JP2004523312A - 分子治療の送達のための刺激 - Google Patents
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Abstract
本発明は、血管増殖因子の制御された産生のための新規な刺激デバイスを提供する。より詳細には、血管内皮細胞増殖因子の局所的な産生のための閾下パルス発生器を提供する。
Description
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管増殖因子の制御された産生のための新規な刺激デバイスを提供する。より詳細には、本発明は、血管内皮細胞増殖因子の局所的な産生のための閾下(subthreshold)パルス発生器を提供する。
【背景技術】
【0002】
冠動脈疾患(CAD:coronary artery disease)は、心臓のために働く血管の動脈硬化の結果、発生する。動脈硬化は、動脈の硬化および狭窄である。多くの場合、心臓の動脈は、突然、非常にひどく閉塞されることがあるので、心臓の領域に十分な血液が供給されず、その結果、心筋梗塞が発生する。血流が減少し、損傷を受けた領域は、虚血領域と呼ばれる。心臓の虚血領域は、十分な血流が得られないので、酸素および栄養素が欠乏する。この閉塞は、迅速に処置されないと、深刻な組織の損傷につながる可能性がある。多くの場合、外科的処置が用いられて、新しい血管が虚血領域に移植され、血液の循環が改善される。あるいは、血管形成術または閉塞した血管のステント留置術が、血流を再開または維持するために行われる。しかしながら、動脈のバイパスまたは再開は、現在の方法論の限界および外科的処置による患者へのリスクのため、実行できないことが多い。
【0003】
不十分な血液循環から生じる虚血による損傷は、心臓の末梢の血管にも起こる可能性がある。末梢動脈閉塞性疾患(PAOD:peripheral arterial occlusive disease)は、動脈硬化または糖尿病などの疾患による血管内の血栓の形成によって引き起こされ、外部の四肢の喪失につながることが多い。
【0004】
虚血組織への血流を改善する必要性に対処する1つの方法は、新しい血管を生成することである。新しい血管の形成に直接関与する血管新生因子が知られている。塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF:basic fibroblast growth factor)および血管内皮細胞増殖因子(VEGF:vascular endothelial growth factor)といった組み換え型血管増殖因子の局所投与により、動物モデルの心筋組織および骨格筋組織の虚血領域を救済することができる。新しい血管の成長を期待して、多くの手法が、これらの因子を虚血領域に送達するために開発されてきている。これらの手法には、直接注入法、電気穿孔法(electroporation)、およびレトロウィルスベクターを用いた送達法(delivery)が含まれる。
【0005】
血管増殖因子の直接注入法は、当該方法に関連した多くの課題を有し、最も顕著な課題は、細胞内に因子を効果的に送達することに関連するものである。電気穿孔法は、血管新生因子をコードする遺伝物質を送達することが可能な方法である。しかしながら、トランスフェクション効率がまだ非常に低く、組織に向けられた高エネルギーパルスが、多くの健康な細胞を殺すことが多い。これらに代わるべきものとして、血管新生因子をin vivoで直接産生する、ウィルスに基づく遺伝子送達システムを開発しようと努力してきた者もいる。しかしながら、この手法は、安全で有効な治療とみなされるまでに、より一層の開発を必要とする。遺伝子送達の分野では、広範囲な研究が続いているが、in vivoで遺伝子発現を制御し、かつ、調節する方法については、ほとんど報告されていない。したがって、対象となる組織にこの薬剤を有効に送達することが不可能であることが、このような薬剤の使用の主な制約の1つである。血管新生因子の送達中に、有効性が破壊されるか、または、失われることが多い。
【0006】
電界を用いて血管増殖因子の自然産生を刺激することに関係した最近の研究が、公開された。WO 00/27466号は、血管新生を刺激する電界を発生するのに定電圧源を用いることを記載している。記載された電圧は、およそ50〜300ボルト/cm程度であり、この電圧は、刺激を与えている間に収縮反応も刺激することになる。筋収縮反応を引き起こすことなく血管新生を刺激できる方が有利である。最近の刊行物(Circulation, 1999;99:2682-2687)では、骨格筋の低電圧電気刺激が、VEGFタンパク質のde novo合成を誘発し、血管新生を促進することが報告された。この研究分野におけるさらなる研究が必要とされる。この技術分野におけるこれらの既知の方法によっても、まだ、血管増殖因子の送達を制御して、筋肉組織内の血管新生を促進するための更なるより有効な閾下デバイスおよびより効率的な方法、ならびに、心臓組織および血管組織内の血管新生を刺激するのに用いることができる方法論が、必要とされている。
[発明の概要]
本発明は、血管新生因子の制御された局所送達に関する、従来技術に存在する多くの問題に取り組む。本発明のさまざまな実施形態は、血管新生因子の送達に関する、従来技術に存在する1つまたは複数の問題に解決法を提供する。本発明は、血管新生および血管増殖因子の産生のための新規な電気パルス発生器を提供する。
【0007】
本発明は、閾下パルスを提供する電気パルス発生器を提供する。本デバイスは、所与の刺激の時間、周波数、および送達を調節することによって、閾下パルスの範囲に適合することができる。本発生器は、可変の電界強度を許容することによって、電極間の距離にかかわらず、定電圧の使用を可能とする。本発生器は、電圧の振幅に対する制御を可能とし、送達される充電パルスおよび回復される充電パルスの充電バランスを保つことを可能とする。
【0008】
別の実施形態では、閾下パルス発生器は、体外で用いることができるが、埋め込み可能に設計および構成されることが好ましい。この閾下パルス発生器は、電源装置と、この電源装置に相互接続された制御機構とを含む。任意に、パルス発生器は、電源装置と電気的に通信する複数の電極と共に用いることができる。また、本発生器は、予め指定された時刻にリード線の導通をチェックすることもできる。
【0009】
また、本発明は、閾下パルス発生器を、当該閾下パルス発生器を必要とする患者に提供することも行う。一態様では、本発明は、血管増殖因子の産生を調節する手段を提供することによって、組織の障害もしくは疾患の軽減または修復を行う方法を含む。別の態様では、提供される閾下刺激は、対象となる生体組織における血管新生を刺激するのに十分である。さらに別の態様では、本発明は、血管新生因子の制御された発現のために細胞または組織を刺激することができるペーシングの新規な方法を提供する。
【0010】
本発明のこれらの目的および特徴ならびに他の目的および特徴は、以下の詳細な説明を、添付図面と共に読むことにより、より十分に明らかになる。
図面は、本発明の所定の実施形態を示している。それら図面は、単なる例示にすぎず、本発明を、本明細書に開示されたように限定するものではない。
[発明を実施するための最良の形態]
定義
「血管新生因子」は、組織内の血管新生を促進する物質からなる群である。これらの因子には、これらに限定されるわけではないが、血管内皮細胞増殖因子(VEGF:vascular endothelial growth factor)および繊維芽細胞増殖因子(FGF:fibroblast growth factor)、ならびに、これらの因子に構造的および/または機能的に関連した要素である、患者のゲノム内でコードされる、発見されたすべての自然の類似体が含まれる。
【0011】
本明細書で用いられる用語「成熟タンパク質」または「成熟ポリペプチド」は、哺乳類の細胞内での発現によって産生されるタンパク質の形態(複数可)をいう。一般に、粗面小胞体の全体にわたって成長するタンパク質鎖の搬出が開始されると、哺乳類の細胞によって分泌されたタンパク質は、完全なポリペプチドから切断されるシグナル配列を有し、そのタンパク質の「成熟した」形態を産生すると仮定される。多くの場合、分泌されたタンパク質の切断は、均一ではなく、その結果、2種類以上の成熟タンパク質が産生されることがある。分泌されたタンパク質の切断部位は、完全タンパク質の一次アミノ酸配列によって決定され、一般に、完全な正確さで予測することはできない。しかしながら、分泌されたタンパク質の切断部位を、精製されたタンパク質の調製物内に発見される1種類または複数種類の成熟タンパク質のアミノ末端基配列によって、実験的に決定することができる。
【0012】
「作用可能に結合された(operably coupled)」とは、閾下パルス発生器による組織への電気刺激の移動をいう。組織または細胞との閾下パルス発生器の作用可能な結合は、電気刺激が組織または細胞に送達されて、利用可能な血管新生因子の増加を引き起こす場合の配置をいう。通例、この刺激は、閾下パルス発生器からリード線を通して、組織に取り付けられた電極へ送達される。
【0013】
用語「処置を行うこと」、「処置」、および「治療」は、ここでは、根治治療、予防的治療(prophylactic therapy)、および予防治療(preventive therapy)をいうのに用いられる。「予防治療」の一例は、対象となる疾患または当該疾患に関連する症状の予防または緩和である。例えば、閾下刺激は、予防努力として血管新生を促進し、心筋梗塞の発生を回避するために予防的に用いることができる。処置を必要とする人々には、疾患または症状をすでに有する人々だけでなく、予防の対象となる疾患または症状を有する傾向にある人々も含まれる。また、本明細書で用いられる用語「処置を行うこと」、「処置」、および「治療」は、疾患または関連する症状と戦う目的で、患者を管理および介護することも表し、組織への血流を改善するために、少なくとも1つの閾下電気パルスを虚血領域へ投与することを含む。
【0014】
「長期」投与は、長期間にわたって初期治療効果(作用)を維持するために、緊急モードとは対照的な連続モードで電気刺激を投与することをいう。
「間欠」投与は、間断なく連続して行うのではなく、時間の経過と共に繰り返される処理である。
【0015】
「虚血」は、ある特定の器官または組織への血液の供給が不十分な状態と定義される。血液の供給が減少した結果、器官または組織への酸素および/または栄養素の供給が不十分となる。虚血が長期に及ぶと、その結果、影響を受けた器官または組織は障害を受けることがある。「酸素欠乏症」は、器官または組織の酸素が実質的には完全に欠乏したことをいい、長期に及ぶと、その結果、器官または組織が死に至ることがある。
【0016】
「虚血障害(ischemic injury)」は、虚血期間および/または虚血と続いて起こる再潅流の期間の結果、器官または組織に対して起こる細胞および/または分子の損傷をいう。
【0017】
「低酸素状態」は、ある特定の器官または組織が、十分な酸素の供給を受けていない状態と定義される。
「無酸素状態」は、ある特定の器官または組織への酸素の供給が中断した状態をいう。
【0018】
「再潅流」は、虚血期間に続いて起こる、組織の血流の回復をいう。
本明細書で用いられる用語「患者」は、あらゆる哺乳類をいい、人間や、牛(例えば乳牛)、馬、犬、羊、豚、ウサギ、ヤギ、猫などの家畜、および動物園の動物、スポーツ動物、またはペット動物、ならびに、マウスおよびラットといった家畜でない動物を含む。本発明の好ましい実施形態では、哺乳類は、人間、犬、ウサギ、またはマウスである。
【0019】
本明細書でいう「治療有効量(therapeutically effective amount)」は、治療的利益または望ましい生物学的作用を患者に与える必要のある閾下刺激の最小量である。例えば、虚血を患っている患者の「治療有効量」は、利用可能な血管新生因子の量の改善を誘発する量か、改良する量か、そうでなければ改善する量か、あるいは、組織の血液循環を改善する量である。例えば、「治療有効刺激」は、治療的利益を提供するか、または、血液循環の少なくとも1つの測定可能な改善を提供する量のうち、血管新生タンパク質の治療有効量を発現するのに必要な電気刺激の量である。
【0020】
本明細書で用いられる用語「ペース(pace)」は、閾下パルス発生器によって細胞組織に送達される電気閾下刺激を送出する行為である。「ペーシング(pacing)」は、通常、電気刺激を組織に繰り返し送出する行為をいい、ここでは、一連の閾下刺激を組織に送達する行為をいう。
【0021】
「薬理有効刺激(pharmacologically effective stimulus)」は、所望のレベルの血管新生タンパク質を患者に提供するのに必要な刺激の量である。正確な刺激の量または必要なペーシングは、例えば、関連する具体的な血管新生因子、用いられる送達刺激、提供される刺激の特徴、その使用目的、および患者の考慮といった多数の因子に依存することになる。これらの判断は、ここに提供される情報を考慮すれば、当業者によって容易に行うことができる。
【0022】
用語「電気刺激の投与」は、電気刺激を組織に送達することを意味する。本発明で適用されるように、電気刺激は、閾下パルス発生器によって組織に送達される。
「閾値」対「閾下」刺激は、適用される刺激の相対的なレベルをいう。本明細書で用いられる「閾値」刺激は、興奮した組織における全体的な組織の電気的反応または機械的反応を引き出す刺激のレベルをいい、例えば、心収縮のために心臓の脱分極をむらなく引き出すのに必要な最小の電気刺激、または、骨格筋運動を引き出すのに必要な最小の電気刺激をいう。一般に、閾値刺激は、1.0ボルトより大きい。閾下刺激は、全体的な電気的反応または機械的反応を組織から引き出さないほど十分低いレベル、例えば心臓の脱分極または筋肉の収縮を引きこさないほど十分低いレベルで、組織に電気刺激を加えることをいう。閾下刺激は、電気パルスの電圧振幅および/または持続時間を、全体的な運動反応または神経反応の閾値反応レベルより小さく維持することによって達成することができる。一般に、閾下刺激は、1.0ボルト以下である。閾下刺激によって、神経細胞または筋肉細胞を刺激することによる不必要な副作用を生じることなく、電気刺激を組織に送達して、利用可能な血管新生タンパク質のレベルを増加させることが可能になる。不必要な副作用は、例えば、不必要な収縮および/または不快な感触などである。
【0023】
本明細書で用いられるように、測定される物理パラメータについてのいくつかの用語は、略記されている。すなわち、振幅は、ボルト(V)またはミリボルト(mV)で表現されることがある。電流は、アンペア(amp)またはミリアンペア(mamp)で表現されることがある。パルス幅、周波数、またはタイミングは、ミリ秒(msec)で表現されることがある。エネルギーは、ジュール(J)またはミリジュール(mJ)で表現されることがある。
【0024】
説明
一般に、本発明は、対象となる生体組織の近傍または生体組織内に電界を生成する閾下パルス発生器、および、血管新生を刺激することによって損傷を受けた組織または虚血組織の処置を行う方法に関する。一実施形態では、電界は、複数の電極間に位置する対象領域に直接送達される。一例として、図1は、一対のリード線2および一対の電極3を通じて、心臓4の心室下部に閾下電界5を生成する閾下パルス発生器1を示している。
【0025】
閾下刺激は、血管増殖因子の産生を促進すると実証されている。これによって、本デバイスによる血管新生反応の促進は、虚血組織領域への血液循環を回復する処置である現在の外科的方法を上回る重要な補助物としての機能を果たす。
【0026】
閾下パルスの目的
本発明は、新規な閾下電気パルス発生器(本明細書では、閾下パルス発生器、パルス発生器、または発生器ともいう)を提供する。このパルス発生器は、1つの電気刺激もしくは一連の電気閾下刺激すなわちパルス(ペーシング)を提供できるという極めて重要な特徴を有する。閾下電気刺激すなわちパルスは、対象となる細胞または組織の血管新生を誘発するために用いられる。一実施形態では、この電気刺激装置は、少なくとも1つの血管新生因子の転写を活性化する閾下刺激を提供する。閾下刺激の目的は、機械的な収縮のために組織を興奮させることではなく、血管新生を選択的に活性化させることである。
【0027】
種々の刺激治療が、閾下刺激治療のコースと併せて与えられ得ることが想定される。時には、従来のペースメーカの閾値電気刺激の利点と共に検討した場合には特に、従来のペースメーカの特徴を、閾下刺激の構成要素と組み合わせることは有利となることがある。
【0028】
パルス発生器の動作パラメータ
閾下電気パルス発生器からの制御された出力電圧は、例えば35Ωから無限大に至るような広範囲の組織のインピーダンスに対して調整することができる。電圧およびタイミング設定のさまざまなユニークな組み合わせによって、本デバイスは、収縮反応を引き出さないで血管新生因子の産生を増加させるユニークな機構を提供する。
【0029】
本発生器では、可変の電界強度を与えることにより、電極間の距離にかかわらず、一定の電圧を使用することができる。本発生器では、電圧の振幅に対する制御が可能であり、送達および再生される充電パルスの充電バランスを保つことが可能である。特定の実施形態では、閾下パルス発生器は、目標電圧の約30%、より好ましくは目標電圧の約20%、さらにより好ましくは目標電圧の約10%、最も好ましくは目標電圧の約5%の可変の電界強度を与えることによって、一定の電圧を用いることができる。後に説明するように、閾下電圧は、一定のレベルであり、電界強度が、組織の至る所で変化することができる。in vitroで電界強度を可変の状態にしたin vitro実験では、有効な結果が得られた(実験1、表1参照)。同様にして、in vivoのVEGF産生を刺激することにより、有効な結果が得られた(実験2、図7参照)。
【0030】
一実施形態では、閾下パルス発生器は、0.1Vずつの幅で、0から1.5V出力の電界を対象となる生体組織に送達することができる。ここで、電界は、一般に、約1V/cm以下であり、約0.5V/cm未満であることがより好ましく、約0.1V/cmであることがより一層好ましい。
【0031】
さらに別の実施形態では、閾下電界を、約10Hzから約100Hzの周波数を有するいくつかのパルスによって生成することができる。周波数は、約25Hzから約85Hzであることが好ましく、約40Hzから約70Hzであることがより好ましく、約50Hzから約60Hzであることがより一層好ましく、約50Hzであることが最も好ましい。
【0032】
さらに別の実施形態では、刺激期間は、パルス周期(1/周波数)よりも短い。刺激期間は、約100ミリ秒〜0.01ミリ秒、約50ミリ秒〜約0.05ミリ秒、および3ミリ秒〜0.1ミリ秒となるように選択することができる。ここで、実際の値は、約20ミリ秒未満とすることができ、約10ミリ秒未満であることが好ましく、約3ミリ秒未満または0.1ミリ秒〜3.0ミリ秒の任意の値であることがより好ましい。
【0033】
閾下刺激
図2の出力回路構成の概略図は、閾下パルス発生器の動作回路構成の概略を示す簡略化した説明図である。図2は、閾下パルス発生器の基本設計要件を設定するのに役立つ。S1、S2、およびS3は、動作サイクルの間、開閉されるスイッチであり、Rは回路抵抗器であり、Vsはバッテリであり、CHおよびCCはコンデンサである。例えば、構成要素の値を、次の値、すなわちVs=2.8ボルト、R=25Ω、CC=CH=10μFと選ぶことができる場合には、CHは、図4に示すような10ミリ秒の充電フェーズの終了時には、0.110ボルトを有すると計算することができる。この説明図により、当業者は、任意の所与の組の閾下出力電圧でCHを提供するいくつかの設定を選ぶことができる。図3は、刺激フェーズの期間中における出力段の等価回路を示している。VCは、CHの初期状態を表している。この場合、CH、CCおよびRTissueは、直列に接続されているので、CHおよびCCを、CEq=5μFに合成することができる。電極で見られる電圧は、次式により与えられる。
【0034】
【数1】
【0035】
例えば、出力電圧が、10%だけ変化できる場合には、VTissue(t)は、0.110ボルト〜0.090ボルトで変化することになる。それは、VCH(0)=0.110、およびVTissue(t)(0.3ミリ秒)=0.090であることを示す。この方程式を組織の電圧用に書き換えると、以下のようになる。
【0036】
【数2】
【0037】
RTissueについて解くと、RTissue=35Ωを求めることができる。換言すると、出力電圧が90〜110mVの範囲にある状態では、駆動できる最小の組織のインピーダンスは、35Ωとなる。パルス発生器に上記設定を用いることにより、(1)閾下刺激用のパルス発生器、(2)広範囲の組織のインピーダンス(35Ωから無限大)に対する制御された出力電圧、(3)機械的な収縮のために組織を興奮させるのではなく、1.0Vの閾下刺激以下の一組の変量を提供することによって、利用可能な血管新生因子の量を増加させることが目的である閾下刺激用のペーシング出力、についての一例が提供される。
【0038】
図4は、一組の閾下刺激パラメータを例示している。図4は、図示されたパルス列を提供するための、電気パルスおよびコンデンサの充電のタイミング図を示している。このパルス列では、パルス周波数が、50Hz(20ミリ秒)であり、組織への刺激パルス(VTissue)が、0.3ミリ秒であり、放電(充電バランスのため、逆極性で再充電)が、6.7ミリ秒である。パルス周期の残りの13ミリ秒の間、電極は、電源装置に接続されていない状態(floating)であり、コンデンサは、再充電される。
【0039】
図5は、長期的な動物の研究で用いられた閾下刺激装置のブロック図である。50Hzの基本的な刺激の繰り返し周波数が、左上のクロック/タイマによって生成される。これは、それぞれの出力パルスの1ミリ秒の放電フェーズおよび5ミリ秒の再充電フェーズを制御するタイマ(中央上)をトリガする。パルス振幅は、4ビットDAC(中央左)によって制御される。パルス出力回路(中央)は、タイミングおよび振幅情報を利用して、実際の出力パルスを発生する。次に、この出力パルスは、電極および組織(中央右)に送達される。パルス出力回路は、リード線および電極の機能不良をチェックするリード線導通モニタ(中央下)をオプションとして組み込む。出力振幅は、電極抵抗の増加状況に基づいて調整することができる(破線)か、または、リード線が断線または短絡した場合にはオフにすることができる。出力振幅制御と共に、刺激の安全マージン(ペーシング閾値)を評価するために、別の2Hzの刺激の設定(左上)が用いられる。
【0040】
図6は、in vivo実験において用いられる刺激装置の回路を示している。この回路図に用いられる一般的な記号の説明は、以下の通りである。
U:集積回路
R:抵抗器
C:コンデンサ
SW:スイッチ
D:ダイオード
Vcc:電源装置(バッテリ)の正極端子
Vee:電源装置(バッテリ)の負極端子
JP:オフボード接続用のジャンパ端子
以下は、具体的にラベル付けされた構成要素のリストである。
(1)U2:50Hz(20ミリ秒)の刺激タイミングを維持するメイン発振器。
(2)U1B:刺激パルス幅を制御するタイマ。このタイマは、(13)として示されるS2を閉じる。
(3)U1A:放電期間を制御するタイマ。このタイマは、(7)として示されるS3を閉じる。
(4)C11は、10マイクロファラッドの値を有する保持コンデンサCHである。
(5)C10は、6.8マイクロファラッドの値を有する結合コンデンサCCである。
(6)JP2は、刺激電極が取り付けられるヘッダである。
(7)U5:閉じられると、結合コンデンサを放電するスイッチS3。
(8)R9:刺激を与えられる組織と直列に配置される、刺激電流強度を測定するために用いられる抵抗器。
(9)SW2:(10)として示されるリード線完全性インディケータを用いて、リード線の完全性を検査するスイッチ。
(10)LED:リード線完全性インディケータとして用いられる発光ダイオード。
(11)U7C:(14)として示される刺激振幅Vadjを設定するために用いられるディジタル/アナログ変換器。
(12)U7D:(11)によって決定される調整可能な刺激振幅のインバータ/ドライバ。
(13)U3:閉じられると、保持コンデンサから、(6)に接続された組織へ電荷を送達するスイッチS3。
(14)Vadj:(11)によって決定される調整可能な刺激振幅。
【0041】
図6Aおよび図6Bに続いて示される閾下刺激装置回路は、本質的には、図2に示す刺激波形を生成するように動作する。発生される刺激は、周期的な信号である。この周期的な信号は、50Hzのディジタルパルスを生成するように設定され、メインクロックを提供するメイン発振器(1)に基づいて生成される。タイマ(2)およびタイマ(3)は、同様に図2に示すようなクロックから、刺激パルスおよび放電パルスをそれぞれ生成する。これらのパルスは、スイッチ(13)およびスイッチ(7)を閉じるのに用いられ、これらのスイッチは、図2のS2およびS3に対応する。オンボードコネクタ(6)の端子1および端子4は、組織に向かうリード線が取り付けられる箇所である。刺激を与えている間、保持コンデンサ(6)に蓄えられたエネルギーは、組織に到達する前に、スイッチ(13)、結合コンデンサ(5)、および直列抵抗器(8)を通過して端子(6)に到達する。直列抵抗器(8)における電圧降下は、組織を通過する電流の表示を得るために、端子(6)からモニタリングすることができる。スイッチ(9)は、リード線完全性インディケータ(10)を用いてリード線の完全性をモニタリングするために使用することができる。調整された刺激振幅(14)は、インバータ/ドライバ(12)が後段に続くディジタル/アナログ変換器(11)によって設定される。
【0042】
閾下パルス発生器の付加的特徴
別の実施形態では、閾下パルス発生器は、体外で用いることができるが、埋め込み可能に設計され、構成されることが好ましい。本デバイスは、体内に埋め込むことができ、電気構成要素は、生体組織および体液から密封することができる。理想的には、この埋め込み可能デバイスは、約50cm3の体積を有するが、体積は、約40cm3が好ましく、約30cm3がより好ましく、約20cm3がより一層好ましく、約10cm3が最も好ましい。
【0043】
電気パルス発生器は、埋め込むこともできるし、体外に置くこともできることが想定される。理想的には、閾下パルス発生器は、埋め込まれる。
電極およびリード線
閾下パルス発生器は、電源装置および当該電源装置と相互接続された制御機構を含む。任意に、パルス発生器は、電源装置と電気的な通信を行う電極と共に用いることができる。別の実施形態では、提供される閾下刺激は、対象となる生体組織において血管新生を刺激するのに十分な量である。また、本発生器は、予め指定された時刻に、リード線の導通をチェックすることもできる。他の好ましい実施形態では、電極およびリード線は、閾下パルス発生器と共に用いることができる。好ましい実施形態では、電極は、二極電極構成または多極電極構成からなるように構成される。
【0044】
電極は、伝導性の金属もしくは有機高分子化合物、またはこれら2つの合成物から製造される。例えば、電極は、プラチナ、金、ジルコニウム、イリジウム、チタニウム、特定のカーボン、ステンレス鋼、銀、銅、スズ、ニッケル、鉄、もしくはリチウム、またはそれらのさまざまな混合物、合金、もしくはアマルガムから製造することができる。電極の設計は、対象の組織の特質に応じて、多くの異なる形状およびサイズを取ることができる。心筋組織またはそれ以外の筋肉組織の場合に、電極は、ストレートピン、ネジ、当て板などで構成することができ、さらに、電極を固定しておくためのさまざまな返し、フック、または代替構造を備えることができる。
【0045】
さらに別の実施形態として、本明細書に例示されたものと同様のさまざまなタイプの電気リード線、または、他の埋め込み可能なパルス発生器と共に共通に使用されるさまざまなタイプの電気リード線を、電源装置に接続するために用いることができる。
【0046】
いくつかの適切な電極は、電気刺激を提供するように機能することができる。一特徴では、電極は、表面コイル電極、または心臓ワイヤである。この表面電極は、プラチナ合金または他の生体適合性金属から構成されることがある。この電極は、コイル、円筒、ワイヤ、または他の任意の形状とすることができる。
【0047】
電極の配置は、2つの方法の一方で行うことができる。すなわち、好ましい実施形態では、電極は、静脈系を用いて、血管新生が望まれる心臓の組織の近傍に進められ、所定の位置に置かれる。あるいは、侵襲性の外科的処置の使用を最低限にして、所定の位置に電極を配置することができ、これは、血管構造内のカテーテルの届かない場所にアクセスすることができる。いずれの場合でも、二極性刺激または単極性刺激を加えて、組織に電界を発生させ、電気的に反応するプロモータをトリガすることができる。二極性刺激は、好ましい方法である。
【0048】
電極の配置は、主として、電極の埋め込みに用いられる方法によって決定されることになる。電極が経静脈法の経路を介して配置される場合には、患者の解剖学的構造が、電極の接近を許容しないことがあることを理解しつつ、電極は、移植された細胞、虚血組織、または血管新生の対象領域のできるだけ近くに配置されるべきである。経静脈法でない埋め込み技法が用いられる場合には、通例、刺激電極は、虚血領域の非常に近い位置に配置することができる。
【0049】
患者または細胞の閾下刺激
提供される閾下刺激は、患者の対象となる生体組織において血管新生を刺激するのに十分である。一実施形態として、パルス発生器は、閾下電界の送達により、血管増殖因子の転写を調節するために用いられる。
【0050】
また、本発明は、閾下刺激治療を必要とする患者にも閾下パルス発生器を提供する。一実施形態では、本発明は、血管増殖因子の産生を調節する手段を提供することにより、組織の障害の軽減または修復を行う方法を含む。一態様では、パルス発生器は、例えば虚血障害が発生した箇所といった、障害を受けた筋肉組織の修復を取り持つ閾下パルスを送達するのに有効である。この方法は、損傷を受けた心筋組織または末梢筋肉組織の周囲の心筋組織もしくは筋肉組織または細胞に治療的な刺激を提供することにより、損傷を受けた心筋組織または末梢筋組織に適用することができる。別の実施形態では、血管筋肉組織が、閾下パルス発生器を用いて刺激を受ける。血管組織の閾下刺激には、患者の動脈および静脈の刺激が含まれる。
【0051】
本発明の一特徴では、本システムは、閾下刺激の治療有効量を送達することにより、末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)もしくは冠動脈疾患(CAD)または脳卒中(stroke)を処置するのに用いることができる。末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)または冠動脈疾患(CAD)の処置は、VEGFおよびFGFといった血管新生タンパク質を刺激して、血管形成(血管新生)を高めることにより達成されることが想定される。
【0052】
また、本発明は、血管新生因子の制御された発現を行うために、細胞を刺激する新規な方法も提供する。ある好ましい実施形態では、刺激を受ける細胞は、筋肉細胞である。別の好ましい実施形態では、細胞は、筋肉細胞であり、より好ましくは、心筋細胞、平滑筋細胞、または骨格筋細胞である。好ましい実施形態として、閾下パルスは、移植された細胞の内因性血管増殖因子の細胞産生を高めることが実証される。別の実施形態では、in vitroで、細胞に事前に刺激を与えるために、本デバイスを用いることができる。事前に刺激を与えられた細胞は、その後、心臓に移植することができる。このプロセスでは、培養中の細胞が、閾下領域で刺激を与えられ、移植に用いられる。このプロセスでは、細胞は、その患者から取り出すか(自家細胞移植)、または、同じ種類の異なる患者(同種細胞移植)もしくは異なる種類(異種細胞移植)からのものを使用することができる。
【0053】
移植細胞または移植片は、自家移植源(auto-graphic source)、同種移植源(allo-graphic source)、または異種移植源(xeno-graphic source)から得ることができる。事前の閾下刺激または事後の閾下刺激に用いられる心臓組織の移植細胞は、成人心筋細胞、小児心筋細胞、胎児心筋細胞、成人繊維芽細胞、胎児繊維芽細胞、成人平滑筋細胞、胎児平滑筋細胞、内皮細胞、および骨格筋肉芽細胞からなる群から選ぶことができる(米国特許第6,099,832号および本明細書に記述されたさまざまな細胞タイプの単離の手順を参照されたい)。この技術分野では、さまざまな一次細胞のタイプを単離するための多くの付加的な手順が知られており、また、記述されている。
【実施例】
【0054】
以下の実施例によって、本発明をさらに説明する。これらの実施例は、具体的な実施形態を参照することにより、本発明を例証するためにのみ提供される。これらの例示は、本発明の所定の具体的な側面を例証するが、本発明の限定を表すものでもなく、本発明の範囲を定めるものでもない。
【0055】
材料およびアッセイ
サンプル内のヒトVEGFを、Quantikine(登録商標)によるヒトVEGF免疫測定法を用いて定量化した。従ったプロトコルは、基本的には、Quantikine(登録商標)のカタログ(番号DVE00)に記述された通りであった。ヒトVEGF免疫測定法は、サンドイッチ型酵素免疫測定技法を使用する。VEGFに特異的なモノクローナル抗体を、マイクロタイタープレート上で予備被覆した(pre-coated)。標準規格品およびサンプルを、ピペットでウェルに取り、存在するあらゆるVEGFを、不動化した抗体により固定する。固定されていないあらゆる物質を洗い流した後、VEGFに特異的な酵素結合したポリクローナル抗体を、ウェルに加える。洗浄して、固定されていないあらゆる抗体−酵素試薬を除去した後、基質溶液を、ウェルに加えると、最初のステップで固定されたVEGFの量に比例した着色が起こる。着色が停止し、色の強度が測定される。
【0056】
実施例1:
無菌の6ウェル培養プレート(Corning)に、SmGM増殖培地を用いて、6つのウェル培養インサート上に細胞を接種した。C2C12細胞(マウス筋芽細胞)を、7.5×103/cm2で接種した。ヒト冠動脈平滑筋細胞(HCASMC:Human Coronary Smooth Muscle Cell)を、2.5×103/cm2で接種した。2日間の増殖(密集)の後、ウェルを、電気刺激培地(1%のウシ血清アルブミンを有するDMEM)により2度洗浄した。2.0mlの無血清培地を加えたが、培地には、ウシ胎仔血清は存在しなかった。ウェルは、内側ウェルインサートに約2.0mlおよび外側ウェルインサートに約2.0mlの合計約4mlの増殖培地を含んだ。細胞に、円形のグラファイト電極を用いて、各刺激条件につき8時間の間、電気的刺激を与えた。細胞に、刺激試験槽内で、4ミリ秒の放電パルス幅を有する1ミリ秒の刺激パルス幅の間、1ボルトで刺激を与えた。エスケープ(逸脱)期間を、望ましい周波数を達成するように調整した。サンプルを、22時間の事後刺激の後採取した。細胞培養の上清を、ウェルから除去した。−85℃でサンプルを凍結することに先立って、いかなるデブリまたは浮遊した細胞も、5分間、300RPMで上清を遠心分離することにより除去した。細胞のカウントを、培養プレートのすべてのウェルで行った。
【0057】
凍結された上清を解凍し、サンプル内のVEGFの量を、QuantikineのヒトVEGF免疫測定法を用いて定量化した。結果(表1)は、閾下刺激がサンプル内に見出されるVEGFの量を増加させたことを示した。
【0058】
【表1】
【0059】
実施例2:局所的な虚血性心筋症のイヌモデルのin vivo閾下刺激
最初に、筋肉内硫酸モルヒネ(4mg/kg)によって、イヌを麻酔した。ペントサルのボーラス注射(20mg/kg)を与え、続いて、気管内挿管後に、連続したイソフルレン(酸素の0.5%〜2%)の吸入を行った。左側の開胸術を行い、心外膜を開いた。マイクロ血圧計の圧力トランスデューサ(テキサス州ヒューストンのMillar InstrumentsのMPC−500)を、心尖部の切開箇所を通して左心室に挿入した。また、5MHzの超音波水晶振動子の対も、冠動脈血流の測定の最初の対角枝のちょうど末端部にある末梢の左前下行枝(LAD:left anterior descending - artery)および左回旋枝(LCX:left circumflex - artery)によって血液が供給される領域に埋め込んだ。2つの心臓ワイヤ電極を、LAD潅流領域に挿入した。着色された15μmの微小球を注入して、局所的な心筋の血流を測定するために、カテーテルを、左心房に挿入した。アメロイドコンストリクタを、血流プローブに近接したLAD枝に配置した。すべてのワイヤおよびチューブを、皮下に通し、首背部の皮膚を通して引き出した。開胸術による切開部を、層を成して閉じ、再潅流期間の間中、広域抗生物質および微麻酔の投与を開始した。
【0060】
外科手術後の実験プロトコルの基本的な年表は、3つの期間に分割した。第1の期間(回復期間)は、外科手術後の最初の週に現れた。イヌに器具を取り付ける外科手術の後、イヌは回復することができた。第1週の間、冠動脈血流(CBF:coronary blood flow)を1週間で評価するために、微小球を注入した。第2の期間は、外科手術後の第2週から第5週の間に現れ、休止しているCBFを評価するための微小球の注入に加えて、局所的な仕事量、CBF(LADおよびLCX)、ならびに左心室の圧力(LVP:left ventricular pressure)の毎週のモニタリングを含んた。第3の期間は、第5週から第6週にかけて現れ、5日間の間、刺激を行った。
【0061】
第6週の間、すべての血行動態信号(hemodynamic signal)を、250Hzでサンプリングを行うアナログ/ディジタル変換器を用いて記録した。回復フェーズ(第1の期間)、次の虚血の発症(第2の期間)、および次の電界刺激(field stimulation)(第3の期間)の終わりに、局所的な血流を、着色された微小球(15μM)を用いて評価し、心筋外膜および心筋内膜の血流を定量化した。組織のサンプルおよび基準血液のサンプルを、Spectra Max 250マイクロプレートリーダ分光光度計で分析した。心筋の血流を、非虚血区域および虚血区域の心外膜下領域および心内膜下領域で計算した。慢性的な虚血後の組織による微小球の潜在的損失が、非虚血組織のベースライン流のレート係数を用いて、虚血組織の血流データ(例えば虚血/非虚血流)に提供されることにより訂正される。
【0062】
第6週の開始時に、50Hz、0.1Vで動作し、0.3ミリ秒のパルスを発生する閾下刺激装置を用いて、閾下パルスを心臓に送達した。閾下刺激装置は、全部で16の可能な設定について0.1Vのステップで変化する0〜1.5V出力の動作範囲を有する。パルス幅は、0.1、0.3、1.0、および3.0ミリ秒であり、一連の4つのスライドスイッチによって切り換えられる。このパルス出力の柔軟性の結果、この刺激装置は、ペーシング閾値を決定する機能も有し、したがって、0.1V、50Hzのパルスが閾下となるマージンすなわち範囲を有していた。これは、振幅をステップアップして、VOOペーシング捕捉を探している間、このデバイスを1〜3Hzの評価モードに設定することにより行われる。刺激は、一組の心筋ペーシングワイヤ、すなわち「心臓ワイヤ」を介して送られた。このワイヤは、二極IS−1コネクタに接続された一組の単極IS−1リード線を通して刺激装置に接続されていた。さらに、パルス発生器は、結合バッテリレベルがOKであること、および、ペーシングワイヤの連続性がOKであることを示すインディケータを含み、このインディケータは、視認できるLEDライトを有する。
【0063】
LAD心臓領域には、実験終了前の第6週の5日間刺激を与えた。サンプルの心臓組織は、刺激を受けたイヌおよび刺激を受けていないイヌの双方から収集した。心臓組織のサンプルは、VEGF抗体を用いるウェスタンブロット分析用に採取し、調製した(図7)。全タンパク質を、実験後の心臓組織から抽出した。100μgのタンパク質を、SGS−Pageゲルの各レーンにロードし、200ボルトで15分間、溶解した。レーンを、ヒトVEGF用のポリクローナル抗体(Santa Cruz)にさらした。この抗体は、抗体の結合エピトープ(データは図示せず)を阻止する分子によって阻止された。したがって、この抗体は、VEGFの部位に特異的なものである。レーン8〜レーン11=制御グループ。レーン8(非虚血領域全層)、レーン9(虚血心外膜下)、レーン10(虚血心内膜下)、レーン11(右心室)。レーン12〜レーン15は、処置(刺激領域)グループである。レーン12(非虚血領域全層)、レーン13(虚血心外膜下)、レーン14(虚血心内膜下)、レーン15(右心室)。VEGFについてのバンドは、約26kD分子量で現れる。VEGFについて見られる2つの断片に典型的な2つのバンドが現れる。VEGFと一致するバンドは、レーン12〜レーン15、すなわち処置グループにのみ現れることに留意されたい。ゲルは、変異性を回避するために同じ日に処理した。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】VEGF産生のための心臓組織の閾下刺激 図1は、心臓組織の閾下刺激用動作の1つのモードの概要である。
【図2】閾下刺激用の出力回路の簡略概略図 図2は、パルス発生器用の閾下刺激デバイスの出力回路構成の概略図を示す。
【図3】出力段階にある閾下刺激の等価回路 図3は、出力段階にあるパルス発生器用の閾下デバイスの出力回路構成の概略図を示す。
【図4】閾下刺激シーケンス 図4は、一連の閾下刺激を提供するペーシング方式を示す。
【図5】閾下刺激用のパルス発生器 図5は、対象となる組織細胞に電気刺激を送達することができるパルス発生器用の回路のブロック図を示す。
【図6】閾下刺激用の出力回路の概略図 図6は、閾下パルス発生器用の閾下刺激デバイスの出力回路構成の概略図を示す。
【図7】刺激を受けた組織および刺激を受けていない組織のVEGF産生 図7は、刺激を受けた血管組織および刺激を受けていない血管組織におけるVEGFタンパク質のウェスタンブロットを示す。
【0001】
本発明は、血管増殖因子の制御された産生のための新規な刺激デバイスを提供する。より詳細には、本発明は、血管内皮細胞増殖因子の局所的な産生のための閾下(subthreshold)パルス発生器を提供する。
【背景技術】
【0002】
冠動脈疾患(CAD:coronary artery disease)は、心臓のために働く血管の動脈硬化の結果、発生する。動脈硬化は、動脈の硬化および狭窄である。多くの場合、心臓の動脈は、突然、非常にひどく閉塞されることがあるので、心臓の領域に十分な血液が供給されず、その結果、心筋梗塞が発生する。血流が減少し、損傷を受けた領域は、虚血領域と呼ばれる。心臓の虚血領域は、十分な血流が得られないので、酸素および栄養素が欠乏する。この閉塞は、迅速に処置されないと、深刻な組織の損傷につながる可能性がある。多くの場合、外科的処置が用いられて、新しい血管が虚血領域に移植され、血液の循環が改善される。あるいは、血管形成術または閉塞した血管のステント留置術が、血流を再開または維持するために行われる。しかしながら、動脈のバイパスまたは再開は、現在の方法論の限界および外科的処置による患者へのリスクのため、実行できないことが多い。
【0003】
不十分な血液循環から生じる虚血による損傷は、心臓の末梢の血管にも起こる可能性がある。末梢動脈閉塞性疾患(PAOD:peripheral arterial occlusive disease)は、動脈硬化または糖尿病などの疾患による血管内の血栓の形成によって引き起こされ、外部の四肢の喪失につながることが多い。
【0004】
虚血組織への血流を改善する必要性に対処する1つの方法は、新しい血管を生成することである。新しい血管の形成に直接関与する血管新生因子が知られている。塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF:basic fibroblast growth factor)および血管内皮細胞増殖因子(VEGF:vascular endothelial growth factor)といった組み換え型血管増殖因子の局所投与により、動物モデルの心筋組織および骨格筋組織の虚血領域を救済することができる。新しい血管の成長を期待して、多くの手法が、これらの因子を虚血領域に送達するために開発されてきている。これらの手法には、直接注入法、電気穿孔法(electroporation)、およびレトロウィルスベクターを用いた送達法(delivery)が含まれる。
【0005】
血管増殖因子の直接注入法は、当該方法に関連した多くの課題を有し、最も顕著な課題は、細胞内に因子を効果的に送達することに関連するものである。電気穿孔法は、血管新生因子をコードする遺伝物質を送達することが可能な方法である。しかしながら、トランスフェクション効率がまだ非常に低く、組織に向けられた高エネルギーパルスが、多くの健康な細胞を殺すことが多い。これらに代わるべきものとして、血管新生因子をin vivoで直接産生する、ウィルスに基づく遺伝子送達システムを開発しようと努力してきた者もいる。しかしながら、この手法は、安全で有効な治療とみなされるまでに、より一層の開発を必要とする。遺伝子送達の分野では、広範囲な研究が続いているが、in vivoで遺伝子発現を制御し、かつ、調節する方法については、ほとんど報告されていない。したがって、対象となる組織にこの薬剤を有効に送達することが不可能であることが、このような薬剤の使用の主な制約の1つである。血管新生因子の送達中に、有効性が破壊されるか、または、失われることが多い。
【0006】
電界を用いて血管増殖因子の自然産生を刺激することに関係した最近の研究が、公開された。WO 00/27466号は、血管新生を刺激する電界を発生するのに定電圧源を用いることを記載している。記載された電圧は、およそ50〜300ボルト/cm程度であり、この電圧は、刺激を与えている間に収縮反応も刺激することになる。筋収縮反応を引き起こすことなく血管新生を刺激できる方が有利である。最近の刊行物(Circulation, 1999;99:2682-2687)では、骨格筋の低電圧電気刺激が、VEGFタンパク質のde novo合成を誘発し、血管新生を促進することが報告された。この研究分野におけるさらなる研究が必要とされる。この技術分野におけるこれらの既知の方法によっても、まだ、血管増殖因子の送達を制御して、筋肉組織内の血管新生を促進するための更なるより有効な閾下デバイスおよびより効率的な方法、ならびに、心臓組織および血管組織内の血管新生を刺激するのに用いることができる方法論が、必要とされている。
[発明の概要]
本発明は、血管新生因子の制御された局所送達に関する、従来技術に存在する多くの問題に取り組む。本発明のさまざまな実施形態は、血管新生因子の送達に関する、従来技術に存在する1つまたは複数の問題に解決法を提供する。本発明は、血管新生および血管増殖因子の産生のための新規な電気パルス発生器を提供する。
【0007】
本発明は、閾下パルスを提供する電気パルス発生器を提供する。本デバイスは、所与の刺激の時間、周波数、および送達を調節することによって、閾下パルスの範囲に適合することができる。本発生器は、可変の電界強度を許容することによって、電極間の距離にかかわらず、定電圧の使用を可能とする。本発生器は、電圧の振幅に対する制御を可能とし、送達される充電パルスおよび回復される充電パルスの充電バランスを保つことを可能とする。
【0008】
別の実施形態では、閾下パルス発生器は、体外で用いることができるが、埋め込み可能に設計および構成されることが好ましい。この閾下パルス発生器は、電源装置と、この電源装置に相互接続された制御機構とを含む。任意に、パルス発生器は、電源装置と電気的に通信する複数の電極と共に用いることができる。また、本発生器は、予め指定された時刻にリード線の導通をチェックすることもできる。
【0009】
また、本発明は、閾下パルス発生器を、当該閾下パルス発生器を必要とする患者に提供することも行う。一態様では、本発明は、血管増殖因子の産生を調節する手段を提供することによって、組織の障害もしくは疾患の軽減または修復を行う方法を含む。別の態様では、提供される閾下刺激は、対象となる生体組織における血管新生を刺激するのに十分である。さらに別の態様では、本発明は、血管新生因子の制御された発現のために細胞または組織を刺激することができるペーシングの新規な方法を提供する。
【0010】
本発明のこれらの目的および特徴ならびに他の目的および特徴は、以下の詳細な説明を、添付図面と共に読むことにより、より十分に明らかになる。
図面は、本発明の所定の実施形態を示している。それら図面は、単なる例示にすぎず、本発明を、本明細書に開示されたように限定するものではない。
[発明を実施するための最良の形態]
定義
「血管新生因子」は、組織内の血管新生を促進する物質からなる群である。これらの因子には、これらに限定されるわけではないが、血管内皮細胞増殖因子(VEGF:vascular endothelial growth factor)および繊維芽細胞増殖因子(FGF:fibroblast growth factor)、ならびに、これらの因子に構造的および/または機能的に関連した要素である、患者のゲノム内でコードされる、発見されたすべての自然の類似体が含まれる。
【0011】
本明細書で用いられる用語「成熟タンパク質」または「成熟ポリペプチド」は、哺乳類の細胞内での発現によって産生されるタンパク質の形態(複数可)をいう。一般に、粗面小胞体の全体にわたって成長するタンパク質鎖の搬出が開始されると、哺乳類の細胞によって分泌されたタンパク質は、完全なポリペプチドから切断されるシグナル配列を有し、そのタンパク質の「成熟した」形態を産生すると仮定される。多くの場合、分泌されたタンパク質の切断は、均一ではなく、その結果、2種類以上の成熟タンパク質が産生されることがある。分泌されたタンパク質の切断部位は、完全タンパク質の一次アミノ酸配列によって決定され、一般に、完全な正確さで予測することはできない。しかしながら、分泌されたタンパク質の切断部位を、精製されたタンパク質の調製物内に発見される1種類または複数種類の成熟タンパク質のアミノ末端基配列によって、実験的に決定することができる。
【0012】
「作用可能に結合された(operably coupled)」とは、閾下パルス発生器による組織への電気刺激の移動をいう。組織または細胞との閾下パルス発生器の作用可能な結合は、電気刺激が組織または細胞に送達されて、利用可能な血管新生因子の増加を引き起こす場合の配置をいう。通例、この刺激は、閾下パルス発生器からリード線を通して、組織に取り付けられた電極へ送達される。
【0013】
用語「処置を行うこと」、「処置」、および「治療」は、ここでは、根治治療、予防的治療(prophylactic therapy)、および予防治療(preventive therapy)をいうのに用いられる。「予防治療」の一例は、対象となる疾患または当該疾患に関連する症状の予防または緩和である。例えば、閾下刺激は、予防努力として血管新生を促進し、心筋梗塞の発生を回避するために予防的に用いることができる。処置を必要とする人々には、疾患または症状をすでに有する人々だけでなく、予防の対象となる疾患または症状を有する傾向にある人々も含まれる。また、本明細書で用いられる用語「処置を行うこと」、「処置」、および「治療」は、疾患または関連する症状と戦う目的で、患者を管理および介護することも表し、組織への血流を改善するために、少なくとも1つの閾下電気パルスを虚血領域へ投与することを含む。
【0014】
「長期」投与は、長期間にわたって初期治療効果(作用)を維持するために、緊急モードとは対照的な連続モードで電気刺激を投与することをいう。
「間欠」投与は、間断なく連続して行うのではなく、時間の経過と共に繰り返される処理である。
【0015】
「虚血」は、ある特定の器官または組織への血液の供給が不十分な状態と定義される。血液の供給が減少した結果、器官または組織への酸素および/または栄養素の供給が不十分となる。虚血が長期に及ぶと、その結果、影響を受けた器官または組織は障害を受けることがある。「酸素欠乏症」は、器官または組織の酸素が実質的には完全に欠乏したことをいい、長期に及ぶと、その結果、器官または組織が死に至ることがある。
【0016】
「虚血障害(ischemic injury)」は、虚血期間および/または虚血と続いて起こる再潅流の期間の結果、器官または組織に対して起こる細胞および/または分子の損傷をいう。
【0017】
「低酸素状態」は、ある特定の器官または組織が、十分な酸素の供給を受けていない状態と定義される。
「無酸素状態」は、ある特定の器官または組織への酸素の供給が中断した状態をいう。
【0018】
「再潅流」は、虚血期間に続いて起こる、組織の血流の回復をいう。
本明細書で用いられる用語「患者」は、あらゆる哺乳類をいい、人間や、牛(例えば乳牛)、馬、犬、羊、豚、ウサギ、ヤギ、猫などの家畜、および動物園の動物、スポーツ動物、またはペット動物、ならびに、マウスおよびラットといった家畜でない動物を含む。本発明の好ましい実施形態では、哺乳類は、人間、犬、ウサギ、またはマウスである。
【0019】
本明細書でいう「治療有効量(therapeutically effective amount)」は、治療的利益または望ましい生物学的作用を患者に与える必要のある閾下刺激の最小量である。例えば、虚血を患っている患者の「治療有効量」は、利用可能な血管新生因子の量の改善を誘発する量か、改良する量か、そうでなければ改善する量か、あるいは、組織の血液循環を改善する量である。例えば、「治療有効刺激」は、治療的利益を提供するか、または、血液循環の少なくとも1つの測定可能な改善を提供する量のうち、血管新生タンパク質の治療有効量を発現するのに必要な電気刺激の量である。
【0020】
本明細書で用いられる用語「ペース(pace)」は、閾下パルス発生器によって細胞組織に送達される電気閾下刺激を送出する行為である。「ペーシング(pacing)」は、通常、電気刺激を組織に繰り返し送出する行為をいい、ここでは、一連の閾下刺激を組織に送達する行為をいう。
【0021】
「薬理有効刺激(pharmacologically effective stimulus)」は、所望のレベルの血管新生タンパク質を患者に提供するのに必要な刺激の量である。正確な刺激の量または必要なペーシングは、例えば、関連する具体的な血管新生因子、用いられる送達刺激、提供される刺激の特徴、その使用目的、および患者の考慮といった多数の因子に依存することになる。これらの判断は、ここに提供される情報を考慮すれば、当業者によって容易に行うことができる。
【0022】
用語「電気刺激の投与」は、電気刺激を組織に送達することを意味する。本発明で適用されるように、電気刺激は、閾下パルス発生器によって組織に送達される。
「閾値」対「閾下」刺激は、適用される刺激の相対的なレベルをいう。本明細書で用いられる「閾値」刺激は、興奮した組織における全体的な組織の電気的反応または機械的反応を引き出す刺激のレベルをいい、例えば、心収縮のために心臓の脱分極をむらなく引き出すのに必要な最小の電気刺激、または、骨格筋運動を引き出すのに必要な最小の電気刺激をいう。一般に、閾値刺激は、1.0ボルトより大きい。閾下刺激は、全体的な電気的反応または機械的反応を組織から引き出さないほど十分低いレベル、例えば心臓の脱分極または筋肉の収縮を引きこさないほど十分低いレベルで、組織に電気刺激を加えることをいう。閾下刺激は、電気パルスの電圧振幅および/または持続時間を、全体的な運動反応または神経反応の閾値反応レベルより小さく維持することによって達成することができる。一般に、閾下刺激は、1.0ボルト以下である。閾下刺激によって、神経細胞または筋肉細胞を刺激することによる不必要な副作用を生じることなく、電気刺激を組織に送達して、利用可能な血管新生タンパク質のレベルを増加させることが可能になる。不必要な副作用は、例えば、不必要な収縮および/または不快な感触などである。
【0023】
本明細書で用いられるように、測定される物理パラメータについてのいくつかの用語は、略記されている。すなわち、振幅は、ボルト(V)またはミリボルト(mV)で表現されることがある。電流は、アンペア(amp)またはミリアンペア(mamp)で表現されることがある。パルス幅、周波数、またはタイミングは、ミリ秒(msec)で表現されることがある。エネルギーは、ジュール(J)またはミリジュール(mJ)で表現されることがある。
【0024】
説明
一般に、本発明は、対象となる生体組織の近傍または生体組織内に電界を生成する閾下パルス発生器、および、血管新生を刺激することによって損傷を受けた組織または虚血組織の処置を行う方法に関する。一実施形態では、電界は、複数の電極間に位置する対象領域に直接送達される。一例として、図1は、一対のリード線2および一対の電極3を通じて、心臓4の心室下部に閾下電界5を生成する閾下パルス発生器1を示している。
【0025】
閾下刺激は、血管増殖因子の産生を促進すると実証されている。これによって、本デバイスによる血管新生反応の促進は、虚血組織領域への血液循環を回復する処置である現在の外科的方法を上回る重要な補助物としての機能を果たす。
【0026】
閾下パルスの目的
本発明は、新規な閾下電気パルス発生器(本明細書では、閾下パルス発生器、パルス発生器、または発生器ともいう)を提供する。このパルス発生器は、1つの電気刺激もしくは一連の電気閾下刺激すなわちパルス(ペーシング)を提供できるという極めて重要な特徴を有する。閾下電気刺激すなわちパルスは、対象となる細胞または組織の血管新生を誘発するために用いられる。一実施形態では、この電気刺激装置は、少なくとも1つの血管新生因子の転写を活性化する閾下刺激を提供する。閾下刺激の目的は、機械的な収縮のために組織を興奮させることではなく、血管新生を選択的に活性化させることである。
【0027】
種々の刺激治療が、閾下刺激治療のコースと併せて与えられ得ることが想定される。時には、従来のペースメーカの閾値電気刺激の利点と共に検討した場合には特に、従来のペースメーカの特徴を、閾下刺激の構成要素と組み合わせることは有利となることがある。
【0028】
パルス発生器の動作パラメータ
閾下電気パルス発生器からの制御された出力電圧は、例えば35Ωから無限大に至るような広範囲の組織のインピーダンスに対して調整することができる。電圧およびタイミング設定のさまざまなユニークな組み合わせによって、本デバイスは、収縮反応を引き出さないで血管新生因子の産生を増加させるユニークな機構を提供する。
【0029】
本発生器では、可変の電界強度を与えることにより、電極間の距離にかかわらず、一定の電圧を使用することができる。本発生器では、電圧の振幅に対する制御が可能であり、送達および再生される充電パルスの充電バランスを保つことが可能である。特定の実施形態では、閾下パルス発生器は、目標電圧の約30%、より好ましくは目標電圧の約20%、さらにより好ましくは目標電圧の約10%、最も好ましくは目標電圧の約5%の可変の電界強度を与えることによって、一定の電圧を用いることができる。後に説明するように、閾下電圧は、一定のレベルであり、電界強度が、組織の至る所で変化することができる。in vitroで電界強度を可変の状態にしたin vitro実験では、有効な結果が得られた(実験1、表1参照)。同様にして、in vivoのVEGF産生を刺激することにより、有効な結果が得られた(実験2、図7参照)。
【0030】
一実施形態では、閾下パルス発生器は、0.1Vずつの幅で、0から1.5V出力の電界を対象となる生体組織に送達することができる。ここで、電界は、一般に、約1V/cm以下であり、約0.5V/cm未満であることがより好ましく、約0.1V/cmであることがより一層好ましい。
【0031】
さらに別の実施形態では、閾下電界を、約10Hzから約100Hzの周波数を有するいくつかのパルスによって生成することができる。周波数は、約25Hzから約85Hzであることが好ましく、約40Hzから約70Hzであることがより好ましく、約50Hzから約60Hzであることがより一層好ましく、約50Hzであることが最も好ましい。
【0032】
さらに別の実施形態では、刺激期間は、パルス周期(1/周波数)よりも短い。刺激期間は、約100ミリ秒〜0.01ミリ秒、約50ミリ秒〜約0.05ミリ秒、および3ミリ秒〜0.1ミリ秒となるように選択することができる。ここで、実際の値は、約20ミリ秒未満とすることができ、約10ミリ秒未満であることが好ましく、約3ミリ秒未満または0.1ミリ秒〜3.0ミリ秒の任意の値であることがより好ましい。
【0033】
閾下刺激
図2の出力回路構成の概略図は、閾下パルス発生器の動作回路構成の概略を示す簡略化した説明図である。図2は、閾下パルス発生器の基本設計要件を設定するのに役立つ。S1、S2、およびS3は、動作サイクルの間、開閉されるスイッチであり、Rは回路抵抗器であり、Vsはバッテリであり、CHおよびCCはコンデンサである。例えば、構成要素の値を、次の値、すなわちVs=2.8ボルト、R=25Ω、CC=CH=10μFと選ぶことができる場合には、CHは、図4に示すような10ミリ秒の充電フェーズの終了時には、0.110ボルトを有すると計算することができる。この説明図により、当業者は、任意の所与の組の閾下出力電圧でCHを提供するいくつかの設定を選ぶことができる。図3は、刺激フェーズの期間中における出力段の等価回路を示している。VCは、CHの初期状態を表している。この場合、CH、CCおよびRTissueは、直列に接続されているので、CHおよびCCを、CEq=5μFに合成することができる。電極で見られる電圧は、次式により与えられる。
【0034】
【数1】
【0035】
例えば、出力電圧が、10%だけ変化できる場合には、VTissue(t)は、0.110ボルト〜0.090ボルトで変化することになる。それは、VCH(0)=0.110、およびVTissue(t)(0.3ミリ秒)=0.090であることを示す。この方程式を組織の電圧用に書き換えると、以下のようになる。
【0036】
【数2】
【0037】
RTissueについて解くと、RTissue=35Ωを求めることができる。換言すると、出力電圧が90〜110mVの範囲にある状態では、駆動できる最小の組織のインピーダンスは、35Ωとなる。パルス発生器に上記設定を用いることにより、(1)閾下刺激用のパルス発生器、(2)広範囲の組織のインピーダンス(35Ωから無限大)に対する制御された出力電圧、(3)機械的な収縮のために組織を興奮させるのではなく、1.0Vの閾下刺激以下の一組の変量を提供することによって、利用可能な血管新生因子の量を増加させることが目的である閾下刺激用のペーシング出力、についての一例が提供される。
【0038】
図4は、一組の閾下刺激パラメータを例示している。図4は、図示されたパルス列を提供するための、電気パルスおよびコンデンサの充電のタイミング図を示している。このパルス列では、パルス周波数が、50Hz(20ミリ秒)であり、組織への刺激パルス(VTissue)が、0.3ミリ秒であり、放電(充電バランスのため、逆極性で再充電)が、6.7ミリ秒である。パルス周期の残りの13ミリ秒の間、電極は、電源装置に接続されていない状態(floating)であり、コンデンサは、再充電される。
【0039】
図5は、長期的な動物の研究で用いられた閾下刺激装置のブロック図である。50Hzの基本的な刺激の繰り返し周波数が、左上のクロック/タイマによって生成される。これは、それぞれの出力パルスの1ミリ秒の放電フェーズおよび5ミリ秒の再充電フェーズを制御するタイマ(中央上)をトリガする。パルス振幅は、4ビットDAC(中央左)によって制御される。パルス出力回路(中央)は、タイミングおよび振幅情報を利用して、実際の出力パルスを発生する。次に、この出力パルスは、電極および組織(中央右)に送達される。パルス出力回路は、リード線および電極の機能不良をチェックするリード線導通モニタ(中央下)をオプションとして組み込む。出力振幅は、電極抵抗の増加状況に基づいて調整することができる(破線)か、または、リード線が断線または短絡した場合にはオフにすることができる。出力振幅制御と共に、刺激の安全マージン(ペーシング閾値)を評価するために、別の2Hzの刺激の設定(左上)が用いられる。
【0040】
図6は、in vivo実験において用いられる刺激装置の回路を示している。この回路図に用いられる一般的な記号の説明は、以下の通りである。
U:集積回路
R:抵抗器
C:コンデンサ
SW:スイッチ
D:ダイオード
Vcc:電源装置(バッテリ)の正極端子
Vee:電源装置(バッテリ)の負極端子
JP:オフボード接続用のジャンパ端子
以下は、具体的にラベル付けされた構成要素のリストである。
(1)U2:50Hz(20ミリ秒)の刺激タイミングを維持するメイン発振器。
(2)U1B:刺激パルス幅を制御するタイマ。このタイマは、(13)として示されるS2を閉じる。
(3)U1A:放電期間を制御するタイマ。このタイマは、(7)として示されるS3を閉じる。
(4)C11は、10マイクロファラッドの値を有する保持コンデンサCHである。
(5)C10は、6.8マイクロファラッドの値を有する結合コンデンサCCである。
(6)JP2は、刺激電極が取り付けられるヘッダである。
(7)U5:閉じられると、結合コンデンサを放電するスイッチS3。
(8)R9:刺激を与えられる組織と直列に配置される、刺激電流強度を測定するために用いられる抵抗器。
(9)SW2:(10)として示されるリード線完全性インディケータを用いて、リード線の完全性を検査するスイッチ。
(10)LED:リード線完全性インディケータとして用いられる発光ダイオード。
(11)U7C:(14)として示される刺激振幅Vadjを設定するために用いられるディジタル/アナログ変換器。
(12)U7D:(11)によって決定される調整可能な刺激振幅のインバータ/ドライバ。
(13)U3:閉じられると、保持コンデンサから、(6)に接続された組織へ電荷を送達するスイッチS3。
(14)Vadj:(11)によって決定される調整可能な刺激振幅。
【0041】
図6Aおよび図6Bに続いて示される閾下刺激装置回路は、本質的には、図2に示す刺激波形を生成するように動作する。発生される刺激は、周期的な信号である。この周期的な信号は、50Hzのディジタルパルスを生成するように設定され、メインクロックを提供するメイン発振器(1)に基づいて生成される。タイマ(2)およびタイマ(3)は、同様に図2に示すようなクロックから、刺激パルスおよび放電パルスをそれぞれ生成する。これらのパルスは、スイッチ(13)およびスイッチ(7)を閉じるのに用いられ、これらのスイッチは、図2のS2およびS3に対応する。オンボードコネクタ(6)の端子1および端子4は、組織に向かうリード線が取り付けられる箇所である。刺激を与えている間、保持コンデンサ(6)に蓄えられたエネルギーは、組織に到達する前に、スイッチ(13)、結合コンデンサ(5)、および直列抵抗器(8)を通過して端子(6)に到達する。直列抵抗器(8)における電圧降下は、組織を通過する電流の表示を得るために、端子(6)からモニタリングすることができる。スイッチ(9)は、リード線完全性インディケータ(10)を用いてリード線の完全性をモニタリングするために使用することができる。調整された刺激振幅(14)は、インバータ/ドライバ(12)が後段に続くディジタル/アナログ変換器(11)によって設定される。
【0042】
閾下パルス発生器の付加的特徴
別の実施形態では、閾下パルス発生器は、体外で用いることができるが、埋め込み可能に設計され、構成されることが好ましい。本デバイスは、体内に埋め込むことができ、電気構成要素は、生体組織および体液から密封することができる。理想的には、この埋め込み可能デバイスは、約50cm3の体積を有するが、体積は、約40cm3が好ましく、約30cm3がより好ましく、約20cm3がより一層好ましく、約10cm3が最も好ましい。
【0043】
電気パルス発生器は、埋め込むこともできるし、体外に置くこともできることが想定される。理想的には、閾下パルス発生器は、埋め込まれる。
電極およびリード線
閾下パルス発生器は、電源装置および当該電源装置と相互接続された制御機構を含む。任意に、パルス発生器は、電源装置と電気的な通信を行う電極と共に用いることができる。別の実施形態では、提供される閾下刺激は、対象となる生体組織において血管新生を刺激するのに十分な量である。また、本発生器は、予め指定された時刻に、リード線の導通をチェックすることもできる。他の好ましい実施形態では、電極およびリード線は、閾下パルス発生器と共に用いることができる。好ましい実施形態では、電極は、二極電極構成または多極電極構成からなるように構成される。
【0044】
電極は、伝導性の金属もしくは有機高分子化合物、またはこれら2つの合成物から製造される。例えば、電極は、プラチナ、金、ジルコニウム、イリジウム、チタニウム、特定のカーボン、ステンレス鋼、銀、銅、スズ、ニッケル、鉄、もしくはリチウム、またはそれらのさまざまな混合物、合金、もしくはアマルガムから製造することができる。電極の設計は、対象の組織の特質に応じて、多くの異なる形状およびサイズを取ることができる。心筋組織またはそれ以外の筋肉組織の場合に、電極は、ストレートピン、ネジ、当て板などで構成することができ、さらに、電極を固定しておくためのさまざまな返し、フック、または代替構造を備えることができる。
【0045】
さらに別の実施形態として、本明細書に例示されたものと同様のさまざまなタイプの電気リード線、または、他の埋め込み可能なパルス発生器と共に共通に使用されるさまざまなタイプの電気リード線を、電源装置に接続するために用いることができる。
【0046】
いくつかの適切な電極は、電気刺激を提供するように機能することができる。一特徴では、電極は、表面コイル電極、または心臓ワイヤである。この表面電極は、プラチナ合金または他の生体適合性金属から構成されることがある。この電極は、コイル、円筒、ワイヤ、または他の任意の形状とすることができる。
【0047】
電極の配置は、2つの方法の一方で行うことができる。すなわち、好ましい実施形態では、電極は、静脈系を用いて、血管新生が望まれる心臓の組織の近傍に進められ、所定の位置に置かれる。あるいは、侵襲性の外科的処置の使用を最低限にして、所定の位置に電極を配置することができ、これは、血管構造内のカテーテルの届かない場所にアクセスすることができる。いずれの場合でも、二極性刺激または単極性刺激を加えて、組織に電界を発生させ、電気的に反応するプロモータをトリガすることができる。二極性刺激は、好ましい方法である。
【0048】
電極の配置は、主として、電極の埋め込みに用いられる方法によって決定されることになる。電極が経静脈法の経路を介して配置される場合には、患者の解剖学的構造が、電極の接近を許容しないことがあることを理解しつつ、電極は、移植された細胞、虚血組織、または血管新生の対象領域のできるだけ近くに配置されるべきである。経静脈法でない埋め込み技法が用いられる場合には、通例、刺激電極は、虚血領域の非常に近い位置に配置することができる。
【0049】
患者または細胞の閾下刺激
提供される閾下刺激は、患者の対象となる生体組織において血管新生を刺激するのに十分である。一実施形態として、パルス発生器は、閾下電界の送達により、血管増殖因子の転写を調節するために用いられる。
【0050】
また、本発明は、閾下刺激治療を必要とする患者にも閾下パルス発生器を提供する。一実施形態では、本発明は、血管増殖因子の産生を調節する手段を提供することにより、組織の障害の軽減または修復を行う方法を含む。一態様では、パルス発生器は、例えば虚血障害が発生した箇所といった、障害を受けた筋肉組織の修復を取り持つ閾下パルスを送達するのに有効である。この方法は、損傷を受けた心筋組織または末梢筋肉組織の周囲の心筋組織もしくは筋肉組織または細胞に治療的な刺激を提供することにより、損傷を受けた心筋組織または末梢筋組織に適用することができる。別の実施形態では、血管筋肉組織が、閾下パルス発生器を用いて刺激を受ける。血管組織の閾下刺激には、患者の動脈および静脈の刺激が含まれる。
【0051】
本発明の一特徴では、本システムは、閾下刺激の治療有効量を送達することにより、末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)もしくは冠動脈疾患(CAD)または脳卒中(stroke)を処置するのに用いることができる。末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)または冠動脈疾患(CAD)の処置は、VEGFおよびFGFといった血管新生タンパク質を刺激して、血管形成(血管新生)を高めることにより達成されることが想定される。
【0052】
また、本発明は、血管新生因子の制御された発現を行うために、細胞を刺激する新規な方法も提供する。ある好ましい実施形態では、刺激を受ける細胞は、筋肉細胞である。別の好ましい実施形態では、細胞は、筋肉細胞であり、より好ましくは、心筋細胞、平滑筋細胞、または骨格筋細胞である。好ましい実施形態として、閾下パルスは、移植された細胞の内因性血管増殖因子の細胞産生を高めることが実証される。別の実施形態では、in vitroで、細胞に事前に刺激を与えるために、本デバイスを用いることができる。事前に刺激を与えられた細胞は、その後、心臓に移植することができる。このプロセスでは、培養中の細胞が、閾下領域で刺激を与えられ、移植に用いられる。このプロセスでは、細胞は、その患者から取り出すか(自家細胞移植)、または、同じ種類の異なる患者(同種細胞移植)もしくは異なる種類(異種細胞移植)からのものを使用することができる。
【0053】
移植細胞または移植片は、自家移植源(auto-graphic source)、同種移植源(allo-graphic source)、または異種移植源(xeno-graphic source)から得ることができる。事前の閾下刺激または事後の閾下刺激に用いられる心臓組織の移植細胞は、成人心筋細胞、小児心筋細胞、胎児心筋細胞、成人繊維芽細胞、胎児繊維芽細胞、成人平滑筋細胞、胎児平滑筋細胞、内皮細胞、および骨格筋肉芽細胞からなる群から選ぶことができる(米国特許第6,099,832号および本明細書に記述されたさまざまな細胞タイプの単離の手順を参照されたい)。この技術分野では、さまざまな一次細胞のタイプを単離するための多くの付加的な手順が知られており、また、記述されている。
【実施例】
【0054】
以下の実施例によって、本発明をさらに説明する。これらの実施例は、具体的な実施形態を参照することにより、本発明を例証するためにのみ提供される。これらの例示は、本発明の所定の具体的な側面を例証するが、本発明の限定を表すものでもなく、本発明の範囲を定めるものでもない。
【0055】
材料およびアッセイ
サンプル内のヒトVEGFを、Quantikine(登録商標)によるヒトVEGF免疫測定法を用いて定量化した。従ったプロトコルは、基本的には、Quantikine(登録商標)のカタログ(番号DVE00)に記述された通りであった。ヒトVEGF免疫測定法は、サンドイッチ型酵素免疫測定技法を使用する。VEGFに特異的なモノクローナル抗体を、マイクロタイタープレート上で予備被覆した(pre-coated)。標準規格品およびサンプルを、ピペットでウェルに取り、存在するあらゆるVEGFを、不動化した抗体により固定する。固定されていないあらゆる物質を洗い流した後、VEGFに特異的な酵素結合したポリクローナル抗体を、ウェルに加える。洗浄して、固定されていないあらゆる抗体−酵素試薬を除去した後、基質溶液を、ウェルに加えると、最初のステップで固定されたVEGFの量に比例した着色が起こる。着色が停止し、色の強度が測定される。
【0056】
実施例1:
無菌の6ウェル培養プレート(Corning)に、SmGM増殖培地を用いて、6つのウェル培養インサート上に細胞を接種した。C2C12細胞(マウス筋芽細胞)を、7.5×103/cm2で接種した。ヒト冠動脈平滑筋細胞(HCASMC:Human Coronary Smooth Muscle Cell)を、2.5×103/cm2で接種した。2日間の増殖(密集)の後、ウェルを、電気刺激培地(1%のウシ血清アルブミンを有するDMEM)により2度洗浄した。2.0mlの無血清培地を加えたが、培地には、ウシ胎仔血清は存在しなかった。ウェルは、内側ウェルインサートに約2.0mlおよび外側ウェルインサートに約2.0mlの合計約4mlの増殖培地を含んだ。細胞に、円形のグラファイト電極を用いて、各刺激条件につき8時間の間、電気的刺激を与えた。細胞に、刺激試験槽内で、4ミリ秒の放電パルス幅を有する1ミリ秒の刺激パルス幅の間、1ボルトで刺激を与えた。エスケープ(逸脱)期間を、望ましい周波数を達成するように調整した。サンプルを、22時間の事後刺激の後採取した。細胞培養の上清を、ウェルから除去した。−85℃でサンプルを凍結することに先立って、いかなるデブリまたは浮遊した細胞も、5分間、300RPMで上清を遠心分離することにより除去した。細胞のカウントを、培養プレートのすべてのウェルで行った。
【0057】
凍結された上清を解凍し、サンプル内のVEGFの量を、QuantikineのヒトVEGF免疫測定法を用いて定量化した。結果(表1)は、閾下刺激がサンプル内に見出されるVEGFの量を増加させたことを示した。
【0058】
【表1】
【0059】
実施例2:局所的な虚血性心筋症のイヌモデルのin vivo閾下刺激
最初に、筋肉内硫酸モルヒネ(4mg/kg)によって、イヌを麻酔した。ペントサルのボーラス注射(20mg/kg)を与え、続いて、気管内挿管後に、連続したイソフルレン(酸素の0.5%〜2%)の吸入を行った。左側の開胸術を行い、心外膜を開いた。マイクロ血圧計の圧力トランスデューサ(テキサス州ヒューストンのMillar InstrumentsのMPC−500)を、心尖部の切開箇所を通して左心室に挿入した。また、5MHzの超音波水晶振動子の対も、冠動脈血流の測定の最初の対角枝のちょうど末端部にある末梢の左前下行枝(LAD:left anterior descending - artery)および左回旋枝(LCX:left circumflex - artery)によって血液が供給される領域に埋め込んだ。2つの心臓ワイヤ電極を、LAD潅流領域に挿入した。着色された15μmの微小球を注入して、局所的な心筋の血流を測定するために、カテーテルを、左心房に挿入した。アメロイドコンストリクタを、血流プローブに近接したLAD枝に配置した。すべてのワイヤおよびチューブを、皮下に通し、首背部の皮膚を通して引き出した。開胸術による切開部を、層を成して閉じ、再潅流期間の間中、広域抗生物質および微麻酔の投与を開始した。
【0060】
外科手術後の実験プロトコルの基本的な年表は、3つの期間に分割した。第1の期間(回復期間)は、外科手術後の最初の週に現れた。イヌに器具を取り付ける外科手術の後、イヌは回復することができた。第1週の間、冠動脈血流(CBF:coronary blood flow)を1週間で評価するために、微小球を注入した。第2の期間は、外科手術後の第2週から第5週の間に現れ、休止しているCBFを評価するための微小球の注入に加えて、局所的な仕事量、CBF(LADおよびLCX)、ならびに左心室の圧力(LVP:left ventricular pressure)の毎週のモニタリングを含んた。第3の期間は、第5週から第6週にかけて現れ、5日間の間、刺激を行った。
【0061】
第6週の間、すべての血行動態信号(hemodynamic signal)を、250Hzでサンプリングを行うアナログ/ディジタル変換器を用いて記録した。回復フェーズ(第1の期間)、次の虚血の発症(第2の期間)、および次の電界刺激(field stimulation)(第3の期間)の終わりに、局所的な血流を、着色された微小球(15μM)を用いて評価し、心筋外膜および心筋内膜の血流を定量化した。組織のサンプルおよび基準血液のサンプルを、Spectra Max 250マイクロプレートリーダ分光光度計で分析した。心筋の血流を、非虚血区域および虚血区域の心外膜下領域および心内膜下領域で計算した。慢性的な虚血後の組織による微小球の潜在的損失が、非虚血組織のベースライン流のレート係数を用いて、虚血組織の血流データ(例えば虚血/非虚血流)に提供されることにより訂正される。
【0062】
第6週の開始時に、50Hz、0.1Vで動作し、0.3ミリ秒のパルスを発生する閾下刺激装置を用いて、閾下パルスを心臓に送達した。閾下刺激装置は、全部で16の可能な設定について0.1Vのステップで変化する0〜1.5V出力の動作範囲を有する。パルス幅は、0.1、0.3、1.0、および3.0ミリ秒であり、一連の4つのスライドスイッチによって切り換えられる。このパルス出力の柔軟性の結果、この刺激装置は、ペーシング閾値を決定する機能も有し、したがって、0.1V、50Hzのパルスが閾下となるマージンすなわち範囲を有していた。これは、振幅をステップアップして、VOOペーシング捕捉を探している間、このデバイスを1〜3Hzの評価モードに設定することにより行われる。刺激は、一組の心筋ペーシングワイヤ、すなわち「心臓ワイヤ」を介して送られた。このワイヤは、二極IS−1コネクタに接続された一組の単極IS−1リード線を通して刺激装置に接続されていた。さらに、パルス発生器は、結合バッテリレベルがOKであること、および、ペーシングワイヤの連続性がOKであることを示すインディケータを含み、このインディケータは、視認できるLEDライトを有する。
【0063】
LAD心臓領域には、実験終了前の第6週の5日間刺激を与えた。サンプルの心臓組織は、刺激を受けたイヌおよび刺激を受けていないイヌの双方から収集した。心臓組織のサンプルは、VEGF抗体を用いるウェスタンブロット分析用に採取し、調製した(図7)。全タンパク質を、実験後の心臓組織から抽出した。100μgのタンパク質を、SGS−Pageゲルの各レーンにロードし、200ボルトで15分間、溶解した。レーンを、ヒトVEGF用のポリクローナル抗体(Santa Cruz)にさらした。この抗体は、抗体の結合エピトープ(データは図示せず)を阻止する分子によって阻止された。したがって、この抗体は、VEGFの部位に特異的なものである。レーン8〜レーン11=制御グループ。レーン8(非虚血領域全層)、レーン9(虚血心外膜下)、レーン10(虚血心内膜下)、レーン11(右心室)。レーン12〜レーン15は、処置(刺激領域)グループである。レーン12(非虚血領域全層)、レーン13(虚血心外膜下)、レーン14(虚血心内膜下)、レーン15(右心室)。VEGFについてのバンドは、約26kD分子量で現れる。VEGFについて見られる2つの断片に典型的な2つのバンドが現れる。VEGFと一致するバンドは、レーン12〜レーン15、すなわち処置グループにのみ現れることに留意されたい。ゲルは、変異性を回避するために同じ日に処理した。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】VEGF産生のための心臓組織の閾下刺激 図1は、心臓組織の閾下刺激用動作の1つのモードの概要である。
【図2】閾下刺激用の出力回路の簡略概略図 図2は、パルス発生器用の閾下刺激デバイスの出力回路構成の概略図を示す。
【図3】出力段階にある閾下刺激の等価回路 図3は、出力段階にあるパルス発生器用の閾下デバイスの出力回路構成の概略図を示す。
【図4】閾下刺激シーケンス 図4は、一連の閾下刺激を提供するペーシング方式を示す。
【図5】閾下刺激用のパルス発生器 図5は、対象となる組織細胞に電気刺激を送達することができるパルス発生器用の回路のブロック図を示す。
【図6】閾下刺激用の出力回路の概略図 図6は、閾下パルス発生器用の閾下刺激デバイスの出力回路構成の概略図を示す。
【図7】刺激を受けた組織および刺激を受けていない組織のVEGF産生 図7は、刺激を受けた血管組織および刺激を受けていない血管組織におけるVEGFタンパク質のウェスタンブロットを示す。
Claims (68)
- a.)電源装置と、
b.)前記電源装置と相互接続されて、対象となる細胞または組織に閾下パルスを送達する制御機構と、
を備える閾下パルス発生器。 - 前記制御機構は、前記電源装置からの電気パルスの、電圧振幅、刺激期間、充電バランス、および周波数からなる群から選択される少なくとも1つの機能を制御する、請求項1に記載の閾下パルス発生器。
- 前記制御機構は、刺激タイマ、出力振幅制御、充電バランスが保たれたパルスタイマ、刺激閾値モニタ、およびリード線導通モニタから選択される構成要素からなる少なくとも1つの追加の組を有する、請求項1に記載の閾下パルス発生器。
- 定電圧源を有する、請求項2に記載の閾下パルス発生器。
- 前記電源装置からの前記電気パルスの送達の振幅は、約1V/cmの可変電界を有する、請求項2に記載の閾下パルス発生器。
- 前記電源装置からの前記電気パルスの送達の振幅は、約0.5V/cmの電界を提供する、請求項2に記載の閾下パルス発生器。
- 前記電源装置からの前記電気パルスの送達の振幅は、約0.1V/cmである、請求項2に記載の閾下パルス発生器。
- 前記可変電界は、約±30%である、請求項5,請求項6、または請求項7のいずれか1項に記載の閾下パルス発生器。
- 前記可変電界は、約±20%である、請求項5,請求項6、または請求項7のいずれか1項に記載の閾下パルス発生器。
- 前記可変電界は、約±10%である、請求項5,請求項6、または請求項7のいずれか1項に記載の閾下パルス発生器。
- 前記可変電界は、約±5%である、請求項5,請求項6、または請求項7のいずれか1項に記載の閾下パルス発生器。
- 前記電源装置からの前記電気パルスの前記刺激期間は、約20ミリ秒未満である、請求項2に記載の閾下パルス発生器。
- 前記電源装置からの前記電気パルスの前記刺激期間は、約10ミリ秒未満である、請求項2に記載の閾下パルス発生器。
- 前記電源装置からの前記電気パルスの前記刺激期間は、約5ミリ秒未満である、請求項2に記載の閾下パルス発生器。
- 前記電源装置からの前記電気パルスの前記刺激期間は、約1ミリ秒未満である、請求項2に記載の閾下パルス発生器。
- 前記電源装置からの前記電気パルスの前記刺激期間は、約3ミリ秒未満である、請求項2に記載の閾下パルス発生器。
- 前記刺激の周波数は、約10Hzである、請求項2に記載の閾下パルス発生器。
- 前記刺激の周波数は、約25Hzである、請求項2に記載の閾下パルス発生器。
- 前記刺激の周波数は、約40Hzである、請求項2に記載の閾下パルス発生器。
- 前記刺激の周波数は、約50Hzである、請求項2に記載の閾下パルス発生器。
- 前記刺激の周波数は、約70Hzである、請求項2に記載の閾下パルス発生器。
- 前記刺激の周波数は、約85Hzである、請求項2に記載の閾下パルス発生器。
- 前記刺激の周波数は、約100Hzである、請求項2に記載の閾下パルス発生器。
- 前記対象となる細胞または組織に前記閾下パルスの送達を行う複数の電極をさらに備える、請求項1に記載の閾下パルス発生器。
- 少なくとも1つの電極を、カテーテルに配置することができ、対象の器官に経管的に届けることができる、請求項18に記載の閾下パルス発生器。
- 前記電極が、前記対象となる細胞または組織と接触しているか、または、前記対象となる細胞または組織の近傍に位置する場合に、前記細胞または組織に刺激を供給する、請求項3に記載の閾下パルス発生器。
- 前記振幅および前記送達の継続期間は、血管新生を刺激するのに十分である、請求項2に記載の閾下パルス発生器。
- 前記送達される閾下パルスは、充電バランスが保たれている、請求項1に記載の閾下パルス発生器。
- 前記電源装置と電子的に通信するコンピュータ処理ユニットをさらに備え、該コンピュータは、該閾下パルス発生器に、所定の量の電流または電圧を、所定の送達期間にわたって、前記対象となる細胞または組織に送達させるようにプログラミング可能である、請求項1に記載の閾下パルス発生器。
- 前記電気パルス発生器は、体内に埋め込まれる、請求項1に記載の閾下パルス発生器。
- 前記電気パルス発生器は、体外に置かれる、請求項1に記載の閾下パルス発生器。
- 所定の時間帯にわたって、対象となる組織または細胞に電界を送達し、VEGF発現の産生を刺激する、請求項1に記載の閾下パルス発生器。
- 前記電気パルス発生器は、外部で制御される、請求項1に記載の閾下パルス発生器。
- 哺乳類の細胞または組織に作用可能に結合される閾下パルス発生器を備える治療送達システム。
- 前記閾下パルス発生器は、閾下刺激を供給する、請求項34に記載の治療送達システム。
- 複数の電極をさらに備え、前記閾下パルス発生器は、複数の電極から前記細胞または組織に刺激を供給する、請求項34に記載の治療送達システム。
- 前記電気パルス発生器は、電極が、前記対象となる細胞または組織と接触しているか、または、前記対象となる細胞または組織の近傍に位置する場合に、前記細胞または組織に刺激を提供する、請求項34に記載の治療送達システム。
- 刺激を受ける前記組織は、筋肉組織である、請求項34ないし37のいずれか1項に記載の治療送達システム。
- 刺激を受ける前記組織は、心筋組織である、請求項34ないし37のいずれか1項に記載の治療送達システム。
- 刺激を受ける前記組織は、骨格筋組織である、請求項34ないし37のいずれか1項に記載の治療送達システム。
- 刺激を受ける前記細胞は、平滑筋細胞である、請求項34ないし37のいずれか1項に記載の治療送達システム。
- 刺激を受ける前記細胞は、血管筋肉細胞である、請求項34ないし37のいずれか1項に記載の治療送達システム。
- 刺激を受ける前記細胞は、血管内皮細胞である、請求項34ないし37のいずれか1項に記載の治療送達システム。
- 前記電極は、単極電極構成、二極電極構成、および多極電極構成からなる群から選択されるように構成される、請求項37に記載の治療送達システム。
- 前記電気パルス発生器は、埋め込まれる、請求項34に記載の治療送達システム。
- 前記電気パルス発生器は、体外に置かれる、請求項34に記載の治療送達システム。
- 前記電気パルス発生器は、外部で制御される、請求項34に記載の治療送達システム。
- 前記閾下パルスの送達期間をオプションで再調整するか、または同期させる検知電極をさらに備える、請求項34に記載の治療送達システム。
- 所定の時間帯にわたって、対象となる細胞または組織に電界を送達し、VEGF発現の産生を刺激する、請求項34に記載の治療送達システム。
- 対象となる哺乳類の細胞または組織に作用可能に結合される閾下パルス発生器を患者に提供することを含む、患者を処置する方法。
- 血管新生を改善する緊急の閾下刺激治療のために前記組織に作用可能に結合される閾下パルス発生器を患者に提供することを含む、患者を処置する方法。
- 所定の時間帯にわたって、対象となる細胞または組織に、VEGF発現の産生を刺激するために、電界を送達することを含む、患者を処置する方法。
- 対象となる筋肉組織に閾下刺激パルスを提供することを含む、対象となる組織における血管新生を増加する方法。
- 閾下刺激パルスが、血管筋肉組織を標的とする、対象となる組織における血管新生を増加する方法。
- 閾下刺激パルスが、心筋組織を標的とする、対象となる組織における血管新生を増加する方法。
- 閾下刺激パルスが、骨格筋組織を標的とする、対象となる組織における血管新生を増加する方法。
- 閾下刺激治療のために筋肉組織に作用可能に結合される閾下パルス発生器を患者に提供することを含む、患者を処置する方法。
- 前記刺激を受ける組織は、筋肉組織である、請求項57に記載の患者を処置する方法。
- 前記刺激を受ける組織は、心筋組織である、請求項57に記載の患者を処置する方法。
- 前記刺激を受ける組織は、骨格筋組織である、請求項57に記載の患者を処置する方法。
- 前記刺激を受ける細胞は、筋肉細胞である、請求項57に記載の患者を処置する方法。
- 前記刺激を受ける細胞は、心筋細胞である、請求項57に記載の患者を処置する方法。
- 刺激を受ける細胞は、骨格筋細胞である、請求項57に記載の患者を処置する方法。
- 刺激を受ける細胞は、血管筋肉細胞である、請求項57に記載の患者を処置する方法。
- 刺激を受ける細胞は、血管内皮細胞である、請求項57に記載の患者を処置する方法。
- a.閾下電界により培養された細胞を刺激するステップと、
b.刺激された前記細胞を、対象となる生体組織に注入するステップと、
を含む、対象となる組織における血管新生を改善する方法。 - 注入された前記細胞を刺激することをさらに含む、請求項66に記載の対象となる組織における血管新生を改善する方法。
- a.対象となる生体組織に細胞を注入するステップと、
b.注入された前記細胞領域を閾下刺激により刺激するステップと、
を含む、対象となる組織における血管新生を改善する方法。
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