WO2012105616A1 - ペプチド・ライブラリー - Google Patents

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剛 滝沢
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Abstract

 下記(i)または(ii)から選択されるペプチド: (i)配列表の配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するペプチド;および、 (ii)配列表の配列番号1で示されるアミノ酸配列において、アミノ末端から数えて1番目乃至11番目のXaa以外の、1個以上28個以下のアミノ酸が保存的アミノ酸置換、欠失、付加又は挿入してなるアミノ酸配列を有するペプチド。

Description

ペプチド・ライブラリー
 本発明は、ペプチド、該ペプチドの誘導体、該ペプチドまたは該誘導体に含まれるペプチドに対応するヌクレオチド、ヌクレオチドを含むベクター、該ベクターまたはヌクレオチドが導入された細胞、該細胞を培養する工程を含んでなるペプチドまたはその誘導体の製造方法、該ペプチドおよび/またはその誘導体を含んでなるペプチド・ライブラリー、標的分子に結合するペプチドおよび/またはその誘導体の同定方法、標的分子に結合するペプチドまたはその誘導体の製造方法、被検ペプチドまたはその誘導体が標的分子に結合するか否かを判定する方法、該ヌクレオチドを含んでなるヌクレオチド・ライブラリー、該ペプチドもしくはその誘導体、該ヌクレオチド、該ベクターまたは該細胞を含むことからなる組成物、該ペプチドもしくはその誘導体、該ヌクレオチド、該ベクターまたは該細胞を含むことからなる試薬等に関する。
 TACIはTNFスーパーファミリーのメンバーであり、B細胞のキーレギュレーターとして働くことが知られている。TACIはその細胞外領域にシステインリッチドメイン(cysteine-rich domains:以下「CRDs」という)を二つ持ち、二つのリガンド(APRILとBAFF)に結合する。天然にはオルタナティブ・スプライシング(Alternative splicing)によりN末端側CRDが欠損したTACIも存在し、C末端側CDR(TACI_d2)単独で両リガンドに対し細胞外領域全体(TACI_d1d2)と同等の結合活性を示すことが報告されている(特許文献1、非特許文献)。
 しかし、TACI_d2またはその改変体が内在性リガンド以外の分子に対して高い結合活性を示すか否かは現在まで明らかにされていない。
国際公開第2006/052493号パンフレット
メリッサ A. スタロバスニック著、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー、280巻(8号),7218乃至7227頁、2005年刊行(Melissa A. Starovasnik、J.Biol.Chem., vol.280(No.8), pp7218-7227(2005))
 発明者らは、TACI_d2またはその改変体について鋭意検討した結果、内在性リガンド以外の分子に対して高い結合活性を示すペプチドを含むライブラリーを作成する等して、本発明を完成した。
 本発明は
(1)
 下記(i)または(ii)から選択されるペプチド:
(i)配列表の配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するペプチド;および、
(ii)配列表の配列番号1で示されるアミノ酸配列において、アミノ末端から数えて1番目乃至11番目のXaa以外の、1個以上28個以下のアミノ酸が保存的アミノ酸置換、欠失、付加又は挿入してなるアミノ酸配列を有するペプチド、
(2)
 アミノ末端から数えて1番目乃至11番目のXaaが、それぞれ、システインを除く任意のアミノ酸である、(1)記載のペプチド、
(3)
 アミノ末端から数えて1番目乃至11番目のXaaが、それぞれ、プロリンを除く任意のアミノ酸である、(1)または(2)記載のペプチド、
(4)
 保存的アミノ酸置換が、疎水性アミノ酸グループ、中性親水性アミノ酸グループ、酸性アミノ酸グループ、塩基性アミノ酸グループ、主鎖の方角に影響を与えるアミノ酸のグループ、および、芳香族アミノ酸グループから選択されるいずれかのグループ内において行われることを特徴とする、(1)乃至(3)のいずれか一つに記載のペプチド、
(5)
 アミノ末端から数えて1番目のXaaが、グルタミン、メチオニン、ヒスチジン、セリン、グルタミン酸、アスパラギン、トリプトファン、イソロイシン、アスパラギン酸およびスレオニンからなる群から選択されるアミノ酸である、(1)乃至(4)のいずれか一つに記載のペプチド、
(6)
 アミノ末端から数えて2番目のXaaが、トリプトファン、ロイシン、グリシン、イソロイシン、メチオニン、アスパラギン酸、アスパラギンおよびスレオニンからなる群から選択されるアミノ酸である、(1)乃至(5)のいずれか一つに記載のペプチド、
(7)
 アミノ末端から数えて3番目のXaaが、アルギニン、ロイシン、アラニン、ヒスチジン、スレオニン、バリン、グルタミン、グルタミン酸およびセリンからなる群から選択されるアミノ酸である、(1)乃至(6)のいずれか一つに記載のペプチド、
(8)
 アミノ末端から数えて4番目のXaaが、グルタミン酸、アルギニン、リジン、イソロイシン、グルタミン、トリプトファン、チロシン、グリシンおよびフェニルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸である、(1)乃至(7)のいずれか一つに記載のペプチド、
(9)
 アミノ末端から数えて5番目のXaaが、リジン、グルタミン酸、メチオニン、アラニン、グルタミン、グリシン、スレオニン、ヒスチジンおよびトリプトファンからなる群から選択されるアミノ酸である、(1)乃至(8)のいずれか一つに記載のペプチド、
(10)
 アミノ末端から数えて6番目のXaaが、メチオニン、トリプトファン、チロシン、セリン、フェニルアラニン、グルタミンおよびアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸である、(1)乃至(9)のいずれか一つに記載のペプチド、
(11)
 アミノ末端から数えて7番目のXaaが、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、セリン、リジン、アルギニン、ヒスチジンおよびアスパラギンからなる群から選択されるアミノ酸である、(1)乃至(10)のいずれか一つに記載のペプチド、
(12)
 アミノ末端から数えて8番目のXaaが、リジン、グルタミン酸、アラニン、チロシン、トリプトファン、メチオニン、ロイシン、アルギニンおよびグリシンからなる群から選択されるアミノ酸である、(1)乃至(11)のいずれか一つに記載のペプチド、
(13)
 アミノ末端から数えて9番目のXaaが、アスパラギン、セリン、チロシン、グルタミン酸、アラニン、グリシン、リジンおよびヒスチジンからなる群から選択されるアミノ酸である、(1)乃至(12)のいずれか一つに記載のペプチド、
(14)
 アミノ末端から数えて10番目のXaaが、アスパラギン酸、ヒスチジン、トリプトファン、フェニルアラニン、アスパラギン、バリンおよびロイシンからなる群から選択されるアミノ酸である、(1)乃至(13)のいずれか一つに記載のペプチド、
(15)
 アミノ末端から数えて11番目のXaaが、イソロイシン、チロシン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、ロイシン、アラニン、メチオニン、フェニルアラニンおよびバリンからなる群から選択されるアミノ酸である、(1)乃至(14)のいずれか一つに記載のペプチド、
(16)
 配列表の配列番号1乃至16のいずれか一つで示されるアミノ酸配列を有する、(1)乃至(15)のいずれか一つに記載のペプチド、
(17)
 (1)乃至(16)のいずれか一つに記載のペプチドに化学的修飾または生物学的修飾が施されてなる該ペプチドの誘導体、
(18)
 下記(i)乃至(iii)のいずれか一つに記載のヌクレオチド:
(i)(1)乃至(16)のいずれか一つに記載のペプチドの有するアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるヌクレオチドを含んでなるヌクレオチド;
(ii)(1)乃至(16)のいずれか一つに記載のペプチドの有するアミノ酸配列をコードする塩基配列を含んでなるヌクレオチド;および、
(iii)(1)乃至(16)のいずれか一つに記載のペプチドの有するアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるヌクレオチド、
(19)
 (18)記載のヌクレオチドを含んでなるベクター、
(20)
 (18)記載のヌクレオチドまたは(19)記載のベクターが導入された細胞、
(21)
 下記工程(i)および(ii)を含んでなる(1)乃至(16)のいずれか一つに記載のペプチドの製造方法:
(i)(20)記載の細胞を培養する工程;および、
(ii)工程(i)で得られた培養物から該ペプチドを回収する工程、
(22)
 (1)乃至(16)のいずれか一つに記載のペプチドおよび/または(17)記載のペプチドの誘導体を含んでなるペプチド・ライブラリー、
(23)
 ペプチドおよび/またはペプチドの誘導体が、(21)記載の工程(i)および(ii)を含んでなる方法により調製されたものであることを特徴とする、(22)記載のライブラリー、
(24)
 ライブラリーにおいて、表現型(phenotype)である該ペプチド又はペプチド誘導体および該表現型に対応する遺伝型(genotype)であるヌクレオチドが直接的または間接的にリンクしていることを特徴とする、(22)または(23)記載のライブラリー、
(25)
 ヌクレオチドが(18)に記載のヌクレオチドである、(22)乃至(24)のいずれか一つに記載のライブラリー、
(26)
 ファージ・ディスプレイ・ライブラリー、リボゾーム・ディスプレイ・ライブラリー若しくは核酸ディスプレイ・ライブラリーである、(22)乃至(25)のいずれか一つに記載のライブラリー、
(27)
 下記(i)および(ii)の工程を含んでなる、標的分子に結合する、(1)乃至(16)のいずれか一つに記載のペプチドまたは(17)記載のペプチド誘導体の同定方法:
(i)(22)乃至(26)のいずれか一つに記載のライブラリーに含まれるペプチドまたはペプチド誘導体と該標的分子とを接触させる工程;および、
(ii)該標的分子に結合するペプチドまたはペプチド誘導体を回収する工程、
(28)
 下記(i)乃至(iii)の工程を含んでなる、標的分子に結合する、(1)乃至(16)のいずれか一つに記載のペプチドまたは(17)記載のペプチド誘導体の製造方法:
(i)(22)乃至(26)のいずれか一つに記載のライブラリーに含まれるペプチドまたはペプチド誘導体と該標的分子とを接触させる工程;および、
(ii)該標的分子に結合するペプチドまたはペプチド誘導体を回収する工程;および、
(iii)前記(ii)において回収された該ペプチドまたはペプチド誘導体に含まれるペプチドを化学合成、遺伝子組換えまたはイン・ビトロ翻訳により調製する工程、
(29)
 下記(i)および(ii)の工程を含んでなる、(1)乃至(16)のいずれか一つに記載のペプチドまたは(17)記載のペプチドの誘導体が標的分子に結合するか否かを判定する方法:
(i)(1)乃至(16)のいずれか一つに記載の被検ペプチドまたは(17)記載の被検ペプチド誘導体と該標的分子とを接触させる工程;および、
(ii)被検ペプチドまたは被検ペプチド誘導体が該標的分子に結合する場合、該ペプチドまたは被検ペプチド誘導体は陽性であると決定する工程、
(30)
 下記(i)乃至(iii)の工程を含んでなる、標的分子に結合する、(1)乃至(16)のいずれか一つに記載のペプチドまたは(17)記載のペプチドの誘導体の製造方法:
(i)(1)乃至(16)のいずれか一つに記載の被検ペプチドまたは(17)記載の被検ペプチド誘導体と該標的分子とを接触させる工程; 
(ii)被検ペプチドまたは被検ペプチド誘導体が該標的分子に結合する場合、該ペプチドまたは被検ペプチド誘導体は陽性であると決定する工程;および、
(iii)前記(ii)において被検ペプチドまたはペプチド誘導体が陽性と判定された場合、該ペプチドまたはペプチド誘導体に含まれるペプチドを化学合成、遺伝子組換えまたはイン・ビトロ翻訳により調製する工程、
(31)
 (18)に記載のヌクレオチドを含んでなるヌクレオチド・ライブラリー、
(32)
 ヌクレオチドがファージミド、コスミドもしくはプラスミドまたはその断片である、(31)記載のライブラリー、
(33)
 ヌクレオチドが原核もしくは真核細胞内、または、ウイルスDNAまたはRNA上もしくはウイルス粒子中に存在する、(31)または(32)記載のヌクレオチド・ライブラリー、
(34)
 (1)乃至(16)のいずれか一つに記載のペプチド、(17)記載のペプチドの誘導体、(18)記載のヌクレオチド、(19)記載のベクターまたは(20)記載の細胞を含むことからなる組成物、および、
(35)
 (1)乃至(16)のいずれか一つに記載のペプチド、(17)記載のペプチドの誘導体、(18)記載のヌクレオチド、(19)記載のベクターまたは(20)記載の細胞を含むことからなる試薬、
等に関する。
 本発明により、所望の標的分子に結合するペプチドを選抜するのに有用なペプチド・ライブラリーを提供することが可能となる。
標的分子である各蛋白質に対してパニングを行うことにより得られたTACI_d2変異体が、それぞれの蛋白質に結合することを示す図。パニングに用いた標的分子は、図1(A)の(1)および(2)はそれぞれBSAおよびhEphA2である。 図1(A)の(1)および(2)はポリクローンの例である。 標的分子である各蛋白質に対してパニングを行うことにより得られたTACI_d2変異体が、それぞれの蛋白質に結合することを示す図。パニングに用いた標的分子は、図1(B)の(3)および(4)はそれぞれhEGFR/FcおよびhErbB2/Fcである。 図1(B)の(3)および(4)はポリクローンの例である。 標的分子である各蛋白質に対してパニングを行うことにより得られたTACI_d2変異体が、それぞれの蛋白質に結合することを示す図。パニングに用いた標的分子は、図1(C)の(5)および(6)はそれぞれhVEGF、および(6)hTNF-αである。図1(C)の(5)および(6)はシングルクローンの例である。
組換えヒトEphA2に結合するTACI_d2変異体#1乃至#3(以下、α-EphA2 TACI_d2 #1乃至#3)と野生型TACI_d2の特異性を比較した図。固相化蛋白質には、図2(A)の(1)および(2)ではそれぞれhEphA2およびBSAを用いた。 組換えヒトEphA2に結合するTACI_d2変異体#1乃至#3(以下、α-EphA2 TACI_d2 #1乃至#3)と野生型TACI_d2の特異性を比較した図。固相化蛋白質には、図2(B)の(3)および(4)ではそれぞれhBAFFおよびmEphA2/Fcを用いた。
α-EphA2 TACI_d2 #1乃び#2のヒトEhpA2発現細胞への結合性を比較した図。 図3(A)の(1)および(2)には、それぞれα-EphA2 TACI_d2 #1(α-EphA2 #1)およびα-EphA2 TACI_d2 #2(α-EphA2 #2)についてアッセイした結果を示す。 比較対象の細胞には、それぞれヒトEphA2発現細胞(a)およびヒトErbB2発現細胞(b)を用いた。α-EphA2 TACI_d2 #1および#2(α-EphA2 #1、およびα-EphA2 #2)は、ヒトEphA2発現細胞に特異的に結合した。 α-EphA2 TACI_d2 至#3および野生型TACI_d2のヒトEhpA2発現細胞への結合性を比較した図。 図3(B)の(3)および(4)には、それぞれα-EphA2 TACI_d2 #3(α-EphA2 #3)および野生型TACI_d2(WT)についてアッセイした結果を示す。 比較対象の細胞には、それぞれヒトEphA2発現細胞(a)およびヒトErbB2発現細胞(b)を用いた。 標的分子に特異的に結合するTACI_d2変異体の有するアミノ酸配列の一覧。*印を付した箇所は、該当するアミノ酸Serが存在しない(欠失している)ことを示す。WTは野生型のアミノ酸配列を示す。X(を付した箇所)は配列番号1で示されるアミノ酸配列におけるXaa(の位置)に相当する。
 本発明は、ペプチド、ペプチド誘導体、ペプチド・ライブラリー、ヌクレオチド、ベクター、細胞、ペプチドおよび/またはその誘導体の製造方法、所望の性質を有するペプチドおよび/またはその誘導体の同定方法、所望の性質を有するペプチドおよび/またはその誘導体の製造方法、被検ペプチドまたはその誘導体が標的分子に結合するか否かを判定する方法、ヌクレオチド・ライブラリー、組成物、試薬等を提供する。本発明の様々な態様について以下に述べるが、本発明の態様はそれらに限定されるものではない。
1.ペプチド
 本発明はペプチドを提供する。
 本発明の「ペプチド」は、「ポリペプチド」、「蛋白質」をもその意味に包含する。また、本発明において、かかる「ペプチド」は、「ペプチドの誘導体に含まれるペプチド」をもその意味に包含する。
 本発明の一つの態様において、ペプチドは、配列表の配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する。該アミノ酸配列において アミノ末端から数えて1番目乃至11番目のXaaは、それぞれ、任意のアミノ酸であるが、好適にはシステインを除く任意のアミノ酸であり、より好適にはシステインおよびプロリンを除く任意のアミノ酸である。
 本発明のより一層好適な態様において、該アミノ酸配列中、アミノ末端から数えて1番目のXaa(配列番号1の11番目のアミノ酸に相当する)は、グルタミン、メチオニン、ヒスチジン、セリン、グルタミン酸、アスパラギン、トリプトファン、イソロイシン、アスパラギン酸およびスレオニンからなる群から選択されるアミノ酸である; アミノ末端から数えて2番目のXaa(配列番号1の13番目のアミノ酸に相当する)は、トリプトファン、ロイシン、グリシン、イソロイシン、メチオニン、アスパラギン酸、アスパラギンおよびスレオニンからなる群から選択されるアミノ酸である; アミノ末端から数えて3番目のXaa(配列番号1の14番目のアミノ酸に相当する)は、アルギニン、ロイシン、アラニン、ヒスチジン、スレオニン、バリン、グルタミン酸およびセリンからなる群から選択されるアミノ酸である; アミノ末端から数えて4番目のXaa(配列番号1の15番目のアミノ酸に相当する)は、グルタミン酸、アルギニン、リジン、イソロイシン、グルタミン、トリプトファン、チロシン、グリシンおよびフェニルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸である; アミノ末端から数えて5番目のXaa(配列番号1の16番目のアミノ酸に相当する)は、リジン、グルタミン酸、メチオニン、アラニン、グルタミン酸、グリシン、スレオニン、ヒスチジンおよびトリプトファンからなる群から選択されるアミノ酸である; アミノ末端から数えて6番目のXaa(配列番号1の17番目のアミノ酸に相当する)は、トリプトファン、チロシン、セリン、フェニルアラニン、グルタミンおよびアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸である; アミノ末端から数えて7番目のXaa(配列番号1の20番目のアミノ酸に相当する)は、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、セリン、リジン、アルギニン、ヒスチジンおよびアスパラギンからなる群から選択されるアミノ酸である; アミノ末端から数えて8番目のXaa(配列番号1の25番目のアミノ酸に相当する)は、リジン、グルタミン酸、アラニン、チロシン、トリプトファン、メチオニン、ロイシン、アルギニンおよびグリシンからなる群から選択されるアミノ酸である; アミノ末端から数えて9番目のXaa(配列番号1の28番目のアミノ酸に相当する)は、アスパラギン、セリン、チロシン、グルタミン酸、アラニン、グリシン、リジンおよびヒスチジンからなる群から選択されるアミノ酸である; アミノ末端から数えて10番目のXaa(配列番号1の31番目のアミノ酸に相当する)は、アスパラギン酸、ヒスチジン、トリプトファン、フェニルアラニン、アスパラギン、バリンおよびロイシンからなる群から選択されるアミノ酸である; アミノ末端から数えて11番目のXaa(配列番号1の32番目のアミノ酸に相当する)は、イソロイシン、チロシン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、ロイシン、アラニン、メチオニン、フェニルアラニンおよびバリンからなる群から選択されるアミノ酸である; また、アミノ末端から数えて1番目乃至11番目のXaaは、本段落に記載された各群から選択されるアミノ酸が、保存的アミノ酸置換されたもの(本発明の他の部分に詳述されている)であってもよい。
 また、本発明のある態様において、ペプチドは、配列表の配列番号1で示されるアミノ酸配列にある、アミノ末端から数えて1番目乃至11番目のXaa以外のアミノ酸が置換、欠失、付加又は挿入されたアミノ酸配列を有する。アミノ末端から数えて1番目乃至11番目のXaa以外の、配列表の配列番号1で示されるアミノ酸配列において置換、欠失、付加又は挿入されたアミノ酸の数は、1個以上28個以下であればよく、その下限は1個である。その上限は28個、26個、24個、22個、20個、18個、16個、14個、12個、10個、8個、6個、5個、4個、3個、2個であり、最小1個である。
 かかるアミノ酸配列において アミノ末端から数えて1番目乃至11番目のXaaは、それぞれ、任意のアミノ酸であるが、好適にはシステインを除く任意のアミノ酸であり、より好適にはシステインおよびプロリンを除く任意のアミノ酸であり、より一層好適には、前記の各群から選択されるアミノ酸であるか、あるいは該アミノ酸が保存的アミノ酸置換されたものである。
 「保存的アミノ酸置換(conservative amino acid substitution)」とは、機能的に等価または類似のアミノ酸との置換を意味する。ペプチドにおける保存的アミノ酸置換は、該ペプチドのアミノ酸配列に静的変化をもたらす。例えば、同様の極性を有する一つまたは二つ以上のアミノ酸は機能的に等価に作用し、かかるペプチドのアミノ酸配列に静的変化をもたらす。一般に、あるグループ内の置換は構造および機能について保存的であると考えることができる。しかしながら、当業者には自明であるように、特定のアミノ酸残基が果たす役割は当該アミノ酸を含む分子の三次元構造における意味合いにおいて決定され得る。例えば、システイン残基は、還元型の(チオール)フォームと比較してより極性の低い、酸化型の(ジスルフィド)フォームをとることができる。アルギニン側鎖の長い脂肪族の部分は構造的および機能的に重要な特徴を構成し得る。また、芳香環を含む側鎖(トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン)はイオン-芳香族相互作用または陽イオン-pi相互作用に寄与し得る。かかる場合において、これらの側鎖を有するアミノ酸を、酸性または非極性グループに属するアミノ酸と置換しても、構造的および機能的には保存的であり得る。プロリン、グリシン、システイン(ジスルフィド・フォーム)等の残基は主鎖の立体構造に直接的な効果を与える可能性があり、しばしば構造的ゆがみなしに置換することはできない。
 保存的アミノ酸置換は、以下に示すとおり、側鎖の類似性に基づく特異的置換(レーニンジャ、生化学、改訂第2版、1975年刊行、73乃至75頁:L. Lehninger, Biochemistry, 2ndedition, pp73-75, Worth Publisher, New   York (1975))および典型的置換を含む。
(1)非極性アミノ酸グループ:アラニン(以下、「Ala」または単に「A」と記す)、バリン(以下、「Val」または単に「V」と記す)、ロイシン(以下、「Leu」または単に「L」と記す)、イソロイシン(以下、「Ile」または単に「I」と記す)、プロリン(以下、「Pro」または単に「P」と記す)、フェニルアラニン(「Phe」または単に「F」と記す)、トリプトファン(以下、「Trp」または単に「W」と記す)、メチオニン(以下、「Met」または単に「M」と記す)
(2)非荷電極性アミノ酸グループ:グリシン(以下、「Gly」または単に「G」と記す)、セリン(以下、「Ser」または単に「S」と記す)、スレオニン(以下、「Thr」または単に「T」と記す)、システイン(以下、「Cys」または単に「C」と記す)、チロシン(以下、「Tyr」または単に「Y」と記す)、アスパラギン(以下、「Asn」または単に「N」と記す)、グルタミン(以下、「Gln」または単に「Q」と記す)
(3)酸性アミノ酸グループ:アスパラギン酸(以下、「Asp」または単に「D」と記す)、グルタミン酸(以下、「Glu」または単に「E」と記す)
(4)塩基性アミノ酸グループ:リジン(以下、「Lys」または単に「K」と記す)、アルギニン(以下、「Arg」または単に「R」と記す)、ヒスチジン(以下、「His」または単に「H」と記す)
 また、天然界に存在するアミノ酸は、その共通する側鎖の性質に基づいて次のようなグループに分けることができる。
(1)疎水性アミノ酸グループ:ノルロイシン(Norleucine)、Met、Ala、Val,Leu,Ile
(2)中性親水性アミノ酸グループ:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln
(3)酸性アミノ酸グループ:Asp、Glu
(4)塩基性アミノ酸グループ:His、Lys、Arg
(5)主鎖の方角に影響を与えるアミノ酸のグループ:Gly、Pro
(6)芳香族アミノ酸グループ:Trp、Tyr、Phe
 以下に、保存的置換の例を示すが、本発明の保存的アミノ酸置換はこれらに限定されるものではない。
 Alaは、例えば、Val,Leu、Ile、Met、ノルロイシン、Pro、Phe、Trpと置換し得る。
 Argは、例えば、Lys、Hisと置換し得る。
 Asnは、例えば、Cys、Ser、Thr、Gln、Tyr、Glyと置換し得る。
 Aspは、例えば、Gluと置換し得る。
 Cysは、例えば、Gly、Ser、Thr、Tyr、Asn、Glnと置換し得る。
 Glnは、例えば、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asnと置換し得る。
 Gluは、例えば、Aspと置換し得る。
 Glyは、例えば、Ser、Cys、Thr、Tyr、Asn、Gln、Pro、Asp、Gluと置換し得る。
 Hisは、例えば、Lys、Argと置換し得る。
 Ileは、例えば、Leu、Val、Met、Pro、Ala、Phe、Trp、ノルロイシンと置換し得る。
 Leuは、例えば、ノルロイシン、Ile、Val、Pro、Met、Ala、Phe、Trp、Metと置換し得る
 Lysは、例えば、Arg、Hisと置換し得る。
 Metは、例えば、Ala、Val、Leu、Phe、Ile、Pro、Trp、ノルロイシンと置換し得る。
 ノルロイシンは、例えば、Met、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Trpと置換し得る。
 Pheは、例えば、Trp、Leu、Val、Ile、Ala、Tyr、Pro、Metと置換し得る。
 Proは、例えば、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Trp、Met、Glyと置換し得る。
 Serは、例えば、Thr、Cys、Asn、Gln、Gly、Tyrと置換し得る。
 Thrは、例えば、Val、Ser、Gly、Cys、Tyr、Asn、Glnと置換し得る。
 Trpは、例えば、Tyr、Phe、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Metと置換し得る。
 Tyrは、例えば、Gly、Cys、Asn、Gln、Trp、Phe、Thr、Serと置換し得る。
 Valは、例えば、Ile、Leu、Met、Trp、Phe、Ala、ノルロイシン、Proと置換し得る。
 かかるアミノ酸から構成されるアミノ酸配列を有する本発明のペプチドの有するアミノ酸配列の例としては、以下のものを挙げることができるが、本発明のペプチドの有するアミノ酸配列はこれらに限定されるものではない。
SLSCRKEQGKQYWREKMDCECASKCGNHPDICAYFCEN(配列表の配列番号1:図4の1)
SLSCRKEQGKQYLLREWDCDSCASECGSHPHYCAYFCEN(配列表の配列番号2:図4の2)
SLSCRKEQGKMYLLKEWDCASCASACGNHPHYCAYFCEN(配列表の配列番号3:図4の3)
SLSCRKEQGKHYLLKEYDCDSCASECGYHPDYCAYFCEN(配列表の配列番号4:図4の4)
SLSCRKEQGKSYGAIMYDCSSCASYCGEHPWHCAYFCEN(配列表の配列番号5:図4の5)
SLSCRKEQGKEYGAIAWDCSSCASYCGAHPFECAYFCEN(配列表の配列番号6:図4の6)
SLSCRKEQGKNYIHQQWDCASCASECGGHPNYCAYFCEN(配列表の配列番号7:図4の7)
SLSCRKEQGKWYMTWESDCKSCASWCGSHPFDCAYFCEN(配列表の配列番号8:図4の8)
SLSCRKEQGKMYDLYGFDCRSCASMCGKHPDLCAYFCEN(配列表の配列番号9:図4の9)
SLSCRKEQGKMYMVWTQDCKSCASWCGAHPVACAYFCEN(配列表の配列番号10:図4の10)
SLSCRKEQGKIYNQYGFDCKSCASWCGKHPDMCAYFCEN(配列表の配列番号11:図4の11)
SLSCRKEQGKIYMTWHDDCHSCASLCGSHPLFCAYFCEN(配列表の配列番号12:図4の12)
SLSCRKEQGKDYMVFGQDCHSCASWCGKHPVACAYFCEN(配列表の配列番号13:図4の13)
SLSCRKEQGKQYMAGHFDCNSCASRYGHHPLMCAYFCEN(配列表の配列番号14:図4の14)
SLSCRKEQDKTYIEYGFDCRSCASGCGGHPLMCAYFCEN(配列表の配列番号15:図4の15)
SLSCRKEQGKSYTSEWFDCASCASKYGKHPLVCAYFCEN(配列表の配列番号16:図4の16)
 
 本発明において、アミノ酸は、L-アミノ酸、D-アミノ酸、またはその混合物(DL-アミノ酸)であるが、特に明記しない限りL-アミノ酸を意味する。
 また、本発明において、アミノ酸は、上記以外のアミノ酸(以下、便宜的に「異常アミノ酸」と総称する。)であってよい。異常アミノ酸としては、例えば、天然のペプチドや蛋白質において見出されるセレノシステイン、N-ホルミルメチオニン、ピロリジン、ピログルタミン酸、シスチン、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、チロキシン、O-ホスホセリン、デスモシン、β-アラニン、サルコシン、オルニチン、クレアチン、γアミノ酪酸、オパイン、テアニン、トリコロミン酸、カイニン酸、ドウモイ酸、アクロメリン酸等を挙げることができ、非天然アミノ酸としては、Ac-アミノ酸、Boc-アミノ酸、Fmoc-アミノ酸、Trt-アミノ酸、Z-アミノ酸等のN末端保護アミノ酸、アミノ酸t-ブチルエステル、ベンジルエステル、シクロヘキシルエステル、フルオレニルエステル等のC末端保護アミノ酸、ジアミン、ωアミノ酸、βアミノ酸、γアミノ酸、アミノ酸のTic誘導体、アミノフォスフォン酸を含むその他のアミノ酸等を挙げることができるが、それらに限定されるものではない。
 本発明のペプチドは、化学合成、遺伝子組換え、イン・ビトロ翻訳等、ペプチドや蛋白質を製造する方法として当業者に周知の方法により調製することができる。また、本発明のライブラリー等から本発明の同定方法により選抜されたペプチドも、それらの方法により調製することができる。
 化学合成法としては、例えば、t-ブトキシカルボニル(t-Butoxycarbonyl:Boc)法、9-フルオレニルメトキシカルボニル(9-Fluorenylmethoxycarbonyl:Fmoc)法等をあげることができるが、それらに限定されるものではない。Fmoc法は、脱保護条件が温和であり、樹脂からのペプチドの切り出しが簡便であること等の特長を有している(Fmoc solid phase peptide synthesis: a practical approach, ed. by W. C. Chan, P. D. White Eds., Oxford University Press, New York, 2000.)。
 本発明において、「ペプチドの誘導体」および「ペプチド誘導体」とは、本発明のペプチドに化学的な修飾または生物学的な修飾が施されたものを意味する。化学的な修飾とは、本発明のペプチド中またはペプチド上において、化学反応、すなわち原子-原子間の結合の生成若しくは切断により、元のペプチドとは異なる物質に変化させることを意味する。生物学的修飾とは、本発明のペプチド中またはペプチド上において、生物学的反応、すなわち生物に由来する蛋白質(酵素、サイトカイン等)、核酸(リボザイム等)、細胞、組織、器官若しくは非ヒト個体を利用して、またはそれらの直接的または間接的な作用により、元のペプチドとは異なる物質を生じさせることを意味する。
 かかる「誘導体」は、元のペプチドとは異なる物質であれば特に限定されるものではないが、例えば、天然に生じる糖鎖または人工的に創出された糖鎖を含むもの、ポリエチレングリコール(PEG)等のポリマーを含むもの、合成化合物または天然化合物を含むもの、標識されたもの、固相化に必要な部分を含むもの、アミノ末端側にシグナルペプチドが連結しているもの、精製または単離を行う際に利用するタグを含むもの、および、表現型であるペプチドおよび該表現型に対応する遺伝型が直接的または間接的にリンクしているもの、ならびに、それらのうち二つ以上を組み合わせたもの等をあげることができる。
 本発明のペプチド誘導体は、本発明のペプチドを原料として、化学反応、生化学反応、翻訳後修飾等、ペプチドや蛋白質を化学的または生物学的に修飾する方法として当業者に周知の方法に供することにより、調製することができる。また、本発明のライブラリー等から本発明の同定方法により選抜されたペプチドの誘導体も、それらの方法により調製することができる。また、所望の翻訳語修飾能を有する細胞を用いた遺伝子組換えによっても、かかる翻訳後修飾が施された本発明のペプチド誘導体を調製することができる。さらに、イン・ビトロ翻訳系に修飾アミノ酸を添加することにより、該修飾アミノ酸を含む本発明のペプチド誘導体を調製することができる。
 PEG化の方法としては、例えば、ペプチドまたは蛋白質とN-Hydroxysuccimide Ester(NHS)-PEGとを反応させる方法等をあげることができるが、それに限定されるものではない。
 本発明のペプチドおよびその誘導体は、好適な態様において、標的分子に結合する。
 本発明のペプチドおよびその誘導体がとり得る形態としては、例えば、単離された形態(凍結乾燥標品、溶液等)、他の分子に結合した形態(固相化された形態、融合蛋白質、異分子との会合体、標的分子と結合した形態等)、他のペプチド等をも含む物理的集合(本発明のペプチド・ライブラリーを含む)、細胞表面上(大腸菌や酵母の細胞表面上等)に発現または提示(ディスプレイと同義)された形態(本発明の細胞を含む)、ウイルス粒子上に発現または提示(ディスプレイと同義)された形態等をあげることができるが、それらに限定されるものではなく、使用、保存等の目的に適合した形態を任意に選択することができる。
2.ヌクレオチド
 本発明はヌクレオチドを提供する。
 本発明において、「ヌクレオチド」は、モノヌクレオチド、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドであり、「核酸」または「遺伝子」とも呼ばれる。本発明のヌクレオチドとしては、例えば、DNA、cDNA、RNA、mRNA、cRNA、プローブ、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、プライマー、ベクター等をあげることができるが、それらに限定されるものではない。また、本発明のヌクレオチドは、一本鎖ヌクレオチド、二本鎖ヌクレオチドおよび三本以上のヌクレオチドの会合体のいずれであってもよく、DNAおよびRNAからなるハイブリッド一本鎖ヌクレオチド、該ヌクレオチドとその相補鎖からなる二本鎖、一本鎖DNAおよび一本鎖RNAからなるハイブリッド二本鎖、二本鎖RNA、分子内に二本鎖構造部分を有し得る一本鎖ヌクレオチド等をも包含する。さらに、本発明のヌクレオチドは、天然に生じる塩基またはモノヌクレオチド以外の(人工的に創出された)塩基もしくはモノヌクレオチドを一つまたは二つ以上含んでいてもよい。
 本発明の好適なヌクレオチドとしては、本発明のペプチドの有するアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるヌクレオチドを含んでなるヌクレオチド、本発明のペプチドの有するアミノ酸配列をコードする塩基配列を含んでなるヌクレオチド等をあげることができる。かかる好適なヌクレオチドは、本発明のペプチドの有するアミノ酸配列をコードする塩基配列以外の塩基配列および/または非ヌクレオチド部分を含んでいてもよく、化学的または生物学的な修飾(本発明の他の部分に記載されている)が施されていてもよい。それらはいずれも「ヌクレオチド」に包含される。
 また、本発明のヌクレオチドは、本発明のペプチドの有するアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるヌクレオチドをも包含する。
 本発明においては、本発明のペプチドの有するアミノ酸配列が、あるヌクレオチドの塩基配列の一部または全部によりコードされている場合、かかるヌクレオチドを「(かかる)ペプチドに対応するヌクレオチド」とよび、かかるペプチドを「(かかる)ヌクレオチドに対応するペプチド」とよぶ。
 本発明のペプチドに対応するヌクレオチドとしては、例えば、本発明のペプチドの有するアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるヌクレオチドを含んでなるヌクレオチド、本発明のペプチドの有するアミノ酸配列をコードする塩基配列を含んでなるヌクレオチド、本発明のペプチドの有するアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるヌクレオチド等をあげることができるが、これらに限定されるものではない。
 本発明のヌクレオチドに対応するペプチドとしては、本発明のヌクレオチドの塩基配列の一部もしくは全部によりコードされるアミノ酸配列からなるペプチドを含んでなるペプチド、本発明のヌクレオチドの塩基配列の一部または全部によりコードされるアミノ酸配列を含んでなるペプチド、本発明のヌクレオチドの塩基配列の一部または全部によりコードされるアミノ酸配列からなるペプチド、それらのペプチドのいずれか一つの誘導体等をあげることができるが、これらに限定されるものではない。
 本発明においては、「表現型に対応する遺伝型」なる表現も「ペプチドに対応するヌクレオチド」と同じ意味に用いられる。同様に、「遺伝型に対応する表現型」なる表現も「ヌクレオチドに対応するペプチド」と同じ意味に用いられる。
 本発明のヌクレオチドの化学的または生物学的な修飾物が本発明のペプチドを含んでいる場合、かかる修飾物は、前述の本発明の「ペプチドの誘導体」の意味に包含される。
 本発明のより好適なヌクレオチドとしては、前述の好適なヌクレオチドのうち、標的分子に結合する本発明のペプチドの有するアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるヌクレオチドを含んでなるヌクレオチド、標的分子に結合する本発明のペプチドの有するアミノ酸配列をコードする塩基配列を含んでなるヌクレオチド、標的分子に結合する本発明のペプチドの有するアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるヌクレオチド等をあげることができる。
 本発明において、アミノ酸配列をコードする塩基配列を設計するに際しては、各アミノ酸に対応するコドンを一種または二種以上使用することができる。それゆえ、あるペプチドまたは蛋白質が有する単一のアミノ酸配列をコードする塩基配列は、複数のバリエーションを有し得る。かかるコドンの選択に際しては、該ペプチドに対応する遺伝型、すなわち該塩基配列を含むヌクレオチドが導入される細胞(宿主細胞)のコドン使用(codon usage)に応じて適宜コドンを選択したり、複数のコドンの使用の頻度もしくは割合を適宜調節したりすることができる。例えば、大腸菌を細胞(宿主細胞)として用いる場合は、大腸菌において使用頻度が高いコドンを使用して塩基配列を設計することができる。
 本発明のヌクレオチドは、化学合成、遺伝子組換え等、ヌクレオチドを製造する方法として当業者に周知の方法により調製することができる。また、本発明のライブラリー等から本発明の同定方法により回収(選抜、濃縮、単離を含む)されたペプチドに対応するヌクレオチドも、それらの方法により調製することができる。
 本発明のヌクレオチドがとり得る形態としては、例えば、単離された形態(凍結乾燥標品、溶液等)、他の分子に結合した形態(固相化された形態等)、該ヌクレオチドを含む組換えベクター(本発明のベクター)、該ヌクレオチドまたは該ベクターが導入された細胞(本発明の細胞)、ウイルスもしくはウイルス粒子に含まれる形態(本発明のベクターとして含まれる形態を含む)、他のヌクレオチド等をも含む物理的集合(本発明のヌクレオチド・ライブラリーを含む)等をあげることができるが、それらに限定されるものではなく、使用、保存等の目的に適合した形態を任意に選択することができる。
3.ベクター
 本発明は組換えベクター(以下、単に「ベクター」ともよぶ)を提供する。
 本発明のベクターは、本発明のヌクレオチドを含み、且つ本発明のヌクレオチドを細胞、微生物または個体に導入するための手段であれば特に限定されないが、好適には、ファージミド、コスミド、プラスミド等の核酸ベクターをあげることができる。
 本発明のベクターは、原核細胞または真核細胞に感染するウイルスまたはウイルス性ベクターであってもよい。
 本発明において、「ファージミド」とは、プラスミド複製起点の他に、一本鎖バクテリオファージから誘導された第二の複製起点を含む細菌プラスミドを意味する。かかるファージミドを有する細胞は、M13またはそれに類似のヘルパーバクテリオファージによる重感染において、一本鎖複製モードを介してファージミドを複製することができる。すなわち、バクテリオファージ被覆タンパク質により被覆された感染性粒子の中に、一本鎖ファージミドDNAがパッケージされる。このようにして、ファージミドDNAを、感染細菌中にクローン二本鎖DNAプラスミドとして、ファージミドを、重感染した細胞の培養上清からバクテリオファージ状の粒子として、それぞれ形成することができる。バクテリオファージ状の該粒子を、F性線毛を有する細菌にかかるDNAを感染させるために該細菌中に注入することにより、粒子自体をプラスミドとして再形成することができる。
 本発明のペプチドに対応するヌクレオチドおよびバクテリオファージ被覆蛋白質(coat protein)遺伝子を含んで構成される融合遺伝子を該ファージミドに挿入して細菌に感染させ、該細胞を培養すれば、かかるペプチドを、該細菌上またはファージ様粒子上に発現もしくは提示(ディスプレイと同義)させるか、または、該被覆蛋白質との融合蛋白質としてファージ粒子中もしくは該細菌の培養上清中に産生することができる。
 例えば、本発明のペプチドに対応するヌクレオチドおよびバクテリオファージ被覆タンパク質遺伝子gpIIIを含んで構成される融合遺伝子をファージミドに挿入し、M13またはそれに類似のヘルパーファージとともに大腸菌に重感染させれば、該ペプチドおよび該被覆蛋白質を含んで構成される融合蛋白質として、該大腸菌の培養上清中に産生させることができる。
 ファージミドの代わりに、環状または非環状の各種ベクター、好適にはウイルスベクターを用いても、当業者に周知の方法に従って、該ベクターに含まれる本発明のヌクレオチドの塩基配列によりコードされるペプチドを、該ベクターが導入された細胞あるいはウイルス様粒子上に発現もしくは提示(ディスプレイと同義)させるか、または該細胞の培養上清中に産生することができる。
 本発明のベクター(組換えベクター)は、遺伝子組換え等当業者に周知の方法により調製することができる。
 本発明のベクターがとり得る形態としては、例えば、単離された形態(凍結乾燥標品、溶液等)、他の分子に結合した形態(固相化された形態等)、細胞に導入された形態(本発明の組換え細胞を含む)、他のベクター等をも含む物理的集合(本発明のヌクレオチド・ライブラリーの特定の態様を含む)等をあげることができるが、それらに限定されるものではなく、使用、保存等の目的に適合した形態を任意に選択することができる。
4.細胞
 本発明は、その一つの態様において、組換え細胞(以下、単に「細胞」ともよぶ)を提供する。
 本発明の細胞は、本発明のペプチドに対応するヌクレオチドを含み且つ該ペプチドを発現する細胞である。かかる細胞の宿主細胞としては、真核細胞(株化細胞、初代培養細胞、継代培養細胞を含む)および原核細胞のいずれであっても特に限定されるものではない。
 原核細胞としては、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)等の細菌細胞をあげることができるが、これらに限定されるものではない。
 真核細胞としては、例えば、動物細胞、昆虫細胞、酵母、真菌等をあげることができ、動物細胞としては、例えば、サルの細胞であるCOS細胞(グルツマン、セル、23巻、1981年刊行、175乃至182頁:Gluzman, Y., Cell (1981), vol.23, pp175-182:アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション番号 ATCC CRL-1650)、マウス線維芽細胞NIH3T3(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション番号 ATCC CRL-1658)、チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(Chinese hamster ovary cell:CHO細胞:アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション番号 ATCC CCL-61)、CHO細胞のジヒドロ葉酸還元酵素欠損株(ウルラオプとチャシン、プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユーエスエー、77巻、1980年刊行、4126乃至4220頁:Urlaub, G. and Chasin, L. A., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1980), vol.77, pp4126-4220)等をあげることができるが、これらに限定されるものではない。
 本発明の細胞は、本発明のヌクレオチドまたはベクターを宿主細胞へ導入することにより調製することができるが、好適には、本発明のベクターをトランスフェクション、形質転換、形質導入等で宿主細胞へ導入することにより調製することができる。
 本発明の細胞の調製に適用し得るベクターとしては、例えば、かかる原核細胞と適合し得る種由来のレプリコンすなわち複製起点と、調節配列、転写開始点、(翻訳の)開始コドンと終止コドン等から選択されるものの塩基配列を一つ以上含むプラスミド、コスミド、ファージミド等をあげることができるが、それらに限定されるものではない。また、かかるヌクレオチドまたはベクターは、該ベクターまたはヌクレオチドが導入された細胞に表現形質(表現型)の選択性を付与し得る塩基配列を含んでいてもよい。かかるベクターまたはヌクレオチドを宿主細胞に導入し、得られた細胞を培養することにより、本発明のペプチドを発現させることができる。
 本発明のペプチドの翻訳後修飾に適した宿主細胞も、本発明の細胞として使用することができる。かかる宿主細胞が適用された本発明の細胞は、本発明のペプチド誘導体を調製する方法(のある態様)において使用することができる。
 本発明の細胞がとり得る形態としては、例えば、単離された形態(冷凍標品、凍結乾燥標品、溶液等)、他の分子に結合した形態(固相化された形態等)、本発明のヌクレオチドまたはベクターが導入された細胞(本発明の細胞に含まれる)、本発明のペプチドが表面に発現または提示(ディスプレイと同義)されている細胞(本発明の細胞に含まれる)、他の細胞等をも含む物理的集合(本発明のヌクレオチド・ライブラリーおよびペプチド・ライブラリーの特定の態様を含む)等をあげることができるが、それらに限定されるものではなく、使用、保存等の目的に適合した形態を任意に選択することができる。
5.ペプチドの製造方法
 本発明は、また他の態様として、本発明のペプチドの製造方法を提供する。
 本発明のペプチドは、前述のとおり、化学合成、遺伝子組換え、イン・ビトロ翻訳等、ペプチドや蛋白質を製造する方法として当業者に周知の方法により調製することができる。また、本発明のライブラリー等から本発明の同定方法により回収(選抜、濃縮、単離を含む)されたペプチドも、それらの方法により調製することができる。
 本発明のペプチドの製造方法は、ある態様において、次の工程(1-1)および(1-2)を含んでなる:
(1-1)本発明のペプチドに対応するヌクレオチドを含み且つ該ペプチド等を発現する細胞(本発明の細胞)を培養する工程;および、
(1-2)該培養物から該ペプチドを回収する工程。
 また、本発明のペプチドの製造方法は、他の態様において、次の工程(2-1)および(2-2)を含んでなる:
(2-1)標的分子に結合する本発明のペプチドのアミノ酸配列を決定する工程;および、
(2-2)該アミノ酸配列からなるペプチドを化学合成または遺伝子組換えにより調製する工程。
 さらに、本発明のペプチドの製造方法は、また他の態様において、次の工程(3-1)および(3-2)を含んでなる:
(3-1)本発明のペプチドに対応する対応するmRNAを調製する工程;および、
(3-2)前記(3-1)で得られたmRNAを鋳型として、イン・ビトロ翻訳により、該ペプチドを調製する工程。
 また、これらの製造方法には、事前の工程として、本発明の同定方法を適宜組合せることができる。すなわち、まず、本発明の同定方法に含まれる工程を実施し、次いで本発明の製造方法に含まれる工程を実施することができる。本発明のペプチドの製造方法は、そのような、本発明の同定方法(の各工程)をさらに含むことからなる方法をも包含する。
 そのような本発明のペプチドの製造方法は、例えば、次の工程(4-1)乃至(4-3)を含んでなる:
(4-1)本発明のペプチド・ライブラリーに含まれるペプチドと標的分子とを接触させる工程;
(4-2)該標的分子に結合するペプチドを回収する工程;および
(4-3)回収されたペプチドを、化学合成、遺伝子組換えまたはイン・ビトロ翻訳により調製する工程。
 同様に、これらの製造方法には、事前の工程として、本発明の判定方法を適宜組合せることができる。すなわち、まず、本発明の判定方法に含まれる工程を実施し、次いで本発明の製造方法に含まれる工程を実施することができる。本発明のペプチド等の製造方法は、そのような、本発明の判定方法(の各工程)をさらに含むことからなる方法をも包含する。
 そのような本発明のペプチド等の製造方法は、例えば、次の工程(5-1)乃至(5-3)を含んでなる:
(5-1)本発明の被検ペプチドと標的分子とを接触させる工程;
(5-2)被検ペプチドが該標的分子に結合する場合、該ペプチドは陽性であると決定する工程;および、
(5-3)前記(5-2)において被検ペプチドは陽性であると決定された場合、該ペプチドを化学合成、遺伝子組換えまたはイン・ビトロ翻訳により調製する工程。
 また、本発明はペプチドの誘導体(ペプチド誘導体)の製造方法を提供する。本発明のペプチド誘導体は、該誘導体に含まれるペプチドを上記の方法(ペプチドの製造方法)により調製した後、化学反応、生化学反応、翻訳後修飾等に供することにより、調製することができる。
 本発明のペプチド誘導体の製造方法としては、例えば、上記の(1-1)および(1-2)、(2-1)および(2-2)、(3-1)および(3-2)、(4-1)乃至(4-3)、または、(5-1)乃至(5-3)等の各工程に加え、本発明のペプチドを原料として本発明のペプチド誘導体を調製する工程(以下、「誘導体調製工程」という。)をも含んでなる方法をあげることができるが、それらに限定されるものではない。
 また、所望の翻訳後修飾能を有する細胞を本発明のペプチドの製造方法において用いることにより、所望の翻訳後修飾が施されたペプチドとして、本発明のペプチド導体を調製することもできる。かかる場合、例えば、所望の翻訳後修飾能を有する細胞を、上記工程の(1-1)および(1-2)における細胞として、または、(2-2)、(4-3)および(5-3)における遺伝子組換えに適用される細胞(または宿主細胞)として、それぞれ用いることにより、所望の翻訳後修飾が施されたペプチド誘導体を調製することができるが、本発明の(ペプチド誘導体の製造方法の態様として)ペプチドの翻訳後修飾体を調製する方法は、それらに限定されるものではない。
 
6.ライブラリー
 本発明はライブラリーを提供する。
 本発明において、「ライブラリー」とは、類似するが、同一ではない分子の物理的集合(コレクション)を意味する。かかる集合は、例えば、一つの容器中に共存するが、異なる容器あるいは固相支持体上の異なる場所に、グループとしてまたは個々の分子として、物理的に分離されて存在してもよい。複数のライブラリーが同一の集合に含まれていてもよい。
 本発明のライブラリーは、同一ではない本発明のペプチドおよび/またはヌクレオチドの物理的集合であれば何ら限定されるものではないが、例えば、ファージ・ディスプレイ・ライブラリー、リボゾーム・ディスプレイ・ライブラリー、核酸ディスプレイ・ライブラリー等をあげることができる。
 「ファージ・ディスプレイ」とは、繊維状ファージ(filamentous phage)等の被覆蛋白質(coat protein)に外来のペプチドまたは蛋白質を連結し、融合蛋白質としてファージ様粒子上に発現または提示(ディスプレイと同義)させる技術(方法およびそのための手段)を意味する。また、かかる技術を利用した、該ペプチドまたは蛋白質に対応するヌクレオチドの回収(選抜、濃縮、単離を含む)も「ファージ・ディスプレイ」の意味に包含される。ファージ・ディスプレイ・ライブラリーは、かかる技術において使用される、本発明のライブラリーの一態様である。
 「リボゾーム・ディスプレイ」とは、イン・ビトロ翻訳において、翻訳反応中に形成される、mRNA-リボソーム-ペプチドまたは蛋白質、の三者を含んでなる複合体としての形態で、ペプチドまたは蛋白質を発現または提示(ディスプレイと同義)させる技術(方法およびそのための手段)を意味する。ここで、ペプチドまたは蛋白質は、該mRNAの翻訳産物である。また、かかる技術による、該ペプチドまたは蛋白質に対応するヌクレオチドの回収(選抜、濃縮、単離を含む)も「リボゾーム・ディスプレイ」の意味に包含される。リボゾーム・ディスプレイ・ライブラリーは、かかる技術において使用される、本発明のライブラリーの他の一態様である。
 「核酸ディスプレイ」とは、ヌクレオチド(核酸と同義)と、該ヌクレオチドに対応するペプチドまたは蛋白質を含んでなる複合体としての形態で、ペプチドもしくは蛋白質を発現または提示(ディスプレイと同義)させる技術(方法およびそのための手段)を意味する(キーフェとスゾスタク、ネイチャー、410巻、715乃至718頁、2001年刊行:Keefe, A.D and Szostak, J.W., Nature, vol.410 (2001), pp715-718)。また、かかる技術による、該ペプチドまたは蛋白質に対応するヌクレオチドの回収(選抜、濃縮、単離を含む)も「核酸ディスプレイ」の意味にされ包含する。核酸ディスプレイ・ライブラリーは、かかる技術において使用される、本発明のライブラリーのまた他の一態様である。
 核酸ディスプレイとしては、例えば、mRNAディスプレイをあげることができるが、それに限定されるものではない。(Yamaguchi, J. et al., Nucleic Acids Research, vol.37, No.16 e108, pp1-13 (2009))
 mRNAディスプレイは、mRNAとその翻訳産物であるペプチドまたは蛋白質が介在部分を挟んで連結してなる複合体としての形態で、ペプチドまたは蛋白質を提示(ディスプレイと同義)させる技術である(キーフェとスゾスタク、ネイチャー、410巻、715乃至718頁、2001年刊行:Keefe, A.D and Szostak, J.W., Nature, vol.410 (2001), pp715-718)。
 本発明においては、同一ではない本発明のペプチドおよび/またはヌクレオチドの物理的集合を含む細胞の物理的集合、微生物(ウイルス、ファージ、ファージ様分子、それらのいずれかの粒子等を含む)の物理的集合、および、天然に生じるかまたは人工的に創出されたベクター(ファージミド、コスミド、プラスミド等を含む)の物理的集合、ならびに、それらの断片の物理的集集合、および、科学的および/または生物学的な修飾物の物理的集合も、「ライブラリー」の意味に包含される。
 前述のとおり、本発明において、アミノ酸配列コードする塩基配列を設計するに際しては、各アミノ酸に対応するコドンを一種または二種以上使用することができる。それゆえ、あるペプチドまたは蛋白質が有する単一のアミノ酸配列をコードする塩基配列は、複数のバリエーションを有し得る。かかるコドンの選択に際しては、該ペプチドに対応する遺伝型、すなわち該塩基配列を含むヌクレオチドが導入される細胞(宿主細胞)のコドン使用(codon usage)に応じて適宜コドンを選択したり、複数のコドンの使用の頻度もしくは割合を適宜調節したりすることができる。よって、本発明のヌクレオチド・ライブラリーには、単一のアミノ酸配列をコードする塩基配列のヌクレオチドは、複数のバリエーションを有し得る。すなわち、本発明のヌクレオチド・ライブラリーには、あるペプチドの有するアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むヌクレオチドの物理的集合が含まれていてもよい。かかる特定のペプチドに対応するヌクレオチドの物理的集合は、それら自体で一つのヌクレオチド・ライブラリーを形成し得る。
 本発明のライブラリーには、類似するが、同一ではない分子が複数含まれる。ライブラリーに含まれる類似分子の種類(の数)のことを「ライブラリーの多様性」という。例えば、100種の類似分子からなるライブラリーの多様性は10である。本発明において、ライブラリーの多様性は、特に限定されるものではないが、その数値が高いほど好ましい。
 本発明の同定方法および該同定方法の工程を含むペプチドの製造方法において使用されるペプチド・ライブラリーの多様性は、1×10以上、以上2×10以上、5×10以上、1×10以上、2×10以上、5×10以上、1×10以上、2×10以上、5×10以上、1×10以上、2×10以上、5×10以上、1×10以上、2×10以上、5×10以上、1×1010以上、2×1010以上、5×1010以上、1×1011以上、2×1011以上、5×1011以上、1×1012以上、2×1012以上、5×1012以上、1×1013以上、2×1013以上、5×1013以上、1×1014以上、2×1014以上、5×1014以上、1×1015以上、2×1015以上、5×1015以上、1×1016以上、2×1016以上、5×1016以上、または、1×1017以上である。かかるライブラリーの多様性は、実測値に限定されるものではなく、理論値であってもよい。
7.同定方法
 本発明は、標的分子に結合するペプチドおよび/またはペプチド誘導体の同定方法を提供する。
   ・ 標的分子 
 本発明において「標的分子」とは、本発明のペプチドが結合する、ヒトもしくは非ヒト動物の個体に内在する物質または生体内に取り込まれ得る外因性の物質を意味する。本発明の標的分子は、好適には、かかる個体が罹患し得る疾患の発症もしくは増悪に直接または間接的に関与し得るか、または、かかる疾患と相関もしくは逆相関を示す、内在するかあるいは外因性の酵素、受容体、該受容体のリガンド、サイトカイン等の液性因子、その他の生体高分子、シグナル伝達物質、細胞、病原体、毒素、または、それらのいずれか一つもしくはそれ以上に由来する物質、例えば、その断片、分解物、代謝産物、加工物等である。また、本発明の標的分子は、鉱物、ポリマー、プラスチック、合成低分子化合物等の非天然物質であってもよい。
 本発明の標的分子は、本発明のペプチド・ライブラリーから該標的分子に結合するペプチドを選抜する際に使用される。かかる標的分子は、全長分子若しくはその断片、または任意のアミノ酸、ペプチド、蛋白質、糖鎖、ポリマー、担体等が付加された誘導体であってもよい。また、かかる標的分子は固相化されていてもよい。
   ・ 標的分子の調製
 本発明の標的分子は、疾患に罹患した組織、細胞から単離、精製して使用することができる。また、本発明の標的分子は、化学合成、遺伝子組換え、イン・ビトロ翻訳等、ペプチドまたは蛋白質の製造方法として当業者に周知の方法により調製することができる。このようにして得られた標的分子から、必要に応じて、前述のような誘導体を調製してもよい。
 本発明において、ペプチドまたは蛋白質は、イン・ビトロ翻訳、すなわち、かかるペプチドまたは蛋白質に対応するDNA、cDNA等のヌクレオチドもしくは該ヌクレオチドを含むベクターを、転写および翻訳に必要な酵素、基質、エネルギー物質等を含む溶液中で保温することによりイン・ビトロで所望のペプチドまたは蛋白質を合成する方法、遺伝子組換え、すなわち、該ヌクレオチド若しくはベクターを原核もしくは真核の細胞(宿主細胞)へ導入し、得られた組換え細胞を培養した後、該培養物から所望のペプチドまたは蛋白質を回収する方法、化学合成等により調製することができる。
 標的分子が細胞膜に存在する蛋白質またはそのドメインである場合、かかる蛋白質またはドメインの細胞外領域と免疫グロブリン(Ig)の定常領域とが連結してなる融合蛋白質を適切な宿主-ベクター系において発現させることにより、分泌蛋白質として当該分子を調製することもできる。
 標的分子に対応するヌクレオチドは、例えば、発現クローニング法により取得することができるが、これに限定されるものではない。発現クローニング法は、ペプチドまたは蛋白質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むcDNAの発現ライブラリーを構築し、かかるcDNAライブラリーを鋳型とし、該cDNAの全長または一部を特異的に増幅するプライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(以下「PCR」という:サイキ他、サイエンス、239巻、487乃至489頁、1988年刊行:Saiki, R. K., et al., Science (1988), vol.239, pp487-489)を行うことにより、ペプチドまたは蛋白質に対応するcDNAをクローニングする方法である。
 イン・ビトロ翻訳に適用し得るキットや試薬としては、例えば、ロシュ・ダイアグノスティックス社製のラピッドトランスレーションシステム(RTS)等を挙げることができる。
 遺伝子組換えの宿主細胞としては、本発明の細胞を調製するための宿主細胞として適用可能な原核または真核の細胞を適宜選択することができる。
 遺伝子組換えにおいて得られた組換え細胞(ヌクレオチドまたはベクターが導入された細胞)は、当業者に周知の方法に従って培養することができ、該培養物中またはかかる細胞内に所望のペプチドまたは蛋白質を産生させることができる。
 かかる培養に用いられる培地は、宿主細胞に応じて慣用されるものから適宜選択することができる。宿主細胞が大腸菌の場合、例えば、LB培地に必要に応じて、アンピシリン等の抗生物質やIPTGを添加して培養に供することができる。
 かかる培養により、組換え細胞の内外に産生された所望のペプチドまたは蛋白質は、その物理的、化学的および/または生物学的性質等を利用した公知の分画手法を適宜組み合わせることにより、精製および単離することができる。
 かかる分画手法としては、例えば、塩析、蛋白質沈殿剤による処理、透析、限外濾過、分子ふるい(ゲル濾過)クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティー・クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー等をあげることができるが、これらに限定されるものではない。
 また、ペプチドまたは蛋白質に、予め、精製するために有用な部分を連結または付加させることにより、効率よく所望のペプチドまたは蛋白質を精製することができる。例えば、予め6残基からなるヒスチジンタグを連結しておくことにより、ニッケル・アフィニティー・クロマトグラフィーにより効率よく所望のペプチドまたは蛋白質を精製することができる。また、予めIgGのFc領域を連結しておくことにより、プロテインA・アフィニティー・クロマトグラフィーにより効率よく所望のペプチドまたは蛋白質を精製することができる
(3)標的分子とペプチドおよび/またはペプチド誘導体との接触
 本発明の同定方法は、ペプチドおよび/またはその誘導体と標的分子とを接触させる工程を含む。ここで、該ペプチドおよび/またはその誘導体は、ペプチド・ライブラリーに含まれていてもよい。すなわち、本発明の同定方法は、ペプチド・ライブラリーに含まれるペプチドおよび/またはその誘導体と標的分子とを接触させる工程を含んでもよい。
 本発明において「接触させる」とは、二つまたはそれ以上の物質を、当該物質のうち二つ以上の間で相互作用可能な距離まで接近させることを意味する。かかる相互作用としては、例えば、共有結合、配位結合、金属-金属間結合、イオン結合、金属結合、水素結合、ファンデルワールス結合等(以下、「化学結合」という。)、クーロン力による結合、イオン間相互作用、水素結合、双極子相互作用、ファンデルワールス力等の静電的相互作用に基づく相互作用(以下、「分子間力」という。)、その他の相互作用、電荷移動相互作用、渡環相互作用、疎水相互作用、ペプチドと生体分子との会合等を挙げることができるが、それらに限定されるものではない。本発明において「二つまたはそれ以上の物質」とは、標的分子および被検物質を含んでいれば、特に限定されるものではない。被検物質としては、標的分子に結合する物質であれば特に限定されるものではないが、例えば、本発明のペプチド、該ペプチドの誘導体、それらのいずれかが固相化された担体、それらのいずれかが発現もしくは提示(ディスプレイと同義)された細胞、ウイルス粒子またはウイルス様粒子(ファージ、ファージミドを含む)等をあげることができる。かかる被検物質は、ファージ・ディスプレイ、リボゾーム・ディスプレイ、核酸ディスプレイ等により、真核または原核の細胞表面上に、ウイルス粒子またはウイルス様粒子上に、あるいはリボゾームまたは核酸にリンクした形で、発現または提示(ディスプレイと同義)されていてもよい。
(4)選抜
 本発明の同定方法は所望の性質を有するペプチドおよび/またはペプチド誘導体、好適には標的分子に結合するペプチドおよび/またはペプチド誘導体を選抜する工程を含む。
 本発明において「結合」とは、ある条件の下において、二つまたはそれ以上の物質が、それらの間で相互作用(本発明の他の部分に記載されている)が生じ得る程度に、互いに近接しているか、あるいは会合した状態になることを意味する。
 本発明においては、ある条件の下で、標的分子と被検物質とを接触させ、次いで該標的分子に非特異的に吸着した被検物質および該標的分子に結合又は吸着しなかった被検物質を、被検物質を含む画分から除去した後も、該画分中に被検物質が存在していれば、かかる被検物質は該標的分子に「結合」すると解することができる。
 二つまたはそれ以上の物質の間に単なる非特異的な吸着しか生じていない場合、それらの物質の間に「結合」は生じていないと解することができる。また、二つまたはそれ以上の物質を接触させても、それらの間で相互作用(本発明の他の部分に記載されている)が生じ得る程度に、互いに近接しないか、あるいは会合した状態にならない場合、それらの物質の間に「結合」は生じていないと解することができる。
 抗体と抗原の「結合」を測定する方法としては、フローサイトメトリー等により測定を行う蛍光抗体法(直接法、間接法)、ラジオイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイ(均一法、不均一法)、ELISA、ELISPOT等が広く使用されている。これらの方法において、被検抗体および抗原を本発明のペプチドまたはその誘導体および標的分子に置き換えれば、抗体と抗原の「結合」の測定と同様に、ペプチドまたはその誘導体と標的分子の「結合」の有無を測定することができる。
 また、「結合」の有無は、結合活性または親和性の指標を測定することにより、決定することができる。結合親和性の指標としては、解離定数、結合定数等をあげることができる。
 以下で表される化学平衡状態にある分子AおよびAに結合する物質Bの化学的解離について、
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
 
解離定数(dissociation constant:Kd)は次の式により算出することができる:
 
 Kd=[A][B]/[AB]
 
ここで[A]、[B]および[AB]は、A、BおよびAB(会合体)の濃度をそれぞれ意味する。Kdは解離したAおよびBと解離していないABとの比を意味するものであり、Kdの逆数は結合定数(Ka)である。
 本発明において用いられる「解離定数(dissociation constant)」は、主に、ある標的分子に結合するためのペプチドおよび/またはペプチド誘導体の平衡(equilibrium)解離定数を意味する。
 本発明において、解離定数は、解離した物質(ペプチド、ペプチド誘導体、標的分子等)および解離していない物質(ペプチドおよび/またはペプチド誘導体-標的分子会合体等)の濃度を測定することにより、算出することができる。解離定数の測定-算出方法としては、当業者に周知の方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、表面プラズモン共鳴を用いた方法、等温滴定カロリメトリー法等をあげることができる。
 表面プラズモン共鳴を用いた方法においては、標的分子とそれに結合するペプチドおよび/またはその誘導体の相互作用を、次のとおり測定-算出することができる:複数のペプチド濃度において、表面プラズモン共鳴により、一連の結合・解離反応を検出する;得られた一連の結合・解離反応を解析する;得られた各種速度定数から解離定数を算出する。
 表面プラズモン共鳴の測定-算出システムとしては、例えば、ビアコア(Biacore)・システム(GE Healthcare社)等をあげることができるが、これに限定されるものではない。ビアコア・システムを用いた場合の手順は次の通りである:ビアコア・システムのセンサーチップ上に標的分子をアミンカップリングで固定化する;複数のペプチド濃度において、該標的分子とペプチドとを接触させる;両者の相互作用を表面プラズモン共鳴により検出する;一連の結合・解離反応を、横軸を時間とし、縦軸を結合量(RU)とする、センサーグラムとして描き出す;複数のペプチド濃度で描き出されたセンサーグラムから、BIAevaluationソフトウェア(GE Healthcare社製)を用いて、1:1 ラングミュアーモデルにフィッティングさせ、各種速度パラメーターを算出する;各種速度パラメーターから解離定数を算出する。
 等温滴定カロリメトリー法においては、標的分子とそれに結合するペプチドおよび/またはその誘導体の相互作用を、次のとおり測定-算出することができる:標的分子を含む溶液にペプチド溶液を滴下する(逆でも可);相互作用により発生した熱量を測定し、結合等温線を描く;結合等温線から解離定数(K)、反応の結合比(N)、エンタルピー変化(ΔH)、エントロピー変化(ΔS)が得られる。
 分子間相互作用に伴う微小な熱変化(発熱変化もしくは吸熱変化)をダイレクトに測定するシステムとしては、例えば、MicroCal・システム(GE Healthcare社)等をあげることができるが、これに限定されるものではない。MicroCal・システムを用いた場合の手順は次の通りである: 一定温度に保たれたサンプルセルにリガンド溶液を滴定し攪拌する;分子間相互作用により結合量に正比例した熱の発生または吸収が起こり、サンプルセル中の溶液温度が変化する;セルフィードバックネットワーク(CFB)がリファレンスセルとの温度差(ΔT)を感知する;ΔTが0になるようにリファレンスセルまたはサンプルセルを加熱する;ΔT=0を保持するために要したフィードバック電力を測定することで、相互作用による発熱量または吸熱量を得る;発生熱量を縦軸に、標的分子とペプチドのモル比を横軸にとり、結合等温線から解離定数を算出する。
 本発明の同定方法および/または判定方法(後述)においては、例えば、標的分子に対して100μM以下、50μM以下、20μM以下、10μM以下、5μM以下、2μM以下、1μM以下、500nM(0.5μM)以下、200nM以下、100nm以下、50nM以下、20nM以下、10nM以下、5nM以下、2nM以下、1nM以下、500pM(0.5nM)以下、200pM以下、100pM以下、50pM以下、20pM以下、10pM以下、5pM以下、2pM以下、または、1pnM以下、の解離定数を示す被検物質を、標的分子に結合する、すなわち陽性と決定することができるが、解離定数の基準値、および「結合」の有無を決定する基準はこれらに限定されるものではない。
 本発明の同定方法において、「選抜」の工程は、標的分子に結合する被検物質を回収する工程でもあり、その産物中に標的分子に結合する被検物質が含有されているかまたは濃縮されていれば、かかる産物は、該標的分子に結合する物質のみからなるもの、および、該標的分子には結合しない物質が混在しているもののいずれであってもよい。また、かかる産物中に含有または濃縮された、標的分子に結合する被検物質は、単一のものであっても、2種以上の混合物であってもよい。
 本発明の同定方法における選抜工程、すなわち回収工程とは、標的分子に結合する物質が含まれるかまたは濃縮された画分を回収する工程を意味する。かかる工程は、本発明の技術分野において当業者に周知の分画-精製方法であれば特に限定されるものではないが、標的分子に結合した物質と、標的分子には結合しなかった物質および標的分子に非特異的に吸着した物質とを標的分子(を含む画分)から分離する工程、標的分子に結合した物質を溶出する(標的分子から分離する)工程等を含んでいてもよい。かかる工程においては、結合の有無につき解離定数等の判定基準を設けなくてもよい。
 本発明においては、本発明の同定方法に含まれる「選抜」を「パニング」と呼ぶことがある。本発明において、「パニング」とは、本発明のペプチドおよび/またはペプチド誘導体と標的分子とを接触させ、該標的分子に結合するペプチドおよび/またはペプチド誘導体を回収(選抜、濃縮、単離を含む)することを意味する。
 パニングには当業者に周知の方法を適用することができ、例えば、固相パニング法、液相パニング法をあげることができるが、これに限定されるものではない。固相パニング法では、例えば、標的分子を固相化し、次いで液相に含まれるペプチドと該標的分子とを接触させ、次いで標的分子に結合しなかったペプチドおよび非特異的に結合したペプチドを除去した後、該標的分子に結合したペプチドを選択的に固相(に結合した該標的分子)から分離させることにより、所望の結合活性を有するペプチドを選抜することができるが、固相パニング法の操作はこれに限定されるものではない。液相パニング法では、例えば、溶液中でペプチドと該標的分子とを接触させ、次いで標的分子に結合しなかったペプチドおよび非特異的に結合したペプチドを除去した後、該標的分子に結合したペプチドを選択的に該標的から分離させることにより、所望の結合活性を有するペプチドを選抜することができるが、液相パニング法の操作はこれに限定されるものではない。
 本発明の同定方法において、表現型(phenotype:表現形質と同義)に対応する遺伝型(genotype:遺伝形質と同義)がリンクしたライブラリーを用いることにより、標的分子に結合するペプチド(「ペプチド誘導体に含まれるペプチド」をも含む)に対応するヌクレオチドを効率よく選抜し、それゆえ該ペプチドを効率よく調製することが可能になる。表現型とそれに対応する遺伝型(以下、単に「表現型と遺伝型」という)のリンクは、直接的および間接的のいずれであってもよい。
 表現型と遺伝型が「直接的にリンクした」とは、表現型と遺伝型の挙動が一致していることを意味する。表現型と遺伝型の間に、他の部分が介在している等、一定の距離があっても、両者の挙動が一致していれば「直接的にリンクした」の意味に包含される。すなわち、両者が物理的に隣接していることは必須ではない。
 本発明において、表現型と遺伝型の「挙動が一致している」とは、本発明のペプチド、ヌクレオチド、ベクター、細胞、製造方法、同定方法、判定方法、ペプチド・ライブラリー、ヌクレオチド・ライブラリー、組成物、試薬等の態様おいて、両者の挙動が一致していることを意味する。それらの態様において、経時的に、一時的に、ある時点まで、もしくは、ある時点以降、内的要因、外的要因、それらの組合せもしくはその他の要因により、「挙動の一致」が全体的または部分的に失われても、「挙動が一致している」の意味に包含される。
 表現型と遺伝型が直接的にリンクしたものとしては、例えば、リボゾーム・ディスプレイ・ライブラリー、核酸ディスプレイ・ライブラリー、本発明のペプチドに対応するヌクレオチドが直接的または間接的にリンクしていることを特徴とするペプチドおよび/またはその誘導体、かかるペプチドおよび/またはその誘導体を含んでなるペプチド・ライブラリー等をあげることができる。
 表現型と遺伝型が「間接的にリンクした」とは、両者の挙動は必ずしも一致していないが、特定の表現型から該表現型に対応する遺伝型へアクセスできることを意味する。表現型と遺伝型が間接的にリンクしたものとしては、例えば、ファージ・ディスプレイ・ライブラリー、発現クローニングに用いられるcDNAライブラリー等をあげることができるが、これらに限定されるものではない。
 ファージ・ディスプレイ・ライブラリーに含まれる各クローンにおいて、表現型としてのペプチドまたはその誘導体と、それに対応する遺伝型としてのヌクレオチドの挙動は、一致していないが、該ライブラリーに含まれるペプチドおよび/またはその誘導体と標的分子とを接触させ、標的分子に結合しなかったか、または標的分子に非特異的に吸着したファージ様粒子を除去した後、標的分子に結合したファージ様粒子を選択的に溶出させること等の工程を経ることにより、標的分子に結合するペプチドおよび/またはその誘導体(ファージ様粒子上に発現または提示された)を選抜することができるとともに、対応する遺伝型、すなわち、かかるペプチドまたはその誘導体(に含まれるペプチド)に対応するヌクレオチドを精製、単離し、その塩基配列を決定することができる。このような表現型からそれに対応する遺伝型へのアクセス上のメリットは、ファージ・ディスプレイ等の、表現型と遺伝型が「間接的にリンクした」場合に限定されるものではなく、「直接的にリンクした」場合にも享受できる。
 本発明の同定方法に含まれる工程は、2回以上繰り返して行うことができる。とりわけ、選抜の工程で回収されたペプチドおよび/またはペプチド誘導体から、あらためてペプチド・ライブラリーを構築して、接触および選抜の工程を行うことにより、標的分子に結合するペプチドおよび/またはその誘導体を、より高度に濃縮することが可能となる。それらの操作をさらに繰り返すことにより、標的分子に結合するペプチドおよび/またはその誘導体はより一層高度に濃縮され、最終的にそれらを単離する効率を上げることできる。さらに、標的分子に結合するペプチドおよび/またはその誘導体がより一層高度に濃縮されることで、よりアフィニティーの高いバインダーの単離が可能となる。
 また、標的分子に結合するペプチドおよび/またはその誘導体の高度な濃縮は、本発明の同定方法に含まれる工程において、標的に結合したペプチドおよび/またはその誘導体と非特異的に結合したものとをより強力に分離することによっても可能となる。そのような分離方法としては、例えば、非特異的に結合したペプチド等を除去する工程の回数を増やすことや、非特異的に結合したペプチドの除去に用いる試薬(界面活性剤等)をより強力なものに変更すること等が挙げられる。
 本発明のペプチドまたはその誘導体は、単量体、ホモもしくはヘテロの二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、または、九個以上の単量体から構成される多量体、のいずれの形態をもとり得る。
 標的分子一分子または標的部位一箇所に結合する本発明のペプチドまたはその誘導体の分子数は、1、2、3、4、5、6、7、8、または9以上のいずれでもよく、かかるプチドまたはその誘導体は、単量体、ホモもしくはヘテロの二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、または、九個以上の単量体から構成される多量体のいずれの形態で標的分子に結合してもよい。
 本発明のペプチドまたはその誘導体一分子あたりが結合する標的分子の分子数または標的部位数は、1、2、3、4、5、6、7、8、または9以上のいずれでもよい。
8.組成物
 本発明は組成物を提供する。
 本発明の組成物は、本発明のペプチド、ペプチドの誘導体、ヌクレオチド、ベクターまたは細胞を含むことからなる。
 本発明のペプチドまたはその誘導体(本発明の細胞表面上に提示されたものを含む)を含むことからなる組成物は、該ペプチドまたはその誘導体が結合する標的分子を検出するために使用することができる。
 本発明のヌクレオチド、ベクターまたは細胞を含むことからなる組成物は、該ヌクレオチド、該ベクターまたは該細胞に含まれる本発明のヌクレオチドの有する塩基配列によりコードされるアミノ酸配列を有するペプチドを調製するために使用することができる。また、かかる組成物は、該ヌクレオチドを含むヌクレオチド、ベクター、細胞等を検出するためにも使用することができる。
 かかる組成物には、必要に応じて、緩衝剤、塩類、金属、防腐剤、界面活性剤、凍結または凍結乾燥等の調製方法により本発明のペプチド、ペプチドの誘導体、ヌクレオチド、ベクターまたは細胞が蒙るダメージを軽減または防止するための物質等を含有せしめることができる。
9.試薬
 本発明は試薬を提供する。
 本発明の試薬は、本発明のペプチド、ペプチドの誘導体、ヌクレオチド、ベクターまたは細胞を含むことからなる。
 本発明のペプチドまたはその誘導体を含むことからなる試薬は、該ペプチドまたはその誘導体が結合する標的分子を検出するために使用することができる。
 例えば、腫瘍組織内に存在するHER2タンパク質の量は免疫組織化学解析(IHC)と呼ばれる検査により測定される。検査結果は0(陰性)から3+(強陽性)までの範囲で判定される。IHCで腫瘍が3+である患者はハーセプチンによる治療から恩恵をうける可能性が高く、腫瘍が0または1+である患者はこの治療の恩恵をうける可能性は低いと考えられる。腫瘍が2+である患者は,腫瘍がHER2陽性であるかどうかをより正確に決定するために、蛍光イン・サイチュー・ハイブリダイゼーション(FISH法)と呼ばれる追加の検査を受けることが多い。FISH法は遺伝子のコピー数を測定する方法であり、HER2遺伝子を多コピー含む腫瘍はFISH法によりHER2陽性であると決定される。
 本発明のヌクレオチド、ベクターまたは細胞を含むことからなる試薬は、該ヌクレオチドを含むヌクレオチド、ベクター、細胞等を検出するために使用することができる。
 本発明の試薬は組成物であってもよい。
 かかる試薬を含むキットも、本発明の試薬に包含される。
 また、本発明のペプチド、ペプチド誘導体、それらが提示された細胞等は、標的分子等の物質を認識する素子として、かかる物質に対するバイオセンサーに利用することができる。
10.判定方法
 本発明は、被検物質が、標的分子に結合するか否かを判定する方法をも提供する。
 本発明の判定方法には、本発明の同定方法に含まれる工程と同一または適宜改変した工程を使用することができる。ただし、かかる判定方法に供する被検物質は、ライブラリー等の集合に含まれていなくてもよい。例えば、判定方法に供する被検ペプチドまたは被検ペプチド誘導体は、ペプチド・ライブラリーに含まれるペプチドまたはペプチド誘導体に限定されるものではなく、他のペプチドから分離された単一のペプチドまたはペプチド誘導体、それらを含む混合物等であってもよい。すなわち、本発明の同定方法は、主として、被検物質の物理的集合から所望の性質を有するものを選抜する方法として適しているのに対して、本発明の判定方法は、特定の被検物質が所望の性質を有しているか否かを調べるための検定方法としても適している。
 本発明の判定方法において、例えば、被検物質が標的分子に結合するか否かを決定する工程においては、解離定数等親和性の指標に関する条件を充たしているか否かを判定の基準とすることができる。また、本発明の同定方法と同じ選抜工程において被検物質が標的分子に結合する物質として回収されれば、該被検物質を陽性と判定することができる。
 以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
 ランダム変異TACI_d2ファージライブラリーの作成
1)ランダム変異TACI_d2オリゴヌクレオチドの合成
 下記のオリゴヌクレオチド(183bp)を合成した。
5’-G CTG CAC ACT GTA GGA GAA GAC TGG GCC CAG CCG GCC AGC CTG AGT TGC CGT AAA GAA CAG GGC AAG NNN TAT NNN NNN NNN NNN NNN GAC TGC NNN AGC TGC GCG AGC NNN TGT GGA NNN CAT CCT NNN NNN TGC GCG TAT TTT TGC GAA AAC GCG GCC GCG AGT CCA CGT TCC ATC GGT CA-3’(配列表の配列番号17:当該塩基配列中の「N」はATGCから選択される任意の塩基を表す。)
 上記配列は5‘末端から、5’末primer結合領域、制限酵素SfiI認識配列(SfiIサイト)、ランダム変異を加えたTACI_d2のコード配列、NotIサイト、3‘末端primer結合領域の順に並んでいる。また、NNNにはCys、Proを除く18種のアミノ酸(Ala、Glu、Gln、Asp、Asn、His、Trp、Arg、Lys、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Ser、Met、Gly、Thr)をコードするコドンがほぼ等確率(各3.0%~8.2%)で含まれている。これによりランダム変異TACI_d2の計算上の多様性は6.4×1013となる。
2)ランダム変異TACI_d2ファージミドベクターを有する大腸菌TG-1株の作成
前記1)で合成したオリゴヌクレオチド(計2μg)を鋳型として、以下の二種類のプライマー(Sigma genosys社合成)を用いたPCRを行った。
 Primer forward 1: GCTGCACACTGTAGGAGAAGACTGG(配列表の配列番号18)
 Primer reverse 1: TGACCGATGGAACGTGGACTC(配列表の配列番号19)
 DNAポリメラーゼにはKOD-plus-ver.2(東洋紡績株式会社製)を使用し、アニーリング温度64℃、伸長温度68℃、サイクル数10で説明書に従って反応を行った。PCR産物を制限酵素NotI-HF(NEB社製)およびSfiI(NEB社製)で消化し、これをインサートとして後述のライゲーションに使用した。
 ファージミドベクターpCANTAB 5E vector(旧Pharmacia社-現GE Healthcare社製)を制限酵素NotI-HF(NEB社製)およびSfiI(NEB社製)で消化した。続いて、大腸菌由来Alkaline Phosphatase(タカラバイオ株式会社製)を用いて制限酵素により消化されたベクター断片に脱リン酸化処理を行い、これをベクターとして後述のライゲーションに使用した。
 上記のインサートおよびベクターを、T4 DNA Ligase(NEB社製)を用いてライゲーションさせた(ベクターとインサートのモル比は1:3)。このライゲーション産物を用いて、エレクトロポレーション法により大腸菌TG-1株を形質転換し(BTX社製のBTX Electro Cell Manipulator 600を使用、電圧1.98kV、電気抵抗186オーム)、100μg/mL Ampicillin、1%Glucose、を含むLB培地(以下、LB/Amp/1%Glu)プレートに播種して、30℃にて12時間以上培養することにより、3.5×1010個の大腸菌コロニーが得られた。
3)ランダム変異TACI_d2ファージの大量調製
 2)の大腸菌コロニー群から100μg/mL Ampicillin、1%Glucoseを含む2×YT培地(以下、2×YT/Amp/1%Glu)を用いてOD600nm=0.3の大腸菌懸濁液を調製した。37℃にて振とう培養を行いOD600nm=0.5になるまで増殖させ、十分量のHYPERPHAGE M13K07 ΔpIII(Progen社製)を加えて37℃にて30分間感染させた。次いで、該大腸菌に100μg/mL Ampicillin、100μg/mL Kanamycin、0.25mM IPTG(以下「2×YT/Amp/Kan/0.25mM IPTG」という)を加えて22℃で一晩振とう培養した。回収した培養上清に1/4量の20%Polyethylene Glycol 6000、2.5M NaCl溶液(以下「20%PEG/2.5M NaCl溶液」という)を加えてファージを沈殿させた。沈殿したファージをPhosphate Buffered saline(以下「PBS」という)で懸濁し、ランダム変異 TACI提示ファージライブラリーとして以下の実験に用いた。
 このファージ溶液を大腸菌TG-1株に感染させてLB/Amp/1%Gluプレートに播種し、形成したコロニー数を測定した。かかるファージライブラリーのタイターは1.2×1013phage/mLであった。
 標的分子に結合するTACI_d2変異体の選別
1)液相パニング法
 EZ-Link NHS-Chromogenic Biotin Reagent(Thermo SCIENTIFIC社製)を用いて、説明書に従い標的蛋白質(標的分子)をビオチン化した。この標的分子に、TACI_d2変異体提示ファージを添加して、一晩または2時間反応させた。TACI_d2変異体提示ファージとしては、液相パニングの第1ラウンドには、ランダム変異TACI_d2提示ファージライブラリーを、第2ラウンド以降には、前のラウンドで得られた大腸菌コロニー群から調製したファージ(ランダム変異TACI_d2提示ファージライブラリー)をそれぞれ使用した。この混合溶液にDynabeads M-280 Streptavidin(Invitrogen社製:以下「Dynabeads」という)を加えて、Dynabeadsにビオチン化標的分子を結合させた。0.05%Tween-20を含むPBS(以下「PBST」という)でDynabeadsを所定の回数洗浄した後、Dynabeads表面のビオチン化した標的分子に結合しているTACI_d2変異体提示ファージを0.1M Glycine-HCl/500mM NaCl(pH2.2)で溶出させた。溶出したファージを直ちに1M Tris-HCl(pH8.0)で中和し、大腸菌TG-1株へ感染させてLB/Amp/1%Gluプレートに播種して30℃にて12時間以上培養した。
2)固相パニング法
 Nunc Maxisorp flat-bottom 96 well plate(Nunc)(以下、Maxisorp plate)に標的蛋白質(標的分子)を加え、4℃にて一晩固相化した。該Maxisorp plateにTACI_d2変異体提示ファージを添加して、2時間反応させた。TACI_d2変異体提示ファージとしては、固相パニングの第1ラウンドにはランダム変異TACI_d2変異体提示ファージを、第2ラウンド以降には、前のラウンドで得られた大腸菌コロニー群から調製したファージ(ランダム変異TACI_d2提示ファージライブラリー)をそれぞれ使用した。PBSTでMaxisorp plateを所定の回数洗浄した後、Maxisorp plateに固相化された標的分子に結合したTACI変異体提示ファージを0.1M Glycine-HCl/500mM NaCl(pH2.2)で溶出させた。溶出したファージを直ちに1M Tris-HCl(pH8.0)で中和し、大腸菌TG-1株へ感染させてLB/Amp/1%Gluプレートに播種して30℃にて12時間以上培養した。
3)次ラウンドで使用するファージの調製
 次ラウンドのパニングにより得られた大腸菌コロニー群から2×YT/Amp/1%Gluを用いてOD600nm=0.3の大腸菌懸濁液を調製した。37℃にて振とう培養を行いOD600nm=0.5になるまで増殖させ、十分量のヘルパーファージM13K07を加えて37℃にて30分間感染させた。ヘルパーファージを感染させた大腸菌に2×YT/Amp/Kan/0.25mM IPTGを加えて22℃にて一晩振とう培養した。回収した培養上清に20%PEG/2.5M NaCl溶液を加えてファージを沈殿させた。沈殿したファージをPBSで懸濁し、次ラウンドのパニングに使用した。
4)標的分子に結合するTACI_d2変異体の選別
 IgG-Free,Protease-Free Bovine Serum Alubmin(Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc.社製:以下「BSA」という)、Recombinant Human EphA2,CF(R&D systems社製:以下「hEphA2」という)、Recombinant Human EGF R/Fc Chimera,CF(R&D systems社製:以下「hEGFR/Fc」という)、Recombinant Human ErbB2/Fc Chimera,CF(R&D systems社製:以下「hErbB2/Fc」という)、Recombinant Human VEGF165(Peprotech社製:以下「hVEGF」という)、Recombinant Human TNF-α(Peprotech社製:以下「hTNF-α」という)の6種類の組換え蛋白質のいずれか一つを標的分子として、液相もしくは固相パニングを3または4ラウンド行った。
 パニングより得られたTACI_d2変異体(群)の標的分子への結合活性評価
1)phage ELISAに使用するファージの調製(1)
 最終ラウンドのパニングにより得られた大腸菌コロニー群全体から2×YT/Amp/1%Gluを用いてOD600nm=0.3の大腸菌懸濁液を調製した。37℃にて振とう培養を行いOD600nm=0.5になるまで増殖させ、十分量のヘルパーファージM13K07を加えて37℃にて30分間感染させた。ヘルパーファージを感染させた大腸菌に2×YT/Amp/Kan/0.25mM IPTGを加えて22℃にて一晩振とう培養した。回収した培養上清に20%PEG/2.5M NaCl溶液を加えてファージを沈殿させ、これをPBSで懸濁した。このファージの原液およびPBSで2倍希釈を数回繰り返したものをphage ELISAに使用した。
2)phage ELISAに使用するファージの調製(2)
 最終ラウンドのパニングにより得られた大腸菌コロニー群からシングルコロニーを一つ選び、2×YT/Amp/1%Gluに植菌する。37℃にて振とう培養を行いOD600nm=0.5になるまで増殖させ、十分量のヘルパーファージM13K07を加えて37℃にて30分間感染させた。ヘルパーファージを感染させた大腸菌に2×YT/Amp/Kan/0.25mM IPTGを加えて22℃にて一晩振とう培養した。回収した培養上清に20%PEG/2.5M NaCl溶液を加えてファージを沈殿させ、沈殿したファージをPBSで懸濁した。このファージの原液およびPBSで2倍希釈を数回繰り返したものをphage ELISAに使用した。
3)phage ELISA
 Maxisorp plateに標的分子またはネガティブコントロール蛋白質(BSAを標的分子とした場合はhEphA2、その他の蛋白質を標的分子とした場合はBSA)を加え、4℃にて一晩固相化した。この標的蛋白質またはネガティブコントロール用蛋白質を固相化したMaxisorp plateに、実施例2の1)と2)で調製したTACI変異体提示ファージを添加して2時間反応させた。0.05%Tween-20を含むTris buffered saline(以下、TBST)でMaxisorp plateを洗浄した後、5000倍に希釈したHRP/Anti-M13 Monoclonal Conjugate(GE Healthcare社製)(以下、「Anti-M13 antibody」という)を添加した。再度TBSTで洗浄した後、ELISA POD Substrate A.B.T.S. Kit(ナカライテスク社製)(以下、「ELISA POD」という)により標的分子に結合したファージ量を波長405nmの吸光度として検出した。
 図1(A)、(B)および(C)に示すとおり、パニング操作により、TACI_d2ランダム変異ライブラリーから、各標的分子に結合するTACI変異体(群)が選抜または濃縮されていた。
 野生型TACI_d2とhEphA2結合性TACI_d2変異体の特異性の比較
1)phage ELISAに使用するファージの調製
 hEphA2を標的分子とする最終ラウンドのパニング後の大腸菌コロニー群から選んだ3つのクローン(α-EphA2 #1乃至#3:配列表の配列番号2乃至4、図4の2乃至4にそれぞれ対応する)について、2×YT/Amp/1%Gluを用いてOD600nm=0.3の大腸菌懸濁液を調製した。これらの大腸菌をそれぞれ37℃にて振とう培養を行いOD600nm=0.5になるまで増殖させ、十分量のヘルパーファージM13K07を加えて37℃にて30分間感染させた。ヘルパーファージを感染させた大腸菌に2×YT/Amp/Kan/0.25mM IPTGを加えて22℃にて一晩振とう培養した。回収した培養上清に20%PEG/2.5M NaCl溶液を加えてファージを沈殿させ、沈殿したファージをPBSで懸濁させた。このファージの原液、およびPBSによる2倍希釈を数回繰り返して得られたものを、phage ELISAに使用した。野生型TACI_d2遺伝子を含むpCANTAB5Eベクターを有する大腸菌TG-1株についても、同様の操作によりファージを調製した。
2)phage ELISA
 Maxisorp plateにhEphA2、BSA、Recombinant Human BAFF/BLyS/TNFSF13B(R&D systems:ヒトBAFF((UniProtKB/Swiss-Prot Accession # Q9Y275)の134番目のAlaから285番目のLeuまでのアミノ酸からなるポリペプチドのN末端にヒスチジン・タグ等を連結したもの:以下「hBAFF」という)、Recombinant Mouse EphA2/Fc Chimera, CF(R&D systems:マウスEphA2(NCBI Accession No. #AAA82113)の22番目のAlaから535番目のAlaまでのアミノ酸からなるポリペプチドのC末端にヒト免疫グロブリンG1(以下、「hIgG1」という)のFc領域(100番目のProから330番目のLysまで)を連結したもの:以下「mEphA2/Fc」という)をそれぞれ加え、4℃で一晩固相化した。これらのMaxisorp plateにTACI_d2変異体提示ファージを添加して2時間反応させた。Maxisorp plateをTBSTで洗浄した後、5000倍に希釈したAnti-M13 antibodyを添加した。Maxisorp plateを再度TBSTで洗浄した後、ELISA PODによりプレートに固相化した蛋白質に結合したファージ量を波長405nmの吸光度として検出した。
 結果を図2(A)および(B)に示す。hEphA2に結合するTACI_d2の変異体、α-EphA2 #1乃至#3が取得された。これらのうち、α-EphA2 #1乃至#3は、いずれも、野生型TACI_d2の内因性リガンドであるhBAFFへの結合能を失っていた。また、mEphA2への交差反応性は、α-EphA2 #2および#3は野生型TACI_d2と同程度であったが、α-EphA2 #1はそれらと比較して強かった。
 hEphA2結合性TACI_d2変異体のヒトEphA2発現細胞への結合の確認
1)細胞培養および培地
 ヒト胎児腎臓細胞(HEK293T細胞)は、10%ウシ胎児血清(FBS)を含む、ダルベッコ変法イーグル培地(以下、「DMEM」という:GIBCO社製)(以下、かかる培地を「DMEM-10%FBS」という)を用いて37℃にて、5%CO存在下で培養した。トランスフェクションやフローサイトメトリーに使用する際には、0.05%トリプシン-EDTA(GIBCO)を用いて培養用プレートから剥離させた後、細胞懸濁物を遠心分離して細胞を回収し、DMEM-10%FBSに再度懸濁して用いた。
2)トランスフェクション
 Lipofectamin2000(インビトロジェン社製)を用いて、説明書に従い、ヒトEphA2遺伝子またはネガティブコントロールとして、ヒトErbB2遺伝子が挿入されたpcDNA-DEST40 Gatewayベクター(インビトロジェン社製)をHEK293T細胞にトランスフェクトした。
3)細胞の調製
 トランスフェクションした細胞を回収し、細胞をFACSバッファー(5%FBSを含むPBS)に懸濁してナイロンメッシュに通した。5×10cells/ウェルで96 Well Cell Culture Cluster Round Bottom With Lid(Coster社製)に分注し、遠心して上清を除去した。この細胞に、実施例4の1)で調製したファージの原液を50μLずつ加え、4℃にて30分間静置した。150μL/ウェルのFACSバッファーを添加して遠心により上清を除き、再度200μL/ウェルのFACSバッファーを添加して遠心により上清を除いた(以下、細胞の洗浄は同様に行った)。得られた細胞に一次抗体として100倍に希釈したAnti-M13 antibodyを50μL/ウェルで加えて4℃にて30分間静置した後、細胞を洗浄した。続いて、二次抗体として1000倍に希釈したFLUORESCEIN-CONJUGATED GOAT IGG FRACTION TO MOUSE IGG(CAPPEL社製)を加えて4℃で30分間静置した後、細胞を洗浄した。得られた細胞を250μLのFACSバッファーで懸濁し、Cytomics FC 500 Flow Cytometry System(BECKMAN COULTER社製)に供し、蛍光染色された細胞を検出した。
 結果を図3(A)および(B)に示す。α-EphA2 #1および#2は、組換え型hEphA2hだけでなく、細胞表面上に発現したヒトEphA2に対しても結合した。
 各種標的分子に結合するTACI_d2変異体の配列解析
 実施例3の2)、3)と同様にして、各種標的分子に対する結合が確認されたTACI_d2変異体ペプチドについて、該ペプチドを発現した大腸菌を単離し2xYT培地にて37℃で一晩培養した。QIAGEN Plasmid Mini Kit(QIAGEN社製)を用い、回収した大腸菌から該ペプチドをコードする遺伝子が挿入されたpCANTAB 5Eベクターを調製した。該ベクターについて、pCANTAB-S1 primer(5’-CAACGTAAAAAATTATTATTCGC-3’:配列表の配列番号20)を用いて塩基配列を決定した。
 内在性のTACI結合分子として前記のhBAFFを用いた。
(1)上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)
 ヒトEGFRの細胞外ドメインに結合するTACI_d2変異体を選抜し、得られたペプチドのアミノ酸配列解析を行った。
 ヒトEGFRとして、EGFRの細胞外ドメイン(UniProtKB/Swiss-Prot Accession # P00533の25番目のLeuから645番目のSerまで)とhIgG1のFc領域(100番目のProから330番目のLysまで)との融合蛋白質(前記のhEGFR/Fc)を用いた。
 得られたペプチド3種のアミノ酸配列は、配列表の配列番号5番乃至7番(図4の5乃至7)であった。
(2)血管内皮成長因子(VEGF)
 VEGFとして、ヒトアイソフォームVEGF165(CAS Registry FileのRegistry Number 1217406-67-1:前記のhVEGF)を使用した。
 ヒトVEGFに結合するTACI_d2変異体を選抜し、得られたペプチド6種のアミノ酸配列を解析した。その結果、配列表の配列番号8番乃至13番(図4の8乃至13)に示すとおりであった。
(3)腫瘍壊死因子α(TNF-α)
 TNF-αとして、ヒトTNF(CAS Registry FileのRegistry Number 1228062-30-3:前記のhTNF-α)を使用した。
 ヒトTNFαに結合するTACI_d2変異体を選抜し、得られたペプチド3種のアミノ酸配列を解析した。その結果、配列表の配列番号14番乃至16番(図4の14乃至16)に示すとおりであった。
(4)上記(1)乃至(3)において得られた、標的分子に結合するいずれのTACI_d2変異体においても、TACI_d2構造内部にある78番目、すなわち配列表の配列番号1のうち11番目のPheが、他のアミノ酸へ置換されていた。
 VEGF結合性TACI_d2変異体のVEGFに対する解離定数の測定
 実施例2において得られたhVEGF結合性TACI_d2変異体(図4の9番:配列表の配列番号9番)の遺伝子をPCR法により増幅し、大腸菌発現用ベクターpET-32a(Novagen社)へ挿入した。このベクターを用いて大腸菌OrigamiTMB株(MERCK社)を形質転換し、OD600nm=0.7となるまで37℃で振とう培養した。終濃度1mMとなるようIPTGを添加して該変異体の発現を誘導した後、16℃で12時間以上振とう培養した。培養した大腸菌を超音波破砕し、遠心して得られた上清をHisTALONTMcolomn(clontech社)にかけて精製した。発現させた該変異体にはThioredoxin-tagおよびHis-tagが付加されていたが、これらはThrombin cleavage capture kitを用いて切断し、再度HisTALONTMcolomnにかけることで除去した。精製した該変異体をサイズ排除クロマトグラフィー(Superdex75 HR 10/30 colomun,GE Healthcare社)にかけ、該変異体(単量体)の分子量に相当するピークを回収して、アフィニティー解析に供した。該変異体のアフィニティーはBiacore 3000(GE Healthcare)を用いた表面プラズモン共鳴法により決定した。センサーチップ上に固定化したhVEGFに種々の濃度の該変異体を流し、得られたセンサーグラムから該変異体のhVEGFに対する解離定数を決定した。その結果、該変異体のhVEGFに対する解離定数は14μMであった。
 本発明のペプチド・ライブラリーは、標的分子に結合するペプチドを選抜するのに有用である。
配列番号2 - ヒトEphA2結合性ペプチド α-EphA2 #1 のアミノ酸配列
配列番号3 - ヒトEphA2結合性ペプチド α-EphA2 #2 のアミノ酸配列
配列番号4 - ヒトEphA2結合性ペプチド α-EphA2 #3 のアミノ酸配列
配列番号5 - ヒトEGFR結合性ペプチド(1)のアミノ酸配列
配列番号6 - ヒトEGFR結合性ペプチド(2)のアミノ酸配列
配列番号7 - ヒトEGFR結合性ペプチド(3)のアミノ酸配列
配列番号8 - ヒトVEGF結合性ペプチド(1)のアミノ酸配列
配列番号9 - ヒトVEGF結合性ペプチド(2)のアミノ酸配列
配列番号10 - ヒトVEGF結合性ペプチド(3)のアミノ酸配列
配列番号11 - ヒトVEGF結合性ペプチド(4)のアミノ酸配列
配列番号12 - ヒトVEGF結合性ペプチド(5)のアミノ酸配列
配列番号13 - ヒトVEGF結合性ペプチド(6)のアミノ酸配列
配列番号14 - ヒトTNFα結合性ペプチド(1)のアミノ酸配列
配列番号15 - ヒトTNFα結合性ペプチド(2)のアミノ酸配列
配列番号16 - ヒトTNFα結合性ペプチド(3)のアミノ酸配列
配列番号17 - ランダム変異TACI_d2オリゴヌクレオチドの塩基配列
配列番号18 - PCRプライマー Primer Forward 1 の塩基配列
配列番号19 - PCRプライマー Primer Reverse 1 の塩基配列
配列番号20 - 塩基配列決定用プライマー pCANTAB-S1 primer の塩基配列 

Claims (35)

  1.  下記(i)または(ii)から選択されるペプチド:
    (i)配列表の配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するペプチド;および、
    (ii)配列表の配列番号1で示されるアミノ酸配列において、アミノ末端から数えて1番目乃至11番目のXaa以外の、1個以上28個以下のアミノ酸が保存的アミノ酸置換、欠失、付加又は挿入してなるアミノ酸配列を有するペプチド。
  2.  アミノ末端から数えて1番目乃至11番目のXaaが、それぞれ、システインを除く任意のアミノ酸である、請求項1記載のペプチド。
  3.  アミノ末端から数えて1番目乃至11番目のXaaが、それぞれ、プロリンを除く任意のアミノ酸である、請求項1または2記載のペプチド。
  4.  保存的アミノ酸置換が、疎水性アミノ酸グループ、中性親水性アミノ酸グループ、酸性アミノ酸グループ、塩基性アミノ酸グループ、主鎖の方角に影響を与えるアミノ酸のグループ、および、芳香族アミノ酸グループから選択されるいずれかのグループ内において行われることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一つに記載のペプチド。
  5.  アミノ末端から数えて1番目のXaaが、グルタミン、メチオニン、ヒスチジン、セリン、グルタミン酸、アスパラギン、トリプトファン、イソロイシン、アスパラギン酸およびスレオニンからなる群から選択されるアミノ酸である、請求項1乃至4のいずれか一つに記載のペプチド。
  6.  アミノ末端から数えて2番目のXaaが、トリプトファン、ロイシン、グリシン、イソロイシン、メチオニン、アスパラギン酸、アスパラギンおよびスレオニンからなる群から選択されるアミノ酸である、請求項1乃至5のいずれか一つに記載のペプチド。
  7.  アミノ末端から数えて3番目のXaaが、アルギニン、ロイシン、アラニン、ヒスチジン、スレオニン、バリン、グルタミン、グルタミン酸およびセリンからなる群から選択されるアミノ酸である、請求項1乃至6のいずれか一つに記載のペプチド。
  8.  アミノ末端から数えて4番目のXaaが、グルタミン酸、アルギニン、リジン、イソロイシン、グルタミン、トリプトファン、チロシン、グリシンおよびフェニルアラニンからなる群から選択されるアミノ酸である、請求項1乃至7のいずれか一つに記載のペプチド。
  9.  アミノ末端から数えて5番目のXaaが、リジン、グルタミン酸、メチオニン、アラニン、グルタミン、グリシン、スレオニン、ヒスチジンおよびトリプトファンからなる群から選択されるアミノ酸である、請求項1乃至8のいずれか一つに記載のペプチド。
  10.  アミノ末端から数えて6番目のXaaが、メチオニン、トリプトファン、チロシン、セリン、フェニルアラニン、グルタミンおよびアスパラギン酸からなる群から選択されるアミノ酸である、請求項1乃至9のいずれか一つに記載のペプチド。
  11.  アミノ末端から数えて7番目のXaaが、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、セリン、リジン、アルギニン、ヒスチジンおよびアスパラギンからなる群から選択されるアミノ酸である、請求項1乃至10のいずれか一つに記載のペプチド。
  12.  アミノ末端から数えて8番目のXaaが、リジン、グルタミン酸、アラニン、チロシン、トリプトファン、メチオニン、ロイシン、アルギニンおよびグリシンからなる群から選択されるアミノ酸である、請求項1乃至11のいずれか一つに記載のペプチド。
  13.  アミノ末端から数えて9番目のXaaが、アスパラギン、セリン、チロシン、グルタミン酸、アラニン、グリシン、リジンおよびヒスチジンからなる群から選択されるアミノ酸である、請求項1乃至12のいずれか一つに記載のペプチド。
  14.  アミノ末端から数えて10番目のXaaが、アスパラギン酸、ヒスチジン、トリプトファン、フェニルアラニン、アスパラギン、バリンおよびロイシンからなる群から選択されるアミノ酸である、請求項1乃至13のいずれか一つに記載のペプチド。
  15.  アミノ末端から数えて11番目のXaaが、イソロイシン、チロシン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、ロイシン、アラニン、メチオニン、フェニルアラニンおよびバリンからなる群から選択されるアミノ酸である、請求項1乃至14のいずれか一つに記載のペプチド。
  16.  配列表の配列番号1乃至16のいずれか一つで示されるアミノ酸配列を有する、請求項1乃至15のいずれか一つに記載のペプチド。
  17.  請求項1乃至16のいずれか一つに記載のペプチドに化学的修飾または生物学的修飾が施されてなる該ペプチドの誘導体。
  18.  下記(i)乃至(iii)のいずれか一つに記載のヌクレオチド:
    (i)請求項1乃至16のいずれか一つに記載のペプチドの有するアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるヌクレオチドを含んでなるヌクレオチド;
    (ii)請求項1乃至16のいずれか一つに記載のペプチドの有するアミノ酸配列をコードする塩基配列を含んでなるヌクレオチド;および、
    (iii)請求項1乃至16のいずれか一つに記載のペプチドの有するアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるヌクレオチド。
  19.  請求項18記載のヌクレオチドを含んでなるベクター。
  20.  請求項18記載のヌクレオチドまたは請求項19記載のベクターが導入された細胞。
  21.  下記工程(i)および(ii)を含んでなる請求項1乃至16のいずれか一つに記載のペプチドの製造方法:
    (i)請求項20記載の細胞を培養する工程;および、
    (ii)工程(i)で得られた培養物から該ペプチドを回収する工程。
  22.  請求項1乃至16のいずれか一つに記載のペプチドおよび/または請求項17記載のペプチドの誘導体を含んでなるペプチド・ライブラリー。
  23.  ペプチドおよび/またはペプチドの誘導体が、請求項21記載の工程(i)および(ii)を含んでなる方法により調製されたものであることを特徴とする、請求項22記載のライブラリー。
  24.  ライブラリーにおいて、表現型(phenotype)である該ペプチド又はペプチド誘導体および該表現型に対応する遺伝型(genotype)であるヌクレオチドが直接的または間接的にリンクしていることを特徴とする、請求項22または23記載のライブラリー。
  25.  ヌクレオチドが請求項18に記載のヌクレオチドである、請求項22乃至24のいずれか一つに記載のライブラリー。
  26.  ファージ・ディスプレイ・ライブラリー、リボゾーム・ディスプレイ・ライブラリー若しくは核酸ディスプレイ・ライブラリーである、請求項22乃至25のいずれか一つに記載のライブラリー。
  27.  下記(i)および(ii)の工程を含んでなる、標的分子に結合する、請求項1乃至16のいずれか一つに記載のペプチドまたは請求項17記載のペプチド誘導体の同定方法:
    (i)請求項22乃至26のいずれか一つに記載のライブラリーに含まれるペプチドまたはペプチド誘導体と該標的分子とを接触させる工程;および、
    (ii)該標的分子に結合するペプチドまたはペプチド誘導体を回収する工程。
  28.  下記(i)乃至(iii)の工程を含んでなる、標的分子に結合する、請求項1乃至16のいずれか一つに記載のペプチドまたは請求項17記載のペプチド誘導体の製造方法:
    (i)請求項22乃至26のいずれか一つに記載のライブラリーに含まれるペプチドまたはペプチド誘導体と該標的分子とを接触させる工程;および、
    (ii)該標的分子に結合するペプチドまたはペプチド誘導体を回収する工程;および、
    (iii)前記(ii)において回収された該ペプチドまたはペプチド誘導体に含まれるペプチドを化学合成、遺伝子組換えまたはイン・ビトロ翻訳により調製する工程。
  29.  下記(i)および(ii)の工程を含んでなる、請求項1乃至16のいずれか一つに記載のペプチドまたは請求項17記載のペプチドの誘導体が標的分子に結合するか否かを判定する方法:
    (i)請求項1乃至16のいずれか一つに記載の被検ペプチドまたは請求項17記載の被検ペプチド誘導体と該標的分子とを接触させる工程;および、
    (ii)被検ペプチドまたは被検ペプチド誘導体が該標的分子に結合する場合、該ペプチドまたは被検ペプチド誘導体は陽性であると決定する工程。
  30.  下記(i)乃至(iii)の工程を含んでなる、標的分子に結合する、請求項1乃至16のいずれか一つに記載のペプチドまたは請求項17記載のペプチドの誘導体の製造方法:
    (i)請求項1乃至16のいずれか一つに記載の被検ペプチドまたは請求項17記載の被検ペプチド誘導体と該標的分子とを接触させる工程; 
    (ii)被検ペプチドまたは被検ペプチド誘導体が該標的分子に結合する場合、該ペプチドまたは被検ペプチド誘導体は陽性であると決定する工程;および、
    (iii)前記(ii)において被検ペプチドまたはペプチド誘導体が陽性と判定された場合、該ペプチドまたはペプチド誘導体に含まれるペプチドを化学合成、遺伝子組換えまたはイン・ビトロ翻訳により調製する工程。
  31.  請求項18に記載のヌクレオチドを含んでなるヌクレオチド・ライブラリー。
  32.  ヌクレオチドがファージミド、コスミドもしくはプラスミドまたはその断片である、請求項31記載のライブラリー。
  33.  ヌクレオチドが原核もしくは真核細胞内、または、ウイルスDNAまたはRNA上もしくはウイルス粒子中に存在する、請求項31または32記載のヌクレオチド・ライブラリー。
  34.  請求項1乃至16のいずれか一つに記載のペプチド、請求項17記載のペプチドの誘導体、請求項18記載のヌクレオチド、請求項19記載のベクターまたは請求項20記載の細胞を含むことからなる組成物。
  35.  請求項1乃至16のいずれか一つに記載のペプチド、請求項17記載のペプチドの誘導体、請求項18記載のヌクレオチド、請求項19記載のベクターまたは請求項20記載の細胞を含むことからなる試薬。
     
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