる放射性物質除去装置は、上記の発明において、前記オゾン水供給機構によるオゾン水供給がなされる前に、所定の塩類を含む前処理液を対象物に対し供給する塩類供給機構をさらに備えたことを特徴とする。
 また、上記ラジカルの発生を促進することを目的として、請求項6にかかる放射性物質除去装置は、上記の発明において、前記オゾン水供給機構によるオゾン水供給がなされる際に、対象物に対し、紫外線を含む電離放射線及び/または対象物自体が放出するα線、β線、γ線、X線、中性子線を含むα線、β線、γ線、X線、中性子線のいずれかを少なくとも含む電離放射線を照射する酸化促進機構を備えたことを特徴とする。
 また、上記目的を達成するため、請求項7にかかる放射性物質除去方法は、原水中にオゾンを溶存させることにより生成したオゾン水を用いて、放射性物質に汚染された対象物から放射性物質を分離する放射性物質除去方法であって、オゾン分子が原水の水分子間に存在し、水素結合率が前記原水の水素結合率よりも小さくなるほどに高密度で前記オゾン分子が溶存保持されたオゾン水を生成する気液混合工程と、前記気液混合工程によって生成されたオゾン水を、放射性物質が付着した対象物に接触させ、オゾン分子の酸化作用により対象物から放射性物質を分離させるオゾン水供給工程とを含むことを特徴とする。
 また、上記目的を達成するため、請求項8にかかる放射性物質除去方法は、上流側から下流側に向かって順に絞り傾斜路と小径路と開放傾斜路とを有するベンチュリ管に被処理液を通過させ、前記小径路に連通し、前記小径路に対しオゾンを供給することにより生成するオゾン水を用いて、放射性物質に汚染された対象物から放射性物質を分離する放射性物質除去方法であって、前記ベンチュリ管のうち前記小径路及び前記小径路近傍領域に対し磁場を印加する磁場印加工程と、前記ベンチュリ管下流側から送出されたオゾン水を放射性物質が付着した対象物に接触させ、オゾン分子の酸化作用により対象物から放射性物質を分離させるオゾン水供給工程とを含むことを特徴とする。
 また、上記目的を達成するため、請求項9にかかる放射性物質除去方法は、上記の発明において、前記オゾン水供給工程から送出されたオゾン水を15℃以下の温度にて保持する温度保持工程をさらに含むことを特徴とする。
 また、上記目的を達成するため、請求項10にかかる放射性物質除去方法は、上記の発明において、前記オゾン水とは別の酸化作用を有する液体を供給する酸化作用水供給工程をさらに含み、前記酸化作用水供給工程において、前記オゾン水と個別かつ同時に前記酸化作用を有する液体を対象物に供給することを特徴とする。
 また、上記目的を達成するため、請求項11にかかる放射性物質除去方法は、上記の発明において、前記オゾン水供給工程によるオゾン水供給がなされる前に、所定の塩類を含む前処理液を対象物に対し供給する塩類供給工程をさらに含むことを特徴とする。
 また、上記ラジカルの発生を促進することを目的として、請求項12にかかる放射性物質除去装置は、上記の発明において、前記オゾン水供給工程によるオゾン水供給がなされる際に、対象物に対し紫外線を含む電離放射線及び/または対象物自体が放出するα線、β線、γ線、X線、中性子線を含むα線、β線、γ線、X線、中性子線のいずれかを少なくとも含む電離放射線を照射する酸化促進工程をさらに含むことを特徴とする。
 本発明によれば、高濃度かつ時間経過によるオゾン濃度の低下を抑制したオゾン水を生成し、これを用いて放射性物質の除去を行う技術を提供することが可能である。
実施の形態にかかる分子水和オゾン水の構造を示す模式図である。 (a)は通常の水における水分子の状態を示す模式図であり、(b)は水分子間にオゾン分子が入り込んだ状態を示す模式図である。 実施の形態にかかる放射性物質除去装置の構造を示す模式図である。 実施の形態にかかる放射性物質除去装置を構成する気液混合機構の構造を示す模式図である。 分子水和オゾン水の生成作用を説明するための模式図である。 (a)はフーリエ変換赤外線分光分析装置の構造を示す模式図であり、(b)は分子水和オゾン水の構造解析用に改造した装置構造を示す模式図である。 分子水和オゾン水の赤外線分光測定結果を示すグラフである。 水道水を濾過した原水の赤外線分光測定結果を示すグラフである。 濾過処理を行う前の水道水に関する赤外線分光測定結果を示すグラフである。 実施の形態にかかる放射性物質除去装置を用いて生成した酸素水の測定結果を示すグラフである。 実施の形態にかかる放射性物質除去装置を用いて生成した窒素水の測定結果を示すグラフである。 実施の形態にかかる放射性物質除去装置を用いて生成した水素水の測定結果を示すグラフである。 同一温度における測定結果について、原水に関する測定結果と、分子水和オゾン水に関する測定結果を比較したグラフである。 原水に関する測定結果と、実施の形態にかかる放射性物質除去装置を用いて生成した酸素水に関する測定結果を比較したグラフである。 原水に関する測定結果と、実施の形態にかかる放射性物質除去装置を用いて生成した窒素水に関する測定結果を比較したグラフである。 原水に関する測定結果と、実施の形態にかかる放射性物質除去装置を用いて生成した水素水に関する測定結果を比較したグラフである。 原水に関する測定結果と、濾過した原水に関する測定結果を比較したグラフである。 分子水和オゾン水におけるオゾン濃度の時間変化を示すグラフである。 原子力発電所から放射性物質が拡散する状況を示す模式図である。 IAEAのセシウム-137の深度分布の調査結果を示す図である。 放射性物質と対象物(例として土壌粒子)の結合態様を説明するための模式図である。 カラム試験における測定結果を示す表である。 試験3における測定対象・測定結果を示す模式図である。 試験3における測定対象・測定結果を示す模式図である。 試験3における測定結果を示す表である。 試験3における測定結果を示す表である。 試験3における測定結果を示す表である。 変形例にかかる放射性物質除去装置を用いて生成したオゾン水におけるオゾン濃度を示すグラフである。 変形例にかかる放射性物質除去装置を用いて生成したオゾン水の濃度の時間変化を示すグラフである。
 以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
 (分子水和オゾン水について)
本実施の形態にかかる放射性物質除去装置は、オゾン分子が少なくとも原水(溶媒)の水分子間に高密度に存在し、水分子間の水素結合が形成される割合(以下「水素結合率」という。)が原水の水素結合率より小さくなる程度に高密度でオゾン分子が溶存保持された分子水和オゾン水(Ozone
water molecules hydrated)を用いて、放射性物質の除去を行う。すなわち、本発明における「分子水和オゾン水」は、従来のオゾン水のように気泡を溶解させたものとは本質的に全く異なるものである。
 より具体的には、本発明でいう分子水和オゾン水は、液全体における水素結合率を平均して観た場合に、水分子間の水素結合の一部が阻害され水素結合エネルギーが低下した状態のオゾン水をいう。すなわち、ナノ秒単位で水素結合の結合分離を繰り返すH2O分子群は、水温・圧力条件が同一であれば常に一定の割合にて結合エネルギーを示すものであり、水素結合エネルギーの割合が観測可能な程度にまで減少する場合は、顕著に高密度でオゾン分子がH2O分子群に分散していることを証明することとなる。例えば、酸素など水に溶解可能なガスの場合は、飽和密度未満の溶存状態で溶解し、水素結合エネルギーを減少させるといった作用は生じない。水は極めて短時間に流動変化する運動を間断なく繰り返しており、構造的には個々の水分子間が水素結合によって緩やかに結合したクラスター(水分子群)とそれ以外の非物質空間からなる構造を有するが、本発明の分子水和オゾン水においては、生成過程においてクラスターが適宜分解され微小化することによって非物質空間が拡大し、オゾン分子が非物質空間に高い比率で存在するという状態にあるものと推測される。分子ないし分子群の状態にて存在することからその粒径は極めて小さく(10nm以下)、従来のオゾン水のように気泡状態で存在するために浮力の影響を受けるといったことがなく、脱気が抑制され長時間にわたって水中にオゾンが保持されることとなる。
 分子水和オゾン水の概念図を図1に示す。図1は、水分子が絶え間なく運動するその瞬間の状態をモデル化した図である。図1において、水分子(H2O)中の水素(H)原子は電気陰性度の大きな酸素(O)原子と共有結合(図中の実線)により結合しており、プラスの電荷を帯びている(水素イオン)。この水素原子は、他の水分子中のマイナスの電荷を帯びた酸素原子とも水素結合(図中の点線)により結合している。不純物の無い純水においては、図中の各分子及び各分子間に水素結合が生じている領域(クラスター)以外の領域は非物質空間となり、この非物質空間中に、例えばアルコールのような水と水和する物質が入り込んでおり、そのために水とアルコールを混合した場合の総体積は、両者の単純な体積の合計よりも小さくなるのである。
 一般にガスが水に溶解する場合、アルコールを水に混合した場合と同様に、ガス分子は既存の非物質空間中に存在する。既存の非物質空間中に存在することから、溶解したガスが水分子における共有結合及び水分子間における水素結合に対して影響を及ぼすことはなく、現に少なくとも飽和濃度以下でガスが溶解している場合において、水分子間の運動エネルギーすなわち水素結合率に変化が生じたことが観測された例は、発明者らが知る限り存在しない。すなわち、通常のガス溶解作用においては、水分子間の水素結合率に変化が生じることはない。
 これに対して本発明における分子水和オゾン水は、既存の非物質空間中のみならず、通常であれば水素結合が生じている領域の多くを非物質空間化し、かかる空間にまでオゾン分子が多数入り込むことによって、従来のオゾン水と比較して高濃度のオゾンを水中に含有させているのである。
 図2(a)は通常の水中における水分子の挙動を示す模式図であり、図2(b)は本発明にかかる分子水和オゾン水における水分子とオゾン分子の挙動を示す模式図である。
 図2(a)に示すように、通常の水中において水分子はナノ秒以下の間隔で水素結合と断絶を繰り返す状態となっている。一方、図2(b)に示すように、分子水和オゾン水中においてオゾン分子は、オゾン水生成時に水分子群(クラスター)を破壊する作用が働くこともあり、水素結合の一部が切断され、非物質空間が拡大し、クラスターが形成され気体分子が入り込めなかった領域にもオゾン分子が存在している。
 個々の水分子及びオゾン分子の動き、分子間ネットワークの状態については、微小世界の話であり、かつナノ秒以下の間隔で絶えず変化することから、本発明における分子水和オゾン水が図2(b)に示す構造を有するか否か直接観察することはできない。しかしながら、図2(a)、(b)を比較すれば明らかなとおり、本発明にかかる分子水和オゾン水においては、原水(オゾン分子を含まない他は、分子水和オゾン水と成分、圧力及び温度等の諸条件が同一の水)と比較して、水素結合が生じていた部分にオゾン分子が入り込み、水素結合が切断された構造を有しており、このことを反映して、分子水和オゾン水においては原水と比較して、巨視的に水素結合エネルギーが減少することが推測される。
 現に、本実施の形態にかかる装置を用いて分子水和オゾン水を生成したところ、後述するとおり原水と比較して、水素結合エネルギーが減少することが明瞭に確認できる(図13参照)。そして、従来技術にかかるオゾン水においては、原水との比較で水素結合率が低下することはなく、従って巨視的に観察した水素結合エネルギーの減少が生じることもないから、従来のオゾン水と本発明にかかる分子水和オゾン水とは、原水との比較において水素結合エネルギーの減少が生じるか否か(より正確には、図13に示すような変化が生じるか否か)によって区別される。
 (分子水和オゾン水を用いた放射性物質除去装置)
 次に、図3を参照しつつ、上述した分子水和オゾン水を用いて放射性物質を除去する放射性物質除去装置の構成について説明する。
 本実施の形態にかかる放射性物質除去装置は、貯留タンク202と、気体供給機構203と、貯留タンク202から取り出した被処理液を貯留タンク202に戻す循環機構204と、循環機構204の途中に設けた気液混合機構(分子水和オゾン水生成装置)205と、溶解促進槽206と、貯留タンク202に付設した温度保持機構207とを備え、オゾン水供給機構208(図示省略)によって、生成した分子水和オゾン水を外部に放出する構成を有する。
 図3に示すとおり、貯留タンク202には取水バルブ202vを介して被処理液としての原水を注入可能である。貯留タンク202は、取水した原水及び循環機構204を介して循環させた気体混合液、すなわち分子水和オゾン水の少なくとも一方を貯留するためのものである。
温度保持機構207は、貯留タンク202に貯留された液体を、例えば1℃~20℃の範囲に保持するためのものである。この範囲に温度設定することにより、ヘンリー定数で説明される温度上昇に伴うオゾンの自己分解現象を抑制し、オゾン溶解及び濃度上昇を効率よく行い、かつ溶解させたオゾンの濃度低下を抑制することが可能となる。なお本実施の形態にかかる放射性物質除去装置はオゾン以外のガスについても混合可能であるところ、オゾン以外のガスについては温度上昇による分解という特性をほとんど示さないが、その場合であっても水温を一定程度に保持することによって、水分子運動の安定性を保持し、その結果処理効率を高く維持できるという利点を有する。もっとも温度保持機構207は本発明に必須のものではなく省略することも可能であり、また温度保持機構207によって保持される温度の範囲も、被処理液(原水及び/又は分子水和オゾン水)や気体(気体群)の種類・性質、さらに添加物の有無等を総合的に考慮して設定することが可能である。
温度保持機構207は、貯留タンク202から被処理液を取り出すためのポンプ211と、取り出した被処理液を冷却するための冷却機212とを含む(寒冷地等外気温が設定温度範囲を下回る場合は、ヒーター装置を付加することとしてもよい。)。ポンプ211、冷却機212及び貯留タンク202の間は、被処理液を通過させる配管213によって連結されている。
かかる構成により、貯留タンク202に貯留された被処理液は、ポンプ211により貯留タンク202から取り出され、冷却機212に送られる。冷却機212は被処理液を所定範囲の温度に冷却して貯留タンク202に戻す。ポンプ211は、図示を省略した温度計によって計測された貯留タンク202内の被処理液の温度が所定範囲を超え冷却の必要がある場合にのみ作動するよう構成されている。貯留タンク202を設けることにより、被処理液を安定状態におき、また冷却機212との組み合わせにより被処理液の温度を一定範囲に保持することが可能である。これにより、分子水和オゾン水に関して、被処理液におけるオゾン分子の状態を保持しつつ、熟成類似の作用によって溶解を促進させることが可能である。
気体供給機構203は、被処理液に混合させるガスを生成し、これを気液混合機構205に供給するための装置である。気体供給機構203は、必要に応じて圧搾等を行ったうえでガスを気液混合機構205に供給する構成としてもよい。気体供給機構203によって生成されたガスは、気体供給管217の途中に設けた電磁バルブ218と逆止弁219を介して気液混合機構205に供給される。被処理液に混合する気体が例えば大気であれば、気体生成のための機構を設ける必要はなく、圧搾装置(コンプレッサー)等が気体供給機構203の主要な構成要素となる。複数種類の気体を混合する場合には、各気体を生成又は採取等する装置を用いる。
次に、気液混合機構(分子水和オゾン水生成装置)205について図3及び図4を参照しつつ説明する。気液混合機構205はエジェクターとも呼ばれ、ベンチュリ管231と、ガスを取り込むための気体供給パイプ239と、スーパーキャビテーション作用部237と、磁気回路243とを備える。ベンチュリ管231と気体供給パイプ239は透磁性のある物質、例えば合成樹脂によって形成され、好ましくは、両者は一体的に形成されている。
ベンチュリ管231は、上流側(図4における矢印A1側)から送られてきた被処理液を下流側(図4における矢印A2側)へ通過させるためのパイプ状の外観を有し、被処理液は矢印A1からA2に沿った軸線方向(図4における長手方向)に流れる。ベンチュリ管231の中空部は、上流側から下流側に向かって順に上流側大径路232、絞り傾斜路233、小径路234、開放傾斜路235及び下流側大径路236が連通した状態に形成されている。
絞り傾斜路233は、上流側大経路232と、上流側大経路よりも断面積の小さい小径路234とを連通するためのものであり、上流側から下流側にかけて、徐々に断面積が狭まる錐形状の部材により形成されている。例えば、絞り傾斜路233は、気体供給パイプ239の軸線方向(ベンチュリ管231の軸線方向に垂直な方向)に対して50度傾斜するよう徐々に断面積が狭まる形状を有する。
開放傾斜路235は、小径路234と、小径路234よりも断面積の大きい下流側大経路236を連通するためのものであり、上流側から下流側にかけて、徐々に断面積が大きくなる錐形状の部材によって形成されている。例えば、開放傾斜路235は、気体供給パイプ239の軸線方向に対して30度傾斜するよう徐々に断面積が大きくなる形状を有する。絞り傾斜路233の傾斜角と開放傾斜路235の傾斜角は、前者が大きくなるよう構成することが好ましい。
気体供給パイプ239は、その軸線方向とベンチュリ管231の軸線方向が垂直に交わるように配置され、小径路234の軸線方向中央において、ベンチュリ管231と連通するよう形成されている。また、気体供給パイプ239は、他方で気体供給管217と連通した構成を有し、これにより、気体供給機構203から供給されるガスを、ベンチュリ管231に対して供給する機能を有する。
開放傾斜路235及び下流側大経路236の内部には、後述するスーパーキャビテーション作用に用いられるスーパーキャビテーション作用部237が設けられている。図4に示すように、スーパーキャビテーション作用部237は、その軸線方向がベンチュリ管231の軸線方向に一致するよう配置され、小径路234近傍に配置され、その断面積が徐々に大きくなる錐形状を有する拡大部237aと、拡大部237aよりも下流側に配置され拡大部237aと一体的に形成され、基本的に一様な断面形状を有する本体部237bとによって形成される。拡大部237a、本体部237b共に鉄等の強磁性体を含んで形成されている。拡大部237aのうち、小径路234側の面(ベンチュリ管231の軸線方向に垂直になるよう形成されている)である平面部237cは、開放傾斜路235及び下流側大経路236の断面に対し同心円を構成するよう形成されている。なお、スーパーキャビテーション作用部237の形状は、後述するスーパーキャビテーション作用を実現できるものであれば、図4に示されるものに限定する必要はない。
磁気回路243は、ベンチュリ管231を挟んで対抗する一方の磁石片245と他方の磁石片246と、磁石片245、246を連結すると共に、ベンチュリ管231に対し磁石片取り付け機能を有する断面U字形状の連結部材248とによって構成される。磁石片245、246によって磁気回路が形成されることによって、専ら両者の間で磁界が生じることとなり、その他の部分にて余分な磁界が生じることを防いでいる。磁気回路243は、小径路234及び/又はその近傍(特に小径路234の下流側)に磁界(磁力線)が発生するよう配置され、小径路234及び/又はその近傍(特に小径路234の下流側)を流れる流体全体に最も強い磁界が生じるよう配置することが望ましい。後述するとおり、小径路234等を通過する被処理液とガスの双方に磁力を作用させることによって、被処理液に対し最も効率的にガスを溶解させることができるためである。
磁石片245、246は、例えばネオジム磁石等によって形成されるが、磁場を形成しうるものであれば、これに限定する必要はない。連結部材248は、磁束漏れを抑制して磁力作用が被処理液及びガスになるべく集中するように、透磁率(μ)の大きな部材(鉄など)によって形成される。
溶解促進槽206は、被処理液に対するガスの溶解を促進させるためのものである。具体的には、溶解促進槽206は、気液混合機構205と配管274を介して接続された構成を有し、内部に被処理液を保持しうる円筒形状の部材によって形成される。
気液分離機構265は、被処理液と、被処理液から脱気したガスとを分離排出するためのものである。気液分離機構265によって分離されたガスは、気体分解機構267に送出され、無害化処理が施された上で外部に放出される。
循環機構204は、気液混合機構205を通過した分子水和オゾン水を再度気液混合機構205に流入させ、再度の気液混合処理を行わせるためのものである。一旦処理が行われた被処理液に対し再度ガスを注入する工程を繰り返すことによって、ガスの濃度をさらに高めるためである。循環機構204は、ポンプ271を駆動源とし、貯留タンク202と溶解促進槽206を主要な構成要素とする。すなわち、ポンプ271は貯留タンク202から配管270を介して取り出した被処理液を、逆止弁272及び配管273を介して気液混合機構205に圧送する機能を有する。圧送によって気液混合機構205を通過した被処理液は、配管274及び溶解促進槽206を抜け配管275を介して貯留タンク202に戻され、以後同様の処理が所定回数(生成しようとする分子水和オゾン水のオゾン濃度等によって決められる。)にわたって循環機構204により行われる。なお、配管275の途中にはバルブ276が設けられており、バルブ276の開閉により気液混合機構205の小径路205を通過させる被処理液の水圧が制御されている。
オゾン水供給機構(図示省略)は、生成された分子水和オゾン水を放射性物質除去対象物に対し供給(例えば噴霧)するためのものである。オゾン水供給機構の具体的構成は既知の構造を用いることとしてよいが、好ましい態様として、オゾン水供給機構は溶解促進槽206とバルブ276の間において、配管275と連通した構成にて配置されることが望ましい。
なお、必須ではないが、オゾン水供給機構は、別途生成した過酸化水素水等酸化作用を有する液体を分子水和オゾン水とともに噴霧する機構を備え、放射性物質除去対象物に対し噴霧作用を行う際に、分子水和オゾン水と過酸化水素水を個別且つ同時に対象物に噴霧する構成とすることも好ましい。かかる構成を採用した場合、促進酸化反応が生じてより効率的に放射性物質を除去することが可能となるためである。この場合、過酸化水素水の濃度は10ppmから500ppm程度とすることが好ましい。
なお、必須ではないが、オゾン水供給機構は、別途照射される電離放射線が分子水和オゾン水とともに噴霧する機構を備え、電離放射線が照射された状態にて噴霧する構成とすることも好ましい。かかる構成を採用した場合、電離放射線がラジカルプロモーターとして機能し、酸化力の強いラジカルが生じることにより効率的に放射性物質を除去することが可能となるためである。この場合、有効な電離放射線としては、紫外線、対象物自体が放出するα線、β線、γ線、X線,中性子線を含むα線、β線、γ線、X線、中性子線のいずれかを少なくとも含むこととする。除去対象物が放射性物質であることから比較的寿命が短いラジカルが対象物の直近で生成される。したがって、分子水和オゾン水と対象物自体が放出する電離放射線との組み合わせは高い除去効果を発揮する。
また、必須ではないがオゾン水供給機構とは別に、塩化アンモニウム溶液、塩化カリウム溶液等の前処理剤を噴霧する塩類供給機構(図示省略)を設けてもよい。これらの前処理剤は、特に放射性物質がセシウムである場合に、セシウムとイオン半径が近いアンモニウムイオンないしカリウムイオンがイオン化したセシウムと交換する作用を有することから、オゾン水供給機構により予めした処理剤を噴霧したうえで本発明にかかる分子水和オゾン水を噴霧することによって、より効率的な放射性物質の除去を行うことができる。
(分子水和オゾン水の生成メカニズム)
次に、本実施の形態における放射性物質除去装置による分子水和オゾン水の生成作用について、図5を参照しつつ説明する。本実施の形態における放射性物質除去装置は、(1)被処理液に混入したオゾン分子の気泡を圧力衝撃波により圧壊し、(2)小径路234を高速にて通過する被処理液にキャビテーション作用を施し、さらに(3)被処理液に対しスーパーキャビテーション作用を施す、という3段階の処理を施すことによって、少なくとも水分子群及びオゾン気泡を強烈に攪拌し、それぞれを微小化することによって本発明にかかる分子水和オゾン水を生成する。
まず、圧壊作用について説明する。小径路234を通過する被処理液は、高速、高圧で小径路234を通過する。小径路234を通過した後、被処理液は開放傾斜路235に送出されるが、開放傾斜路235に送出された直後も慣性の法則により、水は依然として高速で移動する。ところが、水が移動する経路の容積(開放傾斜路235における流路面積)は急速に増大するため、水の中に減圧現象と共に高度の真空環境が実現される。この現象により、被処理液には小径路234に接続された気体供給パイプ239内のガスを小径路234内に吸引する吸引圧力が生じ、当該作用により、気体供給パイプ239から小径路234に対しオゾン気泡が被処理液に大量に供給され、気液混合液が生成される。この際、小径路における高圧環境の影響によりオゾン気泡に対し圧力衝撃波が印加され、これにより気泡は圧壊され、微小化する。
次に、キャビテーション作用について説明する。小径路234を通過した被処理液は開放傾斜路235に流入後流域が急激に拡大すると共にその流速が減少し、さらに後続する被処理液との衝突が生じることにより乱流化し、撹拌される。この状態において磁気回路243が被処理液に対し磁場を印加することにより、被処理液に対する撹拌作用と磁力作用が相乗効果を生み出し、オゾン分子群の微細化が促進される。
次に、スーパーキャビテーション作用について説明する。被処理液中のオゾン気泡は、下流側に移動することによりスーパーキャビテーション作用部237に備わる平面部237cに衝突する。そして、気液混合液中の微細化された気泡は平面部237cとの衝突による衝撃作用と、強磁性体を含んで形成されたスーパーキャビテーション作用部237に向かう磁力線による磁力作用とにより、図5(c)に示すようにオゾン分子群は爆発的に粉砕され外周に向けて放射され、分子単位での拡散運動を起こす。放射されたオゾン分子群は周囲の水分子中に分子単位で広く拡散し、水分子の摩擦抵抗により水中の所定の位置に留まり、図5(d)に示すように水分子中の空間に留まる。
以上の工程を(望ましくは複数回)行うことによって、高濃度かつ個々の粒径が極めて微小な分子水和オゾン水が生成される。
(生成された分子水和オゾン水の物理的特性)
 次に、本実施の形態にかかる放射性物質除去装置によって生成された分子水和オゾン水の物理的特性について説明する。発明者らは、本実施の形態にかかる放射性物質除去装置を使用して実際に分子水和オゾン水等を生成し、その物理的特性について評価を行っている。
発明者らは、気液混合機構205において流入側の液送水圧を0.4MPaとし、通水速度を23m/秒とし、通水量を15リットル/分とし、ガス供給量を3リットル/分に設定し、磁気回路243については、表面磁束密度2720ガウス/吸着力35kgの磁石片を使用し、小径路234及びその近傍における磁束密度が4248ガウスとなるものを使用した。また、被処理液の温度を20℃とした。
 かかる環境下で生成した分子水和オゾン水について、まず発明者らは、X線照射、ラマン分光照射、レーザー光照射等を行うことによって、水中にオゾン分子のガス気泡の存在について測定したところ、計測可能気泡分布領域において、気泡の存在を確認できなかった。他方、溶存濃度計測装置及び試薬滴定法を用いた測定では、水中にオゾン分子が高濃度で存在することが確認されている。
以上のとおり、本発明にかかる分子水和オゾン水は、オゾンが高濃度で含有されていることは明らかであるところ、水中におけるオゾンの存在態様を確認することができなかったため、発明者らは視点を変え、本発明にかかる手法によってオゾンを混入させることにより、溶媒である水の構造がどのように変化しているかを測定することとした。
 具体的には、発明者らは、赤外線分光法(infrared
spectroscopy)を用いた水分子の構造解析を行っている。
 赤外線分光法による構造解析において、発明者らは、Perkinelmer社製のフーリエ変換赤外線分光分析装置(製品名Spectrum-one
system B)を使用した。当該分光分析装置は、図6(a)に示すように、L字型に屈曲したL字型鏡301と、検体配置用台座303と、赤外線を検体配置用台座303に導くためのプリズム302を備える。検体配置用台座303の上面中心には検体充填孔303aが形成され、検体Lをスポイトなどによって検体充填孔303aに滴下し、これに赤外線を照射することにより、赤外線分光分析が行われる。
 より具体的には、光源から発射された赤外線IR1は、L字型鏡301の第1面にて反射されてプリズム302に入射し、その進行方向を変えたうえで検体充填孔303aに至る。検体充填孔303aには検体Lが滴下されているため、赤外線IR1は検体Lにて反射する際に検体Lの構造特性等により異なる赤外線IR2に遷移し、プリズム302を通過した後、L字型鏡301の第2面にて反射され、外部に放出される。外部に放出された赤外線IR2と、光源から発射された赤外線IR1を比較することによって、検体Lの物理的特性を測定するのである。
 なお、分子水和オゾン水の分析にあたっては、図6(a)に示す構造に加え、図6(b)に示すように、検体充填孔303aの周囲に円筒形の保持器304を新たに設置した上で測定を行っている。かかる構成を採用したのは、本測定は直接的には分子水和オゾン水中の水分子の構造特性を測定する目的でなされるところ、測定のためには、水分子が高密度で集積した状態で測定することが好ましい。このため、本測定においては検体Lの温度を密度が最も高くなる3.98℃近辺となるように、生成した分子水和オゾン水を一旦0℃まで冷却すると共に、室温による温度上昇を抑制するため、検体の量を10mlに増やすこととし、そのために新たに保持器304を配置することとした。同様の理由から、検体配置用台座303及び保持器304についても、観測前に0℃まで冷却した上で測定を行っている。
 具体的には、本測定における温度条件としては、検体Lである分子水和オゾン水の温度が0℃、1℃、・・・、10℃の時点でそれぞれ赤外線分光測定を行い、かかる測定を異なるサンプルにおいて行った上で、温度ごとの平均値を算出した。また、比較のためオゾンを混入しない原水(水道水、水道水を濾過した水)及び本実施の形態にかかる放射性物質除去装置において、オゾンではなく酸素を混合した酸素水、同様に窒素を混合した窒素水、水素を混合した水素水についても赤外線分光測定を行った。
 図7は、本発明にかかる分子水和オゾン水の赤外線分光測定結果を示すグラフである。10本の線はそれぞれ下から液温0℃、1℃、・・・10℃の分子水和オゾン水の赤外線分光測定結果を示す。グラフの横軸はカイザー(cm-1)であり、赤外線の振動数に対応する。グラフの縦軸は相対的なエネルギー強度である。混入したオゾンに関しては、95%濃度の酸素を無性放電によりオゾン化したものを使用している(封入オゾンガス濃度:気相:45g/Nm3)。なお、オゾン濃度は18mg/lであった。
 また、図8は、水道水を濾過した原水の赤外線分光測定結果を示すグラフである。使用した水道水は、新潟県燕市にて供給されているものであり、図7に示す分子水和オゾン水の原水として機能するものである。なお濾過処理を行うに当たっては、イオン交換樹脂(オルガノ社製G50-Bフィルタ:CJ0102S201μmミリポア)を使用した。原水における溶存酸素濃度は8.4mg/lであった。
 図9は、濾過処理を行う前の水道水に関する赤外線分光測定結果を示すグラフである。使用した水道水は新潟県燕市にて供給されているものであり、溶存酸素濃度は8.4mg/lであった。
 図10は、本実施の形態にかかる放射性物質除去装置を用いて生成した酸素水の測定結果を示すグラフである。具体的には、気体供給機構203を介して混入するガスをオゾンではなく酸素とした上で、上述した(1)圧力衝撃波による圧壊、(2)キャビテーション作用及び(3)スーパーキャビテーション作用を所定回数施すことによって生成された酸素水について測定を行っている。
 図11は、本実施の形態にかかる放射性物質除去装置を用いて生成した窒素水の測定結果を示すグラフである。生成手法に関しては、分子水和オゾン水、図10に測定結果を示す酸素水と同様である。
 図12は、本実施の形態にかかる放射性物質除去装置を用いて生成した水素水の測定結果を示すグラフである。生成手法に関しては、分子水和オゾン水、図10に測定結果を示す酸素水及び図11に測定結果を示す窒素水と同様である。なお、溶存水素濃度は1.3mg/lであった。
 次に、本実施の形態にかかる放射性物質除去装置を生成した結果、原水の水分子に生じた変化について説明する。図13は、同一温度における測定結果について、原水に関する測定結果と、分子水和オゾン水に関する測定結果を比較したグラフである。具体的には、図13における3本の曲線のうち、一番上の曲線が原水に関する測定結果を示し、真ん中の曲線が分子水和オゾン水に関する測定結果を示し、一番下の曲線が両者の差分値を示す。
 差分値に関する曲線から明らかなとおり、本実施の形態にかかる放射性物質除去装置を用いて原水にオゾンを混入することによって、水成分の構造に関して、3200カイザー付近のエネルギー値が顕著に減少し、3600カイザー付近のエネルギー値が増加していることが示されている。3200カイザーは水素結合エネルギーに対応するエネルギー値であることから、かかるエネルギー値の減少は、すなわち水成分において水素結合が生じている割合(水素結合率)が減少していることを示すものに他ならない。従来のオゾン水において、オゾン混入前と比較して水成分の赤外線分光解析結果に図13に示すような変化は生じることがないことから、本発明にかかる分子水和オゾン水が、従来のオゾン水と異なる構造を有していることは明らかである。そして、水成分における水素結合率の減少は、水素結合を通じて個々の水分子同士が緩やかに結合した水分子群(クラスター)が微細化され、原水では水分子群の一部を形成した領域が非物質空間に転換されたものと推測される。そして、新たに生じた非物質空間に分子レベルにまで微細化されたオゾン分子ないしオゾン分子群が配置されることによって、高濃度のオゾンを含有した分子水和オゾン水が生成されたものと思われる。
 なお、本実施の形態にかかる放射性物質除去装置によれば、オゾン以外のガスについても、高濃度に水中に存在させることが可能である。
 図14、図15及び図16は、それぞれ同一温度における測定結果について、原水に関する測定結果と、本実施の形態にかかる放射性物質除去装置を用いて生成した酸素水、窒素水及び水素水に関する測定結果を比較したグラフである。図14ないし図16に示すとおり、図13と同様に水素結合に対応した3200カイザー付近のエネルギー値が明らかに減少している。他方、原水に関する測定結果と濾過水に関する測定結果を比較した図17に示すとおり、放射性物質除去装置を使用しなかった場合には、水素結合エネルギーが変化することはない。
 次に、かかる特性を示す分子水和オゾン水の化学的特性について説明する。実施の形態にかかる放射性物質除去装置において、オゾンガス発生濃度を210g/Nm3、オゾンガスの発生量を8l/分、オゾン水貯留タンクの容量を1トン、ベンチュリ管231を通過する被処理液の流量を15l/分、被処理液の水圧を0.35MPaとした上で分子水和オゾン水を生成した。なお、水温は15℃に維持している。
 かかる条件下で生成した分子水和オゾン水において、溶存するオゾンの濃度は56.7ppm(mg/l)となり、従来のオゾン水の濃度と比較して、極めて高濃度のオゾン水を実現している。また、オゾンの粒径について動的光散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製LB-550)を用いて測定したところ、平均値、中央値及び最頻値のいずれもが10nm以下であることが判明し、浮力の影響を受けない、極めて小さい粒径を実現している。
 図18は、本発明にかかる分子水和オゾン水におけるオゾン濃度の時間変化を示すグラフである。図18から明らかなとおり、本発明にかかる分子水和オゾン水は、濃度が当初の値から半減するまでに要する時間(半減期)が25時間である。従来のオゾン水における半減期が1分程度である点に鑑みると、驚異的なまでに安定的であることが明らかである。
 (分子水和オゾン水を用いた放射性物質除去作用について)
 次に、本実施の形態にかかる放射性物質除去装置を用いた放射性物質の除去作用について説明する。
 まず前提として、除去対象となる放射性物質が環境中にいかなる状態で存在するかについて説明する。図19は、原子力発電所から放射性物質が拡散する状況を示す模式図である。仮に原子力発電所において事故が発生した場合、それまで発電所内に閉じ込められていた放射性物質は、図19の点線にて示すように農地、住宅地、森林など自然界のあらゆる場所に拡散し、あらゆる物質を汚染する。
 一旦拡散した放射性物質は、環境中に存する物質と結合することにより、その場に長期間とどまるケースが多い。例えば、福島第一原子力発電所の事故の際に多量に放出され、半減期も長いセシウム134、同137の土壌中における挙動に関して、IAEA(International
Atomic Energy Agency:国際原子力機関)がチェルノブイリ原発事故に関して調査した結果によると、図20にも示すとおり、事故から11年が経過した時点においても、一旦土壌に付着した放射性物質は、土壌の表層下10cm以内の領域にその90%が依然として保持されていることが明らかにされており、土壌表面が一定期間風雨に曝された後は(いわゆるウエザリングを受けた後は)、ほとんど移動しないことが明らかにされている(移動速度は高々0.5~1cm/年程度)。移行速度が極めて低い原因として、発明者らが鋭意調査したところ、土壌に降下した放射性物質は、図21に示すように、土壌を構成する有機物と錯体を形成して強固に結合し、さらには土壌中の無機物に取り込まれて結晶構造を形成することから、単に風雨に曝されたのみでは土壌から分離することがなく、長年にわたってその場にとどまることが明らかとなった。このことは土壌のみならず、建物を構成するコンクリート、道路を構成するアスファルト等においても同様と考えられる。
 放射性物質がかかる態様にて環境下に存在する以上、これを除去するためには、単に高圧水を放射等するのみでは足りないのであって、本発明にかかる分子水和オゾン水のような、酸化力を有し有機物結合ないし有機錯体構造を破壊しうるものを噴霧することによって初めて、放射性物質の除去が可能となるものと思われる。
 上記知見に基づき、発明者らは、福島第一原子力発電所の事故により放射性物質が付着した土壌を採取し、これに対し本発明にかかる分子水和オゾン水を噴霧して放射性物質(セシウム-134、137)が除去される程度を確認したほか、福島県伊達市及び浪江町に赴き、実在する建屋、路面及び樹木等に対し分子水和オゾン水を噴霧してその効果を確認している。
(試験1)
 噴霧対象として、福島県川俣町のアスファルト道路横で採取した土壌試料を110℃の温度環境下で1時間30分にわたり乾燥処理を行い、目開き2mm及び0.6mmのステンレス製ふるいで砂礫を除去した後、試料5gを直径40mmの円柱ファンネル型ガラス製濾過器に充填し、カラム状にした。なお、当該土壌試料の粒径分布は0.6mm以下>2mm以上>0.6mm~2mmであった。フィルタとしてはGF-Dガラス繊維濾紙を使用し、土壌が濾液中に漏出しないようにした。
 噴霧した液(展開液)は、水道水(太陽光にて塩素成分を分解除去したもの)と、本発明にかかる分子水和オゾン水(濃度約57mg/l)である。展開液は200ml以上をファンネル型ガラス製濾過器に注入されるものとし、濾液については硝酸を含むメスシリンダーで受け、濾液が200mlになった段階で試料の採取を停止した。試料液を硝酸酸性としたのは、測定容器にセシウムが吸着して測定誤差が生じることを防ぐためである(カラム試験)。
 また、1lガラス製ビンに同じ土壌試料約2gを封入し、濃度約57mg/lの分子水和オゾン水500mlを添加してよく振とうした後、GF-Dガラス繊維濾紙にて200mlを攪拌しながら濾過した(バッチ試験)。
 測定装置は東京都立産業技術センターのγ線スペクトロメーター(ORTEC社製GMX-200,Seiko EG&G MCA)を使用し、同一のジオメトリーとなるようにしてから5000秒間にわたって測定した。また、土壌に関しても同一のジオメトリーとなるようにしてから5000秒間にわたって測定している。測定した核種(放射性物質)はセシウム-134(605KeV)とセシウム-137(セシウム-137と放射平衡となっているバリウム-137mが放出する662KeV)である。
 図22は、カラム試験における測定結果を示す表である。図22に示すように、土壌から礫のみを除去したものに関しては、水道水によって放射性物質を除去することができなかった一方で、分子水和オゾン水を使用すれば45パーセントもの放射性物質を除去できることが明らかとなった。また、土壌から砂、礫の双方を除去したものに関しては、分子水和オゾン水単体では放射性物質を有意に除去することはできなかったものの、分子水和オゾン水に過酸化水素水を添加して促進酸化反応を発現させた結果、52%の放射性物質を除去できることが明らかとなった。前処理を追加した場合、最大で67%の放射性物質を除去できることが判明した。
 なお、各試料を目視にて確認した場合、水道水を用いたカラム試験の結果物は透明であるが、分子水和オゾン水を用いたカラム試験の結果物及びバッチ試験の結果物は白濁しており、また、白濁の度合いは後者が勝っていた。これは、放射性物質が付着しているフミン質が土壌から分離し硝酸酸性環境下で白濁したものと思われる。したがって、分子水和オゾン水を用いて分離できるのは有機物と結合している成分が主であると考えられる。
(試験2)
 次に、発明者らは、アスファルト試験片に放射性物質に見立てた安定セシウム-133を付着させたもの対し分子水和オゾン水を噴霧することによってその効果を確認した。具体的には、対象物としてアスファルト試験片に1000ppmの安定セシウム溶液を1ml滴下したものに対し、70℃の温度環境下での乾燥処理を10回繰り返したものを用いた。複数回乾燥処理を施したのは、汚染後長時間経過した状態(エイジング)を再現するためである。
 かかるアスファルト試験片を3個用意し、第1のアスファルト試験片に対しては本発明にかかる高圧水道水を、第2のアスファルト試験片に対しては本発明にかかる分子水和オゾン水を、第3のアスファルト試験片に対しては強度約10mW/cm2で照射線量約1.2J/cm2の紫外線を照射しつつ分子水和オゾン水を、それぞれ噴霧した。
 その結果、高圧水道水を噴霧した第1のアスファルト試験片におけるセシウムの除去率は10%にとどまったのに対し、分子水和オゾン水を噴霧した第2のアスファルト試験片における除去率は70%、さらに紫外線を照射した第3のアスファルト試験片における除去率は85%となった。
(試験3)
 次に、発明者らは放射性物質が付着したと思われる実際の建物、道路及び樹木に対し本発明にかかる分子水和オゾン水を噴霧する試験を行い、効果を確認した。具体的には福島県伊達市某所及び同県浪江町某所において、建屋(建材、ガードレール等)、路面等(コンクリート、アスファルト、レンガ、石材、土壌等)、樹木等(針葉樹、広葉樹、樹皮、堆積腐植土等)を対象に分子水和オゾン水を噴霧し、対象区域から生ずる放射線の線量率の変化を測定した。建屋、路面等の具体的構成については、図23、図24に示すとおりである。なお、噴霧圧力は概ね0.45MPaとし、噴霧時間は1分~5分程度としている。また、測定機器として日立アロカメディカルTSC171
NaI(Tl)シンチレーションサーベイメーターないしCLEAR-Gamma
A2700 CSI(Tl)シンチレーションサーベイメーターを使用し、測定時に他領域に存在する放射性物質から放出される放射線の影響を排除するため、測定対象区域の周囲を厚さ3cmないし5cmの鉛遮蔽体で覆うこととした。
 図25ないし図27は、試験3の測定結果を示す表である。図25ないし図27におけるNo.(A-1、C-1、D-1等)は、図23、図24示す場所に対応するものである。例えば図25の路面に関する除去率を比較すれば、高圧水道水を噴霧した場合(A-8)は、全く除去できていないのに対し、本発明にかかる分子水和オゾン水を噴霧した場合は、何ら前処理を行わない場合であってもセシウムを59%~73%除去できるなど、顕著な効果を発揮することが明らかである。なお,ガードレールは線量率が低下しなかったがこれはガードレール背面の遮蔽ができなかったためであり、スミア法で測定すると70%以上除去できることが確認できた。
(効果)
 以上のとおり、本実施の形態にかかる放射性物質除去装置は、高濃度かつ安定した分子水和オゾン水を生成し、これを用いて放射性物質を除去する機能を有しており、これにより従来技術と比較して遥かに高い効率で放射性物質を除去することが可能である。特に、放射性物質は時間の経過に伴い対象物の有機物と結合したり,場合によっては有機錯体を形成したりすることにより、対象物に強力に結合するものであるところ、本発明にかかる分子水和オゾン水を使用することにより、その酸化力によって結合を分解し、放射性物質を水相に移行させることによって、放射性物質の除去が可能であるという利点を有する。
 放射性物質を水相に移行させることによって、例えば土壌表面に付着していた放射性物質は、オゾン水と共に地中に移動する。放射性物質が地中に移動することにより、飛程が短いα線やβ線は、上層に位置する土壌成分によって遮蔽され、土壌表面ないしその上に位置する空間における線量を低減することが可能となり、再浮遊(風による土壌表面物質の舞い上がり)による内部被ばくリスクも低減することができる。さらに付言すれば、地中に移動した放射性物質は、その位置であらたに有機物と錯体を形成し、無機物の結晶構造に取り込まれることとなり、その位置に安定的にとどまることから、以後更なる移動(例えば地下水脈への移動)が生ずることはなく、別地域にて被害が生じることもない。むしろウェザリングによる水平移動を抑制することができることから、汚染範囲の拡散を防ぐことができる。
 また、本発明にかかる分子水和オゾン水は、その酸化作用によって放射性物質を対象物から分離した後、安全無害な酸素分子に変化する。したがって、本実施の形態にかかる放射性物質除去装置を使用して放射性物質を除去した場合、別途環境汚染が生じることはないという利点を有する。
 さらに、本発明にかかる分子水和オゾン水は、オゾンが安定的に液中に存在し容易に脱気しないという特性を有している。かかる特性により、使用環境において有害な気体オゾンが拡散することを抑制できるほか、長時間にわたって放射性物質の除去機能を維持できるという利点を有する。
 かかる特性は、例えば原子力発電所等の廃炉処理に使用する場合に格段の効果を発揮する。すなわち、廃炉作業の手法として、施設の配管・原子炉に対し放射性物質の除去機能を有する液体を循環させることによって、複雑・危険な解体処理等を行うことなく配管等に付着した放射性物質を除去することが提案されている。しかしながら、既存のオゾン水を使用した場合、短時間でオゾンが脱気し放射性物質の除去機能が失われてしまうため、現実的ではない。これに対し本発明にかかる分子水和オゾン水は、液中のオゾンが長時間にわたって保持されるため、配管中を循環している間における放射性物質の除去機能の損失が抑制され、効果的に放射性物質の除去を行うことが可能である。
 発明者らが、40カ所にエルボーを設けた100mの長さのステンレス配管系に分子水和オゾン水を通水したところ、濃度の低下は僅か5%のみであった。従来のオゾン水では濃度低下が100%(すなわち、すべてのオゾンが脱気した)であることに比較すれば、本発明にかかる分子水和オゾン水が極めて優れた特性を有することが明らかである。
また、廃炉作業においては、多量の放射性物質が存在する環境下において行われるのが通常であり、配管中を循環する分子水和オゾン水は、これら外部の放射性物質から放射される多量のγ線により促進酸化反応が生じ(上述の試験2を参照のこと)、さらに効果的に放射性物質を除去することが期待できる。すなわち、γ線のエネルギーは紫外線よりも数十万倍高エネルギーであり(たとえば、紫外線のエネルギーは数eV、セシウム-137の放出するエネルギーは660keVである)、促進酸化作用による非常に高い除染効果が期待できる。
(変形例)
 次に、本実施の形態にかかる放射性物質除去装置の変形例について説明する。本変形例は、図3及び図4に示す気液混合機構205において、スーパーキャビテーション作用部237を省略した構成を有する。
 かかる構成を採用した場合、上述のスーパーキャビテーション作用を発揮することはできないが、それでもベンチュリ管231及び磁気回路243等により、圧壊作用及びキャビテーション作用を施すことが可能であり、かかる作用によって生成されたオゾン水は、従来のオゾン水と比較してオゾン気泡の粒径が十分小さく、液中に高濃度の状態で安定的に保持されることから、本発明にかかる分子水和オゾン水と同様の効果を発揮することが可能である。
 図28は、変形例にかかる放射性物質除去装置を用いて生成したオゾン水におけるオゾン濃度を示すグラフである。図28において「本件オゾン水」が変形例にかかる装置によって生成されたオゾン水を意味するところ、最大で20ppm程度の濃度のオゾン水を生成できることが明らかである。
 また、図29は、変形例にかかる放射性物質除去装置を用いて生成したオゾン水の濃度の時間変化を示すグラフである。図29から明らかなとおり、従来のオゾン水(例えば、「磁気なしオゾン水」)と比較して高濃度を維持しており、半減期も5時間程度と、従来のオゾン水と比較して極めて長期間にわたってオゾン濃度を維持できることが明らかである。
 かかる変形例を放射性物質除去装置として使用することも極めて有効であり、程度に若干の差はあるものの、本実施の形態にかかる放射性物質除去装置と同様の効果を発揮することが可能である。
 以上、実施の形態を用いて本発明について説明したが、もとより本発明は実施の形態及び変形例に示したものに限定されるものではない。実施の形態として記載したもの以外であっても、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、明細書の記載及び公知の技術に基づいて、当業者が様々な変更・応用することも本発明の予定するところであり、権利範囲に含まれることは勿論である。
 本発明は、放射性物質の除去に関し利用可能であり、特に、放射性物質が対象物の有機物と結合したり、有機錯体を形成したり、あるいは物理的に吸着することによって、対象物に強力に結合した場合における放射性物質の除去に関し利用可能である。具体的には喫緊の課題であるD&D(Decontamination & Decomissioning)技術への適用が可能である。
201 気体混合液生成装置
202 貯留タンク
203 気体供給機構
204 循環機構
205 気液混合機構
206 溶解促進槽
207 温度保持機構
231 ベンチュリ管
232 上流側大経路
233 絞り傾斜路
234 小径路
235 開放傾斜路
236 下流側大経路
237 スーパーキャビテーション作用部
239 気体供給パイプ
243 磁気回路
245、246 磁石片
265 気液分離機構
267 気体分解機構
300 赤外線分光分析装置
301 L字型鏡
302 プリズム
303 検体配置用台座
304 保持器

 

Claims (12)

  1.  原水中にオゾンを溶存させることにより生成したオゾン水を用いて、放射性物質に汚染された対象物から放射性物質を分離する放射性物質除去装置であって、
     オゾン分子が原水の水分子間に存在し、水素結合率が前記原水の水素結合率よりも小さくなるほどに高密度で前記オゾン分子が溶存保持されたオゾン水を生成する気液混合機構と、
     前記気液混合機構によって生成されたオゾン水を、放射性物質が付着した対象物に接触させ、オゾン分子の酸化作用により対象物から放射性物質を分離させるオゾン水供給機構と、
     を備えたことを特徴とする放射性物質除去装置。
  2.  上流側から下流側に向かって被処理水を通過させるよう形成され、順に絞り傾斜路と小径路と開放傾斜路とを有するベンチュリ管と、
     前記小径路に連通し、前記小径路に対しオゾンを供給するオゾン供給構造と、
     前記ベンチュリ管のうち前記小径路及び前記小径路近傍領域に対し磁場を印加する磁場回路と、
     を備えた気液混合機構と、
     前記ベンチュリ管下流側から送出されたオゾン水を放射性物質が付着した対象物に接触させ、オゾン分子の酸化作用により対象物から放射性物質を分離させるオゾン水供給機構と、
     を備えたことを特徴とする放射性物質除去装置。
  3.  前記オゾン水供給機構から送出されたオゾン水を15℃以下の温度にて保持する温度保持機構をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の放射性物質除去装置。
  4.  前記オゾン水とは別の酸化作用を有する液体を供給する酸化作用水供給機構をさらに備え、
    前記酸化作用水供給機構は、前記オゾン水と個別かつ同時に前記酸化作用を有する液体を対象物に供給することを特徴とする請求項1または2に記載の放射性物質除去装置。
  5.  前記オゾン水供給機構によるオゾン水供給がなされる前に、所定の塩類を含む前処理液を対象物に対し供給する塩類供給機構をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の放射性物質除去装置。
  6.  前記オゾン水供給機構によるオゾン水供給がなされる際に、対象物に対し、紫外線を含む電離放射線及び/または対象物自体が放出するα線、β線、γ線、X線、中性子線を含むα線、β線、γ線、X線、中性子線のいずれかを少なくとも含む電離放射線を照射する酸化促進機構を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の放射性物質除去装置。
  7.  原水中にオゾンを溶存させることにより生成したオゾン水を用いて、放射性物質に汚染された対象物から放射性物質を分離する放射性物質除去方法であって、
     オゾン分子が原水の水分子間に存在し、水素結合率が前記原水の水素結合率よりも小さくなるほどに高密度で前記オゾン分子が溶存保持されたオゾン水を生成する気液混合工程と、
     前記気液混合工程によって生成されたオゾン水を、放射性物質が付着した対象物に接触させ、オゾン分子の酸化作用により対象物から放射性物質を分離させるオゾン水供給工程と、
     を含むことを特徴とする放射性物質除去方法。
  8.  上流側から下流側に向かって順に絞り傾斜路と小径路と開放傾斜路とを有するベンチュリ管に被処理液を通過させ、前記小径路に連通し、前記小径路に対しオゾンを供給することにより生成するオゾン水を用いて、放射性物質に汚染された対象物から放射性物質を分離する放射性物質除去方法であって、
     前記ベンチュリ管のうち前記小径路及び前記小径路近傍領域に対し磁場を印加する磁場印加工程と、
     前記ベンチュリ管下流側から送出されたオゾン水を放射性物質が付着した対象物に接触させ、オゾン分子の酸化作用により対象物から放射性物質を分離させるオゾン水供給工程と、
     を含むことを特徴とする放射性物質除去方法。
  9.  前記オゾン水供給工程から送出されたオゾン水を15℃以下の温度にて保持する温度保持工程をさらに含むことを特徴とする請求項7または8に記載の放射性物質除去方法。
  10.  前記オゾン水とは別の酸化作用を有する液体を供給する酸化作用水供給工程をさらに含み、
    前記酸化作用水供給工程において、前記オゾン水と個別かつ同時に前記酸化作用を有する液体を対象物に供給することを特徴とする請求項7または8に記載の放射性物質除去方法。
  11.  前記オゾン水供給工程によるオゾン水供給がなされる前に、所定の塩類を含む前処理液を対象物に対し供給する塩類供給工程をさらに含むことを特徴とする請求項7または8に記載の放射性物質除去方法。
  12. 前記オゾン水供給工程によるオゾン水供給がなされる際に、対象物に対し紫外線を含む電離放射線及び/または対象物自体が放出するα線、β線、γ線、X線、中性子線を含むα線、β線、γ線、X線、中性子線のいずれかを少なくとも含む電離放射線を照射する酸化促進工程をさらに含むことを特徴とする請求項7または8に記載の放射性物質除去方法。

     
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