WO2011151935A1 - 電気自動車、プログラム、並びに電気自動車の制御装置および制御方法 - Google Patents
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Abstract
2つの電気モータのうち一方の電気モータの機能が停止しても、安定した走行が可能なる。 電気自動車1は、第1および第2の電気モータ3から出力された制駆動力を左右への動力配分制御が可能は差動装置4を介して前輪側および後輪側の左右輪に伝達する第1および第2の駆動系を有する電気自動車1において、車両25の前後方向、横方向、旋回方向の加速度を検出する加速度センサ26と、電気モータ3から制駆動力を出力することができない障害の発生を検出する障害検出部と、障害検出部が障害の発生を検出したとき、加速度センサ26が検出した前後方向、横方向、旋回方向の加速度からそれぞれの加速度変化率を求め、それらの加速度変化率のうち最も大きい加速度変化率に対応する方向の加速度が障害の発生前の値となるように障害の発生していない側の第1又は第2の駆動系を制御する制御部とを備える。
Description
本発明は、前後輪を2つの電気モータで独立に駆動する電気自動車、プログラム、並びに電気自動車の制御装置および制御方法
従来、前後輪を2つの電気モータで独立に駆動する電気自動車において、走行中に2つの電気モータのうち一方の電気モータが機能しなくなっても他方の電気モータの駆動により車両が停止しないようなフェールセイフ制御を行う電気自動車が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかし、従来の電気自動車によれば、電気モータの機能停止により、車体の旋回や横ブレを起こす可能性がある。
従って、本発明の目的は、2つの電気モータのうち一方の電気モータの機能が停止しても、安定した走行が可能な電気自動車、プログラム並びに電気自動車の制御装置および制御方法
本発明の一態様は、上記目的を達成するために、第1の電気モータから出力された制駆動力を左右への動力配分制御が可能な第1の差動装置を介して前輪側の左右輪に伝達する第1の駆動系と、第2の電気モータから出力された制駆動力を左右への動力配分制御が可能な第2の差動装置を介して前輪側の左右輪に伝達する第2の駆動系と、車両の前後方向、横方向および旋回方向の加速度を検出する加速度検出部と、前記第1および第2の電気モータから制駆動力を出力することができない障害の発生を検出する障害検出部と、前記障害検出部が前記障害の発生を検出したとき、前記加速度検出部が検出した前記前後方向、横方向および旋回方向の加速度からそれぞれの加速度変化率を求め、それらの加速度変化率のうち最も大きい加速度変化率に対応する方向の加速度が前記障害の発生前の値となるように前記障害の発生していない側の前記第1又は第2の駆動系を制御する制御部とを備えた電気自動車を提供する。
本発明によれば、2つの電気モータのうち一方の電気モータの機能が停止しても、安定した走行が可能となる。
図1は、本発明の実施の形態に係る電気自動車の構成を概念的に示すブロック図である。なお、同図では、構成要素の位置が前輪側か後輪側か、前輪側の右側か左側か、後輪側の右側か左側かを示す付加記号f、r、fr、fl、rr、rlを構成要素に付している。また、構成要素の位置を特に区別する必要がない場合には、上記付加記号や位置を示す「前輪用」、「後輪用」の語を省略することもある。
この電気自動車1は、前輪2fr、2flを第1の差動装置としての前輪用差動装置4fおよび車軸5fr、5flを介して駆動する第1の電気モータとしての前輪用モータ3fと、後輪2rr、2rlを第2の差動装置としての後輪用差動装置4rおよび車軸5rr、5rlを介して駆動する第2の電気モータとしての後輪用モータ3rと、電気自動車1の駆動エネルギー源としての電源部7と、電源部7からの電力を交流電力に変換する前輪用インバータ8fおよび後輪用インバータ8rと、目標トルクに応じた信号をインバータ8f、8rに出力する第1の駆動回路としての前輪用駆動回路9fおよび第2の駆動回路としての後輪用駆動回路9rと、駆動回路9f、9rに指令信号を出力して前輪用モータ3fおよび後輪用モータ3rを互いに独立に制御する制御装置10とを備えた、前後輪独立駆動型電気自動車である。なお、前輪用モータ3f、前輪用差動装置4f、車軸5fr、5fl、前輪用インバータ8f、前輪用駆動回路9f等により第1の駆動系を構成し、後輪用モータ3r、後輪用差動装置4r、車軸5rr、5rl、後輪用インバータ8r、後輪用駆動回路9r等により第2の駆動系を構成する。
また、この電気自動車1は、運転者が操作するアクセルペダル12、ブレーキペダル13、および前進や後進を指定するためのシフトレバー14等の操作手段と、前輪用モータ3fおよび後輪用モータ3rの回転数をそれぞれ検出するエンコーダ16f、16rと、車軸5fr、5fl、5rr、5rlの回転を制動する機械ブレーキ18fr、18fl、18rr、18rlと、車体25の前方側に設けられた2つのカメラ20fr、20rlと、車体25の後方側に設けられたカメラ21と、アクセルペダル12の踏み込み量を検出するアクセルセンサ22と、ブレーキペダル13の踏み込み量を検出するブレーキセンサ23と、シフトレバー14の位置を検出するシフトセンサ24と、車体25の加速度を検出する加速度センサ(加速度検出部)26と、モータ3f、3rの温度をそれぞれ検出する温度センサ27f、27rと、車輪2の回転速度を検出する車輪速センサ28fr、28fl、28rr、28rlとを備える。
なお、本明細書において、「電気自動車」は、前輪および後輪を駆動する電気モータを有する自動車や、車輪の動力源として電気モータとエンジンの両方を有し、電気モータによる回生制動が可能なハイブリッドカーを含む概念である。ここで、「自動車」とは乗用自動車に限らず、バスや貨物自動車を含む概念であり、普通車、大型車、特大車を問わない。また、本明細書において、「制駆動力」は、自動車を減速させる制動力と、自動車を加速させる駆動力の両方を意味する場合や一方のみを意味する場合がある。
次に、上記各部の詳細を説明する。
(電源系)
電源部7は、バッテリ70と、前輪用平滑コンデンサ71fと、後輪用平滑コンデンタ71rと、前輪用平滑コンデンサ71fの電圧(インバータ入力電圧)を検出する電圧センサ72fと、後輪用平滑コンデンサ71rの電圧(インバータ入力電圧)を検出する電圧センサ72rと、バッテリ70の蓄電容量を検出するバッテリ容量センサ73とを備える。
電源部7は、バッテリ70と、前輪用平滑コンデンサ71fと、後輪用平滑コンデンタ71rと、前輪用平滑コンデンサ71fの電圧(インバータ入力電圧)を検出する電圧センサ72fと、後輪用平滑コンデンサ71rの電圧(インバータ入力電圧)を検出する電圧センサ72rと、バッテリ70の蓄電容量を検出するバッテリ容量センサ73とを備える。
バッテリ70は、前輪用モータ3fおよび後輪用モータ3rを駆動するための電力を出力することができる高電圧バッテリである。なお、電気自動車1の駆動エネルギー源として、バッテリ70の他に、乾電池等の一次電池、燃料電池等を用いてもよい。
(駆動系)
前輪用モータ3fおよび後輪用モータ3rは、例えば同期モータ(Synchronous Motor)、誘導モータ(Induction Motor)等の各種のモータを用いることができる。前輪側および後輪側それぞれにおいて、モータ3の回転は、差動装置4を介して車軸5に伝達される。車軸5は車輪2と一体的に回転する。すなわち、電気自動車1は、前輪2fr、2flと、後輪2rr、rlを互いに独立に制御可能に前輪2fr、2flおよび後輪2rr、rlに対応して2つのトルク発生源を有している。なお、前輪用モータ3fおよび後輪用モータ3rが発生する出力トルク(モータ容量)は、互いに等しくてもよいし、等しくなくてもよい。
前輪用モータ3fおよび後輪用モータ3rは、例えば同期モータ(Synchronous Motor)、誘導モータ(Induction Motor)等の各種のモータを用いることができる。前輪側および後輪側それぞれにおいて、モータ3の回転は、差動装置4を介して車軸5に伝達される。車軸5は車輪2と一体的に回転する。すなわち、電気自動車1は、前輪2fr、2flと、後輪2rr、rlを互いに独立に制御可能に前輪2fr、2flおよび後輪2rr、rlに対応して2つのトルク発生源を有している。なお、前輪用モータ3fおよび後輪用モータ3rが発生する出力トルク(モータ容量)は、互いに等しくてもよいし、等しくなくてもよい。
インバータ8は、バッテリ70からの電力を交流電力に変換し、駆動回路9からの信号に応じた電流をモータ3に出力してモータ3を駆動する。また、インバータ8は、モータ3により発電された交流電力を直流電力に変換してコンデンサ71f、71rを介してバッテリ70を充電する。
前輪用駆動回路9fは、前輪用モータ3fの1次巻線の電流を検出する電流センサ15a、15b、15cからの電流検出信号を受信する。後輪用駆動回路9rは、後輪用モータ3rの1次巻線の電流を検出する電流センサ17a、17b、17cからの電流検出信号を受信する。駆動回路9f、9rは、制御装置10から指令された目標トルクに応じた信号をインバータ8に出力する。
差動装置4f、4rは、前輪側の車軸5fr、5flへの制駆動力の配分率、および後輪側の車軸5rr、5rlへの制駆動力の配分率を制御装置10により制御可能な機構を備えたものである。前輪用モータ3fの制駆動力は、制御装置10により制御された配分率で前輪用差動装置4fにより右前輪2fr及び左前輪2flに配分される。また、後輪用モータ3rの制駆動力は、制御装置10により制御された配分率で後輪用差動装置4rにより右後輪2rr及び左後輪2rlに配分される。
(センサ系)
エンコーダ16f、16rは、前輪側および後輪側のそれぞれにおいて、モータ3の回転数を検出し、検出した回転数に応じた信号を制御装置10に出力する。
エンコーダ16f、16rは、前輪側および後輪側のそれぞれにおいて、モータ3の回転数を検出し、検出した回転数に応じた信号を制御装置10に出力する。
アクセルセンサ22は、アクセルペダル12の踏み込み量を検出し、検出した踏み込み量に応じた信号xaを制御装置10に出力する。
ブレーキセンサ23は、ブレーキペダル13の踏み込み量を検出し、検出した踏み込み量に応じた信号xbを制御装置10に出力する。
シフトセンサ24は、シフトレバー14の位置を検出し、検出した位置に応じた信号Sを制御装置10に出力する。
加速度センサ26は、車体25の推進前後方向、横方向、重心軸回りの回転方向(旋回方向)の3方向の加速度aY、aX、aθを検出する3軸加速度センサであり、検出したそれぞれの加速度aY、aX、aθに応じた信号を制御装置10に出力する。
車輪速センサ28fr、28fl、28rr、28rlは、車輪の回転速度ωを検出し、検出した回転速度ωに応じた信号を制御装置10に出力する。
電圧センサ72f、72rは、コンデンサ71f、71rの電圧(インバータ入力電圧)を検出し、検出したインバータ入力電圧に応じた信号を制御装置10に出力する。
バッテリ容量センサ73は、バッテリ70の蓄電容量(残容量)を検出し、検出した蓄電容量に応じた信号を制御装置10に出力する。バッテリ容量センサ73は、例えば、バッテリ端子電圧(オープン電圧)に基づいて求める方法、バッテリ内部抵抗に基づいて求める方法、バッテリ充放電電流の積算値に基づいて求める方法、あるいはこれらの組み合わせた方法等により、バッテリ70の蓄電容量を検出する。
(ブレーキ系)
電気自動車1では、電気ブレーキと機械ブレーキとが併用される。すなわち、電気自動車1では、駆動源としてのモータ3により制動力を発生可能である。電気ブレーキは、例えば、制動エネルギーを熱エネルギーに変換する発電ブレーキ、および制動により発生する電気を回生する回生ブレーキである。本実施の形態では、主として回生ブレーキを用いるが、低速領域では発電ブレーキを用いる場合もある。回生ブレーキは、モータ3が発電した電力をコンデンサ71を介してバッテリ70に回生し、これにより制動力を発生させる。
電気自動車1では、電気ブレーキと機械ブレーキとが併用される。すなわち、電気自動車1では、駆動源としてのモータ3により制動力を発生可能である。電気ブレーキは、例えば、制動エネルギーを熱エネルギーに変換する発電ブレーキ、および制動により発生する電気を回生する回生ブレーキである。本実施の形態では、主として回生ブレーキを用いるが、低速領域では発電ブレーキを用いる場合もある。回生ブレーキは、モータ3が発電した電力をコンデンサ71を介してバッテリ70に回生し、これにより制動力を発生させる。
機械ブレーキ18は、例えばドラムブレーキやディスクブレーキであり、圧力調整ユニット11からの加圧液体によりブレーキシューを被制動部材に押し付けて摩擦力による摩擦制動を得るものである。機械ブレーキ18の動作は、制御装置10により各車輪2に対して独立に制御される。なお、ブレーキシューをモータ等のアクチュエータにより被制動部材に押し付けてもよい。
圧力調整ユニット11は、制御装置10からの信号により機械ブレーキ18に加圧液体を分配して機械ブレーキ18毎に異なる制動力を付与可能に構成されている。なお、圧力調整ユニット11および機械ブレーキ18は、摩擦ブレーキ機構を構成する。
(撮像系)
前方のカメラ20fr、20flは、電気自動車1の前方側の路面を撮像し、撮像した画像を制御装置10に出力する。制御装置10は、カメラ20fr、20flから取得した画像に基づいて路面の変化を検出して、制駆動に関する処理を実行する。前方のカメラ20fr、20flは、その撮像領域は互いに少なくとも一部が重複している。カメラ20fr、20flは、例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラにより構成されている。
前方のカメラ20fr、20flは、電気自動車1の前方側の路面を撮像し、撮像した画像を制御装置10に出力する。制御装置10は、カメラ20fr、20flから取得した画像に基づいて路面の変化を検出して、制駆動に関する処理を実行する。前方のカメラ20fr、20flは、その撮像領域は互いに少なくとも一部が重複している。カメラ20fr、20flは、例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラにより構成されている。
後方のカメラ21は、電気自動車1の後方側の路面を撮像し、撮像した画像を制御装置10に出力する。制御装置10は、カメラ21から取得した画像に基づいて路面の変化を検出して、制駆動に関する処理を実行する。カメラ21は、例えばCCDカメラにより構成されている。
(制御系)
図2は、制御装置10を機能的に示すブロック図である。制御装置10は、例えばコンピュータにより構成され、CPU100と、半導体メモリ、ハードディスク等の記憶部110とを有する。
図2は、制御装置10を機能的に示すブロック図である。制御装置10は、例えばコンピュータにより構成され、CPU100と、半導体メモリ、ハードディスク等の記憶部110とを有する。
制御装置10は、運転者がアクセルペダル12、ブレーキペダル13等の操作手段を操作することによって発生する操作入力情報に応じた加速、減速等の動作を行うための動作指令を前輪用駆動回路9f、後輪用駆動回路9r、機械ブレーキ18に出力し、前輪駆動系および後輪駆動系の駆動トルク(駆動力)および制動トルク(制動力)を制御する。これにより、電気自動車1は、運転者の操作に従って走行することができる。
制御装置10は、各センサ22、23、24からの信号等に応じて前輪用モータ3fの目標トルクおよび後輪用モータ3Rrの目標トルクをそれぞれ算出し、前輪用駆動回路9f、後輪用駆動回路9rに出力する。前輪側および後輪側それぞれにおいて、駆動回路9は、制御装置10から指令された目標トルクに応じた信号をインバータ8に出力する。
記憶部110には、路面パターン111、μ-SrLimitテーブル112、後述する図3に示すような制駆動力とスリップ率の関係情報等の各種のデータと、制駆動プログラム113、フェールセイフ制御プログラム114等の各種のプログラムが格納されている。
CPU100は、制駆動プログラム113およびフェールセイフ制御プログラム114に従って動作することにより、路面摩擦係数μ推定手段101、スリップ率上限値設定手段102、スリップ率演算手段(スリップ率演算部)103、制駆動力制御手段(制御部)104、障害検出手段(障害検出部)105等として機能する。
(路面摩擦係数μ推定手段)
路面摩擦係数μ推定手段101は、前方のカメラ20fr、fl(車両後退時は後方のカメラ21)が撮像した画像に基づいて、自動車1の走行する路面が、乾燥路面、湿潤路面、凍結・雪路路面況等のいずれかであるかを判定し、路面の摩擦係数μを推定する。これらの路面は、摩擦係数μが大きく異なる代表的な路面である。当該判定は、撮像した画像と、予め各路面状況において撮像された路面パターン111とのパターンマッチングにより行う。路面パターン111は、路面の摩擦係数μに関連付けて記憶部110に記憶されている。なお、当該判定を輝度等が所定の閾値を超えたか否かの判断により行うなど、公知の技術を適宜用いて行ってよい。
路面摩擦係数μ推定手段101は、前方のカメラ20fr、fl(車両後退時は後方のカメラ21)が撮像した画像に基づいて、自動車1の走行する路面が、乾燥路面、湿潤路面、凍結・雪路路面況等のいずれかであるかを判定し、路面の摩擦係数μを推定する。これらの路面は、摩擦係数μが大きく異なる代表的な路面である。当該判定は、撮像した画像と、予め各路面状況において撮像された路面パターン111とのパターンマッチングにより行う。路面パターン111は、路面の摩擦係数μに関連付けて記憶部110に記憶されている。なお、当該判定を輝度等が所定の閾値を超えたか否かの判断により行うなど、公知の技術を適宜用いて行ってよい。
(スリップ率上限値設定手段)
図3は、駆動力および制動力とスリップ率との関係を示す図である。実線L1は、乾路路面、実線L2は湿潤路面、実線L3は凍結・雪路路面の場合を示している。これらの各路面は、摩擦係数が大きく異なる代表的な路面である。摩擦係数は、例えば、乾路路面では0.75、湿潤路面では0.4、凍結・雪路路面では0.2である。記憶部110には、図2に示すように、路面の摩擦係数μとスリップ率上限値SrLimitとの関係を示すμ-SrLimitテーブル112が記憶されている。μ-SrLimitテーブル112には、例えば、乾路路面(μ=0.75)に対応してスリップ率上限値SrLimit1(|Sr|=0.16)が記憶され、湿潤路面(μ=0.4)に対応してスリップ率上限値SrLimit2(|Sr|=0.14)が記憶され、凍結・雪路路面(μ=0.2)に対応してスリップ率上限値SrLimit3(|Sr|=0.12)が記憶されている。
図3は、駆動力および制動力とスリップ率との関係を示す図である。実線L1は、乾路路面、実線L2は湿潤路面、実線L3は凍結・雪路路面の場合を示している。これらの各路面は、摩擦係数が大きく異なる代表的な路面である。摩擦係数は、例えば、乾路路面では0.75、湿潤路面では0.4、凍結・雪路路面では0.2である。記憶部110には、図2に示すように、路面の摩擦係数μとスリップ率上限値SrLimitとの関係を示すμ-SrLimitテーブル112が記憶されている。μ-SrLimitテーブル112には、例えば、乾路路面(μ=0.75)に対応してスリップ率上限値SrLimit1(|Sr|=0.16)が記憶され、湿潤路面(μ=0.4)に対応してスリップ率上限値SrLimit2(|Sr|=0.14)が記憶され、凍結・雪路路面(μ=0.2)に対応してスリップ率上限値SrLimit3(|Sr|=0.12)が記憶されている。
スリップ率上限値設定手段102は、路面摩擦係数μ推定手段101が推定した路面の摩擦係数に基づいて、記憶部110内のμ-SrLimitテーブル112を参照し、所定の値としてのスリップ率上限値SrLimitを設定する。スリップ率上限値SrLimitは、例えば、図3における各路面状況に応じて発揮し得る制動力の最大値付近の値により設定されるが、最大値付近の値に限られない。スリップ率上限値SrLimitは、例えば路面の摩擦係数に応じて発揮し得る最大制動力の70~90%よりも高い制動力が発揮されるスリップ率に設定することができる。
スリップ率上限値設定手段102は、前方のカメラ20fr、20fl(車両後退時は後方のカメラ21)が路面を撮像し、その撮像した路面に前輪2fr、2fl及び後輪2rr、2rlが進入するタイミングで前輪2fr、2fl及び後輪2rr、2rlのスリップ率上限値をそれぞれ設定するように構成されている。例えば、乾路路面を走行中に前輪2fr、2flが湿潤路面に進入した場合、前輪2fr、2flについては、湿潤路面に対応したスリップ率上限値(例えば、|Sr|=0.14)が設定され、後輪2rr、2rlについては、乾路路面に対応したスリップ率上限値(例えば、|Sr|=0.16)が設定される。なお、車両前進時に、前方のカメラ20fr、20flが撮像した画像から推定される摩擦係数と後方のカメラ21が撮像した画像から推定される摩擦係数との中間値を後輪の摩擦係数やスリップ率上限値として用いてもよく、車両後退時に、その中間値を前輪の摩擦係数やスリップ率上限値として用いてもよい。
(スリップ率演算手段)
スリップ率演算手段103は、車体速度をV、車輪2の回転速度をω、車輪2の半径をRとしたとき、駆動時の車輪2のスリップ率Srを以下の式により算出する。
Sr=(Rω-V)/Rω ・・・・式(1)
スリップ率演算手段103は、車体速度をV、車輪2の回転速度をω、車輪2の半径をRとしたとき、駆動時の車輪2のスリップ率Srを以下の式により算出する。
Sr=(Rω-V)/Rω ・・・・式(1)
また、スリップ率演算手段103は、制動時の車輪2のスリップ率Srを以下の式により算出する。
Sr=(Rω-V)/V ・・・・式(2)
Sr=(Rω-V)/V ・・・・式(2)
式(1)から理解されるように、駆動時においてスリップ率Srが1.0になる場合は、V=0であり、ホイールスピンが生じている状態である。式(2)から理解されるように、制動時においてスリップ率Srが-1.0になる場合は、ω=0であり、ホイールロックが生じている状態である。すなわち、スリップ率Srの絶対値が1である状態は、いずれも路面に制駆動力(駆動力又は制動力)を伝えられない状態である。また、スリップ率Srが0である状態は、車輪2と路面との間に滑りがない状態である。
(障害検出手段)
障害検出手段105は、前輪用モータ3fおよび後輪用モータ3rに供給される三相電流を検出する電流センサ15a~15c、17a~17cからの信号、前輪用モータ3f及び後輪用モータ3rの回転速度を計測するエンコータ16f、16rからの信号、および前輪用インバータ8fおよび後輪用インバータ8rの入力電流に基づいて、モータ3から制駆動力を出力することができない障害の発生を検出する。
障害検出手段105は、前輪用モータ3fおよび後輪用モータ3rに供給される三相電流を検出する電流センサ15a~15c、17a~17cからの信号、前輪用モータ3f及び後輪用モータ3rの回転速度を計測するエンコータ16f、16rからの信号、および前輪用インバータ8fおよび後輪用インバータ8rの入力電流に基づいて、モータ3から制駆動力を出力することができない障害の発生を検出する。
障害検出手段105は、例えば、前輪用モータ3fの一次巻線を流れる三相電流IU、IV、IWのうちいずれかの電流を電流センサ15a~15cが検出できなかった場合、前輪用モータ3fの回転速度を計測するエンコータ16fからの信号が異常の場合、又は前輪用インバータ8fの入力電流が異常の場合は、前輪用モータ3fから制駆動力を出力できない障害が発生したと判断する。これと同様に、障害検出手段105は、例えば、後輪用モータ3rの一次巻線を流れる三相電流IU、IV、IWのうちいずれかの電流を電流センサ17a~17cが検出できなかった場合、後輪用モータ3rの回転速度を計測するエンコータ16rからの信号が異常の場合、又は後輪用インバータ8rの入力電流が異常の場合は、後輪用モータ3rから制駆動力を出力できない障害が発生したと判断する。前輪用モータ3f又は後輪用モータ3rのいずれかの側で障害が発生した場合は、障害が発生していない側の駆動系のみで電気自動車1の走行を継続させる。
(制駆動力制御手段)
制駆動力制御手段104は、スリップ率演算手段103が算出したスリップ率Srがスリップ率上限値SrLimit以下であるか否かを判断する。なお、制駆動力制御手段104がスリップ率の比較を行うときは、絶対値で行う。そして、制駆動力制御手段104は、μ-SrLimitテーブル112、図3に示すような制駆動力とスリップ率の関係情報等に基づいて、スリップ率をある目標値に制御するスリップ率制御、荷重移動に伴うホイールロック、ホイールスピンの抑制制御、フェールセイフ制御等を行う。以下、それらの制御について説明する。
制駆動力制御手段104は、スリップ率演算手段103が算出したスリップ率Srがスリップ率上限値SrLimit以下であるか否かを判断する。なお、制駆動力制御手段104がスリップ率の比較を行うときは、絶対値で行う。そして、制駆動力制御手段104は、μ-SrLimitテーブル112、図3に示すような制駆動力とスリップ率の関係情報等に基づいて、スリップ率をある目標値に制御するスリップ率制御、荷重移動に伴うホイールロック、ホイールスピンの抑制制御、フェールセイフ制御等を行う。以下、それらの制御について説明する。
<スリップ率制御>
制駆動力制御手段104は、各車輪2のスリップ率がスリップ率上限値SrLimit以下のときは、アクセルペダル12の踏み込み量に応じて電気モータ3の駆動力を発揮させ、ブレーキペダル13の踏み込み量に応じて機械ブレーキ18による制動力、および駆動回路9による電気ブレーキの制動力を共に発揮させる。また、制駆動力制御手段104は、例えば摩擦係数が小さい低μ路において、各車輪2のスリップ率のいずれか(複数の車輪2が同時の場合も含む。)が、スリップ率上限値SrLimitを超えたとき、アクセルペダル12の踏み込み量に関わらず、スリップ率上限値SrLimitを超えたスリップ率がスリップ率上限値SrLimit以下になるように電気モータ3の駆動力を制御し、ブレーキペダル13の踏み込み量に関わらず、スリップ率上限値SrLimitを超えたスリップ率がスリップ率上限値SrLimit以下になるように、電気ブレーキによる制動力を制御するとともに、機械ブレーキ18による制動力を制御する。なお、制駆動力制御手段104は、制駆動力の制御を左右輪のスリップ率のうちいずれかが大きい方かを判断し、大きい方のスリップ率に基づいて行ってもよい。
制駆動力制御手段104は、各車輪2のスリップ率がスリップ率上限値SrLimit以下のときは、アクセルペダル12の踏み込み量に応じて電気モータ3の駆動力を発揮させ、ブレーキペダル13の踏み込み量に応じて機械ブレーキ18による制動力、および駆動回路9による電気ブレーキの制動力を共に発揮させる。また、制駆動力制御手段104は、例えば摩擦係数が小さい低μ路において、各車輪2のスリップ率のいずれか(複数の車輪2が同時の場合も含む。)が、スリップ率上限値SrLimitを超えたとき、アクセルペダル12の踏み込み量に関わらず、スリップ率上限値SrLimitを超えたスリップ率がスリップ率上限値SrLimit以下になるように電気モータ3の駆動力を制御し、ブレーキペダル13の踏み込み量に関わらず、スリップ率上限値SrLimitを超えたスリップ率がスリップ率上限値SrLimit以下になるように、電気ブレーキによる制動力を制御するとともに、機械ブレーキ18による制動力を制御する。なお、制駆動力制御手段104は、制駆動力の制御を左右輪のスリップ率のうちいずれかが大きい方かを判断し、大きい方のスリップ率に基づいて行ってもよい。
<荷重移動に伴うホイールロック、ホイールスピンの抑制制御>
図4は、電気自動車1における制動力の前輪2fr、2fl及び後輪2rr、2rlヘの分配方法を説明するための図である。
図4は、電気自動車1における制動力の前輪2fr、2fl及び後輪2rr、2rlヘの分配方法を説明するための図である。
図4に示すように、電気自動車1が加速度aYで減速するときの制動力Fcarは、
Fcar=M×aY ・・・式(3)
となる。ここで、Mは、電気自動車1全体の質量(車体質量)である。
Fcar=M×aY ・・・式(3)
となる。ここで、Mは、電気自動車1全体の質量(車体質量)である。
そのときの荷重移動量Zは、制動力Fcarによって生じる電気自動車1の重心G回りのモーメントを前輪2fr、2fl及び後輪2rr、2rlの接地点における垂直荷重に換算した次式(4)により得られる。
Z=Fcar×Hcar/Lcar ・・・式(4)
ここで、Hcarは、電気自動車1の重心Gの接地面からの高さであり、Lcarは、電気自動車1のホイールベースである。
Z=Fcar×Hcar/Lcar ・・・式(4)
ここで、Hcarは、電気自動車1の重心Gの接地面からの高さであり、Lcarは、電気自動車1のホイールベースである。
また、電気自動車1が停止しているときの前輪荷重をWf、後輪荷重をWr、路面の摩擦係数をμとすると、摩擦力と釣り合う前輪及び後輪の制動力、すなわち、前輪2fr、2flの最大制動力Ffmax及び後輪2rr、2rlの最大制動力Frmaxは、それぞれ次式(5)、(6)により表される。
Ffmax=μ(Wf+Z) ・・・式(5)
Frmax=μ(Wr-Z) ・・・式(6)
Ffmax=μ(Wf+Z) ・・・式(5)
Frmax=μ(Wr-Z) ・・・式(6)
従って、前輪側及び後輪側のそれぞれにおけるモータ3及び機械ブレーキ18による制動力が、最大制動力Ffmax及び最大制動力Frmaxとなるように、モータ3及び機械ブレーキ18の動作を制御すれば、電気自動車1全体として最も制動力が大きくなり、ホイールロックを抑制することができる。以上は減速時について説明したが、加速時も同様であり、荷重移動に基づいて最適な駆動力となるように制御することにより、ホイールスピンを抑制することができる。
<フェールセイフ制御>
制駆動力制御手段104は、障害検出手段105が障害の発生を検出したとき、加速度センサ26によって検出された前後方向加速度aY、横方向加速度aX、旋回加速度aθを記憶部110に保持しておき、前後方向加速度aY、横方向加速度aX、旋回加速度aθからそれぞれの加速度変化率jY、jX、jθを求め、それらの加速度変化率jY、jX、jθのうち最も大きい加速度変化率に対応する方向の加速度を障害の発生前の値にするように障害の発生していない側のモータ3、差動装置4および機械ブレーキ18を以下のように制御する。なお、フェールセイフ制御の詳細については、本実施の形態の動作の項で説明する。
制駆動力制御手段104は、障害検出手段105が障害の発生を検出したとき、加速度センサ26によって検出された前後方向加速度aY、横方向加速度aX、旋回加速度aθを記憶部110に保持しておき、前後方向加速度aY、横方向加速度aX、旋回加速度aθからそれぞれの加速度変化率jY、jX、jθを求め、それらの加速度変化率jY、jX、jθのうち最も大きい加速度変化率に対応する方向の加速度を障害の発生前の値にするように障害の発生していない側のモータ3、差動装置4および機械ブレーキ18を以下のように制御する。なお、フェールセイフ制御の詳細については、本実施の形態の動作の項で説明する。
前後方向の加速度変化率jY、横方向の加速度変化率jX、旋回方向の加速度変化率jθのうち前後方向の加速度変化率jYが最も大きい場合には、各車輪2のスリップ率が所定の値を超えないように障害の発生していない側のモータ3、差動装置4および機械ブレーキ18を制御する。
前後方向の加速度変化率jY、横方向の加速度変化率jX、旋回方向の加速度変化率jθのうち横方向の加速度変化率jaXが最も大きい場合には、横方向加速度aXの方向が右方向のときは車両25が左回転し、横方向加速度aXの方向が左方向のときは車両25が右回転し、かつ、横方向加速度aXを障害の発生前の値になるように障害の発生していない側のモータ3、差動装置4および機械ブレーキ18を制御する。
前後方向の加速度変化率jY、横方向の加速度変化率jX、旋回方向の加速度変化率jθのうち旋回方向の加速度変化率jθが最も大きい場合には、旋回方向が右回転のときは車両25が左回転し、旋回方向が左回転のときは車両25が右回転し、かつ、横方向加速度aXを障害の発生前の値になるように障害の発生していない側のモータ3、差動装置4および機械ブレーキ18を制御する。
(本実施の形態の動作)
次に、電気自動車1の動作について図5A、図5Bおよび図6を参照して説明する。図5Aは、車体25が横方向に動こうとしている状態を示す平面図、図5Bは、車体25が旋回しようとしている状態を示す平面図である。図6は、フェールセイフ制御の一例を示すフローチャートである。
次に、電気自動車1の動作について図5A、図5Bおよび図6を参照して説明する。図5Aは、車体25が横方向に動こうとしている状態を示す平面図、図5Bは、車体25が旋回しようとしている状態を示す平面図である。図6は、フェールセイフ制御の一例を示すフローチャートである。
制御装置10は、走行中は常に前述したようにスリップ率制御を行っている。すなわち、路面摩擦係数μ推定手段101は、電気自動車1が走行する路面の摩擦係数μを推定する。例えば、前方のカメラ20fr、flが撮像した画像と記憶部110に記憶されている路面パターン111とのパターンマッチングにより路面の摩擦係数μを推定する。
次に、スリップ率上限値設定手段102は、推定された路面の摩擦係数μに応じたスリップ率上限値SrLimtをμ-SrLimtテーブル112を参照して設定する。なお、スリップ率上限値SrLimitは前後輪の摩擦係数μに応じて前後輪それぞれに対し設定する。
次に、スリップ率演算手段103は、加速度センサ26からの車体25の推進前後方向の加速度aYに応じた信号に基づいて、車体25の推進前後方向の加速度aYを積分して推進前後方向の車体速度Vを求める。
続いて、スリップ率演算手段103は、車輪速センサ28からの車輪2の回転速度ωに応じた信号に基づいて、車輪2の回転速度ωを求める。
次に、スリップ率演算手段103は、車輪2の半径R、車輪2の回転速度ω、車体速度Vから上記式(2)を用いて各車輪2のスリップ率Srを算出する。
次に、制駆動力制御手段104は、各車輪2のスリップ率|Sr|のいずれかがスリップ率上限値SrLimitを超えたか否かを判断する。
各車輪2のスリップ率|Sr|のいずれかがスリップ率上限値SrLimitを超えた場合、その車輪2のスリップ率|Sr|がスリップ率上限値SrLimit以下となるようにモータ3の制駆動力、差動装置4の動力配分率、および機械ブレーキ18の制動力を制御する。
そして、障害検出手段105が前輪用モータ3f又は後輪用モータ3rのどちらかが制駆動力を出力することができない障害の発生を検出すると、制駆動力制御手段104は、図6のフローチャートに従って障害の発生していない側のモータ3、差動装置4および機械ブレーキ18を用いたフェールセイフ制御を行う。
制駆動力制御手段104は、障害検出手段105が障害の発生を検出したとき、加速度センサ26によって検出された前後方向加速度aY、横方向加速度aX、旋回加速度aθを記憶部110に保持しておき、前後方向加速度aY、横方向加速度aX、旋回加速度aθからそれぞれの加速度変化率jY、jX、jθを求め、それらの加速度変化率jY、jX、jθのうちいずれの加速度変化率が最も大きいかを判断する(S1)。この判断は、例えば各加速度変化率jY、jX、jθを正規化して行う。加速度変化率jY、jX、jθの正規化後の加速度変化率をそれぞれjNY、jNX、jNθとすると、jNY、jNX、jNθは、以下の式によって求めることができる。
jNY=jY×kY、jNX=jX×kX、jNθ=jθ×kθ
ここで、kY、kX、kθは係数である。係数kY、kX、kθは、安定走行の観点から定めることができる。
jNY=jY×kY、jNX=jX×kX、jNθ=jθ×kθ
ここで、kY、kX、kθは係数である。係数kY、kX、kθは、安定走行の観点から定めることができる。
正規化後の前後方向の加速度変化率jNYが最も大きいと判断した場合には、制駆動力制御手段104は、以下の制御を行う。前後方向加速度aYにより加速中か減速中かを判定し(S2)、加速中であれば、前後方向加速度aYが障害発生前の値となり、障害が発生していない側が前輪なら前輪トルクが大きくなるように前輪用モータ3fの駆動力を制御し、障害が発生していない側が後輪なら後輪トルクが大きくなるように後輪用モータ3rの駆動力を制御する。減速中であれば、前後方向加速度aYが障害発生前の値となり、障害が発生していない側が前輪なら前輪トルクが大きくなるように前輪用モータ3fの制動力および機械ブレーキ18fr、18flを制御し、障害が発生していない側が後輪なら後輪トルクが大きくなるように後輪用モータ3rの制動力および機械ブレーキ18rr、18rlを制御する。
正規化後の横方向の加速度変化率jNXが最も大きいと判断した場合には、制駆動力制御手段104は、以下のように制御を行う。横方向加速度aXの方向を判定し(S5)、横方向加速度aXの方向が右方向の場合、例えば、図5Aに示すように、横方向加速度aXが障害発生前の値となり、右輪トルクが左輪トルクよりも大きくなるように制御する(S6)。すなわち、障害が発生していない側が前輪なら前輪用差動装置4fの制駆動力の配分比率を右輪トルクが左輪トルクよりも大きくなるように制御する。障害が発生していない側が後輪なら後輪用差動装置4rの制駆動力の配分比率を右輪トルクが左輪トルクよりも大きくなるように制御する。
横方向加速度aXの方向が左方向の場合、横方向加速度aXが障害発生前の値となり、左輪トルクが右輪トルクよりも大きくなるように制御する(S7)。例えば、障害が発生していない側が前輪なら前輪用差動装置4fの制駆動力の配分比率を左輪トルクが右輪トルクよりも大きくなるように制御する。障害が発生していない側が後輪なら後輪用差動装置4rの制駆動力の配分比率を左輪トルクが右輪トルクよりも大きくなるように制御する。
正規化後の旋回方向の加速度変化率jNθが最も大きいと判断した場合には、制駆動力制御手段104は、以下の制御を行う。旋回加速度aθの方向を判定し(S8)、旋回加速度aθの方向が右回転の場合、例えば、図5Bに示すように、旋回加速度aθが障害発生前の値となり、右輪トルクが左輪トルクよりも大きくなるように制御する(S9)。例えば、障害が発生していない側が前輪なら前輪用差動装置4fの制駆動力の配分比率を右輪トルクが左輪トルクよりも大きくなるように制御する。障害が発生していない側が後輪なら後輪用差動装置4rの制駆動力の配分比率を右輪トルクが左輪トルクよりも大きくなるように制御する。
旋回加速度aθの方向が左回転の場合、旋回加速度aθが障害発生前の値となり、左輪トルクが右輪トルクよりも大きくなるように制御する(S10)。例えば、障害が発生していない側が前輪なら前輪用差動装置4fの制駆動力の配分比率を左輪トルクが右輪トルクよりも大きくなるように制御する。障害が発生していない側が後輪なら後輪用差動装置4rの制駆動力の配分比率を左輪トルクが右輪トルクよりも大きくなるように制御する。
(本実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、2つの電気モータ3f、3rのうち一方の電気モータ3の機能が停止しても、旋回等が生じないようにトルクを制御しているので、安定した走行が可能となる。
本実施の形態によれば、2つの電気モータ3f、3rのうち一方の電気モータ3の機能が停止しても、旋回等が生じないようにトルクを制御しているので、安定した走行が可能となる。
本発明は、上記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々に変形実施が可能である。
例えば、障害検出手段105が障害の発生を検出した場合、制駆動力制御手段104は、障害の発生した側の差動装置4の動力配分制御の機能を無効にし、均等の動力配分を行わせてもよい。これにより、動力配分率が障害の発生時のままとなることで車体25が旋回するのを抑制することができる。
また、前輪用モータ3fと前輪用差動装置4fとの間、および後輪用モータ3rと後輪用差動装置4rとの間にそれぞれクラッチを設け、障害検出手段105が障害の発生を検出した場合、制駆動力制御手段104は、障害の発生した側のクラッチを作動させて障害の発生した側のモータ3のイナーシャを遮断するようにしてもよい。これにより、障害が発生した側のモータ3のイナーシャによって障害が発生していない側の駆動系に対する制御性が低下するのを抑制することができる。
また、各手段101~105をCPU100と制駆動プログラム113、フェールセイフ制御プログラム114によって実現したが、ASIC(Application Specific IC)等のハードウエアによって実現してもよい。
また、制駆動プログラム113およびフェールセイフ制御プログラム114は、それらを記録したCD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体から制御装置10内に取り込んでもよく、サーバ装置等からネットワークを介して制御装置10内に取り込んでもよい。
本発明は、上記実施の形態の他に、以下の他の実施の形態に係る電気自動車の制御装置、電気自動車の制御方法、制駆動プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することもできる。
他の実施の形態に係る電気自動車の制御装置は、第1の電気モータから出力された制駆動力を左右への動力配分制御が可能な第1の差動装置を介して前輪側の左右輪に伝達する第1の駆動系と、第2の電気モータから出力された制駆動力を左右への動力配分制御が可能な第2の差動装置を介して前輪側の左右輪に伝達する第2の駆動系と、車両の前後方向、横方向および旋回方向の加速度を検出する加速度検出部と、前記第1および第2の電気モータから制駆動力を出力することができない障害の発生を検出する障害検出部とを備えた電気自動車を制御する装置であって、前記障害検出部が前記障害の発生を検出したとき、前記加速度検出部が検出した前記前後方向、横方向および旋回方向の加速度からそれぞれの加速度変化率を求め、それらの加速度変化率のうち最も大きい加速度変化率に対応する方向の加速度が前記障害の発生前の値となるように前記障害の発生していない側の前記第1又は第2の駆動系を制御する制御部を備える。
他の実施の形態に係る電気自動車の制御方法は、第1の電気モータから出力された制駆動力を左右への動力配分制御が可能な第1の差動装置を介して前輪側の左右輪に伝達する第1の駆動系と、第2の電気モータから出力された制駆動力を左右への動力配分制御が可能な第2の差動装置を介して前輪側の左右輪に伝達する第2の駆動系と、車両の前後方向、横方向および旋回方向の加速度を検出する加速度検出部と、前記第1および第2の電気モータから制駆動力を出力することができない障害の発生を検出する障害検出部とを備えた電気自動車を制御する方法であって、前記障害検出部が前記障害の発生を検出したとき、前記加速度検出部により検出した前記前後方向、横方向および旋回方向の加速度からそれぞれの加速度変化率を求め、それらの加速度変化率のうち最も大きい加速度変化率に対応する方向の加速度が前記障害の発生前の値となるように前記障害の発生していない側の前記第1又は第2の駆動系を制御する制御ステップを含む。
他の実施の形態に係るコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、第1の電気モータから出力された制駆動力を左右への動力配分制御が可能な第1の差動装置を介して前輪側の左右輪に伝達する第1の駆動系と、第2の電気モータから出力された制駆動力を左右への動力配分制御が可能な第2の差動装置を介して前輪側の左右輪に伝達する第2の駆動系と、車両の前後方向、横方向および旋回方向の加速度を検出する加速度検出部と、前記第1および第2の電気モータから制駆動力を出力することができない障害の発生を検出する障害検出部とを有する電気自動車に含まれるコンピュータに、前記障害検出部が前記障害の発生を検出したとき、前記加速度検出部が検出した前記前後方向、横方向および旋回方向の加速度からそれぞれの加速度変化率を求め、それらの加速度変化率のうち最も大きい加速度変化率に対応する方向の加速度が前記障害の発生前の値となるように前記障害の発生していない側の前記第1又は第2の駆動系を制御する制御ステップを実行させるためのプログラムが記録されたものである。
前輪および後輪を駆動する電気モータを有する自動車や、車輪の動力源として電気モータとエンジンの両方を有し、電気モータによる回生制動が可能なハイブリッドカー等に適用することでき、乗用自動車、バス、貨物自動車、普通車、大型車、特大車等の種類を問わない。
1…電気自動車、2…車輪、2fr、2fl…前輪、2rr、rl…後輪、3f…前輪用モータ、3r…後輪用モータ、4f、4r…差動装置、5fr、5fl、5rr、5rl…車軸、7…電源部、8f…前輪用インバータ、8r…後輪用インバータ、9f…前輪用駆動回路、9r…後輪用駆動回路、10…制御装置、11…圧力調整ユニット、12…アクセルペダル、13…ブレーキペダル、14…シフトレバー、15a~15c…電流センサ、16f、16r…エンコーダ、17a~17c…電流センサ、18fr、18fl、18rr、18rl…機械ブレーキ、20fr、20fl…カメラ、21…カメラ、22…アクセルセンサ、23…ブレーキセンサ、24…シフトセンサ、25…車体、26…加速度センサ、27f、27r…温度センサ、70…バッテリ、71f…前輪用平滑コンデンサ、71r…後輪用平滑コンデンタ、72f、72r…電圧センサ、73…バッテリ容量センサ、100…CPU、101…路面摩擦係数μ推定手段、102…スリップ率上限値設定手段、103…スリップ率演算手段、104…制駆動力制御手段、105…障害検出手段、110…記憶部、111…路面パターン、112…μ-SrLimitテーブル、113…制駆動プログラム、114…フェールスセイフ制御プログラム
Claims (9)
- 第1の電気モータから出力された制駆動力を左右への動力配分制御が可能な第1の差動装置を介して前輪側の左右輪に伝達する第1の駆動系と、
第2の電気モータから出力された制駆動力を左右への動力配分制御が可能な第2の差動装置を介して前輪側の左右輪に伝達する第2の駆動系と、
車両の前後方向、横方向および旋回方向の加速度を検出する加速度検出部と、
前記第1および第2の電気モータから制駆動力を出力することができない障害の発生を検出する障害検出部と、
前記障害検出部が前記障害の発生を検出したとき、前記加速度検出部が検出した前記前後方向、横方向および旋回方向の加速度からそれぞれの加速度変化率を求め、それらの加速度変化率のうち最も大きい加速度変化率に対応する方向の加速度が前記障害の発生前の値となるように前記障害の発生していない側の前記第1又は第2の駆動系を制御する制御部とを備えた電気自動車。 - 前記障害検出部が前記障害の発生を検出した場合、前記制御部は、前記前後方向、横方向および旋回方向の加速度変化率のうち、前記前後方向の加速度変化率が最も大きいとき、各車輪のスリップ率が所定の値を超えないように前記障害の発生していない側の前記第1又は第2の駆動系を制御する請求項1に記載の電気自動車。
- 前記障害検出部が前記障害の発生を検出した場合、前記制御部は、前記前後方向、横方向および旋回方向の加速度変化率のうち、前記横方向の加速度変化率が最も大きいとき、前記横方向の加速度の方向が右方向のときは前記車両が左回転し、前記横方向の加速度の方向が左方向のときは前記車両が右回転するように前記障害の発生していない側の前記第1又は第2の駆動系を制御する請求項1に記載の電気自動車。
- 前記障害検出部が前記障害の発生を検出した場合、前記制御部は、前記前後方向、横方向および旋回方向の加速度変化率のうち、前記旋回方向の加速度変化率が最も大きいとき、前記旋回方向が右回転のときは前記車両が左回転し、前記旋回方向が左回転のときは前記車両が右回転するように前記障害の発生していない側の前記第1又は第2の駆動系を制御する請求項1に記載の電気自動車。
- 前記障害検出部が前記障害の発生を検出した場合、前記制御部は、前記障害の発生した側の前記第1又は第2の差動装置の動力配分制御の機能を無効にし、均等の動力配分を行わせる請求項1に記載の電気自動車。
- 前記第1の電気モータと前記第1の差動装置との間、および前記第2の電気モータと前記第2の差動装置との間にそれぞれクラッチを設け、
前記障害検出部が前記障害の発生を検出した場合、前記制御部は、前記障害の発生した側の前記クラッチを作動させて前記障害の発生した側の前記第1又は第2の電気モータのイナーシャを遮断する請求項1に記載の電気自動車。 - 第1の電気モータから出力された制駆動力を左右への動力配分制御が可能な第1の差動装置を介して前輪側の左右輪に伝達する第1の駆動系と、
第2の電気モータから出力された制駆動力を左右への動力配分制御が可能な第2の差動装置を介して前輪側の左右輪に伝達する第2の駆動系と、
車両の前後方向、横方向および旋回方向の加速度を検出する加速度検出部と、
前記第1および第2の電気モータから制駆動力を出力することができない障害の発生を検出する障害検出部とを有する電気自動車に含まれるコンピュータに、
前記障害検出部が前記障害の発生を検出したとき、前記加速度検出部が検出した前記前後方向、横方向および旋回方向の加速度からそれぞれの加速度変化率を求め、それらの加速度変化率のうち最も大きい加速度変化率に対応する方向の加速度が前記障害の発生前の値となるように前記障害の発生していない側の前記第1又は第2の駆動系を制御する制御ステップを実行させるためのプログラム。 - 第1の電気モータから出力された制駆動力を左右への動力配分制御が可能な第1の差動装置を介して前輪側の左右輪に伝達する第1の駆動系と、
第2の電気モータから出力された制駆動力を左右への動力配分制御が可能な第2の差動装置を介して前輪側の左右輪に伝達する第2の駆動系と、
車両の前後方向、横方向および旋回方向の加速度を検出する加速度検出部と、
前記第1および第2の電気モータから制駆動力を出力することができない障害の発生を検出する障害検出部とを備えた電気自動車を制御する装置であって、
前記障害検出部が前記障害の発生を検出したとき、前記加速度検出部が検出した前記前後方向、横方向および旋回方向の加速度からそれぞれの加速度変化率を求め、それらの加速度変化率のうち最も大きい加速度変化率に対応する方向の加速度が前記障害の発生前の値となるように前記障害の発生していない側の前記第1又は第2の駆動系を制御する制御部を備えた電気自動車の制御装置。 - 第1の電気モータから出力された制駆動力を左右への動力配分制御が可能な第1の差動装置を介して前輪側の左右輪に伝達する第1の駆動系と、
第2の電気モータから出力された制駆動力を左右への動力配分制御が可能な第2の差動装置を介して前輪側の左右輪に伝達する第2の駆動系と、
車両の前後方向、横方向および旋回方向の加速度を検出する加速度検出部と、
前記第1および第2の電気モータから制駆動力を出力することができない障害の発生を検出する障害検出部とを備えた電気自動車を制御する方法であって、
前記障害検出部が前記障害の発生を検出したとき、前記加速度検出部により検出した前記前後方向、横方向および旋回方向の加速度からそれぞれの加速度変化率を求め、それらの加速度変化率のうち最も大きい加速度変化率に対応する方向の加速度が前記障害の発生前の値となるように前記障害の発生していない側の前記第1又は第2の駆動系を制御する制御ステップを含む電気自動車の制御方法。
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