明 細 書
遅発性神経細胞死を防御または救済するための薬剤および方法 技術分野
[0001] 本発明は、血流障害による虚血および虚血後の再灌流によって生じる神経細胞の 遅発性細胞死を防御または救済する方法、ならびに当該遅発性細胞死を防御また は救済することによって当該細胞死に起因する脳血管疾患を治療するための薬剤に 関するものである。さらに本発明は、上記細胞死を評価する方法、および遅発性神 経細胞死を防御または救済する因子をスクリーニングする方法に関するものである。 背景技術
[0002] 脳血管疾患は、日本国内の死因の上位に位置している。多くの脳梗塞および心筋 梗塞による脳血流遮断 (脳虚血)が神経細胞死を生じることはよく知られている(例え ば、非特許文献 1および非特許文献 2を参照のこと)。脳の虚血性障害および虚血 · 再灌流傷害 (すなわち、虚血後の再灌流によって生じる障害)または低酸素性障害 および低酸素,再酸素化障害 (すなわち、低酸素化後の再酸素化によって生じる障 害)によって引き起こされる神経細胞死は、患者の予後を大きく左右する。しかし、現 状では、脳梗塞等を引き起こす虚血 ·再灌流による神経細胞死を抑制するために適 用されている方法のほとんどが、急性期の対処療法 (例えば、高気圧酸素療法、ゥロ キナーゼによる血栓溶解療法、およびエダラボンによるラジカル消去法など)であり、 脳虚血時に早急に治療するための治療方法および Zまたは治療薬が必要とされて いる(例えば、非特許文献 3および非特許文献 4を参照のこと)。これまで、この虚血' 再灌流によって生じる神経細胞死を防御および Zまたは抑制するための薬剤を開発 するために多くの努力がなされてきたが、未だ決定的なものを得るには至って!/、な!/ヽ
[0003] 脳の虚血 ·再灌流の後に迅速には生じな!/、が数日後に生じる細胞死、 、わゆる遅 発性神経細胞死の存在が知られて!/ヽる (非特許文献 5および非特許文献 6を参照の こと)。本発明者らは、核酸およびプロタミンを主成分とする魚類白子抽出物が、虚血 により引き起こされる遅発性の神経細胞死に対して抑制効果があることを見出してい
る(特許文献 1を参照のこと)。この遅発性神経細胞死は、その発生が遅いことから救 済可能な細胞死であると考えられて 、る。この遅発性細胞死はアポトーシスの現象を 含むことが知られている(非特許文献 7を参照のこと)。培養細胞においてミトコンドリ ァ仲介性刺激物質(Staurosporin: STS)、デスレセプター仲介性刺激物質 (Tumo r Necrosis Factor— a :TNF α )、または Fasリガンドによって誘導される、非虚 血刺激によるアポトーシス性細胞容積減少(Apoptotic Volume Decrease :AV D)には、 Cl_チャネルおよび K+チャネルの働きによる KC1流出が関与することが明 らかになつている(非特許文献 8を参照のこと)。本発明者らは、培養細胞において本 発明に用いたカルボン酸もしくはスチルベン誘導体の容積感受性の C1—チャネルの 機能をブロックする薬剤を培養上清に直接投与することによって上記したアポトーシ ス誘導剤によるアポトーシスを防ぐ方法を発明し、脳虚血性疾患、心虚血性疾患、神 経変性疾患およびうつ血性心不全に起因する細胞死に対する可能性を言及してい る(例えば、特許文献 2を参照のこと)。しかし、特許文献 2記載の発明によって個体 における虚血性刺激による遅発性神経細胞死が防御可能であるかどうかは誰にも実 証することができず、単なる予測に過ぎない。また、ラット心臓の異所性移植時に生じ る神経細胞アポトーシス性細胞死においても、 C1—チャネルブロッカー(心摘出前お よび移植直後に投与)が抑制的に作用することが報告されている (非特許文献 9を参 照のこと)。しかし、容積感受性 C1—チャネルの抑制を目的とした方法を用いて個体に おける脳虚血 '再灌流性の遅発性神経細胞死を防御または救済する方法の開発は 、未だ全く行われていない。
容積感受性 C1—チャネルの機能にタンパク質チロシンキナーゼ(protein tyrosin e kinase : PTK)が関与することはよく知られている(例えば、非特許文献 10を参照 のこと)。また、 ΡΤΚを阻害することによって脳循環を改善し、その結果として神経細 胞死が抑えられることは知られており(非特許文献 11を参照のこと)、脳虚血時に ΡΤ Κが活性ィ匕されることも知られている(非特許文献 12を参照のこと)。しかし、海馬の 神経細胞が容積感受性 C1—チャネルを有すること、これら海馬の容積感受性 C1—チヤ ネルに対し ΡΤΚが抑制的に働くことは、全く知られていない。すなわち、 ΡΤΚが海馬 の容積感受性 C1—チャネルを制御することに基づく神経細胞死に対する防御作用は
、全く知られていない。すなわち、容積感受性 C1—チャネルの機能制御に着目した上 での、 PTK阻害剤を標的とした、虚血'再灌流性の遅発性神経細胞死を防御または 救済する方法の開発は、未だ行われていない。
〔特許文献 1〕
特開 2004— 196701公報(平成 16年 7月 15日公開)
〔特許文献 2〕
特開 2002— 3402公報(平成 14年 1月 9日公開)
〔非特許文献 1〕
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〔非特許文献 2〕
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〔非特許文献 4〕
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〔非特許文献 5〕
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〔非特許文献 6〕
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〔非特許文献 7〕
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上述したように、遅発性神経細胞死は、虚血 ·再灌流の数日後に生じる細胞死であ る。このような遅発性神経細胞死の防御または救済に効果的な薬剤は、全く巿場ィ匕 されて!/、な!/、。遅発性神経細胞死が関与するアポトーシス様神経細胞死に対する力
スパーゼ経路の阻害に基づくアポトーシスの阻害を目的とした薬剤の開発は行われ ている可能性があるが、細胞死の経路が複雑かつ多様であるために、未だ臨床応用 には至って!/、な 、。一方、悪性腫瘍 (すなわち癌)の転移阻害を目的とした PTK阻害 剤の開発は行われているが、脳虚血性神経細胞死に対する薬物の開発は全く行わ れていない。
[0007] 本発明は、細胞死シグナルにより活性ィ匕される C厂チャネルの活性制御に着目し、 C厂チャネルブロッカーおよび C1—チャネルを制御し得ると考えられる PTK阻害剤を
、静脈内投与によって虚血 ·再灌流による神経細胞の遅発性細胞死を防御および Z または救済する全く新 ヽ方法を提供すること、ならびに遅発性神経性細胞死抑制 剤および当該細胞死抑制剤を含む遅発性細胞死に起因する疾患の治療薬剤を提 供することを目的とする。
発明の開示
[0008] 本発明に係る薬剤は、脳虚血後の再灌流条件下における神経細胞死を防御また は救済するために、 C厂チャネルブロッカーまたは PTK阻害剤を含むことを特徴とし ている。
[0009] 本発明に係る薬剤において、上記神経細胞死は個体における遅発性神経細胞死 であることが好ましい。
[0010] 本発明に係る薬剤において、上記神経細胞死は核内 DNAの断片化を伴うことが 好ましい。
[0011] 本発明に係る薬剤において、上記神経細胞死は、チトクローム cのミトコンドリアから の放出の顕著な低下を伴うことが好ま 、。
[0012] 本発明に係る薬剤は、脳虚血時および虚血後の再灌流時に生じる脳血流量低下 の改善を伴うことが好まし 、。
[0013] 本発明に係る薬剤において、上記 C1—チャネルブロッカーは、 4, 4' -diisothiocy anostilbene- 2, 2,一 disulf onic acid (DIDS)であることが好ましい。
[0014] 本発明に係る薬剤にお!、て、上記 PTK阻害剤は、 genisteinであることが好ま ヽ
[0015] 本発明に係る薬剤において、上記神経細胞死が、脳梗塞もしくは心筋梗塞の際、
または心移植術もしくは脳血管吻合術の際に生じる脳虚血時もしくは脳虚血後の再 灌流時に生じることが好ま 、。
[0016] 本発明に係る神経細胞死を防御または救済するための方法は、 C1—チャネルブロッ カーまたは PTK阻害剤を虚血後の再灌流条件下における神経細胞に投与するェ 程を包含することを特徴として 、る。
[0017] 本発明に係る方法において、上記神経細胞死は遅発性神経細胞死であることが好 ましい。
[0018] 本発明に係る方法において、上記神経細胞死は核内 DNAの断片化を伴うことが 好ましい。
[0019] 本発明に係る方法において、上記神経細胞死は、細胞死を引き起こすチトクローム cのミトコンドリア力もの放出の活性の顕著な低下を伴うことが好ましい。
[0020] 本発明に係る方法において、上記 C1—チャネルブロッカーは、 4, 4' -diisothiocy anostilbene- 2, 2,一 disulf onic acid (DIDS)であることが好ましい。
[0021] 本発明に係る方法にお!、て、上記 PTK阻害剤は、 genisteinであることが好まし!/ヽ
[0022] 本発明に係る方法において、上記神経細胞死が、脳梗塞もしくは心筋梗塞の際、 または心移植術もしくは脳血管吻合術の際に生じる脳虚血時もしくは脳虚血後の再 灌流時に生じることが好ま 、。
[0023] 本発明に係る個体を用いた虚血後の再灌流条件下における神経細胞死の評価方 法は、 C1—チャネルブロッカーまたはタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を用いた場 合の細胞死を測定する工程;および上記測定によって得た測定値を、 C1—チャネル ブロッカーまたはタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を用いな 、場合の細胞死を測 定して得た基準値と比較する工程を包含することを特徴としている。
[0024] 本発明に係る神経細胞死の評価方法は、上記神経細胞死が脳虚血性の遅発性神 経細胞死であることが好まし 、。
[0025] 本発明に係る神経細胞死の評価方法は、脳梗塞もしくは心筋梗塞の際、または心 移植術もしくは脳血管吻合術の際に生じる脳虚血時もしくは脳虚血後の再灌流時に おける神経細胞の生存率を評価することが好ましい。
[0026] 本発明に係る神経細胞死の評価方法は、上記細胞死を測定する工程力 ミトコンド リア脱水素酵素の活性を指標に行なうことが好ましい。
[0027] 本発明に係る神経細胞死の評価方法は、上記細胞死を測定する工程が、核内 DN
Aの断片化を指標に行なうことが好ましい。
[0028] 本発明に係る神経細胞死の評価方法は、脳血流量の変化を測定する工程をさらに 包含することが好ましい。
[0029] 本発明に係る神経細胞死の評価方法は、マウスの両総頸動脈を一過性に遮断し た後にその再開通を行なう工程をさらに包含することが好ましい。
[0030] 本発明に係るスクリーニング方法は、神経細胞の遅発性細胞死を防御または救済 する因子をインビトロでスクリーニングするために、
培養するための細胞を調製する工程;
グルコースを含まない培地中にて当該細胞を低酸素条件下または無酸素条件下 で培養する低酸素処理工程;
グルコースを含む培地中にて有酸素条件下で当該虚血処理に供した細胞を培養 する再酸素処理工程;および
細胞死を測定する工程
を包含し、
当該低酸素処理工程時もしくは当該再酸素処理工程時またはこれらの前後に候 補因子を培地中に添加して測定した細胞死を、当該候補因子を添加することなく測 定した細胞死と比較する工程
をさらに包含することを特徴として 、る。
[0031] 本発明に係るスクリーニング方法において、上記細胞死を測定する工程は、ミトコン ドリア脱水素酵素の活性、核内 DNAの断片ィ匕、カスパーゼ活性、ミトコンドリア力も細 胞質へのチトクローム cの放出、または核の形態変化を指標とすることが好ましい。
[0032] 本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十 分わ力るであろう。また、本発明の利益は、添付図面を参照した次の説明で明白にな るであろう。
図面の簡単な説明
[図 1]一過性のマウス両総頸動脈閉塞前脳虚血モデルによる実験スケジュールを示 す概略図である。
[図 2]マウス海馬初代培養神経細胞における容積感受性 C1—電流を示すグラフであ る。 Aは、ホールセルパッチクランプ下でマウス海馬初代培養神経細胞に低浸透圧 負荷をかけた場合に徐々に活性化される電流が観察される様子を示す図である。 B は、 Aで観察された電流の特性を示す図である。 Cは、 Aで観察された電流が外向き 整流性であることを示すグラフである。 Dは、海馬神経細胞の活性ィ匕が容積感受性 C 厂チャネルの阻害剤 DIDSによって抑制されることを示すグラフである。 Eは、海馬神 経細胞の活性ィ匕が容積感受性 C1—チャネルの阻害剤 genisteinによって抑制される ことを示すグラフである。
[図 3]Aは、脳虚血 '再灌流 4日目の海馬 CA1領域をトルイジンブルー染色によって 形態染色して比較した写真である。 Bは、虚血 15分前および再灌流後に DIDS (0. 48mg/kg)を投与した場合の、脳虚血'再灌流 4日目の海馬 CA1領域をトルィジン ブルー染色によって形態染色して比較した写真である。 ま、虚血 15分前および再 灌流後に DIDS (12mgZkg)を投与した場合の、脳虚血'再灌流 4日目の海馬 CA1 領域をトルイジンブルー染色によって形態染色して比較した写真である。 Dは、虚血 15分前および再灌流後に DIDS (60mg/kg)を投与した場合の、脳虚血 '再灌流 4 日目の海馬 CA1領域をトルイジンブルー染色によって形態染色して比較した写真で ある。 Eは、虚血 15分前および再灌流後に Genistein(0. 24mgZkg)を投与した場 合の、脳虚血 '再灌流 4日目の海馬 CA1領域をトルィジンブルー染色によって形態 染色して比較した写真である。 Fは、虚血 15分前および再灌流後に Genistein (6. 0 mg/kg)を投与した場合の、脳虚血 '再灌流 4日目の海馬 CA1領域をトルイジンブ ルー染色によって形態染色して比較した写真である。 Gは、虚血 15分前および再灌 流後に Genistein(30mg/kg)を投与した場合の、脳虚血 '再灌流 4日目の海馬 C A1領域をトルィジンブルー染色によって形態染色して比較した写真である。 Hは、虚 血 15分前および再灌流後に Daidzein(6. OmgZkg)を投与した場合の、脳虚血 · 再灌流 4日目の海馬 CA1領域をトルイジンブルー染色によって形態染色して比較し た写真である。
[図 4]図 3に示した脳虚血 ·再灌流 4日目の海馬 CA1領域における残存正常神経細 胞数を比較したグラフである。
[図 5]Aは、脳虚血 '再灌流 4日目の海馬 CA1領域を Fluoro— JadeB (FJB)染色に よって染色した写真である。 Bは、虚血 15分前および再灌流後に DIDS (0. 48mg/ kg)を投与した場合の、脳虚血 ·再灌流 4日目の海馬 CA1領域を Fluoro -JadeB (F JB)染色によって染色した写真である。 Cは、虚血 15分前および再灌流後に DIDS ( 12mg/kg)を投与した場合の、脳虚血'再灌流 4日目の海馬 CA1領域を Fluoro— JadeB (FJB)染色によって染色した写真である。 Dは、虚血 15分前および再灌流後 に DIDS (60mg/kg)を投与した場合の、脳虚血'再灌流 4日目の海馬 CA1領域を Fluoro— JadeB (FJB)染色によって染色した写真である。 Eは、虚血 15分前および 再灌流後に Genistein(0. 24mgZkg)を投与した場合の、脳虚血 ·再灌流 4日目の 海馬 CA1領域を Fluoro— JadeB (FJB)染色によって染色した写真である。 Fは、虚 血 15分前および再灌流後に Genistein (6. OmgZkg)を投与した場合の、脳虚血' 再灌流 4日目の海馬 CA1領域を Fluoro -JadeB (FJB)染色によって染色した写真 である。 Gは、虚血 15分前および再灌流後に Genistein (30mgZkg)を投与した場 合の、脳虚血 '再灌流 4日目の海馬 CA1領域を Fluoro—JadeB (FJB)染色によって 染色した写真である。 Hは、虚血 15分前および再灌流後に Daidzein (6. Omg/kg )を投与した場合の、脳虚血 ·再灌流 4日目の海馬 CA1領域を Fluoro -JadeB (FJB )染色によって染色した写真である。
[図 6]図 5に示した脳虚血 ·再灌流 4日目の海馬 CA1領域における FJB陽性細胞数を 比較したグラフである。
[図 7]脳虚血 ·再灌流後の海馬領域の細胞質画分におけるチトクローム cのィムノブ口 ッティングの結果を示す写真である。
[図 8]脳虚血 ·再灌流時における中大脳動脈領域の大脳皮質における局所脳血流量 の比較したグラフである。
発明を実施するための最良の形態
遅発性の神経細胞死を防御または救済するために効果的な薬剤は、開発されてい ない。本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行なった。具体的には、本
発明者らは、マウス海馬初代培養神経細胞を用いて、
(1)マウス海馬初代培養神経細胞に容積感受性 C1—チャネルが存在するか;
(2)もし存在するならばマウス海馬初代培養神経細胞の容積感受性 C1—チャネルは 上述の C1—チャネルブロッカーや PTK阻害剤により抑制されるか
について検討を行なった。さらに、一過性のマウス脳虚血モデルを用いて、
(3)マウス脳虚血 ·再灌流性遅発性神経細胞死が C1—チャネルブロッカーを投与する ことによって抑制することができるかどうか;
(4)マウス脳虚血 ·再灌流性遅発性神経細胞死 PTK阻害剤を投与することによって も抑制することができるかどうか、
(5)マウス脳虚血 ·再灌流性遅発性神経細胞死の誘導の際に生じるアポトーシスを 抑制できるかどうか、
(6)脳虚血 ·再灌流中の脳循環血流量を改善できるかどうか
について検討を行なった。
[0035] その結果、本発明者らは、マウスの海馬領域の神経細胞に容積感受性 C1—チヤネ ルが存在することを初めて明らかにした。さらに本発明者らは、 C厂チャネルブロッ力 一を投与するか、または PTK阻害剤を用いることによって、当該容積感受性 C1—チヤ ネルを阻害することができることを明らかにした。
[0036] さらに本発明者らは、これらの知見に基づいて、マウスの両総頸動脈を一過性に遮 断した後にその再開通を行なうと 、う脳虚血 ·再灌流モデルを用い、遅発性神経細 胞死を、生存細胞および Zまたは変性神経細胞の形態組織学的観察、細胞質にお けるチトクローム cの増力!]、あるいは局所脳血流量の測定によって評価した。
[0037] その結果、本発明者らは、脳梗塞もしくは心筋梗塞の際、または心移植術もしくは 脳血管吻合術の脳虚血時もしくは脳虚血後の再灌流時に生じる遅発性神経細胞死 に対する治療薬剤および Zまたは防御薬剤を見出すとともに、当該薬剤の効果を判 定する方法を確立した。
[0038] 本発明を用いれば、脳虚血 ·再灌流によってもたらされる遅発性神経細胞死を、静 脈内に C1—チャネルブロッカーまたは PTK阻害剤を繰り返し投与したりすることによつ て抑制することができる。この救済メカニズムは、アポトーシス性細胞容積減少 (AVD
)をもたらす容積感受性 Cl_チャネルの活性ィ匕を抑制することによって達成されるもの と考えられる。このように、本発明は、遅発性神経細胞死の初期反応である容積感受 性 C1—チャネル活性ィ匕およびその活性ィ匕シグナルを標的とした、虚血 ·再灌流性の 神経細胞傷害に対する新規防御方法を提供する。
[0039] 本明細書中で使用される場合、「神経細胞」は、生体内における神経細胞であって も、神経細胞由来の市販の培養細胞であっても、生体力も取り出した脳由来の初代 培養神経細胞であってもよ 、。
[0040] 本明細書中で使用される場合、用語「虚血'再灌流実験系」は、培養細胞を用いる インビトロ系またはマウスを用いるインビボ系にお 、て、培養細胞またはマウスを虚血
(または酸素除去およびグルコース除去)処理した後に再灌流 (または再酸素化およ びグルコース再投与)処理することを可能にした実験系が意図される。また、本明細 書中で使用される場合、用語「虚血 ·再灌流」は、虚血後に行った再灌流が意図され る。
[0041] (1)神経細胞死を防御または救済するための薬剤および方法
本発明は、神経細胞死を抑制するための薬剤、および当該薬剤を用いて神経細胞 死を抑制する方法を提供する。神経細胞死は脳内の各所で起こり、種々の疾患の原 因となり、特に、遅発性神経細胞死は、その発生が遅いことから救済可能な細胞死で あると考えられているため、このような細胞死を抑制する手段を開発することができれ ば、当該細胞死が原因で生じる種々の疾患に対する有効な治療薬剤または予防薬 剤を得ることができ、非常に有益であるといえる。
[0042] 本発明に係る薬剤は、 C1—チャネルブロッカーまたはタンパク質チロシンキナーゼ( PTK)阻害剤を含むことを特徴とする。一実施形態において、 C1—チャネルブロッ力 一 ίま、 4, 4 — diisothiocyanostilbene— 2, 2'— disulfonic acid (DIDS) 好 しい。他の実施形態において、 PTK阻害剤は、 genisteinであることが好ましい。
[0043] 好ま 、実施形態にぉ 、て、本発明に係る薬剤は、虚血または虚血後の再灌流に よって生じる神経細胞死、特に、遅発性神経細胞死を抑制(すなわち、防御または救 済)するために使用され得る。虚血または虚血後の再灌流によって生じる神経細胞 死としては、脳梗塞もしくは心筋梗塞の際、または心移植術もしくは脳血管吻合術の
際に生じる脳虚血時もしくは脳虚血後の再灌流時に生じる神経細胞死などが挙げら れる。
[0044] 上述したように、遅発性神経細胞死の誘導にはアポトーシスが関与することが知ら れている。本明細書中で使用される場合、用語「アポトーシス」は、「アポトーシスによ る細胞死」または「アポトーシス性細胞死」と交換可能に使用される。
[0045] 本実施形態に係る薬剤は、虚血または虚血後の再灌流によって生じる神経細胞の アポトーシスを抑制するために使用されることが好ましい。より好ましくは、本実施形 態に係る薬剤は、神経細胞において虚血中に生じる異常によって誘発されるアポト 一シスを抑制するために使用され得る。虚血中に生じる異常としては、細胞腫脹、組 織浮腫および組織破壊が挙げられるがこれらに限定されない。
[0046] 本明細書中で使用される場合、用語「虚血」は、局所性の乏血が意図される。虚血 が生じると、その周辺組織は、虚血の持続時間、虚血に対する組織の感受性、また はその部位での血管吻合の有無に応じて、種々の変化(例えば、アポトーシスまたは ネクローシス (壊死))を生じる。本明細書中で使用される場合、用語「虚血傷害」は、 虚血に起因して組織において生じる異常が誘発する傷害が意図される。通常、虚血 によって組織では種々の異常が生じる力 虚血傷害としては、神経細胞死およびァ ポトーシス性細胞容積減少 (AVD)が挙げられ、虚血後の再灌流によって生じる傷 害もまた虚血傷害に含まれる。本発明に係る薬剤の処置標的となる疾患 (障害)は、 上記虚血障害のうち 1種であっても、複数が併発したものであっても、さらに別の疾患 と合併したものであってもよ 、。
[0047] アポトーシス性の細胞死を評価する場合、核内 DNAの断片化またはミトコンドリア 力ものチトクローム cの細胞質への放出の顕著な増加を指標にすることができる。この ような現象が観察される場合、細胞の死滅率が高 ヽと判断できる。
[0048] なお、本明細書を読んだ当業者は、 C1—チャネルブロッカーまたはタンパク質チロ シンキナーゼ (PTK)阻害剤が、虚血または虚血後の再灌流によって生じる細胞死 に対してのみ有効であるのではなぐ他の原因によるアポトーシス性の細胞死にも有 効であることを、容易に理解する。
[0049] 本発明はさらに、アポトーシスに起因する疾患を予防するための薬剤を提供する。「
アポトーシスに起因する疾患」としては、脳梗塞、心筋梗塞、血管性痴呆、ァルツハイ マー病などの神経変性疾患、慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患、老人性脱毛症 などが挙げられるがこれらに限定されない。
[0050] 本発明に係る薬剤は、哺乳動物 (ヒト、マウス、ラット、ゥサギ、ィヌ、ネコ、ゥシ、ゥマ
、ブタ、およびサルなど)に対して適用することができる。
[0051] 本発明に係る薬剤は、 C1—チャネルブロッカーまたはタンパク質チロシンキナーゼ(
PTK)阻害剤をそのまま用いてもよいが、薬学的に受容可能なキャリアを含んでもよ い。本発明に係る薬剤は、医薬組成物の製造法として公知の手段に従って製造する ことができる。
[0052] 一実施形態にお!ヽて、本発明に係る薬剤は、医薬組成物であり得る。医薬組成物 中に使用される薬学的に受容可能なキャリアは、医薬組成物の投与形態および剤型 に応じて選択することができる。
[0053] 本明細書中で使用される場合、薬理学的に受容可能なキャリアとしては、製剤素材 として使用可能な各種有機または無機のキャリア物質が用いられ、固形製剤におけ る賦形剤、滑沢剤、結合剤、または崩壊剤、あるいは、液状製剤における溶剤、溶解 補助剤、懸濁剤、等張化剤、緩衝剤、または無痛化剤などとして配合される。
[0054] 賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、 D-マン-トール、キシリトール、ソルビトール 、エリスリトール、デンプン、結晶セルロースなどが挙げられ、滑沢剤としては、例えば 、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカなどが挙 げられる。
[0055] 結合剤としては、例えば、 α化デンプン、メチルセルロース、結晶セルロース、白糖 、 D-マンニトール、トレノヽロース、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキ シプロピルメチルセルロース、ポリビュルピロリドンなどが挙げられる。
[0056] 崩壊剤としては、例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、低置換度ヒドロ キシプロピノレセノレロース、カノレボキシメチノレセノレロースカノレシゥム、クロスカノレメロース ナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウムなどが挙げられる。
[0057] 溶剤としては、例えば、注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール 、ゴマ油、トウモロコシ油、トリカプリリンなどが挙げられる。
[0058] 溶解補助剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、 D-マ ン-トール、トレハロース、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスァミノメタン、コレステ ロール、トリエタノールァミン、炭酸ナトリウム、クェン酸ナトリウムなどが挙げられる。
[0059] 懸濁剤としては、例えば、ステアリルトリエタノールァミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラ ゥリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコ-ゥム、塩化べンゼトニゥム、モ ノステアリン酸グリセリンなどの界面活性剤、あるいは、ポリビニルアルコール、ポリビ ニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシ メチノレセノレロース、ヒドロキシェチノレセノレロース、ヒドロキシプロピノレセノレロースなどの 親水性高分子が挙げられる。
[0060] 等張化剤としては、例えば、塩ィ匕ナトリウム、グリセリン、 D-マン-トールなどが挙げ られる。
[0061] 緩衝剤としては、例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クェン酸塩などの緩衝液など が挙げられる。
[0062] 無痛化剤としては、例えば、ベンジルアルコールなどが挙げられる。
[0063] 防腐剤としては、例えば、ノ ラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベン ジルアルコール、フエネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸などが挙げられる
[0064] 抗酸化剤としては、例えば、亜硫酸塩、ァスコルビン酸などが挙げられる。
[0065] 本実施形態に係る医薬組成物は、製剤技術分野において慣用的な方法に従って 製造することができる。本実施形態に係る医薬組成物における C1—チャネルブロッ力 一またはタンパク質チロシンキナーゼ (PTK)阻害剤の含有量は、投与形態、投与方 法などを考慮し、当該医薬組成物を用いて後述の投与量範囲で C1—チャネルブロッ カーまたはタンパク質チロシンキナーゼ (PTK)阻害剤を投与できるような量であれば 特に限定されない。
[0066] 本実施形態に係る医薬組成物の剤形としては、例えば、錠剤、カプセル剤(ソフト力 プセル、マイクロカプセルを含む)、散剤、顆粒剤、シロップ剤などの経口剤、あるい は、注射剤、坐剤、ペレット、点滴剤などの非経口剤が挙げられる。用語「非経口」は 、本明細書中で使用される場合、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下、および関
節内の注射および注入を含む投与の様式をいう。
[0067] 本実施形態に係る医薬組成物の投与量は、投与対象、投与経路、症状などによつ ても異なるが、当業者は、これら投与対象、投与経路、症状などに応じて、最適な条 件を適宜設定することができる。
[0068] 本実施形態に係る医薬組成物は、製剤形態に応じた適当な投与経路で投与でき る。投与方法も特に限定はなぐ内用、外用および注射によって適用することができ る。注射剤は、例えば静脈内、筋肉内、皮下、皮内等に投与することができる。
[0069] 本実施形態に係る医薬組成物の投与量は、その製剤形態、投与方法、使用目的 および当該医薬の投与対象である患者の年齢、体重、症状によって適宜設定され一 定ではない。一般には、製剤中に含有される有効成分の投与量で、好ましくは成人 1 日当り 5〜400 /ζ 8Ζΐ¾である。もちろん投与量は、種々の条件によって変動するの で、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、あるいは範囲を超えて必要な場 合もある。投与は、所望の投与量範囲内において、 1日内において単回で、または数 回に分けて行ってもよい。また、本実施形態に係る医薬組成物はそのまま経口投与 するほか、任意の飲食品に添加して日常的に摂取させることもできる。
[0070] このように、本発明に係る薬剤は、少なくとも、 C1—チャネルブロッカーまたはタンパ ク質チ口シンキナーゼ (ΡΤΚ)阻害剤を含めばよいといえる。すなわち、複数の C厂チ ャネルブロッカーまたはタンパク質チロシンキナーゼ (ΡΤΚ)阻害剤を含有する薬剤 もまた、本発明の技術的範囲に含まれる点に留意すべきである。
[0071] 本発明に係る薬剤を投与することによって、アポトーシス性の細胞死を抑制すること ができる。また、本発明に係る薬剤を投与することによって、心移植術もしくは脳血管 吻合術の際に生じる脳虚血時もしくは脳虚血後の再灌流時における神経細胞を保 護することができる。さらに、本発明に係る薬剤を投与することによって、アポトーシス に起因する疾患を処置することができる。
[0072] (2)虚血および虚血後の再灌流によって生じる細胞死の評価方法
本発明は、虚血後の再灌流条件下における神経細胞死の評価方法を提供する。 本発明に係る虚血後の再灌流条件下における神経細胞死の評価方法は、 C1—チヤ ネルブロッカーまたはタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を用いた場合の細胞死を
測定する工程;および上記測定によって得た測定値を、 C1—チャネルブロッカーまた はタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を用いな 、場合の細胞死を測定して得た基準 値と比較する工程を包含することを特徴としている。一実施形態において、本発明に 係る神経細胞死の評価方法は、上記神経細胞死が遅発性神経細胞死であることが 好ましい。好ましくは、本実施形態に係る神経細胞死の評価方法は、脳梗塞もしくは 心筋梗塞の際、または心移植術もしくは脳血管吻合術の脳虚血時もしくは脳虚血後 の再灌流時における神経細胞の生存率を評価する。
[0073] 本発明に係る神経細胞死の評価方法は、上記細胞死を測定する工程力 ミトコンド リア脱水素酵素の活性を指標に行なうことが好ましいが、核内 DNAの断片化を指標 に行ってもよい。本発明に係る神経細胞死の評価方法は、脳血流量の変化を測定 する工程をさらに包含することが好ま 、。
[0074] 1つの局面において、本発明は、インビト口での培養細胞を用いる系において虚血 および虚血後の再灌流によって生じる細胞死を評価するための方法を提供する。
[0075] 虚血 ·再灌流傷害 (すなわち、虚血後の再灌流によって生じる障害)を誘導するた めには、低酸素'再酸素化傷害 (すなわち、低酸素化後の再酸素化によって生じる 障害)を誘導してもよ 、。培養細胞を用いて低酸素条件または無酸素条件を提供す るには、培養細胞をダルコースを含まな!/、緩衝液 (培地)中にて当該細胞を低酸素又 は無酸素条件下で培養すればよい。この工程において使用する緩衝液は、ダルコ一 スを含まな ヽ緩衝液であれば特に限定されな ヽ。再酸素条件を適用するためには、 グルコースを含む培地中にて有酸素条件下で当該低酸素処理 (無酸素処理)に供し た細胞を培養すればよい。
[0076] また、低酸素条件下または無酸素条件下での細胞培養について、本明細書中で 使用される場合、用語「無酸素条件下」は、酸素濃度が 1%以下の雰囲気下であるこ とが意図され、酸素がほとんど〜全く含まれていないこと(0.01%以下)が好ましい。 従って、当業者は、本明細書中に記載される「無酸素条件下」が、炭酸ガス、窒素ガ ス、アルゴンガス下にて行なう細胞培養であり、例えば、 95%アルゴンガス + 5%炭 酸ガスの条件下もまた無酸素条件下であることを容易に理解する。なお、細胞培養 に用いる器具および Zまたは培養方法は、当該分野において公知のものを適宜選
択すればよいことも、当業者には明白である。
[0077] 本発明に係る細胞死の評価方法を用いることによって、評価対象となる細胞は虚血 後の再灌流を経験する。従って、本発明に係るインビトロでの細胞死の評価方法を 用いれば、虚血処理前後、または虚血後に再灌流処理を行なう前後において、細胞 の生存率などの細胞死の評価を行ない、これらを比較することによって、再灌流性細 胞死の評価を簡便に行なうことができる。
[0078] 本発明に係るインビトロでの細胞死の評価方法にぉ 、て、評価の対象となる細胞と しては、特に限定されず、神経細胞、脳神経細胞、脳グリア細胞を好適に用いること ができる。神経細胞を用いることによって、脳梗塞または心筋梗塞などが原因となる 虚血または虚血後の再灌流によって生じる細胞死を評価することができる。脳神経細 胞または脳グリア細胞を用いることによって、脳梗塞などに原因となる虚血または虚 血後の再灌流によって生じる細胞死を評価することができるものといえる。また、上記 の細胞は、市販の培養細胞が用いられても、初代培養細胞が用いられてもよい。
[0079] 本発明に係る細胞死の評価方法において、細胞死を検出する工程としては、特に 限定されないが、例えば、ミトコンドリア脱水素酵素の活性を指標に行なう方法 (MT T法または MTS法)、核内 DNAの断片化を指標に行なう方法 (DNAラダー試験な ど)、細胞死を引き起こす細胞内タンパク質分解酵素 (カスパーゼ)の活性を指標とす る方法、ミトコンドリア力も細胞質へのチトクローム cの放出を指標とする方法、および 核の形態変化 (例えば、核の濃縮または細片化)を指標とする方法などが挙げられる
[0080] 細胞が死滅するとミトコンドリア脱水素酵素の活性が低下するので、ミトコンドリア脱 水素酵素の活性を指標にして当該酵素活性が低下すれば細胞の死滅率が高いと判 断することができる。
[0081] ネクローシスによって細胞が死滅する際には、当該細胞は膜傷害を生じるので、 pr opidium iodide (PI)によって染色される。この際、 Hoechst 33342を用いて全て の細胞の核を染色すれば、ネクローシス性の細胞死を生じた細胞の割合を算出する ことができる。
[0082] また、アポトーシスによって細胞が死滅する際には、核内 DNAが断片化するので、
電気泳動などでラダー上の核内 DNAの状態を観察すれば簡便にアポトーシス性の 細胞死であるか否かを判定することができる。
[0083] さらに、アポトーシスによって細胞が死滅する際には、カスパーゼが活性化 (活性が 上昇)することがわ力つているので、カスパーゼ活性を指標にして当該酵素活性が上 昇すればアポトーシス性の細胞死滅率が高いと判断することができる。
[0084] また、ミトコンドリア刺激によるアポトーシスによって細胞が死滅する際には、ミトコン ドリア力も細胞質へのチトクローム cが放出するので、ミトコンドリア力も細胞質へのチト クローム cの放出を指標してチトクローム cの放出量を測定すれば簡便にアポトーシス 性の細胞死である力否かを判定することができる。
[0085] また、アポトーシスによって細胞が死滅する際には、核の濃縮や細片化といった核 の形態変化が起こるので、核の形態変化を指標にして電子顕微鏡などで核の形態 変化を観察すれば簡便にアポトーシス性の細胞死であるか否かを判定することがで きる。
[0086] 他の局面において、本発明は、インビボでの動物を用いる系において虚血および 虚血後の再灌流によって生じる細胞死を評価するための方法を提供する。
[0087] マウスを用いる虚血および虚血後の再灌流として、マウスの両総頸動脈を一過性に 遮断した後にその再開通を行なうと!、う脳虚血 ·再灌流モデルを用いることが好まし い。
[0088] 遅発性神経細胞死の評価方法としては、生存細胞および Zまたは変性神経細胞 の形態組織学的観察、細胞質におけるチトクローム cの増カロ、あるいは局所脳血流量 の測定を用いることが好まし 、。
[0089] 本発明に係る細胞死の評価方法は、上述した本発明に係るマウスの虚血および虚 血後の再灌流を首尾よく行なうために、マウスの両総頸動脈を一過性に遮断した後 にその再開通を行なう t 、う脳虚血 ·再灌流モデルを用いればょ ヽと 、える。
[0090] すなわち、本発明に係る虚血後の再灌流条件下における神経細胞死の評価方法 は、 C1—チャネルブロッカーまたはタンパク質チロシンキナーゼ阻害剤を用いた場合 の細胞死を測定して、その測定値を基準値と比較すればょ 、と 、える。
[0091] (3)神経細胞の遅発性細胞死を防御または救済する因子をインビトロでスクリー-
ングする方法
本発明は、神経細胞の遅発性細胞死を防御または救済する因子をインビトロでスク リーニングする方法を提供する。本発明に係るスクリーニング方法は、培養系を用い ることが好ましぐよって培養可能な細胞を調製する工程を包含する。調製した培養 細胞を遅発性細胞死に導くためには、上述したように、虚血 ·再灌流傷害を誘導すれ ばよぐより感嘆には、低酸素'再酸素化傷害を誘導すればよい。
[0092] 一実施形態にお!ヽて、本発明に係るスクリーニング方法は、培養するための細胞を 調製する工程;グルコースを含まない培地中にて当該細胞を低酸素条件下または無 酸素条件下で培養する低酸素処理工程;ダルコースを含む培地中にて有酸素条件 下で当該虚血処理に供した細胞を培養する再酸素処理工程;および、細胞死を測 定する工程を包含し、かつ、当該低酸素処理工程時もしくは当該再酸素処理工程時 またはこれらの前後に候補因子を培地中に添加して測定した細胞死を、当該候補因 子を添加することなく測定した細胞死と比較する工程を包含する。
[0093] 本発明に係るスクリーニング方法にぉ 、て、上記細胞死を測定する工程は、上述し たように、ミトコンドリア脱水素酵素の活性、核内 DNAの断片化、カスパーゼ活性、ミ トコンドリア力も細胞質へのチトクローム cの放出、または核の形態変化を指標とすれ ばよい。
[0094] 以上のように、(2)にて詳述した「虚血および虚血後の再灌流によって生じる細胞 死の評価方法」を用いれば、神経細胞の遅発性細胞死を防御または救済する因子 をインビトロでスクリーニングすることができる。
[0095] 以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら 限定されるものではない。
[0096] 〔実施例〕
〔1 :手順〕
海馬神経細胞における容積感受性 C1—チャネル —チャネル)の発現の確認を 下記のような方法で行なった。
[0097] 海馬神経細胞を、妊娠 16日目のマウス力も採取した胎仔より単離した。得られた初 代培養海馬神経細胞を、 10%ゥシ胎仔血清、ストレプトマイシン、ペニシリンを添加し
たダルベッコ必須培地にて、 5%COインキュベータ内にて 37°Cで培養した。培養 5
2
〜7日目の海馬神経細胞にホールセルパッチクランプ法を適応して、電流測定を行 なった。ノツチクランプ実験には、次のような組成の溶液を使用した。細胞外液には、 124mM N—メチル D グルカミン(NMDG)、 124mM HC1、 lOmM NaCl、 4mM MgCl、 0. 33mM NaH PO、 0. 5mM EGTA、 lOmM 2— [4—(2—
2 2 4
ヒドロキシェチル) 1 ピペラジ -ル]エタンスルホン酸 (HEPES)、 2mM 4 アミ ノビペリジン(4—AP)、 5. 5mM グルコースを用い、マン-トール濃度を加減するこ とによって浸透圧を調節した (正常浸透圧溶液: 315mOsm、低浸透圧溶液: 280m Osm)。細胞内液には、 124mM NMDG、 24mM HC1、 lOOmM ァスパルテー ト、 2mM MgCl、 5mM Na ATP、 0. 3mM Na GTP、 ImM EGTA、 lOmM
2 2 3
HEPESを用い、浸透圧を 300mOsmに調節した。 NMDGを用いて、 pH (細胞外 液および内液ともに)を 7. 4に調整した。ホールセルパッチクランプモード形成後、チ ャネル活性ィ匕の時間経過を観察するために、保持電位一 40mV力もテスト電位 ± 60 mVを与えて電流応答を記録した。また正常浸透圧時、低浸透圧刺激後、薬剤投与 後の電流の性質を検討するために、 100mV〜 + lOOmVまでのステップパルスを 随時与えて電流応答を記録した。
[0098] 虚血 ·再灌流による遅発性神経細胞死における C1—チャネルブロッカーまたは PTK 阻害剤の効果を検討するために、マウスの両総頸動脈を脳血管クリップにて閉塞し、 クリップを除去することによって再灌流する一過性脳虚血'再灌流モデルを用いた。
[0099] 図 1にそのプロトコールを示す。具体的には、 C57ZBL6Crj (9〜: L 1週齢、雄)に、 虚血 20分前より頸静脈力も DIDS (0. 48、 12、 60mg/kg) , genistein (0. 24、 6. 0、 30mgZkg)もしくは daidzein(30mgZkg)を 15分間 0. 8 LZ分 Zg体重(24 0〜300 μ LZ匹)の流速で投与した。対照群 (ビヒクル)は化合物を含まな 、溶液(1 0% DMSOおよび 10% polysorvate 80を含む PBS)を与えた。その後、 12分 間の両総頸動脈の閉塞による脳虚血 ·再灌流を行った。体温の低下を防ぐために 1 晚 35°Cの恒温槽内で飼育した後、室温(24 ± 1°C)で 4日間飼育した。予備的な試 験において、虚血前の単回投与だけでは細胞死防御効果を観察し得なかった。また 、溶媒中に DMSOおよび polysorvate 80を添加することにより、試験化合物の溶
液中の溶解性の向上が得られた。そのために、虚血前だけでなく虚血後 1、 2、 3日 目に静脈内投与と同量の化合物を腹腔内に投与した。 4日目に屠殺し組織学的検 討を行った。
[0100] これらの脳虚血モデルでは、虚血 '再灌流 1日目では 10%ほどの神経細胞が死亡 しているが、 4日目では 50%近くの神経細胞死が生じ、いわゆる遅発性神経細胞死 が観察された。
[0101] さらに、この遅発性神経細胞死がアポトーシスを含むかどうかを明らかにするために 、そして、この機構に対する C1—チャネルブロッカーまたは PTK阻害剤の効果の有無 を検討するために、同様の実験モデル系において、海馬領域における細胞質画分 のチトクローム cの増加を、生化学的手法 (ウェスタンブロッテイング)によって観察し た。また、脳循環血流量に対する PTK阻害剤の効果を、レーザードップラー局所血 流計により測定した。局所脳血流量は、 1. Ommのレーザ一径により中大脳動脈領 域の大脳皮質を左右 6〜9ケ所計測し、その平均にて示した。化合物投与前を 100 %として算出した。
[0102] 〔2:マウス海馬神経細胞には容積成受性 C1—チャネルが存在する〕
これまでに神経細胞で容積感受性 C1—チャネルの存在が報告されて 、るのは、ラッ ト交感神経細胞(Leaney JL, Marsh SJ, Brown DA. (1997) 〃A swelling-activated chlo ride current in rat sympathetic neurons." J. Physiol. 501: 555— 564.を参照のこと)、ラ ット頸動脈小体タイプ 1神経分泌細胞(Carpenter E, Peers C. (1997) "Swelling- and camp-activatedし 1 currents in isolated rat carotid body type I cells. J. Physiol. 50 3: 497-511 .を参照のこと)、およびマウス小脳穎粒細胞(Patel AJ, Lauritzen I, Lazd unski M, Honore E. (1998) "Disruption of mitochondrial respiration inhibits volume- regulated anion channels and provokes neuronal cell swelling, j. Neurosci. 18: 3117 -3123.を参照のこと)のみである。そこで、海馬神経細胞に容積感受性 C1—チャネル が存在するかどうかを調べた(図 2)。
[0103] 容積感受性 C1—チャネルは分子実体が明らかにされて 、な 、ので、免疫組織学的 な手法が適応できない。そこで、その発現をパッチクランプ法による電流記録によつ て確認した。
[0104] 図 2Aに示すように、ホールセルパッチクランプ下でマウス海馬初代培養神経細胞 に低浸透圧負荷をかけると、徐々に活性化される電流が観察された。この活性化さ れた電流の逆転電位(=— 36mV)は Cl_の平衡電位(=—40mV)に近似し、外向 き整流性(図 2C)で高 、プラス電位 ( > + 80mV)にお 、て不活性化を示す(図 2B) 。これらの結果は全て容積感受性 C1—電流の特性に一致するこ。よって、マウス海馬 初代培養神経細胞に容積感受性 C1—チャネルが存在することが明らかになった。
[0105] 〔3:マウス海馬初代培養神経細胞の容積感受性 C1—チャネルは、 DIDSと enistein によって抑制される〕
マウス海馬初代培養神経細胞の容積感受性 C1—チャネル力 その阻害剤として知 られる DIDSや genisteinによって抑制されるかどうかを確認した(図 2)。 500 M DIDSの抑制効果はプラス電位にのみ見られ、電位依存性であった(図 2D)。また 1 OO ^ M genisteinによる抑制は電位に非依存的で、逆転電位付近を除く全ての電 位においてその抑制効果を発揮した(図 2E)。このこと力 、 DIDSと genisteinが確 力に海馬神経細胞の容積感受性 C1—チャネルを抑制することを確認した。
[0106] 〔4:マウス脳虚血性遅発性神経細胞死は C1—チャネルブロッカーによって救済され る〕
ラットの培養神経細胞のスタウロスポリン(STS)によって誘導されたアポトーシスは 、 C1—チャネルのブロッカーである DIDSによって救済されることが報告されている(Ta nabe S, Maeno E, Okada Y (2002) Prevention of staurosporine- induced apoptotic c ell death by DIDS and SITS in rat cardiomyocytes in primary culture." Jpn. J. Physio 1. 52 (Suppl):S34を参照のこと)。そこで、マウスの脳虚血性神経細胞死が Cl_チヤネ ルブロッカーで抑制されるかどうかを検討した。
[0107] 図 3に示すように、 12分間の虚血によって神経細胞死を誘導した場合、トルイジン ブルー染色により形態学的に観察すると、海馬 CA1領域の神経細胞は核小体が不 明瞭になり錐体細胞の縮小化が認められた(図 3、 A矢印)。一定面積あたりの残存 する形態的に正常な細胞数は、脳虚血前の約 60個(結果非表示)から 37. 1個にま で減少した(図 2、第 1棒グラフ)。虚血 15分前および再灌流後に C1—チャネルブロッ カーである DIDS (0. 48、 12、 60mgZkg)を投与しておくと、 0. 48mgZkgまたは
60mgZkgでの投与では、その効果はあまり顕著ではな力つた(図 3、図 5)。しかし、 12mgZkgの投与群においてその形態変化は少なくなり(図 3、 D)、残存する形態 的に正常な細胞数は 52. 5個に上昇した(図 4、第 3棒グラフ)。
[0108] さらに、図 3に示すように、神経変性像 (Fluoro— JadeB染色により検出)を示す神 経細胞を観察したところ、ビヒクル投与のマウスの海馬 CA1領域において、明らかに 強く蛍光染色される変性した神経細胞が観察された (図 5、 A矢印)。単位面積当たり の変性神経細胞数を計測すると 28. 4個であった(図 6、第 1棒グラフ)。 DIDS12mg Zkgを投与すると、染色される細胞が減少し(図 5、 C)。変性神経細胞数は 12. 0個 に明らかに低下した(図 6、第 3棒グラフ)。これらの結果は、 C厂チャネルブロッカー である DIDSが一過性のマウス脳虚血後の遅発性神経細胞死に対して救済的に作 用することを示している。
[0109] 〔4:マウス脳虚血性遅発性神経細胞死は PTK阻害剤によって救済される〕
図 3に示すように、虚血の 15分前にビヒクルを投与し 12分間の虚血性神経細胞死 を誘導した場合、一定面積あたりの残存する形態的に正常な細胞数は 37. 1であつ た(図 4、第 1棒グラフ)。虚血 15分前および再灌流後 1、 2、 3日後の計 4回、 PTK阻 害剤である genistein (l . 2、 6、 30mgZkg)を投与しておくと、海馬 CA1領域の神 経細胞の形態変化が抑制され (図 3、 E、 F、 G)、単位面積当たりの残存する形態的 に正常な細胞数は、それぞれ 48. 2、 50. 8、 55. 7に上昇した(図 4、第 5、 6、 7棒グ ラフ)。変性神経細胞を観察したところ、ビヒクル投与群の海馬 CA1領域において、 明らかに変性した神経細胞が観察された(図 5、 A)。 Genisteinを投与すると、変性 神経細胞の出現は低下した(図 5、 D、 E、 F)。単位面積あたりの変性神経細胞数は 、濃度依存的に 14. 0、 11. 7、 5. 8と明らかに減少した(図 6、第 5、 6、 7棒グラフ)。 さらに、 genisteinの PTK活性を有さない類似体である daidzein (30mgZkg)の投 与群では、形態的正常細胞の低下、変性神経細胞の増加を抑制できな力つた(図 3 、 H ;図 4、第 8棒グラフ;図 5、 H ;図 6、第 8棒グラフ)。これらの結果は、 PTK阻害剤 である genisteinが一過性のマウス脳虚血後の遅発性神経細胞死に対して救済的に 作用することを示している。
[0110] 〔5 :マウス脳虚血性遅発性神経細胞死によるアポトーシスは C1—チャネルブロッ力
一または PTK阻害剤によって抑制される〕
アポトーシス性細胞死の過程において、チトクローム cのミトコンドリアから細胞質へ の放出は、細胞死の出現に最も重要な現象であるということが知られている(非特許 文献 7を参照のこと)。また、 DIDSはラットの培養神経細胞のスタウロスポリン(STS) によって誘導されたアポトーシスを救済することが報告されている(Tanabe S, Maeno E, Okada Y (2002) Prevention of staurosporme- induced apoptotic cell death by DI DS and SITS in rat cardiomyocytes in primary culture." Jpn. J. Physiol. 52 (Suppl):S 34を参照のこと)。
[0111] 一過性脳虚血誘導後の海馬細胞質において、チトクローム c (cyt— c)の増加がみ られた(図 7、ビヒクル投与群(1〜4レーン))。一過性脳虚血を誘導する 15分前に C1 —チャネルブロッカー(図 7、第 5〜第 8レーン(DIDS (12mg/kg) ) )または PTK阻 害剤(図 7、第 9〜第 12レーン (genistein (30mg/kg) ) )を投与したマウスの脳海 馬領域において、チトクローム cの増加が抑制された。これらの結果は、 C1—チャネル ブロッカーである DIDSまたは PTK阻害剤である genisteinが一過性のマウス脳虚血 後のアポトーシスに対して救済的に作用することを示している。
[0112] [6 :マウス脳虚血 ·再灌流中の脳血流の低下は PTK阻害剤によって抑制される〕
PTKの阻害剤の 1つである PP1は、脳虚血中の血管拡張作用を示すことが報告さ れている(非特許文献 11を参照のこと)。局所脳血流を、レーザードップラー血流計 を用いて測定した。図 8に示すように、虚血中の大脳皮質の局所血流量は脳虚血前 (100%)と比較して 25%にまで低下する力 10分間の再灌流で徐々に回復し、虚 血前付近に戻る(図中、 Genistein投与群(黒丸)、ビヒクル群(白丸)およびコント口 ール(ビヒクル無投与群))。しかしながら、脳虚血前 15分間の genistein (30mgZk g)投与を行った場合は、虚血中の脳血流の 30〜35%と高ぐさらに、再灌流後の局 所脳血流量は約 2分間で回復する。特に、再灌流直後 30秒間で 50%回復し虚血前 の 80%にまで回復する。しかし、ビヒクル群では 20%程度 (虚血前の 40%に回復)し か回復しない。この結果は、 PTK阻害剤である genisteinが一過性のマウス脳虚血' 再灌流中に血管拡張などの循環改善を引き起こし、その結果、脳血流の低下を抑制 し、その後生じるであろう遅発性神経細胞死に対して救済的に作用することを示して
いる。
[0113] このように、本発明は、海馬初代培養神経細胞における容積感受性 C1—チャネルの 存在を明らかにし、該容積感受性 C1—チャネル力 厂チャネルブロッカーまたは cr チャネルを制御する PTKの阻害剤により抑制されることを見出したことに基づいて完 成されたものである。さらに、神経初代培養細胞で見出した知見に基づき、本発明者 独自の「個体における脳虚血 '再灌流の評価系」を駆使し、可溶化剤を含む溶媒に 薬物を溶解することにより循環中での動態を改善し、かつ脳虚血前だけでなく数日間 にわたり薬物を繰り返し投与する新しい工夫を重ねて確立した方法がなければなし 得なかったものである。
[0114] 尚、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様また は実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような 具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなぐ本発明の精神と次に記 載する特許請求の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである。 産業上の利用の可能性
[0115] 本発明を用いれば、個体における神経細胞死、特に、脳虚血 ·再灌流によってもた らされる遅発性神経細胞死を抑制することができる。本発明における投与経路が静 脈内投与であることによって、臨床的治療への適用が比較的容易となる。さらに,本 発明において用いられた繰り返し投与のよる方法の工夫は本発明をより効率的に応 用するための有用な技術の開発に役立つ。また、脳梗塞もしくは心筋梗塞の際、また は心移植術もしくは脳血管吻合術の脳虚血時もしくは脳虚血後の再灌流時に本発 明を適用することによって、生体の生存にとって最も重要な臓器である脳、特に神経 細胞の障害の軽減が可能となる。
[0116] 神経細胞の虚血 ·再灌流性による遅発性神経細胞死を防御または救済するために 効果的な薬剤または方法というものが、これまで開発されていな力 たので、本発明 によって、遅発性神経細胞死を防御および Zまたは救済することが可能となり、神経 細胞の遅発性細胞死に起因する様々な脳障害に対する有効な治療および Zまたは 予防に関する技術の開発に大いに役立つ。