細孔を有する高分子錯体及び高分子錯体の細孔内面の化学修飾法 技術分野
[0001 ]
本発明は、ゲスト分子に対して固有の親和性を有する互いに同一な細孔からなる細 孔群を 2種以上備える高分子錯体、並びに該高分子錯体において、少なくとも 1種の 細孔群の細孔内面を化学修飾する方法に関する。 背景技術
[0002]
ゲスト化合物を取り込む空? L構造を持つ材料に、多種類の有機化合物を含有する混 合物を通過又は接触させることによって、選択的に特定の有機化合物を取り出すこと ができる。このような材料としては、有機配位子を遷移金属で集合させた有機金属錯体 ゃゼォライ卜等が知られており、選択的可逆的吸着剤、触媒担体等の多くの用途があ る。 発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0003]
しかし、ゼォライト等の構造中に含まれる細孔の環境(細孔内環境)は均一であり、単 一のゼォライト材料中に環境の異なる比較的大きな細孔を共存させることは困難であ る。従って、従来、ゲスト化合物を取り込む作用を有する単一材料中に、有機化合物の ような比較的大きい分子サイズを有する化合物を選択的に取り込むことができる細孔 を 2種以上共存させることは困難であった。
[0004]
本願発明者のうちの一部は、上記実情を鑑みて、配位性部位を 2つ以上有する配位 子としての芳香族化合物、中心金属としての金属イオン、及び、非配位性の芳香族化 合物を含む高分子錯体であって、前記芳香族化合物配位子が前記中心金属イオンに 配位して形成された三次元ネットワーク構造内に、芳香族化合物配位子の間に前記非 配位性芳香族化合物が挿入されてなる積み重ね構造を含む三次元格子状構造を有し 、該三次元格子状構造内に、ゲスト分子に対して固有の親和性を有する互いに同一な 細孔からなる細孔群を 2種以上備えていることを特徴とする高分子錯体を開発し、すで に特許出願を行っている(特願 2004— 3821 52)。
そして、本発明者らは、上記特許出願済みの高分子錯体(特願 2004— 382 1 52 ) をさらに改良し、前記非配位性芳香族化合物の芳香環上に特定の置換基 Aを導入す ることで、元来固有のゲスト分子に対して親和性を有する前記 2種以上の細孔群のうち 、特定の細孔群 Bを修飾し、細孔群 Bの細孔内環境の特性を制御した高分子錯体を 開発し、特許出願を行っている(特願 2006— 6341 6)。
[0005]
本発明は、上記開発の経緯を経て、さらに発展したものであり、本発明の目的は、上 記特定の置換基 Aによってその細孔内環境の特性を制御した特定の細孔群 Bを有す る高分子錯体において、該高分子錯体形成後、該細孔群 Bの細孔を反応場として利 用し、上記置換基 Aを別の置換基に変換することで、さらなる細孔内環境の特性制御 を可能とする細孔内面の化学修飾法及び該化学修飾法により得られる非常に特異的
な細孔内環境特性を有する高分子錯体を提供することにある。 課題を解決するための手段 [0006]
本発明にかかる高分子錯体の細孔内面の化学修飾法は、ゲスト分子に対して固有 の親和性を有する互いに同一な細孔からなる細孔群を 2種以上備える高分子錯体に おいて、少なくとも 1種の細孔群の細孔の内面を化学修飾する方法であって、前記高 分子錯体は、配位性部位を 2つ以上有する配位子としての芳香族化合物、中心金属と しての金属イオン、及び、非配位性の芳香族化合物を含み、前記芳香族化合物配位 子が前記中心金属イオンに配位して形成された三次元ネットワーク構造内に、芳香族 化合物配位子の間に前記非配位性芳香族化合物が挿入されてなる積み重ね構造を 含む三次元格子状構造を有し、該三次元格子状構造内に前記細孔群を 2種以上備え 、前記非配位性芳香族化合物が自己の芳香環上の特定位置に特定の置換基 Aを有 し、且つ、置換基 Aが前記 2種以上の細孔群のうち特定の細孔群 Bの内面に向くように 規則的に配置されており、前記置換基 Aが配置された細孔群 Bの細孔内に、ゲスト分 子を包接させ、該細 ¾内において、該ゲスト分子と前記置換基 Aとを反応させることに より、該置換基 Aを別の置換基 A'に変換し、該置換基 A'を細孔群 Bの細孔又はその他 の細孔群の細孔の内面を向くように規則的に配置させることを特徴とするものである。
[0007]
本発明の化学修飾法は、上記のような 2種以上の細孔群が形成された高分子錯体 に対して、該高分子錯体形成後、細孔の内面を化学修飾するものである。上記高分子 錯体の細孔は、ゲスト分子に対する固有の親和性を有しているため、特定のゲスト分 子の選択的な取り込みをする。従って、細孔群 Bの細孔内にゲスト分子を取り込み、細 孔群 Bの内面に向くように配向した置換基 Aと、該ゲスト分子とが化学反応を起こすこ
とで、細孔内を化学修飾することができる。
[0008]
このように、高分子錯体の形成後の化学修飾により置換基 A'をある細孔群の内面を 向くように規則的に配置することによって、高分子錯体の形成時においては、非配位性 芳香族化合物の電子状態、置換基の立体的要素等により、高分子錯体を構成する非 配位性芳香族化合物に導入することができなかった置換基 A'によってその親和性が 変更された細孔を有する高分子錯体を得ることができる。しかも、該細孔内は、その微 小な空間の影響により、特異的な反応場となっているため、細孔外の通常の環境では 生じない化学反応を進行させたり、通常の環境では不安定な中間生成体のようなもの が細孔内では安定した最終生成体として生成させることが可能である。
[0009]
以上のように、本発明によれば、元来ゲスト分子に対する固有の親和性を有する細 孔の内面を、化学修飾によりさらに特異的なものとすることができ、さらなる高選択的な ゲスト分子の取り込み、放出及び Z又は輸送が可能であり、また、特異的な化学反応 を生じる化学反応場としての利用が可能な細孔を有する高分子錯体を提供することが できる。
[001 0]
前記高分子錯体において、前記三次元ネットワーク構造の形態としては、 2つ以上の 独立した三次元ネットワークが複合化してなる複合化三次元ネットワーク構造が含まれ る。この複合化三次元ネットワーク構造としては、例えば、独立した三次元構造ネットヮ ーク構造が複雑に絡み合った相互貫通構造が挙げられる。
[001 1 ]
前記細孔群を構成する細孔のゲスト分子に対する親和性は、前記 2種以上の細孔 群から任意に選ばれる 2つの細孔群間の対比において、細孔のサイズ、細孔の形状、 及び、細孔内雰囲気のうち少なくとも一つが異なることによって、互いに異なるものとな
る。
[001 2]
前記三次元ネットワーク構造が充分な三次元の広がりを持ち、前記積み重ね構造が 芳香族化合物配位子と非配位性芳香族化合物とが充分に積み重なって形成される場 合、細長いチャンネル形状の細孔が形成される。
[001 3]
前記芳香族化合物配位子として具体的には、下記式(1 )で表される芳香族化合物 が挙げられる。
[001 4]
[001 5]
(式中、 Arは芳香環を有する構造である。 Xは 2価の有機基であるか又は Arと Yの間を 直接結ぶ単結合である。 Yは配位原子又は配位原子を含む原子団である。 nは 3〜6 の数を表す。一分子内に含まれる複数の X同士は互いに異なっていてもよ 且つ、複 数の Y同士は互いに異なっていてもよい。)
[001 6]
また、前記非配位性芳香族化合物の具体例としては、縮合多環芳香族化合物が挙 げられる。
[001 7]
さらに具体的には、前記式(1 )で表される芳香族化合物が、卜リス(4一ピリジル)トリ ァジンであり、前記縮合多環芳香族化合物が、トリフエ二レン又はペリレンの少なくとも 1種である高分子錯体が挙げられる。
[001 8]
前記置換基 Aは特に限定されず、例えば、前記高分子錯体内において、ファンデルヮ
一ルスカよりも大きい分子間相互作用を発現できるものが好適である。
[0019]
三次元ネットワーク構造内の前記積み重ね構造において、前記非配位性芳香族化 合物の HOMO (最高被占軌道)と前記芳香族化合物配位子の LUMO (最低空軌道) とが、その節面の数や位置、電子分布、エネルギーレベルについて軌道形状の重なり を有し、その積層構造が安定化されるように、前記非配位性芳香族化合物と当該非配 位性芳香族化合物に導入する置換基、及び、前記芳香族化合物配位子を選択するこ とで、高分子錯体内に形成される前記積み重ね構造を予測することができ、効率的な 分子設計が可能である。
[0020]
前記置換基 Aとして、具体的には、一W— OH、一 W— NH2、一 W— N02、 -W-CH 3、 -W-OCOCH3、—W— CHO、アルキルエーテル鎖、アルキルチオエーテル鎖、ァ ルキレングリコール鎖、及びペプチド鎖(Wは 2価の有機基又は単結合を示す)より選ば れる少なくとも 1つの官能基が挙げられる。
[0021]
前記置換基 Aとして、一NH2を少なくとも 1つ有する場合、この一 NH2を一 N = Q1 (Q1 は 2価の有機基を示す)に変換することができる。具体的には、前記ゲスト分子がアル デヒド化合物であり、細孔群 Bの細孔によるアルデヒド化合物の取り込みにより、前記 置換基 Aである一 NH2と該アルデヒド化合物の脱水反応を起こさせ、一 NH2を一 N = Q 1 (Q1は二価の有機基を示す)に変換することができる。
また、置換基 Aとして、一 NH2を少なくとも 1つ有する場合、この一 NH2を一 NHC( = 0 )-Q2(Q2は 1価の有機基を示す)に変換することができる。具体的には、前記ゲスト 分子が酸無水物又はイソシアナ一卜であり、細孔群 Bの細孔による酸無水物又はイソ シアナ一卜の取り込みにより、前記置換基 Aである一 NH2と該酸無水物又は該イソシァ ナー卜を反応させ、一 NH2を一 NHC( = 0)— Q2(Q2は一価の有機基を示す)で表され
る基に変換することができる。
さらに、置換基 Aの少なくとも 1つが一 CH Oであって、前記ゲスト分子がァミノ化合物 である場合、細孔群 Bの細孔によるアミノ化合物の取り込みにより、該ー CHOと該アミ ノ化合物を脱水反応させ、一 CHOを一 CH N— Q3 (Q3は 1価の有機基を示す)で表さ れる基に変換することができる。
[0022]
すなわち、本発明の化学修飾法によれば、通常の環境では非常に不安定で短寿命 の中間体として存在するものや、高分子錯体構築前に、予め非配位性芳香族化合物 に導入する場合には、金属種と錯形成してしまい、高分子錯体の構築を阻害してしまう ものによって、高分子錯体内を化学修飾することが可能である。
[0023]
特に、本発明によれば、前記高分子錯体において、前記置換基 Aの少なくとも 1つを、 —Q4— COOH (Q4は 2価以上の有機基を示す)で表される基に変換することが可能 である。すなわち、高分子錯体の細孔内をカルボキシル基含有置換基によって化学修 飾することが可能である。このように、細孔内にァニオン性官能基が配向することによつ て、金属イオン等のカチオンの保持が可能となり、高分子錯体の触媒材料や電解質材 料としての応用が期待できる。
[0024]
本発明によれば、例えば、配位性部位を 2つ以上有する配位子としての芳香族化合 物、中心金属としての金属イオン、及び、非配位性の芳香族化合物を含む高分子錯体 であって、前記芳香族化合物配位子が前記中心金属イオンに配位して形成された三 次元ネットワーク構造内に、芳香族化合物配位子の間に前記非配位性芳香族化合物 が挿入されてなる積み重ね構造を含む三次元格子状構造を有し、該三次元格子状構 造内に、ゲスト分子に対して固有の親和性を有する互いに同一な細孔からなる細孔群 を 2種以上備えており、前記非配位性芳香族化合物は自己の芳香環上の特定位置に
一 N = Q 1 (Q 1は 2価の有機基を示す)で表される基 A' iを有し、前記非配位性芳香族 化合物は、前記基 Α' ίが前記 2種以上の細孔群のうち特定の細孔群 B 'の内面に向く ように規則的に配置されている、ことを特徴とする高分子錯体を提供することができる。
[0025]
或いは、配位性部位を 2つ以上有する配位子としての芳香族化合物、中心金属とし ての金属イオン、及び、非配位性の芳香族化合物を含む高分子錯体であって、前記芳 香族化合物配位子が前記中心金属イオンに配位して形成された三次元ネットワーク構 造内に、芳香族化合物配位子の間に前記非配位性芳香族化合物が挿入されてなる 積み重ね構造を含む三次元格子状構造を有し、該三次元格子状構造内に、ゲスト分 子に対して固有の親和性を有する互いに同一な細孔からなる細孔群を 2種以上備えて おり、前記非配位性芳香族化合物は自己の芳香環上の特定位置に一 N HC ( = 0)— Q 2 ( Q 2は 1価の有機基を示す)で表される基 A' aを有し、前記非配位性芳香族化合 物は、前記基 A' aが前記 2種以上の細孔群のうち特定の細孔群 B'の内面に向くように 規則的に配置されている、ことを特徴とする高分子錯体を提供することができる。
[0026]
或いは、配位性部位を 2つ以上有する配位子としての芳香族化合物、中心金属とし ての金属イオン、及び、非配位性の芳香族化合物を含む高分子錯体であって、前記芳 香族化合物配位子が前記中心金属イオンに配位して形成された三次元ネットワーク構 造内に、芳香族化合物配位子の間に前記非配位性芳香族化合物が挿入されてなる 積み重ね構造を含む三次元格子状構造を有し、該三次元格子状構造内に、ゲスト分 子に対して固有の親和性を有する互いに同一な細孔からなる細孔群を 2種以上備えて おり、前記非配位性芳香族化合物は自己の芳香環上の特定位置に一 CH N— Q3 (Q 3は 1価の有機基を示す)で表される基 A'imを有し、前記非配位性芳香族化合物は、 前記基 A'imが前記 2種以上の細孔群のうち特定の細孔群 B'の内面に向くように規則 的に配置されている、ことを特徴とする高分子錯体を提供することができる。
[0027]
或いは、配位性部位を 2つ以上有する配位子としての芳香族化合物、中心金属とし ての金属イオン、及び、非配位性の芳香族化合物を含む高分子錯体であって、前記芳 香族化合物配位子が前記中心金属イオンに配位して形成された三次元ネットワーク構 造内に、芳香族化合物配位子の間に前記非配位性芳香族化合物が挿入されてなる 積み重ね構造を含む三次元格子状構造を有し、該三次元格子状構造内に、ゲスト分 子に対して固有の親和性を有する互いに同一な細孔からなる細孔群を 2種以上備えて おし J、前記非配位性芳香族化合物は自己の芳香環上の特定位置に一 Q4— COOH ( Q4は 2価以上の有機基を示す)で表される基 A'cを有し、前記非配位性芳香族化合物 は、前記基 A cが前記 2種以上の細孔群のうち特定の細孔群 B'の内面に向くように規 則的に配置されている、ことを特徴とする高分子錯体を提供することができる。 発明の効果
[0028]
本発明は、高分子錯体内に形成された細孔内への選択的なゲスト分子の取り込み や、細孔内を反応場として進行する特異的な化学反応の進行を利用することによって 、細孔の内面を化学修飾するものである。従って、本発明によれば、本願発明者らによ つて出願された特願 2006— 6341 6のように、芳香族配位子と金属イオンと非配位性 芳香族化合物とから高分子錯体を構築する際に既に該非配位性芳香族化合物に導 入されている場合には、高分子錯体を構築することができないような置換基や、不安定 なため高分子錯体を構成していない非配位性芳香族化合物そのものへの導入は不可 能な置換基等を高分子錯体形成後の非配位性芳香族化合物に導入することが可能 である。すなわち、本発明により提供される高分子錯体は、ゲスト分子に対して非常に 選択的な挙動を発現し、また、反応場として非常に特異性の高い性質を示しうる。
図面の簡単な説明
[0029]
第 1図は、高分子錯体 4の主骨格をファンデルワールス半径を用いて描いた図の投 影図であり、また、高分子錯体 4の細孔サイズを算出する方法を説明する図である。 第 2図は、高分子錯体 4の結晶構造(図 2A)及びトリス(4一ピリジル)卜リアジンと 1― ヒドロキシトリフエ二レンの積み重ね周期構造(図 2B)を示す図である。
第 3図は、高分子錯体 4の三次元格子状構造における卜リス(4一ピリジル)卜リアジン 、 1ーヒドロキシトリフエ二レン及びヨウ化亜鉛の分子配列並びにチャンネル P内に包接 されたメタノールの配向を示す図である。
第 4図は、高分子錯体 4の三次元格子状構造におけるトリス(4一ピリジル)トリァジン 、 1ーヒドロキシトリフエ二レン及びヨウ化亜鉛の分子配列並びにチャンネル P内に包接 されたメタノールの配向を示す図であって、卜リス(4一ピリジル)卜リアジンと 1ーヒドロキ シトリフエ二レンの積層距離及びメタノールの酸素原子と 1ーヒドロキシトリフエ二レンの 酸素原子間の距離を示している。
第 5図は、細孔の延在する方向を決定する方法を説明する図である。
第 6図は、 1ーヒドロキシトリフエ二レンの HOMOと卜リス(4一ピリジル)トリァジンの LU MOを示す図(図 6a)及びこれらの重ね合わせを示す図(図 6b)である。
第 7図は、 2—アミノトリフエ二レンの HOMOとトリス(4一ピリジル)トリアジンの LU MO を示す図(図 7 a)及びこれらの重ね合わせを示す図(図 7b)である。
第 8図は、高分子錯体 2の結晶構造(8A)及び高分子錯体 2における 1ーサリチリデ ンアミノトリフエ二レン(8B)を示す図である。
第 9図は、高分子錯体 3の結晶構造(9A)及び高分子錯体 3における 1—N—ェチリ デンアミノトリフエ二レン(9B)を示す図である。
第 1 0図は、高分子錯体 1の結晶構造を示す図である。
第 1 1図は、高分子錯体 5の結晶構造を示す図である。
第 1 2図は、高分子錯体 8の結晶構造を示す図である。
第 1 3図は、高分子錯体 1 'の結晶構造を示す図である。
第 1 4図は、高分子錯体 9の結晶構造を示す図である。
第 1 5図は、高分子錯体 1 2の結晶構造を示す図である。
第 1 6図は、高分子錯体 1 4の結晶構造を示す図である。
第 1 7図は、 2—ホルミルトリフエ二レンの1 H NMR測定結果を示す図である。
第 1 8図は、 2—ホルミルトリフエ二レンの GCMS測定結果を示す図である。
第 1 9図は、高分子錯体 1 5の結晶構造を示す図である。
第 20図は、高分子錯体 1 6の結晶構造を示す図である。
第 21図は、高分子錯体 1 7の結晶構造を示す図である。 発明を実施するための最良の形態
[0030]
本発明にかかる高分子錯体の細孔内面の化学修飾法は、ゲスト分子に対して固有 の親和性を有する互いに同一な細孔からなる細孔群を 2種以上備える高分子錯体に おいて、少なくとも 1種の細孔群の細孔の内面を化学修飾する方法であって、前記高 分子錯体は、配位性部位を 2つ以上有する配位子としての芳香族化合物、中心金属と しての金属イオン、及び、非配位性の芳香族化合物を含み、前記芳香族化合物配位 子が前記中心金属イオンに配位して形成された三次元ネットワーク構造内に、芳香族 化合物配位子の間に前記非配位性芳香族化合物が挿入されてなる積み重ね構造を 含む三次元格子状構造を有し、該三次元格子状構造内に前記細孔群を 2種以上備え 、前記非配位性芳香族化合物が自己の芳香環上の特定位置に特定の置換基 Aを有
し、且つ、置換基 Aが前記 2種以上の細孔群のうち特定の細孔群 Bの内面に向くように 規則的に配置されており、前記置換基 Aが配置された細孔群 Bの細孔内に、ゲスト分 子を包接させ、該細孔内において、該ゲスト分子と前記置換基 Aとを反応させることに より、該置換基 Aを別の置換基 A'に変換し、該置換基 A'を細孔群 Bの細孔又はその他 の細孔群の細孔の内面を向くように規則的に配置させることを特徴とするものである。
[0031 ]
まず、本発明において化学修飾の対象となる高分子錯体について説明する。
本発明において化学修飾の対象となる高分子錯体は、本願発明者により出願された 特願 2006— 6341 6の高分子錯体である。すなわち、本願発明者の一部により出願 された特願 2004— 3821 52の高分子錯体同様、芳香族化合物配位子と中心金属ィ オンとの配位結合によって三次元ネットワーク構造が形成されており、当該三次元ネッ トワーク構造を形成する芳香族化合物配位子の間に、配位結合に寄与しない非配位 性芳香族化合物が挿入された積み重ね構造を含む三次元格子状構造を有する。この ように、芳香族化合物配位子及び中心金属イオンの配位結合による三次元ネットヮー ク構造と、三次元ネットワーク構造内に取り込まれた非配位性芳香族化合物及び芳香 族化合物配位子により形成される積み重ね構造とによって、高分子錯体内にゲスト分 子に対して固有の親和性を有する(すなわち、特異的分子包接機能を有する) 2種以 上の細礼が、それぞれ複数(すなわち、細孔群)形成されると考えられる。
[0032]
高分子錯体において、 2種以上の細孔群は、ゲスト分子に対して固有の親和性を有 する細孔からなり、この固有の親和性によって、細孔群ごとに異なるゲスト分子を選択 的に取り込むことができる。すなわち、該高分子錯体は、 1つの高分子錯体中に含まれ る 2種以上の細孔群内に、それぞれ 1種以上、つまり高分子錯体全体として 2種以上 のゲスト分子を選択的に取り込むことができる。また、細孔内に取り込んだゲスト分子を 選択的に放出することも可能である。ここで、ゲスト分子を細孔内に選択的に取り込む
及び細孔内から選択的に放出するとは、細孔内の雰囲気や細孔のサイズ、形状等に よって、特定の成分を細孔内に取り込む及び Z又は放出することの他、ゲスト交換の 温度条件や雰囲気、さらには、時間によって細孔内に取り込まれるゲスト分子及びノ 又は細孔内から放出されるゲスト分子が選択されることも含む。
[0033]
さらに、該高分子錯体は、高分子錯体内に形成される細孔群に含まれる細孔のサイ ズを適宜調節することによって、ガス状の小分子からタンパク質やその他の生体由来 分子のような大分子までも細孔内に取り込むことができる。すなわち、 2種以上の小分 子や大分子の化合物を含む混合物から、細孔群ごとに選択的に特定の化合物を取り 込むことが可能である。
[0034]
従って、上記高分子錯体によれば、例えば、 2種以上の成分を含有する混合物から、 特定の 2種以上の成分を分離し且つ当該高分子錯体中に貯蔵することが可能である。 また、 1種又は 2種以上の成分を含有する混合物 1から、特定の成分のみをある細孔 群 1の細孔内に取り込み、当該成分を細孔群 1の細孔内に保持したまま、混合物 1と は異なる 1種又は 2種以上の成分を含有する混合物 2から、他の特定の成分をある細 孔群 2の細孔内に取り込むことができる。或いは、高分子錯体を隔壁を構成する材料 として用いる場合には、当該隔壁によって隔たれた領域間において、細孔群 Aに選択 的に取り込まれる化合物 aを細孔群 A内を通して、一方、細孔群 Bに選択的に取り込ま れる化合物 bを細孔群 B内を通して輸送させることもできる。このとき、各化合物の濃度 分布や温度分布に従って化合物が移動するようにすれば、その輸送方向は、化合物 a の輸送方向と化合物 bの輸送方向を同じにすることも可能であるし、化合物 aの輸送方 向と化合物 bの輸送方向が対向するようにすることも可能である。
[0035]
また、細孔群ごとにそれぞれ取り込んだ 2種以上のゲスト分子を、異なる条件下で、
別々に放出させることができる。例えば、 2種以上の細孔群にそれぞれゲスト分子を取 リ込んだ高分子錯体を所定条件下におく場合、この条件下に晒す時間によって、放出 されるゲスト分子が異なってくる。具体的には、細孔群 1及び細孔群 2にそれぞれ異な る成分を取り込んだ高分子錯体を加熱することによって、まず、細孔群 1に含まれる細 孔内に取り込まれた成分を放出し、さらに加熱を続けることによって、細孔群 2に含まれ る細孔内に取り込まれた成分を放出することができる。
[0036]
尚、ここでは、説明の便宜上、混合物 1、細孔群 1等の表現を用いて、上記高分子錯 体の作用について説明したが、これら混合物 1等の表現は特定の混合物、細孔群等を 指すものではない。
[0037]
特願 2006— 6341 6に記載の高分子錯体は、芳香族化合物配位子と共に三次元 格子状構造内の積み重ね構造を構成し、細孔の内面壁を形成する非配位性芳香族 化合物の芳香環上に、置換基 Aを導入したものであり、高分子錯体内に形成された細 孔群の細孔内が該置換基 Aにより修飾されている点が特願 2004— 3821 52の高分 子錯体と異なっている。
[0038]
非配位性芳香族化合物の芳香環上に導入された置換基 Aは、その詳細な機構は完 全には解明できていないものの、通常、規則性を持って 2種以上の細孔群のうちの特 定の細孔群の細孔内面を向いて配向する。上記置換基 Aと、上記 2種以上の細孔群 のうちの特定の細孔群との間に作用する相互作用、例えば、水素結合、イオン結合、 双極子相互作用、四極子相互作用のような静電相互作用や、立体的相互作用に加え て、前記積み重ね構造における前記非配位性芳香族化合物の H OMOと前記芳香族 化合物配位子の LU MOの節面や電子分布等の軌道形状の重なり(7Γ— π相互作用) による安定化効果が当該置換基の配向を決定している。置換基が特定の細孔群の細
孔内面の一部を構成することによって、当該細孔群の形状、サイズ、雰囲気が大きく変 化する。その結果、同時に細孔群の細孔内環境の特性、例えば、酸塩基性、親水疎 水性、極性、キラリティ、流動性等が大きく変化し、当該細孔群の特定のゲスト分子に 対する親和性が変化する。
[0039]
この細孔内の環境特性は、非配位性芳香族化合物の芳香環上に導入する置換基 の性質や、数、大きさ、さらに、 2つ以上の置換基を導入する場合にはその組み合わせ 等によって、自在に制御可能である。例えば、置換基の導入によって、置換基が導入さ れていない非配位性芳香族化合物により構成された高分子錯体では取り込みが不可 能であったゲスト分子の取り込みが可能となつたり、或いは、置換基が導入されていな い非配位性芳香族化合物により構成された高分子錯体において、各細孔群が有して いる細孔内の雰囲気のみでは分離不可能な 2種以上のゲスト分子を、置換基の導入 による細孔内の形状やサイズの変更により、分離可能とすることが可能となる。また、 非配位性芳香族化合物の芳香環上に導入する置換基の種類や数、導入位置等の制 御により、 2種以上の細孔群間の細孔内環境特性を大きく異ならしめることが可能であ リ、大きく特性の異なる 2種以上のゲスト分子を各細孔群内に取り込み、放出及び 又 は輸送等することが可能となる。
[0040]
さらに具体的には、例えば、置換基が導入されていない非配位性芳香族化合物によ リ構成された高分子錯体において、親水性が異なる 2つの細孔群がある場合、非配位 性芳香族化合物への置換基の導入によって、(1 )一方の細孔群の親水性を高めたり 、或いは、(2)—方の細孔群の親水性を低くしたり、或いは、(3)これら 2つの細孔群の 親水性に差を持たせつつ共に高めたりすることができる。(1 )や(2)によれば、これら 2 つの細孔群間における細孔内の親水性の差を大きくすることで、ゲスト分子に対する親 和特異性がより高まり、ゲスト分子の取り込みや放出による分離能等を高めることがで
きる。また、(3 )によれば、置換基を導入していない非配位性芳香族化合物により構成 された細孔群では取り込みが不可能であった親水性を有するゲスト分子の取り込みを 可能とし、さらに、各細孔群による異なるゲスト分子の取り込みを可能とする。以上のよ うに、非配位性芳香族化合物への置換基の導入により、あらゆる特性を付与した細孔 を有する高分子錯体の構築が可能であり、高分子錯体の細孔内に取り込まれるゲスト 分子の種類や量、その配置、さらにはそれらゲスト同士の反応速度や反応選択性等を 制御することができる。また、非配位性芳香族化合物に置換基を導入してなる高分子 錯体は、置換基の種類、数、位置等の選択肢が広 分子設計性に優れている。
[0041 ]
非配位性芳香族化合物の芳香環上への置換基導入は、さらに、当該非配位性芳香 族化合物の高分子錯体内における配列の規則性を高めるという効果もある。上述した ように、非配位性芳香族化合物に導入された置換基は、当該置換基の周囲の物理化 学的及び 又は立体的相互作用によって、 2種以上の細孔群のうち、特定の細孔群 の細孔の内面を向くように配向し、細孔内環境が固有の特性を有することとなる。この 際、このような相互作用によって、スタツキングしている非配位子性芳香族化合物と芳 香族化合物配位子の配列の規則性が高まり、非配位性芳香族化合物と芳香族化合 物配位子とによる積み重ね構造が規則正しく形成され、そして強固な構造となる。
[0042]
上記積み重ね構造の規則性、すなわち、細孔群の構造上の規則性が高くなることは 、高分子錯体内における各細孔群の細孔内環境特性が均一に保たれるということであ る。つまり、高分子錯体の細孔群のゲスト分子に対する選択性がより高くなることを意 味する。
[0043]
高分子錯体において、芳香族化合物配位子が中心金属に配位してなる三次元ネット ワーク構造としては、例えば、 2つ以上の独立した三次元ネットワーク構造が複合化、
好ましくは同一空間を共有するように複合化してなる複合化三次元ネットワーク構造が 挙げられる。具体的には、複合化三次元ネットワーク構造として、 2つ以上の独立した 三次元ネットワーク構造が同一空間を共有するように互いに絡み合った相互貫通構造 を挙げることができる。
[0044]
また、本発明において、芳香族化合物とは、少なくとも 1つの芳香環を有する化合物 であり、置換基を有してもよいし、環内へテロ原子を含んでいてもよい。また、芳香族化 合物配位子とは、配位性部位を 2つ以上有する多座配位性の芳香族化合物である。 好ましくは、当該芳香族化合物配位子を構成する全配位性部位がほぼ同一平面内に 存在する芳香族化合物であり、さらに好ましくは、 7Γ共役系により芳香族化合物配位 子全体として擬平面形状である、すなわち、芳香族化合物配位子の分子構造の少なく とも一部が 7Γ共役系により一体化して安定な擬平面構造をとり、当該擬平面構造の中 に全ての配位性部位が含まれている芳香族化合物配位子である。
[0045]
このような擬平面状の構造を有する芳香族化合物を配位子として用いることにより、 当該芳香族化合物が中心金属イオンに配位結合して形成される三次元ネットワーク構 造は、より規則的な構造と剛直性を有するものとなる。三次元ネットワーク構造の規則 性が増すことによって、芳香族化合物配位子と非配位性芳香族化合物との積み重ね 構造が安定に形成されると同時に、より高い規則性を持った細孔、細孔群を形成する ことができる。また、独立した 2つ以上の三次元ネットワーク構造が複合化した複合化 三次元ネットワークを形成することができる場合がある。
[0046]
一方、三次元ネットワーク構造が剛直性を有することによって、形成される三次元格 子状構造の安定性、強度等を高く保持することができる。また、三次元ネットワーク構 造が剛直性を有することによって高分子錯体の強度が比較的大きなものとなるため、
強度を要するような用途における使用も可能となり、高分子錯体を利用できる技術範 囲が広くなる。
[0047]
以上のような観点から、好適に使用できる芳香族化合物配位子としては、例えば、一 つの芳香環を中心として、該芳香環の 7Γ共役系により形成される平面の広がる方向に 向かって等間隔の放射状に配位原子が配置されたもの等が挙げられるが、これに限定 されない。
[0048]
また、非配位性芳香族化合物とは、配位結合以外の結合又は相互作用によって前 記芳香族化合物配位子間に入り込み、高分子錯体内に存在する芳香族化合物であり 、高分子錯体内において配位結合を形成していないことを意味する。従って、ここで言う 非配位性芳香族化合物は、本質的に配位結合を形成する能力を有するものであって もよい。好ましくは、分子構造に含まれる全ての芳香環が π共役系により一体化して安 定な擬平面形状を有する芳香族化合物である。このように擬平面形状を有することに よって、前記芳香族化合物配位子により形成される三次元ネットワーク構造内におい て、非配位性芳香族化合物が芳香族化合物配位子間に挿入されやすくなリ、安定した 芳香族化合物配位子一非配位性芳香族化合物一芳香族化合物配位子積層構造を 形成することができる。
[0049]
このとき、前記芳香族化合物配位子も擬平面形状を有する場合には、芳香族化合物 配位子の平面と、非配位性芳香族化合物の平面とが面しあって積み重なり合い、芳香 族化合物配位子一非配位性芳香族化合物一芳香族化合物配位子間に 7:— 7Γ相互 作用が働く。その結果、非配位性芳香族化合物は、芳香族化合物配位子と直接的な 結合を有していないが、芳香族化合物配位子間に強固に拘束されることとなり、より安 定な三次元格子状構造を形成することができる。
[0050]
このように芳香族化合物配位子間に強固に拘束された非配位性芳香族化合物は、 一般的な芳香族化合物をゲスト分子とするゲスト交換条件下においても抽出されない 。そのため、芳香族化合物配位子間に非配位性芳香族化合物が強固に拘束された積 み重ね構造を有する三次元格子状構造は、当該三次元格子状構造内の細孔内に取 リ込まれたゲスト分子をその他のゲスト分子と交換する前後で、その構造を変化させる ことなく保持することができる。
[0051 ]
本発明において化学修飾の対象である高分子錯体は、上記非配位性芳香族化合物 が自己の芳香環上の特定位置に特定の置換基 Aを有している。ここで、置換基 Aとは、 非配位性芳香族化合物の芳香環上の特定位置において、水素原子に代えて置換さ れた何らかの原子又は原子団のことを意味する。
[0052]
置換基 Aは、該非配位性芳香族化合物を構成要素とする高分子錯体内に形成され る 2種以上の細孔群のうち特定の細孔群 B内に入ることができれば、特に限定されず、 細孔群 Bの細孔内を所望の環境特性とするために、適宜選択することができる。非配 位性芳香族化合物が有する置換基 Aは、 1つであっても 2つ以上であってもよい。また、 置換基 Aを 2つ以上導入する場合には、置換基 Aは 1種類のみであってもよいし、 2種 以上を組み合わせてもよい。さらに、非配位性芳香族化合物の芳香環上における置換 基 Aの位置は、特に限定されず、複数の置換基 Aが 1種の細孔群の細孔内面を向くよ うに導入されていてもよいし、 2種以上の細孔群の細孔内面にそれぞれの置換基 Aが 向くように導入されていてもよい。
[0053]
また、芳香族化合物配位子間に非配位性芳香族化合物が挿入されてなる積み重ね 構造とは、芳香族化合物配位子の間に前記非配位性芳香族化合物が挿入されてなる
単位を少なくとも一つ含めばよいが、芳香族化合物配位子と非配位性芳香族化合物と が交互に積み重なる構造がある程度連続することが好ましい。尚、後述する高分子錯 体 1〜1 7では、この積み重ね構造が無限に続いているが、 2種以上の細孔群を形成す るのに充分な積み重ね単位の数であれば無数に連続していなくてもよい。
[0054]
芳香族化合物配位子と金属イオンが配位結合した充分な三次元の広がりを持つ三 次元ネットワーク構造と、芳香族化合物配位子と非配位性芳香族化合物とが充分に 積み重なった積み重ね構造とが形成される場合、細長いチャンネル形状の細孔が形成 される。
[0055]
高分子錯体内の 2種以上の細孔群が固有に有するゲスト分子に対する親和性は、 2 種以上の細孔群から任意に選ばれる 2つの細孔群間の対比において、細孔のサイズ、 細孔の形状及び細孔内雰囲気のうち少なくとも一つが異なれば、互いに異なるものとな る。それぞれの細孔群を構成する細孔の、特定のゲスト分子に対する親和性を高め、 各細孔がより選択的に特定のゲスト分子を取り込むようにするためには、 2種以上の細 孔群から任意に選ばれる 2つの細孔群間の対比において、細孔のサイズ、形状、細孔 内雰囲気のうち 2つ以上が互いに異なることが好ましい。特に、各細孔群を構成する細 孔のサイズ、細孔の形状及び細孔内雰囲気の 3つ全てが互いに異なる細扎群は、ゲス ト分子に対してより高い選択性を示すため好ましい。
[0056]
細孔群間において、細孔内雰囲気を異ならしめる要素は、それによつて細孔内雰囲 気が互いに異なり、ゲスト分子に対する親和性が異なるようなものであれば特に限定さ れず、各ゲスト分子の性質(例えば、極性等)によって様々なものがある。非配位性芳 香族化合物に導入された置換基が有する特性によって細孔内雰囲気は大きく変化す る力 当該置換基の特 による細孔内の修飾以外にも、例えば、細孔を形成する壁の
内面において、該壁を構成する芳香族化合物(芳香族化合物配位子及び Z又は非配 位性芳香族化合物)の Γ平面が露出している領域と、芳香族化合物の水素原子が露 出した領域との占有比が異なることによつても、細孔内の雰囲気は異なってくる。
[0057]
また、細孔群間において細孔のサイズが異なる場合、ゲスト分子の分子サイズによつ て、各細孔群を構成する細孔内に取り込まれるゲスト分子の種類ゃ該ゲスト分子の取 リ込まれる量が異なってくる。細孔のサイズは、連続した 1つの細孔であっても高分子 錯体内における位置によって異なり、細孔サイズの最小値は細孔内に取り込めるゲス 卜分子の最小分子サイズ、細孔サイズの最大値は細孔内に取り込めるゲスト分子の最 大分子サイズや取り込めるゲスト分子の量に大きく影響する。従って、細孔サイズの範 囲はゲスト分子に対する親和性を左右する重要な要素である。
[0058]
高分子錯体の三次元格子状構造内に形成される細孔は、局所的には多少蛇行して いるが、その三次元格子状構造上、全体として見たときには一定の方向に伸びており、 方向性を持っている。そこで、本発明においては、細孔の延在する方向に対して最も垂 直に近い結晶面と平行な面(以下、平行面ということがある。)における細孔の内接円( 以下、単に細孔の内接円ということがある。)の直径を細孔サイズの指標とすることがで きる。ここで細孔の延在する方向とは、細孔の局所的な蛇行を無視した 1つの連続する 空隙全体の方向である。
[0059]
このような細孔の延在する方向は、例えば、以下のようにして決定することができる。 まず、サイズを測定するチャンネルを横切る適当な方向の結晶面 X (A面、 B面、 C面か それぞれの対角面など)及び当該結晶面 Xと一単位胞ずれた結晶面 Yを選び、それぞ れの結晶面 X, Yにおけるチャンネルの断面図を描く。次に、それぞれの結晶面におけ るチャンネルの断面形状の中心間を、立体図において直線(一点鎖線)で結ぶ(図 5参
照)。このとき得られる直線の方向が、チャンネルが延在する方向と一致する。そして、 この得られた直線に対して最も垂直に近い角度で交差する結晶面を選び、その結晶面 における細孔の内接円の直径を細孔のサイズとすることができる。
[0060]
細孔のサイズのみを、細孔がゲスト分子に対して有する選択性を決定する要素として 考慮した場合、この内接円の直径以下の分子サイズを有するゲスト分子であれば、通 常細孔内に難なく取り込めることができるため、細孔のサイズを内接円の直径で定義 することは大きな意味を持つ。各細孔群間の細孔サイズは、互いに異なっていればよく 、その差などに限定はない。
[0061 ]
本発明の化学修飾の対象となる高分子錯体内に形成される細孔のサイズは、選択 的に取り込みたい成分によって、適宜設計すればよく、そのサイズによって、ガス状の 小分子や、タンパク質及びその他の生体由来分子のような大分子の成分を、細孔内に 取り込むことができる。具体的には、上記内接円の直径を 2〜70 A、好ましくは 2 ~ 20 Aとすることができる。或いは、上記平行面における細孔の内接楕円(以下、単に細孔 の内接楕円ということがある)の長径を 5〜70 A、該細孔の内接楕円の短径を、 2〜5 O Aとすることができる。各細孔群の細孔サイズが異なる場合は、上記範囲内において 各細孔群の細孔サイズが互いに異なることが好ましい。
[0062]
異なる細孔群間の比較要素として、上記細孔の内接円の直径と共に、細孔形状の 上記内接円からのずれを規定する尺度として、上記細孔の内接楕円の短径及び長径 を考慮することがさらに好ましい。
[0063]
ここで、図 1を用いて、細孔のサイズの測定(算出)方法について、説明する。図 1は、 化学修飾の対象となリぅる高分子錯体4 { [ 。12 ) 3 (02 ( D4 ) ] (ニトロベンゼン)4 (メタ
ノール) n } z ( C :卜リス(4一ピリジル)トリァジン、 D4 : 1—ヒドロキシ卜リフエ二レン、 n、 zは 不定比組成)の主骨格を、ファンデルワールス半径を用いて描いた図の結晶面(01 0) における投影図であり、細孔 P及び細孔 Q内に取り込まれたゲスト分子は省略している
[0064]
高分子錯体 4において、細孔 P及び細孔 Qは結晶面(01 0)に対して垂直な方向(局 所的な方向ではなく、上記したような全体的な方向)、すなわち、図 1の紙面に対して垂 直に延びている。つまり、図 1の紙面が上記平行面であることから、図 1に示された細孔 の内接円の直径、及び Z又は内接楕円の長径、短径を測定し、実際のスケールに換 算した値が細孔のサイズということになる。
[0065]
細孔のサイズは、分子設計、例えば、三次元格子状構造を構成する芳香族化合物 配位子や非配位性芳香族化合物の分子サイズ、中心金属イオンと芳香族化合物配 位子の配位力、非配位性芳香族化合物に導入する置換基の種類、数及び位置等に よって、調節することが可能である。
[0066]
また、細孔群間において細孔の形状が異なる場合、例えば、上記内接円の直径や上 記内接楕円の長径及び短径がほぼ同一であっても、ゲスト分子の形状によって、各細 孔群を構成する細孔内に取り込まれるゲスト分子が異なってくる。細孔の形状は、細孔 群間において、少なくとも一箇所において互いに異なればよく、連続した細孔の全領域 で互いに異ならなくてもよい。
[0067]
細孔の形状もまた、分子設計、例えば、三次元格子状構造を構成する芳香族化合 物配位子や非配位性芳香族化合物の形、非配位性芳香族化合物に導入する置換基 の種類、数及び位置等によって、調節することが可能である。
[0068]
三次元ネットワーク構造内の前記積み重ね構造において、前記非配位性芳香族化 合物の HOMO (最高被占軌道)と前記芳香族化合物配位子の LUMO (最低空軌道) が、その節面の数や位置、電子分布、エネルギーレベルについて軌道形状の重なりを 有し(図 6(b)、図 7(b)参照)、その積層構造が安定化されるように、非配位性芳香族 化合物と当該非配位性芳香族化合物に導入する置換基、及び、芳香族化合物配位 子を選択することで、高分子錯体内に形成される前記積み重ね構造を予測することが でき、効率的な分子設計が可能である。
尚、図 6の(a)は、卜リス(4一ピリジル)トリァジン(C) [芳香族化合物配位子]と、 1一 ヒドロキシトリフエ二レン(D4) [非配位性芳香族化合物]とを用いて構築された高分子 錯体 4における、卜リス(4—ピリジル)卜リアジン(C)の LUMOと 1—ヒドロキシ卜リフエ二 レン(D4)の HOMOを示す図であり、図 6の(b)は(C)と(D4)の HOMOと LUMOの重 ね合わせを示す図である。また、図 7の(a)は、卜リス(4一ピリジル)卜リアジン [芳香族 化合物配位子] (ひと、 2—アミノトリフエ二レン [非配位性芳香族化合物] (D',)とを用 いて構築された高分子錯体における、卜リス(4一ピリジル)トリアジン(C)の LUMOと 2 一アミノトリフエ二レン(D' ,)の HOMOを示す図であり、図 7の(b)は(C)と(D' ,)の HO MOと LUMOの重ね合わせを示す図である。
[0069]
以下、高分子錯体を構成する芳香族化合物配位子、非配位性芳香族化合物、中心 金属となる金属イオンについて、具体的に説明する。
[0070]
芳香族化合物配位子としては、例えば、下記式(1 )で表される芳香族化合物が挙げ られる。
[0071]
(式 1 )
Ar ~ x— Y)
[0072]
(式中、 Arは芳香環を有する構造である。 Xは 2価の有機基であるか又は Arと Yの間を 直接結ぶ単結合である。 Yは配位原子又は配位原子を含む原子団である。 nは 3〜6 の数を表す。一分子内に含まれる複数の X同士は互いに異なっていてもよく、且つ、複 数の Y同士は互いに異なっていてもよい。)
[0073]
ここで、式(1 )において、 Arは、擬平面構造を形成する 7Γ平面を有し、非配位性芳香 族化合物との 7Γ— 7Γ相互作用を有するものである。 Arとしては特に限定されず、芳香 族化合物配位子の分子サイズが高分子錯体内に形成される細孔のサイズにある程度 影響することを考慮して適宜選択すればよい。具体的には、単環性の芳香環、特に 6 員環の芳香環、或いは、 2〜5環性の縮合多環性の芳香環、特に 6員環の芳香環が 2 〜5個縮合した縮合多環性の芳香環が挙げられる。
[0074]
合成の容易性から、 Arとしては、 6員環の芳香環等の単環性芳香環が好ましい。単 環性の 6員環の芳香環としては、例えば、ベンゼン環、卜リアジン環、ピリジン環、ピラジ ン環等が挙げられる。
[0075]
Arは、芳香環を有する構造であればよく、一部に脂環式環状構造を含んでいてもよい し、環内へテロ原子を含んでいてもよい。また、一(X— Y)以外の置換基を有していても よい。
[0076]
式(1 )において、 Arと Yとの間に介在する Xについて、 2価の有機基としては、高分子 錯体中に形成される細孔に要求されるサイズ等によって適宜その鎖長等を選択すれば
よいが、比較的大きな分子サイズを有する有機化合物を取り込める細孔を形成するた めには、例えば、炭素数 2〜6の 2価の脂肪族基、 6員環の 2価の単環性芳香環、 6員 環の芳香環が 2〜4個縮合した縮合多環性芳香環が挙げられる。
[0077]
ここで芳香環は、環内へテロ原子を含んでいてもよ 置換基を有していてもよい。ま た、一部に脂環式構造を含むものであってもよい。脂肪族基は、分岐構造を有していて もよいし、不飽和結合を含んでいてもよいし、ヘテロ原子を含んでいてもよい。
[0078]
上記 2価の有機基の具体例としては、フエ二レン基、チォフエ二レン、フラニレン等の単 環性芳香環や、ナフチル基及びアントラセン等のベンゼン環が縮合した縮合多環性芳 香環、アセチレン基、エチレン基、アミド基、エステル基等の脂肪族基、並びにこれらの 基が任意の数及び順序で連結した構造を有するものが挙げられる。一分子中に含まれ る複数の Xは、互いに同一であっても異なっていてもよい力 通常、合成の容易性の観 点から、同一であることが好ましい。
[0079]
Yは、中心金属となる中心金属イオンに配位することができる配位原子又は配位原子 を含む原子団であり、中心金属イオンに配位して三次元ネットワーク構造を形成できる ものであれば、特に限定されない。例えば、下記式(2)で表される基が挙げられる。
[0080]
(式 2 )
[0081 ]
式(2b)、(2c)及び(2d)は、共鳴構造をとることにより、中心金属イオンに孤立電子 対を供与できる。以下に、式(2c)の共鳴構造を代表例として示す。
[0083]
Yは、配位原子そのものであってもよいし、配位原子を含む原子団であってもよい。例 えば、上記 4一ピリジル基(2a)は、配位原子(N )を含む原子団である。 Yの配位原子 が有する孤立電子対により、中心金属イオンに配位結合する際、適度な配位力が得ら れる点からは、上記式のうちピリジル基(2a、 2f)が特に好ましい。
一分子中に含まれる複数の Yは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
[0084]
上述したように、芳香族化合物配位子は、当該芳香族化合物配位子を構成する全 配位性部位がほぼ同一平面内に存在する芳香族化合物であることが好ましく、特に 7Γ 共役系により芳香族化合物配位子全体として擬平面形状であることが好ましい。すな わち、上記(1 )式で表される芳香族化合物配位子(1 )に含まれる全ての Yは、ほぼ同 一平面内に存在することが好ましい。特に、 Arと共に、 Arに結合する複数の一(X— Y) が兀共役系により一体化して安定な擬平面構造をとリ、当該擬平面構造の中に全ての Yが存在することが好ましい。
[0085]
Arと複数の一(X— Y)が π共役系により一体化して擬平面構造をとる芳香族化合物 配位子において、一(X— Y)は剛直な直線状の構造を有し、使用を意図する環境にお いて、その軸周り回転が制限されるものであることが、非配位性芳香族化合物との効 果的な 7Γ — 7Γ相互作用の発現の観点から好ましい。
[0086]
このような観点から、上記にて例示されたもののうち、 Xとしては、 Arと Υを直接結ぶ単 結合、フエ二レン基等の単環性芳香環やナフチル基及びアントラセン等の縮合多環性 芳香環のような芳香環、アセチレン基及びエチレン基等の脂肪族基、並びにこれらの基 が任意の数及び順序で連結した構造を有するものが好ましい。一(X— Y)が芳香環、ァ セチレン基、エチレン基からなる構造或いはこれらが連結した構造を有する場合には、 立体障害により軸回転が制限される。さらに、芳香環、アセチレン基、エチレン基からな る構造が、 兀電子が非局在化した共役系を形成する場合には、立体配座のエネルギ 一障壁によっても軸回転が制限される。従って、上記式(1 )で表される芳香族化合物 配位子が一体化して擬平面構造をとることができ、安定した三次元ネットワーク構造を 形成することができる。
[0087]
また、 Yで表される配位原子又は Yに含まれる配位原子は、高分子錯体の設計の容 易性の点から、上記剛直な直線状の構造を有する一(Χ— Υ)の軸の延長方向に孤立 電子対を有していることが好ましい。
[0088]
Arに結合する一(X— Υ)の数は、 Arの構造にもよるが、通常、 3〜6個である。また、 一(X— Y)は、 Arを中心とするほぼ同一平面内に等間隔の放射状に配位原子が配置 されるように、 Arに結合していることが好ましい。
[0089]
以上のような、一つの芳香環含有構造 Arを中心として、該芳香環の 7:共役系により 形成される平面の広がる方向に向かって等間隔の放射状に配位原子が配置された構 造を有する芳香族化合物配位子(1 )としては、以下の式(4 )で表されるものが挙げら れる
[0090]
上記式(4)中、その電子不足状態のため、非配位性芳香族化合物との電荷移動に よる相互作用が強 より強固に安定化した非配位性芳香族化合物との積み重ね構 造を形成することができることから、特にトリス(4—ピリジル)トリァジン(式 4a) [ 2 , 4 , 6—トリス(4一ピリジル) 1 , 3 , 5—卜リアジン]が好ましい。
[0092]
一方、非配位性芳香族化合物として、具体的には、縮合多環芳香族化合物が挙げ られる。既述したような理由から、分子構造に含まれる全ての環が 7Γ共役系によリー体 化して安定な擬平面形状を有する芳香族化合物であることが好ましいためである。
[0093]
縮合多環芳香族化合物としては、 2〜7環性の化合物が挙げられる。芳香族化合物 配位子との積み重ね構造が安定なものとなるように、縮合多環芳香族化合物はある程 度広がりを持った平面形状を有することが好ましい。このような縮合多環芳香族化合 物としては、下記式(5)で表されるものが挙げられる。
[0094]
(式 5)
5 (d) 5 (e) 5 (f)
5 (g) 5 (h) 5 (i)
[0095]
非配位性芳香族化合物の芳香環上に導入される置換基 Aとしては、特に限定されず 、高分子錯体内に形成される細孔内に入る大きさであればよい。従って、高分子錯体 内に形成される細孔のサイズによって、置換基導入の効果が得られる置換基 Aは異な つてくる力 置換基 Aとしては、例えば一W— OH、一W— NH2、一W— N02、一 W— CH い一 W— OCOCHい一 W— CHO、アルキルエーテル鎖、アルキルチオエーテル鎖、ァ ルキレングリコール鎖、及びペプチド鎖(Wは 2価の有機基又は単結合を示す)より選ば
れる少なくとも 1つの官能基が挙げられる。
[0096]
2価の有機基 Wとしては、得られる置換基 Aが特定の細孔 B内に入る大きさであれば 特に限定されないが、低級炭素鎖、具体的には炭素数 1〜5の炭素鎖又は単結合が 好ましく、特に、炭素数 1〜3の炭素鎖又は単結合が好ましい。また、アルキルエーテル 、アルキルチオエーテル、アルキレングリコールのアルキル基又はアルキレン基としては 、低級炭素鎖、具体的には炭素数 1〜5の炭素鎖が好ましく、特に炭素数 1〜3の炭素 鎖が好ましい。また、アルキレングリコール鎖、ペプチド鎖としては、アルキレングリコー ル単位又はペプチド単位を 1〜2個含むものが好ましい。
[0097]
具体的な置換基 Aとしては、例えば、一 CH2— OH、 - CH2 CH2一 OH、一 OH、一 CH 2—N H2、一 CH2 CH2— N H2、一 N H2、一 CH2— N02、一 CH2 CH2— N02、一 N02 、一 CH2— CH3、一 CH2 CH2— CH3、一 CH3、一 CH2— OCOCH3、 - CH2 CH2一 O COCH3、一 OCOCH 一 O— CH3、一 O— CH2 CH3、一 S— CH3、一 S— CH2 CH3、 - 0 - CH2 CH2 - OH ,一 CH2— CHO、一 CH2 CH2— CHO、一 CHO等が例示できる
[0098]
置換基 Aとして、水素結合、イオン結合、静電相互作用(双極子相互作用、四極子相 互作用)等の比較的強い相互作用を有するものを選択することによって、当該置換基 の配向及び非配位性芳香族化合物の配列を制御することが可能となる。静電相互作 用や立体作用のように、ファンデルワールス力よりも大きな原子間又は分子間相互作 用を発現できる置換基を非配位性芳香族化合物の芳香環上に導入することにより、芳 香族化合物配位子が金属イオンに配位して形成された三次元ネットワーク構造内にお いて、芳香族化合物配位子と非配位性芳香族化合物の自己組織化による分子配列 がより精密に制御され、置換基 A自身の配向性や、芳香族化合物配位子と非配位性
芳香族化合物とのスタツキング構造等の規則性が高まる。
[0099]
上記したような比較的強い相互作用を発現する置換基 Aとしては上記したもののうち 、一 CH2 -OH,一 CH2CH2— OH、一 OH、一 CH2— NH2、一 CH2CH2— NH2、一N H2、一 CH2— N02、一 CH2CH2— N02、一 N02、一 CH2— OCOCH3、一 CH2CH2 一 OCOCH3、一 OCOCH3、一O— CH2CH2— OH等力《挙げられる。
[0100]
強固な 7Γ— 7Γスタツキング構造を形成し、安定したネットワーク構造を構築するといゔ 観点からは、置換基 Αとして電子供与性の強いものが好ましい。電子供与性の強い置 換基としては、一 W— OH、一 W— NH2、一 W— CH3及びアルキルエーテル鎖等が挙 げられ、具体的には、一 CH2—OH、一 CH2CH2— OH、一 OH、一 CH2— NH2、一 CH 2CH2— NH2、一 NH2、一 CH2— CH3、一 CH2CH2— CH3、一 CH3、一 O— CH3、一 0— CH2CH3等力《挙げられる。
[0101]
また、置換基 Aがその内面に配向する細孔が、ゲスト分子を取り込む、すなわち、包 接挙動を示すためには、該細孔が置換基 Aによって占有されないことが重要である。こ のような観点から、細孔のサイズに合わせて、置換基 Aの大きさを決定することが好ま しい。尚、置換基 Aの大きさによって、置換基 Aが配向する細孔内の空間の大きさも変 わってくるため、取り込みたいゲスト分子にあわせて置換基 Aの大きさを決定することも できる。
[0102]
従って、細孔の大きさ、包接しようとするゲスト分子の大きさ等によって、好ましい置換 基 Aの大きさは異なってくるが、包接挙動を示す細孔を形成するという観点からは、置 換基 Aは、水素原子を除く総原子数が 3以下の原子団であることが好ましい。具体的に は、上記 Wとして 1〜2の炭素鎖又は単結合が好ましく、また、置換基 Aとしてアルキル
エーテル鎖を選択する場合には、炭素数 1又は 2の炭素鎖が好ましい。このような置換 基 Aとしては、例えば、一CH2 -OH,— CH2CH2— OH、一 OH、一 CH2—NH2、一 C H2CH2—NH2、一 NH2、一 N02、一 CH2— CH3、一 CH2CH2— CH3、一 CH3、一 O COCH3、 -O-CH3、一 O— CH2CH3、 -S-CH3、一 S— CH2CH3等が挙げられる
[0103]
非配位性芳香族化合物に導入される置換基 Aの数もまた特に限定されず、 1つのみ でも、複数であってもよい。置換基 Aを 2つ以上導入する場合、これら複数の置換基 A は互いに異なっていてもよいし、或いは、同じであってもよい。導入する置換基 Aの数に よって、細孔の形状やサイズ、雰囲気を調整することが可能であることは既に述べた。
[0104]
また、置換基を導入する非配位性芳香族化合物の芳香環上の位置は特に限定され ない。置換基の導入位置によって、細孔の形状やサイズが変化する他、立体作用によ つて置換基そのものの配向性が変化する可能性が考えられる。非配位性芳香族化合 物に複数の置換基を導入する場合には、各置換基の導入位置によって、複数の置換 基が同一の細孔内を向くようにして、これら複数の置換基で 1つの細孔群を修飾したり 、或いは、それぞれの置換基が異なる細孔内を向くようにし、各置換基で異なる細孔群 を修飾することもできる。
[0105]
上記芳香族化合物配位子が配位する中心金属イオンとしては、様々な金属イオンを 適宜選んで用いればよいが、遷移金属イオンが好ましい。本発明において遷移金属と は、周期表の 12族の亜鉛、カドミウム、水銀も含むものであり、中でも、周期表の 8〜1 2族のものが好まし 具体的には、亜鉛、銅、ニッケル、コバルト、鉄、銀等が好ましい
[0106]
本発明においては、中心金属イオンは、通常、金属塩等の化合物の形で三次元格子 状構造内に存在する。これら中心金属イオン含む金属化合物としては、ハロゲン金属 塩が挙げられ、具体的には、 Znl2、 ZnCI2、 ZnBr2、 ΝίΙ2、 NiCI2、 NiBr2、 CoI2、 CoCI 2、CoBr2等が好ましく用いられる。
[0107]
芳香族化合物配位子として上記(1)式、特に上記式(4)に示したような芳香族化合 物、非配位性芳香族化合物として縮合多環芳香族化合物、特に上記式(5)に示した ような芳香族化合物を用いた場合、高分子錯体内に形成される 2種以上の細孔群から 選ばれる細孔群に含まれる細孔のサイズは、上記平行面における内接円の直径を 3 〜10A、特に 4. 5〜7. OAの範囲、上記平行面における細孔の内接楕円の長径を 5 〜15A、特に 8. 5-10. OAの範囲、該細孔の内接楕円の短径を 3〜13A、特に 6 . 0〜8. OAの範囲とすることができる。このようなサイズの細孔が形成された高分子 錯体は、有機化合物のような比較的大きなサイズの化合物を取り込むことができる。
[0108]
ここで、芳香族化合物配位子として卜リス(4一ピリジル)卜リアジン、非配位性芳香族 化合物として一位に一 OH基を導入した卜リフエ二レン(1ーヒドロキシトリフエ二レン)、中 心原子となる金属イオンを含む金属化合物として Znl2、を用いて得られる高分子錯体 を例として、高分子錯体の製造方法、高分子錯体の構造をより具体的に示す。
[0109]
下記式(6)において、卜リス(4一ピリジル)トリァジン(C)は、トリアジン環と 3つのピリ ジル環がほぼ同一平面内に存在する擬平面構造を有する化合物であり、 3つの 4ーピ リジルの窒素原子において金属イオンに配位することができる。 1ーヒドロキシ卜リフエ二 レン(D4)もまた、擬平面形状を有する化合物であり、卜リフエ二レン骨格の芳香環上に ヒドロキシ基(一 OH)が結合している。卜リス(4一ピリジル)トリァジン(C) (以下、式中に おいて、単に(C)と表すことがある)、 Znl2、及び 1—ヒドロキシトリフエ二レン(D4) (以下
、式中において、単に(D4)と表すことがある)から形成される三次元格子状構造を有す る高分子錯体は、卜リス(4一ピリジル)トリァジン(C)と 1—ヒドロキシトリフエ二レン(D4) を共存させた状態で、 Znl2と作用させることによって、生成する(式 6)。
[0110]
(式 6)
{[(Znl
2)
3(A)
2(B
4)]-solvents}
n
[0111]
例えば、 {[(Znl2)3 (C)2 (D4)] (ニトロベンゼン)4 (メタノール) Π1Ζ (n、 zは不定比組成 ))で表される単結晶構造を有する高分子錯体(以下、高分子錯体 4ということがある) は、三層溶液(上層: Znl2のメタノール溶液、中間層:メタノール、下層:卜リス(4一ピリ ジル)卜リアジンと 1ーヒドロキシトリフエ二レンのニトロベンゼン一メタノール溶液)を用い て製造することができる。このとき、中間層であるメタノール層は、 Znl2と卜リス(4一ピリ ジル)トリアジン及び 1ーヒドロキシトリフエ二レンとが急激に混ざり合わないようにするた めの緩衝剤である。この三層溶液を静置し、徐々に Znl2とトリス(4—ピリジル)トリアジ ン及び 1ーヒドロキシ卜リフエ二レンとを混ぜ合わせる(二層拡散法)ことにより、高分子 錯体 4を生成させる。
[0112]
図 2に高分子錯体 4の X線結晶構造解析により得られた図を示す。図 2(A)は、紙面( 結晶 010面)に対して垂直な方向を軸 bとするものであり、高分子錯体 4の三次元格子 状構造内の相互貫通構造を、後述するチャンネル P及び Qが伸びる方向(軸 b)に対し て垂直な面において切断したものである。尚、図 2(A)では、チャンネル Pとチャンネル Q に取り込まれたゲスト分子は省略されている。
[0113]
図 2(A)に示すように、高分子錯体 4は、複数の卜リス(4—ピリジル)卜リアジンと Znl2 が配位結合により三次元的に結びついた三次元ネットワーク構造 1aと 1bとが相互貫 通して形成された複合化三次元ネットワーク構造を有している。三次元ネットワーク構 造 1aと三次元ネットワーク構造 1bは Znl2を共有する等の間接的或いは直接的な結合 を有しておらず、互いに独立したものであり、同一の空間を共有するように互いに入り 組んだ状態である。
[0114]
さらに、 1—ヒドロキシトリフエ二レン(D4)は、三次元ネットワーク構造 1aの卜リス(4一 ピリジル)トリァジン(Ca)の 7Γ平面と、三次元ネットワーク構造 1bの卜リス(4—ピリジル) リアジン(Cb)の 7Γ平面との間に強固に挿入(インターカレ一卜)されている(図 2(B)参 照)。このとき、 1—ヒドロキシ卜リフエ二レン(D4)は、卜リス(4一ピリジル)トリァジン(Ca) 及び(Cb)間の 7Γ—兀相互作用によって、(Ca)と(Cb)間に取り込まれており、卜リス(4 一ピリジル)トリァジンと直接の結合を有していない。し力、し、このように 2つの卜リス(4一 ピリジル)卜リアジンの 7Γ平面間にトリフエ二レンが挿入した積み重ね構造が無数連なつ た構造("^"04"0 '04' にょって、高分子錯体4の固体構造が安定化してぃる と考えられる。しかも、特願 2004— 382152のトリス(4一ピリジル)卜リアジンとトリフエ 二レンと Znl2からなる高分子錯体のゲスト交換実験において、トリフエ二レンが抽出され なかったことから、積み重ね構造を形成する 1ーヒドロキシトリフエ二レン(D4)も、高分 子錯体 4の主骨格の一部として機能していると考えられる。
[01 1 5]
この 1—ヒドロキシトリフエ二レン(D4 )の強固な拘束は、 Ca— D4— Cb間の電荷移動( CT)相互作用によるものである。さらに、 1ーヒドロキシトリフエ二レン(D4 )の HOMO (最 高被占軌道)と卜リス(4一ピリジル)卜リアジン(C)の LU MO (最低空軌道)がその節面 や電子分布、エネルギーレベル等について、軌道形状の適当な重なりを有していること が計算から導き出されている(図 6 (a)及び図 6 ( b)参照)。尚、この結果は、理論計算 の都合上、錯体を形成していない C分子の LU MOを、高分子錯体 4の骨格内の Cの L U MOのモデルとして扱ったものである。
[01 1 6]
高分子錯体 4には、図 2に示すように、その三次元格子状構造内に規則的に配列し た 2種のチャンネル(P及び Q)が存在する。チャンネル P及び Qは、トリス(4一ピリジル) 卜リアジン(C)と 1ーヒドロキシ卜リフエ二レン(D4 )が交互に積み重なった積み重ね構造 の間に、それぞれ規則的に形成されている。チャンネル Pは、ほぼ円筒型であり、且つ、 積み重なった無数のトリス(4一ピリジル)トリァジン(C)及び 1ーヒドロキシ卜リフエ二レン (D4 )の 7:平面の側縁に存在する水素原子でほぼ取り囲まれている。 1—ヒドロキシトリ フエ二レン(D4 )のヒドロキシ基は、チャンネル Pの内面を向いており、チャンネル Pの内 面の一部を形成している。従って、チャンネル Pは、ヒドロキシ基による修飾を受け、チヤ ンネル Qと比較して親水性や極性、酸性が高くなつている。
[01 1 7]
—方、チャンネル Qは、擬三角柱型であり、且つ、その三角柱を形成する 3方の面のう ち、 2っはトリス(4一ピリジル)卜リアジン(C)の 7Γ平面に取り囲まれ、もう一つは積み重 なった無数の卜リス(4一ピリジル)卜リアジン(C)及び 1ーヒドロキシトリフエ二レン(D4 )の 7Γ平面の側縁に存在する水素原子で取り囲まれている。 1ーヒドロキシトリフエ二レン( D4 )のヒドロキシ基は、チャンネル Qの内面を向いて配向していない。これらチャンネル P とチャンネル Qは、若干蛇行した細長い形状を有している。
[0118]
高分子錯体 4において、芳香族化合物配位子である卜リス(4-ピリジル)トリアジン( C)と、非配位性芳香族化合物である 1—ヒドロキシ Jフエ二レン (D4)により形成される 積み重ね構造は、 X線構造解析により、 D4分子を構成する各原子の温度因子が小さく 、結晶内における D4配置の乱れ(デイスオーダー)がほとんど存在しないことがわかって いる。この結果は、高分子錯体 4において、非常に規則性の高い構造が構築できてい ることを示している。
[0119]
さらに、チャンネル Pと Qは、内接する円の直径及び内接する楕円の長径と短径と異 なっている(チャンネル P:内接楕円長径 8. 5-10. OA、内接楕円短径 6.0〜8. OA 、チャンネル Q:内接円直径 4. 5〜7. OA)
[0120]
このように、 {[(Znl2)3 (C)2 (D4)] (ニトロベンゼン (メタノール) n}z (n、 zは不定比 組成))で表される単結晶構造を有する高分子錯体 4内に形成されたチャンネル Pとチ ヤンネル Qは、形状、サイズ及び雰囲気の 3つが共に異なる上に、 1ーヒドロキシトリフエ 二レンのヒドロキシ基はチャンネル Pの内面にのみ向かって配向しているものである。
[0121]
X線結晶構造解析によると、高分子錯体 4において、チャンネル Pでは、 1ーヒドロキシ トリフエ二レンのヒドロキシ基近傍にメタノールが包接され、隙間を埋めるようにニトロべ ンゼンが包接されている。一方、チャンネル Qはニトロベンゼンのみを包接している。そし て、チャンネル Pの内面を向いて配向した 1—ヒドロキシトリフエ二レンのヒドロキシ基の 水素までもが X線結晶構造解析により確認されている(図 3参照。図 3Bは図 3Aの拡大 図)。また、 1ーヒドロキシ卜リフエ二レンのヒドロキシ基の水素が、メタノールの方向を向 いていることも確認できている。
[0122]
このとき、 1ーヒドロキシトリフエ二レンのヒドロキシ基の酸素原子と、チャンネル Pに包 接されたメタノールの酸素原子との距離が 2. 7 1 1 Aと近いことから、メタノールとヒドロ キシ基との間に強い水素結合が形成されていると推測される(図 4参照。図 4Bは図 4A の拡大図)。さらに、積み重ね構造を形成している卜リス(4—ピリジル)トリァジン [芳香 族化合物配位子]と 1 -ヒドロキシ Jフエ二レン [非配位性芳香族化合物]との間の積 層距離(最も近いもの)が 3. 342 Aであり、ファンデルワールス力による原子間距離(3 . 5 A )よりも小さいことから、これら芳香族化合物配位子である リス(4一ピリジル)トリ ァジンと非配位性芳香族化合物である 1ーヒドロキシトリフエ二レンとの間には、ファンデ ルヮールスカ以外の相互作用、すなわち、 7:— 7Γ相互作用が働いていることがわかる
[01 23]
さらに、 1—ヒドロキシトリフエ二レン(D4 )の HOMO (最高被占軌道)と卜リス(4一ピリ ジル)トリァジン(C)の LU MO (最低空軌道)が効率良くオーバーラップしていることが計 算から導き出された(図 6参照)。
[01 24]
以上のような高分子錯体 4に代表される本発明の化学修飾の対象となる高分子錯体 は、一分子内にゲスト分子に対する親和性が異なる 2種以上の細孔群を有するため、 混合物と接触させると、混合物中の 2種以上のゲスト分子が、ゲスト交換を経てそれぞ れ異なる細孔群内に別々に包含される。これらの細孔群内に取り込まれたゲスト分子 は、三次元格子状構造を構成する剛直な主骨格によって互いに隔たれている。そのた め、本発明の高分子錯体は、共存することができない 2つ以上の成分、例えば、酸と塩 基、酸化剤と還元剤等を、 1つの高分子錯体内に安定した状態で貯蔵したり、高分子 錯体内を別個に輸送したりすることが可能である。
[01 25]
さらに、ゲスト分子に対する親和性が異なる 2種以上の細孔群を有するため、高分子
錯体の細孔群の細孔内空間を反応場として利用する場合には、細孔内の特性制御に より反応場の精密制御が可能であり、化学反応の高度制御が実現できる。例えば、特 定の細孔群に特定の触媒成分を包接させたり、或いは、 2種以上の細孔群間において 、異なる触媒成分を包接させたりすることもできる。また、細孔群の細孔内空間を反応 場として利用する場合には、特定の細孔群に反応原料を取り込んで、当該細孔群に特 有の細孔内雰囲気を利用して、高選択的な物質変換も可能である。
[01 26]
本発明の化学修飾法は、上記のような高分子錯体内に形成された細孔の内面を化 学修飾するものである。高分子錯体の構造を変化させることな《細孔内面を向くよう に配向した置換基 Aを置換基 A'に変換することで、該高分子錯体に様々な機能を付 与させることが可能である。例えば、置換基 Aの変換による高分子錯体の包接特性の 制御や拡張が挙げられる。置換基 Aの変換によって、ゲスト分子との相互作用の変化、 細孔のサイズや形状の変化等が生じ、置換基 Aを有する高分子錯体とは異なる包接 挙動を発現しうる。
[01 27]
本発明者らは、前記芳香族化合物配位子として卜リス(4一ピリジル)トリァジン(C)、 前記非配位性芳香族化合物として 1一アミノトリフ I二レン(D, )、中心原子となる金属 イオンを含む金属化合物として Znl2を用いて得られる高分子錯体を、サリチルアルデヒ ド、ァセトアルデヒド等のアルデヒド化合物を含む溶液に浸潰させることによって、該高 分子錯体は、その三次元構造を保持したまま、トリフエ二レンに結合するァミノ基が一 N = Q1で表されるィミノ基に変換されることを見出した(式 7、式 8参照)。
[01 28]
(式 7)
[(Znl2)3(C)2(D ]
(式 8)
[(Znl^C D ] [(Znl2)3(C)2(D3)]
[0129]
すなわち、本発明の化学修飾法は、上記にて説明した高分子錯体の形成後、該高分 子錯体において細孔群 Bの細孔の内面に配向した置換基 Aを、細孔群 Bの細孔内に 取り込んだゲスト分子と反応させることにより、置換基 A'に変換するものである。
[0130]
上記したように、置換基 Aを有する非配位性芳香族化合物を用いて構築された高分 子錯体は、その細孔内にゲスト分子を取り込む包接挙動を示す。置換基 Aとの反応性 を有するゲスト分子が、該置換基 Aが配向した細孔内に包接された場合、該ゲスト分子 と該置換基 Aとを反応させ、置換基 Aを置換基 A'に変換することができる。
ここで、「置換基 Aが置換基 A'に変換」とは、ゲスト分子との反応により置換基 Aの一 部において構造が変化することの他、置換基 Aが非配位性芳香族化合物との結合部 分から全体として置き換わることも含む。
[0131]
上記式(7 )及び(8 )では、非配位性芳香族化合物である卜リフエ二レンのァミノ基と、 ゲスト分子であるアルデヒド化合物とが脱水反応し、アミノ基がー N = Q 1 (Q 1は二価の 有機基である)で表される基(以下、基 Α'ίということがある)に変換される。
式(8)において、基 A'i ( N—ェチリデンァミノ基)が導入されたトリフエ二レンは、通常の 環境で不安定であり、ィミンとして単離することは難しい。
しかしながら、本発明の方法によれば、高分子錯体を構成する非配位性芳香族化合 物に N—ェチリデンァミノ基のような炭素鎖の短いイミンを容易に導入することができる 。これは、ァミノ基とアルデヒドの脱水反応により生成するィミンが細孔内壁の付近に位 置するため、脱離した水の再攻撃から立体的に保護されているという効果と、単結晶 相反応であるため溶液系の反応に比べて分子の運動がある程度低減されており、複 数の分子が関与するような副反応を抑制する効果によるものと考えられる。
[01 32]
—方、式(7 )の反応においては、高分子錯体の三次元構造を保持したままで、高分 子錯体を構成するトリフヱニレンに基 ΑΊ (サリチリデンァミノ基)が導入された力 サリチ リデンアミノ基を有するトリフエ二レンは、そのフエノール性ヒドロキシ基と窒素原子により 、配位性を有している。従って、高分子錯体形成時において、非配位性芳香族化合物 として、サリチリデンァミノ基を有するトリフエ二レンを用いると、金属種に該トリフエ二レン が配位してしまうため、上記のような細孔が形成された三次元構造を有する高分子錯 体は構築されない。
しかしながら、本発明のように、高分子錯体形成後の化学修飾によってサリチリデン アミノ基を導入する場合には、その立体効果や結晶相反応の寄与により、サリチリデン アミノ基による金属種への配位を生じさせることな サリチリデンァミノ基を細孔内面に 向けて配向させることができる。
[01 33]
以上のように、本発明によれば、高分子錯体形成時においては、置換基 Aとして非配
位性芳香族化合物への導入が非常に困難な一 N = Q 1で表される基であっても、導入 することが可能である。ここで、 Q 1とは二価の有機基であれば特に限定されず、脂肪 族基であっても、芳香族基であってもよ また、ヘテロ原子を含んでいても、分岐構造 や不飽和結合を含んでいてもよい。
[01 34]
具体的な Q 1として、例えば、炭素数 1〜5のアルキル基(分岐構造を有していてもよ い);ヒドロキシ、ニトロ、ァミノ等の置換基を有する炭素数 1〜5の鎖状炭化水素官能 基(分岐構造を有していてもよいし、ヘテロ原子を含んでいてもよい);フエニル基(ヒドロ キシ、ニトロ、ァミノ等の置換基を有していてもよし、)等が挙げられる。このように Q 1の鎖 長が短い場合、一 N = Q 1は通常の環境では非常に不安定なものが多く、単離すること が難しい。
[01 35]
また、その他 Q 1として、例えば、カルボキシル、二トリル等の置換基を有する炭素数 1 〜5の鎖状炭化水素官能基(分岐構造を有していてもよいし、ヘテロ原子を有していて もよい);カルボキシル、二卜リル等の置換基を有する 4〜 1 2員環の単環又は 2~4環性 芳香族基(縮合構造でもよい);フエノール類等が挙げられる。このような Q 1の場合、一 N = Q 1は高分子錯体の三次元ネットワーク構造を形成する金属種と配位結合を形成 するおそれがあるため、予め非配位性芳香族化合物に導入した状態で高分子錯体を 構築することは難しい。
[01 36]
すなわち、本発明の化学修飾法は、高分子錯体の選択的なゲスト分子の取り込みと 、細孔の特異的な反応場としての特性を利用したものであり、通常では導入困難な置 換基を非配位性芳香族化合物に導入することが可能であることから、従来では不可能 であった細孔内雰囲気の構築を実現可能とする。これは、非配位性芳香族化合物の 置換基による、細孔のサイズ、形状、雰囲気等、細孔内環境の精密な制御が可能であ
ることを示している。
[01 37]
尚、式(7 )の反応において生成したサリチリデンァミノ基は、 1—アミノトリフエ二レンの ァミノ基が配向していた細孔と同じ細孔内面に向いて配向した力 式(8)の反応におい て生成した N—ェチリデンァミノ基は、 1一アミノトリフエ二レンのァミノ基が配向していた 細孔とは異なる細孔内面に向いて配向した。このような置換基の配向変化について、 詳しいことは解明できていないが、卜リス(4一ピリジル)トリァジン [芳香族化合物配位 子]と積層して高分子錯体の三次元構造を形成しているトリフ I二レン [非配位性芳香 族化合物]力《、該積層状態を保持したまま、回転し、それに伴いトリフエ二レンに導入さ れた置換基(1ーサリチリデンァミノ基)も回転し、配向する細孔が変化したと考えられる 。従って、本発明において、置換基 Aから変換された置換基 A'の配向は、置換基 Aが 配向していた細孔群 Bの細孔と同じである場合と、細孔群 B以外のその他の細孔群の 細孔である場合とがある。
また、「置換基 A'が細? L群 Bの細孔又はその他の細孔群の細孔の内面を向くように 規則的に配置」、「置換基 A'i、置換基 A'a、置換基 Α'ί又は A'cが特定の細孔群 B'の内 面に向くように規則的に配置」とは、置換基 A'、 A'i、 A'a、 A'im又は A cが実質的に特定 の細孔群の細孔の内面を向くように規則的に配置されていることを意味し、全ての置換 基 A'、 A'i、 A'a、 A'im又は A'cが特定の細孔群の細孔の内面を向くように配置されてい なくてもよい。すなわち、特定の細孔群 B 'の細孔内面のみに向かって配向せず、複数 種の細孔群の細孔内面にデイスオーダーする置換基もある。
[01 38]
上記式(7 )及び(8 )の反応では、ゲスト分子として細孔内に取り込まれたアルデヒド 類と、置換基 Aであるアミノ基とが脱水縮合することにより、ァミノ基がィミンに変換され るが、置換基 Aとゲスト分子との反応による置換基 Aの変換の形態に特に限定はない。 例えば、カルボン酸とァミンの酸塩基反応や、カルボン酸とアルコールの縮合反応とい
つた他の脱水縮合反応により置換基を変換してもよいし、ゲスト分子として酸化剤や還 元剤等を用い、置換基 Aを酸化又は還元してもよい。
[0139]
また、置換基 Aであるアミノ基(一 NH2)と、ゲスト分子として細孔内に取り込まれた酸 無水物(環状酸無水物も含む)をァシル化反応、又はイソシアナ一卜とへ求核付加反応 させることにより、アミノ基を一 NHC( = 0)— Q2(Q2は一価の有機基である)で表され るアミド基(以下、基 A'aということがある)に変換することもできる。具体的には、置換基 であるァミノ基とゲスト分子である酸無水物が反応することによって、ァミノ基の窒素と 酸無水物のカルボニル基が結合し、アミノ基をァシル化したり [高分子錯体 5〜7:式(9 )〜式(11)、高分子錯体 9~13:式(13)~(15)参照]、置換基であるアミノ基がゲス 卜分子であるイソシアナ一卜へ求核付加反応することによって、ァミノ基の窒素とイソシァ ナ一卜のカルボニル基が結合し、アミノ基を尿素化する [高分子錯体 8:式(12)、高分 子錯体 14:式(16)参照]ことができる。
[0140]
特に、芳香族化合物配位子として卜リス(4一ピリジル)トリァジン(C)、非配位性芳香 族化合物として 2—アミノトリフエ二レン(D,' )、中心原子となる金属イオンを含む金属 化合物として Znl2を用いて得られる高分子錯体 1'を、無水コハク酸や無水マレイン酸 のような環状酸無水物を含む溶液に浸潰させることによって、該高分子錯体 1 'は、そ の三次元構造を保持したまま、トリフエ二レンに結合するァミノ基がアミドブタン酸又はァ ミドブテン酸に変換される(下記式 16、式 17参照)。
アミドブタン酸やアミドブテン酸が導入されたトリフエ二レンは、そのカルボキシル基によ リ、配位性を有している。従って、高分子錯体形成時において、非配位性芳香族化合 物として、アミドブタン酸基やアミドブテン酸基を有するトリフエ二レンを用いると、金属種 に該トリフエ二レンが配位してしまうため、上記のような細孔が形成された三次元構造を 有する高分子錯体は構築されない。しかしながら、本発明のように、高分子錯体形成
後の化学修飾によってアミドブタン酸基やアミドブテン酸基のようなカルボン酸基に変換 する場合には、その立体効果や結晶相反応の寄与により、カルボキシル基による金属 種への配位を生じさせることなく、カルボキシル基を細孔内面に向けて配向させること ができる。
[01 41 ]
尚、上記 Q2は一価の有機基であれば特に限定されず、脂肪族基であっても、芳香族 基であってもよく、また、ヘテロ原子を含んでいても、分岐構造や不飽和結合を含んで いてもよい。また、カルボシキル、二トリル、ヒドロキシ、ニトロ、ァミノ、カルボキシ等の置 換基を有していてもよい。上記したように、カルボキシル基、さらに二トリル基等の置換 基を有する Q2の場合、— N HC ( = 0)— Q2は高分子錯体の三次元ネットワーク構造 を形成する金属種と配位結合を形成するおそれがあるため、予め非配位性芳香族化 合物に導入した状態で高分子錯体を構築することは難しいが、本発明では、高分子錯 体構築後に導入することで、これら配位性を有する一 N HC ( = 0)— Q2による細孔内 修飾が可能である。
[01 42]
(式 1 6)
[(Znl2)3(C)2(D12)]
[0143]
さらに、非配位性芳香族化合物が、置換基 Aとしてホルミル基(一 CHO)を有する場 合、該ホルミル基と、ゲスト分子として細孔内に取り込まれたァミノ化合物とが、脱水縮 合反応することにより、ホルミル基を一 CHN— Q3(Q3は 1価の有機基を示す)で表さ れるィミノ基(以下、基 A'imということがある)に変換することもできる [高分子錯体 16及 び高分子錯体 17:下記式(19)及び式(20)参照]。
特に、芳香族化合物配位子として卜リス(4一ピリジル)トリァジン(C)、非配位性芳香 族化合物として 2—ホルミルトリフエ二レン(D15)、中心原子となる金属イオンを含む金 属化合物として Znl,を用いて得られる高分子錯体 15を、ァミノ安息香酸のようなカル
ポキシル基含有アミノ化合物を含む溶液に浸潰させることによって、該高分子錯体 1 5 は、その三次元構造を保持したまま、卜リフエ二レンに結合するホルミル基がアミノ安息 香酸に変換される(下記式 1 9参照)。
[0144]
尚、上記 Q3は 1価の有機基であれば特に限定されず、脂肪族基であっても、芳香族 基であってもよく、また、ヘテロ原子を含んでいても、分岐構造や不飽和結合を含んで いてもよい。また、カルボシキル、二トリル、ヒドロキシ、ニトロ、ァミノ等の置換基を有し ていてもよい。
[0145]
(式 1 9 )
[(Znl2)3(C)2(D15)] [(Znl2)3(C)2(D16)]
(式 2 0 )
[(Znl2)3(C)2(D15)] [(Znl2)3(C)2(D17)]
上記式(1 6 )、(1 7 )及び(1 9 )に示すように、アミノ基ゃホルミル基等の置換基 Aの少 なくとも 1つを、アミドブタン酸基、アミドブテン酸基、ァミノ安息香酸基等の一Q4— CO OH基(Q4は 2価以上の有機基を示す)で表されるカルボン酸基(以下、基 A'cというこ とがある)に変換する場合、力ルポキシル基のようなァニオン性官能基が細孔内面に向 けて配向されることにより、高分子錯体はその細孔内に金属イオンやプロトン等のカチ オンの保持や伝導が可能となる。すなわち、金属イオンの細孔内保持により触媒活性 を発現し、触媒材料としての応用、或いは、リチウムイオンやプロトン等の保持によリイ オン伝導性を発現し、電解質材料としての応用等が期待できる。
[01 47]
尚、上記 Q4は 2価以上の有機基であれば特に限定されず、脂肪族基であっても、芳 香族基であってもよく、また、ヘテロ原子を含んでいても、分岐構造や不飽和結合を含 んでいてもよい。また、カルボシキル、二トリル、ヒドロキシ、ニトロ、ァミノ等の置換基を 有していてもよい。
[01 48]
置換基 Aと反応するゲスト分子は 1種に限定されず、 2種以上でもよ 細孔群 Bの細 孔内に取り込まれた 2種以上のゲスト分子のうちの 2種以上のゲスト分子が置換基 Aと 作用することで、置換基 A'に変換されるようにすることもできる。また、ゲスト分子との 反応により変換される置換基は、一種類に限定されず、複数種の置換基を変換させる こともできる。このとき、複数種の置換基とは、化学構造の異なるものの他、非配位性 芳香族化合物における導入位置が異なるものも含まれる。
[01 49]
ゲスト分子を取り込み、置換基 Aを該ゲスト分子と反応させることで置換基 A'に変換 させる方法は特に限定されず、まずは、ゲスト分子を高分子錯体に取り込ませればよい 。ゲスト分子の包接は、通常、ゲスト分子と高分子錯体とを接触させることで自然と行
われる。
ゲスト分子を包接させる方法としては、ゲスト分子を含有する溶液又はゲスト分子そ のものに高分子錯体を浸潰させる方法、ゲスト分子の蒸気を高分子錯体に接触させる 方法等が挙げられる。必要に応じて、ゲスト分子の濃度、温度、圧力等を調節してゲス 卜分子の細孔内への包接速度を加減することもできる。ゲスト分子を含有する溶液又 は溶液状のゲスト分子単体又は気体状のゲスト分子単体と高分子錯体との接触時間 、溶液のゲスト分子濃度等は特に限定されず、適宜決定すればよい。
[01 50]
細孔内に取り込まれたゲスト分子と置換基 Aとの反応は、自然と進行する場合もある が、加熱や接触させるゲスト分子溶液におけるゲスト分子濃度を高くすることで反応速 度を速めることができる。また、反応速度が速すぎるために、反応が選択的に進行しな い場合や高分子錯体の三次元構造が崩壊する場合には、冷却、或いは、ゲスト分子 溶液におけるゲスト分子の濃度を低くしたり、又は粘性の高い溶媒を用いる等の手法 によって反応速度を低下させることができ、選択的な反応の進行や高分子錯体の三次 元構造の保持等が可能である。
[01 51 ]
本発明の化学修飾は、ゲスト分子とゲスト分子が取り込まれる細孔内に配向した置 換基 Aとの反応により行われる。ゲスト分子の取り込みが選択的であること、細孔内に 取り込まれたゲスト分子が非常に高い密度で存在することから、高分子錯体の細孔内 面を修飾するために使用するゲスト分子は、非常に少量で済む。すなわち、少量の試 薬使用量で効率良く細孔内面を化学修飾することが可能であり、環境負荷が小さく、ま た、低コストな方法といえる。 実施例
[01 52]
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
(高分子錯体 1の製造)
試験管にニトロベンゼン 4mlと、メタノール 1 mlをとリ、そこに、 2 , 4, 6—卜リス(4ーピ リジル)ー1 , 3 , 5—トリアジン(C) 6. 3mg (0. 02mmol)を溶解し、さらに、 1一アミノト リフエ二レン(D を加えた。
[01 53]
次に、上記にて得られた溶液を下層とし、その上に緩衝剤であるメタノール 0. 5mlを 中層として静かに加えた。最後に、 Znl
2 9. 6mg (0. O3mmol)をメタノール 0. 5mlに 溶かした溶液を上層として静に加え、約 23〜25°C (室温)で約 3日間静置し、高分子 錯体 1
を得た。
[01 54]
(高分子錯体 1の分析)
得られた高分子錯体 1について、 X線結晶構造解析を行った。結果を図 1 0に示す。 図 1 0は、紙面(結晶 01 0面)に対して垂直な方向を軸 bとするものであり、高分子錯体 1の三次元格子状構造内の相互貫通構造をチャンネル P及び Qが伸びる方向(軸 b)に 沿って示したものである。尚、図 1 0では、チャンネル Pとチャンネル Qに取り込まれたゲ スト分子は省略されている。
高分子錯体 1は、卜リス(4一ピリジル)卜リアジン(C)とヨウ化亜鉛とから構築された三 次元格子状構造内に形成された卜リス(4一ピリジル)卜リアジン(C)と 1一アミノトリフエ 二レン(D, )との積み重ね構造の間に、それぞれ規則的に配列した 2種のチャンネル(P 及び Q)を有している。
[01 55]
チャンネル Pは、ほぼ円筒型であり、且つ、積み重なった無数のトリス(4一ピリジル)ト リアジン(C)及び 1一アミノトリフエ二レン(D, )の π平面の側縁に存在する水素原子で
ほぼ取り囲まれている。 1一アミノトリフエ二レン(D, )のァミノ基は、チャンネル Pの内面 を向いて配向(デイスオーダー)しておリ、チャンネル Pの内面の一部を形成している。 一方、チャンネル Qは、擬三角柱型であり、且つ、その三角柱を形成する 3方の面のう ち、 2つは卜リス(4 -ピリジル)卜リアジン(C)の 7Γ平面に取り囲まれ、もう一つは積み重 なった無数の卜リス(4一ピリジル)トリァジン(C)及び 1一アミノトリフエ二レン(D, )の 7Γ 平面の側縁に存在する水素原子で取り囲まれている。 1—アミノトリフエ二レン(D, )の アミノ基は、チャンネル Qの内面を向いて配向していない。
[01 56]
[高分子錯体 1の細孔内面の化学修飾]
上記にて合成した高分子錯体 1を、以下に示すように、それぞれアルデヒド化合物(サ リチルアルデヒド又はホルムアルデヒド)に浸潰し、高分子錯体 1の単結晶中において、 1一アミノトリフ I二レンとアルデヒド化合物を脱水反応させ、イミンを骨格に有する高分 子錯体 2及び 3を合成した。
同様に、高分子錯体 1を酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、又は無水オクタン 酸)に浸潰し、高分子錯体 1の単結晶中において 1一アミノトリフエ二レンと酸無水物を 反応させ、アミドを骨格に有する高分子錯体 5〜7を合成した。
また、高分子錯体 1をイソシアナ一卜(イソシアン酸フエニル)に浸潰し、高分子錯体 1 の単結晶中において 1一アミノトリフエ二レンとイソシアナ一卜を反応させ、アミド(尿素誘 導体)を骨格に有する高分子錯体 8を合成した。
[01 57]
(高分子錯体 2の製造)
高分子錯体 1をサリチルアルデヒドに室温で 2週間浸すことにより、高分子錯体 1を構 成する 1—アミノトリフエ二レン(D, )と、高分子錯体 1のゲスト分子として細孔内に取り込 まれたサリチルアルデヒドを脱水反応させ、黄色結晶の高分子錯体 2 [ (Znl2 ) 3 (C) 2 ( D2) ]を得た。
[0158]
(式 7)
[0159]
(高分子錯体 2の分析)
得られた高分子錯体 2について、 X線結晶構造解析を行った。結果を以下に示す。図 8の(8A)は、紙面(結晶 010面)に対して垂直な方向を軸 bとするものであり、高分子 錯体 2の三次元格子状構造内の相互貫通構造をチャンネル P1及び Q1が伸びる方向 (軸 b)に沿って示したものである。尚、図 8では、チャンネル P1とチャンネル Q1に取り込 まれたゲスト分子は省略されている。
[0160]
高分子錯体 2は、図 8の(8A)に示すような三次元構造を有しており、高分子錯体 1の 三次元構造を維持していた(図 10参照)。すなわち、高分子錯体 2は、トリス(4一ピリ ジル)トリァジン(C)とヨウ化亜鉛とから構築された三次元格子状構造内に形成された トリス(4一ピリジル)トリァジン(C)と 1ーサリチリデンアミノトリフエ二レン(D2)との積み 重ね構造の間に、それぞれ規則的に配列した 2種のチャンネル(P1及び Q1)を有して いる。
チャンネル P1は、ほぼ円筒型であり、且つ、積み重なった無数の卜リス(4—ピリジル) 卜リアジン(C)及び 1ーサリチリデンアミノトリフエ二レン(D2)の 7Γ平面の側縁に存在す る水素原子でほぼ取り囲まれている。 1—サリチリデンァミノ卜リフエ二レン(D2)のサリチ リデンァミノ基は、チャンネル P1の内面を向いて配向しており、チャンネル P1の内面の 一部を形成している。サリチリデンァミノ基は、ねじれ型で観測され、その二面角は、 38
.4(4)° であった(図 8の(8B)参照)。
[0161]
一方、チャンネル Q1は、擬三角柱型であり、且つ、その三角柱を形成する 3方の面の うち、 2っはトリス(4一ピリジル)卜リアジン(C)の 7Γ平面に取り囲まれ、もう一つは積み 重なった無数のトリス(4一ピリジル)トリァジン(C)及び 1ーサリチリデンァミノ卜リフエ二 レン(D2)の 7Γ平面の側縁に存在する水素原子で取り囲まれている。 1ーサリチリデン アミノトリフエ二レン(D2)のサリチリデンァミノ基は、チャンネル Q1の内面を向いて配向 していない。
[0162]
(高分子錯体 3の製造)
高分子錯体 1 [(Znl2)3 (C)2 (D ]を、ァセ卜アルデヒドを含有するフルォロルーべに 室温で 1日浸すことにより、高分子錯体 1を構成する 1一アミノトリフヱ二レン(D,)と、高 分子錯体 1のゲスト分子として細孔内に取り込まれたァセトアルデヒドを脱水反応させ、 黄色結晶の高分子錯体 3[(ZnI2)3 (C)2 (D3)]を得た。
尚、式(8)に示す反応おいては、ゲスト交換と脱水反応の速度を低下させることによ つて高分子錯体の結晶構造を保護するため、粘性の高いオイル [fluorolube (フルォロ ルーべ)]を溶媒として用いた。
[0163]
(式 8)
[(Zn\2 C)2(D,)] [(Znl2)3(C)2(D3)]
[0164]
(高分子錯体 3の分析)
得られた高分子錯体 3について、 X線結晶構造解析を行った。結果を以下に示す。図 9の(9A)は、紙面(結晶 01 0面)に対して垂直な方向を軸 bとするものであり、高分子 錯体 3の三次元格子状構造内の相互貫通構造をチャンネル P2及び Q2が伸びる方向 (軸 b)に沿って示したものである。また、図 9の(9 B)は、高分子錯体 3における 1— N— ェチリデンアミノトリフエ二レン(D3 )である。尚、図 9では、チャンネル P2とチャンネル Q2 に取り込まれたゲスト分子は省略されている。
[01 65]
高分子錯体 3は、図 9 ( 9A)に示すような三次元構造を有しており、高分子錯体 1の 三次元構造を維持していた(図 1 0参照)。すなわち、高分子錯体 3は、トリス(4—ピリ ジル)トリァジン(C)とヨウ化亜鉛とから構築された三次元格子状構造内に形成された トリス(4一ピリジル)卜リアジン(C)と 1一 N—ェチリデンアミノトリフエ二レン(D3 )との積 み重ね構造の間に、それぞれ規則的に配列した 2種のチャンネル(P2及び Q2)を有し ている。チャンネル P2は、ほぼ円筒型であり、且つ、積み重なった無数の卜リス(4ーピ リジル)卜リアジン(C)及び 1一 N—ェチリデンアミノトリフエ二レン(D3 )の 7Γ平面の側縁 に存在する水素原子で取り囲まれている。 1一 N—ェチリデンアミノトリフエ二レン(D3 ) の N—ェチリデンァミノ基は、チャンネル P2の内面を向いて配向していない。
[01 66]
—方、チャンネル Q2は、擬三角柱型であり、且つ、その三角柱を形成する 3方の面の うち、 2つは卜リス(4一ピリジル)トリァジン(C)の π平面に取り囲まれ、もう一つは積み 重なった無数の卜リス(4—ピリジル)トリアジン(C)及び 1一 Ν—ェチリデンアミノトリフエ 二レン(D3)の兀平面の側縁に存在する水素原子でほぼ取り囲まれている。 1一 N—ェ チリデンアミノトリフエ二レン(D3)の N—ェチリデンァミノ基は、チャンネル Q2の内面を向 いて配向しており、チャンネル Q2の内面の一部を形成している。 N—ェチリデンァミノ基 の窒素ー炭素間( 1\1 1 33— 01 33 )距離が1 . 1 8 ( 5 ) Aであり(図 9の 9B参照)、二重
結合の値に相当したことから、結晶中においてィミンが生成したことが確認できた。
[0167]
尚、高分子錯体 3において、ァセトアルデヒドのゲスト交換前、 N—ェチリデンァミノ基 の前駆となるアミノ基がチャンネル Pの内面を向いて配向していたのに対して、ァセトァ ルデヒドのゲスト交換後、ァミノ基とァセトアルデヒドの脱水反応により生じた N—ェチリ デンァミノ基はチャンネル Q2の内面を向いて配向した。これは、高分子錯体 1の 1ーァ ミノトリフエ二レンが回転し、細孔内での官能基の位置を変化させることができることを 示唆している。トリフエ二レンは、トリス(4一ピリジル)卜リアジンとの 7Γ—兀スタツキング により高分子錯体内に保持されているものの、化学結合は形成されていないため、トリ フエ二レンが平面内で回転しても、高分子錯体の三次元構造は維持される。
[0168]
(高分子錯体 5〜7の製造)
<高分子錯体 5>
高分子錯体 1を無水酢酸のシクロへキサン溶液(無水酢酸:シクロへキサン =1 :29 ( 体積比))に室温で 1〜2日間浸すことにより、高分子錯体 1を構成する 1一アミノトリフ ェニレン(DJと、高分子錯体 1のゲスト分子として細孔内に取り込まれた無水酢酸をァ シル化反応させ、黄色結晶の高分子錯体5[ ^2)3(02(05)]を得た(下記式(9)参 照)。
<高分子錯体 6>
高分子錯体 1を無水プロピオン酸のシクロへキサン溶液(無水プロピオン酸:シクロへ キサン =1: 29 (体積比))に室温で 2~3日間浸すことにより、高分子錯体 1を構成す る 1一アミノトリフエ二レン(D と、高分子錯体 1のゲスト分子として細孔内に取り込まれ た無水プロピオン酸をァシル化反応させ、黄色結晶の高分子錯体 6[(ZnI2)3 (C)2 (D6 )]を得た(下記式(10)参照)。
<高分子錯体 7>
高分子錯体 1を無水オクタン酸のシクロへキサン溶液(無水オクタン酸:シクロへキサ ン =1 :1 (体積比))に室温で 3~4週間浸すことにより、高分子錯体 1を構成する 1—ァ ミノトリフ; E二レン(D,)と、高分子錯体 1のゲスト分子として細孔内に取り込まれた無水 オクタン酸をァシル化反応させ、黄色結晶の高分子錯体 7 [(Znl2 )3 (C)2 (D7)]を得た (下記式(11)参照)。
[0169]
(式 9)
[(Znl2)3(C)2(D 】 [(Znl2)3(C)2(D5)]
ぱ 1 0)
[(Zn\2HC)2(D,)] [(Znl2)3(C)2(D6)】
[(Zn\2 C)2(D,)] [(Znl2)3(C)2(D7)]
[0170]
(高分子錯体 5〜7の分析)
得られた高分子錯体 5〜7について、 X線結晶構造解析を行った。図 11に、紙面(結
晶 01 0面)に対して垂直な方向を軸 bとし、高分子錯体 5の三次元格子状構造内の相 互貫通構造をチャンネル P3及び Q3が伸びる方向(軸 b)に沿って示す。尚、図 1 1では 、チャンネル P3とチャンネル Q3に取り込まれたゲスト分子は省略されている。
[01 71 ]
高分子錯体 5〜7は、高分子錯体 1の三次元構造を維持しており(図 1 0参照)、図 1 1に示すような三次元構造を有していた。尚、ここでは、高分子錯体 5の三次元構造の みを図 1 1に代表的に示すが、高分子錯体 6及び高分子 7錯体 7も同様の三次元構造 を有していた。すなわち、高分子錯体 5〜7は、卜リス(4一ピリジル)トリァジン(C)とヨウ 化亜鉛とから構築された三次元格子状構造内に形成されたトリス(4一ピリジル)卜リア ジン(C)と 1一トリフエ二レンアミド(D5、 D6、 D7) [高分子錯体 5 : 1 - (ァセチルァミノ)トリ フエ二レン(D5 )、高分子錯体 6 : 1—(プロピオニルァミノ)トリフエ二レン(D6)、高分子錯 体 7 : 1—(ォクタノィルァミノ)トリフエ二レン(D7) ]との積み重ね構造の間に、それぞれ 規則的に配列した 2種のチャンネル(P3及び Q3 )を有している。
チャンネル P3は、ほぼ円筒型であり、且つ、積み重なった無数の卜リス(4—ピリジル) トリアジン(C)及び 1一トリフエ二レンアミド(D5、 D6、 D7)の 7Γ平面の側縁に存在する水 素原子でほぼ取り囲まれている。 1—卜リフエ二レンアミド(D5、 D6、 D7)のアミド基は、チ ヤンネル P3の内面を向いて配向しており、チャンネル P3の内面の一部を形成している
[01 72]
一方、チャンネル Q3は、擬三角柱型であり、且つ、その三角柱を形成する 3方の面の うち、 2つは卜リス(4一ピリジル)トリァジン(C)の 7:平面に取り囲まれ、もう一つは積み 重なった無数のトリス(4一ピリジル)トリァジン(C)及び 1一トリフエ二レンアミド(D5、 D6 、 D7)の 7Γ平面の側縁に存在する水素原子で取り囲まれている。 1一トリフエ二レンアミ ド(D5、 D6、 D7)のアミド基は、チャンネル Q3の内面を向いて配向していない。
[01 73]
(高分子錯体 8の製造)
高分子錯体 1をイソシアン酸フエ二ルのシクロへキサン溶液(イソシアン酸フエニル:シ クロへキサン =1 :9(体積比))に室温で 3〜4日間浸すことにより、高分子錯体 1を構 成する 1一アミノトリフエ二レン(D,)と、高分子錯体 1のゲスト分子として細孔内に取り込 まれたイソシアン酸フエ二ルを求核付加反応させ、黄色結晶の高分子錯体 8 [(Znl2 )3 ( C)2(D8)]を得た(下記式(12)参照)。
[0174]
(式 1 2)
[(Znl2)3(C)2(D1)] [(Znl2)3(C)2(D8)]
[0175]
(高分子錯体 8の分析)
得られた高分子錯体 8について、 X線結晶構造解析を行った。図 12に、紙面(結晶 0 10面)に対して垂直な方向を軸 bとし、高分子錯体 8の三次元格子状構造内の相互貫 通構造をチャンネル P4及び Q4が伸びる方向(軸 b)に沿って示す。尚、図 12では、チヤ ンネル P4とチャンネル Q4に取り込まれたゲスト分子は省略されている。
[0176]
高分子錯体 8は、高分子錯体 1の三次元構造を維持しており(図 10参照)、図 12に 示すような三次元構造を有していた。すなわち、高分子錯体 8は、高分子錯体 5〜7と 同様、卜リス(4一ピリジル)卜リアジン(C)とヨウ化亜鉛とから構築された三次元格子状
構造内に形成されたトリス(4—ピリジル)卜リアジン(C)と 1一(3—フエニルウレイド)トリ フエ二レン(D8)との積み重ね構造の間に、それぞれ規則的に配列した 2種のチャンネ ル(P4及び Q4)を有している。
チャンネル P4は、ほぼ円筒型であり、且つ、積み重なった無数の卜リス(4—ピリジル) 卜リアジン(C)及び 1一(3—フエニルウレイド)トリフエ二レン(D8)の 7Γ平面の側縁に存 在する水素原子でほぼ取り囲まれている。 1一(3—フエニルウレイド)卜リフエ二レン(D8 )のフエニル尿素基は、チャンネル P4の内面を向いて配向しており、チャンネル P4の内 面の一部を形成している。一方、チャンネル Q4は、擬三角柱型であり、且つ、その三角 柱を形成する 3方の面のうち、 2つは卜リス(4—ピリジル)トリァジン(C)の兀平面に取り 囲まれ、もう一つは積み重なった無数のトリス(4-ピリジル)トリァジン(C)及び 1—(3 一フエニルウレイド)トリフエ二レン(D8)の 7Γ平面の側縁に存在する水素原子で取り囲 まれている。 1ー(3—フエニルウレイド)トリフエ二レン(D8)のフエ二ル尿素基は、チャン ネル Q4の内面を向いて配向していない。
[0177]
(高分子錯体 1'の製造)
試験管にニトロベンゼン 4mlと、メタノール 1mlをとリ、そこに、 2, 4, 6—卜リス(4ーピ リジル)ー1, 3, 5—卜リアジン(C)6. 3mg(0.02mmol)を溶解し、さらに、 2—アミノト リフエ二レン(D,,)を加えた。
[0178]
次に、上記にて得られた溶液を下層とし、その上に緩衝剤であるメタノール 0. 5mlを 中層として静かに加えた。最後に、 Znl2 9. 6mg(0.03mmol)をメタノール 0. 5mlに 溶かした溶液を上層として静に加え、約 23〜25°C (室温)で約 3日間静置し、高分子 錯体 1' [(ZnI2)3(C)2(D,')]を得た。
[0179]
(高分子錯体 1'の分析)
得られた高分子錯体 1 'について、 X線結晶構造解析を行った。結果を図 1 3に示す。 図 1 3は、紙面(結晶 01 0面)に対して垂直な方向を軸 bとするものであり、高分子錯体 1 'の三次元格子状構造内の相互貫通構造をチャンネル P'及び Q'が伸びる方向(軸 b )に沿って示したものである。尚、図 1 3では、チャンネル P'とチャンネル Q'に取り込まれ たゲスト分子は省略されている。
高分子錯体 1 'は、高分子錯体 1と同様の三次元構造を有していた。すなわち、卜リス (4一ピリジル)卜リアジン(C)とヨウ化亜鉛とから構築された三次元格子状構造内に形 成された卜リス(4一ピリジル)卜リアジン(C)と 2—アミノトリフエ二レン(D, ' )との積み重 ね構造の間に、それぞれ規則的に配列した 2種のチャンネル(Ρ'及び Q' )を有している
[0180]
チャンネル P'は、ほぼ円筒型であり、且つ、積み重なった無数の卜リス(4一ピリジル) 卜リアジン(C)及び 2—アミノトリフエ二レン(D, ' )の π平面の側縁に存在する水素原子 でほぼ取り囲まれている。 2—アミノトリフエ二レン(D )のァミノ基は、チャンネル P'の 内面を向いて配向(デイスオーダー)しておリ、チャンネル P'の内面の一部を形成してい る。
一方、チャンネル Q 'は、擬三角柱型であり、且つ、その三角柱を形成する 3方の面の うち、 2っはトリス(4一ピリジル)卜リアジン(C)の 7Γ平面に取り囲まれ、もう一つは積み 重なった無数の卜リス(4—ピリジル)卜リアジン(C)及び 2—アミノトリフエ二レン(D )の 7Γ平面の側縁に存在する水素原子で取り囲まれている。 2—アミノトリフエ二レン(D, ' ) のァミノ基は、チャンネル Q'の内面を向いて配向していない。
[01 81 ]
[高分子錯体 1 'の細孔内面の化学修飾]
上記にて合成した高分子錯体 1 'を、以下に示すように、それぞれ酸無水物(無水酢 酸、無水プロピオン酸又は無水オクタン酸)に浸潰し、高分子錯体 1 'の単結晶中にお
いて、 2—アミノトリフエ二レンと酸無水物を反応させ、アミドを骨格に有する高分子錯体 9〜高分子錯体 11を合成した。
同様に、高分子錯体 1'をそれぞれ環状酸無水物(無水コハク酸又は無水マレイン酸 )に浸潰し、高分子錯体 1 'の単結晶中において、 2—アミノトリフエ二レンと環状酸無水 物を反応させ、アミドを骨格に有する高分子錯体 12、高分子錯体 13を合成した。
また、高分子錯体 1'をイソシアナ一卜(イソシアン酸フエニル)に浸潰し、高分子錯体 1 'の単結晶中において 2—アミノトリフエ二レンとイソシアナ一卜を反応させ、アミド(尿素 誘導体)を骨格に有する高分子錯体 14を合成した。
[0182]
(高分子錯体 9〜11の製造)
<高分子錯体 9>
高分子錯体 1'を無水酢酸のシクロへキサン溶液(無水酢酸:シクロへキサン =1 :29 (体積比))に室温で 1〜2日間浸すことにより、高分子錯体 1'を構成する 2—アミノ卜リ フエ二レン(D,' )と、高分子錯体 1'のゲスト分子として細孔内に取り込まれた無水酢酸 をァシル化反応させ、黄色結晶の高分子錯体9[(2012 )3 (02(09)]を得た(下記式( 13)参照)。
ぐ高分子錯体 10>
高分子錯体 1'を無水プロピオン酸のシクロへキサン溶液(無水プロピオン酸:シクロ へキサン =1 :29 (体積比))に室温で 2〜3日間浸すことにより、高分子錯体 1'を構成 する 2—アミノトリフエ二レン(D,')と、高分子錯体 1'のゲスト分子として細孔内に取り込 まれた無水プロピオン酸をァシル化反応させ、黄色結晶の高分子錯体 10[(ZnI2 )3 (C )2 (D,Q)]を得た(下記式(14)参照)。
ぐ高分子錯体 11>
高分子錯体 1'を無水オクタン酸のシクロへキサン溶液(無水オクタン酸:シクロへキサ ン =1 :1 (体積比))に室温で 3~4週間浸すことにより、高分子錯体 1'を構成する 2—
アミノトリフヱ二レン(D,')と、高分子錯体 1 'のゲスト分子として細孔内に取り込まれた 無水オクタン酸をァシル化反応させ、黄色結晶の高分子錯体 11 [(Znl2)3 (C)2 (D,,)] を得た(下記式(15)参照)。
[0183]
ぱ 13)
[(Zn\2)z(C)2(D,')] [(Znl2)3(C)2(D9)】
[(Znl^CMD )] [(Znl2)3(C)2(D10)】
(式 15)
[(Zn\2)3(C)2(D,')} [(Znl2)3(C)2(D")]
[0184]
(高分子錯体 9〜11の分析)
得られた高分子錯体 9〜11について、 X線結晶構造解析を行った。図 14に、紙面( 結晶 010面)に対して垂直な方向を軸 bとし、高分子錯体 9の三次元格子状構造内の 相互貫通構造をチャンネル P5及び Q5が伸びる方向(軸 b)に沿って示す。尚、図 14で は、チャンネル P5とチャンネル Q5に取り込まれたゲスト分子は省略されている。
[0185]
高分子錯体 9〜"は、高分子錯体 1'の三次元構造を維持しており(図 13参照)、図 14に示すような三次元構造を有していた。尚、ここでは、高分子錯体 9の三次元構造 のみを図 14に代表的に示すが、高分子錯体 10及び 11も同様の三次元構造を有して いた。すなわち、高分子錯体 9~11は、トリス(4一ピリジル)卜リアジン(C)とヨウ化亜鉛 とから構築された三次元格子状構造内に形成された卜リス(4一ピリジル)卜リアジン(C) と 2—卜リフエ二レンアミド(D9、 D,。、 [高分子錯体 9:2—(ァセチルァミノ)トリフエ二 レン(D9)、高分子錯体 10 :2—(プロピオニルァミノ)トリフエ二レン(D1())、高分子錯体 1 1 :2—(ォクタノィルァミノ)卜リフエ二レン との積み重ね構造の間に、それぞれ規 則的に配列した 2種のチャンネル(P5及び Q5)を有している。
チャンネル P5は、ほぼ円筒型であり、且つ、積み重なった無数の卜リス(4一ピリジル) 卜リアジン(C)及び 2—トリフエ二レンアミド(D9、 D1()、 D )の兀平面の側縁に存在する 水素原子でほぼ取り囲まれている。 2—卜リフエ二レンアミド(D9、 D,。、 D )のアミド基は 、チャンネル P5の内面を向いて配向しており、チャンネル P5の内面の一部を形成して いる。
[0186]
—方、チャンネル Q5は、擬三角柱型であり、且つ、その三角柱を形成する 3方の面の うち、 2っはトリス(4一ピリジル)トリアジン(C)の π平面に取り囲まれ、もう一つは積み 重なった無数の卜リス(4一ピリジル)卜リアジン(C)及び 2—トリフエ二レンアミド(D9、 D10 、 DJの丌平面の側縁に存在する水素原子で取り囲まれている。 2—卜リフエ二レンアミ ド(D9、 D10、 D,,)のアミド基は、チャンネル Q5の内面を向いて配向していない。
[0187]
(高分子錯体 12~13の製造)
ぐ高分子錯体 12>
高分子錯体 1'を 10mMの無水コハク酸の酢酸ェチル溶液に室温で 3〜4日間浸す ことにより、高分子錯体 1'を構成する 2—アミノトリフエ二レン(D/)と、高分子錯体 1' のゲスト分子として細孔内に取り込まれた無水コハク酸をァシル化反応させ、黄色結晶 の高分子錯体12[(2012 )3 ( 2(0,2)]を得た(下記式(16)参照)。
ぐ高分子錯体 12>
高分子錯体 1'を 10mMの無水マレイン酸の酢酸ェチル溶液に室温で 3〜4日間浸 すことにより、高分子錯体 1'を構成する 2—アミノトリフエ二レン(D,')と、高分子錯体 1 'のゲスト分子として細孔内に取り込まれた無水マレイン酸をァシル化反応させ、黄色 結晶の高分子錯体 12[(ZnI2)3 (C)2(D12)]を得た(下記式(17)参照)。
[0188]
(式 1 6)
[(Znl2)3(C)2(D12)]
[0189]
(高分子錯体 12、 13の分析)
得られた高分子錯体 12及び 13について、 X線結晶構造解析を行った。図 15に、紙 面(結晶 010面)に対して垂直な方向を軸 bとし、高分子錯体 12の三次元格子状構造 内の相互貫通構造をチャンネル P6及び Q6が伸びる方向(軸 b)に沿って示す。尚、図 15では、チャンネル P6とチャンネル Q6に取り込まれたゲスト分子は省略されている。
[0190]
高分子錯体 12、 13は、高分子錯体 1'の三次元構造を維持しており(図 10参照)、 図 15に示すような三次元構造を有していた。尚、ここでは、高分子錯体 12の三次元構
造のみを図 1 5に代表的に示すが、高分子錯体 1 3も同様の三次元構造を有していた。 すなわち、高分子錯体 1 2及び 1 3は、トリス(4一ピリジル)トリァジン(C)とヨウ化亜鉛と から構築された三次元格子状構造内に形成されたトリス(4一ピリジル)トリアジン(C)と 2 -トリフエ二レンアミド(D12、 D13) [高分子錯体 1 2 : 2— (スクシニルァミノ)トリフエ二レン ( D, 2)、高分子錯体 1 3 : 2 - (マレィルァミノ)トリフエ二レン(D13) ]との積み重ね構造の 間に、それぞれ規則的に配列した 2種のチャンネル(P6及び Q6)を有している。
チャンネル P6は、ほぼ円筒型であり、且つ、積み重なった無数の卜リス(4一ピリジル) 卜リアジン(C)及び 2— (スクシニルァミノ)卜リフエ二レン(D12)又は 2—(マレィルァミノ)卜 リフエ二レン(D13)の 7Γ平面の側縁に存在する水素原子でほぼ取り囲まれている。 2—( スクシニルァミノ)卜リフエ二レン(D12)又は 2—(マレィルァミノ)トリフエ二レン(D13)のアミ ドブタン酸又はアミドブテン酸のカルボキシル基は、チャンネル P5の内面を向いて配向 していない。
[01 91 ]
一方、チャンネル Q6は、擬三角柱型であり、且つ、その三角柱を形成する 3方の面の うち、 2っはトリス(4—ピリジル)トリァジン(C)の 7Γ平面に取り囲まれ、もう一つは積み 重なった無数のトリス(4一ピリジル)卜リアジン(C)及び 2—(スクシニルァミノ)トリフエ二 レン(D12)又は 2—(マレィルァミノ)卜リフエ二レン(D,3)の 7Γ平面の側縁に存在する水 素原子で取り囲まれている。 2— (スクシニルァミノ)トリフエ二レン(D12)又は 2— (マレイ ルァミノ)トリフエ二レン(D13)のアミドブタン酸又はアミドブテン酸のカルボキシル基は、 チャンネル Q6の内面を向いて配向しており、チャンネル Q6の内面の一部を形成してい る。
[0192]
尚、高分子錯体 3同様、高分子錯体 1 2及び 1 3において、環状酸無水物のゲスト交 換前、アミドブタン酸基又はアミドブテン酸基の前駆となるアミノ基が、チャンネル P 'の 内面を向いて配向していたのに対して、環状酸無水物のゲスト交換後、ァミノ基と環状
酸無水物のアミド反応により生じたアミドブタン酸基又はアミドブテン酸基はチャンネル Q6の内面を向いて配向していた。
[0193]
(高分子錯体 14の製造)
高分子錯体 1'をイソシアン酸フエ二ルのシクロへキサン溶液(イソシアン酸フエニル:シ クロへキサン =1 :9(体積比))に室温で 3〜4日間浸すことにより、高分子錯体 1'を構 成する 2—アミノトリフヱ二レン(D,' )と、高分子錯体 1 'のゲスト分子として細孔内に取り 込まれたイソシアン酸フヱニルを求核付加反応させ、黄色結晶の高分子錯体 14[(ZnI 2)3(C)2(D14)]を得た(下記式(18)参照)。
[0194]
(式 1 8)
[(Znl^C^D )] [(Znl2)3(C)2(D14)]
[0195]
(高分子錯体 14の分析)
得られた高分子錯体 14について、 X線結晶構造解析を行った。図 16に、紙面(結晶 010面)に対して垂直な方向を軸 bとし、高分子錯体 14の三次元格子状構造内の相 互貫通構造をチャンネル P7及び Q7が伸びる方向(軸 b)に沿って示す。尚、図 16では 、チャンネル P7とチャンネル Q7に取り込まれたゲスト分子は省略されている。
[0196]
高分子錯体 14は、高分子錯体 1'の三次元構造を維持しており(図 10参照)、図 16
に示すような三次元構造を有していた。すなわち、高分子錯体 1 4は、高分子錯体 9〜 1 1と同様、卜リス(4—ピリジル)トリァジン(C)とヨウ化亜鉛とから構築された三次元格 子状構造内に形成された卜リス(4一ピリジル)トリァジン(C)と 2—(3 -フエニルウレイド )トリフエ二レン(D14)との積み重ね構造の間に、それぞれ規則的に配列した 2種のチヤ ンネル(P7及び Q7 )を有している。
チャンネル P7は、ほぼ円筒型であり、且つ、積み重なった無数のトリス(4一ピリジル) 卜リアジン(C)及び 2—(3—フエニルウレイド)トリフエ二レン(D14)の丌平面の側縁に存 在する水素原子でほぼ取り囲まれている。 2—(3—フエニルウレイド)トリフエ二レン(D,4 )のフエニル尿素基は、チャンネル P7の内面を向いて配向しており、チャンネル P7の内 面の一部を形成している。一方、チャンネル Q7は、擬三角柱型であり、且つ、その三角 柱を形成する 3方の面のうち、 2っはトリス(4一ピリジル)トリァジン(C)の兀平面に取り 囲まれ、もう一つは積み重なった無数の卜リス(4—ピリジル)卜リアジン(C)及び 2—(3 一フエニルウレイド)トリフエ二レン(D14)の 7Γ平面の側縁に存在する水素原子で取り囲 まれている。 2— ( 3—フエニルウレイド)トリフエ二レン(D14)のフエニル尿素基は、チャン ネル Q7の内面を向いて配向していない。
[0197]
[高分子錯体 1 5の製造]
( 2—ホルミルトリフエ二レン(D15)の合成)
以下のようにして、 vJ.Am.Chem.Soc.1995,1 1 7,9408を参考に、 2—ホルミル卜リフエニレ ンを合成した。
まず、ナスフラスコに、トリフエ二レン 0. 1 g ( 0. 44mmol、白色粉末)をとリ、ナスフラ スコ内を真空引きし、アルゴン置換した。次に、脱水ジクロロメタンをナスフラスコに添加 し、 0°Cに冷却した(氷水中)。冷却しながら、テ卜ラクロ口チタンの 1 40/0ジクロロメタン溶 液を 1 . 8ml ( 1 . 8mmol)添加し(橙色懸濁溶液に変化)、さらに、ジクロロメチルメチル エーテル 0. 4ml (4. 3mmol)を添加した(紫色懸濁溶液に変化)。
得られた紫色懸濁溶液を、ジクロロメチルメチルエーテルが反応前に分解するのを防 止するため、 0°C (氷水中)で 0. 5時間攪拌した後、室温で 0. 5時間攪拌し、その後、 5 0°Cで 1. 5時間還流を行い、さらに、室温で 24時間攪拌した。
次に、水 15mlを添加してテ卜ラクロ口チタンを失活させた後、分液漏斗で有機層を分 離した。分離した有機層を水で洗浄した後、硫酸ナトリウムを添加し、有機層中の水分 を除去した。得られた溶液は濾過し、濾過物を濃縮乾固させ、茶色粉末を得た。この茶 色粉末をカラムクロマトグラフィー(シリカ、クロ口ホルム)を用いて精製し、橙色粉末を 得た(収量 0.086g、収率 76%。)
得られた橙色粉末を1 HNMR及び GCMSにて分析した。結果を図 17及び図 18に示 す。図 17に示すように、トリフエ二レン由来のピークとホルミル基由来のピークを帰属で き、また、図 18に示すように、ホルミル卜リフエ二レンに相当する分子量も検出されたこと から、.2—ホルミルトリフエ二レンが単一化合物として得られたことが確認された。
[0198]
(高分子錯体 15の製造)
試験管に、ニトロベンゼン 4ml及びメタノール 1mlをとリ、そこに、 2, 4, 6—トリス(4— ピリジル)一 1, 3, 5—卜リアジン(C)6. 3mg(0.02mmol)を溶解し、さらに、 2—ホル ミルトリフエ二レン(D15)を添加した。
次に、上記にて得られた溶液を下層とし、その上に、 Znl2 9. 6mg(0. 03mmol)を メタノール 1. Omlに溶かした溶液を上層として静に加え、約 23〜25°C (室温)で約 3日 間静置し、高分子錯体 15[(ZnI2)3(C)2(D,5)] (黄色結晶)を得た。
[0199]
(高分子錯体 15の分析)
得られた高分子錯体 15 (黄色結晶)について、 CCDX線解析装置を用い、 X線結晶 構造解析を行った。結果を図 19に示す。図 19は、紙面(結晶 010面)に対して垂直な 方向を軸 bとするものであり、高分子錯体 15の三次元格子状構造内の相互貫通構造
をチャンネル P8及び Q8が伸びる方向(軸 b)に沿って示したものである。尚、図 1 9では 、チャンネル P8とチャンネル Q8に取り込まれたゲスト分子は省略されている。
高分子錯体 1 5は、トリス(4一ピリジル)トリァジン(C)とヨウ化亜鉛とから構築された 三次元格子状構造内に形成されたトリス(4—ピリジル)トリァジン(C)と 2—ホルミルト リフエ二レン(D15)との積み重ね構造の間に、それぞれ規則的に配列した 2種のチャンネ ル(P8及び Q8)を有している。
[0200]
チャンネル P8は、ほぼ円筒型であり、且つ、積み重なった無数の卜リス(4—ピリジル) 卜リアジン(C)及び 2—ホルミルトリフエ二レン(D15)の 7Γ平面の側縁に存在する水素原 子でほぼ取り囲まれている。 2—ホルミルトリフエ二レン(D15)のホルミル基は、チャンネ ル P8の内面を向いて配向しており、チャンネル P8の内面の一部を形成している。
一方、チャンネル Q8は、擬三角柱型であり、且つ、その三角柱を形成する 3方の面の うち、 2つは卜リス(4一ピリジル)トリァジン(C)の 7Γ平面に取り囲まれ、もう一つは積み 重なった無数のトリス(4一ピリジル)トリァジン(C)及び 2 -ホルミルトリフエ二レン(D15) の 7Γ平面の側縁に存在する水素原子で取り囲まれている。 2—ホルミルトリフエ二レン( D, 5)のホルミル基は、チャンネル Q8の内面を向いて配向していない。
[0201 ]
[高分子錯体 1 5の細孔内面の化学修飾]
上記にて合成した高分子錯体 1 5を、以下に示すように、それぞれァミノ化合物(3— ァミノ安息香酸又はァニリン)を溶かした溶液に浸潰し、高分子錯体 1 5の単結晶中に おいて、 2—ホルミルトリフエ二レン(D15)とァミノ化合物を脱水反応させ、イミンを骨格に 有する高分子錯体 1 6及び高分子錯体 1 7を合成した。
(高分子錯体 1 6及び高分子錯体 1 7の製造)
ぐ高分子錯体 1 6の製造 >
高分子錯体 1 5を、 3—ァミノ安息香酸の 0. 1 1 M酢酸ェチル溶液に、 60°Cで加熱し
ながら 4時間浸すことにより、高分子錯体 15を構成する 2—ホルミル卜リフエ二レン(D15 )と、高分子錯体 15のゲスト分子として細孔内に取り込まれた 3—ァミノ安息香酸を脱 水反応させ、黄色結晶の高分子錯体 16[(ZnI2)3(C)2(D16)]を得た(下記式(19)参 昭) -
<高分子錯体 17の製造 >
高分子錯体 15を、ァニリンの 0. 11 Mシクロへキサン溶液に、 60°Cで加熱しながら 2 4時間浸すことにより、高分子錯体 15を構成する 2—ホルミルトリフヱニレン(D,5)と、高 分子錯体 15のゲスト分子として細孔内に取り込まれたァニリンを脱水反応させ、橙色 結晶の高分子錯体17[ ^2)3 (02(017)]を得た(下記式(20)参照)。
[0202]
[0203]
(高分子錯体 16及び高分子錯体 17の分析)
得られた高分子錯体 16 (黄色結晶)及び高分子錯体 17 (橙色結晶)について、 X線 結晶構造解析を行った。図 20及び図 21に、紙面(結晶 010面)に対して垂直な方向 を軸 bとし、高分子錯体 16及び高分子錯体 17の三次元格子状構造内の相互貫通構 造を、チャンネル P9、卩10及び09、<310が伸びる方向(軸13)に沿って示す。尚、図 20 及び図 21では、各チャンネルに取り込まれたゲスト分子は省略されている。
[0204]
高分子錯体 16及び高分子錯体 17は、高分子錯体 15の三次元構造を維持しており
(図 19参照)、図 20及び図 21に示すような三次元構造を有していた。すなわち、高分 子錯体 16及び 17は、卜リス(4—ピリジル)トリァジン(C)とヨウ化亜鉛とから構築された 三次元格子状構造内に形成された卜リス(4—ピリジル)トリァジン(C)とィミノ化合物(2 ーィミノメチルトリフエ二レン)(D16、 D,7) [高分子錯体 16 :2— {(3—カルボキシフエニル ィミノ)メチル I卜リフ I二レン(D, 6)、高分子錯体 17:2— { (フヱ二ルイミノ)メチル)トリフ ェニレン(D17)]との積み重ね構造の間に、それぞれ規則的に配列した 2種のチャンネル (P9及び Q9、又は P10又は Q10)を有している。
チャンネル P9及び P10は、ほぼ円筒型であり、且つ、積み重なった無数の卜リス(4一 ピリジル)トリァジン(C)及び 2—ィミノメチルトリフエ二レン(D, 6、 D17)の 7Γ平面の側縁 に存在する水素原子でほぼ取り囲まれている。 2—イミノメチルトリフエ二レン(D16、 D17 )のィミノ基(3—カルポキシフエ二ルイミノメチル基、フエ二ルイミノメチル基)は、チャンネ ル P9又は P10の内面を向いて配向しており、チャンネル P9又は P10の内面の一部を 形成している。
[0205]
一方、チャンネル Q9及び GMOは、擬三角柱型であり、且つ、その三角柱を形成する 3方の面のうち、 2っはトリス(4一ピリジル)トリァジン(C)の 7Γ平面に取り囲まれ、もう 一つは積み重なった無数の卜リス(4—ピリジル)トリアジン(C)及び 2—ィミノメチルトリ フエ二レン(D16、 D, 7)の π平面の側縁に存在する水素原子で取り囲まれている。 2—ィ ミノメチルトリフエ二レン(D16、 D, 7)のィミノ基は、チャンネル Q9及び Q 10の内面を向い て配向していない。