明 細 書
生体組織正常化方法
技術分野
[0001] 本発明は生体又は生体組織を活性化させる生体組織正常化方法に関し、特に生 体又は生体組織の正常化機構を活性化させる生体組織正常化方法に関する。 背景技術
[0002] 近年、あらゆる細胞に存在するュビキチン (Ubiquitin)は、その機能が解明され、不 要となった蛋白質に結合してその目印となる役目を有する。このュビキチンが結合し た不要な蛋白質 (ュビキチンィ匕蛋白質)は、このュビキチンを目印として酵素プロテア ノームに取り込まれて分解される。このような不要な蛋白質を分解する生体正常化機 構は、ュビキチン'プロテアソームシステムとして働き、細胞の分裂、 DNAの修復、蛋 白質の品質管理、免疫等の多く糸且織の正常化に関与している。
また、生体正常化機構は、電気温熱式治療器により、生体の所定部位を加熱して 熱ショック蛋白質(Heat Shock Protein;以下「HSP」と!、う。)を発現誘導して活性化さ れる。
[0003] 前記 HSPは、ストレス蛋白質とも呼ばれる分子量が数万力も約 15万の一群の蛋白 質を指し、分子量によりいくつかのファミリーに分類されている。 HSPは、新生蛋白質 、変性蛋白質及び異常蛋白質の疎水部分に非共有結合して、蛋白質の折り畳み、 細胞内小器官への輸送、変性蛋白質の再折り畳みや分解を介助して、細胞内蛋白 質の品質管理を行い、細胞内に異常蛋白質や変性蛋白質が蓄積するのを防いでい る。これらの機能は分子シャペロンと総称されており、 HSPは熱ショックをはじめさま ざまな物理的'ィ匕学的な傷害因子により誘導される。 HSPを多く発現した細胞は、さ まざまな傷害因子に対して強い抵抗力を獲得することは既に確立された事実である。
[0004] HSP70ファミリーに属する分子量 72キロダノレトンの HSP70は、ストレスにより初め て誘導される蛋白質であり、最も研究が進んでいる。細胞を熱ショックなどの非致死 的なストレスに曝すことにより HSP70を予め過剰発現させておくと、致死的な傷害因 子に対しても強い抵抗性を示し、細胞は生き延びることができる。
[0005] この抵抗性は、分子シャペロンの機能を介して細胞内に異常蛋白質や変性蛋白質 が蓄積するのを防ぐことにカ卩えて、ストレスを受けた細胞のミトコンドリアなどの細胞内 小器官の機能を保全し、細胞壊死を抑制して炎症反応を抑え、アポトーシスを抑制し て細胞損失を抑えることが示されている(Samali,A. et ai., Cell Stress & Chaperones 3:228, 1998)。
[0006] さまざまな病的状態では、細胞は物理的'ィ匕学的ストレスに曝される。実験動物を用 いた多くの疾患モデルにおいて、 HSP70を何らかの方法で過剰に発現させると、傷 害が軽減されることが明らかにされており、 HSP70の臨床応用についての期待が高 まっている(Minowada,G. et al., J.Clin.Invest., 95:2, 1995とその引用文献を参照)。
[0007] ヒトの疾患との関連で、細胞が遭遇するさまざまなストレスについて言及すると、まず 、代表的なストレスとして虚血があげられる。予め実験動物に全身の熱ショック負荷を 行い HSP70を過剰発現させておくと、脳動脈や冠状動脈を結紮した場合でも、脳( Kitagawa.K. et al., J.Cereb. Blood Flow Metab., 11:449,1991)ゃ心臓(00 ^11 ,1\11. et al., Circulation 85 :1048,1992)の梗塞部位が縮小することが示されている。また、 HSP70の遺伝子導入を行ったマウスでも、心筋梗塞の抑制効果が示されている (M aber, M.S. et al., J.Clin.Invest., 95: 1446, 1995)。 HSP70の虚血による細胞障害の 抑制効果は、脳と心臓に限らず総ての臓器についても適応される。
[0008] 活性酸素'フリーラジカルは、感染、炎症、変性疾患、自己免疫疾患、動脈硬化、 老化にともない産生量が増加して細胞障害を引き起こす。 HSP70は、これらの活性 酸素'フリーラジカルによる細胞障害を抑制することが示されている(Polla B.S. et al, Proc.Natl.Acad Sci.USA,93:6458,1996) 0
[0009] 虚血 '再灌流傷害は、再灌流時の活性酸素の産生亢進が主要な病因の一つとして 確率されており、 HSP力脳、心臓、肝、小腸などにおいて軽減されることが知られて いる。この HSPによる保護作用は、総ての臓器に適応される。また、臓器移植は、虚 血再灌流傷害の典型例の一つである。事実、 HSP70を過剰発現させておくと、皮膚 の移植片の生着率が改善することが示されており(Koenig,W.J. et al., Plast Recontsr . Surg., 90:659,1992)、肝移植の際にも、移植肝が HSP70を多く発現するほど急性 拒絶反応が軽減することも報告されている(Flohe,S. et al., Traspl.lnt., 11:89,1998)
。また、紫外線、放射線、重金属、アルコール、抗癌剤やパラコートは、主に活性酸 素'フリーラジカルによる傷害を引き起こす。 HSP70は、紫外線、放射線による皮膚 、粘膜、目のレンズや網膜の傷害の予防と治療、さらにアルコール性臓器傷害、重金 属ゃ薬物中毒の治療効果も期待できる。
[0010] また、癌細胞は、 HSP70を細胞表面に発現し、この HSP70が NK細胞を活性化 することから(kurosawa,S. et al., Eur. J.Immunol., 23:1029,1993)、この HSP70の発 現を介して癌免疫を賦活化させることもできる。また、微生物の侵入に対しても、宿主 マクロファージの HSPの発現が強 、ほど感染抵抗性が増すことも示されており(Dena gel.D.C. et al., Crit.Rev.lmmunol., 13:71, 1993)、免疫賦活一生体防御能の増強効 果も期待できる。
[0011] HSP70による細胞内蛋白質の品質管理の働きに注目して、細胞内に異常蛋白質 が蓄積する疾患、例えば、 j8アミロイドの沈着によるアルツハイマー病、異常プリオン 蛋白質の沈着するクロイツフェルド 'ヤコブ病、さらにアミロイド一シス、ウィルソン病、 パーキンソン病などの変性疾患の予防と治療にも効果が期待できる。
[0012] また、外科手術、外傷などの生体侵襲などの身体的ストレスに対する耐性効果が期 待されるば力りでなぐ精神的ストレスによるアレルギー疾患、ストレス潰瘍、慢性炎症 性疾患などの発症や増悪を抑制する効果も期待できる。 HSP70は、敗血症による多 臓器不全'ショックの軽減(Hauser,G.J. et al., Am. J.Physiol., 271:H2529,1996)や、 成人呼吸窮迫症候群(adult respiratory distress syndrome)の予後を改善することも 報告されており (VillarJ. et al., Am.Rev.Respir.Dis., 147: 177,1993)、これらの重度の 生体侵襲時の治療薬としてもその効果が期待される。
[0013] HSPは、細胞内(生体内)物質であるため、その誘導にともない副作用が発生する 可能性は少ない。また HSP70の過剰発現が原因となる疾患も報告されていない。動 物実験では、全身の熱ショック、一過性の阻血操作、 HSP70の遺伝子導入などが行 われているが、実際の臨床に応用することは困難である。このため、組織や細胞に害 を与えず、しかも選択的に HSPを誘導する機器は臨床的にも優れた治療装置といえ る。
[0014] 転写因子は外界からのシグナル伝達系の最下位に位置するため、それを標的に
することで副作用を最小限にとどめることができると考えられる。 NF— κΒは転写因 子の一つであり、細胞質内では阻害蛋白質である I κ Βと結合して不活性ィ匕されてい る。細胞が種々の刺激を受けると I κ Βがリン酸ィ匕を受け、それに引き続きュビキチン 化を受けてプロテアソームにより分解される。遊離状態となった NF— κ Βは核へ移行 し、さまざまな遺
伝子を特異的に活性化する。 NF- κ Βの制御下にある遺伝子には、免疫系の細胞 で重要な働きをするサイト力イン (TNF— a, j8, IL— 2, 6, 8等)等があげられる。こ れらの遺伝子は、細胞が刺激を受けた際に発現誘導されるため、免疫応答に NF— κΒが深く関わっていることが分かる。しかし、その炎症応答が過剰になってしまうと、 さまざまな疾患を引き起こすことが知られている。例えば、リウマチや喘息、皮膚炎等 さまざまな炎症性の疾患、自己免疫疾患、ウィルス性疾患、動脈硬化症等などの疾 患に NF— κ Βが関与していることから、 NF- κ Βを制御することの意義は臨床的に も極めて大きいものである(Anning Lin. Cancer Biology, 2003, Aggarwal BB et al. In dian J Exp Biol
,2004, Alok C. Bharti et al. Biochemical Pharmacology, 2002)。
非特許文献 l:Samali,A. et ai., Cell Stress & Chaperones 3:228, 1998
非特許文献 2:Minowada,G. et al., J.Clin.Invest., 95:2, 1995とその引用文献 非特許文献 3:Kitagawa,K. et al., J.Cereb. Blood Flow Metab., 11:449,1991 非特許文献 4:Donnelly,T.J. et al., Circulation 85 :1048,1992
非特許文献 5:Maber, M.S. et al., J.Clin.Invest., 95: 1446, 1995
非特許文献 6:Polla B.S. et al., Proc.Natl.Acad Sci.USA,93:6458,1996
非特許文献7:1 06 8,\^.11. et al., Plast Recontsr. Surg., 90:659,1992
非特許文献 8:Flohe,S. et al" TraspUnt" 11:89,1998
非特許文献 9:kurosawa,S. et al., Eur. J.Immunol., 23:1029,1993
非特許文献 10:Denagel,D.C. et al., Crit.Rev.lmmunol., 13:71, 1993
非特許文献 ll:Hauser,G.J. et al., Am.J.Physiol., 271:H2529,1996
非特許文献 12:Villar,J. et al., Am.Rev.Respir.Dis., 147:177,1993
非特許文献 13: Anning Lin. Cancer Biology, 2003
非特許文献 14 :Aggarwal BB et al. Indian J Exp Biol ,2004
非特許文献 15 :Alok C. Bharti et al. Biochemical Pharmacology, 2002
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0015] し力しながら、前記ュビキチン'プロテアソームシステムに基づく生体正常化機構は 、生体組織の正常 (健康)時においてはあらゆる細胞に存在するュビキチンの量が十 分でなぐ不要となった蛋白質を迅速且つ確実に分解して排除できないという課題を 有していた。また、生体組織の異常 (疾患)時においては、ュビキチンが結合した不 要となった蛋白質を分解して排除することから、細胞内のュビキチンも減少することと なり、この異常 (疾患)の細胞が計画的な細胞死に至らず、腫瘍等の異常な細胞が減 少せず異常 (疾患)を改善できな 、と 、う課題を有して 、た。
[0016] 他方、電気温熱式治療器等による HSPに基づく生体正常化機構は、生体に対して 極めて高い温度 (例えば、 42°C)を 1時間以上加熱しなければ HSPが十分に発現誘 導せず活性化されないことから、加熱による生体組織の損傷等を伴い、迅速且つ正 確な生体の正常化ができな 、と 、う課題を有して ヽた。
さらに、 NF- κ Bの活性を制御する I κ Bの量及びリン酸ィ匕状態に影響することに より生体を正常化する方法はな力つた。
[0017] 本発明は、前記課題を解消するためになされたもので、生体又は生体組織を迅速 且つ正確に正常化できる生体組織正常化方法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0018] 本発明に係る生体組織正常化方法は、微弱な直流電流を所定の間隔で間歇的に 生体又は生体組織に通電し、当該生体又は生体組織における正常化機構を蛋白質 を介して活性ィ匕させるものである。このように本発明においては、微弱な直流電流を 所定の間隔で間歇的に
生体又は生体組織に通電し、当該生体又は生体組織における正常化機構を蛋白質 を介して活性化させることにより、疾患の異常な生体又は生体組織の正常化を迅速 且つ正確に行うことができると 、う効果を奏する。
[0019] また、本発明に係る生体組織正常化方法は必要に応じて、前記直流電流が通電さ
れる生体又は生体組織に温熱をカ卩えるものである。このように本発明においては、直 流電流が通電される生体又は生体組織に温熱を加えることにより、生体又は生体組 織の正常化をより迅速且つ正確に行うことができるという効果を有する。
[0020] また、本発明に係る生体組織正常化方法は必要に応じて前記蛋白質が、ュビキチ ンであるものである。このように本発明においては、蛋白質が、ュビキチンであること 力 生体又は生体組織の正常化をより迅速且つ正確に行うことができるという効果を 有する。
[0021] また、本発明に係る生体糸且織正常化方法は必要に応じて、前記蛋白質が、熱ショッ ク蛋白質であるものである。このように本発明においては、生体又は生体組織の正常 化をより迅速且つ正確に行うことができるという効果を有する。
[0022] また、本発明に係る生体糸且織正常化方法は必要に応じて、前記蛋白質が、 I κ B蛋 白質であるものである。このように本発明においては、蛋白質が、 I κ B蛋白質である ことから生体又は生体組織の正常化をより迅速且つ正確に行うことができるという効 果を有する。
[0023] また、本発明に係る生体組織正常化方法は必要に応じて、前記直流電流の間歇 的な間隔が、 30Hzないし 100Hzであるものである。このように本発明においては、 直流電流の間歇的な間隔が、 50Hzな 、し 60Hzであることから生体又は生体組織 の正常化をより迅速且つ正確に行うことができるという効果を有する。
[0024] また、本発明に係る生体組織正常化方法は必要に応じて、前記温熱が、 38°C以上 45°C以下であるものである。このように本発明においては、温熱が、 38°C以上 45°C 以下であることから生体又は生体組織の正常化をより迅速且つ正確に行うことができ るという効果を有する。
[0025] 本発明に係る治療装置は、生体又は生体組織の異なる部位に 1対のパッド素子を 付着し、当該 1対のパッド素子間に電流を電流制御手段が通電して前記生体を治療 する治療装置において、前記パッド素子が生体又は生体組織の表面に付着する導 電性のシート体からなる導電層と、当該導電層の背面側に配設され、伝熱特性を有 し且つ絶縁性のシート体力もなる絶縁層と、当該絶縁層の背面側に配設され、両端 部分に 1対の電極が配設され、当該 1対の電極間に抵抗が配設される発熱層とを備
え、前記電流制御手段が、前記 1対のパッド素子における各導電層間に微弱な直流 電流を所定の間隔で間歇的に供給制御すると共に、前記 1対のパッド素子の各発熱 層における各 1対の電極間に電流を供給制御するものである。
[0026] このように本発明においては、生体又は生体組織の異なる部位に付着する 1対の ノッド素子が生体又は生体組織の表面に付着する導電性のシート体力 なる導電層 、伝熱特性を有し且つ絶縁性のシート体力ゝらなる絶縁層、両端部分に 1対の電極が 配設され、当該 1対の電極間に抵抗が配設される発熱層を順次積層して形成され、 前記各導電層間に微弱な直流電流を所定の間隔で間歇的に供給制御すると共に、 前記各発熱層における各 1対の電極間に電流を電流制御手段が供給制御すること により、電流が通電される生体又は生体糸且織に同時に加熱できることとなり、生体又 は生体組織の正常化をより迅速且つ正確に行うことができるという効果を有する。
[0027] また、本発明に係る治療装置は必要に応じて、前記パッド素子の発熱層が、 1対の 電極が各々短冊状に形成され、当該電極間の抵抗が短冊状の電極に平行な方向に 配向性を有するカーボン繊維で形成されるものである。このように本発明においては 前記パッド素子の発熱層が、 1対の電極が各々短冊状に形成され、当該電極間の抵 抗が短冊状の電極に平行な方向に配向性を有するカーボン繊維で形成されることに より、電極間がカーボン繊維により短絡されることなくこの各平行なカーボン繊維相互 間の適度な抵抗値により発熱できることとなり、生体又は生体組織の正常化をより迅 速且つ正確に行うことができると!/、う効果を有する。
[0028] また、本発明に係る治療装置は必要に応じて、前記各導電層に供給される直流電 流力 50Hzないし 60Hzの周期で間歇的に供給制御されるものである。このように本 発明においては、各導電層に供給される直流電流が、 50Hzないし 60Hzの周期で 間歇的に供給制御されることにより、生体又は生体組織による電流刺激を効果的に 行うことができることとなり、生体又は生体組織の正常化をより迅速且つ正確に行うこ とができると!、う効果を有する。
[0029] また、本発明に係る治療装置は必要に応じて、前記 1対のパッド素子の各発熱層が 、 38°C以上 45°C以下に加熱するものである。このように本発明においては、 1対のパ ッド素子の各発熱層が、 38°C以上 45°C以下に加熱することにより、生体又は生体組
織による適度な温熱刺激を与えることができることとなり、生体又は生体組織の正常 化をより迅速且つ正確に行うことができるという効果を有する。
[0030] また、本発明に係る治療装置は必要に応じて、前記導電層に供給される直流電流 力 1分以上で任意の供給時間とし、当該供給時間に反比例した電圧値を 0. 4V以 下 0. 01V以上の間で設定して印加されるものである。このように本発明においては、 前記導電層に供給される直流電流が、 1分以上で任意の供給時間とし、当該供給時 間に反比例した電圧値を 0. 2V以下 0. 03V以上の間で設定して印加されることによ り、電流刺激と温熱刺激とを適度にバランスをとることができることとなり、生体又は生 体組織の正常化をより迅速且つ正確に行うことができるという効果を有する。
図面の簡単な説明
[0031] [図 1]本発明の一実施形態に係る治療装置の全体概略構成図である。
[図 2]図 1に記載の治療装置におけるパッド素子の平面図である。
[図 3]図 2に記載のパッド素子の A— A線断面図である。
[図 4]図 3に記載のパット素子の B— B線断面図である。
[図 5]ヒトの培養細胞系における HSP70の誘導の評価結果である。
[図 6]ヒトの培養細胞系における細胞障害の有無の評価結果である。
[図 7]ヒトの培養細胞系におけるュビキチン化の促進の評価結果である。
[図 8]ヌードマウスに対する一回処置による正常組織中の HSP70の誘導の評価結果 である。
[図 9]ヌードマウスに対する一回処置による腫瘍組織中の HSP70の誘導の評価結果 である。
[図 10]ヌードマウスに対する一回処置による腫瘍組織中のュビキチンィ匕の促進の評 価結果である。
[図 11]ヌードマウスに対する 1日 1回処置あるいは 1日 1回の 3日間処置による I κ B- a及びそのリン酸化体の発現量の検討の評価結果である。
[図 12]遺伝子変異細胞 Δ F508CFTRを安定高発現させた培養細胞系における HS P70の誘導の評価結果である。
[図 13]遺伝子変異細胞 Δ F508CFTRを安定高発現させた培養細胞系におけるュ
ビキチン化の促進の評価結果である。
[図 14] 2型糖尿病モデルマウス(高脂肪食負荷マウス)につ 、て行った実験評価で 1 0週間処置後の空腹時血糖値である。
[図 15]2型糖尿病モデルマウスについて行った実験評価で 10週間処置後のインスリ ン値である。
[図 16]2型糖尿病モデルマウスについて行った実験評価で 10週間処置後の血清ァ ディポネクチン値である。
[図 17] 2型糖尿病モデルマウスにつ 、て行った実験評価でダルコース負荷試験結果 である。
[図 18]2型糖尿病モデルマウスについて行った実験評価でインスリン負荷試験結果 である。
[図 19]2型糖尿病モデルマウスについて行った実験評価で 10週間処置後の内臓脂 肪の組織重量である。
[図 20]2型糖尿病モデルマウスについて行った実験評価で 10週間処置後の皮下脂 肪の組織重量である。
[図 21]2型糖尿病モデルマウスについて行った実験評価で 10週間処置後の肝重量 である。
[図 22]2型糖尿病モデルマウスについて行った実験評価で 10週間処置後の UCP1 mRNAの誘導である。
[図 23] 2型糖尿病モデルマウスにっ 、て行った実験評価で 2週間処置後の胃粘膜損 傷割合である。
[図 24] 2型糖尿病モデルマウスにっ 、て行った実験評価で 2週間ごとの白血球数変 化率である。
符号の説明
1、 2 パッド素子
3 電流制御手段
11、 21 導電層
12、 22 絶縁層
13、 23 発熱層
13a,13b、 23a - 23b電極
16 カーボン繊維
14、 24 被覆層
100 生体
200 電源
発明を実施するための最良の形態
[0033] 以下、本発明の一実施形態に係る治療装置を生体組織正常化方法と共に、図 1な いし図 3に基づいて説明する。この図 1は本実施形態に係る治療装置の全体概略構 成図、図 2は図 1に記載の治療装置におけるパッド素子の平面図、図 3は図 2に記載 のパッド素子の A— A線断面図、図 4は図 3に記載のパット素子の B— B線断面図を 示す。
[0034] 前記各図において本実施形態に係る治療装置は、生体 100の異なる部位に 1対の パッド素子 1、 2を付着し、この 1対のパッド素子 1、 2間に電源 200からの電流を電流 制御手段 3が通電して前記生体 100を治療する治療装置において、前記パッド素子 1、 2が、生体 100表面に付着する導電性のシート体からなる導電層 11、 21と、この 導電層 11、 21の背面側に配設され、伝熱特性を有し且つ絶縁性のシート体からなる 絶縁層 12、 22と、この絶縁層 12、 22の背面側に配設され、両端部分に 1対の電極 1 3a,13b、 23a · 23b力 S酉己設され、この 1対の電極 13a, 13b、 23a,23bf¾に抵抗 13c 、 23cが配設される発熱層 13、 23と、この発熱層 13、 23の背面最外側に配設され、 断熱特性を有し且つ絶縁性のシート体力ゝらなる被覆層 14、 24とを備え、電流制御手 段 3が、前記 1対のパッド素子 1、 2における各導電層 11、 21間に微弱な直流電流を 所定の間隔で間歇的に供給制御すると共に、前記 1対のパッド素子 1、 2の各発熱層 13、 23における各 1対の電極 13a ' 13b、 23a ' 23b間に直流電流を供給制御する構 成である。
[0035] 前記発熱層 13、 23は、 1対の電極 13a ' 13b、 23a ' 23bが各々短冊状に形成され 、この電極 13a,13b、 23a,23b間の抵抗 13c、 23c力短冊状の電極 13a, 13b、 23a •23bに平行な方向に配向性を有するカーボン繊維 16でで形成され、加熱温度 42
°Cに加熱される構成である。
前記電流制御手段 3は、導電層 11、 21に対して 55Hzの周期で間歇的に ON状態 となるように 10分以上 30分以下の間だけ微弱電流を供給し、印加電圧を 0. 2V以下 0. 03V以上に制御する構成である。
[0036] 前記電流制御手段 3が生体又は生体組織に通電する微弱電流、印加電圧及び間 歇的な通電 (印カロ)の周波数にっ 、てヒトを対象とした試験結果に基づ!、て説明する 。このヒト対象の試験はヒトの両足の印加部位に 0. 2[V]から 0. 4 [V]の印加電圧を 印加し、ヒトの抵抗値 (ヒトロ腔内の抵抗値)を約 0. 2[Μ Ω ]とすると、ヒトの体内での 電圧降下 (電位差)が 0. 1 [V]ないし 0. 2 [V]が発生している。この電位差 0. 1 [V] ないし 0. 2 [V]及びヒトの抵抗値約 0. 2[Μ Ω ]より前記微弱電流は、 0. 5 [ /ζ Α]な いし 1. 0 [ Α]が前記電流制御手段 3により通電制御される。
[0037] このヒト対象の試験において、被試験者におけるヒトの両足に印加電圧 0. 3 [V]を 印加し、周波数を 35 [Hz]から 150 [Hz]で変化させて被試験者の感覚 (快適感〜不 快適感)を次の通り検出した。
まず、 35Hzでは、まだ違和感があり、長時間の処理で気持ちが悪くなることが解つ た。 45Hzでは、しびれ感が強ぐ気持ちが悪く(不快)感じ、長時間の処理が無理で あることが解った。 50Hzでは、快適感の許容範囲であることが解った。 55Hzでは、 極めて快適であることが解った。 60Hzでは、快適感の許容範囲であることが解った
[0038] また、 65Hzでは、少し刺激が感じられなくなり、 0. 350Vに挙げると 55Hz時に近 いような刺激を感じることができるものの、ただ、最適ではないことが解った。 70Hzで は、ほとんど刺激を感じられないことが解った。 75Hzでは、ほとんど刺激を感じられ ず、印加電圧を 0. 400Vに上げると少し刺激を感じることが解った。 100Hzでは、全 く刺激を感じられず、印加電圧を 0. 450Vに上げると少し刺激を感じることが解った。 150Hzでは、全く刺激を感じられず、印加電圧を 0. 600Vにまで上げたが感じない ことが解った。
[0039] また、印加電圧を 0. 25 [V]、 0. 3 [V]、 0. 35 [V]及び 0. 4 [V]とした場合におけ るこの直流電圧を間歇印加する周波数の最適周波数を試験にて求めた。この印加
電圧が 0. 250[V]の場合に周波数を 35く Hzく 50で変化させると、 35 [Hz]以下は しびれ感が強く気持ちが悪く感じ、 50 [Hz]以上では感じない。また、印加電圧が 0. 300 [V]の場合に周波数を 45く Hzく 60で変化させると、 45 [Hz]以下はしびれ感 が強く気持ちが悪く感じ、 75 [Hz]以上では感じない。また、印加電圧が 0. 400 [V] の場合に周波数を 65く Hzく 75で変化させると、 75 [Hz]以下は強く筋肉の収縮が 現れるか、気持ちが悪く感じ、 75 [Hz]以上では感じない。
[0040] 以上の試験結果より、印加電圧が 0. 3 [V]で周波数 55 (± 1) [Hz]が最適周波数 であり、 50 [Hz]な 、し 60 [Hz]の範囲で電流制御手段 3が制御することが望まし 、こ と力 S解る。
また、生体又は生体組織に対する電気信号の機能から、前記電流制御手段 3は次 の通り微弱電流を制御することできる。即ち、生体又は生体組織の非興奮性細胞に 生体電流に相当する微弱電流を強制的に通電して、体内のタンパク質を介して活性 ィ匕するものである。このように非興奮性細胞にのみ生体電流に相当する微弱電流を 通電し、筋肉性細胞等の興奮性細胞に生体電流に相当する外部力 の電流を通電 しな 、ので収縮等の刺激を与えることがな!、。
従って、電流制御手段 3は、興奮性細胞が、例えば筋肉性細胞を不快に収縮させ な ヽ電流レベルの微弱電流を通電するように制御する。
[0041] 次に、本実施形態における治療装置の動作により発現する蛋白質の誘導効果をヒ トの培養細胞系、ヌードマウス、 A F508CFTRを安定高発現させた培養細胞系につ V、て、以下の実験に基づ 、て具体的に説明する。
実施例
[0042] (検討項目)
(1)ヒトの培養細胞系における評価を以下の 0、 ii)、 iii)の三点について行った。 0 HSP70の誘導
ii)細胞障害の有無
iii)ュビキチン化の促進
[0043] (2)ヌードマウスにおける評価を以下の 0、 ii)、 iii), iv)の四点について行った。
0一回処置における正常糸且織中の HSP70の誘導
ii)一回処置による腫瘍組織中の HSP70の誘導
iii)腫瘍組織におけるュビキチン化の促進
iv) 1日 1回処置あるいは 1日 1回の 3日間処置による正常糸且織中の I κ B— α及び そのリン酸化体の発現
[0044] (3) Δ F508CFTRを安定高発現させた培養細胞系における評価を以下の 0、 ϋ)の 二点について行った。
0 HSP70の誘導
ii)ュビキチン化の促進
[0045] (4) 2型糖尿病モデルマウス(高脂肪食負荷マウス)における評価を以下の i)、 ii)、 ii i)、 iv)、 v)、 vi)、 vii)、 viii)、 ix)の九点にっ 、て行った。以下の検討は,本発明に係 る生体組織正常化方法を 1週間に 2回処置し続けて 10週間後に行った。
i)空腹時血糖値
ii)インスリン値
iii)血清アディポネクチン値
iv)グルコース負荷試験
V)インスリン負荷試験
vi)内臓脂肪の組織重量
vii)皮下脂肪の組織重量
viii)肝重量
ix)褐色脂肪細胞中の UCPlmRNAの誘導
[0046] (5)急性胃潰瘍モデルマウスにおける評価を以下の点について行った。以下の検討 は、本発明に係る生体組織正常化方法を 1週間に 2回処置し続けて 2週間後に行つ た。
i)胃粘膜損傷割合
[0047] (6)正常マウスにおける評価を以下の点について行った。以下の検討は、本発明を 最初の血球測定 2週間前から 1週間に 1回処置し続けて 2週間ごとに行った。
i)血液 lmLあたりの白血球数
(実施方法)
1) HSP70の測定はマウス抗 HSP70モノクローナル抗体を用いたィムノブロットを 行い、結合した抗体を増感化学発光法(Enhanced chemiluminescence;ECL)ウェス タンプロット検出キット (アマシャム社製)で検出し測定した。ローデイングコントロールと してカルネキシン(CNX)を検出した。
2)ュビキチンィ匕蛋白質の測定は、マウス抗ュビキチンィ匕蛋白質モノクローナル抗 体を用いたィムノブロットを行い、 結合した抗体を増感化学発光法 (Enhanced chemil uminescence;ECL)ウェスタンブロット検出キット (アマシャム社製)で検出し測定した。
3) 1 κ B— α及び I κ Β— αリン酸化体の測定はラビット抗 I κ Β— αポリクローナル 抗体及びラビット抗リン酸化 I κ Β— αポリクローナル抗体を用いたィムノブロットを行 い、結合した抗体を増感化学発光法(Enhanced chemiluminescence;ECL)ウェスタン プロット検出キット(アマシャム社製)で検出し測定した。
4)倒立型実体顕微鏡 (ォリンパス社製)を用いて、治療装置処置による細胞傷害の 有無を、形態変化を撮影して確認した。
5)血糖値の測定は、自己血糖測定器 (ロシュ社製)を用いて測定した。
6)インスリン値および血清アディポネクチン値の測定は、スカイライト 'バイオテック( 株)の LipoSEARCH (高感度ゲルろ過 HPLCによる網羅的解析システム)により測 し 7こ。
7) UCPlmRNAの測定は、 RT— PCRを行うために RT— PCRキット(タカラ社製) で検出し測定した。
8)急性胃潰瘍モデルマウスはマウスに塩酸エタノールを経口投与することによって 作成した。胃粘膜損傷割合の測定は、損傷胃粘膜面積を解剖顕微鏡下で測定し、 以下の式に従って求めた。
胃粘膜損傷割合 = (損傷胃粘膜総面積 Z胃粘膜総面積) X 10
9)白血球数の測定は、血球数測定装置 SysmexF— 520 (Sysmex社製)を用い て測定した。
(実施結果)
( 1) ヒト培養細胞系については、前記実験方法により図 5、図 6、図 7に示すようにな 以下の評価結果が得られた。
i) HSP70の誘導(図 5 (A)、(B)を参照)
HSP70の誘導レベルを微弱電流単独(実施 1— 1)及び温熱単独(実施 1— 2)、微 弱電流及び温熱の同時併用(実施 1 3)について治療 10分処置後に 5時間、静置 '培養して、ウェスタンプロット法により検出した。その結果、微弱電流単独(実施 1— 1)と温熱単独(実施 1 2)において HSP70の誘導が約 3. 5倍、約 1. 9倍(図 5 (B) を参照)であることがみられ、同時併用(実施 1— 3)の場合には、特に約 5. 2倍という 明確な HSP70の誘導がみられた。
ii)細胞障害の有無(図 6参照)
上記の条件下で電子顕微鏡を用いて細胞障害の有無を調べた。その結果、微弱 電流単独(実施 2— 1)及び温熱単独(実施 2— 2)、微弱電流及び温熱の同時併用 ( 実施 2— 3)治療処置により細胞傷害が起こらないことを確認した。
iii) ュビキチンィ匕の促進(図 7 (A)、(B)を参照)
前記図 5における微弱電流及び温熱の同時併用を治療処置を条件とし、 10分間の 治療処置後に 0時間(実施 3— 1)、 2時間(実施 3— 2)、 5時間(実施 3— 3)、 8時間( 実施 4)、静置 '培養した時のュビキチンィ匕蛋白質の量をウェスタンプロット法により検 出した。その結果、 5時間経過時には 10倍、 8時間経過時には 68倍という指数関数 的にュビキチンィ匕が促進されていることを認めた。
(2)ヌードマウスにについては、前記実施方法により図 8、図 9、図 10及び図 11に示 すような以下の評価結果が得られた。
i)一回処置における正常組織中の HSP70の誘導(図 8 (A)、(B)を参照) このヌードマウスの正常組織に微弱電流及び温熱を同時に併用した治療処理条件 とし、治療処置を経時的に 10分 (実施 4 1)、 20分 (実施 4 2)の各処置後に 6時 間飼育し、正常組織中(大腸の例を示す)の HSP70の誘導レベルをウェスタンブロッ ト法により検出した。その結果、 20分 (実施 4— 2)の処置の場合には、約 2. 7倍とい う明確な HSP70の誘導が認められた。
ii)一回処置による腫瘍組織中の HSP70の誘導(図 9 (A)、(B)を参照) このヌードマウスの腫瘍組織に微弱電流及び温熱を同時に併用した治療処置条件 とし、この治療処置を 20分間処置した後に 6時間飼育し、腫瘍組織中における HSP
70の誘導レベルを(実施 5a— 1)、(実施 5b— 1)に示すようにウェスタンブロット法に より検出した。その結果、腫瘍組織においても約 1. 9倍及び 2. 4倍という明確な HS P70の誘導が認められた。
iii) 腫瘍組織におけるュビキチン化の促進(図 10 (A)、(B)、(C)を参照) ヌードマウスの腫瘍組織に対して微弱電流単独(実施 6— 1)、温熱単独(実施 6— 2
)及び同時併用(実施 6— 3)の場合について、治療処置 20分間処置した後に 6時間 飼育し、腫瘍組織においてュビキチンィ匕蛋白質を、ウェスタンプロット法により検出し た。その結果、微弱電流単独(実施 6— 1)及び温熱単独(実施 6— 2)においては、 共に 1. 5倍という HSP70の誘導が認められ、 1. 3倍及び 1. 6倍のュビキチン化蛋 白質の増加が認められた。特に、同時併用(実施 6— 3)の場合は、約 2. 3倍という H SPの明確な誘導が認められ、 3. 5倍という著明なュビキチンィ匕蛋白質の増加が認 められた。
iv) 1日 1回処置あるいは 1日 1回の 3日間処置による正常糸且織中の I κ B— α及び そのリン酸化体の発現 (図 11 (A)、(B)、(C)を参照)
ヌードマウスの正常組織に対して微弱電流及び温熱を同時に併用して処置を 1日 1 回 (実
施 7—1) · (実施 7— 2)、あるいは 1日 1回の 3日間(実施 7— 3) · (実施 7— 4)行い、こ のヌードマウスの正常組織中(大腸の例を示す)の I κ Β及び I κ Β— αリン酸化体を ウェスタンプロット法により検出した。その結果、 1日 1回の 3日間(実施 7— 3) · (実施 7— 4)の処置において I κ Βの量及び I κ Β— αリン酸化体が比較例より明確に増加 していることを見出した。
(3) A F508CFTRを安定高発現させた培養細胞系にについては、前記実施方法に より図 12及び図 13に示すような以下の評価結果が得られた。
i) HSP70の誘導(図 12 (Α)、(Β)を参照)
HSP70の誘導レベルを微弱電流単独(実施 8— 1)、温熱単独(実施 8 - 2)及び微 弱電流と温熱との同時併用(実施 8— 3)について、治療処置を 10分間処置した後に 5時間、静置 '培養して、ウェスタンプロット法により検出した。その結果、微弱電流単 独(実施 8— 1)と温熱単独(実施 8— 2)にお 、て 62倍と 18倍の HSP70の誘導がみ
られたが、同時併用(実施 8— 3)はより明確な約 105倍という HSP70の誘導がみら れた。
ii)ュビキチンィ匕の促進(図 13 (A)、 (B)を参照参照)
微弱電流単独(実施 9— 1)、温熱単独(実施 9— 2)及び微弱電流と温熱との同時 併用(実施 9— 3)について、治療処置を 10分間処置した後に 5時間、静置 '培養した 後、ュビキチンィ匕 A F508CFTRをウェスタンブロット法により検出した。その結果、 微弱電流単独(実施 9 1)及び同時併用(実施 9 3)の各処置により、共に検出 3. 9倍という Δ F508CFTRのュビキチン化が促進されることを見出した。
(4) 2型糖尿病モデルマウス(高脂肪食負荷マウス)については、前記実施方法によ り図 14,図 15,図 16,図 17,図 18,図 19,図 20,図 21及び図 22に示すような以下 の評価結果が得られた。
i) 10週間処置後の空腹時血糖値 (図 14を参照)
この高脂肪食負荷マウスに微弱電流及び温熱を同時に併用した群 (実施 10)では ,空腹時血糖値の有意な低下が認められた。 (P< 0. 05, n=8)
ii) 10週間処置後のインスリン値(図 15を参照)
この高脂肪食負荷マウスに微弱電流及び温熱を同時に併用した群 (実施 11)では ,インスリン値の有意な低下が認められた。(P< 0. 05, n=8)
iii) 10週間処置後の血清アディポネクチン値(図 16を参照)
この高脂肪食負荷マウスに微弱電流及び温熱を同時に併用した群 (実施 12)では ,血清アディポネクチン値の有意な増加が認められた。 (P< 0. 05, n=8)
iv)グルコース負荷試験(図 17を参照)
この高脂肪食負荷マウスに微弱電流及び温熱を同時に併用した群 (実施 13)では ,耐糖能の改善が有意に認められた。 (P< 0. 001, n=8)
v)インスリン負荷試験(図 18を参照)
この高脂肪食負荷マウスに微弱電流及び温熱を同時に併用した群 (実施 14)では ,インスリン感受性の改善が有意に認められた。 (P< 0. 05, n=8)
vi) 10週間処置後の内臓脂肪の組織重量 (図 19を参照)
この高脂肪食負荷マウスに微弱電流及び温熱を同時に併用した群 (実施 15)では
,内臓脂肪の組織重量が有意に減少していることが認められた。 (Ρ< 0. 05, η=8) vii) 10週間処置後の皮下脂肪の組織重量 (図 20を参照)
この高脂肪食負荷マウスに微弱電流及び温熱を同時に併用した群 (実施 16)では ,皮下脂肪の組織重量が有意に減少していることが認められた。(Pく 0. 05, n=8) viii) 10週間処置後の肝重量 (図 21を参照)
この高脂肪食負荷マウスに微弱電流及び温熱を同時に併用した群 (実施 17)では ,肝重量が有意に減少していることが認められた。(Pく 0. 05, n=8)
xi) 10週間処置後の UCPlmRNAの誘導(図 22を参照)
この高脂肪食負荷マウスに微弱電流及び温熱を同時に併用した群 (実施 18)では ,褐色脂肪細胞中の UCPlmRNA発現量が有意に増加していることが認められた。 (Pく 0. 05, n=8)
[0052] (5)急性胃潰瘍モデルマウスについては,前記実施方法により図 23に示すような以 下の評価結果が得られた。
i) 2週間処置後の胃粘膜損傷割合 (図 23を参照)
微弱電流及び温熱を同時に併用した群 (実施 19 · 1)、急性胃潰瘍モデルマウス群 (実施 19 · 2)、急性胃潰瘍モデルマウスに微弱電流及び温熱を同時に併用した群 ( 実施 19 · 3)で、胃粘膜損傷割合を測定した。その結果、急性胃潰瘍モデルマウスに 微弱電流及び温熱を同時に併用した群 (実施 19 · 3)で、胃粘膜損傷割合の有意な 低下が認められた。(P< 0. 05, η=4· 7)
[0053] (6)正常マウスについては,前記実施方法により図 24に示すような以下の評価結果 が得られた。
i) 2週間ごとの白血球数変化率 (図 24を参照)
微弱電流及び温熱を同時に併用した群(実施 20)では,血球 lmL当りの白血球数 が有意に増加していることが認められた。(Pく 0. 01, n= 5)
[0054] 以上のように本発明に係る生体組織正常化方法及び治療装置は、極めて優れた H SP誘導能を有し、各種疾患に有効であることが明らかである。また、本発明に係る生 体組織正常化方法及び治療装置は、その安全性の高さから考えても、臨床上極め て優れた有用性が期待できる。前記各種疾患の具体例としては、脳神経疾患、心脈
管系疾患、消化器系疾患、、代謝性疾患、自己免疫疾患、変性疾患、虚血性神経 細胞障害、虚血,再灌流傷害、嚢胞性繊維症、悪性腫瘍、感染症、肝不全、腎不全 、薬物中毒、重金属中毒、放射線傷害、紫外線傷害、生体侵襲、又は老化等がある 。脳神経疾患には、脳卒中、脳卒中後遺症、遅発性神経細胞死、アルツハイマー病 、パーキンソン病、多発性硬化症又はクロイツフェルド 'ヤコブ病等がある。
[0055] また、本発明に係る生体組織正常化方法及び治療装置は、ェビキチン化蛋白質を 介して生体又は生体組織における正常化機構を活性ィ匕されるものであり、細胞内の 約 80%の蛋白質がュビキチンィ匕された後にプロテアノームで分解される。しかし、プ 口テアノームの働きが阻害されると、細胞内に分解されないュビキチンィ匕蛋白質が増 加するため、細胞は計画的な細胞死の道を選択する。この原理を利用して、プロテア ソーム阻害剤が現在、抗癌剤として注目されている(Julian A.Cancer Cell, 2003, Ang elika M. B et al. European Journalof cancer, 2004)。
[0056] プロテアソーム阻害剤は、蛋白質の合成や分解が盛んな増殖期に作用しやすい。
正常細胞と比較して、腫瘍細胞内では細胞増殖に関連する蛋白質の調節異常が生 じているため、細胞の増殖率が非常に速い。そのため腫瘍組織は、増殖期の細胞に 作用するプロテアソーム阻害剤の影響を受けやす ヽ。本発明に係る生体組織正常 化方法及び治療装置は、ュビキチンィ匕を促進するため、細胞内のュビキチンィ匕蛋白 質が非常に増加する。そのためプロテアノームが飽和状態となり、プロテアノームの 働きが阻害された時と同様な状態になる。
[0057] すなわち、本発明に係る生体組織正常化方法及び治療装置は、プロテアソームを 阻害することによる抗腫瘍効果も有している。また、その効果は、これらの原理に基づ き、腫瘍細胞特異的に発揮されることも期待できる。このようにュビキチンィ匕蛋白質を 介したュビキチン'プロテアソームシステムの正常化機構成により改善される疾患とし ては、神経変性疾患 (例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬 化症 (ALS)、ミオクロニーてんかん等)、癌疾患 (例えば、家族性乳がん、卵巣がん 等)、色素性乾皮
症等がある。
[0058] NF- κ Bが過剰に活性ィ匕されると、リウマチや喘息、皮膚炎等さまざまな炎症性疾
患、自己免疫疾患、ウィルス性疾患、動脈硬化症等が引き起こされるため、 NF- κ Bを制御することの意義は臨床的にも極めて大きいものである。したがって、本発明 の治療装置は、その微弱電流等の効果により I κ Bの量を増加させるつつ、 I κ Bのリ ン酸ィ匕を適度に抑制するため、 NF— K Bによる過剰な免疫応答の結果として引き起 こされる種々の病態を改善することが期待される。
なお、本発明は、前記実施の形態においてヒトの培養細胞系、ヌードマウス、 A F5 08CFTRを安定高発現させた培養細胞系の動物の組織細胞を対象として説明した 力 植物の組織細胞に対しても適用することができ、同様の作用 ·効果が奏し得られ る。