以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施の形態を説明する。
第1の実施の形態
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信システムの概略図である。この無線通信システムは、マクロ基地局(マクロeNodeB(evolved Node B))100と、ピコ基地局(ピコeNodeB)200とを備える。
無線通信システム内のマクロ基地局100およびピコ基地局200は、所定の無線アクセス技術(Radio Access Technology)、例えば3GPP(Third Generation Partnership Project)におけるLTE(Long Term Evolution)に従って、ユーザ端末300,400と無線通信を行う。本実施の形態では、無線通信システムがLTEに従って動作するが、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。本発明は、必要な設計上の変更を施した上で、他の無線アクセス技術(例えば、IEEE 802.16に規定されるWiMAX)にも適用可能である。
マクロ基地局(大電力無線基地局)100とピコ基地局(小電力無線基地局)200とは有線または無線にて相互に接続される。マクロ基地局100はマクロセル(第1のセル)Cmを形成し、各ピコ基地局200はピコセル(第2のセル)Cpを形成する。ピコセルCpは、そのピコセルCpを形成するピコ基地局200に接続されたマクロ基地局100が形成するマクロセルCm内に形成されるセルである。1つのマクロセルCm内には、複数のピコセルCpが形成され得る。
各無線基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)は、その基地局自身のセルに在圏するユーザ端末(UE、User Equipment)300,400と無線通信が可能である。逆に言うと、ユーザ端末300,400の各々は、そのユーザ端末自身が在圏するセル(マクロセルCm,ピコセルCp)に対応する基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)と無線通信が可能である。
マクロ基地局100はピコ基地局200と比較して無線送信能力(最大送信電力,平均送信電力等)が高いので、より遠くに位置するユーザ端末と無線通信可能である。したがって、マクロセルCmはピコセルCpよりも面積が大きい。例えば、マクロセルCmは半径数百メートルから数十キロメートル程度の大きさであり、ピコセルCpは半径数メートルから数十メートル程度の大きさである。
以上の説明から理解されるように、無線通信システム内のマクロ基地局100およびピコ基地局200は、送信電力(送信能力)が相異なる複数種の無線基地局が重層的に設置されたヘテロジーニアスネットワーク(Heterogeneous Network,HetNet)を構成する。
ピコセルCpがマクロセルCmの内部に重層的に形成される(オーバレイされる)ことを考慮すると、ユーザ端末がピコセルCp内に在圏する場合、そのユーザ端末は、そのピコセルCpを形成するピコ基地局200と、そのピコセルCpを包含するマクロセルCmを形成するマクロ基地局100との少なくともいずれか一方と無線通信が可能であると理解できる。
各基地局とユーザ端末との間の無線通信の方式は任意である。例えば、下りリンクではOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)が採用され、上りリンクではSC-FDMA(Single-Carrier Frequency Division Multiple Access)が採用されてもよい。
ユーザ端末300,400は、干渉抑圧合成(IRC)を実行可能であるIRC端末300と、干渉抑圧合成を実行不可能である非IRC端末400に分類される。
図3は、本発明の第1の実施の形態に係るIRC端末300の構成を示すブロック図である。IRC端末300は無線通信部310と制御部330とを備える。図において、音声・映像等を出力する出力装置およびユーザからの指示を受け付ける入力装置等の図示は、省略されている。
無線通信部310は、無線基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)と無線通信を実行するための要素であり、複数の送受信アンテナ312と、無線基地局から電波を受信して電気信号に変換する受信回路(図示せず)と、音声信号等の電気信号を電波に変換して送信する送信回路(図示せず)とを含む。無線通信部310は、IRC端末300が在圏するマクロセルCmを形成するマクロ基地局100またはピコセルCpを形成するピコ基地局200から、接続先セル情報Tを受信する。接続先セル情報Tは、ユーザ端末が接続すべき無線基地局(マクロ基地局100またはピコ基地局200)を指定する情報である。接続先セル情報Tに従って、IRC端末300はその接続先の無線基地局と通信する。
また、無線通信部310は、接続されている無線基地局(マクロ基地局100またはピコ基地局200)に端末能力情報(UE Capability Information)UCおよび受信電力測定結果を報告する(詳細は後述される)。端末能力情報UCは、ユーザ端末自身が干渉抑圧合成を実行可能であるか否かを示す情報(つまりユーザ端末がIRC端末300か非IRC端末400かを示す情報)を含む。IRC端末300については、端末能力情報UCは送信元のユーザ端末がIRC端末であることを示す。
制御部330は、端末能力情報通知部332、受信品質測定部334、受信品質補正部336、受信品質報告部338、接続部340、およびIRC実行部342を要素として内包する。接続部340およびIRC実行部342は、下りリンク通信において、無線通信部310と協調して前述の干渉抑圧合成を実行し、干渉電力を抑圧することが可能である。制御部330の他の動作の詳細は後述される。
制御部330ならびに制御部330が内包する端末能力情報通知部332、受信品質測定部334、受信品質補正部336、受信品質報告部338、接続部340、およびIRC実行部342は、IRC端末300内の図示しないCPU(Central Processing Unit)が、図示しない記憶部に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックである。
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る非IRC端末400の構成を示すブロック図である。IRC端末300と同様に、非IRC端末400は無線通信部410と制御部430とを備える。図において、音声・映像等を出力する出力装置およびユーザからの指示を受け付ける入力装置等の図示は、省略されている。概略的には、IRC端末300と非IRC端末400とはIRC実行部342を有するか否か(すなわち、干渉抑圧合成を実行可能であるか否か)において異なっており、その他の構成については同様である。
無線通信部410は、無線基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)と無線通信を実行するための要素であり、少なくとも1つの送受信アンテナ412と、無線基地局から電波を受信して電気信号に変換する受信回路(図示せず)と、音声信号等の電気信号を電波に変換して送信する送信回路(図示せず)とを含む。無線通信部410は、非IRC端末400が在圏するマクロセルCmを形成するマクロ基地局100またはピコセルCpを形成するピコ基地局200から、接続先セル情報Tを受信する。また、無線通信部410は、接続されている無線基地局(マクロ基地局100またはピコ基地局200)に端末能力情報(UE Capability Information)UCおよび受信電力測定結果を報告する。非IRC端末400については、端末能力情報UCは送信元のユーザ端末が非IRC端末であることを示す(後述するように、非IRC端末400については、端末能力情報UCに送信元のユーザ端末の干渉抑圧合成可否を示す情報を含めなくてもよく、その場合には、干渉抑圧合成可否を示す情報が端末能力情報UCに含まれないことが、送信元のユーザ端末は干渉抑圧合成を実行不可能な非IRC端末であると示すことになる)。制御部430は、端末能力情報通知部432、受信品質測定部434、受信品質補正部436、受信品質報告部438、および接続部440を要素として内包し、IRC実行部を備えない。無線通信部410および制御部430の動作の詳細は後述される。
図5は、本発明の第1の実施の形態に係るマクロ基地局100の構成を示すブロック図である。マクロ基地局100は、無線通信部110と基地局間通信部120と制御部130とを備える。
無線通信部110は、ユーザ端末と無線通信を実行するための要素であり、少なくとも1つの送受信アンテナ112と、ユーザ端末から電波を受信して電気信号に変換する受信回路(図示せず)と、音声信号等の電気信号を電波に変換して送信する送信回路(図示せず)と、下りリンク送信電力を調節する増幅器114とを含む。無線通信部110は、マクロ基地局100に在圏する各ユーザ端末に接続先セル情報Tを示す無線信号を送信する。
基地局間通信部120は、他の無線基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)と通信を実行するための要素であり、他の無線基地局と電気信号を送受信する。基地局間通信には、有線通信が利用されるが、無線通信を利用してもよい。
制御部130は、端末能力判定部132、送信電力制御部134、および接続先選択部138を要素として内包する。制御部130ならびに制御部130が内包する端末能力判定部132、送信電力制御部134、および接続先選択部138は、マクロ基地局100内の図示しないCPUが、図示しない記憶部に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックである。制御部130の動作の詳細は後述される。
図6は、本発明の第1の実施の形態に係るピコ基地局200の構成を示すブロック図である。ピコ基地局200は、無線通信部210、基地局間通信部220、および制御部230を備える。
無線通信部210は、ユーザ端末と無線通信を実行するための要素であり、少なくとも1つの送受信アンテナ212と、ユーザ端末から電波を受信して電気信号に変換する受信回路(図示せず)と、音声信号等の電気信号を電波に変換して送信する送信回路(図示せず)と、下りリンク送信電力を調節する増幅器214とを含む。
基地局間通信部220は、ピコ基地局200自身が接続されるマクロ基地局100と通信を実行するための要素であり、マクロ基地局100と電気信号を送受信する。基地局間通信には、有線通信が利用されるが、無線通信を利用してもよい。
ピコ基地局200の制御部230は、端末能力判定部232および接続先選択部238を要素として内包する。ピコ基地局200の制御部230ならびに制御部230が内包する端末能力判定部232および接続先選択部238は、ピコ基地局200内の図示しないCPUが、図示しない記憶部に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックである。制御部230の動作の詳細は後述される。
この無線通信システムで使用されるセルレンジエクスパンション(CRE)を説明する。IRC端末300の受信品質測定部334および非IRC端末400の受信品質測定部434の各々は、電波の受信品質として、そのユーザ端末が接続されている所望無線基地局から受信する電波の受信電力(例えば、参照信号受信電力。Reference Signal Received Power,RSRP)と、そのユーザ端末が接続されていない無線基地局から受信する電波の受信電力(例えば、参照信号受信電力)を測定する。ヘテロジーニアスネットワークにおいては、受信品質測定部334,434の各々は、マクロ基地局100から受信した電波の受信電力とピコ基地局200から受信した電波の受信電力を測定する。マクロ基地局100が所望無線基地局か否かを問わず、マクロ基地局100からの電波の受信電力値を第1受信電力値R1とし、ピコ基地局200が所望無線基地局か否かを問わず、ピコ基地局200からの電波の受信電力値を第2受信電力値R2とする。
IRC端末300の受信品質補正部336および非IRC端末400の受信品質補正部436の各々は、ピコ基地局200からの電波の第2受信電力値R2を所定のCRE(セルレンジエクスパンション)オフセット値(バイアス値)αを用いて増加させる。例えば、R2にαを単純に加算してもよいし、R2にαをデシベルで加算してもよい。いずれにせよ、この処理により、ピコ基地局200からの電波の受信品質が見かけの上で向上させられる。このように補正された第2受信電力値R2を補正された第2受信電力値(R2+α)と呼ぶ。CREオフセット値αは例えばユーザ端末の図示しない記憶部に記憶されている。
IRC端末300の受信品質報告部338は、第1受信電力値R1と、補正された第2受信電力値(R2+α)とを含む受信電力結果報告を示す信号を、無線通信部310を介して所望無線基地局(マクロ基地局100またはピコ基地局200)に送信する。同様にして、非IRC端末400の受信品質報告部438は、第1受信電力値R1と、補正された第2受信電力値(R2+α)とを含む受信電力結果報告を示す信号を、無線通信部410を介して所望無線基地局(マクロ基地局100またはピコ基地局200)に送信する。
ユーザ端末の所望無線基地局がマクロ基地局100である場合、受信電力結果報告を示す信号は、マクロ基地局100の無線通信部110で受信される。マクロ基地局100の接続先選択部138は、各ユーザ端末の受信電力結果報告に基づいて、そのユーザ端末が接続すべき無線基地局を選択する。この時、接続先選択部138は、最も高い受信電力を示す受信電力値(すなわち、最も良好な受信品質を示す受信品質値)に対応する無線基地局をそのユーザ端末が接続すべき無線基地局として選択する。具体的には、あるユーザ端末について、第1受信電力値R1が補正された第2受信電力値(R2+α)より大きい場合には、接続先選択部138は、マクロ基地局100をそのユーザ端末の接続先として選択する。あるユーザ端末について、第1受信電力値R1よりも補正された第2受信電力値(R2+α)が大きい場合には、接続先選択部138は、ピコ基地局200をそのユーザ端末の接続先として選択する。
接続先選択部138は、選択した無線接続先を示す接続先セル情報Tをマクロ基地局100に接続されているユーザ端末に通知する。また、接続先選択部138は、ユーザ端末の接続先が変更されるべき場合には、基地局間通信部120を介して、関連する無線基地局(例えばピコ基地局200または周辺にある他のマクロ基地局100)にユーザ端末の接続先が変更されることを通知する。
ユーザ端末の所望無線基地局がピコ基地局200である場合、受信電力結果報告を示す信号は、ピコ基地局200の無線通信部210で受信される。ピコ基地局200の接続先選択部238は、各ユーザ端末の受信電力結果報告に基づいて、そのユーザ端末が接続すべき無線基地局を選択する。この時、接続先選択部238は、最も高い受信電力を示す受信電力値(すなわち、最も良好な受信品質を示す受信品質値)に対応する無線基地局をそのユーザ端末が接続すべき無線基地局として選択する。その選択の手法は、マクロ基地局100の接続先選択部138が行う手法と同じである。
接続先選択部238は、選択した無線接続先を示す接続先セル情報Tをピコ基地局200に接続されているユーザ端末に通知する。また、接続先選択部238は、ユーザ端末の接続先が変更されるべき場合には、基地局間通信部120を介して、関連する無線基地局(例えばマクロ基地局100または周辺にある他のマクロ基地局100)にユーザ端末の接続先が変更されることを通知する。
ユーザ端末の無線通信部310または410は接続先セル情報Tを受信する。接続先セル情報Tが既にユーザ端末が接続されている無線基地局を示す場合には、ユーザ端末の接続部340または440はその接続を維持する。他方、接続先セル情報Tが他の無線基地局を示す場合には、ユーザ端末の接続部340または440はその無線基地局への接続動作を実行する。例えば、ユーザ端末がマクロ基地局100に接続している場合において、ピコ基地局200を接続先として指定する接続先セル情報Tをユーザ端末が受信すると、接続部340または440は、指定されたピコ基地局200へとユーザ端末自身を接続(オフロード)させる。
上記のように、ピコ基地局200からの電波の受信電力値R2がCREオフセット値αで補正される結果、ピコ基地局200からの電波の受信品質が見かけの上で向上させられる。このため、ピコセルCpの半径ひいては範囲が拡張させられ、その分、マクロ基地局100の処理負担が軽減される。
この無線通信システムで使用されるユーザ端末の能力に基づくeICICを説明する。マクロ基地局100は、そのマクロセルCm内にあるピコ基地局200で使用されるリソース(周波数および時間で特定される)と同じリソースを使用して移動端末300へ無線送信を行うことが可能であるとともに、それらのピコ基地局200とeICIC(拡張されたセル間干渉制御)のために協調するように構成されている。
上記の通り、IRC端末300は、送信元のユーザ端末がIRC端末であることを示す端末能力情報UCを、所望無線基地局(マクロ基地局100またはピコ基地局200)に送信し、非IRC端末400は、送信元のユーザ端末が非IRC端末であることを示す端末能力情報UCを所望無線基地局に送信する。より具体的には、IRC端末300の端末能力情報通知部332は、送信元のユーザ端末の干渉抑圧合成可否を示すビットに、干渉抑圧合成が実行可能であることを意味する「1」を設定し、これを含む端末能力情報UCを無線通信部310により送信する。非IRC端末400の端末能力情報通知部432は、送信元のユーザ端末の干渉抑圧合成可否を示すビットに、干渉抑圧合成が実行不可能であることを意味する「0」を設定し、これを含む端末能力情報UCを無線通信部310により送信する。
他の通信規格で、IRC端末のみが送信元のユーザ端末がIRC端末であることを示す情報を端末能力情報UCに含めるように規定することが考えられる。この場合には、非IRC端末は、送信元のユーザ端末の干渉抑圧合成可否を示す情報を端末能力情報UCに含めないが、そのような情報を含まない端末能力情報UCは送信元のユーザ端末が干渉抑圧合成が実行不可能であることを示す情報と考えることができる。
ユーザ端末の所望無線基地局がマクロ基地局100である場合、端末能力情報UCを示す信号は、マクロ基地局100の無線通信部110で受信される。マクロ基地局100の制御部130の端末能力判定部132は、ユーザ端末から報告された端末能力情報UCに基づいて、そのユーザ端末がIRC端末300であるか非IRC端末400であるかを判定する。当然ながら、端末能力情報UCが干渉抑圧合成を実行可能であることを示す場合には、端末能力判定部132は、そのユーザ端末がIRC端末300であると判定し、端末能力情報UCが干渉抑圧合成を実行可能であることを示す情報を含まない場合には、端末能力判定部132は、そのユーザ端末が非IRC端末400であると判定する。
ユーザ端末の所望無線基地局がピコ基地局200である場合、端末能力情報UCを示す信号は、ピコ基地局200の無線通信部210で受信される。ピコ基地局200の制御部230の端末能力判定部232は、ユーザ端末から報告された端末能力情報UCに基づいて、そのユーザ端末がIRC端末300であるか非IRC端末400であるかを判定する。端末能力判定部232は、判定結果を示す信号を基地局間通信部220によってマクロ基地局100に転送する。この判定結果を示す信号は、マクロ基地局100の基地局間通信部120に受信されて、送信電力制御部134に伝達される。
こうして、マクロ基地局100のセル内に存在するピコ基地局200に接続するすべてのユーザ端末の干渉抑圧合成の可否はマクロ基地局100の送信電力制御部134で認識される。送信電力制御部134は、ピコ基地局200に接続するユーザ端末の干渉抑圧合成能力に関する統計量を計算する。具体的には、ピコ基地局200に接続するすべてのユーザ端末の総数と、ピコ基地局200に接続するすべてのIRC端末300の数をカウントし、ピコ基地局200(そのマクロ基地局100のマクロセルCmに複数のピコ基地局200があれば、それらの複数のピコ基地局200)に接続するすべてのユーザ端末の総数に対するピコ基地局200に接続するすべてのIRC端末300の数の割合を計算する。そして、この統計量に基づいて、送信電力制御部134は、eICICのためのパラメータを設定する。
この実施の形態においては、マクロ基地局100の送信電力制御部134は、マクロ基地局100に接続するユーザ端末の干渉抑圧合成能力に関する統計量を計算しない。したがって、マクロ基地局100の端末能力判定部132は設けなくてもよい。但し、他の目的、例えば適切なMIMO(multiple-input and multiple-output)を実行するために、端末能力判定部132を設けることが好ましい。このことは、下記の第2~第5の実施の形態および変形1についても同じである。
図7は、無線通信システムの各通信要素間で送受信される無線フレームFのフォーマットを示す図である。無線フレームFは、各通信要素(マクロ基地局100、ピコ基地局200、ユーザ端末)が送信する無線信号の送信単位であり、所定の時間長(例えば、10ミリ秒)および所定の帯域幅を占める。無線フレームFが連続的に送信されることにより一連の無線信号が構成される。
無線フレームFは複数のサブフレームSFを含む。サブフレームSFは、無線フレームFよりも短い時間長(例えば、1ミリ秒)を占める送信単位であり、1つの無線フレームF内において0番(#0)から昇順にナンバリングされ得る。
図8は、この実施の形態に係る時間領域ベースのeICICの概略を示す図である。eICICの説明のため、マクロ基地局100およびそのマクロ基地局100が形成するマクロセルCm内にピコセルCpを形成するピコ基地局200が、同一の無線フレームタイミングおよび同一の周波数帯域を使用して無線信号(無線フレームF)を送信することを想定する。ここで、「同一の無線フレームタイミングで無線信号が送信される」とは、マクロ基地局100が送信する無線フレームFの送信開始時刻とピコ基地局200が送信する無線フレームFの送信開始時刻とが同時であることを意味する。すなわち、マクロ基地局100の無線通信部110とピコ基地局200の無線通信部210は、同期して無線通信を実行し得る。
マクロ基地局100からの無線信号およびピコ基地局200からの無線信号は同一の周波数帯域にて送信されるから、相互に干渉し合う。特に、マクロ基地局100の最大送信電力はピコ基地局200の最大送信電力よりも大きいので、ピコ基地局200からの無線信号に対するマクロ基地局100からの無線信号の干渉は顕著に大きい。したがって、マクロ基地局100が無線信号を常に高い送信電力で送信し続けると、ピコ基地局200からの無線信号をピコ基地局200を所望基地局とするユーザ端末が受信することが困難である。
そこで、時間領域ベースのeICICでは、図8に示すように、ピコ基地局200が継続的に一定の送信電力で下りリンク送信を実行する一方、マクロ基地局100は間欠的に下りリンク送信電力を低減する。つまり、マクロ基地局100は、ある時期で最大送信電力またはそれに近い電力で下りリンク送信を実行し、他の時期にはその最大送信電力より非常に低い送信電力で下りリンク送信を実行する。マクロ基地局100による干渉からピコ基地局200の無線信号が守られる(プロテクトされる)ことから、マクロ基地局100が低い方の送信電力(第2の下りリンク送信電力)で下りリンク送信を実行するサブフレームSFをプロテクテッドサブフレーム(Protected Subframe)PSFと称し、逆に、マクロ基地局100が高い方の送信電力(第1の下りリンク送信電力)で下りリンク送信を実行するサブフレームSFを非プロテクテッドサブフレーム(Non-Protected Subframe)NSFと称する。
マクロ基地局100の無線通信部110が低い送信電力で下りリンク送信を行うプロテクテッドサブフレームPSFでは、ピコ基地局200からの無線信号がマクロ基地局100からの無線信号による干渉を受けにくいから、ピコ基地局200が形成するピコセルCpに在圏するユーザ装置300が、ピコ基地局200からの無線信号をより品質良く受信することが可能となる。
この実施の形態は時間領域ベースのeICICに基づいており、マクロ基地局100の送信電力制御部134は、所定の時間長および所定の周波数帯域幅を占める単位リソース(無線フレームF)に含まれる、非プロテクテッドサブフレームNSF(第1のリソース)では高い方の送信電力(第1の下りリンク送信電力)で無線通信部110を作動させ、単位リソースのうちプロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)では第1の下りリンク送信電力よりも低い第2の下りリンク送信電力で無線通信部110を作動させる。また、送信電力制御部134は、ピコ基地局200に接続するユーザ端末の総数に対するIRC端末300の数の統計的割合に応じて、無線フレームF内のプロテクテッドサブフレームPSFでの下りリンク送信電力(第2の下りリンク送信電力)を調節すなわち設定する。具体的な第2の下りリンク送信電力の設定の例を図9から図12を参照して説明する。
図9に示すように、ピコセルCp内のユーザ端末のうちIRC端末300が多い場合には、マクロ基地局100の下りリンク送信電力を高く設定しても、ピコセルCpにある多くのIRC端末300は、マクロ基地局100による干渉を抑圧可能である。この場合には、図10に示すように、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を高く設定することが適切である。
他方、図11に示すように、ピコセルCp内のユーザ端末のうちIRC端末300が少ない場合には、マクロ基地局100の下りリンク送信電力を高く設定すると、ピコセルCpにある多くの非IRC端末400では、マクロ基地局100による干渉のために受信品質が低下しやすい。この場合には、図12に示すように、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を低く設定することが適切である。したがって、送信電力制御部134は、ピコ基地局200に接続するユーザ端末の総数に対するIRC端末300の数の統計的割合が大きいほど、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を高く設定する。このように、マクロ基地局100(大電力無線基地局)とピコ基地局200(小電力無線基地局)とがeICICのために協調する無線通信システムにおいて、マクロ基地局100での下りリンク送信電力を適切に制御することができる。
eICICは、小電力基地局に接続されるユーザ端末への干渉を予防または抑制する技術であるから、ピコ基地局200(小電力無線基地局)に接続される複数のユーザ端末に関する統計量に基づいて、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を設定することで、ピコ基地局200に接続される複数のユーザ端末への干渉を抑制するように第2の下りリンク送信電力を適切に制御することができる。
送信電力制御部134は、第2の下りリンク送信電力を設定すると、この第2の下りリンク送信電力に基づいて無線通信部110の増幅器114を制御する。このようにして、非プロテクテッドサブフレームNSF(第1のリソース)では高い方の第1の下りリンク送信電力で無線通信部110が下りリンク送信を実行し、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)では送信電力制御部134で設定された低い第2の下りリンク送信電力で無線通信部110が下りリンク送信を実行する。
上記の統計的割合に基づく第2の下りリンク送信電力の設定のため、表1に例示するテーブルを送信電力制御部134は使用することができる。このテーブルは、マクロ基地局100内の図示しない記憶部に記憶することができる。
このテーブルでは、統計的割合Xに応じて、第2の下りリンク送信電力の値が定められている。送信電力制御部134は、統計的割合Xに相当する第2の下りリンク送信電力の値をこのテーブルから選択することができる。このようなテーブルの代わりに、式によって、統計的割合Xに応じて、第2の下りリンク送信電力の値を算出してもよい。
ユーザ端末の端末能力情報通知部332,432は定期的に端末能力情報を接続先の無線基地局に報告し、ピコ基地局200の端末能力判定部232は定期的に端末能力の判定結果を示す信号をマクロ基地局100に転送する。マクロ基地局100の送信電力制御部134は、定期的に、ピコ基地局200に接続するユーザ端末の干渉抑圧合成能力に関する統計量を計算して、これに基づいて第2の下りリンク送信電力を決定する。このように第2の下りリンク送信電力の決定が繰り返されることにより、常に第2の下りリンク送信電力を適切に調節することができる。
上記のように、ピコセルCp内のユーザ端末のうちIRC端末300が多い場合には、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力が高く設定されることにより、マクロ基地局100の下りリンク送信効率を高めることが可能であり、マクロ基地局100に接続されているユーザ端末は高い効率で信号を受信することができる。セルレンジエクスパンションが使用されることで、マクロ基地局100に接続されているユーザ端末の信号の受信効率が高められることに加えて、第2の下りリンク送信電力が高く設定されることでマクロ基地局100に接続されているユーザ端末の信号の受信効率がさらに高められる。
送信効率の向上の理由としては、例えば、より高い送信電力による端末受信電力の増加に伴う信号の欠落の低減、高い符号化率の採用可能性、および大きい変調多値数の変調方式の採用の可能性がある。変調方式の変調多値数を説明する。例えば、64QAM(quadrature amplitude modulation)、16QAM、QPSK(quadrature phase shift keying)については、64QAMが最も干渉による特性劣化が大きく、QPSKが干渉による特性劣化が小さい。これは、変調多値数の増大に伴い信号点間距離が減少するためである。3GPPでは、無線基地局からの下りリンクのデータ信号と参照信号(reference signal)の送信電力に差を設けることが検討されている(例えば、3GPP TS 36.104, V11.0.0, Section 6.3.1.1, Table 6.3.1.1-1)。上記のように、プロテクテッドサブフレームPSFでは低い第2の下りリンク送信電力が使用されるが、参照信号の送信電力は一定である。プロテクテッドサブフレームPSFで下りリンク送信電力が低減されるのはデータ信号であり、参照信号は第2の下りリンク送信電力よりも高い一定の送信電力で送信される。LTEで下りリンク送信に使用されるOFDMAでは、サブキャリアは互いに直交しているので、理論的には、サブキャリア相互に信号の干渉が発生しない。しかし、実際には、下りリンク送信の受信側であるユーザ端末においては、高い電力で送信される参照信号によって、低い電力で送信されるデータ信号が干渉されてしまう。つまり、参照信号が、これと同じ送信元の無線基地局からのデータ信号に干渉してしまう。参照信号のデータ信号への干渉は、両方の送信電力の相違が大きいほど大きい。
プロテクテッドサブフレームPSFでの参照信号とデータ信号との送信電力の相違が大きい場合には、この相違に起因するデータ信号の干渉が大きいので、例えば64QAMのような変調多値数が大きい信号変調方式はデータ信号の変調方式として使用するには不適切であると考えられる。しかし、第2の下りリンク送信電力が高く設定されれば、プロテクテッドサブフレームPSFでの参照信号とデータ信号との送信電力の相違が縮減され、この相違に起因するデータ信号の干渉が小さい。したがって、変調多値数が大きい信号変調方式もデータ信号の変調方式として採用することができ、送信効率を向上させることができる。
第2の実施の形態
第1の実施の形態では、ピコ基地局200の端末能力判定部232が端末能力の判定結果を示す信号をマクロ基地局100に転送し、マクロ基地局100の送信電力制御部134がピコ基地局200に接続するユーザ端末の干渉抑圧合成能力に関する統計量を計算する。しかし、第2の実施の形態として、ピコ基地局200の制御部230がこの統計量を計算し、マクロ基地局100にこの統計量を報告してもよい。
より具体的には、ピコ基地局200の制御部230は、そのピコ基地局200に接続するすべてのユーザ端末の総数と、そのピコ基地局200に接続するすべてのIRC端末300の数をカウントし、そのピコ基地局200に接続するすべてのユーザ端末の総数に対するそのピコ基地局200に接続するすべてのIRC端末300の数の割合を計算する。計算された割合は、基地局間通信部220,120を介して、マクロ基地局100に報告され、この統計量に基づいて、マクロ基地局100の送信電力制御部134は、eICICのためのパラメータすなわち第2の下りリンク送信電力を設定する。
ピコ基地局200が個々のユーザ端末の端末能力の判定結果を示す信号をマクロ基地局100に送信せず、ピコ基地局200で計算された統計量をマクロ基地局100に送信することによって、ピコ基地局200とマクロ基地局100の間のトラヒック量を削減することができる。
マクロ基地局100のマクロセルCmに複数のピコ基地局200があれば、それらの複数のピコ基地局200から統計量すなわちIRC端末300の割合がマクロ基地局に報告される。この場合、マクロ基地局100の送信電力制御部134は、以下のいずれかの手法により第2の下りリンク送信電力を設定する。
マクロ基地局100の送信電力制御部134は、複数のピコ基地局200からの統計量すなわちIRC端末300の割合の平均値または中間値を求めてよい。そして、平均値または中間値に基づいて、表1に例示したテーブルまたは式に従って、送信電力制御部134は第2の下りリンク送信電力を設定してよい。
マクロ基地局100の送信電力制御部134は、複数のピコ基地局200からの統計量すなわちIRC端末300の割合の最低値を求めてよい。そして、最低値に基づいて、表1に例示したテーブルまたは式に従って、送信電力制御部134は第2の下りリンク送信電力を設定してよい。IRC端末300の割合が大きい場合には、第2の下りリンク送信電力を高く設定することができるが、第2の下りリンク送信電力が高い場合には、ピコセルCpにある非IRC端末400へ与える干渉が大きくなる懸念があり、特に非IRC端末400の割合が大きいピコセルCpについてはこれらの非IRC端末400に与える悪影響が大きくなる懸念がある。複数のピコ基地局200からのIRC端末300の割合の最低値に基づいて、第2の下りリンク送信電力を設定することにより、マクロセルCm内のすべてのピコセルCpにある非IRC端末400へ与える干渉のおそれを低減できる。
マクロ基地局100の送信電力制御部134は、複数のピコ基地局200からの統計量すなわちIRC端末300の割合の最高値を求めてよい。そして、最高値に基づいて、表1に例示したテーブルまたは式に従って、送信電力制御部134は第2の下りリンク送信電力を設定してよい。複数のピコ基地局200からのIRC端末300の割合の最高値に基づいて、第2の下りリンク送信電力を設定することにより、より高い第2の下りリンク送信電力を使用することができる。この場合、非IRC端末400の割合が大きいピコセルCpについてはこれらの非IRC端末400に与える悪影響が大きくなる懸念があるが、マクロ基地局100からの送信効率をより向上させる利点がある。
第3の実施の形態
第1の実施の形態では、マクロ基地局100の送信電力制御部134は、ピコ基地局200に接続するユーザ端末の総数に対するIRC端末300の数の割合に基づいて、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を設定する。しかし、第3の実施の形態として、送信電力制御部134は、ピコ基地局200に接続するユーザ端末への下りリンクの総トラヒック量に対するIRC端末300への下りリンクのトラヒック量に基づいて、プロテクテッドサブフレームPSFのための第2の下りリンク送信電力を設定してもよい。
第3の実施の形態において、マクロ基地局100、ピコ基地局200、およびユーザ端末(IRC端末300および非IRC端末400)の構成は、第1の実施の形態のそれらと同じでよい。第1の実施の形態と共通する特徴については詳細には説明しない。但し、以下の特徴が異なる。
ピコ基地局200の制御部230の端末能力判定部232(図6)は、ピコ基地局200と接続するユーザ端末から報告された端末能力情報UCに基づいて、そのユーザ端末がIRC端末300であるか非IRC端末400であるかを判定する。また、ピコ基地局200の制御部230は、ピコ基地局200と接続する各ユーザ端末が関与するトラヒック量を監視する。そして、制御部230は、ピコ基地局200に接続するすべてのユーザ端末への下りリンクの総トラヒック量を計算するとともに、ピコ基地局200に接続するすべてのIRC端末300への下りリンクのトラヒック量を計算する。
制御部230は、これらの計算結果を示す信号を基地局間通信部220によってマクロ基地局100に転送する。計算結果を示す信号は、マクロ基地局100の基地局間通信部120に受信されて、送信電力制御部134に伝達される。
こうして、マクロ基地局100のセル内に存在するピコ基地局200に接続するすべてのユーザ端末への下りリンクの総トラヒック量と、ピコ基地局200に接続するすべてのIRC端末300への下りリンクの総トラヒック量がマクロ基地局100の送信電力制御部134で認識される。送信電力制御部134は、ピコ基地局200に接続するユーザ端末の干渉抑圧合成能力に関する統計量を計算する。具体的には、ピコ基地局200(そのマクロ基地局100のマクロセルCmに複数のピコ基地局200があれば、それらの複数のピコ基地局200)に接続するすべてのユーザ端末への下りリンクの総トラヒック量に対するピコ基地局200に接続するすべてのIRC端末300への下りリンクのトラヒック量の統計的割合を計算する。そして、この統計量に基づいて、送信電力制御部134は、eICICのためのパラメータを設定する。つまり、マクロ基地局100の送信電力制御部134は、ピコ基地局200に接続するユーザ端末への下りリンクの総トラヒック量に対するIRC端末300への下りリンクのトラヒック量の割合に基づいて、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を設定する。
ピコ基地局200に接続するユーザ端末への下りリンクの総トラヒック量に対するIRC端末300への下りリンクのトラヒック量の割合が多い場合には、マクロ基地局100の下りリンク送信電力を高く設定しても、ピコセルCpにあって多くのトラヒックを使用するIRC端末300は、マクロ基地局100による干渉を抑圧可能である。この場合には、図10に示すように、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を高く設定することが適切である。
他方、ピコ基地局200に接続するユーザ端末への下りリンクの総トラヒック量に対するIRC端末300への下りリンクのトラヒック量の割合が少ない場合には、マクロ基地局100の下りリンク送信電力を高く設定すると、ピコセルCpにあって多くのトラヒックを使用する非IRC端末400では、マクロ基地局100による干渉のために受信品質が低下しやすい。この場合には、図12に示すように、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を低く設定することが適切である。したがって、送信電力制御部134は、ピコ基地局200に接続するユーザ端末への下りリンクの総トラヒック量に対するIRC端末300への下りリンクのトラヒック量の割合が大きいほど、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を高く設定する。このように、マクロ基地局100(大電力無線基地局)とピコ基地局200(小電力無線基地局)とがeICICのために協調する無線通信システムにおいて、マクロ基地局100での下りリンク送信電力を適切に制御することができる。
eICICは、小電力基地局に接続されるユーザ端末への干渉を予防または抑制する技術であるから、ピコ基地局200(小電力無線基地局)に接続される複数のユーザ端末に関する統計量に基づいて、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を設定することで、ピコ基地局200に接続される複数のユーザ端末への干渉を抑制するように第2の下りリンク送信電力を適切に制御することができる。第1の実施の形態に比べて、この実施の形態では、トラヒック量に基づいて、第2の下りリンク送信電力を設定するので、第2の下りリンク送信電力をより適切に制御することができる。
第1の実施の形態と同様に、上記の統計的割合に基づく第2の下りリンク送信電力の設定のため、送信電力制御部134は、表1に例示するテーブルと類似するテーブルを使用してもよいし、式を使用してもよい。
ユーザ端末の端末能力情報通知部332,432は定期的に端末能力情報を接続先の無線基地局に報告し、ピコ基地局200の制御部230は、定期的にピコ基地局200に接続するすべてのユーザ端末への下りリンクの総トラヒック量を計算するとともに、定期的にピコ基地局200に接続するすべてのIRC端末300への下りリンクのトラヒック量を計算して、これらの計算結果を示す信号を定期的にマクロ基地局100に転送する。マクロ基地局100の送信電力制御部134は、定期的に、ピコ基地局200に接続するユーザ端末の干渉抑圧合成能力に関する統計量を計算して、これに基づいて第2の下りリンク送信電力を決定する。このように第2の下りリンク送信電力の決定が繰り返されることにより、常に第2の下りリンク送信電力を適切に調節することができる。
上記のように、ピコセルCp内のユーザ端末のうちIRC端末300への下りリンクのトラヒック量が多い場合には、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力が高く設定されることにより、マクロ基地局100の下りリンク送信効率を高めることが可能であり、マクロ基地局100に接続されているユーザ端末は高い効率で信号を受信することができる。セルレンジエクスパンションが使用されることで、マクロ基地局100に接続されているユーザ端末の信号の受信効率が高められることに加えて、第2の下りリンク送信電力が高く設定されることでマクロ基地局100に接続されているユーザ端末の信号の受信効率がさらに高められる。
上記のトラヒック量の例としては、ピコ基地局200に接続する各ユーザ端末が受信する下りリンクのデータの伝送速度でもよく、上記の総トラヒック量の例としては、ピコ基地局200に接続するすべてのユーザ端末についての下りリンクのデータの伝送速度の合計でもよい。あるいは、上記のトラヒック量の例としては、各ユーザ端末への送信のためにピコ基地局200に一時的に記憶されたデータの量でもよく、上記の総トラヒック量の例としては、ピコ基地局200に接続するすべてのユーザ端末への送信のためにピコ基地局200に一時的に記憶されたデータの量の合計でもよい。あるいは、上記のトラヒック量の例としては、ピコ基地局200に接続する各ユーザ端末が受信する下りリンクの呼の数でもよく、上記の総トラヒック量の例としては、ピコ基地局200に接続するすべてのユーザ端末についての下りリンクの呼の数の合計でもよい。
第4の実施の形態
第3の実施の形態では、ピコ基地局200の制御部230がピコ基地局200に接続するすべてのユーザ端末への下りリンクの総トラヒック量と、ピコ基地局200に接続するすべてのIRC端末300への下りリンクのトラヒック量を示す信号をマクロ基地局100に転送し、マクロ基地局100の送信電力制御部134がピコ基地局200に接続するユーザ端末の干渉抑圧合成能力に関する統計量を計算する。しかし、第4の実施の形態として、ピコ基地局200の制御部230がこの統計量を計算し、マクロ基地局100にこの統計量を報告してもよい。
より具体的には、ピコ基地局200の制御部230は、そのピコ基地局200に接続するすべてのユーザ端末への下りリンクの総トラヒック量を計算するとともに、そのピコ基地局200に接続するすべてのIRC端末300への下りリンクのトラヒック量を計算し、ピコ基地局200に接続するすべてのユーザ端末への下りリンクの総トラヒック量に対するピコ基地局200に接続するすべてのIRC端末300への下りリンクのトラヒック量の統計的割合を計算する。計算された割合は、基地局間通信部220,120を介して、マクロ基地局100に報告され、この統計量に基づいて、マクロ基地局100の送信電力制御部134は、eICICのためのパラメータすなわち第2の下りリンク送信電力を設定する。
ピコ基地局200がピコ基地局200に接続するすべてのユーザ端末への下りリンクの総トラヒック量と、ピコ基地局200に接続するすべてのIRC端末300への下りリンクのトラヒック量を示す信号をマクロ基地局100に送信せず、ピコ基地局200で計算された統計的割合をマクロ基地局100に送信することによって、ピコ基地局200とマクロ基地局100の間のトラヒック量を削減することができる。
マクロ基地局100のマクロセルCmに複数のピコ基地局200があれば、それらの複数のピコ基地局200から統計量すなわちIRC端末300への下りリンクのトラヒック量の割合がマクロ基地局に報告される。この場合、マクロ基地局100の送信電力制御部134は、以下のいずれかの手法により第2の下りリンク送信電力を設定する。
マクロ基地局100の送信電力制御部134は、複数のピコ基地局200からの統計量すなわちIRC端末300への下りリンクのトラヒック量の割合の平均値または中間値を求めてよい。そして、平均値または中間値に基づいて、表1に例示したテーブルまたは式に従って、送信電力制御部134は第2の下りリンク送信電力を設定してよい。
マクロ基地局100の送信電力制御部134は、複数のピコ基地局200からの統計量すなわちIRC端末300への下りリンクのトラヒック量の割合の最低値を求めてよい。そして、最低値に基づいて、表1に例示したテーブルまたは式に従って、送信電力制御部134は第2の下りリンク送信電力を設定してよい。IRC端末300への下りリンクのトラヒック量の割合が大きい場合には、第2の下りリンク送信電力を高く設定することができるが、第2の下りリンク送信電力が高い場合には、ピコセルCpにある非IRC端末400へ与える干渉が大きくなる懸念があり、特に非IRC端末400の割合が大きいピコセルCpについてはこれらの非IRC端末400に与える悪影響が大きくなる懸念がある。複数のピコ基地局200からのIRC端末300への下りリンクのトラヒック量の割合の最低値に基づいて、第2の下りリンク送信電力を設定することにより、マクロセルCm内のすべてのピコセルCpにある非IRC端末400へ与える干渉のおそれを低減できる。
マクロ基地局100の送信電力制御部134は、複数のピコ基地局200からの統計量すなわちIRC端末300への下りリンクのトラヒック量の割合の最高値を求めてよい。そして、最高値に基づいて、表1に例示したテーブルまたは式に従って、送信電力制御部134は第2の下りリンク送信電力を設定してよい。複数のピコ基地局200からのIRC端末300への下りリンクのトラヒック量の割合の最高値に基づいて、第2の下りリンク送信電力を設定することにより、より高い第2の下りリンク送信電力を使用することができる。この場合、非IRC端末400への下りリンクのトラヒック量の割合が大きいピコセルCpについてはこれらの非IRC端末400に与える悪影響が大きくなる懸念があるが、マクロ基地局100からの送信効率をより向上させる利点がある。
第5の実施の形態
第3および第4の実施の形態では、ピコ基地局200に接続するすべてのユーザ端末への下りリンクの総トラヒック量に対するピコ基地局200に接続するすべてのIRC端末300への下りリンクのトラヒック量の割合に基づいて、マクロ基地局100の送信電力制御部134は、eICICのためのパラメータすなわち第2の下りリンク送信電力を設定する。しかし、第5の実施の形態として、トラヒック量の割合の代わりに、ピコ基地局200に接続するIRC端末300にピコ基地局200で割り当てられる下りリンクのリソースブロック(周波数および時間で特定される)の数を使用してもよい。
第5の実施の形態において、マクロ基地局100、ピコ基地局200、およびユーザ端末(IRC端末300および非IRC端末400)の構成は、第1の実施の形態のそれらと同じでよい。第1の実施の形態と共通する特徴については詳細には説明しない。但し、以下の特徴が異なる。
ピコ基地局200の制御部230は、ピコ基地局200と接続するIRC端末300に対してピコ基地局200で割り当てられる下りリンクのリソースブロックの数をカウントし、カウント値を示す信号を基地局間通信部220によってマクロ基地局100に転送する。カウント値を示す信号は、マクロ基地局100の基地局間通信部120に受信されて、送信電力制御部134に伝達される。
送信電力制御部134は、カウント値すなわちIRC端末300のための下りリンクのリソースブロックの数に基づいて、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を設定する。IRC端末300のための下りリンクのリソースブロックの数が大きい場合には、送信電力制御部134はマクロ基地局100の下りリンク送信電力を高く設定し、IRC端末300のための下りリンクのリソースブロックの数が小さい場合には、送信電力制御部134はマクロ基地局100の下りリンク送信電力を低く設定する。こうして、ピコ基地局200に接続される複数のユーザ端末への干渉を抑制するように第2の下りリンク送信電力を適切に制御することができる。第1の実施の形態に比べて、この実施の形態では、実際に利用されているリソースブロックの数に基づいて、第2の下りリンク送信電力を設定するので、第2の下りリンク送信電力をより適切に制御することができる。また、IRC端末300に対してピコ基地局200で割り当てられる下りリンクのリソースブロックの数は、ピコ基地局200において正確かつ容易に認識可能であるので、第2の下りリンク送信電力をより適切かつ容易に制御することができる。
IRC端末300への下りリンクのリソースブロックの数に基づく第2の下りリンク送信電力の設定のため、送信電力制御部134は、表1に類似するテーブルを使用してもよいし、式を使用してもよい。
ピコ基地局200の制御部230は、そのピコ基地局200で下りリンク通信に利用可能なすべてのリソースブロックの数に対する上記のカウント値の割合を計算し、この割合を示す信号をマクロ基地局100に転送し、この割合に基づいて送信電力制御部134は第2の下りリンク送信電力を設定してもよい。但し、そのピコ基地局200で下りリンク通信に利用可能なすべてのリソースブロックの割合は変化せず一定であるから、上記のカウント値はこの割合と等価であり、割合を計算する必要は必ずしもない。
マクロ基地局100のマクロセルCmに複数のピコ基地局200があれば、それらの複数のピコ基地局200から統計量すなわちIRC端末300への下りリンクのリソースブロックの数がマクロ基地局に報告される。この場合、マクロ基地局100の送信電力制御部134は、以下のいずれかの手法により第2の下りリンク送信電力を設定する。
マクロ基地局100の送信電力制御部134は、複数のピコ基地局200からの統計量すなわちIRC端末300への下りリンクのリソースブロックの数の合計、平均値または中間値を求めてよい。そして、合計、平均値または中間値に基づいて、テーブルまたは式に従って、送信電力制御部134は第2の下りリンク送信電力を設定してよい。
マクロ基地局100の送信電力制御部134は、複数のピコ基地局200からの統計量すなわちIRC端末300への下りリンクのリソースブロックの数の最低値を求めてよい。そして、最低値に基づいて、テーブルまたは式に従って、送信電力制御部134は第2の下りリンク送信電力を設定してよい。IRC端末300への下りリンクのリソースブロックの数が大きい場合には、第2の下りリンク送信電力を高く設定することができるが、第2の下りリンク送信電力が高い場合には、ピコセルCpにある非IRC端末400へ与える干渉が大きくなる懸念があり、特に非IRC端末400の割合が大きいピコセルCpについてはこれらの非IRC端末400に与える悪影響が大きくなる懸念がある。複数のピコ基地局200からのIRC端末300への下りリンクのリソースブロックの数の最低値に基づいて、第2の下りリンク送信電力を設定することにより、マクロセルCm内のすべてのピコセルCpにある非IRC端末400へ与える干渉のおそれを低減できる。
マクロ基地局100の送信電力制御部134は、複数のピコ基地局200からの統計量すなわちIRC端末300への下りリンクのリソースブロックの数の最高値を求めてよい。そして、最高値に基づいて、表1に例示したテーブルまたは式に従って、送信電力制御部134は第2の下りリンク送信電力を設定してよい。複数のピコ基地局200からのIRC端末300への下りリンクのリソースブロックの数の最高値に基づいて、第2の下りリンク送信電力を設定することにより、より高い第2の下りリンク送信電力を使用することができる。この場合、非IRC端末400への下りリンクのリソースブロックの数が大きいピコセルCpについてはこれらの非IRC端末400に与える悪影響が大きくなる懸念があるが、マクロ基地局100からの送信効率をより向上させる利点がある。
ピコ基地局200の制御部230は、定期的にピコ基地局200と接続するIRC端末300に対して割り当てられる下りリンクのリソースブロックの数をカウントし、カウント値を示す信号を定期的にマクロ基地局100に転送する。マクロ基地局100の送信電力制御部134は、定期的に、カウント値に基づいて第2の下りリンク送信電力を決定する。このように第2の下りリンク送信電力の決定が繰り返されることにより、常に第2の下りリンク送信電力を適切に調節することができる。
上記のように、ピコセルCp内のユーザ端末のうちIRC端末300のための下りリンクのリソースブロックの数が多い場合には、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力が高く設定されることにより、マクロ基地局100の下りリンク送信効率を高めることが可能であり、マクロ基地局100に接続されているユーザ端末は高い効率で信号を受信することができる。セルレンジエクスパンションが使用されることで、マクロ基地局100に接続されているユーザ端末の信号の受信効率が高められることに加えて、第2の下りリンク送信電力が高く設定されることでマクロ基地局100に接続されているユーザ端末の信号の受信効率がさらに高められる。
第6の実施の形態
上記の第1の実施の形態では、マクロ基地局100の送信電力制御部134は、ピコ基地局200に接続するユーザ端末の総数に対するIRC端末300の数の割合に基づいて、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を設定する。しかし、第6の実施の形態として、送信電力制御部134は、マクロ基地局100に接続するユーザ端末の総数に対するIRC端末300の数の割合に基づいて、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を設定してもよい。
第6の実施の形態において、ユーザ端末(IRC端末300および非IRC端末400)の構成は、第1の実施の形態のそれらと同じでよい。第1の実施の形態と共通する特徴については詳細には説明しない。但し、図13に示すように、マクロ基地局100においては、マクロ基地局100の端末能力判定部132で判定されたユーザ端末の種別に基づいて、送信電力制御部134がプロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を設定する。
また、図14に示すように、ピコ基地局200は、制御部230内に端末能力判定部232を備えていない。この実施の形態においては、マクロ基地局100の送信電力制御部134は、ピコ基地局200に接続するユーザ端末の干渉抑圧合成能力に関する統計量を計算しないからである。但し、他の目的、例えば適切なMIMOを実行するために、端末能力判定部232を設けることが好ましい。いずれにせよ、第1の実施の形態とは異なり、ピコ基地局200に接続するユーザ端末がIRC端末300であるか非IRC端末400であるかを示す判定結果を示す信号はマクロ基地局100に転送されない。このことは、下記の第7および第8の実施の形態ならびに変形2についても同じである。
ユーザ端末の所望無線基地局がマクロ基地局100である場合、端末能力情報UCを示す信号は、マクロ基地局100の無線通信部110で受信される。マクロ基地局100の制御部130の端末能力判定部132は、ユーザ端末から報告された端末能力情報UCに基づいて、そのユーザ端末がIRC端末300であるか非IRC端末400であるかを判定する。当然ながら、端末能力情報UCが干渉抑圧合成を実行可能であることを示す場合には、端末能力判定部132は、そのユーザ端末がIRC端末300であると判定し、端末能力情報UCが干渉抑圧合成を実行可能であることを示す情報を含まない場合には、端末能力判定部132は、そのユーザ端末が非IRC端末400であると判定する。この判定結果は、送信電力制御部134に伝達される。
こうして、マクロ基地局100に接続するすべてのユーザ端末の干渉抑圧合成の可否はマクロ基地局100の送信電力制御部134で認識される。送信電力制御部134は、マクロ基地局100に接続するユーザ端末の干渉抑圧合成能力に関する統計量を計算する。具体的には、マクロ基地局100に接続するすべてのユーザ端末の総数と、マクロ基地局100に接続するすべてのIRC端末300の数をカウントし、マクロ基地局100に接続するすべてのユーザ端末の総数に対するマクロ基地局100に接続するすべてのIRC端末300の数の割合を計算する。そして、この統計量に基づいて、送信電力制御部134は、eICICのためのパラメータを設定する。つまり、マクロ基地局100の送信電力制御部134は、マクロ基地局100に接続するユーザ端末の総数に対するIRC端末300の数の統計的割合に応じて、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を設定する。
eICICは、ピコ基地局200に接続される移動端末への干渉を予防または抑制する技術であるから、第1の実施の形態のように、ピコ基地局200(小電力無線基地局)に接続される複数のユーザ端末に関する統計量に基づいて、ピコ基地局200に接続される複数のユーザ端末への干渉を抑制するように第2の下りリンク送信電力を設定してもよい。しかし、ピコ基地局200(小電力無線基地局)に接続される複数のユーザ端末に関する統計量をマクロ基地局100(大電力無線基地局)で認識するには、第1の実施の形態のようにピコ基地局200からマクロ基地局100への情報の送信(例えば統計量の報告)が必要である。ところが、図9および図11に示すように、ピコ基地局200に接続する複数のユーザ端末の総数のうちIRC端末300の数の割合は、マクロ基地局100に接続する複数のユーザ端末の総数のうちIRC端末300の数の割合とほぼ同じであると考えられる。非常に離れた複数の無線基地局については、ある無線基地局でのIRC端末300に関する統計値が、他の無線基地局でのIRC端末300に関する統計値とほぼ等しいとはいえないが、近接している複数の無線基地局については、ある無線基地局でのIRC端末300に関する統計値が、他の無線基地局でのIRC端末300に関する統計値とほぼ等しいと考えられる。そこで、第6の実施の形態では、マクロ基地局100(大電力無線基地局)に接続する複数のユーザ端末に関する統計量に基づいて、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を設定する。
図9に示すように、マクロ基地局100に接続するユーザ端末のうちIRC端末300が多い場合には、ピコセルCp内のユーザ端末のうちIRC端末300も多い。ピコセルCp内のユーザ端末のうちIRC端末300が多い場合には、マクロ基地局100の下りリンク送信電力を高く設定しても、ピコセルCpにある多くのIRC端末300は、マクロ基地局100による干渉を抑圧可能である。この場合には、図10に示すように、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を高く設定することが適切である。
他方、図11に示すように、マクロ基地局100に接続するユーザ端末のうちIRC端末300が少ない場合には、ピコセルCp内のユーザ端末のうちIRC端末300も少ない。ピコセルCp内のユーザ端末のうちIRC端末300が少ない場合には、マクロ基地局100の下りリンク送信電力を高く設定すると、ピコセルCpにある多くの非IRC端末400では、マクロ基地局100による干渉のために受信品質が低下しやすい。この場合には、図12に示すように、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を低く設定することが適切である。したがって、送信電力制御部134は、マクロ基地局100に接続するユーザ端末の総数に対するIRC端末300の数の統計的割合が大きいほど、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を高く設定する。このように、マクロ基地局100(大電力無線基地局)とピコ基地局200(小電力無線基地局)とがeICICのために協調する無線通信システムにおいて、マクロ基地局100での下りリンク送信電力を適切に制御することができる。この実施の形態では、ピコ基地局200からマクロ基地局100への統計量などの報告が不要であり、ピコ基地局200からマクロ基地局100へのトラヒックおよびこれらの無線基地局での処理負担が軽減される。
第1の実施の形態と同様に、上記の統計的割合に基づく第2の下りリンク送信電力の設定のため、表1に例示するテーブルと類似するテーブルを使用してもよいし、式を使用してもよい。
マクロ基地局100の送信電力制御部134は、定期的に、マクロ基地局100に接続するユーザ端末の干渉抑圧合成能力に関する統計量を計算して、これに基づいて第2の下りリンク送信電力を決定する。このように第2の下りリンク送信電力の決定が繰り返されることにより、常に第2の下りリンク送信電力を適切に調節することができる。
上記のように、マクロセルCm内のユーザ端末のうちIRC端末300が多い場合には、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力が高く設定されることにより、マクロ基地局100の下りリンク送信効率を高めることが可能であり、マクロ基地局100に接続されているユーザ端末は高い効率で信号を受信することができる。セルレンジエクスパンションが使用されることで、マクロ基地局100に接続されているユーザ端末の信号の受信効率が高められることに加えて、第2の下りリンク送信電力が高く設定されることでマクロ基地局100に接続されているユーザ端末の信号の受信効率がさらに高められる。
第7の実施の形態
第6の実施の形態では、マクロ基地局100の送信電力制御部134は、マクロ基地局100に接続するユーザ端末の総数に対するIRC端末300の数の割合に基づいて、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を設定する。しかし、第7の実施の形態として、送信電力制御部134は、マクロ基地局100に接続するユーザ端末の総トラヒック量に対するIRC端末300のトラヒック量に基づいて、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を設定してもよい。
第7の実施の形態において、マクロ基地局100、ピコ基地局200、およびユーザ端末(IRC端末300および非IRC端末400)の構成は、第6の実施の形態のそれらと同じでよい。第6の実施の形態と共通する特徴については詳細には説明しない。但し、以下の特徴が異なる。
マクロ基地局100の制御部130の端末能力判定部132(図13)は、マクロ基地局100と接続するユーザ端末から報告された端末能力情報UCに基づいて、そのユーザ端末がIRC端末300であるか非IRC端末400であるかを判定する。また、マクロ基地局100の制御部130は、マクロ基地局100と接続する各ユーザ端末が関与するトラヒック量を監視する。そして、制御部130は、マクロ基地局100に接続するすべてのユーザ端末の総トラヒック量を計算するとともに、マクロ基地局100に接続するすべてのIRC端末300のトラヒック量を計算する。これらの計算結果は送信電力制御部134に伝達される。
こうして、マクロ基地局100に接続するすべてのユーザ端末の総トラヒック量と、マクロ基地局100に接続するすべてのIRC端末300の総トラヒック量がマクロ基地局100の送信電力制御部134で認識される。送信電力制御部134は、マクロ基地局100に接続するユーザ端末の干渉抑圧合成能力に関する統計量を計算する。具体的には、マクロ基地局100に接続するすべてのユーザ端末の総トラヒック量に対するマクロ基地局100に接続するすべてのIRC端末300のトラヒック量の統計的割合を計算する。そして、この統計量に基づいて、送信電力制御部134は、eICICのためのパラメータを設定する。つまり、マクロ基地局100の送信電力制御部134は、マクロ基地局100に接続するユーザ端末の総トラヒック量に対するIRC端末300のトラヒック量の割合に基づいて、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を設定する。
ピコ基地局200に接続する複数のユーザ端末の総トラヒック量のうちIRC端末300のトラヒック量の割合は、マクロ基地局100に接続する複数のユーザ端末の総トラヒック量のうちIRC端末300のトラヒック量の割合とほぼ同じであると考えられる。非常に離れた複数の無線基地局については、ある無線基地局でのIRC端末300に関する統計値が、他の無線基地局でのIRC端末300に関する統計値とほぼ等しいとはいえないが、近接している複数の無線基地局については、ある無線基地局でのIRC端末300に関する統計値が、他の無線基地局でのIRC端末300に関する統計値とほぼ等しいと考えられる。
マクロ基地局100に接続するユーザ端末の総トラヒック量に対するIRC端末300のトラヒック量の割合が多い場合には、ピコ基地局200に接続するユーザ端末の総トラヒック量に対するIRC端末300のトラヒック量の割合も多い。ピコ基地局200に接続するユーザ端末の総トラヒック量に対するIRC端末300のトラヒック量の割合が多い場合には、マクロ基地局100の下りリンク送信電力を高く設定しても、ピコセルCpにあって多くのトラヒックを使用するIRC端末300は、マクロ基地局100による干渉を抑圧可能である。この場合には、図10に示すように、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を高く設定することが適切である。
他方、マクロ基地局100に接続するユーザ端末の総トラヒック量に対するIRC端末300のトラヒック量の割合が少ない場合には、ピコ基地局200に接続するユーザ端末の総トラヒック量に対するIRC端末300のトラヒック量の割合も少ない。ピコ基地局200に接続するユーザ端末の総トラヒック量に対するIRC端末300のトラヒック量の割合が少ない場合には、マクロ基地局100の下りリンク送信電力を高く設定すると、ピコセルCpにあって多くのトラヒックを使用する非IRC端末400では、マクロ基地局100による干渉のために受信品質が低下しやすい。この場合には、図12に示すように、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を低く設定することが適切である。したがって、送信電力制御部134は、マクロ基地局100に接続するユーザ端末の総トラヒック量に対するIRC端末300のトラヒック量の割合が大きいほど、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を高く設定する。このように、マクロ基地局100(大電力無線基地局)とピコ基地局200(小電力無線基地局)とがeICICのために協調する無線通信システムにおいて、マクロ基地局100での下りリンク送信電力を適切に制御することができる。この実施の形態では、ピコ基地局200からマクロ基地局100への統計量などの報告が不要であり、ピコ基地局200からマクロ基地局100へのトラヒックおよびこれらの無線基地局での処理負担が軽減される。第6の実施の形態に比べて、この実施の形態では、トラヒック量に基づいて、第2の下りリンク送信電力を設定するので、第2の下りリンク送信電力をより適切に制御することができる。
第1の実施の形態と同様に、上記の統計的割合に基づく第2の下りリンク送信電力の設定のため、表1に例示するテーブルと類似するテーブルを使用してもよいし、式を使用してもよい。
ユーザ端末の端末能力情報通知部332,432は定期的に端末能力情報を接続先の無線基地局に報告し、マクロ基地局100の送信電力制御部134は、定期的に、マクロ基地局100に接続するユーザ端末の干渉抑圧合成能力に関する統計量を計算して、これに基づいて第2の下りリンク送信電力を決定する。このように第2の下りリンク送信電力の決定が繰り返されることにより、常に第2の下りリンク送信電力を適切に調節することができる。
上記のように、マクロセルCm内のユーザ端末のうちIRC端末300への下りリンクのトラヒック量が多い場合には、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力が高く設定されることにより、マクロ基地局100の下りリンク送信効率を高めることが可能であり、マクロ基地局100に接続されているユーザ端末は高い効率で信号を受信することができる。セルレンジエクスパンションが使用されることで、マクロ基地局100に接続されているユーザ端末の信号の受信効率が高められることに加えて、第2の下りリンク送信電力が高く設定されることでマクロ基地局100に接続されているユーザ端末の信号の受信効率がさらに高められる。
上記のトラヒック量の例としては、マクロ基地局100に接続する各ユーザ端末が受信する下りリンクのデータの伝送速度でもよく、上記の総トラヒック量の例としては、マクロ基地局100に接続するすべてのユーザ端末についての下りリンクのデータの伝送速度の合計でもよい。あるいは、上記のトラヒック量の例としては、各ユーザ端末への送信のためにマクロ基地局100に一時的に記憶されたデータの量でもよく、上記の総トラヒック量の例としては、マクロ基地局100に接続するすべてのユーザ端末への送信のためにマクロ基地局100に一時的に記憶されたデータの量の合計でもよい。あるいは、上記のトラヒック量の例としては、マクロ基地局100に接続する各ユーザ端末が受信する下りリンクの呼の数でもよく、上記の総トラヒック量の例としては、マクロ基地局100に接続するすべてのユーザ端末についての下りリンクの呼の数の合計でもよい。
第8の実施の形態
第8の実施の形態として、第7の実施の形態のトラヒック量の割合の代わりに、マクロ基地局100に接続するIRC端末300にマクロ基地局100で割り当てられる下りリンクのリソースブロックの数を使用してもよい。この実施の形態は、ピコ基地局200に接続するIRC端末300のための下りリンクのリソースブロックの数は、マクロ基地局100に接続するIRC端末300のための下りリンクのリソースブロックの数とほぼ同じであるという推定に基づいている。
第8の実施の形態において、マクロ基地局100、ピコ基地局200、およびユーザ端末(IRC端末300および非IRC端末400)の構成は、第6の実施の形態のそれらと同じでよい。第6の実施の形態と共通する特徴については詳細には説明しない。但し、以下の特徴が異なる。
マクロ基地局100の制御部130は、マクロ基地局100と接続するIRC端末300に対してマクロ基地局100で割り当てられる下りリンクのリソースブロックの数をカウントする。
送信電力制御部134は、カウント値すなわちIRC端末300のための下りリンクのリソースブロックの数に基づいて、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を設定する。IRC端末300のための下りリンクのリソースブロックの数が大きい場合には、送信電力制御部134はマクロ基地局100の下りリンク送信電力を高く設定し、IRC端末300のための下りリンクのリソースブロックの数が小さい場合には、送信電力制御部134はマクロ基地局100の下りリンク送信電力を低く設定する。こうして、ピコ基地局200に接続される複数のユーザ端末への干渉を抑制するように第2の下りリンク送信電力を適切に制御することができる。第6の実施の形態に比べて、この実施の形態では、実際に利用されているリソースブロックの数に基づいて、第2の下りリンク送信電力を設定するので、第2の下りリンク送信電力をより適切に制御することができる。また、IRC端末300に対してマクロ基地局100で割り当てられる下りリンクのリソースブロックの数は、マクロ基地局100において正確かつ容易に認識可能であるので、第2の下りリンク送信電力をより適切かつ容易に制御することができる。
IRC端末300への下りリンクのリソースブロックの数に基づく第2の下りリンク送信電力の設定のため、送信電力制御部134は、表1に類似するテーブルを使用してもよいし、式を使用してもよい。
マクロ基地局100の制御部130は、そのマクロ基地局100で下りリンク通信に利用可能なすべてのリソースブロックの数に対する上記のカウント値の割合を計算してもよい。但し、そのマクロ基地局100で下りリンク通信に利用可能なすべてのリソースブロックの割合は変化せず一定であるから、上記のカウント値はこの割合と等価であり、割合を計算する必要は必ずしもない。
マクロ基地局100の制御部130は、定期的にマクロ基地局100と接続するIRC端末300に対して割り当てられる下りリンクのリソースブロックの数をカウントし、マクロ基地局100の送信電力制御部134は、定期的に、カウント値に基づいて第2の下りリンク送信電力を決定する。このように第2の下りリンク送信電力の決定が繰り返されることにより、常に第2の下りリンク送信電力を適切に調節することができる。
上記のように、マクロセルCm内のユーザ端末のうちIRC端末300のための下りリンクのリソースブロックの数が多い場合には、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力が高く設定されることにより、マクロ基地局100の下りリンク送信効率を高めることが可能であり、マクロ基地局100に接続されているユーザ端末は高い効率で信号を受信することができる。セルレンジエクスパンションが使用されることで、マクロ基地局100に接続されているユーザ端末の信号の受信効率が高められることに加えて、第2の下りリンク送信電力が高く設定されることでマクロ基地局100に接続されているユーザ端末の信号の受信効率がさらに高められる。
他の変形
変形1
第1~第4の実施の形態において、マクロ基地局100の送信電力制御部134は、ピコ基地局200に接続する複数のユーザ端末のそれぞれの干渉抑圧合成能力のレベル(干渉抑圧合成タイプ)を考慮して、第2の下りリンク送信電力(プロテクテッドサブフレームでの下り送信電力)を調節してもよい。
IRC端末300は、例えば下記の3タイプに分類することができる。
1)接続する基地局からの所望信号のチャネル推定結果のみを用いて干渉信号成分をブラインド推定し、推定された干渉信号成分に基づいて、干渉電力を抑圧する移動端末。非特許文献3に記載されたIRC受信器はこのタイプに該当し、干渉信号のチャネル推定が不可能な場合でも、IRCを実行する。
2)干渉基地局からの干渉信号のチャネル推定結果を利用して干渉電力を抑圧する移動端末。この移動端末は、干渉信号のチャネル推定が可能である。
3)逐次干渉キャンセル(SIC)を実行する端末。非特許文献4に記載された受信器はこのタイプに該当する。SICを実行する移動端末は、干渉信号を復調し(場合によってはさらに復号し)、受信信号から干渉信号を逐次的に減算することにより、当該移動端末宛ての所望信号を得る。
タイプ3は最も高い干渉抑圧合成能力を有し、タイプ1は最も低い干渉抑圧合成能力を有する。
各非IRC端末400において、端末能力情報通知部432は、そのユーザ端末が非IRC端末であることを示す端末能力情報を、そのユーザ端末が接続されている無線基地局(マクロ基地局100またはピコ基地局200)に報告する。各IRC端末300において、端末能力情報通知部332は、そのIRC端末自身の干渉抑圧合成能力に対応する端末能力情報を、IRC端末が接続されている無線基地局(マクロ基地局100またはピコ基地局200)に報告する。
例えば、端末能力情報は、表2に例示する2ビットの情報であってよい。なお、非IRC端末の能力情報については通知しなくてもよく、端末能力情報が通知されていない端末がすなわち非IRC端末と認識できる。
第1の実施の形態の変形として、ピコ基地局200の制御部230の端末能力判定部232は、基地局間通信部220により、各ユーザ端末の端末能力情報をマクロ基地局100に報告する。マクロ基地局100のセル内に存在するピコ基地局200に接続するすべてのユーザ端末の端末能力情報はマクロ基地局100の送信電力制御部134で認識される。送信電力制御部134は、ピコ基地局200に接続するIRC端末300の各々に、そのIRC端末300の干渉抑圧合成能力のレベル(干渉抑圧合成タイプ)に応じた重み付けを与えることができ、さらにピコ基地局200に接続するユーザ端末の総数に対するIRC端末300の数の割合Xを計算することができる。具体的には、下記の式(1)に従って割合Xを計算することができる。
ここで、N
p0はピコ基地局200に接続する非IRC端末400の数、N
p1はピコ基地局200に接続するタイプ1のIRC端末300の数、N
p2はピコ基地局200に接続するタイプ2のIRC端末300の数、N
p3はピコ基地局200に接続するタイプ3のIRC端末300の数である。a,b,cは重み付け係数であり、1≦a<b<cである。
そして、送信電力制御部134は、割合Xが大きいほど、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を高く設定することができる。第2の下りリンク送信電力の設定のため、表1に例示するテーブルと類似するテーブルを使用してもよいし、式を使用してもよい。
第2の実施の形態の変形として、ピコ基地局200の制御部230が式(1)に従って割合Xを計算し、割合Xをマクロ基地局100に報告してもよく、マクロ基地局100の送信電力制御部134が割合Xに基づいて第2の下りリンク送信電力を設定してもよい。マクロ基地局100のマクロセルCmに複数のピコ基地局200があれば、第2の実施の形態と同様に、送信電力制御部134は、複数のピコ基地局200から報告される割合Xの平均値、中間値、最低値または最高値を計算し、その値に基づいて第2の下りリンク送信電力を設定してもよい。
第3の実施の形態の変形として、ピコ基地局200の制御部230の端末能力判定部232は、基地局間通信部220により、各ユーザ端末の端末能力情報をマクロ基地局100に報告する。マクロ基地局100のセル内に存在するピコ基地局200に接続するすべてのユーザ端末の端末能力情報はマクロ基地局100の送信電力制御部134で認識される。送信電力制御部134は、ピコ基地局200に接続するIRC端末300の各々に、そのIRC端末300の干渉抑圧合成能力のレベル(干渉抑圧合成タイプ)に応じた重み付けを与えることができ、さらにピコ基地局200に接続するユーザ端末の総トラヒック量に対するIRC端末300のトラヒック量の割合X
Tを計算することができる。具体的には、下記の式(2)に従って割合X
Tを計算することができる。
ここで、T
p0はピコ基地局200に接続する非IRC端末400のトラヒック量、T
p1はピコ基地局200に接続するタイプ1のIRC端末300のトラヒック量、T
p2はピコ基地局200に接続するタイプ2のIRC端末300のトラヒック量、T
p3はピコ基地局200に接続するタイプ3のIRC端末300のトラヒック量である。a,b,cは重み付け係数であり、1≦a<b<cである。
そして、送信電力制御部134は、割合XTが大きいほど、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を高く設定することができる。第2の下りリンク送信電力の設定のため、表1に例示するテーブルと類似するテーブルを使用してもよいし、式を使用してもよい。
第4の実施の形態の変形として、ピコ基地局200の制御部230が式(2)に従って割合XTを計算し、割合XTをマクロ基地局100に報告してもよく、マクロ基地局100の送信電力制御部134が割合XTに基づいて第2の下りリンク送信電力を設定してもよい。マクロ基地局100のマクロセルCmに複数のピコ基地局200があれば、第4の実施の形態と同様に、送信電力制御部134は、複数のピコ基地局200から報告される割合XTの平均値、中間値、最低値または最高値を計算し、その値に基づいて第2の下りリンク送信電力を設定してもよい。
この変形では、マクロ基地局100の送信電力制御部134は、ピコ基地局200に接続する複数のIRC端末300のそれぞれの干渉抑圧合成能力のレベルを考慮して、第2の下りリンク送信電力(プロテクテッドサブフレームでの下り送信電力)を調節する。ピコセルCp内に干渉抑圧合成能力が高いIRC端末300が多い場合には、マクロ基地局100がプロテクテッドサブフレームでの下り送信電力を高くしても、ピコセルCpにある多くのIRC端末300は、マクロ基地局100による干渉を抑圧可能である。したがって、上記のように、ピコ基地局200に接続するユーザ端末の各々に、そのユーザ端末の干渉抑圧合成能力のレベル(干渉抑圧合成タイプ)に応じた重み付けを与えることにより、第2の下りリンク送信電力を適切に設定することができる。
変形2
第6および第7の実施の形態において、マクロ基地局100の送信電力制御部134は、マクロ基地局100に接続する複数のユーザ端末のそれぞれの干渉抑圧合成能力のレベル(干渉抑圧合成タイプ)を考慮して、第2の下りリンク送信電力(プロテクテッドサブフレームでの下り送信電力)を調節してもよい。
変形1と同様に、各ユーザ端末は、そのユーザ端末が接続されている無線基地局(マクロ基地局100またはピコ基地局200)に端末能力情報を報告する。マクロ基地局100に接続するすべてのユーザ端末の端末能力情報はマクロ基地局100の送信電力制御部134で認識される。第6の実施の形態の変形として、送信電力制御部134は、マクロ基地局100に接続するIRC端末300の各々に、そのIRC端末300の干渉抑圧合成能力(干渉抑圧合成タイプ)に応じた重み付けを与えることができ、さらにマクロ基地局100に接続するユーザ端末の総数に対するIRC端末300の数の割合X
mを計算する。具体的には、下記の式(3)に従って割合X
mを計算することができる。
ここで、N
m0はマクロ基地局100に接続する非IRC端末400の数、N
m1はマクロ基地局100に接続するタイプ1のIRC端末300の数、N
m2はマクロ基地局100に接続するタイプ2のIRC端末300の数、N
m3はマクロ基地局100に接続するタイプ3のIRC端末300の数である。a,b,cは重み付け係数であり、1≦a<b<cである。
そして、送信電力制御部134は、割合Xmが大きいほど、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を高く設定することができる。第2の下りリンク送信電力の設定のため、表1に例示するテーブルと類似するテーブルを使用してもよいし、式を使用してもよい。
第7の実施の形態の変形として、送信電力制御部134は、マクロ基地局100に接続するIRC端末300の各々に、そのIRC端末300の干渉抑圧合成能力(干渉抑圧合成タイプ)に応じた重み付けを与えることができ、さらにマクロ基地局100に接続するユーザ端末の総トラヒック量に対するIRC端末300のトラヒック量の割合X
mTを計算することができる。具体的には、下記の式(4)に従って割合X
mTを計算することができる。
ここで、T
m0はマクロ基地局100に接続する非IRC端末400のトラヒック量、T
m1はマクロ基地局100に接続するタイプ1のIRC端末300のトラヒック量、T
m2はマクロ基地局100に接続するタイプ2のIRC端末300のトラヒック量、T
m3はマクロ基地局100に接続するタイプ3のIRC端末300のトラヒック量である。a,b,cは重み付け係数であり、1≦a<b<cである。
そして、送信電力制御部134は、割合XmTが大きいほど、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を高く設定することができる。第2の下りリンク送信電力の設定のため、表1に例示するテーブルと類似するテーブルを使用してもよいし、式を使用してもよい。
この変形では、マクロ基地局100の送信電力制御部134は、マクロ基地局100に接続する複数のIRC端末300のそれぞれの干渉抑圧合成能力のレベルを考慮して、第2の下りリンク送信電力(プロテクテッドサブフレームでの下り送信電力)を調節する。マクロセルCm内に干渉抑圧合成能力が高いIRC端末300が多い場合には、ピコセルCp内でも干渉抑圧合成能力が高いIRC端末300が多いと考えられる。ピコセルCp内に干渉抑圧合成能力が高いIRC端末300が多い場合には、マクロ基地局100がプロテクテッドサブフレームでの下り送信電力を高くしても、ピコセルCpにある多くのIRC端末300は、マクロ基地局100による干渉を抑圧可能である。したがって、上記のように、ピコ基地局200に接続するユーザ端末の各々に、そのユーザ端末の干渉抑圧合成能力のレベル(干渉抑圧合成タイプ)に応じた重み付けを与えることにより、第2の下りリンク送信電力を適切に設定することができる。
変形3
図15は、本発明の変形に係るマクロ基地局100の構成を示すブロック図である。この変形において、マクロ基地局100の制御部130は、セルレンジエクスパンション(CRE)オフセット値制御部140を備える。図16は、本発明の変形に係るピコ基地局200の構成を示すブロック図である。この変形において、ピコ基地局200の制御部230は、セルレンジエクスパンション(CRE)オフセット値制御部240を備える。変形1と同様に、各ユーザ端末は、そのユーザ端末が接続されている無線基地局(マクロ基地局100またはピコ基地局200)に端末能力情報を報告する。端末能力情報は、表2に例示する2ビットの情報であってよい。なお、非IRC端末の能力情報については通知しなくてもよく、端末能力情報が通知されていない端末がすなわち非IRC端末と認識できる。
ユーザ端末の所望無線基地局がマクロ基地局100である場合、端末能力情報を示す信号は、マクロ基地局100の無線通信部110で受信される。マクロ基地局100の制御部130の端末能力判定部132は、ユーザ端末から報告された端末能力情報からそのユーザ端末の干渉抑圧合成能力のレベル(干渉抑圧合成タイプ)を判断し、CREオフセット値制御部140はユーザ端末の干渉抑圧合成能力のレベルに基づいて、そのユーザ端末のためのCREオフセット値を制御する。ユーザ端末の所望無線基地局がピコ基地局200である場合、端末能力情報を示す信号は、ピコ基地局200の無線通信部210で受信される。ピコ基地局200の制御部230の端末能力判定部232は、ユーザ端末から報告された端末能力情報からそのユーザ端末の干渉抑圧合成能力のレベル(干渉抑圧合成タイプ)を判断し、CREオフセット値制御部240はユーザ端末の干渉抑圧合成能力のレベルに基づいて、そのユーザ端末のためのCREオフセット値を制御する。
CREオフセット値とは、ユーザ端末がピコ基地局200からの受信品質または受信電力を補正するためのオフセット値である。例えば、IRC端末300の受信品質補正部336および非IRC端末400の受信品質補正部436は、ピコ基地局200からの電波の第2受信電力値R2をCREオフセット値αを用いて増加させる。第1の実施の形態と異なり、CREオフセット値αはこの変形では可変である。第1の実施の形態と同様に、オフセット値αで補正された第2受信電力値R2は、当該ユーザ端末の接続先を決定するために、マクロ基地局100の接続先選択部138およびピコ基地局200の接続先選択部238で使用される。
CREオフセット値制御部140または240は、ユーザ端末の干渉抑圧合成能力のレベルが低いほど、CREオフセット値αで高められるピコ基地局200からの受信品質または受信電力の程度が低いように、そのユーザ端末のCREオフセット値αを制御する。例えば、CREオフセット値制御部140または240は、CREオフセット値αを制御するため、表3に例示するテーブルを使用することができる。このテーブルは、マクロ基地局100またはピコ基地局200内の図示しない記憶部に記憶することができる。
表3において、α1<α2<α3<α4である。非IRC端末400(端末能力情報00で示される)には最低のオフセット値α1が与えられ、最も高い干渉抑圧合成能力を有するタイプ3のIRC端末300(端末能力情報11で示される)には最高のオフセット値α4が与えられる。したがって、非IRC端末400については、ピコ基地局200からの受信品質または受信電力があまり高く補正されず、非IRC端末400は、IRC端末300に比べて、マクロ基地局100に接続されやすい。タイプ3のIRC端末300については、ピコ基地局200からの受信品質または受信電力が顕著に高く補正され、タイプ3のIRC端末300は、他のユーザ端末に比べて、ピコ基地局200に接続されやすい。
CREオフセット値制御部140または240は、ユーザ端末のCREオフセット値αを決定すると、無線通信部110または210を用いて、そのユーザ端末にCREオフセット値αを示す情報を送信する。この情報の送信には、例えば下りリンクの制御チャネルを用いることができる。この情報を受信すると、ユーザ端末は、CREオフセット値αを用いてピコ基地局200からの受信品質または受信電力を補正する。マクロ基地局100およびピコ基地局200がCREオフセット値制御部140,240をそれぞれ備えなくてもよく、マクロ基地局100およびピコ基地局200のいずれかがCREオフセット値制御部を備えていてもよい。
本発明においては、マクロ基地局100のプロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力が調整される。状況によっては、マクロ基地局100の第2の下りリンク送信電力が高められて、ピコ基地局200に接続する干渉抑圧合成能力が低いユーザ端末、とりわけ非IRC端末400に多大な干渉が与えられるおそれがある。この変形では、干渉抑圧合成能力のレベルに応じて、ユーザ端末のCREオフセット値αが制御され、干渉抑圧合成能力のレベルが低いユーザ端末はマクロ基地局100に接続されやすい。したがって、干渉抑圧合成能力のレベルが低いユーザ端末はピコ基地局200に接続されにくいので、マクロ基地局100の第2の下りリンク送信電力が高められても、マクロ基地局100から多大な干渉が与えられる事態が低減する。この変形は、上記のいずれの実施の形態にも適用可能である。
変形4
以上の実施の形態は時間領域ベースのeICICに基づいており、マクロ基地局100の送信電力制御部134は、統計値に応じて、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を設定する。しかし、時間領域ベースのeICICの代わりに、周波数領域ベースのeICICを利用してもよい。すなわち、送信電力制御部134は、統計値に応じて、プロテクテッドサブフレームPSF(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を設定してもよい。この変形は、上記のいずれの実施の形態にも適用可能である。
図17は、無線通信システムの各通信要素間で送受信される無線フレームFのフォーマットを、図7とは別の観点から示す図である。前述の通り、無線フレームFは所定の時間長および所定の帯域幅を占める。無線フレームFは、周波数方向に複数のサブキャリアSCを含む。サブキャリアSCは、無線フレームFよりも狭い周波数帯域(例えば、15 kHz)を占める送信単位である。6つのサブキャリアSCのみが図示されているが、無線フレームFに含まれるサブキャリアSCの数が任意であることは当然に理解される。複数のサブキャリアSCが周波数領域において相互に直交することを示すため、図17ではサブキャリアSC同士が相互に重複しないように図示されている。実際には、サブキャリアSC同士(特に、中心周波数が隣接するサブキャリアSC同士)は、少なくとも一部の帯域において相互に重複し得る。
図17では、図7に示したようなサブフレームSFを明示しないが、無線フレームFがサブフレームSFを有さないことを意図するものではない。図17は、周波数領域の送信単位であるサブキャリアSCに注目した図であるから、サブフレームSFの図示が省略されている。
図18は、周波数領域ベースのeICICの概略を示す図である。マクロ基地局100は、あるサブキャリアSCでは最大送信電力またはそれに近い電力で下りリンク送信を実行し、他のサブキャリアSCではその最大送信電力より非常に低い送信電力で下りリンク送信を実行する。マクロ基地局100による干渉からピコ基地局200の無線信号が守られる(プロテクトされる)ことから、マクロ基地局100が低い方の送信電力(第2の下りリンク送信電力)で下りリンク送信を実行するサブキャリアSCをプロテクテッドサブキャリア(Protected Subcarrier)PSCと称し、逆に、マクロ基地局100が高い方の送信電力(第1の下りリンク送信電力)で下りリンク送信を実行するサブキャリアSCを非プロテクテッドサブキャリア(Non-Protected Subcarrier)NSCと称する。他方、ピコ基地局200は、いずれのサブキャリアSCについても一定の送信電力で下りリンク送信を実行する。つまり、非プロテクテッドサブキャリアNSCとプロテクテッドサブキャリアPSCとの双方において同じ送信電力で無線信号をユーザ装置300へ送信し得る。
マクロ基地局100のの無線通信部110が低い送信電力で下りリンク送信を行うプロテクテッドサブフレームPSFでは、ピコ基地局200からの無線信号がマクロ基地局100からの無線信号による干渉を受けにくいから、ピコ基地局200が形成するピコセルCpに在圏するユーザ装置300が、ピコ基地局200からの無線信号をより品質良く受信することが可能となる。
このような周波数領域ベースのeICICに基づく変形の無線通信システムにおいて、マクロ基地局100の送信電力制御部134は、所定の時間長および所定の周波数帯域幅を占める単位リソース(無線フレームF)に含まれる、非プロテクテッドサブキャリアNSC(第1のリソース)では高い方の送信電力(第1の下りリンク送信電力)で無線通信部110を作動させ、単位リソースのうちプロテクテッドサブキャリアPSC(第2のリソース)では第1の下りリンク送信電力よりも低い第2の下りリンク送信電力で無線通信部110を作動させる。また、送信電力制御部134は、上記の統計値に応じて、無線フレームF内のプロテクテッドサブフレームPSCでの下りリンク送信電力(第2の下りリンク送信電力)を調節すなわち設定してよい。
ユーザ端末の総数のうちIRC端末300の数が多い場合、ユーザ端末の下りリンクの総トラヒック量のうちIRC端末300のトラヒック量が多い場合、またはIRC端末300への下りリンクのリソースブロックが多い場合には、マクロ基地局100が下りリンク送信電力を高く設定しても、ピコセルCpにある多くのIRC端末300は、マクロ基地局100による干渉を抑圧可能である。この場合には、プロテクテッドサブキャリアPSC(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を高く設定することが適切である。
他方、ユーザ端末の総数のうちIRC端末300の数が少ない場合、ユーザ端末の下りリンクの総トラヒック量のうちIRC端末300のトラヒック量が少ない場合、またはIRC端末300への下りリンクのリソースブロックが少ない場合には、マクロ基地局100が下りリンク送信電力を高く設定すると、ピコセルCpにある多くの非IRC端末400は、マクロ基地局100による干渉のために受信品質が低下しやすい。この場合には、第2の下りリンク送信電力を低く設定することが適切である。第2の下りリンク送信電力の設定のため、表1に例示するテーブルと類似のテーブルを使用してもよいし、式を使用してもよい。
以上では、周波数帯域としてサブキャリアを用いた変形例を述べたが、他の周波数帯域の概念として、搬送波周波数(キャリア)を用いてもよい。すなわち、マクロ基地局ではいずれかの搬送波周波数(第1リソース)で高い送信電力で下りリンク送信を実行し、他の搬送波周波数(第2リソース)で低い送信電力で下りリンク送信を実行し、ピコ基地局では両方の搬送波周波数で同じ送信電力で下りリンク送信を実行してもよい。
変形5
リソースブロックベースのeICICを利用してもよい。すなわち、送信電力制御部134は、統計値に応じて、プロテクテッドリソースブロックでの下りリンク送信電力を設定してもよい。この変形は、上記のいずれの実施の形態にも適用可能である。
図19は、無線通信システムの各通信要素間で送受信される無線フレームFのフォーマットを、図7および図17とは別の観点から示す図である。前述の通り、無線フレームFは所定の時間長および所定の帯域幅を占める。無線フレームFは複数のリソースブロックRBを含む。リソースブロックRBは、無線フレームFよりも短い時間長(例えば、1ミリ秒)および無線フレームFよりも狭い周波数帯域(例えば、180 kHz)を占める送信単位である。1無線フレームFあたり96個のリソースブロックRBが図示されているが、無線フレームFに含まれるリソースブロックRBの数が任意であることは当然に理解される。図示しないが、各リソースブロックRBは、さらに小さい送信単位である複数のリソースエレメントを含む。
図19では、図7に示したようなサブフレームSFおよび図17に示したようなサブキャリアSCを明示しないが、無線フレームFがサブフレームSFおよびサブキャリアSCを有さないことを意図するものではない。図19は、所定の時間長および所定の周波数帯域を有する送信単位であるリソースブロックRBに注目した図であるから、サブフレームSFおよびサブキャリアSCの図示が省略されている。
図20は、リソースブロックベースのeICICの概説図である。マクロ基地局100は、あるリソースブロックRBでは最大送信電力またはそれに近い電力で下りリンク送信を実行し、他のリソースブロックRBではその最大送信電力より非常に低い送信電力で下りリンク送信を実行する。マクロ基地局100による干渉からピコ基地局200の無線信号が守られる(プロテクトされる)ことから、マクロ基地局100が低い方の送信電力(第2の下りリンク送信電力)で下りリンク送信を実行するリソースブロックRBをプロテクテッドリソースブロック(Protected Resource Block)PRBと称し、逆に、マクロ基地局100が高い方の送信電力(第1の下りリンク送信電力)で下りリンク送信を実行するリソースブロックRBを非プロテクテッドリソースブロック(Non-Protected Resource Block)NRBと称する。他方、ピコ基地局200は、いずれのリソースブロックRBについても一定の送信電力で下りリンク送信を実行する。つまり、非プロテクテッドリソースブロックNRBとプロテクテッドリソースブロックPRBとの双方において同じ送信電力で無線信号をユーザ装置300へ送信し得る。
マクロ基地局100の無線通信部110が無線信号を送信しないプロテクテッドリソースブロックPRBでは、ピコ基地局200の無線通信部210のみが無線信号を送信する。したがって、プロテクテッドリソースブロックPRBにおいては、ピコ基地局200からの無線信号がマクロ基地局100からの無線信号による干渉を受けないから、ピコ基地局200が形成するピコセルCpに在圏するユーザ装置300が、ピコ基地局200からの無線信号をより品質良く受信することが可能となる。
このようなリソースブロックベースのeICICに基づく変形の無線通信システムにおいて、マクロ基地局100の送信電力制御部134は、所定の時間長および所定の周波数帯域幅を占める単位リソース(無線フレームF)に含まれる、非プロテクテッドリソースブロックNRB(第1のリソース)では高い方の送信電力(第1の下りリンク送信電力)で無線通信部110を作動させ、単位リソースのうちプロテクテッドリソースブロックPRB(第2のリソース)では第1の下りリンク送信電力よりも低い第2の下りリンク送信電力で無線通信部110を作動させる。また、送信電力制御部134は、上記の統計値に応じて、無線フレームF内のプロテクテッドリソースブロックPRBでの下りリンク送信電力(第2の下りリンク送信電力)を調節すなわち設定してよい。
ユーザ端末の総数のうちIRC端末300の数が多い場合、ユーザ端末の下りリンクの総トラヒック量のうちIRC端末300のトラヒック量が多い場合、またはIRC端末300への下りリンクのリソースブロックが多い場合には、マクロ基地局100が下りリンク送信電力を高く設定しても、ピコセルCpにある多くのIRC端末300は、マクロ基地局100による干渉を抑圧可能である。この場合には、プロテクテッドリソースブロックPRB(第2のリソース)のための第2の下りリンク送信電力を高く設定することが適切である。
他方、ユーザ端末の総数のうちIRC端末300の数が少ない場合、ユーザ端末の下りリンクの総トラヒック量のうちIRC端末300のトラヒック量が少ない場合、またはIRC端末300への下りリンクのリソースブロックが少ない場合には、マクロ基地局100が下りリンク送信電力を高く設定すると、ピコセルCpにある多くの非IRC端末400は、マクロ基地局100による干渉のために受信品質が低下しやすい。この場合には、第2の下りリンク送信電力を低く設定することが適切である。第2の下りリンク送信電力の設定のため、表1に例示するテーブルと類似のテーブルを使用してもよいし、式を使用してもよい。
変形6
第1~第5の実施の形態では、ピコ基地局200での統計値に基づいてマクロ基地局100の送信電力制御部134は第2の下りリンク送信電力を設定し、第6~第8の実施の形態では、マクロ基地局100での統計値に基づいてマクロ基地局100の送信電力制御部134は第2の下りリンク送信電力を設定する。但し、マクロ基地局100の制御部130は、マクロ基地局100とピコ基地局200を含むマクロセルCm内のすべてのユーザ端末に関する統計値を計算し、送信電力制御部134はこの統計値に基づいて、第2の下りリンク送信電力を設定してもよい。この場合に、変形1および変形2と同様に、送信電力制御部134はユーザ端末のそれぞれの干渉抑圧合成能力のレベルを考慮して、第2の下りリンク送信電力を設定してもよい。
変形7
以上の実施の形態では、ユーザ端末の総数に対するIRC端末300の数の割合、ユーザ端末への下りリンクの総トラヒック量に対するIRC端末300のトラヒック量の割合、またはIRC端末300への下りリンクのリソースブロックの数に応じて、送信電力制御部134は第2の下りリンク送信電力を設定する。さらに加えて各種のパラメータを考慮して、送信電力制御部134は第2の下りリンク送信電力を設定してもよい。各種のパラメータは、例えば、ピコ基地局200もしくはマクロ基地局100に無線接続されたユーザ端末の総数、ピコ基地局200もしくはマクロ基地局100に無線接続されたユーザ端末の総トラヒック量、ピコ基地局200もしくはマクロ基地局100に無線接続されたIRC端末300の総数、ピコ基地局200もしくはマクロ基地局100に無線接続されたIRC端末300の総トラヒック量、ピコ基地局200もしくはマクロ基地局100に無線接続された非IRC端末400の総数、ピコ基地局200もしくはマクロ基地局100に無線接続された非IRC端末400の総トラヒック量、第1のリソースと第2のリソースの比率またはこれらのいずれかの組合せを含む。
変形8
マクロ基地局100は、ユーザ端末の総数に対するIRC端末300の数の割合、ユーザ端末への下りリンクの総トラヒック量に対するIRC端末300のトラヒック量の割合、またはIRC端末300への下りリンクのリソースブロックの数に応じて、第1のリソースと第2のリソースの比率を設定してもよい。第1のリソースと第2のリソースの比率とは、例えば、非プロテクテッドサブフレームNSFとプロテクテッドサブフレームPSFの比率、非プロテクテッドサブキャリアNSCとプロテクテッドサブキャリアPSCの比率、非プロテクテッドリソースブロックNRBとプロテクテッドリソースブロックPRBの比率である。
変形9
以上の実施の形態では、ユーザ端末の受信品質測定部334,434が測定する電波の受信特性は参照信号受信電力(RSRP)であったが、信号対干渉雑音比(Signal-to-Interference and Noise Ratio,SINR)、参照信号受信品質(Reference Signal Received Quality,RSRQ)等が受信特性として採用されてもよい。ユーザ端末の受信品質補正部336,436は、ピコ基地局200からの受信電力値に代えて、ピコ基地局からの他の受信特性をCREオフセット値αを用いて増加させるように補正してもよい。
変形10
以上の実施の形態では、CREのためにピコ基地局200からの電波の受信特性がCREオフセット値(バイアス値)αで補正される。さらに、マクロ基地局100またはピコ基地局200からの電波の受信特性は、他の目的のオフセット値(バイアス値)で補正してもよい。例えば、一旦ハンドオーバされたユーザ端末が元の無線基地局にすぐにハンドオーバされることを防止するためのヒステリシス用のオフセット値を使用してもよい。
変形11
以上の実施の形態では、ユーザ端末の受信品質報告部338,438が複数の無線基地局からの受信品質および補正された受信品質を所望無線基地局に報告し、マクロ基地局100の接続先選択部138およびピコ基地局200の接続先選択部238は、各ユーザ端末の受信電力結果報告に基づいて、そのユーザ端末が接続すべき無線基地局を選択する。しかし、ユーザ端末は、複数の無線基地局からの受信品質および補正された受信品質を比較し、最良の受信品質またはその最良の受信品質に相当する無線基地局を示す信号を所望無線基地局に報告してもよい。マクロ基地局100の接続先選択部138およびピコ基地局200の接続先選択部238は、各ユーザ端末のその報告に基づいて、最良の受信品質に相当する無線基地局をそのユーザ端末が接続すべき無線基地局として選択してよい。
変形12
第1および第4の実施の形態では、ピコ基地局200の端末能力判定部232がピコ基地局200と接続するユーザ端末から報告された端末能力情報UCに基づいて、そのユーザ端末がIRC端末300であるか非IRC端末400であるかを判定する。しかし、ピコ基地局200は、これらの端末能力情報UCをマクロ基地局100に転送し、転送された端末能力情報UCに基づいて、マクロ基地局100の端末能力判定部132がそのユーザ端末がIRC端末300であるか非IRC端末400であるかを判定してもよい。
変形13
以上の実施の形態では、マクロ基地局100よりも送信能力の低い基地局(小電力無線基地局)としてピコ基地局200が例示されたが、マイクロ基地局、ナノ基地局、フェムト基地局等が送信能力の低い基地局として採用されてもよい。相異なる送信能力を有する3種類以上の無線基地局の組合せ(例えば、マクロ基地局、ピコ基地局、およびフェムト基地局の組合せ)により無線ネットワークが構成されてもよい。また、以上の実施の形態では、小電力無線基地局としてピコ基地局200が例示され、このピコ基地局200は、ピコ基地局200に接続する移動端末300から受信した受信品質情報に基づいて当該移動端末300の接続先の無線基地局を選択する。しかし、小電力無線基地局は、移動端末300から受信した受信品質情報をマクロ基地局に転送し、マクロ基地局が小電力無線基地局に接続する移動端末300の接続先の無線基地局を選択する、リモートラジオヘッドであってもよい。
変形14
ユーザ端末(IRC端末300および非IRC端末400)は、各無線基地局と無線通信が可能な任意の装置でよい。ユーザ端末は、例えばフィーチャーフォンまたはスマートフォン等の携帯電話端末でもよく、デスクトップ型パーソナルコンピュータでもよく、ノート型パーソナルコンピュータでもよく、UMPC(Ultra-Mobile Personal Computer)でもよく、携帯用ゲーム機でもよく、その他の無線端末でもよい。
変形15
無線通信システム内の各要素(マクロ基地局100、ピコ基地局200、ユーザ端末)においてCPUが実行する各機能は、CPUの代わりに、ハードウェアで実行してもよいし、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)等のプログラマブルロジックデバイスで実行してもよい。
前記の実施の形態および変形は、矛盾しない限り、組み合わせてもよい。