WO2006120743A1

WO2006120743A1 - 加熱処理を施した樹脂成形品及びその加熱処理装置

Info

Publication number: WO2006120743A1
Application number: PCT/JP2005/008683
Authority: WO
Inventors: Kunihiro Kakihara; Yoshinori Noda
Original assignee: Kakihara Kogyo Co., Ltd
Priority date: 2005-05-12
Filing date: 2005-05-12
Publication date: 2006-11-16
Also published as: JP4047905B2; CN1972985B; US20070096349A1; JPWO2006120743A1; CN1972985A

Abstract

　樹脂成形品に簡単な工程を付加することで、樹脂成形品の表層薄膜の剥離等による樹脂成形品の表面樹脂の不具合現象を抑制する。樹脂成形品Ｗのパーティングライン部分Ｗ１又は樹脂表層薄膜剥離が予想される特定箇所を部分的に高温加熱処理する樹脂成形品の加熱処理装置であって、樹脂成形品Ｗの被加熱部分の外形線に沿った形状になる加熱部２と、樹脂成形品Ｗを着脱自在に固定する固定治具４と、から成り、加熱部２に、樹脂成形品Ｗの被加熱部分を接近させながら高温加熱処理するように構成した加熱処理装置である。

Description

明細書

加熱処理を施した樹脂成形品及びその加熱処理装置

技術分野

[0001] 本発明は、榭脂成形品の製造技術に係り、特に榭脂成形品で発生する成形素材表面薄膜の剥離現象を防止することができる加熱処理を施した榭脂成形品及びその加熱処理装置に関するものである。

背景技術

[0002] 従来力市場で多用されている榭脂成形品に関する災害が増加している。例えば、図 9に示すように、合成樹脂製の取っ手 51では金型成形の際にその接合部にパートライン 52が形成される。このパートライン 52で手指を切ると、う致傷事故が発生している。特に、この榭脂成形品に榭脂めっきした所謂めつき榭脂成形品には多くの致傷事故が発生している。

[0003] また、水道の蛇口や浴室のシャワー部品などの水洗金具代用製品や自動車のラジエタ一グリル、ドア開閉ハンドル、内装装飾部品などの自動車部品のように人が直接手で取り扱うことが多い榭脂成形品又はめつき榭脂成形品に関する災害が発生している。このような榭脂成形品では、榭脂めっきを施しためっき膜が浮き上がることにより、その鋭利状態になった部分で手を切るといった致傷事故が発生している。例えば、この榭脂成形品における薄膜層間剥離は、図 10に示すように、 PP榭脂などの成形時に層状構造を作りやすヽ榭脂、あるいは 2種類以上の榭脂材料を混合した特性強化材料であるポリマーァロイと称される榭脂成形品に生じることがある。これは PCZ ABS (ポリカーボネイト 'ABS)榭脂又は ABS榭脂等の榭脂めっき製品で、後述するようなサーマルショック試験ゃサーマルサイクル試験を行ったときに確認された。また、榭脂成形品の成形条件的には、射出速度が速いときゃ榭脂からの低沸点留分のガス発生が多い場合に多く発生する傾向にある。なお、製品形状や金型構造によつても発生状態が異なる。

[0004] 図 11から図 13は、榭脂成形品の榭脂表面の透過型電子顕微鏡 (TEM)による写真である。本発明の発明者は、図示するような強烈なサーマルショック試験を行った時に榭脂間剥離が起きた製品と同じ条件で成形した榭脂成形品について、その榭脂表面の透過型電子顕微鏡 (TEM)写真による変形状態を確認した。

図 11は榭脂成形品の成形キヤビ面 (成形品の正面)の状態を示す写真である。ここに円形状にあらわれるもの、又は黒点状にあらわれるものが榭脂中のゴム成分である。この榭脂成形品のキヤビ面の樹脂表面はゴム成分が円形状に均一に分散しており、榭脂表面の成形応力は少ない。

図 12は榭脂成形品の成形パート部 (成形品の中央付近)の状態を示す写真である。この状態の榭脂成形品は、図 11に示したキヤビ面に比較して、榭脂表層のゴム成分は、笹の葉のように引き延ばされ、層状になっている。断面下部のゴム成分にも変形が見られ、成形応力の残留がある。

図 13は榭脂成形品の成形パート部 (成形品の先端)の状態を示す写真である。この状態では、榭脂表層部のゴム成分は、図 11に示した、成形パート部より更に変形している。更に、断面下部のゴム成分は、図 12に示した成形パート部より少なぐ分散もまばらである。

[0005] このようなパート部分への成形応力の集中力、榭脂成形品における熱履歴過多状況での樹脂表層薄膜層間剥離の要因であると推測される。このように、榭脂成形品にかかる熱履歴によって榭脂の薄膜が層間剥離する現象である。即ち、この榭脂成形品における層間剥離の原因は、榭脂成形品の製造工程では回避できない榭脂成形品や原料榭脂そのものに起因する。

[0006] 榭脂成形品の高温'低温及びその繰り返しなどの特定の環境下に榭脂成形品が曝された場合に発生する、榭脂成形品の表層榭脂薄膜の剥離が原因であることが多い。このように、榭脂成形品に生じる表面上の不具合を解消する技術が種々提案されている。榭脂成形品の製造段階で生じる表面上の不具合を解消するために、榭脂成形品の表面に生じたバリを処理する方法が提案されている。例えば、特許文献 1の特開 2002— 240050公報「バリ処理方法およびバリ処理装置」のように、榭脂で成形された成形品の榭脂表面に生じたバリを処理する方法であって、榭脂表面に対して平行な加圧面を有する治具を備え、治具を加熱して、加圧面を所定温度にする加熱ェ程と、所定温度の前記加圧面を、バリに接触させた状態力榭脂表面に向けて加圧する加圧工程とを備えるバリ処理方法が提案されて!ヽる。

特許文献 1：特開 2002— 240050公報

[0007] このノリ処理方法では、ノリは熱変形して榭脂表面に固着されることとなるので、バリの切りカスを生じさせることなくバリの成形品からの脱落を未然に防止できる。また、加圧面は榭脂表面に平行な形状であるため、バリは榭脂表面上にて薄肉に拡がるように変形することとなる。よって、ノリを無視できる程度の薄肉にすることができ、バリが成形品の機能の障害となってしまうことを最小限にできる。

発明の開示

発明が解決しょうとする課題

[0008] しかし、このバリ処理方法で処理した榭脂成形品では、実際に手にふれてみると、若干の凹凸面が残るために手に違和感があると!/、う問題を有して!/、た。

特に、榭脂めっき処理するときに、めっき処理面に微細な凹凸が生じやすぐめっき面の剥がれの原因になり易!ヽと!、う問題を有して!/ヽた。

また、榭脂成形品の表面樹脂の剥離現象については、このバリ処理方法では、改善することが不可能であった。

[0009] 本発明は、カゝかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、榭脂成形品に簡単な処理工程を付加することで、榭脂成形品の表層薄膜の剥離等による榭脂成形品の表面樹脂の不具合現象を抑制することができる加熱処理を施した榭脂成形品及びその加熱処理装置を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0010] 本発明の榭脂成形品によれば、金型により成形した榭脂成形品 (W)について、該榭脂成形品 (W)を部分的に高温加熱処理した、ことを特徴とする加熱処理を施した榭脂成形品が提供される。

前記榭脂成形品 (W)は榭脂めつきに供される成形品である。前記榭脂成形品 (W) は、そのパーテイングライン部分 (W1)を高温加熱処理したものである。前記榭脂成形品 (W)は、その榭脂表層薄膜剥離が予想される特定の部分を高温加熱処理したものである。前記榭脂成形品 (W)は、その榭脂表面におけるゴム粒子が略円形状を保つように高温加熱処理することが好ま Uヽ。

前記榭脂成形品 (W)は、その榭脂表面におけるゴム粒子の縦方向と横方向のサイズ比が 2： 3以内の円形状を保つように高温加熱処理することが好まヽ。

射出成形機により成形した榭脂成形品 (W)につヽては、該榭脂成形品 (W)を部分的に高温加熱処理した。

[0011] また、本発明の加熱処理装置によれば、榭脂成形品 (W)のパーテイングライン部分 (W1)又は榭脂表層薄膜剥離が予想される特定箇所を部分的に高温加熱処理する榭脂成形品の加熱処理装置（1)であって、前記榭脂成形品 (W)の被加熱部分の外形線に沿った形状になる加熱部（2)と、前記榭脂成形品 (W)を着脱自在に固定する固定治具 (4)と、から成り、前記加熱部（2)に、前記榭脂成形品 (W)の被加熱部分を接近させながら高温加熱処理するように構成した、ことを特徴とする榭脂成形品の加熱処理装置が提供される。

[0012] 前記固定治具 (4)は、回転板 (3)の数箇所に取り付けられ、該回転板 (3)の周縁から榭脂成形品 (W)の被加熱部分が突出し、該被加熱部分が前記加熱部（2)における加熱処理空間（S)を通過するように構成した。

前記榭脂成形品 (W)の被加熱部分以外が加熱されな!ヽように、前記加熱部（2)を挟むように、前記榭脂成形品 (W)の被加熱部分の外形線に沿った形状になる開口部（7)を開けた遮熱板 (8)を配置した。

また、前記固定治具 (4)は、ベルト部材の側縁に数箇所に取り付けられ、このベルト部材から榭脂成形品 (W)の被加熱部分が突出し、該被加熱部分が前記加熱部（2 )における加熱処理空間（S)を通過するように構成したものでもよ!/ヽ。

前記加熱部（2)は、前記榭脂成形品 (W)の外形線と相似形で、二周り程大きな形状に成るように曲折したパイプに多数の細孔を開け、各細孔から熱風を噴射してカロ熱するように構成したものである。

前記加熱部（2)は、前記榭脂成形品 (W)の外形線と相似形で、二周り程大きな形状に成る部材を電磁誘導加熱方式で加熱するように構成することができる。

前記加熱部（2)は、前記榭脂成形品 (W)の外形線と相似形で、二周り程大きな形状に成る部材を高周波加熱方式で加熱するように構成することができる。

発明の効果

[0013] 上記構成の榭脂成形品 (W)では、榭脂成形品 (W)を部分的に加熱処理することにより、榭脂成形品 (W)中の残留応力を緩和することができる。榭脂成形品 (W)の表層薄膜の浮き上がりを防止することができる。特に、榭脂成形品 (W)における凹凸や変形が生じやすい部分を加熱することなぐその榭脂成形品 (W)について短時間で加熱処理することができる。その榭脂成形品 (W)を 120°C以上の高温でも瞬間的に加熱処理することができるので、応力残留を部分的に確実に緩和することができる

[0014] また、上記構成の加熱処理装置（1)では、榭脂成形品 (W)における凹凸や変形が生じやすい部分を加熱することなぐその榭脂成形品 (W)について短時間で加熱処理することができる。その榭脂成形品 (W)を 120°C以上の高温でも瞬間的に加熱処理することができるので、応力残留を部分的に確実に緩和することができる。

図面の簡単な説明

[0015] [図 1]本発明の榭脂成形品の加熱処理装置の加熱部の拡大側断面図である。

[図 2]加熱部の拡大側面図である。

[図 3]本発明の榭脂成形品の加熱処理装置の全体平面図である。

[図 4]本発明の榭脂成形品の加熱処理装置の加熱部の拡大側面図である。

[図 5]榭脂成形品の各部分に力かった温度を熱電対温度計で実測した結果を示すものであり、（a)は榭脂成形品の各部分を示す説明図、（b)は 1回目の実測結果の表、

(c)は 2回目の実測結果の表である。

[図 6]めっき処理及びサーマルショック試験比較の実験結果を示すものであり、加熱処理なしの榭脂成形品の実験結果を示す表と、加熱処理後の榭脂成形品の状態の実験結果を示す表である。

[図 7]榭脂成形品のパート部 (榭脂成形品の中央付近)の状態を示す写真である。

[図 8]榭脂成形品のパート部 (榭脂成形品の先端)の状態を示す写真である。

[図 9]従来の金型成形の際にその接合部にパートラインが形成された合成樹脂製の取っ手等の榭脂成形品を示す正面図である。 [図 10]榭脂めっき製品のパート部分から「薄膜層間剥離」が発生した状態の成形品の表面の拡大写真である。

[図 11]榭脂成形品の成形キヤビ面 (榭脂成形品の正面)の状態を示す写真である。

[図 12]榭脂成形品の成形パート部 (榭脂成形品の中央付近)の状態を示す写真である。

[図 13]榭脂成形品の成形パート部 (榭脂成形品の先端)の状態を示す写真である。符号の説明

[0016] 1 加熱処理装置

2 加熱部

4 固定治具

3 回転板

7 開口部

8 遮熱板

W 榭脂成形品

W1 パーテイングライン部分

S 加熱処理空間

発明を実施するための最良の形態

[0017] 以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して説明する。

図 1は本発明の榭脂成形品の加熱処理装置の加熱部の拡大側断面図である。図 2 は加熱部の拡大側面図である。図 3は本発明の榭脂成形品の加熱処理装置の全体平面図である。図 4は本発明の榭脂成形品の加熱処理装置の加熱部の拡大側面図である。

本発明の加熱処理を施した榭脂成形品は、金型成形又は射出成形した榭脂成形品 Wのパーテイングライン部分 W1ゃ榭脂表層薄膜剥離が予想される特定の部分を高温加熱処理したものである。

[0018] 本発明の榭脂成形品 Wの素材としては、 ABS榭脂、 PCZABS榭脂（ポリカーボネイト ZABS榭脂）、 PCZPET榭脂（ポリカーボネイト Zポリエチレンテレフタレート榭脂）、 PCZPBT榭脂 (ポリカーボネイト Zポリブチレンテレフタレート樹脂）、 PC榭脂、 PA榭脂 (ポリアミド榭脂）、 POM榭脂 (ポリオキシメチレン榭脂）、 PPE榭脂 (ポリフェ-レンエーテル榭脂）、 LCP榭脂 (液晶ポリマー榭脂）、 PPS榭脂（ポリフエ-レンサルフイド樹脂）、 PS榭脂 (ポリスチレン榭脂）、 SPS榭脂 (シンジォタックポリスチレン榭脂)など榭脂めっき部品製造に使われる全ての素材が可能であり、限定はしない。榭脂材料によって適正な熱処理温度はことなる。なお、上記の背景技術で説明したように 2種類以上の異なる榭脂からなり、榭脂成形品 Wの表面にゴム状又は油脂状の物質が表出しやすい性質の榭脂成形品 Wには本発明が適している。

[0019] 次に、図 1から図 4に基づいて榭脂成形品の加熱処理装置について説明する。

本発明の榭脂成形品 Wの加熱処理装置 1は、榭脂成形品 Wを部分的に高温加熱処理するために、加熱処理装置 1の加熱部 2における加熱処理空間 S、即ち図 1の斜線で示す領域内に、榭脂成形品 Wのパーテイングライン部分 Wl、又は榭脂表層薄膜剥離が予想される特定の部分を通過させて高温加熱処理するようになって!/、る。なお、図 1に示す榭脂成形品 Wは自動車のドアハンドルであり、人が握る部分（図示上は左側の略半分)を集中的に加熱し、それ以外は加熱部 2が近づかないようになつている。これは本発明の榭脂成形品 Wは、その残留応力を緩和することを目的としているが、その榭脂成形品 Wにおける凹凸や変形が生じやすい部分については熱処理が及ばな、ようにするためである。

[0020] 図 3の平面図に示すように、回転板 3に榭脂成形品 Wの固定治具 4を数箇所設け、これに榭脂成形品 Wの一部分で固定するようになっている。図示例の固定治具 4は、ドアハンドルのように軸着孔 W2があるものは、これに揷通させる固定ピン 5と、このドアハンドルのように軸着孔 W2部分を抑えるストッパ 6と力も成る。なお、この固定治具 4の構成は、榭脂成形品 Wの形状や大きさに応じて変形することは勿論である。

[0021] このように複数の榭脂成形品 Wを固定した回転板 3を、加熱処理装置 1の加熱部 2 における加熱処理空間 S内を通過させながら加熱処理するようになっている。加熱処理した樹脂成形品 Wは固定治具 4力取り外し（図 2に示す回転板 3の左側）、未処理の榭脂成形品 Wと交換する（図 2に示す回転板 3の下側)。この作業を繰り返すようになっている。

[0022] 上述した加熱部 2は、図 1と図 2に示すように、榭脂成形品 Wの外形線と相似形で、二周り程大きな形状に成るパイプに多数の細孔を開け、各細孔から熱風を榭脂成形品 Wに向けて噴射させて加熱するように構成したものである。図 1の図示例の加熱部 2の形状は、ドアハンドルのグリップ部分を加熱処理し得るような加熱処理空間 Sを形成し、軸着孔 W2部分は加熱しない形状になっている。なお、この加熱部 2の形状は、榭脂成形品 Wの形状に応じて決定されることは勿論である。

[0023] 但し、加熱部 2は、榭脂成形品 Wの外形に沿って均等に加熱することができるものであれば、その加熱手段は、このような熱風加熱方法に限定されず、蒸気加熱、ヒーター加熱、高周波加熱、火炎加熱、電磁誘導加熱又は高周波加熱等を用いることができる。榭脂成形品 Wを加熱処理できる全ての方法で、特に限定しない。

[0024] 例えば、加熱部 2は、榭脂成形品 Wの外形線と相似形で、二周り程大きな形状に成る部材を、電磁誘導加熱方式又は高周波加熱方式で加熱するように構成することができる（図示していない）。

[0025] 図 4の拡大側面図に示すように、榭脂成形品 Wの被加熱部分以外が加熱されな、ように、加熱部 2を両側力挟むように、榭脂成形品 Wの被加熱部分の外形線に沿つた形状になる開口部 7を開けた遮熱板 8を配置している。この遮熱板 8により、榭脂成形品 Wにおける凹凸や変形が生じやす、部分を加熱しな!、。

[0026] このように、本発明の加熱処理装置 1では、部分的に短時間に処理できる。製品に凹凸や変形が生じる部分を熱処理せず避けることができる。瞬間的に加熱するので 1 20°C以上の高温でも処理することができるで、応力残留を部分的に確実に緩和することができる。榭脂成形品 Wの応力が残留している部分だけを処理できる。

[0027] 榭脂成形品 Wの加熱処理温度は、上述したような榭脂素材によって異なるが、概ね榭脂の熱変形温度力榭脂成形温度の範囲内であることが望ましい。例えば、 AB S榭脂製の榭脂成形品 Wの場合は、その表面温度が 80〜150°Cになる加熱温度範囲内での加熱処理装置 1による加熱処理が有効であった。また、 PCZABS榭脂製の榭脂成形品 Wの場合は、その表面温度が 100〜200°Cになる範囲での加熱処理装置 1による加熱処理が効果的であった。但し、榭脂成形品 Wのグレードや成形条件によっては 200°C以上に加熱することも可能である。

[0028] 榭脂成形品 Wの加熱処理時間は、 1秒から 30分以内が適当であるが、榭脂成形品 wとして製品化できな、ほど熱変形する程度の処理時間でなければ、その時間は限定されない。この加熱処理時間は、加熱処理装置 1の回転板 3の回転速度で調節する。

[0029] この榭脂成形品 Wの加熱処理時間は、加熱処理装置 1の加熱部 2の熱量と加熱される榭脂成形品 Wの被加熱容量に応じて決定される。例えば、高温で小さい榭脂成形品 Wを加熱処理するときは短時間でよぐ逆に低温で大きな榭脂成形品 Wを加熱処理するときは長時間の加熱処理が必要になる。

[0030] 本発明の加熱処理装置 1では、榭脂成形品 Wを部分的に加熱処理することにより、榭脂成形品 W中の残留応力を緩和すると共に、榭脂成形品 Wの表層薄膜の浮き上力 Sりを防止することができる。そこで、この加熱処理した榭脂成形品 Wに榭脂めつき処理を施す。例えば、榭脂成形品 Wをエッチング処理、還元処理といった前処理し、この榭脂成形品 Wについて触媒処理した後、化学めつき処理をする。次に、電気めつき処理、仕上処理をして榭脂めっきを終了する。そこで、このように、榭脂めっきした榭脂成形品 Wはそのめつき被膜に膨れや剥離現象の不具合を回避することができる。

[0031] (実験例 1 1)

次に、本発明の加熱処理した榭脂成形品の実験例を示す。

加熱処理の実験方法としては、ガストーチを使って、直炎で榭脂成形品 Wのパート外周部分を榭脂が溶けな、ように、榭脂成形品力も十分離して焙る方法を用いた。

[0032] (実験例 1 2)

180〜220°Cの熱風を先端径 5mmのノズルから吹き出し、榭脂成形品のパート部分から約 10〜5mm離して吹き付けた。パート部分外周約 30cmを 20〜40秒で加熱処理した。ノズルの握りを作業台に固定し、作業用 NCロボットに榭脂成形品を取り付けてノズルから 10mm離した位置を維持しながら 20〜40秒の作業プログラムで自動加熱処理した。

[0033] (実験例 1 3)

約 7mmの銅製パイプを製品のパート形状に合わせて曲げ加工し、榭脂成形品のパート部分に向力つて 5mm間隔で 1. 5mm径の穴をあけた熱風吹き出し力卩工機を作り、榭脂成形品を固定し約 10〜20秒間熱風を吹き出させ熱処理した。榭脂成形品の各部分表面に掛かった温度を熱電対温度計で実測した結果を示す。

[0034] 図 5は榭脂成形品の各部分に力かった温度を熱電対温度計で実測した結果を示すものであり、（a)は榭脂成形品の各部分を示す説明図、（b)は 1回目の実測結果の表、（c)は 2回目の実測結果の表である。

[0035] (実験例 1 4)

実験 1 3の熱風ノズルと同じ形状で、電熱ヒーターを作り、自動で榭脂成形品がヒ一ターの中を通過させ、パート部分が一度に加熱処理出来る装置を試作した。ヒータ一温度およびヒーター内を榭脂成形品が通過する時間 (加熱処理時間）は可変できる。今回の実験では 20秒間ヒーター内で停止させた。

[0036] 図 6はめつき処理及びサーマルショック試験比較の実験結果を示すものであり、カロ熱処理なしの榭脂成形品の実験結果を示す表と、加熱処理後の榭脂成形品の状態の実験結果を示す表である。

上記の榭脂成形品を通常のめっき処理を行！ヽ、未処理の榭脂成形品と処理した榭脂成形品とについて、規定のサーマルショック条件で不具合の発生を比較した。処理条件や処理方法によって、多少耐サーマルショック性は異なる力いずれもパート部の加熱処理榭脂成形品によって 200サイクルのサーマルショック試験をクリアし、明らかに未処理品の榭脂成形品との差異が確認された。

[0037] 図 6の実験結果の表力も明らかなように、榭脂成形品で榭脂層間剥離が発生しやすいパート部およびエッジ部を部分的に高温で短時間部分的に熱処理することで、これらの位置に残留する榭脂表層のゴム成分の変形や応力を緩和することで、榭脂成形品に発生する過激な熱履歴による樹脂の表層薄膜層間剥離防止することができた。本発明の加熱処理装置 1により加熱処理した榭脂成形品は、その耐サーマルショック試験性は著しく向上する。そこで、このような榭脂成形品に榭脂めっきをすることにより、自動車に装着した榭脂めっき部品で上記の原因で榭脂薄膜が層間剥離し、同時にめつき膜が浮き上がる不良と、運転者および同乗者が浮き上がっためっき部の割れ面に触れて手を切るなどの重大な災害を抑制できる。

[0038] 図 7と図 8は本発明の加熱処理した榭脂成形品のパート部の部分加熱の効果を示す榭脂表面の透過型電子顕微鏡 (TEM)による写真である。

図 7は榭脂成形品のパート部 (榭脂成形品の中央付近)の状態を示す写真である。榭脂成形品 Wのパート部分の部分熱処理によって、榭脂表層の笹のようなゴムの配向は無くなった。本発明では榭脂成形品 Wについて高温加熱処理することにより、その榭脂表面におけるゴム粒子が略円形状を保つようになつている。例えば、その榭脂表面におけるゴム粒子の縦方向と横方向のサイズ比が 2 : 3以内の円形状を保つように高温加熱処理することが好ま、。これは背景技術における図 11から図 13に示した榭脂成形品の加熱処理前の状態と比較するとその状態変化が明確に現れている。断面下部のゴム分の変形も改善されている。即ち、パート部分の成形応力の残留が部分熱処理によって緩和されて、ることを示して、る。このように透過型電子顕微鏡 (TEM)により、榭脂成形品 Wにおけるゴム粒子の変形緩和効果について測定するこが可能であることを意味して、る。

[0039] 図 8は榭脂成形品のパート部 (榭脂成形品の先端)の状態を示す写真である。

同様に榭脂表層のゴム成分の変形は改善されて、る。この榭脂成形品 Wのパート部分の部分熱処理により、パート部分に力かっていた成形応力は緩和され、ゴム成分の変形も改善されることが確認された。なお、断面下部のゴム成分の分散のバラッキは改善できない。これは、本発明の榭脂成形品 Wが有する榭脂特有の物性を改変することなぐ榭脂めっき処理後の膨れ等の不具合を回避するために、榭脂成形品の表面側のみ又は部分的な加熱処理が施されていることを意味する。

[0040] 加熱処理装置 1の構成、特に回転板 3の構造は、図 3に示したものに限定されない。例えば、ベルト部材（図示していない）の側縁の数箇所に、前述したような固定治具を取り付け、このベルト部材力榭脂成形品 Wの被加熱部分を突出させ、加熱処理装置 1の加熱部 2における加熱処理空間 Sを通過するように構成することができる。

[0041] このベルト部材を用いた構成にも、加熱部 2に、榭脂成形品 Wの被加熱部分以外が加熱されないように、加熱部 2を両側力挟むように、榭脂成形品 Wの被加熱部分の外形線に沿った形状の開口部 7を開けた遮熱板 8を配置し、この開口部 7からベルト部材が榭脂成形品 Wと共に通過するように構成する。

[0042] なお、本発明は上述した発明の実施の形態に限定されず、榭脂成形後の榭脂成形品 wに簡単な工程を付加することで、榭脂成形品 Wの表層薄膜の浮き上がりによる不具合現象を抑制することができる加熱処理装置 1であれば、上述した構成に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。産業上の利用可能性

本発明の加熱処理を施した榭脂成形品及びその加熱処理装置は、ドア開閉ハンドル又は水洗金具代用製品に利用することができる。更に、ノソコン等の電子機器、ゲーム機、健康器具、印刷機等の人が直接手で取り扱うことが多い榭脂めっき製品の処理に利用することができる。

Claims

請求の範囲

[1] 金型により成形した榭脂成形品 (W)につ、て、該榭脂成形品 (W)を部分的に高温加熱処理した、ことを特徴とする加熱処理を施した榭脂成形品。

[2] 前記榭脂成形品 (W)は榭脂めつきに供される成形品である、ことを特徴とする請求項 1の加熱処理を施した榭脂成形品。

[3] 前記榭脂成形品 (W)のパーテイングライン部分 (W1)を高温加熱処理した、ことを特徴とする請求項 1又は 2の加熱処理を施した榭脂成形品。

[4] 前記榭脂成形品 (W)の榭脂表層薄膜剥離が予想される特定の部分を高温加熱処理する、ことを特徴とする請求項 1又は 2の加熱処理を施した榭脂成形品。

[5] 前記榭脂成形品 (W)は、その榭脂表面におけるゴム粒子が略円形状を保つように高温加熱処理した、ことを特徴とする請求項 1、 2、 3又は 4の加熱処理を施した榭脂成形品。

[6] 前記榭脂成形品 (W)は、その榭脂表面におけるゴム粒子の縦方向と横方向のサイズ比が 2 : 3以内の円形状を保つように高温加熱処理した、ことを特徴とする加請求項

1、 2、 3又は 4の加熱処理を施した榭脂成形品。

[7] 射出成形機により成形した榭脂成形品 (W)につヽて、該榭脂成形品 (W)を部分的に高温加熱処理した、ことを特徴とする請求項 1、 2、 3又は 4の加熱処理を施した榭脂成形品。

[8] 榭脂成形品 (W)のパーテイングライン部分 (W1)又は榭脂表層薄膜剥離が予想される特定箇所を部分的に高温加熱処理する榭脂成形品の加熱処理装置（1)であって前記榭脂成形品 (W)の被加熱部分の外形線に沿った形状になる加熱部（2)と、前記榭脂成形品 (W)を着脱自在に固定する固定治具 (4)と、力成り、前記加熱部（2)に、前記榭脂成形品 (W)の被加熱部分を接近させながら高温カロ熱処理するように構成した、ことを特徴とする榭脂成形品の加熱処理装置。

[9] 前記固定治具 (4)は、回転板 (3)の数箇所に取り付けられ、該回転板 (3)の周縁カゝら榭脂成形品 (W)の被加熱部分が突出し、該被加熱部分が前記加熱部（2)における加熱処理空間（S)を通過するように構成した、ことを特徴とする請求項 8の榭脂成形品の加熱処理装置。

[10] 前記榭脂成形品 (W)の被加熱部分以外が加熱されな!ヽように、前記加熱部（2)を挟むように、前記榭脂成形品 (W)の被加熱部分の外形線に沿った形状になる開口部（ 7)を開けた遮熱板 (8)を配置した、ことを特徴とする請求項 8又は 9の榭脂成形品の加熱処理装置。

[11] 前記固定治具 (4)は、ベルト部材の側縁に数箇所に取り付けられ、このベルト部材から榭脂成形品 (W)の被加熱部分が突出し、該被加熱部分が前記加熱部（2)における加熱処理空間（S)を通過するように構成した、ことを特徴とする請求項 8の榭脂成形品の加熱処理装置。

[12] 前記加熱部（2)は、前記榭脂成形品 (W)の外形線と相似形で、二周り程大きな形状に成るように曲折したパイプに多数の細孔を開け、各細孔力熱風を噴射して加熱するように構成したものである、ことを特徴とする請求項 8の榭脂成形品の加熱処理装置。

[13] 前記加熱部（2)は、前記榭脂成形品 (W)の外形線と相似形で、二周り程大きな形状に成る部材を電磁誘導加熱方式で加熱するように構成したものである、ことを特徴とする請求項 8の榭脂成形品の加熱処理装置。

[14] 前記加熱部（2)は、前記榭脂成形品 (W)の外形線と相似形で、二周り程大きな形状に成る部材を高周波加熱方式で加熱するように構成したものである、ことを特徴とする請求項 8の榭脂成形品の加熱処理装置。