以下、本発明の一実施の形態の移動局装置について、LTEに対応する移動局に下りリンク信号受信処理を適用した場合を例に、図1~図11を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施の形態の移動局の構成の例を示すブロック図である。
移動局は、受信アンテナ10、フィルタ部11、パスサーチ部12、高速フーリエ変換部13、デマッピング部14、ゼロフォーシング部15、電力推定部16、チャネル推定部17、伝搬路状態情報推定部18、および報告PMI選択部19を有する。
受信アンテナ10で受信した信号は、フィルタ部11に供給される。アナログまたはデジタルフィルタであるフィルタ部11は、所望の周波数成分を取り出し、パスサーチ部12に供給する。
パスサーチ部12は、パスタイミングを特定する。高速フーリエ変換部13は、周波数軸上に信号を展開し複数のサブキャリアを得る。
デマッピング部14は、周波数軸上に展開されたサブキャリアの内、既知信号であるリファレンスシグナルがマッピングされたサブキャリアとデータ信号がマッピングされたサブキャリアとを特定する。
ゼロフォーシング部15は、デマッピング部14において取り出されたリファレンスシグナルにゼロフォーシング(Zero Forcing(ZF))処理を適用することで、既知信号が伝搬路で受けた位相変動をキャンセルする。
電力推定部16は、ゼロフォーシングされた信号を用いて、雑音電力および信号電力を推定する。チャネル推定部17は、ゼロフォーシングされた信号を用いて、チャネル推定値を算出する。
伝搬路状態情報推定部18は、前段の処理で得られた雑音電力、信号電力、及びチャネル推定値を利用して、PMIを含む伝搬路状態情報を推定する。報告PMI選択部19は、最終的にレイヤー毎に求めた各PMIの通信路容量の内、最大の通信路容量を与えるPMIを選択し、PMI推定値とする。
次に、伝搬路状態情報推定部18の詳細について説明する。
図2は、伝搬路状態情報推定部18の構成の例を示すブロック図である。伝搬路状態情報推定部18は、信号対雑音電力比測定部20、通信路容量初期算出部21、通信路容量ソート部22、PMIランク付加部23、PMIグループ分割部24、代表PMI選択部25、PMI情報記憶部26、通信路容量算出PMI判定部27、および通信路容量算出部28を有する。
信号対雑音電力比測定部20は、雑音電力と信号電力とから信号対雑音電力比(Signal to Noise Ratio(SNR))を算出する。
通信路容量初期算出部21は、PMI毎に、SNRとチャネル推定値とを用いて通信路容量を算出する。この場合、通信路容量初期算出部21は、PMI算出に必要な通信路容量の算出を過去の通信路容量測定結果から伝搬路状態を推定することで、コードブックに含まれるPMIの内最大の通信路容量を与える可能性が高いPMIのみの通信路容量を算出し推定に係る電力消費を抑制する。
通信路容量ソート部22は、各PMIの通信路容量を昇順に並び替える。PMIランク付加部23は、昇順に並び替えられた通信路容量に基づいてコードブック中の各PMIをランク付けする。
PMIグループ分割部24は、ランク付けされた結果に基づいて各PMIを複数のグループに分ける。代表PMI選択部25は、各グループに含まれるPMIから1つ以上の代表PMIを選択する。PMI情報記憶部26は、PMIランク付加部23で得られたPMIランク付け情報、PMIグループ分割部24で得られたPMIグループ分割情報、および代表PMI選択部25で得られた各グループ代表PMI選択情報を記憶しておく。
通信路容量算出PMI判定部27および通信路容量算出部28は、前回推定結果と今回の代表PMIの通信路容量から現在の伝搬路状態を推定し通信路容量を算出するPMIを判定する。
なお、PMI推定を行うのが初回である場合、前回の推定タイミング情報が利用できないので、PMI情報記憶部26で得られた情報を利用せずに通信路容量初期算出部21で全てのPMIの通信路容量が算出される。
このように、上りチャネルで報告するPMIは通信路容量算出部28で得られた通信路容量の内、最大の通信路容量を与えるPMIが特定され、報告PMI選択部19で上りチャネルにマッピングされ基地局に報告される。
次に、LTEに対応する移動局の下り信号受信におけるPMI推定動作を例に説明する。LTEの下りリンクで送信アンテナが4本であり、受信アンテナが2本であるアンテナ構成でランク2のClosed Loop(Transmission mode6)の場合の処理を例に説明する。
図3は、コードブックの例を示す図である。移動局は、既知信号であるリファレンスシグナルを利用して、図3に示されるコードブックの中から自局宛の送信データの受信電力が高く、他局に対して干渉を小さくするPMIを1つ推定するために各PMIの通信路容量を算出する必要がある。
図3に示されるように、0~15であるコードブックインデックスのそれぞれに、レイヤー1において、PMI1,0~PMI1,15のそれぞれが対応し、レイヤー2において、PMI2,0~PMI2,15のそれぞれが対応する。
まず、信号対雑音電力比測定部20は、雑音電力と信号電力とから報告が求められている帯域幅(サブバンド)でSNRを求める。次に、通信路容量初期算出部21は、SNRとサブバンドに含まれるサブキャリアのチャネル推定値を利用してコードブックに含まれる各PMIの通信路容量を報告サブバンド単位毎に求める。
通信路容量算出部28は、前回の推定情報が存在しない場合、すなわち初回の推定タイミングでは、通常通り、コードブックに含まれる32個のPMIすべてについて通信路容量を算出する。
推定タイミングが初回ではない場合は、PMI情報記憶部26から「PMIグループ」、「PMIランク」、「代表PMI」の各情報が参照されることで通信路容量を算出するPMIの絞り込みが行われる。
まず、PMI情報記憶部26に記憶される各情報の生成の動作(PMIランク付け情報、PMIグループ分割情報、および各グループ代表PMI選択情報の生成の処理)を図4のフローチャートを用いて説明する。なお、各情報を参照して通信路容量算出対象のPMIの特定の処理は図8のフローチャートを参照して後述する。
ステップS11とステップS22とにおいて、伝搬路状態情報推定部18は、レイヤーを示す変数lの初期値を1として、変数lを1ずつインクリメントして、変数lが2になるまで、ステップS12~ステップS21の処理を繰り返す。
ステップS12とステップS14とにおいて、通信路容量初期算出部21は、インデックスを示す変数iの初期値を0として、変数iを1ずつインクリメントして、変数iがP(l)-1になるまで、ステップS13の処理を繰り返す。ここで、Pは、コードブックインデックスの数である。
ステップS13において、通信路容量初期算出部21は、レイヤー#l毎のPMIの通信路容量Cl(i)を算出する。
ステップS15において、通信路容量ソート部22は、算出されたレイヤー#l毎のPMIの通信路容量Cl(i)を昇順にソートすることで通信路容量が大きいPMI順に並び替える。ステップS16において、PMIランク付加部23は、その並び順を「PMIランク」とする。
例えば、ステップS15において、通信路容量ソート部22が、図5に示されるようにPMI毎の通信路容量を算出したとする。すなわち、PMI1,0~PMI1,15毎に、29.53,38.73,40.76,28.88,40.95,37.42,22.55,41.84,32.29,30.35,36.45,33.69,44.69,33.95,32.80,28.67である通信路容量が算出され、PMI2,0~PMI2,15毎に、22.39,27.84,34.87,35.77,29.09,33.65,44.01,23.86,31.69,33.64,29.42,36.74,30.96,35.82,31.59,38.74である通信路容量が算出されたとする。
この場合、ステップS16において、図6に示されるように、PMIランクが求められる。すなわち、1~16のそれぞれのPMIランクのインデックスは、それぞれ、レイヤー1において、12,7,4,2,1,5,10,13,11,14,8,9,0,3,15,6であり、レイヤー2において、6,15,11,13,3,2,5,9,8,14,12,10,4,1,7,0である。
ステップS17において、PMIグループ分割部24は、PMIランクに基づいてG(l)個の「PMIグループ」PMIGl,gを作成する。各グループにはtg(l)個のPMIが含まれる。図6に、G(l=1)=4、G(l=2)=4とした場合のグループ分割の例が示されている。
すなわち、PMIグループPMIG1,1には、12,7,4,2が含まれ、PMIグループPMIG1,2には、それぞれ1,5,10,13であるPMIが含まれ、PMIグループPMIG1,3には、それぞれ11,14,8,9であるPMIが含まれ、PMIグループPMIG1,4には、それぞれ0,3,15,6であるPMIが含まれる。同様に、PMIグループPMIG2,1には、それぞれ6,15,11,13であるPMIが含まれ、PMIグループPMIG2,2には、それぞれ3,2,5,9であるPMIが含まれ、PMIグループPMIG2,3には、それぞれ8,14,12,10であるPMIが含まれ、PMIグループPMIG2,4には、それぞれ4,1,7,0であるPMIが含まれる。
ステップS18において、PMI情報記憶部26は、生成された「PMIグループ」(PMIランク付け情報およびPMIグループ分割情報)を記憶する。
ステップS19とステップS21とにおいて、代表PMI選択部25は、PMIグループを示す変数gの初期値を1として、変数gを1ずつインクリメントして、変数gがGになるまで、ステップS20の処理を繰り返す。ここで、Gは、PMIグループの数である。ステップS20において、代表PMI選択部25は、各PMIグループについて、PMIグループに含まれるtg個のPMIからsg個(sgはtg以下)の「代表PMI」を生成する。
sg=1として各グループでPMIランクが最も高いPMIを代表PMIとして選択した場合の例を図7に示す。図7において、丸で囲まれたPMIが代表PMIである。すなわち、PMIグループPMIG1,1の代表PMIは12であり、PMIグループPMIG1,2の代表PMIは1であり、PMIグループPMIG1,3の代表PMIは11であり、PMIグループPMIG1,4の代表PMIは0である。また、PMIグループPMIG2,1の代表PMIは6であり、PMIグループPMIG2,2の代表PMIは3であり、PMIグループPMIG2,3の代表PMIは8であり、PMIグループPMIG2,4の代表PMIは4である。
ステップS18において、PMI情報記憶部26は、生成された「代表PMI」(各グループ代表PMI選択情報)を記憶する。
各グループ代表PMI選択情報がPMI情報記憶部26に記憶された後、PMIランク付け情報、PMIグループ分割情報、および各グループ代表PMI選択情報の生成の処理は終了する。
PMI情報記憶部26に記憶された「PMIグループ」及び「代表PMI」(PMIランク付け情報、PMIグループ分割情報、および各グループ代表PMI選択情報)は、次回推定タイミングで参照される。
次に、次の推定タイミング(次のサブフレーム)においてPMI情報記憶部26からPMI情報を読み出して、通信路容量を算出するPMIを限定していく処理を図8のフローチャートを参照して説明する。
ステップS41とステップS51とにおいて、伝搬路状態情報推定部18は、レイヤーを示す変数lの初期値を1として、変数lを1ずつインクリメントして、変数lが2になるまで、ステップS42~ステップS50の処理を繰り返す。
ステップS42とステップS44とにおいて、通信路容量初期算出部21は、PMIグループを示す変数gの初期値を1として、変数gを1ずつインクリメントして、変数gがG(l)になるまで、ステップS43の処理を繰り返す。ここで、G(l)は、レイヤー1のPMIグループの数である。
ステップS43において、通信路容量初期算出部21は、PMIグループそれぞれの代表PMIについてのみ通信路容量を算出する。すなわち、例えば、通信路容量初期算出部21は、図7に示されるsg*G個の代表PMIについてのみ通信路容量を算出する。
ステップS45において、通信路容量算出PMI判定部27は、レイヤー毎に各グループの代表PMIの通信路容量の値を昇順に並べて代表PMIが属するグループの順位を生成する。
例えば、代表PMIの通信路容量と各グループの順位が図9に示されるように算出される。すなわち、PMIグループPMIG1,1の12である代表PMIについて、47.45である通信路容量が求められ、PMIグループPMIG1,2の1である代表PMIについて、40.51である通信路容量が求められ、PMIグループPMIG1,3の11である代表PMIについて、40.22である通信路容量が求められ、PMIグループPMIG1,4の0である代表PMIについて、28.7である通信路容量が求められる。PMIグループPMIG1,1の順位は1とされ、PMIグループPMIG1,2の順位は2とされ、PMIグループPMIG1,3の順位は3とされ、PMIグループPMIG1,4の順位は4とされる。
同様に、PMIグループPMIG2,1の6である代表PMIについて、55.75である通信路容量が求められ、PMIグループPMIG2,2の3である代表PMIについて、31.03である通信路容量が求められ、PMIグループPMIG2,3の8である代表PMIについて、30.28である通信路容量が求められ、PMIグループPMIG2,4の4である代表PMIについて、35.83である通信路容量が求められる。PMIグループPMIG2,1の順位は1とされ、PMIグループPMIG2,2の順位は3とされ、PMIグループPMIG2,3の順位は4とされ、PMIグループPMIG2,4の順位は2とされる。
ステップS47において、通信路容量算出PMI判定部27は、PMI情報記憶部26に記憶された「PMIグループ」の順位と今回の推定タイミングで求めた代表PMIの通信路容量に基づくグループの順位を比較することにより、伝搬路の変動状況を推定し代表PMI以外に通信路容量を算出する必要があるPMIを判定する。
ステップS47において、今回の推定タイミングで求めた代表PMIの通信路容量に基づくグループの順位が前回と同じであると判定された場合、手続きはステップS48に進み、通信路容量算出PMI判定部27は、伝搬路の変動が小さいと判断する。この場合、ステップS49において、通信路容量算出部28は、前回推定タイミングで上位に位置づけられたPMIグループに含まれるPMIのみ通信路容量を算出する。
ステップS47において、今回の推定タイミングで求めた代表PMIの通信路容量に基づくグループの順位が前回と同じでないと判定された場合、手続きはステップS50に進み、通信路容量算出PMI判定部27は、伝搬路の変動が大きいと判断する。この後、手続きはステップS49に進み、この場合、通信路容量算出部28は、PMIの絞り込みをせずに、各PMIの通信路容量を算出する。
前回の推定タイミングでのPMIグループの順位と今回の推定タイミングで得たPMIグループの順位が近ければ、伝搬路の変動が小さいと判断できるため、前回推定タイミングで上位に位置づけられたPMIグループに含まれるPMIのみ通信路容量を求めれば最大通信路容量を与えるPMIを特定できる可能性が高い。逆に、前回と異なるグループの順序が得られた場合は、伝搬路の変動が大きいと判断できるから、PMIの絞り込みは前回のグループ順序、PMIランクに基づいて絞り込みは行わないほうがよいと判断できる。
図9に示される場合、レイヤー1について前回推定タイミングにおけるPMIグループの順位と代表PMIの通信路容量による順位が同一となっているから、伝搬路の変動は小さいと判断でき、上位ml=1個のPMIグループに含まれるPMIの通信路容量のみを算出すれば最大通信路容量を与えるPMIを特定できるので、PMIG1,1に含まれるPMI=12,7,4,2に対する通信路容量が算出される。
なお、代表PMIであるPMI=12は既に算出済みなので改めて算出する必要はない。図9に示されるレイヤー2の場合、前回推定タイミングにおけるPMIグループの順序と代表PMIの通信路容量による順序が異なっているから伝搬路の変動は小さくないと判断し、順位変動が起こっているグループに含まれるPMIまでを通信路容量算出対象として、PMI=6,15,11,13,4,1,7,0,3,2,5,9の通信路容量が算出される。
ステップS52において、報告PMI選択部19は、最終的にレイヤー毎に求めた各PMIの通信路容量の内、最大の通信路容量を与えるPMIをPMI推定値とし、通信路容量を算出するPMIを限定していく処理は終了する。
図10に示される場合、PMIグループPMIG1,1の12である代表PMIについて、47.45である通信路容量が求められ、PMIグループPMIG1,1の7であるPMIについて、49.89である通信路容量が求められ、PMIグループPMIG1,1の4であるPMIについて、50.23である通信路容量が求められ、PMIグループPMIG1,1の2であるPMIについて、48.81である通信路容量が求められ、PMIグループPMIG1,2の1である代表PMIについて、40.51である通信路容量が求められ、PMIグループPMIG1,3の11である代表PMIについて、40.22である通信路容量が求められ、PMIグループPMIG1,4の0である代表PMIについて、28.7である通信路容量が求められるので、レイヤー1において50.23である最大の通信路容量を与える4であるPMIがPMI推定値とされる。
また、PMIグループPMIG2,1の6である代表PMIについて、55.75である通信路容量が求められ、PMIグループPMIG2,1の15であるPMIについて、36.87である通信路容量が求められ、PMIグループPMIG2,1の11であるPMIについて、50.15である通信路容量が求められ、PMIグループPMIG2,1の13であるPMIについて、37.46である通信路容量が求められる。PMIグループPMIG2,2の3である代表PMIについて、31.03である通信路容量が求められ、PMIグループPMIG2,2の2であるPMIについて、47.77である通信路容量が求められ、PMIグループPMIG2,2の5であるPMIについて、46.89である通信路容量が求められ、PMIグループPMIG2,2の9であるPMIについて、47.77である通信路容量が求められる。また、PMIグループPMIG2,3の8である代表PMIについて、30.28である通信路容量が求められる。さらに、PMIグループPMIG2,4の4である代表PMIについて、35.83である通信路容量が求められ、PMIグループPMIG2,4の1であるPMIについて、30.45である通信路容量が求められ、PMIグループPMIG2,4の7であるPMIについて、28.65である通信路容量が求められ、PMIグループPMIG2,4の0であるPMIについて、35.11である通信路容量が求められる。従って、レイヤー2において55.75である最大の通信路容量を与える6であるPMIがPMI推定値とされる。
このように、報告PMI選択部19は、レイヤー1のPMI推定値を4と選択し、レイヤー2のPMI推定値を6と選択する。
コードブックに基づくプレコーディング処理を行うクローズドループ処理は、移動局が受信した既知信号に基づいてコードブックに含まれる各PMIの通信路容量を算出し、通信路容量から最適なPMIを特定し、その値を上りチャネルを利用して基地局に通知することで成り立つ。一般に、移動局はコードブックに定義されたPMI全てに対して通信路容量を求め、最大の通信路容量を与えるPMIを特定することでPMI推定が行われる。
通信路容量は伝搬路状態の状態を反映した指標値であるから、伝搬路が高速に変動している場合は各PMIに対する通信路容量も高速に変動する可能性が高いといえる。逆に、伝搬路が高速に変動しない場合は各PMIが与える通信路容量も変動する可能性が低いと判断できる。したがって、伝搬路の変動が小さい場合は、前回の推定において大きな通信路容量を与えるPMIの通信路容量のみを計算すればよいと考えられる。
従って、移動局装置において、PMI推定処理の度に各PMIの通信路容量値を昇順に並び替えておく処理を行い、並び替え結果に基づいていくつかのグループを作成しておく処理を行い、その結果を次回の推定処理タイミングで参照、比較することで伝搬路の変動状況を追従し、伝搬路の変動が小さいと判断できる場合は通信路容量を算出するPMIを前回推定タイミングで大きな通信路容量を与えたPMIのみに絞り込むことで、伝搬路状態に応じた処理を行い、PMI推定に係る電力消費量を低減する。
なお、前回の推定結果を利用するのであるから、並び替え処理等は発生するが制御のために新たな値の演算は発生しない。
本実施の形態は、LTE(Long Term Evolution)などの移動体通信システムで利用される適応リンク制御に利用されるチャネル品質指標(CSI: Channel State Information)、特にPMI(Precoding Matrix Indicator)の推定に関するものである。本実施の形態の特徴は、PMI推定精度を落とすことなく、その処理に係る電力消費量を低減した点である。
本実施の形態の移動局装置は、LTEなどのコードブックに基づいたプレコーディング処理を伴うクローズドループ処理において、移動局が推定する必要があるPMIの推定に係る電力消費を抑えることを可能にする。これはPMI推定タイミング毎に算出される各PMIの通信路容量の変動状況を捉えることで伝搬路の状況に当たりをつけ推定精度を低下させない程度に必要最小限の演算で正確な推定処理が可能になるためである。
本実施の形態の移動局装置において、過去のPMI推定情報から現在の伝搬路状態を推定しコードブックに含まれる各PMIの内、通信路容量が最大となる可能性が高いPMIのみの通信路容量を算出することで、特性劣化を伴うことなく伝搬路推定情報の推定に伴う電力消費を低減する。
このように、コードブックに含まれるPMIの数によらず、ビームフォーミングの効果を低下させない程度に伝搬路の状態に応じて移動局が計算する各PMIの通信路容量を限定することで、PMI推定に係る電力消費を低減させることができる。
以上において、LTEの下りリンク受信について説明したが、これに限るものではなくコードブックに基づくプレコーディングを用いるクローズドループのビームフォーミングを用いる無線アクセス方式全般に適用できる。
また、以上の説明ではPMIグループを構成する際に、全てのグループに含まれるPMIの数を等しくしたが、各グループに含まれるPMIの数は同一でなくとも良い。同様に、代表PMIの数を1つとして説明したが、1という値に制限はなく、代表PMIの数は1以外の値であっても良い。代表PMIの数は、パラメータであり、0以上の値であり、その最大値は各グループに含まれるPMI数である。
さらにまた、ドップラー周波数の測定結果に基づいて高速変動と判断できる場合は、上述の制御を行わない等の更に上位の制御の適用も可能である。
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行することもできるし、ソフトウエアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行する場合には、そのソフトウエアを構成するコンピュータプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、プログラム記録媒体からインストールされる。
図11は、上述した一連の処理をコンピュータプログラムにより実行するコンピュータのハードウェアの構成例を示すブロック図である。
コンピュータにおいて、CPU(Central Processing Unit)101,ROM(Read Only Memory)102,RAM(Random Access Memory)103は、バス104により相互に接続されている。
バス104には、さらに、入出力インタフェース105が接続されている。入出力インタフェース105には、キーボード、マウス、マイクロホンなどよりなる入力部106、ディスプレイ、スピーカなどよりなる出力部107、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる記憶部108、ネットワークインタフェースなどよりなる通信部109、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア111を駆動するドライブ110が接続されている。
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU101が、例えば、記憶部108に記憶されているコンピュータプログラムを、入出力インタフェース105及びバス104を介して、RAM103にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
コンピュータ(CPU101)が実行するプログラムは、例えば、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc)等)、光磁気ディスク、もしくは半導体メモリなどよりなるパッケージメディアであるリムーバブルメディア111に記録して、あるいは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供される。
そして、コンピュータプログラムは、リムーバブルメディア111をドライブ110に装着することにより、入出力インタフェース105を介して、記憶部108に記憶することで、コンピュータにインストールすることができる。また、コンピュータプログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部109で受信し、記憶部108に記憶することで、コンピュータにインストールすることができる。その他、コンピュータプログラムは、ROM102や記憶部108にあらかじめ記憶しておくことで、コンピュータにあらかじめインストールしておくことができる。
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるコンピュータプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるコンピュータプログラムであっても良い。
また、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。