WO2007064010A1

WO2007064010A1 - アルツハイマー型認知症予防・治療剤

Info

Publication number: WO2007064010A1
Application number: PCT/JP2006/324172
Authority: WO
Inventors: Kiyoshi Hashizume
Original assignee: Mochida Pharmaceutical Co., Ltd.
Priority date: 2005-12-02
Filing date: 2006-12-04
Publication date: 2007-06-07
Also published as: CA2631343C; JPWO2007064010A1; EP1955698A1; EP1955698B1; US8461141B2; CA2631343A1; EP1955698A4; US20100273878A1; US20090286879A1; ES2443390T3; JP5043677B2

Abstract

　アルツハイマー型認知症に対して現在行われている治療法に代わりうる、あるいは、それらと併用することにより、高い治療効果が得られ、安全性に優れる、ω－３系多価不飽和脂肪酸と、甲状腺ホルモンとを組み合わせて使用することを特徴とするアルツハイマー型認知症予防・治療剤の提供。

Description

明細書

アルツハイマー型認知症予防 ·治療剤

技術分野

[0001] 本発明は新規なアルツハイマー型認知症の予防 ·治療剤、詳細には、 ω— 3系多価不飽和脂肪酸と、甲状腺ホルモンとを組み合わせて使用することを特徴とするアルッハイマー型認知症の予防'治療剤に関する。

背景技術

[0002] 高齢ィ匕社会の進行に伴、、認知症 (痴呆： dementia)の患者数は増加傾向にある。

認知症は、後天的に獲得した知能が脳の器質的障害によって持続的に低下した状態である。認知症は、その成因や病理組織学的観点から、いくつかに分類されるが、その代表的なものが、アルッノヽイマ一型認知症および脳血管性認知症である。この二つとこれらの混合型を合わせると、認知症全体の 8割から 9割を占めると考えられている。

[0003] アルツハイマー型認知症は、脳の萎縮を伴うものであり、現時点ではこの病気を根本的に治療できる薬剤は存在しない。唯一、アルツハイマー型認知症 (痴呆）の適応を有する医薬品として、塩酸ドネぺジル (商品名ァリセブト:エーザィ社製)が上巿されているが、その適応症は、「軽度及び中等度のアルッノヽイマ一型痴呆における痴呆症状の進行抑制」であり、根治的治療という観点力は、必ずしも十分なものではない。

[0004] ω— 3系多価不飽和脂肪酸の一つであるィコサペント酸 (別名エイコサペンタエン酸、以下 ΕΡΑと略す）は、魚油から抽出、精製された多価不飽和脂肪酸であり、血清脂質低下作用、血小板凝集抑制作用等を有することが知られている。本邦においては、そのェチルエステルが、閉塞性動脈硬化症治療剤および高脂血症治療剤として市販されてヽる。 ΕΡΑがアルッノ、イマ一型認知症の症状の進行を遅らせるとの報告がある（例えば、非特許文献 1参照)。当該文献においては、アルツハイマー型認知症の患者に 1日 900mgの ΕΡΑを 12力月間投与して症状観察 (評価対象 22例）した結果、「EPAの投与は AD患者に対して、 3〜6力月間認知機能を改善させたが、以降は自然経過とほぼ平行して認知機能が低下した。」と報告している（27頁、右カラム)。

[0005] しかしながら、 ω— 3系多価不飽和脂肪酸と、甲状腺ホルモンとの組み合わせが、アルッノヽイマ一型認知症に対して優れた効果を示すことにつ、ての開示、示唆はない。

[0006] 非特許文献 1 : Dementia Japan, 2001年，第 15卷， p. 21— 29

発明の開示

発明が解決しょうとする課題

[0007] そこで、本発明が解決すべき課題は、アルツハイマー型認知症に対して現在行われている治療法に代わりうる、あるいは、それらと併用することにより、高い治療効果が得られ、安全性に優れるアルツハイマー型認知症予防 '治療剤を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0008] 本発明者は、アルツハイマー型認知症の予防'治療剤について鋭意研究を行ったところ、 ω— 3系多価不飽和脂肪酸と、甲状腺ホルモンとの組み合わせによる使用が、アルツハイマー型認知症に対して高い治療効果を示すこと、また、安全性に優れることを見出し、本発明を完成した。

発明の効果

[0009] ω— 3系多価不飽和脂肪酸と、甲状腺ホルモンとを組み合わせて使用することを特徴とする本発明のアルッノ、イマ一型認知症予防 '治療剤は、アルツハイマー型認知症に対して著明な治療効果を示し、有害事象を示さないことから、有効性、安全性の高いアルツハイマー型認知症の予防'治療剤となる。

発明を実施するための最良の形態

[0010] 以下に本発明を詳細に説明する。

本発明の態様は、 ω— 3系多価不飽和脂肪酸と、甲状腺ホルモンとを組み合わせて使用することを特徴とするアルッノ、イマ一型認知症の予防'治療剤である。

本発明の別の態様は、 ω— 3系多価不飽和脂肪酸と、甲状腺ホルモンとを組み合わせて使用することを特徴とするアルツハイマー型認知症の予防 '治療効果を有する食品である。

多価不飽和脂肪酸は、分子内に複数の炭素炭素二重結合を有する脂肪酸と定義され、二重結合の位置により、 ω— 3系、 ω— 6系などに分類される。 ω— 3系の多価不飽和脂肪酸としては α リノレン酸、 ΕΡΑ、ドコサへキサェン酸 (以下、 DHAと略す)などが例示される。本発明で用いる ω— 3系多価不飽和脂肪酸は、合成品または天然品のいずれでもよぐこれらを含有する天然油の形態でもよい。合成品には、化学合成品の他、微生物などにより産生された多価不飽和脂肪酸を原料として、ェステル化、エステル交換等を施した半合成品も含まれる。ここで、天然品とは、多価不飽和脂肪酸を含有する天然油から公知の方法によって抽出されたもの、粗精製されたもの、あるいはそれらを更に高度に精製したものを意味する。また、 ω— 3系多価不飽和脂肪酸の塩、エステル、アミド、リン脂質、モノグリセリド、ジグリセリド、トリダリセリドなどの誘導体も本発明で用いる ω— 3系多価不飽和脂肪酸に含まれる。

本発明で用いる ω— 3系多価不飽和脂肪酸としては、 EPA、 DHAおよび α—リノレン酸力も選ばれる少なくとも 1種以上が好ましい。さらに好ましくは、 ω— 3系多価不飽和脂肪酸力 ¾PA、 DHAまたは両者の混合物であり、 ω— 3系多価不飽和脂肪酸力 Sィコサペント酸ェチル（以下、 ΕΡΑ— Εと略す）、ドコサへキサェン酸ェチル（以下、 DHA— Εと略す)または両者の混合物であるものがさらに好ましぐ ω— 3系多価不飽和脂肪酸力 ¾ΡΑ—Εであるものが最も好ましい。本邦においては、高純度 ΕΡΑ— Ε含有軟カプセル剤 (商品名エバデール：持田製薬社製)が閉塞性動脈硬化症 (AS O)および高脂血症治療薬として市販されているので、これを入手して使用することができる。また、 EPA—EとDHA—Eの混合物としては、例えば、ォマコール（Omacor ：ロスプロダクツ： EPA—E約 46質量⁰ /₀、 DHA—E約 38質量⁰ /₀含有する軟カプセル剤）が挙げられる。ォマコールは、高 TG血症治療薬として、アメリカ等で市販されているので、これを入手して使用することもできる。また、 ω— 3系多価不飽和脂肪酸が精製魚油であるもの、および、 ω— 3系多価不飽和脂肪酸がモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドから選ばれる 1種以上であるものも好ましい態様の一つである [0012] 本発明の組成物における ω— 3系多価不飽和脂肪酸の純度、すなわち、全脂肪酸中の ω—3系多価不飽和脂肪酸の含量は特に限定されないが、好ましくは 25質量 %以上、さらに好ましくは 50質量％以上、さらに好ましくは 70質量％以上、より好ましくは 85質量％以上、とりわけ好ましくは ω— 3系多価不飽和脂肪酸以外の他の脂肪酸成分を実質的に含まないものが使用できる。

[0013] ω— 3系多価不飽和脂肪酸は酸ィ匕され易いため、さらに、抗酸化剤たとえばブチレ一ト化ヒドロキシトルエン、ブレチ一ト化ヒドロキシァ-ソール、プロピルガレート、没食子酸、医薬として許容されうるキノンおよび α—トコフエロールを有効量含有させることが望ましい。

[0014] 本発明で用いる甲状腺ホルモンは、本発明の効果を奏する限りにおいては特に限定されないが、例えば、レポチロキシン、リオチロニンなどが挙げられ、好ましくはレポチロキシンナトリウム (商品名チラーヂン S :あす力製薬社製)である。なお、甲状腺ホルモンの代わりに、成長ホルモン (例えば、ソマトロピン、等）を用いても、ほぼ同様の効果が得られる。

[0015] 本発明のアルツハイマー型認知症の予防 '治療剤は、有効成分を化合物 (精製の際に不可避的に含まれる他の成分を含む場合もある）単独で投与するか、或いは一般的に用いられる適当な担体または媒体の類、例えば賦形剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、香味剤、必要に応じて滅菌水や植物油、更には無害性有機溶媒あるいは無害性溶解補助剤 (たとえばグリセリン、プロピレングリコール）、乳化剤、懸濁化剤 (例えばツイーン 80、アラビアゴム溶液)、等張化剤、 ρΗ調整剤、安定化剤、無痛化剤などと適宜選択組み合わせて適当な医薬用製剤に調製することができる。また、本発明のアルツハイマー型認知症の予防 '治療効果を有する食品は、アルツハイマー型認知症の予防'治療剤と同様に、有効成分をィ匕合物 (精製の際に不可避的に含まれる他の成分を含む場合もある）単独、或いは一般的に用いられる適当な担体または媒体の類等と組み合わせて、調製することができる。好ましい食品の例としては、サプリメント、栄養補助食品、特定機能食品、特定保健用食品、健康食品などが挙げられる。

[0016] 製剤の剤形としては、錠剤、カプセル剤、マイクロカプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、経口用液体製剤、坐剤、シロップ剤、吸入剤、軟膏、注射剤 (乳濁性、懸濁性、非水性）、あるいは用時乳濁または懸濁して用いる固形注射剤の形で、経口および静脈内あるいは動脈内、吸入、直腸内、膣内あるいは外用を問わず患者に投与される力とりわけカプセルたとえば、軟質カプセルやマイクロカプセルに封入しての経口投与が好ましい。また、注射剤 (乳濁性、懸濁性、非水性)、あるいは用時乳濁または懸濁して用いる固形注射剤での静脈内あるいは動脈内投与が好ま、。

[0017] 本発明のアルツハイマー型認知症の予防 ·治療剤における ω— 3系多価不飽和脂肪酸の投与量は対象となる作用を現すのに十分な量とされるが、その剤形、投与方法、 1日当たりの投与回数、症状の程度、体重、年齢等によって適宜増減することができる。ィコサペント酸ェチルを経口投与する場合は、 EPA—Eとして100〜9, 000 mgZ曰ゝ好ましくは 300〜6, OOOmg/曰ゝさらに好ましくは 300〜2, 700mg/曰を 2〜3回に分けて投与する力必要に応じて全量を 1回あるいは数回に分けて投与してちよい。

[0018] 本発明のアルッノヽイマ一型認知症の予防'治療剤における甲状腺ホルモンの投与量は対象となる作用を現すのに十分な量とされるが、その剤形、投与方法、 1日当たりの投与回数、症状の程度、体重、年齢等によって適宜増減することができる。レポチロキシンナトリウムを経口投与する場合は、レボチロキシンナトリウムとして 25〜20 0 gZ日を 1回投与するが、必要に応じて全量を数回に分けて投与してもよい。

[0019] EPA—Eとレボチロキシンナトリウムの一日用量の組み合わせは特に限定されない

(1) EPA— El, 800〜2, 700mg/曰とレボチロキシンナトリウム 25〜200 g Z日、（2) EPA— El, 800〜2, 700mgZ日とレボチロキシンナトリウム 25〜： LOO /z gZ曰、（3) EPA— E300〜600mgZ曰とレボチロキシンナトリウム 25〜200 μ gZ 日、（4) EPA— E300〜600mgZ日とレボチロキシンナトリウム 25〜： LOO gZ日の V、ずれかの組み合わせが好まし、。

[0020] ω— 3系多価不飽和脂肪酸と、甲状腺ホルモンとを組み合わせて使用することを特徴とする本発明のアルッノ、イマ一型認知症の予防'治療剤としては、 1)両者の併用、すなわち、 ω— 3系多価不飽和脂肪酸含有製剤と、甲状腺ホルモン含有製剤のそれぞれを、同時に、あるいは、別々に服用する場合、 2)両者の合剤、すなわち、 ω— 3系多価不飽和脂肪酸と甲状腺ホルモンとを配合して一製剤としたもの、および、 3) 両者のキット、すなわち、 ω— 3系多価不飽和脂肪酸含有製剤と甲状腺ホルモン含有製剤とを服用単位毎 (例えば 1回分、 1日分、等）にまとめてセットにしたもの、などが例示される。本発明のアルツハイマー型認知症の予防 '治療剤には、有効成分として ω— 3系多価不飽和脂肪酸および甲状腺ホルモンのみを使用することを特徴とするもの、すなわち、 ω— 3系多価不飽和脂肪酸と、甲状腺ホルモンとを組み合わせてなるアルツハイマー型認知症の予防 ·治療剤のほか、さらに他の有効成分を組み合わせて使用するアルツハイマー型認知症の予防 ·治療剤も含まれる。

[0021] 本発明のアルツハイマー型認知症の予防 '治療剤は、ドネぺジル (商品名ァリセプト:エーザイネ土製）に代表される、既存のアルツハイマー型認知症の治療薬と組み合わせて使用することが可能である。ドネぺジルと組み合わせることにより、ドネぺジル単独では効果が十分ではな!/、アルツハイマー型認知症の症状の改善や、ドネぺジルの用量の軽減が達成される。

[0022] 本発明の ω— 3系多価不飽和脂肪酸と、甲状腺ホルモンとを組み合わせて使用することを特徴とするアルツハイマー型認知症の予防 '治療剤には、 (1)高脂血症または ASOの治療のため、（2)抗動脈硬化作用を期待して、あるいは、（3)心血管ィべントゃ脳血管イベントの発症予防効果を期待して、 ω— 3系多価不飽和脂肪酸含有製剤を服用しているアルッノヽイマ一型認知症の患者、とりわけ、アルッノヽイマー型認知症に対する症状等の改善効果が十分ではない患者に対して、これに加えて新たに甲状腺ホルモンを服用する場合を包含する。同様に、甲状腺ホルモンを服用しているアルツハイマー型認知症の患者、とりわけ、アルッノヽイマ一型認知症に対する症状等の改善効果が十分ではない患者に対して、これに加えて新たに ω— 3系多価不飽和脂肪酸含有製剤、とりわけ ΕΡΑ—Ε含有製剤を服用する場合をも包含する。

[0023] 本発明の ω— 3系多価不飽和脂肪酸と、甲状腺ホルモンとを組み合わせて使用することを特徴とするアルッノヽイマ一型認知症の治療剤の対象となるアルッノヽイマ一型認知症の重症度については特に規定されない。 Reisbergらによると、長谷川式簡易知能評価スケール（30点満点： 20点以下で「認知症疑い」）において、重症度別の平均得点は、軽度痴呆で 19. 1点、中等度痴呆で 15. 4点、やや高度な痴呆で 10. 7点、高度痴呆で 4. 0との報告がある。

実施例

[0024] 以下に、本発明を詳細に説明するために実施例により効果を具体的に説明するが、本発明はこれらによってなんら限定されるものではない。

(実施例）

[対象および方法]

脳梗塞の既往がなぐまた甲状腺機能低下症など認知症の原疾患とされる疾患を伴わない、アルツハイマー型認知症と診断された患者 14例（男性 6名、女性 8名；年齢 50歳代〜 80歳代）について、ィコサペント酸ェチル (商品名ェパデール;持田製薬社製;表中 EPA— Eと略す） 1日 300〜600mgを 2力月間投与し、その後、ィコサペント酸ェチルに加え、レポチロキシンナトリウム（商品名チラーヂン S ;あす力製薬社製;表中 T4と略す） 1日 50〜： LOO /z gを 4力月間投与した。試験開始時、試験開始 2力月後 (ィコサベント酸ェチル投与開始力 2力月経過後）、および、試験開始 6力月後（ィコサペント酸ェチルとレポチロキシンナトリウムの併用投与開始力も 4力月経過後）の時点で、各患者について、長谷川式簡易知能評価スケールを用いて、認知症の改善度の評価を実施した。

[0025] [結果]

各症例毎の結果を表 1に示した。また、長谷川式簡易知能評価スケールの得点の平均値等を以下に示す参考例とまとめて、表 3に記載した。表 1に示したように、 6力月間経過後における症状変化について観察した結果、意欲亢進、元気回復、行動範囲拡大、頭脳清明などの改善が認められた。長谷川式簡易知能評価スケールにおいては、ほぼ全例に改善が認められた。試験開始時の長谷川式簡易知能評価スケールは、平均 10. 0であったが、治療終了時 (試験開始 6力月後）には、平均 16. 8 であった。やや高度〜高度な痴呆においても症状の改善が認められた。有害事象は全く認められなカゝつた。

[0026] [表 1] 表 1 ァルツ /、イマ一型認知症

[0027] (参考例）

[対象および方法]

脳梗塞の既往を有し、脳血管性認知症と診断された患者 10例 (男性 6名、女性 4名；年齢 50歳代〜 80歳代）について、ィコサペント酸ェチル (商品名ェパデール;持田製薬社製;表中 EPA— Eと略す） 1日 300〜600mgを 2力月間投与し、その後、ィコサペント酸ェチルに加え、レポチロキシンナトリウム（商品名チラーヂン S ;あす力製薬社製;表中 T4と略す） 1日 50〜： LOO /z gを 4力月間投与した。試験開始時、試験開始 2力月後 (ィコサベント酸ェチル投与開始力 2力月経過後）、および、試験開始 6力月後（ィコサペント酸ェチルとレポチロキシンナトリウムの併用投与開始力も 4力月経過後）の時点で、各患者について、長谷川式簡易知能評価スケールを用いて、認知症の改善度の評価を実施した。

[0028] [結果]

各症例毎の結果を表 2に示した。また、長谷川式簡易知能評価スケールの平均値等を実施例とまとめて、表 3に記載した。表 2に示したように、 6力月間経過後における長谷川式簡易知能評価スケールは、ほぼ全例で、改善傾向を認めたが著明ではなかった。症状変化について観察した結果、 1例（10%)に元気回復が認められた。なお、症状改善が認められた 1例は、同スケールの試験開始時の得点が最も高い症例であった。有害事象は全く認められなカゝつた。

[0029] [表 2]

表 2 脳血管性認知症

[0030] [表 3] 表 3 長谷川式簡易知能評価スケール平均 ±標準偏差（レンジ)

[0031] 表 3の実施例の結果から明らかなように、ィコサペント酸ェチル 300〜600mgZ日、単独、 2力月間投与では、アルツハイマー型認知症患者の長谷川式簡易知能評価スケールの得点にほとんど変化は認められな力つた力その後 4力月間、レポチロキシンナトリウム 50〜： LOO/z gZ日を併用することにより、アルッノヽイマ一型認知症患者の同スケールの得点に著明な改善が認められた。一方、表 3の参考例の結果から明らかなように、脳血管性認知症を対象とした試験においては、ィコサペント酸ェチル 3 00〜600mgZ日とレボチロキシンナトリウム 50〜 100 gZ日との併用による同スケールの得点の改善はわずかであった。

[0032] 以上の結果から、 ω— 3系多価不飽和脂肪酸と甲状腺ホルモンとの組み合わせ、とりわけ、 ΕΡΑ—Εとレボチロキシンナトリウムとの組み合わせ力アルツハイマー型認知症に対する著明な治療効果を示し、有害事象を示さないことから、有効性、安全性の高いアルツハイマー型認知症の予防 '治療剤となりうると判断された。また、 ΕΡΑ — Εを現適応、すなわち、高脂血症または閉塞性動脈硬化症 (ASO)に用いる場合の一日用量は 1800〜2700mgであることから、レボチロキシンナトリウムを組み合わせることにより、常用量よりも少量にて EPA—Eが効果を示すことも確認された。いつぼう、レボチロキシンナトリウムについても、現適応での常用量 (維持量）は 100〜40 O/z gZ日であることから、 EPA—Eと組み合わせることにより、常用下限量あるいはそれ以下で効果を示すことも確認された。

Claims

請求の範囲

[1] ω— 3系多価不飽和脂肪酸と、甲状腺ホルモンとを組み合わせて使用することを特徴とするアルツハイマー型認知症の予防 ·治療剤。

[2] ω - 3系多価不飽和脂肪酸力ィコサペント酸、ドコサへキサェン酸、または、ィコサベント酸とドコサへキサェン酸との混合物である請求項 1に記載の予防 ·治療剤。

[3] ω - 3系多価不飽和脂肪酸力ィコサペント酸ェチル、ドコサへキサェン酸ェチル、または、ィコサペント酸ェチルとドコサへキサェン酸ェチルとの混合物である請求項 1 または 2のいずれかに記載の予防'治療剤。

[4] ω - 3系多価不飽和脂肪酸力ィコサペント酸ェチルである請求項 1な、し 3の、ずれかに記載の予防'治療剤。

[5] 甲状腺ホルモンがレボチロキシンである請求項 1ないし 4のいずれかに記載の予防

'治療剤。