WO2010007755A1

WO2010007755A1 - 銅の表面処理剤および表面処理方法、並びに銅表面の皮膜

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Publication number: WO2010007755A1
Application number: PCT/JP2009/003275
Authority: WO
Inventors: 印部俊雄; 宇都宮朗; 西田真也
Original assignee: 日本ペイント株式会社
Priority date: 2008-07-15
Filing date: 2009-07-13
Publication date: 2010-01-21

Abstract

　処理工程を増加させることなく、銅の表面をエッチング等の粗化処理することなく平滑な状態に処理することができ、かつ銅と樹脂等の絶縁材との間の密着性を維持することができる銅表面の皮膜を提供する。銅とスズとの合金を含有し、銅表面の皮膜におけるスズの重量が１ｍｇ／ｍ^２以上、２，０００ｍｇ／ｍ^２以下の範囲内であり、上記皮膜の最表面における組成のうちの、スズに対する銅のモル比が０．２以上、２．０以下の範囲内である。

Description

銅の表面処理剤および表面処理方法、並びに銅表面の皮膜

　本発明は、銅の表面処理剤および表面処理方法、並びに、銅表面の皮膜、銅張り材料、多層配線基板および配線基板に関するものである。さらに詳しくは、銅の表面をエッチング等の粗化処理することなく平滑（フラット）な状態に処理することができる銅の表面処理剤および表面処理方法、並びに、上記表面処理方法により表面処理されてなる銅表面の皮膜、銅張り材料、多層配線基板および配線基板に関するものである。

　従来、一般的な多層配線基板（ビルドアップ配線基板）は、表面部に銅からなる導電層を有する内層基板が樹脂等の絶縁材を挟んで他の内層基板と積層プレスされることにより製造されている。上記導電層間は、孔壁が銅メッキされたスルーホールと呼ばれる貫通孔により、電気的に接続されている。

　ここで、上記多層配線基板の配線として上記内層基板の表面部に用いられている銅には、樹脂等の絶縁材との密着性が要求されている。それゆえ、上記内層基板の表面部に用いられている銅の表面と、樹脂等の絶縁材との密着性を向上させるために、銅の表面処理が行われるのが一般的である。

　銅の表面処理方法としては、例えば、銅の表面を塩化銅、硫酸・過酸化水素等でエッチングして銅の表面を粗化させ、銅の表面に凹凸形状の酸化皮膜を付ける方法等が挙げられる。この方法によれば、凹凸形状の酸化皮膜が樹脂等の絶縁材にくい込み、アンカー効果を生じて、銅と樹脂等の絶縁材との密着性が向上する。銅と樹脂等の絶縁材との密着性を向上させるための他の方法として、粗化させた銅の表面を、スズ、シランカップリング剤等で処理する方法も開発されている（例えば、特許文献１～３参照）。

　ここで、特許文献１１には、粗化させた銅の表面をスズで処理し、合金化スズを形成する方法、および該合金化スズを形成後にスズ皮膜を剥離し、銅スズ合金化皮膜を形成する方法が記載されているが、それらの方法を用いても、銅と樹脂等の絶縁材との密着が不十分である。

　近年の電子機器・電子部品の小型化、薄型化等に対応するために、多層配線基板を薄くすることが要求されている。さらに、近年の電子機器・電子部品の高周波化、高密度化等に対応するために、多層配線基板の配線の微細化（ファイン化）が要求されている。

　また、上記多層配線基板の表面部に用いられている銅の表面が粗い場合には、該多層配線基板に表面電流が流れ、電気的損失や信号の遅延が生じるという問題がある。

　そこで、上記のエッチング等の粗化処理を用いる方法に代わる方法として、内層基板の表面部に用いられている銅の表面に、スズメッキ等によりスズ皮膜を形成する方法が示されている（例えば、特許文献４参照）。さらに、銅と樹脂等の絶縁材との密着性を向上させるために、内層基板の表面部に用いられている銅の表面にスズメッキした後、硝酸、シランカップリング剤等で処理する方法が示されている（例えば、特許文献５～９参照）。さらに、ｐＨを調整して銅と樹脂等の絶縁材との密着性を向上させるために、スズ化合物と同時に酸および反応促進剤を添加する方法が示されている（例えば、特許文献５，１０参照）。さらに、銅と樹脂等の絶縁材との密着性を向上させるために、銅の表面に銅塩を添加することで、樹脂等の絶縁材との密着性の高い金属層を形成する方法が示されている（例えば、特許文献１０参照）。さらに、銅と樹脂等の絶縁材との密着性を向上させるために、スズによる処理後、シランによる処理を行い、水洗せず乾燥して、スズ皮膜の上にシラン皮膜をコーティングする方法が示されている（例えば、非特許文献１参照）。

日本国公開特許公報「特開平１０－２８９８３８号公報（１９９８年１０月２７日公開）」日本国公開特許公報「特開２０００－３４０９４８号公報（２０００年１２月８日公開）」日本国公開特許公報「特開平１０－２５６７３６号公報（１９９８年９月２５日公開）」日本国公開特許公報「特開平４－２３３７９３号公報（１９９２年８月２１日公開）」日本国公開特許公報「特開２００５－２３３０１号公報（２００５年１月２７日公開）」日本国公開特許公報「特開平１－１０９７９６号公報（１９８９年４月２６日公開）」日本国公開特許公報「特開平７－１７００６４号公報（１９９５年７月４日公開）」日本国公開特許公報「特許第３１３５５１６号公報（特開平１０－４６３５９号公報、１９９８年２月１７日公開）」日本国公開特許公報「特開２００３－２０１５８５号公報（２００３年７月１８日公開）」日本国公開特許公報「特開２００８－１０９１１１号公報（２００８年５月８日公開）」日本国公開特許公報「特開２０００－３４０９４８号公報（２０００年１２月８日公開）」

Patrick Brooks, et al Atotech Deutschland 著　「プリント配線板／パッケージ基板の最新技術動向　めっき・表面処理プロセス技術編　次世代のＩＣサブストレートに向けた革新的なノンエッチング・アドヒージョンプロモーター」　「電子材料」（工業調査会）　２００７年　ｐ.８８－９１

　しかしながら、上記特許文献１～３に示される銅の表面処理方法では、いずれも性能、特に銅と樹脂等の絶縁材との密着性が不十分であるため、ほとんど実用化されていない。さらに、これらの方法では、粗化処理が銅を溶解するため銅幅が目減りし、これらの方法により表面処理された銅張り材料のファイン化が困難となり、かつ電気損失が大きくなる。さらに、これらの方法では、粗化処理後の経時変化に伴い酸化膜が成長するため不動態化が不十分となり、いずれも性能が劣化する。そのため、後処理としての防錆処理が一般的に行われている。

　また、上記特許文献４に示される銅の表面処理方法では、銅の表面をエッチング等の粗化処理する方法と比較して、銅と樹脂等の絶縁材との密着性が十分ではないという問題点を有している。

　また、上記特許文献５～９に示される銅の表面処理方法では、銅の表面にスズメッキした後、硝酸、シランカップリング剤等で処理するので、処理工程が増加する。さらに、これらの方法でも、銅の表面をエッチング等の粗化処理する方法と比較して、銅と樹脂等の絶縁材との十分な密着性を維持できないという問題点がある。

　また、上記特許文献５，１０に示される銅の表面処理方法では、銅の表面にスズ化合物と同時に酸および反応促進剤を添加しているが、スズ化合物と酸（ｐＨ）と反応促進剤とのバランスを考慮しておらず、銅の表面をエッチング等の粗化処理する方法と比較して、銅と樹脂等の絶縁材との十分な密着性を維持できないという問題点がある。

　また、上記特許文献１０に示される銅の表面処理方法では、十分な密着性を維持できないという問題点があるのに加え、銅表面への金属層の均一付着が難しく、さらに銅以外の部分にもコーティングされるため、実装時にメッキ性、電気導電性などの阻害が懸念されるという問題点がある。

　また、上記特許文献１１に示される銅の表面処理方法では、銅の表面をエッチングにて粗化した後にスズ化合物を添加しているが、従来のスズ皮膜形成では粗化表面が埋まるなどして形状効果が期待できないとの理由により、銅と樹脂等の絶縁材との十分な密着性を維持できないという問題点がある。

　本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、処理工程を増加させることなく、銅の表面をエッチング等の粗化処理することなく平滑な状態に処理することができ、かつ銅と樹脂等の絶縁材との間の密着性を維持することができる銅の表面処理剤および表面処理方法、並びに銅表面の皮膜を提供することにある。

　本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、銅の表面処理に用いられる表面処理剤および表面処理方法、並びに銅表面の皮膜において、上記表面処理剤にスズ化合物と錯化剤（キレート剤）とｐＨ調整剤とを含め、それらの濃度のバランスを制御することで、銅表面に存在する結晶の物性を変え、銅の表面に竹の子状の突起を有するＣｕ－Ｓｎ合金皮膜（凹凸超マイクロ粗化皮膜）を形成し、その結果、表面積が飛躍的に向上し、銅と樹脂等の絶縁材との十分な密着性を維持することができることを独自に見出し、本発明を完成させるに至った。つまり、本発明者は、錯化剤により銅の電位を下げて銅を反応しやすい物質にして、銅の溶解速度を制御し、かつｐＨ調整剤により銅の溶解を促進させることで、銅リッチのスズ皮膜を形成することができ、その結果、析出皮膜の結晶性質を変え、皮膜形状を自在に設計制御できることを独自に見出した。さらに、本発明者は、スズ化合物の濃度が低い場合には、銅表面へのスズの析出が銅の溶解に追いつかず、溶解された銅がスズと共析し、銅リッチのスズ皮膜が形成しやすいことも独自に見出した。ここで、通常のスズ処理はパーセントオーダーの濃度の処理液で処理されおり、スズが皮膜化に用いられる以外に排水中に残存して廃棄されることも多いということが一般的であるが、本発明では大幅な性能向上のみならず、排水負荷を飛躍的に減少させるため、環境対応としても大変優れている。

　即ち、本発明の銅表面の皮膜は、上記課題を解決するために、銅とスズとの合金を含有し、銅表面の皮膜におけるスズの重量が１ｍｇ／ｍ^２以上、２，０００ｍｇ／ｍ^２以下の範囲内であり、上記皮膜の最表面における組成のうちの、スズに対する銅のモル比が０．２以上、２．０以下の範囲内であることを特徴としている。また、本発明の銅表面の皮膜は、銅表面の皮膜におけるスズの重量が２０ｍｇ／ｍ^２以上、２，０００ｍｇ／ｍ^２以下の範囲内であることが好ましい。

　上記の発明によれば、本発明の銅表面の皮膜は、銅とスズとの合金を含有し、銅表面の皮膜におけるスズの重量が１ｍｇ／ｍ^２以上、２，０００ｍｇ／ｍ^２以下の範囲内であり、かつ銅表面の上記皮膜の最表面におけるスズに対する銅のモル比が０．２以上、２．０以下の範囲内であるので、該合金が銅の表面に生じる空隙および微細孔を埋めて、竹の子状の突起を有する皮膜（凹凸超マイクロ粗化皮膜）となる。それは、錯化剤および酸により銅の溶出量を増やし、スズの析出時に銅を共析出させることで、銅リッチのスズ皮膜を形成するためであると考えられる。Ｃｕ－Ｓｎの２元平衡状態図より、Ｃｕ－Ｓｎ合金にはＣｕ_６Ｓｎ_５とＣｕ_３Ｓｎとの単一層が存在する。通常のスズ処理では、Ｓｎの単一層を中心とした皮膜が形成し、スズ皮膜は層状に成長するため、表面形状は大きく変化しない。しかし、本発明におけるＣｕ－Ｓｎ合金の主成分であるＣｕ_６Ｓｎ_５は六方晶系の結晶であるから、結晶性が高く、成長過程において隣り合う結晶がぶつかれば、縦方向に成長しようとし、竹の子状の突起を有する皮膜（凹凸超マイクロ粗化皮膜）ができると考えられる。また、竹の子状の突起を有する皮膜の凹凸の大きさは、現行のエッチングによる凹凸の大きさの約１／１０であるため、高周波での表皮効果による電気損失の影響を受けないと考えられる。また、現行技術であるエッチングによる凹凸制御に対し、本発明による凹凸制御は、結晶皮膜による１／１０以下の凹凸超マイクロ粗化皮膜の形成であるので、表面積も飛躍的に向上するばかりか、配線の目減りをほとんどなくすため、密着性を維持向上させながら銅線のファイン化に大きく貢献できる技術であると考えられる。なお、本発明の銅表面の皮膜は、上記皮膜におけるスズの重量を１ｍｇ／ｍ^２以上、２，０００ｍｇ／ｍ^２以下の範囲内とし、かつ上記皮膜の最表面におけるスズに対する銅のモル比を０．２以上、２．０以下の範囲内とすることにより、銅とスズとを効率的に合金化させることができる。また、皮膜重量を前記範囲内に制御することで、良好な密着性を付与することができる。さらに、本発明の銅表面の皮膜は、銅とスズとの合金を含有し、該皮膜中におけるスズ皮膜が樹脂等の絶縁材との密着性に優れているので、銅と樹脂等の絶縁材との密着性を向上させることができる。また、本発明における銅表面の皮膜は、高周波対応およびファイン化対応が可能であり、環境にも優しい技術である。

　ここで、上記特許文献１０には、「樹脂と、銅又は銅合金層とを接着するための、銅又は銅合金からなる対樹脂接着層であって、前記対樹脂接着層は、多数の銅又は銅合金の粒子が集まり且つ粒子間に空隙が存在し、表面においては複数の微細孔が存在したサンゴ状構造の金属層で形成されている」という技術が示されている。これに対して、本発明の銅表面の皮膜は、空隙および微細孔が存在しない竹の子状の突起を有する皮膜（凹凸超マイクロ粗化皮膜）である。本発明における銅表面の皮膜の形状と上記特許文献１０に示されている対樹脂接着層の形状とが異なるのは、皮膜（対樹脂接着層）表面の組成が異なっているからであると考えられる。その結果、本発明における銅表面の皮膜と上記特許文献１０に示されている対樹脂接着層とは、樹脂等の絶縁材との密着性等の効果も異なると考えられる。要するに、本発明における銅表面の皮膜と上記特許文献１０に示されている対樹脂接着層とは、技術的思想が相違していると考えられる。

　また、本発明の銅の表面処理剤は、上記銅表面の皮膜を形成し、スズ化合物と、錯化剤と、ｐＨ調整剤とを含有し、表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が２０ｐｐｍ以上、８，０００ｐｐｍ以下の範囲内であり、表面処理剤全体に対する上記錯化剤の濃度が１０，０００ｐｐｍ以上、３００，０００ｐｐｍ以下の範囲内であり、表面処理剤全体に対する上記ｐＨ調整剤の濃度が１００ｐｐｍ以上、３００，０００ｐｐｍ以下の範囲内であるものである。

　また、本発明の銅の表面処理剤は、下記（ａ）～（ｆ）のいずれか１つの条件を満たしていることが好ましい。
（ａ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が５００ｐｐｍ以下であり、上記錯化剤の濃度が４０，０００ｐｐｍ以上であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が３００ｐｐｍ以上である。
（ｂ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が５００ｐｐｍよりも高く、１，０００ｐｐｍ以下の範囲内であり、上記錯化剤の濃度が４０，０００ｐｐｍ以上であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が３，０００ｐｐｍ以上である。
（ｃ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が１，０００ｐｐｍよりも高く、２，０００ｐｐｍ以下の範囲内であり、上記錯化剤の濃度が４０，０００ｐｐｍ以上であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が２０，０００ｐｐｍ以上である。
（ｄ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が５００ｐｐｍ以下であり、上記錯化剤の濃度が６０，０００ｐｐｍ以上であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が２００ｐｐｍ以上である。
（ｅ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が５００ｐｐｍよりも高く、１，０００ｐｐｍ以下の範囲内であり、上記錯化剤の濃度が６０，０００ｐｐｍ以上であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が５００ｐｐｍ以上である。
（ｆ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が１，０００ｐｐｍよりも高く、２，０００ｐｐｍ以下の範囲内であり、上記錯化剤の濃度が６０，０００ｐｐｍ以上であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が５，０００ｐｐｍ以上である。

　これにより、本発明の銅の表面処理剤は、錯化剤を含有しているので、銅の溶解速度を制御することができる。具体的には、上記銅の表面処理剤を溶液で用いた場合に、上記錯化剤が銅と錯体を形成して銅の表面の電位が低くなるため、銅が反応しやすくなり、スズ化合物と反応する。これにより、スズ化合物中のスズが析出する。その結果、銅とスズとの置換メッキ反応が進行する。さらに、本発明の銅の表面処理剤は、錯化剤を含有しているので、上記表面処理剤の溶液では、上記錯化剤が溶解した銅のキレートを形成することにより、銅とスズとの合金を含有する皮膜の均一性を向上させている可能性がある。また、本発明の銅の表面処理剤は、ｐＨ調整剤を含有しているので、上記表面処理剤の溶液中のｐＨを調整することで錯化剤の働きを助長し、銅の溶解を促進させることができる。具体的には、上記表面処理剤の溶液中におけるｐＨの値が小さいほど錯化剤の働きが活性化され、銅の溶解量が増加する。ｐＨ調整剤の濃度が下限を下回ると、錯化剤の働きが十分には活性化されないおそれがある。ｐＨ調整剤の濃度が上限を超えると、銅の溶解量が過剰となって皮膜中のスズに対する銅の比率が増加し、皮膜の密着性が不十分となるおそれがある。さらには、本発明の銅の表面処理剤は、含有しているスズ化合物などの濃度が低いので、使用後の環境負荷が小さい。

　それゆえ、本発明の銅の表面処理剤は、スズ化合物と錯化剤とｐＨ調整剤とを含有し、それらの濃度のバランスを調整することで、スズおよび銅を含有する皮膜（結晶）を形成することができる。その結果、本発明の銅の表面処理剤は、銅表面の組成を変えることができる。さらに、本発明の銅の表面処理剤は、スズ化合物の濃度が低いほど、銅表面へのスズの析出が銅の溶解に追いつかず、溶解された銅によりスズおよび銅を含有する皮膜を形成しやすい。

　また、本発明の銅の表面処理剤は、さらに金属化合物を含有することが好ましい。

　これにより、本発明の銅の表面処理剤は、金属イオンの緩衝作用により、銅の表面に銅とスズとの合金を含有する皮膜を均一・安定に形成することができると考えられる。

　また、本発明の銅の表面処理剤は、上記金属化合物が銅化合物であり、上記スズ化合物の濃度に対する上記銅化合物の濃度の比が０．２以上、２．０以下の範囲内であることが好ましい。また、本発明の銅の表面処理剤は、上記金属化合物が、さらに銀またはパラジウムを含有することが好ましい。

　また、本発明の銅の表面処理剤は、下記（ｇ）～（ｉ）のいずれか１つの条件を満たしていることが好ましい。
（ｇ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が５００ｐｐｍよりも高く、２，０００ｐｐｍ以下の範囲内であり、上記錯化剤の濃度が４０，０００ｐｐｍ以上であり、銅化合物の濃度が１００ｐｐｍよりも高く、４，０００ｐｐｍ以下の範囲内であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が３００ｐｐｍ以上である。
（ｈ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が２，０００ｐｐｍよりも高く、５，０００ｐｐｍ以下の範囲内であり、上記錯化剤の濃度が４０，０００ｐｐｍ以上であり、上記銅化合物の濃度が４００ｐｐｍよりも高く、１０，０００ｐｐｍ以下の範囲内であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が１，０００ｐｐｍ以上である。
（ｉ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が５，０００ｐｐｍよりも高く、上記錯化剤の濃度が４０，０００ｐｐｍ以上であり、上記銅化合物の濃度が１，０００ｐｐｍ以上であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が２，０００ｐｐｍ以上である。

　これにより、本発明の銅の表面処理剤は、銅化合物を含有しているので、銅イオンを生じる。その結果、銅イオンとスズ化合物との反応が進行する。

　それゆえ、本発明の銅の表面処理剤は、スズ化合物と錯化剤と銅化合物とｐＨ調整剤とを含有し、それらの濃度のバランスを調整することで、銅とスズとの合金を含有する皮膜（結晶）を形成することができる。その結果、本発明の銅の表面処理剤は、銅表面の組成を変えることができる。さらに、本発明の銅の表面処理剤は、銅化合物を含有しているので、ｐＨ調整剤の含有量が少なくても、即ち銅表面からの銅の溶解量が少なくても、銅とスズとの合金を含有する皮膜を形成することができる。

　また、本発明の銅の表面処理剤は、下記（ｊ）または（ｋ）の条件を満たしていることが好ましい。
（ｊ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が２，０００ｐｐｍ以上、５，０００ｐｐｍ未満の範囲内であり、上記錯化剤の濃度が２０，０００ｐｐｍ以上、４０，０００ｐｐｍ未満の範囲内であり、上記銅化合物の濃度が４００ｐｐｍ以上であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が５０，０００ｐｐｍ以上である。
（ｋ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が５，０００ｐｐｍ以上であり、上記錯化剤の濃度が２０，０００ｐｐｍ以上、４０，０００ｐｐｍ未満の範囲内であり、上記銅化合物の濃度が１，０００ｐｐｍ以上であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が５０，０００ｐｐｍ以上である。

　これにより、本発明の銅の表面処理剤は、ｐＨ調整剤の濃度を高くすることに伴い、錯化剤の濃度を低くすることができる。その結果、銅の溶解性がよくなり、銅の表面にスズおよび銅を含有する皮膜を形成する反応を促進させることができる。

　また、本発明の銅の表面処理剤は、上記錯化剤として、少なくともチオ尿素もしくはその誘導体を含有することが好ましい。

　これにより、本発明の銅の表面処理剤は、チオ尿素もしくはその誘導体を含有しているので、チオ尿素もしくはその誘導体が主に錯化剤として働き、銅との錯体を形成して銅表面の電位を下げて還元性を向上させる。さらに、チオ尿素もしくはその誘導体は副次的に還元剤としても働き、銅の表面に、銅とスズとの合金を含有する皮膜を形成する反応を促進させることができる。

　また、本発明の銅の表面処理剤は、上記ｐＨ調整剤として、少なくとも硫酸、硝酸、塩酸、メタンスルホン酸もしくはリン酸を含有することが好ましい。

　これにより、本発明の銅の表面処理剤は、強酸を含有することになり、銅の溶解を促進させやすくなる。

　また、本発明の銅の表面処理剤は、さらにアミノ基、エポキシ基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基、リン酸基、イミノ基およびシラノール基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する水溶性高分子または水分散性高分子を含有することが好ましい。

　これにより、本発明の銅の表面処理剤は、上記官能基を有する水溶性高分子または水分散性高分子が、銅表面に析出したスズと架橋構造を形成し、該スズに抱き込まれる。その結果、本発明の銅の表面処理剤は、上記官能基が樹脂等の絶縁材と水素結合または共有結合を行い、銅と樹脂等の絶縁材との密着性をより一層向上させることができる。

　また、本発明の銅の表面処理剤は、上記水溶性高分子または水分散性高分子の分子量が２，０００以上であることが好ましい。

　これにより、本発明の銅の表面処理剤は、銅と樹脂等の絶縁材との密着性をより効率的に向上させることができる。

　また、本発明の銅の表面処理剤は、上記水溶性高分子がシランカップリング剤であることが好ましい。また、本発明の銅の表面処理剤は、上記シランカップリング剤が３量体以上のシランカップリング剤縮合体を含んでいることが好ましい。

　また、銅と絶縁材との両方に密着性が良好なメルカプトシラン含有シランカップリング剤縮合体を含んでいることが好ましい。

　これにより、本発明の銅の表面処理剤は、銅の表面にシラン化合物を析出（付着）させることができる。それゆえ、樹脂等の絶縁材との密着官能基を有するシラン化合物の作用により、本発明の銅の表面処理剤は、銅と樹脂等の絶縁材との十分な密着性を付与することができる。

　また、本発明の銅の表面処理剤は、上記水溶性高分子として、少なくともポリアクリル酸、またはその誘導体を含有することが好ましい。

　これにより、本発明の銅の表面処理剤は、銅と樹脂等の絶縁材との密着性をより一層向上させることができる。

　また、本発明の銅の表面処理剤は、さらにフッ素化合物を含有していてもよい。

　これにより、本発明の銅の表面処理剤を溶液で用いた場合に、フッ素化合物から遊離したフッ素がスズイオンを安定化する。その安定化のメカニズムは明らかではないが、可能性としては、スズイオンと遊離フッ素とが錯体を形成することにより、濁りの少ない安定な溶液になると考えられる。さらに、本発明の銅の表面処理剤を含む溶液は濁りの少ない安定な溶液となるので、銅の表面に、銅とスズとの合金を含有する皮膜を均一に形成することができ、銅と樹脂等の絶縁材との密着性を向上させることができる。

　また、本発明の銅の表面処理剤は、さらに還元剤を含有することが好ましい。

　これにより、本発明の銅の表面処理剤は、銅の表面に、銅とスズとの合金を含有する皮膜を形成する反応を促進させることができる。

　また、本発明の銅の表面処理剤は、さらに防錆剤を含有することが好ましい。

　これにより、本発明の銅の表面処理剤は、銅と樹脂等の絶縁材との密着性を向上させるとともに、表面処理後に銅を長期間保存しても、銅の性能を変化させ難くすることができる。

　また、本発明の銅の表面処理剤は、上記防錆剤がテトラゾール、トリアゾール、イミダゾールおよびチオールからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であることが好ましい。

　これにより、本発明の銅の表面処理剤は、表面処理後に銅を長期間保存しても、銅の性能をより一層変化させ難くすることができる。

　また、本発明の銅の表面処理方法は、銅の表面に上記銅の表面処理剤を接触させることが好ましい。

　これにより、本発明の銅の表面処理方法は、銅の表面にスズメッキした後に硝酸、シランカップリング剤等で処理する表面処理方法と比較して、処理工程を一工程減らすことができる。また、本発明の銅の表面処理方法は、銅の表面をエッチング等の粗化処理しなくとも十分な密着性を担保できるため、銅の表面を平滑な状態に処理することができる。その結果、本発明の銅の表面処理方法は、多層配線基板の小型化、薄型化、高周波化、高密度化等に対応するのに適している。

　従来公知のシランカップリング剤を利用した密着性の向上は、スズ処理後、シランカップリング剤を塗布して水洗せずに乾燥させ、シロキサン結合によるシラン皮膜を形成するメカニズムである。しかし、配線板等のような構造物は、塗布液が均一に皮膜化することが難しく、また、銅以外のレジスト部にもシラン皮膜がコーティングされるため、実装時に電気導電性、金などのメッキ性に悪影響を及ぼすおそれがある。本発明は、銅のみに反応皮膜を析出させ、その後に水洗するため、上記のような悪影響がない。

　また、本発明の銅の表面処理方法は、銅の表面に酸洗処理、粗化処理（凹凸処理）、防錆処理、酸化処理、表面調整処理および脱脂処理からなる群より選ばれる少なくとも一種の前処理をした後に、上記表面処理剤を接触させることが好ましい。

　これにより、本発明の銅の表面処理方法は、酸洗処理、脱脂処理により銅表面の汚れ、酸化物等を除去することができ、粗化処理、防錆処理、酸化処理、表面調整処理により銅表面での化成性向上、銅の性能向上等を図ることができる。

　また、本発明の銅の表面処理方法は、銅の表面に上記表面処理剤を接触させた後に、防錆剤、後処理剤またはｐＨ調整剤を接触させることが好ましい。

　本発明の銅の表面処理方法は、銅の表面に上記表面処理剤を接触させた後に防錆剤を接触させることにより、表面処理後に銅を長期間保存しても、銅の性能をより一層変化させ難くすることができる。本発明の銅の表面処理方法は、銅の表面に上記表面処理剤を接触させた後に後処理剤、ｐＨ調整剤を接触させることにより、銅と樹脂等の絶縁材との密着性をより一層向上させることができる。

　本発明の銅表面の皮膜は、上記銅の表面処理方法により形成され、スズおよび銅を含有することが好ましい。

　これにより、本発明の銅表面の皮膜は、銅とスズとの合金を含有する。その結果、上述したように、本発明の銅表面の皮膜は、竹の子状の突起を有する皮膜（凹凸超マイクロ粗化皮膜）となり、銅と樹脂等の絶縁材との密着性を向上させることができる。

　本発明の銅表面の皮膜は、銅表面１μｍ^２当たりに、銅とスズとを含有する結晶を１個以上含んでおり、上記結晶の平均結晶径が５０ｎｍ以上、１０００ｎｍ以下の範囲内であることが好ましい。なお、平均結晶径は、Ｘ線小核散乱法による測定で求めた結晶径から算出することができる。

　これにより、本発明の銅表面の皮膜は、銅とスズとを含有する合金を結晶化させ、さらに平均結晶径が５０ｎｍ以上、１０００ｎｍ以下の範囲内である結晶を１個以上含むことで、より確実に竹の子状の突起を有する皮膜（凹凸超マイクロ粗化皮膜）となる。その結果、本発明の銅表面の皮膜は、銅と樹脂等の絶縁材との密着性をより確実に向上させることができる。

　本発明の銅表面の皮膜は、厚さが０．０２μｍ以上、２μｍ以下の範囲内であることが好ましい。

　これにより、本発明の銅表面の皮膜は、より確実にマイクロレベルの凹凸を形成することができる。その結果、本発明の銅表面の皮膜は、銅と樹脂等の絶縁材との密着性をより確実に向上させることができる。

　また、本発明の銅張り材料は、上記銅表面の皮膜を含んでいることが好ましい。さらに、本発明の多層配線基板は、上記銅張り材料を備えていることが好ましい。さらに、本発明の配線基板は、最外層に上記銅張り材料を備えていることが好ましい。

　これにより、本発明の銅張り材料、多層配線基板および配線基板は、従来の銅の表面処理方法により表面処理された銅張り材料、多層配線基板および配線基板と比較して、銅と樹脂等の絶縁材との十分な密着性を維持することが可能となる。

　本発明の銅表面の皮膜は、以上のように、銅とスズとの合金を含有し、銅表面の皮膜におけるスズの重量が１ｍｇ／ｍ^２以上、２，０００ｍｇ／ｍ^２以下の範囲内であり、上記皮膜の最表面における組成のうちの、スズに対する銅のモル比が０．２以上、２．０以下の範囲内であるものである。

　それゆえ、本発明の銅表面の皮膜は、処理工程を増加させることなく、銅の表面をエッチング等の粗化処理することなく平滑な状態に処理することができ、かつ銅と樹脂等の絶縁材との間の密着性を維持することができるという効果を奏する。

本発明における銅の表面処理方法により表面処理された銅のＳＥＭ外観を示す図である。従来の銅の表面処理方法により表面処理された銅のＳＥＭ外観を示す図である。従来の銅の表面処理方法により表面処理された銅のＳＥＭ外観を示す図である。本発明における銅の表面処理方法により表面処理された銅のＳＥＭ外観を示す図である。従来の銅の表面処理方法により表面処理された銅のＳＥＭ外観を示す図である。

　以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更して実施し得るものである。具体的には、本発明は下記の実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。なお、本明細書等において、便宜上、「重量ｐｐｍ」を単に「ｐｐｍ」，「重量％」を単に「％」と記載する。

　（Ｉ）本発明における銅の表面処理剤で表面処理される物質等
　本発明における銅の表面処理剤で表面処理される物質は、銅を５０％以上含有するものであれば特に限定されない。つまり、銅を５０％以上含有していれば、銅以外の物質が含まれていても本発明に含まれる。例えば、銅単体、銅を含む銅合金材、クロメート等の表面処理された銅、メッキされた銅などが挙げられる。

　本発明における銅として、具体的には電子基板、リードフレーム等の電子部品、装飾品、建材等に使用される箔（電解銅箔、圧延銅箔）、めっき膜（無電解銅めっき膜、電解銅めっき膜）、線、棒、管、板など、種々の用途の銅を挙げることができる。上記銅は、黄銅、青銅、白銅、ヒ素銅、ケイ素銅、チタン銅、クロム銅等、その目的に応じて他の元素を含有したものであってもよい。また、近年の高周波の電気信号が流れる銅配線の場合には、銅の表面は平均粗さが０．１μｍ以下の平滑面であることが好ましい。

　本発明において、銅と密着する樹脂等の絶縁材は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、ポリウレタン、ビスマレイミド・トリアジン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、シアネートエステル等の熱硬化性樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂は官能基によって変性されていてもよく、ガラス繊維、アラミド繊維、その他の繊維等で強化されていてもよい。

　（ＩＩ）本発明における銅の表面処理剤に用いられる材料等
　本発明の銅の表面処理剤は、スズ化合物と、錯化剤と、ｐＨ調整剤とを含有するものである。さらに、本発明の銅の表面処理剤は、還元剤を含有することが好ましい。さらに、本発明の銅の表面処理剤は、アミノ基、エポキシ基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基、リン酸基、イミノ基およびシラノール基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する水溶性高分子または水分散性高分子を含有することが好ましい。さらに、本発明の銅の表面処理剤は、フッ素化合物を含有していてもよい。さらに、本発明の銅の表面処理剤は、防錆剤を含有することが好ましい。さらに、本発明の銅の表面処理剤は、金属化合物を含有することが好ましい。また、本発明の銅の表面処理剤は、必要に応じて、添加剤を含有していてもよい。

　また、本発明の銅の表面処理剤は、該表面処理剤の特性を阻害しない限り、上記物質以外の物質（以下、「他の物質」という）を含んでいてもよい。他の物質を含める方法としては、特に限定されるものではない。

　＜スズ化合物＞
　本発明の銅の表面処理剤は、スズ化合物を含有するものである。スズ化合物としては、後述する溶媒に対して可溶性のものであれば特に限定されないが、その溶解性から酸との塩類が好ましい。例えば、硫酸第一スズ、硫酸第二スズ、ホウフッ化第一スズ、フッ化第一スズ、フッ化第二スズ、硝酸第一スズ、硝酸第二スズ、塩化第一スズ、塩化第二スズ、ギ酸第一スズ、ギ酸第二スズ、酢酸第一スズ、酢酸第二スズ等の第一スズ塩や第二スズ塩などが挙げられる。その中でも、スズを含有する皮膜の形成速度が速いという理由から第一スズ塩が好ましく、後述する溶媒との溶液中での安定性が高く、均一なスズを含有する皮膜を形成することができるという理由から、第一スズ塩が好ましい。さらに、銅のエッチングに悪影響を及ぼさないという理由から硫酸第一スズが特に好ましい。

　上記表面処理剤全体（表面処理剤の溶液全体）に対する上記スズ化合物の濃度は、好ましくは１０ｐｐｍ以上、より好ましくは２５ｐｐｍ以上、特に好ましくは１００ｐｐｍ以上である。上記表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が１０ｐｐｍ未満であると、銅および樹脂等の絶縁材との密着性が低下するおそれがあり、好ましくない。なお、上記スズ化合物の濃度の上限については下記で詳述するが、浴の安定性、経済性、および使用後における表面処理液の排水処理の観点から決定され、７０％を超えないことが好ましい。

　＜ｐＨ調整剤＞
　本発明の銅の表面処理剤は、ｐＨ調整剤を含有するものである。ｐＨ調整剤としては、後述する溶媒に対して可溶性のものであれば特に限定されない。酸のｐＨ調整剤としては、無機酸および有機酸から選択される少なくとも１種の酸を使用することができる。本発明で使用することができる酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、ホウフッ化水素酸、リン酸などの無機酸；ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、アクリル酸等のカルボン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等のアルカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸等の芳香族スルホン酸などの有機酸；が挙げられる。その中でも、ｐＨを５以下に調整することができるとの理由から、硫酸、硝酸、塩酸、メタンスルホン酸、リン酸等の強酸が好ましい。なお、上記ｐＨ調整剤の濃度の下限については後述する。また、ｐＨ１以下では、遊離酸として滴定による測定をするほうが正確な濃度を制御できる点で望ましい。

　表面処理剤全体に対する遊離酸の濃度は、次のようにして評価することができる。調製した表面処理剤から１０ｍｌをサンプリングし、ブロモフェノールブルー（試薬）を３滴滴下し、さらに１／１０ＮのＮａＯＨ（試薬）を滴下して、上記表面処理剤の溶液が青色に変色したときの上記ＮａＯＨの量により遊離酸の濃度を評価する。

　上記表面処理剤全体（表面処理剤の溶液全体）に対する上記遊離酸の濃度は、好ましくは２ｍｌ以上２５０ｍｌ以下、より好ましくは３ｍｌ以上１００ｍｌ以下、特に好ましくは５ｍｌ以上３０ｍｌ以下の範囲内である。

　ｐＨ調整剤の濃度の上限は、浴の安定性、経済性、および使用後における表面処理液の排水処理の観点から決定されるが、７０％を超えないことが好ましい。

　＜錯化剤＞
　本発明の銅の表面処理剤は、錯化剤を含有するものである。ここで、本明細書でいう錯化剤とは、銅に配位してキレートを形成し、銅表面の電位を下げ還元しやすいような状態にし、スズ表面に樹脂等の絶縁材密着層を形成しやすくするものを意味する。錯化剤としては、例えば、チオ尿素、エチレンチオウレア、ジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素等のチオ尿素誘導体、チオ硫酸、シアン類などが挙げられる。その中でも、上記表面処理剤を溶液で用いた場合に、より一層濁りの少ない安定な溶液とすることができ、かつ銅との錯体を形成しやすく、銅の表面の電位を低くするためより一層スズおよび銅を含有する皮膜を形成しやすくするという理由から少なくともチオ尿素を含有することが好ましい。なお、錯化剤には、副次的に後述する還元剤としても働くものもある。その中で、チオ尿素は、副次的に後述する還元剤としても働くものである。

　上記表面処理剤全体（表面処理剤の溶液全体）に対する上記錯化剤の濃度は、好ましくは５００，０００ｐｐｍ以下、より好ましくは３００，０００ｐｐｍ以下、さらに好ましくは１５０，０００ｐｐｍ以下、特に好ましくは１００，０００ｐｐｍ以下の範囲内である。上記表面処理剤全体に対する上記錯化剤の濃度が５００，０００ｐｐｍを超えると、銅の溶解性が悪くなり、銅の表面にスズおよび銅を含有する皮膜を形成する反応を阻害するおそれがあり、好ましくない。なお、上記錯化剤の濃度の下限については後述する。

　＜還元剤＞
　本発明の銅の表面処理剤は、還元剤を含有していることが好ましい。還元剤としては、例えば、チオ尿素、ジエチルチオ尿素、水素化ホウ素カリウム、ジメチルアミノボラン、次亜リン酸ナトリウム、ヒドラジン、ホルムアルデヒド等が挙げられる。その中でも、スズ化合物に電子を付加して、スズ単体、酸化スズ等からなるスズを含有する皮膜を形成しやすいという理由から少なくともチオ尿素を含有することが好ましい。

　上記表面処理剤全体（表面処理剤の溶液全体）に対する上記還元剤の濃度は、好ましくは１００ｐｐｍ以上５００，０００ｐｐｍ以下、より好ましくは１，０００ｐｐｍ以上３００，０００ｐｐｍ以下、特に好ましくは１０，０００ｐｐｍ以上１５０，０００ｐｐｍ以下の範囲内である。上記表面処理剤全体に対する上記還元剤の濃度が１００ｐｐｍ未満であると、スズおよび銅を含有する皮膜を形成しないおそれがあり、好ましくない。一方、５００，０００ｐｐｍを超えると、スズが溶解し難くなるとの理由から銅の表面にスズおよび銅を含有する皮膜を形成し難くなるおそれがあり、好ましくない。

　＜水溶性高分子または水分散性高分子＞
　本発明の銅の表面処理剤は、アミノ基、エポキシ基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基、リン酸基、イミノ基およびシラノール基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する水溶性高分子または水分散性高分子を含有していることが好ましい。上記水溶性高分子または水分散性高分子の分子量は、２，０００以上、５００，０００以下であることが好ましく、２０，０００以上であることがより好ましい。水溶性高分子または水分散性高分子の分子量が２，０００未満であると銅表面に析出したスズとの架橋構造が不十分となるおそれがある。水溶性高分子または水分散性高分子の分子量が５００，０００を超えると、結晶形成を阻害するおそれがある。なお、本明細書等において、水溶性高分子または水分散性高分子の分子量とは重量平均分子量を意味する。重量平均分子量の測定は、ポリスチレンを標準とするゲル・パーミエーションクロマトグラフィー（ＧＰＣ）法によって求めることができる。水溶性高分子または水分散性高分子としては、例えば、アミノシラン縮合体、メルカプトシラン縮合体、エポキシシラン縮合体、ポリアクリル酸、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミン樹脂等が挙げられる。その中でも、皮膜結晶物性を阻害し難く、水溶液安定性に優れているという理由から少なくともポリアクリル酸もしくはその誘導体を含有することが好ましい。また、銅とエポキシ樹脂等の絶縁材との密着性を極めて向上させるという理由から少なくともメルカプトシランもしくはその誘導体を含有することが好ましい。

　上記表面処理剤全体（表面処理剤の溶液全体）に対する上記水溶性高分子または水分散性高分子の濃度は、好ましくは１０ｐｐｍ以上１００，０００ｐｐｍ以下、より好ましくは２０ｐｐｍ以上１０，０００ｐｐｍ以下、特に好ましくは５０ｐｐｍ以上２，０００ｐｐｍ以下の範囲内である。上記表面処理剤全体に対する上記水溶性高分子または水分散性高分子の濃度が１０ｐｐｍ未満であると、銅表面に析出しないおそれがあり、好ましくない。一方、１００，０００ｐｐｍを超えると、結晶形成を阻害するおそれがあり、好ましくない。

　＜防錆剤＞
　本発明の銅の表面処理剤は、防錆剤を含有していることが好ましい。防錆剤としては、例えば、アミノテトラゾール、メチルメルカプトテトラゾール、ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、アミノメルカプトトリアゾール、イミダゾール、メチルイミダゾール、トリアジンチオール、トリメルカプトトリアジン若しくはこれらの塩、またはこれらの類似化合物；メルカプトシラン；チオグリコール酸；チオグリセロール；グアニルチオ尿素；チオ尿素類；等が挙げられる。その中でも、銅表面での防錆機能と化成性との両立という理由から、テトラゾール、トリアゾール、イミダゾール、チオール類の防錆剤が好ましい。

　＜金属化合物＞
　本発明の銅の表面処理剤は、金属化合物を含有していることが好ましい。これにより、本発明の銅の表面処理剤は、金属イオンの緩衝作用により、銅の表面に銅とスズとの合金を含有する皮膜を均一・安定に形成することができると考えられる。金属化合物としては、金属塩等が挙げられる。また、金属化合物としては、例えば、アルミニウム化合物、ジルコニル化合物、チタニウム化合物、カルシウム化合物、ナトリウム化合物、マグネシウム化合物、ストロンチウム化合物、マンガン化合物、バナジウム化合物、イットリウム化合物、ニオブ化合物、亜鉛化合物、インジウム化合物、銀化合物、鉄化合物、パラジウム化合物、コバルト化合物、銅化合物等が挙げられる。その中でも、スズと共析出しやすいと考えられ、より緻密なスズ膜を与えるという理由から銀化合物、パラジウム化合物、亜鉛化合物、コバルト化合物、銅化合物が好ましい。さらにその中でも、スズとの合金を形成することができるという理由から銅化合物が特に好ましい。これらの金属化合物は、単独または複数を組み合わせて使用することができる。複数を組み合わせる場合は、銅と銀、または銅とパラジウム、を組み合わせて用いることが好ましい。

　上記表面処理剤全体（表面処理剤の溶液全体）に対する上記金属化合物の濃度は、好ましくは１ｐｐｍ以上１０，０００ｐｐｍ以下、より好ましくは１０ｐｐｍ以上２，０００ｐｐｍ以下、特に好ましくは１００ｐｐｍ以上１，０００ｐｐｍ以下の範囲内である。上記表面処理剤全体に対する上記金属化合物の濃度が１ｐｐｍ未満であると、効果が期待できず、好ましくない。一方、１０，０００ｐｐｍを超えると、銅の表面にスズおよび銅を含有する皮膜を形成する反応を阻害するおそれがあり、好ましくない。

　＜他の物質＞
　本発明の銅の表面処理剤は、樹脂等の絶縁材との均一な密着層を形成するための界面活性剤、樹脂等の絶縁材との密着層の形成を促進するための重合開始剤等、必要に応じて、銅の表面にスズおよび銅を含有する皮膜を形成する反応を阻害しないような種々の添加剤を含有してもよい。

　例えば、本発明の銅の表面処理剤は、フッ素化合物を含有していてもよい。フッ素化合物としては、例えば、フッ化水素、ホウフッ化水素酸、酸性フッ化ナトリウム、酸性フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化アンモニウム、ケイフッ化水素等が挙げられる。その中でも、上記表面処理剤を溶液で用い、ｐＨが０．１以上、５以下の範囲内である場合に、スズイオンが安定的に存在し、より一層濁りの少ない安定な溶液とすることができるという理由からフッ化水素、酸性フッ化ナトリウムが好ましい。

　上記表面処理剤全体（表面処理剤の溶液全体）に対する上記フッ素化合物の濃度は、好ましくは１０ｐｐｍ以上２００，０００ｐｐｍ以下、より好ましくは２５ｐｐｍ以上５０００ｐｐｍ以下、特に好ましくは１００ｐｐｍ以上２０００ｐｐｍ以下の範囲内である。上記表面処理剤全体に対する上記フッ素化合物の濃度が１０ｐｐｍ未満であると、スズイオンが安定化し難いおそれがあり、好ましくない。一方、２００，０００ｐｐｍを超えると、銅の表面にスズを含有する皮膜を形成する反応を阻害するおそれがあり、好ましくない。上記表面処理剤全体に対する上記フッ素化合物の濃度が５，０００ｐｐｍ以下であると、銅の表面に形成されるスズを含有する皮膜が厚くなること、多孔質（ポーラス）になること等で不均一になるおそれがないため、より好ましい。

　上記表面処理剤全体（表面処理剤の溶液全体）に対する上記フッ素化合物に由来する遊離フッ素の濃度は、好ましくは０．１ｐｐｍ以上１００ｐｐｍ以下、より好ましくは１ｐｐｍ以上５０ｐｐｍ以下、特に好ましくは２ｐｐｍ以上２０ｐｐｍ以下の範囲内である。上記表面処理剤全体に対する上記フッ素化合物中の遊離フッ素の濃度が０．１ｐｐｍ未満であると、スズイオンが安定的に存在し難くなるおそれがあり、好ましくない。一方、１００ｐｐｍを超えると、銅の表面にスズを含有する皮膜を形成する反応を阻害するおそれがあり、好ましくない。遊離のフッ素の濃度は、フッ素イオン量として通常のイオンメーターにより測定することができる。

　ここで、遊離フッ素（フッ素イオン）について以下に説明する。本発明における銅の表面処理剤の溶液には、遊離フッ素が存在していることが好ましい。上記遊離フッ素を存在させるには、上記表面処理剤にフッ素化合物を含めておく。上記遊離フッ素は、上記表面処理剤の溶液中におけるスズ化合物の安定性を向上させる作用を有している。さらに、上記遊離フッ素は、上記表面処理剤の溶液による表面処理の対象である銅に対しての上記スズ化合物の反応を促進する作用も有している。

　＜各物質の濃度のバランス＞
　本発明の銅の表面処理剤は、表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が２０ｐｐｍ以上、８，０００ｐｐｍ以下の範囲内であり、表面処理剤全体に対する上記錯化剤の濃度が１０，０００ｐｐｍ以上、３００，０００ｐｐｍ以下の範囲内であり、表面処理剤全体に対する上記ｐＨ調整剤の濃度が１００ｐｐｍ以上、３００，０００ｐｐｍ以下の範囲内であるものである。

　また、本発明の銅の表面処理剤は、上記スズ化合物の濃度に対する上記銅化合物の濃度の比が好ましくは０．２以上２．０以下の範囲内、より好ましくは０．４以上１．２以下の範囲内、特に好ましくは０．７以上１．０以下の範囲内である。上記スズ化合物の濃度に対する上記銅化合物の濃度の比を上記範囲内に制御することで、銅と樹脂等の絶縁材との密着性を向上させることのできる皮膜を長期にわたり安定して形成することが可能である。

　具体的には、本発明の銅の表面処理剤は、下記（ａ）～（ｋ）のいずれか１つの条件を満たしていることが好ましい。
（ａ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が５００ｐｐｍ以下であり、上記錯化剤の濃度が４０，０００ｐｐｍ以上であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が３００ｐｐｍ以上である。ここで、表面処理剤全体に対する遊離酸の濃度は、表面処理剤１０ｍｌをサンプリングし、ブロモフェノールブルー（試薬）を３滴滴下し、さらに１／１０ＮのＮａＯＨ（試薬）を滴下して、表面処理剤の溶液が青色に変色したときの上記ＮａＯＨの量をもって評価できる。前記表面処理剤における遊離酸の濃度は１／１０ＮのＮａＯＨ（試薬）として３．０ｍｌ以上である。
（ｂ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が５００ｐｐｍよりも高く、１，０００ｐｐｍ以下の範囲内であり、上記錯化剤の濃度が４０，０００ｐｐｍ以上であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が３，０００ｐｐｍ以上である。ここで、上記遊離酸の濃度は１／１０ＮのＮａＯＨ（試薬）として２０ｍｌ以上である。
（ｃ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が１，０００ｐｐｍよりも高く、２，０００ｐｐｍ以下の範囲内であり、上記錯化剤の濃度が４０，０００ｐｐｍ以上であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が２０，０００ｐｐｍ以上である。ここで、上記遊離酸の濃度は１／１０ＮのＮａＯＨ（試薬）として１００ｍｌ以上である。
（ｄ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が５００ｐｐｍ以下であり、上記錯化剤の濃度が６０，０００ｐｐｍ以上であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が２００ｐｐｍ以上である。ここで、上記遊離酸の濃度は１／１０ＮのＮａＯＨ（試薬）として１．５ｍｌ以上である。
（ｅ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が５００ｐｐｍよりも高く、１，０００ｐｐｍ以下の範囲内であり、上記錯化剤の濃度が６０，０００ｐｐｍ以上であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が５００ｐｐｍ以上である。ここで、上記遊離酸の濃度は１／１０ＮのＮａＯＨ（試薬）として６．０ｍｌ以上である。
（ｆ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が１，０００ｐｐｍよりも高く、２，０００ｐｐｍ以下の範囲内であり、上記錯化剤の濃度が６０，０００ｐｐｍ以上であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が５，０００ｐｐｍ以上である。ここで、上記遊離酸の濃度は１／１０ＮのＮａＯＨ（試薬）として２０ｍｌ以上である。
（ｇ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が５００ｐｐｍよりも高く、２，０００ｐｐｍ以下の範囲内であり、上記錯化剤の濃度が４０，０００ｐｐｍ以上であり、銅化合物の濃度が１００ｐｐｍよりも高く、４，０００ｐｐｍ以下の範囲内であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が３００ｐｐｍ以上である。
（ｈ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が２，０００ｐｐｍよりも高く、５，０００ｐｐｍ以下の範囲内であり、上記錯化剤の濃度が４０，０００ｐｐｍ以上であり、上記銅化合物の濃度が４００ｐｐｍよりも高く、１０，０００ｐｐｍ以下の範囲内であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が１，０００ｐｐｍ以上である。
（ｉ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が５，０００ｐｐｍよりも高く、上記錯化剤の濃度が４０，０００ｐｐｍ以上であり、上記銅化合物の濃度が１，０００ｐｐｍ以上であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が２，０００ｐｐｍ以上である。
（ｊ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が２，０００ｐｐｍ以上、５，０００ｐｐｍ未満の範囲内であり、上記錯化剤の濃度が２０，０００ｐｐｍ以上、４０，０００ｐｐｍ未満の範囲内であり、上記銅化合物の濃度が４００ｐｐｍ以上であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が５０，０００ｐｐｍ以上である。
（ｋ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が５，０００ｐｐｍ以上であり、上記錯化剤の濃度が２０，０００ｐｐｍ以上、４０，０００ｐｐｍ未満の範囲内であり、上記銅化合物の濃度が１，０００ｐｐｍ以上であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が５０，０００ｐｐｍ以上である。

　本発明の銅の表面処理剤は、上記（ａ）～（ｆ）のいずれか１つの条件を満たしていることで、スズおよび銅を含有する皮膜を形成することができる。さらに、本発明の銅の表面処理剤は、スズ化合物の濃度が低いほど、銅表面へのスズの析出が銅の溶解に追いつかず、溶解された銅によりスズおよび銅を含有する皮膜を形成しやすい。

　また、本発明の銅の表面処理剤は、上記（ｇ）～（ｉ）のいずれか１つの条件を満たしていることで、銅とスズとの合金を含有する皮膜を形成することができる。さらに、本発明の銅の表面処理剤は、ｐＨ調整剤の含有量が少なくても、即ち銅表面からの銅の溶解量が少なくても、銅とスズとの合金を含有する皮膜を形成することができる。

　また、本発明の銅の表面処理剤は、上記（ｊ）または（ｋ）の条件を満たしていることで、ｐＨ調整剤の濃度を高くすることに伴い、錯化剤の濃度を低くすることができる。その結果、銅の溶解性がよくなり、銅の表面にスズおよび銅を含有する皮膜を形成する反応を促進させることができる。

　（ＩＩＩ）本発明における銅の表面処理剤の製造方法
　本発明の銅の表面処理剤は、従来公知の混合方法・混合装置により混合される。本発明の銅の表面処理剤に含有される物質を混合する順番は、特に限定されない。また、上記物質は、一度に混合してもよく、分割して混合してもよい。

　（ＩＶ）本発明における銅の表面処理剤を含む溶液
　本発明における銅の表面処理方法は、銅の表面に、上記表面処理剤を溶液として接触させることが好ましい。上記溶液は、溶質である上記表面処理剤と溶媒とから構成される。本発明に用いられる溶媒は、上記表面処理剤を溶解することができれば特に限定されない。例えば、水、有機溶媒などが挙げられる。その中でも、上記表面処理剤の組成物の溶解性や上記表面処理剤使用後の廃棄などの点で、水が好ましい。本発明における銅の表面処理剤は、従来の銅の表面処理剤と比較して、銅の表面をエッチング等の粗化処理しないという点で優れている。

　（Ｖ）本発明における銅の表面処理方法
　本発明における銅の表面処理方法は、銅表面に銅とスズとの合金を含有する皮膜を形成し、上記皮膜におけるスズの重量を１ｍｇ／ｍ^２以上、２，０００ｍｇ／ｍ^２以下の範囲内、好ましくは２０ｍｇ／ｍ^２以上、２，０００ｍｇ／ｍ^２以下の範囲内とし、上記皮膜の最表面におけるスズに対する銅のモル比を０．２以上、２．０以下の範囲内とする方法である。

　銅とスズとの合金は、銅を６％以上、スズを１０％以上含有するものであれば特に限定されない。つまり、銅を６％以上、スズを１０％以上含有していれば、銅およびスズ以外の物質が含まれていても本発明に含まれる。

　上記皮膜におけるスズの重量は、１ｍｇ／ｍ^２以上２，０００ｍｇ／ｍ^２以下の範囲内であり、好ましくは２０ｍｇ／ｍ^２以上２，０００ｍｇ／ｍ^２以下、より好ましくは５０ｍｇ／ｍ^２以上１，５００ｍｇ／ｍ^２以下、特に好ましくは１０ｍｇ／ｍ^２以上１，０００ｍｇ／ｍ^２以下の範囲内である。

　上記皮膜の最表面におけるスズに対する銅のモル比は、０．２以上２．０以下の範囲内であり、好ましくは０．４以上１．６以下、より好ましくは０．５以上１．２以下の範囲内である。

　本発明における銅の表面処理方法は、銅とスズとの合金が銅の表面に生じる空隙および微細孔を埋めて、竹の子状の突起を有する皮膜（凹凸超マイクロ粗化皮膜）を形成する。ここで、マイクロ粗化とは、マイクロレベルの凹凸を有する状態をいう。

　また、本発明の銅の表面処理方法は、銅の表面に上記表面処理剤を接触させることが好ましい。

　銅の表面に上記表面処理剤を接触させる方法としては特に限定されない。例えば、上記表面処理剤を含む溶液に銅を浸漬させる方法、銅の表面に上記表面処理剤を含む溶液をスプレーによって噴射する方法、銅の表面に上記表面処理剤を含む溶液を塗布する方法等が挙げられる。その中でも、銅表面での上記表面処理剤を含む溶液の置換が早い方が好ましいとの理由から、上記表面処理剤を含む溶液に銅を浸漬させて強攪拌を行う方法、銅表面に上記表面処理剤を含む溶液をスプレーによって噴射する方法等が好ましい。なお、上記表面処理剤を含む溶液を攪拌する場合には、例えば５０ｒｐｍ以上、３０００ｒｐｍ以下の範囲内で攪拌することが好ましい。また、上記表面処理剤は、一度に接触させてもよく、分割して接触させてもよい。

　銅の表面に上記表面処理剤を接触させる際の温度は、上記表面処理剤の成分等によって決まり特に限定されるものではないが、反応性に優れているとの理由から、好ましくは１０℃以上６０℃以下、より好ましくは２０℃以上５０℃以下、特に好ましくは３０℃以上４０℃以下の範囲内である。

　銅の表面に上記表面処理剤を接触させる時間は、上記表面処理剤の成分等によって決まり特に限定されるものではないが、反応性に優れているとの理由から、好ましくは１秒以上６００秒以下、より好ましくは５秒以上３００秒以下、さらに好ましくは１５秒以上１８０秒以下、さらにより好ましくは６０秒以上１８０秒以下、特に好ましくは６０秒以上１２０秒以下の範囲内である。

　本発明における銅の表面処理方法は、銅の表面に上記表面処理剤を接触させる前に、酸洗処理、粗化処理、防錆処理、酸化処理および脱脂処理からなる群より選ばれる少なくとも一種の前処理を行ってもよい。また、本発明における銅の表面処理方法は、銅の表面に上記表面処理剤を接触させた後に、さらに上記表面処理剤等により後処理してもよい。上記後処理後には、水洗してから乾燥させても、水洗せずに乾燥させてもよい。また、本発明における銅の表面処理方法は、銅の表面に上記表面処理剤を接触させた後に、熱処理等を行ってもよい。また、本発明における銅の表面処理方法は、銅の表面に上記表面処理剤を接触させた後に、防錆剤、後処理剤またはｐＨ調整剤を接触させてもよい。

　後処理剤としては、例えば、メルカプトシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、スチリルシラン、メタクリロキシシラン、アクリロキシシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、クロロプロピルシラン、スルフィドシラン、イソシアネートシラン等のシランカップリング剤およびそれらの混合物、シランカップリング剤縮合物およびそれらの混合物、上記の少なくとも一種の官能基を有する水溶性高分子が好ましい。後処理方法としては、化成処理後、後処理剤をスプレー、浸漬、コーティング等により接触させ、その後水洗するまたは水洗せずに乾燥することにより、コーティング膜を形成してもよい。

　（ＶＩ）本発明における銅表面の皮膜
　本発明における銅表面の皮膜は、銅とスズとの合金を含有し、銅表面の皮膜におけるスズの重量が１ｍｇ／ｍ^２以上、２，０００ｍｇ／ｍ^２以下の範囲内、好ましくは２０ｍｇ／ｍ^２以上、２，０００ｍｇ／ｍ^２以下の範囲内であり、上記皮膜の最表面におけるスズに対する銅のモル比が０．２以上、２．０以下の範囲内であるものである。

　ここで、皮膜の最表面とは、皮膜表面の極めて薄い層を意味し、具体的には皮膜表面から約１０ｎｍまでの深さの層を意味する。皮膜の最表面におけるスズや銅の組成は、ナロースキャンによって測定することができる。

　また、本発明における銅表面の皮膜は、上記銅の表面処理方法により形成され、スズおよび銅を含有することが好ましい。

　また、本発明における銅表面の皮膜は、銅表面１μｍ^２当たりに、銅とスズとを含有する結晶を、好ましくは１個以上、より好ましくは１０個以上含んでいる。上記結晶の平均結晶径は、５０ｎｍ以上１，０００ｎｍ以下、好ましくは１００ｎｍ以上５００ｎｍ以下の範囲内である。銅表面１μｍ^２当たりの銅とスズとを含有する結晶の個数はＳＥＭ観察により数えることができ、平均結晶径はＸ線小核散乱法による測定で求めた結晶径から算出することができる。

　また、本発明における銅表面の皮膜は、厚さが、好ましくは０．０２μｍ以上２μｍ以下、より好ましくは０．０４μｍ以上１μｍ以下、特に好ましくは０．０６μｍ以上０．２μｍ以下の範囲内である。

　（ＶＩＩ）本発明における銅張り材料
　本発明の銅張り材料は、上記銅の表面処理方法により表面処理されてなるものであり、上記銅表面の皮膜を含んでいる。

　上記銅の表面処理方法により表面処理される前の銅張り材料としては、一般的な電子基板、リードフレーム等の電子部品、装飾品、建材等を挙げることができる。本発明の銅張り材料は、銅の表面全体が上記表面処理方法により表面処理されているものに限定されず、銅の表面の一部が上記表面処理方法により表面処理されているものも本発明に含まれる。

　（ＶＩＩＩ）本発明における多層配線基板
　本発明の多層配線基板（ビルドアップ配線基板）は、上記銅張り材料を備えているものである。本発明の多層配線基板は、従来公知の多層配線基板の製造方法により製造されるものである。具体的には、表面部が銅からなる導電層を有する内層基板が、樹脂等の絶縁材を挟んで他の内層基板と積層プレスされることにより製造される。多層配線基板（ビルドアップ配線基板）には、一括ラミネーション方式のビルドアップ基板と、シーケンシャルビルドアップ方式のビルドアップ基板とがある。

　本発明における多層配線基板には、最外層に上記銅張り材料を備えている外層基板および単層基板を含む。また、上記外層基板には、最外層面に上記銅張り材料を片面または両面に備えている片面または両面の外層基板を含む。

　以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。

　〔実施例１〕
　＜銅の表面処理工程＞
　厚さ３５μｍまたは１８μｍの電解銅箔（古河サーキットフォイル株式会社製、商品名：「Ｆ－ＷＳ箔」）を、水道水で希釈した硫酸および過酸化水素の水溶液（硫酸の濃度４％、過酸化水素の濃度１％）に３０℃・６０秒の条件で浸漬させた後、水道水で洗浄した。

　次に、上記処理を行った電解銅箔を、所定の表面処理剤（成分等については後述する）の溶液に４０℃・６０秒の条件で浸漬させた後、水道水で洗浄し、８０℃・５分の条件で乾燥させた。

　＜所定の表面処理剤の成分等＞
　上記所定の表面処理剤には、スズ化合物としての硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５００ｐｐｍ、試薬）と、錯化剤としてのチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：４％、試薬）と、ｐＨ調整剤としての硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ、試薬）と、フッ素化合物としてのフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５００ｐｐｍ、試薬）とを含めた。ここで、ｐＨメーター（株式会社堀場製作所製、商品名「Ｆ－２１」）によりｐＨを測定したところ、ｐＨは２．０であった。また、上記表面処理剤１０ｍｌをサンプリングし、ブロモフェノールブルー（試薬）を３滴滴下し、さらに１／１０ＮのＮａＯＨ（試薬）を滴下して遊離酸の濃度を測定したところ、上記表面処理剤の溶液が青色に変色したときの上記ＮａＯＨの量は２．７ｍｌであった。

　＜多層配線基板製造工程＞
　得られた電解銅箔と樹脂等の絶縁材との密着性を評価するため、上記電解銅箔の両面にビルドアップ配線板用絶縁材［Ａ材（日立化成工業株式会社製、ＦＲ－５）、Ｂ材（松下電工株式会社製、Ｒ－１６６１Ｔ）、Ｃ材（味の素株式会社製、パッケージ用絶縁材ＡＧＦ－ＧＸ１３）］を重ねて、１５０℃・２０ｋｇ／ｍ^２→１５０℃・３０ｋｇ／ｍ^２・０．５時間→１８０℃・３０ｋｇ／ｍ^２・１．５時間の条件で加熱しながら積層プレスし、その後に、８０℃・１．５時間の条件で冷却した。その後プレスを終了し、２０℃・２０分間の条件で冷却した。また、Ａ材およびＢ材は３５μｍ銅箔で測定し、Ｃ材は絶縁材の密着性が高いため、１８μ銅箔で測定した。

　＜銅の表面処理後の物性＞
　（１）銅の表面処理後における電解銅箔のエッチング量
　銅の表面処理後における電解銅箔のエッチング量は、精密天秤により、エッチング前後の重量変化を測定して求めた。その結果、エッチング量が０．１ｇ／ｍ^２未満である状態を「○」とし、０．１ｇ／ｍ^２以上１ｇ／ｍ^２以下である状態を「△」とし、１ｇ／ｍ^２を超える状態を「×」とした。

　（２）銅の表面処理後における電解銅箔のＳＥＭ外観
　銅の表面処理後における電解銅箔の外観は、ＳＥＭ（Scanning Electron Microscope、日本電子株式会社製、商品名：「ＪＳＭ５３１０」）により、倍率を１０００倍および５０００倍にして目視にて評価した。その結果、凹凸がない（平坦な）状態を「○」とし、凹凸がある状態を「×」とした。

　（３）銅の表面処理後における電解銅箔のスズの皮膜量
　銅の表面処理後における電解銅箔のスズの皮膜量は、蛍光Ｘ線（株式会社島津製作所製、商品名：「ＸＲＦ１７００」）による測定により、スズ元素の量として測定した。

　（４）銅表面の皮膜の組成
　銅表面の皮膜における最表面の組成は、Ｃｕ，Ｓｎ，Ｃ，Ｏ，Ｓのナロースキャン（Kratos Analytical Ltd.(クレイトス　アナリティカル　リミテッド)製、商品名：「ＡＸＩＳ　ＮＯＶＡ」）により、ａｔｏｍｉｃ％を測定しモル比に換算した。上記測定は、約１０ｎｍの表面組成分析ができるため、最表面組成とした。

　（５）銅の表面処理後における電解銅箔を備えた多層配線基板での銅箔と樹脂等の絶縁材との密着性
　多層配線基板の銅箔と樹脂等の絶縁材との密着性、即ち多層配線基板における絶縁材からの銅箔の引き剥がし強さは、万能試験機（株式会社エー・アンド・デイ製、商品名：「テンシロン」）により、ＪＩＳ　Ｃ　６４８１に準拠してロードセル１００ｋｇ／ｍ^２、レンジ２％、クロスヘッドスピード５０ｍｍ／ｍｉｎ、チャートスピード２０ｍｍ／ｍｉｎの条件で測定した。なお、絶縁材としてＡ材またはＢ材を用いた場合には銅箔として厚さ３５μｍのものを用い、絶縁材としてＣ材を用いた場合には銅箔として厚さ１８μｍのものを用いた。

　（６）はんだ耐熱性
　はんだ耐熱性は、銅の表面処理後における電解銅箔を、１２１℃　１００ＲＨ　２．１ａｔｍで８時間吸湿した後、「２８０℃のはんだ浴に３０秒間浸漬→冷却」のサイクルを５回繰り返し、膨れを目視にて評価した。その結果、膨れがない状態を「○」とし、膨れがわずかにある状態を「△」とし、膨れがある状態を「×」とした。

　（７）上記物性の評価結果
　上記物性の評価結果を表１に示す。

　また、図１は、実施例１における銅表面のＳＥＭ外観を示したものである。ここで、図１の（ａ）は倍率３０，０００、図１の（ｂ）は倍率５０，０００、図１の（ｃ）は倍率１５０，０００での銅表面のＳＥＭ外観である。図１に示すように、本発明の銅の表面処理剤により表面処理を行った銅は、マイクロ粗化の状態であった。

　これに対して、図２は、前処理として硫酸・過酸化水素の水溶液（従来の銅の表面処理剤）により表面処理を行った後の銅表面のＳＥＭ外観を示したものである。ここで、図２の（ａ）は倍率３０，０００、図２の（ｂ）は倍率５０，０００での銅表面のＳＥＭ外観である。また、図３は、スズ化合物を含有する銅の表面処理剤（従来の銅の表面処理剤）により表面処理を行った銅表面のＳＥＭ外観を示したものである。ここで、図３の（ａ）は倍率３０，０００、図３の（ｂ）は倍率５０，０００での銅表面のＳＥＭ外観である。

　また、図４は、実施例１における銅断面のＳＥＭ外観を示したものである。ここで、図４の（ａ）は倍率５，０００、図４の（ｂ）は倍率５０，０００での銅断面のＳＥＭ外観である。図４に示すように、本発明の銅の表面処理剤により表面処理を行った銅の断面は、竹の子状の突起が認められた。

　これに対して、図５は、スズ化合物を含有する銅の表面処理剤（従来の銅の表面処理剤）により表面処理を行った銅断面のＳＥＭ外観を示したものである。ここで、図５の（ａ）は倍率５，０００、図５の（ｂ）は倍率５０，０００での銅断面のＳＥＭ外観である。

　また、実施例１における銅表面の皮膜の表面組成をＸ線光電子分光（X-ray photoelectron spectroscopy）により分析した結果、スズが約２９％であり、銅が約１７％であった。

　これに対して、スズ化合物を含有する銅の表面処理剤（従来の銅の表面処理剤）により表面処理を行った銅表面の皮膜の表面組成をＸ線光電子分光により分析した結果、スズが約２６％であり、銅が約５％であった。

　〔実施例２〕
　所定の表面処理剤に含まれるｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：５００ｐｐｍ）に変更したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。

　上記物性の評価結果を表１に示す。ここで、表面処理剤のｐＨは１．８、遊離酸濃度（１／１０Ｎ　ＮａＯＨ滴定量）は３．３ｍｌであった。

　〔実施例３〕
　所定の表面処理剤に含まれるｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：２，０００ｐｐｍ）に変更したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。

　上記物性の評価結果を表１に示す。ここで、表面処理剤のｐＨは１．３、遊離酸濃度（１／１０Ｎ　ＮａＯＨ滴定量）は６．０ｍｌであった。

　〔実施例４〕
　所定の表面処理剤に含まれるｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：５，０００ｐｐｍ）に変更したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。

　上記物性の評価結果を表１に示す。ここで、表面処理剤のｐＨは１．１、遊離酸濃度（１／１０Ｎ　ＮａＯＨ滴定量）は１２．３ｍｌであった。

　〔実施例５〕
　所定の表面処理剤に含まれるｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：１０，０００ｐｐｍ）に変更したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。

　上記物性の評価結果を表１に示す。ここで、表面処理剤のｐＨは０．８、遊離酸濃度（１／１０Ｎ　ＮａＯＨ滴定量）は２４．８ｍｌであった。

　〔実施例６〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物を硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５００ｐｐｍ）から硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：１，０００ｐｐｍ）に変更し、フッ素化合物をフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５００ｐｐｍ）からフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：１，０００ｐｐｍ）に変更し、ｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３，０００ｐｐｍ）に変更したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。

　上記物性の評価結果を表１に示す。ここで、表面処理剤のｐＨは１．３、遊離酸濃度（１／１０Ｎ　ＮａＯＨ滴定量）は１０．０ｍｌであった。

　〔実施例７〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物を硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５００ｐｐｍ）から硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：１，０００ｐｐｍ）に変更し、フッ素化合物をフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５００ｐｐｍ）からフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：１，０００ｐｐｍ）に変更し、ｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：１０，０００ｐｐｍ）に変更したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。

　上記物性の評価結果を表１に示す。ここで、表面処理剤のｐＨは０．８、遊離酸濃度（１／１０Ｎ　ＮａＯＨ滴定量）は２６．２ｍｌであった。

　〔実施例８〕
　所定の表面処理剤に含まれる錯化剤をチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：４％）からチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：６％）に変更し、ｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：２００ｐｐｍ）に変更したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。

　上記物性の評価結果を表１に示す。ここで、表面処理剤のｐＨは２．０、遊離酸濃度（１／１０Ｎ　ＮａＯＨ滴定量）は２．６ｍｌであった。

　〔実施例９〕
　所定の表面処理剤に含まれる錯化剤をチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：４％）からチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：６％）に変更し、ｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：１，０００ｐｐｍ）に変更したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。

　上記物性の評価結果を表１に示す。ここで、表面処理剤のｐＨは１．６、遊離酸濃度（１／１０Ｎ　ＮａＯＨ滴定量）は４．３ｍｌであった。

　〔実施例１０〕
　所定の表面処理剤に含まれる錯化剤をチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：４％）からチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：６％）に変更し、ｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：２，０００ｐｐｍ）に変更したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。

　上記物性の評価結果を表１に示す。ここで、表面処理剤のｐＨは１．３、遊離酸濃度（１／１０Ｎ　ＮａＯＨ滴定量）は６．３ｍｌであった。

　〔実施例１１〕
　所定の表面処理剤に含まれる錯化剤をチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：４％）からチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：６％）に変更し、ｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：５，０００ｐｐｍ）に変更したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。

　上記物性の評価結果を表１に示す。ここで、表面処理剤のｐＨは１．１、遊離酸濃度（１／１０Ｎ　ＮａＯＨ滴定量）は１３．９ｍｌであった。

　〔実施例１２〕
　所定の表面処理剤に含まれる錯化剤をチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：４％）からチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：６％）に変更し、ｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：１０，０００ｐｐｍ）に変更したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。

　上記物性の評価結果を表１に示す。ここで、表面処理剤のｐＨは０．８、遊離酸濃度（１／１０Ｎ　ＮａＯＨ滴定量）は２５．１ｍｌであった。

　〔実施例１３〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物を硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５００ｐｐｍ）から硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５０ｐｐｍ）に変更し、フッ素化合物をフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５００ｐｐｍ）からフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５０ｐｐｍ）に変更し、錯化剤をチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：４％）からチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：６％）に変更し、ｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：１０，０００ｐｐｍ）に変更したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。

　上記物性の評価結果を表１に示す。ここで、表面処理剤のｐＨは０．９、遊離酸濃度（１／１０Ｎ　ＮａＯＨ滴定量）は２２．１ｍｌであった。

　〔実施例１４〕
　所定の表面処理剤に含まれるｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：５，０００ｐｐｍ）に変更し、さらに水溶性高分子としてのポリアクリル酸（分子量２，０００，０００、表面処理剤全体に対するポリアクリル酸の濃度：１，０００ｐｐｍ）を添加したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。

　上記物性の評価結果を表１に示す。ここで、表面処理剤のｐＨは１．１、遊離酸濃度（１／１０Ｎ　ＮａＯＨ滴定量）は１２．５ｍｌであった。

　〔実施例１５〕
　所定の表面処理剤に含まれるｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：５，０００ｐｐｍ）に変更し、さらに水溶性高分子としてのポリアクリル酸（分子量２０，０００、表面処理剤全体に対するポリアクリル酸の濃度：１，０００ｐｐｍ）を添加したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。

　上記物性の評価結果を表１に示す。ここで、表面処理剤のｐＨは１．０、遊離酸濃度（１／１０Ｎ　ＮａＯＨ滴定量）は１２．８ｍｌであった。

　〔実施例１６〕
　所定の表面処理剤に含まれるｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：５，０００ｐｐｍ）に変更し、さらに水溶性高分子としてのエポキシシラン（表面処理剤全体に対するエポキシシランの濃度：１，０００ｐｐｍ、信越化学工業株式会社製、商品名：「ＫＢＭ４０３」）を添加したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。

　〔実施例１７〕
　所定の表面処理剤に含まれる錯化剤をチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：４％）からジエチルチオ尿素（表面処理剤全体に対するジエチルチオ尿素の濃度：５％）に変更し、ｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：５００ｐｐｍ）に変更したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。

　〔実施例１８〕
　所定の表面処理剤に含まれるｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）からメタンスルホン酸（表面処理剤全体に対するメタンスルホン酸の濃度：５，０００ｐｐｍ）に変更したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。

　〔実施例１９〕
　所定の表面処理剤に含まれるｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：５，０００ｐｐｍ）に変更し、フッ素化合物としてのフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５００ｐｐｍ）を添加しなかったこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。

　〔実施例２０〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物を硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５００ｐｐｍ）から硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：１，０００ｐｐｍ）に変更し、フッ素化合物をフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５００ｐｐｍ）からフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：１，０００ｐｐｍ）に変更し、さらに金属化合物としての硫酸銅（表面処理剤全体に対する硫酸銅の濃度：５００ｐｐｍ）を添加したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った（表面処理剤中の上記スズ化合物の濃度に対する上記銅化合物の濃度の比は０．５であった）。

　上記物性の評価結果を表１に示す。ここで、表面処理剤のｐＨは１．３、遊離酸濃度（１／１０Ｎ　ＮａＯＨ滴定量）は２．９ｍｌであった。

　〔実施例２１〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物を硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５００ｐｐｍ）から硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：３，０００ｐｐｍ）に変更し、フッ素化合物をフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５００ｐｐｍ）からフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：３，０００ｐｐｍ）に変更し、ｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：１，０００ｐｐｍ）に変更し、さらに金属化合物としての硫酸銅（表面処理剤全体に対する硫酸銅の濃度：１，５００ｐｐｍ）を添加したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った（表面処理剤中の上記スズ化合物の濃度に対する上記銅化合物の濃度の比は０．５であった）。

　上記物性の評価結果を表１に示す。ここで、表面処理剤のｐＨは１．０、遊離酸濃度（１／１０Ｎ　ＮａＯＨ滴定量）は４．５ｍｌであった。

　〔実施例２２〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物を硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５００ｐｐｍ）から硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：６，０００ｐｐｍ）に変更し、フッ素化合物をフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５００ｐｐｍ）からフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：６，０００ｐｐｍ）に変更し、ｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：２，０００ｐｐｍ）に変更し、さらに金属化合物としての硫酸銅（表面処理剤全体に対する硫酸銅の濃度：３，０００ｐｐｍ）を添加したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った（表面処理剤中の上記スズ化合物の濃度に対する上記銅化合物の濃度の比は０．５であった）。

　上記物性の評価結果を表１に示す。ここで、表面処理剤のｐＨは１．０、遊離酸濃度（１／１０Ｎ　ＮａＯＨ滴定量）は８．８ｍｌであった。

　〔実施例２３〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物を硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５００ｐｐｍ）から硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：１，０００ｐｐｍ）に変更し、フッ素化合物をフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５００ｐｐｍ）からフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：１，０００ｐｐｍ）に変更し、さらに金属化合物としての硫酸銅（表面処理剤全体に対する硫酸銅の濃度：２００ｐｐｍ）を添加したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った（表面処理剤中の上記スズ化合物の濃度に対する上記銅化合物の濃度の比は０．２であった）。

　〔実施例２４〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物を硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５００ｐｐｍ）から硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：１，０００ｐｐｍ）に変更し、フッ素化合物をフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５００ｐｐｍ）からフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：１，０００ｐｐｍ）に変更し、ｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）からメタンスルホン酸（表面処理剤全体に対するメタンスルホン酸の濃度：１００，０００ｐｐｍ）に変更し、さらに金属化合物としての硫酸銅（表面処理剤全体に対する硫酸銅の濃度：２，０００ｐｐｍ）を添加したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った（表面処理剤中の上記スズ化合物の濃度に対する上記銅化合物の濃度の比は２であった）。

　上記物性の評価結果を表１に示す。ここで、表面処理剤のｐＨは０．５以下、遊離酸濃度（１／１０Ｎ　ＮａＯＨ滴定量）は１００ｍｌ以上であった。

　〔実施例２５〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物を硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５００ｐｐｍ）から硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：２，０００ｐｐｍ）に変更し、錯化剤をチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：４％）からチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：３％）に変更し、ｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：１００，０００ｐｐｍ）に変更し、さらに金属化合物としての硫酸銅（表面処理剤全体に対する硫酸銅の濃度：４００ｐｐｍ）を添加し、フッ素化合物としてのフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５００ｐｐｍ）を添加しなかったこと以外は、実施例１と同様の操作を行った（表面処理剤中の上記スズ化合物の濃度に対する上記銅化合物の濃度の比は０．２であった）。

　〔実施例２６〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物を硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５００ｐｐｍ）から硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：２，０００ｐｐｍ）に変更し、錯化剤をチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：４％）からチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：３％）に変更し、ｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：１００，０００ｐｐｍ）に変更し、さらに金属化合物としての硫酸銅（表面処理剤全体に対する硫酸銅の濃度：４００ｐｐｍ）および硝酸銀（表面処理剤全体に対する硝酸銀の濃度：１００ｐｐｍ）を添加し、フッ素化合物としてのフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５００ｐｐｍ）を添加しなかったこと以外は、実施例１と同様の操作を行った（表面処理剤中の上記スズ化合物の濃度に対する上記銅化合物の濃度の比は０．２であった）。

　〔実施例２７〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物を硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５００ｐｐｍ）から硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：２，０００ｐｐｍ）に変更し、錯化剤をチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：４％）からチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：３％）に変更し、ｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：１００，０００ｐｐｍ）に変更し、さらに金属化合物としての硫酸銅（表面処理剤全体に対する硫酸銅の濃度：４００ｐｐｍ）および還元剤としての次亜リン酸ナトリウム（表面処理剤全体に対する次亜リン酸ナトリウムの濃度：２，０００ｐｐｍ）を添加し、フッ素化合物としてのフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５００ｐｐｍ）を添加しなかったこと以外は、実施例１と同様の操作を行った（表面処理剤中の上記スズ化合物の濃度に対する上記銅化合物の濃度の比は０．２であった）。

　〔実施例２８〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物を硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５００ｐｐｍ）から硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：２，０００ｐｐｍ）に変更し、錯化剤をチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：４％）からチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：３％）に変更し、ｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：１００，０００ｐｐｍ）に変更し、さらに金属化合物としての硫酸銅（表面処理剤全体に対する硫酸銅の濃度：４００ｐｐｍ）および防錆剤としてのチオグリセロール（表面処理剤全体に対するチオグリセロールの濃度：５，０００ｐｐｍ）を添加し、フッ素化合物としてのフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５００ｐｐｍ）を添加しなかったこと以外は、実施例１と同様の操作を行った（表面処理剤中の上記スズ化合物の濃度に対する上記銅化合物の濃度の比は０．２であった）。

　〔実施例２９〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物を硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５００ｐｐｍ）から硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：２，０００ｐｐｍ）に変更し、錯化剤をチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：４％）からチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：３％）に変更し、ｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）からメタンスルホン酸（表面処理剤全体に対するメタンスルホン酸の濃度：１００，０００ｐｐｍ）に変更し、さらに金属化合物としての硫酸銅（表面処理剤全体に対する硫酸銅の濃度：４００ｐｐｍ）を添加し、フッ素化合物としてのフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５００ｐｐｍ）を添加しなかったこと以外は、実施例１と同様の操作を行った（表面処理剤中の上記スズ化合物の濃度に対する上記銅化合物の濃度の比は０．２であった）。

　〔実施例３０〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物を硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５００ｐｐｍ）から硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：２，０００ｐｐｍ）に変更し、錯化剤をチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：４％）からチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：３％）に変更し、ｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：１００，０００ｐｐｍ）に変更し、さらに金属化合物としての硫酸銅（表面処理剤全体に対する硫酸銅の濃度：４００ｐｐｍ）および水溶性高分子としてのポリアクリル酸（分子量２０，０００、表面処理剤全体に対するポリアクリル酸の濃度：１，０００ｐｐｍ）を添加し、フッ素化合物としてのフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５００ｐｐｍ）を添加しなかったこと以外は、実施例１と同様の操作を行った（表面処理剤中の上記スズ化合物の濃度に対する上記銅化合物の濃度の比は０．２であった）。

　〔実施例３１〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物を硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５００ｐｐｍ）から硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５，０００ｐｐｍ）に変更し、錯化剤をチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：４％）からチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：３％）に変更し、ｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：１００，０００ｐｐｍ）に変更し、さらに金属化合物としての硫酸銅（表面処理剤全体に対する硫酸銅の濃度：１，０００ｐｐｍ）を添加し、フッ素化合物としてのフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５００ｐｐｍ）を添加しなかったこと以外は、実施例１と同様の操作を行った（表面処理剤中の上記スズ化合物の濃度に対する上記銅化合物の濃度の比は０．２であった）。

　〔実施例３２〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物を硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５００ｐｐｍ）から硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：２，０００ｐｐｍ）に変更し、錯化剤をチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：４％）からチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：２％）に変更し、ｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００，０００ｐｐｍ）に変更し、さらに金属化合物としての硫酸銅（表面処理剤全体に対する硫酸銅の濃度：４００ｐｐｍ）を添加し、フッ素化合物としてのフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５００ｐｐｍ）を添加しなかったこと以外は、実施例１と同様の操作を行った（表面処理剤中の上記スズ化合物の濃度に対する上記銅化合物の濃度の比は０．２であった）。

　〔実施例３３〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物を硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５００ｐｐｍ）から硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：２，０００ｐｐｍ）に変更し、錯化剤をチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：４％）からチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：３％）に変更し、ｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：５０，０００ｐｐｍ）に変更し、さらに金属化合物としての硫酸銅（表面処理剤全体に対する硫酸銅の濃度：４００ｐｐｍ）を添加し、フッ素化合物としてのフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５００ｐｐｍ）を添加しなかったこと以外は、実施例１と同様の操作を行った（表面処理剤中の上記スズ化合物の濃度に対する上記銅化合物の濃度の比は０．２であった）。

　〔比較例１〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物としての硫酸第一スズと、フッ素化合物としてのフッ化水素と、錯化剤としてのチオ尿素と、ｐＨ調整剤としての硫酸とを、塩化銅（表面処理剤全体に対する塩化銅の濃度：５％、試薬）と、酢酸（表面処理剤全体に対する酢酸の濃度：１０％、試薬）と、アミノテトラゾール（表面処理剤全体に対するアミノテトラゾールの濃度：０．３％、試薬）とに変更したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。上記物性の評価結果を表１に示す。

　〔比較例２〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物としての硫酸第一スズと、フッ素化合物としてのフッ化水素と、錯化剤としてのチオ尿素と、ｐＨ調整剤としての硫酸とを、硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：１０％、試薬）と、過酸化水素（表面処理剤全体に対する過酸化水素の濃度：３％、試薬）と、アミノテトラゾール（表面処理剤全体に対するアミノテトラゾールの濃度：０．３％）とに変更したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。上記物性の評価結果を表１に示す。

　〔比較例３〕
　所定の表面処理剤に、ｐＨ調整剤としての硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）を添加しなかったこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。

　上記物性の評価結果を表１に示す。ここで、表面処理剤のｐＨは２．２、遊離酸濃度（１／１０Ｎ　ＮａＯＨ滴定量）は２．０ｍｌであった。

　〔比較例４〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物を硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５００ｐｐｍ）から硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：１，０００ｐｐｍ）に変更し、フッ素化合物をフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５００ｐｐｍ）からフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：１，０００ｐｐｍ）に変更し、ｐＨ調整剤としての硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）を添加しなかったこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。

　上記物性の評価結果を表１に示す。ここで、表面処理剤のｐＨは１．５、遊離酸濃度（１／１０Ｎ　ＮａＯＨ滴定量）は４．５ｍｌであった。

　〔比較例５〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物を硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５００ｐｐｍ）から硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：１，０００ｐｐｍ）に変更し、フッ素化合物をフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５００ｐｐｍ）からフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：１，０００ｐｐｍ）に変更し、ｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：５００ｐｐｍ）に変更したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。

　上記物性の評価結果を表１に示す。ここで、表面処理剤のｐＨは１．３、遊離酸濃度（１／１０Ｎ　ＮａＯＨ滴定量）は５．８ｍｌであった。

　〔比較例６〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物を硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５００ｐｐｍ）から硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：１，０００ｐｐｍ）に変更し、フッ素化合物をフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５００ｐｐｍ）からフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：１，０００ｐｐｍ）に変更し、ｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：１，０００ｐｐｍ）に変更したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。

　上記物性の評価結果を表１に示す。ここで、表面処理剤のｐＨは１．２、遊離酸濃度（１／１０Ｎ　ＮａＯＨ滴定量）は６．３ｍｌであった。

　〔比較例７〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物を硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５００ｐｐｍ）から硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：１，０００ｐｐｍ）に変更し、フッ素化合物をフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５００ｐｐｍ）からフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：１，０００ｐｐｍ）に変更し、ｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：２，０００ｐｐｍ）に変更したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。

　上記物性の評価結果を表１に示す。ここで、表面処理剤のｐＨは１．１、遊離酸濃度（１／１０Ｎ　ＮａＯＨ滴定量）は８．５ｍｌであった。

　〔比較例８〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物を硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５００ｐｐｍ）から硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：２，０００ｐｐｍ）に変更し、フッ素化合物をフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５００ｐｐｍ）からフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：２，０００ｐｐｍ）に変更し、ｐＨ調整剤としての硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）を添加しなかったこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。

　上記物性の評価結果を表１に示す。ここで、表面処理剤のｐＨは１．１、遊離酸濃度（１／１０Ｎ　ＮａＯＨ滴定量）は９．２ｍｌであった。

　〔比較例９〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物を硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５００ｐｐｍ）から硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：２，０００ｐｐｍ）に変更し、フッ素化合物をフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５００ｐｐｍ）からフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：２，０００ｐｐｍ）に変更し、ｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：５００ｐｐｍ）に変更したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。

　上記物性の評価結果を表１に示す。ここで、表面処理剤のｐＨは１．０、遊離酸濃度（１／１０Ｎ　ＮａＯＨ滴定量）は１０．５ｍｌであった。

　〔比較例１０〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物を硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５００ｐｐｍ）から硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：２，０００ｐｐｍ）に変更し、フッ素化合物をフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５００ｐｐｍ）からフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：２，０００ｐｐｍ）に変更し、ｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：１，０００ｐｐｍ）に変更したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。

　上記物性の評価結果を表１に示す。ここで、表面処理剤のｐＨは１．０、遊離酸濃度（１／１０Ｎ　ＮａＯＨ滴定量）は１１．０ｍｌであった。

　〔比較例１１〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物を硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５００ｐｐｍ）から硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：２，０００ｐｐｍ）に変更し、フッ素化合物をフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５００ｐｐｍ）からフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：２，０００ｐｐｍ）に変更し、ｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：２，０００ｐｐｍ）に変更したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。

　上記物性の評価結果を表１に示す。ここで、表面処理剤のｐＨは１．１、遊離酸濃度（１／１０Ｎ　ＮａＯＨ滴定量）は１３．２ｍｌであった。

　〔比較例１２〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物を硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５００ｐｐｍ）から硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：２，０００ｐｐｍ）に変更し、フッ素化合物をフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５００ｐｐｍ）からフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：２，０００ｐｐｍ）に変更し、ｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：５，０００ｐｐｍ）に変更したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。

　上記物性の評価結果を表１に示す。ここで、表面処理剤のｐＨは０．９、遊離酸濃度（１／１０Ｎ　ＮａＯＨ滴定量）は１９．１ｍｌであった。

　〔比較例１３〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物を硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５００ｐｐｍ）から硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：２，０００ｐｐｍ）に変更し、フッ素化合物をフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５００ｐｐｍ）からフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：２，０００ｐｐｍ）に変更し、ｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：１０，０００ｐｐｍ）に変更したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。

　上記物性の評価結果を表１に示す。ここで、表面処理剤のｐＨは０．７、遊離酸濃度（１／１０Ｎ　ＮａＯＨ滴定量）は３１．６ｍｌであった。

　〔比較例１４〕
　所定の表面処理剤に含まれる錯化剤をチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：４％）からチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：６％）に変更し、ｐＨ調整剤としての硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）を添加しなかったこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。

　上記物性の評価結果を表１に示す。ここで、表面処理剤のｐＨは２．２、遊離酸濃度（１／１０Ｎ　ＮａＯＨ滴定量）は２．３ｍｌであった。

　〔比較例１５〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物を硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５００ｐｐｍ）から硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：１８，０００ｐｐｍ）に変更し、錯化剤をチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：４％）からチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：１５％）に変更し、ｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：２２０，０００ｐｐｍ）に変更し、さらに硫酸ニッケル（表面処理剤全体に対する硫酸ニッケルの濃度：５０，０００ｐｐｍ）、硫酸銅（表面処理剤全体に対する硫酸銅の濃度：２０，０００ｐｐｍ）、ジエチレングリコール（表面処理剤全体に対するジエチレングリコールの濃度：３００，０００ｐｐｍ）を添加し、フッ素化合物としてのフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５００ｐｐｍ）を添加しなかったこと以外は、実施例１と同様の操作を行った（表面処理剤中の上記スズ化合物の濃度に対する上記銅化合物の濃度の比は１．１であった）。上記物性の評価結果を表１に示す。

　また、比較例１５における銅表面の皮膜の表面組成をＸ線光電子分光（X-ray photoelectron spectroscopy）により分析した結果、スズが約４０％であり、銅が約４％であった。

　〔比較例１６〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物を硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５００ｐｐｍ）から硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：１８，０００ｐｐｍ）に変更し、錯化剤をチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：４％）からチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：１５％）に変更し、ｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：２２０，０００ｐｐｍ）に変更し、さらに硫酸ニッケル（表面処理剤全体に対する硫酸ニッケルの濃度：５０，０００ｐｐｍ）、硫酸銅（表面処理剤全体に対する硫酸銅の濃度：２０，０００ｐｐｍ）、ジエチレングリコール（表面処理剤全体に対するジエチレングリコールの濃度：３００，０００ｐｐｍ）を添加し、フッ素化合物としてのフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５００ｐｐｍ）を添加せず、後処理としてシランを添加したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った（表面処理剤中の上記スズ化合物の濃度に対する上記銅化合物の濃度の比は１．１であった）。上記物性の評価結果を表１に示す。

　〔比較例１７〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物を硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：５００ｐｐｍ）から硫酸第一スズ（表面処理剤全体に対する硫酸第一スズの濃度：１５，０００ｐｐｍ）に変更し、錯化剤をチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：４％）からチオ尿素（表面処理剤全体に対するチオ尿素の濃度：２１％）に変更し、ｐＨ調整剤を硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：３００ｐｐｍ）から硫酸（表面処理剤全体に対する硫酸の濃度：１５０，０００ｐｐｍ）に変更し、さらに硫酸ニッケル（表面処理剤全体に対する硫酸ニッケルの濃度：３５，０００ｐｐｍ）、ジエチレングリコール（表面処理剤全体に対するジエチレングリコールの濃度：３００，０００ｐｐｍ）を添加し、フッ素化合物としてのフッ化水素（表面処理剤全体に対するフッ化水素の濃度：５００ｐｐｍ）を添加しなかったこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。上記物性の評価結果を表１に示す。

　また、比較例１７における銅表面の皮膜の表面組成をＸ線光電子分光（X-ray photoelectron spectroscopy）により分析した結果、スズが約３８％であり、銅が約４％であった。

　〔比較例１８〕
　所定の表面処理剤に含まれるスズ化合物としての硫酸第一スズと、フッ素化合物としてのフッ化水素と、錯化剤としてのチオ尿素と、ｐＨ調整剤としての硫酸とを、塩化銅（表面処理剤全体に対する塩化銅の濃度：５％、試薬）と、酢酸（表面処理剤全体に対する酢酸の濃度：１０％、試薬）と、アミノテトラゾール（表面処理剤全体に対するアミノテトラゾールの濃度：０．３％、試薬）とに変更し、その後ホウフッ化スズ０．１ｍｏｌ／リットルおよびチオ尿素１ｍｏｌ／リットルを添加し、次にホウフッ酸でｐＨが１．２になるように調整した合金形成置換スズめっき液に、銅を表面処理した後の電解銅箔を４５℃、３０秒の条件で浸漬した後、水洗、乾燥したこと以外は、実施例１と同様の操作を行った。上記物性の評価結果を表１に示す。

　また、比較例１８における銅表面の皮膜の表面組成をＸ線光電子分光（X-ray photoelectron spectroscopy）により分析した結果、スズが約４０％であり、銅が約４％であった。

　〔実施例のまとめ〕
　表１に、銅の表面処理後における上記物性の評価結果をまとめた。

　実施例１～５を比較すると、所定の表面処理剤に含まれるｐＨ調整剤としての硫酸の濃度を高くすることにより、銅箔と樹脂等の絶縁材との密着性が向上するという結果になった。

　実施例６，７と実施例５とを比較すると、実施例６，７では実施例５と比べてスズ化合物としての硫酸第一スズの濃度を高くすることにより、銅箔と樹脂等の絶縁材との密着性が低下するという結果になった。

　実施例８～１２と実施例１～５とを比較すると、実施例８～１２では実施例１～５と比べて錯化剤としてのチオ尿素の濃度を高くすることにより、銅箔と樹脂等の絶縁材との密着性が向上するという結果になった。

　実施例１３と実施例１２とを比較すると、実施例１３では実施例１２と比べてスズ化合物としての硫酸第一スズの濃度を低くすることにより、銅表面における銅の比率が高くなるという結果になった。

　実施例１４～１６と実施例１とを比較すると、実施例１４～１６では実施例１と比べて水溶性高分子としてのポリアクリル酸またはシランカップリング剤を添加することにより、銅箔と樹脂等の絶縁材との密着性が向上するという結果になった。

　実施例１７と実施例１とを比較すると、実施例１７では実施例１と比べて錯化剤としてのチオ尿素の代わりにジエチルチオ尿素を添加することにより、銅箔と樹脂等の絶縁材との十分な密着性を維持することができるという結果になった。

　実施例１８と実施例１とを比較すると、実施例１８では実施例１と比べてｐＨ調整剤としての硫酸の代わりにメタンスルホン酸を添加することにより、銅箔と樹脂等の絶縁材との十分な密着性を維持することができるという結果になった。

　実施例１９と実施例１とを比較すると、実施例１９では実施例１と比べてフッ素化合物を添加しなくても、銅箔と樹脂等の絶縁材との十分な密着性を維持することができるという結果になった。

　実施例２０～２４と実施例６とを比較すると、実施例２０～２４では実施例６と比べて銅化合物としての硫酸銅を添加することにより、ｐＨ調整剤としての硫酸の濃度が低い場合でも、銅箔と樹脂等の絶縁材との十分な密着性を維持することができるという結果になった。

　実施例２５，３３と実施例２０とを比較すると、実施例２５，３３では実施例２０と比べてフッ素化合物を添加せずにｐＨ調整剤としての硫酸の濃度を高くし、それに伴い錯化剤としてのチオ尿素の濃度を低くすることにより、銅箔と樹脂等の絶縁材との十分な密着性を維持することができるという結果になった。

　実施例２６と実施例２５とを比較すると、実施例２６では実施例２５と比べて金属化合物としての硝酸銀を添加することにより、銅箔と樹脂等の絶縁材との密着性が向上するという結果になった。

　実施例２７と実施例２５とを比較すると、実施例２７では実施例２５と比べて還元剤としての次亜リン酸ナトリウムを添加することにより、銅箔と樹脂等の絶縁材との十分な密着性を維持することができるという結果になった。

　実施例２８と実施例２５とを比較すると、実施例２８では実施例２５と比べて防錆剤としてのチオグリセロールを添加することにより、銅箔と樹脂等の絶縁材との十分な密着性を維持することができるという結果になった。

　実施例２９と実施例２５とを比較すると、実施例２９では実施例２５と比べてｐＨ調整剤としての硫酸の代わりにメタンスルホン酸を添加することにより、銅箔と樹脂等の絶縁材との十分な密着性を維持することができるという結果になった。

　実施例３０と実施例２５とを比較すると、実施例３０では実施例２５と比べて水溶性高分子としてのポリアクリル酸を添加することにより、銅箔と樹脂等の絶縁材との密着性が向上するという結果になった。

　実施例３１と実施例２５とを比較すると、実施例３１では実施例２５と比べて銅化合物としての硫酸銅の濃度を高くすることにより、スズ化合物としての硫酸第一スズの濃度が高い場合でも、銅箔と樹脂等の絶縁材との十分な密着性を維持することができるという結果になった。

　実施例３２と実施例２５とを比較すると、実施例３２では実施例２５と同様にフッ素化合物を添加せずに、実施例２５よりもｐＨ調整剤としての硫酸の濃度を高くし、それに伴い錯化剤としてのチオ尿素の濃度を低くすることにより、銅箔と樹脂等の絶縁材との十分な密着性を維持することができるという結果になった。

　比較例１，２と実施例１～３３とを比較すると、比較例１，２では実施例１～３３と比べてスズ化合物等を含んだ表面処理剤を用いておらず、エッチング等の粗化処理（凹凸処理）を行っているので、銅の表面処理後における電解銅箔のＳＥＭ外観に凹凸が見られるという結果になった。

　比較例３と実施例１とを比較すると、比較例３では実施例１と比べてｐＨ調整剤としての硫酸を添加しないことにより、銅箔と樹脂等の絶縁材との密着性が低下するという結果になった。

　比較例４～７と実施例１～５とを比較すると、比較例４～７では実施例１～５と比べてスズ化合物としての硫酸第一スズの濃度を高くすることにより、銅箔と樹脂等の絶縁材との密着性が低下するという結果になった。

　比較例８～１３と実施例１～５とを比較すると、比較例８～１３では実施例１～５と比べてスズ化合物としての硫酸第一スズの濃度をさらに高くすることにより、銅箔と樹脂等の絶縁材との密着性が低下するという結果になった。

　比較例１４と実施例１とを比較すると、比較例１４では実施例１と比べてｐＨ調整剤としての硫酸を添加しないことにより、銅箔と樹脂等の絶縁材との密着性が低下するという結果になった。

　比較例１５～１７と実施例１とを比較すると、比較例１５～１７では実施例１と比べてスズ化合物としての硫酸第一スズの濃度を大幅に高くし、かつ銅イオンとしての硫酸銅（およびニッケル）を添加することにより、銅箔と樹脂等の絶縁材との密着性が大幅に低下するという結果になった。

　上述した具体的な実施形態および実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する請求の範囲内において、いろいろと変更して実施することができるものである。

　本発明の銅の表面処理剤および表面処理方法、並びに銅表面の皮膜は、銅の表面をエッチング等の粗化処理することなく銅と樹脂等の絶縁材との間の密着性を維持することができるため、近年の電子機器・電子部品の高周波化、高密度化等に対応することができる。また、従来の粗化処理（凹凸処理）では、処理後に酸化膜が成長し、電子機器・電子部品としての機能を発揮しないため、多くの場合には後処理として防錆処理を施していた。本発明の銅の表面処理剤は、密着および防錆（不動態化）を同時に行うため、従来の粗化処理と比較して、電子機器・電子部品の生産工程を削減することができる。加えて、本発明の銅の表面処理剤および表面処理方法、並びに銅表面の皮膜は、スズ化合物を低濃度で使用するため、排水負荷を大幅に低減した環境対応技術である。具体的には、本発明の銅の表面処理剤および表面処理方法は、微細（ファイン）配線を有するプリント配線基板、半導体実装品、液晶デバイス、エレクトロルミネッセンス等の各種電子機器・電子部品に利用することが可能である。

Claims

　銅とスズとの合金を含有し、
　銅表面の皮膜におけるスズの重量が１ｍｇ／ｍ^２以上、２，０００ｍｇ／ｍ^２以下の範囲内であり、
　上記皮膜の最表面における組成のうちの、スズに対する銅のモル比が０．２以上、２．０以下の範囲内であることを特徴とする銅表面の皮膜。
　上記銅表面の皮膜における上記スズの重量が２０ｍｇ／ｍ^２以上、２，０００ｍｇ／ｍ^２以下の範囲内であることを特徴とする請求項１に記載の銅表面の皮膜。
　スズ化合物と、錯化剤と、ｐＨ調整剤とを含有し、
　表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が２０ｐｐｍ以上、８，０００ｐｐｍ以下の範囲内であり、
　表面処理剤全体に対する上記錯化剤の濃度が１０，０００ｐｐｍ以上、３００，０００ｐｐｍ以下の範囲内であり、
　表面処理剤全体に対する上記ｐＨ調整剤の濃度が１００ｐｐｍ以上、３００，０００ｐｐｍ以下の範囲内であることを特徴とする銅の表面処理剤。
　さらに、金属化合物を含有することを特徴とする請求項３に記載の銅の表面処理剤。
　上記金属化合物が銅化合物であり、
　上記スズ化合物の濃度に対する上記銅化合物の濃度の比が０．２以上、２．０以下の範囲内であることを特徴とする請求項４に記載の銅の表面処理剤。
　上記金属化合物は、さらに銀またはパラジウムを含有することを特徴とする請求項５に記載の銅の表面処理剤。
　下記（ａ）～（ｋ）のいずれか１つの条件を満たしていることを特徴とする請求項３～６のいずれか１項に記載の銅の表面処理剤。
（ａ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が５００ｐｐｍ以下であり、上記錯化剤の濃度が４０，０００ｐｐｍ以上であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が３００ｐｐｍ以上である。
（ｂ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が５００ｐｐｍよりも高く、１，０００ｐｐｍ以下の範囲内であり、上記錯化剤の濃度が４０，０００ｐｐｍ以上であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が３，０００ｐｐｍ以上である。
（ｃ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が１，０００ｐｐｍよりも高く、２，０００ｐｐｍ以下の範囲内であり、上記錯化剤の濃度が４０，０００ｐｐｍ以上であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が２０，０００ｐｐｍ以上である。
（ｄ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が５００ｐｐｍ以下であり、上記錯化剤の濃度が６０，０００ｐｐｍ以上であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が２００ｐｐｍ以上である。
（ｅ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が５００ｐｐｍよりも高く、１，０００ｐｐｍ以下の範囲内であり、上記錯化剤の濃度が６０，０００ｐｐｍ以上であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が５００ｐｐｍ以上である。
（ｆ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が１，０００ｐｐｍよりも高く、２，０００ｐｐｍ以下の範囲内であり、上記錯化剤の濃度が６０，０００ｐｐｍ以上であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が５，０００ｐｐｍ以上である。
（ｇ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が５００ｐｐｍよりも高く、２，０００ｐｐｍ以下の範囲内であり、上記錯化剤の濃度が４０，０００ｐｐｍ以上であり、銅化合物の濃度が１００ｐｐｍよりも高く、４，０００ｐｐｍ以下の範囲内であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が３００ｐｐｍ以上である。
（ｈ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が２，０００ｐｐｍよりも高く、５，０００ｐｐｍ以下の範囲内であり、上記錯化剤の濃度が４０，０００ｐｐｍ以上であり、上記銅化合物の濃度が４００ｐｐｍよりも高く、１０，０００ｐｐｍ以下の範囲内であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が１，０００ｐｐｍ以上である。
（ｉ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が５，０００ｐｐｍよりも高く、上記錯化剤の濃度が４０，０００ｐｐｍ以上であり、上記銅化合物の濃度が１，０００ｐｐｍ以上であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が２，０００ｐｐｍ以上である。
（ｊ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が２，０００ｐｐｍ以上、５，０００ｐｐｍ未満の範囲内であり、上記錯化剤の濃度が２０，０００ｐｐｍ以上、４０，０００ｐｐｍ未満の範囲内であり、上記銅化合物の濃度が４００ｐｐｍ以上であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が５０，０００ｐｐｍ以上である。
（ｋ）表面処理剤全体に対する上記スズ化合物の濃度が５，０００ｐｐｍ以上であり、上記錯化剤の濃度が２０，０００ｐｐｍ以上、４０，０００ｐｐｍ未満の範囲内であり、上記銅化合物の濃度が１，０００ｐｐｍ以上であり、かつ上記ｐＨ調整剤の濃度が５０，０００ｐｐｍ以上である。
　上記錯化剤として、少なくともチオ尿素もしくはその誘導体を含有することを特徴とする請求項３～７のいずれか１項に記載の銅の表面処理剤。
　上記ｐＨ調整剤として、少なくとも硫酸、硝酸、塩酸、メタンスルホン酸もしくはリン酸を含有することを特徴とする請求項３～８のいずれか１項に記載の銅の表面処理剤。
　さらに、アミノ基、エポキシ基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基、リン酸基、イミノ基およびシラノール基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する水溶性高分子または水分散性高分子を含有することを特徴とする請求項３～９のいずれか１項に記載の銅の表面処理剤。
　上記水溶性高分子として、少なくともポリアクリル酸もしくはシランカップリング剤、またはその誘導体を含有することを特徴とする請求項１０に記載の銅の表面処理剤。
　銅の表面に請求項３～１１のいずれか１項に記載の銅の表面処理剤を接触させることを特徴とする銅の表面処理方法。
　銅の表面に酸洗処理、粗化処理、防錆処理、酸化処理および脱脂処理からなる群より選ばれる少なくとも一種の前処理をした後に、上記表面処理剤を接触させることを特徴とする請求項１２に記載の銅の表面処理方法。
　銅の表面に上記表面処理剤を接触させた後に、防錆剤、後処理剤またはｐＨ調整剤を接触させることを特徴とする請求項１２または１３に記載の銅の表面処理方法。
　請求項１２～１４のいずれか１項に記載の銅の表面処理方法により形成され、
　スズおよび銅を含有することを特徴とする銅表面の皮膜。
　銅表面１μｍ^２当たりに、銅とスズとを含有する結晶を１個以上含んでおり、
　上記結晶の平均結晶径が５０ｎｍ以上、１０００ｎｍ以下の範囲内であることを特徴とする請求項１、２または１５に記載の銅表面の皮膜。
　厚さが０．０２μｍ以上、２μｍ以下の範囲内であることを特徴とする請求項１、２、１５または１６に記載の銅表面の皮膜。
　請求項１、２、１５～１７のいずれか１項に記載の銅表面の皮膜を含んでいることを特徴とする銅張り材料。
　請求項１８に記載の銅張り材料を備えていることを特徴とする多層配線基板。
　最外層に請求項１８に記載の銅張り材料を備えていることを特徴とする配線基板。