明 細 書 伝導性薄膜形成性のプロトン伝導性組成物及びプロトン伝導性複合膜
技術分野
本発明は、 伝導性薄膜形成性のプロトン伝導性組成物及びプロトン伝導性複合 膜に関し、 より詳しくは、 伝導性薄膜形成性のプロトン伝導性組成物及びこれか ら得られる高温下、 低湿度雰囲気中においても安定性及び膜の加工性や形成性に 優れたプロトン伝導性複合膜、 及びその製造方法に関する。
本発明のプロトン伝導性複合膜は、 例えば燃料電池の電解質に適用した場合、 長期運転あるいは高温運転においても、 高い電圧を安定的に維持できる、 優れた 燃料電池を構成することができる。
背景技術
近年、 自動車内燃機関や火力発電に大量に消費されている石油、 石炭等化石燃 料は、その枯渴という資源 ·エネルギー上の制約があるという問題や、これが日々 大量に排出する炭酸ガス等地球温暖化ガスの大気中等における着実な増加 ·蓄積 が気候変動や環境破壊の原因となっているという懸念が強まっている。 これら化 石燃料の大量消費に起因するエネルギー ·環境問題は、 いまや全世界規模で各国 —致協力した真剣な対策 ·取り組みが必要とされる大きな課題となっている。 その解決策の一つとして、 水素をエネルギー源とし、 しかも炭酸ガスでなく水 のみを排出するクリーンな発電装置である燃料電池への関心が従来になく高ま つている。 燃料電池に関しては、 国内外産学とも幅広く盛んに研究が行われてお り、 実用化に向かって着々と開発が進んでいる。
燃料電池は使用する電解質の種類によって、 大別して、 固体酸化物型 (S O F C )、 リン酸塩型 (P A F C )、 溶融炭酸塩型 (M C F C )、 固体高分子型 (P E F C ) に分類されるが、 中でもプロトンが伝導体 (伝導イオン種) としてはたら く燃料電池は、 リン酸塩型と固体高分子型が相当するが、 これらは固体酸化物型 (作動温度: 8 0 0 - 1 0 0 0で) や、 溶融炭酸塩型 (作動温度: 6 0 0 - 7 0
0 °C) に比較して作動温度がずつと低く、 小型化が可能なもので、 より実用化に 近いとされている。
特に、 強酸性基を有するイオン交換膜を電解質材料とする固体高分子型燃料電 池は、当該高分子膜が加工性に優れ、小型軽量化が可能で、低温(室温 - l o o t:) で作動するため応用分野が広く、 近年研究が進み、 高密度、 高出力が可能となり つつあり、 自動車等の車載用電源や家庭用コージェネレーション用電源、 さらに はパソコンや携帯電話用電源としての実用化が大いに期待されている。
固体高分子型燃料電池に用いられている高分子電解質膜としては、 スルホン酸 基が高分子内に修飾されているパ一フルォロカーボン樹脂やポリイミド等が主 に用いられている。
しかしながら、 このような有機高分子膜からなる電解質膜は、 プロトン伝導に は充分な加湿が必要であるため、 当該プロトン伝導性が作動温度、 ひいては膜中 の含水率に大きく依存し、 燃料電池を長期運転した場合、 イオン伝導度の低下、 さらには発電電圧までも低下するという問題がある。 したがって長時間にわたつ て高いセル電圧を維持するためには、 当該高分子膜を湿潤状態に保ち続けるため の特別の水分管理が必要となる。
このように、固体高分子型燃料電池においては、 1 0 o t:以上の作動温度では、 含水率低下からィォン伝導度が極端に低下し、 ひいては有機高分子膜そのものの 劣化を引き起こし、 プロトン伝導性の低下、 電池出力の低下等燃料電池性能の急 激な低下にまで至る。 よって 1 0 0 未満での使用に制限されてしまうため、 セ ル全体としてのエネルギー効率が低いという難点がある。
また使用温度が 1 0 o t:未満に限られるという制限のため、 電櫸触媒として高 価な白金電極を使用しなければ効率が上がらないという問題がある。 白金の使用 は、 コスト面でも問題である上、 触媒である電極表面への C O吸着が起こりやす いので、 触媒の劣化を防止するために、 燃料水素中の C O濃度を極く低濃度レべ ルまで低減させる処置がさらに必要となる。
これらの諸問題を解決するためには、 1 0 o t:以上にまで作動温度を上げるこ と、 及び電解質部分の厄介な水分管理を必要としない新規な電解質を開発するこ とがきわめて重要であり、 特に 1 0 0で以上、 好ましくは 1 5 0 °C以上、 さらに
好ましくは 200 以上の作動温度で安定的に使用できる固体電解質が得られ れば、 前述した触媒の CO被毒の問題も大幅に軽減され、 さらには、 エネルギー 効率も大きく向上し、 コスト面、 エネルギー効率面から考えても極めて実用性の 高い優れた固体電解質型の燃料電池が創出できると期待される。
最近、 かかる観点から、 100 以上の高温条件下、 長期安定した電池性能を 得るための電解質に関する提案がいくつかなされている。
例えば、 特開 2003— 123791 (引例 1 ) に記載されているように、 ィ オン性液体とブロンステツドーロウリィ酸を有する高分子膜を複合化した複合 膜を利用したもの、 特開 2004— 55 18 1 (引例 2) に開示されているよう に、 シリカゲルにトリポリリン酸二アルミニウムのようなリン酸金属塩を添加し て複合化したプロトン伝導性組成物を使用するもの、 特開 2003— 15 158 0 (引例 3) に記載されているように、 五酸化アンチモンのような無機プロトン 伝導性酸化物粒子とシリカやアルミナ微粒子からなるプロトン伝導性膜を使用 するもの等が提案されている。
しかしながら、 弓 I例 1 - 2においては、 作動温度はせいぜい 12 Ot:程度であ り、 高温領域では水の特性を考えると低湿度下で高いプロトン伝導性を持たせる ことがより望ましい。 また、 引例 1では高分子膜を基材としており造膜性につい ては、 一応問題はないと考えられるが、 引例 2— 3においては、 リン酸金属塩や 五酸化アンチモンに配合されるシリカゲルやシリ力微粒子はそのままでは造膜 性を有しないため、 これらの組成物からは本質的に強靭な伝導性膜を形成するこ とは困難であり、 強度の高い薄膜形成のためには通常結着剤樹脂を必要とする。
一方、 最近になって、 Haileらによって、 1 50で以上で高いプロトン伝導 性を示す無機材料が報告された (S.M. Haile et al. , "Solid acids as fuel cell electrolytes" , Nature, vol.410, April 19 , 2001, p910-913)。 これらは式 (1) 又は式 (2) に示すような無機プロトン伝導性化合物であつ て、 当該化合物の結晶構造および結晶中での分子の挙動が、 高いプロトン伝導性 に大きく寄与していると考えられている。
MHX04 (1)
M3H (X04) 2 (2)
(式中、 M = NH4、 L i、 Na、 K:、 Rb、 C sであり、 X=S、 S eである。) しかしながら、 この無機のプロトン伝導性化合物は、 通常微粒子状で用いられ るが、 それ自体は造膜性を有していないため、 薄膜を形成することが困難である という問題がある。
また、 V.G.Ponomareva らによれば、 上記のごときプロトン伝導性化合物に シリカを添加した組成物とすることにより、 当該 MHX〇4または M3H (X04) 2の単独使用の場合に比較して、 より高いプロトン伝導性を得ることができると いう興味深い報告がなされている (V.G.Ponomareva et al. , "Composite protonic solid electrolytes in theC S H S 04- S i02 system" , Solid State Ionics, vol.90, 1966, pl61-166)。
当該文献においては、 シリカとしては微粒子状のシリカゲルのような多孔質シ リカを使用しているが、 多孔質シリカ微粒子は当然のことながら、 造膜性を有し ていない。 このように上記無機プロトン伝導性化合物と多孔質シリカ粒子は、 両 者とも造膜性を有していないものであるから、 両者を混合した組成物は、 そのま ま薄膜を形成することは困難であり、 せいぜい、 高いプレス圧力をかけて厚さ数 ミリの成型体に出来るだけであり、 薄膜形成性については大きな問題が残ってい る。
さらにこのようにしてプレス下にようやく得られた成型物は、 ガスバリア性が 悪いため、 燃料 (水素) のクロスオーバー (電解質中を燃料分子 (水素等) が通 り抜けてしまうこと) による電圧降下、 電流低下が大きな問題となりうる。
本発明の目的は、 上記のごとき優れたプロトン伝導性を示すが、 それ自身造膜 性を有しない無機化合物に、 造膜性を有する無機粒子を混合して造膜性を付与す ることにより、 基板に直接塗布して、 100 以上の低湿度雰囲気下においても 高いプロトン伝導性を示すプロトン伝導性無機薄膜を簡便に形成する方法を提 供しょうとするものである。 また、 例えば有機高分子化合物などのように、 プロ
トン伝導性を示しそれ自身造膜性を有する化合物についても、 膜質をさらに向上 させるとともに、 当該膜中を燃料分子が透過することを遮断して、 クロスオーバ 一を格段に低下させたプロトン伝導性複合膜を形成する方法を提供しようとす るものである。
本発明者らは、 上記課題の重要性に鑑み鋭意検討した結果、 従来用いられてい るプロトン伝導性化合物に、 造膜性を有するシリ力粒子を配合することにより、 1 0 0 以上の低湿度雰囲気においても高いプロトン伝導性を維持し、 かつ、 基 板や電極に直接塗布することを可能とした簡便で加工性のよいプロトン伝導膜 の製造方法を提供しうることを見出した。 さらに、 プロトン伝導性化合物の種類 によっては、 当該造膜性を有するシリカ粒子の特異な形態に起因して、 さらに膜 質の向上や燃料分子のクロスオーバーの低下の達成も可能であることを見出し た。 本発明は、 かかる知見によりなされるに至ったものである。 発明の開示
A . 本発明は、 上記した観点からなされたものであって、 本発明に従えば、 以下の伝導性薄膜形成性のプロトン伝導性組成物が提供される。
〔1〕 プロトン伝導性膜を形成するための組成物であって、 当該組成物には少な くともプロトン伝導性を有する化合物及び造膜性を有する葉状シリカ 2次粒子 が配合されていることを特徴とする伝導性薄膜形成性のプロトン伝導性組成物。 〔 2〕 前記プロトン伝導性組成物が、 プロトン伝導性を有する化合物及び造膜性 を有する葉状シリカ 2次粒子が水性媒体又は有機媒体に溶解又は分散されたス ラリー状である 〔1〕 に記載のプロトン伝導性組成物。
〔3〕 前記葉状シリカ 2次粒子が、 鱗片状シリカの薄片 1次粒子が互いに面間が 平行に配向し複数枚重なって形成される葉状シリカ 2次粒子から実質的になり、 互いに独立に存在する積層構造の粒子形態を有するものである 〔1〕 又は 〔2〕 に記載のプロトン伝導性組成物。
〔4〕前記葉状シリカ 2次粒子が、層状ポリケィ酸に該当するシリカである 〔1〕 一 〔3〕 のいずれかに記載のプロトン伝導性組成物。
〔5〕 前記葉状シリカ 2次粒子が、 X線回折分析での主ピークが、 シリカ— X及
び Z又はシリカ— Yに該当するシリカである 〔1〕 一 〔4〕 のいずれかに記載の プロトン伝導性組成物。
〔6〕 前記プロトン伝導性組成物中のプロトン伝導性化合物が、 無機化合物であ る 〔1〕 一 〔5〕 のいずれかに記載のプロトン伝導性組成物。
Β . また、 本発明に従えば、 以下のプロトン伝導性複合膜が提供される。
〔7〕 基板上に形成されたプロトン伝導性複合膜であって、 当該複合膜は少なく ともプロトン伝導性を有する化合物及び造膜性を有する葉状シリカ 2次粒子か らなるものであることを特徴とするプロトン伝導性複合膜。
〔8〕 前記複合膜が、 プロトン伝導性を有する化合物及び造膜性を有する葉状シ リカ 2次粒子が水性媒体又は有機媒体に溶解又は分散されたスラリ一状のプロ トン伝導性組成物を前記基板上に塗布、 乾燥して得られたものである 〔7〕 に記 載のプロトン伝導性複合膜。
〔9〕 前記葉状シリカ 2次粒子が、 鱗片状シリカの薄片 1次粒子が互いに面間が 平行に配向し複数枚重なって形成される葉状シリカ 2次粒子から実質的になり、 当該 2次粒子は、 当該複合膜中で前記基板にほぼ平行して配向しているものであ る 〔7〕 又は 〔8〕 に記載のプロトン伝導性複合膜。
〔1 0〕 前記葉状シリカ 2次粒子が、 層状ポリケィ酸に該当するシリカである 〔7〕 - 〔9〕 のいずれかに記載のプロトン伝導性複合膜。
〔1 1〕 前記葉状シリカ 2次粒子が、 X線回折分析での主ピークが、 シリカ一 X 及び Ζ又はシリカ— Υに該当するシリカである 〔7〕 - 〔1 0〕 のいずれかに記 載のプロトン伝導性複合膜。
〔1 2〕前記複合膜中のプロトン伝導性化合物が、無機化合物である 〔7〕 — 〔1 1〕 のいずれかに記載のプロトン伝導性複合膜。
〔1 3〕前記複合膜中のプロトン伝導性化合物が、有機化合物である 〔7〕 一 〔1 1〕 のいずれかに記載のプロトン伝導性複合膜。
〔1 4〕前記プロトン伝導性複合膜において、当該複合膜の燃料分子の透過量が、 葉状シリカ 2次粒子を含有しないプロトン伝導性複合膜を基準として、 当該シリ 力を含有する複合膜の燃料分子透過量の相対値が、 1未満である〔1 2〕又は〔1 3〕 に記載のプロトン伝導性複合膜。
〔1 5〕 前記プロトン伝導性複合膜において、 燃料分子がメタノールであり、 当 該複合膜のメタノール透過量が、 葉状シリ力 2次粒子を含有しないプロトン伝導 性複合膜を基準として、 当該シリ力を含有する複合膜のメタノール透過量の相対 値が、 1未満である 〔1 4〕 に記載のプロトン伝導性複合膜。
C . また、 本発明に従えば、 以下のプロトン伝導性複合膜の形成方法が提供 される。
〔1 6〕 シリカを含有するプロトン伝導性複合膜の形成方法であって、
( 1 ) プロトン伝導性化合物及び鱗片状シリカの薄片 1次粒子が互いに面間が平 行的に配向し複数枚重なって形成される造膜性を有する葉状シリカ 2次粒子を 水性媒体又は有機媒体に溶解又は分散させて薄膜形成性のスラリー状プロトン 伝導性組成物を調製する工程、
( 2 ) 当該組成物を基板上に塗布し、 塗布層を形成する工程、 及び
( 3 ) 当該塗布層から前記媒体を乾燥除去する工程からなることを特徴とするプ 口トン伝導性複合膜の形成方法。
D . また、 本発明に従えば、 以下のプロトン伝導性複合膜を備えた燃料電池 が提供される。
〔1 7〕 〔7〕 一 〔1 5〕 のいずれかに記載のプロトン伝導性複合膜を備えてな る固体電解質型燃料電池。 図面の簡単な説明
第 1図は、 銀ペーストコートガラス基板に製膜した試験片の概略図であり、 第 2図は、 カーボンペーパー基板に製膜した試験片の概略図である。
図において、 1はガラス製のプレパラート、 3は伝導性銀ペースト、 5は導線、 1 0は無機プロトン伝導性複合膜、 1 3は力一ボンペーパーを示す。 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明を詳細に説明する。
本発明のプロトン伝導性組成物は、 プロトン伝導性複合膜を形成するための組 成物であって、 当該組成物には少なくともプロトン伝導性を有する化合物及び造
膜性を有する葉状シリカ 2次粒子が配合されているものである。
(プロトン伝導性化合物)
本発明において、 プロトン伝導性化合物としては、 基本的には無機化合物、 有 機化合物のいずれも使用できるものであり、 例えば公知の、 パーフルォロスルホ ン酸ポリマー等の有機高分子化合物が使用できる。 しかしながら、 熱安定性など の面からは、 このような有機高分子化合物よりも無機化合物のほうが望ましい。 以下、 まず無機化合物を主として説明する。
本発明において使用するに好ましいプロトン伝導性化合物は、 例えば式 (1) または式 (2) で示されるものである。
MHX04 (1)
M3H (X04) 2 (2) (式中、 M = NH4、 L i、 Na、 K、 Rt>、 C sであり、 X=S、 S eである。) 具体的には C sHS04、 NH4HS04、 (NH4) 3H (S04) 2等が挙げられる。 また、 上記式で表される化合物以外のものとして、 C sH2P〇4、 Sb205 ' nH 2〇、 S n02 · nH2〇、 Z r 02 · nH2〇、 WOs · nH2〇、 ヘテロポリ酸 (H4 S i W12〇40 · nH2〇、 H3PW12O40 · nH2〇)、 リン酸、 P2〇5、 S i 02 · x Z r P * yH3P〇4、 ヒドロゲル化したリン酸塩ガラス、 I n 3+ドープ S n P 207 (例えば、 S n0.9Q I n0. ^PsO?) などでありこれらも好適に使用される。 このなかでは、 C s H2P04が好ましい。
このような無機プロトン伝導性化合物のプロトン伝導性は、 その結晶構造に起 因しており、 その伝導メカニズムがイオン交換膜のごとき高分子電解質と本質的 に異なるため、 当該結晶中の水 (結晶水は除く) は、 ほとんどプロトン伝導性に 影響しないという特徴を有する。 そのため、 本発明で使用するプロトン伝導性無 機化合物は、 その雰囲気中の湿度に実質的に依存することなく高いプロトン伝導 性を示すのである。
またこれらの化合物の中には、 相転移点を持つ化合物もあり (例えば、 代表的 には、 式 (1 ) 及び式 ( 2 ) で示される。)、 この場合、 相転移点より高温領域に おいては、 当該相転移点より低温領域と比較して、 電気伝導度が飛躍的に大きな 値に変化する (通常、 伝導度が 1 03〜1 04倍増加する。) 化合物が多い (例えば Haile らの文献参照)。 このように、 当該化合物が相転移することにより、 結晶 構造の変化から高温領域において、 よりプロトン伝導性に有利な構造を持つこと になるので極めて好ましい特性である。
(葉状シリカ 2次粒子)
本発明に用いられる葉状シリカ 2次粒子について説明する。
当該葉状シリカ粒子 2次粒子は、 鱗片状のシリカの薄片 1次粒子を基本構成単 位とし、 当該 1次粒子同士が、 互いに面間が平行的に配向して複数枚重なって形 成される葉状シリカから実質的になる積層構造の粒子形態を有する葉状シリカ である。
この葉状シリカ 2次粒子は、 その形態に起因してきわめて特異な自己造膜性を 有し、 常温においても容易に強固なシリカ皮膜を形成する。 すなわち、 当該葉状 シリカ 2次粒子の水分散液は、 これをガラス基板上等に塗布し、 常温で乾燥する と、 皮膜形成剤や造膜助剤等を使用することなしに硬化し、 容易に強靱な塗膜が 形成される。 この塗膜は、 極めて強固であり、 容易には基板から剥離することは ない。
なお、 プロトン伝導性化合物に、 通常のシリカ微粒子を共存させると、 プロト ン伝導性化合物単独の場合に比較して、 より高いプロトン伝導性が得られること は、 前述した V . G . Ponomarevaらの文献に記載されている。 しかしながら、 先 に述べたように、 このような一般的なシリカ微粒子は、 基本的になんら造膜性を 有していないものであり、 薄膜形成には、 結着剤樹脂を必要とするという大きな 問題があった。
本発明は、 シリカ微粒子として、 葉状シリカ 2次粒子という、 高い自己造膜性 を有する特殊なシリ力微粒子を用いることにより、 プロトン伝導性化合物へのシ リカ添加によるプロトン伝導性の向上とともに、 造膜性を付与し、 機械的強度の 大きなプロトン伝導性膜の形成を可能ならしめた点に特徴を有するものである。
この葉状シリカ 2次粒子 (鱗片状シリカ 1次粒子) は、 結晶学的なシリカの分 類としては、 いわゆる層状ポリケィ酸またはその金属塩と総称されるシリカであ ることが好ましい。 ここで層状ポリケィ酸とは、 基本構成単位が S i〇4四面体 だけからなるシリゲート層構造のポリケィ酸を云う。 (したがって、 ポリゲイ酸 またはその金属塩とは、 例えばシリカ— X、 シリカ— Y、 ケニアアイト、 マガデ ィアイト、マ力タイト、アイラアイト、カネマイト、ォクトシリゲート等であり、 例えば層状ポリケィ酸塩を酸処理することによりゲイ酸塩中のアル力リ金属等 が水素イオンでイオン交換された Η型のものや、 当該酸処理前のアルカリ金属塩 等の塩型のものなどの総称である。) このように、 本発明において層状ポリケィ 酸とは、 上記 Η型及びアルカリ金属 (ここに、 アルカリ金属とは、 Na、 K、 L i、 C s、 Rbなど) 等の塩型の両者を意味する。
これらのうち、 後に層状ポリゲイ酸の一種であることが確認されたシリカ— X は、 A. H e y d e m a n nにより、最初に詳細に報告されており (B e 1 t r . M i n e r a l . P e t r og r. 10、 242 - 259 (1964))、 ついで シリカ— Xの類似結晶およびシリカ _Yについては、 B. A. M i t s yukに よって報告され(Ge o c h em. I n t. 13、 101— 1 1 1 (1976))、 さらにシリカ— Xおよびシリカ一 Yについては、 S. K i t ah a r a等によつ ても報告されている (P r o c. I n s t. S ymp. Hyd r o t h e rm. Re a c t., I s, 480 - 395 t (1983))。
一方、 その他の層状ポリゲイ酸およびその塩としては、 カネマイト、 マ力タイ ト、 マガディアイト、 ケニアアイト、 アイライト、 ォクトシリゲート等の天然或 いは合成の層状ポリケィ酸又はその塩が挙げられる。
本発明の目的には、 上記した層状ポリケィ酸の中でも、 シリカ— X, シリカ— Y, ケニアアイトという層状ポリケィ酸 (Η型) またはそのアルカリ金属塩が好 ましく、 なかでも、 層状ポリケィ酸 (Η型) がより好ましい。 さらに、 造膜性を 有する層状ポリゲイ酸(Η型)またはアル力リ金属塩として、層状ポリケィ酸(Η 型) である鱗片状シリカの薄片 1次粒子が互いに面間が平行的に配向し、 複数枚 (二枚以上) 重なって形成される葉状シリカ 2次粒子から実質的になり、 互いに 独立に存在する積層構造の粒子形態を有するものが最も好ましい。
なお、 ここにいう葉状シリカ 2次粒子には鱗片状シリカの薄片 1次粒子 (一枚 物) が含まれている状態であってもよい。
本発明における葉状シリカ 2次粒子は、 例えば、 特開 2000— 72432、 特開 2001— 163613、 特開 2002— 69385等において開示された 方法などに従い、 活性ケィ酸、 シリカゾル、 エア口ジル、 シリカヒドロゲル、 シ リカゲル (シリカキセロゲル) 等を出発物質として、 これらをアルカリ金属の存 在下で水熱処理する方法により、 まず、 葉状シリカ 2次粒子がさらに 3次元的に 不規則に重なり合って形成されたシリカ 3次凝集体粒子( 3次粒子)を生成させ、 次いで当該 3次粒子を解砕し、 葉状シリカ 2次粒子を得るという方法により調製 することができる。
なお、 シリカ 3次凝集体粒子の解砕は通常水スラリーとして実施され、 葉状シ リカ 2次粒子の水スラリ一が得られる。 当該葉状シリ力の水スラリーをさらに希 釈して噴霧乾燥等することにより葉状シリカ 2次粒子の乾燥粉体とすることは 可能であるが、 本発明においては、 葉状シリカ 2次粒子はその水スラリー (水性 分散液) としてそのまま使用することが好ましい。 また、 この水性分散液は、 当 該水等の水性媒体を有機媒体で置換して有機媒体分散液とすることも可能であ る。
このような水性分散液としての葉状シリカ 2次粒子としては、 上記のようにし て調製することができるが、 市販のものを適宜使用してもよい。 例えば、 市販の 葉状シリカ 2次粒子分散液としては、 サンラブリー LFS—HN— 150 (平均 粒径: 1. 5 m、 スラリー濃度 15%)、 サンラブリー LFS— HN—050 (平均粒径: 0. 5 ] Ή、 スラリー濃度 15%) (以上、 商品名、 洞海化学工業 社製) が好ましいものとして挙げられる。
この造膜性を有する葉状シリカ 2次粒子 (又は鱗片状シリカ 1次粒子) の基本 物性は、 以下のとおりである。
すなわち、 当該シリカ 2次粒子におけるシリカの S i 02純度は、 99. 0質 量%以上である。 ρΗは 6. 0〜8. 0であり、 X線回折のスペクトルとしては、 米国の AS TM (Ame r i c a n S oc i e t y f o r Te s t i ng and Ma t e r i a l s) に登録されているカード (以下 AS TMカードと
称する。)番号 1 6— 0 3 8 0に該当する 2 θ = 4. 9° 、 2 6. 0° 及び 2 8. 3 ° の主ピークを特徴とするシリカ— X及びノまたは ASTMカード番号 3 1 — 1 2 3 3に該当する 20 = 5. 6° 、 2 5. 8° 及び 28. 3° の主ピークを 特徴とするシリカ一 Υからなるシリカである。 上記以外のピークとしては、 シリ 力— Xの場合は、 ASTMカード番号 3 1 _ 1 2 34、 3 7— 0 3 86、 シリカ 一 Υの場合は、 ASTMカード番号 3 5— 6 3、 2 5— 1 3 32などのピークが 認められるものである。
吸油量 (J I S K 5 1 0 1) は、 1 0 0〜 1 5 OmL/1 0 0 gである。 また、 葉状シリカ 2次粒子の平均粒径は、 特に限定されるものではないが、 通常 0. 0 1— 20 m、 好ましくは 0. 0 1— 5 /m、 さらに好ましくは 0. 1― 2 m程度である。
ここで平均粒子径の測定方法としては、 レーザー回折/散乱式粒度分布測定装 置 (例えば、 堀場製作所社製、 8— 5 0 0型)、 或いはコール夕一カウンター (例えば、 コール夕一エレクトロニクス社製、 MA— I I型) 等を、 粒子径の範 囲に応じて適宜適用することにより、 測定される。
S EM観察すると、 この葉状シリカ 2次粒子は、 その厚さが 0. 0 0 1— 0. 5 m、 厚さに対する葉状シリカ 2次粒子 (板状) の最小の長さの比 (ァスぺク ト比) は、 2以上を有するものである。 葉状シリカ 2次粒子の厚さに対する最長 長さの比及び最小長さの比の上限は、 特に限定するものではないが、 前者は 30 0以下、 後者は 1 50以下が好ましい。
このシリカ 2次粒子の細孔分布を BET法 (日本ベル社製、 商品名ベルソープ — 2 8型) により測定すると、 細孔容積は、 0. 0 1— 0. 1 5mLZg、 比表 面積は、 3 0 _ 8 0 Om2Zgである。
また、 当該シリカ (熱処理していない常温での S i〇2) の赤外吸収スペクトル (FT— I R)は 3 6 0 0 _ 3 7 00 cm- 340 0— 3 5 00 c rrr1にそれぞ れ 1つの吸収帯をもつシラノール基をもつシリカである。 また、 BET法による 比表面積あたりのシラノール基の量は、 1 0— 1 0 0 mo 1 /m2という大き な値を有している。 この比表面積あたりのシラノール基の量が多いことが、 葉状 シリカ 2次粒子 (鱗片状シリカ粒子) が造膜性を有していることに密接に関係し
ていると推察される。
後記する薄膜の形成方法において詳述するが、 上記の葉状シリカ 2次粒子の水 分散液とプロトン伝導性化合物とを配合してスラリー状液を調製し、 当該スラリ 一状液を基板に塗布し、 乾燥、 必要に応じて熱処理をすることにより、 プロトン 伝導性化合物と葉状シリカ 2次粒子とからなる強靭な複合膜が得られる。
この複合膜は、 当該膜中の葉状シリカ 2次粒子が基板表面に対して平行的に配 向して積層され、 その積層中にプロトン伝導性化合物が均一に分散したもので構 成される。 上記のような葉状シ' j力 2次粒子が平行的に積層する複合膜の構造に より、 例えば燃料電池の固体電解質用途の場合には、 当該膜中の燃料分子の拡 散'透過が、 この膜中の葉状シリカ 2次粒子のミクロな積層構造に沿って迂回す る形で起こると推定される。 このため、 拡散 ·透過距離が、 非常に大きくなり、 膜中の燃料分子の拡散 ·透過現象 (クロスオーバー) を、 大幅に抑制することが 可能となる。
なお、 葉状シリカ 2次粒子の造膜性を大きく損なわない範囲で、 微粒子状の多 孔質シリカ (シリカゲル) などが一部共存して使用されてもよい。 さらに公知の バインダー樹脂を添加して薄膜の可撓性を向上させることも可能である。
(プロトン伝導性化合物と葉状シリカ 2次粒子からなる複合膜の形成)
本発明におけるプロトン伝導膜複合膜は、 スラリー状伝導性組成物の調製工程、 その基板への塗布工程、 媒体の乾燥、 除去工程からなる。
( 1 ) スラリー状伝導性組成物の調製工程
(プロトン伝導性化合物)
まず、 プロトン伝導性化合物及び造膜性を有する葉状シリカ 2次粒子を媒体に 溶解又は分散させて薄膜形成性のスラリー状プロトン伝導性組成物を調製する。 プロトン伝導性化合物としては、 すでに述べたように、 無機化合物、 有機化合 物のいずれも使用できるが、 熱安定性などの面からは、 無機化合物のほうが望ま しい。 無機化合物としては、 特に限定するものではないが、 例えば、 すでに述べ た式 (1 ) または式 (2 ) で示されるものが使用される。
MH X 04 ( 1 )
M3H (X〇4) 2 (2) (式中、 M = NH4、 L i、 Na、 K、 Rb、 C sであり、 X=S、 S eである。) このうち、 基本的には、 C sHS〇4、 NH4HS〇4、 (NH4) 3H (S〇4) 2等が 好ましいものとして挙げられる。
なお、 本発明におけるプロトン伝導性化合物は、 上記例示したもの 1種類だけ が使用できるのではなく上記例示したもののいくつかを併用したり、 または上記 したものと以下のものを併用することも可能である。 これにより相乗効果が期待 できる場合もある。 例えば、 上記した C s HS〇4と後記する C s H2P〇4、 をメ 力二カルミルング法を用いて混合すると複塩を形成し、 高温相側では高い導電率 を維持できる上、 さらに相転移温度が低下するという報告がされているとおりで ある (日本化学会第 85春期年会講演予講集 H4-49)。
また、 上記以外のものも使用可能であり、 例えば、 C sH2P04、 S b2Os - n H2〇、 S n02 · nH20、 Z r〇2 · nH2〇、 W03 · nH2〇、 ヘテロポリ酸 (H 4S i W12O40 · nH2〇、 H3PW12O40 · nH2〇)、 リン酸、 P205、 S i〇2 · x Z r P ' yH3P〇4、 ヒドロゲル化したリン酸塩ガラス、 I n 3+ド一プ S n P 207 (例えば、 Sn0.9。 I n0. 10P2〇7) なども好適に使用され、 このなかでは、 特に C s H2P04が好ましいものとして挙げられる。
(葉状シリカ 2次粒子)
一方、 葉状シリカ 2次粒子としては、 例えばすでに述べた特開 2000 - 72 432、 特開 2001— 163613、 特開 2002— 69385などで開示さ れた製法で製造されたもの、 または先に述べた市販の造膜性を有する葉状シリカ 2次粒子の水性分散液(例えば、サンラブリー L F S— H N— 050 (平均粒径: 0. 52 m)、 サンラブリー LFS— HN— 150 (平均粒径: 1. 5 ^m)) (以上、 商品名、 洞海化学工業社製) が好ましいものとして挙げられる。
(組成比)
上記プロトン伝導性化合物と葉状シリカ 2次粒子を媒体に溶解又は分散させ
て薄膜形成性のスラリー状組成物を調製する。 当該組成物 (塗布液) におけるプ 口トン伝導性化合物と葉状シリカ 2次粒子の配合割合は、 形成される複合膜の膜 強度が充分であり、 かつ、 高い伝導性を有するように両者の配合割合を任意に調 整すべきであり、 当該組成物におけるプロトン伝導性化合物質量の、 プロトン性 化合物と葉状シリカ 2次粒子との合計質量に対する割合としては、 例えば、 1一 9 9質量%、好ましくは 2 0 - 9 8質量%、さらに好ましくは 5 0— 9 7質量%、 一層好ましくは、 7 0— 9 5質量%の範囲にあることが望ましい。 この組成物中 の割合は、 当然のことながら当該組成物から形成される複合薄膜における割合 (含有量) に等しい。
このプロトン伝導性化合物の割合が前記上限を超えると、 プロトン伝導性が向 上し、 電気化学的特性は良好となるが、 造膜性を付与すべき葉状シリカ 2次粒子 の割合が過小になることから造膜性が低下し、 かつ、 充分な膜強度を得ることが できなくなる。 一方、 プロトン伝導性化合物が前記下限未満になると、 葉状シリ 力 2次粒子の割合が過剰になるため、 造膜性が良くなり強靭な膜を作成すること ができるが、 プロトン伝導性化合物の割合が非常に減少するため電気化学的特性 が極めて悪くなる。
このようにしてプロトン伝導性化合物と葉状シリカ 2次粒子を前記した範囲 となるようにして媒体に溶解又は分散させてスラリー状組成物すなわち塗布液 を調製する。 この場合、 プロトン伝導性化合物は媒体に未溶解で分散させてもよ いが、 溶解させた溶液として調製するほうが望ましい。 一方葉状シリカ 2次粒子 は、 通常、 当該媒体に分散させてスラリー状とする。
(スラリー組成物濃度)
かくして、 スラリー状のプロトン伝導性組成物 (塗布液) が得られるが、 当該 塗布液中の固体成分の濃度は 1一 5 0質量%、 好ましくは 1一 3 0質量%である ことが望ましい。
塗布液の濃度が 1質量%未満の場合は、 1回の塗布で形成しうる塗膜の膜厚が 非常に薄くなり、 所望の膜厚を得るのに多数回の重ね塗りが必要となる。 また 5 0質量%を超えると塗布液の粘度が高くなり塗布方法に制限が生じたり、 均一な 膜厚でプロトン伝導性膜を得ることができなくなることがあり好ましくない。
また塗布性を向上させるため、 当該塗布液には、 通常塗料に配合される、 界面 活性剤、 消泡剤、 増粘剤、 分散剤、 乳化剤、 顔料、 レべリング剤等の添加剤を配 合することができる。
m
塗布液を形成するための媒体としては、 通常水又は水性溶媒 (水と有機媒体と の混合媒体) を用いるのが好ましい。 なお、 所望により、 有機媒体を用いること もできる。有機媒体としては、特に限定するものではないが、例えばメタノール、 エタノール、 n—プロパノール、 イソプロパノール、 n—ブ夕ノール、 エチレン グリコール、 プロピレングリコールなどのアルコール類;酢酸メチル、 酢酸ェチ ル、 酢酸ブチルなどのエステル類;アセトン、 ェチルメチルケトン、 メチルイソ プチルケトン、ジイソプロピルケトン、ァセチルアセトン、ァセト酢酸エステル、 シクロブ夕ノン、 シクロペン夕ノン、 シクロへキサノンなどのケトン類、 ベンゼ ン、 トルエン、 キシレン等の芳香族炭化水素、 n—ヘプタン、 n—へキサン、 n 一オクタン等の脂肪族炭化水素が挙げられる。 これらは単独で使用してもよく、 また 2種以上混合して使用してもよい。
( 2 ) 塗布工程
当該組成物からなる塗布液は基板上に塗布され、 塗布層を形成する。
ここで基板とは、 その表面に塗布液が塗布される表面を提供するものである。 例 えば、 集電体又は電極 (例えば多孔質のカーボンペーパーを基材とした電極) 等 が用いられる。 また I T O等透明導電性ガラス基板、 銀ペースト又は銅ペースト ガラス基板、 金属基板であってもよい。 なお、 基板上に形成した塗布層を、 使用 に際して当該基板から剥離して使用することも可能である。 例えば、 離型性の良 レ剥離紙上に塗布する場合であり、 これも本発明にいう基板上に塗布する塗布ェ 程に該当する。
塗布手段は特に限定するものではなく、 スクリーン印刷、 スピンコ一ター、 口 一リレコ一夕一、 ドクターブレードコ一夕一、スプレーコ一夕一、口、 Vドコ一夕一、 カーテンフローコーター、 シャワーコ一ター、 ディップコ一夕一、 刷毛塗り等、 塗布厚み、 塗布面積、 塗布液の濃度や粘度、 塗布対象の基板の種類や形状等に応 じて任意の塗布手段を採用することができる。
( 3 ) 乾燥工程
当該形成された塗布層から前記媒体を乾燥除去する。 乾燥温度は、 塗布液の使 用媒体の種類やプロトン伝導性化合物が有機物質か無機物質である場合に応じ て適当な温度を採用するが、 媒体が水又は水性媒体の場合は、 通常、 室温一 2 0 0 、好ましくは 5 0 _ 1 8 0 、さらに好ましくは 9 0 - 1 6 0で程度である。 また、 乾燥装置として、 電熱乾燥器、 赤外線乾燥器、 熱風乾燥機、 電気炉等目的 に応じて任意のものが採用できる。 なお、 場合によっては風乾処理によってもよ い。
塗布を多数回行う場合は、乾燥は、全塗布工程が完了してから行ってもよいが、 各塗布工程の過程で適宜乾燥を行い、 さらに塗布、 乾燥を行うようにして、 塗布 ノ乾燥のサイクルを多数回繰り返してもよい。 なお、 塗布工程の最後に行う乾燥 は、 加熱処理を兼ねて、 例えば 1 0 O t:以上、 好ましぐは 1 5 0 以上という高 めの温度で行うことも好ましい。
かくして、 基板上に、 所望のプロトン伝導性複合膜を形成することができる。 形成したプロトン伝導性複合膜の膜厚は通常 1一 1 0 0 0 / m、 好ましくは 1 0 - 5 0 0 m, さらに好ましくは 2 0 - 3 0 0 x mの範囲であることが望まし レ 前記範囲下限未満では膜の機械的強度等が不十分でありまたその強度が低下 しゃすい。さらに膜厚が薄すぎるため、ガスバリア性に充分な効果が発揮できず、 燃料分子 (水素)のクロスオーバー (電解質中を燃料分子 (水素)が通り抜けてしま うこと)による電圧降下、電流低下の原因になり特性が発揮できなくなる。一方、 前記範囲を超えるときは膜が厚くなりすぎるため、 形成された当該プロトン伝導 性膜にクラック等がはいりやすくなり好ましくない。
(プロトン伝導性の評価方法)
なお、 本発明において調製したプロトン伝導性複合膜の伝導性については、 以 下のようにして測定するものとする。
基本的にイオン伝導体の伝導度測定方法には大きく分けて直流法と交流法があ るが本発明においては、 以下の理由により後者を採用することにした。
すなわち、 直流法では主に 4端子法が用いられる (「材料開発における結晶格 子欠陥とその応用」、 アイピーシー出版)。 直流 4端子法は、 試料が膜の場合は、
試料平面に平行に 4つの端子を取り付け、 外側の 2端子から電流を印加し、 内側 の 2端子で電圧を測定して導電率を測定する方法である。 この方法では電流端子 と電圧端子が分離されており、 入力インピーダンスの充分高い電圧計を用いるこ とで、 電圧端子と試料との間に存在する接触抵抗を無視できる特徴がある。 一般 的に 1 0—6 ( S / c m) より高い導電率を有する試料に対して、 通常この方法が 用いられる。 しかしながら、 本発明のプロトン伝導性複合膜においては、 膜中に 配向して存在する葉状シリカ 2次粒子に方向性があるため、 本法を適用すること は困難であると考えられる。
一方、 交流法の場合には、 イオン伝導体の電気化学的性質を明らかにするため には交流インピーダンス法が一般的であり、 これは、 一定の交流電圧下で周波数 変化を重ねて測定する方法である (「導電性高分子」、 講談社サイェンティフイツ ク)。 周波数を変化させて測定された交流応答を等価回路を用いて複素インピー ダンス解析することによりイオン伝導体の導電率、 誘電体などの固有の性質のみ ならず、 イオン伝導体内部の不均一性、 さらには電極 イオン伝導体界面に関す る情報など、 数多くの情報が得られる。 またこの方法は、 葉状シリカの方向性に は依存しない方法であると考えられる。
そこで本発明においては、 プロトン伝導性複合膜の導電率の測定には、 当該交 流インピーダンス法を用いた。
(有機高分子複合膜の形成)
以上、 プロトン伝導性化合物として、 まず無機化合物を用いた場合の、 プロト ン伝導性化合物と葉状シリカ 2次粒子からなるプロトン伝導性複合膜について 説明したが、 すでに述べたように本発明は、 公知の有機高分子化合物 (高分子電 解質) に対しても適用されるものである。 以下、 有機高分子化合物を用いた場合 の伝導性複合膜の形成についても説明する。
( 1 ) スラリー状伝導性組成物の調製工程
(プロトン伝導性化合物等)
すでに述べた無機化合物の場合と同様にして、 プロトン伝導性有機高分子化合 物及び造膜性を有する葉状シリカ 2次粒子を媒体に溶解又は分散させて薄膜形 成性のスラリ一状プロ卜ン伝導性組成物を調製する。
好適なプロトン伝導性有機高分子化合物としては、 特に限定するものではなく、 従来公知のものが使用可能であり、 例えば米国特許第 3 6 9 2 5 6 9号等におい て開示されているパ一フルォロスルホン酸ポリマ一ゃ特開 2 0 0 2— 1 4 6 0 2 0、 特開 2 0 0 3— 3 2 7 6 9 4等において開示されているスルホン化芳香族 化合物ポリマー等が好ましいものとして挙げられる。 これらのうち、 入手可能の ものとしては、 例えばナフイオン (Naf ion ,デュポン社登録商標)、 フレミオン (Flemion ,旭硝子社登録商標)、ァシプレックス(Aciplex ,旭化成社登録商標)、 Dow膜 (ダウケミカル社製) 等が挙げられる。 なお、 当該有機高分子化合物に配 合して複合化すべき葉状シリカ 2次粒子は、 すでに述べたものがそのまま適用で きる。
なお、 前述したように、 プロトン伝導性化合物は数種類を併用することが可能 である。 例えばプロトン伝導性は高いものの、 機械的特性にやや難のある化合物 と、 機械的特性に優れるもののプロトン伝導性がやや低い化合物と組み合わせ併 用することにより、 各特性に優れたプロトン伝導性化合物を得ることもできる。
(組成比)
上記プロトン伝導性有機高分子化合物と葉状シリカ 2次粒子は、 すでに述べた ように媒体に溶解又は分散させて薄膜形成性のスラリ一状組成物を調製する。 当 該組成物 (塗布液) におけるプロトン伝導性化合物と葉状シリカ 2次粒子の配合 割合は、 有機複合膜の膜強度及び伝導性を考慮して任意に調整すべきであり、 当 該組成物におけるプロトン伝導性化合物質量の、 プロトン伝導性化合物と葉状シ リカ 2次粒子との合計質量に対する割合としては、例えば、 1 - 9 9 . 9質量%、 好ましくは 2 0— 9 9質量%、 さらに好ましくは 5 0— 9 9質量%、 一層好まし くは、 7 0— 9 9質量%の範囲にあることが望ましい。 この組成物中の割合は、 当然のことながら当該組成物から形成される複合薄膜における割合 (含有量) に 等しい。
このプロトン伝導性有機高分子化合物の割合が前記上限を超えると、 伝導性等 電気化学的特性は良好となるが、 葉状シリカ 2次粒子の割合が過小になるため、 充分な膜強度を得ることができなくなる。 一方、 プロトン伝導性化合物が前記下 限未満になると、 葉状シリカ 2次粒子の割合が過剰になり、 強靭な膜が得られる
が、 プロトン伝導性化合物の割合が減少し電気化学的特性が極めて悪くなる。 このようにしてプロトン伝導性有機高分子化合物と葉状シリカ 2次粒子を前 記した範囲に調製して媒体に溶解又は分散させてスラリー状組成物すなわち塗 布液を調製する。 この場合、 プロトン伝導性有機高分子化合物は媒体に分散させ てもよいが、 溶液として調製するほうが望ましい。 葉状シリカ 2次粒子は、 先に 述べたように、 当該媒体に分散させてスラリー状とする。
(スラリー組成物濃度)
このようにして、スラリー状のプロトン伝導性組成物(塗布液)が得られるが、 当該塗布液中の固体成分の濃度は 1一 5 0質量%、 好ましくは 1一 3 0質量%で ある。 塗布液の濃度が 1質量%未満の場合は、 1回の塗布で形成される塗膜の膜 厚が非常に薄くなり、 所望の膜厚を得るのに多数回の重ね塗りが必要となる。 ま た 5 0質量%を超えると塗布液の粘度が高くなり塗布方法に制限が生じる等の 問題が生じる。
(媒体)
塗布液を形成するための媒体としては、 すでに述べたように水又は水と有機媒 体からなる水性媒体を用いる。 なお、 同様にして、 有機媒体を用いることもでき る。 有機媒体としては先に述べたメタノール、 エタノール、 n—プロパノール、 イソプロパノール、 n—ブ夕ノール、 エチレングリコール、 プロピレングリコー ルなどのアルコール類;酢酸メチル、酢酸ェチル、酢酸ブチルなどのエステル類; アセトン、 ェチルメチルケトン、 メチルイソプチルケトン、 ジイソプロピルケト ン、 ァセチルアセトン、 ァセト酢酸エステル、 シクロブ夕ノン、 シクロペンタノ ン、 シクロへキサノンなどのケトン類、 ベンゼン、 トルエン、 キシレン等の芳香 族炭化水素、 n—ヘプタン、 n—へキサン、 n—オクタン等の脂肪族炭化水素が 挙げられる。 これらは単独で使用しても、 2種以上混合して使用してもよい。 ま た、 塗布性を向上させるため、 すでに述べたように、 界面活性剤や増粘剤を配合 することもできる。
( 2 ) 塗布工程
当該組成物からなる塗布液は、 無機塗布液の場合と同様基板上に塗布され、 塗 布層を形成する。 基板としては、 すでに述べたように、 例えば、 集電体又は電極
(例えば多孔質のカーボンペーパーを基材とした電極) 等が用いられ、 また I T
〇等透明導電性ガラス基板、 銀ペースト又は銅ペーストガラス基板、 金属基板で あってもよい。 さらに、 基板上に形成した塗布層を使用に際して当該基板から剥 離して使用することも可能であり、 例えば離型性の良い剥離紙上に塗布すること もできる。
塗布手段は特に限定するものでなく、 無機塗布液の場合と同様に、 スクリーン 印刷、 スピンコ一夕一、 ロールコ一夕一、 ドクターブレードコーター、 スプレー コ一夕一、 ロッドコ一ター、 カーテンフローコ一夕一、 シャワーコ一夕一、 ディ ップコ一夕一、 刷毛塗り等、 塗布厚み、 塗布面積、 塗布液の濃度や粘度、 基板の 種類等に応じて適当な塗布手段を採用することができる。
( 3 ) 乾燥工程
当該形成された有機高分子含有塗布層から前記媒体を乾燥除去する。 乾燥温度 は、 塗布液の使用媒体の種類や当該有機高分子化合物の種類に応じて適当な温度 を採用するが、 媒体が水又は水性媒体の場合は、 通常、 室温一 2 0 O t:の範囲で 適宜設定できる。 また、 乾燥装置としては、 すでに述べた電熱乾燥器、 赤外線乾 燥機、 熱風乾燥機、 電気炉等任意のものが採用できる。 なお、 場合によっては加 熱しないで風乾を行うこともできる。
塗布を多数回行う場合は、乾燥は、全塗布工程が完了してから行ってもよいが、 すでに述べたように各塗布工程の過程で適宜乾燥を行い、 塗布 Z乾燥のサイクル を多数回繰り返えすようにしてもよい。 なお、 塗布工程の最後に行う乾燥は、 加 熱処理を兼ねて、 上記乾燥温度よりも高い温度、 例えば 5 0 以上という温度で 行うこともできる。 かくして、 基板上に、 所望のプロトン伝導性有機高分子複合 膜が形成される。
以上のごとくして形成したプロトン伝導性有機高分子複合膜は、 当該膜中に造 膜性を有する葉状シリカ 2次粒子が配合され、 基板に配向して存在するものであ るが、 当該複合膜の膜厚は、 通常 0 . 1— 1 0 0 0 m、 好ましくは 1— 1 0 0 0 m, さらに好ましくは 1 0— 5 0 0 i m、 最も好ましくは 1 0— 3 0 0 m の範囲である。 前記範囲下限未満では膜の機械的強度が不十分であり、 また膜厚 が薄すぎるため、 充分なガスバリア効果を奏することができず、 燃料分子 (水素
等) のクロスオーバーによる電圧降下、 電流低下の原因となる。 一方、 前記範囲 をあまり超えるときは、 膜が過度に厚くなり製造が困難になる。
なお、 従来、 パーフルォロスルホン酸ポリマーにシリカゲルが配合されてなる プロトン伝導性の複合膜は、 例えば、 特許第 3 0 3 5 8 8 5号公報に記載されて いるように、 すでに公知である。 しかしながら、 このような、 複合膜におけるパ 一フルォロスルホン酸ポリマーに配合されたシリカゲルの目的 ·役割は、 当該シ リカゲルが水分吸湿性を有することから、 その水分吸着機能により、 膜中に保持 できる水分量を、 当該パ一フルォロスルホン酸ポリマーが正常に作動するために 必要な高いレベルに維持し、 当該複合膜のプロトン伝導性を維持することにある。 また、 配合されるシリカゲル粒子は、 その粒子形状が不定形または球状であり、 鱗片形状または葉状でないため、 これをポリマーと複合しても、 当該膜中に配向 することなく分散して存在するだけであり基板に対して層状に配向するもので ないから、 かかる燃料分子の膜中の透過性 (クロスオーバ一) を大幅に抑制する 機能を付与することは期待できない。
本発明においてプロトン伝導性有機高分子膜に配合される葉状シリカ 2次粒 子は、 鱗片状シリカ 1次粒子が積層してなる自己造膜性を有するものであり、 粒 子の形態的にもここにいうシリカゲルとは、 全く異なるシリカである。 そしてそ の主たる機能は、 葉状シリカ 2次粒子が当該複合膜中で基板に平行に配向 ·積層 して存在するため、 当該有機高分子膜の膜質 (機械的強度等) を向上させるとと もに、 当該膜中を燃料分子が透過することを遮断して、 クロスオーバ一を格段に 低下させる点にある。 シリカゲルには、 このようなガスバリア作用は実質的に存 在しない。
ただし、 本発明で使用している葉状シリカ 2次粒子は、 その比表面積当たりの シラノール基の濃度が、 非常に高いので、 かなりの水分吸着性能を有しているこ とから、 副次的な効果として、 上記した、 水分吸着機能による膜中の水分含量の 維持に関しては、 シリカゲルと同様な効果があると考えられる。 また、 葉状シリ 力 2次粒子は、その粒子径分布を調整することにより、水分吸着性能を調整でき、 これをシリカゲルに近いレベルに増加させることもできる。
なお、 パーフルォロスルホン酸ポリマーなどのプロトン伝導性ポリマーと葉状
シリカ 2次粒子との複合膜の製膜法としては、 当該プロトン伝導性ポリマーと葉 状シリカ 2次粒子とが媒体中に分散した液を、 基板に塗布 ·乾燥して製膜するこ ともできるし、 プロトン伝導性ポリマーに葉状シリカ 2次粒子の媒体分散液を添 加 ·混練した後、 プラスチックフィルムの製膜法として汎用されている押し出し 製膜法等を適用して膜状にした後、 当該膜中の媒体を乾燥除去して製膜すること もできる。
(有機プロトン伝導性化合物と無機プロトン伝導性化合物の複合系等) なお、 本発明のプロトン伝導性複合膜においては、 さらに、 前記無機化合物か らなるプロトン伝導性化合物と上述した有機高分子化合物からなるプロトン伝 導性化合物とを併用または複合して用いてもよい。
この場合、 無機化合物からなるプロトン伝導性化合物 1種類と、 有機高分子か らなるプロトン伝導性化合物 1種類との組み合わせに限らない。 複数の無機化合 物からなるプロトン伝導性化合物と、 複数の有機高分子からなるプロトン伝導性 化合物とを、 プロトン伝導性、相転移温度、機械的特性、などの各特性において、 所望の特性を得るために、 任意に組み合わせることも可能である。
さらにまた、 形成されるプロトン伝導性膜に適度な柔軟性や、 耐熱性、 耐酸性 などを与えるために、 それ以外の一般的な有機高分子化合物を含有させることが できる。
例えば、 ポリイミド、 ポリアミドイミド 等のポリイミド樹脂; ジメチルシリ コーン等のシリコーン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂、 ポリテトラメチレンォ キシド、 ポリへキサメチレンォキシド等のポリエーテル類;ポリエチレン、 ポリ プロピレン、 ポリイソブチレン等のポリオレフィン類;ポリテトラフルォロェチ レン、 ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂等が好適に用いられる。 また、 これ ら有機化合物は単独でまたは 2種類以上混合して使用することもできる。
(メタノール透過性)
以上、 本発明が提供するプロトン伝導性複合膜の組成および形成方法について 説明をしてきた。 しかしながら、 固体高分子型燃料電池電解質膜については、 高 いプロトン伝導性のほかにも代表的な燃料分子であるメタノール等のクロスォ 一バーによる電圧低下の点で大きな改善が求められている。 固体高分子型燃料電
池膜では、 一般にはナフイオン (登録商標、 デュポン社製) に代表されるパーフ ルォロカ一ポンスルホン酸ポリマーが用いられている。 これらの高分子電解質膜 は、 膜中に含まれる水とスルホン酸基でイオンクラス夕一を形成し、 その中をプ 口トンが伝導していくと考えられている。 このプロトンの移動の際に、 水も同伴 して移動をするため、 イオン伝導度が膜の含水率に大きく影響されることとなる。 さらにこれらの電解質膜を D M F C (Direct Methanol Fuel Cell ,直接メ タノ一ル型燃料電池) 用として使用した場合、 正極に供給したメタノールが電解 質膜中に入り込み、 プロトンと水の移動に同伴することで同じようにメタノール が負極側へと拡散 ·透過し負極に達する。 これが原因となり電池出力が低下する こととなる (メタノールのクロスオーバー)。 これらのことから、 D M F Cの実 用化のためには、 このようなメタノールのクロスオーバ一を抑制することは、 非 常に重要な技術課題となっている。
本発明によれば、 公知の有機高分子化合物 (高分子電解質) を用いたプロトン 伝導性化合物に、 葉状シリカ 2次粒子を配合してなる、 プロトン伝導性化合物と 当該葉状シリカからなるプロトン伝導性複合膜が提供されるが、 当該複合膜によ れば、 高いプロトン伝導性を維持しながら、 かつ、 メタノール透過を大幅に抑制 できる。
本発明においてプロトン伝導性有機高分子膜に配合される葉状シリカ 2次粒 子は、 鱗片状シリカ 1次粒子が積層してなる自己造膜性を有するものであり、 そ してその主たる機能は、 当該葉状シリカ 2次粒子が当該複合膜中で基板に平行に 配向 ·積層して存在するため、 当該有機高分子膜の膜質 (機械的強度等) を向上 させるとともに、 膜中の燃料分子の拡散 ·透過が、 膜中の葉状シリカ 2次粒子の ミクロな積層構造に沿って迂回する形で起こることである。 このため、 メタノー ル等の燃料分子の拡散'透過距離が、非常に大きくなり、膜中の燃料分子の拡散 · 透過現象 (クロスオーバー) を、 大幅に抑制することができる。
(燃料分子透過性の試験方法)
膜中の燃料分子の透過試験方法についてはこれまで種々の方法で測定されて いる。 例えば、 差圧式透過測定法 (JIS-K7126)、 恒温槽中に拡散セルを用いた 液 Z液系での測定法 (特開 2 0 0 5— 3 8 6 6 9 )、 単セルで拡散による燃料分
子の質量変化による測定法 (特開 2 0 0 5— 5 1 7 1 )、 塩化カルシウムを用い て塩化カルシウムの質量変化による測定法 (特開 2 0 0 4 - 3 5 5 8 3 2 ) 等が 報告されている。 本発明においては、 これらの測定方法のいずれについても基本 的に使用することができる。 ただし、 これら測定法に限定するものではなく、 そ の他の公知の測定法を採用しても構わない。
(膜中における燃料分子透過性の比較)
本発明のプロトン伝導性複合膜によれば、 高いプロトン伝導度を維持しながら、 複合膜中の燃料分子の透過 (クロスオーバ一) を抑制することができる。
燃料分子の透過抑制効果を数値で表す場合、 例えば燃料分子としてメタノール を用いた場合、 同一環境下 (同一温度、 同一膜厚など数値化したものが変数に影 響するものはすべて同一、 そして同じ測定法であること) でそのメタノール透過 量が、 シリカを含有しないプロトン伝導性膜のみからなる膜のメタノール透過量 を基準として、 当該基準値に対するシリ力を含有する複合膜のメタノール透過量 の相対値 (以後これを 「燃料分子透過相対値」、 または 「燃料分子透過量の相対 値」 という。 特に燃料がメタノールであるときは、 「メタノール透過相対値」 等 という。) で比較すると燃料分子のクロスオーバーの抑制効果の有無を判断しや すいため好ましい。
本発明におけるプロトン伝導性複合膜においては、 燃料分子のクロスオーバー 抑制には、 前記した燃料分子透過相対値が 1未満であることが、 好ましい。 さら に好適には燃料分子透過相対値が 0 . 9以下の範囲、 より一層好適には、 0 . 8 以下の範囲にあることである。 なお、 プロトン伝導性を大きく損なわない範囲で あれば、 当該燃料透過相対値は小さいほど望ましい。
(本発明のプロトン伝導性複合膜を用いる燃料電池の基本構成)
以下、 プロトン伝導性を有する化合物及び造膜性を有する葉状シリカ 2次粒子 からなる本発明のプロトン伝導性複合膜を用いた燃料電池の構成について簡単 に説明する。
燃料電池は化学反応のギプスの自由エネルギーを直接電気エネルギーに変換 する装置であり、 負極に燃料を、 また正極に当該燃料を酸化する物質をそれぞれ 連続的に供給して発電するものである。 その構造は固体電解質を使用する場合、
当該固体電解質の膜を負極 (燃料極) と正極 (酸化剤極) とで挟持したものとな る。 なお、 ここにいう固体電解質とは、 もちろん高分子電解質を含む意味で使用 する。
本発明の燃料電池は、 この固体電解質膜として、 プロトン伝導性複合膜を備え てなることを特徴とするものであり、 その他の構成は、 公知の燃料電池と同様に してよく、 特に制限のあるものではない。
例えば、 燃料極と酸化剤極とからなる対向電極のほかに、 カーボンペーパーな どの導電膜からなる集電体が取り付けられる場合もある。 また、 燃料極には水素 や天然ガスなどガス燃料またはメタノールやェ夕ノールなどのアルコール類な ど液体燃料が供給され、 酸化剤極には、 酸素ガスや空気などの酸化剤ガスを供給 する。
上記の燃料電池で使用される燃料極あるいは酸化剤極は特に限定するもので はなく、 例えば、 カーボンペーパー上に白金やルテニウムなどの貴金属等を担持 した触媒層担持カーボンペーパーなどが使用できる。
セルの形成には、 プロトン伝導性複合膜を燃料極及び酸化剤極で狭持し、 これ をさらに燃料や酸素といった反応ガスの供給路を兼ねている溝を持ったセパレ 一夕 (仕切板) によって狭持する。 これを単セルと称し、 単セルをいくつか集合 させることで燃料電池スタックを構成することができる。
(実施例)
以下、 実施例により本発明を説明する。 ただし、 これらは単なる実施の態様の 一例であり、 本発明の範囲がこれらによりなんら限定的に解釈されるものではな レ^ なお、 %とあるものは、 とくに断りなき限り、 質量%である。
〔実施例 1〕 (プロトン伝導性膜の形成 ガラス基板)
( 1 ) プロトン伝導性化合物として無機プロトン伝導性化合物である硫酸水素セ シゥム (C s H S 04) を用い、 C s H S〇4の濃度が 3 0質量%になるようにそ の水溶液を調製した。 当該水溶液 1 0 0質量部に、 葉状シリカ 2次粒子 (洞海化 学工業社製サンラブリー L F S— HN— 1 5 0、平均粒径 1 . 5 m、 1 5質量% 水分散液) を 5 0質量部混合し、 3 0分間室温でよく撹拌してスラリー状のプロ 卜ン伝導性組成物 (A) (以下 「混合物スラリー (A) J ということもある。) を
調製した。
(2) この混合物スラリー (A) を用い、 第 1図に概略図を示したようにして試 験片を調製した。 すなわち、 あらかじめガラス製のプレパラート 1上に、 伝導性 銀ペースト 3 (デュポン社製:導体ペースト BQ 212) を当該プレパラートの 短軸方向に 1 cm間隔をあけて 2列平行に塗布 ·乾燥させ溶媒を除去し、 さらに 端部に導線 5を接続した基板 (以下 「銀ペーストコートガラス基板」 ということ がある。) の上に、 上記混合物スラリー (A) を全面に塗布し、 100 で1時 間乾燥させた。
再び同じ塗布 ·乾燥工程を 2回繰り返して所望の厚みになった時点で、 最後に 150 で 1時間加熱処理して無機プロトン伝導性複合膜 10 (以下単に「薄膜」 または 「膜」 ということがある。) (C sHS04:シリカ =80 : 20 (質量比)) を形成した。 これを試験片 (試験片番号: AM) とした。 当該無機プロトン伝導 性膜試験片 (AM) の薄膜 10は強靭であり、 膜表面も平滑であった。 当該プロ トン伝導性膜の膜厚は 175 mであった。
なおこの試験片 (AM) について、 プロトン伝導性化合物、 用いたシリカの種 類、 膜を形成した基板、 膜の組成、 膜の強度 ·表面平滑性、 基板密着性について 表 1にまとめて示した。
(3) 上記無機プロトン伝導性膜試験片 (AM) を用いて、 膜の導電率を測定し た。 ただし、 試験片温度は当該プロトン伝導性化合物の相転移点の前後とし、 1 00で、 120 :、 140T:、 16 Ot:の 4条件に変化させて、 ケミカルインピ —ダンスメーター (日置電機社製、 3532— 80) を用いて交流インピーダン ス法により測定を行った。 測定周波数範囲は、 10Hz— 10MHz、 印加電圧 は 1 OmVで行い、 得られたデータを複素インピーダンス解析をすることにより、 測定試料の抵抗値から、 導電率 (SZcm) を求めた。 結果を第 2表に示した。 〔実施例 2〕 (プロトン伝導性膜の形成 ガラス基板)
( 1 ) プロトン伝導性化合物として無機プロトン伝導性化合物であるリン酸ニ水 素セシウム (C sH2P04) を用い、 C s H2P〇4の濃度が 30質量%になるよう にして水溶液を調製した。 当該水溶液 100質量部に、 葉状シリカ 2次粒子 (洞 海化学工業社製サンラブリー LF S—HN— 150、 平均粒径 1. 5 im、 15
質量%水分散液) を 50質量部を混合し、 30分間室温で撹拌して均一のスラリ 一状のプロトン伝導性組成物 (B) (以下 「混合物スラリー (B)」 ということも ある。) を調製した。
(2) 上記混合スラリー (B) を用いて実施例 1と同様にして処理し第 1図に示 す無機プロトン伝導性膜 10 (C s H2P〇4: シリカ =80 : 20 (質量比)) を 形成し、 これを試験片 (試験片番号: BM) とした。
調製した無機プロトン伝導性膜試験片 (BM) の薄膜 10は強靭であり、 膜表 面も平滑であった。 当該プロトン伝導性膜の膜厚は 174 z/mであった。
またこの試験片(BM)について、プロトン伝導性化合物、用いたシリカの種類、 膜を形成した基板、 膜の組成、 膜の強度 ·表面平滑性、 基板密着性について第 1 表にまとめて示した。
(3) 上記無機プロトン伝導性膜試験片 (BM) を用いて、 実施例 1と同様にし て膜のプロトン導電率を測定した結果を第 2表に示した。 ただし、 試験片温度は 当該プロトン伝導性化合物の相転移点の前後とし、 200 、 220で、 240^:、 26 O の 4条件とした。
〔実施例 3〕 (プロトン伝導性膜の形成ノガラス基板)
( 1 ) プロトン伝導性化合物として無機プロトン伝導性化合物である二硫酸水素 三アンモニゥム ((NH4) 3H (S04) 2) を用い、 (NH4) 3H (S04) 2の濃度 が 30質量%になるようにして水溶液を調製した。 当該水溶液 100質量部に、 葉状シリカ 2次粒子 (洞海化学工業社製サンラブリー LFS— HN_ 150、 平 均粒径 1. 5;^m、 15質量%水分散液) を 50質量部混合し、 30分間室温で 撹拌してスラリー状のプロトン伝導性組成物(C) (以下「混合物スラリー(C)」 ということもある。) を調製した。
(2) 上記混合スラリー (C) を用いて実施例 1と同様にして処理し第 1図に示 す無機プロトン伝導性膜 10 ((NH4) 3H (S〇4) 2: シリカ =80 : 20 (質 量比)) を形成し、 これを試験片 (試験片番号: CM) とした。
調製した無機プロトン伝導性膜試験片 (CM) の薄膜 10は強靭であり、 膜表 面も平滑であった。 当該プロトン伝導性膜の膜厚は 233 ^mであった。
また試験片 (CM) について、 プロトン伝導性化合物、 用いたシリカの種類、 膜
を形成した基板、 膜の組成、 膜の強度 ·表面平滑性、 基板密着性について第 1表 にまとめて示した。
(3) 上記無機プロトン伝導性膜試験片 (CM) を用いて、 実施例 1と同様にし て膜の導電率を測定した結果を第 2表に示した。
〔実施例 4〕 (プロトン伝導性膜の形成ノカーボンペーパー基板)
(1) 実施例 1で調製した混合物スラリー (A) を基板であるカーボンペーパー (東洋紡績社製、 20mmX 20mmX 0. 2mm) に塗布し、 l O O :で 30 分乾燥させて薄膜を形成した。 当該薄膜の上に当該スラリー (A) を再度塗布し 10 で 30分乾燥させた。 さらにこの薄膜上にもう一度当該スラリー (A) を塗布し、 10 Ot:で 30分間乾燥させた。 最後に同じ当該スラリー (A) を塗 布し、 5分間乾燥させ、 当該調製した塗布膜にまだ若干水分が残った状態で、 も う一枚のカーボンペーパーを上記調製膜の上にのせて密着せしめ、 さらに 10 0 で 25分間乾燥させ、 2枚のカーボンペーパーで挟持された無機プロトン伝 導性膜 10を得た。 このカーボンペーパー挟持無機プロトン伝導性膜は当該両側 のカーボンペーパーに対して高い密着性を示し、 また、 良好な製膜状態を示して いた。 なお、 当該伝導性膜の厚みは 192 / mであった。
(2) 上記カーボンペーパー挟持無機プロトン伝導性膜から第 2図 (概略図) に 示すような試験片を形成した。 すなわち、 基板であるカーボンペーパー 13によ り挟持されている無機プロトン伝導性膜 10を、 乾燥機から取り出して、 10m mx 10mmになるよう切り出し、 両面に密着しているカーボンペーパー 13に 導線 5を銀ペーストで接着させ 1 5 で 1時間加熱して無機プロトン伝導性 膜試験片 (DM) を得た。 その試験片の概略図を第 2図に示した。
試験片 (DM) について、 プロトン伝導性化合物、 用いたシリカの種類、 膜を 形成した基板、 膜の組成、 膜の強度 ·表面平滑性、 基板密着性について第 1表に まとめて示した。
(3) 上記無機プロトン伝導性膜試験片 (DM) を用いて、 実施例 1と同様にし て膜の電導率を測定した結果を第 2表に示した。
〔実施例 5〕 (プロトン伝導性膜の形成 Zカーボンペーパー基板)
(1) 混合物スラリー (A) の代わりに混合物スラリー (B) を用いるほかは、
実施例 4と同様に処理して無機プロトン伝導性膜試^片 (EM) を得た。 この伝 導性膜の厚みは 211 mであった。
試験片 (EM) について、 プロトン伝導性化合物、 用いたシリカの種類、 膜を 形成した基板、 膜の組成、 膜の強度 ·表面平滑性、 基板密着性について第 1表に まとめて示した。
(2) 当該無機プロトン伝導性膜試験片 (EM) を用いて、 実施例 1と同様にし て膜のプロトン伝導度を測定した結果を第 2表に示した。 ただし、 試験片温度は 当該プロトン伝導性化合物の相転移点の前後とし、 200で、 220で、 240 、
260 の 4条件とした。
〔実施例 6〕 (プロトン伝導性膜の形成 カーボンペーパー基板)
(1) 混合物スラリー (A) の代わりに混合物スラリー (C) を用いるほかは、 実施例 4と同様に処理して無機プロトン伝導性膜試験片 (FM) を得た。 この伝 導性膜の厚みは 238
であった。
試験片 (FM) について、 プロトン伝導性化合物、 用いたシリカの種類、 膜を 形成した基板、 膜の組成、 膜の強度'表面平滑性、 基板密着性について第 1表に まとめて示した。
(2) 当該無機プロトン伝導性膜試験片 (FM) を用いて、 実施例 1と同様にし て膜のプロトン導電率を測定した結果を第 2表に示した。 第 1表
*洞海化学工業社製サンラブリー LFS— HN— 150
* *室温でのプロトン伝港性膜の鉛箪硬度: 2 H〜 4 H
碁继目剥離試験: 8〜10点 (>1 15 K 5600 - 5 - 6)
第 2表
〔実施例 7〕 (プロトン伝導性有機高分子化合物/ガラス基板)
(1) プロトン伝導性化合物としてプロトン伝導性有機高分子化合物であるナフ イオン (デュポン社登録商標、 パ一フルォロスルホン酸ポリマー) 10%分散溶 液 DE 1021 (和光純薬社販売) をエタノールで溶剤置換 (20倍量のエタノ ールを加えて 19倍量分を留去、 これを 5回繰り返す。) し、 ナフイオン 10% エタノール分散液を調製した。
これとは別に葉状シリカ 2次粒子 (洞海化学工業社製サンラブリー LFS—H N- 150, 平均粒径 1. 5 , 15 %質量%水分散液) を n—ブタノールで 溶剤置換し、 葉状シリカの 15%ブ夕ノール分散液を調製した。
このナフイオン 10%エタノール分散液 90質量部と、 葉状シリカの 15%ブ タノール分散液 10質量部を混合し、 10分間室温でよく撹拌してスラリー状の プロトン伝導性組成物 (G) を調製した。
(2) 調製した混合物スラリー (G) を基板であるソーダガラス板 (75mmx 75mmx 3 mm) に塗布して 12時間風乾させた。 得られた複合膜の表面は、 亀裂などは認められず平滑であった。 また当該複合膜を、 ガラス板から剥がすと いう機械的な張力を加えても、 膜は裂けることなどなく、 複合膜を剥離し、 膜厚 が 62 zmの美麗な複合膜 (葉状シリカ 2次粒子との複合膜) を得ることができ た (当該複合膜組成 ナフイオン: シリカ =90 : 10 (質量比))。
(3) 得られた複合膜を厚み方向に切断し、 断面を SEMで観察したところ、 薄 膜内の葉状シリカ 2次粒子は、 その長さ方向がそれぞれ基板にほぼ平行に配向し
た状態で分散性よく存在していることが確認された。 このように、 葉状シリカ 2 次粒子は、 複合膜内において基板に対して層状に配向しているので、 当該複合膜 を固体高分子型燃料電池 (P E F C ) の高分子電解質として使用した場合、 水素 等燃料分子の膜厚み方向の拡散移動は、 当該膜内の配向シリカ粒子により実質的 に遮断され、 そのクロスオーバーが効果的に抑制されると考えられる。
また上記したように、 基板から複合膜を剥離する場合には、 後記比較例 2の場 合のように、 膜の表面に一部亀裂が入ったり、 または膜を基板から剥離する際に 膜が裂けてしまう等の現象は全く起こらず、 基板上の複合膜を美麗なフィルムと して完全に剥離することができた。 これは、 葉状シリカ 2次が薄膜内に基板に平 行に配向した状態で分散して補強フィラーとして存在するため、 当該薄膜の膜質 すなわち、 フィルムの機械的強度が大幅に向上しているためであると推定される。 なお、 パーフルォロスルホン酸ポリマーとシリカゲルとからなる複合膜は、 す でに述べたように、 引例 4等に記載されているように公知であるが、 本発明にお ける葉状シリカ 2次粒子は、 シリカゲルとはその形態等の相違に起因して、 その 奏する膜質の向上、 燃料分子のクロスオーバーの抑制等の作用効果が異なるもの である。 なお、 本複合膜のプロトン導電性は、 上記シリカゲルを配合した公知例 のものと、 同程度であることを確認した。
〔比較例 1〕
( 1 ) 葉状シリカ 2次粒子の水分散液の代わりに微粒子状シリ力ゲル水分散液 (シリカゲル:平均粒子径 2 . 0 ^ m、 1 5質量%水溶液になるように調製) を 用いた以外は、 実施例 1と同様にして無機プロトン伝導性膜の試験片 (X) を作 成した。
( 2 ) 調製した無機プロトン伝導性膜試験片 (X) の当該伝導性膜 (厚み: 2 0 5 u rn) は、 組成 (C s H S〇4:シリカ = 8 0 : 2 0 (質量比))、 すなわち、 膜 のシリカ含有量は、 実施例 1と実質的に同一なものであつたが、 当該膜は弱く指 で擦触することで簡単に膜が剥れてしまう程度の小さな膜強度であり、 それ自体 プロトン伝導性膜としては実際には使用に耐えないものであった。 結果を第 3表 にまとめた。
〔比較例 2〕
葉状シリカ 2次粒子を添加しない他は、 実施例 7と同様にしてガラス基板上にポ リマー膜 (高分子膜) を作成した。 本比較例は、 プロトン伝導性ポリマーの溶媒 分散液を基板に塗布し乾燥して製膜する方法を適用した場合において、 葉状シリ 力 2次粒子を添加しない場合と比較したものである。
このようにして基板上に得られたポリマー膜には、 膜表面に一部亀裂が認めら れた。 また、 当該ポリマー膜をガラス板から剥がそうとして、 機械的な張力を加 えると、 当該ポリマー膜は容易に裂けてしまい実施例 7の場合のように、 完全な 剥離フィルムを得ることができなかった。
〔参考例 1〕
( 1 )無機プロトン伝導性化合物として硫酸水素セシウム(C sHS04)を用い、 30質量%濃度の C sHS〇4水溶液 1000質量部に、葉状シリカ 2次粒子(洞 海化学工業社製サンラブリー LFS— HN— 150、 平均粒径 1. 5;t m、 15 質量%水分散液) 3質量部を添加混合した以外は、 実施例 1と同様にして無機プ 口トン伝導性膜試験片 (Y) を作成した。
(2) 調製した無機プロトン伝導性膜試験片 (Y) の当該伝導性膜 (厚み: 23 0 m) は、 その組成 (C sHS〇4 : シリカ =99 : 1 (質量比)) が、 造膜性 を有する葉状シリカ 2次粒子の配合量が充分ではなかったためか、 平滑性が不十 分であり、 指で強く擦触することにより、 膜が剥れる傾向にあった。 結果を第 3 表にまとめた。
〔参考例 2〕
( 1 )無機プロトン伝導性化合物として硫酸水素セシウム(C s H S〇4)を用い、 30質量%濃度の C sHS〇4水溶液 100質量部に、 葉状シリカ 2次粒子 (洞 海化学工業社製サンラブリー LFS— HN— 150、 平均粒径 1. 5 ΠΙ、 15 質量%水分散液) 300質量部を添加混合した以外は、 実施例 1と同様にして無 機プロトン伝導性膜試験片 (Ζ) を作成した。
(2) 調製した無機プロトン伝導性膜試験片 (Ζ) の当該伝導性膜 (組成 (C s HS04: シリカ =40 : 60 (質量比)) (厚み: 183 m) は、 強靭であり、 膜表面も平滑であつたが、 その組成において、 造膜性を有する葉状シリカ 2次粒 子の配合量が過大であり、 硫酸水素セシウムが少なかったためか、 伝導度が低く
なってしまった。 結果を第 3表にまとめた。
*洞海化学工業社製サンラブリー LFS— HN— 150
* * *指で ¾触するだけで剥離, プロトン伝導性の評価不可能,
* * * *塗膜の強度, 平滑性は良好であつたが. 塗膜のプロトン伝 »性は低下した.
〔実施例 8〕
(1) プロトン伝導性化合物としてプロトン伝導性有機高分子化合物であるナフ イオン (デュポン社登録商標、 パーフルォロスルホン酸ポリマー) 10%分散溶 液 DE 1021 (和光純薬社販売) をエタノールで溶剤置換し (20倍量のエタ ノールを加えて 19倍量分を留去、 これを 5回繰り返す)、 ナフイオンの 10% エタノール分散液を調製した。
これとは別に、 葉状シリカ 2次粒子 (洞海化学工業社製、 サンラブリ一 LFS
— HN— 150、 平均粒径 1· 5/ m、 15質量%水分散液) を、 n—ブ夕ノー ルで溶剤置換し、 葉状シリカの 10%ブ夕ノール分散液を調製した。
このナフイオンの 10%エタノール分散液 90質量部と、 葉状シリカ 2次粒子 の 10%ブ夕ノール分散液 10質量部を混合し、 10分間室温でよく撹拌してス ラリー状のプロトン伝導性組成物 (G) を調製した。
(2) 調製した混合物スラリー (G) を基板であるソーダガラス板 (75mmx 75mmX 3 mm) に塗布して 2時間風乾させ、 さらに 90 ^で 30分間加熱処 理を行った。得られた複合膜 Ml (当該複合膜組成:ナフイオン:シリカ =90 : 10 (質量比)) の厚みは 59 /zmであった。
〔実施例 9〕
ナフイオンの 10%エタノール分散液 80質量部と、 葉状シリカ 2次粒子の 1 0%ブ夕ノール分散液 20質量部とを混合した以外は、 実施例 8と同様にしてプ
口トン伝導複合膜 M 2を作成した。 得られた複合膜 M 2 (当該複合膜組成:ナフ イオン: シリカ = 80 : 20 (質量比)) の厚みは 62 mであった。
〔実施例 10〕
ナフイオンの 10%エタノール分散液 75質量部と、 葉状シリカ 2次粒子の 1 0%ブ夕ノール分散液 25質量部とを混合した以外は、 実施例 8と同様にしてプ 口トン伝導複合膜 M3を作成した。 得られた複合膜 M3 (当該複合膜組成 ナフ イオン: シリカ = 75 : 25 (質量比)) の厚みは 62 mであった。
〔比較例 4〕
(1) 葉状シリカ 2次粒子を添加しないほかは、 実施例 8と同様に処理してプロ トン伝導性膜 M4を得た。 この伝導性膜の厚みは 61 z/mであった。
(メタノール透過性の測定)
本実施例、 比較例において、 プロトン伝導性複合膜等のメタノール透過性は以 '下のようにして測定した。 すなわち、
特開 2005— 5171号公報に記載の方法と同様に、 3. 14 cm2の開口 部を有する 15 mLのガラス容器に、 12mLの 10 %メタノール水溶液を入れ、 開口部にプロトン伝導性複合膜 Ml、 M2、 M 3またはプロトン伝導性高分子膜 M 4をそれぞれセットした後、 容器の質量を測定した。 次いで、 プロトン伝導性 高分子膜または複合膜が底部になるようにガラス容器を倒立させ、 直ちに 25 —相対湿度 40 %に保った恒温恒湿容器中に入れ、 24時間以上保持した後の質 量を測定した。
これらの測定値からメタノール透過量を次式 (3) より求めた。
Q= (G 1 -G2) / (a X t)
式中
Q:メタノール透過量 〔gZ (m2 · h r)〕
Gl :測定前のメタノール水溶液入り容器質量
G2 :測定後のメタノール水溶液入り容器質量
a : メタノール透過面積 = 3. 14/10000 [m2]
t :測定時間 〔h r〕
上記の計算式よりメタノール透過量を算出したところ、 ナフイオン一葉状シリ 力 2次粒子複合膜 Ml、 M2、 M3のメタノール透過量 QM1、 QM2、 QM3 はそれぞれ 10. 4 [g/ (m2 · h r)〕、 7. 4 Cg/ (m2 · h r)〕、 5. 5 tg/ (m2 · h r)〕 であった。
同様に葉状シリカ 2次粒子無添加の高分子膜 M 4のメ夕ノール透過量 QM 4 は 13. 3 〔gZ (m2 · h r)〕 であった。
この結果から、 葉状シリカ 2次粒子無添加のプロトン伝導膜のメタノール透過 量に対する葉状シリカ 2次粒子 10 %、 20%、 25 %をそれぞれ添加した場合 のメタノール透過量の相対値はそれぞれ 0. 78、 0. 56、 0. 41と算出さ れる。 結果をまとめて第 4表に示した。 第 4表
*洞海化学工業社製サンラブリー LFS— HN— 150 以上のごとく、 プロトン伝導性高分子膜に葉状シリカ 2次粒子を添加した複合 膜とすることにより、 膜中のメタノール透過性を抑制しうることが示された。 これは、 配合した葉状シリカ 2次粒子が当該複合膜内において基板に対して層状 に配向しているので、 当該複合膜を直接メタノール型燃料電池 (DMFC) の高 分子電解質として使用した場合は、 メ夕ノール燃料分子の膜厚み方向の拡散移動 は、 当該膜内の配向シリカ粒子により実質的に遮断され、 そのクロスオーバーが 効果的に抑制することができると推定される。
〔実施例 1 1〕 (単位セル作成)
(1) ポリテトラフルォロエチレンで撥水処理したカーボンペーパー (東洋紡績 社製) 2枚を準備し'、 これに、 白金担持カーボン粒子 (白金含有量が白金として 40質量%程度のもの) にエチルアルコール:水 = 50 : 50の混合溶媒を加え
てペースト状としたものを、 各々当該白金担持カーボン粒子が 0. 5gZcm2 の密度となるよう塗布し、 100 で 12時間乾燥してガス拡散電極 2枚を作成 した。
(2) 上記 2枚のガス拡散電極を正極および負極とし、 この両極の間に実施例 4 と同じ方法で作成した無機プロトン伝導性膜が挟まるよう一方のガス拡散電極 を基板として実施例 4と同様にして単位セルを作成した。
(3) この単位セルを、 常圧下、 16 Ot:の温度において電流密度 0. 5AZc m2で出力電圧を測定したところ、 電圧 0. 7Vを示した。 産業上の利用可能性
本発明のプロトン伝導性複合膜は、 プロトン伝導性化合物成分とそれ自身自己 造膜性を有する層状構造をなす葉状シリカ 2次粒子の複合膜として構成されて いるので、 プロトン伝導性および機械的な加工性に優れ、 これを例えば燃料電池 の固体電解質とした場合は、 100 以上の高温運転でも湿度に影響されること なく高い電圧特性を長期安定的に維持することが可能となるものであるため、 そ の産業上の利用可能性は極めて大きい。
また、 当該プロトン伝導性複合膜を、 例えば直接メタノール型燃料電池 (DM FC) の高分子電解質として使用した場合、 メタノール等の燃料分子を、 当該複 合膜内の配向シリ力粒子により実質的に遮断することが可能であり、 そのクロス オーバーが効果的に抑制されることから、 電池出力の実質的に低下を伴わずに、 当該燃料電池の安定的運転が可能となる。 この点からも、 その産業上の利用可能 性はきわめて大きい。